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【艦これ】五十鈴「何それ?」 提督「ロードバイクだ」【2スレ目】
1
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 21:53:56 ID:XmBArZ8Y
※深海棲艦と仮初の和平を以て平和になった世界観における、とある鎮守府での一コマを描くほのぼの系
艦娘がロードバイクに乗るだけのお話
実在のメーカーも出てきます
基本差別はしません
メーカーアンチはシカトでよろしく
※以下ご都合主義
・小柄な駆逐艦や他艦種の一部艦娘もフツーに乗ったりする(本来適正サイズがないモデルにも適正サイズがあると捏造)
・大会のレギュレーション(特に自転車重量の下限設定)としては失格のバイクパーツ構成(※軽すぎると大会では出場できなかったりする)
・一部艦娘達が修羅道至高天
・亀更新
上記のことは認めないという方はバック推奨。
また、上記のことはOK、もしくは「規定とかサイズとかなぁにそれぇ」って方は読み進めても大丈夫です
【前スレ】
【艦これ】長良「なんですかそれ?」 提督「ロードバイクだ」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1454251122/
16
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:39:06 ID:XmBArZ8Y
提督「おお……! 見たことないタイプ! いいなー! やっぱチタンいいなー! オランダバイクいいなー!!」キラキラ
嵐「お? 司令もオランダバイク好きなのか。俺もイタリアンかオランダか迷ったんだよな」
提督「超好き。コガもニールプライドもトップチューブに乾電池を縦列駐車させてんのかってデザインのバンムーフも好き」
陽炎「バンムーフ? 乾電池? ちょっと興味あるわね………」ポチポチ
野分「ば、ん、むー、ふ、と……」←陽炎と同じくスマホ検索中
陽炎「ぶはっ!? ぶははははwwwww乾電池の、じゅ、縦列駐車wwwww」
野分「ぶ、ぷふっ……こ、これは、確かに乾電池ですね……」
提督「まあ初見だと笑えるデザインだろうが、これがなかなか性能がいいんだぜ。カジュアルな服装には意外とマッチする。近未来的っていうかさ」
萩風「ふふ、これはこれで面白いバイクですね、司令」
提督「でもちょっと意外だ。萩風はおしゃれ好きだから、もっとこう、クラシカルでデザイン性に富んだヤツを選ぶものかと」
萩風「あはは、ちょっと渋いですか? でも、これはこれで大人っぽい味わいがあっていいと思ったんです」
提督「―――訂正。俺が思ってたより、萩風はずっと大人だな」
萩風「っ、あ、は、はいっ!! あ、じゃなくて、えと、あ、ありがとうございます……?」
提督「それ、乗り心地どうなんだ? 聞かせてくれよ」
萩風「きょ、興味がおありですか? えっと、ではその……」
17
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:42:46 ID:XmBArZ8Y
黒潮「司令はん、おしゃべり好きな萩風の嗜好をよう理解しとるな」
天津風「あれを御機嫌取りとかの打算はなくてやってるから始末に置けないのよ」フン
初風「本当それよ。女ったらし」フン
提督(部下と色々交流深めにゃ色んな意味でアカン提督業の難しさに対して、陽炎型は理解が低かとです……)
萩風「……でね、聞いて聞いて、司令。それでね、あのね……♪」ニコニコ
※中々にマイナーなバイクチョイスであるが、提督は嫌いじゃない。むしろ好き。
ハンドメイドポリッシュ仕上げの非常に美しいバイク。シートステーのエロさが異常、とは明石の言。
他者と被りたくない! とか、長く乗れるバイクが欲しい! って方には非常にお勧めできるバイク。乗り心地が素敵。
何気に体力の鬼で、那珂や羽黒のインターバル皆無な殺人的日帰り旅行にも鼻歌混じりでついていける。川内曰く「嵐と同じく逸材」だとか。
実は嵐は提督に恋してる勢。萩風はその恋を応援する勢だが、提督の艦隊指揮への悪影響という憂慮も分かってるので板挟みされてる勢とも言える。
川内が苦手。夜戦は克服したとはいえ進んで夜戦はしたくない。当たり前だ。
嵐と同日に着任したため、まだまだ新参。自由闊達な当鎮守府の空気がお気に入りのようである。
漣にスイーツ作りを教わったり、鳳翔・磯波達に和食を習ったり、利根・谷風に将棋、舞風に踊りと、色んなことに興味津々。
提督とお喋りして嵐の恋の勝機を探りつつ、自他ともに認める多趣味な提督に楽しいことを教わって一石二鳥。なかなか強か。非常に充実しているらしい。
18
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:44:06 ID:XmBArZ8Y
********************************************************************************
陽炎型駆逐艦:舞風
【脚質】:不明(高い瞬発力と持久力を備えていることは一目瞭然)
――――てーとく! 舞風と一緒に、サイクリングにいこ! そーれ、わんつー!
ウィリーやダニエルジャンプ、果ては逆立ちまでやってのける、明らかに機材も競技も間違えている乗り方が悪魔染みて上手い
鎮守府内ではバランス感覚最強で、後に野分・そして『とある初春型駆逐艦』と共に鎮守府内でライディングテクニックの講師を務める。
スタンディングスティル(ストップ状態からペダルに両足を乗せたまま静止するスキル)を始めとした実戦的な教室で、非常に評価が高い。
ここでは重巡も空母も戦艦も、彼女たちの生徒である。鼻高々。
レースに参加することは稀であるが、記念参加勢の癖にまさかの『空渡り』という異名持ち
教え方が上手く、特に信号待ちなどでは重宝されるスタンディングスティルのやり方は、舞風が教えて習得できなかった人は皆無だとか
だけどロードバイクでダニエルジャンプとか段差越えは無理とは言わんが危険ですのでやめましょう。大和型とか長門型は特に。やめろフレームが逝く。
それと野分、のわっち叫びながらのウルトラマン乗りはやめろ腹筋が壊れる。
その後、野分の爆笑必至の持ちネタとして、のわっち乗りが野分の心のスロットに装備されることとなる。
高い瞬発力と同時に持久力も持ち合わせているようで、BMXやシクロクロスなどでは相当活躍できると思われるが、
ロードバイクでのレースにはさほど関心がないもよう。自転車に乗って色々とアクロバティックをカマすのは凄く好き。
レース時はもっぱら観戦派であり、野分・萩風と共に嵐の応援に精を出すようだ
なお谷風伝説の全ての元凶は、実は提督のみならず舞風にもある。
その気になれば舞風にも同じことができるともっぱらの噂。下り坂に舞う悪魔と化す日が来るのか。
19
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:45:59 ID:XmBArZ8Y
【使用バイク】:ORBEA ORCA AVANT OMP BA(Carbon Orange)
舞風のバイクは、スペインのオルベア、オルカ・アヴァンOMPだよー! 素敵なオレンジ色のバイクでしょ!
のわっちとは色違いの同じヤツなんだー、えっへっへぇ。コンポも同じカンパレコードに乗せ換えてるんだよ。
うん、良い反応するバイクだね。提督、今度一緒に走ろうね! 踊ってもいいよ!
ふぇ? あー、うん。踊りをしてるからかな。バランス感覚はちょーっと自信アリですよ。
ほら、両手放しで静止ー! かーらーのー、ジャーンプ!! えっへへ、ちょっとしたもんでしょ?
踊った後は、とってもお腹が空くけど、ロードバイクの後はもっとすくねー………お昼なにかなぁ。
え、寄り道? ここ、天丼屋さん? わぁ、舞風、天丼大好きだよ! もちろん天丼で!
えっ、近くに牧場もあるの? できたてのジェラート!? それも食べたい!! ありがと!!
********************************************************************************
20
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:48:09 ID:XmBArZ8Y
舞風「そーれ、わんつー!」ジャッ、クルンッ、クルクル
提督(スキッドから180度ターンして、そのままウィリーかよ……しかも膝で巧いこと衝撃を殺してる。バイクコントロールだけなら、鎮守府イチじゃないか、これ?)
なお提督のこの認識は、後にやや修正されるもよう。具体的には『とある初春型駆逐艦』と『とある軽空母』によって。
舞風「こんな感じー? 自転車って楽しいねー!」ニコニコ
提督「そういう乗り方じゃ……ま、まぁいいか(今度トライアルバイクやMTBも買ってやろうかな。俺も久々に乗りたいし)」
提督は元々そっちの競技からロードバイクに入ったため、バランス感覚が並ではない。並ではないが、相手が悪い。舞風や野分は異常の乗倍である。
舞風は正しくバランス感覚最強の駆逐艦。強風が荒れ狂う中に張られた1センチ幅のロープ上を全力疾走できるレベル。
レースに参加しない=出番少ないというわけではない。提督は面白くてノリのいい兄ちゃん的存在。たまにジョジョの5部よろしく、提督・野分と一緒に音楽に合わせてズッダンする。
舞風「あはは、てーとくってばリズム感良いねー! でも踊りはへたくそー! あははは!」
提督「ぐぬぬ」
野分「は、張り合わないでください、司令」
提督のことが大好きな舞風。ずっとずっと、みんなで一緒にいれたらいいね、と思ってる。
21
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:50:21 ID:XmBArZ8Y
********************************************************************************
陽炎型駆逐艦:秋雲
脚質:オールラウンダー
――――描きたいものは、今しか描けなかったんだよ。だから……。
本当は木炭のように脆い心を、ダイヤよりも固く鋼よりも柔軟な鎧で覆う駆逐艦。
ことエースのサポートにかけては駆逐艦内のデウス・エクス・マキナ的な存在。
オールラウンダーの万能性を持ちながら、秋雲にとってはそれはあくまでも土台でしかない。
本領も本分も本懐も軍艦であり、そして絵描きである。故にロードバイクでは己の勝利にこだわらないエンジョイ勢。
だがその経験は正しくロードバイクに活かされている。
見たいものだけを見てきたわけではない。描きたいものだけを描いてきたわけではない。好きなことだけをしてきたわけではない。
チャラけているようで誰より真剣に日々を過ごしてきたことは、陽炎型では初風と雪風が、秋雲型では巻雲と風雲がよく知っている。
ポスト提督と一部で言われるほどに多方面で才能を発揮するマルチプレイヤーが、この秋雲であった。
しかし決して『天才ではない』。
それ故に艦娘達は秋雲を高く評価している。
観察力が高いのは雪風も同様だが、雪風の観察力はあくまでも己の内側で完結したもので、それを言語化する術を持たない。
だが秋雲は違う。その『活かし方』においては秋雲の方が圧倒的に上であった。
【脚質および使用バイク】:???
どんなバイクくれるのかなぁ。楽しみだね〜♪
********************************************************************************
22
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:53:10 ID:XmBArZ8Y
※どすけべ。不健全? そういう年頃だから健全だ、いいね? むしろ一切興味がないのは不健全である。
エロいことに興味津々勢で、まんざらでもない提督にそういうこと教えてもらえたらラッキーとか妄想すると頗る勢。
結構意味深な事を言って提督をからかうように誘うが、顔に出ないだけで実は心臓バクバク。朝霜も似たような感じだが、朝霜はもう少しマイルドムッツリ。
たまに巻雲や朝霜をからかって遊ぶ。同じムッツリ系の巻雲・朝霜・漣・秋津洲・大鯨(今は龍鳳)は同人仲間。
大戦時にイタリア遠征へ同行し、イタリア提督にデッサンや絵画技法を学んだため、絵がメチャクチャうまい上に速い。
ネームはアナログ。通れば速攻でデジタルで仕上げる。二年前に商業デビューを果たし、現在は月間連載一本を持つ。ペンネームは『雲井秋水』。性別不明。
タイトルは『クソ提督の艦隊これくしょん』。主人公クソ提督。ヒロインは現在不明(やたら赤城・加賀・龍驤・雪風の出番多め)。
クソ提督の着任からの鎮守府運営を描いた、日常系ギャグマンガである。
無駄に画力の高い変顔をする下種い提督、純粋無垢で外道な提督をなぜか尊敬している雪風と、頻繁に提督を裏切って亡き者にしようとする赤城・加賀コンビの心理戦、常識人枠で弄られキャラの龍驤、センスの高いセリフ回しに定評がある。
雪風以外の陽炎型の出番が少ないのは描いている人の事情から。仮に姉らを登場させてヨゴレ扱いした日には殺される。かといって出したら汚さずにはいられないという呆れたサガを持つ。
巻頭カラー8ページ+原稿42ページを五日で上げる。原稿を落とすことは許されない。プロ意識高い。下書きしない。自分のために漫画を描いている。岸部露伴か貴様は。
鎮守府の駆逐艦では何気に一番金持ちだったりする。
提督のことは好きではあるが肉欲的な意味でもある。秋雲曰く「あの人のウエストライン超エロい」。腰フェチ。く、腐ってやがる。
23
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:55:16 ID:XmBArZ8Y
んあ? あ、ここが天丼屋さん? あんま天丼って気分じゃないんだけどなぁ。まあいっか。うどんとかあるでしょ。多分。
おー、囲炉裏がある。趣深いところだね。あはは、谷風や萩風は好きねぇ、こういうの。せっかくだしスケッチ……分かりましたよ、注文してからね?
どれどれ、メニューは………ん? 牛ステーキ丼? 海鮮丼? なにゆえに………え? どっちも凄く美味しいの? ラッキー!
んじゃー秋雲は〜……え? 特盛だけは頼んじゃだめ? いや、頼まないけど。駆逐艦よ、私たちゃ。並にしとくよ。何? 提督ってひょっとしてケチんぼ?
……んー、牛ステーキ丼か、海鮮丼か……悩むけど、秋雲は牛ステーキ丼で!! お、野分もステーキ丼? ははん、舞風と半分こだね?
提督は海鮮丼か。いいね、提督は秋雲さんと半分こしな〜い? いいの〜? やったぁ、これで食べ比べできるね!
……え、なんで不知火姉ちゃんは秋雲を睨むのよ? 怖いよ? やめてくれる? マジで。
島風ちんよぉー、おっそーい言い過ぎ。お店に失礼じゃ……お、来た……って、デカッ!? デカいねこの天丼!? これ、本当に普通サイズ?
あ、大盛なんだそれ。誰がそれ――――あ、言わなくていいよ。もう分かったから。時津風が「うそ、んなバカな」って顔してるし。
あー、そういう店かぁ……アレだよ、大盛を頼んだらいけない類の店。ん? いや、牛ステーキ丼は大盛がそもそもメニューにないし。お、来た。
ま、とにかくいただきまーす。味は……うわ、牛肉柔らかジューシー。醤油ベースの甘い玉ねぎタレがまたいいね。んまい。んまいよこれ。
タレの染みたふっくらご飯がまた……うん、こりゃ大盛入らないわ。並で十分な量だね。けど、こんだけうまいと案外食べきれそう。このお味でこのお値段はヘタなステーキ屋行くよりいいわぁ。
提督が作ってくれるヤツもおいしーけど、提督って薄味好きだよねぇ。旨み重視っつーか、素材の味重視っていうか……いやいや、好きだよん? よく噛んで食べるよーになったし。
24
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:57:15 ID:XmBArZ8Y
流石は提督推しのお店だね……っと、提督。海鮮丼とそろそろ交換……ん? どしたの不知火姉ちゃん。顔色悪いよ?
え? 不知火姉ちゃん特大頼んだの!? マジで? 提督やめろって言ってたじゃん!
は? こっそり頼んだ? 落ち度しかねえ! キャンセル? もう遅いっしょ。だってほらぁ、来ちゃったみたいだよ?
――――うっわなにコレ、戦艦用? 時津風の大盛にしても、重巡が食べる量だってのに。
いやいや、そんな目で秋雲さんを睨まれても。いやいや涙目で「落ち度でも?」って言われても。
提督がやめろって言ったのに特盛頼んだ不知火姉ちゃんの落ち度っしょ?
秋雲さんしーらぬい、じゃなくて、しーらない。
…
……
………
25
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 22:59:46 ID:XmBArZ8Y
※萩風はその女子力の高さを発揮し、周囲のお客さんに運ばれる丼サイズからボリュームとカロリーを察し、急遽てんぷら定食をご飯少な目に注文変更。
安定の雪風もまた危険を直感で察知したのか並から小に注文変更。海鮮丼(小)と時津風の天丼(大)と天津風のステーキ丼と島風のほっけ定食で四等分して食べきったもよう
結果的に雪風・時津風・天津風・島風は三種の丼物+ほっけをおなかいっぱい食べ比べできて幸せであった。流石は雪風ねーちゃん歪みねえ、とは秋雲の言。
なお浜風は(大)を頼んだが、普通に堪能したもよう。ダテにバルジはでかくねえってわけね、とは秋雲の言。ショックを受ける浜風。隣で聞いてた磯風に秋雲はチョップを喰らう。
駆逐艦だと(小)でも十分すぎるほどお腹にたまるサイズ。
(並)で駆逐艦だとちょっと食べ過ぎ、軽巡・重巡・軽空母満足サイズ。
(大)から千代田・空母・大鳳・戦艦御用達サイズ。
特大は赤城・加賀・長門型・大和型が二十杯ぐらい頼んで満足する。金のかかることです。
上記メンバーおよび他の(並)注文組はご満悦。
が、提督は展開を読んで海鮮丼(小)を注文。
ラック値が高く、嫌な予感は九割当たる提督であったが、珍しく読み間違える。
完全に読んでいたなら自分の分は何も注文すべきではなかったのだ。不知火と共に天丼(特盛)に挑む。
なお不知火は内心で提督と分けっこ(明らかに提督担当分が多い)が出来て内心ガッツポーズ。落ち度などぬい。
提督「特盛には勝てなかったよ………油切れが良くてうまいけど、うまいけど、物量が多すぎる………」ウプ
26
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:02:08 ID:XmBArZ8Y
不知火「し、司令官……!!」
黒潮「不知火はええからさっさと手伝ったりぃ。司令はんの担当分多すぎやろ……受け持ってあげなアカンで」
親潮「そ、そうですよ、不知火姉さん。厳しいことを言うようですが、元はと言えば不知火姉さんの……」
不知火「わ、分かってます。で、でも、こんな……司令官と、このままでは、か、か、か、かん、間接ちぅをして……」
黒潮「乙女プラグインか! そら結構やけど、ほとんど司令はんに食わせるんはどうかと思うで?」
提督「あの燐光めいた輝きは……ここはサーモン海域北方か……? はは、ははははは……よう、レ級……ブチ殺しに来たぜ……死に方選べや……」アバババ
不知火「ぬいッ!? し、司令、しっかり!!」
提督「駆逐艦六隻と侮るなよ……我が艦隊の駆逐艦は、他の鎮守府における標準的な戦艦と遜色なき強さを誇ルールル♪ ルルル♪ ルールル♪ ルルル♪ ルールールールールールルー♪」
秋雲「うおぉ、びくッた!? な、なに!? 唐突に歌いださないでよ!?」
雪風「おひるのテレビにでてくるすごい頭のおばちゃんのお部屋のテーマですか?」モグモグ
天津風「美味しいわね、この海鮮丼……あ、こっちのステーキ丼もいけるじゃない」モグモグ
時津風「いやー、雪風が小さいサイズ頼んでくれて助かったー。おいしいおいしい」モグモグ
島風「天丼も海鮮丼もステーキもほっけもおいひぃ」モグモグ
谷風「自由だねえ、あんたら」
陽炎「ちょ、ちょっと、司令、大丈夫!?」
27
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:03:59 ID:XmBArZ8Y
萩風「お、お気を確かに!」
提督「殺す……殺してやるぞ”レ級”ぅ……おまえはここで”沈む”んだよぅ……この”ソロモン海”でよぅ……」
!?
親潮(怖い!! 顔が! 怖い!!)
嵐「こ、これヤバいヤツじゃねえか? なんだ、フラッシュバックってやつか?」アワアワ
陽炎「懐かしー、二年前ね。ソロモン海北方に出撃した時よ」
雪風「あー……あの時のしれぇはこわかったです」
天津風「ああ、あの時期ね。取り巻きを昼の内に全部沈められた時のレ級の顔ったらなかったわね」
時津風「セルの完全体に笑えと言われたベジータとか、フリーザ第四形態の圧倒的な力に絶望したベジータとか、とにかくベジータみたいだったよね」
萩風(なにそれ情けない)
嵐(いや、どっちかっつーと……姉貴らがオカシイんじゃねえの?)
提督「おどれとはもう二度と海上で出会うことはないやろ……せやから今言うとく……陽炎型駆逐艦ってのは、こんなもんや」アウアウ
陽炎「あら、この台詞は……いやー、油断だったなぁ、黒潮カッコ良かったねぇ」
28
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:05:41 ID:XmBArZ8Y
黒潮「……ウチと不知火と雪風がブチ切れたときの、ウチの台詞やね。や、恥ずかしいなぁ」
不知火「恥じることなどないものと。あの時の黒潮はとても頼もしかったわ」
雪風「思い出すだけでげきおこちゃんです!」プンプン
初風「あの時の三人は怖かったなあ………陽炎が被弾したのを嗤ったレ級が、二度と笑えなくなったもんね」
秋雲「ありゃしばらく夢に見る恐さだったよマジで」
嵐「そ、そうなのか」
萩風「」
萩風は違和感に気づいて、顔面蒼白となった――――艦隊は基本、六人がセットである。
ソロモン海北方へ出撃するにあたり、初風の発言を鑑みれば、少なくとも六人中六人が陽炎型駆逐艦だったということになるが、それの意味するところはつまり、
萩風(駆逐艦六人でソロモン海北方を攻略したってこと、よね?)
今更ながらに萩風は気づいた。
――――この鎮守府は、そういう鎮守府なのだと。
29
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:07:43 ID:XmBArZ8Y
天津風「私と時津風、夕立・文月・綾波・敷波の六人で行ったときにも似たようなことあったっけ」
時津風「あー、あったあったー。敷波が中破してからもー物凄いったらなかったよー。もうレ級ってば轟沈してんのに綾波が魚雷や砲撃全弾バラ撒きまくってさー。オーバーキルってレベルじゃないね、うん、ないない」
天津風「手が付けられないぐらいキレちゃってたもんね。もうあの子一人でいいんじゃないかなって感じだったわ」
萩風「」
親潮「」
嵐「あー……のわっち? オレたち、話に着いていけないんだけど……マジ?」
野分「えらくマジよ。新参の嵐や萩風は知らないのも無理はないけれど……ウチの鎮守府の古参の駆逐艦は、私を含めて誰も彼も似たようなことできるわよ?」
舞風「あたしも戦艦ぐらいならワンパンできるよ」
嵐「戦艦ぐらいっつったかぐらいって!?」
舞風「あ、誤解しないでよね! 戦艦って言っても深海棲艦の戦艦の事だから! うちの戦艦の人たちは絶対無理!!」
嵐「違いが判らねえ」
舞風「いやいや、綾波ちゃんや夕立ちゃんや暁ちゃんは飛行場棲姫とかワンパンするし」
萩風・嵐(ひょっとしてそれはギャグで言っているの(です)か!?)
黒潮「大丈夫、大丈夫やて。そのうち萩風も嵐も同じことできるようになるわぁ。雪風や島風クラスは難しいかもしれんけど、せやな……うちぐらいならなれるで、きっと」
萩風「………色々突っ込みたいんだけどよ、その、なんだ、まず……雪風ってそんなにヤバいの?」
30
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:08:46 ID:XmBArZ8Y
陽炎「っていうか雪風・島風クラスは無理よ。海軍最強になるってことと同義だから」
萩風「えっ」
嵐「えっ」
初風「うん……全く理解できないと思うんだけど……うちの雪風、海軍の中で最強の駆逐艦だからね? 次点が島風」
嵐「!?」ギョッ
萩風「!?」チラッ
天津風「美味しかったわね。ちょっと食べすぎちゃったかも……時津風、もう大盛なんて駄目よ?」メッ
時津風「うー、わかったよ。反省してまーす。反省反省。ありがとね、三人とも」
雪風「ううん、いろいろ食べれて幸せです………はぁ、おなかいっぱいです」ケプ
島風「はー、おいしかった。ごちそーさまー。お食事はゆっくりでもいいねー。はやさはいらないねー」ケプ
天津風「アンタ美味しい料理が出てくるときは大人しく待つわよね」
島風「速くても美味しくなきゃヤだもん」
嵐(アレが海軍の一位と二位の駆逐艦……?)
萩風(た、確かに伝説的な逸話はありますけど……それは史実ですよね? 史実だけの話ですよね?)
31
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:10:34 ID:XmBArZ8Y
初風「なにせ着任から二年目以降は一度も被弾したことないのよ、雪風。実戦でも演習でも。常に最前線にいたのに。一度もね」
谷風「谷風さんも二年目からは実戦だけなら被弾ゼロなんだけどなぁ……雪風は避けるだけじゃなくて、敵の旗艦とかバカスカ沈めるもんなー」
時津風「島風もそうだよ? 一度も被弾したことないよねえ――――雪風との演習以外じゃ、いひひ」
島風「おうっ!? だ、だって、雪風ちゃん速くないのにすっごく射撃うまいんだよー。あんなの避けるの無理ー」
野分「そうだ、今後、雪風と一緒に護衛任務にでも着けてもらったらどうかしら? 稀にはぐれ艦隊と遭遇したらいいもの見れるわよ?」
嵐「い、いいもの?」
野分「敵の砲撃や雷撃はもちろん、敵艦載機もぜーんぶ撃ち落として護衛するから。参考になるわよ」
嵐(見たことはないけどこれだけは間違いなく言える……)
萩風(きっと、次元が違いすぎて参考にならない)
この一週間後、未だ戦火に激動するヨーロッパ方面へのタンカー護衛の任に雪風・島風と共についた嵐と萩風は、奇跡を見ることになる。
神通をして「技の百貨店」とすら言わしめた雪風の超絶的な戦闘の引き出しと、砲撃や雷撃の方が避けているのではと錯覚するほどの回避テクニック。
魚雷の扱いにかけてはその雪風をも上回り、北上すら参考にするという島風の雷撃術と敵艦隊の誘導術。
曰く「島風ぇ? ああ、あの駆逐………うざい。ちょこまかマジうざい。演習とはいえ当てるの超しんどい。気を抜くとこっちが当てられるし? ほんっと屈辱。あいつと闘るときってすっごく神経使うんだよねー」とのこと。
これが北上の最大の賛辞であると島風以外の誰もが知っている。
32
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:12:37 ID:XmBArZ8Y
秋雲「秋月型が防空駆逐艦の名が泣くって嘆いてたけど? あの子ら、防空に関しては雪風ねーちゃん以上だから気にしなくてもいいのにねー」
雪風「雪風がいる以上、ぜったいに誰も沈みません!!」キリッ
天津風「頼もしいわね雪風。だけど……ほっぺにご飯粒ついてるわよ?」
雪風「ほあっ」
谷風「あはは、雪風はおちゃめさんだね」
時津風「あたしがとったげるー」ヒョイパク
雪風「えっへへぇ」テレテレ
なお、雪風。更に強くなる出来事が未来で待ち受けているのだが、この時点では誰一人知る由もなかった。
さておき、食の暴力にさらされる提督と、追い詰められる不知火の決着であったが、
不知火「クッ………し、死なばもろとも……あなたも一緒よ………黒潮!!」
黒潮「はァ!? ウチ関係あらへんやん!? あんま脂っこいもの、ウチはよう食わ……ちょ、そんなおっきいの(丼の半ばほどに隠れている拳大の掻き揚げ。最後のトラップ)口にはいら―――アッーーーーー!?」
雪風「あーーーっ! 直撃弾です!!」
親潮「く、黒潮さーーーーーん!?」
舞風「南無、黒潮ねーちゃん」ナムナム
33
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:13:52 ID:XmBArZ8Y
野分「これもコラテラルダメージというやつですね。黒潮姉さん、どうか安らかに」ナムナム
初風「鬼かあんたたちは」
浜風「んむ……いいぞいいぞ……あむ……もぐ……こういうのでいいんですよ、こういうので………メロ………」
浦風「ええ味やねぇ、うん……もむ……んぐ……はぐ……ナポ……モニュ……」
磯風「うむ、これはなかなか……はふ……ぱく……もにゅ……ズズ……ガプ……」
浜風・浦風・磯風「「「ごちそうさまでした」」」
初風「あんたら三人は空気読みなさい。というか余裕たっぷりなところ、司令の手助けしてきなさい」
浜風「初風姉さん、この浜風……人の食べ物を欲しがるような浅ましさは持ち合わせてはいません」キリッ
浦風「そうじゃそうじゃ。人を食いしん坊さんみたいに」キリッ
磯風「全く心外なことだな。誇り高き陽炎型の一員として断固抗議するぞ」キリッ
初風「ほっぺにご飯粒付けて何言ってんのかしらこの馬鹿妹どもは。いいから行け空気読め」ゲシッ
浜風「あう」イタイ
浦風「きゃんっ」イタイ
磯風「くっ」イタイ
34
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:15:27 ID:XmBArZ8Y
陽炎型のおっぱいの大きい子は花より団子な風潮。
嵐(この食い意地の張った三人も、戦艦ワンパンするのかよ……)ゴクリ
※磯風に至ってはワンパンどころか塵一つ残しません。
敵の深海棲艦からは「なんかこの駆逐艦の砲撃、黄金に輝いて見えるんだけどいや錯覚じゃなくてマジで」ともっぱらの噂。
萩風(わ、私、大丈夫かな……同じぐらい強くなれるかな……)ドキドキ
なれます。正しくは軽巡らが強くします。修羅道・軽巡界はまさに魔人の巣窟である。軽巡最弱の天龍・龍田ですらノーマルのレ級なら昼戦で真っ二つにする。
なお特盛天丼は、この後仲良く手分けして食べきりました。
元々小食な黒潮は完全に胸焼けとなった。
そして天丼屋で戦術的勝利Bを引っ提げて、彼女たちは牧場へと向かった。
陽炎「あー、チョコジェラートおいしー。間宮さんとはまた違った味わいね」ペロペロ
不知火「いいところですね、ここは。次からはツーリングの時にここへ寄りましょう」ペロペロ
黒潮「し、不知火……おんどれ、何をしれっとジェラート食ってんのや………く、食べられん。今食ったら、戻す……覚えときぃ………」ウプ
35
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:17:14 ID:XmBArZ8Y
不知火「ご、ごめんなさい……」
陽炎と不知火はデザートは別腹と称して、牧場でジェラート食べたもよう
雪風「あっ!? 見て、島風ちゃん! 時津風、天津風! 牛さん! 牛さんです! 牛さんがいっぱい! わーい!!」
島風「ほんとだー! わー、おっきいね! 私初めて見た! あはは、やっぱりおっそーい! でもかわいいー!!」
時津風「おー、うしーうしだー! あっ、こうしがいる! おーい、もぅー、もぅーもぅー」
天津風「あら、か、可愛いじゃない……」キラキラ
野分「これは和むわね」
秋雲(牛食った後に牛を見て和むと申すか)
舞風「そうだねー。ジェラートはおいしーし、風景はのどかだし、なんだか笑顔になってきちゃう」
浜風「これはっ………まろやかで、口どけが良くて、はむ………なんて自然な甘さが……もむ……実に……イタリアに遠征に行った時を、あむ、思い出しますね……おいしい」
谷風「落ち着いて食べなよ浜風ぇ。しかし、こうやってのんびり過ごせる日が来るなんてねぇ……いいもんだねぇ、平和」
平和を噛みしめる駆逐艦達。その一方で提督は、
提督「も、もう……いっぱいでち。天丼はもういやでち!! うごご……」
36
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:18:44 ID:XmBArZ8Y
萩風「し、司令、お気を確かに……!」
嵐「あの量は、流石になぁ……伊勢さんや日向さんが食ってるクラスだぜ」
黒潮「あかん。こりゃあかんで」ウプ
初風「明らかに食べ過ぎよ。まあ、同情するけど……」
黒潮「わ、わかっとるなら、なんで手助けしてくれなかったんや初風ェ……」
初風「だ、だって……提督と、間接キスなんて……は、恥ずかしいじゃない」プイ
黒潮「は、初風、あんたもか……乙女プラグイン導入しとるんか……流行っとるんかそれ……う、うぷ」
提督は犠牲になったのだ……。
提督「次は戦艦か空母組を必ず一人は連れてこよう………保険だ保険」
なお、この予感がほどなくして的中する。
ここ最近での改二実装祝い、またその前祝いとして、提督は鎮守府でのおめでとうパーティとは別に、個人的なお祝いとして件の店に向かう。
彼女たちたっての願いで連れてきた、皐月、大潮、霞、江風がやらかした。
37
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:19:54 ID:XmBArZ8Y
皐月「美味しいけど……可愛くない……この海鮮丼、可愛くないよ!!」ゲキオコ
大潮「くちくかん、おおしおです。ちいさないぶくろに、おおきなおさかな……おまかせくださ……すいません! こんなどどどどどーんとした量は無理です!!」アワアワアワ
霞「はァッ!? なによこの量! 食べきれないったら!!」フンガー
江風「まろーん……調子に乗りすぎたかなぁ……なンだよこの量はよぉ……」マローン
提督「君たちってばまー揃いも揃って俺の話を聞かないね」
うずたかく積み上がる刺身の山と、拾っても拾ってもなくならないてんぷらの沼。
彼女たちの瞳から光が失われそうになる、その時だった。
長門「心配いらんぞ皐月よ! この長門がいる! 何、案ずるな! ビッグセブンは胃袋もビッグなのだからな!」
あらかじめ提督に示唆されてなおステーキ丼と天丼(特盛)を一杯ずつ注文済みの長門。
そして、
武蔵「フッ………霞。ガッつくようで少々気恥ずかしいのだが、これだけではいささか物足りなくてな―――私に分けて貰えないだろうか?」
武蔵に至ってはもはや何を言っているのか理解できないレベルであった。各三種の丼を一杯ずつ注文しておいてこれである。
38
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:20:58 ID:XmBArZ8Y
赤城「あら、この天丼……それに海鮮丼も……おいひぃ……うん、うん……イケまふねぇ……上々れふ……あ、残すなら下さいね、大潮ひゃん、江風ひゃん」ハムハムモムモムモグモグ
各種二杯を注文しておきながら、なおも大潮と江風の天丼と海鮮丼に手を伸ばす一航戦・赤城。
艦種を越えた過剰なまでの摂取量。しかし提督はそれを咎めたことがない。
スペックの上では加賀や瑞鶴は赤城を凌いでいる。にも拘らず、この鎮守府において最多MVP獲得数を誇る正規空母は赤城であった。
提督(絶句だよ)
提督は焼き魚定食を注文した。脂がのって実にウマい。そもこの定食屋にはハズレがない。あえてハズレがあるとすれば初見殺し的な量だけである。
長門・武蔵・赤城も難なくクリア。この戦艦・正規空母は本当によく食べる。燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイトだけでなく、メシを良く食う。
長門「うん、美味しかったぞ。提督の作るさっぱり目でカラッと上がった天ぷらもいいが、こういうガッツリも悪くない……ありがとう、提督」
武蔵「馳走になった。また来ような、提督よ」
赤城「御馳走様でした。堪能致しました」
提督「まぁ、いいか……」
その後、仲良くジェラート食べて帰ってこれたのであった。
39
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:21:48 ID:XmBArZ8Y
なお提督は艦娘たちにお土産として、各種ジェラートをキロ単位で大量購入した。自腹で。
一方赤城は数十キロ単位で購入し、鎮守府当てに冷凍便で配送手続きを行った。
長門「恥を知れ恥を」
武蔵「どういう胃袋してるんだ貴様。全部自分で食う気だろうそれ」
赤城「…………」ニ、ニコー
長門「効くと思うか?」
武蔵「他の空母や戦艦ならいざ知らず、この武蔵と長門に?」
赤城「くっ……じ、自分だけで食べるつもりなどありませんよ? か、加賀さんと食べますし、はい」
提督「いや、いいんだけどさ……少し自重しろよ。また太るぞ」
赤城「!」
長門「提督、貴方は赤城に甘いな……着任当初からそうだった」
武蔵「赤城が好みか? そうなのか?」
提督「邪推すんな……赤城のみならずお前らは魅力的な女性だと思ってはいるが、それはそれだ」
長門「そうか…………(なんだ? 胸の奥が……? 痛み……? いや、しかし不快ではないが、苦しい……なんなのだ? ん? んん?)」
40
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:23:17 ID:XmBArZ8Y
武蔵「それにしたところで赤城には随分と格別の待遇と感じているんだがな。いや、責めているわけではない。赤城も誤解してくれるな」
提督「いや、大戦時に激務というのも生ぬるい任務に当たってもらっていた空母の中で、赤城にはまとめ役として特に頑張ってもらっただろう? このぐらいはしてやらなきゃって思うし……」
赤城「て、提督……!」ジーン
武蔵「むむ……私と大和は比較的中堅よりの古参だからな……この鎮守府の黎明期から尽くした赤城に対する労わりか……納得した。すまなかった、赤城。気を悪くしただろう。この通りだ」
赤城「いいえ、私としましても働きに対していささか過分なご配慮を頂いてはいないかと不安に思っていた次第で……汗顔の至りです」
提督「長門も武蔵も遠慮せず選べよ。陸奥も大和も喜ぶぜ」
武蔵「それはありがたいが……なあ、提督よ。私の記憶では、その加賀・瑞鶴よりも数倍頑張ってた輩がいた筈なんだが……?」
赤城「え………あっ(察し)」
提督「嘘だろ誰だよ? 死ぬぞ?」
赤城(貴方ですよ。七日七晩不眠不休で指令書を作成したり資源確保のための交渉で各地を飛び回ったりと、色々やってたじゃないですか……)
長門(貴方だよ。高速艇を用いて敵の攪乱なんて超ド危険任務を率先してやる司令官なんか貴方しかいないだろうが)
武蔵(おまえだよ。レ級を蹴っ飛ばす阿呆な人類がいるとは思わなかった。成功するとも思わなかったが)
提督「??? 誰だ……? イムヤか? いや、潜水艦はガッツリ働いたらドーンと長期休暇取らせてたし……航空支援で出ずっぱりだった龍驤・隼鷹? 随伴での実戦教導に当たっていた鳳翔? あれ? 俺ちゃんと休暇取らせたぞ?」
赤城(そのくせ艦娘には全員休暇取らせるんですもの……)
41
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:26:40 ID:XmBArZ8Y
提督「! わかった! 明石だな! アイツには艤装の修理やら改修やらで全然休暇取らせてやれなかった時期があったもんな!!」
武蔵(その明石には一月出ずっぱりだった報酬としてのボーナスと二週間の長期休暇をプレゼントしただろーがッ……!!)
提督「あれ? 違う? じゃあ――――大淀だ! 今度は当たりだろ! あいつには俺の執務をずーっと手伝ってもらってたしな!」
長門(ああ。確かに三ヶ月出ずっぱりだったが、ちゃんと定時に上がらせてただろう……? 貴方はその間ほぼ丸一日働き通しで)
艦娘らが修羅となる下地は、提督の働きっぷりを見ていたが故である。
――――強くなって、提督に楽させてやりたい。
弾薬一つまみ、ボーキサイトの一欠けらすら無駄にはできない。
彼女らは強さを求め、求めた分だけ提督が強くなれる環境を整えた。
そんな信頼関係によって成り立つロードバイク鎮守府は、今日もいつも通り修羅道を突っ走っていた。
【夢の後日談(表):艦】
42
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/13(日) 23:31:09 ID:XmBArZ8Y
※書き終えてるんだけど今日はもう投下無理だなこれは
時間かかり過ぎちまった。
2スレ目突入しました。レース編にも突入できたらいいなあ。
明日あたり余裕があれば阿賀野のその後を投下していきたいですね
ところで陽炎型で出てきた牧場は実在する牧場をモデルにしています
埼玉の上尾にあるよ。牧場はろんぐらいだぁすでも出てきてるね。その近くにある天丼屋さんも実在の店
43
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 00:03:36 ID:RMgMRgjs
乙
それにしてもこの文量で2スレ目とは恐るべし
44
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 01:44:33 ID:ztoUAlVM
2スレ目乙です
秋雲の商業誌の下りでボンバークレープ氏のアドミラルシリーズ思い浮かんだのは私だけでいいw
45
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 11:09:58 ID:MZU4tX0Q
乙なんだよ!
これが連休中の癒やし&楽しみになっている……
46
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 11:52:33 ID:cdByi5fI
>>1
のおかげでチタンロードフレームを買ってしまいました
>>44
お主もか。あれは中々濃ゆくて好き
47
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 12:16:11 ID:HQYBC9KU
自分もエントリーのロード買ったわ
ヒルクライムで自分を追い込むのは死ぬほど楽しい
しかし体重70近いし痩せないとちょっとなあ
48
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/14(月) 22:34:12 ID:ZJd2loz6
乙
ロードバイクスレなのにお腹空いてきた
49
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/15(火) 19:43:02 ID:PrFSWubY
なお脚の痙攣が始まったら大人しくギアを売り飛ばしてトルクを軽くすること、痙攣しても踏み続けると最悪肉離れを起こすっぽい
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/16(水) 13:49:54 ID:yZlN4lbw
>>42
読者「だま、した……」
>>1
「はい?」
読者「よく……も……よくも俺たちを」
寝ころんだままに、
>>1
を射抜かんとするほどに鋭い瞳には、怒りが燃えていた。読者にとっては正当なる怒りであった。
読者「よくも俺たちをッ、だましたなァアアアアア!!」
明日あたりとはなんだったのか
51
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/17(木) 12:42:13 ID:r.Yka4HU
>>1
がまた落車して寝ころんでるかもしれないじゃん……
52
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/17(木) 12:59:07 ID:UGPqSvH2
>>51
縁起でもないこと言うなよ。
ただでさえ、お盆期間なんだから祭られざるご先祖様に呼ばれてたら……
53
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/17(木) 15:43:56 ID:gwNb56Fg
>>1
のおかげ?でピナレロのFP1(2009)から、CARRERAのPHIBRA EVOに乗り換えすることにしました。
あのデザインは、1度見たら忘れられないすなぁ。
更新… 更新が楽しみなのです……!
54
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:33:26 ID:tBpXZ5OY
【夢の後日談(裏)】
時間は少し前後する。雪風とのヒルクライムバトルを終えて二週間後のことであった。
阿賀野の朝は早い。
朝四時に起床、というか提督に布団を引っぺがされて起こされる。
提督「おら、朝だぞ」
阿賀野「おふぁようごじゃいまふぅ」フラフラ
提督「顔洗って」
阿賀野「んぅ」
提督「歯ァ磨いて」
阿賀野「しゃこしゃこ」
提督「髪を梳いて」
阿賀野「しゅっしゅー、しゅっしゅーっ、しむしゅっしゅー」
提督「(占守?)……目ェ覚めたか?」
阿賀野「あい……」
55
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:34:26 ID:tBpXZ5OY
提督「よし、飲め。いつものだ」
阿賀野「くぴくぴ……」
提督の差し出したクエン酸入りのドリンクを摂取する。阿賀野にとって、朝の水分補給の定番となっていた。
提督「じゃあサクッと着替えて寮の前に。5分で支度しろ」
阿賀野「うふふ、着替えさせてくれてもいいのよ?」
提督「その無様な腹を布越しではなく直に俺にさらけ出すとか、蛮勇以前に不敬だと思わんか」
阿賀野「」
提督の朝の有難くも痛烈な一言はいつも阿賀野の意識を完全覚醒させると共に、ダイエットへの意欲を高めてくれたという。
指示通りに5分で身支度を整え、未だに涙がにじむ瞳をアイウェアで隠した阿賀野は軽巡寮を出る。
提督と速吸に合流した後、軽く運動前の準備運動とストレッチを行う。
そのまま一時間から一時間半ほどロードバイクで一定の心拍数――――有酸素運動のレベルを保って走り込む。
提督「心拍に注意」
阿賀野「はぁい! ふっ、ふぅっ、はぁっ、ふっ……」
56
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:35:11 ID:tBpXZ5OY
速吸「朝のひんやりした空気はやっぱり気持ちいいですね」
運動が終わった後は、乳酸抜きのために軽くストレッチを行う。
阿賀野「よいしょ、よいしょ……ふー、はー、ふー……」
提督「よし、軽めの朝飯としよう」
提督お手製のたっぷり野菜スープがコップ一杯分と、一欠けらのチーズとゆで卵が出される。
食堂で仕込みをしている間宮や伊良湖も、相伴に預かることもあった。
運動後に食べるというのがミソだ。空腹時の運動は度を過ぎなければ、体脂肪を燃焼させるのにこの上ないベストタイミングである。
また阿賀野は、これまで任務内における訓練を必要最低限しか行わず、非常に間食の多い生活を送っていた。
朝にも昼にも夜にもガッツリ食べ過ぎてしまう。消費カロリーと摂取カロリーのつり合いが取れていなかったため、駄肉が付いた。
軽めの食事を採って朝食までの空腹をしのぐと同時に、程よい満腹感をもたらすことで、一日のカロリーの過剰摂取を防ぐ算段である。
提督と速吸指導の元に行われるダイエットは、いわゆる食べて動く健康的ダイエットであった。
提督「フーッ、フーッ……ゴク、ハグ……はふ、はふ」
阿賀野「んぐ、あぐ……ごく、ごきゅ……がじがじ……」
57
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:37:27 ID:tBpXZ5OY
速吸「おいひ……フゥフゥ、ごく……わちちっ、はむ、もぐ……」
間宮「あむ、あむ……ごくごく……ふー、ふーっ」
伊良湖「はふ、はふ……はちちっ、はふ、もっもっ……」
チーズを齧り、良質の鶏ササミとトマトベースのダシで煮込んだジャガイモやキャベツの入ったスープを、はふはふと啜る。
食感の残った野菜が磨り潰されるまで、よく咀嚼する。ひと噛みひと噛みを大事にして食べ、啜る。
簡素であるが味わい深い食事である、と阿賀野は感じた。とても美味しいと。
固めのチーズがスープの温度で口の中に溶け込んでいき、カロリー不足を訴える肉体に染みわたっていくようだった。ほっくりしたゆで卵も胃袋に充足感をもたらす。
デザートにリンゴをシャクシャクと齧る。旬を外れていたリンゴはどこか味気なく酷い食感だったが、甘味が運動後の頭をリフレッシュさせていくのを感じた。
腹2〜3分目ぐらいまでの食事を摂取した後、次いで熱いシャワーを浴びて、運動の汗を流す。
阿賀野(………ん? ちょっと、お腹のお肉、減ってきた?)
当初はこの段階で、阿賀野の全身は悲鳴を上げた。更なるカロリー摂取への欲望が阿賀野の五体を駆け巡る。
食欲との戦いだったが、一週間たった今ではそれもさほどではない。
ちょっとした己の身体の変化に気づき、阿賀野のモチベーションが僅かに上がる。
58
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:43:54 ID:tBpXZ5OY
一連の運動と後処理を終え、これで大体朝七時になるのだ。
この時間帯になると総員起こしのかかった艦娘達も身支度を整えて、各々が食堂へやってくる。阿賀野もまた身支度を整えて食堂へと向かう。
ここから本格的に朝食を取る。
提督特製の野菜炒めに、速吸特製のたっぷりのご飯と納豆にお味噌汁。メインはもちろん間宮特製のオリーブオイルで炒めたさくさくのサケである。
オリーブオイルの使用も最低限。上質なエキストラバージンオリーブオイルを用いたサケのソテーは旨味がぎっしりとつまった塩味で、高タンパクでかつ栄養満点の献立だ。
自然と箸が進む。この時も、よく噛んで食べる。
阿賀野「はふ、もぐ、さく……もぐ、もぐ、もぐもぐ……ごくん」
提督「納豆はいいよねぇ、納豆はさぁ(裏声)」
川内ボイスで言うとなんでもかんでも野戦に聞こえてくる不思議であった。
幸せな食事を終えた後は、休日なら再びロードバイクに乗る準備を始める。間宮・伊良湖と速吸に頼んでいた補給食とドリンクを受け取った後、ジャージを纏う。
ロードバイクを押しながら向かう先は外――――ではなく、まずは駆逐艦寮である。
駆逐艦寮の鎮守府道路沿いのD5出口横には、通称『魔法使いの喫茶店』があった。
オーダー後、程なくして差し出された蜂蜜と一匙のココナッツオイルの入った特製のエスプレッソ・ソロを、三口で飲み干す。
59
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:44:45 ID:tBpXZ5OY
阿賀野「ごきゅん。ふぅーーーーー…………――――よし」
気合の入った瞳をアイウェアで覆い隠し、ロードバイクに跨る。
鎮守府外へと遠乗りに出かける。提督の監視は絶対に外れることがない。
提督自身もオフならば同行し、提督自身に仕事があれば能代ら妹たちが同行。それも無理ならば、島風の連装砲ちゃんが走行中の阿賀野を追跡する。
そう――――遂に完成したホバーボードのテスト走行も兼ねた、阿賀野の監視である。その頭には小型カメラが取り付けられていた。
小型カメラの映像は提督の執務室内のモニターにリアルタイムで配信されている。
執務の傍ら、サボったりヘタレた走りをしようものなら即座に罵詈雑言を浴びせかけるという本気っぷりである。
プライバシーの侵害などというものはない。これも一つの任務であるゆえだ。軍人たるもの基礎訓練は必須。まして堕落した者を教導するものが目を光らせるのは当然であった。
むしろこれは有情である。提督が無情ならば神通や鳳翔を同行させているからだ。
提督『20m先を左折』
阿賀野「えっ!? そ、そっちって確か……」
提督『――――山だ。といっても丘みたいなモンだ。平均斜度は5%、距離8km程度のとっても優しいコースだよ? 平らげて帰って来い』
阿賀野「っ、う、うん! あ、阿賀野、がんばる!!」
60
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:45:38 ID:tBpXZ5OY
提督(――――おや。当初は悲鳴を上げていたのに、随分といい顔するようになった)
連装砲ちゃん【>ω<】キュイ
提督『心拍維持を忘れるな。旨いもん作って待ってるからさ』
阿賀野「ほ、ほんと!? 提督さんのお料理、阿賀野大好きだから! 期待しちゃうからね!!」
一見すると可愛らしい連装砲ちゃんから、男である提督の声が響くのは実にシュールであった。裏声使えば別であるがそれはそれで恐ろしいものがある。
すれ違う一般のサイクリストたちが奇異の目で阿賀野と連装砲ちゃんを見ていたが、地元のローディはすぐに気づいた――――ああ、あの鎮守府の艦娘だ、と。
それで納得するあたり地域に密着した鎮守府運営が出来ていると取るべきか、それだけ奇行っぷりが広まっていると取るべきか、判断に悩むところである。
阿賀野「はっ、はっ、はぁっ……」
提督『頃合いだな。そろそろ補給しろ』
阿賀野「は、はぁい、あむ、あむ……」
提督(ふむ…………当初は食欲も失せるぐらいバテてたのが嘘のようだな)
阿賀野は気づくことはなかったが、提督のコース選択が良かったこともある。違う景色が見え、かつペース維持しやすい平坦を選定していた。
毎度、走りに飽きが出てこないようにという提督の配慮であったが、これが提督の想定を上回る効果を発揮した。
61
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 00:51:10 ID:tBpXZ5OY
提督(ッ―――――80km/h、だと? 向かい風の中の、平地で?)
阿賀野は、たぐいまれなスプリント能力を備えていた。元々太る前は、運動神経は長良に迫るほどであった。
未だ調整中でベストから遠い体型に在ってなお、この走りだ。これが完成したならば、それは一体どれほどのものか――――提督は考えるだけで口元の笑みを隠せないほどに滾った。
任務のある日は、早くロードに乗るためにてきぱきと働き、昼食以降の食事は軽めだがきっちりと取り、仕事が終わり次第、夕食までくたくたになるまで走る。
夜は夜で入浴後に入念にストレッチを行い、歴代三大ツールのDVDを姉妹で鑑賞したり読書をしたり、日課の提督日誌を付けた後は、夜九時にはぐっすりだ。
およそ七時間ほどの睡眠で次の日には軽い疲労こそあれど、朝の有酸素運動ですっかり調子が良くなるという永久機関めいたダイエット生活である。
それまでは不規則かつ自堕落な生活を送っていた阿賀野の睡眠の質はとても良いとはいえなかった。
しかし運動を日課とすることでくたくたになった体は、自然と睡眠を欲するようになり、朝まで熟睡である。
提督(ま……いっぱい食べていっぱい運動していっぱい休む。健康的なダイエットはこうでないとなァ)
提督「こんなものが阿賀野であるものか!!!」
能代「提督! 本音と建前が逆になってます!!」
矢矧「気持ちはわかるけれど、落ち着いて頂戴」
阿賀野「お願い、少しは頑張った私に優しくしてくれない!?」
62
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/20(日) 23:02:51 ID:tBpXZ5OY
※里帰りしてー、帰ってきてー、投下してたらー、先日の落雷でー、停電でー、漏電してー、お察しだよー
ピンポイントで阿賀野編データ破損
メッチャ今日書き直したらより面白いので来たから良しとする
肉付けして来週ぐらいに投下予定でつ
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/21(月) 01:41:59 ID:f9DNgD7U
>>62
乙&どんまい
毎回楽しみにしてる
……マジカルもな
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/21(月) 01:42:56 ID:qlpKZjX6
>>62
おお、お気の毒でしたがより面白いと聞いてwktkが止まらぬい
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/21(月) 23:39:34 ID:VAhoZsMA
>>62
どんまいと言いつつ面白いとかテンション上がるわー
阿賀野知っているか?
レース体重に対して8パーセントまでなら「太るべき体重」の範囲だからへーきへーき
女子のレース体重が25〜27パーセントだから春先の体脂肪率は……まぁうん……
66
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:04:16 ID:HlTZ5qj2
涙目の阿賀野は腹の底から叫んだ。その腹は見事に引っこんで、駄肉は消え去っていた。
僅か三週間で元の体重に戻ったのだ。しかも胸部装甲に着いた肉をそのままに、そっくり腹の肉だけ落とすという芸当である。
それで元の体重になったということはつまり、
提督(選んだ色で塗った世界に囲まれていたのに、選べない筈の減量箇所まで選びやがった……)
扶桑型や千歳、潮や浜風の如く一部分だけがそのままという有様である。那珂といい阿武隈といいチート体質の軽巡は多いものの、これには提督も苦笑いである。
肥満で僅かに太った胸はその大きさ・ハリ・美しさを保ったままに、余分な肉だけが引っこみ筋肉の質が上がるという奇跡的な結果である。その後のリバウンドも一切ない。むしろ更にプロポーションが良くなった。
というのも――――。
阿賀野(――――楽しいかも、これ)
阿賀野自体がロードバイクの速度に魅了された。より速く走るためにどうすれば良いのかを考えた末、行きついた答えはやはりダイエットである。
毎日規則正しい生活を心がけるようになったのだ。
苦痛を伴うダイエットは地獄だ。しかし楽しいダイエットならば、それは一日ごとにモチベーションを高めていくだけの好循環である。
天国というほどの法悦は、この世界にはない。だが阿賀野にとってこのダイエット生活は、そこまで地獄ではなかったのは確かだった。
67
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:15:47 ID:HlTZ5qj2
酒匂「うんうん、阿賀野お姉ちゃん、すごいよ! お腹周り、すっきりしてきてるよー! もうちょっとだよ!」
阿賀野「!! う、うん! お姉ちゃん、もっと頑張るわ!」
痛烈な言葉ばかりを浴びせる提督と妹×2と違い、酒匂は阿賀野を大いに励ました。
――――提督と能代・矢矧の仕込みである。
提督(これも飴と鞭だ)
能代(うん……私たちの仕込みとはいえ、妹に与えられる飴でモチベーション上げる姉ってどうなのよ阿賀野姉……)
矢矧(とても複雑だけれど、いい傾向ね)
阿賀野は鈴谷ら一部の艦娘らと同じで褒められて伸びるタイプであった。
大戦時、阿賀野は軽巡の戦果ランキングにおいて首位争いを繰り広げていた長良・球磨の間に割り込める程に、高い実力のある軽巡だったのだ。
当時は戦果を競える相手が上にも下にも沢山いた。それ故に阿賀野という子の本質を提督も妹たちも少し見誤っていた。自己を高めるストイックな面も持ち合わせているのだと、誤解していた。
そう、阿賀野は――――典型的な「他人と競う」タイプであった。鞭を入れてくれる誰かが、競う誰かがいないと堕落していく。
平和になった途端に堕落したのは当たり前であった。
68
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:27:28 ID:HlTZ5qj2
提督(何にせよ、頃合いか)
提督が何かを企み始めた頃、阿賀野のダイエット生活がついに四週目に入った。
7月某日――――それは夏の日差しが大気を焦がすような、とても暑い日であった。
阿賀野の朝は早い。
朝四時に起床、というか提督に布団を引っぺがされて起こされていた。
過去形である。
阿賀野「………んゅ」ムクリ
今や「目覚ましの音に一秒で反応し、即座にタイマーを切る。しっかりとした足取りで洗面台に移動し、
阿賀野「んー…………しゃこしゃこ……しゅっしゅー、しゅっしゅー、りーしゅりゅーりゅー」
顔を洗い、歯を磨き、髪を梳く。
その時、小さなノックの音が響いた。「はーい」と声を出してドアを開くと、
提督「ん………よし、起きてるな」
69
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:29:07 ID:HlTZ5qj2
ドリンクを手に持った提督が、ジャージ姿で立っている。もう日課となった光景であった。
提督「飲め。いつものだ」
阿賀野「くぴくぴ……」
提督の差し出したドリンクを摂取する。
提督「じゃあいつも通りだ。サクッと着替えて寮の前に。5分で支度しろ」
阿賀野「うふふ、着替えさせてくれてもいいのよ?」
提督「お前のような可愛い子が、迂闊にそんなことを言うもんじゃないよ」
そう言って提督が扉を閉める。ぽつんと自室の玄関に残された阿賀野は、
阿賀野「…………ふえ?」
少しだけ、その日の提督の反応が違ったことに――――その意味を考えて、頬を染めた。
70
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:31:34 ID:HlTZ5qj2
阿賀野「……こ、好感度が上がってる!? い、いつ!? いつフラグたったの!?
お腹引っこんだから!? 龍驤さんたちが歯ぎしりするような洗練バディに戻ったから!?
まさか―――――提督さんはツンデレ属性だったのかな!?」
阿賀野はどこまで行っても阿賀野であった――――飴と鞭作戦の成功である。
その日、少しだけ指示時間をオーバーした阿賀野は、いつものように提督と鎮守府内道路を周回する有酸素サイクリングを行った。
その日は阿賀野が秘書艦を務める日だった。
代謝量が増えたことで食事量が増え始めたことを大喜びする阿賀野だったが、油断せずに毎日運動に励んでいた。
提督と共に朝の有酸素サイクリングを終えた後、シャワーを浴びて朝食の時間が訪れた時、阿賀野は違和感を覚え始めた。
提督「ほい、朝飯」
阿賀野「えっ? 量……多くないかな? 脂質は少な目だけど……」
提督「いつも通りの食事じゃ、今日は多分もたんぞ」
阿賀野「え゛っ? そんなにキツいお仕事なの、今日って!?」
提督「いいや? ある意味キツくはあるだろうが、それ以上にきっと―――楽しいぞ」
阿賀野「……?」
71
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:33:46 ID:HlTZ5qj2
提督「ほれ、食え。冷めるぞ」
阿賀野「うーん……まぁ、いいや! いただきまーす!」
少しだけ違和感を覚えたものの、阿賀野はある種のチートデイのようなものと判断した。筋トレやロードバイクによる有酸素運動を積み上げ、阿賀野の身体はすっかり引き締まっていた。
やや低燃費モードに入っている肉体を誤魔化すために、多くの食事を採ることで肉体の低燃費モードを解除するトレーニング方法があると、速吸から聞いたことがある。
これはきっとそれなのだと、阿賀野は思った。
提督「…………」
――――もちろん真実は違う。阿賀野の体重は順調に落ちて行っている。現在は四週目だが、そのペースは三週目に入ってからずっと一定であった。体質からしてチートであった。
阿賀野が感じた些細な違和感は、提督がそれを言わなかったこと――――提督は嘘をつかない。だが隠し事や言わないことはいっぱいある。
目の前に出されたのは朝に食べるには少しヘヴィ気味な、薄切り牛肉をトマトソース炒め、その大盛だ。
いつもの野菜スープとは違う、鶏ガラを使ったコンソメスープもある。
千切りのキャベツをふんだんに使ったサラダの添え物のマカロニもまた美味しそうであった。ひじきたっぷりの副菜もある。
更にデザートにはバナナヨーグルトだ。
阿賀野(………ツバが出てきた。運動するようになって、本当にご飯が美味しくて困る)ゴクリ
72
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:36:25 ID:HlTZ5qj2
どれもが阿賀野の大好物であった。とろんとろんになるまで煮込んだ濃厚なトマト、その旨みがぎゅっと詰まったソースで香ばしく炒めた、赤味の薄切り牛肉。
ボリューミィな見た目と味わい深さに反して、カロリーはかなり抑えてある。旨みがあってカロリーが少ないという素晴らしさである。
阿賀野「おいしーい♪」
提督「たんとお食べ」
久々に満腹感を覚える食事を堪能する。
阿賀野「ぷぅ…………あぁ、おいしかったぁ」
腹八分目をやや通り過ぎたぐらいに満たされた胃袋をぽんぽんと押さえて執務室に向かおうとすると、
提督「阿賀野、突然だがお前の秘書艦業務は明日に変更となった」
阿賀野「本当に突然だね!?」
提督「俺のスケジュール管理ミスでな。すまんが今日はオフだ。別に有給使わせるつもりはない」
阿賀野「う、うん……それは、別にいいんだけど……」
その後、自室に戻った阿賀野は少しだけストレッチした後、明石のロードバイク工房へ向かう――――その時、違和感が疑惑へと変わる。
73
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:39:35 ID:HlTZ5qj2
阿賀野「え!? 今日、借りれるロードバイクないの!?」
明石「う、うん。そうなの、そうなのよー」
阿賀野「うわぁ、まいったなぁ……」
まずは明石である。いつもの共用のロードバイクを借りに行った際、阿賀野がほぼ占有状態だったロードバイクがレンタル済みであった。
朝四時台ではもちろん余裕でレンタル出来たが、昼間となればそうもいかないこともあるとは思ったが、
阿賀野「………じー」
明石「な、なんですかその疑いの目は? 私が嘘をついているとでも?」
あからさまに明石の目は泳いでいた。嘘が下手過ぎである。
というか、言いたくて言いたくて仕方ないといった風であった。笑っているような引き攣っているような、とても不謹慎な顔であったと阿賀野は後に述懐する。
それに対し提督は「だってばかしだからねあの子は」とにべもなかった。
阿賀野「しょーがない……うーん……そうだ、能代たちは自分のロードバイク納車してたっけ! 借りてこよっと」
明石「!?」
74
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:43:43 ID:HlTZ5qj2
目に見えて明石が狼狽えだす。
その反応をうかがっていた阿賀野は、明石を疑いの視線で見やった。
阿賀野「…………じー」
明石「えあ゛」
阿賀野「…………じー」
明石「ぅ、うう……!」
確定であった。明石は何かを隠している。
そんな折だった。
天龍「――――ほらな。やっぱダメだったろ」
川内「もうちょっと持つと思ったんだけど……」
球磨「明石は嘘が下手すぎクマ……」
そんな声が明石のロードバイク工房の入り口から響いたのは。
75
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 21:51:28 ID:HlTZ5qj2
香取「はぁ……10時ぐらいまで引っ張ってほしいと言ったじゃないですか、明石さん」
夕張「まぁまぁ、それを見越して私たち間に合ったんだからいいんじゃない?」
大淀「結果論でしょうそれは……」
阿賀野「え?」
阿賀野が振り返った先には、軽巡級・練巡級の巡洋艦、そのネームシップたちがいた。
それぞれが、各々のロードバイクを携えている。
天龍「よお、阿賀野――――あれからちったあ走れるようになったかよ」
阿賀野「ふぇ? て、天龍ちゃ……さん?」
天龍「ちゃん言おうとしたなオマエ」
「ちゃん」呼びを嫌うロードバイク鎮守府最古の軽巡、天龍。
愛車はスコット・フォイルプレミアム。脚質はオールラウンダー。
雪風と島風が着任し、初期艦と共に出撃した戦果――――正面海域で邂逅した、初めての軽巡であった。
76
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:05:22 ID:HlTZ5qj2
香取「ダイエット、無事に成功したそうですね」
大淀「ダイエット作戦成功、おめでとうございます!」
共に柔らかな微笑みを湛える知性的な二人は、多くの駆逐艦たちから「先生」と呼ばれる練習巡洋艦・香取。
そして「鎮守府影の支配者」とか「裏ボス」とか「あの眼鏡マジ鬼畜」とか「解体はやめて」など一部から誤解を受ける連合艦隊旗艦・大淀である。
香取の愛車はビーエムシー・チームマシーン――――その脚質はパンチャー。
大淀の愛車はトマジーニ・シンテシー……のはずが、何故か携えているバイクは異なった。
自費購入したレース用の愛車は、サーヴェロ・S5――――判明した脚質はTTスペシャリスト。
夕張「おめでとー! これで名実ともに最新鋭軽巡よね! 羨ましーぐらいのスタイル、取り戻したじゃない! 見違えちゃった!」
阿賀野「え、あ、うん、あ、ありがと……?」
快活な笑みを浮かべて手を叩く、兵装実験巡洋艦として多くの兵装の改良に貢献した夕張。
愛車はビアンキ・スペシャリッシマ――――脚質はスプリンターである――――現時点では。
77
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:12:32 ID:HlTZ5qj2
球磨「ちょっくら球磨が揉んでやるクマ!」
川内「さ! 私たちとサイクリングしよ!!」
阿賀野「え、え、え……? い、いきなり、なに? 何が起こってるの?」
その天龍に遅れること一週間、同時に建造された球磨と川内。
それぞれの愛車はクオータ・カーン、デローザ・プロトス――――共にスプリンター寄りのオールラウンダーである。
阿賀野「………どゆこと?」
いくつもの疑問符を頭上に浮かび上がらせる阿賀野の耳に、とても気まずそうな咳払いが聞こえた。
明石「…………えっと、その…………『今の阿賀野になら、まあいいだろ』って!」
阿賀野「ふぇあ? え、ロードバイク……それ、誰の?」
不謹慎極まる表情をした明石が携えるロードバイク。白地に紅のカラーリングが施されたカーボンバイクだった。
見るからに気品のある、独特な美しさを備えたそのバイクは、
78
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:19:37 ID:HlTZ5qj2
タイム サイロン
明石「TIME SCYLONです! 提督からの、阿賀野へのプレゼントですよォ!!」
阿賀野「えっ」
ほとんどやけっぱちで明石が叫び、押し付けるように阿賀野に引き渡しを完了させる。
そして明石はぽかんとする阿賀野を尻目に、己の愛車たるデ・アニマに颯爽と跨り、
明石「どーせ私は嘘の下手くそなばかしですよぉおおおおおおお!!!」
涙の帯を作りながら、叫びのドップラー効果を残して己が工房から脱兎のごとく逃げ出した。明石が足止め役を買って出た時、提督が物凄く渋面を作ったことにカチンと来て、やってみた結果がこれである。
本日の明石のロードバイク工房は、秋津洲と高波が臨時店主として代行することが決定した瞬間であった。
阿賀野「」
阿賀野は展開についていけなかった。
以前、提督にこのロードバイクが欲しい、といった話をしたことはある。このロードバイクがまさにそうだ。
それが突然納車され、突然軽巡ネームシップたちが自分の元を訪れ、一体何が自分の身に起こっているのか、わからなかった。
分からないままに、再び視線を工房の前へと向けると、
79
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:30:24 ID:HlTZ5qj2
https://www.youtube.com/watch?v=s8aeVI6XBKc
阿賀野「――――――――あ」
すとんと腑に落ちた。
阿賀野の脳裏に、提督の言葉が蘇る。
長良「そろそろいいよね!! 一緒に走ろう!! いっぱい走ろう!」
喜悦に染まった満面の笑みで立つのは、提督が初めて建造した軽巡洋艦・長良。
愛車はピナレロ・ドグマF8―――――脚質はピュアスプリンター。
長良「ずっと阿賀野と、一緒に走ってみたかったんだ!!」
阿賀野「長良……ちゃん」
阿賀野にとって、長良は前世においても、今世においても憧れの先輩だった。
練習巡洋艦たる香取と、中堅の大淀を除けば、ほとんどが先任だらけの軽巡洋艦たちの中にあり、阿賀野が特に世話になったのが長良だった。
80
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:43:28 ID:HlTZ5qj2
軍艦であった頃も――――阿賀野が艦娘として生まれた時点でも、既に長良は歴戦の強者だった。
阿賀野(かっこいいなあ……)
艦娘としてある今もそうだった――――阿賀野が着任した頃、長良は既に球磨とツートップで戦果を争う軽巡で、多くの人に慕われていた。
阿賀野(なんで、阿賀野は、ああなれなかったんだろう……)
そんな疑問がふっと浮かび上がった瞬間、阿賀野は理解した。
まさに氷解するように、あっさりと。
阿賀野「あ……」
阿賀野はその時、己が燻った理由が、腐った理由が、何が阿賀野を停滞させたのか、分かった気がした。
阿賀野(そっか――――――長良ちゃんに、勝ちたいんだ、私。他でもない、長良ちゃんだから)
ずっと憧れていた。
前世の頃から、ずっとそうだった。
81
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:47:01 ID:HlTZ5qj2
トラック島沖で曳航してもらった時から、ずっとずっとそうだったのだ。
だから大戦時―――長良に追いつこうと、努力した。
いつだってその背中は目の前にあった。
もう少しで、届きそうだった。
―――――戦争が終わったのは、ちょうどその時期だった。
阿賀野(……しょうがないよ。平和になったんだもん。それを残念に思うなんて、おかしいよ)
そう言い聞かせた。それでも、阿賀野は自分の中で、何かがすっぽりと抜け落ちたような音が聞こえた。
阿賀野(……何か、あるとおもったんだけどな。阿賀野、頑張れば、きっと、阿賀野は、きっと……)
目標を見失ってしまった、そんな気がした。
見たい光景が、掴みたかったものが、指がかかる寸前で消え去ってしまった感覚。
だけど。
阿賀野(ああ、だけど――――)
82
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:48:38 ID:HlTZ5qj2
長良「行こう、阿賀野! 一緒に走ろう!!」
その声が聞こえた。かつて戦場にあった頃とは違う、ロードバイクのジャージを纏った姿でも、同じ声で。
いつだって自分の前にいる人だ。
島風にとって夕張がそうであったように。
夕張にとって島風がそうであるように。
二人にとって、提督がいつもそうであるように。
阿賀野の前にはいつも、長良がいた。いつだってそこにいたのだ。
阿賀野(見失ってなんか、いない)
動けなくなった自分を牽いてくれるこの人は、それを恩に着せることなく、いつも楽しそうだった。
歴史をなぞるように、艦娘になってからもそれはあった。深追いしすぎて魚雷を喰らい、中破してしまったことがあった。
母港へ――――鎮守府へ帰還した時も、阿賀野を牽いたのは、長良だった。
長良『陣形乱しちゃ駄目だよ、阿賀野。次はちゃんとやらなきゃね』
阿賀野『は、はぁい……ごめんなさい、長良先輩』
83
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:51:48 ID:HlTZ5qj2
長良『長良でいいのにー』
阿賀野『じゃ、じゃあ、長良……ちゃん?』
長良『長良ちゃんかー! うん、じゃあそれで!』
阿賀野はメキメキと力を伸ばした。その成長は留まることなく伸び続け、いずれは長良・球磨を追い抜くことすら期待された。最強の軽巡と呼ばれたこともある。
それでも、長良にだけは勝てる気がしなかった。他の軽巡ならば、球磨だって、北上や神通にだって負ける気はしなかった。
なのに、長良だけはだめだった。
弱みがあるから―――違う。
相性が悪い―――違う。
いつだって阿賀野を見る長良の目は優しかった。そして尊敬する者を見る目だった。
長良『長良って旧型だからさ、ちょっと羨ましいんだ。阿賀野は新型だけど、新型だからってそこに胡坐をかいているわけじゃないって、わかるよ』
阿賀野『―――――』
自分の頑張りを、見てくれていた。尊敬しているとまで言ってくれた。
私の前にいるのに、振り返ってみてくれている。勝ちたいと思う一方で、ずっとその背中を見ていたいという、相反する思いがあった。
84
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:53:16 ID:HlTZ5qj2
阿賀野(だけど―――――)
いつしか長良の目が、何を望んでいるのかが分かってきた。
笑みの底に、少しだけ悲しさが滲んでいたのだ。
――――追いついて、こないの? と。
泣き出す寸前の子供のような目で、阿賀野を見るのだ。憐みではない。残念そうに、寂しそうに、阿賀野を見るのだ。
遊び相手を探す、子供のような目だった。
何故か、一月以上前の思い出がよみがえる。
島風が叫んだ言葉を、思い出す。
見つけた、と。
新しい世界は、あったと。
私が望んでいたものが、あったと。
ここにあった、と。
そして阿賀野もまた――――。
85
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 22:59:30 ID:HlTZ5qj2
阿賀野「…………あ」
もうダメだった。胸の内側から瞳へと集まっていく熱量が、抑えきれなくなった。
まるで火を噴くように、阿賀野の全身から熱が溢れだす。
阿賀野「…………うん!!」
ぎゅうとハンドルを握りしめて、涙の浮かんだ瞳のままに頷いた。
失ったはずの目標を見つけて。失っていないことに気づいて。
海の上では追いつけなかったけれど、陸の上でも先輩として前にいるこの人に、
阿賀野「――――――――阿賀野と一緒に走ろう、長良ちゃん!」
長良「そうこなくっちゃ!!!」
遊び相手を見つけた子供のように笑う、長良の笑みが大好きだったから。
今度こそ――――長良に追いつこうと思った。
【夢の後日談(裏):艦】
86
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/27(日) 23:04:12 ID:HlTZ5qj2
※今日はここまで
阿賀野型・香取型のバイクは平日に余裕があったら投下予定。なけりゃ来週末。
それと大淀が物欲に負けた小話も。その後、提督vs雪風、その悪夢の後日談。
その後はどうしよう。オリョクルズか、睦月型か、白露型か、初春型か、妙高型か、高雄型か、軽空母組か……未定!
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/27(日) 23:15:53 ID:SEjYgLlI
>>1
投下乙。
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/27(日) 23:35:26 ID:u40hcYXw
乙おつ
全部読みたいけど白露型が気になるねえ
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/27(日) 23:38:05 ID:61enPSUI
オリョクルズと白露型から希望かな?
島風vs夕張の裏話だった青葉衣笠加古古鷹のサイクルフェアレポートなどはいかがでしょうか?
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/28(月) 01:21:58 ID:tO2fWNBY
やったぜ待ってました!
相変わらず熱くていいなあ……
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/28(月) 01:24:38 ID:tO2fWNBY
思ったけどそろそろ足柄さんにバイクあげないとキレて暴れるんじゃねww
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/30(水) 08:24:49 ID:Vz9vWCTs
乙
軽巡+練巡の8人でオリオンをなぞるのか
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/30(水) 20:56:32 ID:i0Vln7XI
軽空母組見てみたいけどロードに目覚めて酒の抜けた隼鷹なんて
ただの美人お嬢様になってしまうのでは…
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/30(水) 22:56:12 ID:snQ22Ni6
>>67
> 典型的な「他人と競う」タイプ
うわ、何か解る。
普段はスピードとか興味無いけど、ポタリング中に追い抜かれると追尾したくなるし、追い抜き直後にペース落とすような舐めたガキは抜き返したくなる
>>93
まぁここの提督だと自転車飲酒運転なんてする輩には強烈な厳罰を課しそうだしなぁ
あと、隼膺は「自分がお嬢様であることを自覚した上でフランクな付き合いができるお姉さん」というポジションを意識して狙ってる感
酒飲みすら含めて割と自覚的にやってると思うので、ソコこそが隼膺の個性なのだと思うのだが
95
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:14:37 ID:fvWun.Qs
********************************************************************************
阿賀野型軽巡洋艦:阿賀野
【脚質】:スプリンター
――――行かなきゃ……長良ちゃんが呼んでる。
後に長良の最大にして最強のライバルとして立ちはだかるスプリンターは、まさかの阿賀野であった。
島風にとっての夕張であり、夕張にとっての島風である。意外にも超アウトドアでスポーツ大好きな長良とインドア派の阿賀野は仲良し。
軍艦時代の先輩後輩として、そして艦娘としては良き友達としての関係を築いている。でも長良のハイペースに付き合うのだけはカンベンなって感じ。
なんせ長良はTTもこなせるタイプのスプリンターで、坂も嫌いだが苦手ではない癖してスプリントはピュアスプリンターのそれという特級脚質である。
女子力低めな長良とは結構持ちつ持たれつの関係である。なお長良と違い、山は別に嫌いでも苦手でもない。
大戦時、球磨と長良の戦果争いこそ半年以上後任の阿賀野は及ばなかったものの、あと数ヶ月ほど戦争が続いていたら並んでいたと言われている。
自他ともに認めるスロースターターで尻上がり。一度コツを掴むと際限なく応用発展していくタイプで、大戦でも戦果グラフは右肩上がりどころかほぼ垂直方向に向かう物凄いことになっていた。
戦争が終わって安心した一方、ぽっかりと胸に穴が開いたような気持ちでこれまでの日々を過ごしていた。
ピュアスプリンターばりの剛脚を持ちながらも、山岳や高速巡航にも対応したバランスの良いスプリンター。実は運動神経抜群でバランス感覚に優れる。
五十鈴や多摩らが己を天才と自覚してなおそれに驕らなかった理由は、優秀な同僚や姉に恵まれたこともあるが、特に阿賀野という存在に集約している。
究極の理不尽とも呼べる才能の権化が阿賀野という軽巡であった。ちなみに五十鈴は阿賀野が苦手である。努力が結果に直結しすぎなのは悲劇に近い。
天才ゆえに感動が少ない。
【使用バイク】:TIME SCYLON AKTIV (Factory Racing color)
きらり〜ん☆ 最新鋭軽巡! 阿賀野のバイクはフランスの老舗タイム! そのフラッグシップ・サイロンよ!
同じフランスのルックと並び称される「いつかはタイム」――――カーボンの老舗の本領、発揮しちゃうからね!
この洗練されたデザイン、いいでしょ? フロントフォークには独自のチューンドマスダンパーが内蔵されてるのよ!
どれだけ荒れたパヴェ(フランス語で石畳・敷石を意味する)だってへっちゃらへーよ! とっても高性能なんだから!
提督さん、ありがとう! 今度こそ阿賀野、長良ちゃんにも勝って見せるからね!
********************************************************************************
96
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:18:41 ID:fvWun.Qs
長良「タイム? ……ビンディングペダルにそういうのあったような。記憶違いかなあ……?」
なお長良はスピードプレイ使いである――――ロードバイクにおけるホイールやハンドルなどの装備選択は提督とまるで変わらない。
阿賀野「違わないよ? 阿賀野はペダルもタイムよ? ほらほら」
長良「あ、やっぱり? へぇ、タイムってペダルだけじゃなくてフレームもあるんだねー」
阿賀野「えっ」
長良「えっ」
香取「あ、あのう。誰も突っ込まないんですか、あのやり取り……」
天龍「ほっとけ。目に見えてる」
大淀「…………タイムは元々ルックと同じ会社から分裂して生まれたカーボンバイクの老舗メーカーでして。
その確かな技術を活かしたフレームはプロライダーすら唸らせる性能を有しています。ロードバイクにおけるF1マシンという高評価です。
フランス車らしいルックスなどで人気を博していて、ルックと並び「いつかは」と称される憧れのバイクの一つです。
またタイムは軽量なビンディングペダルにも定評があり……RTM(Resin Transfer Molding)工法を採用したカーボンの使い方は流石は老舗というべき精度を誇って……」
夕張「大淀、その辺りで」
大淀「え? ここからが本番で――――」
97
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:20:57 ID:fvWun.Qs
夕張「私個人としてはすっごく楽しいお話なんだけど、肝心の相手には無駄だから、その説明」
天龍「おう。よく見てみろ、あいつらの顔」
大淀「…………え?」
阿賀野「? ???? ???!?!?!?」プシュウ
長良「!? !?!??? ??????」プシュー
阿賀野も長良も耳から煙を上げていた。今にも爆発しそうである。
大淀「」
天龍「…………アレだ。要はなんだ、スゲーバイクメーカーなんだよ。フレームはおろかペダルまで作っちゃってプロからも高評価っていうアレだ。うん、スゲー、スゲーよ、マジスゲー」
香取(ふわっとしすぎです!!?)
阿賀野「な、なるほどー! 流石は天龍さん! 超わかりやすい!!」
長良「大淀の説明って小難しくてよく分かんないんだよねー。さっすが天龍さん!!」
天龍「おう……ま、まあ、世界水準軽く越えてるからな……」
天龍にとって出来が良いがとても出来の悪い妹分共であった。
98
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:24:08 ID:fvWun.Qs
阿賀野「タイムはすごい!」
長良「タイムすごい!」
天龍「…………後でアイス奢ってやるよ」
阿賀野「本当!? 御馳走様です! 阿賀野、今日は大目に走らなきゃ!」
長良「やったぁ!! 天龍さん大好き!」
天龍「は、ははは……大淀にもな」
天龍が長良と阿賀野に接する時は、幼い駆逐艦娘らに接する時の態度と寸分変わらないという。
大淀(#^ω^)
球磨(納得いかねえって顔に書いてあるクマ……)
川内(何が納得いかないって、この二人が大戦の後半からウチの軽巡単艦最強を競ってたってのが納得いかない)
北上や大井を差し置いてである。
長良は考えた。そして阿賀野も考えた。
そして同じ答えに辿り着いたのだ。
99
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:34:40 ID:fvWun.Qs
『夜戦で勝てないなら夜戦に入る前に倒せばいいじゃない』と。
言葉にするには易く、実行するには恐ろしく難題である――――何せそれを自覚した上で北上も大井も動く。
だが逃げられない――――そんな理不尽が長良と阿賀野である。
球磨に至っては『昼戦だろーが夜戦だろーが、撃って当てりゃ同じことクマ』と好き嫌いがなかったもよう。北上・大井と夜戦しても、勝率こそ低いが勝てないこともないというデタラメさ。
アクの強い球磨型姉妹をまとめる長女として一目置かれるのは当然の帰結であった。そんな長良・阿賀野・球磨でも夜戦に持ち込まれたら勝てないのが川内である。
何せ夜戦馬鹿と言われるこの軽巡だが――――その実、どうやって夜戦をするかではなく、どんないい状態で夜戦に持ち込むかを重要視している。
否、それどころか、どうすれば昼の内に終わらせられるかすら考え、極力夜戦に持ち込まないスタンスを保っているから演習時の旗艦は大混乱である。
なのにいざ夜戦が始まれば、川内に対峙することは絶対の敗北を意味した。さながら瀑布に晒された木の葉の如き有様である。
香取(私にはわからない世界です……)
練習巡洋艦としては破格の実力を持ちながらも、教導艦としての分を弁えている香取は大人であった。
夕張もまたその兵装実験巡洋艦としての本分を弁えており、第六水雷戦隊旗艦としてもお役目を全うした。
大淀は事務メインのデスクワーク派と思いきや、連合艦隊規模の艦隊率いさせたら右に出る者がいない。
提督曰く『それこそ適材適所よ』――――今日もロードバイク鎮守府は修羅道至高天。
100
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/08/30(水) 23:36:39 ID:fvWun.Qs
※先に阿賀野
もう二度とだらし姉などと言わせないという覚悟
101
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/09/01(金) 00:13:05 ID:IrhYR/fc
設定が明かされる……というか登場する艦娘が出揃って来れば来るほど、全艦娘が参加するような大規模レースが待ち遠しくなるが、他の艦娘もどんな感じなのか色々知りたくなってくる
けど全員紹介されるの待ってたら、レースとかどんだけ先になるのか分からないというジレンマ
大規模レースが出てくるのは何年後なんだろうww
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/09/02(土) 07:29:28 ID:RvfNXI7.
>>1
投下乙
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/09/02(土) 18:18:10 ID:7sASAaB6
イタリア・フランス系の艦娘とかが楽しみ
でもリシュリューがロードレーサーに乗ってる風景が見えない
あいつ古い自転車をメンテして乗るタイプだろ・・・
104
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 22:40:15 ID:CShpk41w
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阿賀野型軽巡洋艦:能代
【脚質】:ルーラー(スピードマン)
――――今度は私が、阿賀野姉を牽くから!!
パーフェクトルーラー。(ただし阿賀野限定でしか全てを発揮できない)
アレだ、龍田や大井と同じタイプ。
阿賀野に補給食を運んだり、阿賀野を牽いたり、阿賀野にちょっかいかける敵チームの牽制やアタック潰しにおいて一人で全てをこなすマルチプレイヤーである。
ヒルクライムがやや苦手なのが現在の課題である。やっぱり、その搗き立ての餅のような柔くて重いものがついているせいじゃないですかね。(小並艦)
大戦中は大先輩たる神通と、妹の矢矧と共に第二水雷戦隊の運用に携わった。苦労人タイプ。
島風にとって史実の第二水雷戦隊旗艦は神通というより能代の印象が強いが、神通・能代は島風が「さん」づけで呼ぶ数少ない軽巡である。矢矧? 矢矧は矢矧だよ?
何気に史実では第二水雷戦隊旗艦として、神通に次ぐ長い期間を務めている。戦果が地味? うん、確かに地味。
大戦においても『海の精華』と謳われた第二水雷戦隊の旗艦として、神通からも目をかけられた逸材なのだが、何故か地味。
三つ編みなのは関係ない。磯波と浦波がガンダムハンマーばりに錨を振り回しながら深淵から見てる。
なお鎮守府内でも事務に旗艦に調練にと、大淀ばりに八面六臂の大活躍なのだ――――が、やはり影が薄いと言われることしばしば。ステルス艦かな?
きっと軽巡の次女に個性派が多い中、常識人だからだ。神通? 神通はまともに見えるだけである。
余談だがかなりのシスコン。大戦時の阿賀野が派手な戦果を上げ続けたこともあって、阿賀野を尊敬している。
精神的に依存しているのは果たしてどっちなのか。
【使用バイク】TIME RXRS ULTEAM(White silver)
能代のロードバイクですか? 阿賀野姉と同じ、フランスのタイム、そのかつてのフラッグシップ・RXRSアルチームです!
はい、ルックと並ぶカーボンの老舗とあって、流石の乗り味です!
少し型は古いですけれど、カチカチのカーボンよりこのぐらいが丁度いい感じですね。
長丁場のレースだとその恩恵はとても有難いです。このバネ感は癖になりますよ。
阿賀野姉を良いポジションまで持っていけるよう、能代、リタイアするわけにはいきませんね!
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105
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 22:52:01 ID:CShpk41w
能代「やっぱり私って……影薄いのかな……」
山城「ふふ……影が薄くても幸が薄いよりマシだって、私をディスる気ね?」
能代「!?(ど、どっから出てきたのこの人!?)」
山城「そうなんでしょ?」
能代「え、なんで私いきなり絡まれてるの……やだ……怖いんですけどこの人……」
山城「なんですって……その影の薄さをなんとかしようと提督の正妻の座を狙っているのね?」
能代「本当に何!?」
山城「ステルス性能を活かして気が付かぬうちにそんな状態に持って行こうとしてるんでしょ……?」
能代「阿賀野姉! たすけて! 阿賀野姉! 話の通じない怖い人が! あがのねええええええええ!!!」
時雨「やめないか、山城」ポコン
山城「いたい……不幸だわ。どうして叩くの、時雨……私の事、嫌いになった……?」
時雨「そんなわけないよ。君が集合場所にいつまでたっても来ないから……ほら、今日は扶桑たちと一緒にサイクリングしてくれるんだろう? 楽しみにしてたんだ、早く行こうよ」
山城「……ええ、そうだったわね。行きましょう。私も楽しみにしてたわ」
時雨「うん、行こう………ごめんね、能代さん」
能代「え、ええ………なんだったのかしら……一体なんだったの――――ハッ!?」
106
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:00:59 ID:CShpk41w
龍驤「影が薄かろうと胸が薄いよりマシやってウチを――――」
能代「ディスりませんから! なんなんですか次から次へと!?」
龍驤「まあ冗談や冗談。うち、みんなが言うほど胸のこと気にしてへんし」
能代「は、はぁ……」
龍驤「そんなことよりな、能代」
能代「なんでしょう、龍驤さん」
龍驤「キミんとこの妹の矢矧――――なんか更衣室でベソかいでたで」
能代「矢矧が!? なんで!?」
龍驤「ウチが知るかいな。たまたま通りがかって見ただけやし、一応伝えとこ思ってな」
能代「あ、ありがとうございます! 私、行ってきますね!」
龍驤「ダッシュでか? 揺らすんか? やっぱ胸が薄いより影が薄いのはマシやってウチを――――」
能代「絶対気にしてるでしょう龍驤さん!?」
能代は自分の影の薄さを気にするお年頃であった。
華々しい戦果を上げる神通と己を比較し、なんやかんやで大活躍な阿賀野へ尊敬と憧憬と劣等感を感じている。
107
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:02:41 ID:CShpk41w
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阿賀野型軽巡洋艦:矢矧
【脚質】:TTスペシャリスト/ダウンヒラー
――――そんなアタックで! この矢矧を! 刺せると思うかァアアア!!
スプリントも得意なTTスペシャリスト。「筋力と心拍が枯渇したとて、この矢矧、脚から肉が削げ落ちるまでペダルを回し続けるわ……!」というタイプ。
幾度となく提督の魂を震わせる逆転劇を魅せ付けた軽巡洋艦の一人。散り際の花火のような儚げな危うさの中にぞっとするほどの色香を讃えている。
「放たれた矢のような生をありったけ」という信念。深海棲艦が死ぬまで撃てば良い。撃ちきったなら拳で殴ればよい。腕が千切れたなら歯で喉笛を噛み千切れば良い。
この提督をして「何が何だかわからない……」という顔をする。
軽巡のベルセルク枠。深海棲艦絶対皆殺す軽巡。矢矧のストッパーとなりうる霞と初霜は、矢矧本人もお気に入り。
というのも矢矧自身、己の猪武者っぷりを自覚しているからである。霞と初霜にしょっちゅうやらかしに関して説教されている。
超前時代的な根性論とか特に説教される。色んな所で誰かのやらかしを説教しに行く霞と初霜の胃はどこまで大丈夫か、軽空母でトトカルチョされているのは内緒だ。
神通・能代とは第二水雷戦隊を共に率いた仲で、ライバルでもあり絶対の信頼を寄せる相手でもある。みんな大和に優しくも厳しい。
おう、ロングライドしろよ。そうだよ、300kmだよ。あくしろよ。おう。五秒で支度しな。ドーラより厳しい。
深海棲艦からは通称「宇宙艦獣・ヤハギン」として恐れられている。あれが艦娘? ハハッ、ナイスジョーク。
余談だが女子力/ZERO。木曾でさえ掃除・洗濯・炊事・裁縫にパシリと完璧だというのに。
無手の組み打ちという条件下ならこの修羅揃いのロードバイク鎮守府内でも艦種問わず十指に入るという化け物。
【使用バイク】:TIME ZXRS
フランスのタイム、そのです。
ええ、フランスバイク特有のヒラヒラ感は嫌いじゃないの。
イタリアンのどっしりとした重厚な味わいもいいとは思うけれどね。
反応性? ええ、素晴らしいわ。パリッとした踏み心地にギュンッと反応してくれる。
ええ、いずれは第二水雷戦隊の子達をお預かりして、ロングライドにも出かけたいわね。
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108
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:04:57 ID:CShpk41w
提督や速吸らが阿賀野のダイエットに付き合う裏で、実は大和のダイエットも進行していた――――のだが。
大和「」
一週間目で失敗していた。体重計の指し示す数値は、一週間前とまるで変わらぬどころか、やや増えている有様である。
なお大和の名誉として記述しておくが、決して彼女が怠惰であるとか計画性がないというわけではない。
むしろ日本の秘密兵器として、大和の名を冠する者として、それはもうストイックにロードバイクに乗った。
初霜や霞がフォローに付き、運動量も食事量についても間宮と伊良湖が計算の上で適切な管理を行っていた。
なのにこの有様である。その理由は、そう――――。
矢矧「おかしいわね……」
初霜「や、矢矧、さん……? 貴女、何を、何をしたのですか?」
最近料理の勉強をしている矢矧――――意外と器用な彼女は優秀な生徒だと鳳翔と磯波からの評価も高い。
そんな話を覚えていた初霜は、なんとなく予想がついていたが、怖いもの見たさに等しき好奇心からそれを問うた。
109
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:06:42 ID:CShpk41w
矢矧「え? 夜食の差し入れよ? 昨晩のステーキはどうだった、大和?」
大和「………お、いし、かった、わ」
初霜「や、や―――――矢矧さぁああああん!?」
霞「なんてことしてくれてんのよあんた……? ダイエットしてる人に、よりにもよって夜食……それもステーキ!? は!? 食事制限させてんのに何考えてんの!?」
大和はしくしくと泣き出した。大和はかなり量を食べる方である。そして善良な性格をしている。
せっかく差し入れてくれたものを食べずに捨てるなどできるわけがなかった。まして、矢矧にはまるで悪意がないのだ。全くの善意でやっている。
矢矧「食事制限? 何を言っているの――――食べなきゃパワー出ないわ」
初霜「」
霞「」
初霜も霞も「何言ってんだこいつ」って顔をして矢矧を見ていた。
朝霜「ぶひゃひゃひゃひゃwwwww」
朝霜は腹を抱えて嗤った。
110
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:08:36 ID:CShpk41w
雪風「ぐにぐにです!!」グニー
大和「や、やめて……雪風、お腹つままないで……!」
雪風「つまんでません!」
浜風「ええ、つかんでますね。つかめるって凄いですね」
磯風「つかめるな。凄いなこれ。大和、これは乙女としてどうだろう……居住性は確かに良さそうだがな……枕として使ったらふかふかしてそうだ」
大和「」
朝霜「やめたげろおまえらwwwwwあたいのwwww腹がwwww死ぬwwwww」
矢矧は太らない体質であった――――そして三食ガッツリモリモリ食べて運動で限界まで発散するタイプ。
故に持ち込む料理もまたボリューミィでカロリー地獄である。
なお阿賀野も、この時期は矢矧の善意の夜食の犠牲になりそうだったが、提督や速吸らが親身になってダイエットに付き合ってくれていることを想い、なんとか断っていた。
もう二度とだらし姉などとは言わせないという覚悟は、本物であったのだ。
矢矧「大和の食事を見たわ。あんな貧相な食べ物……量も少ないし……あれっぽっちの食事じゃ、戦艦としての強さを維持なんてとても――――」
初霜「…………正座です」
111
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:10:10 ID:CShpk41w
矢矧「え、え? あ、あの、初霜? いきなり何を言い出すの?」
霞「誰が口ごたえをしていいと言ったの? 正座しろと言ったのよ初霜は」
矢矧「え、え……やだ……怖い……」
初霜「座りなさい! お説教します!!」
霞「そこ座れ、一秒で座れ……クズ鉄にするわよ? あの軽巡棲姫のようにね!」
矢矧「はい」ストン
鎮守府に着任したタイミングとして先輩にあたり――――駆逐艦内で数少ない第二水雷戦隊の旗艦経験者たる霞と初霜に、
霞「よく聞きなさい……その悍ましいほど前時代的なクズ脳味噌に、改めて現代のスポーツ医学の基礎と」
初霜「減量時の食事制限の大切さ、そして夜食がどれだけ健康に良くないのかを教えて込んであげますよ……」
矢矧「」
矢矧は逆らえなかった。性格的に勝てる気がしなかった。
112
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:11:39 ID:CShpk41w
霞「このバカ! どーしよーもないアホ! 落ち武者! 脳筋! あんたの姉ちゃん阿賀野!」
初霜「もぉー! だめっ! だめっ! だめったらだめ! 矢矧さんのおばかさん! メニューを考えてる間宮さんと伊良湖さんに謝りなさい!」
矢矧「はい……はい……すいません……ごめんなさい……姉が阿賀野ねえでごめんなさい……おばかさんですいません……間宮さん、伊良湖さん、ごめんなさい……」
迫力満点な霞と、まるで迫力はないが一生懸命な初霜のお説教の二重奏に、ただ静かに項垂れながら矢矧は落涙した。
龍驤が見かけたのはこの光景である。能代の到着まであと数分の時を要した。
なお無事に大和のダイエットは、阿賀野と同時期に終了することになる。
113
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:12:46 ID:CShpk41w
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阿賀野型軽巡洋艦:酒匂
【脚質】:オールラウンダー
――――今、酒匂が行くからね。
姉たちと同様に瞬発系に優れながらも高い持久力と適応力をも備えた、阿賀野型の完成形。
夕張の次に軽巡では小柄で体重が軽いためか、パンチャー型のオールラウンダー。
100km未満のレースならいい結果を出せるが、長距離となるとスタミナ不足が目立つ。
なお提督が阿賀野型で最も警戒しているのが酒匂。隙あれば度を超えたスキンシップを迫ってくる。
木曾は提督を素で風呂に誘ってくるが、酒匂は無知を装って誘ってくる。顔が真っ赤なのでバレバレであるが、酒匂、恐ろしい子……!
長門やプリンツ・オイゲンによく懐いており、大戦時から二人を陰に日向に、ほぼ無自覚で支え続けた。
酒匂が水雷戦隊を率いると駆逐艦たちが必死にフォローに走る傾向にあるが、他の軽巡が軒並み化け物のためあまり旗艦経験はない。
それでも艦隊指揮能力は及第点をクリアしている。だがむしろ随伴艦となってはじめて輝く不思議な軽巡洋艦である。
そんな酒匂はロードレースではエース級の脚を備えていた。どんな活躍を見せてくれるか、提督はとても楽しみにしている。
【使用バイク】:TIME VXRS ULTEAM World Star(2009年モデル)
酒匂のバイクもフランスのタイム! その名車中の名車と呼ばれた、VXRSアルチーム・ワールドスターだよ、ぴゅぅ!
カタログ落ち? 古い? ………えっへっへぇ。
……実はねえ、このバイクって確かにお下がりなんだけど……。
なんと! ななんと! なな、なーんと!
しれぇが着任前に乗ってたバイクなんだよー♪ ぴゃー♪
しれぇのサイズが合わなくなったから、酒匂にくれたの! しーれーえーのバーイクぅー♪
ねえねえしれぇ、そのF8も乗らなくなったら、次も酒匂でよろしくね!
大丈夫、酒匂、おっきくなるから! これから!
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114
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:16:14 ID:CShpk41w
矢矧がぽろぽろ泣き出し、能代が更衣室まで疾走していたのと同時刻、明石のロードバイク工房ではVXRSの検査が行われていた。
組み立て前に明石による入念なチェックが行われたのだ。
その結果――――。
明石「結論から言えば………極上の保存状態です。ほぼ新品同様と言って差し支えありません。
塗装の退色は皆無、よほどいいコーティングをされたのでしょう。
素地のカーボンの劣化もなく、ボトムブラケット部も問題ないものと……(綺麗なネジ切り……提督、愛車のF8といい、雪風ちゃんの586SLといい、ネジ切り好きなのかな?)」
明石はなかなかいい着眼点をしていた。
提督はネジ切りタイプのBBを好む。整備面で楽という点で一つ、BB周囲に過剰な剛性は必要ありませんねえという提督の好みが一つである。
圧入式BBも嫌いではないが、無用なトラブルが起こる可能性がある、というのはそれだけで軽いストレスである。
酒匂「じゃ、じゃあいいの? しれぇ、いいよね? 酒匂、これ乗ってもいいよね!?」
提督「むしろ酒匂がいいのか? 試乗車に回そうと思ってたバイクなんだが……」
酒匂「酒匂は全然オーケーだよぅ! しーれぇーのばーいくー♪ ぴゃー♪ ぴゅう!」
提督「まあ酒匂がいいならいいんだが……」
115
:
◆9.kFoFDWlA
:2017/09/03(日) 23:19:04 ID:CShpk41w
※あ、
>>107
ミスった。修正
【使用バイク】:TIME ZXRS TEAM12
フランスのタイム、その旧フラッグシップ・ZXRSです。有難く戴くわ。
ええ、フランスバイク特有のヒラヒラ感は嫌いじゃないの。
イタリアンのどっしりとした重厚な味わいもいいとは思うけれどね。
反応性? ええ、素晴らしいわ。パリッとした踏み心地にギュンッと反応してくれる。
ええ、いずれは第二水雷戦隊の子達をお預かりして、ロングライドにも出かけたいわね。
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