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賢者「勇者様の遺志を継ぎ、私が魔王を倒します」
1
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/14(金) 06:17:21 ID:PCLf6UWk
平原――
賢者「(私は賢者、魔道のエキスパート)」ハッ ハッ
賢者「(勇者様の旅立ちを知り、仲間になるべく旅に出ました」ハァッ ハヘッ
賢者「(ですが、そこには大きな問題があったのです)」グヘッ
賢者「(私の家から勇者様の旅立ちの地は遠く、私は体力がない……)」ウエエ
賢者「ああーん、もう歩けませんよっ!」ペタン
賢者「どーして勇者様の仲間になるために旅をしなきゃならないんですかー!」
賢者「私の噂を聞き付け、勇者様の方からやってくると思ったのにィー」ジタバタ
172
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:36:04 ID:W8S7uPjs
賢者「剣士さん、終わりましたよ」パアア
剣士「やはり魔法は凄いな、短時間でここまで回復するのか。ありがとう」
賢者「い、いえ……」
剣士「どうした?」
賢者「なんでもありませんよ。なんでも……」
剣士「?」
賢者「(何しているんだろう。剣士さんの力に、支えになるって決めたはずなのに――)」
賢者「(ただ守られていただけじゃないですか。それに比べてお姉様は……)」
魔法使い「もう大丈夫なの? 見せて見せて」クイクイ
剣士「見る必要あるのか?」
魔法使い「安心したいのよ、駄目?」
剣士「それで満足するなら……」スッ
賢者「(力が欲しい。剣士さんの傍にいられるだけの力が……)」
173
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:37:36 ID:W8S7uPjs
剣士「……」
魔法使い「どうしたの?」
剣士「以前、君は言っていたな。ただの人では魔王は愚か、魔族にも勝てないと」
魔法使い「嫌み?」
剣士「いや、そういうつもりじゃ……」
魔法使い「その言葉に嘘はないわ。この勝利だって多くの偶然が重なった奇跡でしかない」
剣士「だが……」
魔法使い「ええ、わかってる。ただの偶然じゃないってことも――」
魔法使い「そう、貴方が剣士として生きなければこの奇跡は生まれなかった」
魔法使い「悔しいけど認めてあげるわ。貴方のその馬鹿みたいな意地を」
剣士「魔法使い……」
174
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:38:59 ID:W8S7uPjs
魔法使い「さて、もどりましょう。大将を討ち取って終わりってわけでもないわ」
魔法使い「城内に残った敵を追いだし、この城を取り戻さないと」
剣士「だな。王女達のことも気になる」
魔法使い「まだ戦える?」
剣士「ああ」
魔法使い「無理はしないでね。――じゃ、行きましょうか」
賢者「え、あ! ま、待って下さーい!」アセッ
こうして長い夜が明けた。そして――
175
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/23(日) 22:40:58 ID:W8S7uPjs
大広間――
王女「貴方方のお陰でこうして無事に城を取り戻すことができました」
王女「なんと礼を申して良いものか……」
剣士「いえ、私達だけでは決して成しえなかったこと。力を合わせた結果です」
剣士「それにこれで魔王の脅威が去ったわけではありません。むしろ戦いはこれからです」
王女「剣士様は本当に魔王討伐を?」
剣士「ええ」
王女「……わかりました。必ずやこの国を再興し、その手助けをするとお約束致します」
王女「それがきっと私達ができる最大の礼になることでしょう」
王女「待っていて下さい。強い国にしてみせます。――できますよね?」チラッ
城兵「はい。王女がそれを望むのであれば」ニコッ
剣士「その日を楽しみにしております」
王女「剣士様、ご武運を!」
176
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/23(日) 22:41:51 ID:W8S7uPjs
平原――
剣士「……」
魔法使い「また難しい顔して、どうしたの?」ヒョコ
剣士「爺さんのことを考えていた」
魔法使い「ホモ爺とかいう? な、なんで?」
剣士「この戦い、爺さんが抜け道を知らなければ勝負にもならなかっただろう」
魔法使い「それが?」
剣士「今思っても爺さんが抜け道を知っているのはおかしい」
剣士「城の者に聞いても爺さんの事を良く覚えている者はいなかったという話だ」
魔法使い「あんな糞爺、一番に忘れたい存在じゃない?」
剣士「真面目な話をしている」
魔法使い「ま、確かに。魔族のこともやけに詳しかったような気もするわ」
剣士「俺には詳し過ぎるように思えた」
177
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:43:40 ID:W8S7uPjs
魔法使い「女神の使いだとでも言うつもり?」
剣士「そこまでは言わないが…… とにかく腑に落ちない点が多すぎる」
魔法使い「考えても仕方ないわ。気味が悪いことだとは認めるけれど」
剣士「それはそうかもしれないが……」
魔法使い「相変わらずね。素直に喜べばいいのに」
剣士「水を差したか?」
魔法使い「そんなことないんじゃない? あの子も珍しく大人しいし」
剣士「賢者が? そう言えば大人しいな」
賢者「はあ……」シュン
178
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:44:48 ID:W8S7uPjs
剣士「どうした?」
賢者「え……?」キョトン
剣士「体調でも悪いのか?」
賢者「そ、そんなことないですよ!」ブンブン
剣士「本当に?」
賢者「私はいつでも元気です。ほらほら!!」ピョンピョン
剣士「無理をしているようにも見えるが……」
賢者「それは剣士さんが変な事を言うからですよ!」
剣士「すまない」
賢者「さあ、行きましょう。こんな事で時間を使っちゃ駄目ですよ!」
剣士「あ、ああ」
179
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/23(日) 22:45:37 ID:W8S7uPjs
魔法使い「それで次はどこに向かうの?」
剣士「とりあえず西に。海に出なければ魔王の大陸には辿り着けない」
魔法使い「魔王がいる大陸に向かう船なんてあるとは思えないのだけれど?」
剣士「なければ買うなり盗むなりすればいい」
魔法使い「はあ、呆れた……」
剣士「じ、実はかなり無計画で……」
魔法使い「でしょうね」
剣士「これからは考えて行動するよ。仲間も増えたわけだしな……」
賢者「な、仲間?」
剣士「俺達はこの世界を救う為に立ち上った仲間――違うか?」
魔法使い「ププッ、くっさ。わざわざ口にしなくてもいいのに。歯が浮くー」クスクス
剣士「……い、いけないか?」
魔法使い「いいえ、貴方らしくて良いんじゃない。剣士さん!」ニコッ
180
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/24(月) 07:28:45 ID:1rAOu0Tg
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181
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/27(木) 07:41:21 ID:H0NZAiF2
素晴らしい!
182
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:28:49 ID:0iVnyjZU
数日後 平原――
賢者「うおおう、ファイアーッ!!」ボウ
魔物「ワ、ワオーン……」バタン
賢者「やりましたよ。見ましたか!」グワッ
剣士「え、ああ」
賢者「あーっ、剣士さん腕怪我しているじゃないですか!?」
剣士「かすり傷だよ、舐めときゃ治る」
賢者「駄目ですよ。大きな怪我の影には小さな怪我がーって言うじゃないですか!」
剣士「本当に大した怪我じゃ……」
賢者「とにかく治癒します。はい、傷口見せて下さい」
剣士「そこまで言うのなら……」スッ
183
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:29:46 ID:0iVnyjZU
魔法使い「何があったか知らないけど、ちょっとはしゃぎ過ぎじゃない?」
賢者「普通ですよ。昨日までの私がちょっとおかしかっただけで」
魔法使い「じゃ、ずっとそうであって欲しかったわ」
賢者「相変わらず酷いこと言いますねー。――あ、剣士さん、治りましたよ!」パア
剣士「あ、ありがとう」
賢者「さてさて、戦闘後のケアも終わったことですし、ガンガンいきましょう!」
剣士「そんなに急いで大丈夫なのか?」
賢者「何を言うんです。こうしている間にも私達の助けを待っている人達がいるんですよ?」
剣士「そうじゃなくて……」
賢者「大丈夫です。私のことは気にしないで下さい。絶対に足手まといにはなりません!」
剣士「いや、だから……」
184
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:30:31 ID:0iVnyjZU
魔法使い「好きにさせたら? 駄目なら置いて行けばいいじゃない」
賢者「そうですよ!」
剣士「……わかった。だが辛くなったら遠慮せずに言ってくれ。いつものようにおんぶするから」
魔法使い「おんぶ?」
賢者「ななな、何を言うんですかー!? 変なこと言わないで下さいよーっ///」
剣士「はあ!?」
賢者「とにかく私は大丈夫です。おんぶもだっこも必要ありませんからね!」テテテ
剣士「何なんだ、一体?」
魔法使い「さあ?」
剣士「(もしかして魔法使い前では恥ずかしいのか?)」
185
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:31:31 ID:0iVnyjZU
魔法使い「……」クイクイ
剣士「どうした、人の袖なんか引っ張って?」
魔法使い「疲れたわ、私が」ボソッ
剣士「え?」
魔法使い「だ、だから疲れたの。さっき戦いもあったし……」マゴマゴ
剣士「じゃあ休憩にしようか。強がってはいるが賢者も疲れているだろう」
魔法使い「そ、そう。助かるわ」
賢者「気なんか使わないで下さいよ。調子狂っちゃいます」
魔法使い「は? 貴女に使うわけがないでしょ」
賢者「相変わらず素直じゃないですね。でも、ありがとうございます……」ペコッ
魔法使い「だから違うって言ってるでしょーっ!」
剣士「どうして素直になれないんだ、あの姉妹は……」ハァ
186
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:32:28 ID:0iVnyjZU
都市――
賢者「わあ、大きな街ですね。人がいっぱいです。あ、でも人ごみに酔いそう……」ウプッ
魔法使い「はぐれないようにね」
賢者「大丈夫ですよ!」
剣士「手、つなごうか?」スッ
賢者「もーっ、子供扱いしないで下さいよー!」ムッ
賢者「で、でもはぐれたら大変ですよね。お言葉に甘えようかなー」ソソッ
魔法使い「はい」スッ
賢者「なんでお姉様が……」
魔法使い「嫌なの?」
賢者「べ、べつに嫌じゃないですけども……」
魔法使い「私は嫌だけれど」
賢者「じゃ、差し伸べないで下さいよ!」ムカッ
187
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:34:28 ID:0iVnyjZU
都市 宿屋――
宿屋「部屋ですか。むむむ、空いていませんねぇ……」ペラペラ
剣士「なら別のところを探さないと」
宿屋「んー、どこも同じだと思いますよ」
剣士「そうなんですか?」
宿屋「はい。隣国が魔王軍に攻め入られたとかで越してきた人が多いんですよー」
剣士「ここは大丈夫なんですか?」
宿屋「なにを言うです!? 貴方達も見たでしょう。強固な塀に囲まれたこの都市を!」
剣士「それは見えましたよ。随分と立派な高い防壁でしたね」
宿屋「なーんて簡素な感想だあ。もっとこう、あるでしょうにィー!」
剣士「は、はあ……」
188
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:35:33 ID:0iVnyjZU
剣士「えと、ここは要塞かなにかだったんですか?」
宿屋「はあい。大昔、魔王軍との戦いにおいて重要な拠点だったとか!」
剣士「魔王軍との戦いで……?」
宿屋「おおっとー! お客さは運がいい。一部屋空いていましたよ」
剣士「え? あ、本当ですか?」
宿屋「すみません、目が回るほど忙しくて見落としていましたー」ハハッ
宿屋「あー、でも三名様ですかー。空いていた部屋は小部屋なので……」
剣士「構いません。選べる状況ではないみたいですし、借りられるのならどこでも」
宿屋「不自由をさせて申し訳ございません。値引き、させて頂きますよ」
剣士「助かります」
宿屋「ではごゆっくりどうぞ!」スッ
189
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:36:57 ID:0iVnyjZU
部屋――
賢者「うわーっ、綺麗な部屋ですよ」
剣士「しかし狭い」
魔法使い「野宿よりはマシでしょ?」
剣士「まあな」
賢者「きゃー! ベッドさん、お久しぶりです」ポフン
剣士「そのベッドのことで、二人に頼みがあるんだが……」
魔法使い「なに? おそらく却下するだろうけれど一応聞いてあげるわ」
剣士「それでベッドが二つだろ?」
魔法使い「賢者、床で寝なさい」
賢者「え゙えーっ!!」
190
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:38:17 ID:0iVnyjZU
剣士「最後まで聞いてくれないか」
魔法使い「毛布でも借りれば大丈夫よ」
剣士「難しいんじゃないか? 毛布とかの余裕もなさそうだ」
魔法使い「じゃ私のローブ貸してあげる」ヌギ スッ
賢者「う、嬉しくないですよー」
剣士「二人が同じベッドで寝るという言うのは駄目か?」
魔法使い「なにそれ拷問?」
賢者「そんなー、姉妹仲良く同じお布団で寝ましょうよ!」ギュッ
魔法使い「てい」バシッ
賢者「ぎゃばっ!」コテン
191
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:39:09 ID:0iVnyjZU
剣士「情報を集めて来るから、その間に考えておいてくれないか?」
魔法使い「今から? 明日にしなさいよ。どうせ二日は滞在するんでしょ?」
剣士「酒場ならこの時間に行った方がいいだろう?」
賢者「あ、私も行きたいです!」
剣士「賢者は無理だよ」
賢者「子供扱いしないで下さいよ!」
剣士「お酒飲めないだろう?」
賢者「甘酒なら……」
剣士「あ、あま? とにかく賢者は待っていてくれ。土産あれば買って帰るから」
賢者「それ、完全に子供扱いじゃないですかーっ!!」
192
:
◆49HRmRlKYE
:2017/04/30(日) 22:40:20 ID:0iVnyjZU
魔法使い「賢者ちゃん、パパのお邪魔をしたら駄目でちゅよー」
賢者「それは赤ちゃん扱いです。子供扱いよりも酷いじゃないですか!」
剣士「頼みまちゅからママと仲良く待っていてくだちゃい」
賢者「剣士さんがそんな安っぽい悪乗りするとは思いませんでした。幻滅しました、ファンになります!」
剣士「じゃ決まりだな」ガチャ バタン
賢者「うわああん、やってしまいましたぁああー!??」
魔法使い「泣かないの。ママが魔道書を読んであげまちゅから」
賢者「って、いつまでやっているんですかー!」
魔法使い「明日までかな?」フフッ
賢者「長っ!?」
193
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/01(月) 21:41:12 ID:p2Q0CSUk
ママ、僕にはこの本を読んで
つ【官能小説】
194
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:01:40 ID:96rMVEKQ
酒場――
コノ イッパイガ タマランゾ ガハハハッ
ワシハ ピチピチノ ギャルニ… ガヤガヤ
剣士「大した情報はなさそうだな。ふわー、眠くなってきた……」ゴシゴシ
???「じゃ僕が有益な情報を提供するとしようかな」ストン
剣士「え?」
詩人「これは失敬、僕は流離うホモの吟遊詩人。よろしく」ニコッ
剣士「ホモの、吟遊詩人?」
詩人「うん」
剣士「……」ザザッ
詩人「あー逃げないで。僕は敵じゃない、色んな意味でね」
剣士「しかし、そう言って近づかれては……」
195
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:03:12 ID:96rMVEKQ
詩人「ちょっとお話しするだけさ。それに知りたいんでしょ、魔王軍のこと」
剣士「な、なに!?」
詩人「そんなに驚くことかい?」
剣士「それはそうだろう……」
詩人「ふふ、とにかく聞くだけ聞いてよ」
剣士「――それで?」
詩人「時期に魔王軍、それも四天王率いる部隊がここを攻めにくる」
詩人「おそらく君がここを訪れることを見込んでの抜擢だろうね」
剣士「ま、待ってくれ。どこでそんな情報を!?」
剣士「数時間ここにいたが魔王軍の侵攻のことは愚か、四天王の名など何一つも……」
196
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:04:31 ID:96rMVEKQ
詩人「姉が魔王直属の伝兵をやっていてね。定期的に僕に情報を流してくれるんだ」
剣士「魔族なのか!?」
詩人「あー、大きな声出さないで。誰かに聞こえたら大変じゃないか」ハハッ
剣士「わからないな。魔族が人間に味方をする理由はないはずだ」
詩人「君に惚れたからじゃ駄目かい?」
剣士「人間に惚れた程度で仲間を、同胞を裏切れるのか?」
詩人「ホモは異端。君はまずそれを理解した方がいい」
剣士「冗談はよせ!」
詩人「大真面目だよ。愛のパワーは偉大、それはわかってくれるよね?」
197
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:05:30 ID:96rMVEKQ
剣士「教える気はないということか……」
詩人「嘘はついていないんだけど…… ま、信じるか否かは君に任せるよ」
剣士「……」
詩人「――で、相手がまた四天王だってところまでは話したね」
剣士「グリフォンと同格。もしくはそれ以上の相手というわけか……」
詩人「大地の覇者ケンタウロス。上半身が人、下半身が馬の魔族だ」
剣士「随分とまた奇形な」
詩人「けど実力は確かだよ。少なくとも今の君達じゃまともに戦っても勝ち目はないかな」
剣士「それは、そうだろうな」
詩人「でも大丈夫。今回も上手く立ちまわれば勝てるよ」
198
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:06:58 ID:96rMVEKQ
詩人「人馬一体、その形体ゆえに広い平地では無双の強さを誇る――」
詩人「けど、ここ市街地に誘い込めれば……」
剣士「市街戦に持ち込めと!?」
詩人「入り組んだ複雑な地形、これほど奇襲戦に適した場所はないよ」
詩人「それにこういう戦いは君の得意とするところだろう?」
剣士「理屈はわかる。立体的な戦いが不得意な相手、そこに付け入る隙がある。だが……」
詩人「罠だと分かっていて真正面から向かってくる馬鹿はいない、かい?」
詩人「けど今回の相手はそんな馬鹿だと聞いているよ。小細工を嫌う武人気質な――」
詩人「正面から敵を討ち取ることこそが美だと考えている古臭い魔族だって」
199
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:09:27 ID:96rMVEKQ
詩人「古臭いって言っても、魔族の認識としてはこれが普通なんだけどね」
詩人「彼等は人間よりも優れた種族だと信じている。ましてや四天王ともなれば尚更だ」
剣士「驕っていると?」
詩人「ああ。だから迷わず突撃してくる」
詩人「罠だとわかっていても、罠ごと突破する気でね。これは賭けてもいい」
剣士「そうは言うが……」
詩人「だね、賭けるものがなかった。――これで話しは終わりだよ。なにか質問ある?」
剣士「いや……」
詩人「もう時間はそんなにないはずだ。準備は怠らないようにね。それじゃ健闘を祈るよ」
剣士「……」
剣士「(ホモと名乗る者が二度も俺に魔王の情報を与える。偶然じゃないよな……)」
200
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:11:05 ID:96rMVEKQ
部屋――
剣士「ただいま。すまないがドアを開けては貰えないだろうか?」コンコン
賢者「はーい。開けますねー」ガチャ
剣士「ありがとう。遅くなると言うのに鍵を持って行くのを忘れていた」バタン
賢者「気にするほどじゃありませんよ。閉めちゃった私も悪いですし」テテテ
賢者「で、なにか情報掴めましたか?」ポフン
剣士「あ、いや……」
魔法使い「落ち込む必要ないわ。明日また聞き込みをすればいいじゃない」
剣士「なあ、二人に聞きたいことがあるんだが……」
賢者「なんですか?」
201
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:12:29 ID:96rMVEKQ
剣士「魔法の中に姿を変えられるものってあるか?」
賢者「変化の魔法ですか? あるには、ありますけど……」
魔法使い「かなり高度な魔法よ。人間が唱えられるような魔法じゃないわ」
剣士「つまり?」
賢者「高質な魔力を持つ妖精族のエルフにしか扱えないと言われているんですよ」
剣士「じゃ魔族はどうなんだ?」
魔法使い「魔族? 無理だと思うけど。魔族はどちらかと言うと人間に近いから」
剣士「そうか……」
魔法使い「ねえ、どうしてそんなこと聞くの?」
剣士「あー、それが使えれば旅路も随分と楽になるかなって」
魔法使い「本当にそれだけ?」
202
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:15:18 ID:96rMVEKQ
剣士「いや、実を言うとピチピチギャルになりたい爺さんが酒場にいて――」
剣士「その爺さんの願いを叶えるにはどうすればいいのかなって……」
魔法使い「ふーん」
剣士「しかし、二人は本当に魔法に詳しいんだな。聞いてよかった」
賢者「そりゃそうですよ。お婆様に鍛えられましたからね!」
剣士「お婆さん、二人の?」
賢者「あれ? お姉様、剣士さんに話してなかったんですか?」
魔法使い「そういえば言ってなかったわ。色々と面倒なことになりそうだからって」
剣士「なにかあるのか? もしかして二人は……」
魔法使い「ええ、クォーターエルフなの」
剣士「クォーター!? ハーフではなく、クォーターなのか?」
魔法使い「お母様はハーフよ。お婆様が純潔のエルフだから」
賢者「ふふっ、驚きました?」
203
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:16:52 ID:96rMVEKQ
剣士「と言うよりは納得したかな。二人は魔術に長け過ぎている」
魔法使い「魔術は才能で決まるようなものだからね……」
剣士「そうなのか?」
魔法使い「ええ、例外を除けばね」
魔法使い「勇者との契約。勇者と契約すれば、魔力は格段に高まるわ」
剣士「女神の加護というやつか。やはり勇者は別格なんだな」
魔法使い「当然でしょ、勇者は神に選ばれた存在なのよ?」
剣士「選ばれた存在、血統か……」
魔法使い「悔しい?」
剣士「まあな。魔法が使えればと思うことはある」
魔法使い「人間には出来ることと出来ないことがあるわ」
魔法使い「頼りなさいよ。仲間なんでしょ、私達」
剣士「そうだな……」
204
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:19:54 ID:96rMVEKQ
魔法使い「じゃ、そろそろ寝ましょうか」ポフ
剣士「――って、ベッドの件はどうした?」
魔法使い「あーっ! なにドサクサに紛れて貴女がベッド使ってるのよ!?」
賢者「あやー……」シュン
剣士「提案は?」
魔法使い「却下されたわ」
剣士「どうしても?」
魔法使い「姉妹だからとか同姓だからとかって理由で一緒に寝させるなんて酷くない?」
剣士「う……」
賢者「すみません、ちょっと借りるつもりで…… すぐどきますね」ノソッ
剣士「待て、賢者!」
205
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:21:23 ID:96rMVEKQ
賢者「?」ゴテッ
剣士「俺が床で寝るよ」
魔法使い「貴方が一番疲れてるでしょ?」
剣士「疲れているのは一緒だろう?」
剣士「てか、こうなると俺が床に寝るのが一番なんだよ。俺の精神衛生上の問題で!」
魔法使い「うわっ、面倒臭」
賢者「私は大丈夫ですから剣士さんがベッドを使ってください。剣士さんに床で寝られては私が困っちゃいます」
剣士「しかし……」
賢者「じゃ順番にしましょう。もし次こう言うことがあったら私が使います」
剣士「わかった、そうしようか」
魔法使い「決まったの? じゃ、明かりを消すわね」フッ
206
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/08(月) 05:24:08 ID:96rMVEKQ
数十分後――
剣士「」スースー 魔法使い「」スヤスヤ
賢者「!」ムクッ
賢者「剣士さんもお姉様も寝ましたね。ふふっ、今こそベッドに侵入するときです!」
賢者「寝ているんだから気づきようがありません。ではお姉様、失礼しまーす」モゾッ
魔法使い「なにしてるの?」
賢者「マ、ママが恋しくなっちゃって」テヘッ
魔法使い「……」
賢者「バ、バブー……///」
魔法使い「このダメな子、ダメな子! 大人しく寝てなきゃダメって言ったでしょ!」ゲシ
賢者「あぅっ!」コテッ
魔法使い「バイバイ」
賢者「ネグレクトはいけませんよーっ」シュン
207
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/09(火) 01:28:30 ID:hKM.1eXo
隠す必要があるのか
おつおつ
208
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 18:56:44 ID:oUF6g2Z6
更に数十分後――
剣士「」スースー 魔法使い「」スヤスヤ
賢者「!」ムクッ
賢者「先程は失敗しましたが、今度こそです!」テテテ
賢者「お姉様のとき以上に緊張しますね」ゴクリッ
賢者「ふぅー、剣士さん、失礼しましゅ……」モゾッ
賢者「……」ポフン
剣士「……」
賢者「あれぇ? 気づかれていない?」ゴロ
賢者「せ、成功してしまったーっ!?///」ドキーン
209
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 18:58:40 ID:oUF6g2Z6
賢者「このまま添い寝が出来てしまうのですか? それはそれで――」
賢者「ドキドキして寝られません! はふーっ、はふーっ///」ドキドキ
剣士「……寝ろよ」ボソ
賢者「ぎゃわー! 起きていたんですかーっ!?」
剣士「起きたんだよ」
賢者「あのー、嫌じゃないんですか?」
剣士「俺は気にしない」
賢者「それはそれで凹みますね」シュン
剣士「じゃどう反応すれば良かったんだ。てか、賢者は嫌じゃないのか。男と一緒だぞ?」
賢者「い、嫌だったら潜り込みませんよ!」
剣士「そりゃそうか」
210
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 18:59:36 ID:oUF6g2Z6
賢者「で、本当にここで寝て良いんですか?」
剣士「賢者が嫌でなければ。窮屈だが床よりは休めるだろう?」
賢者「あ、はい。暖かくて柔らかくて気持ちいいです///」テレ
剣士「休める時にしっかり休んだ方がいい。俺はそれを怠って死にかけた」
賢者「し、死にかけた……?」
剣士「ああ、ミノタウロスとの戦いで」
賢者「あー、懐かしいですね」
剣士「身体は思う様に動かないし、集中力はきれるし……」
賢者「あ、集中力で思いだしたんですけど。可愛いペットを思い浮かべると集中力って回復するそうですよ」
211
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:00:47 ID:oUF6g2Z6
剣士「へー、でもペット飼ったことないから難しいな」
賢者「王子様なのになかったんですか?」
剣士「それは関係ないだろう……」
賢者「じゃあ私を思い浮かべて下さい!」
剣士「賢者を?」
賢者「ふふっ、お婆様に言われていましたからね。賢者は子犬みたいだねって!」
剣士「そ、それで良いのか?」
賢者「なにか問題ありました?」
剣士「いや、べつに……」
212
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:02:08 ID:oUF6g2Z6
賢者「そう言えば昔にもあったんですよね。お姉様のベッドに忍び込もうとしたこと」
剣士「どうしてまた?」
賢者「七年くらい前ですかね? あの日は雷が酷い夜でした」
賢者「鳴り響く雷が怖くて、一人じゃ眠れなくて。だからお姉様の部屋に行ったんですよ」
剣士「それで?」
賢者「決まっているじゃないですか。今日と同じく蹴飛ばされましたよー」
剣士「魔法使いも雷が怖かったんじゃないか? それを賢者には知られたくなくて……」
賢者「お姉様に限ってそれはないですって」フフ
剣士「わからないさ。今日だって何か恥ずかしい理由があったのかもしれない」
賢者「寝相が悪いとか、ですか?」
剣士「寝言が酷いとかな」
213
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:02:56 ID:oUF6g2Z6
賢者「剣士さんも結構酷いこといいますね。お姉様に聞かれたら怒られちゃいますよ」
剣士「だな。この辺でやめておこうか」
賢者「ですね」
剣士「じゃあ、お休み」
賢者「え!? もうおしまいですか?」
剣士「おしまいって……」
賢者「もっと剣士さんとお話したいなって。お姉様の話題は終わりで良いんですけども」
剣士「話ならいつでも出来るだろう?」
賢者「でも二人っきりでお話しすること、お姉様が加わってからなかったから……」
剣士「それは、まあ……」
214
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:04:07 ID:oUF6g2Z6
賢者「えと、何を話そうかな。うーん、話したいこといっぱいあるんですけどねー」
剣士「俺と話して楽しいか?」
賢者「ん? 楽しいですよ??」
剣士「物好きだな」
賢者「そんなことないと思いますよ。剣士さんはいつも真剣に話を聞いてくれますし――」
賢者「上手く言えないですけど。そういうところ含めて大好きです」
剣士「そんなこと言って、恥ずかしくないのか?」
賢者「恥ずかしいなんて。剣士さんは私の誇り――」
賢者「出会えたこと、こうして一緒にいられること。それが何よりも嬉しい。だから私は、私は……」シュン
剣士「賢者……?」
賢者「剣士さんは私と出会って…… あ、いえ、すみません」
賢者「やっぱり今日はもう寝ましょう。しっかりと休まないとだし、おやすみなさーい!」
剣士「あ、ああ……」
215
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:05:23 ID:oUF6g2Z6
翌日――
賢者「ふわーっ、おはようございます」ムクッ
魔法使い「おはよう」
賢者「あれ? 剣士さんは?」
魔法使い「もう出かけたわ」
賢者「そうだったんですか。あ、その、これは……///」
魔法使い「なに変な声を出して」
賢者「やー、どうして私がベッドで寝ていたのか気になるかなーって」
魔法使い「べつに気にならないけれど」
賢者「そ、そうですか?? あっ、特にいやらしいこととかないですからね///」テレッ
魔法使い「……」
賢者「あくまで、しっかり休む為です。間違っちゃ駄目ですよ///」テレテレッ
魔法使い「わかってるわよッ!!」
賢者「!?」ビクッ
216
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:06:31 ID:oUF6g2Z6
魔法使い「ご、ごめんなさい」
賢者「いえ、こちらこそすみません。――それで、えっと、お姉様は出かけないんですか?」
魔法使い「んー、そろそろ出かけるかな」パラッ
賢者「あーっ!! それ、お婆様の魔道書じゃないですか!?」
賢者「家に一冊ないと思っていたらお姉様が持っていたんですね。よかったー」ホッ
魔法使い「ごめんなさい。どうしてもこれだけは持っておきたくて――」
魔法使い「ん?? かわりに書き写した物を置いてかなかった?」
賢者「あるれぇ?」
魔法使い「なくしたのね」
賢者「ふーっ。さて、私も出かけよう!!」
魔法使い「ちょっと!」
賢者「行ってきまーす」タタタッ バタン
魔法使い「はあ……」
217
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:07:51 ID:oUF6g2Z6
門――
剣士「城壁のような、か。確かに立派ではあるが……」
武闘家「魔族の進撃を止めるには心細いって言うか、無力だよな」
剣士「え?」
武闘家「だろ?」
剣士「あ、ああ」
武闘家「ただ岩を積み上げた程度で重量級の魔族が止まるわけないし、そもそも鳥魔族には意味がない」
剣士「だが、安心感は得られる。人が生活する上でとても大事なことだ」
武闘家「けど、それじゃいざって時はあっという間だぜ。何も出来ずに奪われちまう」
剣士「……何か事情がありそうだな」
武闘家「まあな。だから今、魔王討伐なんてことをしてる」
剣士「魔王を?」
218
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:09:13 ID:oUF6g2Z6
武闘家「なあ、紅蓮の剣士って知ってるか?」
剣士「紅蓮?」
武闘家「四天王を倒した人間の剣士ことだ。その実力は勇者に匹敵するって話だぜ」
剣士「その男に興味があると? 同じ魔王討伐を目指す身として」
武闘家「そりゃな。どうやって魔王を倒すつもりでいるのかとか知りたいことは山ほど」
剣士「魔王を倒す方法か……」
武闘家「魔王は勇者、それも聖剣でなければ倒せないとされている。いや、そもそも――」
武闘家「人間と魔族の差をどう埋めているのか、気になるじゃあねーか!」
剣士「もし何も考えていなかったらとしたら?」
219
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:09:53 ID:oUF6g2Z6
武闘家「流石にないだろ?」
剣士「ん、んー……」
武闘家「なんでそんなことを? そういえば紅い髪だな、腰には剣を携えてるし――」
武闘家「ま、まさか?! あんたが、いや貴方が紅蓮の剣士殿なのか!?」
剣士「だとしたら……?」
武闘家「仲間になってくれねーか? いや俺達をしてくれか? もー、どっちでもいいや!」
武闘家「とにかく協力し合おうぜ。目的は同じなんだしよ!!」
剣士「あ、えと、証明できるものが何一つないんだが……」
武闘家「そんなことか。なら簡単だぜ」ダンッ ブオ
剣士「!?」ヒラリッ
武闘家「こ、この距離でかわすか!? ハハ、あんた本物だな……」
剣士「(なんて鋭い殴打だ。この男も覚悟と実力があって言っているということか……?)」
220
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/14(日) 19:12:04 ID:oUF6g2Z6
武闘家「悪い悪い。試す様な真似してよ」
剣士「あ、いや。これで納得したのならそれで……」
武闘家「したした。剣士殿が初めてだぜ、俺のパンチをかわした人間は」
武闘家「――んじゃどこか落ち着いた場所で話そうぜ。腹も減ったし」
剣士「さっき言っていた俺達って、君にも仲間がいるのか?」
武闘家「いるぜ。あ、丁度いい所に……」
狩人「どこをほっつき歩いていた。ん、この男は……?」
武闘家「聞いてくれよ、このお方が俺達の探していた――」
狩人「紅蓮の剣士かッ!?」
剣士「あ、どうも……」ペコッ
狩人「確かめたのか?」
武闘家「おう。間違いないと思うぜ」
狩人「確かに噂通りの風貌をしているが…… まあいい、お前を信用しよう」
剣士「は、はあ……」
221
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/16(火) 01:45:24 ID:7ZR9JaZc
おつおつ
魔法がかわいい
222
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:43:25 ID:2Fq/Fqbs
飯屋――
武闘家「とりあえず今すぐ用意できるのを三人分ねー!」
店員「かしこまりましたー」
狩人「ゴホン。落ちついたところで本題に入ろうか」
狩人「剣士殿はどのようにして魔王に対抗しようと考えている?」
剣士「うっ……」
狩人「見ず知らずの、それも名もなき冒険者相手に手の内は明かさないか」
剣士「いえ、そうではなくて。本当に何も考えていないだけです……」
狩人「何も? じゃ四天王を倒したと言うのは……」
剣士「本当のことです。ですが俺一人の力といわけではありません」
剣士「多くの助けがあったからこそ。それと敵の不意をつけたのも大きかった……」
狩人「ふむ。つまり運が良かっただけで、勇者に代わる力は備わっていないんだな?」
剣士「ええ。実際は明確な答えを見出せないまま漠然と旅を続けているだけです」
剣士「すみません。俺は貴方達が望むような答えも力もまだ持っていない……」
狩人「噂話には尾ひれがつくものだ。ま、そんなところだとは思っていた」
223
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:44:36 ID:2Fq/Fqbs
狩人「じゃ俺の考えを話そう」
剣士「何か対抗する策があると?」
狩人「剣士、妖精族のエルフのことは知っているか?」
狩人「エルフとは、外界との交流を拒み独自の文化を築く知識に長けた高貴な種族だ」
剣士「ええ、それが?」
狩人「彼等のその高度な知識は女神と邪神、二柱から授かったものだと聞いたことがある」
狩人「もしそれが本当であるなら。いや、そうでなくても彼等の知識を授かれれば……!」
剣士「巻き込むのか!? 争いをなによりも嫌う彼等を、人間と魔族の戦いに」
狩人「甘っちょろいことを。このまま何も出来ず奴等に蹂躙されてもいいと言うのか?」
狩人「傍観が許される時代ではなくなったんだ。わかるだろう!?」バンッ
224
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:46:39 ID:2Fq/Fqbs
剣士「だが上手くいくとは思えない。彼等は中立を保つことで平穏を築いてきた」
剣士「いや、それ以前に彼等の里にただの人が立ち寄れるはずが……」
狩人「エルフの中には里を飛び出し、人界近くに住むはぐれ者もいると聞く」
剣士「!?」
狩人「その者と接触できれば、里に立ち入る手だても知ることができよう」
魔法使い「無理よ。里を飛び出たエルフは自身の記憶に封印をかけ秘密を守っているもの」
狩人「だ、誰だ!!」ガタッ
剣士「魔法使い、どうしてここに?」
魔法使い「え? お腹が空いたからだけれど」
剣士「それはそうか……」
225
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:48:24 ID:2Fq/Fqbs
狩人「仲間か?」
剣士「ああ」
狩人「で、その話は本当なのか?」
魔法使い「さあ? そういう話を耳にしたことがあるだけ、貴方と同じ眉唾よ」
武闘家「ほへー、やっぱエルフには色んな噂が飛び交ってるんだな……」
狩人「だが、それが本当だとしても里は存在しているのだから入れる方法はあるはず――」
狩人「俺は諦めんぜ。どんなことをしてでも絶対につきとめてやる!」グッ
剣士「……」
魔法使い「ところで、どうして貴方達は魔王に挑むの? 地位? 名誉? それとも……」
狩人「ば、馬鹿にしているのかッ!?」
226
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:49:10 ID:2Fq/Fqbs
剣士「聞くにしても聞き方ってものがあるだろう」
魔法使い「濁してなんになるの。仲間になるかも知れないんでしょ?」
剣士「だからって……」
武闘家「復讐だよ」
狩人「おい!!」
武闘家「今さら隠すことでもねーだろ?」
狩人「むう……」
武闘家「故郷を魔王に滅ぼされたんだ。生き残りは俺達だけ――」
武闘家「だからなにがなんでも魔王を倒さなきゃいけねーんだ。皆の無念を晴らす為にも」
剣士「そう、だったのか……」
227
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:50:08 ID:2Fq/Fqbs
狩人「俺達を笑うか? それとも復讐などくだらないと正すか?」
剣士「いえ、亡くなった人を想い続けるのは大切なこと。その人を忘れない為にも……」
狩人「知ったような口ぶりだな」
剣士「俺もそうでした。死んだ勇者の為に始めた……」
狩人「お前も?」
剣士「ええ、だから気持ちはわかるつもりです」
狩人「剣士にとっての勇者とは……?」
剣士「家族のような大切な存在でした……」
狩人「そうか。それはすまなかったな」
剣士「こちらこそ踏み入ったことを」
228
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:51:21 ID:2Fq/Fqbs
狩人「なあ、よかったら俺達と組まないか?」
剣士「それは貴方達と一緒にエルフの里を探すということですか?」
狩人「他にいい案があるか?」
剣士「……」
狩人「何を迷うことがある? 闇雲に挑んでも勝ち目のない相手なのは知っているんだろう」
剣士「仲間と相談する時間を貰えないだろうか?」
狩人「いいだろう」
狩人「俺達はあと二日ここに滞在するつもりだ。それまでに答えを聞かせてくれ」
剣士「わかりました」
武闘家「いい返事を期待してるぜ。じゃな、剣士殿!!」タッ
229
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:53:02 ID:2Fq/Fqbs
魔法使い「私は貴方の意向に従うわ。貴方が素性を明かせと言うのなら明かすし、里のことも調べるわ」
剣士「いや、彼等の仲間にはならないよ」
魔法使い「エルフを巻き込みたくないから? それはもう通らないわ。私達のこと知ったでしょ?」
魔法使い「それに彼等の案も決して悪くないわ。当てもなく旅を続ける貴方より遥かにね」
剣士「魔王だけならそれもいいんだろうな」
魔法使い「?!」
剣士「賢者と話してくる」タッ
魔法使い「ちょ、ちょっと待って!」ガタッ
店員「あの、お客さん。お会計を……」
魔法使い「なによ、あの男ども払ってなかったの!?」
230
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:54:02 ID:2Fq/Fqbs
剣士「宿にはいなかった。一体どこにいるんだ。こうも人が多いと……」
ガヤガヤ ワーワー
剣士「子供の声。この先から……?」
賢者「わー! 順番、順番ですよーっ!!」アセアセッ
剣士「賢者、子供たちと遊んでいるのか?」ヒョコ
賢者「あ、剣士さん。はい、みなさんの運勢を占っていたんですよ」
剣士「占い?」
賢者「剣士さんも占いましょうか?」
剣士「いやいいよ。それよりどうして……」
賢者「最近はよそから来た人が多くて広い場所では遊べないそうです。だからこの路地で遊んでいたんですよ」
231
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:55:24 ID:2Fq/Fqbs
幼女「お姉ちゃーん、さっきどうやったの? どうやって編んだの?」クイクイ
賢者「それは花の裏に茎を通すんですよ。あ、逆ですね。もう片方の茎の方で……」
剣士「花冠の作り方まで教えているのか?」
賢者「こういうこと得意なんです」フフン
男の子「ねーねー、もう一回占ってよー」
女の子「草のお船どうやって作ったのー、もう一回作ってよー」
賢者「ちょ、ちょっと待ってー」アセッ
剣士「俺でよければ手本見せようか? 花の冠や草船くらいなら作れる」
賢者「剣士さん作れるんですか?」
剣士「ああ、昔妹にせがまれて良く作ったものだ」
232
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:56:36 ID:2Fq/Fqbs
幼女「えー、嘘だー」
剣士「嘘じゃない。見てろよ」キュキュッ
幼女「はっ、早い。早いよー。もっとゆっくりー」
剣士「え、そうか? それはそれで難しいな……」モソモソ
男の子「ねー、お兄ちゃんは草笛吹ける? お姉ちゃんは草笛吹けないんだってー!」
剣士「草笛? ああ、できるよ」
男の子「ほんと!? 吹いて、吹いてー!」
剣士「花冠を作り終わったらな」
男の子「作りながら吹いてよ」
剣士「それは無理だってっ!」アセッ
233
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:58:00 ID:2Fq/Fqbs
賢者「剣士さん……」ジー
剣士「どうした?」
賢者「ううん。なんでもありませんよ」ニコッ
剣士「?」
ゴーンゴーン
剣士「鐘の音、この鐘は……」
武闘家「剣士殿、ここにいたか。外がかなりマズイことになってるみたいだぜ」
剣士「そうか、ついに来やがった。想像以上に早いじゃないか!」ガタッ
武闘家「え、ああ。魔王軍が見えたって……」オドッ
剣士「賢者、子供たちを頼む!」
賢者「わかりました。……剣士さんは?」
剣士「武闘家と準備してくる。待っていてくれ」
賢者「は、はい……!」
234
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/22(月) 23:58:58 ID:2Fq/Fqbs
武闘家「あの子も剣士殿の仲間か?」
剣士「ああ。それより馬を手に入れたい。場所を知らないか?」
武闘家「馬? あー、なるほどな。任せてくれ。知ってるも何も俺達の寝床だぜ」
剣士「寝床?」
武闘家「どこもいっぱいでよ。馬小屋に泊まらせて貰ってたんだ」ハハッ
剣士「そ、それはなんというか……」
武闘家「悪いことばかりじゃないぜ。お陰でどの馬が優秀か見分けられた」
剣士「本当か!?」
狩人「剣士殿は見つかったのか!?」ダッ
武闘家「おう、ばっちりよ」
狩人「すまんな。もう悠長に待っていられなくなった」
剣士「聞いている」
235
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:00:16 ID:uW7JCOK6
武闘家「んじゃ、さっさと馬パクってトンズラしようぜ」
狩人「そういう算段か。いい判断だ」
剣士「いや、俺は逃げない」
狩人「奴等と戦うというのか!?」
剣士「ああ。確かに多勢に無勢。加えてこちらは戦う準備すら出来ていない。だが――」
剣士「一対一の決闘ならば……!」
狩人「なにを言ってるんだ、お前……?」
剣士「大将は武人気質の馬鹿だそうだ。おそらく一騎打ちを申し出れば成立するだろう。俺の名も敵に売れているみたいだしな」
狩人「成立したとして、勝てる確信はあるのか? 今度は小細工なしだぞ!!」
剣士「ない。だが……」
狩人「なら諦めろ!」
剣士「ここの人達はどうなる?」
236
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:02:44 ID:uW7JCOK6
狩人「剣士、チェスは知っているな。駒を犠牲にしなければ勝てないゲームだ」
剣士「ここにいる人達が全て駒だと、貴方はそう言うのか?」
狩人「仕方のない犠牲だ。わかるだろう? 犠牲なくして大事は成せない――」
狩人「何かを捨てない限り、俺達のような人間に魔王は倒せないんだよ!」
剣士「……」
狩人「ここはクールになろうぜ、剣士」
剣士「なあ、勝てるから戦うのか? 勝つ為に戦うんだろう」
狩人「は?」
剣士「俺は彼女の期待に応えたい。ただ、それだけだ」
狩人「か、彼女を想えばこそだろ。命あれば復讐のチャンスは訪れる。だから今は!」
剣士「すまない、俺は貴方とはもう違う」
狩人「何を言ってる? 愚かだぞ、それの選択はナンセンス、バットチョイスだ!!」
237
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:04:28 ID:uW7JCOK6
武闘家「剣士殿、馬をパクってきたぜ。それも最高の馬をよ」
狩人「お、お前!!」
剣士「ありがとう。あとは外にでるだけか……」
剣士「門番、ここを通してくれ。俺が奴等を追い返す」
門番「え! そ、そう言われても誰も通すなと市長から申し付けられており……」
剣士「俺が紅蓮の剣士だと知ってもか?」
門番「紅蓮? 一体なにを……」
狩人「知らないのか? 魔王軍の将を二度も撃退した剣士の通り名だぞ!」
門番「ビックネームでしたと! そ、それは失礼しましたー!」
剣士「ありがとう、助かった」
狩人「気持ち悪いこと抜かすな。さっさと死んでこいッ!!」
剣士「ああ。そうさせて貰おうか!」
238
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:07:33 ID:uW7JCOK6
ケンタウロス(以下ケンタ)「ここに我が友を討ち滅ぼした例の剣士が潜伏していると?」
オーク「はい。諜報部隊の情報が正しければ」
ケンタ「同胞を疑うような言い方はよそうぜ。信頼しようじゃないか」ニカッ
オーク「も、申し訳ございません……」
ケンタ「しっかし、物騒な壁だ。市街に突入するのは少し骨が折れそうだな」
ケンタ「よーし。あの壁を一番に突破した者には俺から褒美を贈る!」
「「おおおお!!」」
ケンタ「いい返事だ。後れを取るなよ!」アハハッ
オーク「お待ちください、門が開きます!? 中から一騎だけ? こちらに向かって……」
ケンタ「まさか、降伏の使者なんていう盛り下がるもんじゃないよな?」
オーク「こ、降伏なんてものではない。あれは、あの男は――ッ!?」
239
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:11:29 ID:uW7JCOK6
剣士「俺は紅蓮の剣士。そちらの大将との一対一の勝負を所望する!」
剣士「この一騎打ちにこちらが勝った場合はただちに侵攻を中止し撤退して頂く」
剣士「そちらが勝った場合は――」
ケンタ「街の武装を解除し降伏するか?」ザカッ
剣士「ああ」
ケンタ「アハハ、そいつは面白いな。いいぜ、受けて立とうじゃないか!」
オーク「そう易々と敵の誘いに乗っては!? それに奴の言葉が本当かどうかも……」
ケンタ「十中八九嘘だろうな。紅蓮の剣士とはいえ、この街の決定権まではないだろうよ」
ケンタ「それに降伏されてもこちらとしては困る。捕虜を抱えるだけの力はないからな」
オーク「ではなぜ?」
ケンタ「言っただろう、面白いからだ」ニヤッ
オーク「なんて頭の悪い?!」
240
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:13:50 ID:uW7JCOK6
ケンタ「僅かではあるが俺の部隊に身を置いたと言うのになぜ理解できない」
ケンタ「理屈や理論では決して満たされないこの魂の渇きを!?」
オーク「で、ですが……」
ケンタ「それともお前は俺が負けるとでも言うのか。このフィールドで?」
オーク「あり得るから申しているのです。あの男に限り、それが!」
ケンタ「なら尚更だぜ。約束された勝利など不要。死闘の果てにある勝利こそ俺の求めるもの!」
オーク「そう申されましても……」
剣士「じゃ、いいんだな?」
ケンタ「一騎を囲い殺したとなれば四天王の名折れ。是非もなし、受けて立つ!」
剣士「感謝する。――いくぞ!」ダッ
ケンタ「魔界四天王の一人、迅雷のケンタウロス。いくぜ!!」ダッ
241
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:16:21 ID:uW7JCOK6
壁の上――
武闘家「どうやら一騎打ちは成立したようだぜ」
狩人「だからなんだっていうんだ。問題はその先だろう!」
賢者「やっぱりこの騒ぎは剣士さんが……!?」オドッ
武闘家「あんたは剣士殿の仲間の…… 来ちまったのかよ!?」
狩人「この女も……?」
武闘家「しかし歯がゆいな。見守ることしかできないなんて……」
狩人「水を差せば後ろに控えている大群が襲ってくる」
武闘家「こっちにだって街の自警団がいるんだぜ。それにこの壁だって何かの役に……」
狩人「ああ、そうだよ。戦うにしてもこの街の奴等を巻き込むこともできた!」
狩人「それが定石なんだ。市街戦なら罠を仕掛けることも、敵の機動力だって……!」
242
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:17:38 ID:uW7JCOK6
狩人「なのに、なぜ……」
賢者「やっぱり剣士さんは他者の命を優先して……」
狩人「なに?」
賢者「市街戦になればこの街は崩壊します、死者も大勢出ることでしょう」
狩人「だからなんだ。いや、まさか…… まさか剣士は!?」
賢者「そうです。一騎打ちに勝利すればこの街を、この街の人々を守れます」
狩人「だからって、だだっ広い平原で人馬と真っ向勝負だと。馬鹿だろう!!」
賢者「勝ちますよ、剣士さんは」
狩人「あんたも相当だな。勝てる見込みはないぜ」
賢者「剣士さんは賢明な方です。勝ち目のない戦いは絶対にしません。何か策が……」
243
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:18:47 ID:uW7JCOK6
狩人「一騎打ちだぞ。策などあるか!」
賢者「なら力でねじ伏せます!」
狩人「グリフォンの時だって仲間と協力し奇襲してやっとだったんだろう!?」
狩人「無理なんだよ、勇者でなければ力でなど!」
賢者「剣士さんは勇者をも越える人です、いつの日か必ず…… だから勝つんです!」
狩人「努力でなんとかなる話じゃない。特別な力を授からない限り、俺達では絶対にッ!!」
賢者「それでも剣士さんは勝ちますよ。私は信じる、あの人の持つ無限の……」
魔法使い「止めなさい。みっともないわ」ガシッ
賢者「お、お姉様!?」
魔法使い「もう下がりなさい」
賢者「お姉様も無理だって言うんですか!?」
244
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/23(火) 00:20:27 ID:uW7JCOK6
魔法使い「残念だけれど、今回は無理よ。どう考えても勝てる要素はないわ」
賢者「そ、そんな、そんなことは……」オドッ
武闘家「けど相当だぜ、剣士殿の覚悟は。正直、興奮しちまってる。収まりがつかねえよ」
狩人「馬鹿を言え、覚悟で敵は倒せない」
武闘家「でも熱くならないか、魂が震えるって言うか……」
狩人「魂がなんだ。格好だけで勝てたら苦労はない!」
武闘家「お、俺はただ凄いって。……ごめん」
魔法使い「(そう、この男が正しい。見栄で戦えても勝つことは決してできない)」
魔法使い「(貴方もそれはわかっていたんじゃないの?)」
魔法使い「(ねえ、教えてよ。何が貴方をそこまで駆り立てるの?)」
賢者「大丈夫。剣士さんは絶対に勝つ。だから、だから私は……」ギュッ
魔法使い「――ッ!?」
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/23(火) 17:18:52 ID:nKU/M0Pk
乙
246
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:10:01 ID:JuVqPF1w
平原――
ケンタ「この様な形でお前と相見えるとは思わなかったぜ。搦め手を好むと奴だと聞いていたんだがな」
剣士「アンタみたいな魔族ばかりじゃないからな」
ケンタ「俺にあわせたって事か。――ハハ、そいつは上等だ。相手とって不足なし!」
ケンタ「最初から本気で行かせて貰う。この一合で終わっても文句言うんじゃないぜ」ダンッ
剣士「早い。だが――ッ!!」バッ
ケンタ「受け太刀? ンハッ、この突撃は受け切れんぜ!」ズバンッ
剣士「ぐぅ……ッ!?」ガキンッ
ケンタ「ほう、この一刀を受け流すとはやる!」ズダダ
剣士「なんだ、腕ごと持っていくようなこの一撃は……」ビリビリ
ケンタ「脚力だ。お前達人間はどう頑張っても鞍の上で踏ん張る事しか出来ない――」
ケンタ「だが、人馬一体である俺は違う。下半身の力を剣にのせる事が出来る」
ケンタ「わかるかこの違いが。そう、これが魔族と人間の差だ。決定的な!」
剣士「わかってはいたがこれほどなのか…… くっ、突撃を許せば負ける!」ダンッ
ケンタ「俺の後ろに付こうってか。人馬の俺に食い付けるかなー?」ダッダッ
247
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:12:24 ID:JuVqPF1w
剣士「いけ!」バン
ケンタ「へー、後ろに付くか。アハハッ、馬の扱い上手じゃないか!」
剣士「これでも一国の王子だ。馬術は幼いころから習っている」
ケンタ「にしたって人馬の俺に食い付くとは、お前は勇者以上だよ!」
剣士「知らない癖に……ッ!」
ケンタ「だから悔しい。女神の化身とも言われた最強と剣を交えられなかった事が!」
剣士「捉えたッ!」シュッ
ケンタ「甘いな!」グンッ スワッ
剣士「なにィ!?」ガキン
ケンタ「左後方を取れば優位だとでも? 残念、お前らとは柔軟性が違うんだよー!」キンッ
剣士「弾かれた――がッ!」バッ ブン
ケンタ「グッ、とは言えなあ、振りぬきながら剣戟をいなし続けるのは……」ガキン
剣士「苦しいか? さっさと沈め!!」サッ シュ
248
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:13:21 ID:JuVqPF1w
ケンタ「マジで良くやる。離れやしない…… こうなりゃ、パワー全開でえ!」ググッ
剣士「加速するのか!?」
ケンタ「振り切るぜ! ハイヨーケンタァアーッ!!」ダッダッ
剣士「ふざけた掛け声。だが早い、離される?!」
ケンタ「最大速度からの急旋回ッ!」グルンッ
剣士「向き合う形に、またあの突撃がくる……!」ギリッ
ケンタ「さーて、全力疾走からの突撃だ。もう一度凌げるかー?」グワッ
剣士「くっ、やるしかない!」ダカッ
ケンタ「逃げないとは見上げた度胸だ。けどな、お前の運命決まったぜ!」ダッ
剣士「――ッ!」チャキッ
ケンタ「学べ、受け切れないことをーッ!」ブォン
249
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:14:38 ID:JuVqPF1w
剣士「見切った!!」スッ クルッ
ケンタ「馬鹿な、馬上戦でフェイントだとッ!?」スカッ
剣士「ここだ――ッ!」シュッ
ケンタ「いや、まだああッ!!」バンッ
剣士「横っ跳び?!」
ケンタ「ふーっ、驚いたぜ。こっちの斬撃を誘導しギリ避けからのカウンターとはよ」ザッ
剣士「足が馬だというに、あのように避けるのか……」
ケンタ「言ったろうが、俺は人馬一体。ただの馬ではないってなあ!」
剣士「何度も同じ事を、他に言葉を知らないのか……!」ギリッ
ケンタ「しかし何たる感動、胸が躍る。これ程の強者と戦える俺はラッキーホースだぜ!!」
剣士「(くっ、アイツ等の言う通り俺では…… いや、まだだ。まだ認めわけにはいかない)」
剣士「(臆するな、証明して見せろ。俺は紅蓮の――賢者の勇者なんだろうッ!!)」
250
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:16:06 ID:JuVqPF1w
ケンタ「さあ、次も驚かせてくれよ!」ダッ
剣士「(またあの速度からの突撃がくる。防がなければ今度こそ終わる。だが――ッ!!)」
ケンタ「ぐっ、ウオオ!!」ザッザッ
剣士「?!」
ケンタ「く、くそっ……」ザッザ
剣士「遅い。明らかに勢いが落ちている。体力を切らしたのか?――いや、違う!」
剣士「所詮奴はただの馬だった。やはりあの横っ跳びには無理があった!」
ケンタ「ああ、足首を痛めちまった。けどよ、それがなんだってんだァ!」ザカッ
剣士「やれる!」チャキッ
ケンタ「勢いづくな、剣士ィ!!」ブォン
剣士「くッ!」ガキンッ
ケンタ「受け止めやがった!?」ビクッ
251
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:17:50 ID:JuVqPF1w
剣士「これで互角だな!」キンッ
ケンタ「あとは上半身の、人の部分が勝敗を分けるってか? そいつは面白いッ!!」
剣士「ここからだ!」ダッ
ケンタ「ハハ、もう切返してきやがったァ!」
剣士「いけ!」シュ
ケンタ「させるかよ!」ガキンッ
剣士「――ッ!」キンッ
ケンタ「凄い、凄いぜ。この高揚感。これこそ雄の戦い。俺が求めたもの!!」
剣士「はああ!」ガッ
ケンタ「最高だよ、剣士。もっともっと斬り合おうぜぇーッ!」
252
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:19:18 ID:JuVqPF1w
壁の上――
武闘家「長いな。これほど長い一騎打ち、それも馬上戦なんて見たことないぜ……」
狩人「だが、もう終わりだ。斬り始めた頃の勢いはない。決着は近いぞ」ガチャガチャ
武闘家「何してんだ!?」
狩人「見てわかるだろう。ここを去る準備だ。お前も早くしろ」
武闘家「剣士殿が負けるってのか?」
狩人「勝てる要素あるか? いけると思えた場面もあったがもう駄目だ。持久戦で魔族に勝てるわけがない」
武闘家「けど!」
狩人「それに勝ったとしても相手が素直に要求を受け入れるとは限らんだろ?」
魔法使い「逃げるなら早くしたら?」
狩人「ふん、馬鹿な男に惚れた馬鹿な女か……」
魔法使い「皮肉のつもり? 器量の小さい……」
253
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:21:03 ID:JuVqPF1w
狩人「俺は勝ち目のない戦いに挑むほど愚かじゃないんだよ」
魔法使い「死にたくないだけでしょ?」
狩人「なっ!?」
魔法使い「貴方は復讐なんて端からする気はない。言い訳を探しているだけ、違う?」
狩人「あんたは……!」ガタッ
魔法使い「エルフの里を見つけて、そこで望む答えが手に入らなかったらどうするの?」
狩人「そんなことはない、彼等は必ず知っている!」
魔法使い「つまり見つかるまで探し続けるって事? それって逃げるのと何が違うの?」
狩人「奴のように戦えと言うのか?」
魔法使い「復讐ってそうでしょ? 後先なんて考えず、渇きを癒す為だけに戦って……」
狩人「成せない復讐に何の意味がある!」
魔法使い「貴方は復讐に意味を求めるの?」
254
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:22:18 ID:JuVqPF1w
狩人「俺の復讐はただの復讐じゃない。世界を救う復讐だ!」
魔法使い「ならここを救ってみせなさいよ」
狩人「今は無力だ。だから、だからまず力を手にし、そしたら必ず……!」グッ
魔法使い「あ、そう」
狩人「現実を、無力を認めて何がいけないッ!?」バンッ
魔法使い「賢いと思うわ。だから貴方は絶対に挑まない」
狩人「どうすればいい!? それが世界の摂理だと言うなら、俺達には何も……」
魔法使い「馬鹿になればできるわ」
狩人「なッ!?」
魔法使い「認めるわ、剣士は馬鹿よ。頭で考えて諦めがつくほど利口じゃない」
魔法使い「だから今戦っている。その身を焦がし、灰になるまで……」
255
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:25:11 ID:JuVqPF1w
狩人「理解できん、馬鹿げているとしか……」
魔法使い「本当にね。剣士にも私達の様な弱さがあればよかった――」
魔法使い「だけど、あの子が信じ続ける限り決して認めないわ。己の弱さを」
狩人「あの子?」
賢者「……!」ギュッ
狩人「彼女の、賢者の期待に応えるため……?」
魔法使い「ええ……」
狩人「まるで勇者様だな」
魔法使い「誰も勇者にはなれないのにね。――で、どうするの?」
武闘家「俺は逃げないぜ。最後まで剣士殿の戦いを見届けてえ」
狩人「ふん。好きにしろ、俺は行くからな」クルッ スタスタッ
256
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:26:45 ID:JuVqPF1w
魔法使い「お友達行っちゃったけどいいの?」
武闘家「多分、何処かで見てるはずだ。それにもういいんだ、あいつは……」
魔法使い「そう」
武闘家「ありがとうな。えーっと、魔法使いさん?」
魔法使い「礼を言われるようなことした?」
武闘家「実は俺も変だって思ってたんだ。無力を言い訳にして戦いから背を向けてるだけなんじゃないかって」
武闘家「けど、そう言える確信はなくて。だからハッキリ言ってくれて助かったぜ」
魔法使い「じゃ、もういいって……」
武闘家「ああ。俺も誰かの期待に応えたい、剣士殿のように……」
魔法使い「正しい選択だとは思わないけれど?」
武闘家「けど糞が漏れるほどカッコイイじゃねーか。身を削ってでも意地を通すなんて」
魔法使い「あっ、そう」
257
:
◆49HRmRlKYE
:2017/05/27(土) 22:30:39 ID:JuVqPF1w
武闘家「さて、そうと決まれば俺も覚悟を決めないと!」グワッ
魔法使い「そうね。それはすぐにも訪れるかもしれない……」
賢者「剣士さんは勝ちますよ」
武闘家「それでもこっちの要求を飲むとは限らないだろ?」
賢者「絶対に飲みます。だから……」
魔法使い「どうして貴女はそう楽観的でいられるの!?」
賢者「私は剣士さんを信じているだけです!」
魔法使い「いい加減にして。貴女のその過度な期待が剣士を追い詰めているって――」
魔法使い「殺す事になるって何で気づかないのよッ!」
賢者「わ、私が剣士さんを殺す……? え、あ、う、うぅ??」オロオロ
武闘家「おいおい、なんで喧嘩してんだよ!?」
258
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/28(日) 20:17:28 ID:/mDARJSs
ケンタかっこよすぎだろ
おつおつ
259
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/30(火) 00:25:33 ID:7sqDk6gg
面白いおつおつ
かっこいい敵っていいね
260
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/06/04(日) 19:49:56 ID:7y9IuZdg
ケンタが人気で驚き。最近誤字多いので気を付けます
261
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:51:18 ID:7y9IuZdg
平原――
ケンタ「つう!?」ガキン
剣士「ぐッ!」キッ
ケンタ「チッ、これで何度目の突撃だ? 流石に頭がぼんやりとしてきたぜ」ダッダッ
ケンタ「だが、それは剣士とて同じ。いや、俺以上に疲れはきているはずだ」
剣士「ハァ、ハァ……」クルッ ダッ
ケンタ「そりゃそうさ。奴は馬の体力まで気を配らなきゃならないんだからな」
ケンタ「その体力にしたって魔族と人間の差を考えれば限界はとっくに……」
ケンタ「ハハ、本当に大した奴だよ。賞賛に値するぜ。――だが、ここまでだ!」ダカッ
剣士「!?」
ケンタ「ウオオリャアアア」ブオン!
剣士「――ッ!」サッ
ケンタ「!!??」スカッ
262
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:52:11 ID:7y9IuZdg
剣士「はああッ!」ザシュッ
ケンタ「グッ…… まさか、このタイミングであの極限フェイントだと!?」ドバァ
剣士「逃がすかよッ!」ダッ
ケンタ「チィ、駄目だ。利き腕を斬られちゃ、一度距離を取って……」ヨロッ
剣士「いけえッ!」ダンッ
ケンタ「じょ、冗談だろ。追いつかれる!?」グラグラ
剣士「うおおおお!」ザン!
ケンタ「グオオアアアアア!!??」グシャァーーッ
剣士「ハァ、ハァ……」
ケンタ「じ、地べたに跪く、この俺が、馬上戦で……っ?!」バタ
263
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:54:08 ID:7y9IuZdg
剣士「まだ息があるか、流石にしぶといな」
ケンタ「だろう? だが、それだけだ。もう、ガハッ、立ち上れもしない……」グテ
剣士「では……」
ケンタ「ああ。剣士、お前の勝ちだ……」
ケンタ「安心しろ。俺達は誇り高き大地の戦士。約束は守る」
剣士「そうか」
ケンタ「にしたってこいつは予想外だぜ」ブハッ
剣士「仕掛けるのが早かったな」
ケンタ「焦っちまったのか。ハハ、俺ともあろうものが我慢比べで負けるとは……」ゴホッ
剣士「残念だが、我慢比べじゃ俺には勝てないぜ」キリッ
ケンタ「言い切ったな。かっこいいじゃないか……!」グッ
剣士「でなければ困る。かっこつけたんだからな」ドヤッ
ケンタ「アハハア! 俺を越えたのがお前でよかった。満足だ、気持ちよく終われる……」
264
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:56:49 ID:7y9IuZdg
獣魔A「負けたのか、あのケンタウロス殿が……!?」
オーク「どうする? 今、全軍で突撃すれば剣士を倒す事も将軍を助ける事も……」
獣魔B「貴様は元ミノタウロス隊のハイオーク。この弔い合戦に参加したいと我が隊に無理やりついて来た……」
オーク「そうだ。――で、どうする。もう時間は余り残されてはいない」
獣魔C「馬鹿を言え。貴様はケンタウロス殿の戦いに水を刺し辱めると言うのか!?」
オーク「いや、ただのその選択肢もあると……それだけだ」
オーク「(剣士はこの者達の性分を計算に入れて仕掛けたのか? それとも天然で?)」
オーク「(もしそうであるのなら、この先生きのこr――いや、むしろこうでなければ神に挑む資格すらないと言う事なのか?)」
オーク「(だとしたら私は、私の取るべき行動は……)」
265
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:58:30 ID:7y9IuZdg
壁の上――
魔法使い「う、嘘でしょう。あり得ないわ。こんな悪条件で勝つなんて……」
武闘家「嘘じゃねーよ。だって俺、糞が漏れそうなほど興奮してんだぜえ!」キュッ
賢者「行かなきゃ剣士さんの所に……」ガタッ
魔法使い「待ちなさい。門をそう簡単に開けるわけがないでしょ!」ガシッ
武闘家「俺の糞門は今にも開きそうなんだけどな」ハハッ
賢者「で、でも……」モダモダ
武闘家「仕方ねー、この縄で降りるか。ここに括りつければ……」グルグル
魔法使い「貴方も正気!?」
武闘家「けどよ、急がないとヤバイかも知れないだろう?」
魔法使い「駆けつけたところで、あれだけの軍勢を相手に出来るはず……」
門番「おお、魔王軍が退いてゆくぞ!」ウオオオオオ
賢者「先に降ります」ピョンッ
魔法使い「ちょっと!!」
266
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 19:59:46 ID:7y9IuZdg
平原――
剣士「魔王軍が退いて行く……」ジッ
狩人「魔族が約束を守るとは信じられん」ザカッ
剣士「貴方は……」
狩人「もう一度答えろ。あの人馬に勝つ確信があったかどうかを」
剣士「なかった」
狩人「では、なぜだ? なぜ挑んだ!」
剣士「勝ちたかったからだ」
狩人「まだそんな事を。ふざけているのか、ふざけて!」クワッ
剣士「言ったはずだ、俺は貴方とは違う」
267
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 20:00:51 ID:7y9IuZdg
狩人「死んだ勇者の為じゃないのか!?」
剣士「それもあるんだろうが、俺は死んだ者への想いだけで戦えるほど強くはない」
狩人「強くない……?」
剣士「聞こえただろう、喜びの声が」
狩人「たったそれだけの、見知らぬ奴等の為に命を賭したのか!?」
剣士「ああ」
狩人「じゃ、あんたが魔王に挑むのはあの魔法使いの言う通り……」
剣士「大切な人を守る為だ」
狩人「プッ、ククッ、アッハハハハハッ!!」
剣士「笑うなよ。自分でもわかっている。歯が浮くほど青臭いんだろう?」
268
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 20:02:04 ID:7y9IuZdg
狩人「浮くなんて優しい。歯が腐って抜け落ちるほどだ。流動食しか食えなくなった」
剣士「そこまでか?」
狩人「ああ、大マジだよ。その馬鹿げた見栄が、ほんと嫌んなるぜ……」
剣士「そうか。いや、そうだな」
狩人「だがな、剣士。想いだけで魔王は倒せないぜ」
剣士「上等。ならば奇跡を起こすまでだ」
狩人「もう滅茶苦茶だな。話にならん」ハハ
剣士「仕方ないだろう。それが俺達の答えなんだ」
狩人「俺達?」
賢者「剣士さん、剣士さーんっ!!」タタッ
剣士「賢者!!」バッ スタッ
269
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 20:03:35 ID:7y9IuZdg
賢者「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
剣士「頼めるか?」
賢者「任せて下さい!」パァ
剣士「毎度毎度すまない、ありがとう」
賢者「気にしないで下さい。私なんの役にも立たないし、これくらいしか……」
剣士「これくらい? なにを言っているんだ?」
賢者「え?」
剣士「大きな怪我の影には小さな怪我がある――」
剣士「昨日の傷をそのままにしていたら、奴の初撃は受け切れなかったよ」
賢者「あれは本当に些細な傷で、少しでも剣士さんに認めて貰いたくて……」
剣士「それだけじゃない。集中力を最後まで保てたのは君のお陰なんだ」
270
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 20:04:42 ID:7y9IuZdg
賢者「え?」
剣士「あの話をしてくれただろう?」
賢者「もしかしてペットの?」
剣士「ああ」
賢者「つ、つまり戦いの中で私を……?」
剣士「だから俺は勝った」
賢者「け、剣士さん……」
剣士「信じてくれていたんだろう?」
賢者「はい。信じて祈っていましたよ。貴方だけを……」
剣士「ありがとう、賢者」ニコッ
賢者「あ、ああ、あぅ……」ホロリ
271
:
◆49HRmRlKYE
:2017/06/04(日) 20:06:22 ID:7y9IuZdg
剣士「なぜ泣く?」
賢者「貴方が笑ってくれた。それが嬉しくて、嬉しくて……」
剣士「おかしな事を言う」
賢者「だって、仕方ないじゃないですか……」グスグス
剣士「すまない。色々と伝えそびれていたな」ナデナデ
賢者「いいんですよ、もう……」
剣士「だが、これだけは言わせてくれ。俺も君に出会えてよかった」
賢者「あ、あの! していいですか? いえ、しちゃいますよっ!」
剣士「?」
賢者「ぎゅ、です!」ダキッ
剣士「おい!?」ビクッ
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