したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

89以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:29:21 ID:AFlK0XbA
理珠 「でも……」


―――― 『なら明日の休みにでも私が選んであげましょうか』

―――― 『この親友の関城紗和子が!!』


理珠 「……でも、ときどき、頼れる人なんです。だから、大丈夫ですよ。きっと」

うるか 「リズりん……」

うるか 「リズりんは、さわちんのことが大好きなんだね……!」

理珠 「は……?」 ジロッ 「何をどうしたら、そういう話になるのですか、うるかさん」

うるか 「またまたぁ。照れちゃって〜。このこの〜」 ウリウリ

理珠 「や、やめてください。暑苦しいです」

成幸 (化学部の実験ショー、かぁ)

成幸 (子ども向けって言ってたけど、当日、緒方を連れて行ってやったら、)

成幸 (関城のやつ、喜ぶかな)

成幸 「……ん、俺もそろそろクラスに戻らないとだ。うどん、ごちそうさま。緒方」

90以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:30:13 ID:AFlK0XbA
………………少し後 資材室

成幸 (クラスの連中に頼まれてベニヤの補充に来たものの、どれくらい持って行くかな)

成幸 (うちのお化け屋敷もいよいよ本格的になってきたからな。材料はできるだけ多い方がいいかな)

成幸 (……ん、そういやペンキもなくなりそうだったな。ついでに少し持って行くか)

成幸 「よいしょ……っと」

ズシッ

成幸 (お、重い……。最短経路で教室まで戻ろう……) ヨロヨロ……

成幸 (しまったな。小林か大森にでも一緒に来てもらうんだった)


  「実験準備班、実験用具のセットは、最低ふたつ以上予備を用意してね」


成幸 「ん……? この声は……関城?」

関城 「装飾班、装飾は子どもたちを意識して、かわいらしい感じでよろしくね」

成幸 (あ、そうか。ここ、化学室か)

部員1 「部長、気合い入ってますね」

部員2 「そりゃ、文化祭は化学部の見せ場のひとつだからな」

91以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:31:28 ID:AFlK0XbA
部員2 「知ってるか? 部長、毎日ひとりで遅くまで作業をしてるんだよ」

部員1 「へ? そうなんですか? 言ってくれれば手伝うのに……」

部員2 「人に頼るのが苦手な人だからな……。だから、今できるだけ作業を進めておかないと、だな」

部員1 「そうですね! よーし、がんばって準備するぞー!」

成幸 「……へぇ」 (関城の奴、部員から慕われてるんだな)

成幸 (……っと、いつまでも化学部を眺めてるわけにはいかないな)

成幸 (俺も早くクラスに戻らないと)

ツルッ

成幸 「ん……!?」 (水!? あ、やばっ……――)

――――ガシャーン!!!

関城 「……? 唯我成幸?」

92以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:33:07 ID:AFlK0XbA
関城 「ちょっとあなた、大丈夫? けがはない?」

成幸 「ん、ああ、騒がしくしてすまん。大丈夫だ。廊下が濡れててさ……」

成幸 「ベニヤとペンキは無事か。よかった」

関城 「廊下が濡れてた……?」

ハッ

関城 「ご、ごめんなさい、唯我成幸。その水、たぶん化学部の誰かがこぼしたやつだわ……」

関城 「準備前に大掃除をしたときに、廊下のから拭きが甘かったんだわ」

関城 「本当にけがはない?」

ズイッ

成幸 「わっ……」 (ち、近い……!)

成幸 「大丈夫だよ。俺も物を持ちすぎてて前方不注意だったから、気にするなよ」

関城 「………………」

93以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:34:14 ID:AFlK0XbA
関城 「化学部、注目!」

関城 「……誰か、廊下をぞうきんで拭き直しておいて!」

関城 「それから、それぞれの班ごとに、しっかりと準備を進めておいて!」

関城 「私はちょっとこの場を離れるわ。すぐ戻るから、各自できる作業を進めておくこと。よろしくね」

成幸 「関城?」

関城 「この板とペンキを教室まで運ぶのね? 手伝うわ」

成幸 「へ……? いいのか? 化学部も忙しいだろ?」

関城 「こっちの落ち度で転ばせたのだもの。少しくらい、罪滅ぼしをさせてちょうだい」

成幸 「ん……。なら、お願いしようかな。ありがとな、関城」

関城 「べつに、お礼を言われるようなことじゃないわよ」

関城 「さ、行きましょう。唯我成幸」

94以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:35:02 ID:AFlK0XbA
………………

部員1 (せ、関城部長が、化学部以外の男子と!?)

部員2 (普通に話してる! しかもすごく仲が良さそうに!)

部員3 (というか、なんか距離が近い……!)

部員1 (あの人見知りで空気の読めない部長が……)

部員2 (偏屈で変わり者の部長が……)

部員3 (普通の男子とお話をできるようになったのか……)

ホロリ

部員1 (……どうしてだろう)

部員2 (嬉しいのに)

部員3 (涙が止まらない……)

95以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:35:54 ID:AFlK0XbA
………………下校時刻 昇降口

成幸 「……ふぅ。今日も遅くまでかかったな」

小林 「成ちゃん、この後は家に帰って勉強?」

成幸 「おう。まぁ、無理しない範囲でやるつもりだよ」

小林 「大変だなぁ。体調崩さないようにね」

成幸 「ああ。文化祭直前だからな。気をつけるよ」

成幸 「……ん?」 (……あれ? 最終下校時刻なのに、まだ明かりがついてる教室があるな)

成幸 (あそこって、化学室か……?)


―――― 『知ってるか? 部長、毎日ひとりで遅くまで作業をしてるんだよ』


成幸 「………………」

小林 「成ちゃん?」

96以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:36:51 ID:AFlK0XbA
成幸 「……すまん、小林。先に帰ってくれ。やることを思い出した」

小林 「……ん、そっか」 クスッ 「ねぇ、成ちゃん」

成幸 「うん? なんだ?」

小林 「お人好しなのは大いに結構だけどさ」

小林 「なんかあったら、すぐに俺を頼ってよ?」

成幸 「小林……」 ジーン 「ありがとう。何かあったら、すぐお前に言うよ」

小林 「うん、よろしい。じゃあ、また明日ね」

成幸 「ああ。また明日な、小林」

タタタタ……

小林 「……行っちゃった。まったくもう、“成ちゃん”だなぁ」

小林 「今度は誰の世話を焼くのかな」

小林 「武元さんか、古橋さんか、緒方さんか、それとも……」

小林 「また別の子だったりしてね」

97以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:37:31 ID:AFlK0XbA
………………化学室

関城 「………………」

チョキチョキチョキ……

関城 「……ふぅ。紙の鎖はもう少し必要ね」

関城 (ほかの部員も帰したし、ゆっくりやりましょう)

関城 (……がんばってくれてる部員たちのためにも、がんばらないと)

……ガラッ……

関城 「……!? ゆ、唯我成幸……?」

成幸 「よう。明かりがついてたから気になってさ」

成幸 「もう最終下校時刻だぞ? 帰らなくていいのか?」

関城 「ふふん、見くびらないでちょうだい。顧問の先生にもう少し残る許可はもらってあるわ」

成幸 「なんで得意そうなんだよ……」

98以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:38:47 ID:AFlK0XbA
成幸 「他の部員はいないのか?」

関城 「みんな門限や勉強があるもの。もう帰したわ」

関城 「……みんな残りたがったけど、あまり私のこだわりやわがままに付き合わせたくないし」

関城 「女子の部員もいるから、あまり遅くまで残すのも嫌だしね」

成幸 「……ふーん。そっか」

関城 「……? な、何よ、その顔は」

成幸 「いや、お前が部員に慕われてる理由がよくわかった気がするよ。部員想いなんだな、お前」

関城 「しっ、慕われ、って……!? な、何わけわかんないこと言ってるのよ、唯我成幸!」

成幸 「お前の照れ隠しってほんとうるさいよなぁ……」

99以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:39:34 ID:AFlK0XbA
成幸 「紙の鎖を作ってるのか。装飾に使うやつだな」

関城 「そ、それがどうしたのよ」

スッ

成幸 「手伝うよ。俺はのりで鎖を作っていくから、お前ははさみでどんどん切ってくれ」

関城 「えっ……そ、そんな、いいわよ。あんたに手伝ってもらう理由もないし……」

成幸 「今日、ベニヤ板とペンキを教室まで運ぶのを手伝ってくれただろ。そのお返しだよ」

関城 「あ、あれはだって、ころばせてしまったお詫びだから……」

成幸 「いいから、早くのり貸せよ。お前だって女子なんだから、あんまり遅くならない方がいいだろ」

成幸 「俺は門限とか特にないし女子でもない。お前も気にする必要ないだろ?」

関城 「っ……」

関城 「じ、じゃあ……お願いするわ。ありがと……」

成幸 「おう!」

100以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:40:19 ID:AFlK0XbA
………………

関城 「………………」 チョキチョキチョキ……

成幸 「………………」 ペタペタペタ……

関城 「ん。その 鎖、あと十個くらいつなげたら終わりよ」

成幸 「おう、わかった」

関城 「………………」 チョキチョキチョキ……

成幸 「………………」 ペタペタペタ……

関城 「……唯我成幸、あなた、勉強とか大丈夫なの?」

成幸 「……ん? ああ、まぁ、大丈夫とは断言できないけどな」

成幸 「ま、文化祭の間くらいは、多少勉強を忘れてもいいかな、ってさ」

関城 「……ごめんなさい。あなたも忙しいのに、化学部の準備を手伝わせてしまって」

成幸 「変な言い方するなよ。俺が勝手に手伝ってるだけなんだからさ」

成幸 「……よしっ。十個つなげたぞ。とりあえずこれで天井につけてみようぜ」

関城 「……ん。ありがと、唯我成幸」

101以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:42:27 ID:AFlK0XbA
………………

関城 「し、しっかり押さえててよ! 唯我成幸!」

成幸 「押さえてるよ……」

成幸 「っていうか、怖いなら俺が脚立に上るぞ?」

関城 「こ、怖くなんかないわよ!」

成幸 「ったく……。ん……?」

ピラッ……

成幸 「!?」 ガバッ (い、一瞬パンツが見えてしまった……!)

成幸 (う、上は向けない……)

関城 「ど、どうかしたの?」

成幸 「な、なんでもない。早く鎖をつけろよ」

関城 「わ、わかってるわよ」

102以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:47:03 ID:AFlK0XbA
関城 「うー……」 (脚立の上で立つのって結構怖いのよね」

関城 (とはいえ、さすがに部外者の唯我成幸にそこまでさせるわけにはいかないし)

関城 (とにかく、早くテープでつけないと……)

関城 「あ、テープ……」

成幸 「ああ、テープなら俺が持ってるよ。ほら」

関城 「ん、ありがとう。……って、唯我成幸? どうして下を向いているの?」

成幸 「……聞くな」

関城 「……? あ……」

関城 「み、見た!? 見たのね!?」

成幸 「見てない! だから下向いてるんだろ!」

関城 「っ〜〜〜////」

……グラッ

関城 「あっ……」 (ま、まずいわ。バランスが……)

成幸 「関城!?」

ガシャーン!!!

103以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:48:37 ID:AFlK0XbA
関城 「あいたたた……」

関城 (あれ? あんまり痛くない……?)

成幸 「……悪い、関城。できるだけ早くどいてくれると助かる」

関城 「!? 唯我成幸!?」

関城 (私、唯我成幸を下敷きにしてる……!?)

関城 「ご、ごめんなさい! 大丈夫?」

成幸 「ああ、俺は大丈夫だけど、関城はケガはないか?」

関城 「人の心配をしてる場合かしら!? ほら、起きて」

成幸 「悪い。ありがとう」

関城 「……ごめんなさい。私がバランスを崩したから」

関城 「唯我成幸、あなた、私がケガをしないように、助けてくれたのね」

関城 「ありがとう……」

成幸 「そんなに器用なことはできないよ。偶然だ」

成幸 「でもまぁ、お互いケガがなくて良かったな」

104以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:49:46 ID:AFlK0XbA
………………帰路

関城 「………………」 トボトボ……

関城 (結局あの後、脚立での作業はすべて唯我成幸がやってくれたわ)

関城 (……自分が情けないったらないわね)

成幸 「………………」 (うーん、関城のやつ、落ち込んだ顔してるなぁ)

成幸 「……なぁ、関城」

関城 「……何かしら、唯我成幸」

成幸 「関城はすごいよな。化学部の部長として部員に慕われていて、部員たちのためにがんばっててさ」

関城 「……そんなことないわよ。部員のみんなは、仕方なく私に付き合ってくれているだけよ」

105以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:50:32 ID:AFlK0XbA
成幸 (変なところで卑屈だな……。昔なにかいやなことでもあったのか?)

成幸 (うーん、どうにかしてあげたいけど、本人がネガティブなのはどうしようもないよなぁ)

成幸 「……あ」

関城 「? どうかしたの?」

成幸 「……なぁ、関城。おまえ、明日の朝、早く来て作業したりするのか?」

関城 「そのつもりだけど、どうして?」

成幸 「関城ひとりで?」

関城 「まぁ、そうね……」

成幸 「……そっか。わかった。教えてくれてありがとな」

関城 「?」 (一体なんだというのかしら……)

106以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:52:02 ID:AFlK0XbA
………………夜 唯我家

prrrr…………

成幸 「……あ、小林。夜中に電話かけて悪いな。寝てなかったか?」

成幸 「出てくれて良かった。助かるよ」

成幸 「ん、ああ。ちょっと頼りたいことができてさ」

成幸 「……いや、大したことじゃないんだ。少し教えてほしいことがあってさ」



成幸 「小林さ、化学部の部員に友達とかいないか?」

107以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:54:50 ID:AFlK0XbA
………………翌日 学校

関城 「うぅ……」

関城 (睡眠時間が少ないから、眠いわ。朝日が刺さる……)

関城 (でも、私がしっかりしないと。私は化学部の部長なんだから)

ガラッ……

部員1 「あっ、部長! おはようございます!」

関城 「へ……?」

部員2 「部長、黒板の装飾はこんな感じでいいですか?」

部員3 「実験用具の点検全部終わりました!」

部員4 「化学室前の廊下、少しさみしいですよね。模造紙で研究成果を貼っておくのはどうですかね?」

108以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:55:39 ID:AFlK0XbA
関城 「み、みんな、どうして……?」

部員1 「昨日、全員にメールで連絡が入ったんです。部長が朝も作業をするつもりだって」

部員1 「朝の作業だったら門限も何もないから、手伝ってもいいですよね?」

関城 「あなたたち……」

関城 「……し、仕方ないわね! こうなったら全員で作業進めるわよ!」

部員『おー!』

関城 (……でも、どうしてメールなんか回ったのかしら。わたし、朝から作業するなんて誰にも……)


―――― 『……なぁ、関城。おまえ、明日の朝、早く来て作業したりするのか?』


関城 「……あっ」

関城 (唯我成幸……?)

109以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:56:12 ID:AFlK0XbA
………………放課後 3-B

成幸 「………………」

トンテンカントンテンカン……

成幸 (化学部、うまくいったかな……。っていうか、)

成幸 (お節介をしすぎた気もする。関城のやつ怒ってないかな)

小林 「成ちゃん、これもよろしく。あとはそこ打ち付けたら終わりだから」

成幸 「ん、わかった。置いといてくれ」

小林 「いよいよもって、完成までもう一歩って感じだね」

成幸 「そうだな。長かったような、短かったような……」

小林 「化学部も、うまくいってるといいね、成ちゃん?」

成幸 「ん……ああ、まぁ、そうだな……――」

大森 「――唯我ー! おまえー!」

成幸 「わっ、いきなりなんだよ、大森。って何で泣いてるんだ!?」

110以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:57:58 ID:AFlK0XbA
大森 「眠り姫や親指姫、人魚姫のみならず、他の女子まで毒牙にかけてるとはー!」

成幸 「何の話だ!? っていうか誤解を生みそうなことを言うなバカ!」

大森 「じゃあこの女の子はお前の何なんだよー! 結構かわいいじゃねぇかよー!」

大森 「お前を呼んでくれって頼まれたんだよー!」

関城 「……どうも。唯我成幸」

成幸 「あ、関城……」

関城 「大きなお世話かもしれないけど」 ジーッ

大森 「……?」

関城 「友達は選んだ方がいいわよ、唯我成幸」

成幸 「ああ……。なんかすまん」

111以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 18:59:09 ID:AFlK0XbA
………………廊下

関城 「ごめんなさい。忙しいのに、呼び出したりして」

成幸 「いや、もうそろそろ作業も終わるから大丈夫だ。何か用か?」

関城 「……用っていうか、」

ジーッ

関城 「化学部の部員に、朝集合するようにメールを出したの、あなたね?」

成幸 「あー……うん。俺だよ」

成幸 「余計なことをして悪かった。すまん」

関城 「なっ……。や、やめてよ。顔を上げなさいよ。謝ることなんてないでしょ」

成幸 「……? 関城、怒ってないのか?」

関城 「どうして私が怒ってると思ったのか、説明してほしいくらいだわ」

関城 「……ありがとう、唯我成幸。私、朝化学室に入ったとき、部員たちがいて、すごく嬉しかったの」

関城 「一緒に作業してくれる人たちがいるって思うと、心強かったの」

関城 「……だから、本当にありがとう。それだけ、言いたくて」

112以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:00:11 ID:AFlK0XbA
成幸 「俺は何もしてないよ。明日の朝、関城がひとりで作業をするぞ、って伝えただけだ」

成幸 「実際、朝から化学室に行ったのは、部員たちがお前のためにそうしたかったからだろ」

関城 「……っ////」

関城 「……じ、邪魔したわね。話はそれだけ。私も化学室に戻るわ」

成幸 「あっ……関城!」

関城 「……? なに、唯我成幸?」

成幸 「もし、うまく時間とかが合ったらだけどさ」

成幸 「理珠と一緒に、お前の実験ショーを見に行くよ」

関城 「へ……?」

成幸 「だから、その……準備もだけど、当日のショーもがんばってな」

関城 「………………」 ニヤリ 「……当然よ! 私を誰だと思っているの?」

関城 「化学部部長、関城紗和子よ!」 バーン

成幸 「……さすが、恐れ入るよ」

成幸 (すっかりいつもの関城だな。よかった……)

113以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:00:52 ID:AFlK0XbA
関城 「……ねえ、最後にひとつだけ、いい?」

成幸 「ん?」

関城 「“理珠” 、ってどういうことかしら?」

成幸 「……あっ」

カァアア……

成幸 「い、いや、それは……成り行きで、そういうことになったというか……」

成幸 「本人には、当分そう呼ぶなと言われてるんだけど……」

関城 「へぇえ……」 ニヤリ 「理珠、ねぇ……。まぁまぁ仲睦まじいこと」

成幸 「ち、ちがうからな! お前が考えてるようなことは何もないからな!」

関城 「ふふ。ま、そういうことにしておいてあげるわ」

関城 (……今はまだ、ね)

114以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:03:33 ID:AFlK0XbA
………………文化祭当日 午後

成幸 「………………」

ガクッ……

成幸 (つ、疲れたぁ……)

成幸 (うどん1000食騒動に始まり、フルピュアの衣装探し、ダークフルピュアの衣装作り)

成幸 (3-Aの演劇の手伝いをすることになるかと思ったら、着ぐるみを着て先生方に追いかけ回され、)

成幸 (あしゅみー先輩に助けてもらったと思ったら、図らずも演劇に乱入することになって、古橋と……っ……////)

成幸 (うどんの完売はまだ余談を許さない状況だが、チャンスは今しかない……!)

理珠 「あの、成幸さん? 私、この忙しいときに出歩いてもいいのでしょうか……」

成幸 「大丈夫だ! 3-Fのみんなも、少し休めって言ってくれただろ?」

理珠 「それはそうですが……。というか、いまどこに向かっているんですか?」

成幸 「ちょうどついたよ。ここだ」 ホッ 「ギリギリセーフだ。間に合ってよかった」

理珠 「……化学室? ここって、化学部の――」

関城 『みなさーん、こんにちはー!』

115以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:04:31 ID:AFlK0XbA
理珠 「関城さん……?」 (そうでした。関城さん、化学部で実験ショーをやるって言っていましたね)

関城 『今日は、一ノ瀬学園文化祭、化学部実験ショーに来てくださり、ありがとうございます』

関城 『この公演が本日最後となります。楽しんでいってくださいね!』

理珠 「すごい……。こんなにたくさんの子どもたちの前で、あんなにハキハキと喋れるのですね」

成幸 「……ほんと、お前の言ってた通りだと思うよ」

成幸 「あいつはすごいな」

理珠 「……はい。私の、大親友ですから」

成幸 「そうだな。じゃあ、その大親友の晴れ舞台、観ていくだろ?」

理珠 「もちろんです。もしつまらないショーだったら、後でダメ出ししてあげなくてはいけませんから」 フンスフンス

成幸 (……ったく。言ってることは厳しいくせに)

成幸 (楽しそうな顔してるぞー、緒方)

116以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:05:52 ID:AFlK0XbA
………………本番直前 化学室

関城 (うっ……。少しうどんを食べ過ぎたわね)

関城 (心なしかスカートがきつい気がするわ)

関城 (でも、がんばるのよ関城紗和子。最後のショーまでしっかり成功させないと)

関城 (がんばってくれたみんなのためにも……)

関城 (楽しみにしてくれている子どもたちのためにも……)

関城 (……結局、緒方理珠と唯我成幸は来られなかったみたいね)

関城 (仕方ないわね。うどん1000食なんてトラブルがあったし)

関城 (……そう。仕方ないこと。唯我成幸も方々を走り回っていたようだし)

関城 「あっ……」

理珠 「……」

成幸 「……」

関城 (……うそ)

関城 (きて……くれたんだ……)

117以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:06:35 ID:AFlK0XbA
関城 (……不思議だわ)

関城 (さっきまで苦しくて仕方なかったおなかが全然気にならない)

関城 (公演を繰り返して、痛くなり始めていたのども、全然気にならない)

関城 (……友達が、私のことを見に来てくれている)

関城 (それだけで、私は……)

関城 「………………」

スーーーー

関城 『みなさーん、こんにちはー!』

関城 (それだけで、私は。いくらだってがんばれる気がするもの)

関城 (見てなさい。我がライバルにして大親友、緒方理珠)

関城 (……それから、友達と呼んでやってもいい。唯我成幸)

関城 (この化学部部長、関城紗和子の実験ショーを、せいぜい楽しんでいくといいわ!)


おわり

118以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:07:49 ID:AFlK0XbA
………………幕間 後夜祭 勘違い化学部

部員1 「あれ? 関城部長は?」

部員2 「なんでも、後夜祭の花火を観に行かなくちゃだとかで、急いで行っちゃいましたよ」

部員2 「……絶対、あの唯我成幸さんって方と、ですよね?」

部員1 「我らが部長にとうとう春が……!」

部員2 「今夜は打ち上げ兼部長のおめでとう会ですね!」


おわり

119以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/15(土) 19:14:39 ID:AFlK0XbA
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
文化祭でうどんを何杯も食べた関城さんが、その裏でどうしていたのか想像して書きました。
化学部とか、勝手に想像した部分が多いのは反省点です。
一応断っておくと、まだメインヒロインの中でメイン話を書いていない子がいますが、他意はありません。
全員魅力的なヒロインだと思います。

また書き上がったら別の話をアップします。

120以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:13:39 ID:l3ORh6EU
>>1です。
ひとつ投下します。


【ぼく勉】水希 「わたしとお兄ちゃん」

121以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:16:28 ID:l3ORh6EU
………………唯我家

水希 (わたしのお兄ちゃんはかっこいい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは頭がいい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは優しい)

水希 (わたしのお兄ちゃんは頼もしい)

水希 (わたしは、お兄ちゃんが大好きだ)

水希 (……だというのに)

理珠 「成幸さん、この設問なのですが、出題者の意図がわかりません。なぜこんな回りくどい問題を作るのですか?」

文乃 「ふぁー。成幸くん、どういうわけか方程式からxが消えるんだよ。どうしてだと思う?」

うるか 「成幸ぃー! アルファベットが文字に見えなくなってきたよ! これがゲシュタルト崩壊ってやつ!?」

水希 「………………」 ギリッ

水希 (……そんなお兄ちゃんが、どういうわけか最近よくモテている)

122以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:17:28 ID:l3ORh6EU
水希 (昔はそんなことはなかった)

水希 (それこそ、数ヶ月前。高校三年生に進級して少しした頃からだ)

水希 (まず、家に女の子をふたり、連れてきた。緒方さんと古橋さんだ)

緒方 「ふむ……。よく分かりました。ありがとうございます、成幸さん」

文乃 「そっか。ここの項を整理しないからこんがらがっちゃうのかぁ。ありがとう、成幸くん」

水希 (……それでも、その頃はふたりはもう少しお兄ちゃんによそよそしかったと思う)

水希 (今は、なんというか、こういう言い方は絶対に適切ではないのだけど、)

水希 (お兄ちゃんを、すごく信頼しているように見える)

水希 (そして……)

武元 「……28,29,30。あ、ほんとだ。目をつむって三十秒数えたらちゃんと英語に見える! ありがと、成幸」

水希 (中学生の頃から話には聞いていた、水泳部の武元さん)

水希 (これは、とても癪だけれど、断言してしまっていいだろう)

水希 (この人は間違いなく、お兄ちゃんのことを狙っている) ギリッ

123以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:18:29 ID:l3ORh6EU
水希 (それに、この三人だけじゃない)

水希 (お兄ちゃんが最近、嬉しそうに話すことがある)

水希 (よく勉強を教えてくれる先生がいる。その人がいると集中できて勉強が捗る、と)

水希 (嫌な予感がして詳しく聞いてみれば、なんと若い女性の先生だという)

水希 (そして、メイド喫茶……)

水希 (お兄ちゃんが通い詰めているメイド喫茶の、カリスマ店員と呼ばれる“あしゅみー先輩”)

水希 (全員が全員、お兄ちゃんに好意を持っているとは思わないけど、)

水希 (お兄ちゃんはボーッとしているところがあるから、そこをつけこまれないか心配だ)

124以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:19:20 ID:l3ORh6EU
………………ファミレス

小林 「……で、俺を呼んだわけなのね」

水希 「小林さんも受験生なのに、すみません」

小林 「それはいいけどさ。急に成ちゃんからこんなメッセージが来たからびっくりしたよ」



『たすけてください』



小林 「何事かと思ったら、成ちゃんじゃなくて水希ちゃんが送ってたとはね」

水希 「うちは携帯電話が家族共用なので……」

125以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:20:13 ID:l3ORh6EU
小林 「それで、具体的に俺は何をしたらいいのかな」

小林 「いくら水希ちゃんのお願いでも、成ちゃんを彼女たちから引き離すっていうのはできないよ?」

水希 「そこまでしてもらおうとは思ってません。ただ、教えてほしいんです」

水希 「お兄ちゃんと仲の良い、あの人たちのことを。性格とか。小林さんの印象でいいので」

小林 「ふーん? まぁ、それくらいならお安い御用だけど」

小林 「といっても、俺、そこまであの子たちと関わりないよ?」

水希 「小林さんの観察力を信じます!」

パサッ

小林 (……ノートを広げだした。これは滅多なことは言えないな)

126以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:21:15 ID:l3ORh6EU
水希 「では、まず緒方理珠さんからお願いします」

小林 「緒方さんかぁ。うーん……」

小林 「あんまり人付き合いは得意じゃなさそうな感じかなぁ」

水希 「ふむふむ……」 メモメモ

小林 「もう何度か顔を合わせたけど、たぶん俺の名前も覚えてないんじゃないかな」

水希 「なるほど! 薄情な人なんですね!」

小林 「誘導尋問するのはやめようか?」

小林 「こらこら、俺が言ってもないことをメモしちゃいけないよ水希ちゃん」

127以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:22:24 ID:l3ORh6EU
小林 「元々人の名前を覚えるの苦手なんじゃないかな。あんまり人に興味がないっていうか……」

水希 「……? でも、わたしの名前は覚えてくれていたみたいですけど」

小林 「それはたぶん、水希ちゃんに興味があるんだよ、きっと。成ちゃんの妹だからね」

水希 「将を射んと欲すればまず馬を射よ、ということですか。なるほど。良い度胸です」

水希 「わたしを籠絡できると思っているなら考えが甘いですね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

小林 「たぶん間違いではないけど怖いからその表現はやめようか」

小林 (実際、水希ちゃんを手なずけられた子が成ちゃんに近づける気はするけど)

小林 「何にせよ、悪い子じゃないよ。一生懸命成ちゃんに勉強を教わっているみたいだし」

小林 「すごい努力家だって成ちゃんも言ってたよ」

水希 「……ソウデスカ。ワカリマシタ」

小林 「そういうところをメモしてくれると俺としてはとても嬉しいなぁ?」

128以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:23:34 ID:l3ORh6EU
水希 「次は古橋文乃さんについて教えてください」

小林 「古橋さんは、おっとりした子だよね」

小林 「正統派の美人さんだし、男子にモテる感じかな。実際たくさん告白されてるみたいだし」

水希 「なるほど。色んな男に色目を使うふしだらな女、と」

小林 「うん。本当の本当に、一言もそんなこと言ってないからね、俺は」

水希 「……さすがに失礼だった気がするので訂正します」

水希 「そういう人じゃないのは、見ていてわたしにもわかりますから」

小林 (変なところ律儀なんだよなぁ。こういうところ、成ちゃんにそっくりというか、なんというか)

小林 「成ちゃん曰く、歯に衣着せぬところがあるらしいけど」

水希 「口が悪い、と……」

小林 「だからいちいち曲解するのはやめよう」

小林 「でも、やっぱり緒方さんと同じく、すごい努力家みたいだね」

水希 「……へー」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:24:18 ID:l3ORh6EU
水希 「次は、武元うるかさんです」

小林 「武元ね。一応中学校から一緒だから少しは知ってるけど」

小林 「明るくてスポーツ万能で、誰とでも仲良くなれるやつだよね」

水希 「たしかに、色んな男子に勘違いされてそうな人ですよね」

小林 「勘違い?」

水希 「……“あいつ、俺のこと好きなんじゃないか”って」

小林 「ああ……。分かる気がする」

小林 「少しバカだけど、本当に明るくて良い奴だよ」

小林 「あと、料理もめちゃくちゃ上手だって成ちゃんが言ってたかな?」

バキッ

水希 「……あ、エンピツが折れちゃった。しまったしまった」

小林 (……怖い。目がピクリとも笑ってない)

水希 「お兄ちゃんはいつ一体どこで武元さんの手料理を食べたんでしょうね???」

小林 「ご、ごめん。俺にもそこまでは分からないや……」

130以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:25:15 ID:l3ORh6EU
水希 「では、気を取り直して、次の方に行こうと思います」

小林 「!? その三人だけじゃないの?」

水希 「あしゅみー先輩、って知りませんか?」

小林 「……ん? ああ、成ちゃんから聞いたかな。予備校の先輩だって」

小林 「それ以外分からないよ。でも、夏にふたりで海に行ったとか言ってたかな?」

バキバキッ

水希 「……あれ、おかしいな。エンピツ、また折れちゃった……もったいない……」

水希 「エンピツだってただじゃないのに……ああ、本当に、もったいないもったいない……」

小林 (……昔はもう少し普通の子だったんだけどな……)

131以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:27:31 ID:l3ORh6EU
水希 「最後です。桐須真冬先生ってご存知ですか?」

小林 「……うん。社会科の先生だけど」

水希 「どういう先生ですか?」

小林 「どういうって……うーん。第一印象は怖い先生、かなぁ」

小林 「でも教え方はすごく上手だよ。教材とかもよく考えられてる気がするし……」

小林 「ああ、そういえば成ちゃんが、実はすごく優しくて生徒想いな先生だって言ってたかな」

小林 「桐須先生とふたりで勉強すると、すごく捗るんだって」

水希 「……へぇ。ふたりきりで勉強。なるほど。出るとこ出れば勝てそうな案件ですね」

水希 「この地域の教育委員会の電話番号は、と……」

水希 「あと、一応警察の少年課と児童相談所も調べておかないと」

水希 「一ノ瀬学園の理事に直接携わる方に一報入れてからの方が効果的かなぁ……」

小林 「良い先生だからやめてあげてね? 他意はないと思うから。多分」

132以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:28:55 ID:l3ORh6EU
………………数時間後

パタン……

水希 「よくわかりました。ありがとうございました、小林さん」

小林 「………………」 グッタリ

小林 (結局あれで終わらずに、全員について事細かに聞かれてすべてメモされてしまった)

小林 (成ちゃん、ごめん……)

小林 「……水希ちゃん、」

水希 「はい?」

小林 「成ちゃんのことが好きなのはわかるけど、いつかは兄離れしなきゃいけないんだよ?」

小林 「幼なじみで水希ちゃんのことを小さい頃から知ってるからこそ、言うけどさ」

小林 「成ちゃんがもし幸せになるようだったら、それを応援してあげてほしいって、俺は思うな」

水希 「………………」

水希 「……そんなの、わかってますよ」

グスッ

小林 「……!?」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:29:47 ID:l3ORh6EU
水希 「………………」

グスッ……シクシク……

小林 「ご、ごめん、水希ちゃん。水希ちゃんが成ちゃんのこと大好きだって知ってたのに、」

小林 「無神経なことを言ったよ。ごめんね?」

水希 「……小林さんは、優しいですよね」

水希 「小林さん以外の人だったら、きっと引いてますよ」

グスッ

水希 「でも、仕方ないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きなんだもん……」

小林 「……うん。わかるよ。俺も成ちゃんのこと大好きだからさ」

小林 「俺も、成ちゃんのことを不幸にするような女の子が現れたら、」



小林 「――……どんな手を使っても成ちゃんから遠ざけるよ」



水希 「小林さん……」

小林 「だから安心してよ、水希ちゃん。学校ではちゃんと、成ちゃんのこと、俺が見てるからさ」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:30:45 ID:l3ORh6EU
………………

小林 「……落ち着いた?」

水希 「はい……。ありがとうございます。わたし、本当に、小林さんがお兄ちゃんの友達でよかったです」

水希 「昔から、お兄ちゃんとわたしの傍にいてくれて、本当に……」

小林 「それはこっちの台詞だよ。昔、家でひとりだった俺はさ、成ちゃんと水希ちゃんがいたから、寂しくなかったんだよ」

水希 「小林さん……――――」



? 「――――お゛い、俺の妹を泣かせてるって奴は、お前か……?」



小林 「へ……? 成ちゃん……?」

成幸 「……ん? んん?? んんん???」

ガクッ

成幸 「……なんだよ。小林かよ。全力疾走してきて損したぜ」

水希 「お兄ちゃん、どうしてここにいるの?」

成幸 「いや、実は……」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:31:45 ID:l3ORh6EU
………………少し前 学校

成幸 (……ふぅ。今日は誰の勉強を教える必要もないから、自分の勉強が進む進む)

成幸 (とりあえずこの前の模試の確認をもう一回と、あとは……――)

――――prrrr……

成幸 「……電話? 緒方から……?」 ピッ

成幸 「もしもし? どうかしたか、緒方?」

理珠 『成幸さん! 大変です!』

成幸 「……? 急にどうした」

理珠 『お店の出前中に見かけたのですが、妹さんが……! 水希さんが!』

成幸 「水希がどうかしたのか?」

理珠 『チャラそうな男に! 泣かされています!!』

成幸 「……は?」

プツン……

136以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:32:34 ID:l3ORh6EU
………………現在

成幸 「……そこから先、あまり記憶はない」

成幸 「学校からここまで全力疾走して、お前たちを見つけたんだ」

小林 「……成ちゃん、遠目で俺だって気づいてくれないのは、ちょっと傷つくな」

成幸 「うぅ……。すまん、小林」

成幸 「水希が泣かされているって聞いて、頭がどうかしててさ」

水希 「お兄ちゃん……」 キュン

成幸 「どうせお前のことだから、水希から何か相談されてただけだろ?」

成幸 「ありがとな、小林。あと、怖がらせて悪かった」

小林 (……ほんと、似たもの兄妹だよなぁ。水希ちゃんが絡むとほんと怖いんだから、成ちゃんは)

小林 (成ちゃんのお嫁さんになる女の子も大変だろうけど、)

小林 (水希ちゃんをお嫁にもらう男の子は、もっと大変かもしれないね)

小林 「いいよ。気にしないで」 ニコッ 「成ちゃんはシスコンだからね」

成幸 「!? し、シスコンじゃねーよ! 変なこと言うな!」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:33:42 ID:l3ORh6EU
水希 「お兄ちゃん、わたしのことが心配で、勉強も放り出してきてくれたんだ?」

成幸 「ん……。そりゃ当然だろ。お前は俺の大切な妹だからな」

水希 「……えへへ。嬉しい」 ギュッ

成幸 「な、なんだよ急に。くっつくなよ。恥ずかしいだろ」

水希 「……今だけ。お願い」

成幸 「……仕方ねーな」

小林 (ほんと、昔から変わらず仲良し兄妹だこと)

小林 (水希ちゃんも満足そうな顔しちゃってまぁ……)

小林 (……ま、幸せそうだから、いっか)

小林 (それにしても……。“チャラそうな男” ……)

小林 (緒方さん、俺の名前どころか、顔すら覚えてくれてなかったかぁ……)


おわり

138以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:37:34 ID:l3ORh6EU
………………幕間 翌早朝 学校

小林 「こんな早い時間に呼び出して一体どうしたの?」

海原 「……ねぇ、陽真くん」 スッ

海原 「この子、誰? どうしてふたりきりでファミレスにいたの? ねえ、陽真くん」

小林 (……しまった。まさか智波ちゃんに見られていたとは。しかも写メまで……)

小林 「いや、それは――」

海原 「――この子、泣いてるよね? 一体何をしたの、陽真くん。別れ話をしているように見えたんだけど」

小林 「いやいやいや、違うって。それは――――」

海原 「――――怒らないから、正直に言って? ねえ、お願い。陽真くん」

小林 「いや、だから……――」

海原 「――ねえ、わたし怒ってないから、教えて?」 ゴゴゴゴゴ……!!!

小林 (……成ちゃん、頼む。今日はできるだけ早く学校に来てくれ)

※その後ちゃんと誤解はとけました。


おわり

139以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 15:41:50 ID:l3ORh6EU
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

幕間で少し海原さんのキャラを壊してしまった気がします。
本物の彼女はこんなに問答無用で面倒くさい女の子ではないと思います。多分ですが。
そして小林くんも、海原さんに何も言わずに女の子と会うような迂闊なことをするような子ではないと思います。

お兄ちゃん大好きな水希ちゃんと、成ちゃんのことが大好きな小林くん、好きです。
まだアニメも放送されていない段階でサブキャラ中心のSSなんて誰得な気もしますが、楽しんでいただけたら幸いです。

また投下します。

140以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/16(日) 22:24:31 ID:AYh7bPb.
まとめからとんできました
楽しく読まさせてもらってます!

141以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 17:05:29 ID:aWniQkPA
なかなか良かった 乙

142以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:01:07 ID:SWSJNpPk
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「天の光は」 成幸 「すべて星」

143以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:02:05 ID:SWSJNpPk
………………図書館

成幸 「………………」

フゥ

成幸 (久々にひとりの勉強時間が取れたから、めちゃくちゃ捗ったな)

成幸 (今日やりたいと思っていた分がもう終わるとは)

成幸 (……んー、受験生としては、時間があるならもっと勉強しておくべきなんだろうけど、)

成幸 (気分転換がてら、久々に本でも読もうかな。参考書じゃなくて、小説でも……)

成幸 (そういえばオススメの本が入り口近くに展示してあったな)

成幸 (行ってみるかな)

144以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:02:54 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 「へー、古典SF特集なんてやってるのか」

成幸 「読んだことはないけど、知ってるタイトルばっかりだな」

成幸 (とはいえ、全部は読めないし……ん?)


『天の光はすべて星』


成幸 「このタイトル……どこかで……」


―――― 『まさに「天の光はすべて星」だね』

―――― 『あっ えっと そういうタイトルの古い本があってね』


成幸 「あっ……」 (そうだ。古橋が好きだって言ってた本だ……)

成幸 「……読んで、みようかな」

成幸 (とはいえ、古橋が好きだっていう本だし、)

成幸 (俺にはちょっと難しいかもなぁ)

145以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:04:07 ID:SWSJNpPk
………………夜 唯我家

成幸 「………………」

ペラッ……ペラッペラッ……

水希 「? お兄ちゃん、今日は勉強勉強言わないね。本読んでるけど……」

成幸 「………………」

水希 「……お兄ちゃん?」

成幸 「ん……? ああ、すまん。水希、何か言ったか?」

水希 「えっ、いや、何も……」

成幸 「そうか」

ペラッ……

水希 (めずらしい。お兄ちゃんが勉強以外ですごく集中してる)

水希 (普段本なんてあんまり読まないのに……)

ピキューン

水希 (……女の気配がする)

146以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:05:19 ID:SWSJNpPk
………………深夜

成幸 (……どうしよう。そろそろ寝ないと明日の学校に差し障りが出る)

成幸 (分かっているのに、読むのをやめられない)

成幸 (決して、そこまで面白い話ではない。地味であまり抑揚のない物語だと思う)

成幸 (アメリカナイズなかけ合いはややくどいし、主人公は情熱的に見えてかなりニヒルだ)

成幸 (……でも、)

成幸 (続きが気になって仕方ない……!)

ペラッ……

成幸 (……!? うぇ!? ええっ!?)

成幸 (ここでこうって……!? ん……!? いやいや、それじゃ……ずっと……!?)

成幸 (………………)

ペラッ……ペラッ……

147以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:06:19 ID:SWSJNpPk
………………翌朝 学校 3-B教室

成幸 「………………」

グターッ

大森 「……? 唯我の奴どうしたんだ?」

小林 「なんでも、徹夜で本を読んじゃったらしいよ」

小林 「眠くて仕方ないから放っておいてくれってさ」

大森 「めずらしい。受験に命かけてる唯我が勉強以外でグロッキーなんて」

小林 「俺もまったく同感だよ」

成幸 「………………」 (めちゃくちゃ面白かった……)

成幸 (……そうだ。古橋に、この感動を伝えなきゃ)

成幸 (いや、違う。俺がただ単に、この本について語れる相手がほしいというだけだ)

成幸 (ぜひ、古橋と話したい……)

148以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:07:26 ID:SWSJNpPk
………………3-A

ピロン……

文乃 「うん……? 成幸くんからメッセージ?」


『大事な話がある』


文乃 「へ……?」


『今日の昼休み、いつもの場所に、ひとりで来てほしい』


文乃 「ふぇっ……?」


『頼む』


文乃 「い、一体なんだっていうの、かな……?」

文乃 「とりあえず、返信を、と……」


『どうしたの? どういう用件かだけ、今教えてくれない?』

149以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:08:24 ID:SWSJNpPk
鹿島 「? 古橋さん、どうかしたんですか〜」

文乃 「へっ? い、いや、何でもないよ、鹿島さ――」

――ピロン


『メッセージじゃだめなんだ』

『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』

『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』

『昼休みより先なんて考えられない』


鹿島 「あら〜……」

文乃 「ち、違うからね!? きっとなんか、成幸くんとち狂ってるだけだからね!?」

鹿島 「まさかこんな熱烈なメッセージが来ているとは……」

鹿島 「わざとではないにせよ、勝手に画面を見てしまって申し訳ございません〜」

150以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:10:07 ID:SWSJNpPk
文乃 「違うからね!? 鹿島さんが考えてるようなことは何もないからね!?」

鹿島 「昼休みですね。いつも唯我成幸さんとの逢瀬に使っている場所ですね〜?」

鹿島 「誰も近づかないように見張っておきますので、ご安心くださいね〜」

文乃 「!? いつも成幸くんと話してるあの場所を知ってるの!?」

鹿島 「それはもちろん、いつも覗いていますから〜……って、これは内緒なんでした」 テヘペロ

文乃 「てへぺろじゃないよ! っていうか、えっ? えっ? えっ?」

鹿島 「ふふふ〜。私の相手なんかしてる場合じゃないですよね〜?」

文乃 「こんな熱烈なお誘い、どうされるおつもりですか、古橋姫?」

文乃 「……そ、そんなの……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (こ、これって……どういうこと、なのかな……)

文乃 (そういうこと、なのかな……)

151以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:12:13 ID:SWSJNpPk
文乃 「い、いや、そんな、まさかぁ。きっと成幸くんのことだから、」

文乃 「何か間違えてるだけだって。水希ちゃんへのメッセージを間違えて送ってるだけとかじゃないかな」

鹿島 「実の妹にこんなメッセージを送っている方が問題と思いますが〜」

ピロン


『どうした? 今日は都合が悪いのか? だとしたら、無理を言って悪かった』

『明日でもいい。その先でもいい。できるだけ早く、お前に会える日を教えてくれ』

『時間は取らせない。古橋、お前に少し話があるだけなんだ』


文乃 「ふぁっ……」

カァアアアアア……

鹿島 「あらぁ〜」 ニヤァ 「しっかり名指しされちゃいましたねぇ〜、古橋さん」

文乃 「もっ、もうっ! 鹿島さんは向こう行ってて!」

152以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:13:40 ID:SWSJNpPk
文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (こ、こんなの……)

文乃 「………………」

ピッ……ピッピッ……


『大丈夫だよ。昼休み、お昼ご飯持って、いつもの場所、行くね』


文乃 (とりあえず、これで……)

ピロン


『ありがとう。急に変なこと言い出して悪かったな』

『嬉しいよ。楽しみにしてるな』


文乃 「なっ……」

文乃 (何が楽しみだって言うの〜〜〜!?)

153以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:14:25 ID:SWSJNpPk
………………

鹿島 「……かくかくしかじか、ということがありまして〜」

蝶野 「なんと。そんなことがあったっスか」

猪森 「苦節数ヶ月。唯我成幸の方からその気になったのなら僥倖と言うべきか」

猪森 「そもそも、古橋姫の美貌を考えればなびかぬ方がどうかしている」

鹿島 「ふふふ♪ 私、いまから楽しみで仕方がありません」

鹿島 「いばらの会総力をあげて、唯我成幸さんの“大事な話”とやらを守ろうではありませんか〜」

蝶野 「当然っス。古橋姫の恋路を実らせる。それが目下の我々の目標っスから」

猪森 「幹部以外も総動員だ。メッセージの通達は我々で分担する」

猪森 「鹿島は作戦の子細立案を頼む。昼休みまでだが、いけるか?」

鹿島 「ふふ、当然です〜。私を誰だと思っているんですか〜?」

鹿島 「いばらの会リーダー、鹿島の名は伊達ではありませんよ〜」

154以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:15:35 ID:SWSJNpPk
………………3-B

成幸 (……しまったな。興奮してメッセージをたくさん送ってしまった)

成幸 (謝っておくか。いや、それでまたメッセージを重ねてしまっては本末転倒だ)

成幸 (っていうか、ちょっと小説の影響を受けてアメリカナイズなメッセージになってしまった……)

成幸 「……ま、古橋なら笑って許してくれるよな」

成幸 「はぁ〜。昼休みは古橋に会える……」 (そしてたくさん語り合える……)

成幸 「楽しみだなぁ」

小林 「!?」 (な、成ちゃん……!? とうとう、女の子と……!)

小林 (そうかぁ。成ちゃんは武元でも緒方さんでもなく、古橋さんを選んだのか……)

ホロリ

小林 「……智波ちゃんに、武元を慰める会を開いてあげてってメッセージ送っとかなきゃ」

大森 「………………」

ギリギリギリギリ……!!!

大森 「くそぉぉおおおおおおお! 俺の春はどこだぁあああああああああ!!!」

155以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:25:11 ID:SWSJNpPk
………………3-A

古橋 (うぅ……今日は幸いにして成幸くんと同じ授業はないけど……)

キリキリキリ……

古橋 (それが余計に昼休みまでの重圧を強くするよ……)

古橋 (一体全体、成幸くんは何を考えてあんなメッセージを送ってきたんだろう)

古橋 (それに、話があるって……何の話だっていうのかな)

古橋 (そっ、それに……)


―――― 『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』

―――― 『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』


古橋 (なっ、何を言ってんの、もーっ////)

古橋 (……って、わたしったら、何を喜んでいるのかな)

古橋 「………………」

ハッ

古橋 (!? 喜んでるの!? わたしが!?)

156以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:26:23 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「で、あるからして、当時の列強諸国はどの国もこういった政策を……」

桐須先生 「……?」

古橋 (わ、わたしが!? 唯我くんに情熱的なメッセージをもらって!?)

古橋 (喜んでるの!?)

桐須先生 「……古橋さん? 顔が真っ赤だけれど、調子でも悪いのかしら?」

古橋 (そんなわけないない! だって現に、胃がすごく痛いし!)

キリキリキリ……

古橋 (うん、痛い! 大丈夫! 痛いもん!)

古橋 (……いや、胃が痛くて喜んでどうするのわたし……)

桐須先生 「今度は真っ青よ? 百面相ね。というか、私の話を聞いてるかしら?」

古橋 (いや、でも……実際……)

古橋 (もし、成幸くんに……ゴニョゴニョ……されちゃったら、わたしは……――)

桐須先生 「――――古橋さん?」

古橋 「ひっ……!? き、桐須先生!?」

157以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:27:03 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「私の授業なんて、聞く意味もないという確固たる意思表示かしら?」

桐須先生 「良い度胸ね……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

古橋 「ち、違うんです! ちょっと、考え事があって……」

桐須先生 「ほぅ。私の授業より大事な考え事。とても興味深いわね」

桐須先生 「……話は後で聞かせてもらうわ。昼休み、生徒指導室に来なさい」

古橋 「へ……?」

古橋 「本当ですか!?」 パァアアアア

桐須先生 「不可解。なぜ嬉しそうなの、古橋さん」

古橋 「なんでもありません! 昼休み、生徒指導室ですね!」

古橋 (ただの対処療法なのは百も承知だけど!)

古橋 (これで、昼休みに成幸くんと会わない口実ができた!)

古橋 (いまの精神状態で成幸くんに会ったら、どうなるかわかったもんじゃないもんね!)

158以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:28:24 ID:SWSJNpPk
………………休み時間 3-B


『ということで、ごめん、成幸くん』

『昼休みは桐須先生に呼び出されてしまったので』

『会えそうにないです』


成幸 「………………」

ガクッ

成幸 「……まぁ、桐須先生に呼び出されたんじゃ仕方ないよな」

成幸 「大丈夫だ。気にするな……送信、と……」

ピッ

成幸 「はぁ……。残念だなぁ。会いたかったなぁ、古橋……」

小林 (寝不足のせいかもしれないけど、いろいろダダ漏れだよ成ちゃん……)

ガラッ

桐須先生 「時間厳守。五秒後にチャイムが鳴るわ。席に着きなさい」

成幸 (やべっ。次、桐須先生の授業か。準備しないと……)

159以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:29:44 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 (……やばい)

成幸 (徹夜のツケが、こんなところで……)

成幸 (ねっっっっむい……)

桐須先生 「……と、いうことで、列強諸国の施策に対し、我が国は……」

成幸 (しかも古橋と会えないって分かって、少し落ち込んでるから……)

成幸 (余計に……眠い……)

成幸 (ッ……!) ブンブンブン (しっかりしろ、唯我成幸!)

桐須先生 「……? 唯我くん?」

成幸 (勉強をさせてもらっている学生という身の上で、授業中に寝るなど言語道断!)

成幸 (働いてくれている母さんにも! お弁当を作ってくれている水希にも申し訳が立たない!)

桐須先生 「唯我くん。聞いているのかしら? 唯我くん?」

成幸 (俺はVIP推薦をもらわなきゃならない! 授業中に寝ている暇なんか――)

桐須先生 「――……唯我くん?」

成幸 「ひっ……!? き、桐須先生!?」

160以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:31:07 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「私の授業はそんなに退屈かしら、唯我くん?」

桐須先生 「世界史の授業に日本の歴史もまじえて、分かりやすく話をしていたつもりなのだけど」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (し、しまった! 寝ないことに集中するあまり、授業を聞いていなかった!)

成幸 「ち、違うんです、桐須先生! ちょっと眠くて……」

桐須先生 「なるほど。私の授業は居眠りに最適な退屈な授業、と……?」

成幸 「!? そうじゃないんです、先生!」

桐須先生 「話は後で聞きます。昼休み、生徒指導室に来なさい」

成幸 「は、はい……。わかりました……」

成幸 (しょうがないよな。居眠りしそうになってた俺が悪いわけだし……)

成幸 「ん……?」

成幸 (桐須先生に呼び出された……? それって……)

161以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:41:04 ID:SWSJNpPk
………………昼休み 生徒指導室

文乃 「………………」

文乃 「ど、どうして……」

文乃 「どうして君まで生徒指導室に来るのかな!? 成幸くん!?」

成幸 「いや……ちょっと授業中に居眠りしそうになっちゃってさ……」

桐須先生 「喧噪。ここは生徒指導室よ。静かにしなさい、古橋さん」

文乃 「あっ……す、すみません……。つい……」

文乃 (……これほんとに、ほんとのほんとのマジのやつだー!!)

文乃 (成幸くんは本当にわたしに会いたくて会いたくて仕方なかったんだー!)

文乃 (だからわざと桐須先生に怒られるようなことをして……)

文乃 (生徒指導室に呼ばれてわたしに会おうと……)

文乃 (そっ、そこまでして……?)

文乃 (そこまでして、わたしに会いたかったの……?)

カァアアアア……

162以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:42:22 ID:SWSJNpPk
桐須先生 「あなたたちの今日の態度は、いくらなんでもだらけすぎです」

桐須先生 「普段の素行は問題ないので、今日はお説教と反省文だけで済ましますが、」

桐須先生 「今後も続くようであれば、本格的な生徒指導に入りますよ?」

桐須先生 「とにかく、しっかりとしなさい」

文乃 「は、はい……」

成幸 「返す言葉もありません。すみませんでした……」

桐須先生 「……よろしい。では、この原稿用紙に反省文を書きなさい」

文乃 (ほっ……。桐須先生には悪いことをしたけど、反省文で済んで良かった)

文乃 (先生の監督があれば、成幸くんとふたりきりになることはないだろうし……)

桐須先生 「書き終えたら、私に提出すること」

桐須先生 「書き上がらない場合は、放課後も残しますからそのつもりで」

桐須先生 「では、私は仕事があるので職員室に戻ります」

文乃 「へ……?」

163以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:43:18 ID:SWSJNpPk
文乃 「せ、先生!? 行ってしまうんですか!?」

桐須先生 「し、仕方ないでしょう? 私だって、他に仕事があるのだから……」

桐須先生 「古橋さん、あなた、今日は本当に変よ? 何かあったの?」

文乃 「何か、って……」 チラッ

成幸 「?」

文乃 (い、言えるわけねー!! だよっ!)

文乃 「……すみません。大丈夫です」

桐須先生 「そう? 何かあったらすぐに言いなさい」

桐須先生 「それじゃ、しっかりと反省文を書きなさい。いいわね」

ガチャッ……

文乃 (い、行っちゃった……)

成幸 「……さ、書くか」

文乃 (結局成幸くんとふたりきりだよー!)

164以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:44:02 ID:SWSJNpPk
………………

成幸 「………………」

カリカリカリ……

文乃 「………………」 ジーッ (……何か言い出すんじゃないかと身構えたけど、)

文乃 (身構えてたのがバカみたい。成幸くん、真面目に反省文書いてるだけだよ)

文乃 (やっぱりわたしの勘違いだったのかなぁ……)

成幸 「……よしっ。これでいいだろう」

文乃 「あっ、成幸くん、できたの?」

成幸 「おう。やってしまったこと。その原因。対策。しっかりと書いたからな」

成幸 「反省文の見本にしてもらっても恥ずかしくないくらいだぜ」

文乃 「ふふ。ほんと、面白いこと言うなぁ、成幸くんは」

文乃 (よかった。普通だ。この分なら、やっぱりわたしの勘違いだったんだね)

成幸 「俺が書き上がってるくらいだから、お前はもう書き上がってるだろ?」

成幸 「じゃあ、改めて、場所は違うけど、ここで話をしてもいいか?」

文乃 「へ……?」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:44:59 ID:SWSJNpPk
成幸 「………………」 キリッ

文乃 (勘違いじゃなかったー!! めっちゃ真面目な顔してこっち見てるよー!)

文乃 「だ、だめだよ、成幸くん! わたしまだ書き上がってないから!」

文乃 (ほんとは君が書き上げるはるか前に書き上がってたけど!!)

成幸 「へ……? あ、そうなのか……」

シュン

成幸 「すまん……。てっきり、古橋はもう書き上がってると思ったから……」

文乃 「うっ……」

文乃 (成幸くん、君はなんて罪な顔をするんだい……?)

文乃 (そんなしょぼくれた顔しないでよ……。嘘ついたのがすごく悪いことに思えるよ……)

文乃 「……ち、ちなみに」

成幸 「ん?」

文乃 「話、ってどんな話なのかな? それだけでも、教えてくれると……」

文乃 (心の準備ができるんだけど……)

166以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:46:30 ID:SWSJNpPk
成幸 「いやいや、お前まだ反省文書き上がってないんだろ?」

成幸 「まずそれを終わらせないと、また桐須先生に怒られるぞ?」

文乃 「そ、そうだね」

成幸 「それに、メッセージでは“時間は取らせない”なんて言ったけどさ、」

ニコッ

成幸 「よく考えたら、すぐ終わりそうにないからさ」

文乃 (君は一体何を言うつもりなのー!?)

文乃 「………………」

文乃 (……いや、これは、もう確定的)

文乃 (成幸くんは、きっと、わたしに……ゴニョゴニョ……しようとしてるんだ)

文乃 (……で、でも、成幸くんには、りっちゃんとうるかちゃんがいるし)

文乃 (友達の好きな人と、なんて……だめ。わたしにはできないよ……)

167以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:47:40 ID:SWSJNpPk
成幸 「……古橋? えんぴつが動いてないぞ?」

文乃 (成幸くんを傷つけたくない)

文乃 (何より、成幸くんと気まずくなりたくない)

文乃 (成幸くんに勉強を教えてもらいたい)

文乃 (……だから、わたしは)

成幸 「古橋?」

文乃 (ずるい女だ、わたし……)

文乃 「……ねえ、成幸くん。ごめん」

成幸 「へ?」

文乃 「成幸くんがしようとしてる話を、わたしは聞けない」

成幸 「えっ……?」

成幸 「ど、どうして……」

168以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:48:41 ID:SWSJNpPk
文乃 「だって、それは……わたしにとって、本当に大事なものを裏切ることになるから」

文乃 「裏切ることにならなくても、傷つけることになってしまうかもしれないから」

成幸 「………………」

文乃 「……成幸くんの気持ちは嬉しいよ? でも……」

文乃 「わたしは、その大事なものを壊したくないんだ」

文乃 「……君も、その大事なもののひとつだから」

成幸 「古橋……」

成幸 「……すまん。俺が悪かった」

成幸 「安易な俺を許してくれ……!」

文乃 (わ、わかってくれたぁ……) パァアアアア

文乃 「ううん、いいんだよ、成幸くん」

文乃 「わたしの方こそごめんね。君の言葉すら聞いてあげられなくて」

文乃 「でも、君の気持ちは嬉しいから。それだけは覚えておいて」

169以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:49:22 ID:SWSJNpPk
成幸 「ああ、古橋……。俺は、なんて愚かなことをしようとしていたんだ……」

文乃 「いいんだよ。本当にごめんね」

成幸 「謝らないでくれ、古橋!」

ヒシッ

文乃 「ふぇっ……?」

文乃 「!?」 (何で!? どうしてわたしの手を取ってるのかな、成幸くん!?)

成幸 「お前にとって本当に大事な思い出だもんなぁ……!」

ポロポロポロ……

文乃 「ふぇっ!? 泣いてるの、成幸くん!?」

成幸 「うぅ……すまん。古橋……」

文乃 (泣くほど辛かったんだ……)

文乃 (……それなのに、わたしは)

文乃 (その想いを聞いてあげることすらできないって……)

文乃 (……それは、いくらなんでも、ひどい気がする)

170以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:50:07 ID:SWSJNpPk
文乃 (だってもし、わたしが将来……ゴニョゴニョ……するとき、)

文乃 (相手からこんな風に、言う前に拒絶されてしまったら、きっとショックだもん)

文乃 (だから、わたしは……。きちんと断ってあげないといけないんだ)

文乃 (断って……)


―――― 『かっこいいよな。古橋は』


文乃 (……どうして)

文乃 (どうして、旅館に泊まったときのことなんて、思い出してるの……)

171以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:51:10 ID:SWSJNpPk
文乃 (わたし……わたしは……っ)

文乃 (違う。断るのが怖いんじゃない。今までの関係が壊れるのが怖いわけでもない)



文乃 (――わたしが成幸くんの言葉を、拒絶できないって分かってるから、怖いんだ)



文乃 「………………」

文乃 「……いいよ」

成幸 「へ……?」

172以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:52:04 ID:SWSJNpPk
文乃 (それでも、わたしは……聞いてあげないといけない気がする)

文乃 (ううん。認めるのは怖いけど、認めてしまおう)

文乃 (わたしは、成幸くんの言葉が聞きたいんだ……)

文乃 「話して。大事な話があるんでしょ?」

成幸 「で、でも、それはお前にとって、とっても大切な……」

文乃 「……そうだよ。でも、聞いてあげたいって思うのも、本当のことだよ」

文乃 「わたしは今、君の言葉を聞きたいって思ってるんだよ」

173以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:53:36 ID:SWSJNpPk
成幸 「古橋……」

ジーン

成幸 「ありがとう、古橋。本当にありがとう」

成幸 「じゃあ、言ってもいいか?」

文乃 「うん。どんとこい、だよ」 (わたしは、きっと……)

文乃 (成幸くんの言葉を、受け入れて……――)



成幸 「―――――― 『天の光はすべて星』 読んだよ! めちゃくちゃ面白かったよ!」



文乃 「わ、わたし、わたしは……」


文乃 「………………」


文乃 「……は?」

174以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:54:40 ID:SWSJNpPk
成幸 「いや、本当におもしろくてさ!」

成幸 「昨日偶然図書館で見つけて読んでみたら止まらなくてさ!」

成幸 「徹夜で読んじまったよ! だから居眠りしそうになったんだけどな」

成幸 「お前と語り合いたくてさー。だから昼休みゆっくり話したかったんだけど……」

成幸 「でも、そうだよな。あの本、お前とお袋さんの思い出の本だもんな」

成幸 「俺みたいな、SFもそう詳しくない奴と話したくはないよな」

成幸 「気遣いさせて悪かったな。語り合えはしないまでも、感想だけでも言えてすっきりしたぜ」

文乃 「………………」

成幸 「……? 古橋? どうかしたか?」

成幸 「顔真っ赤だぞ? 手もプルプル震えてるし、涙目だし……」

成幸 「や、やっぱり、俺がこんな話するの、嫌だったか……?」

文乃 「……べつに、なんでも、ないですし」

175以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:56:00 ID:SWSJNpPk
成幸 「へ……? なぜ丁寧語?」

文乃 「なんでもないです。ほら、早く提出しに行くよ。成幸くん」

成幸 「え? でもお前、反省文書き上がって……る!? いつの間に書いたんだ古橋!?」

文乃 「うるさい。いいから。早く出しに行こう」

成幸 「な、何を怒ってるんだよ。古橋」

文乃 「怒ってないです。怒ってると思うなら、その原因を探してください」

成幸 「やっぱり怒ってるじゃないか!?」

文乃 「女心の練習問題だよ! 少しは自分で考えろバカー!」

176以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:57:18 ID:SWSJNpPk
………………放課後

成幸 「……なんていうか、今日は本当に悪かったな、古橋」

文乃 「その話はもうしないでって言ったでしょ」

成幸 「うっ……。わ、わかった……」

成幸 (結局、謝罪は受け入れてくれたようだけど、何に怒っているのかは未だに教えてくれていない)

成幸 (やっぱり、安易にお袋さんとの思い出に触れてしまったから、怒ってるんだろうか……)

ズーン……

成幸 (俺は無神経だ。古橋と同じように親父を亡くしている俺が、)

成幸 (古橋の気持ちを慮ってやれないなんて……。教育係失格かもしれん)

文乃 「………………」

文乃 (……はぁ。また変なこと考えてへこんでいるんだろうなぁ)

文乃 「……言っておくけど、成幸くんが『天の光はすべて星』を読んでくれたことは、すごく嬉しかったんだよ」

成幸 「え……?」

177以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:58:43 ID:SWSJNpPk
文乃 「……嬉しくないわけないでしょ」

文乃 「友達が、わたしの大切な思い出を話したこと、覚えてくれてて、」

文乃 「……本まで読んでくれるなんて。そんなの、嬉しいに決まってるじゃない」

成幸 「古橋……」

成幸 「ん……? だとすると、一体何に怒ってたんだ?」

文乃 「………………」

ツーン

文乃 「……知らない。自分で考えろ! だよ」

成幸 「なんでそこは教えてくれないんだ!?」

文乃 (……教えられるわけ、ないじゃん)

文乃 (君から……ゴニョゴニョ……されると思い込んでいたなんて)

文乃 (……そして、その言葉を、たぶん、期待してしまっていた、なんて)

文乃 (……言えるわけ、ないじゃん)

文乃 (成幸くんの、バカ)

おわり

178以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 21:59:32 ID:SWSJNpPk
………………幕間1 唯我家

水希 「……お兄ちゃんの様子がおかしいときは、メッセージのチェックをしないと」

水希 「ん……? 古橋さん宛に大量のメッセージが……」

『大事な話がある』
『今日の昼休み、いつもの場所に、ひとりで来てほしい』
『頼む』
『メッセージじゃだめなんだ』
『お前に会って、面と向かって、言いたいことがあるんだ』
『頼む。いま、お前に会いたくて仕方ないのを我慢してるくらいなんだ』
『昼休みより先なんて考えられない』
『どうした? 今日は都合が悪いのか? だとしたら、無理を言って悪かった』
『明日でもいい。その先でもいい。できるだけ早く、お前に会える日を教えてくれ』
『時間は取らせない。古橋、お前に少し話があるだけなんだ』
『ありがとう。急に変なこと言い出して悪かったな』
『嬉しいよ。楽しみにしてるな』

水希 「………………」 ニヤリ 「……へぇぇえ」

水希 「……さて、とりあえず、古橋さんと、“お話”しないと……」

ユラリ

水希 「ふふ……ふふふふ……」


※その後、誤解はちゃんととけました。

179以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 22:00:30 ID:SWSJNpPk
………………幕間2  いばらの道のいばらの会

鹿島&蝶野&猪森 「「「………………」」」 ニヤニヤニヤニヤ

文乃 「……なに? 鹿島さんたち」

鹿島 「いえいえいえ。残念でしたね、古橋さん〜」 ニコッ 「告白ではなくて」

文乃 「聞いてたの!? だってあそこ生徒指導室だよ!?」

蝶野 「ふふ、甘いっスよ、古橋さん」 キリッ 「桐須先生が怖くて我らの責務が果たせるか、っスよ」

猪森 「まぁ、放課後、生徒指導室に張り付いていたことについてみっちりお説教は受けたがな」

猪森 「しかし“氷の女王”恐るるに足らず! この程度で我々が反省すると思っ――」

桐須 「――ほう。まだ反省していないのね」 ゴゴゴゴゴ……!!!

鹿島&蝶野&猪森 「「「!?」」」

桐須 「三人とも来なさい。今日は最終下校時刻に帰れると思わないことね」

アアアアアーーーオタスケヲーーーオジヒヲーーー……ズルズルズル………

文乃 「……ふぅ」 (……あの三人がいないと)

文乃 (平和で、いい……)

180以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 22:01:16 ID:SWSJNpPk
………………幕間3 慰める会

海原 「うるか、元気出して!」

川瀬 「ああ。男は唯我だけじゃないぞ」

うるか 「へ……? へ? へ?」


おわり

181以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/17(月) 22:05:10 ID:SWSJNpPk
>>1です。
いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。

今回、今までで一番楽しく書けました。
こんなことをわたしが言うのも大変恐縮な話ですが、
『天の光はすべて星』、読みやすくて面白いのでオススメです。
軽妙なかけ合いで物語が進むので、SF初心者の方でも読みやすいと思います。
興味があればぜひ。

うるかさんと理珠さんの話も書いています。
が、先に文乃さんの2つ目が書き上がってしまいました。
申し訳ないことと思います。

書いている最中興奮して、「文乃」が「古橋」になっていたりしますが、
脳内補完していただければ幸いです。

長くなりました。また投下します。
また読んでくれたら嬉しいです。

182以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/18(火) 14:03:33 ID:hvelzK5Q
眠かったり焦ったりすると自分が何やってるか分からなくなるからいいんじゃない?

183以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:20:45 ID:DUtC6N3c
>>1です。
ひとつ投下します。


【ぼく勉】文乃 「わたしはそれで満足だから」

184以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:21:54 ID:DUtC6N3c
………………十年後 春 喫茶店

文乃 「………………」

フゥ

文乃 「……遅いなぁ」

通行人1 「……わっ、すごい美人」

通子人2 「きれいな髪〜。肌も真っ白よ」

通行人3 「喫茶店でお茶をする姿も、様になってるなぁ……」

文乃 「……?」

文乃 (なにか分からないけど、じろじろ見られているような……)

?? 「……あっ、いたいた。悪い、待たせた。古橋」

文乃 「あっ……」 ハッ (し、しまった。嬉しそうな顔をしてしまったけど、ダメだよ)

文乃 (時間を守るのは社会人の基本。ここは厳しい顔をして叱ってあげなくちゃ)

文乃 「……も、もうっ。ダメだよ、成幸くん」

文乃 「時間、十五分も過ぎてるよ?」

185以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:22:43 ID:DUtC6N3c
成幸 「悪い悪い。会議が長引いてさ。許してくれよ」

成幸 「先生ってのはほんと、話好きな生き物だよ」

成幸 「みんな好き勝手喋るんだから、会議なんて終わるわけないよな」

文乃 「ふーん、だ。言い訳は聞きたくありませーん」

成幸 「だから、悪かったって……ごめん。パフェ奢ってやるから許してくれよ」

文乃 「パフェ!?」 パァアア……!!

ハッ

文乃 「……じゃない! そんなんじゃ誤魔化されないからね、成幸くん!」

成幸 「なんだよ。いま少し誤魔化されかけただろ」

成幸 「悪かったよ。俺は何をすればいいんだ?」

文乃 「………………」

文乃 「……つまで、……はし、って……ぶの?」

成幸 「へ? どうした? 全然聞き取れなかったんだけど……」

186以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:23:22 ID:DUtC6N3c
文乃 「っ〜〜〜〜〜〜〜〜」

文乃 「だ、だから!」

文乃 「……いつまで、古橋って呼ぶつもりなの、って……」

文乃 「……言ったんだよ。バカ」

成幸 「へ……? あっ」

成幸 「俺、古橋、って呼んでたか」

成幸 「すまん。えっと……」

成幸 「……ごめん。悪かったよ、文乃」

文乃 「っ……////」

文乃 「しっ、仕方ないから、今回は、それとパフェに免じて許してあげる」

成幸 「本当か? ありがたい」 ニコッ

成幸 「でも、遅れて本当に悪かったな。文乃」

文乃 「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

187以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:24:05 ID:DUtC6N3c
………………

文乃 「……ん〜、美味し〜〜い! ここのパフェは絶品だよ!」

成幸 「喜んでもらえて何よりだよ。相変わらずよく食う奴だな」

文乃 「むっ……人を食いしん坊みたいに言ってぇ……」 モグモグ

成幸 「もぐもぐしながら喋るなよ。せっかくの美人が台無しだぞ?」

文乃 「びっ……美人、って……。な、何を言ってるのかな、まったく……」

成幸 「?」

文乃 「……で、今日は一体どんな用なのかな? いきなり呼び出すなんてめずらしいよね」

成幸 「ん……まぁ、ちょっと、な……」

成幸 「………………」

文乃 「……? うつむいちゃってどうしたの? 何か悩み事?」

188以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 01:24:58 ID:DUtC6N3c
成幸 「……まぁ、悩み事って言ったらそうだな」

成幸 「文乃ぐらいにしか話せそうになくてさ」

成幸 「というか、文乃に聞いてもらいたい話がある、というか……」

文乃 「わ、わたしに?」

成幸 「ああ。お前にしか言えないんだ」

文乃 「な、何の話かな?」

ドキドキドキドキ……

文乃 (これは、ひょっとして……ひょっとすると……)

文乃 (……いや。大体こういうときは、ただの早とちりで終わるんだ。だから、きっと……――)

成幸 「――……実は、結婚指輪のこと、なんだ」

文乃 「ふぇっ!? ほ、本当に!?」

成幸 「へ……? 何で驚いてるんだ、文乃?」

成幸 「俺まだ話してないだろ? 結婚指輪をなくしたこと……」

文乃 「へ……?」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板