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賢者「勇者様の遺志を継ぎ、私が魔王を倒します」
1
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/14(金) 06:17:21 ID:PCLf6UWk
平原――
賢者「(私は賢者、魔道のエキスパート)」ハッ ハッ
賢者「(勇者様の旅立ちを知り、仲間になるべく旅に出ました」ハァッ ハヘッ
賢者「(ですが、そこには大きな問題があったのです)」グヘッ
賢者「(私の家から勇者様の旅立ちの地は遠く、私は体力がない……)」ウエエ
賢者「ああーん、もう歩けませんよっ!」ペタン
賢者「どーして勇者様の仲間になるために旅をしなきゃならないんですかー!」
賢者「私の噂を聞き付け、勇者様の方からやってくると思ったのにィー」ジタバタ
323
:
◆49HRmRlKYE
:2017/12/09(土) 04:53:15 ID:1sKoMfF6
賢者「私、思うんです。ちょっと急ぎすぎているんじゃないかなって。紹介してもらえる船というのもわけがありそうな感じですし――」
賢者「それに仲間も随分と増えましたよね。最初は二人だけだったのに今では多くの人達に支持されるようにもなって……」
剣士「怖く、なったのか?」
賢者「……」コクン
剣士「まあ気持ちはわかるよ。なんだか凄く期待されているみたいだし重いよな」ハハッ
剣士「でもこれはいい事だよ。人の期待を背負うという事は、その人の為に戦えているという事。このプレッシャーを力に変えていこう」ポン
賢者「そうじゃなくて。いえ、それもあるんですけど……」
賢者「わからなくなっちゃったんです。本当にこのままで、勇者と同じやり方で魔王を倒せるのかなって」
324
:
◆49HRmRlKYE
:2017/12/09(土) 04:55:20 ID:1sKoMfF6
賢者「お姉様が言っていました。一人の力には限界がある。あの勇者ですら仲間を集め、力を分け与える事で魔王に対抗したと」
賢者「それだけじゃありません。勇者には女神の祝福を受けた上質な武具の数々があって。で、でも貴方には何も……」
賢者「だからこのままじゃきっと――ううん違う。私は、私の弱さがいつか貴方を……」
剣士「俺は死なないよ。約束できる事ではないが、それでも約束する」
賢者「――っ!?」
剣士「確かに伝承を信じるのであれば魔王は俺達人間には到底敵わない存在――」
剣士「だが、それは魔王に限った話でもなかっただろう? 何もかもが等しく強大だった」
剣士「それでも俺達はここまで辿り着いた。そう、辿り着けたんだ。あとはただ、己を信じて突き進むだけ。違うか?」
賢者「本当にそう信じて?」
剣士「ああ。俺はそう信じる」
325
:
◆49HRmRlKYE
:2017/12/09(土) 04:58:18 ID:1sKoMfF6
賢者「貴方は、強くなりましたね。あの頃とは比べ物にならないほど」
剣士「でなければ困るだろう?」ニコッ
賢者「そりゃそうでしたね」フフッ
賢者「(私は卑怯だ。泣きついて許されようとしていた。無力である事を)」
賢者「(でも違う。そうじゃない。私も彼と同じよう足掻き続けなきゃいけなかったんだ。最初にそれを約束したのは私だったのに……!)」
剣士「さて、いい時間だな。昼食にしようか」
賢者「あ、なにか作ってくればよかったですね」
剣士「それはまた今度にしよう」
賢者「今度ありますかね?」
剣士「あるさ。なんなら明日でもいい」
賢者「ほ、本当に!? わーい、やったー!」
326
:
◆49HRmRlKYE
:2017/12/09(土) 05:01:48 ID:1sKoMfF6
宿屋 昼――
魔法使い「はあ……」パタン
魔法使い「朝まるまるつぶしちゃったわ、魔導書を読むだけで」コロン バタッ
魔法使い「本当なにしてるんだろう、私……」グスン
魔法使い「……」グーー
魔法使い「お腹すいた。何か食べてこよう」ムクッ
魔法使い「あーでもお店行くのはめんど。馬車にあるもの適当に食べて済ませよ」
外――
魔法使い「賢者が作った保存食がいくつかあったはず……」ゴソゴソ
執事「失礼。貴女がその馬車の持ち主でしょうか?」
魔法使い「ほえ?」キョトン
327
:
◆49HRmRlKYE
:2017/12/09(土) 05:04:02 ID:1sKoMfF6
魔法使い「ええ、そうよ。べつに盗みを働いてるわけじゃないわ」
執事「いえ、そういうつもりでは……」オドッ
魔法使い「で、貴方は? ルームサービスを頼んだ覚えはないんだけれど」
執事「見ての通り王宮に使えるものです。わけあって紅蓮の剣士を探しております。ご存じありませんか?」
魔法使い「ごめんなさい。知らないわ」
執事「では、この荷台に積まれている高価な薬品の数々は一体どこで? そう簡単に入手できるものではないと思うのですが……」
魔法使い「中身を見たの?」
執事「密輸の取り締まりも一応やっておりましてね」
魔法使い「ふーん、そういうこと」
執事「もう一度伺います。紅蓮の剣士をご存じありませんか?」
魔法使い「ふぅ、知ってるわ。それであいつになんの用? ま、察しはつくけど」ハァ
328
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/12/10(日) 10:59:55 ID:v4kH9Tio
おつ
329
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 05:55:03 ID:cIw/hk2s
tesu
330
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 05:55:51 ID:cIw/hk2s
夕方――
賢者「たっだいまー!!」
魔法使い「おかえりなさい。剣士は?」
剣士「俺がどうした?」
魔法使い「昼に王宮の使者と名乗る男が訪ねてきたわ。貴方に頼みたい事があるってね」
剣士「頼み?」
魔法使い「詳しい事は聞いてないわ。直接本人に話したいって何も話してくれなかったのよ」
魔法使い「どーせ、魔族の事なんでしょうけど」
賢者「そりゃそうですよね。わざわざ剣士さんを頼ってくるくらいですし」
剣士「どうだろう。そうなら例のエルフが先に何か言ってきそうなものだが……」
魔法使い「それは事の大きさにもよるんじゃない?」
魔法使い「流石にそのエルフも魔王軍全ての動きを把握してるとも思えないし」
剣士「それもそうか」
331
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 05:57:28 ID:cIw/hk2s
武闘家「ただいまー! お、皆さんお早いお帰りで――って何かあった感じ?」
賢者「はい。剣士さんに王宮からの依頼が来たとかで」
武闘家「んでまた? あー、昨日の騒ぎで剣士殿がここにいるって知られちゃったからか?」
賢者「あれ? それだったら偽者さんの方に依頼がいってそうですけど……」
剣士「酒場からの紹介で来たんじゃないのか?」
魔法使い「違うと思うわ。馬車の荷から貴方を探したみたいだから……」
剣士「荷から? わざわざ調べ回ったのか。酒場に行けばすぐ済むものを」
魔法使い「事情があるのかも。表には出せないような」
武闘家「金でも握らせておけば黙っていてくれそうなもんだけどな」
剣士「そうでなくともあのマスターなら守ってくれそうだが……」
魔法使い「酒場に訪れた痕跡さえも残したくなかったとか、理由なんて腐るほど出来てくるわ。考えるだけ時間の無駄よ」
剣士「だな。――で、どうしたらいい?」
332
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 05:58:36 ID:cIw/hk2s
魔法使い「明日また出直すって言ってたから……」
剣士「ここにいればいいのか。出向く必要はないんだな?」
魔法使い「で、いいと思う」
武闘家「どんな依頼にせよ。こういうのって話聞いちゃうと断りにくいんだよなー」
剣士「そんな事もないだろう」
魔法使い「ほんとに? 貴方ってすぐ見栄を張るから……」
剣士「耳が痛いな」
魔法使い「とにかく慎重にね。いいように使われるのはごめんよ」
剣士「わかってる。気を付けるさ」
剣士「(確かに勇者に代わるなどと言われるようにもなれば、俺達を利用しようと考える輩も現れるか)」
333
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:00:54 ID:cIw/hk2s
剣士「(そう言えば勇者の力は、その強大さゆえに法王庁が管理していたな)」
剣士「(勇者の力を行使するには法王庁の許可が必要で、魔王討伐の旅の間も何かある事に教会に報告するよう義務付けられていたっけか)」
剣士「(まあ、今は昔ほど厳密に守る必要はないと勇者は語ってはいたが……)」
賢者「また眉間にしわがよっていますよ」ツン
剣士「あ、いや」
賢者「気になるのはわかりますけど、明日になればわかる事なんですし――」
剣士「考えても仕方ない、だろ? わかってるよ」
賢者「はあい!」ニコッ
剣士「(力には相応の責任が伴うという事なんだろうが、面倒くさい話だな)」
魔法使い「……」ムッ
武闘家「(魔法使いさん、なんか不機嫌だな。てか、剣士殿と賢者が話してるといつも――)」
武闘家「(あっ、そういう事か!?)」テコリン!
334
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:02:16 ID:cIw/hk2s
翌日 昼すぎ――
武闘家「まだかな?」チラッ
魔法使い「んー、来るならそろそろじゃない。昨日もこのくらいだったし」
剣士「なあ、全員で話を聞くのか? 俺と魔法使いに投げて遊びに行ったって……」
賢者「もしかして邪魔でした?」
剣士「いや、つまらないかなーって。話を聞くだけだしな」
賢者「こ、子供じゃないんですから!」
剣士「俺は苦手だからさ」
武闘家「そう言えば市長の時も嫌がってたな」
コンコン
魔法使い「あ、来たみたい。私が通すわ。待ってて」
剣士「あ、ああ」
335
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:03:57 ID:cIw/hk2s
魔法使い「どうぞ。中央に座っているのが剣士よ」スッ
執事「おお。これは紅蓮の剣士殿。貴方のような英傑にお会いでき光栄であります」ペコッ
剣士「話は聞いています。貴方が昨日、私を訪ねてきた王宮の方ですね。早速ですが何を私に……」
姫騎士「それについては私が話そう」バサッ
剣士「貴女は?」
姫騎士「失礼した。私はこの国の第一王女。皆からは姫騎士と呼ばれている。ソナタ達を是非そう呼んでくれ」ニカッ
剣士「聞いてないぞ?」ボソッ
魔法使い「私だってそうよ!」コソッ
姫騎士「玄関では誰かに見られる危険性があってな、正体を明かせなかった。せめて事前に私の事を伝えてくれればよかったのだが……」
執事「自重なさって下さい。今日だって私一人でここを訪れる予定でしたのに」
姫騎士「わかっている。だが、事が事だ。私が直接説明した方が事の重大さが伝わるだろう」
執事「ですが姫様が仰っていた通りの事が王宮で起こっているのなら怪しまれる事があってもならないはず。これ以上はお控え頂かないと……」
剣士「すみません。私達にもわかるように話してくれませんか?」
336
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:05:25 ID:cIw/hk2s
姫騎士「あ、ああ。すまん。見苦しい所を見せた」
姫騎士「今の会話で察したかもしれんが、個人的な頼みでな。王宮の総意ではないのだ」
剣士「姫様個人が私になにを?」
姫騎士「それなんだが、とあるエルフの秘宝を取ってきてもらいたい」
剣士「エルフの?」
姫騎士「真実の水晶という魔道具の一種なのだが、聞いた事はないだろうか?」
姫騎士「なんでも、その水晶越しに覗けば、見たものの真実の姿を映し出すのだという」
剣士「つまり変化の魔法を見破るような道具だと?」
姫騎士「ほう、変化の魔法を知っているのか。なら話が早い」
剣士「しかし、それはエルフにしか扱えないとされる古の魔法。もしや、変化の力を秘めた魔道具も存在しているのですか?」
姫騎士「察しがいいな」
337
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:08:07 ID:cIw/hk2s
姫騎士「今話した真実の水晶と変化の指輪は古来よりこの国に伝わる秘宝でな」
姫騎士「それらは北と南にある二つの祠にそれぞれ隠されていると言われてたのだが――」
剣士「何者かに変化の指輪が盗まれてしまった。その犯人を捜す為に水晶が欲しいと?」
姫騎士「そういう事だ」
剣士「盗まれたという証拠はあるのですか?」
姫騎士「もちろんある。先日、執事に二つの祠を調べさせた。そのところ……」
執事「はい。変化の指輪の祠には何者かが立ち入った痕跡が見つかりました」
執事「その見つかった痕跡というのはここ最近のもので偽者を疑うようになったのもここ最近の事なのです」
姫騎士「というわけだ。――で、私はその何者かは人間ではなく、魔族だと睨んでいる」
剣士「魔族が?」
姫騎士「というのも、その祠には侵入者を撃退する仕掛けがいくつもあり、並みの冒険者では秘宝まで辿り着けないようになっているんだ」
姫騎士「大昔の勇者が秘宝の悪用を恐れ、そのような場所に隠したとか……」
338
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:11:19 ID:cIw/hk2s
剣士「勇者でなければ盗み出せない。従って魔族が、と考えたわけですか」
姫騎士「おかしい事ではないだろう。このような時代だ」
賢者「そうだとして、どれくらいの魔族が入れ替わっていると見ているんですか?」
姫騎士「正確な数まではわからん。だが確実に一人、それも王宮で最も力を持ったものに化けているのはわかっている」
賢者「そ、それって……!」アセッ
姫騎士「私の父、この国の王だ。今は大人しくしているようだが、いずれその立場を使いこの国を滅ぼそうとするはず―――」
姫騎士「そうなる前に真実を暴き出し、魔族の野望を阻止しなければならないのだ!」
剣士「……」
姫騎士「ん? どうした? 何かあるのなら言ってくれ」
剣士「あ、いえ。魔族がわざわざ指輪を盗み出し、王宮を乗っ取ろうなど考えるだろうかと」
剣士「それ以前に盗まれているかどうかも怪しい。調べたと言っても秘宝そのものを確認したわけではないのでしょう?」
執事「え、ええ。それはそうなのですが……」
339
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:13:43 ID:cIw/hk2s
姫騎士「ではこれをどう説明するというのだ?」
剣士「勘違いという事も……」
姫騎士「あれは私が知る父ではない。間違いなく何者かが化けている!」
剣士「そう疑ってしまうのは単に変化の指輪の存在を知ってしまったからではなくて?」
執事「かもしれませんね。ですが、それも水晶があれば明らかになる事なのです」
魔法使い「かもしれない。その程度の理屈に命を賭けろっていうの?」
執事「幾度となく魔族を打ち破った剣士殿なら水晶を持ち去るくらい……」
魔法使い「噂でしか知らない癖によくそんな事が言えるわね」
姫騎士「もういい。私がとってくる。やはりこのような者に頼る事自体間違いだったのだ!」
執事「お、お待ちください! 姫様の身に何かあれば……」
姫騎士「私を誰だか忘れたか。私だって勇者に匹敵する力があると自負しているつもりだ!」
武闘家「ちょ、ちょっと待ってくれよ。何もやらないとは言ってないよな、剣士殿?」アセッ
剣士「え、ああ!」
340
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:15:49 ID:cIw/hk2s
姫騎士「そうなのか?」
剣士「すみません。細かい事が気になってしまう性分ゆえ……」
姫騎士「あ、いや、こちらこそすまん。このような事態は初めてでな」
剣士「でしょうね」
姫騎士「ではやってくれるのだな?」
剣士「……ええ」
姫騎士「ふぅ、最初から素直にそう言ってくれればよいものを……」
剣士「連絡はどう取れば?」
姫騎士「直接城に来てくれて構わない。門番に取り次ぐよう頼んでおく」
剣士「わかりました」
姫騎士「それでは頼んだぞ。吉報を期待している」
341
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:17:18 ID:cIw/hk2s
バタン
剣士「帰ったか……」
魔法使い「なんであんな事言ったのよ?」
武闘家「だって、そう言わなきゃあの姫さんあのまま突っ走っちゃいそうだったし――」
武闘家「断る理由も特にないような気がしてさ」
魔法使い「あるでしょ。姫様の早とちりだったらどうするのよ?」
武闘家「やっぱ二人は勘違いだって思うわけ?」
剣士「そう断定できないから困ってる。ただ、魔族のやり口にしては回りくどいとは思う」
武闘家「それこそ姫様の思い込みで、盗んだのは人間かもしれないぜ?」
剣士「――とりあえず、俺達の方でもこの偽者騒動を調べてみないか?」
武闘家「えー!? 取りに行っちゃえば早いじゃん!」
剣士「まあな。だが、取りに行かず真相がわかればそれに越した事はないだろう」
武闘家「まー、そうだけど……」
342
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:20:33 ID:cIw/hk2s
賢者「武闘家くんの言いたい事もわかりますけどね」
武闘家「だろ!? それにさ、変に嗅ぎまわって怪しまれでもしたら困るじゃん?」
剣士「確かにその危険性はあるが……」
魔法使い「そこまで言うなら貴方一人で取りに行ったら?」
武闘家「えっ、それは……」
賢者「なに意地悪言っているんです。危険な場所にあるって話じゃないですか!」
魔法使い「そうよ。だから行かなくて済むよう考えてるんじゃない」
剣士「あ、いや。俺は少しでも姫様の主張が理解できたらと、それだけだよ」
剣士「納得できれば取りにも行く。真実の水晶そのものに興味もあるしな」
武闘家「わ、わかったよ」
剣士「すまない。俺に時間をくれ」
343
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:22:19 ID:cIw/hk2s
剣士「じゃあ、酒場で話を聞いてくるよ。船の事もわかったかもしれない」スクッ
武闘家「俺も外の空気吸いに行ってこようかな」ガタッ
魔法使い「あ、さっきの話なら気にしないで。冗談だから」
武闘家「大丈夫、わかってるよ」
魔法使い「そう。ならよかった」ホッ
バタン
賢者「……」ジー
魔法使い「なに?」
賢者「冗談なら最初から言わなきゃいいのになって」
魔法使い「うるさいわね! 貴女はどっか行かないの?」
賢者「洗濯物を取り込まないといけないので。あと夕飯の支度もありますし」
魔法使い「夕飯? なんで?」
賢者「剣士さんが外で食べるより、私の作ったご飯の方がおいしいって!」エヘッ
魔法使い「あっそ!!」
344
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:23:51 ID:cIw/hk2s
賢者「剣士さんと言えば…… 船、手に入るんですかね?」
魔法使い「さあ?」
賢者「あ! 姫騎士さんから貰えれば……」
魔法使い「怪しいと思うけど?」
賢者「えー、うーん…… 鳥のように飛べたらなぁ――って、あるかもしれませんよ!」
魔法使い「なにが?」
賢者「風の国にあった転送施設ですよ。隠し通路に使われていた。秘密の!」
賢者「あれと同じような、こちらの大陸と魔王の大陸を繋ぐ転送施設があれば……」
魔法使い「そんな都合のいいものがあると思う? あったとしてどうやって探すのよ?」
賢者「例のエルフさんなら知ってるかもしれません。あの施設を教えてくれたのも彼でした」
魔法使い「で?」
賢者「でって…… 解決じゃありません?」
魔法使い「私はこれを理由にこの旅をやめるべきだって言ってるの。手段がなければ諦めるしかないでしょ、アイツだって」
345
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:26:48 ID:cIw/hk2s
賢者「ただ、生きていればそれでお姉様は満足なんですか?」
魔法使い「私は自分の至らなさでアイツを殺すのが嫌なのよ」
賢者「だったら強くなればいいじゃないですか」
魔法使い「無茶言わないで。そもそもそこまでして魔王に挑む必要ってある?」
賢者「ないと思います」
魔法使い「そう。ないのよ――って、えぇ!?」ビクッ
賢者「勝てるかどうかわからない魔王に挑むより、勝てる事がわかった侵攻部隊を迎撃していた方がいいって言うんでしょ?」
賢者「でもそれじゃ駄目なんです。この戦いは終わらない。長引けばもっと多くの人が……」
魔法使い「夢見る少女の戯言よ。理想でしかないわ」
賢者「だから現実にしたいんじゃないですか。――それに、もう夢物語なんかじゃない」
賢者「お姉様は言いましたよね。剣士さんは勇者を越えたって。それって私達次第で魔王に勝てるって事じゃないですか!?」
魔法使い「それは力あるものだけが言えるセリフよ。出来る事を言いなさいよ!」
賢者「私は振り向かないと決めたんです。ブーブー言うだけのお姉様に、あーだこーだ言われる筋合いはありませんよ!!」
346
:
◆49HRmRlKYE
:2018/06/29(金) 06:31:59 ID:cIw/hk2s
魔法使い「そこまで言う!?」
賢者「た、確かに言い過ぎました。すみません。でも私は……」
魔法使い「もういいわ」
賢者「……」
魔法使い「そろそろ夕飯の支度をしなきゃいけないんじゃない?」
賢者「あ、洗濯物も取り込まないと……」
魔法使い「それは私がやっておくから」
賢者「じゃあ、お願いしますね」タッ
魔法使い「……」
魔法使い「貴女に言われなくたってわかってる。私だって力になりたい。でも……」クッ
347
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/30(土) 20:04:07 ID:gukQqP4Y
続いた━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ってたよ!
348
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:34:04 ID:vm1yjPNU
待っていてくれたなんて、こんなに嬉しい事はないです!
遅くなって申し訳ない!
349
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:35:10 ID:vm1yjPNU
酒場――
カランカラン
マスター「おお。いらっしゃい」
マスター「すまんな。アイツ等からまだ連絡来てないんだ。伝わってるとは思うんだが……」
剣士「わかりました。それよりも聞きたい事が……」
マスター「なんだい?」
剣士「ここ最近で王宮に何か変わった事はありませんでしたか?」
マスター「王宮で? いや、聞かないな。姫様のおてんばは相変わらずらしいし――」
マスター「んー、しいて言えば騎士団がよく働くようになったくらいかね?」ハハッ
剣士「ここ最近で?」
マスター「ああ。なんでも周辺警護の強化とかで頻繁に出撃しているよ。ちょっと前までは余程の事がない限り動いちゃくれなかったんだがね」
剣士「どうして急に?」
マスター「さあ? 剣士殿のご活躍に感化されたから、とかじゃないのかい?」
350
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:36:40 ID:vm1yjPNU
剣士「納得できるものなんですか、それで?」
マスター「納得も何も、悪い事じゃないからね。お陰で街の不安は払拭されているし――」
マスター「騎士達も納得して任務にあたっている様子だったよ」
剣士「そうですか……」
マスター「そんな事を気にするなんて、何かあったのかい?」
剣士「あ、いえ、俺が訪れるところはどこも魔族の被害を受けていたので……」
マスター「アハハッ! それじゃ近いうち何か起こるかもしれんな」
剣士「(これだけを聞くと魔族が国王に代わっているとは思えないな。例のエルフも依然として姿を現さない――)」
剣士「(いや、もうエルフと決めつける事も出来ないのか。本当に変化の魔道具が存在しているのだとしたら……)」
マスター「すまん、すまん。冗談だよ。そんな怖い顔しなさんなって」
剣士「あ、すみません。――それじゃ、俺はそろそろ行きます。ありがとうございました」
マスター「ああ、またのお越しを――って、何か飲んでいけばいいのに」ハハッ
351
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:39:16 ID:vm1yjPNU
部屋 夜――
剣士「という話をマスターから聞いたんだが、どう思う?」
賢者「うーん、そう言われましても……」
武闘家「騎士団がよくなったのは国王が何者かに代わったからなのか?」
賢者「王としての自覚が芽生えたとも言えるんじゃないですか?」
魔法使い「魔族に結び付けるなら、計画を実行するにあたり信頼を得る必要があったとか?」
剣士「やはりこれだけじゃ何とも言えないよな。もう少し探ってみるか……」
武闘家「んな悠長に構えてて大丈夫なのかよ?」
剣士「どうだろう」
武闘家「やっぱ取りに行っちゃう方が早いんじゃない?」
剣士「それもなぁ……」
352
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:40:19 ID:vm1yjPNU
賢者「剣士さんにしては珍しいですね」
剣士「慎重になりすぎているのはわかってる。わかっているんだが……」
剣士「(納得できない事に賢者達を付き合わせたくないんだよな。かといって俺一人で盗み出せる代物でもないだろうし――)」
剣士「(そうでなくても、また単独行動するわけには……)」チラッ
魔法使い「ん? 慎重なのはいい事だと思うわよ」
剣士「そうだよな」
魔法使い「うん。何時何時までとは言われてないし」
賢者「催促はされそうですけどね」
魔法使い「それまで気楽にやっていけばいいじゃない?」
賢者「うーん、それでいいんでしょうか……」
剣士「すまない。もう少しだけ時間をくれ」
武闘家「んー……」
353
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:41:55 ID:vm1yjPNU
翌日 朝――
剣士「よし、今日は騎士団の後をつけてみようと思う!」グワッ
魔法使い「なによ、いきなり!?」ビクッ
剣士「彼等の行動を探れば何かわかるかもしれない。王宮の様子も聞けたら聞いてみる」
魔法使い「流石に騎士達に接触するのは不味いんじゃない?」
剣士「そうか。……じゃあ遠くから騎士団の様子をうかがうだけにするよ」
魔法使い「うん。とりあえず今日はそうしたら?」
剣士「――ところで武闘家は?」
賢者「修行するぞーって朝早く出かけていきましたよ」
魔法使い「ほんとに修行?」
賢者「気にしすぎですよ。昨日だってちゃんと帰ってきたじゃないですか」
魔法使い「わかってるんだけど……」
354
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:43:31 ID:vm1yjPNU
剣士「勇者が隠し場所に選んだ祠だ。おそらく魔法の罠をはじめとした難解な罠が仕掛けてある可能性が高い」
剣士「そんな場所に一人で行こうとは思わないだろう。大丈夫だよ」
魔法使い「待って。そこまで考えてるかしら?」
剣士「考えないかな?」
魔法使い「わからない。まだ付き合い短いし……」
剣士「あー、見に行ってこようか?」
魔法使い「貴方は他にやる事があるでしょ?」
剣士「しかし……」
賢者「待ってみませんか。疑うのは失礼ですよ」
魔法使い「そうよね。考えすぎよね……」
剣士「じゃあ俺はさっき話した通り騎士団を追ってみるよ」
魔法使い「え、ええ」
355
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:45:16 ID:vm1yjPNU
夕方――
魔法使い「ねえ、どこで修行してるとかは聞いてないのよね?」
賢者「え!? ええ、聞いてないですけど……」
魔法使い「修行にしては帰り遅くない?」
賢者「大丈夫ですよ。行ってないですって!」
魔法使い「なくはないでしょ? もしこれで死んじゃったら……」
賢者「縁起でもない。やめてくださいよ――って、あー!!」
魔法使い「なに!?」
賢者「あ、いえ、食材の買い忘れがありまして……」
魔法使い「なんだ、そんな事か……」
賢者「一大事ですよ。買いに行ってきます!!」ガタッ
魔法使い「こっちは気が気じゃないのに、もー!!」
356
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:47:12 ID:vm1yjPNU
街――
賢者「まだ市場やってるかな。急がないと。もう陽が沈みそう――って、ああー!」ビシッ
武闘家「おおぅ!?」バッタリ
賢者「こんなところで何してるんですか。お姉様が心配していましたよ。一人で祠に行ったんじゃないかって!」
武闘家「あー、それなんだけどさ……」
賢者「どうしたんですか?」
武闘家「ジャジャジャジャーン!!」ドーンッ
賢者「え……?」
武闘家「アハッ、アハハハッ!!!」アセッ
賢者「手に持っているのって、まさか……っ!?」
武闘家「そう、そのまさか――、真実の水晶さー!!」
賢者「ええーっ!?」
357
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:49:09 ID:vm1yjPNU
武闘家「すげーだろ。どやー!」
賢者「本物なんですよね?」
武闘家「多分な。確かめようにも偽ってる人間がいなきゃ確かめようがないし――」
武闘家「あっ、賢者ならわかるんじゃないか。見てみてくれよ」スッ
賢者「うーん、とてつもない魔力が秘められている事はわかりますけど」ジーッ
武闘家「マジかよ! んじゃ、やっぱこれって……」
賢者「ええ、どちらかと言えば本物っぽいですかね」
武闘家「やったぜ!」
賢者「……」
武闘家「やっぱ不味かったかな?」
賢者「そうですね。せめて何か一声欲しかったです」
武闘家「けど言い出せる雰囲気じゃなかったし、俺が引き受けちまったようなものだったからさ」
358
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:50:26 ID:vm1yjPNU
賢者「気にしすぎですよ」
武闘家「ごめん。居ても立っても居られなくて……」
賢者「それにしてもよく盗み出せましたね。大昔の勇者が隠したなんて言われていたのに!」
武闘家「ほ、褒めんなよ。照れちゃうじゃん////」
賢者「魔法の罠とかなかったんですか?」
武闘家「なんだよ、それ? 確かに罠はいくつも仕掛けられてあったけど――」
武闘家「落とし穴とか、鉄球が転がってくるとか、そんな古典的な罠しかなかったぜ」
賢者「あれ? じゃあ剣士さんの杞憂だったって事ですか……」フム
武闘家「考えすぎなんだよ、剣士殿は!」アハハッ
賢者「否定はしませんけども……」
359
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:52:52 ID:vm1yjPNU
武闘家「んじゃ、これ姫様に渡してくるな」
賢者「待ってくださいよ。二人には話さないんですか!?」
武闘家「だって気まずいじゃんか。それに、どうせ姫様の勘違いだよ」
武闘家「魔族だったとしても正体を確かめるだけで戦いはしないだろ? 大丈夫だって!」
賢者「そうでしょうか……」
武闘家「頼む。事件を解決した後の方が気持ち楽なんだよ。今謝るのも後で謝るのも変わんないって!」
賢者「万が一って事もありますし、やっぱり話した方が……」
武闘家「魔族の犯行だって思うわけ? そもそも国王が本当に入れ替わってるとも限らないって言ってたじゃーん!!」
賢者「そりゃ、まぁ……」
武闘家「お願いだ。俺にカッコつけさせてくれー!!」ドゲザッ
360
:
◆49HRmRlKYE
:2018/07/18(水) 20:54:54 ID:vm1yjPNU
賢者「カ、カッコつけるって??」
武闘家「この王宮お騒がせ偽者騒動は俺が解決したぜ――って告白する方がカッコイイじゃーん!!」
賢者「そういう事ですか。――わかりましたよ。でも一つ、条件があります」
武闘家「なんだ! 馬のフンでもにぎりゃあいいのか?」
賢者「気持ち悪い事を言わないでください。そうじゃなくて、私も一緒にいきます」
武闘家「へ? それが条件なの?」
賢者「この事を二人に黙っているなんて私には出来ませんからね……」
武闘家「すまねえ。恩に着るぜ」
賢者「じゃあ行きましょう」
武闘家「おう! サクッと依頼達成して帰ろうぜ。あと後で一緒に謝ってくれい」
賢者「それは嫌です……」
361
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/10(金) 22:32:29 ID:gSDabTo2
追い付いた
362
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:25:48 ID:ASSFgiHY
城門 夜――
賢者「あのー……」コソッ
門番「ああ、君達あれだろう。話は聞いているよ。姫様が頼んでた骨董品を届けにきた冒険者だよね?」
賢者「え、ええ」
門番「こんな夜遅くまでとは可哀想に。どれだけ急かしてるんだか、あの馬鹿姫は」ボソッ
賢者「え……?」
門番「あー、申し訳ない。急ぎだというのに。ささ、中へどうぞ」アセッ
門番「入ったら係りの者が案内しますので指示に従ってください。くれぐれも無礼のないように」
賢者「あ、はい」
武闘家「そういう話で通してたのか。本当の事は言えないもんな」
賢者「(もしかして姫様は城の者に好かれていない?)」
363
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:26:45 ID:ASSFgiHY
城 客室――
姫騎士「おお。待ちかねたぞ」
武闘家「これがそうです」スッ
姫騎士「ほう、これが……!」パシッ
姫騎士「しかし、見た目だけではわからんな。ただの丸玉の水晶にしか見えんぞ?」
執事「学者に調べさせますか?」
姫騎士「馬鹿を言え。どう説明するつもりだ。彼等を信用していないわけでも――」
姫騎士「ん? そう言えば剣士の姿が見えんがどうかしたのか?」キョロキョロ
武闘家「あー、それはその…… そうだ。あの後すぐ高熱出しちゃって!」アセッ
賢者「え゙?!」
姫騎士「私が帰った後に風邪を? では誰がこの水晶を?」
武闘家「俺です。俺が剣士殿の代わりに取ってきました!」
姫騎士「疑うわけではないが、本当なのか?」
武闘家「剣士殿の辱めるような事をするわけないじゃないですか。信じてください!」
364
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:30:07 ID:ASSFgiHY
賢者「なに嘘ついているんですか」ボソッ
武闘家「俺が取ってきたのは事実だろ?」
姫騎士「よし、確かめてみるか!」グッ
賢者「い、今からですかっ!?」
姫騎士「ああ。この時間なら王はもう寝室に戻っているはず。都合がいい。ソナタ達も一緒に来てくれるな?」
武闘家「はい。もちろんです!」ガタッ
賢者「だ、大丈夫なんでしょうか?」
武闘家「心配性だなあ。寝込みを襲うんだぜ。大丈夫だろ?」
武闘家「それによ、変化を使って王宮を陥れようとするような奴が強いとは思えないぜ」
賢者「まぁ、確かに……」
姫騎士「何してる。行くぞ」
武闘家「今行きます! ――大丈夫だって。行こうぜ!」
賢者「え、ええ」
365
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:32:42 ID:ASSFgiHY
寝室 前――
武闘家「見張りが二人いますぜ。――って、国王の寝室にいなかったら逆におかしいか」
姫騎士「水晶が反応しない。ではあれが真実の姿か。魔族であれば切り捨てるのだが……」
執事「本物の近習相手にそれは出来ませんね。ここは訳を話して通してもらいましょう」
姫騎士「信じると思うか? 私は思わんな。ここは少し荒っぽいが……」チャキッ
執事「暴力はいけませんよ。それに上手くいくかどうか……」
武闘家「俺と姫様が同時に飛び掛かれば、と思ったけど。確かに絶対じゃないか(姫様の実力知らねえしな)」
賢者「なら私に任せてもらえませんか?」
執事「何か策があるのですか?」
賢者「策と呼べるほどのものじゃないんですけど、魔法で眠らせてみます」
姫騎士「催眠術が使えるのか?!」
賢者「た、たぶんですよ。成功するかちょっと自信ないんですけど……」
姫騎士「まあいい。物は試しだ。執事もいいだろう、眠らせるだけなら?」
執事「そうですね。それなら、まあ……」
366
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:36:01 ID:ASSFgiHY
賢者「では唱えますよ! でやあ!!」パァ
ナンダ マブタガ キュウニ オモク… バタッ
賢者「ふぅー、よかったぁ。ちゃんと眠ってくれました」ホッ
姫騎士「見事なものだな。あの二人を眠らせるとは、大した魔導師じゃないか!」
賢者「お姉様に負けていられませんからね」フフン
姫騎士「部屋の鍵は近習が持っているはず…… よし、あった」ゴソゴソ
武闘家「なあ、ここまでして姫様の勘違いだったら困っちゃうな」ボソッ
賢者「こんな時に何言ってるんですか!?」
武闘家「いやだってその可能性もないわけじゃないだろ。むしろその方が高いっつーか……」
賢者「それならそれでいいじゃないですか。何もなかった事がわかるだけでも」
武闘家「あー、だよな。ごめん、なんか落ち着かなくって。緊張してんのかも」ハハッ
姫騎士「おい、静かにしろ。突入するぞ」
武闘家「あ、すみません!」アセッ
ガチャ キィ
367
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:37:22 ID:ASSFgiHY
寝室――
姫騎士「暗くてよく見んが、ベッドはあそこだな……」ジリッ
パッ!
姫騎士「ま、まぶしっ!? 燭台に火が、どうして急に……」ビクッ
国王「夜遅く、それもノックもせずとは一体何事だ。訳を話しなさい、我が娘よ」
賢者「(見つかった!? というより来る事が最初からわかっていたような……)」ゾッ
姫騎士「娘だと!? どの口がほざく。貴様の正体はわかっているんだぞ!」
国王「何を寝ぼけておる?」ハハッ
姫騎士「笑っていられるのも今のだけだ。これを見ろ!!」バン
国王「ほう、それは真実の水晶。手に入れたのか……」ジッ
賢者「不味いっ!?」
姫騎士「水晶よ、真実の姿を映したまえ!!」ピカー
368
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:39:16 ID:ASSFgiHY
呪術師「やれやれ。思ったより早かったの。さて、どうしたものか……」フゥ
武闘家「老けやがった!? おっさんが爺になるとは、水晶は玉手箱だったーっ!?」
賢者「何言っているんですか。よく見てください」
賢者「あの頭に生えた角に、エルフほどじゃありませんが縦に伸びた耳。あれは――」
武闘家「人魔の魔族だよな。やっぱ見間違いじゃなかったか。こいつはたまげたぜ」
賢者「ええ。最悪の事態です……」
武闘家「いや、そうとも限らないぜ。人魔ならまだ何とかなる。人魔は戦闘に不向きな魔族。見た目通り、実力も人間と大差ないぜ」
賢者「確かに一般的にはそう言われています。ですが、あのお爺ちゃんは違う――」
賢者「一瞬で、それも正確にこの部屋にあるすべての燭台に魔法で火を灯しました」
武闘家「そんなに凄い事なのか? 一見、戦いにはなんの関係もなさそうだけど」
賢者「あれが警告だとしたら? 感じるんです。計り知れない異様な魔力を……」
呪術師「ほう。儂の魔力をそのように感じ取る者がいるとは……」
369
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:40:41 ID:ASSFgiHY
姫騎士「気圧されるな。しっかりしろ」
武闘家「そうだ。数じゃこっちが勝ってる。それにどんな魔力秘めてようが所詮は人魔だぜ」
賢者「や、やらないとは言っていませんよ!」
賢者「(わかってる。ここで怖気づくようじゃ剣士さんの力になんて一生なれっこない。だけど、この不安感は……)」
呪術師「見事な覚悟じゃが、儂が三魔将の一人、灰の呪術師だと知ってもまだそう申すか?」
武闘家「は? なんだ、それ?」
呪術師「やはり知らんか。この時代から生まれた新たな地位じゃし、驚きはせんが……」
賢者「名を冠した将軍? 四天王のような実力者だと言いたいんですか?」
呪術師「わかってもらえたようじゃな。その通り、実力も四天王に優るとも劣らないと言われておる」
姫騎士「なるほど。虚勢を張ってこの場から逃げようという魂胆か。如何にも人を欺いてきた奴が言いそうなセリフだ!」
呪術師「勘違いしておるようじゃが、儂はこの国を滅ぼそうとは思っておらん。少し利用させてもらっただけじゃ」
370
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:43:31 ID:ASSFgiHY
姫騎士「黙れ。どう言い逃れしようと貴様は我が国を愚弄した。その事実は変わらん!」
呪術師「やはり戦いは避けられぬか。なれば致し方なし――」
呪術師「場所を移すとしよう。ここは戦いづらいのでな。よいか?」
姫騎士「仲間と合流する気か!」
呪術師「はて? 水晶を使い確認したのではないのか? 魔族はこの王宮に儂一人じゃよ」
武闘家「たった一人で乗り込んできたってのか!?」
呪術師「言ったはずじゃ、四天王にも劣らぬと。その気になれば儂一人でこの王宮など落とせる」
姫騎士「減らず口を! どこでも変わらん。この場で叩き斬ってやる!」ダンッ
呪術師「戯けが!!」ボシュッ
姫騎士「ぐわあああ」ドシャアア
呪術師「やれやれ。お主のせいで豪奢な寝室が台無しになってしまったではないか」
賢者「なんて早い火球!? そうか。炎系魔法を極めた魔導師、だから灰の……」
呪術師「これでわかってもらえたかの。なぜ儂が三魔将と呼ばれ恐れられておるのか」
371
:
◆49HRmRlKYE
:2018/08/20(月) 23:49:51 ID:ASSFgiHY
姫騎士「なんだ、あれは。一瞬チカっと光ったと思ったら火の玉が目の前に……」ヨロッ
呪術師「ほう。加減したとはいえ自力で立ち上がれるとは……」
姫騎士「当たり前だ。鍛え方が違う!」
呪術師「まったくじゃよ。流石は王宮に伝わる秘宝の鎧と盾じゃ。魔法を軽減する効果が付与されておったとは恐れ入ったわ」
呪術師「それを快く与えてくださった優しきお父様に感謝する事じゃ、姫騎士よ」
姫騎士「き、貴様ァ!!」バッ
呪術師「待て待て、今度はボヤではすまなくなるぞ」
姫騎士「くっ!?」ピタッ
呪術師「ついてまいれ。そちらもそれでよいな?」
武闘家「ああ、いいぜ」
賢者「執事さん、戦いの間他の人が近づかないようにしてもらえますか?」
執事「ええ、そうするつもりです。――ですから姫様の事を頼みます。どうか」ペコッ
賢者「……はい」
372
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:16:14 ID:lS6htfpE
玉座の間――
武闘家「ここは玉座の間か?」
呪術師「城内で戦うのであればここしかあるまい。偽の国王との決着をつけるわけじゃしな」
姫騎士「またも愚弄して……!」ギリッ
呪術師「半分は冗談じゃよ。儂等の戦いに他の者を巻き込みたくなくてな。ここならその心配もない。何より戦いやすかろう」
呪術師「まあ城外で戦えるのが一番じゃが、それは儂を逃がすのと同義。困るのじゃろ?」
武闘家「凄い自信だな、爺さんよ」
呪術師「自信がなければここにはおらんよ。――そうじゃ儂は半端な覚悟で来たのではない」
呪術師「お主等には悪いが、ここで終わるわけにはいかんのじゃ」
賢者「それは私達も同じです。引けない理由がある」
呪術師「この国にそこまで肩入れする事もなかろうに。――まあよい。そろそろ始めよう。夜が明けては騒ぎになる」
賢者「(ついに始める。剣士さん不在の魔族戦。出来る限りを全力でやれば、きっと!)」
373
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:17:45 ID:lS6htfpE
賢者「(だけど、どう戦う? 魔法から身を守るには魔法と言うけど、力の差は歴然――)」
賢者「(こちらの魔法で相手の魔法を相殺できるとは思えない。いや、完全に防げなくたっていい。少しでも軽くなれば、それで)」
賢者「(そうだ。私には治癒魔法だってある。守りに徹しよう。そうと決まればつかず離れず一定の距離で二人の援護を……)」チラッ
武闘家「先手必勝、いくぜ!」ダンッ
賢者「ちょっ!?」
武闘家「(悪いな、賢者。こうなっちまったのは俺のせいだ。見栄を張ったばっかりによ)」
呪術師「勇ましいの。策があっての特攻か、それとも……」フム
武闘家「(大丈夫。あれくらいの火球、俺なら躱せる。食らったって一二撃なら……)」
武闘家「自分のケツは自分で拭く。懐に飛び込んじまえば魔導師なんてー!!」ダッ
呪術師「ではいくぞ」スッ
武闘家「構えたな。杖の向きからして射線は……」バッ
呪術師「ほあ!!」キラン ドカーン
武闘家「か、火球じゃない!? こ、これは…… ぐおおああああ」ズシャアア
姫騎士「なんだ、火の塊が現れたと思ったら爆発したぞ!?」
賢者「広範囲の爆発魔法です、それも最上級の。それをあれほど短い詠唱時間で唱えてしまうなんて、そんな……っ!?」
374
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:19:06 ID:lS6htfpE
武闘家「くそ、なんなんだよ、あれは……」ヨロリッ
賢者「動かないでください。今、治癒しますから……」タッ
呪術師「一か所に固まらず、ばらけた方がいいと思うがの」スッ
武闘家「くんな。巻き込まれちまうぞ!」
賢者「で、でも……!」
呪術師「ほあ!」キラン ドカーン
姫騎士「二人とも下がれ!」ドン!
賢者「ぎゃあ!」コケッ
姫騎士「くっ……」ズサッ
武闘家「おい、大丈夫か!?」アセッ
姫騎士「心配には及ばん。聞いていただろう。この鎧と盾には魔法を軽減する効果がある。これくらいなんともない……」フラッ
375
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:21:36 ID:lS6htfpE
姫騎士「二人は?」
賢者「大丈夫です。お陰で助かりました。ありがとうございます」
武闘家「ご、ごめん。俺、何とかしなきゃって思って、その……」
姫騎士「いや謝るのは私の方だ。自分の力を過信したばかりに、こんな事になってしまった」
武闘家「謝る事じゃねぇよ。俺だってそうさ。相手を甘く見てた」
姫騎士「力を合わせよう。悔しいが私の力だけでは奴には敵わん。だが三人なら!!」
武闘家「そうだな。俺ももう自分だけで何とかしようとは思わない。協力するぜ」
賢者「その前にこれを」パァ
武闘家「傷が、治っていく……」
姫騎士「驚いた。治癒魔法も使えるのか?」
賢者「ええ。こう見えても私は魔導のエキスパート。攻撃魔法はもちろん、治癒魔法や補助魔法だって使えます」
姫騎士「本当に頼もしいな。――よし、これなら勝てる。絶対に!」
376
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:23:25 ID:lS6htfpE
呪術師「(頼もしいか。確かに。正直ここまでやれる人間がおるとは思わなかった)」
呪術師「(儂が見るに二人は勇者に近い力を持っておる。ただの人間がこれほどの力を持つなど本来あり得ん)」
呪術師「(契約せずして何故? まさか、儂等と同じように秘術の力で――いや、それこそあり得ん話か)」
姫騎士「反撃開始だ。いくぞ!」
呪術師「(いかん。覚悟を語っておきながら態勢を整える時間を与えてしまうとは……)」
武闘家「だけど本当にいいのか?」
姫騎士「私の事は気にするな。賢者のサポートもある。とにかく今は勝つ事だけに集中しろ」
武闘家「わ、わかった。無理はすんなよ」バッ
呪術師「(姫騎士を先頭に縦一列に並んだ? なるほど。防御力の高い姫騎士を盾にし、儂の懐に飛び込もうという作戦か)」
姫騎士「奴の魔法はすべて私が!」
賢者「防具に付与された軽減効果に加え、私の魔法でさらに守りを固めれば……」
武闘家「あとの事は任せろ。近づけりゃ魔導師なんて敵じゃない!」
呪術師「やれやれ。困ったものじゃな。どこまで火力を上げてよいものか……」
377
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:25:47 ID:lS6htfpE
姫騎士「突撃ィー!!」タンッ
呪術師「ほああ!」キラン ドカーン
姫騎士「ぐぅっ、流石は賢者だ。先ほどよりダメージが少ない。これなら……」タッ
賢者「(二段構えなのに完全には防げなかった。詠唱速度が違いすぎる。時間があればもっと強力な結界が唱えられるのに……)」
呪術師「無茶な事をする」ドカーン
姫騎士「ぐっ!? まだだ、まだ私は……」グッ
武闘家「耐えてくれ、姫様。あと少し、あと少しで!」ジリッ
呪術師「(むっ、これ以上は姫の体が持たんな。ここまでか……)」ドカーン
姫騎士「ぐわああっ!」ガクッ
賢者「ひ、姫騎士さんっ!!?」アセッ
姫騎士「い、いけッ! 武闘家ァー!!」
武闘家「この距離、もらったァ!!!」ダンッ
378
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:26:33 ID:lS6htfpE
呪術師「本当によくやりおる。じゃがの――ッ!」
ヒラリッ
武闘家「躱された!? でも、まだだ。取りついちまえば!」ブオンッ
呪術師「なんて鋭い殴打じゃ。やはり普通ではないの……」ヒラリッ
武闘家「くそっ、どれも紙一重で躱される。なんなんだよ、この爺さんは!?」ブオッ ブンッ
呪術師「むッ、壁か……!」ピタッ
武闘家「追い詰めた。これでぇ!!」グアッ
呪術師「甘いぞ!」フワッ
武闘家「飛んだ!? 嘘だろ……」スカッ
呪術師「残念じゃったな。風の魔法を纏えばこのような動きも出来る」スタッ
賢者「風の魔法まで自在に使いこなすなんて。それもグリフォンの翼のように……」
武闘家「くそ、くそォッ!!」
呪術師「もうよいじゃろ。その真実の水晶を渡してくれればお主等の事は見逃す、じゃから――」
姫騎士「そんな事、誰がするものか……っ!」ヨロッ
379
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:28:09 ID:lS6htfpE
姫騎士「あと少しだったじゃないか。もう一度だ。もう一度、同じ方法で……」
呪術師「治癒魔法とて限度がある。あれは人の治癒能力を高めているだけに過ぎん。負った傷に応じ体力を消耗する。もう同じようには動けんじゃろ」
姫騎士「そ、そんな事は……」フラフラッ
呪術師「それに武闘家の攻撃ではな。惜しい所まで来ておるんじゃが、儂を仕留めるにはあと一歩足りん」
武闘家「くっ……!」
呪術師「命を奪うつもりはない。素直に負けを認めてくれんか?」
武闘家「そいつは素晴らしい申し出だけどよ。断るぜ、爺さん」
呪術師「無駄に体力を消耗するだけじゃぞ?」
武闘家「そんな事もねぇよ。爺さんが言ったんだぜ。俺の攻撃はあと一歩足りないって。つまりそれってあと少し強くなりゃ通じるって事だよな?」
呪術師「先ほどの攻撃は全力ではなかったと?」
武闘家「いや全力だったさ。だから限界を越える!」
呪術師「越える? ま、まさか……」
武闘家「賢者、俺に身体能力強化の魔法をかけてくれ!!」
380
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:30:36 ID:lS6htfpE
賢者「え……っ!?」
武闘家「補助魔法も使えるって言ったよな?」
賢者「言いましたけど、あれは……」
呪術師「その子の言う通りやめるべきじゃ。あれは肉体にかかる負担が大きすぎる」
呪術師「勇者達が強化負荷に耐えられるのは、再生の力を持つ女神の加護のお陰なのじゃぞ!?」
呪術師「強化魔法の強さにもよるが、常人が使えばどうなるか……」
武闘家「悪いな、爺さん。俺の体はそんなやわに出来ちゃいないぜ」
呪術師「待て。儂はお主等を殺す気はない。水晶を渡し、儂を見逃してくれさえすれば……」
武闘家「そういうわけにもいかねぇんだよ。――さあ、やってくれ。覚悟は出来てる!」
賢者「や、やれと言われましても……」
381
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:32:35 ID:lS6htfpE
賢者「(確かに強化魔法を唱えればこの状況を打破できるかもしれない。けど武闘家くんの体が魔法に耐えられる保証はどこにも……)」
賢者「(それに使えると言っても人に使った事はない。昔、練習で虫にかけただけ――)」
賢者「(力の加減を間違えばあの時のバッタのように、今度は武闘家くんの体が……)」
武闘家「構う事ないぜ。どの道これしか手は残ってねぇんだ!」
賢者「む、無理です。出来ませんよ。私にはとても……」
武闘家「頼むよ。俺も誰かの期待に応えたいんだ。ここで終わったっていい。だから!」
賢者「うっ……」
呪術師「自信がないのなら尚更やめるべきじゃ。自身の手で仲間を壊したくないじゃろ!?」
賢者「どうしたらいいの? 私はどうしたら……」
武闘家「ぶっ壊れたっていい。やってくれ、賢者!!」
賢者「剣士さん、私は……」ギュッ
382
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:34:51 ID:lS6htfpE
剣士「――呼んだか?」ザカッ
賢者「あ、ああ、あぁ……」ペタン
武闘家「嘘だろ。本当に、本当に剣士殿なのか……?」
剣士「待たせたな。あとは俺に任せろ」
武闘家「気を付けてくれ。相手は三魔将とかいうとんでもねぇ手練れだっ!!」
剣士「名を冠した魔族の将だって……?」ジッ
呪術師「ほう、あれが噂に聞く。この国にいるというのは本当じゃったか……」
剣士「(魔族なのか? そうか、あれが人魔族か。聞いてはいたが本当によく似ている)」
剣士「(細かな差異はあるが骨格は同じだ。ここまでくると似ているというより――)」
剣士「(いや、考えるのは後だ。こいつは賢者をいじめた。その報いは誰であろうと受けてもらう)」チャキッ
魔法使い「作戦はどうする? 私は貴方のサポートに徹した方がいいわよね?」
剣士「それより賢者達の手当てを頼むよ」
剣士「それと流れ弾が飛んでくるかもしれない。君の魔法で守ってあげてくれないか?」
383
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:36:56 ID:lS6htfpE
魔法使い「ちょっと待って。一人で戦うつもりなの?」
剣士「ああ。相手は魔導師なんだよな? なら試してみたい事がある」
魔法使い「試すってあれの事? 冗談でしょ!?」
剣士「本気だよ。実戦でなければ意味がない。――下がっていてくれ」
呪術師「(仲間を後退させた。何を考えておる? まさか、決闘のつもりか……?)」
呪術師「(随分と慢心しておるな。四天王を打ち破った自信からじゃろうが――)」
呪術師「(装備は貧弱、鎧はおろか盾すら持たずどう魔法に対抗するつもりじゃ。剣のみで勝てるほど魔族の魔導師は甘くないぞ)」
剣士「……」ジリッ
呪術師「(間合いを測っておるな。残念じゃが、そこはもう儂の距離じゃよ)」スッ
呪術師「ほああ!!」キラン バーン
剣士「――!」ヒラリ
呪術師「な、なんじゃと!?」
剣士「確かに恐ろしいな。あの詠唱時間で、これほど強大な魔法を撃てるのか」
384
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:39:12 ID:lS6htfpE
呪術師「(広範囲の爆発魔法を見てから躱すなど勇者とて不可能――)」
呪術師「(じゃが奴はいとも簡単に、態勢を崩す事もなく躱しおった?!)」
剣士「(試しに撃たせてみたが危なかったな。狭い場所であれを撃たれたら躱しようがない)」
剣士「(やはり定石通り詠唱を潰すしかないか。問題は潰せるのかどうか、か)」ジリッ
呪術師「偶然か、それとも……」スッ
剣士「(いけるか?)」タンッ
呪術師「早い!?」ビクッ
剣士「――ッ!」ザン
呪術師「ぐっ、かすめた……」ブシュ
剣士「やるな。爺の身のこなしじゃない!」バッ
呪術師「風の魔法を纏い、距離を置いて態勢を……」フワッ
剣士「離脱? ――させるかッ!」タンッ
385
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:40:42 ID:lS6htfpE
呪術師「なんと!?」ビクッ
剣士「悪手だったな。その足運びでは躱せまい!」ザンッ
呪術師「魔法での移動に追いつくじゃと…… ぐ、ぐおぁ!?」ドシャー
剣士「終わりだ!」バッ
呪術師「なんて力じゃ。同等などではない。剣士は既に勇者など遥かに越えて……」
呪術師「じゃが、じゃがのーッ!!」ボシュ
剣士「く――ッ!」キン
呪術師「き、切り払い――、弾いたじゃと!?」
剣士「詠唱が異様に早いとは言え、瞬時に撃てる魔法はこの程度が限界か」
呪術師「儂の火球を、この程度とあしらうか!?」
剣士「勝負あったな」チャキッ
呪術師「甘く見ておったのは儂の方か。紅蓮の剣士、これほどとは……ッ!!」
386
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:42:40 ID:lS6htfpE
武闘家「化け物かよ……」
魔法使い「ほんとにね。だけどそれは今更なんだって気づいたわ。既に剣士は三度も魔族を撃退している」
武闘家「だからってここまでか? 次元そのものが違うじゃねぇか!?」
賢者「そう感じるのは相手が魔導師だったからかもしれません」
武闘家「え?」
賢者「剣士さんは詠唱段階で魔法の種類がわかるんですよ。ですから――」
武闘家「先読みって事か? けど、そんな事出来んのかよ?」
魔法使い「無理よ。どんなに優れた魔導師でも完全に読み切る事は出来ない」
賢者「お姉様にも、ですか?」
魔法使い「私どころか御婆様――いえ、あの勇者ですら不可能でしょうね」
賢者「え゙っ!?」
387
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/06(木) 21:46:30 ID:lS6htfpE
賢者「勇者様でさえ出来ない事を、どうして剣士さんが……?」
魔法使い「あれが勇者を倒す為に身に着けたものだから、としか言えないわ」
賢者「勇者様を倒す??」
魔法使い「べつに勇者が憎くて殺したかったわけじゃないわ。ただ純粋に勇者に勝ちたかったのよ、アイツは」
賢者「剣士さんは勇者様と戦った事があるんですか?」
魔法使い「勇者のちょっとした勘違いでね。なんでも、剣士を山賊と間違えたとか」
賢者「二人は婚約していたんじゃ……」
魔法使い「あの頃はまだ話だけで、勇者は剣士の顔を知らなかったのよ」
魔法使い「で、結局その誤解は解けず戦う事になって。剣士は負けた。勇者の使う神の魔法に手も足も出ずに」
武闘家「だから相手の魔法を丸裸にする技術を身に着けたってのか!?」
魔法使い「ええ、そうよ」
武闘家「ぶっ飛んでやがる……」
魔法使い「(確かに今ならそう言わざるを得ない。あの頃は感知できたところで身体がついていかず躱す事は出来なかった)」
『ただ生きていればそれでお姉様は満足なんですか?』
魔法使い「(それだけじゃないわ。私はアイツに必要とされたい、求められたい。だけど、こんなひどい差を見せつけられてどうしろと言うのよ……)」
388
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/07(金) 19:39:44 ID:QqNxW/y6
乙
389
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/15(土) 15:35:45 ID:qzu5qn1A
乙
390
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:06:37 ID:8EiFUDXQ
呪術師「何故殺さん。決着はついたはずじゃ」
剣士「聞きたい事がある。アンタの目的はなんだ。どうして国王なんかに……?」
呪術師「何かと思えばそんな事か……」
呪術師「戦略的な意味はない。人手が欲しかっただけじゃ。儂一人では探しきれなくてな」
剣士「探していた? 一体何を?」
呪術師「初恋の女性と言ったら信じてもらえるかの?」
剣士「は?」
呪術師「知っておるか? 勇者に敗れた魔族の末路を……」
剣士「あ、いや」
呪術師「じゃろうな。知る由もない」
剣士「どうしてそんな話を急に……」
呪術師「儂はな、前大戦の生き残りなのじゃよ」
391
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:07:35 ID:8EiFUDXQ
剣士「生き残り? 魔族は魔王と共に滅ぶんじゃないのか?」
呪術師「お主がよく知る魔族――、邪神の加護なしには身体を維持できん種はそうじゃな」
呪術師「じゃが、儂等のような加護を必要とせずとも生きられるものはそうではない」
剣士「人魔がそうだと? その違いはなんだ?」
呪術師「さあ、そこまではわかっておらん。単に人魔が人間に近い形だからなのか、それともその役目からそう作られておるのか――」
呪術師「理由はどうあれ人魔は魔族の中では異端。ゆえに虐げられていた時代もあったが――おっと、関係のない話じゃったな」
剣士「その姿では、やはり……」
呪術師「とにかく儂等は魔王亡き後も生きなければならなかったのじゃ。次代の魔王を迎える為にも死ぬ事は許されなかった」
剣士「迎える?」
呪術師「おかしいとは思わなかったのか? 魔王が復活したからと組織がいきなり機能するわけがない」
392
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:09:43 ID:8EiFUDXQ
剣士「人魔は次代の魔王が復活するまでの間ずっと陰で生きていたっていうのか?」
呪術師「そうじゃよ。それがどんなに過酷な事か、お主にはわからんじゃろうな……」
呪術師「加護なくして資源の乏しいあの荒れ果てた大陸では、生き残ったもの全てを養う事は出来ず――」
剣士「(邪神の加護には生理的欲求を補う力もあるのか。いや、死してなお蘇る勇者の再生力も突き詰めれば同じようなものか)」
呪術師「儂等に残された選択は一つだけじゃった」
剣士「人口の抑制、切り捨てか……」
呪術師「儂もその切り捨てられた一人でな。じゃが、運よくこの大陸に流れ着き、あるものに救われた」
剣士「あるもの?」
呪術師「エルフじゃよ。儂はとあるエルフに救われたのじゃ」
剣士「つまり爺さんは前の戦いで助けてもらったエルフの女性を探していただけだと?」
呪術師「ああ、そうじゃ」
393
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:11:30 ID:8EiFUDXQ
剣士「わからないな。仲間の力を借りればよかっただろう。変化の魔道具を盗み出してまで、人間に探させる必要はなかったはずだ」
呪術師「こんな色惚けた爺の酔狂に仲間を巻き込む事など出来んよ。それにそのエルフは人間と結ばれておってな……」
剣士「人間と結ばれていた? そのエルフというのは――」
呪術師「俗に言うはぐれエルフじゃ。里を離れ人界近くに住むな」
呪術師「だから今度は儂が助けよう、そう決めておった。今回ばかりは人間が敗れると確信しておったからの」
剣士「――で、見つかったのか?」
呪術師「いいや。あれから百年ちょっと。エルフの寿命であれば生きておると思うが……」
賢者「もしかしてそのはぐれエルフさんってお婆様の事でしょうか?」
魔法使い「そういえば昔はこの辺に住んでたって言ってたわね」
魔法使い「里を離れた、それも人間と結ばれていたエルフなんてそういないでしょうし」
394
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:12:43 ID:8EiFUDXQ
呪術師「ん? 言われて見れば面影があるような……」ジッ
賢者「本当ですか!?」
呪術師「二人の婆さんは本当にエルフなのか?」
賢者「ええ、そうですよ」
呪術師「どうりで強いわけじゃ……」
呪術師「それで今は、今はどこに? 元気にしておられるのか?」
賢者「始まりの国の国境近くの森の外れに住んでいます。おそらく今も元気に魔法の研究に勤しんでいると思いますよ」
呪術師「そうか。変わらず元気で、よかった……」
呪術師「しかし何という因果じゃ。その孫が剣士と共に魔王討伐とはな」
395
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:14:32 ID:8EiFUDXQ
呪術師「思い残す事はない。剣士よ、妬くなり煮るなり好きにするがよい」
剣士「なら早くここから立ち去るんだな」パチン
呪術師「鞘に納めると? 見逃すと言うのか!?」
剣士「ああ」
呪術師「何故じゃ。儂は三魔将という地位を与えられた立派な敵じゃぞ!」
剣士「その立場を利用し、愛に生きた貴方を俺は殺せそうにない。それに貴方の事だ。本物の国王は殺していないんだろう?」
呪術師「確かに本物の国王は鳥に変えただけで命までは奪っておらん。しかし、だからと言って納得できるものではないじゃろう!?」
剣士「どうだろう。エルフのお婆さんを探す為だったとはいえ、貴方はこの国の騎士を改心させた。お陰で以前より住みやすくなったと……」
呪術師「甘いぞ、剣士。そうであったとしても儂が人間の敵である事に違いない!」
剣士「本当にそうか?」
呪術師「お主が魔王に逆らう限り儂等は敵じゃよ。またあのような悲劇が繰り返されるというのなら儂は、儂は……」
剣士「(爺さんはエルフを通じて人間の優しさを知ったんだろうな。だから苦しんでいる。魔王の意志に従いきれずに……)」
396
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:18:26 ID:8EiFUDXQ
剣士「(それは俺も同じか)」
呪術師「どうした、剣士。怖気づいたわけではあるまい!」
剣士「なあ、爺さん。一つ提案なんだが……」
呪術師「提案?」
剣士「もし俺が魔王に敗れたら爺さんの出来る限りでいい。人間達を助けてくれないか?」
剣士「逆に俺が魔王に勝ったら出来る限りの魔族を助けると約束するよ。だから――」
呪術師「本気で言っておるのか?!」
剣士「ああ。これで済む話じゃないのはわかってる。だが、もし爺さんに人間を想う心があるのなら……」
呪術師「お主はどうなのじゃ。魔族を恨んではおらんのか!?」
剣士「恨むも何も、俺は魔族をよく知らない。大切な人を守る為に戦っているだけで――」
剣士「そうだ。爺さんが敵であろうと殺す理由にはならない。少なくとも今は……」
呪術師「剣士、お主は女神ではなく、人間の為に戦っているというのか……」
397
:
◆49HRmRlKYE
:2018/09/24(月) 19:22:48 ID:8EiFUDXQ
呪術師「――わかった。儂は去るとしよう」
剣士「ありがとう」
姫騎士「行かせるものか。剣士が刺せないと言うのなら私が!」ダッ
剣士「よせ!」ガシッ
姫騎士「止めるな。こいつはお父様を、我が国を愚弄した!!」
剣士「気持ちはわかる。だがここはこらえてくれ」
姫騎士「ふざけるな!」
剣士「殺して何になる?」
姫騎士「誇りを奪われた。取り戻さなければ生きてはいけない!」
剣士「それで戻るものでもないだろう!」
姫騎士「血迷ったか。アイツは魔族だ。我等人間の敵ゾ!」
剣士「爺さんは俺達を本気で殺そうとしていなかった。それに俺との約束だって……」
姫騎士「うるさい! お前に私の何がわかる!」
398
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:20:43 ID:GOsYA0yo
武闘家「剣士殿、流石に信用しすぎじゃねぇか?」
姫騎士「ほら見ろ。武闘家もお前の愚行に呆れているぞ!」
武闘家「そ、そこまで言うつもりねぇけどよ。資源不足を解決する為にそういう事が過去にあったのは本当だろうし――」
武闘家「ただ、なんでそれを爺さんが身をもって知ってるんだよ? 人魔族の寿命も人間と変わらないはずだぜ」
剣士「人魔は長寿じゃないのか?」
武闘家「ああ。そうだよな、爺さん?」
呪術師「詳しいな。人魔族の寿命は人間とそう変わらん。じゃから儂は秘術を使い寿命を永らえさせた」
剣士「秘術?」
呪術師「進化の秘術、聞いた事はないか?」
剣士「いや、初めて聞いた。魔法使いはどうだ?」
魔法使い「私も聞いた事ないわ」
呪術師「そうか、やはり……」
399
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:22:46 ID:GOsYA0yo
剣士「どういうものなんだ?」
呪術師「そうじゃな。平たく言えば生物の能力を著しく成長させる術といったところかの」
剣士「成長? 強化魔法とは違うのか?」
呪術師「似て非なるものじゃろうな。強化魔法は肉体の限界を引き出す術じゃが、進化の秘術は言葉通り使用者を進化させる。成長の過程を無視してな」
剣士「どういう事だ? 特別な力を授ける術という事か?」
呪術師「間違ってはおらんよ。事実、儂は秘術の力でエルフ並みの寿命を得た」
剣士「だけか? 何か他に得た力は?」
呪術師「お主が考えている事はわかる。しかし残念ながら、勇者を越えるほどの力を得た者はいなかった。儂を含め誰一人も……」
呪術師「いや、ある意味では越えたのかもしれんな。この時代まで生きながらえたのだから」
剣士「前大戦で得た知識か。確かに脅威ではあるが……」
呪術師「フッ、少しおしゃべりが過ぎたかの」
剣士「最後にもう一つだけ教えてくれ。その秘術は魔族に伝わるものなのか?」
400
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:25:06 ID:GOsYA0yo
呪術師「答えてやりたいが、儂はそれを知らん。じゃが、その術を知る者――側近はこう言っておったよ。勇者を討つ為に蘇らせたと」
剣士「蘇らせた? その側近というのは何者なんだ?」
呪術師「哀れな復讐者じゃよ。奴の憎悪怨恨の念は計り知れん。勇者を、いや人間を滅ぼす為ならどんな手段をも厭わない」
呪術師「儂が滅ぶ確信を得たのも奴を知ったからじゃ。あの男なら必ずや成し遂げるだろうと。現に側近は勇者を倒してしまった」
剣士「そいつが?」
呪術師「もちろん止めを刺したのは魔王じゃよ。じゃが、前代の勇者から魔剣を取り戻し、この時代の勇者を早期に突き止めたのは奴」
剣士「秘術で得た力を存分に使い、勇者を追い詰めたって事か……」
呪術師「――さて、知る限りの事は話したつもりじゃ。信じてもらえるかの?」
剣士「俺は信じるが、どうだろう?」
武闘家「ああ、俺も信じるよ。嘘をついてるようには思えねぇや」
呪術師「よかった。これで駄目ならエルフのお婆さんに会わせてもらう以外にないからの」
401
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:26:09 ID:GOsYA0yo
姫騎士「私は、私は……!!」
武闘家「悔しいのはわかるよ。だけど爺さんに戦う意思はなかったんだ。ここは剣士殿に従おうぜ」
姫騎士「私の国だぞ。いいように弄ばれたんだぞ」
武闘家「なら剣士殿をブッ倒してやるんだな。そうすりゃ誰も文句言わねぇよ」
姫騎士「な!? くぅ……!」ギリッ
武闘家「――爺さん、話は終わったぜ。早く行きな」
呪術師「すまん。国王は寝室の鳥かごの中じゃ、真実の水晶を使えば元の姿に戻ろう」
剣士「わかったが、傷は大丈夫なのか?」
呪術師「心配無用じゃ。そこまでの傷は負っておらんよ。――ではさらばじゃ!」バッ
武闘家「窓から文字通り飛びやがった。相変わらず身軽な爺さんだぜ」
姫騎士「なんなんだよ。剣士、お前はどうして……」
剣士「……俺はもう行くよ」
姫騎士「ああ。早くどっか行ってしまえ!!」
402
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:27:35 ID:GOsYA0yo
執事「お待ちください。この度の礼を……」
剣士「必要ない。俺は姫様の要望に応えられなかった」
剣士「それより姫様と国王の事を頼むよ。あの様子じゃ心配だ。ついてあげて欲しい」
執事「言われるまでもなくそうするともりです。ですが……」
剣士「?」
執事「剣士、貴方は勇者の遺志を継いだのではなかったのですか?」
剣士「そのつもりだったんだがな」
執事「失望しましたよ、紅蓮の剣士。貴方は姫様とは違う。覚悟がある人だと……!」
剣士「すまない」ペコッ
執事「私が言えるような立場ではないのは重々承知。ですがあえて言わせてもらいます」
執事「貴方は甘い。半端な覚悟では自身も仲間も殺す事になるでしょう。それ程の力があったとしても!」
剣士「肝に銘じておくよ」
403
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:29:34 ID:GOsYA0yo
城 門近く 帰り道――
剣士「(本当に無様だな。仲間を危険にさらせまいと動いたつもりが、逆に危険にさらす事になるとは)」
剣士「(武闘家の言う通り、考え過ぎず素直に取りに行った方がよかったんだろうな)」
剣士「(それだけじゃない。爺さんの事もそうだ。どう言いつくろったところで俺が殺す事を恐れたのは事実。罪悪感から逃れようとしただけ……)」
賢者「剣士さん、あの……」
剣士「あ、大丈夫だったか? 怪我とかは、魔法使いに治してもらったんだよな?」
賢者「それは大丈夫というか、そもそも私は何一つ傷を負っていませんから……」シュン
剣士「本当に?」
賢者「はい……」コクン
剣士「よかった」ソッ ギュッ
賢者「え、あ////!?」カーッ
404
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:31:38 ID:GOsYA0yo
賢者「すみません、ご心配をおかけして。でも、あの、これは……////」
剣士「痛かったか? 強く抱きしめたつもりは……」
賢者「大丈夫です。びっくりしちゃっただけで」
剣士「そうか」ニコッ
賢者「うん」ギュッ
武闘家「あれ、毎回やってんの? 見てるこっちが恥ずかしくなるんだけど」
魔法使い「なんで私に聞くの? 知るわけないでしょ!」ブチッ
武闘家「ヒェ!?」
魔法使い「(どうして、あの子にはああいう態度なのよ。あの子だって私と同じで何もしてないのに!)」
魔法使い「(一体私と何が違うの? どうしてあの子ばかり求められてるのよ!)」ギリッ
405
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:35:11 ID:GOsYA0yo
武闘家「剣士殿、ごめん。いい感じ所ちょっといいかな?」アセッ
剣士「あ、いや、これは別に……////」
賢者「どうしたんですか?」
武闘家「ほら、内緒で水晶を取りに行っちゃっただろう? だから謝りたくて……」
剣士「それについては慎重になりすぎていた俺も悪い。謝る必要ないよ」
武闘家「そんな事はねぇよ。結果的にそうだっただけで」
剣士「どうだろう? 俺が……」
魔法使い「もうみんな悪かった、それでいいんじゃない。煽った私が一番悪いと思うし」
武闘家「行っちゃった俺が一番でしょ、そこは。取りに行ったならまだしも、それを城に持っていっちゃったんだぜ?」
賢者「うふふっ」クスクス
魔法使い「何笑ってるのよ。貴女だって悪いのよ!」
賢者「わかっていますよ。でも謝りあっているのがおかしくて」フフッ
剣士「そうだな。みんな悪かったって事でこの件については終わりにしよう」
賢者「そうですね」ニコッ
魔法使い「だから最初からそう言ってるじゃない」ムッ
406
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:38:59 ID:GOsYA0yo
剣士「そうだ。武闘家、俺も君に話があるんだ」
武闘家「なんだよ、改まって……」
剣士「爺さんが教えてくれた進化の秘術。あれは君達が探していた力なんじゃないか?」
武闘家「でもあれって勇者を越える力は得られなかったって話だろう?」
剣士「だとしても力を得られる事に違いはない」
武闘家「んー、じゃ逆に聞くけどさ。剣士殿はそれを手に入れようとは思わないのか?」
剣士「手掛かりがあれだけだからな。それに人間に効果があるかどうかも怪しい……」
武闘家「それを言っちゃ俺だってそうよ!」
剣士「だが狩人は知りたいんじゃないか?」
武闘家「アイツはアイツで探し出すんじゃねぇかな?」
剣士「そうか……」
武闘家「俺はこのまま剣士殿と一緒に戦いてぇよ。駄目かな?」
剣士「本当にいいのか? 俺は魔族を見逃すような男だぞ?」
407
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/03(水) 22:41:59 ID:GOsYA0yo
武闘家「だからだよ。俺はその優しさに惚れ直したんだ」
剣士「優しさ? 甘さの間違いじゃないか?」
武闘家「それの何が悪いんだ?」
剣士「死ぬ事になるかもしれない」
武闘家「いいよ。俺達の為に甘さを捨てるくらいならそれがいい」
剣士「馬鹿な事を言うなよ」
武闘家「本当だな」ハハッ
剣士「――じゃ、帰ろうか。流石に俺も眠い」
武闘家「ありがとうな。助けに来てくれて――って、そういやどうして城にいるってわかったんだ?」
剣士「武道着の怪しい男が祠から出てきたと騎士達が騒いでいたから、もしかしたらと思って。間に合ってよかったよ」
武闘家「そっか。じゃ今度は俺が――あいや、なんでもねぇや」
剣士「?」
武闘家「(今度は俺が助けるぜ、なんて言えるほどの力はまだない。そう言えるように強くならなきゃな)」
408
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/04(木) 22:31:40 ID:j2dw1Skw
乙
409
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:48:40 ID:fAB8ljNI
翌日 宿屋 昼過ぎ――
武闘家「ふわぁーっ、よく寝た。――って、寝すぎたな。もう日が沈みそうじゃんか」
魔法使い「おはよう。昨日の疲れは取れた?」
武闘家「んー、まだ節々が痛いかなー」イテテ
魔法使い「しばらくは養生につとめる事ね」
武闘家「そういうわけにもいかねぇよ。もっともっと修行して強くならねぇと!」
魔法使い「その事だけど、ほんとによかったの?」
武闘家「え?」
魔法使い「進化の秘術だっけ? それを探す旅に戻った方がよかったんじゃない?」
武闘家「魔法使いさんも知らなかったんだろ、秘術の事は?」
魔法使い「お婆様が知らなかっただけで他のエルフは知ってるかもしれないわ」
武闘家「そうかもしれねぇけど。やっぱ俺はこのまま剣士殿と一緒に……」
魔法使い「それがわからないのよ」
410
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:50:10 ID:fAB8ljNI
魔法使い「剣士は人魔の呪術師に情けをかけた。魔族を恨んでいるだろう貴方がどうしてそれを許せたの?」
武闘家「そ、それは……」
魔法使い「何かあるの?」
武闘家「わかった。ちゃんと話すよ。いつかは話さなきゃいけないって思ってたし」
武闘家「俺は、人間と魔族の混血児なんだ……」
魔法使い「嘘でしょ!?」
武闘家「呪術師の爺さんの話を聞いたろう? いたんだよ。切り捨てられた魔族の中には人間に助けられたものが」
魔法使い「じゃあ魔族に滅ぼされた貴方の里っていうのは……」
武闘家「ああ。魔族と人間が暮らす小さな里だった」
魔法使い「……貴方も邪神の加護を受けているの?」
武闘家「でなきゃここまで戦えてねぇよ。薄まってる分、純血には劣ってると思うけど」
411
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:52:08 ID:fAB8ljNI
武闘家「だから滅ぼされた――いや、違うな。単純に存在そのものが邪魔だったんだろうな」
武闘家「人間の情けで生きながらえた惨めな魔族を魔王が許すわけがない。ましてや人間と魔族の間に子が生まれるなんてなりゃ……」
魔法使い「もういいわ。話してくれて、ありがとう」
武闘家「しっかし、ふざけた話だよな。魔王に逆らう気なんてありゃしない。ただ静かに暮らしていたかっただけなのに……」
魔法使い「そうね……」
武闘家「だから嬉しかった。剣士殿が生き残った魔族を助けてくれるって言ってくれたのが。あの人には人間も魔族も関係ないんだなって」
魔法使い「ええ。アイツは生まれを気にするような人じゃないわ。もちろん私も」
武闘家「俺と同じ混血だからか?」
魔法使い「まあ、そういう事になるのかしらね」
武闘家「剣士殿も?」
魔法使い「アイツは普通の人間よ。混ざりっ気のない」
武闘家「そうなんだ。――って、んん?」
412
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:53:49 ID:fAB8ljNI
酒場 同時刻――
カランカラン
マスター「やあ、剣士殿。待ってたよ。ささ、こっちこっち」
剣士「ああ、どうも。待っていたという事は……」
海賊「はあーい。貴方が噂の剣士さん?」
剣士「(三角帽子にジュストコート、それに眼帯。古典的というか、あからさまな……)」
海賊「なあに? あまりの美貌に見惚れちゃったぁ? ――って、そんな顔じゃないね」
海賊「ふふん。何を隠そう、私は海賊。と言っても商船や沿岸なんかは狙わない、お宝探し専門の海賊だけど」
剣士「海賊と呼べるんですか、それで?」
海賊「海の無法者はみーんな海賊よ。それに商船を襲わないだけで同業者からは遠慮なく頂戴するし。お姉さん、こう見えて怖いんだから!」ムフッ
剣士「戦わないわけじゃないんですね」
海賊「そりゃ海賊だもん。――で、話を戻すけど貴方が私達を必要としているっていう剣士さんよね?」
剣士「ええ。私達は向こうの大陸へ渡る船を探しています。無理な願いとは存じますが、乗せて行ってはもらえないでしょうか?」
413
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:56:00 ID:fAB8ljNI
海賊「それなんだけど、どうしよっかなぁー?」ウフフッ
剣士「え?」
海賊「まず貴方が本物の剣士だっていう証拠を私に示して欲しいんだけどいい?」
剣士「証拠と言われても……」
海賊「難しく考えなくたって大丈夫。とーっても簡単な事よ」
マスター「おい。まさか、何かやらかすつもりじゃ……」
海賊「飲んだくれのごく潰し共、耳の穴かっぽじってよく聞きなッ!!」
ガヤガヤ ナンダナンダ
海賊「見えるかい? このパンパンに詰まった金袋が!」ドンッ
海賊「何も見せびらかす為に声を荒げたんじゃないわ。今からお前らにこれを手にする機会をくれてやろうって言ってんだ」
海賊「安心しな。難しい条件を突きつけるつもりはない――」
海賊「あたしの隣に座っている優男がいるだろ。この優男を地面に叩き伏せるだけでいい。つまりコイツと喧嘩やって勝つ。単純だろ?」
414
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/12(金) 23:58:36 ID:fAB8ljNI
海賊「昼間っからこんな所で安い酒をチビチビ飲むしかないお前らには勿体ないくらいの話だろう。やらない手はないよなァ!」
ガヤガヤ マジカヨ イカレテンナ
剣士「有無を言わさない、これが海賊流か?」
海賊「うふふっ、手っ取り早いでしょう?」
剣士「気に入らないな」
海賊「あっちにとってもそう悪い話じゃないと思うけど? 私だってリスク背負ってるし」
マスター「おいおい、勘弁してくれ。うちはそういうのお断りなんだよっ!?」
海賊「そう言われても、もう言っちゃった後だしなぁー」エヘッ
マスター「備品もただじゃないんだぜ!?」
海賊「でも、すっごい盛り上がると思うよ?」
マスター「嬉しくないって。あー、頼む。なるべく俺の店は壊さないでやってくれー!」
415
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:00:37 ID:0U.8JA.Y
客A「なかなか面白い事言うねぇ、海賊風の姉ちゃんよ」
客B「ああ。んな条件じゃただでくれてやるって言ってるのと同じだぜ?」
客C「なんたってこっちにゃ紅蓮の剣士様がいらっしゃるからなー!」ドヤッ
海賊「え? どういう事? だって剣士様は――」チラッ
剣士「偽者、まだいたのか……」ハァ
偽剣士「待ってくれよ。こんなくだらない事に私が付き合うわけがないだろう」
客A「いいじゃねぇですかい。どうせ、あの金は善良な我々民から奪い取ったもんですよ」
客B「違ない。そうだ。此処は一つ剣士様のお力で取り戻しちゃもらえませんかね?」
偽剣士「そう言うけどね……」
店員「あたしも見てみたいな。剣士様のカッコイイところ。いいでしょう?」
偽剣士「ふぅ、皆がそこまでいうのなら仕方がない。少し懲らしめてやるか……」スクッ
オーオー イイゾ ヤレヤレー ワーワー
偽剣士「(まあ、偽者を名乗るだけの力はあるつもりだ。こんな酒場にくる賊もどきに負ける事もないだろう)」
416
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:02:28 ID:0U.8JA.Y
偽剣士「さあ、かかってきたまえ!」バッ
剣士「(中途半端な事では認めてはくれないんだろうな。気が進まないが、やるか……)」
客A「なあ、お前どっちに賭ける?」
客B「馬鹿言ってんなよ。賭けが成立するとでも思ってん……」
ガシャーン!
偽剣士「ガハッ!!??」ドテンッ
客一同「「へ?」」
剣士「叩き伏せたぞ。これで満足か?」
海賊「え、あ…… うん」ポカーン
剣士「すまないが、彼の介抱を頼むよ」
店員「えっ?」
剣士「目覚めたら伝えておいてくれ。こんな事に巻き込んですまなかった、と」
店員「は、はい……」コクン
417
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◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:03:48 ID:0U.8JA.Y
マスター「こいつはすげえ。瞬きする間もなく終わらせちまいやがった……」
海賊「ごめん。盛り上がるどころか凍り付いちゃったね」
マスター「あ、いや、俺としちゃ店がブッ壊れずに済んでよかったよ」
海賊「そう? ならいいんだけど……」
剣士「不味かったか?」
海賊「ううん。問題ないって」
剣士「そうか。――で、どうだった?」
海賊「もちろん。信じるわ」
剣士「じゃあ、連れて行ってくれるんだな?」
海賊「んー、それはまたべつのお話かなー……」
剣士「はあ!?」
418
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:06:40 ID:0U.8JA.Y
海賊「私の一存で決められる事じゃないし、うん……」
剣士「アンタが船長なんじゃないのか?」
海賊「そうなんだけど、船長の独断で決めちゃうわけにもいかないのよ。こればっかりは」
剣士「まあ、仲間の同意は必要か……」
海賊「剣士を信用してない仲間もいて。少し説得に時間がかかるかも――って、そうだ!」
海賊「ねえ、私と一緒に説得してくれない。そうすれば仲間もすぐわかってくれると思うんだけど、どお?」
剣士「俺が海賊の仲間をか?」
海賊「うんうん!」
剣士「アンタ自身はどうなんだ? いいのか?」
海賊「もっちろん。今から楽しみにしてるくらいだもん。貴方との船旅!」ウフフッ
419
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:09:34 ID:0U.8JA.Y
剣士「わかった」
海賊「ありがと。じゃ申し訳ないんだけど私達のアジトまで来てもらっていい?」
剣士「ここを拠点にしているわけじゃないのか?」
海賊「ここはちょっとね。色々と監視が厳しくって海賊船なんてあった日には……」
剣士「なるほど。――で、そのアジトここから遠いのか?」
海賊「そこそこってところかなー」
剣士「じゃあ、仲間にも伝えないと」
海賊「え、仲間?」
剣士「ここを離れる事になるんだろう?」
海賊「う、うん。そうだけど……」
剣士「伝えてくるよ。待っていてくれ」ガタッ
海賊「剣士に仲間なんていたんだ……」
420
:
◆49HRmRlKYE
:2018/10/13(土) 00:12:01 ID:0U.8JA.Y
マスター「仲間は三人だ。魔導師が二人に、武闘家っぽいのが一人」
海賊「知らなかった」
マスター「だろうな」
海賊「噂ほど当てにならないものもないね。紅蓮の剣士は孤高でもなければ、熊みたいな大男でもなかったし」
マスター「アハハアッ! 今はそんな事になってるのか。凄い尾ひれがついたもんだ」
海賊「今後はもっと凄い尾ひれがつくんじゃない?」チラッ
客A「出てったぞ、さっきの男」
客B「一体何もんだったんだ。剣士様をブッ飛ばしちまうなんて……」
客C「髪をみなかったのか? あっちが本物だったんだよ。きっと偽者が気に食わないもんだからやっちまったんだろ」
客B「にしたって、やばかったな。人間の動きしてなかったろう?」
客C「ああ、ありゃバケモンだ。魔族を食っちまうのも納得だ……」
マスター「ひでぇ言われようだな」
海賊「だけど実際その通りなわけで。化け物でなければ本物の化け物は倒せないんだろうね……」
421
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/13(土) 22:29:49 ID:2ohDdzRs
乙
422
:
◆49HRmRlKYE
:2018/11/06(火) 23:09:16 ID:AbFZhZkU
漁村――
武闘家「ここが海賊のアジトなのか? どう見たって――」
魔法使い「ただの漁村じゃない。それも寂れた」
海賊「ひっどぉーい!? とってもいい村よ、ここ!」
魔法使い「海賊をかくまう村をいい村とは言わないんじゃない?」
海賊「べつにかくまってもらってるわけじゃないもん。お世話になってるだけだもーんっ!」
賢者「私は好きですよ。都会よりこっちの方が!」
海賊「ありがと。賢者ちゃんはいい子ねぇー」ヨシヨシ
賢者「わーい」エヘヘ
魔法使い「そんな事よりどうするの? 日も暮れちゃったし、宿とかあるわけ?」
海賊「あるよ。とびっきりの宿がね。案内するからついてきてちょーだい!」
魔法使い「ハァ……」
剣士「(ため息ばかりついているな。まあ、当然と言えば当然か。この旅自体まだ納得できていないんだろうし……)」
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