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【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

719以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:54:00 ID:AR9F6gVQ
………………昼休み

うるか 「………………」 グッ


―――― 『明日からは和樹と葉月のお昼も考えなくちゃだし、自分でなんとかするさ』


うるか (昨日、ああは言ってたけど、やっぱりお昼がパンの耳だけなんてよくないよ)

うるか (今朝、朝練もあるから四時起きで眠い目をこすりながら作ったお弁当! というかお重!)

バーン!!

うるか (たまたま作りすぎちゃったからあげるって言えば、大丈夫だよね?)

理珠 「……あれ、うるかさん? 3-Bに何かご用ですか?」

うるか 「あ、リズりん。いやー、ちょっと成幸に勉強を教えてもらおうかと……」

うるか 「……って、何その大量のうどん!?」

720以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:56:02 ID:AR9F6gVQ
理珠 「へ……!? あ、いや、これはその……べつに、成幸さんのために作ってきたわけではなく……」

理珠 「ただ、その……ちょっと、朝うどんを作りすぎてしまったので、持ってきただけで……」

うるか 「朝からうどん作りすぎることってある!?」

理珠 「あ、あります! うちでは日常茶飯事です!」

うるか 「日常茶飯事なの!?」

理珠 「そ、そう言ううるかさんこそ! その大きなお重は何ですか?」

うるか 「へぇ!? い、いや、これは……べつに成幸のために作ってきたわけじゃなくて……」

うるか 「朝練前に調子に乗ってお弁当作りすぎちゃったから、持ってきただけで……」

理珠 「朝練前にお弁当作りすぎることあります!? 何時起きだったんですか!?」

うるか 「よ、四時起き……」

理珠 「最初から作りすぎる気満々じゃないですか!」

うるか 「ち、違うもん! 本当に気づいたらたくさん作っちゃってただけだもん!」

721以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:57:29 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

文乃 「………………」

キリキリキリ……

文乃 (どうしよう。わたしも実は昨日スーパーでお菓子をたくさん買って持ってきたんだけど、)

文乃 (あのふたりと一緒に行く勇気はないかな……)

文乃 (とはいえ、あのふたりを廊下にあのまま放置したら、とんでもないことになりそうだし……)

文乃 「あー、どうしたの、りっちゃん、うるかちゃん。廊下で騒いだら怒られるよ?」

理珠 「文乃! ち、違いますよ!? べつに成幸さんのためにうどんを持ってきたわけじゃないんです!」

うるか 「文乃っち! あたしも違うんだよ!? 作りすぎたから持ってきただけで!」

文乃 「あ、うん。ふたりとも、わかったから。とりあえず教室入ろうか?」

文乃 (……ふたりとも可愛いなぁ。でも、胃が痛いなぁ)

ガラッ

小林 「――あれ、成ちゃん、今日お弁当あるの? 水希ちゃん修学旅行じゃないの?」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:58:28 ID:AR9F6gVQ
成幸 「おう。ちょっとな……」

大森 「ん……? 言葉を濁すあたり怪しいな。さては唯我テメー! 女の子に作ってもらったのか!?」

成幸 「なっ……」 ギクッ 「そんなわけねーだろ! 母さんが作ってくれたんだよ!」

文乃 「………………」

理珠 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「……りっちゃん、うるかちゃん、屋上でお弁当うどんお菓子パーティでもしない?」

理珠 「良い提案です、文乃。もう成幸さんなんか知りません。せっかくうどんたくさん作ってきたのに……」

うるか 「うぅ……せっかく成幸のために四時起きで作ったのに……」

文乃 (ふたりとも、うそをつくなら最後までつきとおしてほしいなぁ。ダダ漏れだよ……)

文乃 (……まぁ、理不尽なのはわかってるけど、ひとつだけ言わせてほしいかな)

文乃 (成幸くん、後で、つねる)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

723以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:59:38 ID:AR9F6gVQ
………………教室

成幸 「っ……」 ゾクッ

成幸 (なんだろう。いま、猛烈な寒気が……)

成幸 (まぁいいや。せっかく先輩が作ってくれた弁当をいただこう)

カパッ

成幸 「……!?」


『成幸クン 午後もがんばってね』 バーン!!!!


成幸 (で、でかでかと海苔で書かれた文字!? と桜でんぶのハートマーク!?)

成幸 (あ、あしゅみー先輩、やってくれたな……!!)

724以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:00:14 ID:AR9F6gVQ
大森 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 「……唯我? そのメッセージも、お母さんが書いてくれたっていうのか?」

成幸 「いや、違っ……これは、その……」

大森 「唯我テメー! やっぱりどこぞの女子に作ってもらいやがったなー!」

小林 「………………」

小林 (……お姫様たち三人、さっき廊下にいたみたいだけど)

小林 (あの様子を見る限り、あの三人が作ったわけじゃなさそうだ)

クスッ

小林 (まったく、成ちゃんったら。一体誰に作ってもらったんだか)

成幸 「違う! 俺が自分で作ったんだ! 自分でハートマークも書いたんだよ!」

大森 「わけわかんねーウソつくんじゃねー! くそー! うらやましいぞー!」

725以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:00:52 ID:AR9F6gVQ
………………放課後

成幸 「……ったく、大森の奴、ひとりでエキサイトしやがって」


―――― 『唯我テメー! やっぱりどこぞの女子に作ってもらいやがったなー!』


成幸 「……その通りだよ。悪かったな」

成幸 (それにしても、先輩のお弁当、美味しかったな……)

成幸 (水希のお弁当とは少し味付けが違って、新鮮だったし)

成幸 (今日の晩ご飯も楽しみだな……)

成幸 「………………」

成幸 (……先輩に何かお礼できないかな)

成幸 (先輩は仕事だからって言うけど、正直、仕事以上のことをしてくれている気がする……)

成幸 「ん……?」

 『本日 ケーキ全商品半額 !!』

成幸 「……渡りに船だ」

成幸 (先輩、喜んでくれるかな……)

726以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:02:16 ID:AR9F6gVQ
………………唯我家

あすみ 「それー! 横一列で一斉にぞうきんがけだー!」

和樹 「うおー!」

葉月 「それー!」

バババババババ……!!!

あすみ 「そら見ろ! 廊下がピカピカだぞ!」

和樹 「おー! あすみ姉ちゃんすげー!」

あすみ 「すげーのはアタシじゃねーぞ。アタシたちだ」

葉月 「掃除ってこんなに楽しいのねー」

あすみ 「そうだろう、そうだろう」

エッヘン

あすみ 「これからは、できる範囲でいいから、兄ちゃんや姉ちゃんを手伝ってやれよ?」

葉月 「わかったわー! わたしがんばる!」

和樹 「おれもー!」

あすみ 「よしよし。お前たちは本当に良い子だなぁ」

727以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:03:43 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……っと、そろそろ後輩のやつ帰ってくるかな」

あすみ 「区切りがいいから掃除はこれくらいにしようか」

あすみ 「そろそろ晩ご飯の準備と行くかなー」

ガラガラガラ……

成幸 「ただいまー」

あすみ 「っと……。思ってたより早く帰ってきたみたいだな。ほら、チビちゃんたち、出迎えに行くぞ」

和樹&葉月 「「はーい!」」

あすみ (にしし。後輩のやつ、油断してるだろうから、またからかってやるか……)

728以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:06:03 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ただいまー」

パタパタパタ……

あすみ 「おかえりなさいませ、御主人様」 キャルン

葉月&和樹 「「おかえりなさいませ! ごしゅじんさま!」」

成幸 「お前たちは真似しなくていい!」

あすみ 「お弁当はお気に召しましたか?」

成幸 「ひどい目に遭いましたよ。クラスの男子から質問攻めですよ」

あすみ 「ふふ、目に浮かぶようだな。お前の困り顔」

成幸 「だから急に素に戻らんでください。まったくもう」

あすみ 「ん……? その紙箱はなんだ?」

成幸 「……お礼も兼ねたお土産です。食後に食べましょう」

成幸 「お前たちの分もあるからな。ケーキだぞ」

葉月 「ほんとに!?」

和樹 「やったー! 兄ちゃんありがとー!」

729以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:06:44 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「お礼って……アタシにか?」

成幸 「? そうですよ?」

あすみ 「……アタシは、ただ仕事で来てるだけだって言ってるだろ。お礼なんて……」

成幸 「そう言わないでくださいよ。先輩がいてくれるだけで本当に助かってるんですから」

成幸 「それに、ただの俺の気持ちですから」

あすみ 「ん……わかったよ」

あすみ 「ありがとな。冷蔵庫入れとくよ」

あすみ 「晩飯、今から作るから勉強でもして待ってろ」

成幸 「助かります。ありがとうございます」

あすみ 「………………」 (……ったく、そんな気が利くような性格でもねーだろうに。気ぃ遣いやがって)

あすみ (もうちょいからかってやるつもりが、調子狂っちまったじゃねぇか)

葉月 「……兄ちゃん、図らずもポイントアップだわ。あすみお姉ちゃん、ほんとに嫁に来てくれるかもしれないわ」 コソッ

和樹 「今も、ちょっと新婚さんっぽかったよな。兄ちゃんもあすみ姉ちゃんもまんざらでもなさそうだな」 コソッ

あすみ 「チビちゃんたちー、聞こえてるぞー? アホなこと言ってないで、ふたりで遊んでろ」

葉月&和樹 「「はーい」」

730以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:07:39 ID:AR9F6gVQ
………………夜

葉月&和樹 「「ごちそうさまでしたー!」」

あすみ 「はい、お粗末さまでした」

花枝 「ごちそうさま、あすみちゃん。本当に美味しかったわ。ありがとう」

あすみ 「いえいえ。夕ご飯もお口にあったようで何よりです」

成幸 「母さん。今日は早く帰ってこれるなら連絡くらいくれよな」

花枝 「店長さんが気を利かせてくれてね。大丈夫だって言って帰してくれたのよ」

成幸 「それなら先輩を雇う必要もなかったんじゃ……」

花枝 「? 雇う?」

成幸 「……?」

あすみ 「あっ、そ、そうだ。後輩――成幸くんが買ってきてくれたケーキがあるんですよ」

あすみ 「みんなで食べましょう。成幸くん、ちょっとお茶いれるの手伝ってくれ」

成幸 「? いいですけど……」

成幸 (先輩、なんか様子がおかしいな……?)

731以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:08:19 ID:AR9F6gVQ
………………風呂

葉月 「ふぁ〜〜〜……」 和樹 「ほぁ〜〜〜……」

あすみ 「気持ちいいかー? 最近寒いからちゃんと温まれよー」

葉月 「お風呂は心の洗濯……」

和樹 「ビバノンノ……」

あすみ 「仕事に疲れたOLとおっさんみたいだぞ、お前ら……」

あすみ 「のぼせても良くないから、あと百秒数えたら上がろうか」

葉月&和樹 「「ふぁ〜〜〜い……」」

732以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:08:59 ID:AR9F6gVQ
………………

あすみ 「ふー。あったまったあったまった……」

あすみ (……葉月と和樹と一緒に入るためとはいえ、一番風呂をいただいてしまって申し訳ないな)

あすみ 「お風呂空きましたよー、っと……。誰もいないな」

カチャカチャ……

あすみ (ん、台所で洗い物してくれてるのか。アタシがやるって言ったのに……)

あすみ (お仕事で疲れてるだろうし、アタシが代わってお母さんに早く入ってもらおう……――)


「――えっ? じゃあ、家事代行サービスを頼んだわけじゃないのか?」


あすみ 「……!?」

ササササッ

あすみ (やべっ……絶対アタシの話じゃねーか)

花枝 「ふふ、やっぱり、何かおかしいと思ったわ」

花枝 「あすみちゃん、あんたにそんなうそをついてたのね」

733以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:10:17 ID:AR9F6gVQ
成幸 「えっ、いや、でも……何で仕事でもないのに、先輩はうちに来てくれてるんだ?」

花枝 「はぁ? だってあすみちゃん、あんたの彼女なんでしょ? 彼氏のことが心配だから、って言ってたわよ?」

成幸 「は、はぁ……!? 彼女!?」

花枝 「照れなくてもいいわよ。あんなにかわいい彼女なんだから、自慢するくらいでいいのよ」

成幸 「いや……まぁ、それはいいや。先輩は母さんに直接連絡したってこと?」

花枝 「そうよ? 家に電話をくれてね。成幸くんの彼女です、って」

花枝 「あんたから水希が修学旅行に行くから困ってるって話を聞いて、ぜひ手伝いたいって」

成幸 「………………」

花枝 「正直ね、すごくありがたかったのよ。あんたも勉強で忙しいし、葉月と和樹はまだ小さいし」

花枝 「彼氏のあんたに気恥ずかしくて、私が家事サービスをお願いした、なんてうそをついたのかしらね」

成幸 「……それは、まぁ、先輩に聞かないと分からないけど」

成幸 「でも、そっか……。先輩、“仕事だから” って言って家事全部やってくれたけど、」

成幸 「申し訳ないことしちゃったな……」

花枝 「そういう風に思われたくないから、うそをついたんでしょ」

花枝 「私がこの話をしちゃったって、あすみちゃんには内緒よ?」

734以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:11:08 ID:AR9F6gVQ
………………先週

prrrr……

花枝 (あら、電話。この時間にめずらしい……) ガチャッ 「もしもし?」

? 『あっ……こんばんは。夜分遅くにすみません。唯我さんのお宅でよろしいでしょうか?』

? 『私、小美浪あすみといいます。後輩――成幸くんの、予備校の友達です』

花枝 「あら……。それはそれは、いつも成幸がお世話になってます。成幸の母です」

あすみ 『こちらこそ、いつも成幸くんには勉強を教えてもらったり、お世話になってます』

花枝 「ちょっと待っててね。いま成幸と電話を代わるから……――」

あすみ 『――……あ、いえ、実はお母さんとお話がしたくて、電話をしたので、代わらなくて結構です』

735以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:12:14 ID:AR9F6gVQ
花枝 「私と?」

あすみ 『はい。あの……成幸くんから、来週家事をする人がいないと聞いて……』

あすみ 『差し出がましいかもしれませんが、もしよければ、私を家においてくれませんか?』

あすみ 『私は予備校通いの身なので、自由がききますし、家事も得意です。お手伝いできることもたくさんあります』

花枝 「へ……? いや、でも……さすがに人様の娘さんに、家の手伝いをさせるわけにはいかないわ」

あすみ 『ひ、人様の娘じゃ、ありません……あ、あの! アタシ……私、成幸くんの』

あすみ 『カノジョ、ですから……』

花枝 「!?」

736以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:13:06 ID:AR9F6gVQ
………………

花枝 「まぁ、あすみちゃんの熱意に負けたというか、カノジョって言葉が嬉しくてそれどころじゃなくなっちゃったというか……」

花枝 「とにかく、お言葉に甘えることにしたのよ』

成幸 「………………」

花枝 「それにしても、あんたがあんなに可愛くてきれいで気が利く子と付き合ってるなんてねぇ……」

花枝 「りっちゃんとふみちゃんに興味を示さないわけだわ」

成幸 「あ、あのふたりは関係ないだろ」

成幸 「……ん、っていうか、あんまりうそつきたくないから、本当のこと言うけどさ」

成幸 「俺、先輩と付き合ってないからな?」

あすみ (っ……)

737以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:13:52 ID:AR9F6gVQ
花枝 「あら? そうなの? あすみちゃんが言うから、てっきりそうなんだと思い込んでたけど……」

成幸 「まぁ、ちょっと事情があってさ。彼氏のフリをしてるんだ。フリだけだから、本当の彼氏じゃないけど」

成幸 「っていうか、俺があんな綺麗な人と付き合えるわけないだろ」

花枝 「あんたも色々と大変なのね」

成幸 「水希たちには内緒な。またうるさそうだし」

花枝 「はいはい」

花枝 「……洗い物、もういいわよ。あすみちゃんたち、そろそろお風呂上がるでしょうから、成幸、入っちゃいなさい」

成幸 「先入っちゃっていいのか?」

花枝 「私は後でゆっくり入るからいいわよ」

738以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:14:29 ID:AR9F6gVQ
………………

花枝 「じゃあ、私は和樹と葉月寝かしつけてそのまま寝ちゃうから」

成幸 「わかった。おやすみ、母さん」

あすみ 「おやすみなさい、お母さん」

花枝 「……あとはふたりきりで、私のことは気にしないでね」

成幸 「余計なこと言わなくていいから。早く寝てくれ」

花枝 「何よ、ノリ悪いわね。じゃ、おやすみなさい」

成幸 「……ふぅ、やっと行ったか。すみません、先輩。うるさい親で……」

あすみ 「言うなよ。うちの親父より何倍も静かだよ。いいお母さんじゃないか」

成幸 「……まぁ、いい母だとは思いますけどね」

成幸 「さて、今日はどうします? 物理? 化学? それとも生物?」

あすみ 「色気のない三択だな。とりあえず物理で頼む」

成幸 「わかりました。じゃあ、今日もはりきってがんばりましょう」

739以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:15:23 ID:AR9F6gVQ
………………

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ…………

あすみ 「……なー、後輩」

成幸 「なんですか?」

あすみ 「悪い。さっきさー、洗い物してるときのお前とお母さんの会話、聞いちゃった」

成幸 「……そうですか」

あすみ 「……ごめんな。うそついてて」

成幸 「いえ、気にしてませんから、大丈夫です」

カリカリカリ……

あすみ 「……アタシさ、うちの色んな事情にお前のこと巻き込んでばかりだからさ、」

あすみ 「実は、これでも結構、申し訳ないと思ってんだよ」

成幸 「え……?」

あすみ 「だから、家事を手伝ってやれば、いつもの “彼氏のフリ” の恩返しができるかなって思ってさ」

740以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:16:25 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」

741以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:17:08 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」

742以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:18:08 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「後輩、お前……」

あすみ (普段、アタシがどんだけ迷惑かけたって、からかったって、怒らないくせに……)

あすみ (なんで、アタシのことでそんなに怒るんだよ……バカ……)

成幸 「……お返し、ケーキだけで済ませちゃうつもり、ありませんから」

あすみ 「ん?」

成幸 「何かあったら言ってくださいね。彼氏のフリだろうと婿のフリだろうと、何でもやりますから」

成幸 「……本当はバイト代を払えたらいいんでしょうけど、あいにくうちにお金がなくて……」

あすみ 「気にすんなよ。アタシが勝手にやったことだ。勝手に彼女のフリをしただけだからな」

成幸 「じゃあ、俺も、先輩が必要なとき、彼氏のフリをしますよ。でも、俺は言ってくれないとわからないから」

成幸 「……言ってくださいね。俺、先輩のためだったら何でもしますよ」

あすみ 「……何でも、ねぇ」

クスッ

あすみ 「じゃあ、週末、またデートしてくれるか?」

あすみ 「親父の目を誤魔化すのも大変なんだ。勉強デートとしゃれ込もうぜ」

成幸 「わかりました! それくらいならお安いご用ですよ!」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:18:53 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

花枝 「うーん……なかなかどうして、本物の彼氏彼女に見えるわね」

花枝 「っていうか、息子は元より、あすみちゃんも結構まんざらでもない感じね」

葉月 「ほらー、母ちゃん、覗いてないで寝るわよー」

和樹 「水希姉ちゃんは水希姉ちゃんでヤバいけど、母ちゃんも結構ヤバめだよなー」

花枝 「分かったわよ。じゃあ行きましょう」

花枝 (それにしても……)

ピカピカピカ……

花枝 (家中ピカピカだわ。お料理も上手だし、葉月と和樹の相手も完ぺき……)

花枝 (成幸より年上というのもポイント高いわ……)

花枝 (ちょっと本当に嫁に来てくれないかしら)

和樹 「ほらまた母ちゃんよからぬことを考えてる」

葉月 「でもまぁ、あすみお姉ちゃんがお嫁に来てくれるのは、わたしも賛成だわー」

744以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:19:26 ID:AR9F6gVQ
………………翌朝

あすみ 「ほら、弁当。持ってけよ」

成幸 「ん……ありがとうございます」

ジトッ

成幸 「また変なこと書いてないでしょうね?」

あすみ 「んだよ、信用ねぇな。何も書いてねーよ」

あすみ (変なことは、な)

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

成幸 「……三日間、ありがとうございました。助かりました」

あすみ 「おう。気にしなくていいぞ。おかげでアタシも勉強進んだし」

成幸 「……じゃあ、いってきます。先輩」

あすみ 「ん……? いや、ちょっと待て、後輩」

成幸 「へ?」

ズイッ……

745以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:20:03 ID:AR9F6gVQ
成幸 「せ、先輩……?」 (ち、近っ……!? な、何を……)


―――― 『それとも、いってらっしゃいのチューでもしてやった方がやる気が出るか?』


成幸 (ま、まさか……そんな、いや……心の準備が……)

キュッ

成幸 「……へ?」

あすみ 「……ネクタイ、曲がってたぞ。まったく、だらしねーな」

成幸 「あっ……ね、ネクタイか。なんだ、びっくりした……。ありがとうございます、先輩」

あすみ 「んー? 急にアタシが近づいて、何だと思ったんだー、後輩ー?」

成幸 「な、なんでもありませんよ!」

あすみ 「にひひ、なんだよ、昨日は “婿のフリ” だってやってくれるって言ってたのに、そんな体たらくか?」

あすみ 「アタシの婿になるんなら、もう少しがんばれよ」

成幸 「急に近づかれればびっくりもしますよ。先輩は美人さんなんだから……」

あすみ 「っ……」

746以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:22:01 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「………………」


―――― 『っていうか、俺があんな綺麗な人と付き合えるわけないだろ』


あすみ (……ったく、軽々しく、人のこと綺麗だの美人だの言いやがって)

あすみ (こっちの気も知らないで、ほんとに、しょうがない奴だ……)

成幸 「じゃあ、先輩。いってきます」

あすみ 「おう」

あすみ (……覚えてろよ、後輩)

あすみ (いつか、本当に “婿のフリ” なんてしてもらうことになったら、)

あすみ (本当に、いってらっしゃいのチューくらいはしてやるからな)

あすみ (そのとき、後悔したって知らないからな。お前が言い出したことなんだから)

ニコッ

あすみ 「……いってらっしゃい、後輩」


おわり

747以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:22:47 ID:AR9F6gVQ
………………幕間1 「SEISAI帰宅」

水希 「ただいまー! みんな、ごめんね。いま帰ったよー……って」

水希 「家中ピカピカ!? 台所も!? トイレも!? ついでに葉月と和樹もお肌がピカピカ!?」

水希 「そして……」

水希 「……例の、お兄ちゃんの耳をきれいにしたという女の匂いがする!!」

水希 「わたしのいない間に……!!」 ギリリリッ

葉月 「あー……」

和樹 「あすみ姉ちゃん、もう二度とうちの敷居をまたげないかもしれないな」

748以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:23:39 ID:AR9F6gVQ
………………幕間2 「お弁当」

成幸 (先輩のことを信じないわけではないが、一応、念のため、大森がいないところで食べよう)

成幸 (と、いうことで、緒方たちと一緒に食べることになったわけだが)

うるか 「今日のお弁当もお母さんが作ってくれたの?」

成幸 「ん? ああ……いや、お前たちにうそをつくのも気が引けるから言うけど、これは小美浪せもがっ!?」

文乃 「……うん。なるほど。お母さんが作ってくれたんだね」 ニコッ 「よかったね」

成幸 「もがもが!?」 (なぜ俺の口をふさぐんだ、古橋!?)

文乃 (うん。わたしの胃が確実にダメージを受けるようなことを言わせるわけないよね)

うるか 「へー。じゃあ、失礼して、開けちゃおっかなー、っと」 パカッ

 『来週のデート楽しみだねっ 成幸くん』

うるか 「へ……? ハートマーク、と、このメッセージ、デートって……」 ジロリ

理珠 「……これは何ですか? 成幸さん? お母さんが作ったものではないですね?」 ジトッ

成幸 「いや、だからこれは小美浪せんもがっ……!」 (だからなぜ俺の口をふさぐんだ古橋!?)

文乃 (ちくしょー、だよ! どう転んでもこうなるのかよー!! だよ!!) キリキリキリ

749以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:24:16 ID:AR9F6gVQ
………………幕間3 「小美浪家」

小美浪父 「………………」

小美浪父 (三日間唯我くんのご家庭で家事の手伝いをしたいと言い出したときは驚いたものだが)

小美浪父 (迷惑になるからやめなさいという私の言葉も聞かず、結局行ってしまった……)

小美浪父 (三日間帰ってこないということは、うまくやっているということだろうか)

あすみ 「ただいまー」

小美浪父 「ん……あすみ、おかえり。唯我くんとご家族に迷惑はかけてないだろうね?」

あすみ 「大丈夫だよ。心配だったら、後で後輩にでも聞いてみてくれ」

あすみ 「ふぁーああ……。夜遅くまで(勉強を)がんばっちまったからな、眠いや。ちょっと寝たらバイト行くわ。じゃ、おやすみ」

小美浪父 「……ああ、おやすみ」 (……そろそろ、唯我さんのお宅に挨拶に伺うべきだろうか)

小美浪父 (唯我くんのご家族はあすみのことを気に入ってくれただろうか……)

小美浪父 (しかし、夜遅くまでがんばったのか……)

小美浪父 「ふふ……、あいさつより何より先に、授かり物があるかもしれないな……」

小美浪父 (ああ、お義父さん困っちゃうな……) パァアアアア

おわり

750以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:26:33 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
少し長すぎたかなと反省しています。


もうひとつ投下します。
こっちは少し短いです。


【ぼく勉】成幸 「緒方の私服ってかわいいよな」

751以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:27:08 ID:AR9F6gVQ
………………図書館

理珠 「へ……?」

理珠 「………………」 カァアアア……

理珠 「い、いきなりなんですか。成幸さん……」

成幸 「緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな」

理珠 「べつに、そこまで興味があるわけではないですけど……」

成幸 「いや、うちは家族の服を俺が作ってるんだけどさ」

成幸 「この前水希がカタログを見ててな。ちょっと覗いてみたら、緒方が着てるような服に興味があるみたいでさ」

成幸 「可愛い系? みたいな? すまん、俺も詳しくはないからよく分からないんだが……」

理珠 「私が普段着ているような服……」

ズーン

理珠 「……私のセンスは中学生レベルということですか」

752以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:27:39 ID:AR9F6gVQ
成幸 「いや、そういうことなじゃくて、単純に好みの問題だろ」

成幸 「俺も緒方が着てるような服、可愛くていいと思うしさ」

理珠 「はう……///」

成幸 「だから、もし良かったら、水希の服を作るときの参考にしたいから、」

成幸 「服のブランドとか、どこで売ってるかとか、教えてもらってもいいか?」

成幸 「教えてもらったら、その店に服を見に行こうと思うんだ」

理珠 「いいですけど、私が買った服もありますし、お母さんが買ってきてくれた服もありますし、一概には……」

ハッ

理珠 「………………」

成幸 「緒方? どうかしたか?」

理珠 「いえ、あの……もし成幸さんが良かったら、なのですが、」

理珠 「今日の勉強が終わったら、うちに来ませんか? 私の服を見せてあげますよ?」

成幸 「へ?」

理珠 「わざわざお店に行くより、合理的だと思います」

成幸 「そりゃ、その通りだが……いいのか?」

753以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:28:32 ID:AR9F6gVQ
理珠 「嫌な理由はありません。成幸さんにはお世話になっていますし、力になれるなら嬉しいです」

成幸 「そうか……。じゃあ、お願いしてもいいか?」

理珠 「はい。もちろんです」

成幸 「よし、そうと決まれば、おうちの迷惑になってもいけないし、今日の分、さっさと終わらせるぞ」

理珠 「はい! がんばります!」


―――― 『緒方の私服ってかわいいよな』

―――― 『緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな』


理珠 (ま、まぁ、かわいいと言われて悪い気はしませんし?)

理珠 (成幸さんが見たいと言うなら、見せてあげるに吝かではありませんし)

理珠 (……ふふふ)

理珠 (かわいい、ですか……) ニヤニヤ

成幸 「……?」 (なんか緒方、えらく上機嫌だな。何かいいことでもあったのか?)

754以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:30:02 ID:AR9F6gVQ
………………夕方 緒方家

成幸 「悪いな、緒方。お邪魔しちゃって……」

理珠 「いいですよ。今日はお父さんもお母さんもお仕事が忙しくて店にいますし、気兼ねする必要はありません」

成幸 (逆にまずい気がする。というか、親父さんにバレたら殺されるぞ、俺……)

理珠 「どうぞ。ここが私の部屋です。まぁ、成幸さんはもう何度か入ってますよね」」

成幸 「そういえばそうだな……」


―――― 『えーっ 成幸も泊まっていけばいいじゃん!』

―――― 『そうそう 夜はまだまだこれからだよ〜!』


成幸 「っ……」 (そ、そうだ。あの女子のパジャマパーティのときとか……)


―――― 『唯我さん 手 冷たいです』

―――― 『なんだかホッとして……きもちいい……です』


成幸 (緒方の家で一晩明かしたときのこととか……)

成幸 (よく考えたらこの部屋ろくな思い出ないな!?)

755以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:31:00 ID:AR9F6gVQ
成幸 「お邪魔しまーす……」

理珠 「どうぞ」

理珠 「服を見たいと言っていましたが、具体的に言うとどのような服を見たいですか?」

理珠 「トップス、ボトムス、アウター……色々ありますが」

成幸 「ああ、水希が見てたのはトップス? かな? 上に身につけるようなやつだ」

成幸 「あとはワンピースタイプの服とかも見せてくれるとありがたいな」

理珠 「ふむふむ。それならこのあたりですね」

ゴソゴソ……

理珠 「……こういう服ですか?」

成幸 「ああ、そうそう、まさにそういうのだよ」

理珠 「でしたら、この段とこの段、好きにみてもらって構わないですよ」

理珠 「私は今日教えてもらった部分を復習していますので」

成幸 「えっ……?」

756以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:31:52 ID:AR9F6gVQ
成幸 「い、いや、さすがにそれはまずいだろ」

理珠 「なぜです? 服を見るだけでしょう。何かまずいことがありますか?」

成幸 (……試されてる? いや、緒方の場合は本気でそう思ってる気がするな)

成幸 「その申し出はありがたいが、女子のタンスを勝手に覗くのはちょっと、気が引けるな」

理珠 「そういうものでしょうか……」

理珠 「それなら、適当に広げておきますので、勝手に見てください。手に取ってもらって構いません」

成幸 (それはそれでどうなんだろう、とは思わなくもないが……タンスを漁るよりははるかにマシか)

成幸 (きっと俺のことを信頼してくれているんだろう。それなら、俺もその信頼に応えるまでだ)

ポン……ポン……

理珠 「……こんなものでいいでしょうか。だいたい、今の時期はこれらを着回しています。重ね着とかをします」

理珠 「では、私は机で勉強をしていますから、何かあったら声をかけてください」

成幸 「ああ、ありがとな、緒方。助かるよ」

理珠 「いえいえ」

成幸 (本当に勉強を始めたぞ……。まぁ、いい。緒方の申し出は素直にありがたいし、お言葉に甘えよう)

757以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:32:44 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ふむふむ……」

メモメモメモ……

成幸 (縫い方とか参考になるな……。糸の色や太さを変えても楽しそうだ)

成幸 (飾りのポケットとかもデザイン的に面白いぞ)

成幸 (シンプルなデザインが多いから、作るのもわりかし簡単そうだし……)

成幸 (緒方に相談して良かった)

成幸 (古橋はちょっと小綺麗にまとまりすぎてて、着る人を選びそうだし……)

成幸 (うるかはちょっと露出度が高すぎて水希には兄として絶対着させられないし)

成幸 (あしゅみー先輩はパンキッシュすぎて絶対水希には似合わないし)

成幸 (桐須先生はジャージだし関城は白衣だし、論外として)

成幸 (……いや、まぁ、それは置いておくとして……)

成幸 (服を見るだけで分かる……。やっぱり緒方の胸のサイズ、とんでもないな……すげぇ……)

ハッ

成幸 (緒方は俺を信じて服を見せてくれているというのに!! 俺はなんて不埒なことを!!)

758以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:33:40 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

ドキドキドキドキ……

理珠 (なぜ、でしょうか……?) カァアアア……

理珠 (私はただ服を見せているだけだというのに、ドキドキが止まりません)

理珠 (まったく不可解です。成幸さんが被服作成の参考にするために、見せてあげているだけなのに)

理珠 (……なぜ、こんなに頬が熱いのですか。なぜこんなに、勉強に集中できないのですか)

チラッ

成幸 「ふむ……なるほど……」

理珠 (な、成幸さんが、私が普段着ている服を、手に取って、興味津々そうに見ている……)

理珠 (ふぅ。理解不能です。なぜ私は、こんなに……)

理珠 (いけないことをしてしまっているような気持ちになっているのでしょうか……)

成幸 「ん……? なぁ、緒方」

理珠 「!?」 ビクッ 「は、はい!? なんですか!?」

759以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:34:43 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……? どうかしたか?」

理珠 「い、いえ、なんでもありません……」

理珠 「何かありましたか?」

成幸 「ああ、悪い。この服がどうしても、どういう構造なのか分からなくてさ」

成幸 「どっちが表でどっちが裏かもよく分からないし、メビウスの輪かと……」

理珠 「……? ああ、たしかにその服を見て私もメビウスの輪を思い出します」

スッ

理珠 「これはワンピースタイプの服ですね。貫頭衣みたいな構造になってます」

成幸 「ふむ……作りはシンプルだけど、作り方を間違えるととんでもないことになりそうだな」

成幸 「オシャレな感じだから、作ってやったら水希が喜ぶかもと思ったが……」

成幸 「着方もよく分からないし、やめておいた方が無難か」

理珠 「……それでしたら、もしよかったらいま着てみましょうか?」

成幸 「へ? いいのか?」

理珠 「べつに減るものでもありませんし、構いませんよ。ちょっと廊下に出ていてください。すぐ着ますから」

760以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:36:05 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 (実際に着てもらうことになるとは……。緒方に悪いな)

成幸 (でも、助かるな……)

スルッ……スルッ……

成幸 「……!?」 (き、衣擦れの音……)

成幸 (よ、よく考えたら、ドアの向こうで緒方が着替えてるんだよな……)

ハッ

成幸 (ば、バカか俺は! 俺のために着替えてくれてる緒方に、なんて下劣なことを……!)

ガチャッ

成幸 「!?」

理珠 「着替え終わりました。入っていいですよ……って、成幸さん、すごい顔ですよ。どうかしたのですか?」

成幸 「あ、いや、なんでもない……」

成幸 (び、びっくりした……)

761以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:36:43 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ふむふむ、なるほど……」

成幸 「こういう構造になっているのか……」

理珠 「………………」

理珠 (うぅ……服を見られているときも恥ずかしかったですが……)

理珠 (着ている服をまじまじと見られるのは、もっと恥ずかしいです……)

モジモジ

成幸 「ん……あっ」

成幸 「わ、悪い。近くで見すぎたな。すまん」

理珠 「いえ……」

理珠 「ど、どうですか?」

成幸 「ん……大体どういう風になってるのか分かったから、結構簡単に作れそうだ」

成幸 「ちょっとメモさせてくれ」

762以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:37:21 ID:AR9F6gVQ
成幸 「えっと……ここがこうなってるのか……」 メモメモ

理珠 「………………」

プクゥ

理珠 (……成幸さん、かわいいとは言ってくれないのですね)

理珠 (せっかく着てあげたのだから、それくらい言ってくれてもいいのに……)

ハッ

理珠 (わ、私は何を……。私から着てあげると提案しておいて、なんて厚かましい……)

理珠 (というか、私は……成幸さんに、もう一度、かわいいと言ってほしいのしょうか……)

理珠 「………………」

理珠 (そもそも、成幸さんは、私の私服がかわいいと言っていただけであって、私のことなんて一言も言っていないのに)

理珠 (……何を勝手に舞い上がっていたのでしょうか。今だって、私には目もくれず、メモを取っているのですから)

理珠 (まったく、不可解です。私は一体何を期待していたのでしょうか……)

763以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:38:03 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……っと、よし、メモも終わったぞ」

成幸 「緒方、ありがとな。おかげで水希に作ってあげられる服が増えそうだよ」

理珠 「……そうですか。それは何よりです」

成幸 「……? 緒方、どうかしたか?」

理珠 「何もありません」 ムスッ

成幸 (いや絶対何かあっただろ……)

理珠 「……着替えますから、また廊下で待っててもらえますか」

成幸 「あ、ああ。まぁ、それはいいけどさ……」

クスッ

成幸 「お前ってさ、得だよな」

理珠 「へ……? な、何の話ですか?」

成幸 「美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし」

成幸 「……っと、悪い。また余計なこと言ったな。じゃあ、廊下出てるわ」

764以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:38:54 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

カァアアアア……

理珠 (い、今のは……)


―――― 『美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし』


理珠 (今のは、服ではなく、私自身のこと……です、ね……?)

理珠 (ま、まったく、不可解なことです……)

理珠 (さっきまで頭にもやがかかっていたようだったのが、一瞬で晴れてしまいました)

理珠 (美人……ふふ、あと、かわいい、ですか……)

理珠 (い、いけません。なぜか、笑みが止まりません)

理珠 (ふふっ……)

765以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:39:35 ID:AR9F6gVQ
………………数日後

成幸 「緒方、この前はありがとな。本当に助かったよ」

理珠 「? ああ、服を見せたことですか。大したことではありませんから、お気になさらずに」

文乃 「……!? りっちゃん、服を見せたって……おうちで?」

理珠 「そうです。成幸さんにうちで服を見てもらいました」

文乃 (りっちゃん、服を見せるとか……大胆すぎるよ……)

成幸 「水希もすごく喜んでくれてさ。毎日着てくれてるよ」

成幸 (緒方に見せてもらった服を参考にしたって言ったら、なぜか少し不機嫌になったけど、)

成幸 (まぁ、それはわざわざ言う必要はないだろう……)

理珠 「それは何よりです。お役に立てたなら何よりです」

成幸 「おう。それでな」 ゴソゴソ 「本当は余った布で何か作ろうと思ったんだけど、生地が足りなくてさ」

成幸 「毛糸が余ってたから、手袋を縫ってきたんだ。趣味じゃなかったらミトンか軍手代わりにでも使ってくれ」

理珠 「へ……? これ、私にくれるんですか?」

成幸 「お礼だよ。本当にありがとな、緒方」

766以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:41:11 ID:AR9F6gVQ
文乃 (手編みの手袋!? 女子力高いけど重すぎだよ成幸くん!)

文乃 (普通の女子だったら引いちゃうかもしれないレベルだよ!?)

理珠 「こ、これを、私に……」

カァアアア……

理珠 「う、嬉しいです! 使います! 絶対、使いますから!」

成幸 「お、おお、そうか? そんなに喜んでくれると嬉しいな……」

文乃 (けどセーフ! なぜならりっちゃんは結構普通じゃないから!)

理珠 「………………」

スッ……

理珠 「ど、どうですか? 似合いますか?」

成幸 「ああ。前に手を引いたときとかの感覚で作ってみたけど、サイズもピッタリだな。よかった」

文乃 (その発言も一般的には結構気持ち悪いと思うけど、りっちゃん的には……)

理珠 「そ、そういえば、そんなこともありましたね……///」

文乃 (やっぱり! 嬉しそうだ! よかったね成幸くん! りっちゃん!) ヤケクソ

767以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:41:49 ID:AR9F6gVQ
成幸 「我ながら良い出来だ。似合ってるぞ、緒方」

理珠 「ありがとうございます……。ふふふ、手袋……」

文乃 (……まぁ、でも、りっちゃんが嬉しそうだからいいか)

理珠 (成幸さんが作ってくれた、手袋……)

ギュッ

理珠 「大切に使わせてもらいますね、成幸さん」

成幸 「おう!」


おわり

768以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:42:41 ID:AR9F6gVQ
………………幕間 いつもの場所 「揉み手」

成幸 「……と、いうことで、水希のために緒方に服を見せてもらったんだよ」

文乃 「なるほどねぇ。きみは本当に……」 (天然で女の子を惑わすアクマかな?)

文乃 (ま、いっか。りっちゃん、手袋も喜んでたみたいだし……)

文乃 (手袋……)

文乃 「……さ、最近寒いねー。わたし冷え性だから、手足の先が冷えるんだよねー」

成幸 「へー。やっぱ女子って大変だな。そういや水希も似たようなこと言ってたなぁ」

文乃 「………………」 モミモミモミモミ 「はー……ほんと冷えるねー」

成幸 「はは、揉み手してると、悪い越後屋みたいだな、古橋」

文乃 「………………」 ジロリ 「……唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「女心の授業、単位は上げられません。再履修してください」

成幸 「なぜ!?」

おわり

769以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:44:43 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

わたしがあまり服に興味がないせいで、
理珠さんが服を見せるシーンがまったく具体性に欠けています。
書いていて笑いそうになりました。申し訳ないことです。


また折を見て投下します。

770以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 22:10:49 ID:9SdBdkF2
ほんともう最高の一言です

771以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 22:31:54 ID:uVzPNNV2
ここ最近の楽しみはこのスレを見ることだわ

772以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 03:40:40 ID:QP3Tpil2
原作のあしゅみーエロ枠になりがちだからこっちのが好き

773以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 10:29:05 ID:lKuZbtsQ
まとめサイトで見てたけどスレッドここにあったのか
いつも楽しませてもらってます
最近はこのSSが上がるのが楽しみでしょうがない
最高です

774以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 11:59:49 ID:glyjnWWQ
これは再履修不可避

775以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/23(火) 20:24:45 ID:wE8xmduY
レスするとスレが終わりに近づくジレンマ

776以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:52:56 ID:REbudaZM
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】うるか 「いつか、絶対」

777以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:54:01 ID:REbudaZM
………………唯我家

葉月 「ふんふんふーん♪ それがー、フルピュアー、なのよー♪」

成幸 「なんだ? 葉月のやつ、えらくご機嫌だな」

花枝 「ふふ、今週の日曜日、フルピュアショーに連れてってあげるって言ってから、ずっとああなのよ」

花枝 「楽しみで楽しみで仕方ないみたい」

成幸 「フルピュアショー? 遊園地の招待券でももらったのか?」

花枝 「ううん。近くの住宅公園でやるみたいなの。入場料無料だから助かるわ」

成幸 「なるほどなぁ」

葉月 「ふふんふーん♪」

和樹 「楽しみだなー」

葉月 「うん!」

成幸 (ふふ、葉月、嬉しそうだなぁ……)

778以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:55:33 ID:REbudaZM
………………週末 土曜

葉月 「えっ……。明日、行けないの……?」

花枝 「ごめんね、葉月」

花枝 「明日の仕事、休めなくなっちゃったの。どうしてもなのよ」

葉月 「………………」

ニコッ

葉月 「……だ、大丈夫なのよー。お仕事なら仕方ないわ」

葉月 「お母さんは気にしないで、お仕事がんばってね!」

花枝 「葉月……」

葉月 「大丈夫! フルピュアショーはまたいつかやるだろうし、明日じゃなくても……」

グスッ

葉月 「!? ち、違うのよー。これは、べつに……」

花枝 「葉月、ごめんね……」 ギュッ

779以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:56:03 ID:REbudaZM
成幸 「………………」 (明日か……。しまったな。うるかとの勉強の約束を入れてしまったぞ……)

成幸 (うるかの試験も近いし、さすがにすっぽかすわけには……)

葉月 「……えぐっ……ぐすっ……」

成幸 「………………」

成幸 「……母さん、俺が連れてくよ。フルピュアショー」

花枝 「成幸……?」

成幸 「だから泣き止めよ、葉月。兄ちゃんが一緒に行ってやるから」

ポンポン

葉月 「ほんと!?」

成幸 「うそなんかつかないよ」

花枝 「成幸……。勉強とかは大丈夫なの?」

成幸 「ん、まぁ、一日家族のために働いて悪い結果が出るような、ヤワな勉強の仕方はしてないからな」

葉月 「わーい! 兄ちゃん大好きー!」 ギュッ

成幸 「よしよし。明日、楽しみだな、葉月」

葉月 「うん!」

780以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:56:43 ID:REbudaZM
成幸 「………………」

成幸 (……俺がなんのためにVIP推薦を目指してるのか)


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (家族を幸せにするためだ。楽な暮らしをさせるためだ)

成幸 (今、泣いてる葉月を放っておいたら、それも全部うそになってしまう)

成幸 (ただ、うるかには申し訳ないな……)

成幸 (また別の日に埋め合わせしてやらないと……)

成幸 (俺のVIP推薦のためだけじゃない。うるかの夢のためにも)

成幸 (……まずは、取り急ぎ電話で謝らないとだな)

781以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:57:38 ID:REbudaZM
………………武元家

うるか 「ふんふふーん♪」

うるか (……えへへ。明日は成幸と久々にふたりっきりだ)

うるか (どうしよっかな。ちょっとおしゃれしてっちゃおうかな)

うるか (海っちと川っちにそそのかされて買った服、着てっちゃったりとか……) ドキドキ

うるか (……まぁ、それでやることがベンキョーっていうのが、テンション下がるけど)

うるか (でも、成幸が自分の勉強時間を削ってあたしに付き合ってくれるんだから、)

うるか (あたしもがんばらないと……)

prrrr……

うるか 「ん……? な、成幸から電話!?」 ピッ 「も、もしもし? 成幸ー? どしたん?」

成幸 『うるか。明日、勉強の約束だっただろ?』

うるか 「へ? う、うん。それがどうかしたの?」

成幸 『……悪い。明日、行けなくなったんだ。ごめん!』

うるか 「えっ……」

782以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:58:16 ID:REbudaZM
………………

うるか 「なるほどー。そういう事情なら仕方ないよね」

成幸 『……ごめん』

うるか 「謝らないでよ。全然気にしてないよ。仕方ないって」

うるか 「あたしは成幸がいなくてもひとりで勉強できるし……」

うるか 「………………」

うるか 「フルピュアショー、かぁ……」

成幸 『? どうかしたか?』

うるか 「えっ、あっ、いや……」 アセアセ 「あたしも最近フルピュア観てるって話、前にしたじゃん?」

うるか 「あたしもショーとか行ってみたかったんだよね。でもまぁ、あたしももう高校生だし……」

うるか 「もっと小さい頃にフルピュアを知ってたら、気兼ねなく行けたのかな、とか思っちゃって」

成幸 『ん……』

うるか 「あっ、ごめんね、成幸。変なこと言って。明日、楽しんできてね!」

成幸 『……なぁ、うるか。もし良かったら明日、一緒に行かないか?』

うるか 「へ……?」

783以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:58:54 ID:REbudaZM
成幸 『葉月と和樹も一緒だけど、それでいいなら、一緒にどうだ?』

成幸 『たしかに高校生にもなってキャラクターショーにひとりで行くのは気が引けるかもしれんが……』

成幸 『葉月と和樹も一緒なら、付き合いで来てるようにみえるだろう?』

成幸 『それに、終わった後うちに来て、一緒に勉強もできるしな』

うるか 「……い、いいの? あたしも一緒に行っても」

成幸 『もちろんだ。葉月と和樹もその方が喜ぶだろう』

成幸 『……それに、お前には悪いけど、女手があった方が俺もありがたいし』

うるか 「あ……じ、じゃあ、一緒に行こうかな」

成幸 『よーし! じゃあ、勉強道具も忘れずにな!』

うるか 「う、うん。じゃあ、また明日」

成幸 『おう! よろしくな、うるか!』

ピッ

うるか 「………………」

ニヘラ

うるか 「ど、どうしよう……。明日、お出かけになっちゃったよぅ。えへへ……」

784以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 00:59:38 ID:REbudaZM
うるか (葉月ちゃんと和樹くんが一緒……。フルピュアショー……)

うるか (……それなら、あの可愛い服、着てってもいいかな)

うるか (へ、ヘンとか思われないかな。似合わないとか、言わない……よね)

うるか (えへへ……)

ハッ

うるか (い、いけないいけない。明日は成幸にとっては大事な家族サービスなんだから、気を引き締めないと)

うるか (勉強道具、忘れないようにもう入れちゃおう)

うるか (あとは、ハンカチとティッシュ……チビちゃんたちもいるから、多めに持ってこう)

うるか (あとは、あとは……) ピキューン (そうだ! 経験者に聞けばいいんだ!)

ガチャッ

うるか 「ねー、ママー! あたしが小さい頃お出かけするとき何用意したー!?」

785以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:00:08 ID:REbudaZM
うるか母 「……いきなり部屋から飛び出してきたと思ったらいきなりどうしたの?」

うるか 「ちょっと友達の弟妹とお出かけすることになったの!」

うるか母 「? まぁよく分からないけど、とりあえずあんたが小さい頃使ってたバルーンバッグ貸してあげるわ」

うるか 「!? たくさんものが入りそう! ありがとう、ママ!」

うるか母 「あんたが小さい頃、その中に必要そうなもの全部入れてったわ。なつかしいわねぇ……」

うるか 「ハンカチとティッシュは多めにいれたよ! あとは何がいるかな?」

うるか母 「そうねぇ……。飲み物を多めに持っていくのと、お菓子かしら」

うるか母 「ぐずったりしたときに便利なのよ」

うるか 「なるほどなるほど。じゃあ、あたし秘蔵のお菓子を入れとこう」 ポイポイポイ

うるか母 「あとはねぇ……」

うるか 「ふむふむ……」

786以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:00:50 ID:REbudaZM
………………翌日 駅前

うるか 「おはよう、成幸! 葉月ちゃん! 和樹くん!」

成幸 「お、おう、おはよう、うるか」

葉月&和樹 「「おはよー! うるか姉ちゃん!」」

成幸 「なんか、えらく大荷物だな」

うるか 「ふふーん、そうでしょ? 葉月ちゃんと和樹くんとお出かけだから、」

うるか 「色々と必要そうなものを持ってきたんだよ」

成幸 「そ、そうか。なんか悪いな。重くないか?」

うるか 「大丈夫! 大して重くないよ!」

成幸 (ペットボトルとかお菓子が見え隠れしてるな……)

成幸 (葉月と和樹のために持ってきてくれたのか……)

成幸 「……俺、ほとんど荷物ないし、持つよ」

うるか 「へ……? い、いやいや、あたしが勝手に持ってきただけだから――」

成幸 「――いいから貸せよ、ほら」

787以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:01:21 ID:REbudaZM
ズシッ

成幸 「!?」 (な、何が大して重くない、だ)

成幸 (めちゃくちゃ重いじゃねーか!)

うるか 「大丈夫、成幸? あたしヘーキだから、持つよ?」

成幸 「だ、大丈夫だ。これくらい軽い軽い」

成幸 「それに、その服、この前買った服だろ?」

うるか 「へ……?」

成幸 「せっかくかわいい服なんだから、大荷物なんか持ってたらもったいないだろ」

うるか 「………………」

ボフッ

うるか 「……か、かかかかかか、かわいい?」

成幸 「……?」 ハッ (な、何を言ってるんだ俺は!? か、かわいいって……)

成幸 (これじゃ俺がうるかのこと口説いてるみたいじゃねーか!)

成幸 (うるかには好きな人がいるってのに、俺はなんてアホなことを……!)

788以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:01:57 ID:REbudaZM
成幸 「ち、違うぞ、うるか! 俺は、ただ、服のことを言っただけであって……」

うるか 「……っ」

うるか (そ、そうだよね。あたしには、こういうかわいい服は似合わないよね……)

うるか 「………………」

うるか (違う……)


―――― 『今日のあたしさ お姫様みたいじゃない?』

―――― 『こ……このカッコ 似合って…… ないかな……』

―――― 『あ あはは やっぱいいや!』

―――― 『成幸の感想なんてどうでもいいしっ! じゃあねっ!』


うるか (……あたしは、だって、もう、あのときのあたしとは違うもん)

うるか 「じ、じゃあさ……」

ズイッ

うるか 「この服、あたしには似合わない?」

789以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:02:33 ID:REbudaZM
成幸 「へっ……!?」 (ち、近っ……)

成幸 「いや、えっと……」

うるか 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 「に、似合ってないわけ、ないだろ……」

成幸 「お姫様……みたいで……その、あ、えっと……」

成幸 「かわいいと、思います、です……」

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「あははっ、成幸めっちゃ顔真っ赤ー! なんで敬語になってんのさー!」

成幸 「う、うるせーな! そういうお前だって顔真っ赤じゃねーか!」

うるか (そんなの当たり前じゃん……)

うるか (大好きな人にかわいいっていわれて、嬉しくて仕方ないんだもん!)

クイックイッ

790以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:03:05 ID:REbudaZM
うるか 「ん……? 葉月ちゃん?」

葉月 「兄ちゃんとうるかお姉ちゃんのラブラブもいいんだけどね」

葉月 「早くフルピュアショー見に行きたいのよね」

うるか 「あっ……そ、そうだよね! ごめんごめん」

和樹 「兄ちゃん、まだ顔真っ赤だぞ?」

成幸 「う、うるせーな。わかってるよ……」

成幸 (……っ、なんか、よくわからないけど、)

成幸 (今日のうるか、めちゃくちゃかわいいな……)

ハッ

成幸 (いかんいかん。俺の事情に付き合ってくれてるうるかに、変なことを考えるな、俺)

成幸 (うるかには好きな人がいるんだ。俺が変なことを考えちゃいかん)

うるか 「ほら、成幸ー、行くよー?」

成幸 「あ、ああ……」

成幸 (……大丈夫。俺はうるかの友達。ただの、友達なんだから)

791以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:03:43 ID:REbudaZM
………………住宅展示場

うるか 「おー! すごいね、成幸」

うるか 「オシャレなおうちがたくさん並んでるよ」

成幸 「……なるほどなぁ。色んな会社がそれぞれの家を展示してるんだな」

成幸 「そりゃ、どの会社もオシャレで見栄えがする家を展示するよな」

葉月 「フルピュアショーはどこでやるのかしら?」

成幸 「ん……ああ、案内が出てるな」

成幸 「どうも、受付を済ませる必要があるみたいだな。まず受付の建物に行こうか」

葉月 「じゃあ、早く、早く。ショーが始まっちゃうわー」

成幸 「まだ時間はあるから大丈夫だよ。……わわっ、引っ張るなって」

うるか 「……葉月ちゃん、本当に楽しみにしてたんだねー、フルピュアショー」

和樹 「んー、まぁ、うちは貧乏だから、遊園地とかのショーは行けないからなー」

和樹 「無料で観られるって知って、本当に楽しみにしてたんだよ」

うるか 「そっか……」

792以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:04:18 ID:REbudaZM
………………受付

成幸 「………………」

成幸 (や、やばい……! 周りにいる人たち、どう見てもみんな……)

成幸 (新婚さんとか、お子さん連れとか、とにかく夫婦ばっかりだー!)

成幸 (高校生と小児連れの俺たちは、確実に浮いている……!)

係員 「あの、お客様?」

成幸 「!? は、はい!」

係員 「受付はまだでしょうか? よろしければ、こちらのカウンターでお受け致しますが」

成幸 「あ、は、はい……よろしくお願いします……」

成幸 (だ、大丈夫なのか? そもそもここ、住宅展示場だよな)

成幸 (俺みたいな高校生が来ていいところじゃないんじゃ……)

係員 「奥様とお子様も、こちらの席にお座りください。どうぞ」

うるか 「……!?」

うるか (お、奥様!?)

793以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:05:15 ID:REbudaZM
成幸 「あ、いや、彼女は……――」

うるか 「――は、はい! 奥様です!」

成幸 「へ……!?」

うるか 「ほら、葉月ちゃんと和樹くんも、こっち座ろうねー」

葉月 「? はーい」

成幸 「う、うるか……?」

うるか 「しーっ」 コソッ 「高校生だってバレたら追い出されちゃうかもだよ?」

うるか 「ここは、夫婦のフリ、するしかないっしょ」

成幸 「そ、そりゃそうかもしれんが……」

係員 「お客様? どうかされましたか?」

成幸 「い、いえ、なんでもないです!」

係員 「では、旦那様、奥様、当展示場の説明をさせていただきます」

成幸 (旦那様……)

うるか (奥様、かぁ……///)

794以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:06:13 ID:REbudaZM
………………受付後

成幸 「………………」

ガクッ

成幸 「……し、死ぬかと思った」

うるか 「まったくもー。成幸は小心者だなー」

うるか 「べつにウソついたわけでもないし、向こうがあたしたちのこと……ふ……」

カァアアアア……

うるか 「夫婦って、勘違いしただけだし……」

成幸 「夫婦……」

カァアアアア……

成幸 「……そ、そりゃ、そうだけど……」

葉月 「もー、うるかママも成幸パパも、見つめ合ってないで、フルピュアショー行くわよー!」

クイクイ

成幸 「ぱ、パパ……?」

うるか 「ママ……!?」

795以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:06:59 ID:REbudaZM
葉月 「? だって、新婚さんのフリするのよね?」

和樹 「じゃあ今日一日、兄ちゃんと姉ちゃんは、成幸パパとうるかママだな!」

成幸 「い、いや、それは……さ、さすがに……///」

うるか 「い、いいじゃん! その方が、都合がいいこともあるだろうし……」

成幸 「うるかがいいならいいけどさ……」

うるか (ま、ママかぁ……えへへ……)

成幸 (パパって……さすがに、まずい気がするぞ……)

うるか 「よーし、じゃあ行くぞー、葉月ちゃん、和樹ちゃん」

葉月 「おー!」

和樹 「いくぞー!」

ドタドタドタドタ……

成幸 「ち、ちょっと待ってくれー! 荷物があるんだよー!」

796以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:07:44 ID:REbudaZM
………………広場

葉月 「きゃー! ショーのための舞台があるわー!」

和樹 「夢にまで見たフルピュアショーだもんな。よかったな」

葉月 「うん!」

うるか 「お子様は前に行っていいみたいだよ。いってらっしゃい、ふたりとも」

葉月 「わーい!」

成幸 「パパとママはここで座って後ろから見てる感じか。なるほどなぁ……」

うるか 「大人が前に行っちゃったら小さい子が見えなくなっちゃうもんね」

成幸 「……お前は前に行かなくていいのか?」 クスッ

うるか 「! もーっ、子どもあつかいしないでよー、成幸!」

うるか 「あたしは大人なフルピュアファンだからね。後ろからこっそり応援するよ」

客1 (なんか、すごく若い夫婦……)

客2 (いいなぁ、若くて……。ラブラブだなぁ……)

797以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:08:34 ID:REbudaZM
葉月 「うるかママー! 成幸パパー!」

ブンブンブン

成幸 「お、おー、葉月ー」

成幸 (さ、さすがに大声でママパパ呼びされると恥ずかしいな……)

成幸 (うるかもさすがに嫌かな……? うつむいちゃったぞ……)

うるか 「………………」

うるか (なにこれ幸せすぎて怖い)

うるか (これからフルピュアショー観られるってだけでも嬉しいのに、)

うるか (成幸と新婚夫婦役とか幸せすぎて怖い)

ニヘラ

うるか (ニヤけるのが止まらなくて、顔上げられないよ〜〜〜!!)

客1 (ラブラブアベック……)

客2 (初々しい新婚さん……)

((いいなぁ……))

798以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:09:06 ID:REbudaZM
………………フルピュアショー

怪人 『ゲッヘッヘッへ、今日は住宅展示場にお邪魔したぞ〜』

怪人 『美味そうな子どもたちがいっぱいだな〜、ゲッヘッヘッへ!!』

成幸 (おお、アニメと違って着ぐるみだと少し迫力があるな)

成幸 (あいつら怖がってないかな……?)

葉月 「きゃー! きゃー! 怪人さんがいるわー! 本物よー!」

和樹 「アニメよりかっこいいな。ふむふむ」

成幸 (うちの弟妹はそんなにヤワじゃないよな……)

成幸 (それにしても、まだフルピュアも出てないのにすごい喜びようだな……)

うるか 「ねぇねぇねぇ見て見て成幸! 本物の怪人さんだよ!」

うるか 「来てよかったよー!」

成幸 (お前もか、うるか……)

799以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:09:43 ID:REbudaZM
 『お待ちなさい!!』

バーン!!!!

うるか 「キャーーーーー!!! フルピュアだよ成幸! 本物だよ!」

成幸 (どっちかっていうと、アニメの方が本物なんじゃないかと思うんだが……)

成幸 「あ、ああ、そうだな……」

葉月 「きゃー! 勢揃いしてるわー!」 ワクワク

和樹 「フルピュアって結構大きいんだな……」 ドキドキ

成幸 「………………」

クスッ

成幸 (まぁ、みんな楽しそうだしいいか……)

うるか 「きゃー! 見て成幸! フルピュアダークネスも出てきたよ!?」

バシバシバシ

成幸 「痛い痛い痛い! どんだけ興奮してるんだうるか!?」

800以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:10:22 ID:REbudaZM
………………ショー終了後

葉月 「うるかママー! すごかったわー!」

タタタタタ……ギュッ

うるか 「そうだねぇ、葉月ちゃん。ダークネスもカッコよかったねぇ」

葉月 「うん!」

うるか 「この後は写真撮影ができるみたいだよ。ほら、並ぼう、葉月ちゃん」

葉月 「写真撮影?」

成幸 「フルピュアと写真が撮れるみたいだな。握手もしてくれるみたいだぞ?」

葉月 「本当に!? 行くわ行くわー!」

801以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:10:56 ID:REbudaZM
………………

成幸 「ほら、葉月と和樹の番だぞ。いってこい」

葉月 「うん!」 ドキドキドキ

うるか 「あはは、葉月ちゃんも和樹くんも緊張した顔だね」

成幸 「憧れのヒーローが目の前にいて嬉しいんだろうなぁ……」

成幸 「今日、来られてよかった。ありがとな、うるか」

うるか 「へ……? べ、べつにあたしは何も……」

うるか 「今日だってついてきただけだし……」

うるか 「っていうか、はりきって荷物たくさん持ってきちゃった。ごめんね、持たせて」

成幸 「葉月と和樹のために持ってきてくれたんだろ? ありがたいよ」

うるか 「えへへ……」

チラッ

うるか (葉月ちゃんも和樹くんも嬉しそう。いいなぁ、フルピュアと写真……)

うるか (って、まぁ、高校生のあたしがうらやましいって思うもんじゃないよね)

802以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:11:53 ID:REbudaZM
成幸 「……?」 (うるか……なんか……)


―――― 『いちフルピュアファンとして……ちゃんと3色揃ってないのはナットクいかないっつーか……』


成幸 (文化祭でも相当こだわりがあったみたいだし、本当にフルピュアが好きなんだよな……)

成幸 (ひょっとして、写真……)

パシャッ

うるか 「……ん、成幸、ふたりとも写真撮影終わったみたいだよ」

成幸 「ああ……。じゃあ、行こうか」

うるか 「……うん」

ギュッ

うるか 「……? 成幸、どうしたの?」

成幸 「すみません。次、俺たちも撮ってもらってもいいですか?」

うるか 「へっ……?」

成幸 「悪い、葉月、和樹、ちょっとそっちで待っててくれ」

うるか (成幸、ひょっとして……) カァアア…… (あ、あたしのために……?)

803以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:16:43 ID:REbudaZM
………………撮影後

うるか 「………………」

ジーーーッ

うるか (ど、どうしよう……フルピュアと写真撮影しちゃったよ……)

うるか (全員と握手までしてもらっちゃったし……)

うるか (それに……)

うるか (……これ、成幸とのツーショットでもあるよね)

ニヘラ

うるか (えへへ……えへへへへ……)

成幸 (うるかの奴、本当に嬉しそうな顔だ)

成幸 (……ちょっと恥ずかしかったけど、写真撮ってもらってよかったな)

和樹 「よかったな、写真撮ってもらって、ハグもしてもらえて」

葉月 「うん! この写真、わたしの宝物にするの!」

成幸 (葉月と和樹も本当に嬉しそうだ。来て良かった……)

804以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:17:17 ID:REbudaZM
うるか 「この後どうするの?」

成幸 「ん……なんか、受付でもらった袋に、チケットがいくつか入っててさ」

うるか 「チケット?」

成幸 「ああ。展示場の色々な場所に屋台みたいなのがあるみたいだな」

成幸 「……!? そこでチケットを渡せばただで食べ物がもらえるみたいだぞ!?」

葉月&和樹 「「タダ!?」」 キラキラ

成幸 「タダで食べ物がもらえるとは……ここは天国か……」

うるか (そんなに……?)

クスッ

うるか 「よーし、じゃあ、展示場回って食べ物もらいに行くかー!?」

葉月&和樹 「「おー!!」」

成幸 「タダで食べ物……タダで……す、すごすぎるぞ……」

うるか 「いつまで驚いてんのさー、成幸ー。行くよー!」

805以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:18:08 ID:REbudaZM
………………

成幸 「ほ、ホットドッグ!? ホットドッグをタダで!?」

スタッフ 「え、ええ、そうですけど……」

スタッフ 「4名様ですよね。どうぞ」

ゴソッ

成幸 「に、人数分!? 人数分、タダでくれるんですか!?」

成幸 「ほ、本当にタダなんですか!? 帰りにお金を請求されたりとか……」

うるか 「もー、恥ずかしいからやめてよ成幸! 大丈夫だよ!」

………………

成幸 「焼きそば!? 焼きそばもタダで!?」

成幸 「しかも結構大きいパッケージに……また人数分!?」

成幸 「お肉も野菜もたくさん入ってて……マヨネーズかけ放題ですって!?」

スタッフ 「え、ええ……」

成幸 「本当にタダなんですか!? どうしてタダにできるんですか!?」

うるか 「もー! だから恥ずかしいからやめてってばー!」

806以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:19:11 ID:REbudaZM
………………

成幸 「タダでお腹いっぱいになってしまった……」

成幸 「しかも葉月と和樹は風船までもらって……」

成幸 「罰が当たらないだろうか……」

うるか 「大丈夫だよ、もー」

うるか 「スタッフの人も言ってたじゃん。展示場を回ってもらうためのイベントなんだって」

うるか 「だから、あたしたちが屋台を回ってタダで食べ物をもらうだけでいいんだって」

成幸 「む……仕組みは理解しているんだが、なんかこう、釈然としないというか……」

葉月 「フルピュアショーも写真撮影もタダでできて……」

和樹 「おなかいっぱいになるまでご飯食べられて、風船までもらって……」

葉月&和樹 「「天国だ……」」

うるか 「兄弟だねぇ……」

うるか 「ほら、ふたりとも、喉渇いたでしょ。お茶飲みなー」

葉月&和樹 「「はーい」」

807以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:20:02 ID:REbudaZM
成幸 「ありがとな、飲み物。本当に助かるよ……」

うるか 「なんのなんの。家にあったやつだから気にしないで」

成幸 「……悪い。ありがとう」

ハァ

成幸 「それにしても、こうもカラフルで立派な家が並んでると壮観だな」

うるか 「そうだね。三階建てとか憧れるよね」

成幸 「うちはまず平屋だから二階建てに憧れるけどな」

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、うるか。ちょっと俺の話をしてもいいか?」

うるか 「? 成幸の話? いいけど、どんな話?」

成幸 「……俺さ、いつかお金をたくさん稼いで、家を建てるんだ」

うるか 「へ? 家?」

808以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:20:53 ID:REbudaZM
成幸 「おう。できるだけ立派で広い家。それこそ……」

葉月 「……はー、あとはお菓子もあったら言うことないわね」

和樹 「さすがに天国でもそこまではムリだろー」

成幸 「……母さんと水希と、あいつらふたりが、不自由しないような家」

成幸 「いつか絶対、建てたいんだよ。こういうところに来ると、がんばらなきゃって思えるな、って感じてさ」

成幸 「俺の夢は、家族に幸せに楽な暮らしをさせてやることだからさ」

成幸 「家を建てるっていうのも、俺にとってはきっと夢のひとつなんだろうな、って……」

成幸 「……ははっ、悪い。何を言いたいんだかよく分からない、つまらない話をしちゃったな。悪い。忘れてくれ」


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (はは、俺の夢……。そんなの夢じゃないとか、つまらないとか、そういう風に言われること、多いしな……)

成幸 (うるかだってこんな話されて困って……――)


うるか 「――……つまらなくなんて、ないよ」


成幸 「えっ……?」

809以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:21:37 ID:REbudaZM
うるか 「だってそれ、成幸にとって、大事な夢なんでしょ?」

うるか 「立派じゃん。すごいじゃん。本当に、すごいことだよ、それって」

うるか 「だから、つまらなくなんてないよ。大事な話、してくれてありがとう、成幸」

ニコッ

成幸 「うるか……」 ドキッ

成幸 「ま、まぁ、葉月と和樹の教育資金も必要だし、家なんかいつ建てられるか分からないけどな」

成幸 「母さんだっていつ体調崩すか分からないし……」

うるか 「……でも、いつか叶えられたらいいね」

うるか 「……ううん。いつか、絶対叶えようね、その夢。一緒に大きなおうち建てようね!」

成幸 「……おう!」

成幸 (……ん? 一緒に……? 一体どういう意味だ?)

うるか (はっ、し、しまった……! ついつい、成幸が夢の話をしてくれたのが嬉しくて、一緒にとか言っちゃった!)

成幸 (……まぁ、いいか。きっと大した意味じゃないだろう)

うるか (まぁいいよね! きっと成幸ニブチンだから気づかないし!)

810以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:23:02 ID:REbudaZM
葉月 「……ん?」

(´(ェ)`)ノシ

葉月 「……んー? んん??」

和樹 「? どうかした?」

葉月 「あのおうちから、くまさんが手を振ってるわ」

和樹 「くまさん……? ああ、玄関から手振ってるな」

葉月 「おいでおいでしてる?」

和樹 「してるな」

成幸 「? おい、どうしたんだ?」

葉月 「クマさんが呼んでるのー」

和樹 「行ってみようぜ、兄ちゃん――じゃなかった、パパ!」

成幸 「あ、ち、ちょっと待てって!」

811以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:23:45 ID:REbudaZM
タタタタタ……

葉月 「クマさん、こんにちは!」

和樹 「こんにちは!」

クマ 『こんにちは!』

クマ 『ふたりとも挨拶できて偉いね〜!』

クマ 『お父さんとお母さんはいるのかな?』

和樹 「うん! いまこっちにくるよ!」

クマ 『そっかぁ……』

キラン

クマ 『実はね、おうちの中に、美味しいジュースとお菓子があるんだけど、』

クマ 『食べに来ないかな?』

葉月 「お菓子!? ジュース!?」  和樹 「いいの!?」

812以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:24:30 ID:REbudaZM
成幸 「……? お、おいおい、なんか展示住宅の中に入っちゃったぞ!?」

うるか 「誘拐!?」

ドタドタドタドタ……

スタッフ 「こんにちは。先ほどのお子様の、お父様とお母様ですか?」

成幸 「え、ええ。そうですけど、葉月と和樹は……」

スタッフ 「中にご案内しております」

ニコッ

スタッフ 「温かいお茶のご用意もありますので、旦那様、奥様もどうぞ」

成幸 「えっ、い、いや、でも……俺たち、その、お金もないし……」

スタッフ 「ご予算のご相談でしたらお受け致しますし、低金利のローンもご用意できます」

スタッフ 「ぜひ、お話だけでも聞いていただければと思います」

成幸 「えっ、あっ……えっと……」

813以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:00 ID:REbudaZM
………………展示住宅内

葉月 「きゃー!」

和樹 「広いなー! きれいだなー! うちの何倍あるかなー!」

ドタバタドタバタ……

成幸 「こ、こら! 余所様のお宅なんだから、静かにしなさい!」

スタッフ 「大丈夫ですよ、お客様。弊社の住宅の一番のウリは頑丈さですから」

スタッフ 「他のスタッフがお子様の遊び相手を務めておりますので、ご心配なく」

成幸 (ど、どうしよう、うるか。仕方なく入っちゃったけど、高校生ってバレたら怒られるかな……) コソッ

うるか (バレないってばー。大丈夫だよ。どんと構えてようよ) コソッ

成幸 (こういうとき、お前の脳天気さが頼もしいよ……) コソッ

スタッフ 「では、お客様。家の中をご案内いたしますね」

814以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:36 ID:REbudaZM
………………

成幸 「………………」

成幸 (すごい……!!)

成幸 (鉄筋コンクリート製の家は外だけじゃなく中も立派だ)

成幸 (トイレも風呂もキッチンも非の打ち所のない美しさと機能を兼ね備えている!!)

成幸 (収納も多いし部屋数も豊富だ。いつか葉月と和樹が大きくなったとき、それぞれに部屋を与えることもできるだろう……)

成幸 (ただし!)

スタッフ 「えー、ただいま見ていただいたこの家ですと、大体ピー千万円からになります」

スタッフ 「弊社でご用意させていただく土地をご購入いただければ、土地自体は格安ですし、オプションをおつけすることもできます」

成幸 「ち、ちょっと、そのお値段は手が届かないかな、と……」

スタッフ 「そうですか。もっとお安い間取りもございますので、こちらのモデルプランをぜひお持ちください」

スタッフ 「低金利のローンのご用意もございますので、ぜひご検討いただければと思います」

成幸 (うぅ……。たしかに魅力的な家だが、さすがにまったく検討もつかない金額だから何も考えられんな)

うるか 「ふむふむ……なるほどなるほど……」

成幸 (頼みの綱のうるかは向こうで別のスタッフさんと何か喋ってるしー!)

815以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:26:22 ID:REbudaZM
うるか 「……!? ほんとですか!?」

うるか 「ねえねえ成幸! すごいこと聞いちゃったよ!」

成幸 「……?」

うるか 「たとえばあたしが仕事なりパートなりをして、月々の生活費を捻出できれば、」

うるか 「成幸の給料から葉月ちゃんと和樹くんの教育ローンと家のローンも組めるって! しかも貯金もできる!」

うるか 「ボーナスをローン返済に回せば、三十年ローンを組んだとして、十五年で完済できるかもって!」

成幸 「お、おう……。お前の口から難しい言葉が出てくるとなんか違和感あるな……」

成幸 「……っていうかその試算、お前が働くって前提だろ? 俺の給料だってまだ不確定だし……」

うるか 「大丈夫! 成幸のお給料で足りない分は、あたしががんばって稼ぐし! 家事だってがんばるし!」

うるか 「成幸の夢、叶えるためだったらいくらでもがんばるよ!」

成幸 「お、おう……///」 (お、奥さんのフリ、具体的にやりすぎだろ……さすがに照れるぞ……)

スタッフ 「……良い奥様ですね」 コソッ

成幸 「へっ……!?」 カァアアアア……

うるか 「?」

成幸 「………………」 コクッ 「……そう、思います。本当に」

816以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:26 ID:REbudaZM
………………帰路

葉月&和樹 「「………………」」 zzz……

成幸 「ったく、散々遊び回って、疲れたら寝ちまうんだからなぁ……」

うるか 「子どもらしくていいじゃん。ふたりとも幸せそうだし」

成幸 「悪いな。葉月おんぶさせちゃって」

うるか 「ううん。寝てる子どもの体温、湯たんぽみたいで気持ちいいよ。得した気分」

成幸 「……お前のその前向きさ、ほんと見習いたいよ」

うるか 「そう? えへへ、褒められちったー」

ルンルン♪

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……お前はほんと、“良いお嫁さん” になりそうだな」

うるか 「……はぇ!?」

カァアアア……

うるか 「き、急になに、成幸……」

817以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:58 ID:REbudaZM
成幸 「いや、そう思ったから言っただけだよ。料理も美味いし、前向きだし、体力もあるし、元気だし……」

成幸 「……って、変なこと言ったな。悪い」

うるか 「………………」

うるか (まったく、成幸ったら……人の気も知らないで……)

うるか (でも、そっか……。成幸がそう思ってくれてるんだ)

うるか (あたしのこと、“良いお嫁さん” になるって思ってくれるんだ)

グッ

うるか 「……うん。なるよ」

成幸 「ん?」

うるか 「なるよ。“良いお嫁さん”」

成幸 「あ、ああ。そうか。そうだよな」 ニコッ 「本当に、なると思うよ。“良いお嫁さん”」

うるか (いつか、成幸の、“良いお嫁さんに”)

ニコッ

うるか 「うん! いつか、絶対。なってみせるから」

おわり

818以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:28:41 ID:REbudaZM
………………幕間1 夜 唯我家 「敵」

水希 「今日は本当にありがとうございました、武元さん」

うるか 「へ……? あたしなんかしたっけ?」

水希 「葉月と和樹から聞きました。フルピュアショーが本当に楽しかったって」

水希 「あのふたりがニコニコ嬉しそうにわたしに言うんです。だから、本当に楽しかったんだろうな、って……」

うるか 「いやいや、あたしが勝手についていっただけだから、気にしなくていいよ」

うるか 「あたしも楽しかったしね!」

水希 (この人は本当に、葉月と和樹のために色々してくれたらしい……。武元さんには気を許してもいいかな……――)

葉月 「――あっ、うるかママー! ……じゃなかった、うるかお姉ちゃーん」

水希 「………………」 ガシッ 「……待って、葉月。ママって何?」

葉月 「? ちょっとね? 誤魔化さなくちゃいけなかったから? うるかお姉ちゃんがママ役で、兄ちゃんがパパ役をやっただけよ?」

水希 「……ふーん、そう」 ギリッ (お兄ちゃんがパパで、武元さんがママ……へー、ふーん、そうかぁ……)

うるか 「? 水希ちゃん? どうかした?」

水希 「いえ……」 (やはり……)

水希 (やはり、この人も……敵!!)




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