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賢者「勇者様の遺志を継ぎ、私が魔王を倒します」

1 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 06:17:21 ID:PCLf6UWk
平原――

賢者「(私は賢者、魔道のエキスパート)」ハッ ハッ

賢者「(勇者様の旅立ちを知り、仲間になるべく旅に出ました」ハァッ ハヘッ

賢者「(ですが、そこには大きな問題があったのです)」グヘッ

賢者「(私の家から勇者様の旅立ちの地は遠く、私は体力がない……)」ウエエ

賢者「ああーん、もう歩けませんよっ!」ペタン

賢者「どーして勇者様の仲間になるために旅をしなきゃならないんですかー!」

賢者「私の噂を聞き付け、勇者様の方からやってくると思ったのにィー」ジタバタ

59 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:16:24 ID:PCLf6UWk
賢者「ありがとうございました。私、貴方のお陰で本当に……」

剣士「それはおかしい。まだ領主の娘を城に送り届けていなんだぞ?」

賢者「それは、そうですけど……」

剣士「だから娘さんのこと頼むよ」

賢者「は、はい!」

娘「貴方は城にこないのね」

剣士「ええ、護衛は賢者一人で大丈夫でしょう」

賢者「名残は尽きませんが行きますね。貴方の旅が無事に終えられることを願っています」

剣士「ありがとう」

賢者「では行きますよ、娘さん」

娘「お願いしますわ。では、さようならー!」

60 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:17:31 ID:PCLf6UWk
剣士「行ったか。――で、アンタはいつまでそこに隠れているつもりなんだ?」クルッ

お頭「気づいていたのかい!?」

剣士「まだ俺になにか?」

お頭「そう身がまえなくともいいよ。アタイはただ、お前さんの旅の目的を知りたくてさ」

剣士「知ってどうする?」

お頭「興味心って言ったら怒るかい?」

剣士「怒りはしないが困る」

お頭「人には言えないってこと? 極秘任務中とかなのかい?」

剣士「いや、そうじゃないが……」

お頭「じゃ、なんなのさ?」

61 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:18:57 ID:PCLf6UWk
剣士「俺は魔王城を目指して旅をしている」

お頭「な、なんだって!?」ビクッ

剣士「驚くようなことじゃない。死んだ勇者の代わりをやろうとする奴は幾らでもいる」

お頭「話したろう!?」

剣士「だから言いたくなかった」

お頭「言いたくなかったって…… わかってるんじゃないか」

お頭「勇者や勇者の仲間以外には無理だってこと。普通の人間じゃ敵わないって!」

剣士「だが、それでも挑まずにはいれない。それが男の――いや、剣士の性だ」

お頭「そんな自殺まがいまでして、それで何が得られるって言うんだい?」

剣士「満足して死ねる」

お頭「生きようとは思わないのかい?」

剣士「生きて何かあるわけじゃない。だったら試したい、俺の剣がどこまで通じるのか」

62 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:19:59 ID:PCLf6UWk
お頭「なんだい、それ?」

剣士「カッコイイだろう?」キリッ

お頭「馬鹿げていると思うよ、正直さ。……でも止められない。意地ってわけ?」

剣士「ああ」

お頭「本気みたいだね。ちょっとカッコ付け過ぎだよ」

剣士「いいじゃないか。そういう奴がいても。――じゃ、そろそろ行くよ」

お頭「あ、うん。何度も引きとめて悪かったね」

剣士「いや」クルッ スタスタ

お頭「驚いた。そんな覚悟を見せつけられちゃ困るよ、こっちも……」

賊D「お頭、僕……」ギュ

お頭「なんだい、髪飾りなんか握りしめて」

賊D「だって、あの子は……」

お頭「あーもう! わかってる、わかってんだよ。アタシが一番ね……」

63 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:20:47 ID:PCLf6UWk
城内――

領主「おお。まさか、本当にあの盗賊団から娘を救出するとは。なんと礼を言えばいいものか」

賢者「礼は不要です。私がしたことなど些細なこと、本当に感謝しなければならないのは彼です」

騎士長「ああ、あの旅の剣士か。ここにとどまってくれれば心強いものであったが……」

領主「剣士殿には成さねばならぬことがあるのだ。そこまでして貰うわけにはいかん」

領主「それにもう大丈夫であろうよ。事件解決により士気高揚している」

騎士長「はい」

領主「そして賢者殿と言う頼もしい仲間も加わったのだ。凌ぎきれるはずだ」ジッ

賢者「わ、私ですか?」

領主「期待しておるぞ、賢者殿」

賢者「は、はい。ご期待に応えられるよう、努力致します」ペコッ

64 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:21:43 ID:PCLf6UWk
城内 廊下――

賢者「はあ、困りました……」トコトコ

娘「ちょっと良いかしら、賢者さん」バッ

賢者「娘さん!?」

娘「浮かない顔をしていますわね。あの剣士の事が気になっているのでしょ?」

賢者「ち、違いますよっ!」

娘「あら残念」

賢者「騎士長さんも領主様も、私に過度な期待をしているみたいで……」

娘「プレッシャーを感じていると」

賢者「はい。私の力なんてショボイものです」

娘「貴女は私を救った英雄、もっと自信を持ってもいいんじゃなくて?」

65 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:22:34 ID:PCLf6UWk
賢者「あれは全部彼の功績です。私なんて隣で光っていただけで……」

娘「そういえば剣士、何をそんなに急いでいたのかしら? 褒美も受け取らずに」

賢者「会いたい人がいるそうです」

娘「誰?」

賢者「さあ?」

娘「聞かなかったの?」

賢者「はい。言いづらいみたいで聞けずに……」

娘「うーん、気になりますわ」

賢者「(本当に誰だったんだろう? 生き別れの兄弟とかだったのかな?)」

66 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:23:27 ID:PCLf6UWk
平原――

剣士「はあ、流石に疲れたな……」スタスタ

剣士「そう言えばここ数日一睡もしていない気がする」

剣士「馬鹿だな。カッコつけずに城に戻ればよかった。仕方ない、少し休憩を――」

剣士「!?」

剣士「静かすぎる。獣や虫の音が聞こえない。これは……?」

ドシンドシンッ

ミノタウロス「久しぶりだな、剣士。よもやここで出会えるとは」

剣士「(近くにいたのか? まったく気づかなかった……)」

ミノ「早速で悪いが、この前の借りを返させてもらうぞ!」

剣士「借り?」

ミノ「そうだ。我らを出し抜き、村人を逃がすとは。生まれて初めて屈辱を味わったぞ」

剣士「そんなことで恨まれるとは思わなかった」

ミノ「言うな、剣士。では礼を尽くさせて貰う!」クイッ

67 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:24:26 ID:PCLf6UWk
ザザザッ

下級オーク群「「ギャーースッ!」」ババッ

剣士「(やはり囲まれていた。くそっ、どうして気づかなかった)」

下級オーク群「「ギャーース!!」」ジリジリッ

剣士「(オークの数は約十、始めから俺だけを狙っていた? それともこの数だけで城を落とせる計算か?)」

剣士「(いや先発隊、偵察隊と色々あるか。なんにせよ、俺はここまでだ……)」

ミノ「良い表情だ。どうやら己の運命を悟ったようだな」

剣士「くっ!」チャキッ

ミノ「だが、あくまで抵抗するか。イイ覚悟だ、そうでなくてはなあ!!」

剣士「(一度に何人も同時に襲いかかれるわけじゃない。上手く捌けば――)」

剣士「(それに夜明けが近い。朝日が差し込めばオークは弱体化する)」

ミノ「よし、皆の者ゆけ!!」バッ

剣士「まだだ、まだ勝機はある」グッ

68 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:25:19 ID:PCLf6UWk
下級オーク部隊「「ギャー!!」」チャッ

剣士「(オークの武器は棍棒が主、剣で防ぐのは難しい。だが足を使い、立ち回りを工夫すればッ!)」ダッ

剣士「!?」フラッ

下級オーク部隊「「オオオン」」ドドッ

剣士「身体が重い。ここにきて疲労が一気にきたのか!?」

下級オークA「ギャッ!」ブン!

剣士「くッ!」ヒラリッ ザン!

下級オークA「ギャゥー……」ドサッ

69 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:26:20 ID:PCLf6UWk
剣士「まずは一匹…… うっ!?」グラッ

下級オークB「ガギャッ(剣を振ってよろけるとか無いわー」ブゥン!

ガッ ゴキッ

剣士「ぐあっ!?」ヨロッ

ミノ「その調子だ。やってしまえーっ!」ハハハ

剣士「(重い一撃を貰った。動けないわけではないが、これではいずれ……)」フラフラッ

下級オーク部隊「「ギャアアア!!」」ドドドッ

剣士「(となれば、これ以上の抵抗は無意味か……)」スッ

下級オークB「ギャース!(その首、俺が貰った!」ドッ

剣士「所詮この程度か、惨めだな……」クソッ

70 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:27:33 ID:PCLf6UWk
ヒュ グサッ

下級オークB「ギャギャー!?(馬鹿な、どこから!?」ドシャ

剣士「クロスボウの矢?」

賊D「だらしないじゃないか、剣士さんよおお!」バッ

剣士「どうしてここに!?」

お頭「嫌な予感がしてね。後を追ったのさ」バッ

賊A.B.C「「俺達もいるぜ!」」バババンッ

剣士「奴等に歯向かうなど、馬鹿げたことなんじゃないのか!?」

お頭「感化されたんだよ、お前さんの覚悟に!」

賊D「僕は惚れた女を守るためだけどな!」

お頭「雑魚はアタイ達が預かる。行くよ、野郎ども!」

賊一同「「うおおおおおおおお!!」」ダダダ

ミノ「ええい、何人集まろうと敵ではないわ。ものども行けー!!」バッ

71 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:28:28 ID:PCLf6UWk
剣士「なんて馬鹿だよ、俺は。こうなることは予想できたろうが……!」グッ

ミノ「剣士、貴様の相手は俺だ!!」ドシンドシンッ

剣士「ミノタウロス、くるのか!?」バッ

ミノ「いくぞー!」ブゥン!

剣士「(大振り、剣筋は読みやすい。だが今の俺にかわせるのか?)」

ヒラリッ ドシャンッ! 

剣士「かわせた!? しかし、なんて力だ。岩をも砕くとは……」

ミノ「見たか、次は貴様の番だ!」グワッ

剣士「これが魔族、人智を超えた力!?」

ミノ「ウオオッ!!」ブゥンッ

剣士「臆した、これでは……っ」ヨロッ

ミノ「これで終わりだーッ!!」ブンッ

72 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:29:48 ID:PCLf6UWk
賊D「剣士ーーッ!」ドンッ

剣士「……っ!?」ドシャッ

賊D「ぐあああああっ!!」ザシュッ

ミノ「ええい、邪魔立てしよって!」イラッ

剣士「どうして!?」

賊D「お前は僕よりも強いからな。だから僕が代わりに、その方が彼女の……」ブハッ

賊A「Dィー、死亡フラグなんか立てるから!」

剣士「まだ息がある。だが、ここで俺が敗れれば……」

ミノ「仕切り直しだ、ゆくぞー」ガチャ

剣士「勝ってやる、意地でもッ!!」ダッ

73 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:30:41 ID:PCLf6UWk
ミノ「格の違いを教えてやるわ」ドシンドシンッ

剣士「臆するな、俺の方が速い!!」ブンッ

ザシュッ

ミノ「グッ…… しかし、その程度の剣では!」グラッ

剣士「くッ!」バッ

ミノ「この一太刀で終わらせてくれるわッ!!」ブゥンッ

剣士「……ッ!」ヒラリ ザン!

ミノ「グ、グアッ!?」グラッ

剣士「(固い、毛や皮膚が鎧のようだ。こうも固いと、手数で攻めたところで……)」

サッ ザン!

ミノ「グぅうッ、ちょこまかと!」グラッ

74 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:31:24 ID:PCLf6UWk
剣士「(くっ、嫌な汗が止まらない。明らかに先程のダメージが響いている)」

剣士「(長引けばこちらが不利。だが、決め手がない……)」

ミノ「もう我慢ならん。武器などに頼るから駄目なんだ。この自慢のツノで!」ポイ グワッ

剣士「(武器を捨てた!? 本当のようだな、興奮すると頭のツノで攻撃すると言うのは)」

ミノ「モオオオオオオオ」ドドドッ

剣士「この一撃、かわせれば……」バッ

ミノ「ガアアッ!」ゴッ

剣士「見えたッ!」ヒラリッ

ミノ「グアアッ!??」ガシャガシャッ

お頭「自ら岩に激突した? 周りが見えていなかったのかい、牛らしい」ニヤッ

賊B「よそ見は厳禁ですよ、お頭」

お頭「はいはい。じゃ、残りをかたすよ。なんかオーク弱ってきたし!」

75 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:32:32 ID:PCLf6UWk
剣士「動きが止まった。――いける!」ダッ

ミノ「グヌヌヌぅ……」モダモダ

剣士「その頭、カチ割るッ!!」ザン!

ミノ「ゥボアアアーー……!!??」ブシュゥーー ドサッ

オーク「ボーースっ!?」

剣士「やったか?」スタッ

オーク「まさか、ただの人間が上位魔族を討ち破る日がこようとは……っ!」

オーク「これ以上の戦闘は無意味だ。退けー、退けーッ!」

ドドドドド…

76 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:33:11 ID:PCLf6UWk
賊B「敵が退いていきます。やった、やりましたよ!」ガッツポーズ

お頭「アッハハハ、気分がいいね」

剣士「大丈夫か?」サッ

賊D「へへっ、なんとか。こんなところで死んだら、彼女に合わせる顔が……」グフッ

お頭「はいはい。臭い芝居はいいから、これを傷口に当てるんだよ」スッ

賊D「すみません」イテテッ

剣士「もう大丈夫のようだな。安心した……」ホッ

お頭「アタイの仲間だよ。そう簡単に死ぬわけがないでしょ!」

剣士「ありがとう。貴女達のお陰で助かった」

お頭「なあに感謝するのはこっちだよ」

77 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:34:00 ID:PCLf6UWk
お頭「実は少し前まで義賊を名乗っててね、それなりに誇りもあったんだ」

お頭「でも魔王軍に慄き、何もかも捨てた。その小さな誇りさえも……」

剣士「それが正しい。意地を張って死ぬことはない」

お頭「けど、それは恥さ」

剣士「だが……」

お頭「後悔はないよ。現に今、満足してる。清々しい気分だよ!」

お頭「ありがとね。お前さんの覚悟のお陰さ」

剣士「俺は格好を付けただけだ。そこに本物の覚悟があったわけじゃない」

お頭「嘘嘘、見栄で魔族に挑めないよ。まして勝つなんてね」

剣士「それは貴女達の助けがあったから……」

お頭「そんなにアタイ達が心配? 大丈夫だよ、後悔しないって言ったろう?」ニッ

剣士「……」

78 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:34:31 ID:PCLf6UWk
お頭「あ、そうだ。忘れないうちに…… ほーれ!」ポイッ

剣士「腕輪?」パシッ

お頭「親愛の印ってことでどうか受け取っておくれよ」

剣士「いいのか?」

お頭「断る気かい?」

剣士「まさか。ところで、この腕輪には魔法石がついているが何か特別な力でもあるのか?」

お頭「兄さんお目が高い。そう、それには魔法の効力を弱める力があるんだ」

剣士「こんな貴重なものどこで?」

お頭「そ、そりゃあ秘密だよ」アセッ

剣士「もしかしてあの城から?」

お頭「まっ、細かいことはいいじゃない!」

剣士「……あ、ありがとう」

79 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:35:58 ID:PCLf6UWk
お頭「それと癒しの効果も弱めるから気を付けなよ」

剣士「無用な心配だな」

お頭「でも仲間が増える可能性だってあるだろ?」

剣士「賢者のことを言っているのか? 残念だが彼女は城に残った」

お頭「また会うかも知れないじゃないか?」

剣士「ないだろう」

お頭「わからないよ? 出会いってのは数奇なものだからねー」

剣士「否定はしないが……」

賊D「僕も早くあの子に会いたいなー」

剣士「騎士になれば叶うだろう、それは」

賊D「無理だよ。賊が騎士になるなんて。それに盗賊とお嬢様ってのが燃えるじゃないか!」

剣士「ロマンか、追い求め過ぎるのもどうかと思うが……」

80 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:36:59 ID:PCLf6UWk
お頭「それじゃ、名残惜しいけどお別れだ。そろそろ行かないとね」

剣士「互いにやるべきことがあるか……」

お頭「剣士、アタイ等は信じてるよ。お前さんは必ず魔王を倒すって」

剣士「そ、それは……」

お頭「今さらなに照れてるのさ。胸を張りなよ」ハハハ

剣士「べつに照れているわけじゃ……」

お頭「おーし、野郎ども行くよー」グワッ

賊一同「「おおおおお!!」」ダダダダッ

剣士「……」

81 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:38:06 ID:PCLf6UWk
城内 廊下 朝方――

賢者「うー、早朝から訓練とかあり得ないですよ。でも一日目からサボタージュなんてことは……」トボトボ

騎士長「魔王軍が撤退しただと!?」

賢者「あれ? なんか騒がしいですね」コソッ

騎士長「どこの情報だ」

兵「それが正義の盗賊団と名乗る者達が町でそのような噂を広めておりまして――」

兵「紅蓮の剣士がミノタウロスを討ち、魔王討伐に名乗りをあげたと」

騎士長「まさか、あの旅の剣士のことか。紅い髪の……」

兵「今、真相を確かめております。時期にわかることでしょう」

騎士長「うむ。真相が明らかになってからだ、領主様にお伝えするのは」

兵「ハッ!」ビシッ

82 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:38:59 ID:PCLf6UWk
娘「剣士の会いたい人が魔王だったなんて驚きですわね」スッ

賢者「娘さん!?」

娘「貴女はどうなさるおつもり?」

賢者「どうって、私は……」

娘「本当は気になっているんでしょ?」

賢者「はい。彼に恩を返したいって思っていまして。でも、ここも守りたくて……」

娘「なら決まりじゃない。これを逃したら二度と会えなくなりますわよ?」

賢者「娘さん…… では短い間でしたけど、お世話になりました。ありがとです」ペコ

娘「こちらこそ、ですわ」

賢者「剣士さんを追います!」タタタッ

娘「はーい、お気をつけてー!」

83 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:39:35 ID:PCLf6UWk
平原 夕暮れ――

賢者「はっ、はへっ…… け、剣士さーん!!」タタタッ

剣士「賢者!?」クルッ

賢者「や、やっと追い付きましたぁー……」グテ

剣士「どうしてここに?」

賢者「私、決めました」ハアハアッ

剣士「なにを?」

賢者「貴方について行くって!」

剣士「なにを言っているんだ?」

賢者「とぼけても無駄です。この辺ではもう噂になっていますよ。貴方がミノタウロスを倒したってこと」

剣士「噂? それで、なのか?」

賢者「はい。貴方の旅の目的は、魔王を倒すことですよね?」

84 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:40:23 ID:PCLf6UWk
剣士「確かに、俺は魔王城を目指して旅をしている」

賢者「どうして話してくれなったんですか? 言ってくれれば私も……」

剣士「だが、魔王を倒せないことを承知の上でだ」

賢者「ど、どういうことです? だって貴方は言っていたじゃないですか――」

剣士「例え滅ぶ定めだとしても一秒でも長く生きられるのなら意味はある、か?」

賢者「なのに、なんで……」

剣士「耐えられないからだ。彼女の、勇者のいない世界に。だから――」

賢者「だから死に場所を求めている。そういうことなんですか!?」

剣士「そうだ。俺は成せない復讐に酔っているだけだ。君が思い描く勇者の旅とは違う」

85 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:41:15 ID:PCLf6UWk
賢者「う、嘘ですよ。貴方はそんな人じゃない。誰かの為に一生懸命で――」

賢者「そう、まるで勇者様のような貴方が自棄になっているだけなんて思えません」

剣士「勘違いさせてすまない。俺は誰かの為に戦ったことは一度もない」

剣士「どうせ死ぬなら見栄を張りたかった、格好良く見られたかった。ただ、それだけだ」

賢者「自己満足だって言うんですか!?」

剣士「俺の好意など、その場かぎりの善意――」

剣士「他人を利用し、自分の死を正当化しようとしているだけの身勝手な優しさだ」

賢者「信じませんよ。だって、だって貴方は……」

剣士「もうわかっただろう? 俺からは何も得られない」

賢者「うっ!?」

86 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:41:55 ID:PCLf6UWk
剣士「城に戻れ。君には君のすべきことがある」

賢者「いえ、城には戻りません……」

剣士「聞いていなかったのか? 俺は……」

賢者「聞いていましたよ。それでも――いいえ、だからこそ私は貴方の力になりたい」

剣士「信念はどうした? 君は言っていたじゃないか、力を持たぬ者を救いたいと」

剣士「その命は生きたいと願う者に使うべきだ。死を願う者に使って何になる?」

賢者「貴方に尽くすのは無駄だって言うんですか?」

剣士「君のすべきことは救いを求めている者を助けになることだろう?」

賢者「それも果たします。どちらかを諦めなければならない理由なんてありませんよ!」

剣士「どうやって?」

賢者「貴方と魔王を倒します」

87 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:43:54 ID:PCLf6UWk
剣士「不可能だ。いや可能だとしても、俺はその術を知らない」

賢者「見つければいいんです」

剣士「この旅で? 無理だ」

賢者「無理じゃありませんよ。現に貴方はミノタウロスを倒しているじゃないですか?」

剣士「あれは偶然、奇跡と言ってもいい」

賢者「なら何度でも奇跡を起こせばいいんです」

剣士「例え全てを乗り越えたとしても、魔王に奇跡は起きない」

賢者「起きますよ、魔王にだって!」

剣士「何故そう言い切れる?」

賢者「そう思えるからです」

剣士「答えになっていない」

賢者「そう思っちゃいけないんですか? まだわからないじゃないですか!」

88 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:47:23 ID:PCLf6UWk
剣士「魔王に相対できるのは勇者だけ、これがこの世界の摂理だ」

賢者「ブッ壊せばいいんです、そんなもの!」

剣士「本気で言っているのか?」

賢者「ええ、本気ですよ。貴方だって本当は私と同じ気持ちなんでしょ?」

賢者「頭では魔王には勝てないって理解している。でも納得できない」

賢者「だから無謀だと知りつつも魔王に挑む――、挑戦しようとしている!」

剣士「違う!」

賢者「じゃあ、どうして私を救ったんですか?」

剣士「言ったはずだ」

賢者「だったらあの時、逃げずに私と一緒に死んでくれてもよかったじゃないですか?」

賢者「でもそうしなかった。いいえ、そう出来なかったのは誰かを守りたいと言う強い想いがあったからでしょ?」

剣士「何が言いたい?」

89 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:49:24 ID:PCLf6UWk
賢者「復讐に酔っている人が、誰かの命を優先できるはずがないんです」

賢者「貴方は死んだ勇者の想いを繋ごうとしているだけ、復讐なんか――死なんか望んでない!」

剣士「だからなんだ? 勇者の遺志を継ぎたいと願い、祈ったところで何が変わる?」

剣士「復讐にしろ、遺志を継ぐにしろ、行きつく先は死だ。何も変わらない」

賢者「そうです。だから貴方は苦しんでいる。無力な自分を恨み続けて――」

賢者「でも恨みきれないから、諦めきれないから、今も必死で足掻いている!」

剣士「それがわかるのなら……」

賢者「わかるから力になりたい、支えになりたいんです」

剣士「やめてくれ!」

賢者「やめません!!」

剣士「俺は君を殺したくない」

90 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:50:50 ID:PCLf6UWk
賢者「やっぱり私を想って嘘をついていたんですね」

剣士「嘘なものか!」

賢者「私は絶対に死にません。お約束します」

剣士「約束できることではないだろう!」

賢者「それでもお約束します。私は今よりも強くなって貴方の力になるんです」

剣士「その気持ちは嬉しいが……」

賢者「だったら仲間にして下さいよ!」

剣士「そういう話じゃない」

賢者「お願いします」

剣士「されても困る」

91 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:51:28 ID:PCLf6UWk
賢者「……」ジッ

剣士「今度はなんだ?」

賢者「賢者が仲間になりたそうな目で見ている、どうしますか? >はい、いいえ」

剣士「ふざけているのか!?」

賢者「違いますよ。ただ、ちょっと場をほぐそうと……」

剣士「求めていない」

賢者「本当お願いしますよー、何でもしますから」ペコリ

剣士「聞くな。答えは変わらない」

賢者「よーし、ならばー!」バッ

92 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:52:14 ID:PCLf6UWk
賢者「えい!」ダキッ

剣士「なにしてる?」

賢者「ぎゅ、しました」ギュ

剣士「はあ!??」

賢者「ど、どうしますか?///」ドキドキッ

剣士「これは酷い」

賢者「だって……」

剣士「本当に困る」

賢者「私だって困っています……///」テレッ

剣士「わかったから離れてくれ」

賢者「!?」

93 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:53:06 ID:PCLf6UWk
賢者「いいんですか?」

剣士「諦めただけだ」

賢者「あ、ありがとうございます!」

剣士「礼は良いよ。気が変わればいつでも去ってくれて構わない」

賢者「ないですよ、絶対」ニコッ

剣士「それは困ったな」

賢者「うへへぇー///」ニタァーッ

剣士「じゃあ行こうか。日が落ちる前に次の町に着きたい」

賢者「はいっ、行きましょう!!」

94 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:53:53 ID:PCLf6UWk
剣士「そういうことだから離れてくれないか?」

賢者「置き去りにしません?」

剣士「しない。だから早く……」

賢者「あっ、問題発生ですよ!!」

剣士「どうした?」

賢者「疲れてきました」

剣士「それはそうだろう」

賢者「そうじゃなくて、その――」

賢者「ここまで全力疾走だったので、足が『もう歩けないよ!』と訴えていまして……」

剣士「嘘ではない?」

賢者「残念ながら」

95 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 07:55:02 ID:PCLf6UWk
剣士「……」

賢者「あぅー、足が棒です。どうしましょう?///」テヘッ

剣士「置いて行っても……」

賢者「約束したじゃないですかー、死んでしまうます!」

剣士「おぶって運ぶしかないのか?」

賢者「わーい、やったーっ!!」ギュウッ

剣士「はあー……」

賢者「よーし、行きましょう!」ペシペシ

剣士「なんでこんなことに……」

賢者「うふふっ!!」ニコッ

96以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/14(金) 13:13:21 ID:9uI68fmA
おつおつ
続きがたのしみ

97以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/14(金) 21:21:21 ID:KJdW.B66

あれの続きか?
続きはよ

98 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:29:23 ID:N0vkP70E
>>97
設定を考え直すのが面倒だったので世界観そのまま使っているだけですかね
あれはあれで完結しているので続きものでもそうでなくてもいいかな、みたいな

99 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:31:07 ID:N0vkP70E
あれから数日 夕方――

賢者「国境を越えて隣国、風の国に来ましたよ!」ユラユラ

剣士「風と言うだけあって空気が澄んでいるな」スタスタ

賢者「そうそう、この地方に吹く風は女神の息と言われるほど神聖だそうです。風の丘と呼ばれる聖域があり、女神が吹いているだとか」

剣士「へー、詳しいな」

賢者「優秀ですからね! 他に知りたいことありますか、何でもお答えしますよ!」

剣士「そうだな。賢者殿はいつになったらご自分のアンヨでお歩きになられるのですか?」

賢者「あやー、それは大変難しい質問ですねぇ」エヘヘ

剣士「……」

賢者「すみません。おんぶしてもらっちゃって……」シュン

剣士「べつに」

賢者「じゃ、いいんですか? わーい、やったー!!」ギュッ

剣士「はあー……」

100 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:32:12 ID:N0vkP70E
町――

剣士「町についたが……」

賢者「国境近くの町ですから、やっぱりさびしいですね」

剣士「いや、国境の近くと言えば活気があるものじゃないのか?」

賢者「交流があればじゃないですか? チラホラとしか人いませんよ」キョロキョロ

剣士「まあ情報を集めれば訳もわかるだろう。とりあえず宿を探そうか」

賢者「はい。疲れちゃいましたよー」

剣士「それをどの口が言うんだよ」ギュゥ

賢者「いはい、いはいれふ」イテテッ

101 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:33:32 ID:N0vkP70E
宿屋――

剣士「」ガチャッ

宿屋「旅人の宿にようこそ」

賢者「(お客がいないですね。綺麗なところなのに)」ジー

剣士「二部屋、二泊でお願いし……」

賢者「え? 二部屋ですか?」

剣士「俺は男、賢者は女。部屋は別のほうが良いだろう?」

賢者「でも一部屋二人みたいなことって書いてありますよ」ビシッ

剣士「部屋が余っているのならそれに従う必要はないはずだ。金は払う」

賢者「悪くありません? 掃除とか手間ですし、相部屋の方が……」

剣士「そんなことを気にするのか!?」

102 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:34:52 ID:N0vkP70E
宿屋「旅のお方、二泊ですか?」

剣士「も、問題でも?」

宿屋「いえ、こちらとしては何も問題はないのですが、長居するのは……」

剣士「長居?」

宿屋「実は先日、魔王軍の奇襲を受け王城が落ちたとのこと。ここもいつ襲撃されるかわからない状態でして……」

剣士「お、王城が落ちた!?」

宿屋「はい。ですから、すぐにこの国を離れた方が……」

賢者「でも、いきなり過ぎじゃありませんか? 王城が真っ先に狙われるなんて」

宿屋「相手は四天王のグリフォンだと聞きました。空飛ぶ侵攻部隊、奇襲など御手のものだったのでしょう」

剣士「四天王?? なんだ、それは?」

賢者「魔王軍の中における四人の優れた実力者のことですよ。簡単に言えば中ボスですね」

剣士「な、なるほど……」

103 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:36:08 ID:N0vkP70E
賢者「宿屋さんは逃げないんですか?」

宿屋「ええ。故郷を離れることが、どうしても出来ず……」

宿屋「それに訪れる旅人に危機を知らせなければと言う正義感もあったりしましてね」テレッ

賢者「そ、そんな!」

宿屋「私が勝手にやっていることです。気になさらないで下さい」

剣士「いえ、助かります……」

宿屋「二部屋でしたね。こちらが鍵になります、どうぞ」スッ

賢者「あ、一部屋で大丈夫です。ね、剣士さん?」

剣士「……」

宿屋「どうなさいますか?」

剣士「一部屋、一泊でお願いします」

宿屋「では、ごゆっくりお休み下さい」ニコッ

104 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:36:57 ID:N0vkP70E
部屋――

剣士「無理だな。王城を奪還するのは」

賢者「やっぱり、ですか?」

剣士「四天王と呼ばれる実力者が占拠している城だ。勝てるとは思えない」

賢者「私達に出来ることはないと?」

剣士「この事態を諸国に伝え、騎士団を動かしてもらえるよう進言することくらいか?」

賢者「そ、それは……」

剣士「まあ無理だろうな」

賢者「では、どうするおつもりですか?」

剣士「情報を集め、すぐここを離れるべきなんだろうが……」

賢者「逃げるんですか?」

105 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:38:10 ID:N0vkP70E
剣士「いや、それはしたくない」

賢者「ここを突破しない限り魔王城には辿り着けませんよ?」

剣士「どうかな? おそらく敵は王都を掌握し、そこから侵略の輪を広げるはずだ」

賢者「つまり王都周辺を避ければ突破は不可能ではない?」

剣士「遠回りにはなるだろうが」

賢者「でも、それって……」

剣士「わかっている。俺達は曲がりなりにも魔王討伐を目指している身だ」

剣士「四天王ごときに逃げ出すようでは魔王討伐など名乗れない」

賢者「戦うんですね!」

剣士「このまま魔王討伐を目指すのならな」

賢者「え?」

剣士「俺は玉砕覚悟で四天王に挑むつもりだ。君はどうする?」

106 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:39:24 ID:N0vkP70E
賢者「私は貴方と運命を共にします。約束、したじゃないですか」

剣士「本当にいいのか?」

賢者「しつこいですよ。私の意思は何があっても変わりません」

剣士「わかったよ。もう二度と聞かない」

賢者「えへへ、絶対勝ちましょうねー!」

剣士「はああー…… 俺はこれから町の人達に話を聞きに行くが賢者もくるか?」

賢者「私は留守しています」

剣士「暗くなる前には帰るよ。鍵を頼む」

賢者「はあい! ではでは、お気をつけてー!」

ガチャ バタン

賢者「よーし、剣士さんが帰ってくる前にお風呂と夕飯を用意しよーっと!」

107 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:42:56 ID:N0vkP70E
町――

剣士「(本当に人がいない。やはり多くの人はこの地を離れたか)」

剣士「(まあ、当然と言えば当然だが…… これでは宿屋以上の話は聞けそうにないな)」

???「何かお困りですかな、旅人よ。よければこの爺に訳を話してはみてくれぬか?」

剣士「え?」

爺「驚かせてすまん。ワシはホモ爺。皆からそう呼ばれ疎んじられておる」

剣士「……」

爺「どうしたのじゃ? ホレ、遠慮せず話してみなさい」

剣士「あ、いや……」

爺「ホホッ、年寄りを舐めちゃいかんよ」

爺「無駄に長く生きとる分、知識と経験だけは豊富じゃからな。役に立つかもじゃぞ?」

108 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:44:07 ID:N0vkP70E
剣士「では……」 

爺「なんと!? 城に住み着いた四天王を倒そうとしておるじゃってーッ!!」

剣士「いや、まだ何も話していない」

爺「なんじゃ、違うのか……」シュン

剣士「そういうわけでもないんだが……」

爺「ホホッ?? まさか、まさかの、当たりじゃあああああ!!!!」

剣士「は?」

爺「いやいや、実はのう、この町に立ち寄った旅人全員にそう言っておるのじゃよ」

爺「助かりたい一心で旅人に泣きつく。まさに爺、まさに糞爺。でもワシはホモ爺!!」

剣士「……」

109 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:46:18 ID:N0vkP70E
爺「なんじゃ、どうした?」

剣士「それだけか? 他にはなにもないのか?」

爺「そこまでワシは腐っておらんよ。まあ腐男子ではあるが、それはそれで意味が違うしのー」

剣士「で?」

爺「せっかちさんじゃのー。それにその期待してないって目、酷いのー」プンプン

剣士「はあ……」

爺「ワシね、実はあの城の元騎士だったんじゃよ」

剣士「城の内情に詳しい、ということか?」

爺「そうじゃ、だから城のことは誰よりも知っておる。現国王よりかもしれん」

剣士「それは言い過ぎだと思うが……」

爺「本当じゃよ。ワシはあの城の秘密の抜け道を知っておる」

剣士「ば、馬鹿な!?」

110 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:47:33 ID:N0vkP70E
爺「その昔、訓練をサボタージュしようと聖堂に隠れた際に見つけたんじゃ」

剣士「そのような偶然で見つけられるものじゃないだろう?」

爺「あの城はちょっと特殊でな。見つけちゃったんじゃよ」

剣士「しかし、その話が本当だとしても使えるとは思えないが?」

爺「奇襲じゃぞ? 逃げ出す余裕があったかどうか。王族が逃げ延びたと言う話しは聞かんしの」

剣士「つまり使える可能性が高いと?」

爺「そうじゃ、使えれば敵に気づかれず城に侵入できる。なれば親玉の暗殺も……」

剣士「不可能ではない?」

爺「お主にその度胸があれば、じゃがな」

剣士「……」

爺「ホホッ! どうするかね、剣士殿?」

111 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:49:37 ID:N0vkP70E
部屋――

賢者「ご飯、よし。湯浴び、よし。ふぅーっ、完璧ですね」

賢者「剣士さんが帰ってきたらお約束的なアレをやっちゃいますか!」

コンコンッ

賢者「噂をすれば帰ってきました。これはテンション上がりますねー!」テテッ

賢者「はーい、今開けますよー」ガチャッ

賢者「お帰りなさい。ご飯にしますか? お風呂にしますか?」パッパッ

賢者「そ・れ・と・も…… きゃぅ、恥ずかしくて言えませんよー///」テレ

魔法使い「なにしてるの?」

賢者「ぎゃわっ!! お、お姉様ー!?」ビクッ

魔法使い「久しぶり、元気してた?」

112 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:52:07 ID:N0vkP70E
賢者「どーしてここに?」

魔法使い「どうしてって貴女の姿が見えたから」

賢者「王宮に勤めていたのでは? お手紙を頂きましたよ」

魔法使い「辞めたわ」

賢者「えっ!?」

魔法使い「ところで何をしてるの? 一人ではないみたいだけど」チラッ

賢者「わ、私ですか? 魔王城を目指して旅をしているんですけども」

魔法使い「そう言えば勇者の仲間になることが夢だったわね。でも……」

賢者「知っていますよ。勇者様は魔王に倒されたんですよね?」

魔法使い「ええ。ということは勇者の代わりに魔王討伐を?」

賢者「はい。剣士さんと二人で目指しています」

魔法使い「剣士さん?」

賢者「私の勇者様です」ウフフ

魔法使い「ププッ、ごめんなさい。笑えたわ」クスッ

賢者「なんで笑うんですかー、笑う所じゃないですよね!」ムッ

113 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:53:17 ID:N0vkP70E
魔法使い「どんな人?」

賢者「ど、どんな? うーん、真面目で優しい人かな??」

魔法使い「真面目って、他には?」

賢者「他に、ですか? ええーっと、んー……」

賢者「不器用と言いますか、素直じゃないと言うか、そこが凄くもどかしくて……」

魔法使い「男の人なの?」

賢者「はい、男の人ですよ。炎のような紅い髪が特徴で――って、そうでした!」

賢者「紅蓮の剣士と呼ばれている人です」

魔法使い「魔王軍のミノタウロスを撃退した?」

賢者「あやー、最初からそう言えば良かったですね」

魔法使い「じゃ、その人と一緒に魔王討伐を目指しているのね?」

賢者「はい!」

114 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:55:26 ID:N0vkP70E
魔法使い「でも本当に魔王討伐なんて出来ると思っているの?」

魔法使い「その剣士さんがいくら強くても、勇者には遠く及ばないのよ」

賢者「出来ますよ」

魔法使い「根拠はなに?」

賢者「ありません。でもそう思えるんです、剣士さんとなら!」

魔法使い「呆れた。ただの願望じゃない」

賢者「うふふっ、すみません」

ガチャ

剣士「鍵がかかっていない? 賢者、今帰ったんだが……」バタン

賢者「あ、噂をすれば剣士さんです!」

115 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:56:48 ID:N0vkP70E
魔法使い「妹がお世話になっている人だし、挨拶くらいしないとね」チラッ

剣士「誰かいるのか?」チラッ

魔法使い「……」ジト

剣士「!?」プイッ

賢者「(剣士さんが光速で目を逸らした!?)」

魔法使い「ねえ、あの人が剣士さん?」

賢者「そ、そうですけども……?」

魔法使い「ふーん」ジッ

剣士「賢者、知り合いなのか?」

賢者「はい、実の姉です――って、お二人ともどうしました?」

116 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:57:51 ID:N0vkP70E
剣士「そういえば言っていたな。三つ下の妹がいると」

賢者「あれ? 知り合いだったんですか?」

剣士「前に話しただろう。ほら、特訓に付き合ってもらっていた――」

賢者「魔道師のご友人って、お姉様だったんですか!?」

魔法使い「ご友人? お友達!? そー、お友達だったの私達。知らなかったわ」

剣士「え?」

賢者「違うんですか? ま、まさかっ!?」

剣士「いや、賢者が考えているような関係ではない。あくまで俺達は友人――だな?」

魔法使い「違うでしょ?」

剣士「話を合わせてくれないか?」ボソ

魔法使い「なんで?」

剣士「なんでと申されても……」

117 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 01:59:48 ID:N0vkP70E
魔法使い「本当のことを言えばいいじゃない」

賢者「ほ、本当のことってなんですか!?」ガタッ

剣士「いや、その……」

魔法使い「私、この人に仕えてたの」

剣士「ちょっと待て!」

賢者「あー、剣士さんも王宮の人だったんですね。で、お姉様が仕えて――いた?」

剣士「……」

賢者「もしかして剣士さんって……」

魔法使い「王子よ。勇者がいた大国の」

賢者「え゙ーっ!?」

剣士「すまない。素性を明かさず、騙す様な真似をして……」

賢者「いいんですか? 王子様がこんなところで、しかも魔王討伐だなんて!」

魔法使い「大問題よ」

118 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:01:38 ID:N0vkP70E
剣士「言うほどか? 俺がいなくても何の問題も……」

魔法使い「忘れたの? 貴方は次期国王。第一王子がホモで跡継ぎに困るからって……」

賢者「だ、第一王子がホモ?」

魔法使い「ええ」

賢者「そ、そんな理由で移っていいものなんですか?」

魔法使い「それが重度で女性相手だと全く、その……アレが機能しなかったとか」

賢者「ア、アレってぇ……///」ドキドキ

剣士「だが、それは勇者が生きていた時の話だ」

剣士「勇者の力を王家に取り込む為だとかで、今はどうでもいいだろう!?」

魔法使い「よくないわ。第一王子はホモ以前に王の器じゃなかったもの」

魔法使い「快楽思考で、毎晩違う男を部屋に連れ込んでたって有名だったんだから!」

剣士「そ、そういうことなら弟が……」

119 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:03:44 ID:N0vkP70E
魔法使い「貴方の弟君、第三王子は貴方と違ってお身体が弱かったでしょ!?」

剣士「あ……」

魔法使い「王の激務に耐えられると思うの?」

剣士「い、妹……」

魔法使い「姫!? 姫様は無理よ。まだ幼いし。それに重度のブラコンなのよ!?」

剣士「それがなんだ。兄を大事にして何がおかしい? 王の資質とは何の関係も……」

魔法使い「重度なのが問題なの。あれは絶対第一王子に恋してるわ、それも病的に!」

魔法使い「兄妹以前にホモ相手じゃ実るはずないのに、もー……」

剣士「そ、そうだったのか?」

魔法使い「とにかく、これでわかったでしょ?」

剣士「しかし、だからと言って今ここで旅を止めるつもりはない」

魔法使い「国よりも、己の意思を選ぶって言うの?」

120 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:05:01 ID:N0vkP70E
剣士「王子として生きて、何が変わる?」

魔法使い「人々を安心させることができるわ。貴方の言葉には力がある」

剣士「嘘の言葉で人々を導けと? 俺はそこまで器用にはなれない」

魔法使い「身勝手よ。できない、したくないからって国を捨てて、そんなに楽になりたい?」

賢者「違います。剣士さんは勇者様の遺志を継ごうとしているだけです!」

魔法使い「笑わせないでよ。一国の王子に過ぎない貴方が、勇者の遺志を継いだところで」

魔法使い「それこそ何が変わるって言うの!」

剣士「何も変わらないだろうな。王子として生きても、剣士として生きても――」

剣士「この世界は救えない。なら俺は、己の浴するままに生きる。そう決めた」

賢者「け、剣士さん……」

魔法使い「情けない。貴方はもっと強い人だと思っていたわ」

剣士「すまない」

121 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:07:46 ID:N0vkP70E
魔法使い「でも貴方の意思は伝わった。もう何も言わないわ」

剣士「君には今まで苦労ばかりかけたな」

魔法使い「本当よ。貴方のお目付け役なんて買って出るんじゃなかった……」

剣士「だが、そのお陰で俺は楽しかったよ。父上達にどうかよろしく伝えて欲しい」

魔法使い「悪いけど、城には戻らないわ」

剣士「俺を連れ戻すまで帰れないのか?」

魔法使い「違うわ。国王も大臣も貴方のことはもう諦めているもの」

剣士「では?」

魔法使い「わからない?」ジッ

剣士「そうか。君の妹、賢者のことだな?」

賢者「わ、私ィ?!」ビクッ

魔法使い「」イラッ

122 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:08:41 ID:N0vkP70E
剣士「賢者を巻き込んだことは本当にすまないと思っている。何と詫びればいいか……」

魔法使い「べつに詫びなくていいわ。私も貴方の旅に加わるから」

剣士「は?」

魔法使い「は? って、なに?」

剣士「おかしいだろう。普通は止める、妹の無謀を」

魔法使い「一度言ったら聞かない子だもの。止めたって無駄なのは知ってるわ」

剣士「だから自分もって言うのはおかしい」

魔法使い「なに? 私が一緒じゃ困るの?」

剣士「そういう話じゃない」

魔法使い「そういう話になるでしょ?」

剣士「ならない」

魔法使い「なるわ」

123 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:10:01 ID:N0vkP70E
賢者「あ、あのー、本当にいいんですか? お姉様、無理していません?」

魔法使い「そっちこそ無理してない?」

賢者「していませんよ!」ブンブン

魔法使い「ふーん。――で、どうなの? 私が貴方達の旅に加わるのは嫌なわけ?」

賢者「私は嫌じゃないですけど…… こ、困りました」チラッ

剣士「……」

賢者「お姉様、少し時間を下さい。剣士さんと相談するので隅っこで待機ですよ」

魔法使い「早くしてね」

124 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:11:00 ID:N0vkP70E
賢者「えっと、まずは謝ります。剣士さんを困らせちゃっていること」コソッ

剣士「べつに困っているわけでは……」

賢者「とにかく、姉も私と一緒で言いだしたら聞きません。説得は難しいと思います」

賢者「そこで私からも頼みます、姉を旅の仲間に加えては貰えないでしょうか?」

剣士「君はそれでいいのか。実の姉を巻き込むんだぞ!?」

賢者「姉も覚悟あってのことです。心配いりません」

剣士「そうは思えないが?」

賢者「姉は私よりも賢い人です。そんなことはありませんよ、大丈夫ですって!」

剣士「……わかったよ。これは君達姉妹の問題だしな」

125 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:12:02 ID:N0vkP70E
魔法使い「終わった?」ズイッ

賢者「はい。よかったですね。剣士さんがいいって言ってくれましたよ」

魔法使い「じゃ、いいのね?」

剣士「あ、ああ」

賢者「ではでは、これからよろしくですよ。仲良くしましょうね!」

魔法使い「はい、よろしくー」

剣士「……」

魔法使い「……」ジー

賢者「う、うーん。――あ、そうだ。ご飯にしませんか?」

剣士「ご飯?」

126 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:13:51 ID:N0vkP70E
賢者「今日のご飯は凄く美味しいですよー」

剣士「いつもありがとう」

賢者「では用意してきますね。ちょっと待っていて下さい」テテテ

剣士「……」

魔法使い「驚いた。まさか、生きていたなんて……」ジッ

剣士「そこに驚くのか?」

魔法使い「もちろん、妹と一緒だったことにも驚いたわ」

魔法使い「でも一番は貴方が魔王軍を討ち破り、生き延びたと言う事実……」

剣士「あれは偶然だ。奇跡と言っても過言じゃない」

魔法使い「でしょうね。人の身では敵わない存在だもの」

剣士「やはりわからないな。それを良く知っている君がどうして?」

魔法使い「貴方と同じよ」

127 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:15:16 ID:N0vkP70E
魔法使い「私も大切な人を失う悲しみには耐えられないわ」

剣士「なら何故止めない? 俺とは違うだろう」

魔法使い「これでも頑張って止めたつもりなのだけれど?」

剣士「それはどういう……」

魔法使い「まだわからない?」ジッ

剣士「失望したんじゃないのか?」

魔法使い「ええ、凄くしたわ。こんな時だからこそ、しっかりして欲しかったのに――」

魔法使い「貴方ときたら感情任せに行動して、おまけに妹までたぶらかして……」

剣士「賢者が勝手にあらぬ幻想を抱いているだけだ」

魔法使い「ふーん。まあいいわ。とにかく私は貴方を失いたくないだけ」

剣士「その為なら命すら厭わないと?」

128 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:16:16 ID:N0vkP70E
魔法使い「貴方のいない世界に未練なんてないわ」

剣士「重いな……」

魔法使い「ごめんなさい。これは卑怯よね……」

剣士「魔法使い……」

賢者「お待たせしましたー!」バーンッ

魔法使い「遅かったわね」

賢者「はい、スープを温め直していて――って、あれ?」

魔法使い「どうしたの?」

賢者「いえ、剣士さんが青ざめていたので……」

魔法使い「酷い人」ムッ

129 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:17:41 ID:N0vkP70E
賢者「またお姉様が何か言ったんですか?」

剣士「べつにそういうわけじゃ……」

賢者「気にしちゃ駄目ですよ。ケチをつけるのが趣味みたいな人ですから」

賢者「――ところで例の作戦は思い付きましたか?」

魔法使い「例の作戦?」

賢者「四天王を倒す作戦です!」

魔法使い「い、挑むの?」

賢者「私達は魔王討伐を目指しているんですから当然ですよね!」

剣士「そのことなんだが……」

賢者「思い付いたんですか!」

剣士「あ、いや……」

賢者「そう簡単に思い付きませんよね。すみません、急かせちゃって」

130 ◆49HRmRlKYE:2017/04/15(土) 02:19:39 ID:N0vkP70E
剣士「(話せば死ぬだろう。一か八かの奇襲など愚策だ。ならいっそここで諦めるのも……)」

魔法使い「随分と腕を上げたのね。悔しいけど美味しいわ」モグモグ

賢者「素材が良いだけですよ」

魔法使い「謙遜なんて珍しい」

賢者「ここの気候と土壌がお野菜に適しているそうで他で取れるものよりも美味しいそうです。宿屋さんが言っていました」

賢者「だから次もこの味が出せるとは限りません。期待しちゃ駄目ですよ!」

魔法使い「ふーん」ズズッ

剣士「(ああ、そうだった。俺は大切なことを忘れていた……!)」グッ

賢者「あ、剣士さんも食べて下さい。作戦は食べながらみんなで考えましょう」ニコッ

剣士「賢者、そのことで話がある。聞いてくれないか?」

賢者「え!?///」ドキッ

131以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/15(土) 04:36:11 ID:PJyPBFyI
https://www.girlsheaven-job.net/10/yubou_kuraya/

132 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:03:42 ID:hE8idhQI
町の外れ 夜更け――

賢者「抜け道、ですか?」

剣士「ああ。城、それも王城ともなれば脱出用の抜け道が必ず存在する」

賢者「でも、そんなものがあればとっくに……」

剣士「俺もそう思うんだが、どうやら使える可能性が高いらしい」

魔法使い「だからって、どうしてこんな夜更けなのよ?」

剣士「時間を指定されたんだよ」

賢者「確かに夜の方が人目につかないですけど……」

剣士「とにかく行こう。ここから少し北にある橋の下で待っているそうだ」

魔法使い「罠に思えるのだけれど?」

剣士「その時はその時だ。諦めよう」

魔法使い「あ、そう」

133 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:05:58 ID:hE8idhQI
北の橋――

爺「ホホッ、やはり来おったか。……ん? その二人は?」

賢者「私は賢者。で、こちらは姉の魔法使いです」

爺「なんじゃ女か。しかも、ちょいと臭う」

魔法使い「失礼な爺ね。もしかして、この糞爺が例の元騎士なの?」

爺「糞爺でもあるが、ワシはホモ爺じゃよ」タワケ

魔法使い「は?」

剣士「それで抜け道とはどこにあるんだ?」

爺「相変わらずせっかちじゃなー。いいよ、いいよ。すぐに見せちゃる」

魔法使い「すぐって、この近くに? 王城まで馬でも二日はかかるわ」

爺「それがあるんじゃよ」

剣士「ここ、橋台に?」

134 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:07:40 ID:hE8idhQI
爺「まあ見ておれ。確かこのレンガじゃったかな、ポチっと!」グイッ

賢者「一部の石壁が消えましたよ!?」

剣士「魔法の仕掛けか?」

魔法使い「そのようね。それも随分と古臭い……」

剣士「驚いた。まさに抜け道、隠し通路というわけか」

魔法使い「貴方のところは普通なの?」

剣士「普通と言うより変だな。謎の塔に続く抜け道だから」

賢者「奥は狭いですよ。とても道があるようには見えませんけど……」

爺「下を良く見てみ、魔法石の床じゃよ」

剣士「まさか、転移魔法?」

爺「そうじゃ、それなら一瞬じゃろう?」

剣士「納得した。だからこのような場所にあるのか」

135 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:10:01 ID:hE8idhQI
爺「よかったわい。見た限りじゃが、使われた形跡はないぞ」

剣士「では行けるのか、本当に……?」

魔法使い「怖いの?」

剣士「ああ、転移魔法も始めてだしな」

爺「大丈夫じゃよ。ワシが保証するぞい。勇者も頻繁に使う魔法じゃし!」

賢者「ありがとうございます、御爺さん!」

爺「待て待て、ワシもゆくぞ!」

剣士「爺さんも?」

爺「当然じゃ、案内人は必要じゃろ?」

剣士「そうして貰えると助かるが……」

爺「なあに、お国のためじゃ。こんな老骨が役に立つなら何でもするぞい!」

剣士「……わかった。行こう」

136 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:11:54 ID:hE8idhQI
城 地下室――

剣士「着いたのか? 転移魔法だと実感が薄いな……」

賢者「ちょっと頭がクラクラするんですけども……」フラフラ

魔法使い「で、ここはどこなの? 暗くてよく分からないわ」

爺「ここは礼拝堂の下にある地下室じゃよ」

魔法使い「魔法の抜け道というわりには普通ね」

剣士「あくまで魔法なのは時間と距離を稼ぐ為だろう」

賢者「出口はどこですか?」

爺「剣士殿の丁度真上が出口じゃな。ちと重いが、天井を持ち上げてくれんか?」

剣士「ああ、わかった」ズッ ゴゴ

137 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:13:41 ID:hE8idhQI
礼拝堂――

賢者「ぷはーっ、出られました!」ヒョコッ

剣士「爺さん、グリフォンはどこにいると思う?」

爺「おそらく玉座か、中庭じゃと思うが……」ジーッ

賢者「どうしたんですか?」

爺「女神像が邪神像に変わっておったからな。驚いたわい」

剣士「それが?」

爺「おかしいとは思わんか?」

剣士「魔族も神に祈るだろう。邪神を信仰しているわけだし」

爺「そこじゃない。誰がこの像を彫ったのかじゃよ」

剣士「持ち込んだものじゃないのか?」

爺「魔族も祈るとはいえ、こんな大きな像を戦場には持ち込まんじゃろ?」

剣士「まあ、確かに」

138 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:15:12 ID:hE8idhQI
爺「聞けば鳥魔族の奇襲によって落ちたとか。鳥魔族に手先の器用な者がおるとは思えん」

剣士「後から他の魔族が合流したとも考えられる。そこまでおかしいことでは……」

爺「いや、そのような話は聞かん。合流できたとして精々不器用なオークじゃろう」

剣士「つまり?」

爺「この像は人間によって彫られたものじゃ。技術的にもそう見える」

魔法使い「城の者が捕まっていると言うの? 魔族は支配ではなく破壊が目的なのよ?」

爺「そりゃそうなんじゃが……」

剣士「もし捕らえられているとしたら何処だと思う?」

爺「普通に考えれば主塔の地下にある牢獄じゃろうな」

魔法使い「た、助けに行くつもり?」

剣士「ああ」

魔法使い「?!」

139 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:16:50 ID:hE8idhQI
塔――

剣士「あっさりここまで辿りつけたな。巡回は愚か、見張りの兵すらいないとは……」

賢者「夜だからじゃないですか? 相手は鳥魔族なわけですから、鳥目で」

剣士「魔族に常識が通用するのか? いや、それ以前に夜行性の鳥も多いだろう」

賢者「じゃあ、人出が足りないとかじゃないですか? 魔族ですし……」

爺「ともかく相手は無警戒と言えるのう。内部からの攻撃を想定しておらん」

賢者「抜け道の存在を知らなければ警戒しないと思いますけど、どーなんでしょ?」

剣士「罠の可能性は……考え過ぎか?」

爺「ときに戦場では慎重さよりも行動力が求められるそうじゃよ?」

剣士「それはそうなんだろうが……」

魔法使い「考えても仕方ないわ。ここまで来たのだから行ける所まで行きましょう」

剣士「あ、ああ」

140 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:17:55 ID:hE8idhQI
塔 内部――

剣士「見張りがいるな」コソッ

魔法使い「本当に捕らえられていると言うの?」

剣士「ここに兵を配置する意味を考えれば十中八九と言ったところだが……」

賢者「どうします? 見張りは鳥人間ですよ。鷲の頭に翼、それに鋭い爪にクチバシです」

剣士「屋内であれば翼は脅威じゃない。やれると思うが」チャキッ

魔法使い「待って。塔の中は明るいわ」

剣士「本当に暗闇では目が利かないと言うのか?」

魔法使い「鷲は昼行性よ」

剣士「しかし……」

魔法使い「確かめればわかるわ」スッ

141 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:18:46 ID:hE8idhQI
剣士「どうする気だ?」

魔法使い「明りを消すの」

剣士「やれるのか?」

魔法使い「私は魔道師よ。当然でしょ?」パァァッ

ガルダ「な、風……?」

ヒュウウ スッ

ガルダ「あ、明りが消えた!? こ、これはどういう……」キョロキョロ

賢者「見えてないみたいですね」

剣士「いや、まだ目が暗闇に慣れていないだけかもしれない」

賢者「にしても、あの慌てようは……」

ガルダ「火、火を、火を灯さねば……」ゴソゴソッ

142 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:20:33 ID:hE8idhQI
剣士「決まりか?」

魔法使い「ええ、そう思うわ」

賢者「私もそう思います」

爺「ワシはホモ」ボソッ

剣士「では……」スッ

ガルダ「だ、誰かそこにいるのか?」ガチャ

剣士「(気づかれた? ――が目線は定まっていない)」

剣士「(本物の鷲はどうだか知らないが、こいつらは見えていない)」

ガルダ「あ、悪霊なのかー!?」ブルブル

剣士「すまない」ガンッ

ガルダ「うっ……」バタッ

剣士「これは、もしかすれば本当に……」

143 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:21:40 ID:hE8idhQI
塔 地下 牢獄――

城兵「うっ、眩しい。まだ朝ではないはずだが……?」

魔法使い「信じられない。本当に捕らえられていたなんて……」

城兵「き、君達は?」

賢者「救いのヒーローとヒロインですよ。さあ、ここから逃げて下さい!」バッ

城兵「まさか、勇者なのか!?」

剣士「残念ながら。ですが貴方方を助けにきたのはと言うのは本当です」

城兵「ゆ、勇者ではない?」

剣士「ええ」

城兵「そうか、そうか……」シュン

剣士「?」

144 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:22:51 ID:hE8idhQI
王女「申し訳がないのですが、そういうことなら私達は放っておいて下さい」

剣士「貴女は?」

王女「この国の王女です。といっても、この様な身なりではわからないと思いますが……」

剣士「それで放っておけとはどういう意味です?」

王女「見ての通り、私達は自らの意思で魔族に降伏しました」

王女「奇襲により私の父、国王は亡くなり騎士団の半数はやられ……」

剣士「降伏せざるを得なかった、それはわかります。しかし、それが一体どうして?」

王女「聞けば勇者も既に魔王に討ち取られたとか――」

王女「それでなぜ抵抗しようなどという考えに至りましょうか。ならいっそのこと……」

剣士「魔族のドレイとして生きると言うのですか?」

王女「グリフォンは約束して下さいました。魔族のドレイとなれば命だけは、と」

145 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:25:19 ID:hE8idhQI
剣士「彼等が約束を守るという保証はありません。用が済めばいずれ……」

王女「その時は心静かに己の運命を受け入れるだけです」

王女「ごめんなさいね。危険を冒してまで私達を助けに来てくれたと言うのに……」

賢者「諦めちゃ駄目ですよ。まだわかりません、まだ!」

王女「既に希望は断たれていた。どう足掻こうと滅びの運命は変えられないわ」

王女「だから、だから私達はこうして……」

剣士「戦うことを、いや生きることを諦めたのか」

魔法使い「お、王子?!」

剣士「わかっている。境遇を鑑みれば無理もない。彼女を責める気はないよ」

王女「なら早く去って下さい。彼等が貴方達に気づく前に、何処か遠くへ……」

剣士「すまないが、それはできない」

146 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:26:46 ID:hE8idhQI
魔法使い「王子は本気なの!?」ガシッ

剣士「いけないか?」ペシッ

魔法使い「戦えば、貴方が彼女等を殺すことになる!」

剣士「勝てばいい。勝てば全て救える。ここにいる者達も、心優しい宿屋の主人も……!」

魔法使い「その覚悟が本当にあると? 貴方は死に場所を求めているだけでしょ!?」

剣士「違う、今は違うッ!!」

賢者「!?」

城兵「待ってくれ。君は四天王に挑むと言うのか、それは無謀が過ぎるぞ!?」

剣士「確かに無謀だ。だが無理じゃない。勝機はある」

城兵「き、聞かせては貰えないか? 君達がここまで辿り着いた経緯を含めて」

剣士「ええ、実は……」

147 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:28:54 ID:hE8idhQI
城兵「なるほど。抜け道を通って。だからここまで無事に辿りつけたと言う訳か……」

城兵「それで四天王に勝てるとは一体……?」

剣士「敵はこちらの侵入に気づいていません。加えて彼等、鳥魔族は暗闇では十分に見えないようです」

剣士「四天王グリフォンの元に辿り着くのはそう難しくはないでしょう」

城兵「つまり今、敵の主力は弱体化しているわけか……」

城兵「しかし全ての敵が鳥魔族ではない。先日、数十匹のオークが合流したのを確認した」

剣士「そういった夜戦が可能な魔族は、城門や側塔で外部を警戒しているはず――」

剣士「ならば嗅ぎつけられる前にグリフォンを倒せばいいだけのこと。すれば崩れる」

城兵「肝心のグリフォンだが…… 倒せるのか、君に?」

剣士「グリフォンとて鳥魔族。暗闇では飛べない。地上戦に持ち込めば勝てる!」

148 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:31:07 ID:hE8idhQI
城兵「そう言うが、グリフォンの半身は獅子。地上とて脅威にかわりはない」

剣士「俺は以前、魔族の将と戦い勝ちました。その経験を生かせれば……」

城兵「魔族の将を!?」

剣士「たった一度だけですが……」

城兵「そ、それを考慮しても本当に僅かな可能性だろう。上手くいくとは……」

剣士「この程度のリスクで各上に挑める。それだけで上等。賭ける価値はある」

城兵「確かに、もっともだな。むしろ千載一遇のチャンスだと捉えるべきか……」フッ

王女「貴方まで何を?!」

城兵「王女よ、どうか許して頂きたい。この者と共に戦うことを」ペコッ

王女「ば、馬鹿なことを言わないで」

城兵「もう耐えられないのです。誇りを捨て、魔族の家畜に成り下がるなどと……」

兵一同「「私達からもお願い致します!」」

149 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:35:19 ID:hE8idhQI
王女「ず、ずるいわ。そんなの、皆にそんな風に言われたら頷くしか……」

城兵「感謝いたします、我が王女よ」

剣士「ま、待ってくれ。俺は勇者じゃない。こんな無謀に付き合う必要などどこにもない」

剣士「貴方達は王女を連れてここから……」

城兵「王女を確実に逃がす為にもここに残り戦う者は必要だ。これだけの数が一斉に逃げ出せば気づかれぬはずはない」

剣士「この暗闇ならば……」

城兵「それでもだ。それに敵を引き付けられれば剣士殿の助けにもなることだろう」

剣士「しかし、武具を持たない貴方達では!」

城兵「武器に代わるものなら幾らでも見つかるだろう。それに城内であれば構造を熟知している我等に分がある」

城兵「それとも剣士殿の我等が邪魔なるとお考えか? そうであるなら私達は……」

剣士「いえ、そうわけでは……」

城兵「なら戦わせてくれないか。騎士としての責任を果たさせてくれ!」

剣士「わ、わかりました……」

150 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:38:43 ID:hE8idhQI
城兵「王女よ、隠し通路は御存じで?」

王女「それが、よく思い出せなくて……」

剣士「では魔法使いに案内させます」

魔法使い「わ、私!? 案内なら爺にやらせればいいじゃない」

剣士「護衛も込みだ。爺さんには荷が重いだろう?」

魔法使い「賢者じゃ駄目?」

剣士「グリフォンとの戦いに癒し手が欲しい」

151 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:40:34 ID:hE8idhQI
魔法使い「そ、そう……」シュン

剣士「頼まれてくれるか?」

魔法使い「約束してくれたらいいわ。絶対に死なないって……」

剣士「約束は出来ないが努力はする。それでは駄目か?」

魔法使い「嘘でも約束しなさいよ。そうすれば納得したのに」

剣士「嘘は苦手だな」

魔法使い「不器用な人。でも、その飾らないところが貴方の魅力なのかも知らないわね」

剣士「どうだか……」

魔法使い「まぁいいわ。引きうけてあげる。その代わり努力してよ」

剣士「あ、ああ」

152 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:44:28 ID:hE8idhQI
魔法使い「さて、役割も決まったことだし行動しましょうか」

城兵「うむ。では我等は行きます。ご武運を!」バッ

賢者「私達も行きましょうか、剣士さん」

剣士「ああ。爺さん引き続き案内を」

爺「了解じゃよ!」

魔法使い「で、のこりが王女とその護衛と使用人か――」

魔法使い「では私から離れないようにして下さい。何があるか分かりませんので……」

王女「ま、魔法使いさん。そ、その、お願いがあるのですが……」

魔法使い「?」

153 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:46:06 ID:hE8idhQI
中庭――

グリフォン(以下グリ)「風が騒がしい。これは一体どういう……?」

オーク「どうやら何者かが城内に侵入し、ドレイ達を解放したようです」

グリ「お前は先日、我が隊に合流した元ミノタウロス隊のハイオーク!」

オーク「これはマズイことになりました」

グリ「それが本当なら一大事だ。城内からの攻撃など想定していなかった。どうやって?」

グリ「まさか、お前らの中に裏切りモノが……」

オーク「御冗談を。確かに城門を内側から開ければ侵入は容易い――」

オーク「しかし、人間に恨みを持つ我々がそれを行うとお思いですか?」

グリ「では翼を持たぬ者がどうやって城壁を越えたと言うのだ?」

オーク「それはわかりません。しかし、これでは敗北は必須です」

154 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:47:52 ID:hE8idhQI
グリ「いや、まだだ。私がいる限り敗北はあり得ん」

オーク「敵を甘く見ないことです」

グリ「知っているか、侵入者を?」

オーク「おそらく我が部隊を討ち破った剣士かと」

グリ「例の剣士か、魔王様が危惧していた……」

オーク「報告は以上です。私は持ち場に戻ります」

グリ「待て。お前の部隊も侵入者とドレイを!」

オーク「これは陽動かも知れないのですよ。城門を手薄にすることはできません」

グリ「我々鳥翼族だけで城内の敵を掃討しろと言うのか。この暗闇で!」

オーク「先程、ご自分で申されたではありませんか。四天王いる限り敗北はないと」

グリ「下級魔族の分際で……」ギリッ

155 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:48:34 ID:hE8idhQI
城 中庭――

賢者「感動しましたよ、剣士さんの言葉!」

剣士「安い感動だな。啖呵を切るだけなら誰でもできる。問題はそれを実現する力があるかどうかだ」

賢者「どうしたんです、いきなり?」

剣士「希望が絡み過ぎた作戦、いや作戦とも呼べないイチバチだ。それなのに俺は……」

賢者「剣士さん、もっと自分のこと信じてもいいんじゃないですか?」

剣士「信じる、自分を?」

賢者「だって剣士さんはこの状況であれば絶対に勝てるって思ったんでしょ?」

剣士「絶対とまでは……」

賢者「少なくとも私は信じています、剣士さんのこと――」

賢者「だから信じましょう、大丈夫だって!」ニコッ

剣士「!?」

156 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:50:40 ID:hE8idhQI
爺「コォラ! イチャコラしよって、独身ホモの気持ちも考えて欲しいものじゃわい!」

賢者「えーっ、イチャイチャなんかしていませんよー!」

剣士「イチャコラ、イチャイチャ……?」

賢者「男女が睦まじくスライムのごとくネチャネチャ戯れることです」

爺「べつに男女に限らんと思うがのぅ」

爺「そんなことよりじゃ。あれが目に入らんか? 彼奴が中庭に居たぞ!」ビシッ

剣士「中庭、やはりか……」

賢者「あの巨体じゃ、玉座は窮屈そうですからね。翼なんかは特に邪魔になりそうです」

剣士「爺さん、ここまで案内してくれてありがとう。後は俺達に任せてくれ」

爺「うむ。気をつけてな」

賢者「何処か安全な場所に身を隠していて下さいね!」

剣士「じゃ行くか!!」ダッ

157 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:53:36 ID:hE8idhQI
ガルダA「侵入者だと!? やはりあのハイオークの言っていたことは本当だったのか!」

ガルダB「お、臆するな。我等魔族が人間に劣るようなことはない」

ガルダC「しかし、たいまつの明りだけでは……」

剣士「四天王とは言え、やはり衛兵はつけるか!」ダッ

ガルダB「き、きたぞ。明りを背にして戦え!」モタモタ

剣士「遅いッ!!」ザン

ガルダ一同「「ぐあああああ」」グシャアア ガシャガシャ

グリ「瞬く間に衛兵を!?」ビクッ

剣士「あとは大鳥だけ……」ユラリッ

グリ「ま、間違いない。奴が剣士だ。魔王様がおっしゃっていた紅蓮の――ッ!?」

剣士「速攻で仕留める!」

賢者「は、はいい!!」モタモタ

158 ◆49HRmRlKYE:2017/04/19(水) 01:54:36 ID:hE8idhQI
グリ「しかし、私はそう簡単にはいかんぞ!」

剣士「」スッ

グリ「闇に身を隠してもだな!」グルン

剣士「なにィ!?」

グリ「この私が他の者と同じく暗闇では目が利かないと思ったか?」

グリ「魔界四天王の一人であり、天空の覇者である私が鳥目なわけがなかろう!」

剣士「くっ、ここまでか……」ガクッ

賢者「剣士さん、諦めるの早すぎですっ!?」

剣士「冗談だよ」チャキッ

賢者「笑えない冗談は止めて下さいよー、もーっ!!」

剣士「だが半分だ。さて、どうしたものか……」


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