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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

1Mii:2018/08/04(土) 23:26:40 ID:Mx6gHZLQ
マリオ「隠しキャラ、もとい隠しゲストとして任天堂から依頼が来てる。
    ギャラクシーと連動して、ミステリアスな女性ドライバーとして
    ブレイクしてほしいとのことだが…どうする?」テガミポイー

ロゼッタ「…ふむふむ。
     レースごとに観客の皆さんの投票で参戦するか否かが決まって、
     その時点で少なくない給料が発生。
     上位に入ったり総合成績が良ければ更に追加給金。
     至ってシンプルな給料体系ですね」

マリオ「…………」

322Mii:2018/10/28(日) 12:53:05 ID:RX8TEHWE
マール「まあ、必要なら『すっきり爽快』で補助できるけどね、何度も言うように精神摩耗には効果がないのよ。
     ストレス貯め込み過ぎないようにね」

ロゼッタ「まだまだ、です。とりあえず100往復するまでは終われません」

マール「100往復なら今さっき終わったじゃない」

ロゼッタ「…あ、そうでした!…確かに疲労がたまっているようですね、終わりにしましょう」

マール「はい、引っ掛かった。片道ごとにカウントしてるから、まだ51往復目ー。
     ……本当に疲れてるじゃない」

ロゼッタ「」







ロゼッタ「…………なら、のこり半分もこなすまでですっ!」テクテク

マール「…ピーチちゃんに怒られるかもだし、強制的に眠らせようかな」

チョール「やめてあげなさい」

323Mii:2018/10/28(日) 12:55:11 ID:RX8TEHWE
―――30%、35%、40%。

自分の限界を見定めつつ、少しずつピーチフラッシュの効果を高めていく。



―――40%、45%、20%、20%。

時には限界を見誤り、内臓の方が深刻なダメージを受けていてドクターストップ。
お腹を押さえて身悶えながら、ベッドで1日寝たきり、なんてことも。



…それでも、めげない、投げ出さない。



今までとは比べ物にならない量の栄養素よ、筋力と健康の糧となれ。
昨日より、百歩…いえ、千歩多く足を踏み出せる自分を目指せ。

ロゼッタ「ピーチ姫がケーキを作り終えるまでに、
      自分の力だけで体をカンペキに動かせるようになりますよ…!」





デイジー「それはペースを考えてもあまりにも無謀で不可能な話なんだけど」

ロゼッタ「ですよねー」ガックリ

324Mii:2018/10/28(日) 12:56:59 ID:RX8TEHWE
〜ギャラクシー〜

マリオ「よっしゃあー!240枚目のスター、ゲットだぜ!」

ルイージ「あっといっちまい!あっといっちまい!」ルンルン

ヨッシー「明日はクッパの誕生日ですし、ケーキできてるでしょうからさっさと食べに行きましょうよ!
      (さっそく、最後の一枚も油断せず取りに行きましょう!)」

クッパ「心の声と逆になってるぞー」

マリオ「しっかし、ちょいと先読みして『241枚集めきったぞ』ってメールをピーチに送ったんだが、
    全然返事がないな…何かリアクションが欲しいんだが…」

ルイージ「ケーキ作りに精根尽き果ててグロッキー状態になってるとか」

マリオ「はっはっは、まさか。ピーチに限ってそれはない」

ヨッシー「ないない」

クッパ「ないわー」ガハハ

325Mii:2018/10/28(日) 12:59:47 ID:RX8TEHWE
〜クッパ城〜
ピーチ「…………」フラフラ

デイジー「……」ジーッ

ピーチ「右を見ても、ケーキ。左を見ても、ケーキ。

     前を見ても、ケーキ。後ろを振り返っても、ケーキ。

     上を見上げても、ケーキ。下には片づけ損ねて踏ん付けた廃棄ケーキ…

     口の中も、寝る所も、みんなケーキ…」ウワゴト

ロゼッタ「」

326Mii:2018/10/28(日) 13:01:58 ID:RX8TEHWE
ピーチ「飴にも負けず、風邪にも負けず――
    氷にも焼成炉の熱さにも負けぬ丈夫な体を持ち――
    欲はなく怒る暇もなく、いつも無表情に働いている――

    一日にケーキ40ホール分とクリームと余りのフルーツを食べ――
    あらゆる工程を、自分の感情を挟まずに――
    よく指導し状況把握し、そして忘れず――
    ケーキとケーキの間の陰の小さな仮眠スペースにいて――


    東に腐りかけのフルーツあれば、行って勿体ないと自分で食べるしかなく――
    西に疲れたカメックあれば、行って回復魔法を掛けてやり――
    南に死にそうなノコノコあれば、行ってもう働かなくてもいいと言い――
    北に不注意による配分ミスがあれば、作り直しにすぐさま取り掛かりつつ、
    お願いだからやめてと言いながら、味の悪い大量の不良品を頬張り――」ブツブツブツブツ

デイジー「……ピーチがここまでなるなんて。なんて魔境なの…!」

ロゼッタ「あわわわ…」

327Mii:2018/10/28(日) 13:03:57 ID:RX8TEHWE
ピーチ「大体、カメックたちったら酷いのよっ!交代制で働いて、負担は遥かに小さいくせに、
    ちょっと感心したり褒めたりしたら、すぐにミスをするんだからっ!
    超特大ボウルを頭上から落とされたときとか、
    きょだいキノコと毒キノコを間違えられたときなんかは殺意を覚えたわ!」

カメック「で、ですからー、何かの間違いじゃないですか?流石にそんな素人は我らカメック部隊に居ませんって」

ピーチ「実際に気絶したり毒に苦しんだりしたでしょうが!言い訳無用!」

カメック「ひいいいいいいいい!」

デイジー「どうどう、抑えて抑えて」

328Mii:2018/10/28(日) 13:05:39 ID:RX8TEHWE
ピーチ「……ふ、ふふ、ふふふふ。オーッホッホッホッホ!でも安心しなさい、デイジーにロゼッタ。
     紆余曲折あったけれど、まもなくケーキは完成するわ!クッパの驚く顔が今から楽しみで仕方がないわ!」

デイジー「……そのこと、なんだけどさ。やっぱり、作ったケーキ、クッパが心停止するくらい大きすぎるんじゃあ…」

ロゼッタ「そ、そうですよ!」アタフタ



ピーチ「今から楽しみで仕方がないわ…!」ゾクゾク

デイジー「だから、ちょっと頭を冷やしてだねー」




ピーチ「ああ、今から楽しみで仕方がないわぁ……っ!
     仕上げに取り掛かるから、貴方たちは首を長くして待っておきなさい!」グヘヘ

デイジー「ソウデスネー、ワカリマシター」

ロゼッタ「タノシミデスネー」

329以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/28(日) 20:44:58 ID:eBTnyVLY
修羅場だなあ…

330以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 18:47:24 ID:C5iFu53I
ディアボロ「あれ.....ここは.....どこだ....レース場?」
ディアボロ「ッ!」
ロゼッタ「今のところ一位だし猛スピードでゴールだッ!」
ディアボロ「おれのそばに近寄るなーーーーーッ!!!!!」
ロゼッタ「あれ?なんか轢いた?....まぁいいや♪」

今日のボス「ロゼッタに轢かれ死亡」

331Mii:2018/11/01(木) 23:02:59 ID:G5zCGrJU
ロゼッタ(ああ、そうだ。忘れずに、伝えておかないと)




――クッパの誕生日が来る、ということは。
マリオ達がパワースターを集め切る、ということ。





それは、星くず祭の終わりを…私の帰還を意味するのだから。

332Mii:2018/11/01(木) 23:03:45 ID:G5zCGrJU
サヤカ「…ええーっ!今夜で星くず祭、終わっちゃうの!?」

ロゼッタ「……ええ、そうよ」

サヤカ「…………嫌、嫌だ!それって、ママとお別れしないといけないってことでしょ!絶対絶対、反対なんだから!」

前もって理解はしているはずのサヤカ。しかし…気持ちの整理がそう簡単に付けられるはずもありません。
私でもこんなに辛いのです、幼いサヤカにとってはなおのことでしょう。
それだけサヤカにママとしての役割をこなせていたのだ、と嬉しくもありますが――。

あちこち回って、キャッチピースをして、いろいろな話で盛り上がって。
本当に楽しいひと時でしたが、終わりの時が近付いてきたようです。

333Mii:2018/11/01(木) 23:05:46 ID:G5zCGrJU
サヤカ父「こらサヤカ、ロゼッタさん…いや、ママを困らせるんじゃない!」

ロゼッタ「…心配しないで、サヤカ。お別れしても、ママの心の中に、サヤカはずっといるから。
     サヤカの心の中にも、ちゃんとママがいて――これからずっと、見守っていてあげるから。……ね?」スッ

サヤカの頭を優しく撫でようとします…が、サヤカ自身の手によって、乱暴に跳ね除けられてしまいました。
パシン、という高い音が響きます。そのまま泣きながら走り去っていくサヤカを…私は、すぐに追いかけることはできませんでした。



ロゼッタ「申し訳、ございません…」

サヤカ父「一体全体、どうしてあなたが謝るんですか。感謝してもしきれないくらいのものを頂いたというのに…。
      本当に、ありがとうございました」フカブカ

ロゼッタ「いえ、私は大したことは…」

サヤカ父「サヤカが別れをあんなに惜しんでいるというのが、大したことをしてのけた何よりの証拠ですよ。
      …さてっと、よそは祭の終了時期を知らないみたいですが、私は店じまいの段取りに移らせてもらいますか。
      仕込をやめてキリ良く在庫を売り払って、最大の利益を叩きだして見せますよ!」ニヤリ

サヤカの父親に元気をもらって、体の制約に逆らいゆっくりと…しかし確実な足取りで、ようやくサヤカを追いかけ始めるのでした。

334Mii:2018/11/01(木) 23:08:16 ID:G5zCGrJU
デイジー「綿飴にそれほど仕込要素ってないんじゃあ…無理に安く売り払うくらいなら、
      なんなら今日の最後に定価で私たちが残り全部買い取るよ?仲間たちに配って食べてもらうからさ!
      だから気にせず日が暮れるまで仕込を続けて、売り上げの限界に挑戦したらいいのよ。はい、前金のコイン!」ドサッ

サヤカ父「おお、こんなに大金を軽々と…いや、そこまで贔屓にしてもらっては、流石にズルいというものですよ。
      受け取れません。 叩き売り価格でなら喜んで売らせて頂きますが」

デイジー「むう、頑固な人ねー。じゃあ、泣きついてくるのを待ちましょうか、なんてね」

サヤカ父「それにしても…前々から思っていましたが、貴方たち一体何者なんですかねえ」

デイジー「ひっみつー!気になるなら、今度『大会』があるときに観光に来るといいよ!
      じゃあ、私もロゼッタの護衛しに行きまーす!」

サヤカ父「……護衛?」ハテ

335Mii:2018/11/01(木) 23:10:10 ID:G5zCGrJU
サヤカ(ママがいなくなるだなんて、そんなの、嫌だよう)



――公園の奥にある、一本の大きな木。たぶん、公園の中で一番大きい木だと、思う。



お日様ポカポカ状態で、幹にもたれ掛かって目をつぶると、あたたかくてすっごく安心できた。



――まるで、ママに抱きしめられているみたいで。




残念ながら、30分もしないうちに、はだ寒い、雨でも降りそうなくもり空になって――
いまのわたしの気持ちみたいで、また涙がこぼれてきた。



さらに30分くらい…経ったかな。
ママ…ううん、ロゼッタさんが、落ち着いたというか、疲れ切ったというか…ゆっくりと現れたの。

336Mii:2018/11/01(木) 23:11:59 ID:G5zCGrJU
ロゼッタ「ハァ、ハァ……くっ、2週間近く経つというのに、
      50%を克服するのに四苦八苦しているというのですか、我ながら情けないですね…っ!」

――ロゼッタさんと、バッチリ目が合っちゃった。
今さらながら、慌てて木の裏側に隠れたの。意味なんか、ないのに。

サヤカ「ロゼッタ…さん。どうして、ここがわかったの?」





ロゼッタ「…ねえサヤカ、そのまま…隠れたままでいいから聞いてちょうだい」

サヤカ「……」

ロゼッタさんが、優しく、静かに語り掛けてくる。







ロゼッタ「ママはね…本当は、もはや、この惑星の住民ではないの。だから、星くず祭が終わったら、
      サヤカと一緒にサヤカの故郷に帰ることはおろか、キノコ王国に…この星に留まるすら許されないのよ」

サヤカ「……っ!?」

337Mii:2018/11/01(木) 23:13:36 ID:G5zCGrJU
ロゼッタ「そして…ママには、サヤカみたいに私のことを待ってくれている者が、星がたくさん…たくさんいるの。
      その子たちの行く末を見届けてあげることが、ママの使命であり責任であるのよ」

サヤカ「…………」

ロゼッタ「ちょっと難しかったかしら。でもこれだけは言っておくわ。
     ママは、サヤカのママになれてとても幸せだったし、いつまでもサヤカにママと思われたいと願っている。

     さっきは『ロゼッタさん』なんて呼び方をされて、すごく悲しかったわ。
     今夜お別れするときは、今まで通り、『ママ』って呼んでくれることを期待しているわ」

サヤカ「……」





ロゼッタさん…ううん、ママが立ち去る音が聞こえる。
でも、どうしても勇気が出せなくて…わたしは、じっとしているだけだった。

338Mii:2018/11/01(木) 23:16:03 ID:G5zCGrJU
ザッ…。

サヤカ父「よっ、サヤカ」

サヤカ「うひゃあ!?お父さん、いきなり頬っぺたを突っつかないでよ!それに、お商売は!?」

サヤカ父「お前が泣き去る姿が目に焼き付いて、居ても立っても居られなくなってな、一旦探しに来ちまった。
      ……結婚の妄想が恐れ多くなるくらいのママじゃないか、こんな別れ方でいいのか?サヤカは満足なのか?」

サヤカ「…だって」





サヤカ父「バッカモーン!そんなメソメソする子に、お父さんは育てた覚えがないぞ!情けない!
      感謝の印にプレゼントを送ってママをビックリさせるくらいの気持ちでいないでどうする!」

サヤカ「え、えええーっ!?そういう流れなの!?」

サヤカ父「…あー、コホン。もちろん、お金がかかるプレゼントはナシだ。
      そんな余裕はないし、あの人たち…相当なお金持ちっぽいからな、
      大してありがたくも無いだろう。

      いいか、サヤカ自身の気持ちをこめたプレゼントを探し当てること、
      それが今日のサヤカの宿題だ!期限は今日の夕方までっ!よーい、スタートゥ!」ババーン

サヤカ「そ、そんなぁーーーっ!」ダッ

でも…パパ、背中を押してくれて、ありがとう。ちょっぴり勇気が出てきたの。

339Mii:2018/11/01(木) 23:18:10 ID:G5zCGrJU
〜キノコ城〜

ピーチ「……ZZZ」グー

デイジー「戻ってくるなりパタリと寝ちゃったよ…まあ、ケーキ完成したならいいの、かな。
      あーあー、PC付けっ放しにしてー!…ああ、マリオのメールを読み損ねてる!
      …スター集め切った!?超重要事項なんですけど!起きろー!」ゲシゲシ

ロゼッタ「まあまあ、酷く疲れている様子ですし…」

デイジー「そんなこと分かってるけどさ、ピーチに指示してもらわないと私たちも動けないでしょ!」

ロゼッタ「今夜に星くず祭の終了を宣言してもらって、クッパの誕生日を祝って、明日の朝にはクッパシップでこの惑星を発つ。
      それだけ分かっていればなんとかなりますよ」ペロッ

340Mii:2018/11/01(木) 23:21:38 ID:G5zCGrJU
デイジー「しかもそれだけじゃないよ、他のメールもワンサカ、リアルタイムで来てる!
      さすがピーチ、この量を普段は読み切ってるのか…!なになに…?

      『ご当選おめでとうございます!厳選なる抽選のうえ、貴方は選ばれました!
      クリックして進んで、すぐに会員登録を…』
      
       …え、何?お姫様に詐欺メール送る、怖いもの知らずがいるの?


      『体の節々が痛むそこの貴方!今ならこの健康青汁が、なんと毎月10コインで届きます!』
      
      …十分ピーチは健康だよ!?一時的に不調に陥ってるけど!


      『ニンテンドーからのお知らせ【次回作の打合せについて】』
   
      …これは保護だね、絶対。消すなよ?絶対に消すなよ?


      『(本文がありません)』
      
      ……悪戯かしら?差出人…『なっちゃん』って誰よ…あれ、じゃあ悪戯じゃないのかな?
      ううむ、さっぱりわからん…


      『ピーチ姫、こんにちは!私たち、フェアリーランドの妖精なの!
       キノコ王国と友好を深めたくてメールを出させてもらったわ!ついては条約を結びたいんだけれど…』
     
      軽っ!?内容に対して砕け過ぎじゃないかしら、この文面!?国家間のやりとりがこんなんでいいの!?」

341Mii:2018/11/01(木) 23:23:53 ID:G5zCGrJU
ロゼッタ「……」ペロペロ

デイジー「ふう…ところで、何食べてる…というか舐めてるの?自分から間食するなんて珍しい」

ロゼッタ「ふふ、ピーチ姫が、余った材料でキャンディをいくつか作ってくれたんです。
     今舐めているのはココナツキャンディというものらしいですよ。甘い物をたべてばっかりだと太りそうですが。
     デイジー姫もおひとつどうですか?」

デイジー「へー、食欲が出てきたのは凄くいいことよ。じゃあ遠慮なく。
      …あ、これはびりびりキャンディだね。ピリッとした刺激がたまらないんだよねー。
      じゃあ、いただきまー…」チラッ

ロゼッタ(1本目を舐め終わって、2本目に移ろうとしている)

342Mii:2018/11/01(木) 23:25:35 ID:G5zCGrJU
デイジー「……ロゼッタ。私、やっぱりそっちのキャンディの方がいいなあ。交換してくれないかしら?」

ロゼッタ「目移りするのはわかりますが、駄目ですよ、いくらデイジー姫の頼みと言えども。
      この綺麗な赤い色を見た時から、食べようと決めていたのですから」フフン

デイジー「いや、ロゼッタが食べるとあんまりよろしくない気が…」

ロゼッタ「ピーチ姫が手ずから渡してくれたお菓子に、流石に致死トラップが仕掛けられているはずはないでしょう。
      それでは、どんな味か確かめてみましょう」ペロッ

デイジー「致死じゃないけどさぁ…」







ロゼッタ「アツゥイ!!」 HP -1

デイジー「うん、ファイアキャンディだからねー」

343Mii:2018/11/01(木) 23:29:37 ID:G5zCGrJU
サヤカ「…ママへのプレゼント、間に合うかなあ」

あれこれ迷ったあげく、四つ葉のクローバーの花冠に決めたはいいけれど。
公園のどこを探しても、三つ葉のクローバーしか見つからない。
まだ夕方まで時間はあるけれど、さすがにこのままじゃまずいかも…!

「お、おやおや?お嬢ちゃん、こんなところで何をしているのかなあ?」

不意に、声を掛けられちゃった。

サヤカ「…えーっと、誰だっけ?」

タコ焼き屋「酷いなあ、タコ焼き1パック、サービスしてあげた仲じゃないかー…グフフ」

サヤカ「あ、タコ焼き屋のおじさん!あの時は、ありがとうございました!
     お店の方は放っておいていいの?」

タコ焼き屋「いいのいいの、道楽でやってることだし、儲けなんて気にしないよ。
       そんなことより、俺のロリコ…いや迷子センサーが発動してね。何か困りごとかい?」キリッ

サヤカ「迷子じゃないよ?でも、四つ葉のクローバーを探してるのに、全然見つからないの…」

タコ焼き屋「それは困ったね…よし、俺も一緒に探してあげようじゃないか。
        そ、そそそそのかわり、キミの写真、1枚取らせてもらって構わないかな!?
        それさえあればおじさん、百人力だよっ!」

サヤカ「えっ?」

344Mii:2018/11/01(木) 23:32:00 ID:G5zCGrJU
タコ焼き屋「よし、一眼レフの準備オッケー!さあ、さあさあ」

サヤカ「え、えええ……?」ヒキッ


ボカッ!!



タコ焼き屋「ぐふっ……」バターン

「やれやれ、危ない危ない。危うく変態の毒牙に掛かるところだったよ〜?」

サヤカ「…この人、変態さん?」

「そうだね…おっと、四つ葉のクローバーを探しているんだっけ〜。
 どれどれ…お、これなんか、どうだろう?」サッ

サヤカ「…ああっ!四つ葉だ、こんな一瞬で見つかるなんて、凄い!お兄さん、何者?」

「フフッ、『幸運』の花言葉を持つ四つ葉のクローバーだもの、
クローバー側としてもそうやすやすと見つけさせるわけにはいかないと思っている。
見つけるにはコツがあるのさ。植物の気持ちになって、相手の警戒心を解くことが大事なんだ。

サヤカ「な、なんだかすごいね」ゴクリ

「まあ、初心者には難しいよね。でも大丈夫!植物に成り切れる、すごいアイテムがあるんだ。
ちょっと試してみるかい?」スッ

サヤカ「うん、お願いします!」

345Mii:2018/11/01(木) 23:34:23 ID:G5zCGrJU
「どうだい、順調に四つ葉のクローバー、探せてる?」



サヤカ「ウン!」



「それはよかった。…ところで。クローバー、もといシロツメクサの花言葉って、
葉の数で変わる上に、同じ枚数でも真逆の意味を併せ持ってたりして、複雑で興味深いんだよね〜。

例えば、平凡な三つ葉のクローバーにも、『約束』とか『私を思い出して』とかがある一方、
コワーイ花言葉があるんだけど、知ってる?」

サヤカ「ンー、ワカラナイ」





「そっか。答えはねえ……………………『復讐』だよ」





サヤカ「ヘー。ヨツバ、ヨツバ」

346Mii:2018/11/01(木) 23:35:48 ID:G5zCGrJU
ロゼッタ「…………」ジーッ

サヤカ父「…こうして貴方に綿飴づくりを見せられるのも、今日で最後ですか。
      私としてはあくまで商売道具であって、それ以上でもそれ以下でもないですが…
      ここまで気に入って貰えると、ちょっとむず痒いですね」

ロゼッタ「……そう、ですね。すっかり気に入ってしまいました」

デイジー(ピーチに頼めば、綿飴機の一つや二つ簡単に調達してくれるだろうけど…
      まあ、野暮ってもんだよね。…あはは、童心丸出しで覗き込み続けるロゼッタが自然と客引きになって、
      ますます繁盛してるや。でも正直、私はちょっと退屈かなあ、ふあああ)

347Mii:2018/11/01(木) 23:37:41 ID:G5zCGrJU
〜夕方〜

ロゼッタ「……サヤカ、遅いですね…」

デイジー「確かに、遅いなあ」

サヤカ父「大丈夫ですよ、サヤカならきっと今頃、ロゼッタさんへのプレゼントのため駆け回っていることでしょう。
      おっと、ばらしたことは内緒にしておいてくださいね?」

ロゼッタ「え、プレゼントですか!それは楽しみですね!ふふふ…………」





ロゼッタ(……………………おかしい。喜ぶべきはずなのに、妙な不安が拭いきれずにいる。
      …何か、嫌な予感が…する)

デイジー「あ、あれって…クッパシップ!マリオ達、キノコ王国に戻ってきたんだ!
      よし、迎えに行きましょう!…って、あれ?ロゼッタ、どうしたの?そっちじゃないよ?」

ロゼッタ「すいません!私、やっぱりサヤカを探しに参ります!デイジー姫はそちらに向かわれても構いませんよ!では!」ダッ

デイジー「ええ!?そんなこと言われても…」ポリポリ

デイジー「しょうがないなあ、私も付いてくー!」ダダッ

348Mii:2018/11/01(木) 23:39:28 ID:G5zCGrJU
サヤカ、サヤカ。



あちこち、あてもなく駆け回る。




サヤカ、どこにいるの!?




…現在、ピーチフラッシュの効果は50%。正直、中々キツイ負荷ですが。
ここまであちらこちらへ動き回ったのは、今日の中で初めてかもしれません。


今日の昼前、サヤカに語り掛けた場所から、更に奥。
ピリッとした違和感――『ナニカ』を察知して、公園の奥にやってきました。
私の後ろを、デイジー姫がピッタリ付いてきています。心強いですね。

349Mii:2018/11/01(木) 23:41:02 ID:G5zCGrJU
右へ曲がり、左へ曲がり、左へ曲がり、前へ突っ切り、右へ曲がり。



前へ突っ切り、左へ曲がり、右へ曲がり、右へ曲がり、左へ曲がり。



デイジー「あっれー?この公園、こんなに広かったっけ?ハッ、もしや幻術!?」

ロゼッタ(…デイジー姫も、気付きましたか。しかし、これは五感を狂わされているわけではない、と思います。

      何者かによって、実際に『空間が歪められている』という説明が妥当ですね)




――デイジー姫。速やかに、私に杖を戻してください。緊急事態です。




そう、言おうとした矢先でした。




目の前に広がる、一面のクローバー畑。
その中央に倒れ伏す、サヤカ。

350Mii:2018/11/01(木) 23:43:51 ID:G5zCGrJU
デイジー「サ、サヤカちゃん!!」ダッ

ロゼッタ「!!!」

デイジー姫がサヤカに真っ先に気付き、駆け寄っていく。
すぐさま、私も可能な限り全力で…全力で駆けていく。

ぐったりしたサヤカを抱き寄せ、オロオロするデイジー姫を…





ロゼッタ「…はああっ!」ドンッ




なけなしの勢いを以てして、突き飛ばす。




デイジー「……え」

思わずサヤカを放してしまい体勢を崩していきながら、驚き目を見開くデイジー姫。
その視線の先には、『誰も映っていない事でしょう』。

デイジー「え、嘘、なんで?サヤカちゃんは?ロゼッタは?どこに行ったの!?」マッサオ

351Mii:2018/11/01(木) 23:46:21 ID:G5zCGrJU
ピーチ「ZZZ…」

ピーチ「ZZZ…」

ピーチ「ムニャ…あ、ちょっと、マリオ、何やってるのよ…みんな見てるわよ…むしろ凝視してるわよ…」

ピーチ「ぐぅ…まだやるの?…え、そ、そんな回数まで?正気?この…変態!」

ピーチ「…ああ、ちょっと!もう無理!壊れる、壊れちゃうからぁ!やめてぇ!」




ピーチ「これ以上速度貯められたら鍵扉どころかキノコ城全壊するわあっ!!」ガバッ






ピーチ「……ゼェ、ゼェ…なんだかおっそろしい夢を見ていた気がするわ…」

352Mii:2018/11/01(木) 23:49:07 ID:G5zCGrJU
ドンドンッ!

デイジー「大変よ、ピーチ!サヤカちゃんとロゼッタが攫われたのっ!ウワーン!」

ピーチ「……なんですって!?詳細を手短にっ!!」カクセイ

デイジー「ご、ごめんなさい。わ、私、なんにもできなかった。それどころか、ロゼッタに庇われちゃったっぽいの…」ポロポロ

ピーチ「詳細って言ったのに…え、庇われた?基礎体力で圧倒的に上回るあなたが?」

デイジー「グズッ…えっと、倒れたサヤカちゃんが目に入ったから、2人で駆けこんだんだけど…
      一番乗りしたばっかりの私を、ロゼッタがドンッて押しのけて…
      それで、気が付いたらサヤカちゃんもロゼッタも視界から消えてて…」

ピーチ「…その説明から推測するに、ロゼッタは最初からあなたを突き飛ばす目的で駆け込んだっぽいわね。
     …罠のネタが分かってた?…………ロゼッタが得意な魔法って、確か」

デイジー「…………空間系の魔法」





ピーチ(…………っ!)

デイジー「ど、どうしたの急に?」

353Mii:2018/11/01(木) 23:50:31 ID:G5zCGrJU
ピーチ「デイジー!私が眠りこけてた間、メールを盗み見たりした!?」

デイジー「あ、うん、ごめん」

ピーチ「今は許すわ。それで、意味深なメールが飛んでこなかったかしら?」

デイジー「…うーん、詐欺メールと通販と任天堂と妖精と…あ、『なっちゃん』って人から空メールが送られてたよ」

ピーチ「……っ!ビンゴじゃ、ないのっ!!デイジー、現場へ案内して、いますぐっ!」ダダダッ!

デイジー「りょ、了解っ!!」ダッ

354Mii:2018/11/01(木) 23:53:33 ID:G5zCGrJU
マリオ「……あ、ピーチから電話だ」Prrrr

マリオ「おー、寝てたのか?こちとら無事にパワースターを241枚集めて、まもなくキノコ王国に着陸…」

マリオ「……………………」

マリオ「はああああああああああっ!?マジか!
    おう、わかった、場所の案内をすぐ頼む!それじゃっ!」ピッ



クッパ「どうしたのだ、そんな大層な剣幕で」

ルイージ「い、一体何があったの?」



マリオ「かなり確証の高い推測、という段階だが。…………

    ロゼッタが――
    ディメーンの野郎に空間転移で攫われたらしい」


クッパ「なんだとぉ!?」

ルイージ「なんだって!!?」

ヨッシー「…??」

355Mii:2018/11/01(木) 23:55:04 ID:G5zCGrJU
デイジー「ディメーン?って誰のことよ!」ダダダッ

ピーチ「割と新参の敵よ!現実に絶望し、予言書に従い世界を作り替えようとしたノワール伯爵っていう奴の手下…
     というのが表の顔だったんだけど、実は伯爵をも利用して、ピュアハートの力で世界を征服しようとしていた極悪非道な奴!
     倒し切ったはずなのだけど…!」ダダダッ

デイジー「強いの?」ダダダッ

ピーチ「戦闘力的には私たちの足元にも及ばないけど、次元を超えた転移魔法で好き勝手移動できる厄介者ね。
     人の心を操る魔法も持ち合わせているみたいだし、ゲリラ戦法に出られたらどうしようもないわ。
     油断した隙を衝いて一撃で葬らないと、人質取られ放題よっ!」ダダダッ

デイジー「厄介極まりないねっ…!そいつがそこまで賢くないことを祈るよ!」ダダダッ

356Mii:2018/11/01(木) 23:57:21 ID:G5zCGrJU
ユサ、ユサ。
誰かが、倒れている私の体を乱暴に揺さぶる。

ロゼッタ「…………うぅ」ムクッ

「ようやく目が覚めましたか。呑気なんですから、全く」

視界には天井…では、ありません。
緑のような、青のような、赤のような…定まらない色、距離感の隔壁。
その光景は、横にも、前にも、地べたにさえも広がっています。
平衡感覚がおかしくなりそうです。


どうして、自分はこんなところで倒れているのか。
…いえ、その前に。そうだ、あの子を、救い出さないと!



ロゼッタ「サヤカっ!どこ、どこにいるの!?」

「…その『サヤカ』というのが、ここに迷い込んだ小さな女の子で合っているのなら…
ほら、そこに寝かせてあります。幸い、気絶しているだけのようですね」

女性の言葉にハッと振り返ると…そこには、無機質な地面を枕にして、すぅすぅと寝息を立てるサヤカの姿。
…間違いない、今度は『先ほどのように』幻覚ではありません。
感極まって、涙ぐみながら抱きしめます。

357Mii:2018/11/01(木) 23:59:34 ID:G5zCGrJU
「…感動の対面であるのは重々承知の上ですが、我々には、とにかく時間がありません。
あなたにも、強制的に協力して頂きますよ」



……ああ、いけない。こちらの女性のことを、すっかり忘れてしまっていました。
今さらですが、敵ではないと願いたいですね。


ロゼッタ「あなたは…ええと、どちら様、ですか?」

実は、記憶を失う前の私の知り合い…という線もなくはなかったのですが、杞憂だった模様です。
問うと、彼女は左手で眼鏡をくいっと持ち上げ、しっかりと掛け直し…

ナスタシア「わたくし、ナスタシアと申します。
       …まあ色々あって、ピーチ姫のサポートの元、ディメーンに関する諜報活動を行っておりました。
       結局、後手に回ってしまっている有様ですが、この通り…」




そう自嘲するナスタシアの右腕は…肘から先が、ありませんでした。

358Mii:2018/11/02(金) 00:01:47 ID:MuNJghdo
ロゼッタ「…た、大変ですっ!はやく治療を…いえ、杖がなければ無理な話でしたか…」ガックリ

ナスタシア「ご心配なく。最低限の治療と痛み止めは済ませました。…少しは魔法の知見があるようですね」

ロゼッタ「…む、ちょっといいですか?この傷跡…
      通常の衝撃、斬撃では有り得ないほどスパッと斬られています。
      まるで、空間ごと『無くなった』ようですね」

ナスタシア「…っ!失礼しました、かなりの魔法の使い手と見受けられます。一瞬でそこまで読み取るとは…!
       その通りです。辛うじてメールのボタンを押すことはできましたが、
       次の瞬間には肘の先がPCごと消し飛ばされていました。
       あと1秒、腕を引っ込めるのが遅ければ…体ごと消し飛んでいたかも知れません」

ロゼッタ「…いえ、たまたま私の得意分野であっただけですよ」





――して、対峙しなければならない敵とは。

359Mii:2018/11/02(金) 00:05:10 ID:MuNJghdo
ナスタシア「…この異空間の製作者、『ディメーン』。かつてマリオ達に負け、滅ぼされた存在。
       …厳密には私も滅ぼされるべき存在だったのですが、恩赦を頂きました。

       用心深いピーチ姫は、キノコ王国の災いとなり得る強大な、あるいは特異体質の敵と戦った場合、
       仮に倒したとしても、一定期間は生存・潜伏を疑い続けて、調査を惜しまないようですね。
       私も、ノワール伯爵亡き今、ピーチ姫の元で情報収集にあたっておりました。

       さすがにもう大丈夫でしょう…と高を括っていたところに、このありさま。
       …しかし、自分の不甲斐なさを悔やむのは後で結構。
       …ここで、伯爵様が『守って見せた』世界を傷付け、滅ぼしてしまっては…
       悔やむことすら、一生許されなくなってしまう」

そう、強い口調で言い切る彼女には、疲労と焦りが垣間見えました。



ロゼッタ「そもそも、マリオ達によって滅ぼされたといいながら復活しているのはなぜなのですか?」

ナスタシア「…わかりません。もともと幻影や分身体を使って神出鬼没な行動を取る男でしたから。
       咄嗟に入れ替わって、本体は生き延びていたのかもしれません。
       一応、転移魔法を行使できるのは本体だけ…というのは分かっているのですが」

それはそうでしょう。分身体まで転移魔法を好きに使えるならば、
本体が寝ている間に世界征服など楽にできそうです。

360Mii:2018/11/02(金) 00:14:25 ID:MuNJghdo
ナスタシア「…今は、何故復活できたのかは後回しです。それよりも都合が悪いのが、
       以前よりもかの道化師の転移能力が上がっているらしいことです。
       本当に、一刻も早くなんとかしなければ…!」



「それは、無理な相談だね〜」



空間把握に長けている私は、すぐに気付きましたが…やや遅れたナスタシアは、大層驚いたのか、
後ずさって尻もちをついてしまいました。



おどけた表情の仮面と、ひょうきんな服装。なるほど、この道化師が…。

ディメーン「ボンジュール、マドモアゼル ロゼッタ。 ボクは不死身の道化師、ディメーンさ。以後、お見知りおきを。
       戻って来てみたら、ボクについて噂しているものだから驚いたよ〜」

ロゼッタ「私の名前を何故知っているのかはさておき…私たちを、ここに捕らえる目的は一体なんですか?
      …まあ、十中八九、交渉材料なのでしょうけど」

ディメーン「分かってるなら、話が早くて助かるよ。この数年で、ボクもケッコー、チカラを付けたけど…
       確実に勝つためには必要だからね〜。

       絆の力とか、一致団結とか、ボクは大っ嫌いなんだけど…芋ズル式に崩壊していく綻びになってくれるなら、
       ちょっとは好きになってあげてもいいかな」

ロゼッタ「…………戯言を」

361Mii:2018/11/02(金) 00:17:49 ID:MuNJghdo
ディメーン「それにしても、ロゼッタ。キミには驚いたよ!
       色々観察してて、デイジーって子より圧倒的に劣る能力しかないことがわかった。
       そのくせ、デイジーって子をまず転移させようとしたら、
       罠に『ギリギリで』気付いて捨て身で助けちゃうんだから。
       興味を惹かれたのと、その勇気に免じて、デイジーがキノコ城に駆けていくのは見逃しておいてやったよ」

ロゼッタ「…それはありがとうございました」

ディメーン「…おっと。ピーチ姫ご一行がご到着だ。ちょっと表の世界に行ってくるね〜。
       キミたちは、そこで遠慮なく寛いでいるといいよ。お茶は出せないけどね、んっふっふ」シュンッ


――――ピーチ姫。どうか、無事でいてください。

362Mii:2018/11/02(金) 20:54:06 ID:MuNJghdo
シュパッ。

ディメーン「やあ、お久しぶり…」


ピーチ「ヒステリック・ボムゥーーっ!!」カッ!



ドドドドドドドカアァァーン!!



ピーチ「これにて一丁上がり!……と、行ってくれればよかったんだけれどね」

ディメーン1「そうは問屋が卸さない、ってね!残念でしたー!」ケラケラ

ディメーン2「でしたー!」

ディメーン3「でしたー!」

ルイージ「わわ、分裂したよ兄さん!気持ち悪い!」

ディメーン1「失礼だね、芸術的と言ってくれないか?」

363Mii:2018/11/02(金) 22:42:01 ID:MuNJghdo
マリオ「…どうしたよディメーン、今回はルイージに執着してないのか?」

ディメーン1「あーんな予言書、もはや何の未練もないね。そしてそこのトゲトゲくん、キミには御礼を言うよ。
        確かに、預言書を盲信するより、我が身を信じて信じ切る方が遥かにエレガントだと分かったのさ。

        そう…我が身を極限の境地に、真の頂に持って行ける最高の『参考書』を…ボクは手にしたんだよね〜!
        まさに天啓!いや、むしろ天命!世界は、ボクを見捨ててはいなかった!」

クッパ「最高の…参考書、だと!?」

ディメーン2「この世の理、全てが記された古文書さ。ボクが言えるのは、ここまで。後は勝手に想像したらどうだい?

        

        ああ、そうだ。キミたちもやきもきしてるだろうから、本題に入ろうか。
        薄々気付いている通り、ナスタシアとロゼッタ…あ、あと一人女の子がいたっけ。
        まあ、餌の役割は果たしたから、もうどうでもいいか。
        
        彼女たちは、ボクによって異空間に捕らえられている。
        生かすも殺すも、キミたちの態度と…ボクの気分次第だね〜」

364以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/03(土) 00:25:18 ID:zJ5CkE7.
おおこわ

365以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/03(土) 04:45:18 ID:zJ5CkE7.
ロゼッタがマスターオブギャラクシーを生身でクリアできる日は来るんだろうか

366Mii:2018/11/03(土) 17:36:06 ID:H.lk9j0s
デイジー「…な、何が望みなのよ!!」

ディメーン3「そうだなあ…たとえばここで、『主要メンツ、全員自ら命を絶て』と命令したところで、
       流石に人質に対して重すぎる命令だから、命令が意味をなさないでしょ?」

ピーチ「まあ、当然ね。そこをはき違える私たちではないわ」

ディメーン3「というわけで、ボクからはただ1つ。『何もするな』」

デイジー「…え?それって、どういう…」

マリオ「…………要するに、どんな破壊活動も、攻撃も、ひたすら黙って…されるがままにしろってことか。
     こちらがブチ切れて抵抗した時点で、彼女たちの命は尽きる。…我慢さえしておけば、とりあえず生き永らえると。
     時間稼ぎの抜け道をあえて与え、思考を鈍らせ、己の鬱憤晴らしを兼ねて戦意を吸い取ろうとする…ありがちな作戦だな
   
     (頃合いを見計らって、どうせ何か仕掛けてくるだろうがな)」

ディメーン1「なんか耳障りな言い方だけど…ピンポンピンポン、だーいせーいかーい!
        さっすがヒゲヒゲくん。抵抗1回につき、もれなく御一人様、三途の川へご招たーい!

        ほらほら、ボクの方が先にバテて、御免なさいもうしませんって土下座して謝るかもしれないよ?
        可能性があるっていいことだよね〜!」

マリオ(趣味も手癖も悪いぜ、まったく)

367Mii:2018/11/03(土) 17:39:59 ID:H.lk9j0s
デイジー「」ブチィ

ピーチ(癪に障ることこの上ないけど、先手を取られた以上…仕方ない。
     なんとか解決策を考えないと…)ギリッ

クッパ「…フン。面白いじゃないか、ワガハイは別に構わんぞ?受けて立つのだ!
     せいぜい楽しませてもらおう!」

ルイージ「そりゃないよ、見損なったよクッパ!
      そりゃ、クッパにしてみればキノコ王国のことなんてどうでもいいかもしれないけどさあ…!」

クッパ(…黙って耐え切ってやるわ!って意味で啖呵切ったんだけどなー)ションボリ

マリオ(俺は分かってるぞ)ポンポン

ピーチ(私も私も)フフ

ピーチ「…分かったわよ、じゃあそれd」








ダダダダッ…

デイジー「お嬢様打法――――ハリセンビンタァ!!!!」バチコーーン!!

368Mii:2018/11/03(土) 17:49:28 ID:H.lk9j0s
ディメーン1「…………」キンッ

デイジー「チッ。普通に、変な壁で防がれちゃったか。でも、こいつが本物みたいね!」





ディメーン1「…ハァ。マドモアゼル デイジー…なにやってくれちゃってるのかなあ?」




ピーチ「ちょっと、馬鹿っ!何勝手に攻撃してるのよっ!?」

デイジー「まだピーチ、OKの返事出し切る前じゃない。取り決めの違反行動には当たらないもんねーだ!」

ピーチ「大馬鹿者っ!」バシンッ

デイジー「…痛っ――ちょっと、なにするのよ!」

ピーチ「そういう言葉の綾で済む問題じゃない!!」

デイジー「…へ?」

ピーチ「あんな危険行動をする奴に、迂闊に言質を取らせたら…
     どんなことをされるか、想像くらい付くでしょう!?」

369Mii:2018/11/03(土) 17:53:01 ID:H.lk9j0s
ディメーン1「……フライングかあ、いけないなあ。はーい、全員オリジナルに戻ってね〜」

ディメーン2「おー」シュバッ・・・

ディメーン3「りょーかい」シュバッ・・・


ディメーン「……さってと。まあ、1回は…1回だね。ちょっと――用ができたよ。
       いやいや、面白くなってきたね〜。帰ってきたとき、どんな顔してくれるかな〜」シュン!




デイジー「…あ」サァッ

370Mii:2018/11/03(土) 17:56:57 ID:H.lk9j0s
ディメーン「…ふふふ、想定外の出来事だけど、ますます面白くなってきたね…!
       ワクワク、ゾクゾクが溢れてくるよ〜!」シュン!


ロゼッタ「今ですっ!」



シュッ!!



ディメーン「……っ!」クルッ



ロゼッタ(何があちらであったのか知りませんが、今はおいておき。
      空間が歪むのを感知して、思い切り投げた…残り少ないスターピース。
      事前に引き出しておいたのは不幸中の幸いでした。


     …しかし。


      あまりに弱い。弱すぎる勢い。コツンという音がして、終わり。
      10メートルほど先のディメーンに当たりこそしましたが、まるでダメージがありません。
      所詮、私の腕力と投球技術ではこの程度です。

371Mii:2018/11/03(土) 17:59:57 ID:H.lk9j0s
ディメーン「うーん、本当にキミ、空間移動に対して勘が冴えてるね〜。
       なんなら、弟子にしてあげようか?なーんちゃって」

そんなことを言われたところで、慰めにもなりません。
――おまけに。

ディメーン「でもね、どんなにお粗末な攻撃だろうと、ボクを狙ったのはいただけないな。
       そんないけない事をする愚か者には、相応の罰が、報いが必要だよね〜」



――あまりにも不吉な言葉を吐き出させる原因としてしまったようでした。

372Mii:2018/11/03(土) 18:02:36 ID:H.lk9j0s
ディメーン「ちょーっと、その子、起こさせてもらうよ?」

――掲げられた両腕が光り、サヤカに投げかけられる。
単なる覚醒魔法のよう――魔法が行使されて、しばし。
サヤカが、ゆっくりと両目を開けていきます。


サヤカ「……あれ?ここ、どこ?…………ママっ!?どうして、何がどうなってるの?
     …あ、クローバーを見つけてくれたお兄さん!」

ディメーン「ははは、子供は単純でいいよねえ。ちょっと親切にするだけで、あっさり人を信じるんだから。
       でも、おかげで色々と計画が捗ったよ、ありがとう」

サヤカ「…お兄、さん?」

――どんな誑かし方をしたのか知りませんが、その時とはおそらく…打って変わって冷えた口調に、
サヤカは困惑しているのでしょう。…あんな輩をサヤカに見せてはいられません。
手を引っ張り、私の体の陰に隠れさせます。

373Mii:2018/11/03(土) 18:05:54 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「…あの人に、何をされたか覚えてる?」

サヤカ「……えっと、四つ葉のクローバーを集めやすくなるアイテムだよって言われて、
     変な葉っぱを頭に付けることにしたの。

     本当にどんどん見つけられたんだけど、なんだか意識がぼんやりしてきて、
     体が勝手に動き続けて…あんまり、何をして何をされたか、覚えてない……」

ロゼッタ「……そう。怖い思いをさせちゃって、ごめんね」


抱きしめて安心させてあげたいのはやまやまですが、警戒を怠らず、道化師を睨み続けます。
効果があるかどうかはすこぶる怪しいものですが。

サヤカ「それと…結局、プレゼント間に合わなくて…ごめんなさい」ションボリ

ロゼッタ「……いいのよ、十分」

敵を見据えながらも、少し震えているサヤカを後ろ手で…撫でてあげます。

374Mii:2018/11/03(土) 18:11:41 ID:H.lk9j0s
ディメーン「いやあ、実はさっき、ピーチ姫と我慢対決をすることになってね?」

――ディメーンは、絶対的な立場から、面白そうに顛末を語って聴かせます。
その内容に、私も、ナスタシアも、凍り付いてしまいました。
どうしてそこまで、堕ちることができるのか。
サヤカは現実離れしすぎているのか、ポカンとするのみ。



…理不尽な理由をでっち上げられ――誰か、1人が、殺される……!?



――更には。

ディメーン「まあ、ルールを知る由もなかったキミたちは可哀想だよね。そ・こ・で!
       生きるチャンスを、与えようじゃないか。イッツ、チャンスターイム!
       話し合いでも、多数決でも、殴り合いでもいいからさぁ。





        キミたちで、犠牲者一人決めて、該当者を始末してくれない?
        ボクも決定に従い、黙って観てるからさ!」


到底、受け入れがたい選択を、迫ってきたのです。

375Mii:2018/11/03(土) 18:17:22 ID:H.lk9j0s
固まって動けない3人の足元に、フッと…1本のナイフが転移されてきました。

ディメーン「ルールせつめーい!今から10分以内に、誰か一人の息の根を止めること!
      使いたかったらそのナイフ、使ってもいいよ〜!
      んっふっふ、ボクに効かない魔法を施した特製ナイフだけどね!

      10分以内に決着が付かない、付けようとしない場合は、
      仕方ないけど全員お陀仏になってもらうから、そこんとこよろしくね〜!
      どのみち、全滅してることすら、表の世界にはばれないからね〜!
      まだ、逃げ道を用意してあげているんだから感謝してよ〜?


      それじゃあ…計測、開始しまーす!サイコーのショーを見せてくれ!」


ディメーンが、猟奇的に、満面の笑みでこちらを眺めています。
私は、何も考えられず、指一本動かせません。



――ナスタシアが、ため息を一つ付いて、確かな足取りで…
隻腕でナイフをしっかりと握り締めました。

狙うは…私――――の後ろでビクッと震えた、サヤカ。

376Mii:2018/11/03(土) 18:21:54 ID:H.lk9j0s
サヤカは、状況を飲み込むことができず、ただただ呆然としています。

ロゼッタ「何のつもりです、ナスタシア!協力し合うと言ったばかりではないですか!」

ナスタシア「だからこそ、ですよ。自分の命が惜しいとか、そんな世俗的判断ではありません。
       単純に、どう考えても、私と貴方の2人が生き残った方が、戦力となるだけの話です。
       サヤカには…運がなかったと諦めてもらうよりほかにありません。

       そもそも、私か貴方かどちらか1人でも退場した時点で、サヤカも確実に死にますよ?
       何を躊躇うというのです?一時の情で戦局を見誤ってはなりません」


サヤカはようやく危機を理解して――理解してしまって、
口をパクパクさせながらどんどん蒼白になっていきます。

ロゼッタ「でもっ!」

ナスタシア「お黙りなさい!この男は、やるといったらそれ以上でもそれ以下でもないことを
       平然としでかす男です!私が一番知っています!」

確かに、正論そのもの、かもしれません。
私には、反論に使える具体的な材料などありません。
でも……。

377Mii:2018/11/03(土) 18:28:06 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「……………………一つ、聞かせてください。
      確かにサヤカは非力ですが、それを言うなら私も戦う術を全く持たない。
      …貴方だってそうでしょう、一体何の能力があるというのです?」

ナスタシア「…暗示、催眠術などの精神操作を少々。
       体力も、片腕のみとはいえ…少なくとも子供よりはあるつもりですが?」

ロゼッタ「精神、操作…」

ディメーン「ま、僕にはバレバレ!おまけに全然効かないけどね〜!」

ナスタシア「分かっているから暴露したんですよ!それに、弱った時になら効くかもしれないでしょう、
       寝首を掻かれないことですね」

ディメーン「油断しても戦力差甚だしいことを理解してる、ナスタシア?
       己惚れるのもいい加減にしてほしいものだね」

ディメーンは嘲笑するだけ。
そんな中、私は…考え、考え、考える。




…そして、どうしようもない絶望の結論に至り…全てを割り切ったのです。
それしか、策はないのだと、分かってしまったので。

378Mii:2018/11/03(土) 18:33:00 ID:H.lk9j0s
サヤカをやや乱暴に振り払い。ゆっくり、ナスタシアの方に歩いて行き。




ロゼッタ「なるほど…そういうことなら、ナスタシアを死なせるわけには参りませんね。
      そのナイフで刺す役目、せめて私にさせてください。
      …あ、不意打ちでナスタシアを刺すとかはしないのでご安心を」







え、と固まるナスタシアの手から――指を引きはがし優しくナイフを貰い受け。
鋭い切っ先を、サヤカに向ける。

379Mii:2018/11/03(土) 18:35:53 ID:H.lk9j0s
サヤカ「…ママ?嘘…だよね?」

この世の終わりという表情のサヤカ。しかし、動じてはなりません。
しっかりと、言い聞かせなければ。

ロゼッタ「ほーら、左右に動いちゃ駄目よ。怖がって避けられると、上手く心臓に刺さらないでしょ?
      却って痛いことになっちゃうのよ?」

サヤカ「……………………っ!」

絶望して、足がすくんで逃げ出すこともできず、大粒の涙を流すサヤカ。



ロゼッタ「大丈夫、何も考えなければ痛くない、痛くないわ。
      痛かったとしても一瞬で済むから、さあ」

サヤカ「いつものママに戻って!お願い!」ボロボロ



3メートル、2メートル、1メートル。
サヤカとの距離が、ほぼ0になって――。

ナイフを、心臓に、違うことなく突き刺しました。

380Mii:2018/11/03(土) 18:40:48 ID:H.lk9j0s
サヤカ(ああ、もう…どうでも、いいや。
     わたし、悪い子だったから、やっぱりママに嫌われたのかな。
     パパも、ごめんなさい――さよなら……)






サヤカ(…あれ、…………痛くない。ここは、天国?)





思わず目を瞑ってしまったけれど、どこも痛くない。
恐る恐る目を開けたら……






ママの振り上げたナイフは、そのまま腕を捻られて…
ママの胸に、深々と…刺さってた。

381Mii:2018/11/03(土) 18:42:30 ID:H.lk9j0s
時が、止まったみたい。


ロゼッタ「ディメーン、ピーチ姫に伝えてください。
      私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と」



――怖い思いさせて、ごめんね。
そんな声が聞こえた、かもしれない。

ママはニコッと笑って…笑ったように見えて…
次の瞬間、ドバっと血を吐いて倒れ込んだ。




ナニガ オコッテイルノカ、ワカラナイ。



ナスタシアさんとかいう女の人が、絶叫しながらも必死に駆け寄ってくる。
私は、体中に浴びちゃった赤い血で、一瞬なんにも考えられなくなって……
たちまち泣きじゃくって、ママにすがりついていたの。

382Mii:2018/11/03(土) 18:45:07 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ママ、ママ!」ボロボロ

必死に、何度も何度もママを呼ぶけれど、目を閉じたまま…全然返事がない。
ナスタシアさんが、へなへなと座り込んでしまった。

ディメーン「ほいほーい、空間把握で心停止かくにーん。
       これにて、チャンスタイムしゅうりょー!

       いやいや、泣ける話じゃないか。即興にしては上出来だよ!
       じゃあ、僕は一旦あちらの様子を伺ってくるかな、アデュー!」シュンッ




サヤカ「あああああああああ!」ボロボロ

ナスタシア「…これが…これが、貴方の出した答えというのですか。
      理解不能、です。理解したくも…ありません」

383Mii:2018/11/03(土) 18:49:06 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ナスタシアさんっ!魔法使いなんでしょ!
     魔法で、ママを蘇らせてよ!一生のお願い!」ボロボロ

ナスタシア「…あいにく、そのような技術もなければ、魔法の力もまるで足りません…」

サヤカ「うええぇぇぇん!!!」ガバッ

ナスタシア「いくらせがまれても、不可能な物は不可能です!分かりなさい!」グズッ



クイクイッ。



ナスタシア「ですから、私には無理だと言っているでしょう!」クルッ





ロゼッタ「……あのー」ドクドク





サヤカ「……えっ」

ナスタシア「えっ」

384Mii:2018/11/03(土) 18:50:54 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「倒れた体勢なので代わりに教えてほしいのですが。ディメーン、いなくなりました?
      見張りの分身体とかもいないですね?」ドクドク

ナスタシア「……は、はい」

ロゼッタ「そうですか…………」フゥ

ロゼッタ「………………………………………」

ロゼッタ「痛い痛い痛い痛いっ!?現在進行形で吐き気千万、死んじゃいますっ!なんですかこの痛みゴホッ!?
      ってまた血を吐いてしまいましたか!?何が痛みが一瞬で終わるですか、
      そんな無責任なことを宣った人は出て来て反省してくださいよーーーっ!!!!
      ナスタシア!早く、早く暗示で鎮痛を、鎮痛をお願いします!」ドクドクドクドク

サヤカ「」

ナスタシア「」


――びっくり。ママが生きていました。

385Mii:2018/11/03(土) 18:54:58 ID:H.lk9j0s
ピローン。

ナスタシア「…は、は、はい。暗示を掛けました。……しかし、ど、どうして!?心臓が再び動き始めて…!?
        いや、そもそもナイフの軌道は、心臓を的確に破壊したはず!」


ロゼッタ「ゴホッ…口の中も血だらけなので、背景説明もせず言葉少なに解説するとですねゴホッ、
      今の私の体、50%…半分は魔法の力で動いているのですよ。

     要するに、心臓がズタズタに破壊されて血液循環が停止し、ATP機構やらが働かなくなろうが、
     各組織は出力50%確保…生存ラインぎりぎりで動き続けるくらいならできるみたいですね。
     一か八かの賭けだったのですが、上手くいきました。今だけは特異体質に感謝ですね」

サヤカ「え、じゃあママって不死身なの!?」

ロゼッタ「…残念ながら、全ての力を生命維持に費やすから、まともに歩くこともできないわ。
      それに、重要臓器の機能不全で死ぬことはないけど、ちょっとタイムラグを作れただけで、
      このままだと出血多量によるHP切れで死ぬわね」

サヤカ「……っ!それじゃ、意味がないよ!!」


…涙が引っ込んだのもつかの間。
やっぱり、ママは死んじゃうんだ。それを知り、再び涙があふれてくる。
…でも、ママは――口元から血を流すことも気にせず、優しく語り掛けてきた。

386Mii:2018/11/03(土) 19:00:17 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「ねえサヤカ、今でもママのこと、好きでいてくれている?」

こく、と小さく頷いた。

ロゼッタ「ありがとう。ママも、サヤカのこと大好きよ。
      ――このピンチを切り抜けるために、ママの命をサヤカに預ける。
      だからサヤカも、ママの言うことを信じて…言う通りに動いてほしいの。
      できる、かしら?」

サヤカ「…………わかった。私、頑張る」



ママは、私をしっかり抱きしめてくれた。血の匂いはきついけど…あったかい。



ロゼッタ「と、いうわけでですね。ナスタシア。
      あと一回だけ、私の大博打に、付き合って頂けないでしょうか?」

ナスタシア「…わかりましたよ。どうやら、貴方たちと心中するしかなさそうですね」



やれやれと呆れた感じで、ナスタシアは肩をすくめて苦笑いする。
…そう。脱出するなら、3人揃って、一人も犠牲者を出さないで。

387Mii:2018/11/03(土) 19:07:13 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「とりあえず、確証があるわけではないのですが。

      『警戒無くこちらに戻ってきたディメーンに大きなダメージを与えることができれば、
      異空間が崩壊して元の世界に戻れる』ことを大前提としますが、よろしいですか?」

ナスタシア「異議ありません。行使者が弱れば魔法の維持力も連動して弱まるのは道理に適っていますし、
       そもそもその前提がなければ我々は本当に詰んでいますから。希望的推定もやむなしです」

ロゼッタ「そして、相手の魔法防御の高さや、こちらの魔法行使の制約を考えて、魔法による攻撃は論外。
      一方で、物理防御は低そうです。

      先ほど、自分では手を下さず離れたところから私たちで仲違いさせようとしたのも、
      わざわざ特製ナイフを調達したのも、肉弾戦の万が一を恐れていることの証左…
      物理的なダメージを与えるほかに道はない」


――空間把握だけで死亡を確認するあたり、ズボラな所まで私と似通っていますね。
全然嬉しくありませんが。これは是が非でも体力を付けないと。


ナスタシア「…残念ながら、その通りです。しかし、遠方に現れるディメーンを物理的に攻撃するなど…
       さきほどのようにスターピースを投げる位しか術がない。他に策があるのですか?
       言っておきますが、私でも貴方の投擲に比べて少しはマシ、という程度ですよ?
       いえ、片腕というバランスの取れていない状態では負ける可能性すらあります」

388Mii:2018/11/03(土) 19:12:52 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「…いえ。また、スターピースを投げてみようと、思います。
      先ほどコツンと弱弱しく当てた時、僅かながら…ディメーンが条件反射で慌てて躱そうとしていました。
      つまり、一度転移したら数秒は待機時間が必要になる、みたいに、連続の空間転移には制約がある。
      速度さえ十分なら、スターピースを叩き込めるはずです。

      おまけに先ほどの一発で…威力を過小評価している可能性も大です。
      もう馬鹿な真似はしないだろう、とでも考えて、防御壁を張られたりはしないでしょう」




そして、温めていた作戦をサヤカとナスタシアに披露します。





サヤカ「……そんなこと、できるの?」

さすがのサヤカも、半信半疑。いえ、二信八疑くらいでしょうか?

ナスタシア「冗談じゃ、ないのですか?そんな意味不明で無謀な作戦、聞いたことがない!」

――いえいえ、ところがどっこい、大真面目な作戦なのですよ。



題して…「マリオネット作戦」という作戦名は、どうでしょうか。
おかしくなって、小さく笑うのを、2人は不思議そうに見ていました。

389Mii:2018/11/03(土) 19:16:36 ID:H.lk9j0s
ピーチ(――ああ、ああ)

何が、サイコーのショーだ。こんなの、最低、最悪だわ。



戻ってきたディメーンが持っていたもの。――血濡れのナイフ。



ディメーン「いやあ、実に…実に素晴らしい寸劇が繰り広げられたよ。キミたちにも見せてあげたかったね、ふふ」

デイジー「……ロ、ロゼッタは?サヤカちゃんは?も、もちろん生きているわよね!?」

ディメーン「あー、うーん。どうだったっけな。
       …あ、そうそう。ピーチ姫、ロゼッタから伝言があるんだった。
       一字一句違えずに伝えるから、よーく聞くといいよ」ニヤリ



――『ピーチ姫に伝えてください。
――私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と』だって。
――うん、間違いないね!



皆の目が、見開かれる。
デイジーの目から、一筋の涙が…こぼれ落ちていく。

390Mii:2018/11/03(土) 19:18:25 ID:H.lk9j0s
デイジー「嘘よ…そんな、の」

ディメーン「そうかもね、そうじゃないかもね?
       さあさあ、どうする〜?もはや守るべき者がいなくなったと開き直って、
       一気に反撃し出すかい?
       まだ全員死んだわけじゃないから、我慢を続けてみるかい?
       はっはは、究極の選択だねー!好きな方を選ぶといいよ!」


――狂っている。こんなことが、許されていいの!?


私たちのモチベーションは、もはや総崩れ。
ただただ、無気力、無抵抗。
あのマリオが、クッパでさえも、言葉を一言も発せず俯くまま。


キノコ王国のトップとして、時には少数を捨てなければならないのは分かっている。
でも、それでも…っ!

391Mii:2018/11/03(土) 19:22:14 ID:H.lk9j0s
ディメーンは本当に、好き勝手に爆撃をしてくれている。あたり一面、焼け野原。
…いえ、私たちが動かないでいるから、まだ周辺住民には手を出さないでいる、と考えればマシか。

特に、今もしも城下に目を付けられでもしたら、どれだけの民が犠牲になることか。
星くず祭が開催中で、避難も一切済んでいないというのに。

戦闘力としては、いくら開きがあるとはいえ…
こちらの攻撃は当たらず当てられず、攻撃されるまま。ジリ貧ね。

――と、思った矢先。



マリオ「ピーチ、かわせっ!」


一瞬の隙を衝かれ、思いもよらぬ激痛が、頭を襲う。
ぐわん、ぐわんと脳が直接ハンマー攻撃でも食らい、揺さぶられるような感覚。

激しい発作に見舞われ膝をつきながらも、自分の体を確かめる。

ピーチ「……な、何?今、何が起こったの?マリオ、見えた?」

マリオ「よくわからんが…通常の魔法で、そうはダメージは受けないはずだ。
     転移魔法を利用して、何かやろうとしたな?」

ディメーン「んー、60点だね。せっかく、余所見している間に頭部を切り離して痛みも感じさせず即死させようとしたのに…
       頑丈だなあ、腹が立ってくるよ」ムカッ

――何よ、その反則行為。

392Mii:2018/11/03(土) 19:26:23 ID:H.lk9j0s
ピーチ「…へえ、ずいぶんと器用なことができるようになっているじゃない。
     馬鹿に凶器を持たせるといいことがまるでないわね」

ディメーン「褒め言葉と受け取っておくよ〜。
       …そう!これまで、物体全体の境界面が魔法行使の分解能だったボク!
       しかし、偉大な古文書のおかげで、さらに細分化して、切り離しての操作が可能となった!
       いやあ、僕って天才!?」

ピーチ「結局あなたって物に頼ってるじゃない。
    そんなことができるのなら、陰からコソッと私たちを始末すればよかったのじゃないの?」

ディメーン「甘い甘い。これは『復讐』なんだよ?そんなの、何の意味もないじゃないか。
       敵は分かっているのに為すすべもなく蹂躙される、そんな気持ちを味わってもらわなくちゃ!」



ピーチ(そんな気持ちなら、ロゼッタの訃報を聞いた段階で、なっているわよ…っ!
     これなら曖昧なままのほうがどれだけよかったことか…っ!)

393Mii:2018/11/03(土) 19:29:24 ID:H.lk9j0s
………ふと、違和感。
何か、つじつまが合わなく、ないかしら。
いえ、気のせいか。



…気のせいじゃ、ない。




……ロゼッタの訃報が嘘か否か?それは関係ないわ。
あの夥しい血、誰かが致命傷を負ったことは疑いない。
つまりどう転んでも、胸をなでおろす状況は有り得ない。



そうじゃ、なくて。
そもそも、壮絶な最期を遂げた、みたいな回りくどいことを、ロゼッタが意味もなくディメーンに語らせるかしら?
伝われば当然こちらの指揮は下がる、それはロゼッタも重々承知のはず。
その仰々しさで言わしめた、意味……。

394Mii:2018/11/03(土) 19:32:38 ID:H.lk9j0s
ハッと、気付いた。
ロゼッタが死んでいるのではなく、『ディメーンを騙し通せて、生きている』としたら?
言葉に隠された意味も、ガラリと変わってくるのではないかしら…?



…そういう、ことね。




だとしたら、ロゼッタは『待っている』。




タイムリミットがあることも確実。
でも……一本の、細い、細い、光明が見えた。

395Mii:2018/11/03(土) 19:40:46 ID:H.lk9j0s
気付かれないように、感付かれないように、自然に振る舞え、私。
どんな会合よりも、演説よりも、気を引き締め過ぎてしすぎることはない。

ピーチ「…もう、アッタマに来たわ、マリオ。
    生きているかも分からない人と天秤にかけて、現実世界を危険にさらすわけにはいかない。打って出るわよ!」

マリオ「…っ!?いいのか!?」

ピーチ「仕方のない、ことよ。…じゃないと、ロゼッタが浮かばれないわ」ポロポロ



慌てず急げ。拍を調節しなさい。態度の急変を悟られないように。

396Mii:2018/11/03(土) 19:42:09 ID:H.lk9j0s
ピーチ「それに、よく考えたら、人質たちが危害を加えられてるわけないじゃない。
     そんなことしたらディメーンにとって、交渉材料を失うだけなんだから。違う?
     あぁ、馬鹿な真似をしちゃったわ」

ディメーン「へえ?ナイフの件はどうなってるの?」

ピーチ「さっきの血はブラフ、どうせただのギミックよ。
     悔しかったら、遺体の一部でも見せてみなさいよ」ハン

ディメーン「ふーん、そんなこと言っちゃう?案外薄情だね、お姫様」

ピーチ「ペテン師の言葉を聞くだけで信じるなんて馬鹿だもの。
     私、現物を見て確かめるまで信じない性質だから」

ディメーン「あ、そう。じゃあ、言われた通り、死体を持ってこようか。待っててね」

ピーチ「……え、ま、まさか。……ううん、どうせハッタリよ!有り得ないっ!」

ディメーン「もう、おそーい!」シュンッ



ピーチ(…うん。こんなところ、かしら。あとは神に祈るのみね。
ロゼッタを信じるなら……ディメーン、『もう、おそい』のよ)

397Mii:2018/11/03(土) 19:44:45 ID:H.lk9j0s
表世界から、異空間へと、世界が、繋がる。


空間が、歪み始める。


――ディメーンのお出ましですか。
チャンスは、たったの、一度きり。



そして……私、ロゼッタは……地に伏すことなく。
止め処なく血を垂れ流しながらも…人形のように生気を失った状態でありながらも…
ナスタシアに支えられ、しっかりと立っている。



『ディメーンの再度の転移の兆候を掴む瞬間まで、一切の感情、発奮を捨て、
HP保持に努めなさい』



ナスタシアの暗示が効きました、と、暗示が切れた瞬間に理解しました。
――ディメーンが現れるまで、あと3秒。

398Mii:2018/11/03(土) 19:46:06 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「距離15、高さ3!」ビシッ

サヤカ「はいっ!」

サヤカの手には、やや小さめのスターピース。



『いい?私が指差しとともに距離と高さをメートルで指示するから、
転んでもいい、くらいの気持ちで、全力、最高速で…投げ切りなさい!』

『うん!一球にぜーんぶ込める!』

399Mii:2018/11/03(土) 19:49:06 ID:H.lk9j0s
サヤカが、投球モーションに入ろうとする。
小さい体ながらも、狙い見極め、無駄の全くないフォームが見られるはず。

『でも、わたしの力じゃ、とても遠い距離まで勢いが出ないよ?』

『ふふ。サヤカの持つスターピースは、あくまで感覚をずらさないため。
敵に当てる必要はないの。……というより、サヤカの投擲が完璧なら、『絶対に当たらない』わ。


――ママの空間把握能力、信じなさい』

400Mii:2018/11/03(土) 19:55:15 ID:H.lk9j0s
ナスタシアが、声高らかに……新たな暗示を。
私の脳は、命令を速やかに書き換える。

ナスタシア「ロゼッタ!この暗示宣言後、
       『1秒間、生命活動維持をカット!サヤカの身体動作の完全相似模写を最優先とせよ!』」

ロゼッタ「ハイ」スッ・・・


サヤカが、脚を振り上げる。
私も、脚を振り上げる。

サヤカが、胸を張り、全身を躍動させ、スターピースに勢いを与える。
私も、胸を張り、全身を躍動させ、大きなスターピースに大きな勢いを与える。

サヤカの拳の中で、スターピースは…加速する。
私の拳の中で、大きなスターピースは…たちまち加速する。


サヤカに全てのモーションをクイックにしてもらって、更に相似拡大効果を上乗せ。
私の体は、サヤカに操られ、鈍い音を立てながらも、傷口を広げつつも、動く、動く。

『無意識に魔法の力を使って』、自分のまるで意図しない方向に、意図しない速さで、
セーブもなしに動くものだから、鎮痛暗示が意味をなさないほどに、痛い、痛い、痛すぎる。
組織の停止、無酸素状態の襲来までも。涙を堪え、歯を食いしばる。
――お手本があれば、動かすことは、できるっ!

ディメーンが現れる、1秒前。
でも、これで、届く――。

401Mii:2018/11/03(土) 19:57:55 ID:H.lk9j0s
――しかし、大きな誤算に気付き、愕然としました。




――このままでは…勢いはあっても、当たらないっ!?




サヤカとの位置関係から、補正した距離情報を手短に伝えましたが、不十分だった…?

体格差を考慮した補正が間違ってしまっていた…?

いえ、サヤカが狙って投げるには高低差がありすぎる不慣れさが原因…?。

モーションを早めてしまったために、リリースポイントが狂った…?

身体動作にガタが来た、あるいは模写が不完全…?



とにかく、このまま投げては…当たらない事だけは、直感で分かってしまいました。
微妙にずれた、そっぽの方向に飛んで行って、終わりでしょう。

402Mii:2018/11/03(土) 19:59:43 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ(……万事休す、ですね)



――まあ、博打は博打なりに、最善は尽くしました。潮時というものでしょうか。
――最後の最後で、結局サヤカを裏切ることになってしまいましたが、許してくれるでしょう。




……なーんて諦めができるほど、人間、できてはいないのです。





なんとしてでもマリオやピーチと合流し、にっくき敵を叩きのめし。
ケガなんてどこへやらと全身完治させ。


また、サヤカと一緒に笑いながらキャッチピースをして。
一緒に綿飴を半分こするのです。







ロゼッタ(……………………わた、あめ)

403Mii:2018/11/03(土) 20:03:17 ID:H.lk9j0s
ロゼッタ「……っ!」キッ

暗示が解けた、直後。スターピースが手元を離れる、直前。
神経を研ぎ澄まし、集中、集中、集中っ!!

生命活動さんは、1回じゃなくて2回お休み。
組織へ注がれようとした全身の魔力を奔流とし、投げる右手に萃(あつ)める。
耐え切れず、手首が腫れ、血を流し、どんどん裂けて行きますが、あとで何とでもなるでしょう。



血飛沫まで巻き込みながら、スターピースの周りが光り、空間が渦を巻く。





ロゼッタ「はあああああああああああぁぁぁーっ!!」




とうとう、私の体から離れた、スターピースは。

ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

自分でも信じられないくらいの高速で、うなりを上げて飛んで行き…
出現したばかりのディメーンの腹部に、しかと、突き刺さったのです。

404Mii:2018/11/03(土) 20:07:38 ID:H.lk9j0s
ディメーン「か、はっ!?」

一条の弾丸に、気付いたころには、もう遅し。


――馬鹿な、何が起きた!

――まずい、空間が、割れていく!?

ボクの行動に、不備などなかった。なのに、どうしてアイツは皮一枚繋がって生きている!?
いや、生きていたところで、このスターピースの勢いはなんだ!?



景色はたちまち、表世界へ。



あの3人は墜落、しかしすぐさまピーチ姫が駆け込んでいく。
確実に助けられ回復を施されるだろう。



ディメーン「何故だ…何故だ!許さない許さない許さないっ!ふざけるな!」

初めて事が上手く運ばなかったことに、煮えたぎる湯のように怒りが込み上がってきた。

405Mii:2018/11/03(土) 20:10:17 ID:H.lk9j0s
ピーチ「ロゼッタ!!やっぱり生きてたのね!」ポロポロ

デイジー「うわーん!」ダキッ



ロゼッタ「ぎゃふ(吐血)」チーン



ピーチ「…って、とんでもない重体じゃない!!
     『みんなげんきになあれ』!『おねがいカムバック』!10連打ァ!!!!」パアアアアアアアアアアア



ロゼッタ「…ふう。なんとか、生き永らえちゃいました」パアアァァァ

ルイージ「びえええええ、よかったよおおおお」

デイジー「顔ぐっちゃぐちゃじゃん、気色悪いよ」グズッ

ルイージ「なんか理不尽だよぉ!」ビェェ




ピーチ「ナスタシアも。お疲れさま、そして本当に…ありがとう」

ナスタシア「ふふ、こちらこそ、意外性の塊の彼女に助けられました。本当に、いい友人をお持ちですね。
       …ああ、やはり両手があると安心します」ホッ

406Mii:2018/11/03(土) 20:15:26 ID:H.lk9j0s
サヤカ「ママ、ありがとう!うわーん!」ダキツキ

ピーチ「ああ、この子が噂のロゼッタの子供ね。本当に…本当によく、耐え抜いたわ。
     ロゼッタに似たのかしらね」

ピーチ姫が、微笑みます。

ロゼッタ(サヤカが、血濡れではありますが満面の笑み…いえ、涙。ええ、これで一安心。
      さあ…形勢逆転、反撃の狼煙と行きたい所!
      …まあ、私の出る幕はないでしょうが!)グッ

サヤカ「…でも、さっきのボール…じゃなくてスターピース、周りに風を纏って、物凄い速さで飛んで行ったね。
     一体、何をしたの!?わたし、あんなことやってないよ!?」

ロゼッタ「……どうしても、最後の最後でスターピースの軌道がずれることに気付いたのよ。
      だから、体中の魔力を振り絞って、強烈なスピンを掛けながら強引に軌道修正したの。

      回転体は、物理的に回転軸方向を保とうとする復元力が働くから…
      回転軸方向が進行方向に一致すれば、おそらくブレを抑えられると思って。
 
      まあ、体の限界も考えずに行き当たりばったりで試したから、
      腕が雑巾みたいに千切れる寸前までダメージを受けたけどね」

407Mii:2018/11/03(土) 20:24:05 ID:H.lk9j0s
サヤカは、一瞬息を飲み…ますます目を輝かせました。

サヤカ「凄い、凄いよ!ママ!物理?とか、理論は難しすぎて、よくわかんないけど!」ピョンピョン

ロゼッタ「ええ、まさか綿飴機から連想して機転を利かせられるとは。本当によかったわ!」

サヤカ「そうじゃなくて!…あ、えっと、それもそうだけど!



    ママが投げたの、きっと『ジャイロボール』……

    いや、それどころじゃない。『ハイスピンジャイロボール』だよ!」





ロゼッタ「…じゃいろ、ぼーる?」

サヤカ「一流の野球投手でも、投げられるのがほーんの一握りしかいない、すっごく強力な投球法だよっ!
     初速からの減速を極限まで抑えられて、ストレートが物凄く伸びるボールになるの!

     ママはそれをいきなり投げられたんだよ!」キラキラ

ロゼッタ「まあ、まあ!それは喜ばなければならないわね!」

…まあ、ズルをしているのだけれど。せっかくサヤカが飛び上がらんばかりに喜んでいるのだもの、
言わないでおきましょう。

408以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/04(日) 08:20:49 ID:cLCKkdKU
スピン力学SUGEE

409Mii:2018/11/15(木) 22:21:39 ID:ziBygO06
と、そのとき。


ふたたびピリッとした空間のざわめきを感じ取り、慌ててそちらを見やります。
何事か、と不思議がっていたピーチ姫たちも、私に釣られて。



――分かりきってはいましたが、倒し切ったというわけでは…さらさらなさそうですね。
中空にクルクルッ…と空間を割って、ディメーンが現れました。


今度はしっかり防御壁を引っ提げて現れる徹底ぶり…流石に警戒したのでしょう。
苦悶の表情…というよりは、憤怒、激怒の感情がありありと伺えます。
目に入ったもの全て、焼き払って灰にしてしまいたい、といわんばかり。

410Mii:2018/11/15(木) 22:26:11 ID:ziBygO06
ディメーン「ふざけるな…ふざけるなっ!今のボクは最強、無敵なんだ!お前らごときに負けるはずがない!
       …もういい、出し惜しみなどしないでフルパワーを出してやる!後悔しても、遅いからな!」

マリオ(いつものニヤケ節はどこへやら、か。すっかり逆上して隙を作ってくれてるのはいいが…『スーパージャンプ(RPGver.)』!)

ルイージ(かといって、無茶苦茶に暴れられるってのも困るんだよね!『スーパージャンプ(スペマリver.)』だっ!)

マリオとルイージが、それぞれ別々の死角方向からジャンプ攻撃を仕掛けます。
しかし、マリオの強烈な踏みつけも、ルイージの大砲のような叩き上げも、空間転移によって難なく避けられてしまいました。

あの2人ですら、スピードで追いつかないなんて。

あわやぶつかる、というタイミングで、2人はひらりと体をそらし、そのまま見事着地。
拍手喝采の動きですが、警戒しながら戻ってきた本人たちは不満そうです。

マリオ「…やばいな、今ので速度不足だと、もう転移後のまぐれ当たりに賭けるくらいしかないぞ。
    そもそも当たったところで、防御壁を壊せるかもよくわからん。あれがなけりゃ、一撃なんだが」

ピーチ「…こうなったら、ロゼッタ。貴方にも戦ってもらうわよ。いいわね?…デイジー、杖を返してあげて」

デイジー「わかった!はいっ!」

ロゼッタ「…は、はい。出る幕、ありましたか…」

気力的に、かなり限界なのですが……。傷こそ完治していますが体中血だらけで、いざ戦ってやろう…という気概も中々見せられません。
…しかし、緊急事態は未だ続いているので仕方がないでしょう。久しぶりに、杖をしっかりと手にします。
キラリ、と杖が輝きました。よろしくお願いしますね。

411Mii:2018/11/15(木) 22:29:09 ID:ziBygO06
ピーチ「手短にロゼッタの攻撃魔法の威力、効果範囲を教えて。作戦を立てるわ。
     私よりも魔法Lvが高いんだもの、期待しているわよ!」

ロゼッタ「…ええっ!?きゅ、急にそんなこと言われて、も…!」



――ま、まずいです。なんだか、ハードルをかなり高く設定されている気がします。
そんなに大したことはできません。幻滅されそうなのですが…!

ロゼッタ「…………すいません、そういうことなら、ご期待には沿えません。
     ――――実は私、『回復魔法』と『空間魔法』以外は一切使えないんです。
     そもそも、敵と対峙するなんで経験がまるでなかった、もので」

私の声は、尻すぼみ。
耳にしたピーチやマリオは驚天動地。魔法使いとして有り得ない、という顔を思い切り向けてきます。

ピーチ「……はああああああっ!?何よそれ!?」

ロゼッタ「それに加えて…ピーチ姫も薄々気付かれていると思いますが。
      私は最大FPが貧弱なせいで、まるで魔法Lvの高さを活かせない体たらく…本当にすいません」シュン




空間魔法は、FP燃費が唯でさえ凄まじく悪いのに。
行使すること自体は 『簡単』 なのですが…。

412Mii:2018/11/15(木) 22:34:09 ID:ziBygO06
ピーチ「…私も悪かったわ、いきなり実践投入は難しいもんね。気を落とさないでちょうだい。
     …じゃあ、回復はお願いできるかしら?」


…それが、それすらも容易ではないのです、私の場合。


ロゼッタ「……えっと、私の回復魔法はFPを最大値近く消費するので、
      杖が戻ったとはいえ今はちょっと…だいぶ体の枯渇領域に還元してしまいましたし…」ビクビク

ピーチ「どうしてよっ!?回復魔法ってそんなにFP使わないでしょ!?本当に魔法Lv高いの、ロゼッタ!?」

ロゼッタ「す、すいません、全然お役に立てず…」グズッ


――やはり、魔法使いとして未熟者もいいところです、よね。


デイジー「ま、まあまあ落ち着いてよピーチ。ロゼッタ、じゃあどういうことならできる?
      きっと役に立てる場面もあるはずだよ!」

ロゼッタ「…………ディメーンの攻撃を食らいそうなとき、私の空間転移で緊急避難させる、くらいなら」

ピーチ「…よし。じゃあそれだけは頼むわよ。
    でもね、この件が片付いたら、ロゼッタはちょっと魔法の覚え直しね」

ロゼッタ「…はい!そのときはぜひ、ご教授願います!」

――よかった、少しは役に立てて。
でも、ピーチ姫に失望されないよう、精進しなくては。

413Mii:2018/11/15(木) 22:37:02 ID:ziBygO06
ピーチ姫は、私を戦力に考えるのは難しいと捉えたのか、私およびサヤカのことをデイジー姫に任せて戦闘態勢に入りました。
私は私で、サヤカをしっかり庇いつつ、付近の様子を伺い続けます。


デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。ちょっと聞いていい?」


と、そこに。デイジー姫が耳打ちしてきました。


ロゼッタ「はい、なんでしょう?」

デイジー「ロゼッタって、ほうき星を管理する中で、星の表面をいろいろ開拓していったんだよね。
      自分よりずっと大きくて重い物だって沢山あったでしょうに、どうやって動かしたの?
      今の話聞いてると、ロゼッタ1人じゃ何百年もの時間があったとしても無理そうなんだけど…」

ロゼッタ「チコたちのおかげです。私の魔法の杖は少し特殊でして、周囲の星々やチコから少しずつ魔力をおすそ分けしてもらい
      集積することができ、私にそれを還元してくれるのですが…。

      大勢のチコたちが集い、住み着くほうき星は、それ自体が魔力の聖域。
      チコやほうき星から魔力を供給される限り、最大値こそ定まれど、私は繰り返しFPを使用することができます」

デイジー「へえ、でもやっぱり一度に行使できるFPは限られるんだ…」

ロゼッタ「…いえ。本当の本当に一大事、という場合では、何千ものチコたちに集まってもらい、
      直接FPを転送してもらって問題に立ち向かう、ということができなくもありません。
      その場合、限界値を大幅に超えた出力で魔法を繰り出すことができます」

414Mii:2018/11/15(木) 22:40:00 ID:ziBygO06
デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。仮に…仮にだよ?
      FPが使い切れないくらい潤沢にあったとしたら、どのくらいのことができるの?」


ロゼッタ「そうですね…昔話になってしまいますが。
      ほうき星を管理しているとき、何千ものチコたちにFPを借り受けて、一致団結して――。






      このままでは衝突を免れないような直径数百キロの巨大隕石をやり過ごしたことなら、
      三百年くらい前にありますよ。一週間ほど目を覚まさない副作用付ですが」



デイジー姫は、何故かあんぐりと口を開けていましたが…今はどのみち関係がないことでしょう。
ここにはチコたちもいないのですから。

さあ…集中しなければ。
なけなしの勇気を、もう一度振り絞ってみます。

415Mii:2018/11/15(木) 22:44:36 ID:ziBygO06
――ディメーンが、現れました。

右に。左に。上に。前に。後ろに。

肩車をしながら。
高笑いしながら。
リズミカルに踊りながら。
フヨフヨと漂いながら。
木々の陰に隠れながら。
屋根の上に腰掛けながら。



「「「「「さぁ〜て、ボクがどこにいるか、わかるかな〜?」」」」」

推定、百体以上。頭がおかしくなりそうです。




そんな中でもマリオ、そしてクッパは不敵に笑って、腕をポキポキと鳴らせてみせます。

マリオ「ここから本物を探し当てるのはしんどそうだが…とりあえず片づけるか。
    時間稼ぎに付き合う気はない、全体攻撃を駆使して一気に行くぞ」

クッパ「…だな。ディメーンの魔力を削ぎつつ、撃墜数勝負でも洒落こむとするのだ!」

さすが、我らがヒーロー、そしてそのライバル。心強い限りです。

416Mii:2018/11/15(木) 22:47:51 ID:ziBygO06
ピーチ「油断しないでよ、どうせ本体はどこかから不意打ち仕掛けてくるんだから!」

司令塔のピーチ姫が警戒を呼びかける中、マリオとクッパが主体となって薙ぎ払い始めます。

マリオ「ツギツギジャンプ!」バキッ

クッパ「ファイアブレス!」ゴォォォ

マリオ「ウルトラジシーン!」グラグラッ

クッパ「衝撃波なのだっ!」ビシャーン!

ルイージ「た、高い所から手あたり次第ファイアボール撃っておこうっと…」

クッパ「ルイージ、真面目にやれ!スマブラ初心者か!」



それでも分身体は減った傍から増え続け、中々数を減らしてくれません。



マリオ「めんどくさいから『ヤッツケーレ』で体当たりしまくるか」ポコッ ポコッ

クッパ「ううむ、それは真面目…なのか?」

ルイージ「兄さんだけバッジ効果ずるいよー…」

417Mii:2018/11/15(木) 22:49:42 ID:ziBygO06
そのとき、炎が私に目がけて迫ります。

とっさにサヤカを庇いつつ後ろへ…身をそらす必要もなく、横から伸びてきた長い舌に絡めとられました。

ロゼッタ「ありがとうございます! 助かりました!」

ヨッシー「まあ、お安い御用ってことで。デイジーに護衛を任せられたからには守り切って見せますよー。
      後でお菓子の一つでも下さいね」

ロゼッタ「はい、そんなことでいいなら喜んで!……え、デイジー姫に頼まれた?」



どうしたことかと振り返ると、何やらデイジー姫が身振り手振りも交えながらピーチ姫に嘆願中。
策でも浮かんだのでしょうか…?ここからではよく聞き取れません。

418Mii:2018/11/15(木) 22:54:55 ID:ziBygO06
ピーチ「…へえ。大して有効策もないし、それが本当なら、試してみる価値はありそうね。
     わかった、デイジーは別行動を許す。その間はカバーするから」

デイジー「うん!」

ピーチ姫が、おもむろにポケットから電話を取り出し――。

ピーチ「ああ、カメック。急ぎ、クッパ城にて待機中のクッパシップを、残りの積荷そのままで全速力でキノコ王国の外れの公園まで誘導して。
     …え、理由?いいから急いでっ!

     30分以内に着いたら、ケーキの材料費全額こっちで負担してあげる。
     1時間超えたらクッパ城焼き払う!オーケー!?分かったらとっとと動きなさいっ!」

ロゼッタ「い、一体どうしたというので……」



大声の命令にたまらず驚き、口を挟もうとしたところ、これまた突然に待ったが掛かりました。
声の主のナスタシアは、妙に差し迫った様子です。

ナスタシア「ちょっと、待ってください!何をするのか知りませんが、大変なことになりました!
       速やかに場所を移してくださいっ!」

――今度は一体、何が。

419Mii:2018/11/15(木) 22:57:53 ID:ziBygO06
ピーチ姫が、咄嗟に電話を保留しナスタシアに注目します。

ピーチ「ナスタシア、何か感付いたのっ!?」

ナスタシア「本体はどこかに潜んで分身体を作り続けていると勘違いしていましたが、どうも違います!

       分身生成間際のディメーンをマリオが殴り倒してみれば同じく分身体であった、というケースが見られます!
       私が知り得ていた過去の情報からすれば信じられませんが、
       そのくらいの芸当は分身体にもできるようになっている!

       だったら…本体がここにいる必要、ないでしょう!?」

ピーチ「…まさかっ!」


ピーチ姫が、顔を真っ青にします。


ルイージ「どういうこと、兄さんっ!」

マリオ「そうか…こいつらおそらく、全員が分身体だ!本体はとっくに離脱してる!
     そんでもって、アドを取るために、おそらく新たな人質確保に躍起になってるぞ!」

クッパ「お、おい…じゃあ、まさか向かった先は…!?」




――まだまだ往来盛んな、キノコ城、城下っ!

420Mii:2018/11/15(木) 23:02:06 ID:ziBygO06
ピーチ「助かったわナスタシア、全員、城下に向かうわよっ!悪いけどこっちは放置!」

分身体はワラワラ居続けますが、幸い人気はない。
後ろ髪を引かれつつも、全員、ピーチ姫に釣られて駆け出します。
…私はピーチ姫に、サヤカはデイジー姫に速やかに担がれて。

…いやまあ、サヤカをこんなところに取り残すのは論外なのですが、
なんとも恥ずかしい絵ですね。




しかし、ナスタシアの機転もむなしく。
判断の遅れは如何ともし難かったようで。


すこしばかり…遅かったようでした。

421Mii:2018/11/15(木) 23:03:44 ID:ziBygO06
ピーチ「なんて…こと」



既にキノコ城前の広場には、ディメーンの魔法に囚われの身となっている人々が集められ、
ひしめいていたのです。

無傷というわけでもなく、抵抗したのか負傷者、重傷者も多数出てしまっている…なんということでしょう。


その数は、軽く三桁にのぼります。


ディメーン「んっふっふ!これでまた、形勢逆転だねっ!
       いやいや、こーんなお祭りを呑気に開いてくれているなんて、大助かりだよ!」



「姫様!お助け下さい!」

「うわーん、死にたくないよー!」

「このままじゃ、うちの子が死んじゃう!」

「痛い…痛いよう…!」



聞こえてくる悲鳴、鳴き声。慟哭。
ぎりっ、とピーチ姫が唇を噛み、血が滴り落ちました。


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