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【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

768以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:42:41 ID:AR9F6gVQ
………………幕間 いつもの場所 「揉み手」

成幸 「……と、いうことで、水希のために緒方に服を見せてもらったんだよ」

文乃 「なるほどねぇ。きみは本当に……」 (天然で女の子を惑わすアクマかな?)

文乃 (ま、いっか。りっちゃん、手袋も喜んでたみたいだし……)

文乃 (手袋……)

文乃 「……さ、最近寒いねー。わたし冷え性だから、手足の先が冷えるんだよねー」

成幸 「へー。やっぱ女子って大変だな。そういや水希も似たようなこと言ってたなぁ」

文乃 「………………」 モミモミモミモミ 「はー……ほんと冷えるねー」

成幸 「はは、揉み手してると、悪い越後屋みたいだな、古橋」

文乃 「………………」 ジロリ 「……唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「女心の授業、単位は上げられません。再履修してください」

成幸 「なぜ!?」

おわり

769以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:44:43 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

わたしがあまり服に興味がないせいで、
理珠さんが服を見せるシーンがまったく具体性に欠けています。
書いていて笑いそうになりました。申し訳ないことです。


また折を見て投下します。

770以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 22:10:49 ID:9SdBdkF2
ほんともう最高の一言です

771以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 22:31:54 ID:uVzPNNV2
ここ最近の楽しみはこのスレを見ることだわ

772以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 03:40:40 ID:QP3Tpil2
原作のあしゅみーエロ枠になりがちだからこっちのが好き

773以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 10:29:05 ID:lKuZbtsQ
まとめサイトで見てたけどスレッドここにあったのか
いつも楽しませてもらってます
最近はこのSSが上がるのが楽しみでしょうがない
最高です

774以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 11:59:49 ID:glyjnWWQ
これは再履修不可避

775以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/23(火) 20:24:45 ID:wE8xmduY
レスするとスレが終わりに近づくジレンマ

776以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:52:56 ID:REbudaZM
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】うるか 「いつか、絶対」

777以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:54:01 ID:REbudaZM
………………唯我家

葉月 「ふんふんふーん♪ それがー、フルピュアー、なのよー♪」

成幸 「なんだ? 葉月のやつ、えらくご機嫌だな」

花枝 「ふふ、今週の日曜日、フルピュアショーに連れてってあげるって言ってから、ずっとああなのよ」

花枝 「楽しみで楽しみで仕方ないみたい」

成幸 「フルピュアショー? 遊園地の招待券でももらったのか?」

花枝 「ううん。近くの住宅公園でやるみたいなの。入場料無料だから助かるわ」

成幸 「なるほどなぁ」

葉月 「ふふんふーん♪」

和樹 「楽しみだなー」

葉月 「うん!」

成幸 (ふふ、葉月、嬉しそうだなぁ……)

778以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:55:33 ID:REbudaZM
………………週末 土曜

葉月 「えっ……。明日、行けないの……?」

花枝 「ごめんね、葉月」

花枝 「明日の仕事、休めなくなっちゃったの。どうしてもなのよ」

葉月 「………………」

ニコッ

葉月 「……だ、大丈夫なのよー。お仕事なら仕方ないわ」

葉月 「お母さんは気にしないで、お仕事がんばってね!」

花枝 「葉月……」

葉月 「大丈夫! フルピュアショーはまたいつかやるだろうし、明日じゃなくても……」

グスッ

葉月 「!? ち、違うのよー。これは、べつに……」

花枝 「葉月、ごめんね……」 ギュッ

779以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:56:03 ID:REbudaZM
成幸 「………………」 (明日か……。しまったな。うるかとの勉強の約束を入れてしまったぞ……)

成幸 (うるかの試験も近いし、さすがにすっぽかすわけには……)

葉月 「……えぐっ……ぐすっ……」

成幸 「………………」

成幸 「……母さん、俺が連れてくよ。フルピュアショー」

花枝 「成幸……?」

成幸 「だから泣き止めよ、葉月。兄ちゃんが一緒に行ってやるから」

ポンポン

葉月 「ほんと!?」

成幸 「うそなんかつかないよ」

花枝 「成幸……。勉強とかは大丈夫なの?」

成幸 「ん、まぁ、一日家族のために働いて悪い結果が出るような、ヤワな勉強の仕方はしてないからな」

葉月 「わーい! 兄ちゃん大好きー!」 ギュッ

成幸 「よしよし。明日、楽しみだな、葉月」

葉月 「うん!」

780以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:56:43 ID:REbudaZM
成幸 「………………」

成幸 (……俺がなんのためにVIP推薦を目指してるのか)


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (家族を幸せにするためだ。楽な暮らしをさせるためだ)

成幸 (今、泣いてる葉月を放っておいたら、それも全部うそになってしまう)

成幸 (ただ、うるかには申し訳ないな……)

成幸 (また別の日に埋め合わせしてやらないと……)

成幸 (俺のVIP推薦のためだけじゃない。うるかの夢のためにも)

成幸 (……まずは、取り急ぎ電話で謝らないとだな)

781以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:57:38 ID:REbudaZM
………………武元家

うるか 「ふんふふーん♪」

うるか (……えへへ。明日は成幸と久々にふたりっきりだ)

うるか (どうしよっかな。ちょっとおしゃれしてっちゃおうかな)

うるか (海っちと川っちにそそのかされて買った服、着てっちゃったりとか……) ドキドキ

うるか (……まぁ、それでやることがベンキョーっていうのが、テンション下がるけど)

うるか (でも、成幸が自分の勉強時間を削ってあたしに付き合ってくれるんだから、)

うるか (あたしもがんばらないと……)

prrrr……

うるか 「ん……? な、成幸から電話!?」 ピッ 「も、もしもし? 成幸ー? どしたん?」

成幸 『うるか。明日、勉強の約束だっただろ?』

うるか 「へ? う、うん。それがどうかしたの?」

成幸 『……悪い。明日、行けなくなったんだ。ごめん!』

うるか 「えっ……」

782以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:58:16 ID:REbudaZM
………………

うるか 「なるほどー。そういう事情なら仕方ないよね」

成幸 『……ごめん』

うるか 「謝らないでよ。全然気にしてないよ。仕方ないって」

うるか 「あたしは成幸がいなくてもひとりで勉強できるし……」

うるか 「………………」

うるか 「フルピュアショー、かぁ……」

成幸 『? どうかしたか?』

うるか 「えっ、あっ、いや……」 アセアセ 「あたしも最近フルピュア観てるって話、前にしたじゃん?」

うるか 「あたしもショーとか行ってみたかったんだよね。でもまぁ、あたしももう高校生だし……」

うるか 「もっと小さい頃にフルピュアを知ってたら、気兼ねなく行けたのかな、とか思っちゃって」

成幸 『ん……』

うるか 「あっ、ごめんね、成幸。変なこと言って。明日、楽しんできてね!」

成幸 『……なぁ、うるか。もし良かったら明日、一緒に行かないか?』

うるか 「へ……?」

783以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:58:54 ID:REbudaZM
成幸 『葉月と和樹も一緒だけど、それでいいなら、一緒にどうだ?』

成幸 『たしかに高校生にもなってキャラクターショーにひとりで行くのは気が引けるかもしれんが……』

成幸 『葉月と和樹も一緒なら、付き合いで来てるようにみえるだろう?』

成幸 『それに、終わった後うちに来て、一緒に勉強もできるしな』

うるか 「……い、いいの? あたしも一緒に行っても」

成幸 『もちろんだ。葉月と和樹もその方が喜ぶだろう』

成幸 『……それに、お前には悪いけど、女手があった方が俺もありがたいし』

うるか 「あ……じ、じゃあ、一緒に行こうかな」

成幸 『よーし! じゃあ、勉強道具も忘れずにな!』

うるか 「う、うん。じゃあ、また明日」

成幸 『おう! よろしくな、うるか!』

ピッ

うるか 「………………」

ニヘラ

うるか 「ど、どうしよう……。明日、お出かけになっちゃったよぅ。えへへ……」

784以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:59:38 ID:REbudaZM
うるか (葉月ちゃんと和樹くんが一緒……。フルピュアショー……)

うるか (……それなら、あの可愛い服、着てってもいいかな)

うるか (へ、ヘンとか思われないかな。似合わないとか、言わない……よね)

うるか (えへへ……)

ハッ

うるか (い、いけないいけない。明日は成幸にとっては大事な家族サービスなんだから、気を引き締めないと)

うるか (勉強道具、忘れないようにもう入れちゃおう)

うるか (あとは、ハンカチとティッシュ……チビちゃんたちもいるから、多めに持ってこう)

うるか (あとは、あとは……) ピキューン (そうだ! 経験者に聞けばいいんだ!)

ガチャッ

うるか 「ねー、ママー! あたしが小さい頃お出かけするとき何用意したー!?」

785以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:00:08 ID:REbudaZM
うるか母 「……いきなり部屋から飛び出してきたと思ったらいきなりどうしたの?」

うるか 「ちょっと友達の弟妹とお出かけすることになったの!」

うるか母 「? まぁよく分からないけど、とりあえずあんたが小さい頃使ってたバルーンバッグ貸してあげるわ」

うるか 「!? たくさんものが入りそう! ありがとう、ママ!」

うるか母 「あんたが小さい頃、その中に必要そうなもの全部入れてったわ。なつかしいわねぇ……」

うるか 「ハンカチとティッシュは多めにいれたよ! あとは何がいるかな?」

うるか母 「そうねぇ……。飲み物を多めに持っていくのと、お菓子かしら」

うるか母 「ぐずったりしたときに便利なのよ」

うるか 「なるほどなるほど。じゃあ、あたし秘蔵のお菓子を入れとこう」 ポイポイポイ

うるか母 「あとはねぇ……」

うるか 「ふむふむ……」

786以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:00:50 ID:REbudaZM
………………翌日 駅前

うるか 「おはよう、成幸! 葉月ちゃん! 和樹くん!」

成幸 「お、おう、おはよう、うるか」

葉月&和樹 「「おはよー! うるか姉ちゃん!」」

成幸 「なんか、えらく大荷物だな」

うるか 「ふふーん、そうでしょ? 葉月ちゃんと和樹くんとお出かけだから、」

うるか 「色々と必要そうなものを持ってきたんだよ」

成幸 「そ、そうか。なんか悪いな。重くないか?」

うるか 「大丈夫! 大して重くないよ!」

成幸 (ペットボトルとかお菓子が見え隠れしてるな……)

成幸 (葉月と和樹のために持ってきてくれたのか……)

成幸 「……俺、ほとんど荷物ないし、持つよ」

うるか 「へ……? い、いやいや、あたしが勝手に持ってきただけだから――」

成幸 「――いいから貸せよ、ほら」

787以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:01:21 ID:REbudaZM
ズシッ

成幸 「!?」 (な、何が大して重くない、だ)

成幸 (めちゃくちゃ重いじゃねーか!)

うるか 「大丈夫、成幸? あたしヘーキだから、持つよ?」

成幸 「だ、大丈夫だ。これくらい軽い軽い」

成幸 「それに、その服、この前買った服だろ?」

うるか 「へ……?」

成幸 「せっかくかわいい服なんだから、大荷物なんか持ってたらもったいないだろ」

うるか 「………………」

ボフッ

うるか 「……か、かかかかかか、かわいい?」

成幸 「……?」 ハッ (な、何を言ってるんだ俺は!? か、かわいいって……)

成幸 (これじゃ俺がうるかのこと口説いてるみたいじゃねーか!)

成幸 (うるかには好きな人がいるってのに、俺はなんてアホなことを……!)

788以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:01:57 ID:REbudaZM
成幸 「ち、違うぞ、うるか! 俺は、ただ、服のことを言っただけであって……」

うるか 「……っ」

うるか (そ、そうだよね。あたしには、こういうかわいい服は似合わないよね……)

うるか 「………………」

うるか (違う……)


―――― 『今日のあたしさ お姫様みたいじゃない?』

―――― 『こ……このカッコ 似合って…… ないかな……』

―――― 『あ あはは やっぱいいや!』

―――― 『成幸の感想なんてどうでもいいしっ! じゃあねっ!』


うるか (……あたしは、だって、もう、あのときのあたしとは違うもん)

うるか 「じ、じゃあさ……」

ズイッ

うるか 「この服、あたしには似合わない?」

789以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:02:33 ID:REbudaZM
成幸 「へっ……!?」 (ち、近っ……)

成幸 「いや、えっと……」

うるか 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 「に、似合ってないわけ、ないだろ……」

成幸 「お姫様……みたいで……その、あ、えっと……」

成幸 「かわいいと、思います、です……」

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「あははっ、成幸めっちゃ顔真っ赤ー! なんで敬語になってんのさー!」

成幸 「う、うるせーな! そういうお前だって顔真っ赤じゃねーか!」

うるか (そんなの当たり前じゃん……)

うるか (大好きな人にかわいいっていわれて、嬉しくて仕方ないんだもん!)

クイックイッ

790以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:03:05 ID:REbudaZM
うるか 「ん……? 葉月ちゃん?」

葉月 「兄ちゃんとうるかお姉ちゃんのラブラブもいいんだけどね」

葉月 「早くフルピュアショー見に行きたいのよね」

うるか 「あっ……そ、そうだよね! ごめんごめん」

和樹 「兄ちゃん、まだ顔真っ赤だぞ?」

成幸 「う、うるせーな。わかってるよ……」

成幸 (……っ、なんか、よくわからないけど、)

成幸 (今日のうるか、めちゃくちゃかわいいな……)

ハッ

成幸 (いかんいかん。俺の事情に付き合ってくれてるうるかに、変なことを考えるな、俺)

成幸 (うるかには好きな人がいるんだ。俺が変なことを考えちゃいかん)

うるか 「ほら、成幸ー、行くよー?」

成幸 「あ、ああ……」

成幸 (……大丈夫。俺はうるかの友達。ただの、友達なんだから)

791以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:03:43 ID:REbudaZM
………………住宅展示場

うるか 「おー! すごいね、成幸」

うるか 「オシャレなおうちがたくさん並んでるよ」

成幸 「……なるほどなぁ。色んな会社がそれぞれの家を展示してるんだな」

成幸 「そりゃ、どの会社もオシャレで見栄えがする家を展示するよな」

葉月 「フルピュアショーはどこでやるのかしら?」

成幸 「ん……ああ、案内が出てるな」

成幸 「どうも、受付を済ませる必要があるみたいだな。まず受付の建物に行こうか」

葉月 「じゃあ、早く、早く。ショーが始まっちゃうわー」

成幸 「まだ時間はあるから大丈夫だよ。……わわっ、引っ張るなって」

うるか 「……葉月ちゃん、本当に楽しみにしてたんだねー、フルピュアショー」

和樹 「んー、まぁ、うちは貧乏だから、遊園地とかのショーは行けないからなー」

和樹 「無料で観られるって知って、本当に楽しみにしてたんだよ」

うるか 「そっか……」

792以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:04:18 ID:REbudaZM
………………受付

成幸 「………………」

成幸 (や、やばい……! 周りにいる人たち、どう見てもみんな……)

成幸 (新婚さんとか、お子さん連れとか、とにかく夫婦ばっかりだー!)

成幸 (高校生と小児連れの俺たちは、確実に浮いている……!)

係員 「あの、お客様?」

成幸 「!? は、はい!」

係員 「受付はまだでしょうか? よろしければ、こちらのカウンターでお受け致しますが」

成幸 「あ、は、はい……よろしくお願いします……」

成幸 (だ、大丈夫なのか? そもそもここ、住宅展示場だよな)

成幸 (俺みたいな高校生が来ていいところじゃないんじゃ……)

係員 「奥様とお子様も、こちらの席にお座りください。どうぞ」

うるか 「……!?」

うるか (お、奥様!?)

793以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:05:15 ID:REbudaZM
成幸 「あ、いや、彼女は……――」

うるか 「――は、はい! 奥様です!」

成幸 「へ……!?」

うるか 「ほら、葉月ちゃんと和樹くんも、こっち座ろうねー」

葉月 「? はーい」

成幸 「う、うるか……?」

うるか 「しーっ」 コソッ 「高校生だってバレたら追い出されちゃうかもだよ?」

うるか 「ここは、夫婦のフリ、するしかないっしょ」

成幸 「そ、そりゃそうかもしれんが……」

係員 「お客様? どうかされましたか?」

成幸 「い、いえ、なんでもないです!」

係員 「では、旦那様、奥様、当展示場の説明をさせていただきます」

成幸 (旦那様……)

うるか (奥様、かぁ……///)

794以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:06:13 ID:REbudaZM
………………受付後

成幸 「………………」

ガクッ

成幸 「……し、死ぬかと思った」

うるか 「まったくもー。成幸は小心者だなー」

うるか 「べつにウソついたわけでもないし、向こうがあたしたちのこと……ふ……」

カァアアアア……

うるか 「夫婦って、勘違いしただけだし……」

成幸 「夫婦……」

カァアアアア……

成幸 「……そ、そりゃ、そうだけど……」

葉月 「もー、うるかママも成幸パパも、見つめ合ってないで、フルピュアショー行くわよー!」

クイクイ

成幸 「ぱ、パパ……?」

うるか 「ママ……!?」

795以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:06:59 ID:REbudaZM
葉月 「? だって、新婚さんのフリするのよね?」

和樹 「じゃあ今日一日、兄ちゃんと姉ちゃんは、成幸パパとうるかママだな!」

成幸 「い、いや、それは……さ、さすがに……///」

うるか 「い、いいじゃん! その方が、都合がいいこともあるだろうし……」

成幸 「うるかがいいならいいけどさ……」

うるか (ま、ママかぁ……えへへ……)

成幸 (パパって……さすがに、まずい気がするぞ……)

うるか 「よーし、じゃあ行くぞー、葉月ちゃん、和樹ちゃん」

葉月 「おー!」

和樹 「いくぞー!」

ドタドタドタドタ……

成幸 「ち、ちょっと待ってくれー! 荷物があるんだよー!」

796以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:07:44 ID:REbudaZM
………………広場

葉月 「きゃー! ショーのための舞台があるわー!」

和樹 「夢にまで見たフルピュアショーだもんな。よかったな」

葉月 「うん!」

うるか 「お子様は前に行っていいみたいだよ。いってらっしゃい、ふたりとも」

葉月 「わーい!」

成幸 「パパとママはここで座って後ろから見てる感じか。なるほどなぁ……」

うるか 「大人が前に行っちゃったら小さい子が見えなくなっちゃうもんね」

成幸 「……お前は前に行かなくていいのか?」 クスッ

うるか 「! もーっ、子どもあつかいしないでよー、成幸!」

うるか 「あたしは大人なフルピュアファンだからね。後ろからこっそり応援するよ」

客1 (なんか、すごく若い夫婦……)

客2 (いいなぁ、若くて……。ラブラブだなぁ……)

797以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:08:34 ID:REbudaZM
葉月 「うるかママー! 成幸パパー!」

ブンブンブン

成幸 「お、おー、葉月ー」

成幸 (さ、さすがに大声でママパパ呼びされると恥ずかしいな……)

成幸 (うるかもさすがに嫌かな……? うつむいちゃったぞ……)

うるか 「………………」

うるか (なにこれ幸せすぎて怖い)

うるか (これからフルピュアショー観られるってだけでも嬉しいのに、)

うるか (成幸と新婚夫婦役とか幸せすぎて怖い)

ニヘラ

うるか (ニヤけるのが止まらなくて、顔上げられないよ〜〜〜!!)

客1 (ラブラブアベック……)

客2 (初々しい新婚さん……)

((いいなぁ……))

798以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:09:06 ID:REbudaZM
………………フルピュアショー

怪人 『ゲッヘッヘッへ、今日は住宅展示場にお邪魔したぞ〜』

怪人 『美味そうな子どもたちがいっぱいだな〜、ゲッヘッヘッへ!!』

成幸 (おお、アニメと違って着ぐるみだと少し迫力があるな)

成幸 (あいつら怖がってないかな……?)

葉月 「きゃー! きゃー! 怪人さんがいるわー! 本物よー!」

和樹 「アニメよりかっこいいな。ふむふむ」

成幸 (うちの弟妹はそんなにヤワじゃないよな……)

成幸 (それにしても、まだフルピュアも出てないのにすごい喜びようだな……)

うるか 「ねぇねぇねぇ見て見て成幸! 本物の怪人さんだよ!」

うるか 「来てよかったよー!」

成幸 (お前もか、うるか……)

799以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:09:43 ID:REbudaZM
 『お待ちなさい!!』

バーン!!!!

うるか 「キャーーーーー!!! フルピュアだよ成幸! 本物だよ!」

成幸 (どっちかっていうと、アニメの方が本物なんじゃないかと思うんだが……)

成幸 「あ、ああ、そうだな……」

葉月 「きゃー! 勢揃いしてるわー!」 ワクワク

和樹 「フルピュアって結構大きいんだな……」 ドキドキ

成幸 「………………」

クスッ

成幸 (まぁ、みんな楽しそうだしいいか……)

うるか 「きゃー! 見て成幸! フルピュアダークネスも出てきたよ!?」

バシバシバシ

成幸 「痛い痛い痛い! どんだけ興奮してるんだうるか!?」

800以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:10:22 ID:REbudaZM
………………ショー終了後

葉月 「うるかママー! すごかったわー!」

タタタタタ……ギュッ

うるか 「そうだねぇ、葉月ちゃん。ダークネスもカッコよかったねぇ」

葉月 「うん!」

うるか 「この後は写真撮影ができるみたいだよ。ほら、並ぼう、葉月ちゃん」

葉月 「写真撮影?」

成幸 「フルピュアと写真が撮れるみたいだな。握手もしてくれるみたいだぞ?」

葉月 「本当に!? 行くわ行くわー!」

801以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:10:56 ID:REbudaZM
………………

成幸 「ほら、葉月と和樹の番だぞ。いってこい」

葉月 「うん!」 ドキドキドキ

うるか 「あはは、葉月ちゃんも和樹くんも緊張した顔だね」

成幸 「憧れのヒーローが目の前にいて嬉しいんだろうなぁ……」

成幸 「今日、来られてよかった。ありがとな、うるか」

うるか 「へ……? べ、べつにあたしは何も……」

うるか 「今日だってついてきただけだし……」

うるか 「っていうか、はりきって荷物たくさん持ってきちゃった。ごめんね、持たせて」

成幸 「葉月と和樹のために持ってきてくれたんだろ? ありがたいよ」

うるか 「えへへ……」

チラッ

うるか (葉月ちゃんも和樹くんも嬉しそう。いいなぁ、フルピュアと写真……)

うるか (って、まぁ、高校生のあたしがうらやましいって思うもんじゃないよね)

802以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:11:53 ID:REbudaZM
成幸 「……?」 (うるか……なんか……)


―――― 『いちフルピュアファンとして……ちゃんと3色揃ってないのはナットクいかないっつーか……』


成幸 (文化祭でも相当こだわりがあったみたいだし、本当にフルピュアが好きなんだよな……)

成幸 (ひょっとして、写真……)

パシャッ

うるか 「……ん、成幸、ふたりとも写真撮影終わったみたいだよ」

成幸 「ああ……。じゃあ、行こうか」

うるか 「……うん」

ギュッ

うるか 「……? 成幸、どうしたの?」

成幸 「すみません。次、俺たちも撮ってもらってもいいですか?」

うるか 「へっ……?」

成幸 「悪い、葉月、和樹、ちょっとそっちで待っててくれ」

うるか (成幸、ひょっとして……) カァアア…… (あ、あたしのために……?)

803以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:16:43 ID:REbudaZM
………………撮影後

うるか 「………………」

ジーーーッ

うるか (ど、どうしよう……フルピュアと写真撮影しちゃったよ……)

うるか (全員と握手までしてもらっちゃったし……)

うるか (それに……)

うるか (……これ、成幸とのツーショットでもあるよね)

ニヘラ

うるか (えへへ……えへへへへ……)

成幸 (うるかの奴、本当に嬉しそうな顔だ)

成幸 (……ちょっと恥ずかしかったけど、写真撮ってもらってよかったな)

和樹 「よかったな、写真撮ってもらって、ハグもしてもらえて」

葉月 「うん! この写真、わたしの宝物にするの!」

成幸 (葉月と和樹も本当に嬉しそうだ。来て良かった……)

804以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:17:17 ID:REbudaZM
うるか 「この後どうするの?」

成幸 「ん……なんか、受付でもらった袋に、チケットがいくつか入っててさ」

うるか 「チケット?」

成幸 「ああ。展示場の色々な場所に屋台みたいなのがあるみたいだな」

成幸 「……!? そこでチケットを渡せばただで食べ物がもらえるみたいだぞ!?」

葉月&和樹 「「タダ!?」」 キラキラ

成幸 「タダで食べ物がもらえるとは……ここは天国か……」

うるか (そんなに……?)

クスッ

うるか 「よーし、じゃあ、展示場回って食べ物もらいに行くかー!?」

葉月&和樹 「「おー!!」」

成幸 「タダで食べ物……タダで……す、すごすぎるぞ……」

うるか 「いつまで驚いてんのさー、成幸ー。行くよー!」

805以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:18:08 ID:REbudaZM
………………

成幸 「ほ、ホットドッグ!? ホットドッグをタダで!?」

スタッフ 「え、ええ、そうですけど……」

スタッフ 「4名様ですよね。どうぞ」

ゴソッ

成幸 「に、人数分!? 人数分、タダでくれるんですか!?」

成幸 「ほ、本当にタダなんですか!? 帰りにお金を請求されたりとか……」

うるか 「もー、恥ずかしいからやめてよ成幸! 大丈夫だよ!」

………………

成幸 「焼きそば!? 焼きそばもタダで!?」

成幸 「しかも結構大きいパッケージに……また人数分!?」

成幸 「お肉も野菜もたくさん入ってて……マヨネーズかけ放題ですって!?」

スタッフ 「え、ええ……」

成幸 「本当にタダなんですか!? どうしてタダにできるんですか!?」

うるか 「もー! だから恥ずかしいからやめてってばー!」

806以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:19:11 ID:REbudaZM
………………

成幸 「タダでお腹いっぱいになってしまった……」

成幸 「しかも葉月と和樹は風船までもらって……」

成幸 「罰が当たらないだろうか……」

うるか 「大丈夫だよ、もー」

うるか 「スタッフの人も言ってたじゃん。展示場を回ってもらうためのイベントなんだって」

うるか 「だから、あたしたちが屋台を回ってタダで食べ物をもらうだけでいいんだって」

成幸 「む……仕組みは理解しているんだが、なんかこう、釈然としないというか……」

葉月 「フルピュアショーも写真撮影もタダでできて……」

和樹 「おなかいっぱいになるまでご飯食べられて、風船までもらって……」

葉月&和樹 「「天国だ……」」

うるか 「兄弟だねぇ……」

うるか 「ほら、ふたりとも、喉渇いたでしょ。お茶飲みなー」

葉月&和樹 「「はーい」」

807以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:20:02 ID:REbudaZM
成幸 「ありがとな、飲み物。本当に助かるよ……」

うるか 「なんのなんの。家にあったやつだから気にしないで」

成幸 「……悪い。ありがとう」

ハァ

成幸 「それにしても、こうもカラフルで立派な家が並んでると壮観だな」

うるか 「そうだね。三階建てとか憧れるよね」

成幸 「うちはまず平屋だから二階建てに憧れるけどな」

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、うるか。ちょっと俺の話をしてもいいか?」

うるか 「? 成幸の話? いいけど、どんな話?」

成幸 「……俺さ、いつかお金をたくさん稼いで、家を建てるんだ」

うるか 「へ? 家?」

808以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:20:53 ID:REbudaZM
成幸 「おう。できるだけ立派で広い家。それこそ……」

葉月 「……はー、あとはお菓子もあったら言うことないわね」

和樹 「さすがに天国でもそこまではムリだろー」

成幸 「……母さんと水希と、あいつらふたりが、不自由しないような家」

成幸 「いつか絶対、建てたいんだよ。こういうところに来ると、がんばらなきゃって思えるな、って感じてさ」

成幸 「俺の夢は、家族に幸せに楽な暮らしをさせてやることだからさ」

成幸 「家を建てるっていうのも、俺にとってはきっと夢のひとつなんだろうな、って……」

成幸 「……ははっ、悪い。何を言いたいんだかよく分からない、つまらない話をしちゃったな。悪い。忘れてくれ」


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (はは、俺の夢……。そんなの夢じゃないとか、つまらないとか、そういう風に言われること、多いしな……)

成幸 (うるかだってこんな話されて困って……――)


うるか 「――……つまらなくなんて、ないよ」


成幸 「えっ……?」

809以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:21:37 ID:REbudaZM
うるか 「だってそれ、成幸にとって、大事な夢なんでしょ?」

うるか 「立派じゃん。すごいじゃん。本当に、すごいことだよ、それって」

うるか 「だから、つまらなくなんてないよ。大事な話、してくれてありがとう、成幸」

ニコッ

成幸 「うるか……」 ドキッ

成幸 「ま、まぁ、葉月と和樹の教育資金も必要だし、家なんかいつ建てられるか分からないけどな」

成幸 「母さんだっていつ体調崩すか分からないし……」

うるか 「……でも、いつか叶えられたらいいね」

うるか 「……ううん。いつか、絶対叶えようね、その夢。一緒に大きなおうち建てようね!」

成幸 「……おう!」

成幸 (……ん? 一緒に……? 一体どういう意味だ?)

うるか (はっ、し、しまった……! ついつい、成幸が夢の話をしてくれたのが嬉しくて、一緒にとか言っちゃった!)

成幸 (……まぁ、いいか。きっと大した意味じゃないだろう)

うるか (まぁいいよね! きっと成幸ニブチンだから気づかないし!)

810以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:23:02 ID:REbudaZM
葉月 「……ん?」

(´(ェ)`)ノシ

葉月 「……んー? んん??」

和樹 「? どうかした?」

葉月 「あのおうちから、くまさんが手を振ってるわ」

和樹 「くまさん……? ああ、玄関から手振ってるな」

葉月 「おいでおいでしてる?」

和樹 「してるな」

成幸 「? おい、どうしたんだ?」

葉月 「クマさんが呼んでるのー」

和樹 「行ってみようぜ、兄ちゃん――じゃなかった、パパ!」

成幸 「あ、ち、ちょっと待てって!」

811以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:23:45 ID:REbudaZM
タタタタタ……

葉月 「クマさん、こんにちは!」

和樹 「こんにちは!」

クマ 『こんにちは!』

クマ 『ふたりとも挨拶できて偉いね〜!』

クマ 『お父さんとお母さんはいるのかな?』

和樹 「うん! いまこっちにくるよ!」

クマ 『そっかぁ……』

キラン

クマ 『実はね、おうちの中に、美味しいジュースとお菓子があるんだけど、』

クマ 『食べに来ないかな?』

葉月 「お菓子!? ジュース!?」  和樹 「いいの!?」

812以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:24:30 ID:REbudaZM
成幸 「……? お、おいおい、なんか展示住宅の中に入っちゃったぞ!?」

うるか 「誘拐!?」

ドタドタドタドタ……

スタッフ 「こんにちは。先ほどのお子様の、お父様とお母様ですか?」

成幸 「え、ええ。そうですけど、葉月と和樹は……」

スタッフ 「中にご案内しております」

ニコッ

スタッフ 「温かいお茶のご用意もありますので、旦那様、奥様もどうぞ」

成幸 「えっ、い、いや、でも……俺たち、その、お金もないし……」

スタッフ 「ご予算のご相談でしたらお受け致しますし、低金利のローンもご用意できます」

スタッフ 「ぜひ、お話だけでも聞いていただければと思います」

成幸 「えっ、あっ……えっと……」

813以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:00 ID:REbudaZM
………………展示住宅内

葉月 「きゃー!」

和樹 「広いなー! きれいだなー! うちの何倍あるかなー!」

ドタバタドタバタ……

成幸 「こ、こら! 余所様のお宅なんだから、静かにしなさい!」

スタッフ 「大丈夫ですよ、お客様。弊社の住宅の一番のウリは頑丈さですから」

スタッフ 「他のスタッフがお子様の遊び相手を務めておりますので、ご心配なく」

成幸 (ど、どうしよう、うるか。仕方なく入っちゃったけど、高校生ってバレたら怒られるかな……) コソッ

うるか (バレないってばー。大丈夫だよ。どんと構えてようよ) コソッ

成幸 (こういうとき、お前の脳天気さが頼もしいよ……) コソッ

スタッフ 「では、お客様。家の中をご案内いたしますね」

814以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:36 ID:REbudaZM
………………

成幸 「………………」

成幸 (すごい……!!)

成幸 (鉄筋コンクリート製の家は外だけじゃなく中も立派だ)

成幸 (トイレも風呂もキッチンも非の打ち所のない美しさと機能を兼ね備えている!!)

成幸 (収納も多いし部屋数も豊富だ。いつか葉月と和樹が大きくなったとき、それぞれに部屋を与えることもできるだろう……)

成幸 (ただし!)

スタッフ 「えー、ただいま見ていただいたこの家ですと、大体ピー千万円からになります」

スタッフ 「弊社でご用意させていただく土地をご購入いただければ、土地自体は格安ですし、オプションをおつけすることもできます」

成幸 「ち、ちょっと、そのお値段は手が届かないかな、と……」

スタッフ 「そうですか。もっとお安い間取りもございますので、こちらのモデルプランをぜひお持ちください」

スタッフ 「低金利のローンのご用意もございますので、ぜひご検討いただければと思います」

成幸 (うぅ……。たしかに魅力的な家だが、さすがにまったく検討もつかない金額だから何も考えられんな)

うるか 「ふむふむ……なるほどなるほど……」

成幸 (頼みの綱のうるかは向こうで別のスタッフさんと何か喋ってるしー!)

815以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:26:22 ID:REbudaZM
うるか 「……!? ほんとですか!?」

うるか 「ねえねえ成幸! すごいこと聞いちゃったよ!」

成幸 「……?」

うるか 「たとえばあたしが仕事なりパートなりをして、月々の生活費を捻出できれば、」

うるか 「成幸の給料から葉月ちゃんと和樹くんの教育ローンと家のローンも組めるって! しかも貯金もできる!」

うるか 「ボーナスをローン返済に回せば、三十年ローンを組んだとして、十五年で完済できるかもって!」

成幸 「お、おう……。お前の口から難しい言葉が出てくるとなんか違和感あるな……」

成幸 「……っていうかその試算、お前が働くって前提だろ? 俺の給料だってまだ不確定だし……」

うるか 「大丈夫! 成幸のお給料で足りない分は、あたしががんばって稼ぐし! 家事だってがんばるし!」

うるか 「成幸の夢、叶えるためだったらいくらでもがんばるよ!」

成幸 「お、おう……///」 (お、奥さんのフリ、具体的にやりすぎだろ……さすがに照れるぞ……)

スタッフ 「……良い奥様ですね」 コソッ

成幸 「へっ……!?」 カァアアアア……

うるか 「?」

成幸 「………………」 コクッ 「……そう、思います。本当に」

816以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:26 ID:REbudaZM
………………帰路

葉月&和樹 「「………………」」 zzz……

成幸 「ったく、散々遊び回って、疲れたら寝ちまうんだからなぁ……」

うるか 「子どもらしくていいじゃん。ふたりとも幸せそうだし」

成幸 「悪いな。葉月おんぶさせちゃって」

うるか 「ううん。寝てる子どもの体温、湯たんぽみたいで気持ちいいよ。得した気分」

成幸 「……お前のその前向きさ、ほんと見習いたいよ」

うるか 「そう? えへへ、褒められちったー」

ルンルン♪

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……お前はほんと、“良いお嫁さん” になりそうだな」

うるか 「……はぇ!?」

カァアアア……

うるか 「き、急になに、成幸……」

817以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:58 ID:REbudaZM
成幸 「いや、そう思ったから言っただけだよ。料理も美味いし、前向きだし、体力もあるし、元気だし……」

成幸 「……って、変なこと言ったな。悪い」

うるか 「………………」

うるか (まったく、成幸ったら……人の気も知らないで……)

うるか (でも、そっか……。成幸がそう思ってくれてるんだ)

うるか (あたしのこと、“良いお嫁さん” になるって思ってくれるんだ)

グッ

うるか 「……うん。なるよ」

成幸 「ん?」

うるか 「なるよ。“良いお嫁さん”」

成幸 「あ、ああ。そうか。そうだよな」 ニコッ 「本当に、なると思うよ。“良いお嫁さん”」

うるか (いつか、成幸の、“良いお嫁さんに”)

ニコッ

うるか 「うん! いつか、絶対。なってみせるから」

おわり

818以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:28:41 ID:REbudaZM
………………幕間1 夜 唯我家 「敵」

水希 「今日は本当にありがとうございました、武元さん」

うるか 「へ……? あたしなんかしたっけ?」

水希 「葉月と和樹から聞きました。フルピュアショーが本当に楽しかったって」

水希 「あのふたりがニコニコ嬉しそうにわたしに言うんです。だから、本当に楽しかったんだろうな、って……」

うるか 「いやいや、あたしが勝手についていっただけだから、気にしなくていいよ」

うるか 「あたしも楽しかったしね!」

水希 (この人は本当に、葉月と和樹のために色々してくれたらしい……。武元さんには気を許してもいいかな……――)

葉月 「――あっ、うるかママー! ……じゃなかった、うるかお姉ちゃーん」

水希 「………………」 ガシッ 「……待って、葉月。ママって何?」

葉月 「? ちょっとね? 誤魔化さなくちゃいけなかったから? うるかお姉ちゃんがママ役で、兄ちゃんがパパ役をやっただけよ?」

水希 「……ふーん、そう」 ギリッ (お兄ちゃんがパパで、武元さんがママ……へー、ふーん、そうかぁ……)

うるか 「? 水希ちゃん? どうかした?」

水希 「いえ……」 (やはり……)

水希 (やはり、この人も……敵!!)

819以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:29:21 ID:REbudaZM
………………幕間2 「ツーショット」

海原 「なんか唯我くんと進展あったんだって、うるか?」

川瀬 「教えろよー。何があったんだ、一体」

うるか 「えへへ……実は、ツーショット写真、撮っちゃったんだ」

川瀬 「な、何ぃー!? 奥手なあんたが!?」

海原 「よくがんばった! よくやったよ、うるか!」

川瀬 「して、その写真は?」

うるか 「は、恥ずかしいけど……見てもらおうかな。ほら」

海原 「……?」 (フルピュアの着ぐるみに抱きつくうるかとその隣の恥ずかしそうな唯我くん……)

川瀬 (これはツーショットと言えるのか……?)

うるか 「えへへー。ツーショット〜。これ、宝物にするんだ〜」

海原 (……まぁ)

川瀬 (うるかが嬉しそうだし)

海原&川瀬 ((ツーショットってことでいいか……))

おわり

820以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:32:22 ID:REbudaZM
>>1です。
見てくださった方、ありがとうございます。
感想や乙をくれる方、ありがとうございます。
励みになりますので、いただけると本当に嬉しいです。

まだまだ書きたい話がありますので、このスレが埋まったら恐縮ですがまた新しいスレを立てようかと思います。
まだ先の話ではありますが。

もし万が一何か書いてほしい話・キャラ等がありましたらレスください。
実現できそうだったら書きます。

また折を見て投下します。

821以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:09:13 ID:Tg00Lxe6
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「この場所で、また君と」

822以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:11:34 ID:Tg00Lxe6
………………朝 一ノ瀬学園

文乃 「………………」

ハァー

文乃 (あ、息、少し白いや)

文乃 (朝方は空気が冷えるようになってきたなぁ)

文乃 (今年は秋が短い気がする。ついこの前まで暑かったはずなのにな)

文乃 (……もう、冬なんだね)

文乃 「………………」

文乃 (もう受験、なんだよね……)

文乃 (春からこっち、長かったような、短かったような……)

文乃 (本当に色んなことがあったな)

クスッ

文乃 (そのほぼすべてに、“彼” が関わっているんだよね)

文乃 (今だって、来るか来ないかもわからない彼を待っているわけだし)

823以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:14:09 ID:Tg00Lxe6
文乃 (……いつ頃からだっけ。こうやって、ここで彼を待ったり、待たせたりするようになったのは)

文乃 (最初はりっちゃんとうるかちゃんの成績ががた落ちしたときだったよね)

文乃 (鈍い彼は、どうしてふたりの成績が落ちたのか分からなくて、苦労してたなぁ)

文乃 (彼の相談や愚痴、他愛もない話を聞いているうちに、いつの間にかここに来るのが習慣になって……)

文乃 (最初の頃はメールで約束したりもしていたけれど……)

文乃 (いつからか、こうやってなんとなくここに来るようになって……)

文乃 (……わたし、本当に、最近は毎日ここに来てるな)

文乃 (今日は彼は来ないみたいだ。待ちぼうけだね)

クスッ

文乃 (……まぁ、わたしが勝手に待っているだけなんだけどね)

文乃 (時間ももったいないし、数学の公式でも覚えようかな)

文乃 (成幸くんお手製のフラッシュカード……。本当だったら自分で作るべきなんだろうけど)

文乃 (“教材は俺が作るから、そんな暇あったら勉強してろ” だもんなぁ……)

文乃 (わたしはいつも、彼に甘えてばかりだ。でも、だからこそ……)

文乃 (……その彼の頑張りに報いるためにも) グッ 「……がんばるぞ、わたし!」

824以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:15:40 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「ん……?」

パチッ

文乃 (あれ、ひょっとして、わたし寝てた……?)

文乃 (こんなに寒いところで寝てたら、また風邪引いちゃうよ……)

文乃 (……あれ? でも、なんか……)

文乃 (寒くない?)

?? 「文乃? 起きたの?」

クスクス

文乃 「はぇ……?」 (あれ、わたし、目線が低い……?)

文乃 (ここは、どこ? 目の前で笑っている、この人は……)

文乃 「お母さん……?」

825以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:16:13 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「あ、あれ……?」

カーン……カーン……カーン……

文乃 (今度は何? 広場 ?工場……? いや、ここは……)

文乃 (ロケット!? えっ!? じゃあ、発射場!?)

文乃 (っていうか、わたし、なんで白衣なんて着てるの……?)

?? 「博士、イオンエンジンのマイナーチェンジ案、完ぺきですね」

文乃 「へ……?」

?? 「博士の提案された設計をいま出力しています。完成し次第、イオン反応テストを行いますが、」

?? 「博士の理論通りの推力が期待できます。従来型から36%もの推力アップです」

?? 「これなら、惑星間航行の定期便化も夢じゃありませんよ」

文乃 (博士……? わたしが……?)

826以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:16:44 ID:Tg00Lxe6
………………???

パシャッ……パシャッ

文乃 「あ、あれ……?」

文乃 (今度は、何……? 大量のカメラ。フラッシュ……)

文乃 (記者会見場のような……)

?? 「古橋博士! こちらへ目線お願いします!!」

?? 「こっちにもお願いします……」

?? 「博士が理論を提唱したイオンエンジンについて、簡単にご説明願います!!」

?? 「惑星間航行の大幅なコストダウンに貢献されたことについて、コメントを!!」

?? 「火星の定期便第一号に博士が搭乗されるとのことですが、それに向けて一言お願いします!」

文乃 「へ……? へ? へ?」

?? 「ちょっと待ちなさい! まだ写真撮影ですよ! 質問は控えてください!」

?? 「質疑応答の時間は後で取りますから! マナーを守れないようならご退出いただきますよ!」

827以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:17:28 ID:Tg00Lxe6
………………???

『さて、火星間の定期便第一号が出発します、ギアナ宇宙センターからリポートしております』

『皆様、ご覧ください。あの雄々しいながらもスマートなロケットを』

『あのロケットには、人類史に残る発明――イオンエンジンの理論提唱者である古橋博士が搭乗しています』

『若い女性でありながらロケットエンジンの第一人者として頭角を現し、』

『今や世界最高レベルのエンジニアでもある古橋博士。彼女は日本の宝であります』

『イオンエンジンの、化学エンジンとは比べものにならない推力、そしてとてつもないコストダウンにより、』

『今や宇宙へ旅立つことは人類にとってそう難しくないことになりつつあります』

『日本……いえ、地球が誇る稀代のエンジニア、古橋文乃博士の旅立ちを、世界中の人が見守っています!』

『古橋博士! どうか良い宇宙の旅を!』

828以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:18:05 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「……ん、あれ、今度は……」

成幸 「ああ、起きたか。文乃」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……? なんか、背伸びた? っていうか、なんか大人っぽいような……」

成幸 「はぁ? ここ最近はお互いずっと一緒にいるだろ? いきなり何言ってんだ?」

成幸 「寝ぼけてるのか? この寝ぼすけ眠り姫め」

ギュッ

文乃 「へ……? へぇ!?」

文乃 「い、いきなり何をするのかな、成幸くん!? せ、セクハラだよ!?」

成幸 「お、おいおい。さすがにそれは傷つくぞ? 抱きしめるくらいは許してくれよ」

成幸 「約束通り、結婚するまではキスもしてないんだからさ」

文乃 「はぇ……? け、結婚、って……」

キラッ

文乃 (わたしの薬指、これ……婚約指輪……?)

829以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:18:48 ID:Tg00Lxe6
文乃 「わたし、結婚するの!?」

成幸 「お前、大丈夫か? 変な夢でも見てたのか……?」

成幸 「それとも、やっぱり……俺と結婚するの、嫌なのか?」

ズーン

成幸 「それなら、まぁ……仕方ないと思って、あきらめるけどさ……」

文乃 「しかもきみと!?」

成幸 「そこも把握してなかったのか!?」

文乃 「わ、わたしと、きみが、結婚……?」

カァアアア……

文乃 「……わたしなんかと結婚して、いいの?」

成幸 「はぁ? 何を言ってるんだ、一体」

成幸 「お前と結婚したいんだよ、俺は。お前以外の誰と結婚しろって言うんだよ」

成幸 「イオンエンジンの理論提唱者にして、世界最高のエンジニア、古橋博士」

成幸 「……お前と結婚したい男なんて1億人は下らんぞ」

成幸 「まぁ、俺はそういう肩書きなんかどうでもよくて、ただ古橋文乃が好きなだけだけどな」

830以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:19:44 ID:Tg00Lxe6
文乃 「はうっ……////」

文乃 (で、でも、だって……きみには、りっちゃんとうるかちゃんが……)

成幸 「あ、そうだ。理珠とうるか、あすみ先輩も真冬先生も式に来られるってさ」

成幸 「いい男捕まえるって息巻いてたぜ。エンジニア仲間でも紹介してやれよ」

文乃 (……そっか)

文乃 (わたし、きみと幸せになっても、いいんだね……)

成幸 「……? 文乃?」

文乃 「……よろしくね。成幸くん」

文乃 「わたしのこと、幸せにしてね」

成幸 「………………」

ニコッ

成幸 「当たり前だろ。任せとけ」

831以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:20:19 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 (ん……? ここは……教会……?)

文乃 (純白の衣装……こんなの、考えなくたって、分かる……)

文乃 (ウエディングドレス、着てるんだ、わたし)

文乃 (結婚、するんだね。わたし、成幸くんと……)

成幸 「………………」 ドキドキドキ……

文乃 (ふふっ、緊張した顔しちゃって……)

うるか 「文乃っちー、きれいだよー!」

理珠 「おめでとうございます、文乃。本当にきれいです」

あすみ 「まさかお前と後輩がなぁ。人生どうなるかわからないもんだな。ま、おめでとさん!」

真冬 「おめでとう、古橋さん。……いえ、もう唯我さん、ね」

文乃 (えへへ……)

文乃 「みんな、ありがとー!」

832以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:21:35 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 (ん……?)

文乃 (あれ? わたし、結婚式で、みんなに祝福されて……)

文乃 (ここは……?)

?? 「あなたに理系受験は無理よ」

?? 「よしんば受かったとして、大学の理系授業について行けると思うの?」

文乃 「!? い、いきなりなんですか? そんなの、やってみないと、わからないじゃないですか!」

?? 「文乃。ひどいです」

?? 「文乃は、私が成幸さんのことを好きと知っていて、その上で……」

?? 「私から成幸さんを奪い取ったんですね」

文乃 「ち、違うよ!? わたしは、ただ……」

?? 「違わないよ! 文乃っち、ひどいよ!」

?? 「あたしが成幸のこと好きって知ってたんでしょ!? 心の中で笑ってたんでしょ!?」

?? 「最後に勝つのは自分だって、笑ってたんでしょ!!」

文乃 「違うよ! わたしはそんなこと考えてないよ!」

833以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:23:01 ID:Tg00Lxe6
?? 「……文乃」

文乃 「へ……?」

?? 「………………」

文乃 「おとう、さん……?」

?? 「………………」

文乃 (……いやだ。怖い。なんで。どうして)

文乃 (どうして、こんな……)

……ギュッ

文乃 「えっ……?」 (ひんやりして、心地良い、この手は……)

文乃 「成幸、くん……?」

成幸 「……行くぞ、古橋」

ニコッ

成幸 「一緒に行こう。一緒なら、大丈夫だ」

文乃 「成幸くん……」 (ああ、そうか、きみは……きみだけは、わたしを……)

文乃 「……うん!!」

834以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:24:16 ID:Tg00Lxe6
………………

文乃 「……ん」 パチッ

文乃 「あれ……? わたし……」

  「起きたか?」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……?」

成幸 「おう。なんだ? 寝ぼけてるのか?」

文乃 「……んー、そう、かも? ちょっと、怖い夢を見て……。えっと、結婚式は?」

成幸 「はぁ? 結婚式? 誰の?」

文乃 「誰って……きみとわたしの結婚式に決まってるでしょ」

成幸 「………………」

成幸 「は、はぁ……?」 カァアアアア……

文乃 「へっ……? あっ……」 (成幸くん、制服……?)

ハッ

文乃 (夢!? そうだ、わたし、夢を見てたんだ! 全部夢だったんだ!)

835以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:25:02 ID:Tg00Lxe6
文乃 (わ、わたし……成幸くんにもたれかかって……寝て……)

文乃 (エンジニアになって、成幸くんと……結婚する、夢……)

文乃 「ご、ごめん。変な夢見ちゃったみたい。忘れてっ」

成幸 「あ、ああ。まったく、朝から寝ぼすけだな……」

文乃 「でも、成幸くん、どうしてここに……?」

成幸 「ああ。古橋がいるかなと思って来たら、フラッシュカード持ったまま居眠りしてるお前がいたから……」

成幸 「悪い。気持ち良さそうに寝てたからさ。起こすのも気が引けて隣で勉強してたんだが、」

成幸 「途中で俺にもたれかかってきて……。すまん」

文乃 「そ、そっか……。こちらこそごめんね、成幸くん」

文乃 「ん……?」

パサッ……

文乃 「……あれ、これ……成幸くんの、ブレザー……?」

836以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:25:47 ID:Tg00Lxe6
文乃 「寝てるわたしに、かけてくれたの……?」

成幸 「……さすがにこんな寒い中、制服だけで寝てたら風邪引くだろ」

成幸 「へくしっ……」

文乃 「成幸くんが風邪引いちゃうよ! ごめんね。返すよ」

成幸 「俺は大丈夫だよ。でも、どこでも寝ちまうお前には困ったもんだな」

成幸 「こんなところで寝るくらいなら、教室で寝ろよ」

文乃 「それは、まぁ、その通りなんだけど……」

文乃 (……きみを待っていたら、いつの間にか居眠りしちゃったなんて、言えないし)

文乃 (きみの夢を見てたなんて、もっと言えないし……)

カァアアアア……

文乃 (きみと結婚する夢を見ていたなんて、絶対言えないよね)

837以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:26:19 ID:Tg00Lxe6
成幸 「ん……もうこんな時間か」

成幸 「そろそろ教室行くか」

文乃 「……そうだね。行こうか」

文乃 (……手の隙間から、砂がこぼれ落ちていくように、夢の中での出来事が、頭の中から少しずつ消えていく……)

文乃 「………………」

文乃 「……ねぇ、成幸くん。数学の公式、結構覚えたから、また問題出してね」

成幸 「おう。とりあえず今日の放課後だな。あとは……」

成幸 「明日の朝、ここでもやるか」

文乃 「……うん!」

838以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:26:56 ID:Tg00Lxe6
文乃 (夢は夢で、わたしはきみとどうなったわけでもない)

文乃 (わたしが、何を思って、あんな夢を見たのかなんて、きっとわからない)

文乃 (ただ、ひとつ分かること。確実なこと……)

文乃 「……また明日だね、成幸くん」

成幸 「? 今日の放課後も一緒に勉強するだろ?」

文乃 「ふふ、そうだね……」

文乃 (鈍い君はきっと気づかない。気づかなくていい。気づかれちゃ、きっとダメ)

文乃 (だから、そっと、心の中だけで、なぞる)

文乃 「………………」

ニコッ

文乃 (この場所で、また君と)



おわり

839以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:27:33 ID:Tg00Lxe6
………………幕間 「出歯亀の会」

鹿島 「!? 居眠りした古橋姫の隣に唯我成幸さんが座りましたね〜!」

蝶野 「!? おお!? 唯我さん、古橋姫に自分のブレザーを羽織らせたっスよ!」

猪森 「!? なんだと!? 古橋姫が唯我くんにもたれかかったぞ!?」

鹿島 「これは……」

蝶野 「なんとも……」

猪森 「とてつもなく……」

鹿島&蝶野&猪森 「「「尊い……!!」」」



おわり

840以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:29:40 ID:Tg00Lxe6
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

非常に短い話です。
ほとんど夢の中の出来事という二次創作的には禁じ手に近いようなものを書いてしまいました。
本編で文乃さんの過去や家庭の事情が明らかになるのが今から楽しみで仕方ありません。

また折を見て投下します。よろしくお願いします。

841以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 06:06:09 ID:MQC3KiDY
いいっすねえ…

842以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 22:41:57 ID:y7iV49tw
ド定番に王様ゲームとか...

843以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 00:06:25 ID:MtoRC5vY
突然だがぼく勉って先輩キャラはいるのに後輩キャラがいないな

844以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:05:05 ID:aVLVUSo6
>>1です。投下します。


【ぼく勉】理珠 「王様ゲーム?」

845以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:05:40 ID:aVLVUSo6
……………… “愛してるゲーム” 後 緒方家

理珠 「………………」


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』


理珠 (まったく、不可解です……)

理珠 (なぜ私はあんな単純なゲームで後れを取ったのでしょうか)

理珠 (せっかく、成幸さんにゲームで勝利するチャンスだったというのに……)

理珠 (成幸さんのお友達相手ならいくらでも言えることが、どうして成幸さんには言えなかったのでしょうか)

理珠 (なぜ……)

理珠 「“愛してる” ……」 ボソッ

理珠 「……っ」 カァアアア……

846以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:07:12 ID:aVLVUSo6
理珠 (い、いけません。なんだかわかりませんが、これはきっと、ダメです)

理珠 (しかし、ずっと負けっぱなしというのもなんとも情けない話です)

理珠 (なんとか、成幸さんにゲームで勝つことはできないでしょうか……)

理珠 「………………」

ハッ

理珠 (……逆説的に考えれば、勝てるゲームを探せばいい……!?)

理珠 (なんということでしょう。私は天才ですか。成幸さんに勝てるゲームで勝負をすればいいんです)

理珠 (そうと決まれば、インターネットで少し調べてみましょうか)

理珠 「……えっと、そうですね……。“男子に勝てる ゲーム” あたりで調べてみましょうか」

理珠 「………………」

理珠 「……? 合コン必勝法……? 王様ゲームで優位に立つ……?」

理珠 「王様ゲーム?」

理珠 「……!?」 (す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?)

理珠 (王様ゲームというゲームなら、成幸さんに勝てるのですね……!)

847以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:08:19 ID:aVLVUSo6
………………翌日 一ノ瀬学園 3-B教室

理珠 「……と、いうことで、今日の放課後、四人で王様ゲームをしましょう」

成幸 「………………」

成幸 「うん。とりあえず、何が 『と、いうことで』 なのか分からんが……」

成幸 「今日の放課後も勉強だよ! 何考えてるんだお前は!」

理珠 「そ、そんな! せっかくクジも用意してきたんですよ!?」

成幸 「何に情熱燃やしてんだお前は!? どんだけ王様ゲームやりたいんだ!?」

文乃 「ま、まぁまぁ。成幸くんもおさえておさえて……」

文乃 「りっちゃん、どうしていきなり王様ゲームなんて言い出したの?」

理珠 「む……それは……」


―――― ((す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?))


理珠 (妙なことを言って成幸さんに警戒されるわけにはいきませんね……)

理珠 「わ、わたしがやりたいと思ったからです。面白そうなゲームだから……」

文乃 「面白そう!? 王様ゲームが!?」

848以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:08:56 ID:aVLVUSo6
うるか 「でも、リズりんいいの? 成幸もいるんだよ?」

うるか 「成幸にエッチな命令とかされちゃったらどうする〜?」

理珠 「え、エッチな命令!?」

ジトーーーーッ

理珠 「な、成幸さん、不潔です! 最低です!」

成幸 「俺何も言ってないんだけどな!?」

ハァ

成幸 「まぁ、やる気がなくなったならちょうどいいや。やめておこう。な?」

理珠 「そ、そんなことは言ってません!」

理珠 「お願いします。そんなに時間は取りません。少しだけでも、やってみたいんです……」

成幸 (どんだけ王様ゲームがやりたいんだ、こいつは……。とはいえ……)

文乃 (王様ゲームって、合コンとかでやるいやらしいゲームってイメージだから……)

文乃 (桐須先生あたりにバレたらめちゃくちゃ怒られると思うんだけど……)

成幸 (古橋は乗り気じゃなさそうだし、うるかは……)

849以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:10:07 ID:aVLVUSo6
うるか 「………………」

うるか (……王様ゲームって、よく考えたら、あたしが王様になったら成幸に命令できるってことだよね)

ポワンポワンポワン……

 『成幸、あたしの肩を揉んで』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は足をマッサージして』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は優しく抱きしめなさい』

 『はい。うるか女王……いや、かわいい俺のうるか姫』

 『あっ……こらっ。どこ触って……』

 『いいだろ? ほら、女王様? それじゃかわいい顔が見せませんよ?』

……ポワンポワンポワン

うるか 「………………」 ニヤァ

成幸 「……!?」 ゾワッ (な、なんだ、あのだらけきった顔は……)

うるか 「はいはいはーい! あたしもリズりんにさんせーい! ちょっと気晴らしにやろーよ!」

850以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:11:02 ID:aVLVUSo6
成幸 「ん……うるかもやりたいのか、王様ゲーム」

成幸 「……どうする、古橋。俺もまぁ、気晴らしになるならいいかなと思うけど」

文乃 「………………」

ジーーーッ

成幸 「な、なんだよ、その目は」

文乃 「成幸くん、わたしたちにいやらしい命令、しない?」

成幸 「!? しねーよ! 信用ないな俺!」

文乃 「冗談だよ。成幸くんがそんなことしないって知ってるよ」

クスッ

文乃 「しょうがないなぁ。少しだけだよ、りっちゃん」

理珠 「やってくれますか。ありがとうございます! 嬉しいです」

ニヤリ

理珠 (ここまでは計画通りです。あとは、いかに効率的に命令を下し……)

理珠 (成幸さんに勝利するか、それだけです!!)

851以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:11:56 ID:aVLVUSo6
………………放課後 空き教室

理珠 「では、ルールを説明します」

理珠 「ここにクジがあります。1〜3の番号が振られたものが一本ずつと、王様と書かれたものが一本です」

理珠 「クジを引く際は、番号が自分以外の人に見えないようにだけ注意をしてください」

理珠 「順番にクジを引いてもらい、王様を引いた人が番号をコールして命令を出します」

理珠 「ただしその際、絶対に実行不可能な命令や、常識の範囲を外れた命令は無効となります」

理珠 「その判定は全員で行いましょう」

文乃 (ふむ……。りっちゃんのことだからとんでもないことを言い出すんじゃないかと身構えたけど、)

文乃 (常識という言葉も盛り込まれたし、あまり心配はなさそうかな……)

理珠 「そして、常識的かつ実行可能な命令を遂行できなかった者が、負けになります」

文乃 (……そもそも王様ゲームって勝ち負けを決めるようなゲームじゃないと思うんだけど)

理珠 「……他、細かいルールは実際にやりながら確認していきましょう。では、はじめます」

理珠 (ふふふ……王様ゲームの必勝法はリサーチ済みです)

理珠 (絶対に負けません! 王様を取ったら、絶対に勝ちます! 成幸さんに!)

成幸 (……なぜそんな熱い視線を俺に向けるんだ、緒方。怖いんだけど)

852以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:12:50 ID:aVLVUSo6
………………一回目

文乃 (……うおう)

『王様だーれだ!』

文乃 「はい、わたしです……」

理珠 (……まぁ、仕方ありません。最初から王様をとれるとは思っていません)

文乃 (うーん。どうしようかなぁ……。まぁ、最初は無難に……)

文乃 「……えっと、じゃあ、3番に肩を揉んでもらおうかな」

成幸 「げっ……」 ピラッ 「3番、俺だ……」

文乃 「へっ……」

文乃 (な、成幸くん!? しまったぁああああ、だよ! 成幸くんのことを忘れてた!)

文乃 「や、やっぱ今のナシで――」

理珠 「ダメです。王様の命令は、たとえ王様であっても取り消しはできません」

文乃 (なんですとー!?)

853以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:13:45 ID:aVLVUSo6
成幸 「いや、でもさすがにさ、俺が女子の肩に触れるっていうのは、いくらなんでも……」

文乃 「……ううん。いいよ。軽率だったわたしが悪いし」

文乃 「来て、成幸くん! 肩揉んでください!」

理珠 「ほら、成幸さん。王様の命令は絶対ですよ」

成幸 「……あー、わかったよ」

スッ

成幸 「悪い。古橋。行くぞ?」

文乃 「う、うん……」 ドキドキドキドキ……

グッ……グイッ……ググッ……グイッ

文乃 「んっ……」 (へぇ……? な、なにこれ……?)

文乃 (とてつもない快感が……)

文乃 「ふへぇ〜〜〜ふにゃぁ〜〜〜〜〜〜」

うるか 「成幸!? 文乃っちに何してるの!? 文乃っちが壊れちゃったよ!?」

成幸 「何って、肩揉んでるだけだけど……」

うるか (いいなぁ、文乃っち。あたしも成幸に肩揉まれたいよぅ……)

854以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:14:31 ID:aVLVUSo6
成幸 「もういいか? 古橋?」

文乃 「ふにゃぁ……」

成幸 「よさそうだな」 パッ

文乃 「……ふぅ。す、すごかったよぅ……」

文乃 「肩を全方位からくすぐられているような、それでいて心地よい圧力をかけられているような……」

文乃 「今まで味わったことのない感触だったよ……」

文乃 「しかも肩も軽くなった気がする! ありがとう、成幸くん」

成幸 「そりゃ良かった。でも、古橋、あんまり肩凝ってるように感じなかったぞ」

成幸 「俺の見立てでは、緒方とうるかの方が肩凝りがひどそうだな」

文乃 「………………」

ギロリ

文乃 「……見立て、って、一体どこを見て言っているのかな? 成幸くん?」

成幸 「!? ち、違うぞ!? そういう意味じゃなくて、単純に肩だけを見てだな!」

文乃 「そういう意味ってどういう意味なのかな? ねぇ、教えてほしいなぁ?」

成幸 「つ、次行こう! 次! 早くクジの準備をしよう、緒方!」

855以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:15:49 ID:aVLVUSo6
………………二回目

文乃 (どういうことなのかな、これは……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……ごめんなさい。またわたしです」

理珠 (ぐぬぬっ……いえ、まだまだ二回目。チャンスはまだまだあります)

うるか (ぬー、うらやましいよ文乃っちー!)

文乃 (胃が痛いなぁ……) キリキリキリ (被害が少なくて、なおかつ成幸くんでも問題ないような命令……)

文乃 「えっと、じゃあ……2番の人、ゲームが終わるまでポニーテールにしてください」

理珠 「む……2番はわたしです」

文乃 「ん、じゃあ髪ゴム貸してあげるから、やってあげるね」

スッ……キュッ……

文乃 「できた……けど……」 (やっぱり髪が短いから、ちょんまげみたいになっちゃったなぁ……)

理珠 「ど、どんな感じになっていますか? 怖いです……」

うるか 「ほら、手鏡。こんな感じだよー」

理珠 「っ……く、屈辱です……!」

856以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:16:51 ID:aVLVUSo6
うるか 「えーっ、似合ってると思うよー」 (赤ちゃんみたいでかわいいし)

文乃 「う、うん! 似合ってるよりっちゃん!」 (赤ちゃんみたいで!)

理珠 「……ふたりとも目が泳いでいますよ?」

うるか&文乃 「「うっ……」」 ギクッ

成幸 「………………」 ジーーーッ

理珠 「!? あ、あまり見ないでください!」

成幸 「あ、いや、すまん。かわいいと思ってさ」

理珠 「……!? か、かわいい、ですか……?」

成幸 「うん。まぁ、普段の緒方の方がいいとは思うけど、かわいいぞ」

理珠 「そ、そうですか……///」

成幸 (……子連れ狼の大五郎みたいで)

成幸 (とは、言わない方がいいだろうな……)

857以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:17:50 ID:aVLVUSo6
………………三回目

文乃 (……もしかしてりっちゃん、何か仕組んでる?)

『王様だーれだ!』

文乃 「またまたわたくしめでございます……」

理珠 (ぬー! どうして文乃ばかりー!) ハッ (い、いけません。冷静に、冷静に……)

うるか (あたしも早く成幸に命令したいー!)

文乃 「えっと、じゃあ……どうしようかな……1番の人、逆立ち、とかどうかな?」

うるか 「あっ、1番あたしだ」

うるか 「ふふふん、逆立ちなんか朝飯前だよー」

文乃 「あっ、今日体育あったから、ハーフパンツあるから、貸すよ」

うるか 「心配ごむよーだよ、文乃っち。じゃあ行くよー」

成幸 「!? ち、ちょっと待て! そのまま逆立ちしたら、スカートが……!」

うるか 「いきまーす!」

ヒョイッ……タン

文乃 「わひゃっ!? 成幸くん、見ちゃダメ!」 ガバッ

858以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:18:28 ID:aVLVUSo6
成幸 「うお!? 視界が!」 (っていうか俺の目を隠しているつもりなんだろうけど、古橋!)

成幸 (勢いつけすぎて俺に抱きついてるみたいになってるぞ!?)

理珠 「………………」 ジーーーッ 「……近いですよ、文乃」

うるか 「あははっ、ってゆーか大丈夫だって! ほら!」

うるか 「あたし、今日は夜練あるから、もう水着に着替えちゃってるし!」

うるか 「パンツじゃなくて水着だから、見られても全然平気だもんねー」

理珠 「……えっと、でも、うるかさん?」

文乃 「そうは言っても……正直……」

うるか 「うん?」

文乃 「……スカートがめくれ上がって、真っ白な水着の下だけ見えてるって……」

文乃 「……その、大変言いにくいんだけど、パンツよりいやらしいと思う」

うるか 「……!? わっ……わわわ……」

スタッ

うるか 「な、成幸見た!? 見てないよね!?」

成幸 「み、見てねーよ!」

859以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:19:03 ID:aVLVUSo6
………………四回目

文乃 (うそでしょ……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……はい」

理珠 (なぜ!? どんな強運の持ち主ですか文乃!)

うるか (あーん! ずるいよ文乃っちー!)

文乃 (あー、なんかもう、純粋にゲームを楽しんだ方が楽な気がしてきた)

文乃 (……どうせだし、一石を投じてみようかな。その結果として胃が痛くなるかもだけど、もう知らないよ)

文乃 「じゃあ、2番の人、何かひとつ、恥ずかしい秘密を暴露してください」

成幸 「げっ……。2番、俺だよ……」

文乃 「!?」 (ふたりに一石を投じるつもりが一番投げちゃいけない方向に爆弾を投げてしまったー!)

成幸 (秘密……秘密ねぇ……)

860以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:19:42 ID:aVLVUSo6
成幸 (うーん、今ぱっと思いつくのは、やっぱりこの三人との間の秘密かなぁ)

成幸 (緒方は……)


―――― 『あ あの 昨日のアレは…… 物理現象としてはアレ……かもしれませんが……違いますから……』

―――― 『ただの接触事故…… ですからね』


成幸 (言えるかーーーー!! 接触事故があったなんて言えるかーーーー!!)

成幸 (これは却下だ。ダメだ。絶対言っちゃダメなやつだ)

成幸 (あとは、うるか……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』


成幸 (言えるかぁあああああ!! 言えるわけねえだろ!!)

成幸 (俺が何日間布団の中で恥ずかしくて悶え苦しんだかわかってんのか!?)

成幸 (しかも古橋には友達の話って体で相談してるし!)

成幸 (それを今さら実は自分のことでしたー、なんて言えるかぁああああああ!!)

861以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:21:29 ID:aVLVUSo6
成幸 (あとは古橋……は……)


―――― 『大丈夫です』

―――― 『姉弟ですから!!!』


成幸 (……まぁ、これは緊急避難的な意味合いもあったから、言っても大丈夫とは思うが)

成幸 (前、言おうとしたら古橋に止められたし、言わない方がいいんだろうなぁ)

成幸 (しょうがない。俺単独の秘密を思い出すか。うーん……)

成幸 「……あっ、そうだ。少し恥ずかしいけど、話せる秘密があるな」

うるか 「な、なになに? どんな秘密?」 ズイッ

理珠 「どんな秘密ですか」 ズイズイッ

文乃 (うるかちゃんもりっちゃんも食いつきすぎだよ……)

文乃 (でもまぁ、わたしも気にならないと言えば、うそになるけど……)

成幸 「大して面白い話じゃないぞ? 俺と妹の話だよ」

成幸 「俺さ、小学生の頃ずっと、水希と結婚するもんだと思い込んでたんだよな」

文乃 「……へ?」 うるか 「えっ」 理珠 「………………」

862以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:22:08 ID:aVLVUSo6
文乃 (本人は軽いノリで話し始めたみたいだけど、こっちは結構ドン引きだよ!?)

成幸 「小さい頃から水希に、兄妹は結婚するものだよ、って言われ続けてな」

成幸 「そういう神話とか物語とかもたくさん読み聞かせられて、」

成幸 「そのせいで俺もそういうものなんだと思い込んでてさ」

成幸 「葉月と和樹が生まれるとき、双子のきょうだいだって知って、」

成幸 「母さんに 『生まれてくる子たちはふたりで結婚できるな!』 って言っちゃって」

テヘッ

成幸 「そこでようやく姉弟や兄妹が結婚するってありえないことなんだって知ったんだよ」

成幸 「いやー、こんな話を改めてすると恥ずかしいな。ま、子どもの頃の話だしな!」

うるか 「う、うん、そうだね……」 プイッ

理珠 「そうですね。次、いきましょうか」 プイッ

成幸 「!? なぜ目を逸らす!? 恥ずかしいからせめて笑ってくれるとありがたいんだけど!?」

文乃 (笑えるかーーーー!! 唯我家の闇を見た気持ちだよ!?)

文乃 (っていうか、水希ちゃんは一体なぜそんなことをしたんだろう……)

文乃 (……やめよう。考えたらいけない気がしてきたよ)

863以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:23:36 ID:aVLVUSo6
………………五回目

うるか 「やったー!! あたし! あたし王様だよ!」

理珠 「王様だれだ、の前に言わないでください! 次やったら反則ですよ!」

理珠 (悔しいです……まだ一度も王様になれていないなんて)

うるか 「えへへ、ごめんごめん。嬉しくてつい、ね」

うるか 「さてさて、じゃあ何をしてもらおうかな〜」

うるか (なんてね! 実はもうしてもらうことなんて決まってるんだよ!)

うるか (しかも、偶然ちらっと、成幸の引いたくじの番号が見えちゃったし……)

うるか (少し反則かもしれないけど! ごめんね、みんな!)

うるか 「じ、じゃあねー、えへっ……2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……」

うるか (成幸の番号は2番だったはず! これなら……――)

文乃 「……2番、わたしだよ?」

うるか 「えっ!?」

成幸 「なんつー危ない命令を出すんだ、うるか。俺が2番だったらどうするつもりだったんだよ!」

うるか (成幸3番だー! 先端で2だと勘違いしちゃったの!?)

864以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:24:19 ID:aVLVUSo6
理珠 「……まぁ、常識的な範囲ではあると思いますので、実行してください、文乃」

文乃 「まぁ、べつにいいけど……」 チラッ

うるか (うぅ……2番じゃなくて3番かぁ……) シクシクシク

文乃 (成幸くんに言ってもらうつもりだったんだろうなぁ……)

文乃 (ま、いいや。パパッと済ませちゃおう)

文乃 「はい、うるかちゃん。こっち向いて」

うるか 「……うん」

ドキッ

うるか (わっ……改めて真正面から見ると、文乃っち、本当に美少女だなぁ……)

文乃 (わぁ、うるかちゃんって目が大きくて可愛いなぁ……)

文乃 「……う、うるかちゃん。いくよ?」

うるか 「う、うん」

文乃 「……うるかちゃん、愛してるよ」

うるか 「はわっ……////」

文乃 「うぅ……///」

865以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:25:01 ID:aVLVUSo6
成幸 「………………」 (……なんか、その、なんていうか)

成幸 (……淫靡だ) ドキドキドキ……

うるか (め、めっちゃドキドキした〜! 変な気分だよ〜〜〜〜!!)

文乃 (何かに目覚めちゃいそう……)

理珠 「はい、ではクリアということで、次行きましょう」

文乃 「わたし結構がんばったのにドライすぎないりっちゃん!?」

成幸 「っていうか、そろそろやめにしないか? 勉強もあるし……」

成幸 (なんかとんでもないことになりそうな気がするし……)

理珠 「……勝ち逃げするつもりですか、成幸さん?」

ギロリ

成幸 (何で怒ってるの緒方さん!? っていうか俺も一回も王様になってないんですけどー!?)

成幸 (お、おい、古橋) コソッ (緒方の奴、自分が王様になるまでやめるつもりないみたいだぞ)

文乃 (みたいだね。仕方ない。どうにかしてりっちゃんに王様を引かせてあげようか) コソッ

成幸 (そうは言ってもな……。緒方がクジを握っている以上、逆不正もできないし……)

866以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:25:36 ID:aVLVUSo6
………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (緒方さんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」

867以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:26:24 ID:aVLVUSo6
すみません。>>866訂正です。


………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (うるかさんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」




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