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勇者「魔王を倒してから、あれから二十年!」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2015/04/21(火) 04:28:39 ID:yE6jxwRI

勇者「僕は元気にやってます!」

勇者「牢獄の中でなーっ!」

勇者「おはようございます!」

勇者「はい、おはようございます勇者様(裏声)」

勇者「微かに聞こえる雨音からして本日のお天気はやや小振りの雨日和ですね!」

勇者「お腹の減り具合からして大体今は午前十一時頃といったところですかね!」

勇者「不摂生はいけませんよ勇者様(裏声)」

勇者「そうですね気を付けます! 旅をしていた頃は日が出るより早く起きて日が沈む前に寝ていたのにすっかり今や」

勇者「嘘はいけませんよ勇者様」

勇者「はいスミマセンでした! 日が沈む頃に魔法使いとギシアンしはじめて日が出る所に精魂尽き果てる生活してました!」

勇者「おかげで旅のペースが遅れるの何のって! ハハハ!」

勇者「ヒャッホウ!」

勇者「ひゃっほう(裏声)」

259以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:22:04 ID:kBMA585g

勇者「世界征服終わったら何しましょうか」

土の四天王「魔王様は魔族の国ヲ地上に打ち立てる気でいまスけど、勇者=サンはなにかプランは?」

勇者「ないんですよねぇ。いやね、人間界を滅ぼしたあとは魔界にでも攻め込んでやろうかとは思ってたんですよ」

土の四天王「聞き捨てなラない台詞が飛び出してルンですけド。どうゾ、続けテ」

260以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:23:11 ID:kBMA585g

勇者「人類憎し世界憎し、皆皆滅んじゃえーってね」

勇者「けどねー気紛れでこうしたら人間嫌がるだろうなーと思って魔族復活させたワケじゃないですか」

土の四天王「簡単に言ッてまスけど普通復活サせようと思って復活サせラれるものじャアりまセんからネ。あァいャ、スみまセン、どうゾ」

勇者「利害が一致しているとは言え、復活までさせて、協力もしてもらってる魔族を、それじゃあ用が済んだら皆殺し!」

261以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:24:19 ID:kBMA585g

勇者「って、ねぇ、人としてどうよって感じですし」

土の四天王「ア、よウやく安心できル台詞ガきまシたヨ」

勇者「ええ、そういうわけですので、魔族は免除かなぁって」

土の四天王「安心シまシた」

262以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:26:11 ID:kBMA585g

勇者「なんなら、魔族の国造りを手伝ってもいいです、そのあと、そのあとか、どうしたものですかねぇ」

勇者「天界にでも行きますか」

土の四天王「行けるんですカ」

勇者「さぁ? 試してみないことには分かりませんけどね。行けたら女神には一言物申さなくてはいけません」

勇者「加護にはずいぶんと助けられていますから殺しゃしませんが文句の一つぐらいは言ってもいいでしょう」

263以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:28:04 ID:kBMA585g

土の四天王「言われてみるトですネ」

勇者「はい?」

土の四天王「勇者なんデスから勇者=サンは女神の加護ヲ使えて当たり前だと思ッてたンでスけれド」

勇者「ええ」

土の四天王「人類滅ぼそうとスるワ、私達魔族に協力なンてしちャうわッて色々やッてるのに女神の加護ッて有効なンですネ?」

勇者「ああ、そのことですか」

264以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:29:27 ID:kBMA585g

土の四天王「女神=サンは勇者=サンのやること何でもオッケーみたイナ感じでス? 人類が勇者=サンに滅ぼされるの自業自得でスし」

土の四天王「魔族は協力じャなくて隷属だからオッケー? 実際魔族の現状は勇者=サンの奴隷みたイなもンでスシ

土の四天王「過去には魔物使いの勇者も居たと聞イていまスよ」

勇者「なにそれ魔物使いの勇者とかこっちが初耳なんですけど」

265以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:30:25 ID:kBMA585g

勇者「あー、えー、そうですねぇ。魔族との協力云々のそれは別に明確に駄目って言われてるワケじゃないんですけれど」

勇者「グレーってかんじではありましたね、一度女神様についてその事お聞きしたことがあったんですよ、僕」

土の四天王「まともだッた頃に?」

勇者「まともだった頃に」

勇者「魔物だから、魔族だから等しく悪ってワケじゃないでしょう。善性の魔物や魔族が居たらどうしたらいいですか、と」

土の四天王「ほう、それで、女神様はナんとお答え二?」

266以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:32:17 ID:kBMA585g
勇者「障害となるもののみ排除しなさい、とだけ」

勇者「確りと答えては頂けませんでした。納得いかずに詰めたんですけど酷くお困りになられましてね、仕方ないので聞くの止めました」

勇者「なにかこう、天界のルール的なあれでそれがあるのかもしれませんね。あ、ただ、人類滅ぼすはドアウトです。スーパーブラック」

勇者「女神様のご加護めっちゃ離れようとしてます」

土の四天王「アレ? やッぱリ? でも勇者=サン、今も余裕で使えてまスよネ。使えてるよウで使えテないトカ?」

267以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:33:04 ID:kBMA585g

また最初の挨拶忘れてた……私でしたー! ヒャッホウ!
中途半端なところでスンマセンが、今日はここまで、続きはまたそのうち。

268以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:38:00 ID:0UZxxVaI
お久しぶりヒャッホウ!
楽しみにしてるぜ!

269以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:38:44 ID:SdzNTEM6

戦士はあっさりと折れたのか

270以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 00:46:50 ID:ZCXywHpk


271以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 04:05:05 ID:0BQnQ4NM

このまま僧侶と魔法使いも無残な姿にしてあげよう(提案)

272以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 09:01:10 ID:zU5Q6tKA
更新嬉しいHyahhow!(乙軍団)
戦士の成れの果てを見た僧侶さんの感想と、魔法使いの現状を楽しみにしとります

女神的には隷属ならグレー……?
絶滅危惧種みたいに、ちょっとだけ残しといたらイケんじゃね?

あ、オマケコーナーの裏声さんは頂いていきますね

273以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/08(水) 21:44:15 ID:hSBeKyQ.
乙ひゃっほう!
流石裏切りに定評ある(?)戦士さん
吹っ飛ばされた下半身は今は何でできているのやら………
醜悪な魔物で出来ていてそれを僧侶達にぶつけるのも悪くはないな………(ゲス顔)

274以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/17(金) 22:39:55 ID:Hzpj9k1k
ヒャッホウまってる

275以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/24(金) 14:01:18 ID:1ZXHfHVw
乙乙ー
土の四天王=サンは忍殺にハマってでもいるのか

276以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/31(金) 23:14:49 ID:clRMAYek
ヒャッホウはよー

277以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/06(木) 19:51:01 ID:DdBXFL1.
ヒャッホウ(小声)

278以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/16(日) 16:32:38 ID:F3zqLS2I
ヒャッホシュ

279以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/02(水) 21:40:26 ID:BzBobXDg
ホッシュ

280以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/15(火) 21:04:18 ID:T4x8wDws
ほし

281以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/23(水) 20:02:09 ID:6aL/f25s
ヒャッホウ保守

282以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/29(火) 20:36:38 ID:5n4zkUmE
ヒャッホウ

283以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/07(水) 20:12:11 ID:5ZNX6itI
ヾ(*ΦωΦ)ノ ヒャッホゥ

284以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/12(月) 09:25:30 ID:dUEVpAZg
ヒャッホウ(小声)

285以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:21:37 ID:WNNMFA22
ヒャッホウ!!! 気付けば盆休みもシルバーウィークも終わってた。光陰矢の如しとはこのことか。
保守ありがとう、応援もありがとう、またこれから投稿するよごめんね遅くなって!

中途半端なところをとりあえず一区切り付けるとこまでやるよー。

286以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:22:37 ID:WNNMFA22

勇者「いや、簡単な話でして。離れようとしてる加護を僕が全力で僕の身体に抑え込んでるだけです」

勇者「抑え込むのに殆どの魔力を費やしているので今まともな魔法使えないんですよねぇ」

土の四天王「今明かされる衝撃的すギル事実なンですけレど!?」

土の四天王「アレ!? おかしいでスよ!? ゾンビ兵は兎も角とシて私達の復活には莫大な魔力要りまスよね!?」

勇者「要りますね」

土の四天王「でスよネ!? 一山いくらで復活さセられる程私達安くあリませんヨ!?」

土の四天王「待ッて待ッて、ウェイウェイウェイ……」

287以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:24:27 ID:WNNMFA22

勇者「結構簡単ですよ、いや、方法は簡単ではありませんが発想は簡単でしたね」

勇者「自分の魔力が使えないなら人の魔力を使えばいいじゃない」

土の四天王「ウェイ」

勇者「所謂……元気玉ですよーこれー!」

土の四天王「ウェイ」

勇者「世界中の皆よおらに元気を分けてくれー! つって! 僕に自主的に協力してくれる生物なんて皆無ですけど!」

勇者「強制的にちょっと拝借させていただいております!」

土の四天王「ウェイ」

288以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:26:14 ID:WNNMFA22
勇者「女神の加護はそれはもう便利でしてね! この世界で活動するにあたって大抵なんとか出来る技能が盛りだくさん!」

勇者「僕って結構いい声してません!?」

土の四天王「ウェ……あ、はい、まァ、いイ声だと思いマすヨ。ちょット面に合ッてまセンけどハスキーボイスで」

土の四天王「あレ? でも前お会いした時ハそんな声じャなかッたでスよね、でも私とシては今のほうがステキだと思いマスよ、好みでスし」

勇者「面にあってないは余計ですよ! あとこれは投獄された時に叫びすぎて喉が潰れては再生して叫んで潰して再生してたらこんな感じに」

289以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:28:14 ID:WNNMFA22

勇者「……」

勇者「うん?」

勇者「え? 好み? こ、好みかぁ……えへへへ……。……そういえば魔王も結構バリトンボイスでしたね……おソバ好き同士ですしいい奴ですよ彼は……」

勇者「僕の境遇にあれだけぶち切れてくれたのも彼だけでしたからねぇ、あぁ、いや、違くて。いや、今の声も気に入ってますけどそうじゃなくてですね」

勇者「僕の声にはちょっとした力があります」

290以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:30:25 ID:WNNMFA22

勇者「声質がいいとかの問題でなくて、生物相手に若干安らぎというか、なんとなく言うこと聞いてあげたいなーって気分にさせる魔力が含まれてます」

土の四天王「ほう。あレ? とすると私が勇者=サンの声好みなノもそのセイ?」

勇者「いや土さん元々低い系の声好きみたいだし、土さんぐらい力のある方だと『あーなんかいい感じの声だな』ぐらいにしか効かないんで」

土の四天王「効いテはいルンですネ、構いまセンけど」

291以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:32:28 ID:WNNMFA22

勇者「ありがとうございます、まぁ、つまり、常にちょっとした魅了の魔法放ってるようなもんなんですよね。これオフにはできないけど強弱は付けれるんですよ」

勇者「これは、二十年振りにお外に出てきて鍛錬し直してる間にはじめて気付いたんですけど、最大レベルにまで跳ね上げると世界中に僕の声が届くみたいですね」

勇者「僕自身が強すぎるから最大までいくとこうなのか」

勇者「元々最大レベルまで引き上げるとこうなのかは知りませんけど」

土の四天王「アー。そレでちョッと魔力を世界中かラ掻き集めテ……」

勇者「そゆことです、一人一人、一体一体から取れる魔力なんて微々たるものですがね、あくまで言うこと聞いてあげたいなー程度の効力なんで多くは取れません」

勇者「が、それでも世界中の生物からほんの少しでも取り上げて集めれば莫大といっても過言ではない量ですよ」

勇者「取った人から気取られる心配もないようですしね、現に何度かやってみたけど気付いてる人いないっぽい」

勇者「元仲間達が全盛期だったらあるいは、ですけど、今ダルンダルンですしね、彼等」

292以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:33:53 ID:hX8Br46I
今明かされる衝撃の真実ゥ!

293以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:35:30 ID:WNNMFA22

勇者「衰えた仲間たち、この二十年ですっかり色々と忘れちゃった人類、対して全盛期の僕と魔王軍と、ついでに全盛期より強くした戦士」

土の四天王「勇者=サンのご意向でゆッくりヤッてまスけれド、二十年前のノウハウもあルしヤろうと思えばさッと片付く戦力差ですヨ〜」

勇者「あの時は魔王軍も手探りだったからゆっくりとした侵攻となりゆっくりしている間に僕という勇者が出現し、彼等という仲間が出てきて、覆しましたが」

勇者「今回はどうなるんでしょうね、また、新たな勇者が生まれるのか、その彼あるいは彼女にはどれだけの力が有りどれだけの加護が与えられるのか」

土の四天王「わざわざ勇者=サンの身体から離れヨうとシていルのは、こンな不埒な輩には持たセテおけないとイウ規律なのカ」

勇者「換えが効かないから僕から引剥がして他の勇者に与えようとしている算段か、こちらだと思いますがね」

勇者「女神様はこの世界を司ってあられる方ですけれど、この世界に莫大な影響をポンポン与えられる程の力は無い。そもそも勇者自体、魔王がねぇ……」

土の四天王「その女神より強いから勇者を造らざるを得なかったワケですしね〜」

勇者「見ものですよこれは」

土の四天王「イイ趣味してマスよ、勇者=サマ」

294以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:36:53 ID:WNNMFA22
勇者「ハッハッハ」

土の四天王「フハハハー」

勇者「ひゃっほう!」

土の四天王「ひゃっほぉぉぉう!!」

295以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:40:16 ID:vhIWfVe6
ヒャッホウ

296以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:43:26 ID:WNNMFA22
合いの手入れてくれた人も、待っていてくれた人も、これから読む人にもありがとー。
中途半端にとりあえずの一区切り。今日はここまで。続きは、一週間以内。

297以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:47:05 ID:VeSr13As
乙ヒャッホウ

298以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 00:58:02 ID:9xl11Nak


299以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 01:17:08 ID:4KOQFi1Q
ひゃっほう(歓喜)

300以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 03:57:01 ID:j3.0Tj.g
ひゃっほう(裏声)

301以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 07:10:04 ID:sBvOoIrc
ひゃっほう(軍団)

302以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 07:55:13 ID:ESIty4oc
ひゃっほう!(おかえり)

残りの裏切り者が出てくるの楽しみだ

303以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 18:12:13 ID:RJz7Fc6I
ひゃっほう!(裏声)

>>301
(軍団)さんは英語じゃなかったか??

304以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 19:05:44 ID:fjRQ7OZU
(軍団)さん初登場は英語じゃないし気にしなくてもおけおけ

305以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/13(火) 23:20:07 ID:v8OEGp4o
ヒャッホウ(乙)

306以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:01:12 ID:RZ82nhgc


――所変わって――


 彼女は『聖女』と謳われていた。彼女は僧侶として人類の危機に立ち向かった。
 勇者と共に魔王軍に立ち向かい魔王を討ち滅ぼした者たちの一人であった。勇者以外では女神の声を聞けるただ一人の人間だった。

 魔王戦役の折には、顔を焼かれ喉を潰されて無残な傷跡を付けられてしまったが、
 顔を隠して声は剣聖・戦士を通して、常に民の希望として在った。

 飢える者には食糧を。傷付いた者たちには治療を。奴隷があれば彼等を平民として生きられる地位と仕事を与えた。
 目についた不幸には片っ端から全力で当たってきたし、それこそが女神の使徒としての使命、それこそが女神が己に与えた言葉であると訴えた。

 聖女として成り上がった経緯も、傷を与えられた原因も、虚偽であったが。やってきた功績は紛れも無く真実だ。
 勇者を裏切って国王から聖女としての地位を得て、女神の言葉はあれ以降聞こえなくなってしまったが。弱気を助けてきた所業は真実だった。


女神「魔王でさえ私が及ぼせる力ではどうしようもできなかった。今の勇者も、やはり、そのようです、私が及ぼしうる力を大きく超えてしまっている」

女神「加護は回収できません」

僧侶「――」

307以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:03:32 ID:RZ82nhgc

女神「彼は私の言葉にも最早応えてくれることはありません。彼が私の言葉に応えてくれるのであれば、協力してくれるのであれば、あるいは」

女神「どうして協力などしてくれましょうか、私と貴女達は彼の目には等しく裏切り者として写っているというのに。そしてそれは、事実です」

女神「貴女達は地位に惹かれ、どこかで劣等感もあったからこそ彼を裏切り封印した」

女神「私もまた其れが人類の平和のためであるなら、彼が争いの火種になるのならば、そう思い封印を見過ごしました」

僧侶「――」

308以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:06:48 ID:RZ82nhgc
女神「私が勇者に与えられる加護とは、あの勇者に与えている加護」

女神「常に全盛期として在れる不老の肉体も、いかなる環境下でも生きられる強靭な肉体も、莫大な魔力のキャパシティも、死ねば蘇生される不死性も。他の全ても。
   新たな勇者がそれを得られる可能性はないでしょう」

僧侶「――」

女神「そうです、僧侶よ。新たな勇者は生まれたとしてもあの勇者よりも大きく劣る」

女神「僧侶よ。どうしようも、ないのです」


 二十年前のあの日以来から降りてきた僧侶への女神の声は、勇者の予想にぴたりと嵌った、人類側への絶望の一手であった。

309以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:08:14 ID:RZ82nhgc


――それからどーした――


王「……そうか。新たな勇者ではあの勇者には勝てぬか」

大臣「二十年前の悪夢はよりタチが悪くなっておりますな、しかしそれならば、王よ」

王「うむ、それならば別の手を講じるまで。二十年前はたまたま女神様がご助力下さった、いわば偶然」

王「此度は偶然には頼るまい、頼れまい、あの塔に押し込めておけば死んでくれるかと期待していたが」

大臣「死んでくれれば万々歳でしたが、死んでいないのならば、時間を稼げた、と、思うことに致しましょう」

310以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:10:18 ID:RZ82nhgc

王「我等も忘れていたかったなぁ、戦士達のようにな」

王「しかし、忘れていたにせよ、忘れていたかったにせよ、あの時用意したプランはまだここにある」

王「此れを元手に、あのときのノウハウを元手に一つずつ一つずつ、片付けていこうか。何、絶望を味わうのは二度目だしな、若干気楽でさえあるわ」

王「まずは、戦士からだな。戦士め、あの、大馬鹿者め」

311以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:12:04 ID:RZ82nhgc

王「都合のいいように忘れているならまだいいにして、都合よく記憶を改竄しているとは、恐れ入った」

王「勇者が居るなら、せめて僧侶と共に行けとあれだけ言い付けておいたというのに一人で行って返り討ちにあって寝返るとはな」

大臣「ええ、困ったものです、が、準備は整えております。何分『施術』したのが一昔前でございますので少々準備に手間取ってしまいましたが」

312以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:14:50 ID:RZ82nhgc

大臣「次にこちらに侵攻してきたときに発動させられます」

王「宜しい、それでは、そのときに。……あの、大馬鹿者め。大人しく従っていれば生き永らえたものの、大馬鹿の馬鹿者め」

王「魂の友とも言えるような勇者を裏切っておいて、我等が信用すると思っているのなら、大間違いだということを教えてやる」

313以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:16:46 ID:RZ82nhgc


――そして一、二週間後のこと――


勇者「あ〜ビックリした」

勇者「戦士がいきなり爆発しました」

勇者「結構な爆発力でしたね、小さいとはいえ要塞が丸々一個と連れてきてた兵の七割ぐらい吹き飛んじゃいましたよ」

勇者「土の四天王さんも重傷ですし一緒に修理(なお)さないといけませんね、戦士は、もうダメかな。欠片しか残ってない」

314以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:18:07 ID:RZ82nhgc

勇者「爆心地にメッチャ近いっつーか戦士の横にいた僕と魔王もちょっと焦げちゃいました」

魔王「いや、驚いたなアレは」

勇者「ねー」

魔王「うむ」

315以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:22:13 ID:RZ82nhgc
ヒャッホウ! ご声援、いつもいつもありがとうございます。
短いけど今日はここまで。続きはまたそのうち、一週間か、長くても二週間にはならない、ハズ!

316以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:22:56 ID:YgF9eF5s

つっちーやられてしまった

317以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/20(火) 23:33:43 ID:BhmlxcQ6
ヒャッホウ(おつ)

318以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 00:50:10 ID:vWh164OA
砦一つ吹っ飛んで四天王の一角に大ダメージ与える爆発を間近で受けて焦げるだけとか………最強ですわ、ひゃっほう!

319以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 01:01:58 ID:5bR4nx/2
この勇者と魔王に対抗する手段とは

320以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 03:07:57 ID:NJ4IO/nI
魔王様軽いなヒャッホウ

321以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 12:41:53 ID:vsxPvzT2


322以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 15:33:53 ID:OGiOggPM
乙ひゃっほう!

ついに魔王様も来ちゃったー!
王も曲者っぽいけど抗える気がしない…

323以下、名無しが深夜にお送りします:2015/10/21(水) 17:15:37 ID:KFP96EJA
やられ役のノウハウかな?

324以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 15:49:30 ID:QbkfUUVI
まだー?

325以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:40:44 ID:UeGyPl1Q

勇者「まぁ、ちょっと焦げただけってのも驚きましたけど。相変わらず凄いですね、そのマント」

魔王「フ。伸縮自在、縦横無尽、物理魔法共に80%カットのこの魔王お手製のスーパーマントなればこその成果よな」

勇者「……魔王戦役の時はそれにどれだけ苦労させられたやら……あの当時はまさかこれに護られる日が来るとは思いませんでしたが」

魔王「フフフ。我もこのような日が来るとは思ってもみなかったが、ところで、苦労していたか、貴様? 何やら黒光りする手で剥ぎ取られた記憶しかないのだが」

326以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:42:11 ID:UeGyPl1Q

勇者「コレの開発にどれだけの苦労と人件費が掛かったと思ってるんですか。しかもリスクが半端ないんですよコレ。攻撃外したら僕死んじゃう、人を呪わば穴二つとはよく言ったもので」

魔王「……呪殺的なものなのか? ……そちらの方面はむしろ我の得意分野なのだが。待て、そうなると呪法の腕は我以上なのか」

勇者「いやいや。そのムチャクチャな性能のマントを破るためだけに開発して破るだけの術式なんて貴方、開発しないでしょ」

勇者「貴方の発想を僕がその時上回っていた、結果として出来たのが呪法系の術式だった、というだけのハナシです」

魔王「ふーむ。なるほど、応用性の欠片もない術式など滑稽なものだが、事実我はそれで一つ切り札を失っているからな」

魔王「たまにはそういった狂気の沙汰染みたこともやってみても良いかもしれないな、まぁ、それは追々検討するとして」

327以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:44:13 ID:UeGyPl1Q

勇者「ええ」

魔王「一応、念の為に聞いておくが、貴様と土の四天王の仕業ではあるまいな」

勇者「そうでーす、と、言いたいところですが、残念ながら違いますね」

魔王「そうと言われたらげ、激おこ? するところだぞ」

勇者「いや、あの、たしかに僕若いですけどもそれに合わせて無理に若者らしい言葉使わなくていいですからね」

328以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:46:09 ID:UeGyPl1Q

勇者「それにしても、土さんと二人がかりで身体のあっちこっち弄くり回したってぇのに、起動するとはたいしたもんです」

勇者「爆発する直前に腰骨あたりが光ってましたね……あそこに隠されてたのか、いや、やるじゃないですか」

勇者「こんな芸当が出来るのは、魔法使いぐらいのもんかと思っていましたが。思ったより世界は広いんでしょうかね?」

329以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:48:20 ID:UeGyPl1Q

魔王「……何のかんの、仲間を未だ信頼しているのではないか?」

勇者「……はいぃ〜?」

魔王「そう不愉快そうな顔をするな、少し聞け。我等はこの世界どころか、魔界、天界迄含めて間違いなく最強の存在であることは間違いはない」

魔王「このマントがなくとも、流石に少し焦げるだけでは済まんだろうが、精々火傷を負うぐらいのものだ。あれぐらいでは四天王すら倒せん」

勇者「土さん重傷食らってますけど。まぁ、彼女はどっちかっていうと戦闘能力より改造能力で抜擢されてますから仕方ないですけど」

330以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:51:42 ID:UeGyPl1Q

魔王「ようは、化け物であるわけだ。我等も、我等と戦って勝利した貴様等も。だが。そのせいでだ、仲間を特別視し過ぎているのではないか?」

魔王「裏切られた経緯もあろう、共に戦ってきた経緯もあろう、色々と複雑な感情についてカウンセリングしてケアしてやるつもりもないが多少の詮索は許せ」

魔王「仲間だけが我等と対抗しうる唯一のものだと認識してはいないか。認識から外してはいないか、お前達が現れる前から、人類は我等とそれなりには渡り合っていたのだぞ」

勇者「渡り合ってたって。褒め過ぎじゃないですか、ジリジリジリジリ、ジリープアー(徐々に不利)になっていただけで……あー……まぁ……」

勇者「たしかに、まぁ、持ち堪えてたところはありますし。直接戦闘は兎も角として、他で僕達より優秀な人も居ましたけどもー」

331以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:52:17 ID:UeGyPl1Q
勇者「……うん? ああ、丁度良かった、詳しいところを聞きたかったのですよね。魔法使いがやったのか、他の誰がやったのか」

勇者「他の誰かってのは誰か。そういえば魔法使いの現状がどうなっているのか戦士に聞きそびれていたのですよ」

勇者「聞こう聞こうと思って、ほら、木っ端微塵になっちゃいましたからグッドタイミングでしたよ」

勇者「というわけで、詳しく聞いていいですかね?」

332以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:53:27 ID:UeGyPl1Q

勇者「貴女様が、人道的にそうはしそうですけれど世界の理的なアレコレでそう出来るとは思えませんし」

勇者「貴女もあの王のために恋人の身体発破するなんていうクチではないでしょう、僕は裏切れても恋人の戦士をどうこうするってのは、まぁ、わかりませんけれど」

魔王「なんだ、藪から棒に」

勇者「違う違う、貴方じゃなくて、あそこ、ほら」

魔王「どこだ、西か?」

勇者「もうちょい東」

333以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:55:07 ID:UeGyPl1Q

勇者「隠身の魔法はホント便利ですよね、現役時代は大層お世話になりました。魔王城突入の時にも役に立って、今だってほら、魔王まだ見えてません」

勇者「もうちょっと近くによってもらっていいですか〜僧侶?」

勇者「それと、そちらもまた随分、お久しぶりにございます女神様」

魔王「……おお、見えたぞ。相変わらず見事な隠身であるな、いやしかし、当時より見えにくいのはどういうワケだ?」

魔王「ああ、いや、良い良い。そうか、女神の力を付与されているのか。腐っても女神の使徒よな、勇者程でないにせよ多少なりとも扱えるのか」

334以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:56:06 ID:UeGyPl1Q
僧侶「……」

女神「……」

勇者「で?」

335以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 18:57:42 ID:UeGyPl1Q

勇者「なんだか嬲り殺されに来たって感じの顔じゃあございませんし、女神様までお連れしてどういうつもりですかね」

勇者「土さんを戦闘不能にしたのは見事ですがぁ、残念、今日は敵情視察に見ての通り魔王が来てますからして」

勇者「絶望通り越して笑える状況ですよ、今、ねぇお二方?」

勇者「ひゃっほう」

魔王「……」

勇者「魔王も一緒に!?」

魔王「……ひゃーほー?」

勇者「……ごめんなさい、無茶を言いました。頑張ってもらっちゃってすみませんでした……」

魔王「……うむ」

336以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:00:34 ID:UeGyPl1Q
ヒャッホウ! 二週間にならないっていったのになってた、不思議! いやマジすんません。
いつもいつもご支援、ご声援ありがとうございます。今日はここまで、続きはまたそのうち。
次はちゃんと二週間以内に収められるといいなぁ。期待せずにのんびりと待ってやって下さい。

337以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:02:43 ID:BtmmgqtI
おう乙ひゃっほう

338以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 19:28:51 ID:X6hE8P5c


339以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/03(火) 20:24:58 ID:.7kDnl7w


340以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/04(水) 04:52:29 ID:tnyowU1k
次も改造かなひゃっほう

341以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/04(水) 11:37:56 ID:InI51oGQ
やめて! 魔王さんの若者ポイントはもうゼロよ!?
女神はさておき僧侶の思惑はなんだろな

乙ひゃーほー!!

342以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/05(木) 01:29:54 ID:cNu2E7F.


343以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/09(月) 21:34:44 ID:xwTFmHrU
どうしよう自分より年下の感性を理解して取り入れようとする魔王様とか萌えざるを得ないじゃないですかひゃーほー!

344以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/30(月) 23:33:03 ID:i/Rrl2t6
ひゃーほー! ごめんなさい! 二週間どころか一ヶ月掛かっちゃってる。
僧侶との戦闘シーンどう書こうかなーどうすっかなーっつって全然思い浮かばねぇでやんの。
解決したから後は仕上げるだけなんでもう少しお待ち下さい。お待たせしてばかりだし中々展開進まないし本当にごめんなさい。

345以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/30(月) 23:35:01 ID:mb/LORB6
ひゃっほう
了解

346以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/01(火) 04:49:15 ID:9nIGxWRg
のんびり待ってるぜひゃーほー

347以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/04(金) 01:47:12 ID:vSTJu1no
ひゃっほー(待てない)

348以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 20:59:19 ID:tR5.6Hwo
私はちゃんと締め切りを確り決めないとダラダラ引き伸ばしちゃう人らしい。
とりあえず今、戦闘入るシーンまで上げちゃって、明後日には戦闘シーン上げようと思います。
いつもご声援、ご支援頂きながらも随分お待たせしちゃって申し訳無い。次からは締め切り決めて投稿します。

349以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:00:23 ID:tR5.6Hwo

女神「……」

僧侶「……」

魔王「……」

勇者「……」

350以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:01:50 ID:tR5.6Hwo

勇者「まあ、気を取り直して、改めてご用件をお伺いいたしましょうか」

勇者「戦士の時も言いましたが、ああ、僧侶は見てましたよね、その後ショッキングな映像を生中継したので忘れちゃいました?」

勇者「説得には応じません、投降もしません、説得もしないし投降も受け付けません、皆纏めてゾンビ兵になるか、我が魔王軍の餌食となるか、自殺でもすればいいですよ」

勇者「楽に殺してあげられるよう努力はいたしますので出来る限り抵抗はしないように、まあ、一般の皆々様の話ですけれどね、当事者は別です、戦士も僧侶も魔法使いも」

勇者「王城の王も、重臣たちも、楽には死なせませんから覚悟だけはしておくようにお願いします。自殺? HAHAHA、蘇らせます、そんでヒドいことしたあとぶっ殺します」

女神「勇者」

勇者「はい?」

351以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:03:27 ID:tR5.6Hwo

女神「お願いです、どうか、このようなことはもうお止め下さい。貴方の行いは、きっと、貴方さえも救わない。今なら――」

勇者「あれ、女神様、話聞いてました? 聞こえてないはずないですよね? 説得には応じないと言ったばかりですけど」

勇者「大体女神様ご本人も半分以上諦めてらっしゃるでしょう」

女神「私が貴方に掛けられる言葉がないということはわかっています。けれど、言わねばなりません、例えこの生命が尽きようと!」

女神「例え無残に殺されるだけであったとしても言わねばなりません。それが、あの時貴方を救えなかった責任のとり方です!」

352以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:05:40 ID:tR5.6Hwo

勇者「救えなかったってなんですか、救えなかったって。救おうとしてたみたいなノリで通そうとされても困るんですけど」

勇者「救わなかった、って、素直に言ってくれればいいのに」

勇者「僕がこうなるのを放っておいたんですから、僕がこのまま何をしようと勝手のはずですよ、とはいえ、まあこんなんなっても現代の女神の第一の使徒」

勇者「一応聞きましょうか。あ、それと、誤解がないように言っておきますけど僕は貴女を殺しゃしませんし平手打ち一つしませんよー女神の使徒ですしー」

女神「……お慈悲に感謝致します、勇者」フワッ、ストッ

魔王「ほう! 我らと同じ大地に足をつけ翼を収めるのか! 滅多に見れるものではないな、勇者よ!」

勇者「僕、女神様と同じ目線で語るの困るんですけど、使徒として。ほら僧侶跪いてますし」

魔王「固いことを言うな。女神の使徒ではあるが魔王軍総帥でもあるのだから堂々としておけ。しかし、良く下りる気になったものだな、女神」

魔王「この世界に直に降り立つということは、まさしく我らと同じ世界に触れるということ、天界暮らしには今の世の空気はさぞ苦痛だろうに」

353以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:07:19 ID:tR5.6Hwo

魔王「……まあ、下りてこないまま大上段からこれ以上物を言うなら我が吹き飛ばしてやったがな」

勇者「勘弁して下さいよ。貴方ぐらい力あると浮いたままの女神様でも殺しかねないんだからー」

勇者「止めなきゃいけない立場わかってくださいよーしょっぺぇー」

魔王「ハハハッ! よくそれで、女神の第一の使徒、とかなんとか名乗ったものだな勇者」

勇者「魔王軍総帥でもありますんで、あれ、というか総帥貴方ですよね」

勇者「……あぁ、使徒だから? 体面気にしてくれたんですね、魔王軍総帥なら跪かなくとも堂々と話したって問題無いだろう、と」

354以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:08:48 ID:tR5.6Hwo

魔王「物の弾みで言ってしまっただけだ、我等は人間のように体面だとか義理などどうでもよいのだ」

勇者「魔王軍総帥は当然我だって言い直せばいいのに言い直さないし、まったく、アンタ方どんだけ僕の涙腺刺激すれば気が済むのか」

魔王「知るか、そんなもの、物の弾みだと言った、くどいぞ勇者」

勇者「まぁ〜。お言葉に甘えますけどぉ〜。勘弁して下さいよ、そのうち泣いちゃいますよ、そして涙で脱水症状起こして死にますよ」

女神「貴方は、その魔王にこの境遇に付け入れられているだけなのですよ勇者」

女神「その者は魔王、魔界に君臨するために、ありとあらゆる手段を画策してそう成った者、魔の権化。貴方はそんな者に惑わされているに過ぎません」

355以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:09:42 ID:tR5.6Hwo

魔王「ほう」

勇者「はぁ」

女神「貴方の強大な力を己の側に引き入れさせれば勝利は確実となります」

勇者「でしょうねぇ」

魔王「そうだな」

356以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:13:35 ID:tR5.6Hwo

女神「配下の命など己が目的を達成するための道具程度にしか見ない男です、それは」

魔王「間違いではないな」
勇者「間違いないですね」

女神「このままでは、貴方は、貴方は何れ、その男に使い殺されてしまう!」

勇者「マジですか」
魔王「初耳ですが」

女神「貴方ほどの者にそんな末路があってはいけない! 考えてもみてください! その男の非道さを貴方は何度も見てきたではありませんか!」

魔王「見せたな」
勇者「見ました」

357以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:16:46 ID:tR5.6Hwo

魔王「人間の街や村を見つけ次第殺し尽くし破壊し尽くそうとした」

勇者「女子供、老若男女、有象無象の区別なく我の悪意は許しはしないわ的なノリでした」

魔王「たまたま捕えた人間を盾に括り付けて肉壁に使った」

勇者「超攻撃しにくかった。したけど」

魔王「しにくかったのか? 結構ためらいなく攻撃してきたように見えたので当時は驚いたものだ、そうか、あれで一応、躊躇してたのか」

魔王「で、さらにそういうことにも使えそうにない、盾に括り付けて移動している間に死にそうな人間は餌にした」

勇者「人喰い植物とかね、土の四天王さんの作品なので魔王関係ないです、ああアレ一応アイディアは貴方か」

魔王「デザインがダサいし古いしダサいし機能美・造形美敵にまったく美しくないと駄目だしを貰った……あれには落ち込んだな……」

勇者「あの人はあの人的機能美か造形美どっちか満たされていないと極端に辛口ですよね、けどダサい言い過ぎでしょ……ダサいけど」

魔王「……フ。……そうか……。……そうかぁ……ダサいかぁ……」

勇者「ごめんなさい」

魔王「良いのだ……」

358以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/09(水) 21:18:22 ID:tR5.6Hwo

女神「どうして王や貴方を裏切ろうとした仲間達の反逆心がその男の手によるものでないと言い切れるでしょうか!」

魔王「言い切れん、あの国の王には一度降伏を勧めた折に面通しはした、勇者の仲間達には決戦の折に長く触れ合っていた」

魔王「あの王は曲者の類ではあるが所詮は人間、人間一人の心を惑わすのはワケもない」

魔王「勇者の仲間とはいえ、人の臨界点だったとはいえ、所詮人間である、時間を掛ければ出来ぬことはない」


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