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男「はあ!? お前ら、結婚すんの!?」

25豆腐:2017/10/06(金) 18:49:30 ID:lA.yJ/Qk
新宿

友「広告代理店ってさ、どんな仕事すんの?」

男「うえー」

友「なんだよ、うえーって」

男「仕事の話とかしたくねー」

友「いや、世間話的なレベルでいいんだけど」

男「簡単に言えば、クライアントの会社の商品ブランドをいかに高めるか考える、みたいな…」

友「マーケティングとは違うわけ?」

男「マーケティング…うーんと、マーケティングって教科書的に言うと、『モノを売るために行う全ての活動』なのね。確か」

友「ふん」

男「だから、広告っていうのはマーケティングの中に含まれる、あくまで一つのツール、みたいな」

友「ふむふむ」

男「まあ、俺もよく解ってないんだけどね。勉強中」

友「なんかあれだろ、イケメンと一緒に仕事とかしてんだろ?」

26豆腐:2017/10/06(金) 18:50:02 ID:lA.yJ/Qk
男「あ、そうそう、たまたまなんだけどね。イケメンくんの上司とうちの社長が仲良くて」

友「それは何したの?」

男「直近だと、バレンタインのときに、漫画家を起用して、『チョコレートと一緒に愛するあの人の似顔絵を渡そう』みたいなキャンペーンをした」

友「へー、面白そう」

男「面白くねーよ、超大変だった…」

友「でもその漫画家さんとかと会えるんだろ?」

男「会えたけど、超嫌なばばあだった」

友「へえ。男っておばさんキラーだからいいんじゃないの」

男「なんだその謎のキャラ付け。やめて」

27豆腐:2017/10/06(金) 18:50:38 ID:lA.yJ/Qk
友「だって弁当屋のおばちゃんとかとすげー仲良かったじゃん、お前」

男「あー、おばちゃんな。そういやなんか知らんけど、皆でカラオケとか行ったよな」

友「行った行った! なつかしー! てかまじ謎の会だったな、あれ」

男「…(女と意気投合してたよな、おばちゃん)」

友「今でも付き合いあんの?」

男「ん? うん、たまに弁当買いに行くぐらいだけど」

友「女はちょくちょく連絡とってたな、おばちゃんと」

男「…あー、そうらしいね」

友「…女と会ってる? 最近」

男「いや、うーん、今年はまだ会ってないかな。去年の年末に飲んで以来、会ってない」

友「そっか。…あのさ…」

28豆腐:2017/10/06(金) 18:51:18 ID:lA.yJ/Qk
男「いや、別にお前に気使ってるとかじゃないよ。単純に仕事が忙しいってだけ。ていうか気使われたほうがお前、嫌だろ? 解ってんだよ」

友「…ん」

男「そんなしんみりすんなよー」

友「いや、なんつーかさ、俺と女が付き合うとき、お前、色々…なんつーか…爆発したじゃん?」

男「した。ザ・若気の至りだった」
(詳しくは 男『はあ!?お前ら付き合ってんの!?』 で検索)←ステマ

友「そこらへんも含めてさ、ほら…結局俺らは別れちゃったわけだし、ずっと3人で仲良くやっていきたいみたいなお前の思いをさ、踏みにじったというか…」

男「なんだお前!? 結婚を前に、子供返りしてんじゃないの? そんなもん、気にしねーし、気にしてほしくねーんだけど」

友「…そか」

男「そりゃお前が『女にはもう会うな』とか、女が『もう友と会うな』とか言ってきたら話は別だけどさ。そこらへんは俺だってバランスとってやってけるさ」

友「…お前、大人になったなあ」

男「ふ、ふ、ふ。社会の歯車と呼んでくれ、あ、やっぱやめて呼ばないで傷つく」

29豆腐:2017/10/06(金) 18:52:10 ID:lA.yJ/Qk
とりあえず本日は以上です。

最後まで書けるかな。書けるといいな。

30以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/06(金) 19:55:42 ID:TLX6rpz.
どんな結末か楽しみ

31豆腐:2017/10/06(金) 20:55:28 ID:lA.yJ/Qk
と、見せかけてもうちょっと

32豆腐:2017/10/06(金) 20:56:01 ID:lA.yJ/Qk
銀座

イケメン「あ、もうこんな時間だ。そろそろ行かなきゃな」

女「えー」

イケメン「また今度飲もうよ、男も呼んでさ」

女「うん、飲もう飲もう」

イケメン「なんか女ちゃん、楽しそうで良かったよ」

女「楽しいか楽しくないかで言えば間違いなく楽しいねー」

後輩男「(楽しいのか…よかった…)」

女「友とかとも、ほんとは普通に飲みたいんだけどなあ」

イケメン「…」

後輩男「(ん、何か空気が変わったような)」

33豆腐:2017/10/06(金) 20:56:36 ID:lA.yJ/Qk
イケメン「んー、まあ、そこらへんは、何だろ、俺らが立ち入っていい問題では、ない、気がするし」

女「あはは、まーねー」

後輩男「(こ、これは女さんの過去の恋の話なのでは・・・!?)」

イケメン「んじゃ、そろそろ行くわ」

女「うん。また」

後輩男「あ、お疲れ様でした」

イケメン「お疲れ様。後輩男くんも、今度良かったらまた飲もうよ」

後輩男「あ、はい、是非」

イケメン「じゃあねー」

女「ばいばーい」

後輩男「・・・」

女「・・・」

34豆腐:2017/10/06(金) 20:57:10 ID:lA.yJ/Qk
後輩男「(女さんは、もう結構、飲んでいる。酔っぱらっている)」

後輩男「(どうしよう・・・さっきの話、気になる・・・)」

後輩男「(聞いてみようかな・・・)」

女「過去のさ」

後輩男「え? あ、はい」

女「過去の記憶とか自分にひきずられるのって、ださいよねー」

後輩男「……え?」

後輩男「(それって……)」

後輩男「(…)」

後輩男「(いや、でも……)」

後輩男「俺は、結構、ひきずられますね」

女「…へえ?」

35豆腐:2017/10/06(金) 20:57:45 ID:lA.yJ/Qk
後輩男「ださいかださくないかで言えば、…ださいのかも知れませんけど、それで結構、幸せだったりもするし。無理する、ってのが俺、結構、苦手で。成長には痛みを伴う、なんてことも聞いたりしますけど、痛みなく成長する方法もあるような気もして」

後輩男「俺、まだまだ若造ですし、自分が大人であるなんて胸張るには全然自信ないですけど、それでも、10年前と比べれば大人になってるし、成長もしてると思うんです。じゃあ、何があって成長したのかって考えてみたら、うーん、なんも覚えてないんですよね」

女「・・・」

後輩男「そういう、覚えてないようなことばかりの積み重ねでも、人って成長するし、前に進めるんですよね。だから…過去に捉われないで前を向こう、みたいな言葉って、美しいし、理想だけど、そこに痛みが伴うなら、美しくなくても、理想通りじゃなくても、ださくても、逃げていいんじゃないかな、ラクしていいんじゃないかなって、思います」

女「……」

36豆腐:2017/10/06(金) 20:58:18 ID:lA.yJ/Qk
後輩男「(……ものすごく格好悪いことを偉そうにぺらぺらと喋ってしまった)」

女「なるほどねー」

後輩男「(そして納得されてしまった)」

後輩男「あの…そ、そういう考え方もありますよってだけで、その…、ずっとださいわけにもいかないっていうか、ときには格好よく決めなきゃいけないときもあるっていうか(なに言ってんだ俺…)」

女「うん、まあ、答えは一つじゃないってことよね」

後輩男「ええ、まあ、はい」

女「さっきさ、話に出た、友っていうのがいてね。私の前の彼氏なんだけどさ」

後輩男「!!…はい」

37豆腐:2017/10/06(金) 20:58:49 ID:lA.yJ/Qk
女「別に嫌な別れ方じゃなかったのよ。話し合いに話し合いを重ねたっていうか」

後輩男「…はい」

女「お互いに、嫌いあったり憎みあったりしないでおこうみたいに、決めてたわけじゃないけどそんな感じでさ。別れた後も友達同士でいようねーなんて言って」

後輩男「はい」

女「でも、実際、別れてから一度も会ってないのよこれがまた」

後輩男「そんなもん…なんですかね」

女「さー? そこらへんは人それぞれなんじゃん? それに、まあ、今更どうしても会いたいってわけでもないし」

後輩男「…」

女「よりを戻したいわけでもないし」

後輩男「(…ホッとしてしまう自分がいやだな)」

女「こうなってしまうとさ、思いきり傷つけたり、傷つけられたりして、もう二度と会うもんか! みたいにぐちゃぐちゃになって別れてたほうが、いっそラクだったんじゃないかなと思ってみたり」

後輩男「?」

38豆腐:2017/10/06(金) 20:59:23 ID:lA.yJ/Qk
女「ほら、なんていうか、別に二度と会えないわけじゃないし、会ってみたい気もする。それは多分、憎みあっても嫌いあってもないから、自然でしょ? 伊達や酔狂で付き合ってたわけじゃないんだから。でも、だからって会ってみたところで何がどうなるわけでもない。無駄だよ。この考え自体が無駄。無駄だけど、でも、たまに思い出しては、うーっ、てなる」

後輩男「今でも…思い出したりするんですか?」

女「楽しかった記憶がいっぱいあるからねー。思い出すよ。思い出すたびにもやもやする。もう好きじゃない人。でも、嫌いじゃない人。なのに、多分、もう、二度と会うことがないだろう人」

後輩男「……」

女「……」

後輩男「……」

女「ありゃ。後輩くん」

後輩男「はい」

39豆腐:2017/10/06(金) 21:00:14 ID:lA.yJ/Qk
女「何で泣いてんの?」

後輩男「わかりません。すいません」

女「あはは、後輩くん、おもしろいね。いい人だね」

後輩男「すいません、ちょっと、トイレ行ってきます」ガタッ

女「はいはい、ごゆっくり」


女「………はあ」

女「何にも関係ないのに、自分語りして後輩くん泣かせちゃったよ」

女「酔ってるな。何やってんだろ、私」

女「イケメンくんに会ったからだな」

女「はーあ」

40豆腐:2017/10/06(金) 21:00:58 ID:lA.yJ/Qk
新宿

イケメン「おーっす」

男「あ、イケメンくん、お疲れ」

友「おー! イケメン、久しぶり!」

イケメン「久しぶりー!」

友「忙しそうじゃん」

イケメン「いやいやいや、催事のときだけで、あとはそんなにだよ」

男「何飲む? 生?」

イケメン「うん、あ、いや、どうしよっかな、ハイボールにしよ」

友「そっか、お客さんと飲んでたんだっけ?」

イケメン「うん? まあ、そうだね。すいませーん、ハイボールください」

イケメン「(偶然とはいえ、女ちゃんと飲んできたっていうのは何か言いにくいな)」

41豆腐:2017/10/06(金) 21:02:04 ID:lA.yJ/Qk
男「そうだ、乾杯前に大ニュースがあります」

イケメン「ん?」

友「やめろよそんな大げさな。なんか、そういう会みたいになるじゃん」

男「そういう会でいいじゃん。めでたいことなんだしさ」

イケメン「ん? なに?」

友「あー、結婚すんだわ、俺」

イケメン「おお! まじか! そりゃおめでとう!」

友「うん、ありがとう」

42豆腐:2017/10/06(金) 21:02:37 ID:lA.yJ/Qk
イケメン「ええと、この前会わせてくれた子?」

友「うん、そう」

男「…………なぬ!? おい友! 俺は会ってねーぞ!」

友「そうだっけ?」

男「そそそそそうだっけー!!?」

友「会わす会わす、今度会わす」

男「覚えたぞその言葉! つーか、もっかい言え! 録音するけん!」

イケメン「(まあ、女ちゃんのこともあるし、男には会わせ辛かったってのがあるんだろうな)」

イケメン「(そういうのこそ、男は嫌がるし、友も男のそういうところ知ってるはずなのに)」

イケメン「(…大人って、面倒くせえなあ)」

43豆腐:2017/10/06(金) 21:03:14 ID:lA.yJ/Qk
翌日
女の会社

後輩女「後輩男くん」

後輩男「…ん?」

後輩女「昨日、飲んできたんでしょ? どうだった?」

後輩男「いや、まあ、普通に…」

後輩女「?? なんかあったの?」

後輩男「何かあったつーか…うーん、まあ、結論から言うと俺は泣いた」

後輩女「泣いた!?」

課長「おーい、後輩男ー」

後輩男「あ、はい!」ガタッ

後輩女「あ、ちょっと…」

44豆腐:2017/10/06(金) 21:03:45 ID:lA.yJ/Qk


後輩女「……」

後輩女「…泣いた?」

後輩女「(ふられたってこと?)」

45豆腐:2017/10/06(金) 21:04:19 ID:lA.yJ/Qk



課長「この企画書、いまいちだわ」

後輩男「そう、ですか」

課長「やり直しね」

後輩男「あ、あの!」

課長「んん?」

後輩男「具体的にどこが駄目なんでしょうか」

課長「ぜ・ん・ぶ」

後輩男「ぜ、ぜんぶ…」

課長「ついでに女!」

女「はーい」

課長「忙しいだろうけど、お前も早く提出しろよ」

女「解りましたー」

後輩男「(ぜんぶ…)」

46豆腐:2017/10/06(金) 21:05:03 ID:lA.yJ/Qk



部長「課長くん」

課長「あ、部長。お疲れ様です」

部長「企画書は集まってる?」

課長「集まってはいますが、これといってぱっとしたものがないんですよね、今のところ」

部長「そうかい。いや、さっきもX代理店の営業が提案書持って来てたんだけどね、こちらもどうもぱっとしないんだよねえ」

課長「あとで拝見しても?」

部長「もちろん。しかし、時間もないし、どうしたもんかなあ」

課長「うーん。他の代理店にも声かけてみましょうか」

部長「とはいえ、うちはずっとX代理店だからねえ。どこか知ってるとこあるかい? 予算的にまさかD通とかH堂に声かけるわけにもいかないし」

課長「部下にも当たって色々探ってみます」

部長「そうだね。そうしてくれ」

47豆腐:2017/10/06(金) 21:05:36 ID:lA.yJ/Qk



女「(うーむ)」

女「(細かい仕事に忙殺されてて企画まったく考えてなかったぜ)」

女「(どうしよっかな…)」

女「(あ、そうだ、昨日もらった名刺・・・)」

ガチャ ピ、ピ、ピ、ピ、ピ…

女「…あ、お世話になっております、わたくし、○○酒造株式会社の女と申しますが、営業企画部のイケメン様はいらっしゃいますでしょうか」



イケメン『イベントかあ』

女「うん、イケメンくんとこのデパートさ、広場みたいなのあるじゃん。そこで音楽とお酒を楽しもうぜみたいなイベント出来ないかな」

48豆腐:2017/10/06(金) 21:06:10 ID:lA.yJ/Qk
イケメン『んー、他のメーカーや問屋との絡みもあるから、一社だけと組んでイベントってのはかなりハードルが高いんだよなあ』

女「あ、そうか」

イケメン『ただ、店内でのサンプリングみたいなことなら協力できるよ』

女「それはでも、試飲ていうよりも…」

イケメン『うん、商品を配る感じ。お酒だからねえ」

女「だよねえ…」

イケメン『そうだ、男に相談してみれば?』

女「へ? ……うーん、男くんと仕事の話するとか果てしなくイメージできなくて、今の今までその手があることすら思いつかなかったよ」

イケメン『ははは。あいつ、意外と優秀だよ」

女「そっかーうーむ、解った、連絡してみる。ごめんね、忙しいのに」

イケメン『いえいえ。もしなんか進んだらまた教えてよ。てか、飲みいこうよ』

女「うん、また連絡するね!」

イケメン『はーい、じゃあまた』

ガチャ

49豆腐:2017/10/06(金) 21:06:43 ID:lA.yJ/Qk
女「男くんかー」

女「(なんか…連絡し辛いんだよなあ)」


男『おい女! 俺から友を取りやがったな! 許さねえ!』

男『あははじゃねえ! 友、お前もだ! 俺から女とりやがって!』


女「(うおお…なんちゅー大昔のことを思い出しているのだ、私は…)」

女「(無駄なこと考えちゃだめ、仕事、仕事…)」

50豆腐:2017/10/06(金) 21:07:18 ID:lA.yJ/Qk
男の会社

社長「男ー」

男「はい」

社長「本日の商いはどないだー」

男「ええと、○○に請求書送ります」

社長「なんぼ?」

男「200万ちょいちょいですかね」

社長「…ああ、前の展示会のやつか」

男「そうです」

社長「札幌のほうはどうなっとる?」

男「ほぼ仕込みは終わってますんで、あとはのんびりですね」

社長「ほうけ」

同僚女「ただいま帰りましたー」

51豆腐:2017/10/06(金) 21:07:53 ID:lA.yJ/Qk
社長「おう、おつかれさん」

男「お疲れー」

同僚女「…くっそ、あのスケベ親父!」

社長「おお、いきなり毒づいとるがな。どないした」

同僚女「○○製菓のHさんですよ。飯食いに行こう飯食いに行こう、ほんとそればっかり!」

社長「飯くらい行ったらええがな。なあ、男」

男「なんなら抱かれて来いよ。あ、ごめん、やめて、椅子を振り上げないで」

同僚女「ご飯行くくらいはいいんですよ。それも営業だし。でもあの親父、打ち合わせ中、その話ばっかしやがるんですよ。どこどこのホテルの最上階のレストランがいいとか、どこどこの鉄板焼き屋のステーキが美味しいだとか。それでお金出すの、こっちなんですよ!? ざっけんな! べたべた触ってくんじゃねえ! 触るんなら仕事発注しろ!」

社長「荒れまくっとるな」

男「仕事しよっと」

同僚女「男!」

男「な、なに」

同僚女「煙草付き合って!」

52豆腐:2017/10/06(金) 21:08:35 ID:lA.yJ/Qk
男「…い、いちいち怒鳴るなよこえーな、っと」

プルルルル プルルルル

ガチャ
男「はい、○○広告です」

同僚女「…」

男「ええ、私ですが。…え? おお、女かよ! ははは、久しぶり! 何だよ電話なんかしてきて! え? 私って言うだろそりゃ、社会の歯車としては」

同僚女「……」

男「ん? うん、そう、広告。え? 販促? 得意得意、それで飯を食っとるよ」

同僚女「………」

男「ん? はいはい、俺でよければ相談に乗るよ。…うん。そう、銀座。いやいや、俺が行くよ。有楽町だろ? 超近いし。今から? 全然よゆー」

同僚女「………」

男「うん、いや、大丈夫。解んなかったら電話するよ。うん。じゃ、あとで」ガチャ

社長「なんか、新規の仕事の匂いがする電話やったな」

53豆腐:2017/10/06(金) 21:09:06 ID:lA.yJ/Qk
男「ああ、ええと、大学んときの友達からなんですけど、いま、そいつ、酒のメーカーにいて、そこの新商品の販促について相談したいっていう電話でした」

社長「うっそ。めっちゃええ話やんけ」

男「詳しく聞いてみないと解んないですけどね」

社長「今から行ってくるん?」

男「はい」

社長「よっしゃよっしゃ、決めてきてまえ」

男「同僚女―、ついでに煙草吸いに行こうぜ」

同僚女「…ん」

男「(なんだこいつ。いきなり元気ないな。瞬間湯沸かし器みたいなやつ)」

54豆腐:2017/10/06(金) 21:09:40 ID:lA.yJ/Qk
外 喫煙所

同僚女「いい話になりそう?」

男「ん?」

同僚女「いや、さっきの電話」

男「あー、どうかなー。とりあえず概要の前段階くらいの情報しかないからね」

同僚女「決まるんじゃん? 前のデパートの仕事もそうだったし」

男「あー。あれはまあ、運が良かっただけだろ」

同僚女「運って大事でしょ」

男「んー、まあ、そうかもなあ」

同僚女「運だけじゃなくてさ」

男「ん?」

55豆腐:2017/10/06(金) 21:10:13 ID:lA.yJ/Qk
同僚女「男はすごいよね。持てるもの全部、過不足なく使ってる感じ」

男「…?」

同僚女「私はだめ。なんか、オンナを武器にする覚悟もないし、田舎から出てきてるからコネとかもないし、マーケティングとか広告とかの勉強もしてるけどなかなか身につかないし」

男「はいはいはいはい」

同僚女「ん?」

男「ん? じゃねえよ、ここは深夜1時の居酒屋か」

同僚女「あー…ごめん」

男「飲みながらなら、いつでも付き合ってやるからさ、昼にうじうじ考えるのはやめようぜ。それは何ももたらさない」

同僚女「…酒乱」

男「はあああ!?? なんだそれ!! どーゆー文脈でどーゆー結論だ!?」

同僚女「…ふふ」

男「笑ってんじゃないわよ」

同僚女「な、なんで急におネエが出てくるの」

56豆腐:2017/10/06(金) 21:11:00 ID:lA.yJ/Qk
有楽町
○○酒造株式会社東京本社

後輩男「女さん…」

女「ん、どうしたの死にそうな顔して」

後輩男「ちょっと、僕の企画書、見てもらっていいですか?」

女「ん? いーよ。貸してみ」

後輩男「お願いします…」

女「……」ペラッ ペラッ

後輩男「……」

女「……うーん」

後輩男「ど、どうですか?」

女「なんて言ったらいいか解んないけど、いいね! とは、なんないかな」

後輩男「…やっぱり。課長には全部駄目って言われてしまいました」

女「そりゃ、厳しい」

57豆腐:2017/10/06(金) 21:11:32 ID:lA.yJ/Qk
後輩男「はああ、どこがどう駄目なのかってのを課長がすぐに教えてくれないのは、多分、自分で気づけよってことなんでしょうけど、一所懸命考えたのになあ」

女「一所懸命が評価されるのは学生までだよ」

後輩男「…え?」

女「あー。ごめんね、生意気なこと言って。でも、私はそう思う。結果が伴わない『一所懸命』なんて、意味ない。無駄に頭使って、無駄にPCの電力使って、無駄に紙を使ってるだけ。それじゃ、駄目なんだよ」

後輩男「……」

女「私だったら、聞くかなー」

後輩男「え??」

58豆腐:2017/10/06(金) 21:12:06 ID:lA.yJ/Qk
女「課長に。どんなにうざがられても、どこがどう駄目なのか聞きだすまではしつこくつきまとう」

後輩男「つ、つきまといますか」

女「全部駄目って言われたくらいでへこんでどうすんのさ。慣れないうちに駄目なのは当たり前じゃん。後輩男くん。無理して成長すること、痛みなく成長すること、成長を放棄すること、これらは全部、違うことだよ」

後輩男「…」

女「がんばろうぜ」

後輩男「はい。ありがとうございます」

女「人に頼るってのもありだし」

後輩男「人にですか?」

女「うん。自分で無理なら、得意な人にやってもらうほうが早いし。大切なのはね、自分が何のために今その仕事をしてるのかっていうこと」

後輩男「何のために…」

59豆腐:2017/10/06(金) 21:12:38 ID:lA.yJ/Qk
女「そうです。そしてそれを遂行するために私は今から過去と向き合うのです」

後輩男「過去と……過去と!? なんすかそれ!!」

女「あー……ええと、昨日私がしゃべったこと覚えてる?」

後輩男「…元カレのことですか?」

女「そ。それに付随する色んなこと。で、今からね…」

新人男「あ、女さん。お約束の男さんて方がお見えになってます。第二会議室にお通ししてます」

女「あ、ありがとう」

後輩男「え、まさか」

課長「後輩男―」

後輩男「え、あ、はい!」

女「ふう。不本意ながら、超緊張する。じゃ、あとでね」

後輩男「あ、はい(まさか元カレがここに…?)」

60豆腐:2017/10/06(金) 21:13:12 ID:lA.yJ/Qk
第二会議室

男「……」

男「……」

コンコン ガチャ

女「失礼します」

男「あ、こんにちは。お世話に、なって……おります」

女「……」

男「……」

女「……」

61豆腐:2017/10/06(金) 21:13:43 ID:lA.yJ/Qk
男「……だっはっはっはっは!!」

女「……ひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

男「な、なにお前、ひ、人の顔見たとたん、いきなり大爆笑し、してんだよ、ぶわっはっはっはっ!!」

女「そ、そ、そっちこそ! あっはっはっは!!」

男「はっはっはっは! いや、いや、ふう…落ち着け…。仕事の話をするんだろ…ふう、ふう」

女「ふう、ふう、ふふふ…」

男「くくく…」

女「………」

男「………」

男・女「………くっ、ぶわっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!」



男「いやー、笑った笑った」

女「人の顔見て笑うとか超失礼」

男「こっちのセリフだよ」

62豆腐:2017/10/06(金) 21:14:17 ID:lA.yJ/Qk
女「でも、そっかー、働いてんのね、男くん」

男「働くよ、そりゃ。……ニヤニヤしてんじゃねえよ」

女「そっちこそ」

男「ええと、で、なんだっけ。新商品がどうとか?」

女「ああ、そうそう、ええと、これなんだけどね」

男「スパークリングワイン。へえ。『カーニバル』。すげえ名前」

女「これの販促企画を考えてるんだけど、どうもパッとしなくてさー」

男「これの売りは?」

63豆腐:2017/10/06(金) 21:14:50 ID:lA.yJ/Qk
女「ちょっと面白いのよ。今さ、低アルコール流行りじゃん。そこをあえてこの子は、ガツンと強めのアルコール度数で、しかも炭酸も強め」

男「へえ」

女「いわゆる肉食系? ああいう人たちをターゲットにしてんの」

男「ストロン○ゼロみたいなもんか」

女「ああ、そうかも」

男「具体的に言うと、ターゲットはオトコになるのかな」

女「うん、20代〜40代の肉食系男子がターゲット」

男「肉食系男子の定義は?」

女「え? あー、うちなりのってことよね。うーんと、たぶん、ない」

男「そりゃよくないね」

女「そうね。確かに」

64豆腐:2017/10/06(金) 21:15:36 ID:lA.yJ/Qk
男「今まではどんな販促とか広告やったの?」

女「えっとね、この、男くんには縁のないこういうイケてるメンズが読みそうな雑誌に広告ページを載せてます」

男「ふーん。たけーんじゃねえの?」

女「うん、すっごい高かった。けど、まあ、ここの出版社とは付き合いあったし仕方ないんだよね」

男「え、直でやってんの?」

女「うん、これに関してはね。で、12月号まで展開予定です」

男「だったらそれに連動させたいね」

女「ほほう?」

男「広告ページって、要は記事広告だろ?」

女「うん」

※記事広告
→雑誌・新聞でよく使われる手法。一見、ただの広告には見えないように、記事仕立てにし、読者の興味をよりよく惹かせる。

65豆腐:2017/10/06(金) 21:16:15 ID:lA.yJ/Qk
男「例えば、イベントとかサンプリングとかやるんなら、それの告知とか報告に誌面を使うとか」

女「あー、なるほどね」

男「ていうか俺に縁のないってそんなことねえし。読んでたし」

女「おそっ」

男「ていうか、なに? お前一人でやってんの?」

女「いや、チームで今、企画出しの段階なんだけど、全然良いアイディア浮かばなくてさ」

男「ふーん。で、うちはどうすればいいの? 企画案を持ってこようか?」

女「あ、うん、助かる。時間ないんだけど、いいかな?」

男「いいよ。プレゼンってことね。オッケー。じゃあ、もういくつかヒアリングさせて」

女「はーい」

66以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/06(金) 23:00:16 ID:13qV3lh.
楽しみ!続きはよ!

67以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/07(土) 06:19:36 ID:IQA1ZbB2
おもろいがな

68以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/07(土) 10:29:46 ID:Qno44UcM
めちゃくちゃ久々だな。7年ぶりぐらいに見たわ
愛子ちゃんの話以降ってあんの?

69豆腐:2017/10/07(土) 11:55:05 ID:UwS5far.
>>68
これがそれです。

70豆腐:2017/10/07(土) 11:56:08 ID:UwS5far.
1時間後

女「で、ですね。男くんは私に言ったんですよ。『おいお前、俺はお前が好きだぞ』と!」

課長「うわー、感動! すごく良いシーンじゃないですか!」←女がおせーから様子見に来たら男にはまった

男「いやもう、若気の至りってやつですよ」

女「そこで私は彼に、こう、黄金の右チョップを……」

男「んん? いや、それは順番が逆だろ。なんかそれじゃ俺がすげーワイルドにふられたみたいになるじゃん」

女「そうだっけ? もう昔のことだから忘れた」

男「うっそだろ、お前…」

課長「お前、『忘れられない彼との思い出があるんですよ』って言ってたじゃねえか…」

女「困っちゃいますね」

71豆腐:2017/10/07(土) 11:57:10 ID:UwS5far.
課長「もうほんとにねえ、いっつもこんな感じなんですよ。学生の時からそうでした?」

男「昔のほうがもっと無茶苦茶だったと思います」

女「成長しました」

課長「そうか…。もっと成長していってくれな」

女「承知しました」

男「…あ、もうこんな時間だ。すみません、長居してしまいまして」

課長「あ、いえいえ、こちらこそ長い時間ひきとめちゃって。それじゃ、男さん、企画のほう、お願いしますね」

男「ええ、急ぎつつ、考えられるだけ考えてみます」

課長「で、その、予算も調整しつつ、他のアイディアも出しつつなので…、その、必ずご一緒出来るっていう確約は…。それに予算も限られていますので…」

72豆腐:2017/10/07(土) 11:58:05 ID:UwS5far.
男「ああ、はい。委細承知しています」

課長「すみませんね」

男「とんでもない。それでは失礼します」

課長「はい。それでは、よろしくお願いいたします」

男「こちらこそ」

女「私、エレベーターまで送ってきます」

課長「うん、送って差し上げて。男さん、では」

男「失礼します」

73豆腐:2017/10/07(土) 11:59:29 ID:UwS5far.
エレベーターホール

女「イサイショウチシテオリマス」

男「…なに」

女「語彙が増えたね。人は変わるね」

男「お前は相変わらず俺を馬鹿にし続けるな、ずうううっと」

女「人は変わるね。でも、変わらない部分もあるね」

男「ふふ、やかましいわ」

女「でも、よかったよ、来てくれて」

男「ん?」

女「課長もたぶん男くんのこと気に入ってたし、私も勉強になった」

男「そう。そりゃ良かった」

74豆腐:2017/10/07(土) 12:00:52 ID:UwS5far.
女「飲み行こうね、近いうち」

男「うん、行こう」

女「普通に」

男「ん? ああ、普通にな」

女「一緒に仕事出来たらいいね」

男「そうだなー。ま、頑張りますよ」

女「うん。あ、エレベーターきた。じゃあね、男くん」

男「おう、じゃあまた連絡するー」

75豆腐:2017/10/07(土) 12:01:43 ID:UwS5far.
女「……また、無駄なこと思い出しちゃったよ。くそっ」

エレベーターホールの隅っこ
後輩男「(女さん……)」

後輩女「(なにこいつ、女さんのことずっと見てる…。ストーカーなの!? フラれてストーカーと化したの!?)」

後輩男「……働くぞ」グスッ



課長「ん?」

後輩男「ですので、どこがダメなのか、教えてください!」

課長「いやだから全部だって」

76豆腐:2017/10/07(土) 12:02:21 ID:UwS5far.
後輩男「ど、どういうふうに全部ダメなのでしょうか!」

課長「…カーニバルのターゲットは?」

後輩男「に、20代〜40代の男性です!」

課長「この商品はそんなターゲットにどんなベネフィットを与えるべきか。そして我々はそれをどう訴求するべきか。ターゲットのインサイトはなんなのか。そもそもターゲット、20代から40代の男性と一口に言うけれども、彼らは何者なのか。そういったことに対するお前の考えがまったくこの企画書にはない。考えがないからビジョンもない。ビジョンがないから企画が空疎に見える。空疎な企画でモノが売れるか? いや売れない。……まだ言おうか?」

後輩男「」

課長「一言で言えば、『全部ダメ』ってこと。言葉を代えて言えば、『この企画書にはロジックがない』。はい、以上。やり直し」

女「(ひ、ひえー…)」

後輩男「あ、ありがとうございました」

課長「んー」

女「(おそろしー)」

女「(…あ、そうだ)」

77以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/07(土) 12:26:45 ID:IQA1ZbB2
おつ

78豆腐:2017/10/07(土) 14:01:24 ID:L9fMuZ3s
唐突な人物紹介

男(28)
広告会社勤務。不真面目な就職活動がたたり、地獄の20社ない内定を経験。滑り込みで、全く興味のない水産会社に内定をいただく。俺はこれから海の男になるぜ! と覚悟を決めたところで、震災の影響で入社前に会社が倒産。途方に暮れているところを、叔父の社長に拾われ今に至る。ミスター縁故くん。
モテないわけではないが、彼女とあまり続かない。というかどちらかというとモテる。弁当屋のおばちゃん効果であると思われる。

女(28)
酒造会社勤務。飲んで暮らしたいという夢を叶えた現代の勝ち組。と見せかけて、広告や販促のことを考えまくる毎日。どう考えても営業職向きだが、入社当時からマーケティング部にいるのはやや上の方にいる人たちの意向。
学生時代に付き合っていた友とは4年交際した後、解散。解散理由は「なんか仲良くなりすぎてもはや恋って感じじゃないよね」「それな」というあれである。
長身貧乳。つまりモデル体型。一般的に見てモテるほうの人間だが、その見た目だけに惹かれてのこのこ近づいてくるオトコをその性格でおののかせることには定評がある。

79豆腐:2017/10/07(土) 14:53:16 ID:L9fMuZ3s
唐突な人物紹介2

友(28)
アパレルメーカー勤務。大宮店で副店長をしたあと、本部の営業企画に抜擢される。それを機会に彼女に求婚。承諾され、秋には式を予定している。職業柄、他人の格好を観察してしまうという癖がついてしまい、男から気味悪がられる。胃下垂。

イケメン(28)
百貨店勤務。男の友達だが、むしろ男の兄とのほうが仲が良い。イケメンかつ苦学生。大学を次席で卒業するという漫画の主人公的な経歴を持つが、生来の気の良さが、彼を鼻持ちならない人間にするのを許さない。就職課は商社をすすめたが、百貨店に勤めていた母の影響もあり、小売業に身を投げた。今は営業企画部だが、ゆくゆくは外商にさせようという目論見を人事課は持っている。
来年、妹が挙式予定。

80豆腐:2017/10/07(土) 20:11:40 ID:UwS5far.
男会社

男「帰りましたー」

社長「おう、男、どやった?」

男「いい話っちゃあ、いい話でした。社長、カーニバルってお酒、知ってます?」

社長「知らん。それがあれか、新商品か」

男「ええ、アルコール度数と炭酸が強めのスパークリングワインってことです」

社長「…売れなさそーーー」

男「そうですね、直感的にですけど俺もそう思います」

社長「で、どういう話になったんや。ぱーっとCMでも撮ろかいっちゅう話にでもしてきたか」←経営者兼CM監督

男「そんな予算はないでしょうね。社長、IマートのMさんに電話してもらっていいですか?」

81豆腐:2017/10/07(土) 20:12:28 ID:UwS5far.
社長「…ああ、Iマートでの販促案を提案すんのか」

男「流通おさえた提案が出来れば一番話が早いですし、現実的です」

社長「社長を顎で使う平社員なんてお前だけやで」

男「顎で使ってなんてないですよ、お慕い申し上げておりますとも」

社長「殺したろかこいつ……あ、もしもし、Mさんでっか、お世話になってますー。どうでっか、最近。え? あー、よろしいなー。はい、いやいや、ボチボチですわ。それにしても阪神はあきまへんなー。カープが強すぎいうのもありますけどそれにしても金本の采配が…」←トラキチ

男「こりゃ長電話だわ。じゃあその隙に俺は俺で電話っと…」

男「あ、もしもし、私、○○広告の男と申します、お世話になっております。営業男さんいらっしゃいますか? はい、お願いします。……あ、どうも、男です、お世話になってますー。ご無沙汰してすいません、いえいえ何をおっしゃいますか。どうですか最近。え? あはは、本当ですよねー。いやー、カープと言えば営業男さん、見ました? 昨日の菊池の守備。やばくないすかあれ。……そう! 松山が今年はいいんですよ」←カープファン

同僚女「あんたも同類じゃん」

82豆腐:2017/10/07(土) 20:15:22 ID:UwS5far.



男「――――とりあえずあれですね、最近飲んでないんで近いうち新橋の例のお好み焼屋で連覇を祈願して飲みに行きましょうよ。でね、今日電話したのは、営業男さんが担当かどうかはわかんないんですけど、御社にジョルジュって雑誌あるじゃないですか」

男「そうそう、俺には縁もゆかりもなさそうなってやかましいわ。で、いま、○○酒造が出稿してるでしょ? あれって……まじ!? 営業男さんが担当!? あれってクライアントと直でやってるでしょ? そこにうちが入っていいかなっていうご相談なんですが」

男「……うん、ていうのがね、たまたま、あそこのマーケに俺の知り合いがいて、ほら、カーニバルの販促企画を考えてくれって頼まれて。で、ジョルジュの話になったんですけど、どうせなら出稿記事とも連動した企画を提案したいんですよ。だったら記事制作からうちも関わっときたいなと思って」

出版男『そうなんですか、そりゃ先方がOKならうちは全然かまわないですよ』

男「オッケーオッケー、じゃあ、一回打ち合わせさせてください。えーと、あとでメールしますね。はい、はーい、失礼します」

社長「ええ、はい、あ、じゃあ一回そちらに伺わせますわ。はい、いやいや男の方から連絡させますんで。ええ、はい、よろしくお願いしますー」

同僚女「そして同じようなタイミングで電話を切るっていう。あんたら双子かなんかなんじゃないの」

83豆腐:2017/10/07(土) 20:16:24 ID:UwS5far.
社長「何をぶつぶつ言うとんねん同僚女。おう、男! Mさん、カーニバル? やったか、その話したら、『そらおもろいでんなー』言うてはったで。あのおっさん、何言うても『そらおもろいでんなー』言うて、まじウケるな。一回、お前の話聞きたい言うてたから、お前の方からも連絡しとき」

男「了解です、ありがとうございます…っと、メールが…、おお、女だ」

『男さま

いつも大変お世話になっております。〇〇酒造株式会社の女です。

本日はご足労いただき、誠にありがとうございました。あのあと上司とも話し合い、来週中には一度、ご提案をいただければという話になりました。
タイトなスケジュールではございますが、何卒よろしくお願いいたします。

これを書いている間、口がひん曲がって飛んでいきそうでございます。

ps.よければさっそく明日、飲みにでも行きませんか? ちょっと紹介したい男の子もいまして…』

男「紹介したい男の子?」

84豆腐:2017/10/07(土) 20:20:42 ID:UwS5far.
〇〇酒造

女「ねえ、後輩男くん、明日の夜、空いてるって言ってたよね?」

後輩男「え? あ、いや、いまいま、後輩女と飲みに行こうかって話になって」

女「あ、そうなんだ。しまったな」

後輩男「え?」

女「いや、さっき私が応対した人がね、私の学生時代からの…友達なんだけど、彼、広告の仕事してて、ほら、後輩男くん、悩んでるかんじじゃん? 彼に話を聞いてもらったりしたら何かの参考になったりするんじゃないかなと思って、で、明日空いてるって聞いてたから約束取り付けちゃったんだよねー」

後輩女「…(すごく自然に話しかけてるけど、これはフラれたわけじゃないのかな?)」

後輩男「あー、そうなんですか(元カレ疑惑のオトコ…!)」

女「しゃあない、超ひさびさにタイマン飲みでもするか」

後輩男「(そ、それはまずいのではないだろうか…いやしかし…)」

後輩女「(こいつ、あからさまにガッカリしてない? すげーむかつくんだけど)」

85豆腐:2017/10/07(土) 20:21:28 ID:UwS5far.
後輩女「……はあ」

後輩女「あのー、女さん」

女「ん?」

後輩女「それって、私も参加していいですか? もし良ければなんですけど…」

後輩男「!!」

女「わー! わー! もちろん大丈夫だよ! でも、いいの?」

後輩女「私は大丈夫です。後輩男くんは?」

後輩男「そ、そうですね、せっかくだし、滅多にない機会なんで…」

後輩女「(よく言うよ)」

86豆腐:2017/10/07(土) 20:22:00 ID:UwS5far.
女「後輩女ちゃんと飲むの久しぶりー! そっちのほうが嬉しいかも!」

後輩女「あはは…」



後輩男「お前…女さんにすげー気に入られてるのな」

後輩女「唯一、年下のオンナだからなんじゃない?」

後輩男「照れて照れてか」

後輩女「照れてないから」

後輩男「それにしてもお前、あれだな」

後輩女「ん?」

87豆腐:2017/10/07(土) 20:22:32 ID:UwS5far.
後輩男「俺のキューピッドだな。まじありがとうな」

後輩女「…痛い」

後輩男「え? 痛いっつった!? どうした、どっか痛めた?」

後輩女「…大丈夫。ありがと。後輩男には解らないところが痛いだけ」

後輩男「……あー(生理痛とかだな)」

後輩女「(生理痛とかだなとか思ってんだろうなこいつぶっ飛ばしたい)」

88豆腐:2017/10/07(土) 20:23:14 ID:UwS5far.
翌日 渋谷 居酒屋

女「おおおお、超ウルトラスーパー懐かしい…」

後輩男「よく来てたんですか?」

女「うん、学生のときにはよく。あ! あの店員さん、まだいる!」

後輩女「(はしゃいでる。女さんって可愛いな。私から見ても可愛いんだもん。あーあ)」

女「いやー、男くんの、あ、今から来る友達の名前なんだけどね、男くんのファインプレーだよこれは」

後輩女「思い出の場所なんですね」

女「あはは、そんな大げさなもんじゃないけどさ。大学卒業してから渋谷なんか来なくなったもんなー。なんか男くん、少し遅れるらしいから先に始めてようよ。二人ともビールでいい?」

後輩男「はい」

後輩女「はいじゃないよ、私たちが気を遣わせてどうすんの!」

後輩男「え、あ、そうか」

女「あー、いいっていいって、適当にいこうよ」

89豆腐:2017/10/07(土) 20:23:51 ID:UwS5far.
15分後

女「ちょっとお手洗いいってきまーす」

後輩男・女「あ、はーい」

後輩男「…どう思う」

後輩女「ん?」

後輩男「元カノと飲むのに思い出の場所を選ぶなんてさ。これは明らかにより戻しを狙ってんじゃないかと俺は思ってるんだけど」

後輩女「……え!? その男さんって人、女さんの元カレなの!?」

後輩男「多分」

後輩女「まじかー! えー、なにそれ。私、そんな場にいていいわけ!? 一気に帰りたくなってきたんだけど!」

後輩男「今さら何を言う」

後輩女「いやいやいや、ていうか知ってるんなら先に言っといてよ!」

後輩男「それはごめん」

後輩女「……あのさ、一つ聞いていい?」

後輩男「ん?」

90豆腐:2017/10/07(土) 20:24:31 ID:UwS5far.
後輩女「後輩男くんって、女さんに告白した?」

後輩男「え? いや、してないけど…」

後輩女「この前、女さんと飲みに行った次の日、泣いたって言ってたじゃん? あれは何で?」

後輩男「…あー」

後輩女「告白してフラれたんじゃないのまじウケるとか思ってたんだけど」

後輩男「おい」

後輩女「違うの?」

後輩男「それは…やばい帰ってきた」

女「ただいまーっと。…何か深刻そうな話してなかった?」

後輩女「いや、カーニバルの企画案について話してたんです」

91豆腐:2017/10/07(土) 20:25:05 ID:UwS5far.
女「あーね。しっかし課長も言うよね。この企画書にはロジックがないだって。あの人、この夏にマッキンゼー関連の本読み漁ってるらしいよ」

後輩女「…それは、見習うべきとこだと思いますけど」

女「もちろん。馬鹿にしてるわけじゃないよ。でも私、ロジカルがどうとか、すんげー頭痛くなっちゃうんだよね。こちとら美味しい酒を作って売りたいだけだってのむはは」

後輩女「(なんでこんな人のことを好きになったんだこのオトコは)」

後輩男「それな! むはは!」

後輩女「(笑ってるし)」

92豆腐:2017/10/07(土) 20:25:37 ID:UwS5far.
男「お、いたいた」

女「あ、男くん、お疲れ! 意外と早かったね」

男「そう? ごめんな遅れて。えーと…」

女「あ、紹介するね。こちら男くん。私の大学んときの友達。で、こちらがうちの会社の後輩男くんと後輩女ちゃん」

後輩男・女「初めまして。よろしくお願いします」

男「こちらこそ! ごめんさいね、テーブル越しに名刺交換しちゃって」

後輩女「(ふうん? 感じ良い人じゃん?)」

後輩男「(嫌な奴だ嘘くさい笑顔に嘘くさい感じの良さに嘘くさい嘘くさい)」

女「なんか男、お兄ちゃんに似てきたね」

男「やめて」

女「いやなんか、如才のなさ加減がそっくりよ。さすが兄弟」

男「血はつながってないけどね」

後輩男・女「!?」

93豆腐:2017/10/07(土) 20:26:13 ID:UwS5far.
女「なんでそんな人の道に反した嘘をつくの。しかも初対面の人の前で」

男「すいませーん、生ビールください!」

女「いやまじでお兄ちゃんそっくりだわ」

後輩男「(なんだこいつ、ふざけやがって! 女さんのフォローがなかったらめちゃくちゃ気まずい空気になってたじゃねえか! 信頼してんのか! 女さんを信頼してんのか! こいつだったら拾ってくれるわと!)」

後輩女「(なんか捉えどころのない人だなあ)」

94豆腐:2017/10/07(土) 20:26:56 ID:UwS5far.
カンパーイ

男「いやー、懐かしいね。そもそもお前と飲むのが久しぶりだし」

女「年末以来? あ、そうそう、言おうと思ってたんだけどお店のチョイス、ナイス。ん? チョイス、ナイス。韻をふんじゃったけど気にしない方向で」

男「なんか久々に来たくなってさ。女も久しぶり?」

女「卒業してから初めてだと思う」

男「まじか。俺はちょいちょい来てたなー。お二人はよくこいつと飲むんですか?」

後輩男「(こいつ呼ばわり!!! きーーーーっ!!!!)」

後輩女「私はそうでもないんですけど、後輩男くんはたまに飲んでるよね?」

後輩男「…そう、ですね」

95豆腐:2017/10/07(土) 20:27:52 ID:UwS5far.
男「ふうん、後輩男くんも結構飲むほうなの?」

後輩男「まあ、じゃないと酒の会社なんかに入りませんよね」

後輩女「(感じわるっ! 後輩男、気付けー! おまえいま、この店で一番感じ悪いってことに気付けー!)」

男「あ、そうだ、そこ俺も聞きたかったんだけどさ、下戸の人ってやっぱ酒造メーカーにはいないの?」

女「いないってことはないだろうけど、私は知らないなー。そう言われてみると、皆、やっぱ結構飲む人たちばっかかも」

後輩女「(変な空気になりそうなところをさりげなく戻した! この人、できるぞ! おい後輩男! お前、勝ち目あんのか!? 私はないと見た!)」

女「私なんかはやっぱ飲んで暮らしたい! という高尚な思いが昂じてこの会社に入ったみたいなもんだし。後輩男くんもそうだよね?」

後輩男「そうですね」

男「へえ。後輩女さんは?」

96豆腐:2017/10/07(土) 20:28:38 ID:UwS5far.
後輩女「私は…そうですね、人並みに好きだとは思いますけどこの二人には勝てません」

男「女と同じくらい飲めるって、そりゃ後輩男くん、すごいね」

女「あ、でもね、やっぱ学生んときみたいには飲めなくなったよ」

男「あー、まあそれは俺も同じかな。年齢ってこともあるんだろうけど、何より次の日のこと考えちゃうよな」

女「ほんとそれ。猪突猛進ができなくなった」

男「勇猛果敢に攻められなくなったよな」

女「乾坤一擲が難しくなった」

男「お前に一番似合わないセリフだな、それ」

女「弱肉強食が…」

男「それは関係ない」

後輩女「(ああ、このやりとり……)」

後輩女「(本当に仲のいい二人だったんだなあ…)」

後輩女「(なんで別れちゃったんだろう)」

後輩男「(呪呪呪呪呪呪)」

97以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/08(日) 00:45:06 ID:vOwO63ew
うーん

つらい。おつかれ。ノシ

98以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/08(日) 12:37:37 ID:4jAqNewg
男と女が結婚出来ますように

99豆腐:2017/10/09(月) 00:22:15 ID:RGBOft3E
男「あ、でさ、カーニバルの話なんだけど」

女「あ、酔っぱらう前に話しときたい!」

男「ちょっといくつか考えてはみたんだ」

女「あ、その前にさ、ええと、後輩男くん、いい?」

後輩男「あ、はい」

男「ん?」

後輩男「(ここは女さんの顔を立てよう…)あのですね、僕もカーニバルのプロモーションの企画を考えてはいるんですけど」

男「うん」

100豆腐:2017/10/09(月) 00:22:56 ID:RGBOft3E
後輩男「こう…なんて言えばいいんだろ?」

後輩女「ええ、私にふってくるの? 実際に企画書を見てもらったら?」

後輩男「え、いやでもこれ社内用の資料だし…」

女「別に社外秘が載ってるわけじゃないんだから問題ないよ。私も実際に持てもらった方がいいと思う。あ、男くん、いい? なんか先生みたいなことしてもらうかもしれないんだけど」

男「うん、全然かまわんよ」

後輩男「…あ、じゃあ、これなんですけど」

男「はい、拝見します」ペラ ペラ ペラ

後輩男「…どうですか?」

101豆腐:2017/10/09(月) 00:23:30 ID:RGBOft3E
男「…これ、女には見てもらったの?」

後輩男「あ、はい、一応」

男「お前は何て言ってあげたの?」

女「なんて言ったっけ?」

後輩男「ええと、何て言ったらいいか解らないけど、いいね、とはならない、と」

男「頼りになる先輩だわ」

女「お、このやろー、大人になって皮肉を覚えやがったな?」

後輩男「それで、課長には『全部ダメ』って言われたんです。この企画書にはロジックがないって」

男「ふうん。…ああ、まあ、そうかもね」

後輩男「…」

102豆腐:2017/10/09(月) 00:24:04 ID:RGBOft3E
男「この商品のターゲットって、30代以上の肉食系男子だっけ?」

女「うん」

男「肉食系男子ってのが何なのか整理できてない感じがするね。だから彼らのインサイトもうまく考察できてないし、そもそもこのカーニバルってお酒が彼らにどんな価値をもたらすのかというか、後輩男くんがどんな価値を与えたいと思ってるのかが見えてこない」

後輩男「!!」

女「あー、課長と同じようなこと言ってる」

男「俺さ、課長さんには一回しかお会いしてないから確信的なことは言えないけど…この企画書にはロジックがないっていうのは、上司がよく言ってくる言葉なんだって」

女「へー」

103以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/09(月) 08:17:07 ID:2NZmr1fo
ほー

104豆腐:2017/10/09(月) 17:23:45 ID:RGBOft3E
男「で、そう言ってくる上司には2種類あって、『とりあえずこう言っときゃ格好つくだろう』って人。つまり、自分もちゃんとロジカルにその企画書のダメなところを指摘できないタイプ。こういう人にはいくら『どこがダメなんですか』って聞いても教えてくれない。だって自分も解ってないんだから。こういう人は『自分で考えろ』とか『ダメなもんはダメなんだ』で逃げる。もう一つはちゃんとどこがダメなのかきちんとロジカルに把握しているタイプ」

女「あー。課長は…」

後輩女「間違いなく後者ですね」

男「あ、やっぱり? 人の会社の上役捕まえてこんなこと言うのも不躾だけど、頭よさそうな方だもんね」

女「甘いもんばっか与えてくるけどね。太るっちゅうの」

男「どこがダメなのか聞いた?」

後輩男「ええと…ビジョンがないみたいなことを言われました」

105豆腐:2017/10/09(月) 17:24:17 ID:RGBOft3E
男「うん、その通り。ビジョンがないから行き当たりばったりな印象の企画書になってる。この、『ステーキ店でのプロモーション』っていうのも、『肉食』って言葉に引きずられてるだけじゃん? 肉食っていうのはもっと情緒的な意味もあると俺は思うけど」

後輩男「…」

男「一番大事なのは、ターゲットである『肉食系男子』とはどういう人たちなのか。そして彼らにこのカーニバルをどんな気分で買ってもらいたいのか、飲んでもらいたいのか。そこを決定することだね」

後輩男「………」

男「あー…ごめんね偉そうに色々言っちゃったけど、まあ一つの意見として参考にでも…」

後輩男「男さん…」

男「は、はい」

後輩男「兄貴って呼んで、いいですか?」

106以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/10(火) 06:15:06 ID:SDkDcjh2
チョロい…!?

107豆腐:2017/10/10(火) 09:13:51 ID:S9lhLyiU
唐突な人物紹介3

後輩男(23)
酒造会社勤務。社会人二年目。学生時代はラクロスに命をかけていた。感激屋の傾向があり、人に惚れやすい。入社当時から女のことが好き。

後輩女(22)
酒造会社勤務。後輩男の同期。入社当時はちゃらんぽらんに見える女のことが苦手だった。高校生のときから付き合っていた2つ年上の彼氏がいたが、彼が就職活動を始めた際に、すれ違いが多くなり、解散することになった。音楽の趣味が渋い。

108豆腐:2017/10/10(火) 17:39:28 ID:EyfgPj7o
渋谷駅

女「今日はありがとうね」

男「いやいや、こちらこそ。楽しかったよ」

後輩男「俺はめちゃくちゃ勉強になりました! 男さん! 今度また飲みにつれてってください! ていうか連絡先教えてください!」

男「う、うん、さっき渡した名刺にLineのIDも載ってるからそちらからどうぞ」

女「超なつかれたね」ヒソ

男「う、うん」ヒソ

女「ええと、男くんはいまどこに住んでんだっけ?」

男「明大前だから井の頭線」

109豆腐:2017/10/10(火) 17:40:07 ID:EyfgPj7o
後輩女「え!? 私も明大前です!」

男「あ、そうなんだ。すごい偶然。じゃあ一緒に帰ろうか」

後輩女「はい、ありがとうございます」チラッ

後輩男「…」

後輩女「(いいな、って顔してる! あいつなんなの本当に!)」

女「私と後輩男くんは山手線か。じゃあ、ここで。男くん、またね。後輩女ちゃん、お疲れ様」

後輩女「はい、お疲れさまでした!」

110豆腐:2017/10/10(火) 17:40:48 ID:EyfgPj7o
井の頭線 ホーム

男「明大前のどこらへんに住んでんの?」

後輩女「下高井戸の方に歩いて行ったところです」

男「あ、そうなんだ。俺はむしろ新代田方面だわ」

後輩女「いつから明大前に住まれてるんですか?」

男「えーと、去年かな。それまでは四谷に住んでた」

後輩女「すごい良いとこじゃないですか」

男「まあ便利だったねー。新宿でも六本木でも終電気にせず飲めたし」

後輩女「やっぱり男さんも結構飲まれるんですね」

111豆腐:2017/10/10(火) 17:41:23 ID:EyfgPj7o
男「うん、女のほうが飲むけどね、多分。あいつより飲む人間は見たことない。俺とあいつと…あと、仲の良い友達が二人いたんだけど、その四人の学生時代の総飲酒量で50メートルのプール三つ四つ、埋められるんじゃないかなー」

後輩女「あはは! すごいですね!」

後輩女「…なんかすいません、今日、後輩男がやたら、その…うざくて」

男「ん? うざいとは思わなかったけど、なんか最初の方、やたら嫌われてんなーとは思ったかな。シャイな子なの?」

後輩女「シャイというか…」

男「ん?」

後輩女「(ああ…、なんかこの人、喋りやすいな…、私も酔っぱらってるし…、聞いちゃおうかな)」

後輩女「後輩男くんは、女さんが好きなんですよ。だから…」

男「ほう!?」

後輩女「(あれ、なんか急に、表情が子供っぽく、というか、悪魔的に…)」

112豆腐:2017/10/10(火) 17:42:18 ID:EyfgPj7o
男「いいねいいね、そういうあいつの話を待ってたんよ俺は! いやー、あいつさー、俺のことをいじってばっかりで自分のことは全然喋らないしさ、しかも学生時代は俺の親友と付き合ってたからなんつうの? こっちも気ぃ使って突っ込んで色々聞けなかったしさ」

後輩女「え?」

男「ん?」

後輩女「あ…私、勘違いしてました。男さんって、女さんの昔の彼氏だとばかり…」

男「だっはっはっはっはっは! ないない! 俺とあいつが無人島で二人っきりになったとしても俺らは仲良く滅びることを選ぶぜ?」

後輩女「……そうだったんだ…じゃあ、ああ…完璧、あいつの勘違いじゃん」

男「ん?」

後輩女「あの…後輩男が今日、最初の方、男さんに失礼な態度だったのは、その…彼も男さんが女さんの元カレだと思ってたからで…」

男「……ああ、そういうこと! なるほどね! 冗談じゃねえぞ!」

後輩女「よく言って、聞かせときます」

113豆腐:2017/10/10(火) 17:42:53 ID:EyfgPj7o
後輩女「(ああ、でも…)」

後輩女「(ガッカリしている自分も、いる)」

後輩女「(こんな素敵な人が、女さんとよりを戻したがっているんなら、後輩男くんに勝ち目なんてないだろうなって、思ってた)」

後輩女「(だから、後輩男くんがむしろ男さんを尊敬し始めたとき、ホッとしちゃったんだ)」

後輩女「(これで後輩男くんは、女さんを諦めるんじゃないかって…)」

後輩女「(そういう考え方をする自分が嫌だ…)」

後輩女「(ううん、そうじゃない…。そんなことより何より、男さんと女さんが何でもなかったってことによって、後輩男くんが女さんを諦めないだろうってことが…)」

後輩女「(何より、嫌だ…)」

114豆腐:2017/10/10(火) 18:16:59 ID:EyfgPj7o
あ、110の男のセリフ、「むしろ新代田方面」っての、ミスですね。そんなもん新代田で降りんかいって感じだ。ええと、「代田橋方面」に訂正です。まあ物語に関わる情報じゃないんでどーでもいーんですが。

よろしくお願いします。

115以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/10(火) 21:13:25 ID:wtgRHN4I
おつ

116以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/10(火) 23:37:00 ID:tFecn.k6
絡み縺れる恋愛事情、嫌いじゃないぜ
おつおつ

117豆腐:2017/10/11(水) 18:22:56 ID:wuQbwecI
山手線 車内

後輩男「……」ポチポチポチ

女「男くんにメッセージ書いてんの?」

後輩男「はい。早いうちにお礼をと思って」

女「社会人らしくて良いことです」

後輩男「女さんもありがとうございました。ご馳走してもらって」

女「いやいや、半分以上、男くんが出してるし。私は自分のぶんを出したくらいだよ」

118豆腐:2017/10/11(水) 18:23:29 ID:wuQbwecI
後輩男「…その、今でもすごく仲が良いんですね」

女「ん? 男くんと? そうだねー。大学卒業してからは会う機会も減ったけどさ」

後輩男「…あの、つかぬことをお聞きするんですが、前、おっしゃってた元カレって、…男さんのことですよね?」

女「……」

後輩男「(固まってしまった!)

女「……」

後輩男「あ、あの、女さん?」

119豆腐:2017/10/11(水) 18:24:06 ID:wuQbwecI
女「人間、あまりにもあまりなことを言われると、身動きが取れなくなるのね」

後輩男「へ?」

女「付き合ってない付き合ってない! そんな概念がない! 私たちの間には!」

後輩男「え!? そうなんですか!? 俺、てっきり…」

女「違うって! あー、びっくりした」

後輩男「そっか…そっか」

女「え、なに、そういうノリで今日、男くんと対峙してたの? ははは、ウケるんだけど」

後輩男「はい、あの、ぶっちゃけ…」

120豆腐:2017/10/11(水) 18:24:47 ID:wuQbwecI
女「くくくくっ、それ、男くんにも言ってごらんよ」

後輩男「お恥ずかしいです…」

女「まあ面白いからもうちょっとその誤解を続けててほしかったけどね。あ、私ここで降りなきゃだ。じゃあね、後輩男くん。お疲れ」

後輩男「あ、お疲れさまでした。気をつけて帰ってください」

女「うん、ありがとー」

後輩男「……」

後輩男「(あー、よかったあああ…、男さんがより戻しを企む元カレじゃなくてえええ…)」

121以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/12(木) 04:27:27 ID:WXbS0t5s


122以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/15(日) 13:33:57 ID:sZ8qFdVA
追いついた

123豆腐:2017/10/15(日) 14:25:52 ID:6e/ue/Y2
翌日

有楽町 〇〇酒造

後輩男「課長、いま、お時間よろしいでしょうか?」

課長「ん、どうした?」

後輩男「企画書のことなんですが」

課長「うん、なに、もう書き直したの?」

後輩男「はい」

課長「へえ…そこ置いといて。いま忙しいから、あとで見る」

後輩男「はい、よろしくお願いします」



女「ひいいい、頭いてええ…」

後輩女「女さん、大丈夫ですか?」

124豆腐:2017/10/15(日) 14:26:36 ID:6e/ue/Y2
女「二日酔いがとどまることを知らないよ…」

後輩女「そんな飲んでましたっけ?」

女「いや、実はあの飲み会の後、拍車がかかって、家の近くの行きつけで2時くらいまで飲んでしまいまして…」

後輩女「ええ? だ、大丈夫ですか?」

女「大丈夫、午前は使い物にならないと思うけど、午前は経費精算にあてるから…今日の勝負は午後からだ…!」

後輩女「え! 経費精算まだやってなかったんですか!?」

女「恥ずかしながら…」


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