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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

1Mii:2018/08/04(土) 23:26:40 ID:Mx6gHZLQ
マリオ「隠しキャラ、もとい隠しゲストとして任天堂から依頼が来てる。
    ギャラクシーと連動して、ミステリアスな女性ドライバーとして
    ブレイクしてほしいとのことだが…どうする?」テガミポイー

ロゼッタ「…ふむふむ。
     レースごとに観客の皆さんの投票で参戦するか否かが決まって、
     その時点で少なくない給料が発生。
     上位に入ったり総合成績が良ければ更に追加給金。
     至ってシンプルな給料体系ですね」

マリオ「…………」

374Mii:2018/11/03(土) 18:11:41 ID:H.lk9j0s
ディメーン「いやあ、実はさっき、ピーチ姫と我慢対決をすることになってね?」

――ディメーンは、絶対的な立場から、面白そうに顛末を語って聴かせます。
その内容に、私も、ナスタシアも、凍り付いてしまいました。
どうしてそこまで、堕ちることができるのか。
サヤカは現実離れしすぎているのか、ポカンとするのみ。



…理不尽な理由をでっち上げられ――誰か、1人が、殺される……!?



――更には。

ディメーン「まあ、ルールを知る由もなかったキミたちは可哀想だよね。そ・こ・で!
       生きるチャンスを、与えようじゃないか。イッツ、チャンスターイム!
       話し合いでも、多数決でも、殴り合いでもいいからさぁ。





        キミたちで、犠牲者一人決めて、該当者を始末してくれない?
        ボクも決定に従い、黙って観てるからさ!」


到底、受け入れがたい選択を、迫ってきたのです。

375Mii:2018/11/03(土) 18:17:22 ID:H.lk9j0s
固まって動けない3人の足元に、フッと…1本のナイフが転移されてきました。

ディメーン「ルールせつめーい!今から10分以内に、誰か一人の息の根を止めること!
      使いたかったらそのナイフ、使ってもいいよ〜!
      んっふっふ、ボクに効かない魔法を施した特製ナイフだけどね!

      10分以内に決着が付かない、付けようとしない場合は、
      仕方ないけど全員お陀仏になってもらうから、そこんとこよろしくね〜!
      どのみち、全滅してることすら、表の世界にはばれないからね〜!
      まだ、逃げ道を用意してあげているんだから感謝してよ〜?


      それじゃあ…計測、開始しまーす!サイコーのショーを見せてくれ!」


ディメーンが、猟奇的に、満面の笑みでこちらを眺めています。
私は、何も考えられず、指一本動かせません。



――ナスタシアが、ため息を一つ付いて、確かな足取りで…
隻腕でナイフをしっかりと握り締めました。

狙うは…私――――の後ろでビクッと震えた、サヤカ。

376Mii:2018/11/03(土) 18:21:54 ID:H.lk9j0s
サヤカは、状況を飲み込むことができず、ただただ呆然としています。

ロゼッタ「何のつもりです、ナスタシア!協力し合うと言ったばかりではないですか!」

ナスタシア「だからこそ、ですよ。自分の命が惜しいとか、そんな世俗的判断ではありません。
       単純に、どう考えても、私と貴方の2人が生き残った方が、戦力となるだけの話です。
       サヤカには…運がなかったと諦めてもらうよりほかにありません。

       そもそも、私か貴方かどちらか1人でも退場した時点で、サヤカも確実に死にますよ?
       何を躊躇うというのです?一時の情で戦局を見誤ってはなりません」


サヤカはようやく危機を理解して――理解してしまって、
口をパクパクさせながらどんどん蒼白になっていきます。

ロゼッタ「でもっ!」

ナスタシア「お黙りなさい!この男は、やるといったらそれ以上でもそれ以下でもないことを
       平然としでかす男です!私が一番知っています!」

確かに、正論そのもの、かもしれません。
私には、反論に使える具体的な材料などありません。
でも……。

377Mii:2018/11/03(土) 18:28:06 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「……………………一つ、聞かせてください。
      確かにサヤカは非力ですが、それを言うなら私も戦う術を全く持たない。
      …貴方だってそうでしょう、一体何の能力があるというのです?」

ナスタシア「…暗示、催眠術などの精神操作を少々。
       体力も、片腕のみとはいえ…少なくとも子供よりはあるつもりですが?」

ロゼッタ「精神、操作…」

ディメーン「ま、僕にはバレバレ!おまけに全然効かないけどね〜!」

ナスタシア「分かっているから暴露したんですよ!それに、弱った時になら効くかもしれないでしょう、
       寝首を掻かれないことですね」

ディメーン「油断しても戦力差甚だしいことを理解してる、ナスタシア?
       己惚れるのもいい加減にしてほしいものだね」

ディメーンは嘲笑するだけ。
そんな中、私は…考え、考え、考える。




…そして、どうしようもない絶望の結論に至り…全てを割り切ったのです。
それしか、策はないのだと、分かってしまったので。

378Mii:2018/11/03(土) 18:33:00 ID:H.lk9j0s
サヤカをやや乱暴に振り払い。ゆっくり、ナスタシアの方に歩いて行き。




ロゼッタ「なるほど…そういうことなら、ナスタシアを死なせるわけには参りませんね。
      そのナイフで刺す役目、せめて私にさせてください。
      …あ、不意打ちでナスタシアを刺すとかはしないのでご安心を」







え、と固まるナスタシアの手から――指を引きはがし優しくナイフを貰い受け。
鋭い切っ先を、サヤカに向ける。

379Mii:2018/11/03(土) 18:35:53 ID:H.lk9j0s
サヤカ「…ママ?嘘…だよね?」

この世の終わりという表情のサヤカ。しかし、動じてはなりません。
しっかりと、言い聞かせなければ。

ロゼッタ「ほーら、左右に動いちゃ駄目よ。怖がって避けられると、上手く心臓に刺さらないでしょ?
      却って痛いことになっちゃうのよ?」

サヤカ「……………………っ!」

絶望して、足がすくんで逃げ出すこともできず、大粒の涙を流すサヤカ。



ロゼッタ「大丈夫、何も考えなければ痛くない、痛くないわ。
      痛かったとしても一瞬で済むから、さあ」

サヤカ「いつものママに戻って!お願い!」ボロボロ



3メートル、2メートル、1メートル。
サヤカとの距離が、ほぼ0になって――。

ナイフを、心臓に、違うことなく突き刺しました。

380Mii:2018/11/03(土) 18:40:48 ID:H.lk9j0s
サヤカ(ああ、もう…どうでも、いいや。
     わたし、悪い子だったから、やっぱりママに嫌われたのかな。
     パパも、ごめんなさい――さよなら……)






サヤカ(…あれ、…………痛くない。ここは、天国?)





思わず目を瞑ってしまったけれど、どこも痛くない。
恐る恐る目を開けたら……






ママの振り上げたナイフは、そのまま腕を捻られて…
ママの胸に、深々と…刺さってた。

381Mii:2018/11/03(土) 18:42:30 ID:H.lk9j0s
時が、止まったみたい。


ロゼッタ「ディメーン、ピーチ姫に伝えてください。
      私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と」



――怖い思いさせて、ごめんね。
そんな声が聞こえた、かもしれない。

ママはニコッと笑って…笑ったように見えて…
次の瞬間、ドバっと血を吐いて倒れ込んだ。




ナニガ オコッテイルノカ、ワカラナイ。



ナスタシアさんとかいう女の人が、絶叫しながらも必死に駆け寄ってくる。
私は、体中に浴びちゃった赤い血で、一瞬なんにも考えられなくなって……
たちまち泣きじゃくって、ママにすがりついていたの。

382Mii:2018/11/03(土) 18:45:07 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ママ、ママ!」ボロボロ

必死に、何度も何度もママを呼ぶけれど、目を閉じたまま…全然返事がない。
ナスタシアさんが、へなへなと座り込んでしまった。

ディメーン「ほいほーい、空間把握で心停止かくにーん。
       これにて、チャンスタイムしゅうりょー!

       いやいや、泣ける話じゃないか。即興にしては上出来だよ!
       じゃあ、僕は一旦あちらの様子を伺ってくるかな、アデュー!」シュンッ




サヤカ「あああああああああ!」ボロボロ

ナスタシア「…これが…これが、貴方の出した答えというのですか。
      理解不能、です。理解したくも…ありません」

383Mii:2018/11/03(土) 18:49:06 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ナスタシアさんっ!魔法使いなんでしょ!
     魔法で、ママを蘇らせてよ!一生のお願い!」ボロボロ

ナスタシア「…あいにく、そのような技術もなければ、魔法の力もまるで足りません…」

サヤカ「うええぇぇぇん!!!」ガバッ

ナスタシア「いくらせがまれても、不可能な物は不可能です!分かりなさい!」グズッ



クイクイッ。



ナスタシア「ですから、私には無理だと言っているでしょう!」クルッ





ロゼッタ「……あのー」ドクドク





サヤカ「……えっ」

ナスタシア「えっ」

384Mii:2018/11/03(土) 18:50:54 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「倒れた体勢なので代わりに教えてほしいのですが。ディメーン、いなくなりました?
      見張りの分身体とかもいないですね?」ドクドク

ナスタシア「……は、はい」

ロゼッタ「そうですか…………」フゥ

ロゼッタ「………………………………………」

ロゼッタ「痛い痛い痛い痛いっ!?現在進行形で吐き気千万、死んじゃいますっ!なんですかこの痛みゴホッ!?
      ってまた血を吐いてしまいましたか!?何が痛みが一瞬で終わるですか、
      そんな無責任なことを宣った人は出て来て反省してくださいよーーーっ!!!!
      ナスタシア!早く、早く暗示で鎮痛を、鎮痛をお願いします!」ドクドクドクドク

サヤカ「」

ナスタシア「」


――びっくり。ママが生きていました。

385Mii:2018/11/03(土) 18:54:58 ID:H.lk9j0s
ピローン。

ナスタシア「…は、は、はい。暗示を掛けました。……しかし、ど、どうして!?心臓が再び動き始めて…!?
        いや、そもそもナイフの軌道は、心臓を的確に破壊したはず!」


ロゼッタ「ゴホッ…口の中も血だらけなので、背景説明もせず言葉少なに解説するとですねゴホッ、
      今の私の体、50%…半分は魔法の力で動いているのですよ。

     要するに、心臓がズタズタに破壊されて血液循環が停止し、ATP機構やらが働かなくなろうが、
     各組織は出力50%確保…生存ラインぎりぎりで動き続けるくらいならできるみたいですね。
     一か八かの賭けだったのですが、上手くいきました。今だけは特異体質に感謝ですね」

サヤカ「え、じゃあママって不死身なの!?」

ロゼッタ「…残念ながら、全ての力を生命維持に費やすから、まともに歩くこともできないわ。
      それに、重要臓器の機能不全で死ぬことはないけど、ちょっとタイムラグを作れただけで、
      このままだと出血多量によるHP切れで死ぬわね」

サヤカ「……っ!それじゃ、意味がないよ!!」


…涙が引っ込んだのもつかの間。
やっぱり、ママは死んじゃうんだ。それを知り、再び涙があふれてくる。
…でも、ママは――口元から血を流すことも気にせず、優しく語り掛けてきた。

386Mii:2018/11/03(土) 19:00:17 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「ねえサヤカ、今でもママのこと、好きでいてくれている?」

こく、と小さく頷いた。

ロゼッタ「ありがとう。ママも、サヤカのこと大好きよ。
      ――このピンチを切り抜けるために、ママの命をサヤカに預ける。
      だからサヤカも、ママの言うことを信じて…言う通りに動いてほしいの。
      できる、かしら?」

サヤカ「…………わかった。私、頑張る」



ママは、私をしっかり抱きしめてくれた。血の匂いはきついけど…あったかい。



ロゼッタ「と、いうわけでですね。ナスタシア。
      あと一回だけ、私の大博打に、付き合って頂けないでしょうか?」

ナスタシア「…わかりましたよ。どうやら、貴方たちと心中するしかなさそうですね」



やれやれと呆れた感じで、ナスタシアは肩をすくめて苦笑いする。
…そう。脱出するなら、3人揃って、一人も犠牲者を出さないで。

387Mii:2018/11/03(土) 19:07:13 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「とりあえず、確証があるわけではないのですが。

      『警戒無くこちらに戻ってきたディメーンに大きなダメージを与えることができれば、
      異空間が崩壊して元の世界に戻れる』ことを大前提としますが、よろしいですか?」

ナスタシア「異議ありません。行使者が弱れば魔法の維持力も連動して弱まるのは道理に適っていますし、
       そもそもその前提がなければ我々は本当に詰んでいますから。希望的推定もやむなしです」

ロゼッタ「そして、相手の魔法防御の高さや、こちらの魔法行使の制約を考えて、魔法による攻撃は論外。
      一方で、物理防御は低そうです。

      先ほど、自分では手を下さず離れたところから私たちで仲違いさせようとしたのも、
      わざわざ特製ナイフを調達したのも、肉弾戦の万が一を恐れていることの証左…
      物理的なダメージを与えるほかに道はない」


――空間把握だけで死亡を確認するあたり、ズボラな所まで私と似通っていますね。
全然嬉しくありませんが。これは是が非でも体力を付けないと。


ナスタシア「…残念ながら、その通りです。しかし、遠方に現れるディメーンを物理的に攻撃するなど…
       さきほどのようにスターピースを投げる位しか術がない。他に策があるのですか?
       言っておきますが、私でも貴方の投擲に比べて少しはマシ、という程度ですよ?
       いえ、片腕というバランスの取れていない状態では負ける可能性すらあります」

388Mii:2018/11/03(土) 19:12:52 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「…いえ。また、スターピースを投げてみようと、思います。
      先ほどコツンと弱弱しく当てた時、僅かながら…ディメーンが条件反射で慌てて躱そうとしていました。
      つまり、一度転移したら数秒は待機時間が必要になる、みたいに、連続の空間転移には制約がある。
      速度さえ十分なら、スターピースを叩き込めるはずです。

      おまけに先ほどの一発で…威力を過小評価している可能性も大です。
      もう馬鹿な真似はしないだろう、とでも考えて、防御壁を張られたりはしないでしょう」




そして、温めていた作戦をサヤカとナスタシアに披露します。





サヤカ「……そんなこと、できるの?」

さすがのサヤカも、半信半疑。いえ、二信八疑くらいでしょうか?

ナスタシア「冗談じゃ、ないのですか?そんな意味不明で無謀な作戦、聞いたことがない!」

――いえいえ、ところがどっこい、大真面目な作戦なのですよ。



題して…「マリオネット作戦」という作戦名は、どうでしょうか。
おかしくなって、小さく笑うのを、2人は不思議そうに見ていました。

389Mii:2018/11/03(土) 19:16:36 ID:H.lk9j0s
ピーチ(――ああ、ああ)

何が、サイコーのショーだ。こんなの、最低、最悪だわ。



戻ってきたディメーンが持っていたもの。――血濡れのナイフ。



ディメーン「いやあ、実に…実に素晴らしい寸劇が繰り広げられたよ。キミたちにも見せてあげたかったね、ふふ」

デイジー「……ロ、ロゼッタは?サヤカちゃんは?も、もちろん生きているわよね!?」

ディメーン「あー、うーん。どうだったっけな。
       …あ、そうそう。ピーチ姫、ロゼッタから伝言があるんだった。
       一字一句違えずに伝えるから、よーく聞くといいよ」ニヤリ



――『ピーチ姫に伝えてください。
――私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と』だって。
――うん、間違いないね!



皆の目が、見開かれる。
デイジーの目から、一筋の涙が…こぼれ落ちていく。

390Mii:2018/11/03(土) 19:18:25 ID:H.lk9j0s
デイジー「嘘よ…そんな、の」

ディメーン「そうかもね、そうじゃないかもね?
       さあさあ、どうする〜?もはや守るべき者がいなくなったと開き直って、
       一気に反撃し出すかい?
       まだ全員死んだわけじゃないから、我慢を続けてみるかい?
       はっはは、究極の選択だねー!好きな方を選ぶといいよ!」


――狂っている。こんなことが、許されていいの!?


私たちのモチベーションは、もはや総崩れ。
ただただ、無気力、無抵抗。
あのマリオが、クッパでさえも、言葉を一言も発せず俯くまま。


キノコ王国のトップとして、時には少数を捨てなければならないのは分かっている。
でも、それでも…っ!

391Mii:2018/11/03(土) 19:22:14 ID:H.lk9j0s
ディメーンは本当に、好き勝手に爆撃をしてくれている。あたり一面、焼け野原。
…いえ、私たちが動かないでいるから、まだ周辺住民には手を出さないでいる、と考えればマシか。

特に、今もしも城下に目を付けられでもしたら、どれだけの民が犠牲になることか。
星くず祭が開催中で、避難も一切済んでいないというのに。

戦闘力としては、いくら開きがあるとはいえ…
こちらの攻撃は当たらず当てられず、攻撃されるまま。ジリ貧ね。

――と、思った矢先。



マリオ「ピーチ、かわせっ!」


一瞬の隙を衝かれ、思いもよらぬ激痛が、頭を襲う。
ぐわん、ぐわんと脳が直接ハンマー攻撃でも食らい、揺さぶられるような感覚。

激しい発作に見舞われ膝をつきながらも、自分の体を確かめる。

ピーチ「……な、何?今、何が起こったの?マリオ、見えた?」

マリオ「よくわからんが…通常の魔法で、そうはダメージは受けないはずだ。
     転移魔法を利用して、何かやろうとしたな?」

ディメーン「んー、60点だね。せっかく、余所見している間に頭部を切り離して痛みも感じさせず即死させようとしたのに…
       頑丈だなあ、腹が立ってくるよ」ムカッ

――何よ、その反則行為。

392Mii:2018/11/03(土) 19:26:23 ID:H.lk9j0s
ピーチ「…へえ、ずいぶんと器用なことができるようになっているじゃない。
     馬鹿に凶器を持たせるといいことがまるでないわね」

ディメーン「褒め言葉と受け取っておくよ〜。
       …そう!これまで、物体全体の境界面が魔法行使の分解能だったボク!
       しかし、偉大な古文書のおかげで、さらに細分化して、切り離しての操作が可能となった!
       いやあ、僕って天才!?」

ピーチ「結局あなたって物に頼ってるじゃない。
    そんなことができるのなら、陰からコソッと私たちを始末すればよかったのじゃないの?」

ディメーン「甘い甘い。これは『復讐』なんだよ?そんなの、何の意味もないじゃないか。
       敵は分かっているのに為すすべもなく蹂躙される、そんな気持ちを味わってもらわなくちゃ!」



ピーチ(そんな気持ちなら、ロゼッタの訃報を聞いた段階で、なっているわよ…っ!
     これなら曖昧なままのほうがどれだけよかったことか…っ!)

393Mii:2018/11/03(土) 19:29:24 ID:H.lk9j0s
………ふと、違和感。
何か、つじつまが合わなく、ないかしら。
いえ、気のせいか。



…気のせいじゃ、ない。




……ロゼッタの訃報が嘘か否か?それは関係ないわ。
あの夥しい血、誰かが致命傷を負ったことは疑いない。
つまりどう転んでも、胸をなでおろす状況は有り得ない。



そうじゃ、なくて。
そもそも、壮絶な最期を遂げた、みたいな回りくどいことを、ロゼッタが意味もなくディメーンに語らせるかしら?
伝われば当然こちらの指揮は下がる、それはロゼッタも重々承知のはず。
その仰々しさで言わしめた、意味……。

394Mii:2018/11/03(土) 19:32:38 ID:H.lk9j0s
ハッと、気付いた。
ロゼッタが死んでいるのではなく、『ディメーンを騙し通せて、生きている』としたら?
言葉に隠された意味も、ガラリと変わってくるのではないかしら…?



…そういう、ことね。




だとしたら、ロゼッタは『待っている』。




タイムリミットがあることも確実。
でも……一本の、細い、細い、光明が見えた。

395Mii:2018/11/03(土) 19:40:46 ID:H.lk9j0s
気付かれないように、感付かれないように、自然に振る舞え、私。
どんな会合よりも、演説よりも、気を引き締め過ぎてしすぎることはない。

ピーチ「…もう、アッタマに来たわ、マリオ。
    生きているかも分からない人と天秤にかけて、現実世界を危険にさらすわけにはいかない。打って出るわよ!」

マリオ「…っ!?いいのか!?」

ピーチ「仕方のない、ことよ。…じゃないと、ロゼッタが浮かばれないわ」ポロポロ



慌てず急げ。拍を調節しなさい。態度の急変を悟られないように。

396Mii:2018/11/03(土) 19:42:09 ID:H.lk9j0s
ピーチ「それに、よく考えたら、人質たちが危害を加えられてるわけないじゃない。
     そんなことしたらディメーンにとって、交渉材料を失うだけなんだから。違う?
     あぁ、馬鹿な真似をしちゃったわ」

ディメーン「へえ?ナイフの件はどうなってるの?」

ピーチ「さっきの血はブラフ、どうせただのギミックよ。
     悔しかったら、遺体の一部でも見せてみなさいよ」ハン

ディメーン「ふーん、そんなこと言っちゃう?案外薄情だね、お姫様」

ピーチ「ペテン師の言葉を聞くだけで信じるなんて馬鹿だもの。
     私、現物を見て確かめるまで信じない性質だから」

ディメーン「あ、そう。じゃあ、言われた通り、死体を持ってこようか。待っててね」

ピーチ「……え、ま、まさか。……ううん、どうせハッタリよ!有り得ないっ!」

ディメーン「もう、おそーい!」シュンッ



ピーチ(…うん。こんなところ、かしら。あとは神に祈るのみね。
ロゼッタを信じるなら……ディメーン、『もう、おそい』のよ)

397Mii:2018/11/03(土) 19:44:45 ID:H.lk9j0s
表世界から、異空間へと、世界が、繋がる。


空間が、歪み始める。


――ディメーンのお出ましですか。
チャンスは、たったの、一度きり。



そして……私、ロゼッタは……地に伏すことなく。
止め処なく血を垂れ流しながらも…人形のように生気を失った状態でありながらも…
ナスタシアに支えられ、しっかりと立っている。



『ディメーンの再度の転移の兆候を掴む瞬間まで、一切の感情、発奮を捨て、
HP保持に努めなさい』



ナスタシアの暗示が効きました、と、暗示が切れた瞬間に理解しました。
――ディメーンが現れるまで、あと3秒。

398Mii:2018/11/03(土) 19:46:06 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「距離15、高さ3!」ビシッ

サヤカ「はいっ!」

サヤカの手には、やや小さめのスターピース。



『いい?私が指差しとともに距離と高さをメートルで指示するから、
転んでもいい、くらいの気持ちで、全力、最高速で…投げ切りなさい!』

『うん!一球にぜーんぶ込める!』

399Mii:2018/11/03(土) 19:49:06 ID:H.lk9j0s
サヤカが、投球モーションに入ろうとする。
小さい体ながらも、狙い見極め、無駄の全くないフォームが見られるはず。

『でも、わたしの力じゃ、とても遠い距離まで勢いが出ないよ?』

『ふふ。サヤカの持つスターピースは、あくまで感覚をずらさないため。
敵に当てる必要はないの。……というより、サヤカの投擲が完璧なら、『絶対に当たらない』わ。


――ママの空間把握能力、信じなさい』

400Mii:2018/11/03(土) 19:55:15 ID:H.lk9j0s
ナスタシアが、声高らかに……新たな暗示を。
私の脳は、命令を速やかに書き換える。

ナスタシア「ロゼッタ!この暗示宣言後、
       『1秒間、生命活動維持をカット!サヤカの身体動作の完全相似模写を最優先とせよ!』」

ロゼッタ「ハイ」スッ・・・


サヤカが、脚を振り上げる。
私も、脚を振り上げる。

サヤカが、胸を張り、全身を躍動させ、スターピースに勢いを与える。
私も、胸を張り、全身を躍動させ、大きなスターピースに大きな勢いを与える。

サヤカの拳の中で、スターピースは…加速する。
私の拳の中で、大きなスターピースは…たちまち加速する。


サヤカに全てのモーションをクイックにしてもらって、更に相似拡大効果を上乗せ。
私の体は、サヤカに操られ、鈍い音を立てながらも、傷口を広げつつも、動く、動く。

『無意識に魔法の力を使って』、自分のまるで意図しない方向に、意図しない速さで、
セーブもなしに動くものだから、鎮痛暗示が意味をなさないほどに、痛い、痛い、痛すぎる。
組織の停止、無酸素状態の襲来までも。涙を堪え、歯を食いしばる。
――お手本があれば、動かすことは、できるっ!

ディメーンが現れる、1秒前。
でも、これで、届く――。

401Mii:2018/11/03(土) 19:57:55 ID:H.lk9j0s
――しかし、大きな誤算に気付き、愕然としました。




――このままでは…勢いはあっても、当たらないっ!?




サヤカとの位置関係から、補正した距離情報を手短に伝えましたが、不十分だった…?

体格差を考慮した補正が間違ってしまっていた…?

いえ、サヤカが狙って投げるには高低差がありすぎる不慣れさが原因…?。

モーションを早めてしまったために、リリースポイントが狂った…?

身体動作にガタが来た、あるいは模写が不完全…?



とにかく、このまま投げては…当たらない事だけは、直感で分かってしまいました。
微妙にずれた、そっぽの方向に飛んで行って、終わりでしょう。

402Mii:2018/11/03(土) 19:59:43 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ(……万事休す、ですね)



――まあ、博打は博打なりに、最善は尽くしました。潮時というものでしょうか。
――最後の最後で、結局サヤカを裏切ることになってしまいましたが、許してくれるでしょう。




……なーんて諦めができるほど、人間、できてはいないのです。





なんとしてでもマリオやピーチと合流し、にっくき敵を叩きのめし。
ケガなんてどこへやらと全身完治させ。


また、サヤカと一緒に笑いながらキャッチピースをして。
一緒に綿飴を半分こするのです。







ロゼッタ(……………………わた、あめ)

403Mii:2018/11/03(土) 20:03:17 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「……っ!」キッ

暗示が解けた、直後。スターピースが手元を離れる、直前。
神経を研ぎ澄まし、集中、集中、集中っ!!

生命活動さんは、1回じゃなくて2回お休み。
組織へ注がれようとした全身の魔力を奔流とし、投げる右手に萃(あつ)める。
耐え切れず、手首が腫れ、血を流し、どんどん裂けて行きますが、あとで何とでもなるでしょう。



血飛沫まで巻き込みながら、スターピースの周りが光り、空間が渦を巻く。





ロゼッタ「はあああああああああああぁぁぁーっ!!」




とうとう、私の体から離れた、スターピースは。

ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

自分でも信じられないくらいの高速で、うなりを上げて飛んで行き…
出現したばかりのディメーンの腹部に、しかと、突き刺さったのです。

404Mii:2018/11/03(土) 20:07:38 ID:H.lk9j0s
ディメーン「か、はっ!?」

一条の弾丸に、気付いたころには、もう遅し。


――馬鹿な、何が起きた!

――まずい、空間が、割れていく!?

ボクの行動に、不備などなかった。なのに、どうしてアイツは皮一枚繋がって生きている!?
いや、生きていたところで、このスターピースの勢いはなんだ!?



景色はたちまち、表世界へ。



あの3人は墜落、しかしすぐさまピーチ姫が駆け込んでいく。
確実に助けられ回復を施されるだろう。



ディメーン「何故だ…何故だ!許さない許さない許さないっ!ふざけるな!」

初めて事が上手く運ばなかったことに、煮えたぎる湯のように怒りが込み上がってきた。

405Mii:2018/11/03(土) 20:10:17 ID:H.lk9j0s
ピーチ「ロゼッタ!!やっぱり生きてたのね!」ポロポロ

デイジー「うわーん!」ダキッ



ロゼッタ「ぎゃふ(吐血)」チーン



ピーチ「…って、とんでもない重体じゃない!!
     『みんなげんきになあれ』!『おねがいカムバック』!10連打ァ!!!!」パアアアアアアアアアアア



ロゼッタ「…ふう。なんとか、生き永らえちゃいました」パアアァァァ

ルイージ「びえええええ、よかったよおおおお」

デイジー「顔ぐっちゃぐちゃじゃん、気色悪いよ」グズッ

ルイージ「なんか理不尽だよぉ!」ビェェ




ピーチ「ナスタシアも。お疲れさま、そして本当に…ありがとう」

ナスタシア「ふふ、こちらこそ、意外性の塊の彼女に助けられました。本当に、いい友人をお持ちですね。
       …ああ、やはり両手があると安心します」ホッ

406Mii:2018/11/03(土) 20:15:26 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ママ、ありがとう!うわーん!」ダキツキ

ピーチ「ああ、この子が噂のロゼッタの子供ね。本当に…本当によく、耐え抜いたわ。
     ロゼッタに似たのかしらね」

ピーチ姫が、微笑みます。

ロゼッタ(サヤカが、血濡れではありますが満面の笑み…いえ、涙。ええ、これで一安心。
      さあ…形勢逆転、反撃の狼煙と行きたい所!
      …まあ、私の出る幕はないでしょうが!)グッ

サヤカ「…でも、さっきのボール…じゃなくてスターピース、周りに風を纏って、物凄い速さで飛んで行ったね。
     一体、何をしたの!?わたし、あんなことやってないよ!?」

ロゼッタ「……どうしても、最後の最後でスターピースの軌道がずれることに気付いたのよ。
      だから、体中の魔力を振り絞って、強烈なスピンを掛けながら強引に軌道修正したの。

      回転体は、物理的に回転軸方向を保とうとする復元力が働くから…
      回転軸方向が進行方向に一致すれば、おそらくブレを抑えられると思って。
 
      まあ、体の限界も考えずに行き当たりばったりで試したから、
      腕が雑巾みたいに千切れる寸前までダメージを受けたけどね」

407Mii:2018/11/03(土) 20:24:05 ID:H.lk9j0s
サヤカは、一瞬息を飲み…ますます目を輝かせました。

サヤカ「凄い、凄いよ!ママ!物理?とか、理論は難しすぎて、よくわかんないけど!」ピョンピョン

ロゼッタ「ええ、まさか綿飴機から連想して機転を利かせられるとは。本当によかったわ!」

サヤカ「そうじゃなくて!…あ、えっと、それもそうだけど!



    ママが投げたの、きっと『ジャイロボール』……

    いや、それどころじゃない。『ハイスピンジャイロボール』だよ!」





ロゼッタ「…じゃいろ、ぼーる?」

サヤカ「一流の野球投手でも、投げられるのがほーんの一握りしかいない、すっごく強力な投球法だよっ!
     初速からの減速を極限まで抑えられて、ストレートが物凄く伸びるボールになるの!

     ママはそれをいきなり投げられたんだよ!」キラキラ

ロゼッタ「まあ、まあ!それは喜ばなければならないわね!」

…まあ、ズルをしているのだけれど。せっかくサヤカが飛び上がらんばかりに喜んでいるのだもの、
言わないでおきましょう。

408以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/04(日) 08:20:49 ID:cLCKkdKU
スピン力学SUGEE

409Mii:2018/11/15(木) 22:21:39 ID:ziBygO06
と、そのとき。


ふたたびピリッとした空間のざわめきを感じ取り、慌ててそちらを見やります。
何事か、と不思議がっていたピーチ姫たちも、私に釣られて。



――分かりきってはいましたが、倒し切ったというわけでは…さらさらなさそうですね。
中空にクルクルッ…と空間を割って、ディメーンが現れました。


今度はしっかり防御壁を引っ提げて現れる徹底ぶり…流石に警戒したのでしょう。
苦悶の表情…というよりは、憤怒、激怒の感情がありありと伺えます。
目に入ったもの全て、焼き払って灰にしてしまいたい、といわんばかり。

410Mii:2018/11/15(木) 22:26:11 ID:ziBygO06
ディメーン「ふざけるな…ふざけるなっ!今のボクは最強、無敵なんだ!お前らごときに負けるはずがない!
       …もういい、出し惜しみなどしないでフルパワーを出してやる!後悔しても、遅いからな!」

マリオ(いつものニヤケ節はどこへやら、か。すっかり逆上して隙を作ってくれてるのはいいが…『スーパージャンプ(RPGver.)』!)

ルイージ(かといって、無茶苦茶に暴れられるってのも困るんだよね!『スーパージャンプ(スペマリver.)』だっ!)

マリオとルイージが、それぞれ別々の死角方向からジャンプ攻撃を仕掛けます。
しかし、マリオの強烈な踏みつけも、ルイージの大砲のような叩き上げも、空間転移によって難なく避けられてしまいました。

あの2人ですら、スピードで追いつかないなんて。

あわやぶつかる、というタイミングで、2人はひらりと体をそらし、そのまま見事着地。
拍手喝采の動きですが、警戒しながら戻ってきた本人たちは不満そうです。

マリオ「…やばいな、今ので速度不足だと、もう転移後のまぐれ当たりに賭けるくらいしかないぞ。
    そもそも当たったところで、防御壁を壊せるかもよくわからん。あれがなけりゃ、一撃なんだが」

ピーチ「…こうなったら、ロゼッタ。貴方にも戦ってもらうわよ。いいわね?…デイジー、杖を返してあげて」

デイジー「わかった!はいっ!」

ロゼッタ「…は、はい。出る幕、ありましたか…」

気力的に、かなり限界なのですが……。傷こそ完治していますが体中血だらけで、いざ戦ってやろう…という気概も中々見せられません。
…しかし、緊急事態は未だ続いているので仕方がないでしょう。久しぶりに、杖をしっかりと手にします。
キラリ、と杖が輝きました。よろしくお願いしますね。

411Mii:2018/11/15(木) 22:29:09 ID:ziBygO06
ピーチ「手短にロゼッタの攻撃魔法の威力、効果範囲を教えて。作戦を立てるわ。
     私よりも魔法Lvが高いんだもの、期待しているわよ!」

ロゼッタ「…ええっ!?きゅ、急にそんなこと言われて、も…!」



――ま、まずいです。なんだか、ハードルをかなり高く設定されている気がします。
そんなに大したことはできません。幻滅されそうなのですが…!

ロゼッタ「…………すいません、そういうことなら、ご期待には沿えません。
     ――――実は私、『回復魔法』と『空間魔法』以外は一切使えないんです。
     そもそも、敵と対峙するなんで経験がまるでなかった、もので」

私の声は、尻すぼみ。
耳にしたピーチやマリオは驚天動地。魔法使いとして有り得ない、という顔を思い切り向けてきます。

ピーチ「……はああああああっ!?何よそれ!?」

ロゼッタ「それに加えて…ピーチ姫も薄々気付かれていると思いますが。
      私は最大FPが貧弱なせいで、まるで魔法Lvの高さを活かせない体たらく…本当にすいません」シュン




空間魔法は、FP燃費が唯でさえ凄まじく悪いのに。
行使すること自体は 『簡単』 なのですが…。

412Mii:2018/11/15(木) 22:34:09 ID:ziBygO06
ピーチ「…私も悪かったわ、いきなり実践投入は難しいもんね。気を落とさないでちょうだい。
     …じゃあ、回復はお願いできるかしら?」


…それが、それすらも容易ではないのです、私の場合。


ロゼッタ「……えっと、私の回復魔法はFPを最大値近く消費するので、
      杖が戻ったとはいえ今はちょっと…だいぶ体の枯渇領域に還元してしまいましたし…」ビクビク

ピーチ「どうしてよっ!?回復魔法ってそんなにFP使わないでしょ!?本当に魔法Lv高いの、ロゼッタ!?」

ロゼッタ「す、すいません、全然お役に立てず…」グズッ


――やはり、魔法使いとして未熟者もいいところです、よね。


デイジー「ま、まあまあ落ち着いてよピーチ。ロゼッタ、じゃあどういうことならできる?
      きっと役に立てる場面もあるはずだよ!」

ロゼッタ「…………ディメーンの攻撃を食らいそうなとき、私の空間転移で緊急避難させる、くらいなら」

ピーチ「…よし。じゃあそれだけは頼むわよ。
    でもね、この件が片付いたら、ロゼッタはちょっと魔法の覚え直しね」

ロゼッタ「…はい!そのときはぜひ、ご教授願います!」

――よかった、少しは役に立てて。
でも、ピーチ姫に失望されないよう、精進しなくては。

413Mii:2018/11/15(木) 22:37:02 ID:ziBygO06
ピーチ姫は、私を戦力に考えるのは難しいと捉えたのか、私およびサヤカのことをデイジー姫に任せて戦闘態勢に入りました。
私は私で、サヤカをしっかり庇いつつ、付近の様子を伺い続けます。


デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。ちょっと聞いていい?」


と、そこに。デイジー姫が耳打ちしてきました。


ロゼッタ「はい、なんでしょう?」

デイジー「ロゼッタって、ほうき星を管理する中で、星の表面をいろいろ開拓していったんだよね。
      自分よりずっと大きくて重い物だって沢山あったでしょうに、どうやって動かしたの?
      今の話聞いてると、ロゼッタ1人じゃ何百年もの時間があったとしても無理そうなんだけど…」

ロゼッタ「チコたちのおかげです。私の魔法の杖は少し特殊でして、周囲の星々やチコから少しずつ魔力をおすそ分けしてもらい
      集積することができ、私にそれを還元してくれるのですが…。

      大勢のチコたちが集い、住み着くほうき星は、それ自体が魔力の聖域。
      チコやほうき星から魔力を供給される限り、最大値こそ定まれど、私は繰り返しFPを使用することができます」

デイジー「へえ、でもやっぱり一度に行使できるFPは限られるんだ…」

ロゼッタ「…いえ。本当の本当に一大事、という場合では、何千ものチコたちに集まってもらい、
      直接FPを転送してもらって問題に立ち向かう、ということができなくもありません。
      その場合、限界値を大幅に超えた出力で魔法を繰り出すことができます」

414Mii:2018/11/15(木) 22:40:00 ID:ziBygO06
デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。仮に…仮にだよ?
      FPが使い切れないくらい潤沢にあったとしたら、どのくらいのことができるの?」


ロゼッタ「そうですね…昔話になってしまいますが。
      ほうき星を管理しているとき、何千ものチコたちにFPを借り受けて、一致団結して――。






      このままでは衝突を免れないような直径数百キロの巨大隕石をやり過ごしたことなら、
      三百年くらい前にありますよ。一週間ほど目を覚まさない副作用付ですが」



デイジー姫は、何故かあんぐりと口を開けていましたが…今はどのみち関係がないことでしょう。
ここにはチコたちもいないのですから。

さあ…集中しなければ。
なけなしの勇気を、もう一度振り絞ってみます。

415Mii:2018/11/15(木) 22:44:36 ID:ziBygO06
――ディメーンが、現れました。

右に。左に。上に。前に。後ろに。

肩車をしながら。
高笑いしながら。
リズミカルに踊りながら。
フヨフヨと漂いながら。
木々の陰に隠れながら。
屋根の上に腰掛けながら。



「「「「「さぁ〜て、ボクがどこにいるか、わかるかな〜?」」」」」

推定、百体以上。頭がおかしくなりそうです。




そんな中でもマリオ、そしてクッパは不敵に笑って、腕をポキポキと鳴らせてみせます。

マリオ「ここから本物を探し当てるのはしんどそうだが…とりあえず片づけるか。
    時間稼ぎに付き合う気はない、全体攻撃を駆使して一気に行くぞ」

クッパ「…だな。ディメーンの魔力を削ぎつつ、撃墜数勝負でも洒落こむとするのだ!」

さすが、我らがヒーロー、そしてそのライバル。心強い限りです。

416Mii:2018/11/15(木) 22:47:51 ID:ziBygO06
ピーチ「油断しないでよ、どうせ本体はどこかから不意打ち仕掛けてくるんだから!」

司令塔のピーチ姫が警戒を呼びかける中、マリオとクッパが主体となって薙ぎ払い始めます。

マリオ「ツギツギジャンプ!」バキッ

クッパ「ファイアブレス!」ゴォォォ

マリオ「ウルトラジシーン!」グラグラッ

クッパ「衝撃波なのだっ!」ビシャーン!

ルイージ「た、高い所から手あたり次第ファイアボール撃っておこうっと…」

クッパ「ルイージ、真面目にやれ!スマブラ初心者か!」



それでも分身体は減った傍から増え続け、中々数を減らしてくれません。



マリオ「めんどくさいから『ヤッツケーレ』で体当たりしまくるか」ポコッ ポコッ

クッパ「ううむ、それは真面目…なのか?」

ルイージ「兄さんだけバッジ効果ずるいよー…」

417Mii:2018/11/15(木) 22:49:42 ID:ziBygO06
そのとき、炎が私に目がけて迫ります。

とっさにサヤカを庇いつつ後ろへ…身をそらす必要もなく、横から伸びてきた長い舌に絡めとられました。

ロゼッタ「ありがとうございます! 助かりました!」

ヨッシー「まあ、お安い御用ってことで。デイジーに護衛を任せられたからには守り切って見せますよー。
      後でお菓子の一つでも下さいね」

ロゼッタ「はい、そんなことでいいなら喜んで!……え、デイジー姫に頼まれた?」



どうしたことかと振り返ると、何やらデイジー姫が身振り手振りも交えながらピーチ姫に嘆願中。
策でも浮かんだのでしょうか…?ここからではよく聞き取れません。

418Mii:2018/11/15(木) 22:54:55 ID:ziBygO06
ピーチ「…へえ。大して有効策もないし、それが本当なら、試してみる価値はありそうね。
     わかった、デイジーは別行動を許す。その間はカバーするから」

デイジー「うん!」

ピーチ姫が、おもむろにポケットから電話を取り出し――。

ピーチ「ああ、カメック。急ぎ、クッパ城にて待機中のクッパシップを、残りの積荷そのままで全速力でキノコ王国の外れの公園まで誘導して。
     …え、理由?いいから急いでっ!

     30分以内に着いたら、ケーキの材料費全額こっちで負担してあげる。
     1時間超えたらクッパ城焼き払う!オーケー!?分かったらとっとと動きなさいっ!」

ロゼッタ「い、一体どうしたというので……」



大声の命令にたまらず驚き、口を挟もうとしたところ、これまた突然に待ったが掛かりました。
声の主のナスタシアは、妙に差し迫った様子です。

ナスタシア「ちょっと、待ってください!何をするのか知りませんが、大変なことになりました!
       速やかに場所を移してくださいっ!」

――今度は一体、何が。

419Mii:2018/11/15(木) 22:57:53 ID:ziBygO06
ピーチ姫が、咄嗟に電話を保留しナスタシアに注目します。

ピーチ「ナスタシア、何か感付いたのっ!?」

ナスタシア「本体はどこかに潜んで分身体を作り続けていると勘違いしていましたが、どうも違います!

       分身生成間際のディメーンをマリオが殴り倒してみれば同じく分身体であった、というケースが見られます!
       私が知り得ていた過去の情報からすれば信じられませんが、
       そのくらいの芸当は分身体にもできるようになっている!

       だったら…本体がここにいる必要、ないでしょう!?」

ピーチ「…まさかっ!」


ピーチ姫が、顔を真っ青にします。


ルイージ「どういうこと、兄さんっ!」

マリオ「そうか…こいつらおそらく、全員が分身体だ!本体はとっくに離脱してる!
     そんでもって、アドを取るために、おそらく新たな人質確保に躍起になってるぞ!」

クッパ「お、おい…じゃあ、まさか向かった先は…!?」




――まだまだ往来盛んな、キノコ城、城下っ!

420Mii:2018/11/15(木) 23:02:06 ID:ziBygO06
ピーチ「助かったわナスタシア、全員、城下に向かうわよっ!悪いけどこっちは放置!」

分身体はワラワラ居続けますが、幸い人気はない。
後ろ髪を引かれつつも、全員、ピーチ姫に釣られて駆け出します。
…私はピーチ姫に、サヤカはデイジー姫に速やかに担がれて。

…いやまあ、サヤカをこんなところに取り残すのは論外なのですが、
なんとも恥ずかしい絵ですね。




しかし、ナスタシアの機転もむなしく。
判断の遅れは如何ともし難かったようで。


すこしばかり…遅かったようでした。

421Mii:2018/11/15(木) 23:03:44 ID:ziBygO06
ピーチ「なんて…こと」



既にキノコ城前の広場には、ディメーンの魔法に囚われの身となっている人々が集められ、
ひしめいていたのです。

無傷というわけでもなく、抵抗したのか負傷者、重傷者も多数出てしまっている…なんということでしょう。


その数は、軽く三桁にのぼります。


ディメーン「んっふっふ!これでまた、形勢逆転だねっ!
       いやいや、こーんなお祭りを呑気に開いてくれているなんて、大助かりだよ!」



「姫様!お助け下さい!」

「うわーん、死にたくないよー!」

「このままじゃ、うちの子が死んじゃう!」

「痛い…痛いよう…!」



聞こえてくる悲鳴、鳴き声。慟哭。
ぎりっ、とピーチ姫が唇を噛み、血が滴り落ちました。

422Mii:2018/11/15(木) 23:06:33 ID:ziBygO06
ディメーン「さ〜てと、今度はしくじらないよ、マドモアゼル ピーチ。
       少しでも抵抗すれば、1人ずつ、1人ずつ、あの世に送っていくからね。

       どうあがいても、1人や2人ならともかく、全員を同時に助けることなんて夢のまた夢だしね!
       …いやあ、最初からこうしておけばよかったかな」


ナスタシア「まったく、どうしてそう、無駄に実力を付けているのですか!
       ここまで同時並行で術式展開することなど、とてもできなかったはず!」



ああ、どうしたらよいのでしょう。事態が好転した、などと考えていた過去の私を叱りたい。
思う存分魔法を発揮するディメーンを、ただ呆然と眺めるばかり。





ただ……同じ、空間魔法の使い手として。



ロゼッタ「羨ましい、なあ」


そんな言葉が、口から出てしまいました。

423Mii:2018/11/15(木) 23:09:42 ID:ziBygO06
ピーチ「ロゼッタ、羨ましいってどういうこと?不謹慎よ」

ロゼッタ「…あ、大変申し訳ございません!ですが…
      私も、あれだけ自由に空間魔法を使い倒せたら少しはお役に立てたのに、と思いまして。

      何百年もの間――空間魔法について色々と研究・考察し、頭の中や紙の上ではそれなりの数の空間魔法を
      仕立て上げてきたのですが、FPが少ないばかりにどれもこれも使えずじまいで…
      
      たとえば、ディメーンが今行使している空間魔法も、FPがありさえすれば私にもおそらくできる程度のものです」



私の渇望が耳に入ったのか、ディメーンはケラケラと笑い出しました。

ディメーン「はははっ!頭が狂ったのかな?
       こんな高等な魔法が凡人にできるわけないだろう、マドモアゼル ロゼッタ!」

ピーチ「何よ!どうせ、さっき自慢してた『参考書』とやらの賜物でしょ!
     自分じゃ編み出せもしなかったくせに偉そうに!」



ディメーンが、囚われた1人のキノピオに爆撃を仕掛け、内壁に叩きつけました。
完全に意識が無くなり、流血も。一刻を争う状況です。
たちまちピーチ姫も口をつぐみ、涙を堪えて怒りに震えるしかありませんでした。

424Mii:2018/11/15(木) 23:13:05 ID:ziBygO06
ディメーン「確かに参考書のおかげ…しかし、それを活かせるのは、ボクの実力あってこそ!
       さっき言わなかったっけ?

       というより、常人じゃその凄さ、真意、存在意義にすら絶対に気付けないんだよね!相当に狂気ものの書物だし!」



そう言って、ポン、と古ぼけた一冊の本を異空間から取り出します。



マリオ「狂気もの…?どういうことだ?」

ディメーン「執筆者は相当な切れ者のようでね…まあ、既にそいつを超えているだろうけど。
       どうにも『選ばれた者のみに空間魔法の極意を伝えたい』という想いから、
       カモフラージュを散りばめている。ページが引き千切られていたり、所々黒く塗り潰されていたりね。

       中でも初見で面食らったのが、一見して魔術書とはまるで無縁な…
       フィクション小説の体裁をとっているところさ」

ピーチ「フィクション、小説…!?意味が分からないわ」

ピーチ姫が話を促しつつ、隙を必死に伺います。
それを知ってか知らずか、ディメーンは大層得意そうに続けます。

425Mii:2018/11/15(木) 23:21:27 ID:ziBygO06
ディメーン「そう…表の顔は内気な少女、しかし裏では平和な世界を脅かす悪意に魔法を駆使して人知れず立ち向かう暗躍者。
       時には意中の男性に正体がバレかけたりしてあたふたする、板挟みに遭う複雑な恋愛事情。
       ここまで言うと興味が湧くかもしれないが、傑作なのが文才なんて一切なくて…
       
       いや、わざとか、流石にマジ書きでこれはない。
       そんなこと、ボクが許したとしても宇宙が許してくれないな。
       大昔に、あまりの黒歴史創造に血反吐を吐きながら改悪に改悪を重ねて執筆したに違いない。

       全てが稚拙で素人の書き殴りっぷり。ワンパターンで先が読め過ぎる勧善懲悪ものの展開。
       ボクもうわぁ、とドン引きしながら読み進めたけどね。
       合間合間に超重要な術式のヒントが、数式が散りばめられているのだもの。
       どんなに馬鹿丸出しな書物でも、ボクにとっては聖書だよ」

ピーチ「まるであなたみたいな趣味の悪さね…」







ロゼッタ「……………………ん?」

426Mii:2018/11/15(木) 23:22:57 ID:ziBygO06
ディメーン「そして、これがその代物…
       『星に願いし亜空の魔女 〜おたすけウィッチ、三日月に舞う〜』だね。
       いやあ、タイトルもふざけ過ぎて逆に天才と思わせないかい!?」

ピーチ「星に願いし亜空の魔女……なんて厨二設定なの…!」





ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「……は?」

マリオ「…………ロゼッタ?どしたの?」ユサユサ

427Mii:2018/11/15(木) 23:26:50 ID:ziBygO06
ディメーン「それに、一緒についてたメモ用紙があったんだけどさー。


       『シリーズ累計150万部突破の超大作!書店にて全10巻、好評発売中!
        ① おたすけ☆ウィッチ、その名はロゼりん!
        ② 古の遺跡と風を司りし巫女
        ③ おたすけ☆ウィッチ、三日月に舞う
        ④ 激闘!紅蓮の使者現る
        ⑤ 内気な魔女の恋愛事情
        ⑥ 挫折と涙と、シューティング☆スター!
        ⑦ 星降る夜の舞踏会
        ⑧ スターダスト・ラブソディ
        ⑨ 響け!疾風の協奏曲
        ⑩ おたすけ☆ウィッチと空中庭園!            』


       だってさ。第3巻執筆時点で第10巻までのタイトル付けの皮算用までするなんて、
       素面だとしたら頭のネジが緩んでいないか気になる思考回路だね」

ロゼッタ「えっちょっ待って」ガクガク

ピーチ「…本当にそれ、参考書たりえるの?」

ルイージ「……………………」

428Mii:2018/11/15(木) 23:31:01 ID:ziBygO06
ディメーン「性的知識もないのに官能めいたことを無理やり書こうとしてさ。
       こそあど言葉で誤魔化すわ、ますます稚拙さが露わになるわ、急に場面が飛んで逃げるわ、
       いつの間にか距離が縮まってるわ、そのくせ強引に三角関係とか描写しようと空回りするわ…

       知的なボクですら…いやボクだからこそ顔が強張る展開が目白押しだったよ、うんうん」

ロゼッタ「ゴフッ(吐血)」

ピーチ「うわあ、それはないわー…」

クッパ「…………………………………………」

429Mii:2018/11/15(木) 23:35:31 ID:ziBygO06
ディメーン「極めつけにさ、隕石が落ちてきたときに、フィクションにありがちなご都合展開で回避するんだけど、
       その時の主人公が

        『この顛末がまぐれではないかって?違うわ、私は真に驚くべき魔法を編纂して見せた。
        でも、ここで語ることはできないわ。だって、私の人生という限られた日記に記すには、
        余白が狭すぎるんだもの(キリッ)』

         って独り言で締めくくるんだよ。もう大うけで大うけで。――あー、語れてすっきりした。
         少しは誰かに共感して貰いたかったんでね。

         こんな内容のくせして、空間魔法の極意を散りばめた一冊なんだからamazing!」

ロゼッタ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

ピーチ「さっきからうるさいわよロゼッタ!?ってか、なんで吐血してるの!?」

マリオ「うわあ」

ルイージ「うわあ」

クッパ「うわあ」

430Mii:2018/11/15(木) 23:37:31 ID:ziBygO06
マリオ「…なあディメーン、その本、どうやって入手した?」

ディメーン「宇宙空間に漂っていたところを偶然拾ったよ?」

マリオ「…ロゼッタ、負の遺産であることに気付いてちゃんと焼却処分した?」

ロゼッタ「ちゃんと原本除いてブラックホールに放り込みましたよっ!!」グズッ

マリオ「きっと奇跡的にホワイトホールから無傷で出てきちゃったんだな……
     ってか原本は現存する上に複製までしたのかよ」

ピーチ「…え?」

ルイージ「」

クッパ「」

ロゼッタ「……すいません、今のなしで」

ディメーン「???」

ピーチ「ロゼッタ……………………あなた、まさか」


ロゼッタ「そんな目で私を見ないでくださいぃーーーーーーっ!!」

431Mii:2018/11/15(木) 23:41:06 ID:ziBygO06
ロゼッタ「死にたいです…いっそ殺してください…」orz

サヤカ「私はママに生きていてほしいよ!?死にたいなんて言わないで!」

茶化す気持ちなど全くないサヤカだけが、唯一の救い……っ!




サヤカ「だから、頑張って!ロゼりん!」




ドグシャァアアアア!!
立ち上がろうとして言葉の刃に切り裂かれ、地に倒れ伏しました。

マリオ「大変だ!ロゼりんがまた血を吐いてるっ!」

ルイージ「頑張れロゼりん!負けるなロゼりん!」

ピーチ「わ、私は信じてるからね!ろ、ロゼりんは強い子だって……!」

クッパ「ロゼりんロゼりんしつこいぞ!いい加減にしてやれ!全く酷い奴らだ、なあロゼりん」

ロゼッタ「」

ナスタシア「…が、頑張って、ください?」アセ

ロゼッタは めのまえが まっくらに なった▼

432以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/16(金) 04:54:20 ID:gNkIg74s
ロゼりんかわいそう

433以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/18(日) 06:08:59 ID:xpY81W4Q
やっぱロゼ作だったか…と思ったら中身がひどかった

434Mii:2018/11/21(水) 06:03:56 ID:Jyf9E9g2
公開処刑されたところで…黒い影が広場を覆います。
虚ろな目で上空を見やると…プロペラが轟音を立てて高速で向かってくる塊ひとつ。



カメック「ピーチ姫―!…クッパ様!?一体どういう!
     ええい、とりあえず急遽の行き先変更もこなして、クッパシップ持ってきましたよー!」

ピーチ「来た…っ!話に興味がある振りをして時間稼ぎした甲斐があったわ!」

ロゼッタ「なんだ、時間稼ぎだったのですか…って絶対違いますよねっ!
     でも怖いのでそういうことにしておいてくださいオネガイシマス!」

ピーチ「デイジー、さっさと降りてきなさいっ!!」

デイジー「もう飛び降りてまーす!!」シュバッ



いつの間に、飛行船と合流していたのでしょうか。
デイジー姫を見かけないと思っていたら、飛行船に用事があったみたいです。

435Mii:2018/11/21(水) 06:06:09 ID:Jyf9E9g2
数十メートルの高さを、フラワーパラソルを使いながらほどよい速度で降下してきた、デイジー姫。
そのまま、なんと私に抱き着いて来ました。え?え?え?

というより、なんでしょう。すごく、甘ったるい匂いがします。
見れば…デイジー姫の服が、あちこち…べっとり薄茶色の液体でべた付いています。

ロゼッタ「一体、何をしてきたのですか?凄まじく甘い香りがするのですが…」

デイジー「ロゼッタ、話は後!背中、向けて!!ちょっと…気張りなさいよっ!」

な、なんだかよく分からないうちに、体を反転させられます。
私の視線の先には、いまいちよくわからず、手を下しかねているディメーンの姿。




と、その時です。
私の背中の中央が、ポッと熱くなりました。





デイジー「おっちょこちょいで突っ走りすぎることもある、迷惑かけてばっかり、
      だけど………………だけどっ!」

背中に手を置かれているのですか――そう、思った矢先――!

436Mii:2018/11/21(水) 06:08:27 ID:Jyf9E9g2
次の、瞬間。



デイジー「――――サラサランドの花の紋章を、舐めるなぁーっ!!
      

       『花々の祝福《フラワーギフト》』、発動っ!!」ゴオオォォォ!



ロゼッタ「……っ!」

背中から感じる、強烈な光、光、光――!!そして、燃え盛るような激しい熱。



何が、起こっているのか。
ただただ、背中が、熱い。熱い。突然のことに目を見開く。
ドレスの背中の部分が焼け焦げ、手のひら分の円形に背中が露出する感触。



しかし、最高に……心地よい。
ぽかぽかとした春の日差しの真っただ中にいるような感覚。
自然と目を瞑り、身を委ねていく――。

437Mii:2018/11/21(水) 06:10:06 ID:Jyf9E9g2
ピーチ「どう、デイジー!?作戦の方は上々!?」

FP 9999/9999
デイジー「うぷっ…ハニーシロップ!メイプルシロップ!!ローヤルゼリーっ!!
      吐きかける直前まで、材料余りを腹に収めたっての!
      確実にFP満タンになってるわ!細工は流々!仕上げを御覧じろってね!

      
      ――――持ってけ、ドロボーっ!!!」ピカァァーーーーーッ!



FP 64/128
ロゼッタ「……………!」パアア



FP 【1000】 / 128  デンッ!
ロゼッタ「……力が………」パアアアア



FP【3000】 / 128 デデンッ!
ロゼッタ「ああ――」




FP【6000】 / 128
ロゼッタ「……力が、湧いて、きます――!」ゴゴゴゴゴゴ・・・!

438Mii:2018/11/21(水) 06:12:06 ID:Jyf9E9g2
薄目を開けてみれば、ディメーンは、あっけに取られているよう。
…いえ、ようやく我に返って、人質を攻撃する素振りで牽制を掛けてきました。

しかし、相当動転しているのが幸い。
どのみちデイジー姫の大魔法は中断できないようなので、ディメーンの提示したルールに従うならば
人質の命を奪われてもおかしくなかったのですが。

あくまで『泣き叫ばせるような負傷を与えられる』に留まり、ぎりぎり犠牲者を出さずに済みました。
…もちろん、負傷者当人からしてみればどちらにせよたまったものではないでしょうが。





デイジー姫が魔法の行使を終えたらしく、背中の感触が弱まっていき…そして、無くなります。
そのまま、ぺたんと座り込んでしまったデイジー姫。



ロゼッタ「………………………」



私は…俯いたまま、微動だにしません。

439Mii:2018/11/21(水) 06:13:35 ID:Jyf9E9g2
デイジー「…………ハァ、ハァ……………………ロゼッタ!?」


おそらく、FPを注ぎ過ぎて、異常をきたしているのではないかという心配があるようですが――
その心配には、及びません。



穏やかに、ゆっくりと――顔を上げていき…

ロゼッタ「…………デイジー、姫」

FP 0 /9999
デイジー「……う、うん。ロゼッタ、なに?」





FP 【10063】 / 128
ロゼッタ「―――――感謝、致しますっ!貴方に最大級の称賛と祝福を!」ゴオオオオオオォォォッ!!




魔力開放。

私の体は、実体化して溢れだす青色の魔力に幾重にも包まれ、勝利を確信させたのです。

440Mii:2018/11/21(水) 06:15:35 ID:Jyf9E9g2
マリオ「……なんだ、一体」ポカーン



マリオですら、この超常現象に唖然としています。
私も、あまり詳しいことは理解できていないのですが。この魔力の衣を纏った状態の私…
自称「おたすけウィッチ」状態は、体質が最高に「空間魔法向き」になっているようなのです。
ちょっとやそっとでは負けません!



ディメーン「…ほう、これは。なるほど、キミがこの戦局のジョーカー足り得たということだね〜」

敵は、好敵手を見つけたとばかりに微笑んでいますが…
あいにく、交戦は既に始まっているのです。

まずは、万が一にも犠牲者を出さないためにも…っ!
空間魔法より先んじて――回復魔法をっ!



ロゼッタ「Starlit Wish《星に願いを》――!」


杖を一振り。優雅に華麗に、されど控えめに美しく。

441Mii:2018/11/21(水) 06:18:51 ID:Jyf9E9g2
FP 【9943】/128 ガクンッ
ロゼッタ「これで、どうしょうか…!」

ディメーン「あっはは、なんだか猛烈にFPを消費してない?腕が悪いんじゃないの?
       回復魔法ってせいぜいFPを10消費する程度だろ?」



パアアアアアァァァ!!
ロゼッタの 願いが 叶った!


ロゼッタ(EX)のHPが 50 %回復した!
サヤカのHPが50%回復した!
マリオのHPが50 %回復した!
ルイージのHPが50%回復した!
ピーチのHPが50%回復した!
クッパのHPが50%回復した!
デイジーのHPが50%回復した!
ヨッシーのHPが50%回復した!
ナスタシアのHPが50%回復した!

マリオ「おお、ダメージがすっかりなくなったぞ!」ブンブン!

ピーチ「ほ、ほんとだわ!」

442Mii:2018/11/21(水) 06:20:50 ID:Jyf9E9g2
ディメーン「……ぐっ、な、中々に厄介な回復力じゃないか。
       まあ、消費FPに見合う強さはあるといったところかな」


キノピオ1「ロゼッタ姫―!そんな奴に負けないでください!私はまだまだ大丈夫であります!」

障壁貫通!キノピオ1のHPが50%回復した!



ディメーン「……ん?」




障壁貫通!キノピオ42人のHPがそれぞれ50%回復した!
障壁貫通!商売人197人のHPがそれぞれ50%回復した!
障壁貫通!観光客2961人のHPがそれぞれ50%回復した!
障壁貫通!通行人1105人のHPがそれぞれ50%回復した!
障壁貫通!警備員360人のHPがそれぞれ50%回復した!
回復領域はまだまだ広がっていく!

ディメーン「えっ」

ピーチ「えっ」

デイジー「えっ」

443Mii:2018/11/21(水) 06:22:29 ID:Jyf9E9g2
キノコ王国の住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
クッパ帝国の戦闘員全員のHPがそれぞれ50%回復した!
サラサ・ランドの住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
マシュマロ王国の住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
マメーリア王国の住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
ワッフル王国の住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
ヨースター島の島民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
ドルピック島の島民全員のHPがそれぞれ50%回復した!
草原の国と砂漠の国と海の国と巨大の国と空の国と氷の国と土管の国の
住民全員のHPがそれぞれ50%回復した!

ディメーン「」

ピーチ「ファッ!?」

デイジー「ファッ!?…おっそろしいログが頭の中に流れ込んできたんだけど!?」

444Mii:2018/11/21(水) 06:24:28 ID:Jyf9E9g2
マリオ「…………!」ボウゼン

マリオ「お、おいクッパ。あれ、見えるか?」

クッパ「あ、ああ……なんじゃ、こりゃ」

ピーチ「な、なに2人して上を見上げてるのよっ!?」

マリオ「ああ…さすがのピーチも、『説明画面』を見るには実力が足りないかー」

ピーチ「なんのことよ!」

マリオ「あー…今、ちょっと効果説明が浮かんでるんだけどな?


      『星に願いを』 回復系  スキルランク:S++  基本消費FP:120
      自分が明確に『敵』と認識した対象を除き、効果範囲内全員のHPを50%回復させる。

      効果範囲:   自分を中心とした “半 球 全 体(星表面の50%)”



                     ってあるんだが」

ピーチ「はああああぁぁ!!!!!??」

ロゼッタ「そのかわり消費FPがやたら大きいのが問題になるのですが…」

ピーチ「そういう次元じゃないわよ!?」

445Mii:2018/11/21(水) 06:26:55 ID:Jyf9E9g2
ロゼッタ「…さて。憂いが無くなったところで…第二楽章で一気に畳みかけます。
     さあ、華麗に踊りましょう……」


ディメーンが仕掛ける前に、こちらから仕掛けますっ!

目を閉じ、深く息を吸い、両手を大きく広げて…さあ!



ロゼッタ「我、この空間を制する者なり――



          空中庭園《スカイガーデン》っ――――!!  」



刹那。
辺りの風がたちまち止み、世界は静寂に包まれる。
制空権は、まさに私の手の中に…転がり込んできました。

446Mii:2018/11/21(水) 06:29:53 ID:Jyf9E9g2
ディメーンは、防御壁を何重にも張ったままあたりを慎重に慎重に伺った後…
どうしたことか、たちまち大笑い。

ディメーン「くくく、ま、まさか風を止めるだけっていうのが渾身の大技だって?
       心配して損したよ、これがなんになるというんd」

別に、今の私が完全無敵、というわけではありません。
仮にマリオやクッパと対峙すれば、あっさり負けることでしょう。

…しかし。非常に運のいいことに。
ディメーンに関してだけは…私は、無敵になれるのです。

大笑いを遮って、パチン、と手を1回叩きます。
ええ、それだけ。




キノコ王国に スカイガーデンが 展開されている!▼  シィーン・・・!

下位の空間魔法は 全て無効化され 再展開もできない!▼
ディメーンの 隔離壁と 防御壁は きれいさっぱり なくなった!▼ シュウウウウウ・・・
ディメーンが 所有している 異空間は 存在を 許されなくなった!▼ パリーン!

ディメーン「…は?…は?………はあああああ!?」

FP【7943】/ 128 ガクーン!
ロゼッタ「…さあ、これにてチェックメイト、です」

そう宣告しながら、いまだ体を包み込む青い衣越しにディメーンに杖を向ける…!

447Mii:2018/11/21(水) 06:32:51 ID:Jyf9E9g2
回復で体力を持ち直したうえに、隔離壁から開放された人々が、喜びの声を上げてこちらに駆け込んできます。
ええ、もう心配はありませんっ!

さらに。ドンガラガッシャン、と音を立てて。
あちこちの空間が割れ、ポタポタ落ちてくる影。

ロゼッタ「なるほど、そういうことでしたか…ディメーン」

ディメーン「なん…だと…!」ワナワナ

ルイージ「え?え?どうしてディメーンが何体も降ってくるのさ!?分身体!?」

ロゼッタ「いえ。…これが、前回の復活の絡繰りですよ。

      ディメーンはそもそも、『人数制限がありながらも本体が複数いる、ストックしておける』存在のようですね。
      分身体を繰り出す場面を見せることで、あたかも本体は1体、と思わせていた。

      もし本体が倒された場合は、記憶を引き継ぎつつ次の本体が稼働し始める、という具合でしょうか。
      ――まあ、みんなまとめて倒してしまえば、一件落着ということですね」

448Mii:2018/11/21(水) 06:35:22 ID:Jyf9E9g2
ディメーン「おのれぇーっ!!」バッ

ディメーンが、怒りに我を忘れて攻撃を仕掛けようとしますが…。


Error!
マスター権限がないため空間魔法を展開できません!

ディメーン「…っ!」

Error!
マスター権限がないため空間魔法を展開できません!
Error!
マスター権限がないため空間魔法を展開できません!
Error!
マスター権限がないため空間魔法を展開できません!


スカイガーデンのおかげで存在をばらされた本体たちまで、悪あがき。
しかし、一切意味など、ないのです!


ロゼッタ「そんなに空間魔法を使いたいなら……
      代わりに使って差し上げます!」

一辺50 メートルはあろうかという立方体状に、隔離壁をお返しっ!
一網打尽にして閉じ込めてしまいます。
こんな大きさですが、基礎の基礎なので、杖はやはりひと振りで大丈夫。

449Mii:2018/11/21(水) 06:37:34 ID:Jyf9E9g2
マリオ「おおおおっ!!もう一息じゃないか!頑張れ!」

クッパ「…ちょっと待て、空間魔法を使えないディメーンなど、唯のゴミだろ。
    壁をどかせて普通に攻撃するだけでフィナーレではないのか?」

ロゼッタ「いえ。この者たちは滅しても構わないのでしょう?
      ならば、私が引導を渡してやるのが筋という物」ジッ

ピーチ(あ、何気に黒歴史暴露に対して相当キレてる)

デイジー「で、でもロゼッタって攻撃魔法、使えないんでしょう?」

ロゼッタ「………………………………」

ピーチ「…ロゼッタ?」



すうぅ、ととつぜん深呼吸。胸に手を添え、息を整えて。

ロゼッタ「……ちょっと、お話をさせてください。
     恥ずかしいですが、聞いてもらいたいことなのです。




          ――転章、『空間』――」

450Mii:2018/11/21(水) 06:39:29 ID:Jyf9E9g2
――女の子が「ずっとチコたちのそばにいよう、ママになってあげよう」と決意してから、
しばらくたったある日のこと。

日課の星うらないで「たいへんなことが起こる」という結果が出てしまい、
女の子は不安でしかたがありませんでした。


「何が起こってしまうのかしら。」


ゆううつそうに夜空をながめていると、とつぜん、空間に裂け目ができ、
そこから4メートルは超すかという、四つ足の大きな体が姿を現しました。
自分ではとても敵いそうにないくらい、強そうです。

でも、現れたそばから、体が大きくふらついています。

451Mii:2018/11/21(水) 06:41:01 ID:Jyf9E9g2
「もしかして、ケガをしているのかしら。ちょっとこわいけれど、回復してあげなくっちゃ!」



しかし、その生き物は、近づいた女の子を敵と判断し、すかさず切り裂いたのです。



弱っていても、力の差は歴然。
女の子は、たちまち倒れてしまいました。
それでも、相手のケガを治してあげたくて。

必死に止めるチコたちの言うことも聞かず、ゆっくりと、また、その生き物に近づきます。

「だ、だいじょうぶ。あなたのケガを、治せるなら治したいだけ、だから」

チコたちにチカラを分けてもらいながら、女の子は傷付いたまま回復を続けます。
今度は、切り裂かれたり、突き飛ばされたりすることは、ありませんでした。

452Mii:2018/11/21(水) 06:43:27 ID:Jyf9E9g2
いつ、眠ってしまったのでしょうか。
目を覚ますと、さっき回復させた生き物が、じぃっと女の子を見つめていました。

「ようやく、目覚めたのか。」

女の子は、驚いて立ち上がりました。

「あなた、会話ができるのね。それともテレパシーかしら。」

「なぜ、余計なことをした。お前がやったことは、ほとんど意味がないことだ。
 放っておいて、勝手に回復した分の方が、はるかに多いぞ。」

「じゃあ、ほんのちょっとは意味があったってことね。それなら、ちっとも後悔はないわ。
それに、あなた本当は二足で動けるのね。さっきは四つ足だったのに。
きっと、相当弱っていたんじゃない?

それと、あなたが私を回復してくれたのかしら。だったら…ありがとう。」

そう、小さく笑うと、生き物は一瞬固まった後、バツの悪そうな顔をしました。
かんちがいで攻撃してしまった、申し訳のなさもあるみたい。

453Mii:2018/11/21(水) 06:45:25 ID:Jyf9E9g2
と、そこに。
1人のチコが、あわてた様子でやってきました。



「ママ!たいへんだよ!おっきな隕石が、近づいて来てる!このままだと、ぶつかっちゃうよ!」

「それは、たいへん!」



てっきり、この生き物との遭遇が「たいへんなこと」とばかり思っていたのに。
顔を真っ青にして、女の子は言われた方向を見やります。

大きい、大きすぎる球体が、確かにせまってきています。
昨日までは、全然見当たらなかったのに。ものすごい速さです。

ほうき星にぶつかってしまったら、一体どうなるのでしょう。



どうしようもなく、立ちすくんでいたところに、先ほどの生き物が一歩前に歩み寄りました。

「助けてもらった借りもある。ここは、私に任せなさい。」

「駄目よ。どうするのか知らないけれど、あんなに大きい物、たとえ強いチカラで砕いたとしても、
数えきれない破片が降り注ぐだけだわ!」

454Mii:2018/11/21(水) 06:47:07 ID:Jyf9E9g2
しかし、その生き物は余裕しゃくしゃくで隕石に立ち向かったと思うと…
腕を、たったのひと振り。

紫色の鋭い衝撃波が、ものすごい速さで飛んで行き…隕石に当たってみれば…

まばゆい光とともに、隕石をどこかへと消し去ってしまったのです。



「すごい!すごいわ!何をやったの!?」

「ふん。空間ごと、隕石を切り裂いてやっただけだ。私にとっては朝飯前である」

「……!きっとあなたは、神さまか何かなのね!
 お願いします、今の魔法、教えてください!
 また、いつ隕石が落っこちてくるかわからないんだもの。」

455Mii:2018/11/21(水) 06:48:32 ID:Jyf9E9g2
神さまは、軽く鼻で笑いました。

「お前には、1000年掛かっても使いこなせまい。
 空間をつかさどる、想像を絶する難しさの魔法だからな。」

「だったら、私なら100年あれば、きっとできるわ。
 だって、私、空間魔法は得意なんだもの。」

「そんなに言うなら、駄目もとで、使う所を存分に見せてやろう。100年後が楽しみだ。」



神さまは、全然期待していなさそうでしたが、丸1日女の子に付き合って、
魔法をあちこちの空間に向けて使って見せた後、どこかへと去っていきました。

456Mii:2018/11/21(水) 06:49:45 ID:Jyf9E9g2
5年後。
神さまは、暇だったのか、ほうき星に様子を伺いにきてみました。


女の子はすこし成長していましたが、『その魔法』は失敗してばかり。
いえ、形になる予兆すらみられません。
当然だ、とため息をつきました。



10年後。
再び、神さまはやってきました。

女の子は、あいかわらず特訓を欠かさないようでしたが、
得られるものは特になかったようでした。

「もう、やめたらどうだ。力の差がありすぎる。同じように真似しようとしても、
できるわけがないのである」

多少冷たい言い方になってしまいましたが、神さまはそう諭しました。



「…そうよね。そんなこと、できっこないのよ」

女の子は、力なく肩を落としました。

457Mii:2018/11/21(水) 06:51:24 ID:Jyf9E9g2
100年後。

みたび、神さまはやってきました。
今度は、特訓のほどを見に来たわけではありません。
なんと、隕石がまたもや降ってくることを察知して、助けてやろうとしたのです。
…それだけのはずでした。



ところが、神さまは驚きました。



必死の形相をした女の子のまわりに、数えきれないチコが群がり、
同じく必死に女の子に力を送っています。

そして、女の子が杖をひと振り。

すると、ほうき星全体が、はるか上空含めて、女の子の制する空間となったのです。


女の子は、杖をふた振り。


前回ほどではないとはいえ、ほうき星よりはるかに大きい隕石は、
さらにおおきい『空間』に包まれました。

458Mii:2018/11/21(水) 06:52:53 ID:Jyf9E9g2
女の子が…杖をみ振り。



女の子の頭上に、バチバチと、目がつぶれそうなほど輝く光の剣が作られていきます。
その大きさは、2メートル…5メートル…10メートルを超えました。



そして、最後に。




女の子は、杖を持っていない方の手で剣を握り、杖に見立てて、えいやっと振り下ろしました。
魔法で動かしているらしく、剣は滑らかに振り下ろされました。



剣の先から出た衝撃波は、かつて神さまが女の子に見せたものにそっくりでした。
その衝撃波は、隕石を包む空間ごと、隕石を消し去ってのけたのです。



チコたちが大喜びする中、女の子は力を使いすぎて、バタリと倒れてしまいました。

459Mii:2018/11/21(水) 06:54:52 ID:Jyf9E9g2
女の子が目を覚ましたのは、七晩過ぎたときでした。

女の子は神さまに気付くなり、興奮冷めやらんようすで話しました。

「私には、神さまみたいに一瞬で隕石を消すことはできなかったわ。
どうやっても、力がなさすぎるもの。

でも、いったん自分の制御する空間で切り取ってから、その空間ごと崩壊させるっていう手順を踏めば、
なんとかなることがわかったの!」


神さまは、なんともいえない気持ちになりました。

460Mii:2018/11/21(水) 06:56:18 ID:Jyf9E9g2
去り際に、神さまは言いました。

「大したものだ。手間は違っても、お前のやったことは私と同じ。
…そのチカラ、弱きを助け、悪を挫くために使う限り、
私の魔法と同じ魔法名を使うことを許そう」



魔法使いにとって、上級の者から魔法名を借り受けられることはとてつもない名誉です。

女の子は、飛び上がらんばかりに喜びました。

そして、より一層、空間魔法を極めていこうと、心に誓ったのです。

461Mii:2018/11/21(水) 06:58:16 ID:Jyf9E9g2
私は、『絵本』の物語を語り終わる。

そしてその頃には。
物語と同じく、光り輝く巨大な剣が、左手にしっかり、握り締められている――!



ディメーンたちに、私の物語が聴こえたかどうかは定かではありませんが。
私の作った空間から逃げられない彼らは、今度こそ本当に危険であることを理解し、
叫びながら遮二無二暴れようとしています。


剣を天空に向けたまま、すこし、後ろを、振り向く。


マリオもピーチも、固唾をのんで見守ってくれているよう。

ルイージはただひたすら、あわわわわ、と驚いています。

ヨッシーは、勝ちを確信できたのかガッツポーズ。

クッパは、むすっと腕組みをした状態で…静かに、頷く。

そして、微笑んだデイジー姫とナスタシアに促されて――
サヤカが、満面の笑顔で叫びました。

サヤカ「ママ、いっけー!!」

462Mii:2018/11/21(水) 07:00:17 ID:Jyf9E9g2
――「では、私の魔法の、魔法名を伝えようか。その名は…」
――「……っ、その名は…!」




ロゼッタ(一気に、空間に、振り下ろすッ!!!!)






ロゼッタ「    Spacial Rend《亜 空 切 断》っ!!    」






衝撃波が、ディメーンたちを閉じ込めた檻に、当たる。
空間は、一気に、ディメーンを逃がすことなく、轟音とともに収縮崩壊し始めます。

ディメーン「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

ディメーンの断末魔が、聞こえた気がしました。
そして……空間が、砂粒よりも小さくなった後。
パァン、と小さくはじけて、光の粒とともに消えていきました。

同じく消えゆく光の剣を満足そうに眺めて…私は、意識を落としたのです。

463以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/22(木) 00:23:58 ID:6BzF9llQ
まさかのクロスオーバー

464以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/24(土) 21:38:11 ID:qvTWrikU
神様ってティアルガかな?

465以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/25(日) 08:52:21 ID:.AnKWnx6
「デ」ィアルガじゃなくてパルキアでは

466以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/27(火) 17:32:35 ID:3KAW6mBc
スマブラとかいう異世界の英傑勢揃いの超人レスリングの新作に参戦決まったからなぁロゼッタ…

467Mii:2018/11/30(金) 06:14:51 ID:ccoR/GVA
――――ぽたり。ぽたり。



閉じていた目を、すっと、開く。
何もない空間、何も見えない空間に、かすかに水滴の落ちるような音が聞こえる。

…ここは、夢の中でしょうか。きっとそうに違いありません。
杖はどこかに行ってしまいましたが、フヨフヨと浮遊感があるのですから。
ドレスに付いていたはずの赤色も、見る影もありませんし。


…あ、ちなみに。
おたすけウィッチ状態はとっくに解除されています。
まあ、あの超大技にはFPを 5000 くらい消費するので
これだけでは夢の中かどうかは判断できないんですがね。
自分が締めたばっかりにFPの無駄極まりない?き、聞こえません聞こえません。

キョロキョロと周りを見やっても、暗い空間がただただ広がるばかり。
夢なら、もう少し明るくて楽しいものが好みなのですが。

468Mii:2018/11/30(金) 06:16:10 ID:ccoR/GVA
そう思っていたら、急に、周りの景色が様変わりして、色鮮やかになりました。


ロゼッタ(あ……とても澄んだ空がどこまでも…)



遠くに見える、いくつもの浮遊島。
風そよぎ、思わず背伸びしたくなるような秘境の地。
いい演出ではないですか!


ところが。
体の自由が、急に利かなくなりました。夢だからでしょうか?
意思に反して、勝手に視線を足元に向けてしまいます。

そして、どこからともなく、誰かがすすり泣く声が聞こえてきます。
こんな最高の気分を味わえないなんて、一体どなたなのでしょう?

469Mii:2018/11/30(金) 06:17:30 ID:ccoR/GVA
ぽたり。ぽたり。



ロゼッタ(…………ん?何か、滴が足元に?)



そういえば…目元に違和感があるような…。



ロゼッタ「……ひぐっ、ひぐっ!死にたくない、死にたくありません…っ!誰か、助けてぇ……!!」

ロゼッタ(……………………私ですか!?)



これは驚きました。自分が泣いている夢など、見たくもなんともないですが。

状況を理解すると、たしかに「私」が泣いていることが知覚できます。
理由はさっぱりわかりません。…まあ、夢の出来事に因果を求めるのはナンセンスかもしれませんが。
あと、当然ながら私はちっとも悲しくありません。ややこしいですね。

470Mii:2018/11/30(金) 06:20:45 ID:ccoR/GVA
夢は、醒めることなく、まだまだ途切れず続きます。



ロゼッタ「マリオが私を助けに来る、助けに来ない、来る、来ない…」



死んだ目になっているのでしょうか、抑揚のない、蚊の鳴くような声で呟きながら、花占いを始めました。
助けとかなんとか、よくわかりませんが、「来ない」で決着するたびに絶望度が上がったような顔の強張り方をして、
嗚咽を漏らしつつ、次の花に移ります。次の花へ、また次の花へ…。

ロゼッタ(いやいや、ちょっと待ってくださいよ私!ここに咲き誇ってる花、同じ花ばっかりのせいで
      どれもこれも花びらが偶数枚しかないんですけど!気付きなさいよ!)



自分の体の中にいて、自分の周りを冷静に観察できるのに。
行動だけが自分の思うようにいかない。もどかしいったらありません。



ロゼッタ「…………はは、駄目、ですかあ」ポロポロ



ロゼッタ(なんと、結局何時間もかけて、確認できる限り全ての花びらをちぎってしまいました。
     暇人ですね!というより見ている私の身にもなってくださいよ、クタクタなんですけどっ!
     ほら、ちぎられた花びらも、風でどこかに飛んで行って…………)

471Mii:2018/11/30(金) 06:23:22 ID:ccoR/GVA
視線が、「足場」の外へ、下へと向けられます。

ロゼッタ(……!?ひっ!な、なんですか、ここ!?)



奈落の、底。いえ、景色的には青い青い空間が広がっているのですが、とにかく地表が見えません。


これは、落ちたら一巻の終わりでしょう。なるほど、どうあがいても生き延びる手立てが探し当てられずに、
絶望していたということですか。

「ロゼッタ」は、何分間くらい涙を流して放心していたでしょうか…おもむろにゴシゴシと涙をぬぐいました。
涙の跡は、きっとくっきり残ったまま。

そのまま空元気全開で、明るい声で叫び始めます。



ロゼッタ「……なーんて、ね。大丈夫です、早々に絶望して飛び降り自殺するなんてことをせず、
      何日でも何週間でも足場にへばり付いて、齧りついて…待って、待って、待ち続ければ!
     絶対に、マリオやピーチ姫が助けにきてくれるはずですっ!

      あと数日もすれば、マリオたちがほうき星に到着して事情を把握します!
      きっと即座に、このコースのスタート地点へのスターリングに飛び込み、
      『待たせたな』と声をかけてくれるに…そうに違いありません!

      他力本願ですが…彼らを信じて待ち続けましょう!そうすれば、私は100%助かるのですからっ!」

472Mii:2018/11/30(金) 06:25:18 ID:ccoR/GVA
間違いなく、自分に言い聞かせている。
確かに、彼らならこんな私をいつまでも放置はしないでしょう。
じきに助けに駆けつけてくれるはず。

最後の最後で、頭を冷やすことができたようで…最悪の決断をしなかったようで何よりです。



ロゼッタ(よかった。いくら夢だからといって、
      流石に自分が死ぬところは見たくありませんよ、絶対に。ふふ)



――――しかし、この状況。どこかで、マリオやピーチ姫に聞かせてもらったことが、
あるようなないような…。


「私」は空元気のまま、すっくとおもむろに立ちあがって、



ロゼッタ「エイエイ、オーッ!」



と拳を突き上げる。柄にない振る舞いをしてのけます。

ロゼッタ(私らしくないですが…中々カッコいいじゃ、ないですか)

473Mii:2018/11/30(金) 06:26:55 ID:ccoR/GVA
…ええ。本当に、本当に私にとって、柄にない振る舞いでした。



その結果。



ロゼッタ「あっ、急に立って立ち眩み」フラッ

ビュゥウウウウウ!!

ロゼッタ「あ、しまっ…」ヨロッ ツルッ

風にも煽られ、足場から足を滑らせました、まる。



ロゼッタ()

ロゼッタ()

ロゼッタ(ええええええええええええええ!?超絶にカッコ悪いですよぉ!?
      超低体力の癖にこんな足場の端で急に立ち上がらないでくださいよ馬鹿ぁっ!?
      
      落ちてる、落ちてるんですけどーっ!?)


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