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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/07(水) 21:10:57 ID:nfKWg1KI
………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室

大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」

成幸 「………………」

成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)

成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」

大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」

成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」

大森 「でもキスはしたんだろ?」

成幸 「………………」

プイッ

成幸 「……黙秘権を行使する」

小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)

53以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:29:39 ID:yfJ2n.4k
成幸 「………………」

成幸 「へっ……?」

ボッ

成幸 「なっ、ななななな、何を……////」

成幸 「い、いきなり何を言うんだ、緒方……///」

文乃 (言ったぁあああああああああああ!)

ドキドキドキドキ……

文乃 (言っちゃったよ!? どうなるの!? 怖いけどドキドキする……!)

文乃 (成幸くんは一体どんな返答を……――)


理珠 「――ふふ、照れましたね。私の勝ちです!!」


成幸 「へ……?」

文乃 「え……?」

理珠 「“愛してる” のコールに対して、照れましたね。私の勝ちです、成幸さん!」 バーン!!!

54以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:30:19 ID:yfJ2n.4k
成幸 「………………」

文乃 「………………」

成幸 「……緒方。悪い、ちょっとタイム」

理珠 「へ……?」

成幸 「……おい、古橋。ひょっとしてこれは、この前昼休みにやったあのゲームの続きか?」 コソッ

文乃 「わたしにも分からないけど、たぶんそうなんだと思う……」 コソッ

成幸 「昨日様子がおかしかったのもそのせいか?」

文乃 「たぶん……」

文乃 (……昨日のわたしとの話もおかしなところがあったし……)

文乃 (……つまり、りっちゃんは、成幸くんにゲームで勝とうとしていただけだったのかな)

成幸 「……うん。わかった」

成幸 「……なぁ、緒方」

理珠 「はい、なんですか?」

成幸 「ちょっとお説教するから、そこ座りなさい」 ニコッ

理珠 「へ……?」

55以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:31:00 ID:yfJ2n.4k
………………

成幸 「いいか、緒方。俺もゲームをするなとは言わないよ?」 クドクド

理珠 「はい」

成幸 「勉強の後に付き合ってやってるだろ? 言ってくれればちゃんとやるよ、俺も。ゲーム」

理珠 「はい……」

成幸 「俺に対抗意識を燃やしてもらってもいいよ? ただ、急にゲームを始めるのはやめなさい」

成幸 「開始したかも分からないゲームに振り回される俺の気持ち、分かるか?」

理珠 「……今考えると、とんでもないことをしていたな、と思います」

成幸 「うんうん。わかってくれて嬉しいよ」

文乃 (結構ガチ説教だね、成幸くん……。まぁ、本当にりっちゃんのこと心配してたもんなぁ……)

成幸 「それから、一番大事なことだけどさ、」

理珠 「……?」

成幸 「誰彼構わず、“愛してる” なんて言うのはやめとけよ。変な奴に勘違いされるぞ」

成幸 「俺だから良かったものの、大森相手だったりしたら、今ごろ……――」

理珠 「――い、言いません!」 ガバッ

56以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:31:33 ID:yfJ2n.4k
成幸 「わっ……な、なんだ、急に……」

理珠 「言いません! 成幸さん以外の人に、そんなこと、言うわけないです……」

理珠 「成幸さんだから……言うんです……」

成幸 「お、おう。そうか。それならいいけど……。いや、よくはないけど……」

文乃 (おおう……。ここまでやられて気づかない成幸くんの鈍さも相当だよね……)

文乃 「……まぁ、そのへんにしておこうよ、成幸くん。りっちゃんも反省してるみたいだし」

成幸 「ああ、そうだな」

理珠 「すみません。成幸さん、文乃。私はまた、人の気持ちが分からず迷惑をかけてしまったようです……」

シュン

理珠 「……先日のゲームで、成幸さんに勝てそうだったのが嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」

成幸 「………………」 ハァ 「……ま、いいじゃないか。どうであれ、結果として今日はお前が勝ったんだから」

成幸 「でも、あんなの勝てるわけないじゃないか。お前、顔真っ赤だったし、涙目だったし、俺の手まで握って……」


―――― 『……成幸さん。“愛してます”』


成幸 「っ……///」 (お、思い出しただけで恥ずかしくなってきたぞ……)

57以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:32:23 ID:yfJ2n.4k
理珠 「そ、そうですね。初めて成幸さんにゲームで勝ったのですから、結果オーライでいいですね!」

文乃 「………………」

フルフル

文乃 「……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ」

理珠 「ふ、文乃……!?」 ガーン

文乃 「だってそうでしょ? そもそも成幸くんはゲームの開始すら知らなかったわけだし」

文乃 「そもそもりっちゃん、言う前から照れてたし」

文乃 「それに、“愛してる” じゃなくて、“愛してます” って言ってるし」

理珠 「うっ……」

文乃 「……ってことで、またりっちゃんの負けかな」

成幸 (容赦ないな、古橋……)

理珠 「……ひょっとして文乃、怒ってますか?」

文乃 「……べつに」

プイッ

理珠 (お、怒ってますね……。悪いことをしました……)

58以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:34:00 ID:yfJ2n.4k
文乃 「………………」

文乃 (まったくもう。わたしがどれだけきみのことを心配したと思ってるのかな、りっちゃん)

文乃 (昨日なんかりっちゃんとうるかちゃんのことが心配すぎて、結局一睡もできなかったよ!)

文乃 (その結果がゲームだっていうんだから、まったくもう。りっちゃんは……)

ハァ

文乃 「……本当に、仕方ないなぁ、りっちゃんは」 ニコッ

理珠 「あっ……す、すみませんでした、文乃」

文乃 「いいよ。でも、そうだな。少しだけ意地悪しちゃおっかな」

グイッ

理珠 「へ……? ふ、文乃? 近いです……」

文乃 「内緒話だよ、りっちゃん。成幸くんに聞こえないように言うだけ感謝してほしいな」 コソッ

理珠 「内緒話……?」 コソッ

文乃 「りっちゃんは、どうして “愛してます” って言っちゃったのかな?」

理珠 「へ……?」

59以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:34:32 ID:yfJ2n.4k
文乃 「まるで、本当に告白するときみたいだよね……なんて」

理珠 「………………」

ボフッ

理珠 「……っ、そ、そんな、ことは……///」

理珠 「ふ、普段から丁寧語だから、つい出ちゃっただけです……」

文乃 (ふーん。まぁ、大森くんのときは “アイシテル” って言ってたけどね)

文乃 「……ま、そういうことにしておきますかね」

理珠 「へ、変なことを言わないでください、文乃」

成幸 「おい、古橋、緒方。何の話をしてるんだか分からないけど、もう行くぞ」

成幸 「そろそろHRが始まるからな。教室に入らないと」

文乃 「……そうだね。ほら、行くよ、りっちゃん」

理珠 「……はい!」

文乃 (まったくもう。ヒヤヒヤさせてくれるよ)

60以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:35:04 ID:yfJ2n.4k
―――― 『……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ』


文乃 (ちょっと厳しかったかな)

文乃 (でも、ダメだよ、りっちゃん)

文乃 (だって、こんなだまし討ちみたいなカタチで成幸くんに勝っても、りっちゃんだって嬉しくないでしょ?)

文乃 (りっちゃんは、いつかきっと、成幸くんに対しての気持ちに気づくだろう)

文乃 (その後、りっちゃんがどうするのかは分からないけれど)

文乃 (……でもきっと、りっちゃんが成幸くんに “勝つ” のはその後のことだから)

文乃 (だからりっちゃん。それまでは)

文乃 (……成幸くんに勝つのはきっと、お預けだよ)

文乃 (いつかりっちゃんが、ゲームでもなんでもなく、心の底から、)

文乃 (“愛してます” と言える、そのときまで)

ズキッ

文乃 「っ……」 (……大丈夫。痛くない。痛くない。痛いはず、ない)

文乃 (わたしはこれっぽっちも、そんなこと、思ってない)

おわり

61以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:36:09 ID:yfJ2n.4k
………………幕間 「前日の緒方うどん」

親父さん (……文乃ちゃんが店に来た。挨拶に行きてえが、接近禁止命令が出ている以上近づけねえ)

親父さん (せめて物陰からふたりの会話だけでも……)

「成幸さんにですね……」  「うんうん」  「…… “愛してる” と言いたくてですね……」

親父さん 「……!?」 (な、なんだと!? やはり理珠たまはセンセイに……!?)

「わっ、わたしはべつに、だって……成幸くんのことなんて……」

親父さん (この恥じらう声は、文乃ちゃんの声だな!? あのヤロウ! うちの娘だけじゃなく、文乃ちゃんまで……!!)

「ですが、私は行きますよ。明日は無理でも、明後日……いえ、一週間以内には、必ず……」

「成幸さんに “愛してる” と言って見せます!」

親父さん 「ゴフッ……」 (ち、ちくしょう……なんてこった……)

親父さん 「あ、あのヤロウ……!! もう許さねぇ! 息の根を止めてや――」

理珠 「――お父さん。また盗み聞きしてましたね?」 ニコッ 「半径五キロメートル接近禁止です」

親父さん 「パパもう市内にもいられなくなっちゃう!?」

おわり

62以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 02:36:52 ID:yfJ2n.4k
>>1です。読んでくださった方、ありがとうございました。


また投下します。

63以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 11:16:15 ID:mSFua3bQ
おつおつー

64以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:01:07 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】理珠 「ポッキーゲームというのをやりたいです」

65以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:01:58 ID:yfJ2n.4k
………………一ノ瀬学園 3-B教室

文乃 「………………」

文乃 (……またとんでもないことを言い出したなぁ)

成幸 「ポッキーゲームってなんだ?」

文乃 (こっちはこっちで知識が偏りすぎじゃないかな?)

うるか (ぽ、ポッキーゲーム!? 成幸と!?)

うるか (そ、それって……はうっ……///)

文乃 (そしてこっちは乙女がダダ漏れだよ……)

文乃 「えっと、りっちゃん? どうしていきなりそんなことを言い出したのかな?」

理珠 「昨日ニュースで見ました。11月11日はポッキーの日だから、ポッキーゲームというゲームをやるのだと」

文乃 「その肝心のポッキーゲームのルールは知ってるの?」

理珠 「………………」

ハッ

理珠 「……そ、そういえば、ルールについては全く触れられていませんでした」

文乃 (まぁ、そんな放送倫理に引っかかりそうなことをニュースで解説はしないよね……)

66以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:02:41 ID:yfJ2n.4k
うるか 「リズりん、ポッキーゲームっていうのはね、ふたりで両側からポッキーをむぐうっ」

文乃 (ふふふ……言わせないよ、うるかちゃん)

文乃 「ポッキーゲームはりっちゃんにはまだ早いかなー。ってことで話を変えようか」

うるか 「もがもがもがっ! (えー! 文乃っちひどいよー!)」

成幸 「ん、でも俺もルールくらいは気になるな。一体どんなゲームなんだ?」

文乃 (きみがそこで背中からわたしを撃つの!?)

文乃 「いや、でも……――」

「――ふたりがポッキーを両側から咥えるんです〜。そしてお互いに食べ進めて、先に折った方が負け、というゲームですよ〜」

文乃 「!?」 (こ、この声は……!)

文乃 「鹿島さん!? 蝶野さんと猪森さんも……」

鹿島 「いや〜、突然話に入って失礼致しました〜」

ニコリ

鹿島 「でも、いつも通り姫をウォッチしていたら楽しそうな話をしていたので、つい〜」

文乃 (もうツッコむ気すら起きないよ……)

成幸 「ポッキーを両側から咥えて……お互い食べ進めて、先に折った方が負け……?」

67以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:04:00 ID:yfJ2n.4k
成幸 「……////」 プシュー

文乃 (あー、もう。そういう感じになるってわかってたから、言わないでいたのにー!)

理珠 「単純なゲームですね。ポッキーにせん断応力を加えることなくいかに食べ進めるかがキモになりそうですね」

文乃 「……うん。りっちゃんはそういう反応だと思ってたよ」

うるか 「あ、愛してるゲームみたいにやってみない? なんて……。えへへ……」

文乃 (こっちの気も知らないで、お気楽娘めぇ〜〜〜〜)

文乃 「やれると思う? なんだったら今からわたしとやってみる、うるかちゃん?」

うるか 「えっ……」 カァアア…… 「ふ、文乃っちがいいなら、いいよ……?」

文乃 「えっ……」 ドキッ

文乃&うるか 「「………………」」 ドキドキドキドキ

文乃 「……あっ、で、でも、ポッキーがないし」

蝶野 「ご心配なく。ここにあるっス」 スッ

文乃 「用意周到だね!」

鹿島 (ふふふ。最初は女の子同士でやってもらって、いずれは古橋姫と唯我成幸さんにやってもらいます)

鹿島 (昨日のニュースを見ていて思いついた、名付けて 『ポッキーゲームで姫と王子もドキドキ!』 大作戦です!!)

68以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:05:03 ID:yfJ2n.4k
………………

文乃 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「じ、じゃあ、行くよ、うるかちゃん」

うるか 「う、うん。負けないかんね、文乃っち」

ハムハムッ

文乃 「っ……」 (こ、これは……)

うるか 「はう……」 (よ、予想以上に……)

文乃&うるか ((近い……!!))

文乃 (これはとんでもないことだよ!? 同性でもこれなんだから……!)

うるか (成幸とポッキーゲームなんて、想像するだけで……うぅ……)

文乃 (っていうか、改めて間近で見ると、うるかちゃんって……)

うるか (文乃っちって、やっぱり……)

文乃&うるか ((めちゃくちゃかわいいなぁ……///))

緒方 (……? あのふたりは、見つめ合って顔を赤くして、何をしているのでしょうか)

69以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:05:46 ID:yfJ2n.4k
………………

鹿島 「あらあら〜。結局見つめ合ったまま大して食べ進められませんでしたね。引き分けです」

文乃 「………………」 ドキドキドキ (う、うるかちゃんかわいかった……)

うるか 「………………」 ドキドキドキドキ (文乃っちって、やっぱり美少女だなぁ……)

理珠 「わ、私もやりたいです、ポッキーゲーム!」

文乃 「!? 何で!? 正気なのりっちゃん!?」

理珠 「はい。最初はとんでもないゲームだと思いましたが、お二人がやっているのを見て面白そうだと思いました」

理珠 「現に、おふたりは今、何かとても満たされたような顔をしています!」

文乃&うるか 「「そんな顔してないよ!!」」

うるか 「それに、あたしたちは今やったばっかりで精も根も尽き果てるし、誰とやるの?」

70以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:06:37 ID:yfJ2n.4k
理珠 「えっ……そ、それは……」 チラッ

成幸 「……?」

ハッ

成幸 「お、俺!? いやいやいや!! さすがに女子とはできないだろ!!」

理珠 「むっ……」 プクゥ (そんなに拒絶しなくたって、いいじゃないですか……)

成幸 (もしそんなことを緒方とやっていて、また桐須先生が教室に入ってきたら今度こそ殺される!!)

鹿島 「………………」 (……唯我成幸さんには、この後古橋姫とポッキーゲームをしてもらう必要があります)

鹿島 (ここは、緒方理珠さんと私がポッキーゲームをすれば……――)

「――受けて立つわ! 緒方理珠!」 バーン

理珠 「せ、関城さん……? どうしてここに?」

紗和子 「そんなの決まってるじゃない! あなたのことを観察していたら、ポッキーゲームなんて単語が飛び出して……」

紗和子 「うらやましいから混ざりにきた――違う! 仕方ないから来てあげたのよ!!」 ババーン

紗和子 (これは、緒方理珠と私の親友度を上げるための絶好のチャンス!!)

紗和子 (本当なら緒方理珠と唯我成幸にやらせてあげたいけれど、さすがに公衆の面前でやらせるわけにはいかないわ!)

紗和子 「本当に仕方ないけれど、勝負を受けてやるわ!!」

71以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:09:51 ID:yfJ2n.4k
………………

ハムハムッ

理珠 「………………」

紗和子 「……ハァ……ハァ……」 (し、至近距離に緒方理珠が……///)

紗和子 (これは……想像以上だわ……)

理珠 (……正直な話、想像よりはるかに簡単なゲームです)

理珠 (目の前で顔を真っ赤にして鼻息を荒くしている関城さんは正直キモいですが、)

理珠 (別段どうという話もありませんし……)

ハムハムハムハムッ

紗和子 「!?」 (お、緒方理珠の顔がどんどん近づいて……――ッ)

紗和子 「だ、ダメよ、緒方理珠! あなたには唯我成幸という人が……!」

パッ

文乃 「あっ……」

72以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:10:49 ID:yfJ2n.4k
鹿島 「おお〜」 パチパチパチ 「関城さんがポッキーを放してしまいましたね〜。緒方さんの完勝です」

理珠 「えっ……?」 ムシャムシャムシャ 「わ、私の勝ちですか……!?」

紗和子 「ぐふふ……ふへへ……お、緒方理珠……///」

文乃 (うわぁ……紗和子ちゃん、これは昼休み中には回復しそうにないなぁ……)

紗和子 「でへへっ……緒方理珠の、小さな唇が、私に近づいて……」

紗和子 「ぐふふっ……」

文乃 (気持ち悪いなぁ……)

理珠 「わ、私が勝った……」 グッ 「私が勝ったんですね!!」

成幸 「おう、緒方の完全勝利だ。すごいぞ」

理珠 「ありがとうございます、成幸さん!」

73以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:11:20 ID:yfJ2n.4k
理珠 「ひょっとしたら私は、ポッキーゲームを極めるために生まれてきたのかもしれません!」

成幸 「うん。それは違うと思うぞ、緒方」

理珠 (ポッキーゲームなら、ひょっとして私は誰にでも勝てるのでは……?) ニヤリ

鹿島 「で、では、そろそろ仕切り直しで、古橋さんと唯我さ――」

理珠 「――次は文乃と私がやりましょう!」

鹿島 「なっ……!?」

文乃 「!? なんでわたしなの!?」

理珠 「ダメですか、文乃?」 キラキラキラ

文乃 「ぐっ……」 (純粋な目で見つめおってからに……) キリキリキリ

文乃 (まぁ、鹿島さんはどうせわたしと成幸くんをやらせたがっているだろうから、むしろ好都合かな……)

文乃 「いいよ、りっちゃん! 負けないよ!」

理珠 「私だって負けません!」

74以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:12:26 ID:yfJ2n.4k
………………数分後

文乃 「り、りっちゃん、そんな……急すぎるよ……」

うるか 「リズりん、大胆だよぅ……」

蝶野 「め、目の前に美少女の顔が来ると、予想以上っス……。うぅ、理珠さん……///」

猪森 「うぅ……さ、さすがだ、緒方さん……いや、理珠ちゃん……///」

成幸 「うぉぉ……」 (なんだこの、死屍累々の光景は……)

鹿島 (な、なぜこんなことに!? 私はただ、古橋姫と唯我成幸さんにポッキーゲームをさせたかっただけなのに……)

鹿島 (緒方理珠さんの超高速戦法に、誰ひとり太刀打ちできずに敗北していく……)

ポン

鹿島 「……!? ヒッ……!! 緒方さん……!?」

理珠 「次は鹿島さんですよ。ふふ。ほら、こっちを咥えてください」 ハムッ

鹿島 「あっ……ああああ……」 ガタガタブルブル

75以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:13:24 ID:yfJ2n.4k
………………

鹿島 「あっ……/// ふ、古橋姫以外でこんなにときめいたのは、初めてかもしれません〜……」

成幸 (また死体が増えた……)

理珠 「………………」 (ふふふ……ふふふふふ!! ゲームで勝つのがこんなに楽しいとは!!)

理珠 (皆さんは今まで、こんな楽しい気分を味わっていたのですね!)

理珠 (今こそ、敗北者の気持ちを全員に刻みつけてやるのです……!!)

ジロリ

成幸 「ひっ……。お、緒方……?」

理珠 「さぁ、残るは成幸さんだけですよ。さぁ、私とポッキーゲームをしましょう」

理珠 (そして、私に勝利をもたらすのです……!!)

キーンコーンカーンコーン……

理珠 「……えっ」

成幸 「あっ、五時間目の予鈴だな! ほら、もう遊びは終わりだ。緒方も教室戻れよ」

成幸 「ほら、お前らもいつまでも放心してないで起きろ。授業が始まるぞ」

理珠 「むぅ……」

76以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:14:55 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」

プクゥ

理珠 (やっと成幸さんにゲームで勝てると思ったのに、残念です……)

理珠 (そうです。まったく、今回こそ成幸さんに勝って、鼻を明かしてやろうと思っていたのに……)

理珠 (成幸さんに勝てる明確なビジョンだってあります。脳内でシミュレーションしてみたって……)

理珠 (私がどんどん食べ進めて……成幸さんはその私の動きに対応できず、咥えたまま……)

理珠 (呆けた成幸さんの顔にどんどん近づいていき、そのまま、成幸さんの唇に……――)

――ハッ

理珠 (……く、唇に、触れる……?)


―――― 『それって緒方が 誰かとキスしてるってこと?』

―――― 『もう一度してみたら…… 何かわかるでしょうか』


理珠 「ふぁっ……」

理珠 (わ、私はひょっとして、とんでもないことを……?)

理珠 (また “キス” に近しい何かを成幸さんにしようとしてしまったのでは!?)

77以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:16:23 ID:yfJ2n.4k
理珠 (私はまた、成幸さんの唇に……)

理珠 (キスに類する何かを、しようと……)

理珠 「………………」

理珠 (……やはり、わかりません)

理珠 (なぜ私は、成幸さんにだけ、こんなにも気持ちを高ぶらせてしまうのでしょう……)

成幸 「……おい、緒方」

理珠 「!? な、なんですか……?」

成幸 「まぁ、べつにどうってことはないけどさ……」

ズイッ

理珠 (ち、近っ……。な、何を、成幸さん……)

成幸 「……前も言っただろ。冗談でも、口と口を近づけるようなことは、しちゃいけないんだ」 コソッ

理珠 「へ……?」

78以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:17:11 ID:yfJ2n.4k
成幸 「特に、男相手だったらな。遊び半分でも絶対にダメだ」

成幸 「ゲームに勝って楽しかっただろうけど、絶対に男とはやるなよ。いいな?」

理珠 「わ、わかりました。約束します……」

成幸 「ならいい。ほら、教室戻れ」

理珠 「はい……」

理珠 「………………」 (……いつか、遊び半分でないのなら)

成幸 「おーい、関城。起きろー」 ペシペシペシ 「なんで一番最初の被害者のお前がまだ倒れてんだよ」

理珠 (成幸さんは、怒らないのでしょうか?)

理珠 (遊び半分でなく、本気なら……)

理珠 (いつか私も、いつだか成幸さんと観たあの映画のように……)

理珠 (ゲームでも、事故でもない、キスが……)

ドキドキドキドキ……

理珠 (できるのでしょうか……)


おわり

79以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:18:52 ID:yfJ2n.4k
………………幕間1 「その日の職員室」

真冬 「ふぅ……」 (今日の授業はなかなかだったわね)

真冬 (ALの試みも上手くいったし、ICT機器の使い方も我ながら上手だったわ)

真冬 (この調子で教材研究を続けて、いずれは論文にまとめて教材を学会で発表したいわね……)

理珠 「失礼します」 ガラッ 「3年F組の緒方です。桐須先生はいらっしゃいますか?」

真冬 (……? 緒方さんが私を訪ねるなんて珍しいわね) 「ここにいます。用があるならどうぞ、いらっしゃい」

理珠 「はい、失礼します」

真冬 「……何の用かしら? あなたが私のところに来るなんて珍しいわね」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!

理珠 「ええ。私もそう思います」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「この前のリベンジに来ました」

真冬 「リベンジ……?」

理珠 「ごき○りポーカーでの30連敗の屈辱、私は決して忘れません。今日こそその雪辱を晴らします!」

真冬 「……この前やったカードゲームの話? その前に、雪辱は晴らすものではなく果たすものよ。誤用に注意しなさい」

理珠 「ぐっ……しかしそんな余裕でいられるのも今のうちです! さぁ、桐須先生! ポッキーゲームで勝負です!」 バーン

真冬 「………………」 ガシッ 「……緒方さん。とりあえず生徒指導室でお説教ね。来なさい」

理珠 「えっ……」 ズルズルズルズル 「な、なぜですかぁああああ………………」 ズルズルズル………………

80以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:19:56 ID:yfJ2n.4k
………………幕間2 「その日の唯我家」

成幸 (はぁ……今日は緒方と鹿島のせいで疲れたな……)

成幸 「ただいまー……」 ガラッ

水希 「おかえりなさいっ、お兄ちゃん!」

水希 「おフロにする? ごはんにする? それとも、ポ・ッ・キ・ー?」

成幸 「………………」

成幸 「……うん。ポッキー咥えてキメ顔してるところ悪いんだけどさ、」

成幸 「お兄ちゃんはそろそろ真剣にお前の将来が心配だよ」


おわり

81以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 16:20:43 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
読んでくれた方、ありがとうございます。


また投下します。

82以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:16:40 ID:0jOzdRyc
乙そういや先週の扉絵妹可愛かったな!

83以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:34:09 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「ポニーテールは振り向かない」

84以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:34:49 ID:yfJ2n.4k
………………朝 唯我家

成幸 「………………」

ガツガツガツ……ムシャムシャムシャ……

和樹 「おー。兄ちゃん朝から早食いだなー」

成幸 「ん……」 ゴックン 「早めに学校に行って、ノートをまとめておきたくてな」

葉月 「さっすが兄ちゃん! 勉強熱心ね!」

成幸 (まぁ、俺のノートじゃなくてあいつらのノートだけどな……)

成幸 「ってことで、ごちそうさま。もう学校行くな!」

水希 「あっ……お兄ちゃん、ちょっと待ってー」

ドタドタドタ

成幸 「どうかしたか、水希?」

水希 「髪がうまくまとまらないのー! お兄ちゃんやってー!」

成幸 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……」

水希 「今日は髪が言うこと聞いてくれないの!」

85以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:35:47 ID:yfJ2n.4k
成幸 「仕方ないな……。ほら、後ろ向けよ」

水希 「……ぃよしっ」 グッ

成幸 「……? お前今野太い声でガッツポーズ決めなかったか?」

水希 「えーっ、なんのことー?」 キャルン

成幸 「……もういいや。じゃ、櫛入れてくぞー」

スッ……サッ……サッ……

水希 「はうぅ……」 ポワポワ (久々にお兄ちゃんに櫛入れてもらってる……)

水希 (気持ちよくてどうにかなっちゃいそう……///)

成幸 「……っし。じゃ、まとめるぞ、っと」

キュッ

成幸 「……こんなもんでいいだろ。ほら、できたぞ、水希?」

水希 「うふふ……お兄ちゃんの逞しい手が、私の髪を……えへへ……」 ポワポワポワ

成幸 「水希……? おーい、水希ー」

和樹 「あー、これはダメだな。完全にトリップしてるよ」

86以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:37:02 ID:yfJ2n.4k
葉月 「こうなっちゃったら水希姉ちゃんはすぐには動けないわね」

和樹 「兄ちゃん学校で勉強するんだろ? 姉ちゃんは俺たちが見てるから、先行きなよ」

成幸 「おう、じゃあ頼んだぞー。いってきまーす!」

葉月&和樹 「「いってらっしゃーい!」」

成幸 (ふむ……)

成幸 (久々に水希の髪をいじったが、まだまだ俺も捨てたもんじゃないな)

成幸 (まぁ、ポニーテールが楽だから簡単だってのはあるけどな)

成幸 (もっと色々な結び方とかできるようになったら、水希も葉月も喜んでくれるかな……?)

成幸 (そういや、古橋ってしょっちゅう髪型変えるような……)

成幸 (ちょっと教えてもらおうかな)

87以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:39:06 ID:yfJ2n.4k
………………昼休み 一ノ瀬学園

大森 「なぁ、女子の髪型ってさ、いいよな……」

小林 「……いきなりどうしたの、大森」

成幸 「しみじみ言われるとさすがにキモいぞ」

大森 「女子ってさ、髪型を変えることで変身できるんだよ……」 沁沁

成幸 「どうした、大森。悪いモンでも食ったのか? それとも頭でも打ったか?」

大森 「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」

小林 「急に変なこと言いだしたと思ったら、結局ソッチに持ってくのね……」

ヤレヤレ

小林 「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」

成幸 「なんだかんだ、お前ってこういう話題結構好きだよな……」

大森 「っていうかそれそのまま海原さんじゃねーか! ノロケんじゃねー!」

小林 「ははっ、バレた。でも実際、昔からショートカットの方が好きだしさ、俺」

88以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:39:56 ID:yfJ2n.4k
大森 「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

大森 「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」

成幸 「……お前たちはどうしてそう自分の性癖を事細かに語れるんだ」

大森 「なんだよー。男しかいねーんだから恥ずかしがんなよ、唯我ー」

大森 「俺たちも話したんだ。お前も話せよー」

成幸 「髪型の好みなんかねぇよ」

成幸 「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

大森 「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」

成幸 「なんだその無茶苦茶な言いがかりは!? お前たちの女子の髪の好みなんかどうでもいいわ!」

成幸 (ああ、ちくしょう。早く飯食ってあいつらの教材作りたいってのに……)

成幸 (こうなったら、もう適当に答えるのが一番か……)


―――― 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……』


成幸 「………………」 (……うん。ポニーテールは楽だし、嫌いじゃないな。ウソにはならない)

成幸 「あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」

89以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:41:25 ID:yfJ2n.4k
………………廊下

理珠 「ふふふ……。明日までの宿題を今日提出したら、成幸さんはどんな顔をしますかね」

うるか 「成幸、泣いて喜ぶんじゃないかな。あたしたちの成長を喜んで!」

文乃 「そ、そうだねー……」

文乃 (冷静に考えれば、次の宿題を出すスパンが短くなるんだから、)

文乃 (成幸くんを困らせることになりかねないんだけど、まぁそれは言うまい……)

文乃 (あとで成幸くんに、宿題無理して作らなくていいからね、って言わないと……)


  「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」


うるか 「……!?」 (大森っちの声!? 教室の中からだ!)

理珠 (と、いうことは、この髪型のことを聞いている相手は……)

文乃 (成幸くん、だよね……)

うるか 「……ち、ちょっと聞いてかない? この会話。べつに成幸がどーとかじゃないけど……」

理珠 「せ、せっかくですしね。成幸さんの好みを聞いておくのも、今後の関係を考えると有益かと思いますし」

文乃 (……胃が痛いなぁ) キリキリキリ……

90以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:42:09 ID:yfJ2n.4k
  「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」


うるか 「こばやんの声だ」 ヒソヒソ 「こばやんの彼女、海っちの髪型そのまんまだよ」

文乃 「微笑ましいねぇ……」 (胃が痛いなぁ。お願いだから成幸くん余計なこと言わないでよ……)


  「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

  「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」


理珠 「………………」 うるか 「………………」

文乃 (大森くんの声には清々しいまでにどうでも良さそうな顔してるね……)


  「髪型の好みなんかないよ」

  「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

  「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」


うるか 「そーだそーだ。もっと言ってやれ大森っち」

理珠 「……そうです。成幸さんは卑怯です」 フンスフンス

91以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:42:50 ID:yfJ2n.4k
文乃 「……ほっ」 (よかった。成幸くん、黙り込んじゃったし、このまま何も言わないで終わるのかな)

文乃 (ヘタなこと言われたらりっちゃんたちの勉強に支障が出るからね。よかったよ)

文乃 「……ほら、りっちゃん、うるかちゃん、もう行くよ」

文乃 「成幸くんに宿題見せて褒めてもらうんで――」


「――あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」


文乃 「……!?」

理珠&うるか 「「………………」」 ジーーーーーーッ

文乃 「な、なんでわたしを見るのかな、ふたりとも……」

ハッ

文乃 (し、しまったぁあああああ!! 今日のわたし、ポニーテールだー!!)

文乃 (そしてりっちゃんは元より、うるかちゃんも今日は髪をそのままおろしてるね!)

92以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:44:04 ID:yfJ2n.4k
………………

成幸 「ん……? なんか廊下が騒がしいな……」

理珠 「……し、宿題の提出は後にします! ちょっと用事を思い出しました!」

うるか 「あたしも! ちょっと用事を思い出したから放課後に提出するよ!」

文乃 「ち、ちょっとふたりとも落ち着いて……」

成幸 「……騒がしいと思ったらお前たちか」

理珠 「なっ、成幸さん!」 バババッ

うるか 「成幸、こっち見ちゃダメ!」 バババッ

成幸 「……? おい、古橋。このふたりは手で頭隠して何やってんだ?」

文乃 「わたしが聞きたいよ……」 (かわいいなぁ、ふたりとも……でも胃が痛いなぁ……)

成幸 「ん……」 (古橋、今日はポニーテールか。水希とおそろいだな)

ニコッ

成幸 「古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール」

文乃 「ふぇっ……!?」

文乃 (こ、このバカー! このタイミングでわたしの髪型褒めるかな、普通!!)

93以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:44:45 ID:yfJ2n.4k
理珠 「!?」


―――― 『な なんだ いつも通り 普通に元気そうじゃないか よかった』

―――― 『成幸マジで信じらんないッ!!』

―――― 『最低ッ!! 最低ッ!! 最低だよ成幸くん! これだから男子は……!!』


理珠 (わ、私が前髪を切ったときは全く気づいてくれなかったくせに……)

プルプルプル……

理珠 (私が前髪を切ったときは結局最後まで気づいてくれなかったくせに!!)

理珠 (あなたはどれだけポニーテールが好きなのですか!?)

うるか (成幸めー!)

うるか (あたしが胸元開けよーがスカート丈詰めよーが気にしないくせにー!)

うるか (どんだけポニーテールが好きなんだよー! 成幸のポニテ好き変態ー!)

理珠 (こうなったら私も……) ダッ

うるか (あたしもポニテにしてきてやるー!!) ダッ

文乃 「あっ、ふ、ふたりとも……! ……行っちゃった」

94以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:45:24 ID:yfJ2n.4k
文乃 (ヘアゴムだったら言ってくれれば予備を貸すのに……)

成幸 「……なんだったんだ? 最後にめちゃくちゃ睨まれたんだけど」

成幸 「俺、なんかしちゃったか……?」

文乃 (無自覚に何かしちゃってるんだよいつもー! 少しは気づいてよ……)

成幸 「……で、結局一体何の用だったんだ?」

文乃 「あっ……えっとね、宿題が早く終わったから、出しに来たんだけど……」

文乃 「ふたりはどこかに行っちゃったけど……」

成幸 「ん、そうか。じゃあ古橋のだけでも預かっとくな。ごくろうさん」

文乃 「いえいえ。いつもありがとうございます、先生」


―――― 『あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい』

―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』


文乃 「っ……///」

文乃 (でも、そっか……) カァアアアア…… (成幸くん、ポニーテール好きなんだ……)

95以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:46:15 ID:yfJ2n.4k
………………放課後

うるか 「………………」 バーン!!!

理珠 「………………」 ババーン!!!

文乃 「おおう……」 (本当にポニーテールにしてきてるよ、ふたりとも……)

文乃 「……ふたりとも、ヘアゴムはどうしたの?」

うるか 「ふふふ、あたしは水泳部だよ? トーゼン、バッグの中には常備だよ」

理珠 「私は持ち歩く習慣はないので借りました」

文乃 「誰に?」

理珠 「……関城さんです」

文乃 「おおう……」 (はしゃぎ回る紗和子ちゃんが目に浮かぶようだよ……)

文乃 (それにしても……)

文乃 (うるかちゃんはいいとしても、りっちゃんは……) ジーッ

理珠 「?」

文乃 (ちょんまげみたいになっちゃってるんだけど、りっちゃん的にはそれでいいの……?)

96以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:47:00 ID:yfJ2n.4k
成幸 「悪い、遅くなった。HRが長引いてさ。待たせたな」

うるか 「なっ、成幸……」 サワッ 「おつかれさま! 全然待ってないよ!」

理珠 「え、ええ。我々も今さっき来たところですから!」 ピョコン

成幸 「よーし、じゃあ早速始めるか。ふたりも宿題終わらせてるんだろ? 早速見るからくれ」

うるか 「あ……う、うん……」 理珠 「……はい」

文乃 (胃が痛い……)

文乃 (ふたりの露骨なポニテアピールに対して、成幸くんはまったく目もくれていないよ……)

文乃 (仕方ない。ここは、ふたりの気持ちを鼓舞するためにも、わたしが一肌脱いで――)

成幸 「――ん。そういえば、古橋」

文乃 「へっ……? な、何かな?」

成幸 「お前、髪結ぶ位置変えたのか」

文乃 「えっ……」

文乃 (な、成幸くんが髪の変化に気づいた!?)

文乃 (あの女の子の感情にとんでもなく疎いニブチンの成幸くんが!?!?)

97以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:47:52 ID:yfJ2n.4k
文乃 (き、驚天動地だよ……)

文乃 (たしかに、これ以上うるかちゃんとりっちゃんの乙女騒動に巻き込まれたくなくて、)

文乃 (ポニーテールからサイドテールに変えたけど、よく気づいたね……)

文乃 (いや、これもわたしの教えが染みついてきたってことかな……)

ホロリ

文乃 (師匠として鼻が高いよ……でも、成幸くん……)

理珠 「………………」 ジトーッ (……私の前髪には気づかなかったくせに)

うるか 「………………」 ジトーッ (文乃っちの髪型の変化にはすぐ気づくんだね……)

文乃 (このタイミングはやめてほしかったなぁ……!!)

ギリギリギリ……

文乃 (い、胃が……壊滅寸前のダメージを受けてる気がするんだよ……)

成幸 「どうかしたか?」

文乃 「だ、大丈夫。大丈夫だから……」 (きみはもうできるだけ喋らないでくれるかな?)

成幸 「そうか。ならいいけど……」

98以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:48:42 ID:yfJ2n.4k
成幸 「でも、サイドテールってのもなかなかいいな」

理珠&うるか 「「……!?」」

文乃 「ふぇっ……?///」 (な、なんでそんな、わたしの髪型ばかり褒めるのかな!?)

成幸 (水希はいつもポニーテールだけど、部活で邪魔にならないならサイドテールにいいんじゃないだろうか)

成幸 (今度結んでやったら喜ぶかなぁ……)

理珠 「っ……」 (成幸さんの中で髪型のトレンドが動いたということでしょうか!?)

うるか (こうなったら、サイドテールにしてくるしかない!!)

ガタッ

理珠 「ちょっと用事を思い出したので一旦抜けます!」

うるか 「すぐ戻るね!」

タタタタタ……

成幸 「えっ……? うるか? 緒方?」

成幸 「なんだ……? そんな急ぎの用事があったのか……?」

文乃 「うん。あのふたりにとっては可及的速やかにこなさなくちゃいけない用事だよ……」

99以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:49:34 ID:yfJ2n.4k
………………

理珠 「………………」 ゼェゼェ 「お、お待たせしました……」 ピョコン

うるか 「えへへ……。こ、これでどうだ……」 サワッ

文乃 「………………」

文乃 (……ふたりとも、急ぎすぎて髪の結び方が雑だし)

文乃 (りっちゃんに至っては、ただ横で結んだだけだから、乳幼児みたいな髪型になってるよ……)

成幸 「お、おう。おかえり。宿題は見終わったぞ。この調子で今日も勉強がんばろう」

理珠 「えっ……」 うるか 「そ、それだけ……?」

成幸 「……? 宿題はしっかりとやってるように見えたが、何か分からないところでもあったのか?」

うるか 「いや、そーじゃなくてね……」

理珠 「ほ、他に私たちに言っておいた方がいいこととか、ありませんか?」

成幸 「……?」

ハッ

成幸 「ああ、なるほど。俺としたことが、忘れるところだったよ」

理珠&うるか 「「………………」」 パァアアアアアアアアア……!!!!

100以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:50:26 ID:yfJ2n.4k
成幸 「悪い悪い。お前たちが早く宿題を終わらせるから、危うく間に合わないところだったけど」

ドサッ

理珠 「えっ……」

成幸 「お前たちのがんばりに、俺も 『教育係』 として準じなければならないからな!」

成幸 「明日出す予定だった宿題、がんばって今日渡せるようにしたぞ。ふふふ……」

うるか 「あ、あの、成幸……?」

成幸 「今日は宿題がなくなるんじゃないかと不安だったんだろ?」

成幸 「安心しろ」 キリッ 「お前たちの 『教育係』 は、お前たちを手ぶらで返したりはしないからな!」

うるか 「そ、そっか……えへへ、嬉しいな……うれ、しい……な……」 ズーン

理珠 「……ええ。本当に。最高の気分です」 ズーン

成幸 「喜んでくれるなら、多少無理してでも宿題を完成させた甲斐があるよ」

文乃 (……あー、もう。どうしてきみは女の子のことになると心の機微を察する気持ちが皆無になるのかな!?)

文乃 「まったくもう……」 ガシッ 「ちょっとこっち来て、成幸くん」

成幸 「ん? どうかしたか、古橋?」

文乃 「いいから、来て。話があるの」

101以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:51:11 ID:yfJ2n.4k
………………物陰

成幸 「話ってなんだ?」

文乃 「……その前に、ひとつ聞きたいんだけど、うるかちゃんとりっちゃんがさっき何をしに行ったかわかる?」

成幸 「えっ……? 用事って言ってたけど、その中身までは俺は知らないぞ?」

文乃 「うん。そうだよね。そう。きみはまったく、そうあるべきなんだよ」

成幸 「へ……? わ、悪い。俺に分かるように言ってくれるか?」

文乃 「うん。まぁ、それはいいんだけど……どうしてきみは、わたしの髪型の変化に気づいたの?」

文乃 「きみは今まで、自他共に認めるくらい、そういう変化に疎かったよね」

成幸 「……ん、まぁ、その通りだけど」

成幸 「古橋の髪型は、(今朝から)ずっと気になってたから……」

文乃 「えっ……」

成幸 「お前の髪型を気にするようにしたら、(水希と葉月が)喜んでくれるかな、って……」

成幸 「もちろん、色々(結い方とか)教えてもらう必要はあるだろうけど……」

文乃 「………………」 カァアアアア…… 「なっ……何を、言ってるのかな、きみは……!?」

102以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:51:52 ID:yfJ2n.4k
文乃 (わ、わたしの髪型を気にするようにしたら、わたしが喜ぶかなって……?)

文乃 (つ、つまり成幸くん、きみは……)

文乃 「(わたしを)喜ばせたかったの……?」

成幸 「あ、当たり前だろ! (あいつらの)笑顔を見るために俺はがんばってるんだから!」

文乃 「ふぁっ……///」

文乃 (わ、わたしの笑顔を見るために……?)

文乃 「そ、それって……どういう、意味、なのかな……?」

成幸 「……教えてほしいんだ。色々と」

文乃 「い、色々って……わ、わたしのことを……?」

成幸 「ああ、そうだ。お前の……」


成幸 「……お前の、色々な髪型のセットの仕方を!!」


文乃 「っ……///」

文乃 「……ん?」

文乃 「………………」

103以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:52:40 ID:yfJ2n.4k
………………

文乃 「……うんうん。なるほどなるほど。よくわかったよ」

文乃 「つまりきみは、妹さんたちの髪型のバリエーションを増やしたいなーと思って、」

文乃 「毎日髪型を変えるわたしに結い方を教えてもらえたらな、と思っていた、と」

成幸 「あ、ああ。さっきもそう言ったつもりだったけど……」

文乃 「だから、わたしの髪型の変化に気づくことができた?」

成幸 「うん……」

文乃 「そして、ポニーテールが好きだと言ったのは、見た目ではなく機能性の話なんだね?」

成幸 「結いやすいし運動もしやすくなるからな。部活をやってる水希は毎日ポニーテールだし」

文乃 「うんうん、なるほどねぇ……」

シュッ

文乃 「……とりあえず、一発手刀を入れても良いかな?」

成幸 「なんでだ!?」

104以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:53:12 ID:yfJ2n.4k
………………

理珠 「………………」 ズーン

うるか 「………………」 ズーン

成幸 「ほ、ほんとだ。よく見たら、かなり凹んでるな……」

文乃 「でしょ? ほら、早く。さっき教えた魔法の言葉をかけてあげて」

成幸 「ほ、本当に言うのか?」

文乃 「……ふふ、おかしな成幸くん」 シュッ 「手刀を入れられたいのかな?」

成幸 「わ、わかったよ! 言うから! 手刀の素振りはやめてくれ!」

成幸 「……うー」 モジモジ

成幸 (ええい、ままよ……!)

成幸 「お、緒方、うるか、ちょっと話を聞いてくれるか?」

理珠&うるか 「「……?」」 モゾリ

成幸 「サイドで結んでる髪型も似合ってるけど……やっぱり普段のふたりが一番……」

成幸 「か、かわ……かわっ……」 カァアアアア…… 「かわいい、と、思う、ぜ……?」

成幸 (こ、こんなんで本当にこのふたりが復活するのか!?)

105以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:53:56 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」 カァアアアア…… 「……そ、そう、ですか」 パッ

うるか 「………………」 カァアアアア…… 「え、えへへ……そ、そっか……」 パッ

成幸 (サイドテールを解いて顔に生気が戻った……。一体何だったんだ……?)

理珠 「や、やっぱり気づいてくれていたのですね、成幸さん……」

うるか 「気づいてたなら、もっと早く言ってくれれば良かったのに……」

成幸 「あ、いや、俺はまったく気づいてなかっもがっ」

文乃 「……お願いだから余計なこと言わないでね、成幸くん?」 ギラリ

成幸 (ヒッ……) コクコクコクコク

理珠 (普段の私が一番、ですか……)

うるか (変に成幸を意識するより、自然のあたしの方がいいってことかな……)

理珠 「ふふ……」

うるか 「えへへ……」

理珠 (嬉しいです、すごく……///)

うるか (成幸、ありがと……///)

106以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:54:40 ID:yfJ2n.4k
文乃 「……ふぅ」

文乃 (とりあえず一件落着かな。わたしの胃の安全は保たれたよ……)

成幸 「……悪いな、古橋。またお前に迷惑かけたみたいで」

文乃 「気にしなくていよ。わたしはきみのお師匠様だからね」

成幸 「ああ。いつもありがとうございます、古橋師匠」

文乃 「苦しゅうないぞ、弟子よ」

成幸 「ははは、なんだそりゃ……」

成幸 (……古橋の髪、本当に綺麗だな。一挙手一投足に反応して艶やかに動いてるよ)

成幸 (水希の髪だったら同じようにはいかないだろうなぁ……)

成幸 「古橋は得だよなぁ……」

文乃 「へ……? 得って何が?」

成幸 「古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ」

文乃 「……えっ」

カァアアア……

文乃 「そ、そんなことないと思うけど……」

107以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:55:11 ID:yfJ2n.4k
成幸 「……? どうかしたか?」

文乃 「な、何もない! 何もないよ……」

文乃 (……まったくもう! なんできみは、ニブチンのくせに……)

文乃 (ときどきこうやって、わけのわからないことを言ってくるんだろう……!)

文乃 「………………」

文乃 (ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん、違うからね……!)


―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』

―――― 『でも、サイドテールってのもなかなかいいな』

―――― 『古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ』


文乃 (断じて違うけど……でも、少しくらい、いいよね)

文乃 (男の子に、髪型の変化に気づいてもらって、褒めてもらえることを、嬉しいと思うくらい……)

文乃 (許して、くれるよね……?)

おわり

108以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:55:52 ID:yfJ2n.4k
………………幕間1 「ポニーテールでいい」

成幸 (ってことで、勉強会の後に古橋に色々な髪型のセットの仕方を教えてもらったぞ!)

成幸 「水希ー、かわいい髪型にしてやるからちょっとこいよー」

水希 「すぐ行くいま行くもういる」 シュババババッ

成幸 「よし、じゃあ始めるぞ……ふふふ、刮目しろ! これが古橋直伝のヘアセット術だ!」

スカッ

成幸 「……あ、あれ? 水希? なんで避けるんだ?」

水希 「……古橋さんに髪型のこと教えてもらったの?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「あ、ああ。そうだ。古橋に聞いたら快く教えてくれたんだ」

水希 「いい」

成幸 「えっ……?」

水希 「ポニーテールでいい」

成幸 「なんでだ!? 古橋に髪まで貸してもらって覚えたんだ。お前をかわいくする自信があるぞ」

水希 「私はもう一生ポニーテールでいい」

成幸 「なぜ!?」

109以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/11(日) 23:56:42 ID:yfJ2n.4k
………………幕間2  「人間として」

紗和子 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

紗和子 (わ、私の目の前にはいま、緒方理珠が返してくれたヘアゴムがある……!!)

紗和子 (それはいま、私の手の中にあって、私がどうしようが自由……!!)

紗和子 (そ、そう。つまり、これを嗅ごうが食べようが、私の自由ということ……!!)

紗和子 「………………」 ゴクリ

ハッ

紗和子 (め、目を覚ましなさい、関城紗和子! あなたそんなことしたら最低よ!?)

紗和子 (緒方理珠の友人として失格というか、そもそも人間としてアウトだわ!)

紗和子 「………………」

紗和子 (……いや、でも、食べるのはダメとして、少し嗅ぐくらいならいいんじゃないかしら?)

紗和子 (いやいやいや、嗅ぐのもダメでしょう!? でも緒方理珠の頭皮を感じるチャンスが今後訪れるとも思えないし……)

文乃 「……? 紗和子ちゃん、ヘアゴムとにらめっこしてどうしたんだろう?」

理珠 「わかりませんし興味もありませんが、なんとなくヘアゴムは新品を買って返して正解だった気がします」

おわり

110以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 00:10:39 ID:Ygvqo2fQ
乙です
怒涛の更新ありがたい……

111以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 00:44:29 ID:joxzYPf2
>>1です。
読んでくれた方、ありがとうございます。
締めをしたつもりになって忘れていました。

乙や感想、ありがとうございます。
とても嬉しいし励みになります。

ポニーテールは、個人的にすごく好きな髪型です。
きれいにシンメトリーに作るのは難しいですが、アレンジが容易で誤魔化しがききやすいので。
動きやすいしものを食べるときも邪魔になりません。大好きです。
ただ唯一の難点は、一度ほどかないと仰向けで寝られないところでしょうか。
なので、文乃さんがポニテにしてる姿も大好きです。

タイトルは良いのが思い浮かばなかったので人気投票結果発表の関城さんの欄から拝借しました。
関城さんの基本髪型はお団子なのになぜポニテ押しなのかはわたしの目下一番の疑問です。

自分語りが長くなりました。申し訳ないことです。

9巻が発売されるまでにこのスレも潰したいところですがそれはさすがに叶わなそうです。

また折を見て投下します。

112以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 07:06:02 ID:LqMSlx/6
乙です。
面白いけど最近のは文乃の描写が多くてメインを食ってしまってる気がする。

113以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 12:09:39 ID:T6NmL7eM
文系かわいいからね仕方ないね

114以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 12:38:54 ID:NJ9jge1o
>>112
食ってしまってる(意味深

115以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:44:14 ID:joxzYPf2
>>1です。
>>112さんと>>114さんに着想を得たSSを投下します。
先に断っておきますが、アホな上にキャラ崩壊もしています。
読まない方がいいかもしれません。



【ぼく勉】文乃 「相談女」

116以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:45:40 ID:joxzYPf2
書き忘れました。
明確な同性愛的表現があります。
性行為を連想させるような言い回しや表現もあります。
閲覧注意です。

117以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:46:20 ID:joxzYPf2
………………ラーメンうめえん

うるか 「でね! その男の子ったらたらひどいんだよー!」 ズルズルズル……

うるか 「友達はもうこれでもかってくらいがんばってるのにー!」

うるか 「成ゆ――じゃなくて、その男の子は全然気づかないのー!」

文乃 「うんうん。それはちょっと、さすがにねぇ……」 ズルズルズル……

文乃 (今日も今日とてうるかちゃんの愚痴を聞いてるけれど)

文乃 (いつも通り友達の話の体だけど、もうボロが出てるってレベルじゃないよ……)

文乃 (っていうかわたしダイエット中なんだけどな……)

うるか 「聞いてる、文乃っち!?」

文乃 「うんうん。ちゃんと聞いてるよ」

文乃 「……あっ、店員さん、替え玉おかわりお願いします」

文乃 「あと追加でチャーシュー盛りとチャーハンも」

文乃 (困ったなぁ……。また太っちゃうよ……)

118以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:47:02 ID:joxzYPf2
うるか 「……大体、その男の子は鈍すぎるんだよ」

文乃 「うんうん」

うるか 「何であんなに色々してるのに気づかないのかなぁ……」

うるか 「でも、自分から告白して、いまの関係性を壊すのはいやだし……」

うるか 「成幸の――じゃなくて、その男の子の勉強の邪魔になるのはもっといやだし……」

うるか 「ねえ、文乃っち! あたし……の友達はどうしたらいいのかな!?」

文乃 「う、うーん……。どうしたらいいかなぁ……」

うるか 「……成幸がもっと鈍くなかったらな」

文乃 「そうだねぇ。成幸く――じゃなくて、その男の子がもう少し鋭かったらねぇ……」

文乃 (なんでわたしがうるかちゃんのうっかりをフォローしてるんだろう……)

うるか 「……こんな苦しくなるなら、もっと……」

うるか 「べつの人を好きになればよかった……」

文乃 (……ふぁぁああ……) キュンキュン (うるかちゃん、いちいち台詞が乙女すぎるよ。かわいいなぁ……)

119以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:47:38 ID:joxzYPf2
文乃 「そうだね。もしわたしがその男の子だったら……」

ニコッ

文乃 「うるかちゃんの友達にそんな辛い思いはさせないんだけどね」

うるか 「えっ……」 キュン

文乃 「……?」

うるか 「あっ……」 カァアア…… 「そ、そうだね……」

文乃 (おや……?)

うるか 「相手が、文乃っちだったら、きっと……」

ドキドキドキドキ……

うるか 「……あたしのこと、もっと分かってくれるよね」

文乃 (お、おやおや……?)

うるか 「そっか……。文乃っちだったら……」

文乃 (な、なんか雲行きがおかしいな……?)

ギュッ

文乃 「えっ……?」 アセアセ 「な、なんでわたしの手を握るのかな、うるかちゃん?」

120以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:48:20 ID:joxzYPf2
うるか 「……文乃っち」

文乃 「は、はい!」

うるか 「文乃っちって、実はあたしの憧れる女の子そのものなんだよね」

文乃 「えっ……えっ?」

うるか 「……文乃っちだったら、成幸と違って、あたしのことわかってくれるもんね」

文乃 「えっえっえっ」

うるか 「ふ、文乃っち……ううん。文乃」

文乃 「ふぇっ……」

うるか 「この後、時間ある? うちで一緒に勉強していかない?」

文乃 「……へ?」

うるか 「安心して。今日、親、帰ってこないから……」

文乃 「ち、ちょっと? うるかちゃん?」

うるか 「……えへへ。行こ、文乃っ」

121以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:48:57 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃 「………………」

文乃 (なんてこった、だよ……)

文乃 (朝起きたら、知らない天井が目に入った。そしてすぐ隣に、素っ裸のうるかちゃんが寝転んでいた)

文乃 (そしていま、目覚めたうるかちゃんがわたしの身体にすり寄ってきている……)

うるか 「えへへ、文乃……」

スリスリ

うるか 「愛してるよ。えへへっ」

文乃 「………………」

文乃 (……ま、うるかちゃんかわいいし、うるかちゃんも幸せそうだし)

文乃 「わたしも愛してるよ、うるかちゃん……っ」

文乃 (これはこれで、いっか)


うるか編おわり

122以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:49:27 ID:joxzYPf2
………………緒方家 理珠の部屋

理珠 「……ふぅ。だいぶ進みましたね。少し休憩にしましょうか」

文乃 「そうだね。最近はわたしたちふたりだけでも勉強がしっかり進むようになってきたね」

文乃 「これも何もかも、成幸くんのおかげだね」

理珠 「そうですね。成幸さんのおかげで、基礎が身についてきたからだと思います」

文乃 「でも、今日はごめんね。急に泊まりで勉強したいなんて言い出して……」

理珠 「構いません。家に帰りたくないのでしょう?」

文乃 「……うん」 (今日はお父さんが一日中家にいるから……)

理珠 「……そんな顔しないでください。以前のパジャマパーティみたいなものですよ」

文乃 「ふふ、あのときは楽しかったね」

文乃 「今回は急だったから、うるかちゃんも紗和子ちゃんも来られなくて残念だけど……」

理珠 「また今度、ふたりもまじえてやりましょう」

文乃 「そうだね。ふふ、楽しみになってきちゃった」

理珠 「……さて、では休憩ついでにお茶でもいれてきます」

文乃 「あっ、わたしも行くよ」

123以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:50:04 ID:joxzYPf2
………………台所

理珠 「緑茶でいいですか?」

文乃 「うん。カフェインで眠気もすっきりだね」

理珠 「では、緑茶に最適な80度程度のお湯を、っと……」

コポポポポ……

文乃 (手慣れてるなぁ……。さすがはうどん屋の娘だよ)

文乃 (お茶をいれるのも手間取っちゃうわたしとは大違いだなぁ……)

ボイン

文乃 (それにしても、どこがとは言わないけど、パジャマだとますます強調されるなぁ……)

文乃 (お茶をいれるとき腋を締めてるから、余計に強調されて今にもこぼれそうだよ)

文乃 (……って、わたしは何で成幸くんみたいなこと考えてるんだろ)

理珠 「……? お茶、いれおわりましたけど、文乃?」

ジトーーッ

理珠 「何か、邪な念を感じたのですが……」

文乃 「へっ!? き、気のせいだよ!?」

124以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:50:36 ID:joxzYPf2
親父さん 「おっ、文乃ちゃん。いらっしゃい」

文乃 「りっちゃんのお父さん。お邪魔してます」 ペコリ

親父さん 「今日泊まってくんだろ? ゆっくりしていってくれな」

キョロキョロ

親父さん 「と、ところで、今日はあのヤロウ――センセイは来ないのかい?」

理珠 「今日は呼んでいません。前回だって呼んだのは関城さんですし」

理珠 「では、私たちは部屋に戻りますが……」 ジロッ 「くれぐれも覗いたりしないでくださいね」

親父さん 「なっ、何を言ってんだ理珠たま」 ギクッ 「そんなことするわけないだろう?」

理珠 「どうだか、です。では文乃、行きましょう」

文乃 「あっ、うん。では、今晩お世話になります、お父さん」

親父さん 「おう。気兼ねせず、自分の家みたいに過ごしてくれていいからなー」

125以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:57:01 ID:joxzYPf2
………………理珠の部屋

文乃 「ふふ……」

理珠 「……? 急に笑い出して、どうしました?」

文乃 「いや、お父さん、良い人だなと思ってさ」

理珠 「どこがですか? 娘の電話の着信に勝手に出たり、急にハグしてきたりするような父ですよ?」

理珠 「成幸さんにも暴力を振るったり脅したりしますし……」

文乃 「それだけりっちゃんのことが大事なんだよ」

理珠 「……べつに、そんなの嬉しくありません」 プイッ

文乃 「……わたしはうらやましいよ」

文乃 「うちのお父さんに比べたら、はるかに優しくて温かい人だから」

理珠 「あっ……」 シュン 「ご、ごめんなさい……」

文乃 「い、いやいや。こちらこそ、急に変なこと言ってごめんね!」

文乃 「りっちゃんの美味しいお茶を飲んで頭も冴えたし、そろそろ勉強を再開しよっか」

理珠 「そ、そうですね。では、あともうひと踏ん張り、がんばるとしましょう」

126以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:57:44 ID:joxzYPf2
………………

カリカリカリ……

文乃 「………………」

文乃 (……りっちゃんに悪いことしちゃったな)

文乃 (せっかく泊めてくれてるのに、気まずくさせるようなこと言っちゃった……)

理珠 「………………」

文乃 (……それにしても、改めて見ると、りっちゃんってとんでもないくらいの美少女だよね)

文乃 (背も小さくてかわいいし、その割には顔もしっかり小さくて子どもっぽくはないし……)

文乃 (……何より、おっぱいめちゃくちゃ大きいし)

ストーーーン

文乃 (ほんと、わたしとは大違い。なんでこんなに差があるんだろ……)

ズーン

理珠 「………………」 チラッ (……文乃、落ち込んでます)

理珠 (私が父を卑下したせいで、嫌な気持ちにさせてしまいました……)

理珠 (せっかく遊びに来てくれたのに、申し訳ないです……)

127以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:58:36 ID:joxzYPf2
理珠 (文乃に元気を出してもらうために、私が一肌脱ぎましょう)

理珠 (あまり自分のことを笑いのネタにするのは気が進みませんが……)

理珠 (文乃に元気を出してもらうためです。がんばります!)

理珠 「……文乃」

文乃 「……? どうかした、りっちゃん?」

理珠 「今日は急に泊まりに来たから、パジャマもないでしょう?」

理珠 「今日は私のパジャマを貸しますね」

スッ

理珠 「……って、私のパジャマは文乃には着られませんね。小さすぎて!」

バーン

理珠 (ど、どうですか。私の一世一代の自虐ネタは!!)

文乃 「………………」

イラッ

文乃 (自分の胸の小ささについて思い悩んでいたら巨乳の友人に煽られたわけだけど)

文乃 (えっ、待って? ひょっとして喧嘩売ってる? りっちゃん?) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

128以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:59:15 ID:joxzYPf2
文乃 「……りっちゃん。いい度胸だな! だよ……」

ムニッ

理珠 「えっ……? な、なぜ涙目で私の頬をつねるのですか、文乃?」

理珠 「いまのは笑うところでは……?」

文乃 「笑えると思う!?」 ムニムニッ

理珠 「い、いはいれふ! ふいの!」

文乃 「そっ、そもそもね! こんなに大きい方がおかしいんだよ!」

ムギュッ

理珠 「!? な、なぜ胸を鷲づかみにするのですか!?」

文乃 「このっ……この乳が……この乳が……!!」

理珠 「父!? お父さんのことで私の胸に当たらないでくれませんか!?」

理珠 (なぜ自虐ネタまで披露した私が責められているのですか……!) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「こっ、この……! どうせ文乃には小さいことによる苦悩なんてわからないでしょうね!!」

文乃 「それで小さいつもりなの!? とことん喧嘩を売るつもりだねりっちゃん!?」

文乃 「いいよ! その喧嘩勝ってやる!! だよ!!」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:59:50 ID:joxzYPf2
文乃 「だいたい! りっちゃんはずるいんだよ!!」

文乃 「そんなにかわいくて!! 男の子に好かれる低身長で!!」

文乃 「しかもおっぱいも大きい!? なんだその魅力的すぎる身体は!」

文乃 「その上飲食店の娘だから家事も大丈夫!? この、いいお嫁さんになるために生まれてきたような娘が! だよ!」

理珠 「い、言わせておけば! 文乃こそ、そんなに美人に生まれて何が不満なんですか!!」

理珠 「私なんて、低身長だから似合う服も少ないし、足が短いのだってコンプレックスですし!!」

理珠 「文乃は胸にこだわりすぎです!! それだけスラリとスタイル良くて何が不満なんですか!!」

理珠 「文乃は人の気持ちに敏感で気遣いができます!! いいお嫁さんになれるのはそっちでしょう!!」

文乃 「なっ……こ、こっちはまだまだ言えるよ!!」

理珠 「こっちだって!!」

文乃 「りっちゃんの分からず屋!! めちゃくちゃかわいくてズルいよ!!」

理珠 「文乃こそ分からず屋です!! それだけ美人で何が不満なのですか!!」

文乃 「だいたい、りっちゃんはねぇ……」

理珠 「文乃はいつもそうです!!」

………………

130以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:00:22 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃 「………………」 (……えっ、待って。ねえ待って)

文乃 (わたし、昨日の記憶があんまりないよ?)

文乃 (あの後、少し口論になって、お互いの胸や身体をもみ合って……)

文乃 (なんか、いつの間にか変な雰囲気になって、そして……)

理珠 「……ふっ、文乃……お、おはようございます……///」

理珠 「昨夜は、その……お世話になりました……」

理珠 「こっ……これからも……」 ギュッ 「よろしくお願いしますね……///」

文乃 (目覚めたら隣でりっちゃんが寝ていて、なぜだかわたしに抱きついてくる)

文乃 (……まぁ、いいか) フゥ (りっちゃんが幸せそうだし、何より……)

ムニムニッ

理珠 「あっ……/// ふ、文乃……」

文乃 (この胸をいつでも揉めると思えば)

理珠編おわり

131以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:01:30 ID:joxzYPf2
………………とあるマンション前

文乃 「………………」

文乃 「……はぁ」

文乃 (お父さんが家にいる日だから、お父さんが寝るまで外にいようと思ったけど……)

ザァアアアアアアアアアアア……

文乃 (天気予報では雨が降るなんて言ってなかったのに……)

文乃 (傘も持ってないし、やむまでこのマンションのエントランスで雨宿りさせてもらおう……)

文乃 「……くしっ」

文乃 (うー、寒いなぁ……。少し雨に打たれちゃったし……)

文乃 (風邪、引かないといいなぁ……)

文乃 (あっ……ひとが来た。このマンションの人かな。邪魔にならないようにしないと……)

?? 「……? あら」

文乃 「……? あっ……。き、桐須先生!?」

真冬 「古橋さん、こんなところでどうしたのかしら?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

132以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:02:11 ID:joxzYPf2
文乃 「うぅ……」 (相変わらず怒ってるような顔で怖いなぁ……)

文乃 「じ、実は、雨に降られちゃって……。傘もないし、ちょっと雨宿りしてるんです……」

文乃 「へくしっ……」

真冬 「なっ……」

真冬 「あなた濡れているじゃない。雨に打たれたのね」

文乃 「そ、そうですけど……」

真冬 「バカ。もう冬も間近なのに、そんな格好で濡れたまま外にいたら間違いなく風邪を引くわよ」

真冬 「傘を貸してあげるから、すぐに家に帰りなさい」

文乃 「い、いや、それは……」

真冬 「……?」

文乃 「………………」 プイッ

文乃 (桐須先生は怖いから、言うことを聞きたいけど……)

文乃 (でも、それより、お父さんがいる家に帰るのは……)

文乃 「……いや、です」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:02:44 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

ハァ

真冬 「……仕方ないわね。ほら、来なさい」

文乃 「えっ……?」

真冬 「私はこのマンションに住んでいるの。とにかく冷えた身体を温めなさい」

文乃 「えっ……? そ、それって……」

真冬 「……じれったいわね。家に来なさいということよ」

ガシッ

文乃 「あっ……で、でも、先生の家にお邪魔するなんて、さすがに悪いというか……」

真冬 「受験生をそのまま放置できないでしょう。風邪でも引かれたら迷惑だわ」

文乃 「うっ……」 (とても厳しくて怖い言葉……でも……)

文乃 (桐須先生の手、冷たくて……)

文乃 (少し、触れた感じが、お母さんみた――)

ハッ

文乃 (わ、わたしは何を考えてるのかな!?)

134以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:03:30 ID:joxzYPf2
………………真冬の家

文乃 「うわぁ……」

ピカピカピカ……

文乃 「桐須先生の家、きれいですね。先生の家、って感じです」

真冬 「当然よ。大人たるもの、身の回りのことをまず完ぺきにこなさなければならないわ」

真冬 (昨日唯我くんが掃除しに来てくれて助かったわ……)

真冬 「ほら、わたしの着替えとタオルを貸してあげるから、シャワーを浴びてきなさい」

文乃 「……すみません」

真冬 「謝るくらいなら家に帰るべきだと思うけれど」

文乃 「うっ……」

真冬 「………………」 ハァ 「……風邪を引く前にシャワーを浴びてきなさい」

文乃 「……はい」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:04:22 ID:joxzYPf2
………………風呂場

文乃 「……うわぁ、すごい」

文乃 (お風呂場の壁や床はおろか、シャワーヘッドまでピカピカだよ……)

文乃 (本当にきれい好きなんだなぁ、桐須先生って……)

文乃 (やっぱり、仕事から家事まで、何もかも完ぺきな人なんだなぁ……)

文乃 「………………」

文乃 「……すごいなぁ」

文乃 (あんなに美人で授業も上手で仕事もバリバリこなしてるのに、家事まで完ぺきなんて……)

文乃 (……わたしとまるで正反対だよ)

文乃 「……はぁ。やめよう」

文乃 (考えたって、気が滅入るだけだよ)

136以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:05:17 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「シャワーありがとうございました、先生」

真冬 「ええ。制服はエアコンの風を当てているから、すぐに乾くと思うわ」

文乃 「ありがとうございます。何から何まで……」

真冬 「……気にしなくていいわ。教師として当然のことをしているまでのことよ」

真冬 「温かいお茶もいれておいたわ。こっちに来て座って飲みなさい」

文乃 「す、すみません。いただきます……」

真冬 「………………」 カタカタカタ……

文乃 「……え、えっと……家でもお仕事ですか? 大変ですね」

真冬 「大変と思ったことはないわ。仕事だから当然のことよ」

文乃 「そ、そうですか……」

文乃 (やっぱり、冷たくて怖い人……)

文乃 (……でも、わたしをムリに家に帰すわけじゃなくて、家に招き入れてくれた)

文乃 (『教育係』 をしてもらっていたときは、気づかなかった……)

文乃 (先生はひょっとして、優しい人なのかな……?)

137以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:05:58 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

真冬 「……喋りたくなければ喋らなくていいのだけど」

文乃 「は、はい?」

真冬 「どうして家に帰りたくないのか、教えてもらってもいいかしら?」

文乃 「………………」

文乃 「……お父さんに、会いたくなくて」

文乃 「眠る時間まで、外にいたかったんです……」

真冬 「……なるほど。わかったわ」

スッ

文乃 「へっ……? ノートとペンを持って、どうしたんですか?」

真冬 「聞いてしまった以上、見過ごせないわ。どうしてお父さんに会いたくないのか、言いなさい」

文乃 「えっ……そ、それは……ちょっと、言いたくない、です……」

真冬 「ダメよ。あなたは “お父さんに会いたくない” と言ってしまった」

真冬 「子どものSOSの言葉を受けてしまった。教師として、それをそのまま見過ごすことはできないわ」

真冬 「あなたが喋りたくなくても、私は絶対に聞くわ。だから、喋りなさい」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:07:17 ID:joxzYPf2
文乃 「せ、先生……?」

真冬 「………………」 ジッ

文乃 (厳しい言葉。義務感から来るような、堅苦しい、言葉……)

文乃 (でも、どうしてだろう。桐須先生のその言葉から、とてつもない温かみを感じる……)

文乃 「き、聞いてくれるんです、か……?」

真冬 「……ええ。もちろんよ。私はあなたの先生だもの」

真冬 「お願い。話して。子どもの言葉を、私は絶対に投げ出したりしないから」

真冬 「もしあなたがSOSを訴えているなら、教師として……」

真冬 「……いえ。大人として、それを見過ごすことは絶対にできないのよ

文乃 「………………」

グスッ

文乃 「……わたし……わたし……っ」

文乃 「……お父さんのことが、怖くて……」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:08:02 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「……すみません、先生。お話聞いてもらっちゃって」

真冬 「気にしないで。これも仕事よ」

真冬 (……話を聞く限り、ネグレクトと呼べるか呼べないかギリギリのラインね)

真冬 (小学生当時から今の生活を続けていたとしたら、間違いなくネグレクトだけれど……)

真冬 (高校生段階の今、明確にネグレクトと言うことはできないでしょうね……)

真冬 (直接的な心身に対する暴力もいまはないようだし)

真冬 (……彼女にとっては本当に心の底からいやなことなのだろうけど、)

真冬 (いまの生活を続けてもらうしかないわね……)

文乃 「………………」

文乃 (……仕事。まぁ、そうだよね)

文乃 (わたしなんて、先生にとってはたくさんの生徒のうちのひとりだもんね……)

グスッ

文乃 (あっ……ど、どうしてまた、涙が出てくるんだろ……)

140以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:08:32 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

ギュッ

真冬 「……つらかったのね」

文乃 「あっ……」 (やっぱり、そうだ……)

文乃 (先生の手、少しひんやりして、でも心地良く包み込んでくれる……)

文乃 (まるで、お母さんの手みたい……)

真冬 「……お父さんが寝るまで家にいてもらって構わないわ」

真冬 「ただし、高校生ひとりで帰れるような時間でないでしょうから、私が送っていくわ」

文乃 「……すみません。ありがとうございます」

真冬 「……ふふ」

文乃 「……? どうしたんですか?」

真冬 「ごめんなさい。『教育係』 をしていたときは、あなたの泣く姿なんて想像もつかなかったから、少しおかしくて」

文乃 「なっ……」

プイッ

文乃 「な、泣いてなんかないです! 少し涙ぐんじゃっただけで……」

141以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:09:25 ID:joxzYPf2
真冬 (さっきまでわぁわぁ泣いていたくせに、まったく、気丈な子ね……)

真冬 「部屋が暖まってきて、少し暑くなってきたわね」

真冬 「涙で水分も減ってしまったようだし、ジュースでも持ってくるわ」

文乃 「あっ、お構いなく……」 ハッ 「……じゃなくて! 泣いてなんかないですってば!」

文乃 (……まったくもう)

文乃 (でも、先生の手……)

文乃 (本当にお母さんみたいだった……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (わ、わたし、何考えてるんだろ……)

真冬 「……はい、どうぞ」

コトッ

文乃 「あ、ありがとうございます。いただきます」 ゴクリ 「……?」

文乃 (このジュース、何か変な味がするような……?)

文乃 (あ、あれ? なんか心がふわふわする? 周りが回って見える……?)

真冬 (ノドが乾いたわね。私も一杯いただこうかしら) ゴクッ

142以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:10:21 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

文乃 「……? 先生?」

真冬 「……古橋さん」

文乃 「は、はい!」

真冬 「……ぐすっ……えぐっ……」

文乃 「……えっ?」

真冬 「うわぁああああああああああああああああん!!!!」

ギュッ

文乃 (何事!? 桐須先生が急に泣き出して抱きついてきたよ!?)

文乃 (あっ……でも、なんか変な気分。悪い気はしないというか……)

文乃 (なんか、身体が熱いなぁ……)

文乃 「せ、先生? 一体どうしたんですか?」

真冬 「いままでつらかったわね! 大変だったわね……」

真冬 「あなたの苦悩を思うと、涙が止まらないわ……」

文乃 「先生……」

143以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:11:12 ID:joxzYPf2
真冬 「古橋さん、あなたは偉いわね……」

ナデナデナデナデナデナデ

文乃 「………………」 ポワポワ

文乃 (あっ……桐須先生がわたしの頭を撫でるなんて……)

真冬 「いままで、大変なことに耐えてがんばってきたのね……」

真冬 「理系の勉強だって一生懸命がんばってるわね……」

真冬 「偉いわ。本当に偉いわよ……」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ

文乃 「せ、先生……」 (わたしたちのこと、本心では認めてくれてたんだ……)

文乃 (お母さんみたいな手が、わたしのこと、撫でてくれてるんだ……)

キュン

文乃 「せ、先生……」

真冬 「なぁに? 古橋さん」 ニコッ

144以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:11:48 ID:joxzYPf2
文乃 「わ、わたしも、抱きついてもいいですか……?」

真冬 「ええ。もちろんよ。いらっしゃい?」

文乃 「……えへへ。桐須先生……っ」

ギュッ

真冬 「ふふ。可愛い子ね、古橋さん。良い子よ。偉いわ」

文乃 「せっ……先生!」

ムギュッ

真冬 「甘えんぼさんね。ふふふ、偉いわ。いいこいいこ」

文乃 「えへへー、もっと撫でて?」

真冬 「いいわよ。ほら」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ

文乃 (ふぁ……なんか、車酔いしたときみたいに、視界がグルグル回って……)

文乃 (なんか、すごく幸せな気分……?)

文乃 (ああ、それにしても……) ゴクリ (桐須先生って、かわいいよね……)

145以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:12:18 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

真冬 「………………」

サァアアアアアアアア……

真冬 (青ざめるどころの騒ぎじゃないわ。頭から血が一斉に抜け落ちたかと思ったわ)

文乃 「先生っ。おはようございますっ!」

文乃 「ねえ、先生。朝も撫でてください。お願いします」

真冬 「え、ええ……」 ナデナデ

文乃 「きゃーっ。嬉しいです、先生。えへへ、大好きっ」 ギュッ

真冬 (目覚めたら教え子の少女が裸で隣に寝ていた。しかも目をハートマークにして抱きついてくる)

真冬 (ああ、そうね。これはつまり……)

真冬 「……減俸、停職……いや、懲戒免職……と、いうよりは……」

ガタガタガタガタ

真冬 「……逮捕、かしら」

真冬編おわり

146以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:13:02 ID:joxzYPf2
………………古橋家 玄関前

あすみ 「………………」

あすみ (……まさかまた仕事でここに来ることになるとはな)

あすみ (ったく、古橋の奴。もう一回家事代行呼ぶくらいならあのときやらせろっての)

あすみ (今回も冷やかしだったら許さねーからな……)

ガチャッ

文乃 「……お待たせしました。小美浪先輩」 キョロキョロ

あすみ 「……? 心配しなくても、電話で言われたとおり今日はアタシひとりだよ」

文乃 「そ、そうですか……」 ホッ 「よかった……」

文乃 「さ、どうぞどうぞ。もうおなかペコペコなんですよ」

あすみ 「おう。じゃ、お邪魔しまーす、っと……!?」

あすみ 「ごはっ……!?」 (な、なんだ、この尋常じゃない異臭は……!?)

あすみ (この世のものとは思えないこの臭いは……台所からか!?)

文乃 「……お料理しようと思ったら少し失敗しちゃって……」

文乃 「すみませんが、よろしくお願いします、先輩」

147以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:13:36 ID:joxzYPf2
………………台所

あすみ 「……おい、古橋」

文乃 「はい」

あすみ 「これのどこが、“少し失敗しちゃって” なんだ?」

あすみ (……なんだこの大惨事は)

あすみ (何で魚をまるごと鍋にぶち込んでるんだ?)

あすみ (何で野菜を切らずにそのまま鍋に放り込んでるんだ?)

ゴトゴトゴト……!!!!

あすみ (何で炊飯器から何かが暴れるような音がするんだ!?)

あすみ 「お前この惨状は一体なんだ!?」

文乃 「……うぅ、面目ないです」

あすみ 「これの後始末を人に押しつけられるお前の胆力を恥じた方がいいと思うぞ……」

ハァ

あすみ 「……仕方ねぇ。仕事だしな」

あすみ 「ここは責任持ってアタシがきれいにするから、少し向こうで待ってろ」

148以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:14:16 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「……はぁ」

文乃 (結局あれから、先輩は凄まじい速度で台所をきれいにして、)

文乃 (家中の掃除を終わらせ、晩ご飯の準備まで終わらせてしまった……)

あすみ 「いやー、悪いな。アタシまでごちそうになっちゃって」

文乃 「気にしないでください。作ったの小美浪先輩じゃないですか」

あすみ 「にしし、まぁそれはその通りだけどさ」

あすみ 「にしても……」

ゴォォオオオオオ!!!!

あすみ 「すげー嵐だな。こりゃ当分やみそうにないな……」

文乃 「天気予報だと、明け方まで続くそうですよ?」

あすみ 「しまったな。嵐が来るってわかってりゃ、スクーターじゃなくて徒歩で来たんだけどな……」

文乃 「すみません、嵐が来るような日に家事代行頼んでしまって……」

あすみ 「あ? いやいや、そんなのお前が気にするようなことじゃねーよ」

あすみ 「仕事受けたのはこっちだからな。ま、なんとか帰るさ」

149以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:15:37 ID:joxzYPf2
文乃 「でも、危ないですよ……」

文乃 「もし先輩さえよければ、今日はうちに泊まっていきませんか?」

あすみ 「えっ……? いや、それは……ありがたいっちゃありがたいが……」

あすみ 「親御さんだっていらっしゃるだろうし、迷惑だろ」

文乃 「大丈夫です。うちは父しかいませんし、その父も今日は帰ってきませんから」

文乃 「寝間着はわたしのを貸しますし……だから先輩、どうぞ泊まっていってください」

あすみ 「あー……」

あすみ 「……じゃあ、悪い。正直言ってすごく助かるし、お言葉に甘えさせてもらってもいいか?」

文乃 「もちろんです!」

文乃 「ごはん食べ終わったら、一緒に勉強しましょう?」

あすみ 「……お前、まさか、アタシに勉強教わるのを期待して泊まってけなんて言ったんじゃないだろうな?」

文乃 「えっ? い、いやいや、そんなこと……まぁ、少しはありますけど……」

あすみ 「……はぁ。ったく、仕方ねーな。ま、いまのお前はアタシの雇い主だからな」

あすみ 「家事代行ついでに、後輩代わりに臨時の 『教育係』 やってやるよ」

150以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:16:41 ID:joxzYPf2
………………

あすみ 「二次不等式は、早い話が二次方程式の応用だ」

あすみ 「単純に考えろ。イコールで結ばれていた両辺が、大なりと小なりで結ばれてるだけだ」

文乃 「ふむふむ……」

あすみ 「イコールがついてりゃ以上か以下、ついてなけりゃ “より大きい" か “より小さい" かだ」

あすみ 「ふたつの式で変数に対しての関係性が暴かれりゃ、あとは数直線で考えれば一目瞭然だろ?」

文乃 「なるほど! 今まで、数学って何が何でも数式で解かなきゃって思ってましたけど、」

文乃 「図を使った方が分かりやすければ図を使ってもいいんですね!」

あすみ 「共通一次はマークシートだ。最終的に答えさえ出りゃいいからな」

文乃 「よーし! 今の感覚を忘れないうちに練習問題解きまくるぞー!」

あすみ 「おう、がんばれ」

あすみ (……ったく。分かった途端目の色変えやがって)

あすみ (なんか、勉強をしはじめた小学生みたいだな、こいつ)

あすみ (……本当に、苦手なことでも、あきらめずがんばろうとしてるんだな)

151以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:17:37 ID:joxzYPf2
………………

あすみ 「風呂、貸してくれてありがとな。温まったよ」

あすみ 「着替えも、助かる。悪いな。雇われた身なのに、何から何まで……」

あすみ 「さすがに古橋のパジャマだから、あたしにはぶかぶかだけど……」

文乃 「いえいえ。気にしないでください、先輩。わたしも勉強を教えてもらって助かりましたから」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「それより、ぶかぶかって、わたしが太ってるって意味ですか?」

あすみ 「太ってる太ってない以前にそもそも体格がアタシとお前じゃ全然違うだろ……」

あすみ 「……お前ってさ、そんだけスラリとしてスタイルいい身体に対して、何が不満なわけ?」

文乃 「不満だらけですよ。すぐに体重増えるし、そのくせ……」

文乃 (むねはこれっぽっちも大きくならないし!!)

あすみ 「ちんちくりんのアタシよりよっぽどいいと思うけどな」

あすみ 「背が低いと大変なんだぞ? この世は身長150cm以下の人間に対して厳しいからな」

あすみ 「図書館なんて、アタシが背伸びしたって届かない位置に本がたくさん並んでるんだぜ? 嫌にもなるよ」

152以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 23:18:22 ID:joxzYPf2
文乃 「……ないものねだりですよ。わたしだって、背が低い方がいいとは思いませんけど、」

文乃 「わたしにだって、わたしなりの悩みがありますよ」

あすみ 「……ま、そりゃそうか」

あすみ 「でも、後輩はお前みたいな正統派美少女がタイプなんじゃないか?」

文乃 「え……?」

カァアアアア……

文乃 「い、いきなり何を言うんですか、先輩……」

あすみ 「顔真っ赤にしちまって、かわいーなー、古橋?」 ニヤニヤ

文乃 「ま、前も言いましたけどね、わたしはべつに、成幸くんのことなんて、なんとも思ってないですから!」

文乃 「ヘンなこと言うのも大概にしてください!」

あすみ 「へー。なんとも思ってない、ねぇ?」

あすみ 「なんとも思ってない男子のことを、名前にくん付けで呼ぶのかー。すごいなー。恐れ入ったわー」

文乃 「そ、それは……だから、ただの、姉弟ごっこで……」

あすみ 「ほぅ。じゃあ、姉弟ごっこをまだ続けてるのか?」

文乃 「そうではないですけど……」




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