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勇者「この美しき世界で」
1
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:21:39 ID:KnUu7S3M
世界は美しいと思う。
悲しいことや、汚いこともあることは知っている。
でも、その中で。
明日を信じて生きている人達が居るこの世界が。
俺は、美しいと思う。
2
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:26:22 ID:KnUu7S3M
俺は、魔王を倒した。
仲間と別れ、隣に残ったのは。
少女「何やら寂しそうな顔をしているね?」
これから先、命をかけて守らなければいけない、一人の少女。
封印した魔王の、ただ一人の実妹。
3
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:32:24 ID:KnUu7S3M
勇者「気にすんなって、大したことじゃないさ」
少女「そうか?なら良いんだが」
考えなきゃならないことはいくらでもある。
少女「とりあえず、まずは住むところかなー?」
たしかに、少女がいた城は、先の魔王との戦いでボロボロになってしまったし。
それに、少女にとって悲しい思い出もあり過ぎる場所だからな。
少女「まあ、何とかなるだろうな。 我が国の領土は広大、大地はどこよりも肥沃だ。 ゆっくりと安住の地を探そうか」
まったく、頼りになる事だな。
4
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:41:41 ID:KnUu7S3M
どこまでも続く紺碧の空の下、少し荒れた街道歩く。
少女「うーむ、馬が欲しいな」
確かに移動手段が徒歩だけなのは厳しいな。
少女「やれやれ、計画的ではないな」
伏目がちに見上げられる。
この深紫の瞳にこんな風に見上げられる日が来るとは、思いもしなかった。
勇者「お前が馬に乗れるかどうかもわからんかったからなー」
少女「こう見えても由緒正しい王族の出自だからな。 馬術なんかは幼い頃からの嗜んでいたさ」
農家出身の俺とはえらい違いだな。
少女「まあ、国が滅び、民も居ない今、王だなんだと言っても少々滑稽かもしれないな」
畜生、こんな時にどう声をかければいいのかさっぱりわからん。
5
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:44:51 ID:EMguVAaM
これは少女が殺されそうになって逃亡劇になるパターン
6
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:46:57 ID:KnUu7S3M
歩き続けて、日も沈んだ頃。
少女「随分と歩いたなぁ。こんなにも広いとは」
結局なんて声をかけて良いかもわからず、歩き続けてしまった。
少女「……なあ、どうしたんだ?昼過ぎからずっと苦虫を噛み潰したような顔をして」
勇者「そ、そんな事はないぜ?」
鋭いな、いや、俺が鈍いだけかもしれないのか?
少女「やれやれ」
少女は街道から外れ、草原の中に向かって歩き始めた。
7
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 10:55:21 ID:KnUu7S3M
少女「ほら」
両手を広げて空を仰ぎながら少女は笑った。
少女「せっかくの満天の星空だというのに、下を見ているなんて勿体ないぞ?」
無邪気な笑みを浮かべている少女。
その少女の白いワンピースが、風を拾い静かにたなびく。
少女「何をそんなに考えているかはわからんが、難しい考え事なんて勇者にはむいてないぞ?」
背の低い草が、静かな音を立てている。
少女「難しい事は私に任せておけ。 勇者は、ただ私の側にいてにっこり笑っていてくれればそれで良いんだ」
少女が、早く握り返せと言わんばかりに手をのこちらに差しのばす。
勇者「かなわないな、少女には」
本当に。
8
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 11:00:40 ID:KnUu7S3M
草原に一歩足を踏み入れると、脛のあたりまで伸びた草が少しくすぐったい。
少女「私を誰だと思っているんだ? 今は亡き魔術の王国の第一王女にして、封印された魔王の実妹だぞ? 勇者如き一捻りだ」
少女が一瞬身を屈めた。
少女「とうっ」
勇者「うぉっ!?」
飛び込んできやがった!?
避けたら怪我するよな。
仕方ない。
9
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 11:04:22 ID:KnUu7S3M
諦めて、せめて少女が怪我をしないように押し倒される。
勇者「いてて、無茶すんなよ?」
少女「無茶なものか。 勇者が私を受け止めないわけないだろう?」
悪戯っぽく笑う少女。
やれやれ、本当にこいつって奴は。
勇者「ったく、わかったからどいてくれ」
少女「断る。 今日はこのまま星空を眺めながら眠る事にした」
10
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 11:37:10 ID:KnUu7S3M
勇者「いやいや、どいてくれ。重たいし」
少女「ふんっ」
脇腹に鈍痛。 普通に殴りやがった。
少女「少女に思いと軽いは禁句だ。 わかったかい?」
これから先、先が思いやられるな。
11
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/20(土) 20:43:31 ID:fJqdInOA
乙乙
気長に待っとるで
12
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/21(日) 14:45:25 ID:NHLg9DSs
乙乙
期待
13
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/21(日) 16:38:18 ID:v78GaP5c
塔の魔女の人?違うかしら…でも!たのしみ!おつおつ!
14
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 01:44:13 ID:iVoHSS/M
以前これと同じ名前のssなかったかな?
かなりの大作で名作だった気がするんだけど
15
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:19:34 ID:EAQm5dTE
過去に塔の魔女という作品はあります。
16
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:20:51 ID:EAQm5dTE
その作者かどうかは、証明するものがないので皆さんの判断に任せます。
おっぱい
17
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:26:04 ID:m5RJO1oI
おかえり
18
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:28:19 ID:PNaYMLvA
夜が明けて、目がさめると少女の姿はなかった。
いくら魔物が出なくなったとはいえ野生動物や、野盗など脅威はいくらでもある。
勇者「少女ー!! どこに行ったんだー!」
くそ、油断した。何かあってからじゃ遅いっていうのに……。
見晴らしの良い草原だというのに少女の影も形もない。
嫌な予感、胸が騒めく。
「くっくっく」
19
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:34:44 ID:EAQm5dTE
勇者「っ!?」
足元から草をかき分けるような音が聞こえたかと思うと、人影が飛び出した。
少女「うりゃっ!!」
勇者「うわっ!?」
いきなりの出来事に情けない声が漏れる。
飛び出してきたのは体中に草を付けた少女だった。
少女「油断大敵だぞ、勇者様?」
勇者「何がしたんだよ、心配すたんだからな?
」
少女「その言葉が聞きたかったのさ」
まったく、本当に心配したんだからな……。
20
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:44:42 ID:EAQm5dTE
一つ二つ文句を言おうとして少女を見る。
しかし、頭に葉っぱを付けたまま、自信満々に満面の笑みを浮かべる少女を見たらそんな気も失せてしまった。
勇者「わかったからほら、動くな」
少女「なんだ、キスでもするつもりか? よし来い、どんと来い。 なんなら舌を入れたって良い。 いや、むしろ入れてくれ」
勇者「違うわ、頭の葉っぱを……」
少女「残念、もう遅い、ん」
頬に触れる柔らかい感触。
こ、こいつ、ほほ、本当にしやがった!?
勇者「おま、何するんだよ!?」
少女「ご馳走様、ほっぺで我慢してやったんだから良いだろう?」
どんな思考回路してるんだよまったく……。
21
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 12:48:16 ID:PNaYMLvA
とりあえずここまで。
今度こそ最後までやり遂げたいと思います。
覚えていてくださった方、おかえりと言ってくださった方、ありがとうございます。
胸が膨らむ思いです。
つまり、おっぱい
22
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 18:18:11 ID:lrp8w0Sc
サブリミナルおちんちんの人だっけ?
23
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 22:22:09 ID:6qRL7RR6
国作り始めたところで終わってたっけ?
これはあれとは別の話?
24
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 22:56:42 ID:Fqpatack
>>23
覚えていてくださってありがとうございます。
同じ話ですが、これだけを読んでも問題なく読めるように多少改変しつつ話を進める予定です。
ちなみに、サブリミナルおちんちんは、ちょっとよくわかりません。
人生で初めて聞いた日本語です。
25
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/22(月) 23:17:14 ID:eFZmdYP6
わくわく!作者さん愛してる!
おっぱい!
26
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:13:53 ID:CJ71UWas
こうしんしますよーおっぱい
27
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:24:09 ID:CJ71UWas
少女「さて、そろそろさ出発しようか、済むなら良いところがあるんだ」
勇者「どんなところなんだ?」
少女「国境近くにある小さな村があったところだ。 確か小さいながらも領主の城もあったはずだぞ?」
国境といえば、隣の国は割とでかい国だったよな。
少女「さあ行こうか。私たちの愛の巣へ」
何言ってんだか。
ここからならだいたい昼過ぎくらいには着くはずだな。
何事もなければ、だけども。
28
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:33:30 ID:CJ71UWas
街道を歩いていると、夏も終わりなのか秋虫の涼しげな鳴き声が聞こえてきた。
そう、つまり夕暮れだ。
勇者「なのに、なぜついてないんだろうなー?」
少女「ふしぎだなーなぜだろうなーわからないなー」
少女が明後日の方向に視線をそらしながら答えた。
勇者「誰だっけかなー?「私に任せろ」とか言って自信満々に先に歩いてた結果、道に迷ったのは?」
少女「仕方がないだろう?その村に行ったのは三歳くらいの時なのだから。 しっかり覚えていろというのは無理な話だぞ?」
少女は悪びれる様子もなく言った。
ただ、普通に迷ったのであれば仕方ないかと許せはするけれど。
勇者「なら近道を探して草原突っ切るなよ」
どうしてこんな無鉄砲なんだか……。
29
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:43:29 ID:CJ71UWas
少女「こらこら、そんな顔は似合わないぞ?」
勇者「誰のせいだっつーの」
少女「まぁまぁ、ほら?村も見えてきたことだし……ん?」
勇者「どうした? て、村に明かりがついているな」
村の入り口の簡素な門のところには一対の篝火。
明かりが月や星くらいしかない周囲から、それはよく目立っていた。
勇者「村は無人のはずじゃなかったのか?」
少女「そのはずだ、兄さ、魔王がこの村の住人だけ生かしておく理由が無い」
勇者「と、いうことは」
少女「誰かが私に断りもなく入り込んでいるな。 しかもこんな辺境にこっそりと住み付くだなんて……」
背中の剣を意識する。
勇者「ろくな奴じゃあなさそうだ」
少女「あぁ、そういう事だ」
長い夜になるかもな。
30
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:49:47 ID:CJ71UWas
村の入り口に人影はない。
だが、入り口の篝火には真新しい木切れが多くついさっきまでは人がいたような気配を感じる。
勇者「さて、ここからどうしようかね?」
辺境、しかも魔王が討伐されたという事も知れ渡ってはいないと言うのに、今場所にいる輩だ。
善良な市民という事もないだろう。
少女「……勇者。私に考えがある」
正面突破以外にも何かあるのだろうか。
少女「まあ、とりあえず私に話し尾を合わせてくれ。 それで多分上手くいくさ」
そういうと少女などんどん村に入っていった。
31
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 12:50:39 ID:CJ71UWas
とりあえずおっぱい
32
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/25(木) 23:18:58 ID:WGjTsue6
乙π
33
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:02:49 ID:3y059BDU
更新しても良いですかー。
良いですねー。
しますよー。
34
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:04:08 ID:3y059BDU
少女「先ずは私に話を合わせていてくれ」
そう言うと少女はどんどん村に入っていく。
勇者「お、おい!?」
そんな事したら――。
中年「こんな夜遅くにどうなされましたかな? 旅の人」
なんだコイツ? 農家みたいな格好している割に……
勇者「少女……こい、痛ぅっ!?」
少女に脇腹を抓られた。
話を合わせろってことか。
というか、思い切り抓らなくてもいいだろ、絶対痣になってるぞこれ……。
35
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:05:03 ID:3y059BDU
>>34
ミスった気にしないでください
36
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:06:18 ID:3y059BDU
勇者「お、おい!?」
そんな事したら――。
中年「こんな夜遅くにどうなされましたかな? 旅の人」
なんだコイツ? 農家みたいな格好している割に……
勇者「少女……こい、痛ぅっ!?」
少女に脇腹を抓られた。
話を合わせろってことか。
というか、思い切り抓らなくてもいいだろ、絶対痣になってるぞこれ……。
37
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:10:43 ID:3y059BDU
少女「すみません、私達は夫婦で各地を渡り歩いている商人なのですが、馬車の車輪が壊れてしまい……」
勇者「え?」
今度は中年から見えないように小突かれる。
勇者「あ、あぁ、困り果てて歩いている内にこの村を見つけて」
中年「……ふむ、それは大変でしたね。 馬車は今どこに? 高額な物は積んでいませんか? 最近はこの辺りにも野盗が出るらしいので漁られるやも知れませんよ」
案外親切じゃないか。 何でも疑うのは良くないな。
38
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:12:09 ID:3y059BDU
少女「ここから北、国境を越えて街道沿いに馬車は置いています。 なにぶん二人とも乗馬が苦手でして馬も繋いだままなんですが……。 野盗が出るんですね、恐ろしい」
野盗がこの村を襲わないか心配だな……。
夜が明けたら軽くぶっ飛ばしに行こうかな?
中年「馬……ですか?」
中年はなんだか残念な顔をしている。 馬の心配までしてくれているのかな? 世の中捨てたもんじゃあないな。
少女「えぇ、あとは西の国の生地と果実くらいです」
西の国の生地ねぇ……そんな高級品積んでいるなんて見栄張ってどーするつもりなんだろ?
あ、そうか。
元王族だもんなぁ。 自然と高級品が浮かんじまうのか。
俺もがんばって稼がなきゃな。
39
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:13:47 ID:3y059BDU
中年「それはそれは……。 部品を用意しておきましょう。 今日はこの村に泊まって行って下さい。 空き家が在りますのでそこをお使い下さって結構です」
少女「……お気遣いありがとうございます」
なんだか騙すのも気が引けるなぁ……。
勇者「あ、だったらこれを受け取って下さい」
へそくりに金貨を何枚か持っていて良かった。
少女「……」
少女が睨んでいる気がするな、へそくりをしていた事を黙っていたから怒ったかな?
この村に長く住むんだ。 そんな痛い出費じゃないだろ。
中年「……こんな大金頂けませんよ。 気持ちだけで結構です。 さぁ、部屋に案内しますので着いてきて下さい」
雰囲気が変わった?
なんか嫌味みたいになっちまったかな? 後で少女に相談してみよう。
40
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:22:09 ID:3y059BDU
案内された部屋は、古い建物なのは仕方がないが、作り自体はしっかりしていた。
勇者「少女……何してるんだ?」
部屋に入るなり少女は扉や窓を調べていた。
戸締まりをしているみたいだけど、そこまで必死にやらなくても大丈夫だと思うんだけど、心配性な奴だな。
少女「どこかの誰かさんが余計な事しなければ、少なくとも今晩はここまで用心しなくても良かったんだけど……」
少女が節目がちに睨んでいる。 この目で睨んでいるのは怒っているんじゃなく、呆れてる時だった筈だ。
勇者「何かしたか、俺?」
金貨出したのが不味かったかな? あのおっさんもなんか雰囲気変わったし。
41
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:29:16 ID:3y059BDU
35 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2013年06月25日 (火) 02:40:57 ID: uqwjdtzo
少女「あの中年を見て何か違和感を感じなかったい?」
少女が溜め息をつきながら椅子に腰掛けた。
戸締まりが終わったらしい。
勇者「違和感か……。 ん、そう言えばあの人昔は兵士か何かだったんじゃないかな。 足運びとか初対面の俺達を見る時の目つきとかがそんな感じがしたんだけど」
聞かれてみて、改めて最初に見た中年の違和感の正体に気がつく。
勇者「でもそれが?」
少女「まだわからないのかい? さっき話に出た野盗。 あの中年がその野盗だよ」
勇者「えぇっ!? でも良い人そうな……」
少女「あんなあからさまに馬車の位置と積み荷を確認してただろ? 今頃何人かで在りもしない馬車を探してるんじゃないか?」
勇者「そんな風には見えなかったけどなぁ」
金貨だって受け取らなかったし。
少女「でもそれだけなら今日はゆっくりできたんだ。 どっかの誰かさんがこれ見よがしに現金を持って居るなんて知らせてしまったから、多分待ちきれずに夜の内に襲ってくるんじゃあないか?」
だから金貨を出した時少女は睨んでたのか。
42
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:30:54 ID:3y059BDU
少女「本当なら今夜は勇者と記念すべき初夜の筈だったんだぞ。 安全日だし不慣れな私達でも安心して事に至れたんだ」
勇者「ぶっ!? いきなり何言ってんだよお前は!!」
真顔で少女が言う。
恥とかそういった物がないんだろうか?
少女「ん? いや、勿論勇者との赤ちゃんは欲しいぞ? そりゃあもう二桁は欲しい。 だが、まだ生活の基盤も出来ていないのに赤ちゃんを作ったとしても辛い思いをさせてしまうだろう?」
…………。
少し照れだしたな。 照れ隠しに髪を手櫛で直しながら呟いてる。
うん、可愛い。
43
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:32:02 ID:3y059BDU
少女「でも私は勇者に抱かれたい。 これでもかと言うほど愛し愛されたい。 足腰が立たなくなるくらい」
…………。
ちょ、寄らないで頼むから。
そんな風に頬を染めて潤んだ瞳で見られたらやばいって。
少女「抱かれたいが子供は少し困る、しかし未経験故に避妊を失敗するかもしれない。 そんな初めての二人なのだからこそ、失敗しても大丈夫な安全日の今日は初体験に最適ではないかと思っていたのだ」
あ、うん? 終わった?
後半は耳を塞いでたからさっぱり聞こえなかったぜ。
いや、本当に。
ムラムラなんてしてないぜ?
少ししか、うん。
44
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:33:33 ID:3y059BDU
少女「うん、いっぱい出し……」
少女が大変な事を口走りかけたその時。
ガタンッ。 と、大きな物音が外から聞こえた。
少女「だというのに、無粋な輩だ。 勇者、六人くらいだ。 一人でも大丈夫か?」
どうやら外にはお客さんらしい。 正直この桃色な空気にも堪えられなかった所だ。
勇者「不埒な欲求不満は運動で払うのが一番だ、ちょっくら暴れてくるよ」
暴れてやるぜ。
少女「早く片付けたら……朝までに何回かはできる……な?」
何ができるかは分かんないけど取り敢えず、慎重に時間をかけて朝ぐらいまで闘おう。 そうしよう。
45
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:35:41 ID:3y059BDU
少女「やれやれ、愛しの君は世界まで救った筈なのに随分と……ヘタレだな」
落胆みたいな溜め息を大げさにしやがって……。
勇者「取り敢えず部屋には近づけないつもりだ。 おとなしく部屋を戸締まりして待っててくれよ?」
少女「あぁ、いってらっしゃいのちゅーしてやろうか?」
無視しよう。
部屋を出て内側から閂をかけた音を確認して敵の大まかな位置を確認。 暗くてよく見えないが、どうやら正面にいるのは四人か。
深く息を吸い込み集中する。
勇者「かかって来いやぁぁあああッ!!」
吸い込んだ息を全て使い切るように雄叫びを上げた。
『対人戦で大切なのは相手を気迫で圧倒する事だ』戦士が教えてくれた事だ。 相手が未熟ならこれだけでも戦闘がだいぶ楽になる、のだけれど……。
46
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:37:00 ID:3y059BDU
「囲んで殺るぞ」
「ならば陣形一だな」
「了解」
「いくぞ、かかれッ」
夜盗の癖に随分と訓練されてるじゃねーか。 なら――。
勇者「〜〜」
閃光の魔法を放つ。
予め目を細めて置かなければ視覚を奪える程の明るさだ。
47
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:38:09 ID:3y059BDU
は、混乱してやがるぜ。
勇者「こっちははっきり見えたぜ短剣に、戦棍に、長剣か。 夜盗にしちゃあ良い武器使ってんじゃねえか」
短剣「ぐぁっ!?」
長剣「コイツ、魔法を使うのか!?」
戦棍「ただの商人という話ではなかったのか!?」
?」
目を押さえて距離を取る三人。
さて、残り一人は。
勇者「んで、お前は毒針か。 えげつないな」
頭上に向くて刃を寝かせて剣を振り上げる。 手応え有り、だ。
毒針「気付かれただと……ぐはっ」
48
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 10:40:08 ID:3y059BDU
どうやら一発で毒針の奴の意識は奪えたようだ。 他の奴らはそろそろ視覚が戻るか?
勇者「残念ながら、俺って結構強いぜ?」
世界を救えるくらいにはな。
長剣「嘗めるなよ、商人風情がぁッッ!!」
長剣が振りかぶりながら突っ込んでくる。 怒りに任せてかと思いきや、踏み込み自体は鋭く無駄がない。
勇者「野盗にしとくには勿体ないな」
突っ込んでくる長剣の左右後方には短剣と戦棍も機を窺うように追従。
中々厄介な陣形だな。
勇者「でもまぁ、余裕だ」
49
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 11:17:52 ID:3y059BDU
とりあえずここまで。
おっぱい
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 13:41:44 ID:pxbLPQKg
乙π/
51
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 22:55:32 ID:JNgpF6GQ
更新します
おっぱい
52
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 22:56:47 ID:JNgpF6GQ
全身の無駄な力を抜く。 余計な力は剣筋を鈍らせる。
必要な力を必要な箇所に使う。
それが正しくできれば――。
勇者「ッラァアア!!」
隼が翔るが如きって奴だ。
長剣「ぬぐぁっ!?」
先頭の長剣の脇腹に剣の腹を叩きつける。
短剣「うごっ!?」
倒れ込んだ長剣の後ろから飛びかかって来た短剣を返す剣で叩き落とす。
戦棍「取ったぁッッ!!」
戦棍の一撃が顔面に迫る。
53
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 22:57:52 ID:JNgpF6GQ
勇者「当たらねえよっ」
それを避け、懐に飛び込むと、空いている左拳を相手の顎に叩きつけた。
戦棍「が……」
戦棍は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
勇者「後二人居るって少女は言ってたよな。 この場に居ないって事は……少女狙いか!?」
気づいたのと同時に、部屋から少女の声が聞こえた。
少女「お前ら!! 暖炉からだと!?」
くそっ、部屋に入られたっ。
54
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 22:58:58 ID:JNgpF6GQ
勇者「少女に何すんだてめぇ等っ!!」
扉を閂ごと蹴破ると中には短剣を持った短髪の男と長髪の男が少女を襲おうとしてやがった。
少女「勇者!」
勇者「悪い、遅れた」
短髪「チッ、表の奴らしくじりやがったな」
長髪「ただの商人に遅れを取るなんて最低だな」
短剣を構えながらこっちを睨む二人。
隙だらけだ。
勇者「てめぇ等だって、すぐやられんだから、悪く言うなよ、なっ!!」
短髪「速……ぐぁ!?」
長髪「ぐはっ!?」
手加減無しに全力でぶっ叩いてやった。
死にはしないから良いだろう。
55
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/26(金) 23:01:17 ID:JNgpF6GQ
少女「流石だ、嬉しかったぞ」
勇者「あー待て待て、取り敢えず表の奴らとこいつ等縛っておこうぜ」
抱き締めようと寄ってきた少女を制止して、野盗共を縛る。
何にせよ少女が無事で良かった。
少女「こんな奴ら外に放り出せば良いだろう。 二人の空間にこいつ等は邪魔なだけだ」
いやー、良かった。 こいつ等部屋に置いておかなきゃ大人の階段上る所だった。
56
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 07:37:06 ID:3VTnXYlA
π
57
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:01:45 ID:aVoUsCdI
勇者「それより、暖炉から入ってきたんだって?」
少女「あぁ、しかもこいつ等は一丁前に気配を消す技術まである。 最近の野盗は恐ろしいな」
勇者「この暖炉……ちょっとおかしくないか?」
部屋に入った時は気にしていなかったが、部屋に対して明らかに大きいし不釣り合いに立派な作りの暖炉だ。
少女「これは……隠し通路か」
散らばった薪の下には、蓋をされた大きな穴があった。 人が一人楽にはいれる程の穴の底には明らかに人為的な通路がある。
少女「これじゃあ初夜はお預けだな、やれやれだ」
少女は、薪を一つ蹴飛ばして今日何度目かわからないため息を吐きながら呟いた。
58
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:03:34 ID:aVoUsCdI
勇者「結構深いんだな」
隠し通路は割と長く続いていた。
警戒していた罠等は特に無く、ただ地下特有の湿度の高さが不快なくらいだ。
少女「げぇ、壁に触ったら苔やら埃やらで手のひらが汚くなってしまったじゃないか……」
勇者「だからって俺の外套で拭うのは止めてくれないか? 汚れるんだけど」
少女は俺の外套で丁寧に手を拭りやがった。 何しやがる、お気に入りなんだぞこれ。
少女「まぁまぁ、後で私を勇者の手で汚せばいいだろう?」
何を言ってるのか俺にはさっぱりわからないな。
59
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:04:26 ID:aVoUsCdI
勇者「ん、出口みたいだ」
突き当たりは梯子が架かっていた。
少女「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
勇者「絶対に離れんなよ?」
少女「あぁ、互いの髪が白髪交じりになってよぼよぼの老人になって死別する最後の時まで離れないぞ」
あー……。
うん、まぁいいか。
60
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:06:28 ID:aVoUsCdI
勇者「これは……教会か?」
梯子が続いていたのは、なにやら聖堂みたいな所だった。
僧侶の所の宗教によく似ている。
少女「いや、これは村の外れの城にある礼拝堂のようだ」
結構な距離の隠し通路みたいだな。 いったい何の為に?
勇者「取り敢えずは探索だな。 ただ、あいつ等みたいな奴がいるかも知れないから気を付けていこう」
少女「人の所有地を許可なく改造するとは言語道断。 しかるべき報いを受けさせてやろう」
地下道を作った事か。 それにしても目が本気だ。 怖い怖い。
61
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:08:19 ID:aVoUsCdI
聖堂を出ると割としっかりとした城だという事が分かる。 ただ、石造りの廊下は掃除がされていないのか埃っぽい。
少女「野盗め、掃除のやり方も分からないようだな」
形の良い眉を顰めて少女は窓枠の埃を指で拭った。
勇者「先ずはどうするつもりだ?」
少女「ふむ、奥の別塔に結構な人数の気配がするな。 しかし、どれもかなり弱っているみたいだな」
勇者「なら行ってみるか」
野盗がさらって来た人達か?
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:10:17 ID:aVoUsCdI
別塔には何の問題もなく着いた。
勇者「国はずれの村にしてはずいぶん立派な城だな」
少女「ここは国境だからな。 安穏と暮らし続ける事ができる程、世界は平和じゃないって事さ」
勇者「軍事的な拠点だったって事か」
人間同士で世界を舞台に陣取り遊び、か。
勇者「本当に怖いのは人間、か」
どうにもやるせないな。
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:13:07 ID:aVoUsCdI
勇者「誰か居るのか!?」
別塔の入り口の扉を叩き切りながら叫ぶ。
少女「これは……」
扉の先には、大勢の痩せこけた人間が虚ろな目で座っていた。
勇者「近隣の国だけじゃないな、農奴や貧民街の人たちばかりに見えるけど?」
少女「そのようだが、なんにせよ惨いな」
こんな狭いところに押し込んでいたのか……。
勇者「助けに来たぞ」
何が世界を救った勇者だ……。
どう見たって救われちゃ居ないだろうが。
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:14:13 ID:aVoUsCdI
勇者「あんた達が、どうしてここに捕まっているかは後で良い。 取り敢えず」
背の長剣に手をかける。
扉を叩き切った時から、粘着質な殺気を感じていた。
勇者「そこで見てんだろ? 叩きのめしてやるから出て来やがれ」
振り返り剣を構える。
そこに立っていたのは身なりのそこそこに良い、貴族のような甲冑の男だった。
甲冑「族奴が……。 何処の国の間者かは知らぬが」
甲冑の男が背の長剣を抜いた。
研ぎ澄まされた刀身、華美な装飾の無い簡素な拵え。
勇者「随分と良い得物だな。 あんたがここの黒幕か?」
人攫いして人身売買か。
儲けてるんだろうな。
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:15:37 ID:aVoUsCdI
甲冑「黒幕……? とぼけている訳ではないようだが。 本当に単純に腕が立つだけの行商か?」
勇者「何を言っているのかよく分からねえけどまぁいいか」
雰囲気的に見かけ倒しって事は無さそうだな。
勇者「外道の言葉なんざ聞くに及ばねぇ。 ぶっ飛ばしてやるからかかってこい」
甲冑「まぁいい、死ね」
勇者「ッ!?」
速いっ!?
言葉と同時に鋭い一撃が喉に迫る。
身体を捻りその一撃を避けると、その勢いで蹴りを入れる。
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:16:36 ID:aVoUsCdI
甲冑越しに蹴りを入れてもダメージは期待できない。
体勢を崩せりゃそれで良い。
と、思ってたんだけどな。
甲冑「ん、どうした?」
大木にでも蹴りを放ったような手応え。
勇者「随分と重てぇな、鉄でも食って育ったのかオイ」
この蹴りは戦士直伝、戦士が使えばオーガだって沈むっつーのに。
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:19:20 ID:aVoUsCdI
甲冑「生憎だが、教えを守り菜食主義者だ、ぬんッ!!」
蹴り足に振り下ろされる刃。
勇者「危ぶねっ!?」
甲冑の男の腹を足場にして後ろに飛び退く。
勇者「お前んとこの神様は善良な行商の足を躊躇なくぶった斬る教えもあんのか!」
甲冑「あるさっ! 勇敢に敵を討ち滅ぼす戦女神の教えではな!」
神様信じてる癖に随分な野郎だ。
我らが慈愛の塊、僧侶さんの爪の垢でも飲ませてやりたいね。
68
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 21:19:51 ID:aVoUsCdI
また更新しまおっぱい
69
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/02/28(日) 22:00:20 ID:5JDLtfwU
乙ぱい
70
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/12(土) 04:13:08 ID:gsAGtTOE
作者様の生存確認できただけでよかったです
塔の魔女からずっと見ていたので心配していました
更新気長に待ってます
71
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/25(金) 10:03:36 ID:nS/ksOJo
おっぱい
72
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/30(水) 07:00:25 ID:dw5q2AnI
たまには検索をかけてみるものだな
73
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/30(水) 12:32:31 ID:waS6P7gA
チワワでも検索したらスレあって笑った
74
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/08(金) 19:17:36 ID:SnPUVSw.
ほっぱい
75
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/18(月) 09:50:36 ID:YCWLtL8E
age
76
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/20(金) 20:48:16 ID:DM.aHKi2
ほ
今度こそ最後まで頼む
77
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/13(月) 00:17:29 ID:XznQ1qO2
ほ
78
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/07/10(日) 19:26:17 ID:n/I/bBO.
頼むよ……
今度こそ
79
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/07/15(金) 21:40:38 ID:2mwdqpDg
見てることを祈ってあげ
頼むよ
80
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/07(日) 17:04:20 ID:cDUdxqgQ
頑張ってくれ……
81
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/09/17(土) 19:23:53 ID:cw1T/MMQ
ほしゆ
82
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/09/28(水) 10:20:14 ID:SJQOcFQE
ほほしゅしゅ
83
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/03(金) 08:28:46 ID:iPSK.7OA
かえってこーい
84
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:22:47 ID:WVHvcQT6
帰ってきたー!おっぱーい!
少しづつでも更新しますよー!
おっぱーい!
私はブラック企業を辞めたぞジョジョー!
85
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:32:13 ID:WVHvcQT6
チッ、コイツかなり強ぇ。
甲冑「貴様の剣は何かおかしいな、我流か?」
何度か切り結ぶと甲冑が言った。
勇者「あ? 世界一の戦斧使いに稽古付けてもらったっつーのっ!!」
甲冑「まるで、人以外と戦う事を前提とした剣運びだな」
勇者「随分よく見てんじゃねーか」
剣を握る手に力を込める。
勇者「っらぁ!!」
切り結んだ相手の長剣を力任せに弾くと距離をとり構え直す。
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:33:55 ID:WVHvcQT6
甲冑「……大した膂力だな」
今ので崩しきれないか。 そこらの国の師団長クラスよりよっぽどやるな。
異常に対人戦が上手いぞこいつ。
勇者「なんでテメェその腕で野盗なんかやってやがる」
甲冑「野盗……ね。 これから死ぬ貴様に話した所で意味はないだろう」
甲冑越しだがわかる。
コイツ、自分の勝利を確信して笑ってやがる。
俺より自分の方が強いと思ってやがるのは若干腹立たしいが、問題なく倒せるか、と言えばそうでもないんだよな。
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:34:59 ID:WVHvcQT6
少女「いつまで遊んでいる。 君なら本気を出せば軽く捻れる筈だろう?」
確かに全力で闘えばすぐに終わるだろう。 が、下手すれば殺してしまう。
偽善だなんだかんだと言われるかも知れんが、なるべくなら人を殺したくない。
この力は、人を守る為に磨いたのだから。
甲冑「軽く捻れる? やってみるが良いぞ見窄らしく浅ましい商人の小僧めがッ!!」
好きに言いやがって。
勇者「なんだとこの野――」
少女「訂正しろ小悪党が。 言っておくが、私の旦那は世界一だ。 貴様のような凡愚が口汚く罵って良いと思ってるのか? 身の程を弁えろ見窄らしく浅ましい野盗擬きが」
言い返す前に、少女の声が響いた。
けして大きな声ではなかった。
だが、良く通る澄んだ声。
堂々たる威厳を帯びた、人の上に立つ者の声だった。
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:36:36 ID:WVHvcQT6
甲冑「ぬ……」
甲冑もいきなりの少女の啖呵に呆気にとられてやがる。
少女「ちなみにダーリンの魔力を借りれば回復魔法くらいは私でも使える。 安心してぶっ飛ばせ」
そいつは助かるな。
というか、ダーリンて俺の事か? まぁ良いけどさ。
甲冑「小娘……物珍しい髪で高く売れると生かしておくつもりであったが……。 もう良い、この侮辱の代償、貴様の死の間際の後悔で払ってもらおうか」
甲冑も正気に戻ったらしい。
だが、刃を向ける先を間違えてやがるなこの野郎。
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:38:52 ID:WVHvcQT6
少女「ふん、やれるものならやってみろ!! なんなら……、もう一度言ってやろうか?」
殺気を向けられて居るというのに少女はいっさい怯まない。
甲冑「小娘がぁ!!」
少女に襲いかかる甲冑。
あと数瞬で刃が振り下ろされるというのに、少女は微動だにせず、腕組みをしたまま甲冑を見据えていた。
少女「ふっ、私の旦那は世界一だ」
俺の事をここまで信用してくれているんだ。
刃が振り下ろされる数瞬という時間に。
勇者「照れるぜまったく」
少女の前に立ち、甲冑の剣撃を受け止めるくらいには格好付けなくちゃな。
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/09(木) 22:39:46 ID:WVHvcQT6
甲冑「速い!?」
勇者「んじゃ次はこっちの番だな」
重傷くらいなら治せるらしいし。
勇者「ちょっとキツいの行くぞ?」
切り結んだ甲冑の剣をいなし、体勢を崩す。
その隙に最上段に剣を構え力を込め、刃を寝かせて振り下ろす。
甲冑「チィッ!!」
甲冑はなんとか防ごうと剣を構えた。
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