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勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2015/04/21(火) 04:28:39 ID:yE6jxwRI

勇者「僕は元気にやってます!」

勇者「牢獄の中でなーっ!」

勇者「おはようございます!」

勇者「はい、おはようございます勇者様(裏声)」

勇者「微かに聞こえる雨音からして本日のお天気はやや小振りの雨日和ですね!」

勇者「お腹の減り具合からして大体今は午前十一時頃といったところですかね!」

勇者「不摂生はいけませんよ勇者様(裏声)」

勇者「そうですね気を付けます! 旅をしていた頃は日が出るより早く起きて日が沈む前に寝ていたのにすっかり今や」

勇者「嘘はいけませんよ勇者様」

勇者「はいスミマセンでした! 日が沈む頃に魔法使いとギシアンしはじめて日が出る所に精魂尽き果てる生活してました!」

勇者「おかげで旅のペースが遅れるの何のって! ハハハ!」

勇者「ヒャッホウ!」

勇者「ひゃっほう(裏声)」

286以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:22:37 ID:WNNMFA22

勇者「いや、簡単な話でして。離れようとしてる加護を僕が全力で僕の身体に抑え込んでるだけです」

勇者「抑え込むのに殆どの魔力を費やしているので今まともな魔法使えないんですよねぇ」

土の四天王「今明かされる衝撃的すギル事実なンですけレど!?」

土の四天王「アレ!? おかしいでスよ!? ゾンビ兵は兎も角とシて私達の復活には莫大な魔力要りまスよね!?」

勇者「要りますね」

土の四天王「でスよネ!? 一山いくらで復活さセられる程私達安くあリませんヨ!?」

土の四天王「待ッて待ッて、ウェイウェイウェイ……」

287以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:24:27 ID:WNNMFA22

勇者「結構簡単ですよ、いや、方法は簡単ではありませんが発想は簡単でしたね」

勇者「自分の魔力が使えないなら人の魔力を使えばいいじゃない」

土の四天王「ウェイ」

勇者「所謂……元気玉ですよーこれー!」

土の四天王「ウェイ」

勇者「世界中の皆よおらに元気を分けてくれー! つって! 僕に自主的に協力してくれる生物なんて皆無ですけど!」

勇者「強制的にちょっと拝借させていただいております!」

土の四天王「ウェイ」

288以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:26:14 ID:WNNMFA22
勇者「女神の加護はそれはもう便利でしてね! この世界で活動するにあたって大抵なんとか出来る技能が盛りだくさん!」

勇者「僕って結構いい声してません!?」

土の四天王「ウェ……あ、はい、まァ、いイ声だと思いマすヨ。ちょット面に合ッてまセンけどハスキーボイスで」

土の四天王「あレ? でも前お会いした時ハそんな声じャなかッたでスよね、でも私とシては今のほうがステキだと思いマスよ、好みでスし」

勇者「面にあってないは余計ですよ! あとこれは投獄された時に叫びすぎて喉が潰れては再生して叫んで潰して再生してたらこんな感じに」

289以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:28:14 ID:WNNMFA22

勇者「……」

勇者「うん?」

勇者「え? 好み? こ、好みかぁ……えへへへ……。……そういえば魔王も結構バリトンボイスでしたね……おソバ好き同士ですしいい奴ですよ彼は……」

勇者「僕の境遇にあれだけぶち切れてくれたのも彼だけでしたからねぇ、あぁ、いや、違くて。いや、今の声も気に入ってますけどそうじゃなくてですね」

勇者「僕の声にはちょっとした力があります」

290以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:30:25 ID:WNNMFA22

勇者「声質がいいとかの問題でなくて、生物相手に若干安らぎというか、なんとなく言うこと聞いてあげたいなーって気分にさせる魔力が含まれてます」

土の四天王「ほう。あレ? とすると私が勇者=サンの声好みなノもそのセイ?」

勇者「いや土さん元々低い系の声好きみたいだし、土さんぐらい力のある方だと『あーなんかいい感じの声だな』ぐらいにしか効かないんで」

土の四天王「効いテはいルンですネ、構いまセンけど」

291以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:32:28 ID:WNNMFA22

勇者「ありがとうございます、まぁ、つまり、常にちょっとした魅了の魔法放ってるようなもんなんですよね。これオフにはできないけど強弱は付けれるんですよ」

勇者「これは、二十年振りにお外に出てきて鍛錬し直してる間にはじめて気付いたんですけど、最大レベルにまで跳ね上げると世界中に僕の声が届くみたいですね」

勇者「僕自身が強すぎるから最大までいくとこうなのか」

勇者「元々最大レベルまで引き上げるとこうなのかは知りませんけど」

土の四天王「アー。そレでちョッと魔力を世界中かラ掻き集めテ……」

勇者「そゆことです、一人一人、一体一体から取れる魔力なんて微々たるものですがね、あくまで言うこと聞いてあげたいなー程度の効力なんで多くは取れません」

勇者「が、それでも世界中の生物からほんの少しでも取り上げて集めれば莫大といっても過言ではない量ですよ」

勇者「取った人から気取られる心配もないようですしね、現に何度かやってみたけど気付いてる人いないっぽい」

勇者「元仲間達が全盛期だったらあるいは、ですけど、今ダルンダルンですしね、彼等」

292以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:33:53 ID:hX8Br46I
今明かされる衝撃の真実ゥ!

293以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:35:30 ID:WNNMFA22

勇者「衰えた仲間たち、この二十年ですっかり色々と忘れちゃった人類、対して全盛期の僕と魔王軍と、ついでに全盛期より強くした戦士」

土の四天王「勇者=サンのご意向でゆッくりヤッてまスけれド、二十年前のノウハウもあルしヤろうと思えばさッと片付く戦力差ですヨ〜」

勇者「あの時は魔王軍も手探りだったからゆっくりとした侵攻となりゆっくりしている間に僕という勇者が出現し、彼等という仲間が出てきて、覆しましたが」

勇者「今回はどうなるんでしょうね、また、新たな勇者が生まれるのか、その彼あるいは彼女にはどれだけの力が有りどれだけの加護が与えられるのか」

土の四天王「わざわざ勇者=サンの身体から離れヨうとシていルのは、こンな不埒な輩には持たセテおけないとイウ規律なのカ」

勇者「換えが効かないから僕から引剥がして他の勇者に与えようとしている算段か、こちらだと思いますがね」

勇者「女神様はこの世界を司ってあられる方ですけれど、この世界に莫大な影響をポンポン与えられる程の力は無い。そもそも勇者自体、魔王がねぇ……」

土の四天王「その女神より強いから勇者を造らざるを得なかったワケですしね〜」

勇者「見ものですよこれは」

土の四天王「イイ趣味してマスよ、勇者=サマ」

294以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:36:53 ID:WNNMFA22
勇者「ハッハッハ」

土の四天王「フハハハー」

勇者「ひゃっほう!」

土の四天王「ひゃっほぉぉぉう!!」

295以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:40:16 ID:vhIWfVe6
ヒャッホウ

296以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:43:26 ID:WNNMFA22
合いの手入れてくれた人も、待っていてくれた人も、これから読む人にもありがとー。
中途半端にとりあえずの一区切り。今日はここまで。続きは、一週間以内。

297以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:47:05 ID:VeSr13As
乙ヒャッホウ

298以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:58:02 ID:9xl11Nak


299以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 01:17:08 ID:4KOQFi1Q
ひゃっほう(歓喜)

300以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 03:57:01 ID:j3.0Tj.g
ひゃっほう(裏声)

301以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 07:10:04 ID:sBvOoIrc
ひゃっほう(軍団)

302以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 07:55:13 ID:ESIty4oc
ひゃっほう!(おかえり)

残りの裏切り者が出てくるの楽しみだ

303以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 18:12:13 ID:RJz7Fc6I
ひゃっほう!(裏声)

>>301
(軍団)さんは英語じゃなかったか??

304以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 19:05:44 ID:fjRQ7OZU
(軍団)さん初登場は英語じゃないし気にしなくてもおけおけ

305以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 23:20:07 ID:v8OEGp4o
ヒャッホウ(乙)

306以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:01:12 ID:RZ82nhgc


――所変わって――


 彼女は『聖女』と謳われていた。彼女は僧侶として人類の危機に立ち向かった。
 勇者と共に魔王軍に立ち向かい魔王を討ち滅ぼした者たちの一人であった。勇者以外では女神の声を聞けるただ一人の人間だった。

 魔王戦役の折には、顔を焼かれ喉を潰されて無残な傷跡を付けられてしまったが、
 顔を隠して声は剣聖・戦士を通して、常に民の希望として在った。

 飢える者には食糧を。傷付いた者たちには治療を。奴隷があれば彼等を平民として生きられる地位と仕事を与えた。
 目についた不幸には片っ端から全力で当たってきたし、それこそが女神の使徒としての使命、それこそが女神が己に与えた言葉であると訴えた。

 聖女として成り上がった経緯も、傷を与えられた原因も、虚偽であったが。やってきた功績は紛れも無く真実だ。
 勇者を裏切って国王から聖女としての地位を得て、女神の言葉はあれ以降聞こえなくなってしまったが。弱気を助けてきた所業は真実だった。


女神「魔王でさえ私が及ぼせる力ではどうしようもできなかった。今の勇者も、やはり、そのようです、私が及ぼしうる力を大きく超えてしまっている」

女神「加護は回収できません」

僧侶「――」

307以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:03:32 ID:RZ82nhgc

女神「彼は私の言葉にも最早応えてくれることはありません。彼が私の言葉に応えてくれるのであれば、協力してくれるのであれば、あるいは」

女神「どうして協力などしてくれましょうか、私と貴女達は彼の目には等しく裏切り者として写っているというのに。そしてそれは、事実です」

女神「貴女達は地位に惹かれ、どこかで劣等感もあったからこそ彼を裏切り封印した」

女神「私もまた其れが人類の平和のためであるなら、彼が争いの火種になるのならば、そう思い封印を見過ごしました」

僧侶「――」

308以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:06:48 ID:RZ82nhgc
女神「私が勇者に与えられる加護とは、あの勇者に与えている加護」

女神「常に全盛期として在れる不老の肉体も、いかなる環境下でも生きられる強靭な肉体も、莫大な魔力のキャパシティも、死ねば蘇生される不死性も。他の全ても。
   新たな勇者がそれを得られる可能性はないでしょう」

僧侶「――」

女神「そうです、僧侶よ。新たな勇者は生まれたとしてもあの勇者よりも大きく劣る」

女神「僧侶よ。どうしようも、ないのです」


 二十年前のあの日以来から降りてきた僧侶への女神の声は、勇者の予想にぴたりと嵌った、人類側への絶望の一手であった。

309以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:08:14 ID:RZ82nhgc


――それからどーした――


王「……そうか。新たな勇者ではあの勇者には勝てぬか」

大臣「二十年前の悪夢はよりタチが悪くなっておりますな、しかしそれならば、王よ」

王「うむ、それならば別の手を講じるまで。二十年前はたまたま女神様がご助力下さった、いわば偶然」

王「此度は偶然には頼るまい、頼れまい、あの塔に押し込めておけば死んでくれるかと期待していたが」

大臣「死んでくれれば万々歳でしたが、死んでいないのならば、時間を稼げた、と、思うことに致しましょう」

310以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:10:18 ID:RZ82nhgc

王「我等も忘れていたかったなぁ、戦士達のようにな」

王「しかし、忘れていたにせよ、忘れていたかったにせよ、あの時用意したプランはまだここにある」

王「此れを元手に、あのときのノウハウを元手に一つずつ一つずつ、片付けていこうか。何、絶望を味わうのは二度目だしな、若干気楽でさえあるわ」

王「まずは、戦士からだな。戦士め、あの、大馬鹿者め」

311以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:12:04 ID:RZ82nhgc

王「都合のいいように忘れているならまだいいにして、都合よく記憶を改竄しているとは、恐れ入った」

王「勇者が居るなら、せめて僧侶と共に行けとあれだけ言い付けておいたというのに一人で行って返り討ちにあって寝返るとはな」

大臣「ええ、困ったものです、が、準備は整えております。何分『施術』したのが一昔前でございますので少々準備に手間取ってしまいましたが」

312以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:14:50 ID:RZ82nhgc

大臣「次にこちらに侵攻してきたときに発動させられます」

王「宜しい、それでは、そのときに。……あの、大馬鹿者め。大人しく従っていれば生き永らえたものの、大馬鹿の馬鹿者め」

王「魂の友とも言えるような勇者を裏切っておいて、我等が信用すると思っているのなら、大間違いだということを教えてやる」

313以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:16:46 ID:RZ82nhgc


――そして一、二週間後のこと――


勇者「あ〜ビックリした」

勇者「戦士がいきなり爆発しました」

勇者「結構な爆発力でしたね、小さいとはいえ要塞が丸々一個と連れてきてた兵の七割ぐらい吹き飛んじゃいましたよ」

勇者「土の四天王さんも重傷ですし一緒に修理(なお)さないといけませんね、戦士は、もうダメかな。欠片しか残ってない」

314以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:18:07 ID:RZ82nhgc

勇者「爆心地にメッチャ近いっつーか戦士の横にいた僕と魔王もちょっと焦げちゃいました」

魔王「いや、驚いたなアレは」

勇者「ねー」

魔王「うむ」

315以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:22:13 ID:RZ82nhgc
ヒャッホウ! ご声援、いつもいつもありがとうございます。
短いけど今日はここまで。続きはまたそのうち、一週間か、長くても二週間にはならない、ハズ!

316以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:22:56 ID:YgF9eF5s

つっちーやられてしまった

317以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:33:43 ID:BhmlxcQ6
ヒャッホウ(おつ)

318以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 00:50:10 ID:vWh164OA
砦一つ吹っ飛んで四天王の一角に大ダメージ与える爆発を間近で受けて焦げるだけとか………最強ですわ、ひゃっほう!

319以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 01:01:58 ID:5bR4nx/2
この勇者と魔王に対抗する手段とは

320以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 03:07:57 ID:NJ4IO/nI
魔王様軽いなヒャッホウ

321以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 12:41:53 ID:vsxPvzT2


322以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 15:33:53 ID:OGiOggPM
乙ひゃっほう!

ついに魔王様も来ちゃったー!
王も曲者っぽいけど抗える気がしない…

323以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 17:15:37 ID:KFP96EJA
やられ役のノウハウかな?

324以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 15:49:30 ID:QbkfUUVI
まだー?

325以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:40:44 ID:UeGyPl1Q

勇者「まぁ、ちょっと焦げただけってのも驚きましたけど。相変わらず凄いですね、そのマント」

魔王「フ。伸縮自在、縦横無尽、物理魔法共に80%カットのこの魔王お手製のスーパーマントなればこその成果よな」

勇者「……魔王戦役の時はそれにどれだけ苦労させられたやら……あの当時はまさかこれに護られる日が来るとは思いませんでしたが」

魔王「フフフ。我もこのような日が来るとは思ってもみなかったが、ところで、苦労していたか、貴様? 何やら黒光りする手で剥ぎ取られた記憶しかないのだが」

326以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:42:11 ID:UeGyPl1Q

勇者「コレの開発にどれだけの苦労と人件費が掛かったと思ってるんですか。しかもリスクが半端ないんですよコレ。攻撃外したら僕死んじゃう、人を呪わば穴二つとはよく言ったもので」

魔王「……呪殺的なものなのか? ……そちらの方面はむしろ我の得意分野なのだが。待て、そうなると呪法の腕は我以上なのか」

勇者「いやいや。そのムチャクチャな性能のマントを破るためだけに開発して破るだけの術式なんて貴方、開発しないでしょ」

勇者「貴方の発想を僕がその時上回っていた、結果として出来たのが呪法系の術式だった、というだけのハナシです」

魔王「ふーむ。なるほど、応用性の欠片もない術式など滑稽なものだが、事実我はそれで一つ切り札を失っているからな」

魔王「たまにはそういった狂気の沙汰染みたこともやってみても良いかもしれないな、まぁ、それは追々検討するとして」

327以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:44:13 ID:UeGyPl1Q

勇者「ええ」

魔王「一応、念の為に聞いておくが、貴様と土の四天王の仕業ではあるまいな」

勇者「そうでーす、と、言いたいところですが、残念ながら違いますね」

魔王「そうと言われたらげ、激おこ? するところだぞ」

勇者「いや、あの、たしかに僕若いですけどもそれに合わせて無理に若者らしい言葉使わなくていいですからね」

328以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:46:09 ID:UeGyPl1Q

勇者「それにしても、土さんと二人がかりで身体のあっちこっち弄くり回したってぇのに、起動するとはたいしたもんです」

勇者「爆発する直前に腰骨あたりが光ってましたね……あそこに隠されてたのか、いや、やるじゃないですか」

勇者「こんな芸当が出来るのは、魔法使いぐらいのもんかと思っていましたが。思ったより世界は広いんでしょうかね?」

329以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:48:20 ID:UeGyPl1Q

魔王「……何のかんの、仲間を未だ信頼しているのではないか?」

勇者「……はいぃ〜?」

魔王「そう不愉快そうな顔をするな、少し聞け。我等はこの世界どころか、魔界、天界迄含めて間違いなく最強の存在であることは間違いはない」

魔王「このマントがなくとも、流石に少し焦げるだけでは済まんだろうが、精々火傷を負うぐらいのものだ。あれぐらいでは四天王すら倒せん」

勇者「土さん重傷食らってますけど。まぁ、彼女はどっちかっていうと戦闘能力より改造能力で抜擢されてますから仕方ないですけど」

330以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:51:42 ID:UeGyPl1Q

魔王「ようは、化け物であるわけだ。我等も、我等と戦って勝利した貴様等も。だが。そのせいでだ、仲間を特別視し過ぎているのではないか?」

魔王「裏切られた経緯もあろう、共に戦ってきた経緯もあろう、色々と複雑な感情についてカウンセリングしてケアしてやるつもりもないが多少の詮索は許せ」

魔王「仲間だけが我等と対抗しうる唯一のものだと認識してはいないか。認識から外してはいないか、お前達が現れる前から、人類は我等とそれなりには渡り合っていたのだぞ」

勇者「渡り合ってたって。褒め過ぎじゃないですか、ジリジリジリジリ、ジリープアー(徐々に不利)になっていただけで……あー……まぁ……」

勇者「たしかに、まぁ、持ち堪えてたところはありますし。直接戦闘は兎も角として、他で僕達より優秀な人も居ましたけどもー」

331以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:52:17 ID:UeGyPl1Q
勇者「……うん? ああ、丁度良かった、詳しいところを聞きたかったのですよね。魔法使いがやったのか、他の誰がやったのか」

勇者「他の誰かってのは誰か。そういえば魔法使いの現状がどうなっているのか戦士に聞きそびれていたのですよ」

勇者「聞こう聞こうと思って、ほら、木っ端微塵になっちゃいましたからグッドタイミングでしたよ」

勇者「というわけで、詳しく聞いていいですかね?」

332以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:53:27 ID:UeGyPl1Q

勇者「貴女様が、人道的にそうはしそうですけれど世界の理的なアレコレでそう出来るとは思えませんし」

勇者「貴女もあの王のために恋人の身体発破するなんていうクチではないでしょう、僕は裏切れても恋人の戦士をどうこうするってのは、まぁ、わかりませんけれど」

魔王「なんだ、藪から棒に」

勇者「違う違う、貴方じゃなくて、あそこ、ほら」

魔王「どこだ、西か?」

勇者「もうちょい東」

333以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:55:07 ID:UeGyPl1Q

勇者「隠身の魔法はホント便利ですよね、現役時代は大層お世話になりました。魔王城突入の時にも役に立って、今だってほら、魔王まだ見えてません」

勇者「もうちょっと近くによってもらっていいですか〜僧侶?」

勇者「それと、そちらもまた随分、お久しぶりにございます女神様」

魔王「……おお、見えたぞ。相変わらず見事な隠身であるな、いやしかし、当時より見えにくいのはどういうワケだ?」

魔王「ああ、いや、良い良い。そうか、女神の力を付与されているのか。腐っても女神の使徒よな、勇者程でないにせよ多少なりとも扱えるのか」

334以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:56:06 ID:UeGyPl1Q
僧侶「……」

女神「……」

勇者「で?」

335以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:57:42 ID:UeGyPl1Q

勇者「なんだか嬲り殺されに来たって感じの顔じゃあございませんし、女神様までお連れしてどういうつもりですかね」

勇者「土さんを戦闘不能にしたのは見事ですがぁ、残念、今日は敵情視察に見ての通り魔王が来てますからして」

勇者「絶望通り越して笑える状況ですよ、今、ねぇお二方?」

勇者「ひゃっほう」

魔王「……」

勇者「魔王も一緒に!?」

魔王「……ひゃーほー?」

勇者「……ごめんなさい、無茶を言いました。頑張ってもらっちゃってすみませんでした……」

魔王「……うむ」

336以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:00:34 ID:UeGyPl1Q
ヒャッホウ! 二週間にならないっていったのになってた、不思議! いやマジすんません。
いつもいつもご支援、ご声援ありがとうございます。今日はここまで、続きはまたそのうち。
次はちゃんと二週間以内に収められるといいなぁ。期待せずにのんびりと待ってやって下さい。

337以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:02:43 ID:BtmmgqtI
おう乙ひゃっほう

338以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:28:51 ID:X6hE8P5c


339以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 20:24:58 ID:.7kDnl7w


340以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/04(水) 04:52:29 ID:tnyowU1k
次も改造かなひゃっほう

341以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/04(水) 11:37:56 ID:InI51oGQ
やめて! 魔王さんの若者ポイントはもうゼロよ!?
女神はさておき僧侶の思惑はなんだろな

乙ひゃーほー!!

342以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/05(木) 01:29:54 ID:cNu2E7F.


343以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/09(月) 21:34:44 ID:xwTFmHrU
どうしよう自分より年下の感性を理解して取り入れようとする魔王様とか萌えざるを得ないじゃないですかひゃーほー!

344以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/30(月) 23:33:03 ID:i/Rrl2t6
ひゃーほー! ごめんなさい! 二週間どころか一ヶ月掛かっちゃってる。
僧侶との戦闘シーンどう書こうかなーどうすっかなーっつって全然思い浮かばねぇでやんの。
解決したから後は仕上げるだけなんでもう少しお待ち下さい。お待たせしてばかりだし中々展開進まないし本当にごめんなさい。

345以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/30(月) 23:35:01 ID:mb/LORB6
ひゃっほう
了解

346以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/01(火) 04:49:15 ID:9nIGxWRg
のんびり待ってるぜひゃーほー

347以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/04(金) 01:47:12 ID:vSTJu1no
ひゃっほー(待てない)

348以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 20:59:19 ID:tR5.6Hwo
私はちゃんと締め切りを確り決めないとダラダラ引き伸ばしちゃう人らしい。
とりあえず今、戦闘入るシーンまで上げちゃって、明後日には戦闘シーン上げようと思います。
いつもご声援、ご支援頂きながらも随分お待たせしちゃって申し訳無い。次からは締め切り決めて投稿します。

349以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:00:23 ID:tR5.6Hwo

女神「……」

僧侶「……」

魔王「……」

勇者「……」

350以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:01:50 ID:tR5.6Hwo

勇者「まあ、気を取り直して、改めてご用件をお伺いいたしましょうか」

勇者「戦士の時も言いましたが、ああ、僧侶は見てましたよね、その後ショッキングな映像を生中継したので忘れちゃいました?」

勇者「説得には応じません、投降もしません、説得もしないし投降も受け付けません、皆纏めてゾンビ兵になるか、我が魔王軍の餌食となるか、自殺でもすればいいですよ」

勇者「楽に殺してあげられるよう努力はいたしますので出来る限り抵抗はしないように、まあ、一般の皆々様の話ですけれどね、当事者は別です、戦士も僧侶も魔法使いも」

勇者「王城の王も、重臣たちも、楽には死なせませんから覚悟だけはしておくようにお願いします。自殺? HAHAHA、蘇らせます、そんでヒドいことしたあとぶっ殺します」

女神「勇者」

勇者「はい?」

351以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:03:27 ID:tR5.6Hwo

女神「お願いです、どうか、このようなことはもうお止め下さい。貴方の行いは、きっと、貴方さえも救わない。今なら――」

勇者「あれ、女神様、話聞いてました? 聞こえてないはずないですよね? 説得には応じないと言ったばかりですけど」

勇者「大体女神様ご本人も半分以上諦めてらっしゃるでしょう」

女神「私が貴方に掛けられる言葉がないということはわかっています。けれど、言わねばなりません、例えこの生命が尽きようと!」

女神「例え無残に殺されるだけであったとしても言わねばなりません。それが、あの時貴方を救えなかった責任のとり方です!」

352以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:05:40 ID:tR5.6Hwo

勇者「救えなかったってなんですか、救えなかったって。救おうとしてたみたいなノリで通そうとされても困るんですけど」

勇者「救わなかった、って、素直に言ってくれればいいのに」

勇者「僕がこうなるのを放っておいたんですから、僕がこのまま何をしようと勝手のはずですよ、とはいえ、まあこんなんなっても現代の女神の第一の使徒」

勇者「一応聞きましょうか。あ、それと、誤解がないように言っておきますけど僕は貴女を殺しゃしませんし平手打ち一つしませんよー女神の使徒ですしー」

女神「……お慈悲に感謝致します、勇者」フワッ、ストッ

魔王「ほう! 我らと同じ大地に足をつけ翼を収めるのか! 滅多に見れるものではないな、勇者よ!」

勇者「僕、女神様と同じ目線で語るの困るんですけど、使徒として。ほら僧侶跪いてますし」

魔王「固いことを言うな。女神の使徒ではあるが魔王軍総帥でもあるのだから堂々としておけ。しかし、良く下りる気になったものだな、女神」

魔王「この世界に直に降り立つということは、まさしく我らと同じ世界に触れるということ、天界暮らしには今の世の空気はさぞ苦痛だろうに」

353以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:07:19 ID:tR5.6Hwo

魔王「……まあ、下りてこないまま大上段からこれ以上物を言うなら我が吹き飛ばしてやったがな」

勇者「勘弁して下さいよ。貴方ぐらい力あると浮いたままの女神様でも殺しかねないんだからー」

勇者「止めなきゃいけない立場わかってくださいよーしょっぺぇー」

魔王「ハハハッ! よくそれで、女神の第一の使徒、とかなんとか名乗ったものだな勇者」

勇者「魔王軍総帥でもありますんで、あれ、というか総帥貴方ですよね」

勇者「……あぁ、使徒だから? 体面気にしてくれたんですね、魔王軍総帥なら跪かなくとも堂々と話したって問題無いだろう、と」

354以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:08:48 ID:tR5.6Hwo

魔王「物の弾みで言ってしまっただけだ、我等は人間のように体面だとか義理などどうでもよいのだ」

勇者「魔王軍総帥は当然我だって言い直せばいいのに言い直さないし、まったく、アンタ方どんだけ僕の涙腺刺激すれば気が済むのか」

魔王「知るか、そんなもの、物の弾みだと言った、くどいぞ勇者」

勇者「まぁ〜。お言葉に甘えますけどぉ〜。勘弁して下さいよ、そのうち泣いちゃいますよ、そして涙で脱水症状起こして死にますよ」

女神「貴方は、その魔王にこの境遇に付け入れられているだけなのですよ勇者」

女神「その者は魔王、魔界に君臨するために、ありとあらゆる手段を画策してそう成った者、魔の権化。貴方はそんな者に惑わされているに過ぎません」

355以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:09:42 ID:tR5.6Hwo

魔王「ほう」

勇者「はぁ」

女神「貴方の強大な力を己の側に引き入れさせれば勝利は確実となります」

勇者「でしょうねぇ」

魔王「そうだな」

356以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:13:35 ID:tR5.6Hwo

女神「配下の命など己が目的を達成するための道具程度にしか見ない男です、それは」

魔王「間違いではないな」
勇者「間違いないですね」

女神「このままでは、貴方は、貴方は何れ、その男に使い殺されてしまう!」

勇者「マジですか」
魔王「初耳ですが」

女神「貴方ほどの者にそんな末路があってはいけない! 考えてもみてください! その男の非道さを貴方は何度も見てきたではありませんか!」

魔王「見せたな」
勇者「見ました」

357以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:16:46 ID:tR5.6Hwo

魔王「人間の街や村を見つけ次第殺し尽くし破壊し尽くそうとした」

勇者「女子供、老若男女、有象無象の区別なく我の悪意は許しはしないわ的なノリでした」

魔王「たまたま捕えた人間を盾に括り付けて肉壁に使った」

勇者「超攻撃しにくかった。したけど」

魔王「しにくかったのか? 結構ためらいなく攻撃してきたように見えたので当時は驚いたものだ、そうか、あれで一応、躊躇してたのか」

魔王「で、さらにそういうことにも使えそうにない、盾に括り付けて移動している間に死にそうな人間は餌にした」

勇者「人喰い植物とかね、土の四天王さんの作品なので魔王関係ないです、ああアレ一応アイディアは貴方か」

魔王「デザインがダサいし古いしダサいし機能美・造形美敵にまったく美しくないと駄目だしを貰った……あれには落ち込んだな……」

勇者「あの人はあの人的機能美か造形美どっちか満たされていないと極端に辛口ですよね、けどダサい言い過ぎでしょ……ダサいけど」

魔王「……フ。……そうか……。……そうかぁ……ダサいかぁ……」

勇者「ごめんなさい」

魔王「良いのだ……」

358以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:18:22 ID:tR5.6Hwo

女神「どうして王や貴方を裏切ろうとした仲間達の反逆心がその男の手によるものでないと言い切れるでしょうか!」

魔王「言い切れん、あの国の王には一度降伏を勧めた折に面通しはした、勇者の仲間達には決戦の折に長く触れ合っていた」

魔王「あの王は曲者の類ではあるが所詮は人間、人間一人の心を惑わすのはワケもない」

魔王「勇者の仲間とはいえ、人の臨界点だったとはいえ、所詮人間である、時間を掛ければ出来ぬことはない」

359以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:20:53 ID:tR5.6Hwo

女神「証拠は有りません、その男も一見認めたように見えて、そう具体的な可能性を指し示すことであえて己の目的から意識を逸らされるための非道な話術!」

女神「目的を達成できるのならば義理や体面などはどうでもいいのです! 見なさい! 貴方や私達も騙されました、王ともあろう者がまさか、己の死を詐称して……」

女神「部下を見捨て、長き期間をおいて、再び貴方の目の前に現れているその悍ましき醜悪性がそこにある! 信用してよいものなのでしょうか!」

勇者「へぇ」

魔王「ほう」

360以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:25:01 ID:tR5.6Hwo

女神「……ゆ、勇者?」

勇者「なんでしょう?」

女神「で、ですから、貴方は、そんな、魔王になぞ惑わされるべきでは、ないのです。ですから、どうか、こちらに」

勇者「そちらに戻ったら次は人間に使い殺されるじゃないですか。前科ありますよ」

女神「ですから、そんなことは、に、人間は、しません。貴方を……そのような目に遭わせたのは魔王、です」

勇者「操られているようには見えませんでしたし操られているからってやった事を帳消しには出来ませんよ?」

勇者「それに、そもそも、僕を見捨てたうちの悪性が自分たちの善性説いたって説得力ないんですよねぇ……」

361以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:26:46 ID:aQcZu91E
操られてるなら操られてる状態でどんだけ放置してんだって話だわな

362以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:27:36 ID:tR5.6Hwo
女神「そ、それは、誤解なのです、いえ、いえ、たしかに誤解とは言えないかもしれませんが……」

女神「そ、それに。人間に敵対するということは、人間の貴方にとっては、苦痛であることでしょう」

女神「人間である貴方が人間を滅ぼし尽くしたとして一体その先に何があるというのですか」

女神「当事者達に復讐する権利はあります、それがたとえ、魔王の手による悪しき術のものであったとはいえ、確かに操られているとはいえやってはいけないことをしました」

女神「彼等に貴方を疎む気持ちあったからこそ操られてしまったことも否めません」

女神「それは致し方ありません! 言いたくはありません、しかし、彼等に復讐したとしても貴方に非はないと言ってもいい。私も、殺されても、仕方ないと思います」

女神「しかし無関係の者まで、未来ある者を、未来のために礎になってきた者まで、踏み付けていく権利などは貴方にもありません!」

女神「……ですから、どうか。どうか、私達だけで、終わりにしてください」

女神「もし許されるならば、もっと、勇者、貴方と話がしたい。もし望んでいただけるのならば、もっと、このことについて話しあわせて下さい」

女神「今言うべきことの、多くのところは、言えました。けれど、もっと、もっと、深く語り合えるところが、まだあるはずです。ですから、どうか」

女神「……今の言葉に、少しでも、感じるものがあってくださるなら、どうか。……私からは、以上です……」

363以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:33:42 ID:tR5.6Hwo

勇者「ふむ」

魔王「む?」

勇者「ああ、どうぞ」

魔王「む、良いか?」

魔王「では、色々言いたいことはあるとしても、だ、まずは、そうだな、何処から話すべきか」

勇者「最初から」

魔王「良かろう」

364以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:35:03 ID:tR5.6Hwo

魔王「まず、相違ない、我こそが魔王である。実行できうる限りの策と手段で以て、ふん、それが非道と呼ばれるならそれでも良いわ、それにて魔界に君臨した王である」

魔王「我は間違いなく強大であろう、その力を以てしても征服能うことなかった人間界を下す為、征服能うことのなかった要因にして最も大きな力を得て再び覇道を進む――」

魔王「……つもりだったのだが、今や我もまたこの勇者の覇道をなすための一因にしか過ぎぬがな。我が覇道は此奴の覇道がなしていく過程にあるのでお零れを貰う立場だよ」

魔王「何故か、と?」

魔王「逆に問いたい、何故そんな質問が出るというのだ」

魔王「我は魔物であり、魔物が跋扈する世界の王である。そして魔物とは強い者に従う。常識だ」

魔王「此奴のほうが我よりも強い。此奴が我に勝ち得たのは此奴の仲間のおかげかもしれぬが、一人とて、倒される時間が早いか遅いかだ」

勇者「でしょうねぇ。優秀でしたよ、優秀でしたし代わりは居ませんでしたが、居ないとどうにもならないレベルかといえば……ん〜……」

勇者「あ、でも、最初の方は助けられちゃいましたし道中も少し楽させてもらったんで、居てもよかったです」

僧侶「……」

365以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:36:42 ID:tR5.6Hwo

魔王「よって、我が勇者を使い殺すなどということはしない、いいや、出来ん。これは魔物の性だ」

魔王「よしんばそれを克服したとしてもまともに挑んでは返り討ち必至、不意打ちしようにもなぁ」

魔王「これだ」

勇者「はい?」

魔王「恐ろしい話ではあるが、此奴は今では常に臨戦態勢のままである。僧侶よ、女神よ、貴様らが余計なことをしてくれたおかげで隙を見せんわ」

勇者「いや、申し訳ないとは思ってるんですよ。こんなによくしてくれてるんだし気を緩めたいとは思うんですけど流石にちょっとトラウマでして」

僧侶「……」

魔王「致し方ない、我とて同じ目に遭えばそうなる」

366以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:38:12 ID:tR5.6Hwo

魔王「でだ、配下として使えぬ男を使い殺してしまえとはこれいかに、ああ、使い殺すという単語もあまり好きではないな、いいや、はっきり言って不愉快だ」

魔王「配下を道具のように扱うといっていたな、そのあたりも言っておこう、何が悪い。配下とは手足と同義である、手足を目的のために使うことの何が悪い」

魔王「人間は包丁を使うときにいちいち手に話しかけて了解を取るのか? 包丁で手を傷つけたときにいちいち手に謝るのか。阿呆らしい」

魔王「しかしそれと、治療をしない、ハンドクリームを塗らない、火を扱うときに火傷対策をしない、寒くとも温めない、それとこれとでは話が別だろうよ」

魔王「そういうことをするのが使い殺すという事だ。我はそんなことはせん、手足を壊死させて何の得があるというのか、阿呆らしい」

勇者「道具を大切にする派ですもんね。ねえねえ見えます女神様に僧侶? あのマントちょっと継ぎ接ぎが見えるんですよ」

勇者「僕に破られたの集めて再利用してんですよ、あの人」

魔王「余計なこと言うな、我が貧乏性みたいであろうが。このマントはそう軽々しく一から作れるようなものでは無いのだ」

367以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:40:07 ID:tR5.6Hwo

魔王「誘惑の件については、残念ながら、反論は出来ぬな。したのしてないのと言い続けても埒が明かん」

勇者「僕はしてないと思ってます」

魔王「勇者がこう言ってくれている。それで良い」

勇者「照れるんですけど。この人が女性だったら僕惚れちゃうんですけど」

魔王「なろうか?」

勇者「なれるの!?」

魔王「嘘だ」

勇者「期待させてくれてんじゃねぇですよこの魔王が!!」

魔王「フッフッフ」

魔王「第一なったとしても第二婦人になってしまうであろうが。土のことを考えろ、上司が上司のまま自分より後に据えられたらたまったものではないぞ」

勇者「あれ僕いつのまにか土さんと結婚することになってる。魔王軍総司令を譲ってもらったと思ったら縁談まで一緒についてきたでござる。ちょべりば」

魔王「ちょべ……? ……嫌か?」

勇者「ちょべりばなんてウソですよ! 嫌じゃないですよ! でももうちょっと、こう、いや、後で良いですそれは。続けて」

368以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:42:15 ID:tR5.6Hwo

魔王「何処まで話したか? ああ、そうだ、我が己の死を偽証してどうのこうのと言っていたな。空いた口が塞がらんわ」

勇者「何をどうしたらあそこまで記憶改竄しちゃえるのか流石の僕もビックリ仰天ですよね」

勇者「Consternation!!!!!(軍団)」

女神「!?」

僧侶「!?」

魔王「うおぉっ!? お、お、驚かすな、勇者。お、お前、たまに凄まじくデカい声が出るな……」

勇者「ごめんなさい」

369以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:44:17 ID:tR5.6Hwo

勇者「でも、ないわ。ないわー女神様……魔王の死体見てるじゃないですか。偽装でも幻術でもないですよ、というか魔王、幻術使えないし」

勇者「僧侶の姿消しすら見破れないレベルですよ、この前も僕は食事のときに姿消してこっそり魔王のかき揚げ蕎麦の掻き揚げ食べましたし」

魔王「ちょっと待て貴様あれいつの間に食べたんだろう我もいよいよ歳かなーとか本気で悩んだぞあれ貴様かおいあれおい」

勇者「魔王のワインも秘密のワインセラーから一本拝借しましたし」

魔王「おい待て何か一本足りないけど気の所為かと思ってたんだぞ」

勇者「他にも色々やりました」

魔王「あとで屋上に来い貴様」

勇者「土さんと一緒に色々やりました」

魔王「貴様と土あとで魔王城の屋上に来い、絶対に来るように」

370以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:45:41 ID:tR5.6Hwo

勇者「あと、別に、苦痛でもなんでもないというか。寧ろ物凄く晴れやかな気持ちというか、なんというか、まあ、色々言いましたけれど」

勇者「魔王が例え何であろうと例え何をしようと人間が僕を裏切ったのは変わりありません」

勇者「生死も運命も分かちあったはずの仲間は、地位と金に目が眩んで、僕を襲いましたし」

勇者「その他大勢は救ってやったのに救ってくれませんでした、世界平和の報酬は、憎まれたり蔑まれたりしながらの獄中生活でしたよ?」

勇者「僕じゃなきゃ死んでるような獄中生活でしたし、なんとまあ、二十年閉じ込められてる間にみぃ〜〜〜〜〜んなそのこと忘れてたし」

勇者「滅ぼそうと思ったっていいじゃないですか、それにぃ〜。未来がどうのこうのと仰られていますが、今この世界に生きている人間が、生きていられるのは、僕のおかげです」

勇者「魔王ったら当時から滅ぼし尽くすって言ってたじゃないですか、僕が居なかったら滅ぼし尽くされてましたよ?」

勇者「僕のおかげで人間は生きている。僕のおかげです、借りです。僕の気が変わったんで借りを若干の利子つけて返してもらうだけのこと。二十年も長生きできたんです、上等でしょ?」

勇者「そういうことです」

371以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:46:29 ID:tR5.6Hwo

勇者「さて、それじゃ、下らないお話タイムも終わりましたし。とりあえず僧侶、死んどこかぁ。また爆発されちゃかなわんので適当に嬲ってから殺したげます、やったね!」

女神「……僧侶」

僧侶「……」

女神「勇者は、やはり、闇に落ちていました。わかっていたことですが……悲しい」

勇者「闇堕ちさせたのあなた方ですけどね」

勇者「さ、無駄話はこれで終わり。やりましょう、やりますよ、それでは魔王……は、ついてこれないのわかってますが、僕一人でもいきます」

勇者「ごほん」

勇者「ひゃっほう!」

魔王「こなくそ! 我もやれば出来る男だというこそを見せてやるぞ!」

勇者「さすが! せーの!」

魔王「ヒャッホー!!!!!」

勇者「声でかい!?」

魔王「どうだ!」

372以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:49:48 ID:tR5.6Hwo
というところで今回はここまでで次回は明後日に投稿します。
ありがとうございました。

373以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:52:53 ID:xAOonm7Y
乙!!魔王様のキャラが好きだ

374以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 22:27:36 ID:aQcZu91E
乙ャッホー
次はスッキリ出来そうだね

375以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 22:33:48 ID:PaRdDMRQ
僧侶は声帯を潰されて顔を焼かれたんだっけか

まだ登場してないのは懇親の呪いを受けた魔法使いか

376以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 04:42:41 ID:BTZxOrUI
唐突な(軍団)ボイスでみんなビビってるじゃねーか

377以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 12:56:47 ID:A9jvS6ZE
あの、魔王様の盾にでも壁にでもダサい素材にでもなりたいんですが魔界への転入手続きは如何にすれば宜しいですかひゃっほう!

378以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 14:53:46 ID:ujlcSjaY
魔王様がこのスレ屈指の癒しキャラに……
ああ裏声さんいないとさびしい

乙ヒャッホー!

379以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 21:48:03 ID:l4qcf556
ひゃっほうが勇者でヒャッホーが魔王、覚えた

380以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:13:12 ID:UsPserig
しまったのんびりしてたら土曜になっちゃった。
書き足すとこないか、不足なとこないか、もうちょいで見直し終わるんでお待ちを。
見直しても不足あったりしても勘弁して下さい!

381以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:39:12 ID:UsPserig
いつもご声援、ご支援、ありがとうございます。予定より遅くなっちゃてすみません。締め切り過ぎてもダメな人間だったようです。
投稿はじめさせていただきます。戦士のときより地の文多くなってしまっているので苦手な方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

382以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:42:02 ID:UsPserig

 まともに戦ってはいけない相手、まともに戦ってしまえば出鱈目なまでの肉体スペックと技量で粉砕されてしまう相手。
 最盛期の勇者とはそういう男であったということを僧侶と女神は思い出していた、戦士がああなったことで思い出させられていた。

 最盛期の勇者とまともに肉弾戦をこなせるといえるのは炎の四天王ぐらいのもの、肉弾戦で互角近くで戦えるのは魔王ぐらいのもの。
 彼等は元より戦士よりもさらに肉体性能が遥かに劣る僧侶と女神はそれだけに同じ轍は踏まない、踏めない。

 ――策は用意した。


魔王「さて、気合入れも終わったが、あちらも何か仕掛けてくるつもりだぞ勇者よ」

勇者「一緒に踏み潰しましょうか、魔王」

383以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:44:00 ID:UsPserig

 僧侶にとって幸いと言っても良い点が一つはあった。

 勇者は、昔と今では見た目も有り様も大きく変わってしまっているが、昔も今も戦闘の基本に忠実だということだ。
 そのうちの一つとして、相手の身体の動きそのものも見ているが、相手の目の動きを見て動きの始まりや狙い所を見極めるクセがある。

 ――そこだ。


勇者「では……」 

僧侶「――」

384以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:46:14 ID:UsPserig

 戦士を斬ったときも戦士の目を勇者は見ていた。己の反応速度についていけない者の目も勇者はしっかりと見ている。
 僧侶たる自分が戦士でも追い切れない動きを見ることはできないが、自分の目をあちらが見ていればそれでいい。

 そういうつもりで、頭を上げた僧侶の目にはやはり、奇跡など起ころうはずもなく勇者の姿は見えていない。

 魔王だけが、たった一歩の踏み込みで距離を潰し、引き抜いた剣を真横に振り被り、僧侶の両足を絶とうとしている勇者の動きが見えていた。


魔王「……ほう」

勇者「――」

385以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:48:47 ID:UsPserig
僧侶「……」 

女神「成功、しましたか」


 魔王が、意外なものを見た、といった顔で眺める。

 僧侶は、焼かれた顔を隠すための仮面で表情は伺えない。
 女神は、成功したとは言うものの苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 勇者は、無表情のまま、ギリギリ僧侶の足に触れるか触れないかというところで剣を止め、動きを停止させていた。


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