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【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

667以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:35:03 ID:AR9F6gVQ
………………帰路

成幸 「今日は急に頼んで悪かったな」

成幸 「今日から始まるらしくてさ。早く行かないとなくなっちまうし……」

紗和子 「べつにいいわよ。予定があるわけでもないし」

成幸 「ありがとう、関城」

紗和子 「どういたしまして」


………………物陰

理珠 「ふ、文乃。本当にこんなことをしていいのでしょうか……」

うるか 「な、なんか、すごく悪いことしてる気分……」

文乃 「しょうがないよ。だってふたりとも気になるんでしょ? そのままじゃ勉強も手につかないでしょ?」

理珠&うるか 「「………………」」 コクッ

文乃 (成幸くんと紗和子ちゃんには悪いけど、少し尾行させてもらうよ!)

文乃 (ふたりの集中とわたしの胃の健康のために!)

668以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:38:20 ID:AR9F6gVQ
………………歓楽街

文乃 「………………」

文乃 (なんかフツーにデートっぽい場所に来たよ!?)

成幸 「……」

紗和子 「……」

文乃 (ああ、しかも全然聞き取れないけど、ふたりともめちゃくちゃ楽しそうに会話をしてるね?)

理珠 「………………」 ズズーン 「……なんか、楽しそうです」

うるか 「………………」 ズズズーン 「さわちん、うらやましいよぅ……」

文乃 「ほ、ほらほら、ふたりが行っちゃうよ。ふたりとも、がんばって!」

文乃 (胃が痛いなぁ!)

文乃 「ん……? ふたりが建物に入った……」

文乃 (……ゲームセンター?)

669以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:39:11 ID:AR9F6gVQ
………………ゲームセンター内

文乃 「……うーむ」

文乃 (あまり近づくわけにもいかないし、遠くから見ていての感想だけど……)

文乃 (普通にゲームセンターで遊んでいるだけのように見える……)

文乃 (というか、見ようによってはそのまんまカップルだ)

文乃 (そろそろ私の胃も限界だし、何より、)

理珠 「……やはり、成幸さんは……」

うるか 「さわちんと、付き合ってるのかな……」

ガクッ

文乃 (このふたりの精神状態が限界だ)

文乃 「ほらほら、元気出して、ふたりとも」

文乃 「考えてごらんよ。もし万が一成幸くんが紗和子ちゃんと付き合っていたとして、」

文乃 「それをわざわざわたしたちに隠すような不義理なことをすると思うかな?」

670以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:39:48 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

理珠 「……これは大変遺憾なことなのですが」

理珠 「『恥ずかしくってなかなか言い出せなかったんだ。ごめんな』 とか言う成幸さんが容易に想像できます」

うるか 「リズりんそれめっちゃわかる」

文乃 (……わたしもなんとなく想像できるな、それ)

文乃 (いやいや、でも、そんなまさか。成幸くんが紗和子ちゃんと付き合ってたりなんて……)

文乃 「………………」

シュッ!!!!!

文乃 (……もし、本当にそうだったとしたら、)

文乃 (ちょっと一発くらい、手刀入れてもいいかな?)

文乃 (なんにせよ、もう少し近づいて、会話を聞かないと分からないかな……)

671以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:40:38 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ひっ……!?」

紗和子 「? どうかしたの、唯我成幸。顔真っ青よ?」

成幸 「いや、ちょっと寒気がしてな……」

成幸 「それより、今日もありがとな。欲しがってたのは全部コンプリートできたよ」

成幸 「お前がいてくれると助かるな……」

紗和子 「いいわよ。私もただで遊べて得してるわけだし」

紗和子 「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

成幸 「ん……あ、そうだ。今からうちに来ないか?」

紗和子 「へ……? あなたのおうちに? どうして?」

成幸 「いやな、お前を紹介したくてさ。お前のことを話したら、ぜひ会いたいって言うんだよ」

紗和子 「ああ……そういうこと。お邪魔して迷惑でないなら、行ってもいいけれど」

成幸 「本当か? ぜひ来てくれよ。あいつらも喜ぶと思うんだ」

672以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:41:31 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

理珠 (ふ、文乃……) コソッ (ち、近づきすぎじゃないですか? バレませんか?)

文乃 (虎穴に入らずんば虎児を得ず、だよ、りっちゃん) コソッ


「ん……あ、そうだ。今からうちに来ないか?」


文乃 「!?」 (成幸くんの声だ! 紗和子ちゃんを家に誘ってるの……!?)


「へ……? あなたのおうちに? どうして?」

「いやな、お前を紹介したくてさ。お前のことを話したら、ぜひ会いたいって言うんだよ」


うるか 「!?」 (家族に紹介!? 家族が会いたいって言ってる!?)

理珠 (おふたりの関係はもうそんなところまでいっているのですか!?)

ズーン……

文乃 「………………」

シュッ

文乃 (……覚えてろよ、だよ。成幸くん……。ふふふ……)

673以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:42:16 ID:AR9F6gVQ
………………唯我家外

文乃 (結局、成幸くんと紗和子ちゃんは仲睦まじく連れ添って当たり前のように家の中に入っていった)

文乃 (後ろから気づかれないようにつけ回していただけのわたしたちをあざ笑うかのように……)

理珠 「………………」 チーン

うるか 「………………」 チーン

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんはもう限界だし、家の外にいても、何が覗けるわけでもないし……)

文乃 (ふたりが家から出てくるのを待っているのも不毛だ)

文乃 (……もし万が一、紗和子ちゃんが一晩中家から出てこなかったりしたら、それこそコトだし)

文乃 (そろそろ帰ろうかと提案するべきかな……――)


「――あら? ふみちゃんにりっちゃんにうるかちゃんじゃない」


文乃 「!? な、成幸くんのお母さん! と水希ちゃん!」

水希 「……人の家の前で何をやってるんですか、あなたたちは」

ハッ

水希 「ま、まさか、兄のストーカーですか!?」

674以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:43:32 ID:AR9F6gVQ
文乃 「うっ……」 (あ、あながち間違いでもないところが辛い……!)

文乃 「いや、実は、ちょっと成幸くんに用事があったんだけど……」

水希 (“成幸くん” ……?)

文乃 「お、お取り込み中だから、今日はいいかなー……なんて……」

花枝 「? せっかく来てくれたんだし、上がっていったらいいわよ」

花枝 「ほらほら、どうせだから晩ご飯も食べて行きなさい。どうぞどうぞ」

文乃 「えっ、あ、いや、その……」

ズルズルズル……

花枝 「成幸ー、ふみちゃんたちが来てるわよー! ……って、あら?」

紗和子 「あっ……」 スッ 「は、初めまして。唯我成幸……くんの、お友達の、関城紗和子といいます」

花枝 「あら……あらあらあらあら……」 ニンマリ 「はじめまして。成幸の母です」

水希 (また新しい女!?)

花枝 「こんな大人っぽい女の子まで連れ込んで……うちの息子も隅に置けないわねぇ……」

成幸 「母さん、帰って早々変なこと言うなよ……って、古橋!? 緒方にうるかも!? なんで!?」

675以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:44:37 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「……なるほど。そういうわけで、俺と関城をつけ回していた、と」

文乃 「ごめんなさい! 悪いのはわたしなんだよ! わたしが提案したんだよ!」

理珠 「いえ、私もなんだかんだ、積極的に参加していたので同罪です。ごめんなさい」

うるか 「あたしもだよ……。気になって仕方なかったんだ。ごめんね、成幸。さわちん」

紗和子 「私はべつに気にしてないけど……」

紗和子 (というかうかつだったわね。唯我成幸のことが好きな緒方理珠が気にするのは当たり前だもの)

紗和子 (悪いことしちゃったわね……)

成幸 「にしても、俺と関城が付き合ってるなんて、よくそんなこと思いつくな……」

文乃 「いやいや、きみたちがニブイだけで、男女が一緒に歩いてたらそれってもうデートだからね?」

成幸 「今日俺たちデートしてたらしいぞ、関城」

紗和子 「びっくりね、唯我成幸。気づかなかったわ」

文乃 (この……! 人のことは気遣うくせに自分のことは無自覚コンビめ!!)

676以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:45:13 ID:AR9F6gVQ
うるか 「でもでも、ふたりがそういう関係じゃないなら、今日は一体どうしてふたりでゲームセンター行ったの?」

理珠 「それを隠したのはなぜですか? やましいことでもあったのですか?」

文乃 「あと、どうして紗和子ちゃんを家に招待したのかも気になるかな?」

成幸 「質問が矢継ぎ早すぎるだろ……。仕方ない、ひとつひとつ答えてくぞ」

成幸 「ゲームセンターに行ったのは、これを取るためだよ」

うるか 「……! それ、フルピュアのぬいぐるみだ!」

成幸 「ああ。ゲームセンターのUFOキャッチャーのプライズだよ」

成幸 「出来は悪くないし、何より最安で100円で取れるからな。グッズを買うより安上がりなんだよ」

成幸 「俺はUFOキャッチャーが得意じゃないから、関城に頼んでたんだ」

理珠 「あっ……」


―――― 『うぎゃーっ 緒方理珠!! 何故ここに!?』


理珠 「そういえば、ペンケースを買いに行ったとき、UFOキャッチャーでぬいぐるみをたくさん取ってましたね」

677以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:46:23 ID:AR9F6gVQ
紗和子 「まぁ、UFOキャッチャーは嫌いじゃないからね。それなりに上手と自負しているわよ」

紗和子 「唯我成幸にときどき頼まれるから、取ってあげてるの。今までも何回かやってあげたわ」

紗和子 「でも、それをあなたたちに隠していることは、私も初耳なのだけど……」

成幸 「うっ……いや、だって……なんか……」

成幸 「『教育係』 のくせにゲームセンターで遊んでるのか、って思われたくなくてさ……」

成幸 「……すまん。俺のくだらない見栄だ。そのせいでお前たちに心配をかけたんだな」

文乃 「うっ……謝られるとこっちが申し訳ないから、謝らなくていいよ……」

文乃 「……で? どうして紗和子ちゃんをおうちにご招待したの?」

成幸 「それは……――」


「――キャー!! 新しいフルピュアのぬいぐるみよー!!」


文乃 「あっ……葉月ちゃん」

葉月 「わっ……お、お姉ちゃんたちが勢揃いしてるわ」

和樹 「ほんとだ。この狭い家によくこんなに人が入るもんだよな」

678以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:47:13 ID:AR9F6gVQ
成幸 「ちょうどよかった。葉月、和樹。この人がぬいぐるみを取ってくれるお姉さんだぞ」

紗和子 「あっ……え、えっと……お兄ちゃんの友達の、関城紗和子よ。よろしく」

葉月 「! お姉ちゃんがぬいぐるみのお姉ちゃんなのねー!」

ギュッ

紗和子 「あっ……」

葉月 「ありがとー、お姉ちゃん!」

葉月 「あんまりぬいぐるみとか買えないから、お姉ちゃんが取ってくれたぬいぐるみ、とっても嬉しかったの!」

葉月 「大事にするね! 紗和子お姉ちゃん!」

紗和子 「さ、紗和子お姉ちゃん……」 テレッ 「わ、悪くないわね……でへへ……」

成幸 「うん。人の妹でその表情されるとちょっと気持ち悪いな」

紗和子 「う、うるさいわね!」

成幸 「……ま、早い話がさ。葉月と和樹が会いたがったんだよ」

成幸 「ぬいぐるみを安く取ってくれる紗和子お姉ちゃんに、さ」

文乃 「そっか……」

679以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:48:00 ID:AR9F6gVQ
文乃 (……下衆な想像をしていた自分が恥ずかしい)

文乃 (紗和子ちゃんは成幸くんに頼まれて、ゲームセンターでぬいぐるみを取っていただけだったんだ)

文乃 (そして、今日家に招いたのは、紗和子ちゃんにお礼を言いたいという葉月ちゃんのため)

文乃 (はぁ……本当に、自分が恥ずかしい……)



水希 「……お、お兄ちゃん! ちょっと晩ご飯作るの手伝って!」



成幸 「わっ……み、水希? どうしたんだ、急に」

水希 「なんでもいいから、ほら! 早く台所に来て」 (こんな女が多いところにいさせられないし!)

成幸 「ひ、引っ張るなよ……。じゃあ、みんな、ちょっとゆっくりしててくれ」

成幸 「葉月と和樹の相手だけ頼むー……」 グイグイグイ……

紗和子 「? なんか、ちょっと怖い感じの妹さんね」

葉月 「あー、まぁ、水希姉ちゃんはちょっと……アレだから……」

和樹 「うん。ちょっとアレだから。気にしないでいいよ」

紗和子 (アレ……?)

680以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:48:32 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

ホッ

理珠 (……なぜ、私はこんなにも安堵しているのでしょうか)

理珠 (なぜこんなに、よかった、と思っているのでしょうか)

理珠 (成幸さんと関城さんがそういう関係でないと知って、どうして私は……)

理珠 (こんなに、笑みが止まらないのでしょう……)

理珠 (不可解です……)

うるか 「………………」

ホッ

うるか (よ、よよよ、良かったよぅ〜)

うるか (ぶっちゃけ、さわちんって大人っぽいし、色気もあるし、)

うるか (成幸と付き合いだしたりしたら、もう勝ち目ないと思ってたんだよ〜!)

うるか (本当に良かった。神様ありがとー!)

文乃 「………………」 ホッ (良かった。これでわたしの胃に平穏が戻る……)

681以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:49:23 ID:AR9F6gVQ
理珠 「……あ、あの、関城さん」

紗和子 「? 何かしら、緒方理珠」

理珠 「一応、その、関城さんのほうにも確認を取っておく必要があるかと思い、お聞きしたいのですが、」

理珠 「関城さんは、本当に、成幸さんとなんともない……のですよね?」

紗和子 「はぁ? さっき唯我成幸も言っていたじゃない。何もないわよ」

紗和子 (っていうか、大親友の好きな人を好きになるわけないじゃない……)

紗和子 (なんて、言うわけにもいかないのだけど)

理珠 「……よかったです」 ホッ

紗和子 「まったく。心配性ね。大丈夫よ。唯我成幸を取ったりしないわ」


成幸 「ん? 俺がなんだって?」


和樹 「あ、兄ちゃん戻ってきたー」

うるか 「お手伝いもう終わったの?」

成幸 「いや、まったく意味がわからないんだ。台所に行ったら、母さんには早く戻れって言われてさ」

成幸 「……なんだったんだ?」

682以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:50:51 ID:AR9F6gVQ
葉月 「まぁ水希姉ちゃんはアレだからねー……」  和樹 「アレだしな……」

紗和子 (アレって本当になんなのかしら……?)

成幸 「……で? 俺の話してたんだろ? なんだよ、気になるから教えてくれよ」

紗和子 「はぁ?」 (そんなの、言えるわけないじゃない……)

紗和子 (ん……待って。これは……緒方理珠に気持ちを自覚させるチャンス!)

理珠 「?」

紗和子 「……ねえ、唯我成幸。この子たちには私たち、付き合ってるように見えたらしいわよ?」

成幸 「は、はぁ? いや、それさっきも聞いたよ。何でまた言うんだよ……」

紗和子 「それってつまり、お似合いに見えたってことでしょう? じゃあ、いっそ付き合っちゃう?」

成幸 「は……?」

理珠 「は!?」  うるか 「へぇ!?」  文乃 (胃に激痛が走る!)

成幸 「い、いきなり……何を……関城……///」

成幸 「そ、そういうのは……その、もう少し、お互いを知ってから、というか……///」

紗和子 「何本気で照れてるのよ。冗談に決まってるでしょ」

成幸 「!? は、はぁ!? お前……言っていい冗談と悪い冗談があるだろ!?」

683以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:51:28 ID:AR9F6gVQ
紗和子 「はいはい。ごめんなさい。悪かったわ」

紗和子 (……ねえ、緒方理珠) コソッ

理珠 (な、なんですか、関城さん……)

紗和子 (ボーッとしてると、私以外の誰かに、先越されちゃうかもしれないわね?)

理珠 (な、何の話ですか……)

紗和子 (自分の気持ち、もう少しよく考えてみなさい。今日、どうして一喜一憂したのかとか)

理珠 (自分の気持ち……)

紗和子 (ええ。がんばってね。私は、あなたを応援しているから)

文乃 「……えーっと、紗和子ちゃん?」

紗和子 「? 何かしら?」

文乃 (……ねえ、気づいてる?) コソッ

紗和子 (……何よ?)

文乃 (紗和子ちゃん、成幸くんに “付き合っちゃう?” って言ってからずっと、)

文乃 (顔、まっかだよ?)

紗和子 「……!?」

684以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:53:01 ID:AR9F6gVQ
紗和子 (う、うそ……!? あ、でも……)

カァアア……

紗和子 (た、たしかに、顔が熱いわ……)

成幸 「? なんだ、関城。変な顔して」

紗和子 「な、なんでもないわよ!」

紗和子 (うそよ、こんなの。だって……そんなの、ありえてはいけないもの……)

紗和子 (きっと、緒方理珠が近くにいるから嬉しくてこうなってるのよ。そうよ。そうに決まってるわ)

紗和子 (そうに、決まってるわ……だって、そうでないと……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……大丈夫。絶対ない)

紗和子 (絶対好きになんてなるはずがない)

紗和子 (大親友が好きな人のこと)


おわり

685以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:53:35 ID:AR9F6gVQ
………………幕間 「晩ご飯」

ワイワイガヤガヤ……

花枝 「………………」

花枝 (こうして、見回してみると……)

理珠 「本当に美味しいです、水希さん。ありがとうございます」

水希 「べつに、わたしが好きで作ったわけじゃありません。お母さんが言うから、仕方なく作っただけです」

文乃 「この煮物とか絶品だよ〜。どうやって作るの?」

うるか 「おだしの取り方も上手だよ。こんなに香りを出すのは難しいんだよ」

紗和子 「……本当に美味しいわね。この晩ご飯」

紗和子 「毎日こんなお料理が食べられるなら、毎日ぬいぐるみ持って家に行くわよ」

成幸 「おいおい、葉月と和樹が本気にするからやめろよ」

紗和子 (私も結構本気なんだけど……)

花枝 (……うーん。嬉しい反面、息子の将来が心配だわ)

花枝 (刺されたりしないでよー、成幸ー?)


おわり

686以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 01:55:08 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

これでちょうど20個目でした。
また投下します。

687以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:27:52 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
投下します。

【ぼく勉】あすみ 「妹が修学旅行?」

688以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:28:25 ID:AR9F6gVQ
………………メイド喫茶 High Stage

成幸 「そうなんですよ。来週から二泊三日だそうです」

成幸 「妹はすごく楽しみにしてるみたいなんですけど、心配もしてるみたいで……」

あすみ 「心配? 修学旅行がか?」

成幸 「いや、そうじゃなくて、妹がいない間の家のことです」

成幸 「母親は仕事で忙しいし、弟妹はまだ小さいし、俺は料理は苦手だし」

成幸 「以前、妹が部活の遠征で留守にしたときは、母親が仕事の都合をつけてくれたんですけど、」

成幸 「今回はそうもいかないみたいで……」

あすみ 「ふーん。お前ん家も大変なんだな」

成幸 「あ、すみません。勉強に関係ない話をしてしまって……」

あすみ 「いいよ。理科のことばっか考えてたら頭がどうにかなっちまう。気晴らしだよ」

あすみ 「でも実際どうすんだ? 料理とか死活問題だろ」

あすみ 「お前だけならまだいいとして、あのおチビちゃんたちもいるんだろ?」

689以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:29:03 ID:AR9F6gVQ
成幸 「一応考えてはいるんです。近所のスーパーが閉店間際に惣菜や弁当の半額セールをするので、それを買おうかな、なんて……」

あすみ 「………………」

成幸 「またすげー嫌そうな顔しますね、先輩」

あすみ 「お前なぁ……スーパーの閉店時間って早くても九時だろ?」

あすみ 「育ち盛りのチビちゃんたちにそんな時間に飯を食わせるつもりか?」

あすみ 「しかも保存料や油まみれで、味の濃い惣菜を?」

成幸 「うっ……。それを言われると辛いですけど、他にどうしようもなくて……」

あすみ 「ん、悪い。家族のお前の方がいろいろ考えてるよな」

あすみ 「外野が横から変なこと言った。悪い。忘れてくれ」

成幸 「いえいえ、先輩の言ってくれたことももっともですから。気にしてないですよ」

成幸 「和樹と葉月のことまで考えてアドバイスしてくれたんですよね。ありがとうございます」

あすみ 「別に礼を言われるようなことじゃ……――」

マチコ 「――そんなあなたに朗報です!」

バーン!!!!

マチコ 「今ならなんと、当店の家事代行サービスが特別クーポンでとても安くなったりならなかったり!?」

690以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:29:54 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「突然なんだよ。盗み聞きってのは感心しねーぞ。っつーか勉強の邪魔だから仕事に戻れ」

マチコ 「まぁそう言わずに聞いてよあしゅみー。勉強してなかったじゃない」

マチコ 「唯我クンが三日間、家事代行サービスを申し込んでくれれば、バイト代がすごいことになるよ?」

マチコ 「唯我クンも助かってWin-Winじゃない?」

成幸 「いや、そもそもうちに家事代行サービスを頼むようなお金はないです……」

あすみ 「だ、そうだ。残念だったな、マチコ」

マチコ 「ちぇーっ、せっかくお店も儲かっていいことずくめだと思ったのになー」

あすみ 「それが本音だろうが。ったく……」

マチコ 「でも、あしゅみーだって、いつもお世話になってる成幸くんに恩返しとかしたいんじゃない?」

あすみ 「む……いや、まぁ、それは……」

成幸 「まぁ、うちのことはうちでなんとかしますから大丈夫ですよ。ご心配なく」

成幸 「さ、先輩、勉強に戻りますよ」

あすみ 「ん、そうだな。ちとサボりすぎちまった。ほら、マチコ、おまえも早く仕事に戻れよ」

マチコ 「はーい」

691以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:30:29 ID:AR9F6gVQ
成幸 「………………」

カリカリカリカリ……

あすみ (……来週のこと、不安だろうに、いつも通り涼しそうな顔して勉強しやがって)

あすみ (本当に大丈夫なのか……?)

ハッ

あすみ (い、いや、べつにあたしにはカンケーないけどな。別に心配なんかしてないぞ?)


―――― 『でも、あしゅみーだって、いつもお世話になってる成幸くんに恩返しとかしたいんじゃない?』


あすみ (そりゃ、勉強だって教えてもらってるし、親父に医学部受験を許してもらってるのも後輩のおかげだし……)

あすみ (……彼氏のフリなんてアホなこともしてもらってるしな)

あすみ (手を貸してやれるなら貸してやりたいが……)

あすみ (とはいえ、よくわからねー女が急に家に尋ねてきたら、後輩の親だってびっくりするだろうし)

692以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:30:59 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……? どうかしました? 先輩」

あすみ 「……何でもねえよ」

あすみ (当のこいつは何でもねえような顔しやがって、ちくしょう……)

あすみ (何でアタシの方がこんなにそわそわしなきゃならないんだよ)

あすみ (……ん? 待てよ。“彼氏のフリ” ……)

あすみ 「………………」

あすみ 「なぁ、後輩。ちょっと夜聞きたいことがあるかもしれないからさ、」

あすみ 「家の電話番号教えてもらってもいいか?」

成幸 「へ? べつにいいですけど……」 (携帯電話じゃダメなのかな……?)

ニヤリ

あすみ (いいこと思いついちまったぞ)

成幸 (先輩、なんでニヤニヤしてるんだろ。ちょっと怖いんだけど……)

693以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:31:52 ID:AR9F6gVQ
………………翌週 修学旅行初日早朝

水希 「お兄ちゃん、本当に大丈夫? やっぱりわたし、修学旅行行かない方が……」

成幸 「おいおい、やめろよ。せっかく母さんがしっかりお金を積み立ててくれたんだから」

成幸 「家のことは心配せず楽しんでこいよ」

和樹 「そうだよ。姉ちゃんずっと楽しみにしてたじゃん」

葉月 「いってらっしゃい! お土産楽しみにしてるわー」

水希 「……うん。ありがと。じゃあいってきます!」

成幸&和樹&葉月 「「「いってらっしゃい!!」」」

694以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:32:27 ID:AR9F6gVQ
………………一ノ瀬学園 昼休み

うるか 「成幸、今日はお弁当じゃないの?」

成幸 「んあ? ああ、水希がいないからな」 モシャモシャ

うるか (っていうか、またパンの耳食べてるの……)

文乃 「水希ちゃん、また部活?」

成幸 「いや、今度は修学旅行。またしばらく帰ってこないから当分パンの耳だな」

うるか 「へ、へぇ、そうなんだ……」

うるか (こ、これは、またお弁当を作ってきて食べてもらうせんざいいちぐーのチャンス!?)

理珠 「そうですか。それは大変ですね。良かったら、明日からうどん持ってきましょうか?」

うるか 「!?」 (り、リズりんに先を越された!?)

文乃 「………………」 キリキリキリ (胃が痛いよう……)

成幸 「いや、お前にも親父さんにも悪いしいいよ」

成幸 「明日からは和樹と葉月のお昼も考えなくちゃだし、自分でなんとかするさ」

理珠 「そうですか……」 ショボーン

成幸 「でも、そう言ってくれるのが嬉しいよ。ありがとな」

695以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:33:20 ID:AR9F6gVQ
理珠 「い、いえ……。べつに、お礼を言われるようなことでは……」 パァアア

うるか (うぅ〜〜〜! せめてあたしもお礼だけでももらいたかったよ〜〜)

文乃 (……りっちゃんもうるかちゃんもかわいいなぁ)

ギリギリギリ……

文乃 (……でも胃が猛烈に痛いなぁ)

成幸 「………………」 モシャモシャモシャ……

成幸 (……でもほんと、どうしようかな)

成幸 (俺はパンの耳でいいとしても、)


―――― 『お前なぁ……スーパーの閉店時間って早くても九時だろ?』

―――― 『育ち盛りのチビちゃんたちにそんな時間に飯を食わせるつもりか?』

―――― 『しかも保存料や油まみれで、味の濃い惣菜を?』


成幸 (あしゅみー先輩の言うことは間違ってない。三日間だけとはいえ、あいつらに不健康なことはさせたくない)

成幸 (かといって、他にどうしたら……)

成幸 (うーん……)

696以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:34:28 ID:AR9F6gVQ
………………放課後

成幸 「……はぁ」

成幸 (結局、何も良い考えが浮かばないまま放課後になってしまった)

成幸 (うちの経済状況を考えると、外食というのはありえない)

成幸 (水希が心配するのももっともなんだよな。俺、ほんとに情けない兄貴だな)

トボトボトボ

成幸 (……なんて自己嫌悪してるうちに家についてしまった)

成幸 (うぅ、こんな情けない兄ちゃんを許してくれ、水希、和樹、葉月……)

ガラッ

成幸 「ただいまー……――」

あすみ 「――――お帰りなさいましゅみー!」

成幸 「のわっ……!? えっ? えっ……ええっ!?」

あすみ 「ごはんにする? おふろにする? それとも……」

和樹 「………………」 葉月 「………………」 ジーーーーーッ

あすみ 「……いや、チビちゃんたちの前でこの先は教育上よくないな。やめとこう」

697以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:35:25 ID:AR9F6gVQ
成幸 「急に素に戻らないでくれますか!? いや、そんなことはどうでもよくて!」

成幸 「なんで先輩がうちにいるんですか!?」

あすみ 「何でってお前……まぁ、なんとなく?」

成幸 「なんとなくでメイド服で後輩の家尋ねるんですかあんたは!?」

あすみ 「うるせーなー。うるさいお兄ちゃんだなー、チビちゃんたち?」

和樹 「たしかに、兄ちゃん、リアクションがオーバーなときあるよな」

葉月 「わかるわー」

成幸 「当然のように先輩を受け入れてるお前たちにもびっくりなんだけど!?」

和樹 「まぁ、おれたち母ちゃんから聞いてたし。メイドの姉ちゃんが来るって」

成幸 「はぁ? いや、待て。状況が飲み込めない。いまここに先輩がいることを、母さんは知ってるのか?」

葉月 「うん。だってわたしたちに教えてくれたもの」

成幸 「じゃあ何で俺には言わないんだよ」

葉月 「お母さんが、“面白そうだからお兄ちゃんには黙っておきましょう” って」

成幸 「母親ー! 息子を遊び道具かなんかと勘違いしてないか!?」

698以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:35:59 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「まぁそれくらい許してやれよ。お前のお母さん、わざわざお金払ってアタシを雇ったんだぞ?」

成幸 「へ……? 家事代行頼んだんですか!? 母さんが!?」

あすみ 「おう。電話があってさ。息子に苦労をかけてしまうから、三日間ぜひお願いしたいって」

あすみ 「……ってことで、これから三日間よろしくな、後輩」

あすみ 「いや、違うか……オホン」 キャルン 「よろしくお願いしますっ、御主人様」

成幸 「いや、ちょっと落ち着かないんでいつもの先輩でお願いします」

あすみ 「んだよ、ノリわりーな。せっかく金もらってるから営業スマイルしてやろうと思ったのによー」

あすみ 「ま、いいや。風呂はまだだけど、飯はできてるから食えよ」

成幸 「あ、はい……」

成幸 (うーん、うちは家事代行を三日間もお願いできるような財政ではないと思うんだが……)

成幸 (母さん、臨時ボーナスでもあったのか?)

699以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:37:12 ID:AR9F6gVQ
………………夜

成幸 「………………」

カリカリカリ……

成幸 (こうしてひとりでゆったりと勉強できるなんて、いつぶりだろう)

成幸 (晩ご飯もめちゃくちゃ美味しかったし、先輩に感謝してもしきれないや……)

あすみ 「………………」

パタパタ……ペタペタ……

成幸 「あっ……先輩、洗濯物たたむの手伝いますよ」

あすみ 「おいおい、何を言ってんだよ。これはアタシの仕事だよ。勝手に取るな」

成幸 「いや、でも……なんか俺だけボーッとしてるのも悪い気がして……」

あすみ 「ボーッとはしてねぇだろ。ずっと勉強してるじゃねーか、お前」

成幸 「そりゃそうですけど……。っていうか、先輩も勉強しなきゃじゃないですか」

あすみ 「心配すんな。仕事が全部済んだら勝手にやるよ」

700以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:37:45 ID:AR9F6gVQ
成幸 「っていうか、もう結構遅い時間ですけど……」

成幸 「帰らなくて大丈夫なんですか?」

あすみ 「ああ? 何で帰るんだよ」

成幸 「え?」

あすみ 「さっき言っただろうが。三日間よろしくって」

成幸 「……へ?」

成幸 「!? ま、まさか、三日間うちで寝泊まりするんですか!?」

あすみ 「そのまさかだが、どうかしたか?」

成幸 「い、いや、だって……いくら何でも、それは……」

あすみ 「ははーん……」

ニヤリ

あすみ 「発情してんのかー、後輩? このスケベ」

701以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:38:22 ID:AR9F6gVQ
成幸 「ち、違いますよ! でも、俺だって一応男子なんだから、少しは……」

あすみ 「少しは? 少しは、なんだよ?」

成幸 「……け、警戒、とか……その、した方が、いいと思いますよ?」

あすみ 「ほうほう。つまりアタシは今晩、お前の夜這いを警戒しなくちゃいけないわけか?」

成幸 「い、いや、そんなことするわけないじゃないですか!」

あすみ 「じゃあいいじゃねぇか。っていうかお前、言ってること矛盾してるぞ?」

成幸 「いや、だから、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……」

成幸 「もっと、自分を大切にしてほしいというか、なんというか……」

702以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:38:56 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「………………」

あすみ 「後輩、お前……」

成幸 「せ、先輩……?」

ピラッ

あすみ 「……なんの面白みもないパンツ履いてんのな。つまんねー」

成幸 「!? ひ、人のパンツ広げないでください! っていうか自分でたたみます!」

成幸 (まったくー! こっちは真剣に先輩のこと心配してるのに!)

プンプン

あすみ 「………………」

クスッ

あすみ (……アタシの心配するなんて百年早えんだっての)

あすみ (でも、まぁ……悪い気は、しねーけどさ)

703以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:40:35 ID:AR9F6gVQ
………………

葉月 「……晩ご飯も美味しかったし、お掃除もお洗濯も完ぺきね」

和樹 「手際もよかったぜ。家事やり慣れてる感が半端ねーぜ」

葉月 「これは大幅加点ね。メイドのお姉ちゃん、ぜひお嫁に来てほしいわ」

和樹 「兄ちゃん奥手だからなー。あれくらいグイグイ来てくれる方がいいかもな」

あすみ 「……よしっ。洗濯物たたみ終えたし、あとは片付けして終わりかな」

あすみ 「ん、あ、おチビちゃんたち、ちょうどいいところに」

あすみ 「お風呂、そろそろお湯張り終わるから、一緒に入るぞ。おいで」

葉月 「!?」 (これは、身体を確認するまたとないチャンスだわ!)

あすみ 「おーい、後輩。お前も一緒に入るかー?」

成幸 「入りませんよ! 何言ってんですか!」

成幸 「……でも、お言葉に甘えて、和樹と葉月のお風呂はお願いしてもいいですか?」

あすみ 「当たり前だろ。何度も言わせんな。全部アタシの仕事だ」

あすみ 「よーし、じゃあ行くぞー、おチビちゃんたちー!」

和樹&葉月 「「はーい!」」

704以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:41:19 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「………………」

キャッキャ……バシャバシャ……

成幸 (楽しそうな声が風呂場から漏れ聞こえてくる……)

成幸 (ふふ、楽しそうで何よりだ。さすがあしゅみー先輩だな。子どもの相手も得意なんだな)

『メイドの姉ちゃん、小さいのにすごいよなー。何でもできるんだなー』

『こらこら、小さいは余計だぞー、おチビちゃん』

『あと、アタシはメイドの姉ちゃんじゃなくて、小美浪あすみっていうんだ』

『あすみ姉ちゃんと呼んでくれよ』

『わかったわー。あすみお姉ちゃん!』

『でも、俺たちもおチビちゃんじゃなくてちゃんと名前があるんだぜー?』

『おう、そうだったな。んじゃ、和樹、葉月』

『『うん!』』

成幸 (はは、微笑ましい会話だな。すっかり懐いちまって……)

705以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:42:09 ID:AR9F6gVQ
『でも、あすみお姉ちゃん、もっと細いのかと思ってたけど、』

『結構おむねもおしりもしっかりしてるのね』

成幸 「ぶっ……」

成幸 (あ、あいつら、また変なことを……)

『そうかぁ? でも緒方や武元に比べたら大したことないぞ?』

『でも、文乃姉ちゃんよりは断然あるぜ!』

『おうおう、それを古橋に言ったら悲しむから、言っちゃダメだぞー?』

成幸 (本当になんの話をしてるんだあの三人組は……!!)

『それにな、きっとお前らの兄ちゃん、今ごろ聞き耳立ててるぞ?』

『お前らにもっと際どいことを質問しろって念を送ってんじゃねーか、今ごろ』

成幸 「そんなことしてないですよ!!」

『ほら、やっぱり聞き耳立ててただろ?』

『兄ちゃんもお姉ちゃんの身体に興味津々なのね』

『兄ちゃんはちょっとむっつりなところあるからなー』

成幸 「あ、あいつら……」

706以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:42:46 ID:AR9F6gVQ
………………

葉月 「きゃー」  和樹 「わー」 ドタドタドタ……

あすみ 「おう、後輩。お風呂空いたぞ。冷めないうちに入っちまえよ」

成幸 「はい、ありがとうございます、先輩……って」

プイッ

あすみ 「ん? なんだ? どうしたんだよ?」

成幸 「いや、べつに、何でもないですけど……」

あすみ 「ほーう。何でもないならこっち向けよ」

あすみ 「人とのコミュニケーションは目と目を合わせることが基本だぞ?」

成幸 (向けるかー! 人の気も知らないで!!)

成幸 (当たり前だけど、先輩パジャマ姿だし、上気した顔はなんか……こう……)

ハッ

成幸 (お、俺は仕事で来てくれている先輩になんて不純なことをー!)

あすみ (こいつ本当に面白いな)

707以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:43:24 ID:AR9F6gVQ
成幸 (っていうか先輩わかってるのか!? 自分のパジャマ姿の破壊力とか!)

成幸 (先輩、身体は小さいけど、しっかり出るところは出てるし、美人さんだし……)

ハッ

成幸 (って、だから俺は何でそういうことばっかり考えてしまうんだー!)

成幸 (と、とにかくこのままじゃ精神衛生上よくない。特に、この後先輩はうちに泊まるんだから……)

成幸 (……泊まる。先輩が、うちに、泊まる……)

ハッ

成幸 (お、俺は! また先輩で変なことをー! いい加減にしろ! しかりしろ唯我成幸!)

あすみ (考えてることが手に取るように分かる。大丈夫かこいつ……)

成幸 (いかん! とりあえず、風呂に……)

あすみ 「……へくしっ」

708以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:44:30 ID:AR9F6gVQ

あすみ (あー、ちと寒いな。部屋着、羽織るものも持ってくればよかったかな)

あすみ (ま、しょうがねぇ――)

――ファサッ

あすみ 「ん……? 後輩、これ……」

成幸 「……俺の部屋着ですけど。よかったら使ってください」

成幸 「何か困ったことがあったら、言ってくださいね」

成幸 「前も言いましたけど、俺、言ってくれないと分からないですから」

あすみ 「後輩……」

ハッ

あすみ 「わ、悪い。これ、借りるな。ありがとう」

成幸 「いえいえ。じゃあ俺、風呂入ってきますね」

709以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:45:21 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……おう。じゃあその間に、和樹と葉月、寝かしつけとくな」

成幸 「すみません。お願いします」

あすみ 「………………」

あすみ (……後輩のやつ、調子狂うようなことしやがって)

ドキドキドキ……

あすみ 「!? いや、べつに、ドキドキなんてしてねーよ。風呂上がりだから心拍数が上がってるだけで……」

葉月 「意外や意外、あすみお姉ちゃんの方も兄ちゃんに気があるのかしら?」

和樹 「だなー。からかって遊んでるだけかと思いきや、さては姉ちゃん、兄ちゃんのこと結構好きだな?」

あすみ 「……ほら、アホなこと言ってないで、寝に行くぞ」

和樹&葉月 「「はーい!」」

710以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:46:07 ID:AR9F6gVQ
………………入浴後

成幸 「……ふー、風呂でゆっくりできると、この後の勉強もがんばれる気がするな」

あすみ 「おう、ちゃんと温まってきたか、後輩」

成幸 「あれ、先輩。あいつらを寝かしつけに行ったんじゃ……」

あすみ 「もう寝かしつけたぞ? あいつら良い子だな。少し子守歌歌ってやったら、すぐ寝ちまったよ」

成幸 (……!? 俺が寝かしつけるときはいつもなかなか寝ないのに……)

成幸 「……先輩はすごいですね。なんでもできるんですね」

あすみ 「ああ? べつに何でもはできねぇよ。何でもできるなら今ごろ医学部生やってるよ」

成幸 「あっ……す、すみません。そういうつもりで言ったわけじゃ……」

あすみ 「謝るなよ。冗談だ。こっちこそ変なこと言っちまったな。悪い」

あすみ 「この家は賑やかでいいな。なんだかアタシまで楽しくなってくるよ」

成幸 「それなら何よりです。でも、迷惑かけちゃってすみません……」

あすみ 「だから何度も言わせんなよ。アタシは仕事で来てるんだ。迷惑も何もねぇよ」

711以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:47:27 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……それならいいんですけど」

成幸 「ま、いいや。和樹と葉月が寝たなら都合がいいですね。一緒に勉強しましょう?」

あすみ 「ん、いや、でもな。そろそろお前のお母さんが帰ってくるだろ?」

あすみ 「まだなんかやっておくことないか、気になってさ」

成幸 「いや、もう十分やってもらいましたよ。大丈夫ですって」

成幸 「ほら、先輩も早くテキスト出してくださいよ」

成幸 「色んなコトしてもらっちゃいましたから。俺もはりきって勉強教えますよ!」

あすみ 「わかったよ。でも、お前だって自分の勉強があるだろ? アタシはべつに……」

成幸 「先輩のおかげで勉強捗りましたから、大丈夫です。少しはお返しさせてください」

あすみ 「……だから、アタシは仕事で来てるんだっての」

あすみ 「……まぁ、せっかくだし、ちょっとお言葉に甘えて、教えてもらおうかな」

成幸 「はい! まだまだ夜はこれからですよ! ふたりでみっちりやれますね!」

あすみ 「ほー?」 ニヤニヤ 「アタシとふたりで、みっちり何をするつもりだ?」

成幸 「勉強ですよ!!」

712以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:48:09 ID:AR9F6gVQ
………………翌朝

成幸 「………………」

パチッ

成幸 「ん……。もう朝か……」

キャー……ドタドタドタ……

成幸 (和樹と葉月のやつ、もう起きてるのか。まったく、子どもの朝は早いな……)

成幸 (仕方ない。俺も起きるか……)

モゾモゾ……ガラッ

成幸 「……おはよー、和樹、葉月、母さん」

葉月&和樹 「「兄ちゃんおはよー!」」

花枝 「あら、おはよう、成幸。今日は早いのね」

成幸 「目が冴えちゃってさ。まぁ、早めに家出て学校で勉強するよ」

あすみ 「ん、そうか。じゃあもう弁当仕上げちまうか」

成幸 「ああ、そうしてくれると助かります。すみません」

713以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:48:57 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……ん?」

成幸 「……って先輩!? どうしてここに!?」

あすみ 「おー。朝から随分なご挨拶だな。さてはアタシのこと忘れてやがったな」

成幸 「い、いや、そういうわけじゃ……」

成幸 (そ、そうだった。先輩、これからしばらく、うちで寝泊まりするんだったー!)

成幸 「おはようございます、先輩。ひょっとして、朝ご飯とお弁当まで作ってくれてるんですか?」

花枝 「そうなのよー。本当に良い子ねー、あすみちゃん」

ニヤニヤ

花枝 「こんな良い子と、一体どこで知り合ったんだか」

成幸 「予備校で席が隣なだけだよ。下世話なこと言うなよ、先輩にも迷惑だろ」

花枝 (予備校で席が隣なだけの女の子とこんなに仲良くなれるだけのコミュ力……)

花枝 (我が息子ながら、すごいわね……)

714以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:49:39 ID:AR9F6gVQ
成幸 「すみません、先輩。変なこと言う親で……」

成幸 「先輩は仕事で来てくれてるだけなんだから、あんまり変なこと言って困らせるなよ?」

花枝 「へ? 仕事?」

あすみ 「ほら、いいからいいから、後輩もお母さんも、席についてください」

あすみ 「和樹と葉月も、はい、席につく」

葉月&和樹 「「はーい」」

あすみ 「お味噌汁が冷めちゃう前に食べてください。どうぞ」

成幸 「わー、美味しそうな朝ご飯だ……」

あすみ 「いつも妹さんが作ってるっていう朝ご飯の献立を参考に作ってみました」

あすみ 「お口に合うといいんですが……」

715以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:50:25 ID:AR9F6gVQ
花枝 「………………」

モグモグモグ……

花枝 「……あすみちゃん」

あすみ 「へ? お母さん? 箸を置いて、どうしたんですか?」

あすみ 「ひょっとして、味付けが気に入らなかったですか……?」

花枝 「とんでもない。とっても美味しいわ。ねぇ、あすみちゃん、このままうちにお嫁に来ない?」

あすみ 「へ……?」

花枝 「成幸、情けないところも多いけど、やるときはやる自慢の息子なのよ」

成幸 「だー! 母さん! だからそれをやめろって言ってるんだよ!」

あすみ 「……えっとー、どうしようかなー」

キャルン

あすみ 「成幸クンがいいなら、あすみもいいかな、なんて……」

成幸 「キャピキャピしないでください! うちの母親と弟妹は本気にしますよ!」

716以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:51:21 ID:AR9F6gVQ
………………玄関

成幸 「はぁ……朝から疲れたな……」

あすみ 「いいじゃねーかよ。楽しくてさ」

成幸 「楽しいのは俺以外だけです!」

あすみ 「ほれ、お弁当。我ながらメチャクチャ美味しく仕上がってるから、機嫌直せよ」

成幸 「……べつに、機嫌悪くはなってないですけど」

成幸 「俺も楽しかったし……」

あすみ 「……はは、お前ってほんと、可愛い奴だな」

あすみ 「ほら」

バン!!!

成幸 「わっ……な、なんですか。急に背中を叩いて……」

あすみ 「背筋伸ばせよ。丸まってちゃ、気分だって上がらないぞ」

ニヤリ

あすみ 「それとも、いってらっしゃいのチューでもしてやった方がやる気が出るか?」

717以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:52:11 ID:AR9F6gVQ
成幸 「ち、ちゅ……!? なんてこと言い出すんですか、先輩!」

あすみ 「冗談だよ、冗談。そんなに顔真っ赤にするなよ」

あすみ 「まったく、からかい甲斐のある奴だな、お前は」

成幸 「っ〜! 先輩は、まったくもう……!」

あすみ 「悪かったよ。ほら、学校がんばってこいよ」

ニコッ

あすみ 「いってらっしゃい、後輩」

成幸 「っ……」 (その笑顔は反則だろ……まったく……)

ニコッ

成幸 「……はい。いってきます、先輩」

718以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:53:19 ID:AR9F6gVQ
………………一ノ瀬学園

小林 「……ん、成ちゃん?」

成幸 「おお、小林、おはよう」

小林 「おはよ。どうしたの? 今日はかなり早いね」

成幸 「ん、ああ、まぁちょっとな。そういうお前こそ早いな。どうしたんだ?」

小林 「国体に向けて朝練を始めた武元の付き合いで早朝から登校する智波ちゃんに付き合って早く学校に来た、って感じ?」

成幸 「なるほど。複雑だな」

成幸 「……武元のやつ、がんばってるな。俺も負けてられないぜ」

小林 「十分負けてないと思うけどね」

小林 「ちょうどいいや。ヒマしてたんだよ。ちょっと分からないところがあるから教えてよ、成ちゃん」

成幸 「おう、いいぞ。何でも聞いてくれ」

小林 (……? なんか、今日の成ちゃんはえらくご機嫌だなぁ)

小林 (なんかいいことでもあったのかな?)

719以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:54:00 ID:AR9F6gVQ
………………昼休み

うるか 「………………」 グッ


―――― 『明日からは和樹と葉月のお昼も考えなくちゃだし、自分でなんとかするさ』


うるか (昨日、ああは言ってたけど、やっぱりお昼がパンの耳だけなんてよくないよ)

うるか (今朝、朝練もあるから四時起きで眠い目をこすりながら作ったお弁当! というかお重!)

バーン!!

うるか (たまたま作りすぎちゃったからあげるって言えば、大丈夫だよね?)

理珠 「……あれ、うるかさん? 3-Bに何かご用ですか?」

うるか 「あ、リズりん。いやー、ちょっと成幸に勉強を教えてもらおうかと……」

うるか 「……って、何その大量のうどん!?」

720以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:56:02 ID:AR9F6gVQ
理珠 「へ……!? あ、いや、これはその……べつに、成幸さんのために作ってきたわけではなく……」

理珠 「ただ、その……ちょっと、朝うどんを作りすぎてしまったので、持ってきただけで……」

うるか 「朝からうどん作りすぎることってある!?」

理珠 「あ、あります! うちでは日常茶飯事です!」

うるか 「日常茶飯事なの!?」

理珠 「そ、そう言ううるかさんこそ! その大きなお重は何ですか?」

うるか 「へぇ!? い、いや、これは……べつに成幸のために作ってきたわけじゃなくて……」

うるか 「朝練前に調子に乗ってお弁当作りすぎちゃったから、持ってきただけで……」

理珠 「朝練前にお弁当作りすぎることあります!? 何時起きだったんですか!?」

うるか 「よ、四時起き……」

理珠 「最初から作りすぎる気満々じゃないですか!」

うるか 「ち、違うもん! 本当に気づいたらたくさん作っちゃってただけだもん!」

721以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:57:29 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

文乃 「………………」

キリキリキリ……

文乃 (どうしよう。わたしも実は昨日スーパーでお菓子をたくさん買って持ってきたんだけど、)

文乃 (あのふたりと一緒に行く勇気はないかな……)

文乃 (とはいえ、あのふたりを廊下にあのまま放置したら、とんでもないことになりそうだし……)

文乃 「あー、どうしたの、りっちゃん、うるかちゃん。廊下で騒いだら怒られるよ?」

理珠 「文乃! ち、違いますよ!? べつに成幸さんのためにうどんを持ってきたわけじゃないんです!」

うるか 「文乃っち! あたしも違うんだよ!? 作りすぎたから持ってきただけで!」

文乃 「あ、うん。ふたりとも、わかったから。とりあえず教室入ろうか?」

文乃 (……ふたりとも可愛いなぁ。でも、胃が痛いなぁ)

ガラッ

小林 「――あれ、成ちゃん、今日お弁当あるの? 水希ちゃん修学旅行じゃないの?」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:58:28 ID:AR9F6gVQ
成幸 「おう。ちょっとな……」

大森 「ん……? 言葉を濁すあたり怪しいな。さては唯我テメー! 女の子に作ってもらったのか!?」

成幸 「なっ……」 ギクッ 「そんなわけねーだろ! 母さんが作ってくれたんだよ!」

文乃 「………………」

理珠 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「……りっちゃん、うるかちゃん、屋上でお弁当うどんお菓子パーティでもしない?」

理珠 「良い提案です、文乃。もう成幸さんなんか知りません。せっかくうどんたくさん作ってきたのに……」

うるか 「うぅ……せっかく成幸のために四時起きで作ったのに……」

文乃 (ふたりとも、うそをつくなら最後までつきとおしてほしいなぁ。ダダ漏れだよ……)

文乃 (……まぁ、理不尽なのはわかってるけど、ひとつだけ言わせてほしいかな)

文乃 (成幸くん、後で、つねる)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

723以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 19:59:38 ID:AR9F6gVQ
………………教室

成幸 「っ……」 ゾクッ

成幸 (なんだろう。いま、猛烈な寒気が……)

成幸 (まぁいいや。せっかく先輩が作ってくれた弁当をいただこう)

カパッ

成幸 「……!?」


『成幸クン 午後もがんばってね』 バーン!!!!


成幸 (で、でかでかと海苔で書かれた文字!? と桜でんぶのハートマーク!?)

成幸 (あ、あしゅみー先輩、やってくれたな……!!)

724以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:00:14 ID:AR9F6gVQ
大森 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 「……唯我? そのメッセージも、お母さんが書いてくれたっていうのか?」

成幸 「いや、違っ……これは、その……」

大森 「唯我テメー! やっぱりどこぞの女子に作ってもらいやがったなー!」

小林 「………………」

小林 (……お姫様たち三人、さっき廊下にいたみたいだけど)

小林 (あの様子を見る限り、あの三人が作ったわけじゃなさそうだ)

クスッ

小林 (まったく、成ちゃんったら。一体誰に作ってもらったんだか)

成幸 「違う! 俺が自分で作ったんだ! 自分でハートマークも書いたんだよ!」

大森 「わけわかんねーウソつくんじゃねー! くそー! うらやましいぞー!」

725以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:00:52 ID:AR9F6gVQ
………………放課後

成幸 「……ったく、大森の奴、ひとりでエキサイトしやがって」


―――― 『唯我テメー! やっぱりどこぞの女子に作ってもらいやがったなー!』


成幸 「……その通りだよ。悪かったな」

成幸 (それにしても、先輩のお弁当、美味しかったな……)

成幸 (水希のお弁当とは少し味付けが違って、新鮮だったし)

成幸 (今日の晩ご飯も楽しみだな……)

成幸 「………………」

成幸 (……先輩に何かお礼できないかな)

成幸 (先輩は仕事だからって言うけど、正直、仕事以上のことをしてくれている気がする……)

成幸 「ん……?」

 『本日 ケーキ全商品半額 !!』

成幸 「……渡りに船だ」

成幸 (先輩、喜んでくれるかな……)

726以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:02:16 ID:AR9F6gVQ
………………唯我家

あすみ 「それー! 横一列で一斉にぞうきんがけだー!」

和樹 「うおー!」

葉月 「それー!」

バババババババ……!!!

あすみ 「そら見ろ! 廊下がピカピカだぞ!」

和樹 「おー! あすみ姉ちゃんすげー!」

あすみ 「すげーのはアタシじゃねーぞ。アタシたちだ」

葉月 「掃除ってこんなに楽しいのねー」

あすみ 「そうだろう、そうだろう」

エッヘン

あすみ 「これからは、できる範囲でいいから、兄ちゃんや姉ちゃんを手伝ってやれよ?」

葉月 「わかったわー! わたしがんばる!」

和樹 「おれもー!」

あすみ 「よしよし。お前たちは本当に良い子だなぁ」

727以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:03:43 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……っと、そろそろ後輩のやつ帰ってくるかな」

あすみ 「区切りがいいから掃除はこれくらいにしようか」

あすみ 「そろそろ晩ご飯の準備と行くかなー」

ガラガラガラ……

成幸 「ただいまー」

あすみ 「っと……。思ってたより早く帰ってきたみたいだな。ほら、チビちゃんたち、出迎えに行くぞ」

和樹&葉月 「「はーい!」」

あすみ (にしし。後輩のやつ、油断してるだろうから、またからかってやるか……)

728以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:06:03 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ただいまー」

パタパタパタ……

あすみ 「おかえりなさいませ、御主人様」 キャルン

葉月&和樹 「「おかえりなさいませ! ごしゅじんさま!」」

成幸 「お前たちは真似しなくていい!」

あすみ 「お弁当はお気に召しましたか?」

成幸 「ひどい目に遭いましたよ。クラスの男子から質問攻めですよ」

あすみ 「ふふ、目に浮かぶようだな。お前の困り顔」

成幸 「だから急に素に戻らんでください。まったくもう」

あすみ 「ん……? その紙箱はなんだ?」

成幸 「……お礼も兼ねたお土産です。食後に食べましょう」

成幸 「お前たちの分もあるからな。ケーキだぞ」

葉月 「ほんとに!?」

和樹 「やったー! 兄ちゃんありがとー!」

729以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:06:44 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「お礼って……アタシにか?」

成幸 「? そうですよ?」

あすみ 「……アタシは、ただ仕事で来てるだけだって言ってるだろ。お礼なんて……」

成幸 「そう言わないでくださいよ。先輩がいてくれるだけで本当に助かってるんですから」

成幸 「それに、ただの俺の気持ちですから」

あすみ 「ん……わかったよ」

あすみ 「ありがとな。冷蔵庫入れとくよ」

あすみ 「晩飯、今から作るから勉強でもして待ってろ」

成幸 「助かります。ありがとうございます」

あすみ 「………………」 (……ったく、そんな気が利くような性格でもねーだろうに。気ぃ遣いやがって)

あすみ (もうちょいからかってやるつもりが、調子狂っちまったじゃねぇか)

葉月 「……兄ちゃん、図らずもポイントアップだわ。あすみお姉ちゃん、ほんとに嫁に来てくれるかもしれないわ」 コソッ

和樹 「今も、ちょっと新婚さんっぽかったよな。兄ちゃんもあすみ姉ちゃんもまんざらでもなさそうだな」 コソッ

あすみ 「チビちゃんたちー、聞こえてるぞー? アホなこと言ってないで、ふたりで遊んでろ」

葉月&和樹 「「はーい」」

730以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:07:39 ID:AR9F6gVQ
………………夜

葉月&和樹 「「ごちそうさまでしたー!」」

あすみ 「はい、お粗末さまでした」

花枝 「ごちそうさま、あすみちゃん。本当に美味しかったわ。ありがとう」

あすみ 「いえいえ。夕ご飯もお口にあったようで何よりです」

成幸 「母さん。今日は早く帰ってこれるなら連絡くらいくれよな」

花枝 「店長さんが気を利かせてくれてね。大丈夫だって言って帰してくれたのよ」

成幸 「それなら先輩を雇う必要もなかったんじゃ……」

花枝 「? 雇う?」

成幸 「……?」

あすみ 「あっ、そ、そうだ。後輩――成幸くんが買ってきてくれたケーキがあるんですよ」

あすみ 「みんなで食べましょう。成幸くん、ちょっとお茶いれるの手伝ってくれ」

成幸 「? いいですけど……」

成幸 (先輩、なんか様子がおかしいな……?)

731以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:08:19 ID:AR9F6gVQ
………………風呂

葉月 「ふぁ〜〜〜……」 和樹 「ほぁ〜〜〜……」

あすみ 「気持ちいいかー? 最近寒いからちゃんと温まれよー」

葉月 「お風呂は心の洗濯……」

和樹 「ビバノンノ……」

あすみ 「仕事に疲れたOLとおっさんみたいだぞ、お前ら……」

あすみ 「のぼせても良くないから、あと百秒数えたら上がろうか」

葉月&和樹 「「ふぁ〜〜〜い……」」

732以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:08:59 ID:AR9F6gVQ
………………

あすみ 「ふー。あったまったあったまった……」

あすみ (……葉月と和樹と一緒に入るためとはいえ、一番風呂をいただいてしまって申し訳ないな)

あすみ 「お風呂空きましたよー、っと……。誰もいないな」

カチャカチャ……

あすみ (ん、台所で洗い物してくれてるのか。アタシがやるって言ったのに……)

あすみ (お仕事で疲れてるだろうし、アタシが代わってお母さんに早く入ってもらおう……――)


「――えっ? じゃあ、家事代行サービスを頼んだわけじゃないのか?」


あすみ 「……!?」

ササササッ

あすみ (やべっ……絶対アタシの話じゃねーか)

花枝 「ふふ、やっぱり、何かおかしいと思ったわ」

花枝 「あすみちゃん、あんたにそんなうそをついてたのね」

733以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:10:17 ID:AR9F6gVQ
成幸 「えっ、いや、でも……何で仕事でもないのに、先輩はうちに来てくれてるんだ?」

花枝 「はぁ? だってあすみちゃん、あんたの彼女なんでしょ? 彼氏のことが心配だから、って言ってたわよ?」

成幸 「は、はぁ……!? 彼女!?」

花枝 「照れなくてもいいわよ。あんなにかわいい彼女なんだから、自慢するくらいでいいのよ」

成幸 「いや……まぁ、それはいいや。先輩は母さんに直接連絡したってこと?」

花枝 「そうよ? 家に電話をくれてね。成幸くんの彼女です、って」

花枝 「あんたから水希が修学旅行に行くから困ってるって話を聞いて、ぜひ手伝いたいって」

成幸 「………………」

花枝 「正直ね、すごくありがたかったのよ。あんたも勉強で忙しいし、葉月と和樹はまだ小さいし」

花枝 「彼氏のあんたに気恥ずかしくて、私が家事サービスをお願いした、なんてうそをついたのかしらね」

成幸 「……それは、まぁ、先輩に聞かないと分からないけど」

成幸 「でも、そっか……。先輩、“仕事だから” って言って家事全部やってくれたけど、」

成幸 「申し訳ないことしちゃったな……」

花枝 「そういう風に思われたくないから、うそをついたんでしょ」

花枝 「私がこの話をしちゃったって、あすみちゃんには内緒よ?」

734以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:11:08 ID:AR9F6gVQ
………………先週

prrrr……

花枝 (あら、電話。この時間にめずらしい……) ガチャッ 「もしもし?」

? 『あっ……こんばんは。夜分遅くにすみません。唯我さんのお宅でよろしいでしょうか?』

? 『私、小美浪あすみといいます。後輩――成幸くんの、予備校の友達です』

花枝 「あら……。それはそれは、いつも成幸がお世話になってます。成幸の母です」

あすみ 『こちらこそ、いつも成幸くんには勉強を教えてもらったり、お世話になってます』

花枝 「ちょっと待っててね。いま成幸と電話を代わるから……――」

あすみ 『――……あ、いえ、実はお母さんとお話がしたくて、電話をしたので、代わらなくて結構です』

735以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:12:14 ID:AR9F6gVQ
花枝 「私と?」

あすみ 『はい。あの……成幸くんから、来週家事をする人がいないと聞いて……』

あすみ 『差し出がましいかもしれませんが、もしよければ、私を家においてくれませんか?』

あすみ 『私は予備校通いの身なので、自由がききますし、家事も得意です。お手伝いできることもたくさんあります』

花枝 「へ……? いや、でも……さすがに人様の娘さんに、家の手伝いをさせるわけにはいかないわ」

あすみ 『ひ、人様の娘じゃ、ありません……あ、あの! アタシ……私、成幸くんの』

あすみ 『カノジョ、ですから……』

花枝 「!?」

736以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:13:06 ID:AR9F6gVQ
………………

花枝 「まぁ、あすみちゃんの熱意に負けたというか、カノジョって言葉が嬉しくてそれどころじゃなくなっちゃったというか……」

花枝 「とにかく、お言葉に甘えることにしたのよ』

成幸 「………………」

花枝 「それにしても、あんたがあんなに可愛くてきれいで気が利く子と付き合ってるなんてねぇ……」

花枝 「りっちゃんとふみちゃんに興味を示さないわけだわ」

成幸 「あ、あのふたりは関係ないだろ」

成幸 「……ん、っていうか、あんまりうそつきたくないから、本当のこと言うけどさ」

成幸 「俺、先輩と付き合ってないからな?」

あすみ (っ……)

737以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:13:52 ID:AR9F6gVQ
花枝 「あら? そうなの? あすみちゃんが言うから、てっきりそうなんだと思い込んでたけど……」

成幸 「まぁ、ちょっと事情があってさ。彼氏のフリをしてるんだ。フリだけだから、本当の彼氏じゃないけど」

成幸 「っていうか、俺があんな綺麗な人と付き合えるわけないだろ」

花枝 「あんたも色々と大変なのね」

成幸 「水希たちには内緒な。またうるさそうだし」

花枝 「はいはい」

花枝 「……洗い物、もういいわよ。あすみちゃんたち、そろそろお風呂上がるでしょうから、成幸、入っちゃいなさい」

成幸 「先入っちゃっていいのか?」

花枝 「私は後でゆっくり入るからいいわよ」

738以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:14:29 ID:AR9F6gVQ
………………

花枝 「じゃあ、私は和樹と葉月寝かしつけてそのまま寝ちゃうから」

成幸 「わかった。おやすみ、母さん」

あすみ 「おやすみなさい、お母さん」

花枝 「……あとはふたりきりで、私のことは気にしないでね」

成幸 「余計なこと言わなくていいから。早く寝てくれ」

花枝 「何よ、ノリ悪いわね。じゃ、おやすみなさい」

成幸 「……ふぅ、やっと行ったか。すみません、先輩。うるさい親で……」

あすみ 「言うなよ。うちの親父より何倍も静かだよ。いいお母さんじゃないか」

成幸 「……まぁ、いい母だとは思いますけどね」

成幸 「さて、今日はどうします? 物理? 化学? それとも生物?」

あすみ 「色気のない三択だな。とりあえず物理で頼む」

成幸 「わかりました。じゃあ、今日もはりきってがんばりましょう」

739以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:15:23 ID:AR9F6gVQ
………………

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ…………

あすみ 「……なー、後輩」

成幸 「なんですか?」

あすみ 「悪い。さっきさー、洗い物してるときのお前とお母さんの会話、聞いちゃった」

成幸 「……そうですか」

あすみ 「……ごめんな。うそついてて」

成幸 「いえ、気にしてませんから、大丈夫です」

カリカリカリ……

あすみ 「……アタシさ、うちの色んな事情にお前のこと巻き込んでばかりだからさ、」

あすみ 「実は、これでも結構、申し訳ないと思ってんだよ」

成幸 「え……?」

あすみ 「だから、家事を手伝ってやれば、いつもの “彼氏のフリ” の恩返しができるかなって思ってさ」

740以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:16:25 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」

741以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:17:08 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」

742以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:18:08 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「後輩、お前……」

あすみ (普段、アタシがどんだけ迷惑かけたって、からかったって、怒らないくせに……)

あすみ (なんで、アタシのことでそんなに怒るんだよ……バカ……)

成幸 「……お返し、ケーキだけで済ませちゃうつもり、ありませんから」

あすみ 「ん?」

成幸 「何かあったら言ってくださいね。彼氏のフリだろうと婿のフリだろうと、何でもやりますから」

成幸 「……本当はバイト代を払えたらいいんでしょうけど、あいにくうちにお金がなくて……」

あすみ 「気にすんなよ。アタシが勝手にやったことだ。勝手に彼女のフリをしただけだからな」

成幸 「じゃあ、俺も、先輩が必要なとき、彼氏のフリをしますよ。でも、俺は言ってくれないとわからないから」

成幸 「……言ってくださいね。俺、先輩のためだったら何でもしますよ」

あすみ 「……何でも、ねぇ」

クスッ

あすみ 「じゃあ、週末、またデートしてくれるか?」

あすみ 「親父の目を誤魔化すのも大変なんだ。勉強デートとしゃれ込もうぜ」

成幸 「わかりました! それくらいならお安いご用ですよ!」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:18:53 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

花枝 「うーん……なかなかどうして、本物の彼氏彼女に見えるわね」

花枝 「っていうか、息子は元より、あすみちゃんも結構まんざらでもない感じね」

葉月 「ほらー、母ちゃん、覗いてないで寝るわよー」

和樹 「水希姉ちゃんは水希姉ちゃんでヤバいけど、母ちゃんも結構ヤバめだよなー」

花枝 「分かったわよ。じゃあ行きましょう」

花枝 (それにしても……)

ピカピカピカ……

花枝 (家中ピカピカだわ。お料理も上手だし、葉月と和樹の相手も完ぺき……)

花枝 (成幸より年上というのもポイント高いわ……)

花枝 (ちょっと本当に嫁に来てくれないかしら)

和樹 「ほらまた母ちゃんよからぬことを考えてる」

葉月 「でもまぁ、あすみお姉ちゃんがお嫁に来てくれるのは、わたしも賛成だわー」

744以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:19:26 ID:AR9F6gVQ
………………翌朝

あすみ 「ほら、弁当。持ってけよ」

成幸 「ん……ありがとうございます」

ジトッ

成幸 「また変なこと書いてないでしょうね?」

あすみ 「んだよ、信用ねぇな。何も書いてねーよ」

あすみ (変なことは、な)

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

成幸 「……三日間、ありがとうございました。助かりました」

あすみ 「おう。気にしなくていいぞ。おかげでアタシも勉強進んだし」

成幸 「……じゃあ、いってきます。先輩」

あすみ 「ん……? いや、ちょっと待て、後輩」

成幸 「へ?」

ズイッ……

745以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:20:03 ID:AR9F6gVQ
成幸 「せ、先輩……?」 (ち、近っ……!? な、何を……)


―――― 『それとも、いってらっしゃいのチューでもしてやった方がやる気が出るか?』


成幸 (ま、まさか……そんな、いや……心の準備が……)

キュッ

成幸 「……へ?」

あすみ 「……ネクタイ、曲がってたぞ。まったく、だらしねーな」

成幸 「あっ……ね、ネクタイか。なんだ、びっくりした……。ありがとうございます、先輩」

あすみ 「んー? 急にアタシが近づいて、何だと思ったんだー、後輩ー?」

成幸 「な、なんでもありませんよ!」

あすみ 「にひひ、なんだよ、昨日は “婿のフリ” だってやってくれるって言ってたのに、そんな体たらくか?」

あすみ 「アタシの婿になるんなら、もう少しがんばれよ」

成幸 「急に近づかれればびっくりもしますよ。先輩は美人さんなんだから……」

あすみ 「っ……」

746以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:22:01 ID:AR9F6gVQ
あすみ 「………………」


―――― 『っていうか、俺があんな綺麗な人と付き合えるわけないだろ』


あすみ (……ったく、軽々しく、人のこと綺麗だの美人だの言いやがって)

あすみ (こっちの気も知らないで、ほんとに、しょうがない奴だ……)

成幸 「じゃあ、先輩。いってきます」

あすみ 「おう」

あすみ (……覚えてろよ、後輩)

あすみ (いつか、本当に “婿のフリ” なんてしてもらうことになったら、)

あすみ (本当に、いってらっしゃいのチューくらいはしてやるからな)

あすみ (そのとき、後悔したって知らないからな。お前が言い出したことなんだから)

ニコッ

あすみ 「……いってらっしゃい、後輩」


おわり

747以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:22:47 ID:AR9F6gVQ
………………幕間1 「SEISAI帰宅」

水希 「ただいまー! みんな、ごめんね。いま帰ったよー……って」

水希 「家中ピカピカ!? 台所も!? トイレも!? ついでに葉月と和樹もお肌がピカピカ!?」

水希 「そして……」

水希 「……例の、お兄ちゃんの耳をきれいにしたという女の匂いがする!!」

水希 「わたしのいない間に……!!」 ギリリリッ

葉月 「あー……」

和樹 「あすみ姉ちゃん、もう二度とうちの敷居をまたげないかもしれないな」

748以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:23:39 ID:AR9F6gVQ
………………幕間2 「お弁当」

成幸 (先輩のことを信じないわけではないが、一応、念のため、大森がいないところで食べよう)

成幸 (と、いうことで、緒方たちと一緒に食べることになったわけだが)

うるか 「今日のお弁当もお母さんが作ってくれたの?」

成幸 「ん? ああ……いや、お前たちにうそをつくのも気が引けるから言うけど、これは小美浪せもがっ!?」

文乃 「……うん。なるほど。お母さんが作ってくれたんだね」 ニコッ 「よかったね」

成幸 「もがもが!?」 (なぜ俺の口をふさぐんだ、古橋!?)

文乃 (うん。わたしの胃が確実にダメージを受けるようなことを言わせるわけないよね)

うるか 「へー。じゃあ、失礼して、開けちゃおっかなー、っと」 パカッ

 『来週のデート楽しみだねっ 成幸くん』

うるか 「へ……? ハートマーク、と、このメッセージ、デートって……」 ジロリ

理珠 「……これは何ですか? 成幸さん? お母さんが作ったものではないですね?」 ジトッ

成幸 「いや、だからこれは小美浪せんもがっ……!」 (だからなぜ俺の口をふさぐんだ古橋!?)

文乃 (ちくしょー、だよ! どう転んでもこうなるのかよー!! だよ!!) キリキリキリ

749以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:24:16 ID:AR9F6gVQ
………………幕間3 「小美浪家」

小美浪父 「………………」

小美浪父 (三日間唯我くんのご家庭で家事の手伝いをしたいと言い出したときは驚いたものだが)

小美浪父 (迷惑になるからやめなさいという私の言葉も聞かず、結局行ってしまった……)

小美浪父 (三日間帰ってこないということは、うまくやっているということだろうか)

あすみ 「ただいまー」

小美浪父 「ん……あすみ、おかえり。唯我くんとご家族に迷惑はかけてないだろうね?」

あすみ 「大丈夫だよ。心配だったら、後で後輩にでも聞いてみてくれ」

あすみ 「ふぁーああ……。夜遅くまで(勉強を)がんばっちまったからな、眠いや。ちょっと寝たらバイト行くわ。じゃ、おやすみ」

小美浪父 「……ああ、おやすみ」 (……そろそろ、唯我さんのお宅に挨拶に伺うべきだろうか)

小美浪父 (唯我くんのご家族はあすみのことを気に入ってくれただろうか……)

小美浪父 (しかし、夜遅くまでがんばったのか……)

小美浪父 「ふふ……、あいさつより何より先に、授かり物があるかもしれないな……」

小美浪父 (ああ、お義父さん困っちゃうな……) パァアアアア

おわり

750以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:26:33 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
少し長すぎたかなと反省しています。


もうひとつ投下します。
こっちは少し短いです。


【ぼく勉】成幸 「緒方の私服ってかわいいよな」

751以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:27:08 ID:AR9F6gVQ
………………図書館

理珠 「へ……?」

理珠 「………………」 カァアアア……

理珠 「い、いきなりなんですか。成幸さん……」

成幸 「緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな」

理珠 「べつに、そこまで興味があるわけではないですけど……」

成幸 「いや、うちは家族の服を俺が作ってるんだけどさ」

成幸 「この前水希がカタログを見ててな。ちょっと覗いてみたら、緒方が着てるような服に興味があるみたいでさ」

成幸 「可愛い系? みたいな? すまん、俺も詳しくはないからよく分からないんだが……」

理珠 「私が普段着ているような服……」

ズーン

理珠 「……私のセンスは中学生レベルということですか」

752以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:27:39 ID:AR9F6gVQ
成幸 「いや、そういうことなじゃくて、単純に好みの問題だろ」

成幸 「俺も緒方が着てるような服、可愛くていいと思うしさ」

理珠 「はう……///」

成幸 「だから、もし良かったら、水希の服を作るときの参考にしたいから、」

成幸 「服のブランドとか、どこで売ってるかとか、教えてもらってもいいか?」

成幸 「教えてもらったら、その店に服を見に行こうと思うんだ」

理珠 「いいですけど、私が買った服もありますし、お母さんが買ってきてくれた服もありますし、一概には……」

ハッ

理珠 「………………」

成幸 「緒方? どうかしたか?」

理珠 「いえ、あの……もし成幸さんが良かったら、なのですが、」

理珠 「今日の勉強が終わったら、うちに来ませんか? 私の服を見せてあげますよ?」

成幸 「へ?」

理珠 「わざわざお店に行くより、合理的だと思います」

成幸 「そりゃ、その通りだが……いいのか?」

753以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:28:32 ID:AR9F6gVQ
理珠 「嫌な理由はありません。成幸さんにはお世話になっていますし、力になれるなら嬉しいです」

成幸 「そうか……。じゃあ、お願いしてもいいか?」

理珠 「はい。もちろんです」

成幸 「よし、そうと決まれば、おうちの迷惑になってもいけないし、今日の分、さっさと終わらせるぞ」

理珠 「はい! がんばります!」


―――― 『緒方の私服ってかわいいよな』

―――― 『緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな』


理珠 (ま、まぁ、かわいいと言われて悪い気はしませんし?)

理珠 (成幸さんが見たいと言うなら、見せてあげるに吝かではありませんし)

理珠 (……ふふふ)

理珠 (かわいい、ですか……) ニヤニヤ

成幸 「……?」 (なんか緒方、えらく上機嫌だな。何かいいことでもあったのか?)

754以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:30:02 ID:AR9F6gVQ
………………夕方 緒方家

成幸 「悪いな、緒方。お邪魔しちゃって……」

理珠 「いいですよ。今日はお父さんもお母さんもお仕事が忙しくて店にいますし、気兼ねする必要はありません」

成幸 (逆にまずい気がする。というか、親父さんにバレたら殺されるぞ、俺……)

理珠 「どうぞ。ここが私の部屋です。まぁ、成幸さんはもう何度か入ってますよね」」

成幸 「そういえばそうだな……」


―――― 『えーっ 成幸も泊まっていけばいいじゃん!』

―――― 『そうそう 夜はまだまだこれからだよ〜!』


成幸 「っ……」 (そ、そうだ。あの女子のパジャマパーティのときとか……)


―――― 『唯我さん 手 冷たいです』

―――― 『なんだかホッとして……きもちいい……です』


成幸 (緒方の家で一晩明かしたときのこととか……)

成幸 (よく考えたらこの部屋ろくな思い出ないな!?)

755以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:31:00 ID:AR9F6gVQ
成幸 「お邪魔しまーす……」

理珠 「どうぞ」

理珠 「服を見たいと言っていましたが、具体的に言うとどのような服を見たいですか?」

理珠 「トップス、ボトムス、アウター……色々ありますが」

成幸 「ああ、水希が見てたのはトップス? かな? 上に身につけるようなやつだ」

成幸 「あとはワンピースタイプの服とかも見せてくれるとありがたいな」

理珠 「ふむふむ。それならこのあたりですね」

ゴソゴソ……

理珠 「……こういう服ですか?」

成幸 「ああ、そうそう、まさにそういうのだよ」

理珠 「でしたら、この段とこの段、好きにみてもらって構わないですよ」

理珠 「私は今日教えてもらった部分を復習していますので」

成幸 「えっ……?」

756以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:31:52 ID:AR9F6gVQ
成幸 「い、いや、さすがにそれはまずいだろ」

理珠 「なぜです? 服を見るだけでしょう。何かまずいことがありますか?」

成幸 (……試されてる? いや、緒方の場合は本気でそう思ってる気がするな)

成幸 「その申し出はありがたいが、女子のタンスを勝手に覗くのはちょっと、気が引けるな」

理珠 「そういうものでしょうか……」

理珠 「それなら、適当に広げておきますので、勝手に見てください。手に取ってもらって構いません」

成幸 (それはそれでどうなんだろう、とは思わなくもないが……タンスを漁るよりははるかにマシか)

成幸 (きっと俺のことを信頼してくれているんだろう。それなら、俺もその信頼に応えるまでだ)

ポン……ポン……

理珠 「……こんなものでいいでしょうか。だいたい、今の時期はこれらを着回しています。重ね着とかをします」

理珠 「では、私は机で勉強をしていますから、何かあったら声をかけてください」

成幸 「ああ、ありがとな、緒方。助かるよ」

理珠 「いえいえ」

成幸 (本当に勉強を始めたぞ……。まぁ、いい。緒方の申し出は素直にありがたいし、お言葉に甘えよう)

757以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:32:44 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ふむふむ……」

メモメモメモ……

成幸 (縫い方とか参考になるな……。糸の色や太さを変えても楽しそうだ)

成幸 (飾りのポケットとかもデザイン的に面白いぞ)

成幸 (シンプルなデザインが多いから、作るのもわりかし簡単そうだし……)

成幸 (緒方に相談して良かった)

成幸 (古橋はちょっと小綺麗にまとまりすぎてて、着る人を選びそうだし……)

成幸 (うるかはちょっと露出度が高すぎて水希には兄として絶対着させられないし)

成幸 (あしゅみー先輩はパンキッシュすぎて絶対水希には似合わないし)

成幸 (桐須先生はジャージだし関城は白衣だし、論外として)

成幸 (……いや、まぁ、それは置いておくとして……)

成幸 (服を見るだけで分かる……。やっぱり緒方の胸のサイズ、とんでもないな……すげぇ……)

ハッ

成幸 (緒方は俺を信じて服を見せてくれているというのに!! 俺はなんて不埒なことを!!)

758以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:33:40 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

ドキドキドキドキ……

理珠 (なぜ、でしょうか……?) カァアアア……

理珠 (私はただ服を見せているだけだというのに、ドキドキが止まりません)

理珠 (まったく不可解です。成幸さんが被服作成の参考にするために、見せてあげているだけなのに)

理珠 (……なぜ、こんなに頬が熱いのですか。なぜこんなに、勉強に集中できないのですか)

チラッ

成幸 「ふむ……なるほど……」

理珠 (な、成幸さんが、私が普段着ている服を、手に取って、興味津々そうに見ている……)

理珠 (ふぅ。理解不能です。なぜ私は、こんなに……)

理珠 (いけないことをしてしまっているような気持ちになっているのでしょうか……)

成幸 「ん……? なぁ、緒方」

理珠 「!?」 ビクッ 「は、はい!? なんですか!?」

759以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:34:43 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……? どうかしたか?」

理珠 「い、いえ、なんでもありません……」

理珠 「何かありましたか?」

成幸 「ああ、悪い。この服がどうしても、どういう構造なのか分からなくてさ」

成幸 「どっちが表でどっちが裏かもよく分からないし、メビウスの輪かと……」

理珠 「……? ああ、たしかにその服を見て私もメビウスの輪を思い出します」

スッ

理珠 「これはワンピースタイプの服ですね。貫頭衣みたいな構造になってます」

成幸 「ふむ……作りはシンプルだけど、作り方を間違えるととんでもないことになりそうだな」

成幸 「オシャレな感じだから、作ってやったら水希が喜ぶかもと思ったが……」

成幸 「着方もよく分からないし、やめておいた方が無難か」

理珠 「……それでしたら、もしよかったらいま着てみましょうか?」

成幸 「へ? いいのか?」

理珠 「べつに減るものでもありませんし、構いませんよ。ちょっと廊下に出ていてください。すぐ着ますから」

760以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:36:05 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 (実際に着てもらうことになるとは……。緒方に悪いな)

成幸 (でも、助かるな……)

スルッ……スルッ……

成幸 「……!?」 (き、衣擦れの音……)

成幸 (よ、よく考えたら、ドアの向こうで緒方が着替えてるんだよな……)

ハッ

成幸 (ば、バカか俺は! 俺のために着替えてくれてる緒方に、なんて下劣なことを……!)

ガチャッ

成幸 「!?」

理珠 「着替え終わりました。入っていいですよ……って、成幸さん、すごい顔ですよ。どうかしたのですか?」

成幸 「あ、いや、なんでもない……」

成幸 (び、びっくりした……)

761以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:36:43 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ふむふむ、なるほど……」

成幸 「こういう構造になっているのか……」

理珠 「………………」

理珠 (うぅ……服を見られているときも恥ずかしかったですが……)

理珠 (着ている服をまじまじと見られるのは、もっと恥ずかしいです……)

モジモジ

成幸 「ん……あっ」

成幸 「わ、悪い。近くで見すぎたな。すまん」

理珠 「いえ……」

理珠 「ど、どうですか?」

成幸 「ん……大体どういう風になってるのか分かったから、結構簡単に作れそうだ」

成幸 「ちょっとメモさせてくれ」

762以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:37:21 ID:AR9F6gVQ
成幸 「えっと……ここがこうなってるのか……」 メモメモ

理珠 「………………」

プクゥ

理珠 (……成幸さん、かわいいとは言ってくれないのですね)

理珠 (せっかく着てあげたのだから、それくらい言ってくれてもいいのに……)

ハッ

理珠 (わ、私は何を……。私から着てあげると提案しておいて、なんて厚かましい……)

理珠 (というか、私は……成幸さんに、もう一度、かわいいと言ってほしいのしょうか……)

理珠 「………………」

理珠 (そもそも、成幸さんは、私の私服がかわいいと言っていただけであって、私のことなんて一言も言っていないのに)

理珠 (……何を勝手に舞い上がっていたのでしょうか。今だって、私には目もくれず、メモを取っているのですから)

理珠 (まったく、不可解です。私は一体何を期待していたのでしょうか……)

763以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:38:03 ID:AR9F6gVQ
成幸 「……っと、よし、メモも終わったぞ」

成幸 「緒方、ありがとな。おかげで水希に作ってあげられる服が増えそうだよ」

理珠 「……そうですか。それは何よりです」

成幸 「……? 緒方、どうかしたか?」

理珠 「何もありません」 ムスッ

成幸 (いや絶対何かあっただろ……)

理珠 「……着替えますから、また廊下で待っててもらえますか」

成幸 「あ、ああ。まぁ、それはいいけどさ……」

クスッ

成幸 「お前ってさ、得だよな」

理珠 「へ……? な、何の話ですか?」

成幸 「美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし」

成幸 「……っと、悪い。また余計なこと言ったな。じゃあ、廊下出てるわ」

764以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:38:54 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

カァアアアア……

理珠 (い、今のは……)


―――― 『美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし』


理珠 (今のは、服ではなく、私自身のこと……です、ね……?)

理珠 (ま、まったく、不可解なことです……)

理珠 (さっきまで頭にもやがかかっていたようだったのが、一瞬で晴れてしまいました)

理珠 (美人……ふふ、あと、かわいい、ですか……)

理珠 (い、いけません。なぜか、笑みが止まりません)

理珠 (ふふっ……)

765以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:39:35 ID:AR9F6gVQ
………………数日後

成幸 「緒方、この前はありがとな。本当に助かったよ」

理珠 「? ああ、服を見せたことですか。大したことではありませんから、お気になさらずに」

文乃 「……!? りっちゃん、服を見せたって……おうちで?」

理珠 「そうです。成幸さんにうちで服を見てもらいました」

文乃 (りっちゃん、服を見せるとか……大胆すぎるよ……)

成幸 「水希もすごく喜んでくれてさ。毎日着てくれてるよ」

成幸 (緒方に見せてもらった服を参考にしたって言ったら、なぜか少し不機嫌になったけど、)

成幸 (まぁ、それはわざわざ言う必要はないだろう……)

理珠 「それは何よりです。お役に立てたなら何よりです」

成幸 「おう。それでな」 ゴソゴソ 「本当は余った布で何か作ろうと思ったんだけど、生地が足りなくてさ」

成幸 「毛糸が余ってたから、手袋を縫ってきたんだ。趣味じゃなかったらミトンか軍手代わりにでも使ってくれ」

理珠 「へ……? これ、私にくれるんですか?」

成幸 「お礼だよ。本当にありがとな、緒方」

766以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/21(日) 20:41:11 ID:AR9F6gVQ
文乃 (手編みの手袋!? 女子力高いけど重すぎだよ成幸くん!)

文乃 (普通の女子だったら引いちゃうかもしれないレベルだよ!?)

理珠 「こ、これを、私に……」

カァアアア……

理珠 「う、嬉しいです! 使います! 絶対、使いますから!」

成幸 「お、おお、そうか? そんなに喜んでくれると嬉しいな……」

文乃 (けどセーフ! なぜならりっちゃんは結構普通じゃないから!)

理珠 「………………」

スッ……

理珠 「ど、どうですか? 似合いますか?」

成幸 「ああ。前に手を引いたときとかの感覚で作ってみたけど、サイズもピッタリだな。よかった」

文乃 (その発言も一般的には結構気持ち悪いと思うけど、りっちゃん的には……)

理珠 「そ、そういえば、そんなこともありましたね……///」

文乃 (やっぱり! 嬉しそうだ! よかったね成幸くん! りっちゃん!) ヤケクソ




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