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少女魔王「に、日本だと···?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/24(水) 15:55:46 ID:MV3ZfvRE
 魔王。それは人の世を支配しようと企む巨悪の存在である。

 魔王の圧倒的な魔力、そして魔物達の脅威···人々は一致団結し、これらに対抗してきた。

 その中でも神に選ばれた存在と言われる、人類最強の戦士···勇者。彼は時に一人、時に仲間を連れ、魔王を打ち破り、人の世に安寧をもたらしてきた。

 だが魔王は何度も現れ、その度に世界を苦しめ、そして勇者達によって倒されていった···。

 そして、再び魔王は現れた。それも、天候さえ操る程のかつてない魔力の持ち主であり、歴代最強と魔族達は騒ぎ立てている。

 そんな魔王の姿は、青く短い髪と同じ色の透き通る瞳、人の様に白い肌と対称的に黒い衣装、指を出した手袋にジッパー付きブーツ、袖が無く裾が胸下辺りまでの短さの上衣、股上が浅く裾丈もとても短い下衣。

 ローブを着ていた歴代魔王どころか魔族達の中でも類を見ない、肌を多く露出させている衣装を着込む、人間の少女にそっくりの姿をした魔王が、そこにいた···。

83 ◆vC.kHTi4RE:2014/09/30(火) 21:29:18 ID:cFfD8ypA
魔王「…本当に似合っておると?我は我慢ならん!」

大家「な、何が駄目?私のお古なのが?」

男「古着だったんですか…」

魔王「何だこの浮ついた色は!もっと落ち着いた色をだな…!」

男「着てるのに文句言うなよ」

魔王「無理矢理着せられたのだ!有無も言わさず!」

男「従うんじゃなかったのか?ん?あとピンク似合ってんな」

魔王「ぐ、ぐぬ…ぐぬぬぬぬ…」

女「…大家さん。一体彼とはどんな関係で?」

大家「今日出会った仲よ」

女「…今日?それであの仲の良さ?」

大家「そうなの。トムとジェリーみたいな?」

女「ふぅん…」

大家「…嫉妬してる?」

女「まさか」

84 ◆vC.kHTi4RE:2014/09/30(火) 21:47:43 ID:cFfD8ypA
女「まぁ、まずは自己紹介からだね。僕は女、宜しく」

魔王「ぐぐ…我は」

男「マオって言うんですよ」

魔王「なっ」

大家「え?」

女「マオちゃんか、覚えとくよ」

魔王「違っ」

男「…おい魔王、俺と大家さんの前以外で魔王とか名乗んなよ。色々面倒だから」ボソ

魔王「な、何ぃ…?」

女「…さっき大家さんがその子を魔王ちゃんと呼んでたけど、渾名かな?」

男「そうです。コイツはそう呼ばれる方が嬉しいみたいですけど」

女「ふふ、ならそう呼ばせてもらいましょうか、魔王様?」

魔王「…うむ、良きに計らえ!」

女(…多分、魔王って名前が本当なんだろうな)

85 ◆vC.kHTi4RE:2014/09/30(火) 23:48:03 ID:cFfD8ypA
男「じゃあ、大家さんと行ってこい」

大家「男くんも行くのよ?」

男「嫌です」

魔王「我もお断りだ」

女「じゃあこうしよう。大家さんと魔王様でお出掛け。僕と君でデートしながら二人に付いて」

男「嫌です」

女「女の子の誘いを断るなんて、君も罪な人だね」

男「ろくな事にならない気がするんで」

女「参ったね、これは。日頃の行いの所為かな?」

男「間違いなくそうです」

女「それは残念」

大家「じゃあ…女ちゃん、一緒に行きましょう」

女「僕で彼の代わりが務まるなら、宜しく頼みます」

86 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/01(水) 12:30:10 ID:5eLRshDE
大家「男くん、大家命令に背いたから私のご飯食べても――」

男「喜んで付いていきます」

大家「…食べたくないの?」

男「はい」

大家「……」

女「君、そんな事言わずにさ」

男「例え食べなければ死ぬという状況でも、食べたくない…!」

大家「…そんなに美味しくない?」

男「味の説明が出来ません」

大家「えぇ…。…美味しいのに、どうして…?」

女(…味音痴なんだろうか、大家さん)

男「とりあえず行きましょう早く行きましょう」

魔王「…それほど嫌か」

魔王(逆に見たくなるな)

87 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/01(水) 12:54:17 ID:5eLRshDE
――――
――


魔王「……!?」

魔王(何なのだ、あの走る金属の塊は…!?それに、建物が…まるで塔の様に高い…!?)

女「…彼女、どうしたんだい?」

男「世間知らずなお嬢様みたいなんですよ。箱入り娘って奴です」

女「ビル街に驚いてるみたいだけど…田舎暮らしだったのかな?」

男「さぁ、それは」

大家「魔王ちゃん、ふらふら動いちゃ駄目よ」

魔王「む…」

魔王(あまりに我が世界と違い過ぎる…生活水準が違う…と言うべきなのだろうか…)

男「迷子になんなよ」

魔王「馬鹿にするでない」

大家「魔王ちゃん、手、繋ぐ?」

魔王「要らぬ」

88 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/01(水) 13:57:12 ID:5eLRshDE
魔王(しかし、店、という物か。そこかしこにあるのだな…)チョイチョイ

男「…何だよ」

魔王「…店が多いが、どういう店だ?」ボソ

男「食材売ってる店、料理作って売ってる店、服売ってる店、機械売ってる店、大体そんなのだ」ボソ

魔王「…成程」ボソ

魔王(武器屋は無いのか…)

男「次いでに、あそこにあるのはケーキ屋だ」

魔王「…甘い物か…」

男「おい、ヨダレ出てるぞ」

魔王「ぬおっ、はしたない」

女「甘いの、好きなのかい?」

魔王「む?…まぁ、好きだが」

女「じゃあ、これをあげよう」

魔王「…?これは」

女「飴」

89 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/01(水) 14:47:32 ID:5eLRshDE
男「何で持ってるんです?」

女「良いじゃないか、持ってても」

男「そうですけど」

魔王(…これは、何の味なのだ…?確かに甘いが)

男「何の味なんです?」

女「普通にリンゴだよ。僕がリンゴ好きだからね」

大家「あぁ、そう言えばアップルパイの作り方、教えてもらった事あったわね」

魔王「良く分からんが、それも美味そうだな…」

男「食い意地張ってんな、お前。どんだけ甘いの好きなんだよ」

魔王「好きで何が悪いのか」

女「本当だよ。好きになったらどうしようも無いんだから」

男「はぁ」

大家「でも、食べすぎて太ったり…」

女「それ以上は言っちゃいけないよ大家さん」

90 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/02(木) 22:14:44 ID:sDCDorZ.
魔王(ふむ、人間は太るのか…いや、この世界では魔力変換が出来ないのでは…?なら我も…)

大家「まぁまぁ、まずは食べる前にお買い物よ。魔王ちゃんの服、買ってあげるから」

魔王「…遠慮しておく」

大家「え」

魔王「絶対にこの服装と同じ様な物を選ばせはしない」

女「似合ってるのに、勿体ない事を言うんだね」

魔王「だから、似合っとらん!」

男「じゃあ何色がいいんだよ。黒とか紺とか藍色か?」

魔王「良く分かっておるではないか」

女「暗い色、好きなんだね」

魔王「赤色など警戒色以外の何者でも無い」

大家「…ピンク、駄目かぁ」

女「彼女はお気に召さなかったようですね」

大家「似合ってるのに…」

91 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/03(金) 01:19:09 ID:SZs/zM1U
魔王(…そもそも魔界は常に暗いのだ。何時殺るか殺られるか分からんと言うのに目立つ格好をする者などまず居ないのだがな。我以外に)

男「おい、服屋着いたぞ」

魔王「…ここの人間は派手な服装を好むのだな」

男「ん〜…そうかもな」

魔王(目に悪いのでは無いかと疑ってしまう程、明るく濃い色が揃えられておるな…)

男「さっさと適当に選んでこいよ」

魔王「言われずとも」

男「ちなみにあっちはお前じゃ着れない大人服、お前でも着られるのは向こうの子供服」

魔王「字が読めぬと思って馬鹿にしとるな…?」

男「何だ、読めんのか。じゃああんまり高い物選ぶなよ。大家さんに迷惑掛けたきゃ選べば良いけど」

魔王「…値段は読めても価値が分からん」

男「…そう来たか」

92以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/03(金) 13:05:00 ID:jjP8VRMI


93 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/03(金) 21:09:44 ID:SZs/zM1U
大家「う〜ん、どれにしましょうか…」

女(…大家さん、明らかにあの子じゃ着られない様なサイズの服を見てるんだけど…)

大家「…あ」

女「どうかしました?」

大家「つい、自分の服、選んでた…」

女(…やっぱりそうだった)

女「…この服とか大家さんに似合ってると思いますよ」

大家「え、そう…?」

女「ええ。折角だから試着してみたらどうです?」

大家「…そうね!折角だから!」

女(ここは初めから仲良しの彼に任せてしまおう。男くん、グッドラック)

女「あぁ、次いでに、僕の服も選んでもらっても…」

大家「えぇ、女ちゃんが良いんだったら、喜んで選ばせてもらうわ」

女「それなら、お願いします」

94 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 09:19:48 ID:IDBxJsRU
魔王「…選んでいるのは、どう見ても我の物では無いが」

男「そうだな」

魔王「我の為に衣服を買うと言っていた筈だが」

男「そうだな」

魔王「この魔王を捨て置いて自らの用事を優先させるとは…」

男「そうだな」

魔王「…聞いておらんな」

男「聞いてる」

魔王「なら何を考えておる」

男「お前の服、俺が選ばなきゃならなくなった」

魔王「何故だ」

男「女さんが大家さん止めないって事は、お前の服買い終えるまで恐らくあのままにするって事だ」

魔王「勘違いでは無いのか?」

男「バカ言え女さんは面白そうって思ったら飽きるまでやる性格なんだぞ」

魔王「…それはまた、厄介な事だ」

95 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 11:54:21 ID:IDBxJsRU
魔王「しかし詳しいな…長い付き合いなのか?」

男「そりゃあの人の方が先に住んでたしな。それに…何度もその被害受けてるしな…」

魔王「例えば」

男「何で聞きたがるんだよ。俺の弱点でも探そうってか?」

魔王「…じゅ、純粋な興味だっ」

男(図星かコイツ…)

男「…被害ねぇ。一番の被害は女装させられそうになった事だな…」

魔王「じょそう?…幾つか言葉があるが」

男「女性の格好をする方だよ…はぁ…」

魔王「…人間は特殊な性癖を持っておるのだな…」

男「…女さんは俺もよく分かんねぇ。何するか予想出来ねぇし」

魔王「何を考えておるか分からん者と言うのは何処でも厄介な者だな」

男「その上賢いから尚更質が悪いんだよ…」

96 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 12:19:19 ID:IDBxJsRU
男「…面倒になってきた。俺やっぱ帰る」

魔王「大家の料理を食らう事になってもか?」

男「…………………」

魔王「膝が震える程嫌か…」

男「…しゃあねぇ…急いでお前の服買って言い訳の準備して俺は逃げる」

魔王「逃げるのか、情けない」

男「うるせぇ、俺は服装なんざ興味ねぇし。別にお前がどんな服着てようがどうでもいい」

魔王「そうか。なら早く我の為に選ぶが良い」

男「はいはい、分かった分かった…」

97 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 21:54:27 ID:IDBxJsRU
男(…本当に興味ねぇんだよな、ファッションとか…センスもねぇし)

魔王「…おい」

男「あ?何だよ」

魔王「そう言えば、何故人間は衣服を何着も持っておるのだ?」

男「は?…そりゃ、お洒落とか…」

魔王「我ら魔族は衣服を着ていても一着しか無いのだが」

男「…は?何?服洗わねぇの?」

魔王「洗う?…あぁ、大半の者は汚れても気にはせんからな。そもそも衣服を纏わぬ者も多い」

男「マジかよ…。じゃあ、お前も洗わねぇの?」

魔王「我の衣服は魔力による盾によって汚れなど付かん…が、この世界では効力が無いだろう」

男「だったら結局買わなきゃいけねぇじゃねぇか」

魔王「そうだな」

男「てかどうなってんだ魔界とやらは…」

魔王「まともな水場が無いのでな。基本的に毒の沼に酸の沼、溶岩ばかりだ」

男「人間お断りって世界だな…」

98 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 22:19:50 ID:IDBxJsRU
男「お、これとかいいんじゃね?」

魔王「む?……何だこれは。明らかに人間の子供向けの物は」

男「着とけよ」

魔王「余程我を子供扱いしたい様だな…」

男「実際ガキだろ」

魔王「…そうだが、魔王である」

男「知るか」

魔王「そうであろうな、ふん」

男(…見た目はどう頑張って見ても中学生レベルだしな…もしかしたらもっと年取ってるかもだが)

魔王「全く…貴様は、我を幾つだと思っておるのだ」

男「魔族の年齢とか知るかよ」

魔王「我が一族は寿命も人間と近い。ほぼ見た目通りだ」

男「なら」

魔王「但し我は実年齢より幼く見えるらしいが」

男「見た目通りだったんじゃねぇのか」

99 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 22:34:20 ID:IDBxJsRU
魔王「我に言われてもな」

男「…幾つなんだよ」

魔王「…齢20程だ」

男「………嘘だろ?」

魔王「事実だ。魔界は人間界と同じ時が過ぎている。暦の数え方も昔から人間と同じだ」

男「人間嫌いなのにか?」

魔王「だから変えようとする者も居るが、殆どが日にちなど気にせんよ」

男「時間とか年齢なんざどうでもいい奴ばっかって事か」

魔王「そういう事だ。暴れる事しか頭に無い者ばかりで困る」

男「…で、お前は何で年齢とか」

魔王「何故人間と同じ数え方をするのか気になって調べた事があるのでな」

男「へぇ。理由は分かったのか?」

魔王「いや。膨大な量の書物を全て見たが、何処にも記述は無かった」

男「…本気で全部見たのかよ?」

魔王「失礼な。しかとこの目で見てきたのだ」

100 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/04(土) 22:50:37 ID:IDBxJsRU
魔王「しかし、全て読み切るまで長い年月が掛かった…」

男「物好きだな、お前」

魔王「魔王としての教養を深めようとしただけだ。それと…暇を潰す意味も兼ねてな」

男「魔界、何にも無さそうだしな」

魔王「…そう考えれば、やはり人間は豊かな生物なのだろうな」

男「豊か、ねぇ…そうでもないかもな」

魔王「む…?」

男「それより、調べて本当に書いてなかったのか」

魔王「無かった。ただ、遥か昔は人間と魔族に別れては無かったのかも知れぬ、とは考えたがな」

男「どっちも根は一緒ってか。他の魔族とかが聞いたら切れそうだな」

魔王「で、あろうな。…それより、衣服を」

男「あぁ、忘れそうだったのによ…」

魔王「おい」

101 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/05(日) 01:23:54 ID:CQ.hN3As
魔王「全く、仕方の無い奴よ」

男「文句言うならお前も探せよ。自分の好きな物くらい自分で見つけろ」

魔王「……」ジー

男「もう見つけてるしよ…どうした?」

魔王「…見るだけでは分からんな」

男「似合うかどうかか?」

魔王「…うむ」

男「なら、あそこに試着室って書いてるだろ。それ持ってあそこ行きゃいい。試しに着られる」

魔王「ほう」

男「まぁ今行くのは待っとけ」

魔王「何故だ」

男「それ以外に気に入った服が見つかった時、どれが似合うか比べられた方がいいだろ」

魔王「成程、他の衣服も見ておいた方が良いと」

男「それに、見つける度に一々試着すんの面倒だし、場合によっちゃ迷惑掛けるかも知れねぇし」

魔王「ふむ、良く分かった」

102 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 06:35:07 ID:ooeg32WI
魔王(…間違い無く自分が人間の世界に順応しつつあるのが分かる…これで良いのか我は)

男「おい」

魔王「何だ」

男「早く探せよ。早く帰りたいから」

魔王「わざと遅々と動いても良いのだぞ」

男「…ちち?」

魔王「…分からんのか」

男「い、いや、知ってるし」

魔王「見栄を張るのは情けない者のする事だ」

男「張ってねぇよ」

魔王「…遅いという字を二つ重ねて遅々と書く。意味は想像出来るであろう」

男「あっそ、ほら、さっさと探せよ」

魔王(下手な誤魔化し方だな…嘘を吐けん性格か)

男(日常会話で、あ〜…遅々、とか使う奴初めてだ)

103 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 06:55:08 ID:ooeg32WI
魔王(しかし、よくもこう様々な様相の衣服を取り揃えられる物よ。お陰で探すのに苦労する…)

魔王(全く、人間は何を考えたらここまで…。我が世界では服装を気にする者など人間にも…)

男(また何か考えてるなアイツ…服以外の事考えてんじゃ?)

魔王「む、これが良いか…」

男(律儀に選んでるな…強奪とかするタイプじゃなくてラッキーだ)

魔王「…何を見ておる。貴様も探せ」

男(あ、アイツ…目ざといって言うか…よく気付くなアイツ。近くもねぇのに)

魔王(…いかんな。やはり警戒してしまう…しかし、警戒して損は無いな)

男「はぁ…何でこんな…」

男(…ん?あれ、これ案外アイツに…)

女「どうしたんだい」

男「うおっ…女さん、急に耳元で話すのやめてください」

女「いやぁ、目論見通り悩んでくれてる様だからね」

男「…本当に、いい趣味ですね」

女「それほどでも」

104 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 07:15:14 ID:ooeg32WI
男「大家さんは」

女「服を大量に選んだからね。今着て比べてるよ」

男「大量に、って…」

女「まぁまぁ、今は大家さんより彼女だ。良いの、見付かったかい?」

男「…さぁ、俺ファッションやっぱ分かんないんで」

女「彼女は知らないけど、僕は悩んだ末に似合うと思って買った物なら嬉しいけどね」

男「でも似合ってなかったら着ないんでしょ」

女「彼氏に貰った物なら着るかもね」

男(大家さんのなら着ないのか…?)

男「いたんですか?」

女「残念ながら今まで居た事が無い。こんな性格だからかな?」

男「そうだと思いますよ」

女「冷たいねぇ…まぁ、君の魅力の一つかな?そういう所も」

男「そりゃどうも」

105 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 07:30:36 ID:ooeg32WI
女「さて、じっくり決めると良いよ。君の事だから早く帰りたいだろうけどね」

男「そう思うなら女さんも」

女「嫌だ」

男「……」

女「第一、僕は彼女の為の服を既に買ったんだよ。大家さんに代わって」ガサ

男「あぁ、袋に入ってるの、自分の服じゃないんですか、それ」

女「一着は僕のだけど」

男「それでも一着だけですか」

女「まぁね。僕自身もそこまで服装に興味がある訳でもないから」

男「はぁ」

女「大家さんは逆だけどね。彼女に色んな服を着せたがる位。今は忘れてるだろうけど」

男「忘れさせたの誰ですか」

女「僕だね。いやぁ参った」

男(…やっぱこの人よく分からねぇ)

106 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 07:52:17 ID:ooeg32WI
女「さぁさぁ、僕が見守ってあげるから、今の内に探すんだ」

男「探しづらいです」

女「あれ、そうかい?」

男「そうですよ」

女「それは困ったね」

男「……」

女「そんなに見つめないでくれ。照れるよ」

男「見つめてません。睨んでるんです」

女「それは怖いね」

男「…もういいです」

女「っと、拗ねないでくれ。ちゃんと離れるよ」

男「最初からそうしてください」

女「いやね、君とはつい話がしたくなるんだ」

男「会話を長くしたがるの間違いじゃないんですか」

女「そうとも言う」

107 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 08:03:59 ID:ooeg32WI
女「では、頑張ってくれ。…と言っても、もう見付けてるんだろうけど」

男「い、いや、そんな事…」

女「ふふ、相変わらず隠し事が苦手だね」

男「う…」

女「別に恥ずかしがる必要なんて無いと思うけどね。自分の性に合ってなくてもさ」

男(く…この人は本当、人の考え透かして見てるな…)

女「おっと、悪かったね。僕は大家さんの所に行ってるよ」

男「……疲れた」

男(…さっさと買っちまうか)

108 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 10:02:32 ID:ooeg32WI
――――
――


大家「気付いた時には買い物終わってたんだけど…あれ?」

女「まぁ、良いじゃないですか」

大家「う〜ん…」

男「じゃあ買い物終わったんで帰ります」

大家「あら、今からお昼食べるんだけど」

男「家で食べます」

女「やっぱりつれないね、君」

男「…お金、そんなに無いし、奢ってもらうのも、ちょっと」

大家「気にしなくてもいいのに」

男「一応男なんで、気にはします」

女「女性しか居ないのは、気まずいかな」

男「まぁ」

109 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 10:21:04 ID:ooeg32WI
女「そうかい。じゃ、ゆっくり帰るんだね。寄り道は駄目だよ。危ない人には注意するんだよ」

男「保護者ですか。…では」

大家「う〜ん…気を付けてね」

男「はい」

魔王「……」

男「…何だよ」

魔王「…いや、何でも無い」

男「ふぅん…」

魔王(……不味い。この二人だけだと身の危険を強く感じる)

男(察したか…?…別にバレてもいいけどな)

110 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 11:00:25 ID:ooeg32WI
女「…行ってしまったね。残念無念」

魔王「残念なのか?」

女「いやぁ、彼をからかうのは楽しいからね」

大家「あんまりすると嫌われるわよ?」

女「半分は嫌われてると思いますけどね」

魔王「それで良いのか」

女「ん〜…どうだろうね」

魔王(…うむ…良く分からん奴よ…)

大家「とにかく、話の続きはお店の中でしましょう?」

女「マオちゃんは何が良い?甘い物?」

魔王「…む、あぁ、別に気にせずとも良い」

魔王(そうか、マオは我か。忘れかけていた)

大家「それじゃあ、あそこでどう?」

女「良いですね、行きましょう」

魔王(今日の半分は、この二人に引き摺られる訳か…)

111 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/06(月) 22:29:37 ID:ooeg32WI
―数時間後―

魔王「」チーン

男「おーい。…へんじがない、ただのしかば」

魔王「殺すで無いわっ!」ガバッ

男「何だ、生きてたのか」

魔王「はぁ、はぁ…この魔王が、そう簡単に…」

男「何があったんだよ。女さんと大家さんが運んで来たんだぞ?」

魔王「…人間の社会、生活は、我にはやはり合わぬ…!」

男「今日で急に20年間の魔族の生き方、人間に変えるって普通無理だろ」

魔王「…そういう物か…そうか」

男「ま、お疲れさん。あの二人に付き合ってぶっ倒れるだけで済むんならまだましだな」

魔王「…この世界の人間は恐ろしい…」

112 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/07(火) 20:51:01 ID:glpxhCew
魔王「…待て。こうなると分かっていて我を放っておいたのか」

男「そうだけど?」

魔王「この魔王より冷酷だ貴様は!」

男「お前が冷酷じゃなさすぎるんでねぇの」

魔王「我が甘いと申すか…!」

男「もっと周りに突っかかると思ってたのになぁ。大人しくしちゃって」

魔王「ぬ…それは…」

男「それは?」

魔王「だから、言っているであろう…今の我は人間より弱いのだ…」

男「魔族の生き方が骨まで染みてるってか。可哀想だな」

魔王「可哀想……?我を哀れむと言うのか…!」

男「折角こんな自由な方の世界に来たんだから、自由に生きれば良いんじゃねぇの」

魔王「自由に…」

男「適当に生きてりゃいいんだよ難しい事考えずにな」

魔王「……」

113 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/07(火) 21:03:13 ID:glpxhCew
魔王「……適当に生きるのは良い事だとは思わないが」

男「じゃあ考えて生きろ」

魔王「雑だな…」

男「他人だしな。どんな生き方しようが俺知らねぇし。精々周りに迷惑かけずに頑張れよ」

魔王「…参考にならんな」

男「あん?」

魔王「しかし、自由か…魔族には強き者しか得る事の出来ない物だ…」

男「別に今すぐ出ていっても俺は止めないぜ。それが自由だ」

魔王「ならばここに居座る事も自由であるな」

男「は?出てけよ」

魔王「そうか…なら、大家の所に」

男「あの人の所だけは止めろ死ぬぞ!」

魔王「大袈裟な…」

男「あの人より女さんのが圧倒的に幸せになれる」

魔王「何と酷い言い草だ…」

114 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/07(火) 21:30:36 ID:glpxhCew
男「吐瀉物を食べたいならいくらでも大家さんの所に行けばいい」

魔王「……。う…想像させるな……」

男「…やべ、思い出したら俺も気持ち悪くなってきた……」

魔王「大家はそれを食べて平気なのか…?」

男「あの人の味覚は美味い物は美味い、不味い物も美味く感じる特殊な舌の持ち主だから」

魔王「何だその魔法の舌は」

男「目の前で明らかに不味い物ムシャムシャ食ってた時は目を疑ったしな…」

魔王「…魔界でも平然と生きていけそうな人間だ」



大家「クシュッ……うぅ、噂されてるのかしら」

115 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/08(水) 07:20:16 ID:Ec4KXrQc
男「…あぁ、それとだな」

魔王「む?」

男「ケーキがある」

魔王「何っ!」

男「しかもチョコレートケーキだ、それはそれは甘い」

魔王「お、おぉ…。…代わりに何かをしろ、という事では」

男「ねぇよ普通に食わせてやる」

魔王「な、何だ、一体何を言っておるのだ貴様は」

男「おいテメェ」

魔王「何を企んで」

男「企んでねぇよ!」バシッ

魔王「ぐぅっ…頭を叩くな…!」

男「ったく、人の好意くらい素直に受け取れ」

魔王「…う、うむ…」

116 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/08(水) 22:44:40 ID:Ec4KXrQc
魔王(な、何を企んでおるのだ…?)

男「おいまだ疑ってんじゃねぇだろな」

魔王「そ、そんな事は無いぞっ」

男「……。まぁ、お前が寝てる間にもう飯は出来てる。こっちこい」

魔王「わ、分かった…。…けえき、とやらは?」

男「飯食ってからな」

魔王「そうか…!」ワクワク

男(…どんだけ楽しみなんだよ)

男「まぁ待て。今日は寒いしな…」カチッ

魔王「む?今何をしたのだ」

男「これも和の一つ、こたつだ」

魔王「こたつ?どれだ」

男「机があるだろが」

魔王「…?厚い布がある以外は普通だと思っていたのだが…?」

117 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/08(水) 23:24:45 ID:Ec4KXrQc
男「とにかく足入れてみろ」

魔王「何だと言うのだ一体………!?」

魔王(何だこの温もりは…!?魔界では感じた事も無い……!)

男「どうだよ」

魔王「………ぐぅ」

男「寝るな起きろ」

魔王「はっ!?ね、寝てなどない!」

男「ま、眠たくなる気持ちは分からんでもないけどな」

魔王「これがこたつ…この国独自の…。和というのは不思議だ…」

男「…よっと。おら、食え」

魔王「む、これは…」

男「これは和じゃねぇけど、ハンバーグだ」

魔王「甘いのか?」

男「そう何度も甘いやつ出してたまるか。俺だって食うんだぞ」

魔王「そうか…むぅ」

118 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/09(木) 23:12:45 ID:t7HTUlwA
男「そんなに甘くしたいならこれかけとけ」

魔王「けちゃっぷ、だったな。…いや、止めておこう。癖になっては帰りたくなくなってしまう」

男「そんな帰りたいか?」

魔王「早く帰って欲しいのでは無かったのか?」

男「帰って欲しいけど?」

魔王「ならば文句は無かろう」

男「ねぇけどよ」

魔王「では、遠慮無く食わせて貰おう。…んむ」

魔王(…食事環境では人間には勝てんな。やはり、知恵が…)ピョコピョコ

男「…また耳出てんぞ」

魔王「ぬおっ!?」

男「…外で出してねぇよな」

魔王「そ、それは無い…」

男(…それだけ俺の料理美味いのか…いや違う自惚れんな偶然だ偶然)

魔王(ぬぐぐ…な、何故また…こ、これは…そう、こたつ、こたつの所為だ…!)

119 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/10(金) 22:44:15 ID:MMj9bi0Q
男「こんなんで耳出してたら、ケーキ食ったら死ぬんじゃねぇか?」

魔王「……………」

男「悪かった。俺が悪かったからそんな泣きそうな顔すんな」

魔王「絶対、絶対に食べて生き延びてみせる…!」

男「何の決意だよ…」

魔王「我は魔界でせねばならん事があるのだ…!」

男「そうかい…好きにしてくれよ…」

魔王「では好きにさせて貰う」

120 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/10(金) 22:56:53 ID:MMj9bi0Q
男「…食うの速ぇな」

魔王「けえきを食わせろ貴様に何をしてしまうか分からんぞ」

男「冷蔵庫に入ってるから取れよ」

魔王「れいぞうこ…大きな白い箱だな、分かった」

男(どんだけ食いたいんだよ…)

魔王「うぉ!?冷気が!」

男「うるせぇ冷蔵庫だから当たり前だろ」

魔王「これも電気の力か…!?」

男「そうだ」

魔王「電気…非常に応用が利くのだな…成程、希望の光となる訳も分かる……寒い」

男「だったら早く出して閉めろよ」

魔王「どれがそうだ?」

男「白い箱入ってんだろ?それだ」

魔王「そうか、あれか!」

121 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/10(金) 23:17:54 ID:MMj9bi0Q
魔王「ふふふふふ……今、我が手には世にも恐ろしき食物があるのだな……!」

男「……俺は突っ込まねぇぞ」

魔王「さぁ、その姿を我に見せるが良い……!」

男(テンション上がってんな……)

魔王「おぉ…黒き壁に覆われておるな…ちょこれいとか?」

男「黒き壁って何だよ…そうなんだけど」

魔王「さぁ中身はどうなのだ?」ワクワク

男「普通に食えよ。ほら、フォーク」

魔王「済まぬな!」

男(…本当に魔王か?こいつ)

魔王「何と…中身も黒いぞ…外も中もちょこれいとか…!」

男「…もう良いから食えって」

魔王「ああ!」パクッ

魔王「……ん〜〜〜〜♪」ピコピコピコピコ

男(耳すっげぇ動いてるな…相当嬉しいか、食えたのが)

122 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/11(土) 23:28:14 ID:fkFE10dc
魔王「♪」モムモム

男「感想は?」

魔王「思わず舌鼓を打つ味だな!あぁ、人間の事などどうでも良くなってきた…」

男「おいお前魔王だろ負けんなよ」

魔王「甘い物に勝てる物など無い」

男「いいのかそれでよ…」

魔王「けえきと出会えた奇跡に感謝するしか無いな…!」

男「まぁ、お前が良いならいいけどな、別に…。それより、口元汚れ過ぎだ」

魔王「む?」

男「あぁもう、拭いてやるから動くな」フキフキ

魔王「う、自分で、む、むう…」

男「子供じゃないんだろ、だったらそもそも口元汚すな」

魔王「ぐむ…」

123以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/12(日) 00:54:58 ID:ldQNnqP6
しえん

124 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/12(日) 22:46:15 ID:16o3WQCs
魔王(くっ、屈辱…子供扱いされるとは…)

男「全く、ケーキ一つでここまで喜べるなんざ、幸せな奴だな、お前」

魔王「…何?我が幸せ?」

男「こっちの世界じゃあな、幼い頃から誕生日を祝う為にバースデーケーキ用意すんだよ」

魔王「何だとっ!?狡いぞ!!」

男「ズルいとか言われてもな…」

魔王「…しかし、産まれた日を祝う、か…ふむ」

男「…祝って欲しいのかよ?」

魔王「そ、そうでは無いが…何だその目は、本当だぞ!」

男「はいはい。…とりあえず、今日はあれだ。お前が今日ここに来た祝いって事で」ゴソ

魔王「む、何を…」

男「…服、やるよ」

魔王「………」

男「何か言え」

魔王「あ、あぁ…」

125 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/12(日) 23:17:36 ID:16o3WQCs
魔王「……ふふふ」

男「あ?」

魔王「成程、言っていた意味が分かったぞ」

男「…あの二人が何か言ったのか。おい教えろ」

魔王「あまり素直では無いが世話好きで動物好きな優しい奴だ、とな」

男「何だ、そりゃ…」

魔王「不満な評価だったか?我は正しい評価だと思うが」

男「…別に」

魔王「…ふ、人間は気楽な物だ」

男「あん?」

魔王「魔族と違い、他者を良く見る事が出来る、と思ってな…」

男「…そう言う割には、お前も人の事ジッと見てんじゃねぇか」

魔王「我が見ているのは敵意だ。魔族は周り全てが敵と言って良いからな」

男「…やっぱ窮屈だな」

魔王「まず同族に敵意を抱かぬ人間には窮屈であろうな」

126 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/14(火) 07:04:56 ID:EgnOQbHA
男「ま、いいか別に。俺行かねぇし」

魔王「仮に行ったとしてもすぐに死に伏すだろうがな」

男「だろうな。……」

魔王「…何だ。我の口元がまだ汚れていたとでも?」

男「違ぇ。…風呂、どうしてんだ、と思ってな」

魔王「風呂?何が気になると言うのだ」

男「あぁ、あるんだな?魔界にも」

魔王「無い」

男「は?」

魔王「体の汚れを気にする魔族は少ないのでな。我が一族は少数の一派であるが」

男「要は体洗ってるって事か」

魔王「そうだな。我は浴槽を自ら作り出し汚れを落としていたが」

男「…自ら?何してんだお前」

魔王「興味が湧いた物を学び作っただけだ」

男(…こいつ、本当に人間嫌いなのかよ。全然そう見えねぇ)

127 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/14(火) 07:28:22 ID:EgnOQbHA
男「…とりあえず、こっちにも風呂がある。ってか家に無い方が少ないけどな」

魔王「何だ、風呂があるのか。先に言え」

男「言っても入らせねぇ」

魔王「ちぃっ」

男「ちぃっ、じゃねぇもしテメェに長風呂されちゃ困るんだ。電気代水道代光熱費、色々金掛かるんだ」

魔王「……人間も窮屈な物よ。様々な物に金が掛かるのか」

男「金も何も根こそぎ奪う魔族の王様には窮屈だろうがな」

魔王「ふん。…ところで、風呂があれば…厠?もあるのか?」

男「厠って…古い言い方だな。トイレだろ」

魔王「言い方などどうでも良い」

男「あるけど何だよ。行きたいなら右な。左の扉は風呂だ」

魔王「…そうか」

男「…何だ?来てから行ってないのかよ」

魔王「人間はそういう事を聞きたがる趣味でもあるのか」

男「ねぇよ。…早く行け」

128 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/14(火) 07:43:20 ID:EgnOQbHA
男「…一応、耳塞いどくか」

男(もしかして、使い方…いや、見りゃ分かるか流石に)

 ガチャ

魔王「………」

男「………使い方、分かったか?」

魔王「馬鹿にするで無い。我が世界にもあの形はある」

男「そうか…形?…流し方が分からないとかって」

魔王「……」

男「……トイレの右に、レバー…何か取っ手みたいなのがあるから、それを手前に引いて戻せ」

魔王「……うむ」ガチャ

男(水洗式は無いのか…機械的な仕組みはまず無いって考えた方がいいか)

魔王「…手洗い場も、あるか」

男「あるよ。蛇口捻りゃ…あぁめんどくせぇこっちこい説明してやる」

魔王「分かった」

魔王(ここも我が世界の仕組みと違う…中々慣れん…)

129 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/15(水) 19:33:49 ID:6/v/3cVQ
男「…んで、ここが風呂だ」

魔王「…白いな」

男「何か文句あんのか」

魔王「魔界に白は全くと言っていい程無いのでな」

男「お前色白じゃねぇか」

魔王「それ故姫と呼ばれたのだ、ふっふっふ」

男「あっそ。そりゃよっぽどお美しいと思われたんでしょうよ」

魔王「ふん、貴様に言われても嬉しくないな」

男(ちょっと喜んでんじゃねぇか…)

魔王「それより、使い方は」

男「あぁ、これがこうで……」

130 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/15(水) 19:49:48 ID:6/v/3cVQ
男「……あ」

魔王「どうした」

男「……お前着替える時、俺どうしよう」

魔王「?部屋で居れば良いだろう」

男「脱衣場なんてねぇんだ、ここで着替えるしかねぇんだぞ!つまりだな…」

魔王「我が着替える姿を見てしまう、と」

男「見ねぇよ、見ねぇけど音聞こえるのが」

魔王「我は見られた所で気にせんよ。恥ずべき所など無いのでな」

男「気にしろ!多少は!恥ずかしがれ!」

魔王「何だと言うのだ…」

男「え〜、あ〜、そのな、裸なんかそんなに気安く見せる物じゃねぇだろ、うん」

魔王「そういう物か」

男「そういう物なんだよ!」

131 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/15(水) 20:16:09 ID:6/v/3cVQ
男「あぁ、もう、何で大家さんが…やっぱ駄目だ料理的に。じゃあ女さん…も駄目だ」

魔王「何を言っておる」

男「何で男女一緒に住ませようとするんだよ…」

魔王「何か不都合でもあるのか」

男「今あるだろ大いに!」

魔王「気にしておるのは貴様だけだが」

男「だからお前も気にしろってのあぁもう…」

魔王「ふむ…肌を晒さぬ方が貴様は良いと」

男「人前で服着ない姿見せるのは止めとけってんだよ。別にお前がどんな服着てようが良いから」

魔王「人間は妙な事に拘るな、全く」

男「…はぁ、とにかく服脱いで、洗濯機…あの穴の空いた箱に入れてくれ。俺外出てる」

魔王「…まぁ、我には貴様を止める理由は無いからな。そうする気ならするが良い」

男「言われなくても、だ…はぁ」

132 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/15(水) 23:30:26 ID:6/v/3cVQ
魔王「…出ていったか。全く、何を気にしておるのか…」

魔王(…長く入っておれば、あやつは外に立ち続けるのか)

魔王「ふっふっふ…我を殴り付けた罰…」

魔王(いや待て…魔王としての器として、あまりに小さいのでは…?)

魔王「…ふん、早めに出てやるとするか。感謝するが良い」

魔王(…一人で何を言っておるのだ、我は。人間の事など…)

魔王(…まぁ、良い。湯船に浸かって落ち着くとしよう)

133 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/21(火) 07:21:33 ID:5wmlspLg
 チャプン

魔王『ほぅ…』

魔王(思わず溜め息が出てしまうな……耳と尻尾も出ているではないか…まぁ、今は良い)

魔王(…我が世界への帰還…。どうすれば良いのか…)

魔王(そもそもこの世界に辿り着いた手段すら分からんのでは、見付かる可能性は極めて低い…)

魔王『…この世界で永住する覚悟を決めねばならんか』

魔王(…結局、我は何も達成出来なかった…魔王としても、我自身としても…)

魔王(この世界でも何も出来ず人間に世話を焼かれる始末…)

魔王(魔王など、初めから合っていなかったのやも知れぬ…)

魔王(…今はそれを考えている場合では無いな。何とかあやつから…違う、どう暮らすか、だ)

魔王(我が世界の人間と生活が殆ど違う…どうも慣れん…)

魔王(…自然と人間の生活と合わせようとしている我は、魔族として異端なのだろうな)

魔王『…母上、父上…我は、一族の…』

134以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/21(火) 14:04:49 ID:SyBVLeio


135 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/23(木) 09:19:52 ID:oYtA9cTI
男「…さっむ」

男(早く出てくんねぇかなアイツ…)

女「…また外に居るのか」

男「えぇ、アイツが風呂に入ってるんで」

女「……あぁ、成程。着替え、見えるからね」

男「そうですよ。見ない為にわざわざ…何で俺が外に…」

女「勿体無い事をするね、君も。折角覗きが出来るのに」

男「そんな趣味無いんで」

女「そうかい、残念」

男「他人事だと思って…」

女「実際他人事だからね。見てて楽しいよ」

男「悪趣味な」

女「それはどうも」

136 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/23(木) 11:34:37 ID:oYtA9cTI
男「…で?女さんは?」

女「いやぁ、夜風に当たりたくてね」

男「寒いだけですよ」

女「たまには当たりたくなるのさ」

男「俺はずっとこたつで包まってた方が幸せですけどね」

女「こたつ、か。…実は、入った事無くてね。恥ずかしながら」

男「そりゃ勿体ない。人生半分損してますよ」

女「へぇ、言うね…」

男「寒い冬の必需品ですから」

女「家に殆ど居ない身に対する嫌味かい?」

男「捻って考えないでくださいよ」

女「悪かった。癖でね」

男「知ってます」

137 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/25(土) 22:05:21 ID:q99pu6cs
男「はぁ…寒い…」

女「抱き締めてあげようか?」

男「お断りします」

女「素っ気ないね、君」

男「これ以上心労を増やさないで下さい」

女「そんなつもりは無かったんだけど…まぁ、応援はしてるよ」

男「それはどうも…」

 ガチャ

魔王「……おい」

男「…早いな。おい、ちゃんと身体洗ったか?髪もだ」

魔王「……目が痛い」

女「……入ったんだね、シャンプー」

138 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/27(月) 21:55:33 ID:ID6INE.2
男「何やってんだお前…」

魔王「あんな物、我は知らぬ…!」

男「あのな、やり方教えてやっ――」

女「教えるんじゃなくて、君が実践してあげた方が早いと思うけど?」

男「は?」

女「ああ、僕はこれから用事があるし、手伝えないよ。残念だけどね」

男「じゃ、じゃあ」

女「僕が大家さんに行ってきますって毎回伝えてるんだけどね、今は伝えられなかったよ」

男「…他は…」

女「君は女性が僕と大家さんしか居ない事を忘れたのかい?」

男「…覚えてますよ…マジかよ…おい」

魔王「何でも良い…早くこの目の痒みを…」

男「……はぁ、腹、括るか…クソ」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/28(火) 21:02:19 ID:Xr0snSzg


   ○    〈,>宀^宀くハ
_   。 o /i l l.ハヽヽ「 |
┻┓∬ 。 ヽト!tテ'`tテ|i |   …ハァ
 |||。o     l. ト ,‐,.ィ|.l j
( ̄ ̄o) ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄)
.i ̄○ ̄ ̄○ ̄o゚ ̄0i
(_oノ_O_゚_Oo_)

140 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/29(水) 22:52:01 ID:.6kaSE.A
男「タオル外すなよオラ。絶対にだ」

魔王「何故巻かねばならん…」

男「俺の精神的な面でだ」

魔王「それ故か?貴様が服を脱いでおらんのは」

男「そうだよ」

魔王「濡れるぞ」

男「そん時はお前の後に風呂入るだけだ」

魔王「…同時に入れば良いのでは」

男「出来るわきゃねぇだろふざけてんのか」

魔王「…成程、一人で静かに入りたい性格か」

男「…もうそれでいい」

魔王「…ん?」

男「オラ前向け前」

魔王「ええい頭を掴むな無礼者!」

141 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/29(水) 23:12:26 ID:.6kaSE.A
男「うるせぇ頭洗うぞ目閉じろまた痛くなりたいか、ん?」

魔王「う、うむ」

男「…よし」

魔王「……」ワシャワシャ

男「加減は?」

魔王「…まぁ、良い」ワシャワシャ

男「そうかよ」

魔王(…思わずやらせてしまっているが、頭を洗う、いや、触ったのもこやつが初めてか…)

男「…髪、サラッとしてんな」

魔王「我が世界に居た時はかなりの頻度で入っていたからな」

男「そりゃ優雅な暮らしな事で。だがこっちでは何度も入んなよ」

魔王「金が掛かるのだろう?厄介な事だ…」

男「一日一回な」

魔王「…三回の間違いであろう?」

男「いいや?」

142 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/29(水) 23:30:58 ID:.6kaSE.A
魔王「……二回は」

男「駄目だ」

魔王「何故だ!」

男「お前で一回、俺で一回、合計二回風呂を沸かす事になんだぞ」

魔王「なら共に入るか、湯が冷める前に入るべきでは無いのか」

男「お前、俺の後に入りたいか?人が入った後の風呂に入れるか?俺は嫌だ」

魔王「……そうか」

男「第一だな、男女が一緒に入るってのはな、恋人とか夫婦でもない限りまずありえねぇんだよ」

魔王「そういう物か?」

男「そうだよ」

魔王「ふむ…」

男「…まぁ、家族とか、幼馴染とかならあるかもな」

魔王「…意外と可能性が多いではないか」

男「お前とはまず無いから安心しろ」

魔王「そう断言されると、それはそれで癪に障る」

143 ◆vC.kHTi4RE:2014/10/29(水) 23:59:01 ID:.6kaSE.A
男「お前の世界と違って身の危険がねぇんだ、別にいいだろが」

魔王「…この国が平和過ぎるだけなのではないか?」

男「そうかもな」

魔王「……平和、か」

男「嫌いか?」

魔王「…我は魔族の平和を望んでおるのでな」

男「あっそ」

魔王「…しかし、誰も戦わない国…信じられんな。この目で見ても」

男「皆、赤の他人に興味ねぇだけだ。もし隣に武器隠し持ってる奴がいたって誰も気付かねぇよ」

魔王「誰も自分を殺すと思いもしないと」

男「平和なんでね。そんな事する奴の方が少ねぇんでな」

魔王「…信じているのか、信じていないのか…分からんな」

144 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/02(日) 21:21:55 ID:LX8GDx8U
男「まぁ、どうでもいいだろお前には。とりあえず流すぞ。口開けんなよ」

魔王「んん…」

 バシャ

魔王「わぷっ」

男「何だわぷって」

魔王「……それがどうしたと言うのだ」

男「いんや?魔王の威厳ってのが最初から全然感じられないんでなぁ?」

魔王「ぐぬぅ…貴様」

男「良いから風呂入ってろ。髪も洗ってやったし、俺はもう出る」

魔王「……この布、外しても良いな?」

男「俺が出てからな」

魔王「分かっておる…煩い奴だ」

男「うるさくて結構」

145以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/03(月) 08:38:10 ID:It7SRNok
下乳が気になってやってきました

146 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/03(月) 23:26:57 ID:3dU6tLmE
魔王「…ふぅ。疲れる奴だ、全く」チャプ

魔王(…居なかったな。我の周囲に、ああいう輩は)

魔王(まぁ、魔王である我に、そういった者が居っても困るがな)

魔王(いや、そもそも魔族には殆ど居らんか…相手に世話を焼く者など)

魔王(他の者を自らの命を犠牲にしてまで守る…人間にしか出来ぬ行為だ)

魔王(どうしてそれが出来る…?どうして誰かを庇える…?どうして…)

魔王(同じ命である筈だ。どうして、何処で差が生まれた?元の環境か、元の性質か…?)

魔王「………我も、人間であれば………」

魔王(!!何を言っておる!我は魔王、そして誇り高き一族なのだ…!)

魔王(人間を完全に認める訳にはいかぬ…あっては、あってはならんのだ…!)

147 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/04(火) 20:27:27 ID:tVqu4nkY
魔王「………」ガチャ

魔王(あやつは…)

男「……んぐ」スヤァ

魔王「…寝ておるのか」

魔王(ならば気兼ねなく着替えられるという物…)

魔王「……寒い」ブルッ

魔王(早く着替えた方が良いな…)

魔王「…こやつ、我を差し置いて、こたつで寝ておる…卑怯な…」

魔王(早く着替えて暖まろう…くぅ、ここは寒暖の差が、魔界と比べると大きい…手が冷える…)

148 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/05(水) 07:19:58 ID:Mo4K1JJQ
男「んご…」

魔王「ふん、一人で占領するとは生意気な事を」モゾ

魔王(…ええい、こやつの足が邪魔だ)ゲシ

男「………」

魔王(空いたか…しかし、暖かい…)

魔王「くぁ………。………すぅ…」

男(…寝るの早ぇな、おい)

男「…くそ、ちょっと目が覚めちまった」

魔王「………我は……魔王……」

男「知ってるっての…」

魔王「………父上…母上…」

男(…父上に母上ねぇ。どんな性格してんだろうな)

魔王「……何処にも……」

男(寝言多いな、コイツ…)

149 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/05(水) 07:30:41 ID:Mo4K1JJQ
魔王「…うぅ……何故……」

男(…いや、うなされてるのか?これ)

魔王「…………………ッッ!!!!」ガバッ

男「うぉっ!……急に起きてくんなよ」

魔王「………夢か」ハァ ハァ

男「早いお目覚めだな、俺もだけどな」

魔王「…確かに、先程と殆ど時間が変わっておらんな…」

男「…はぁ」

魔王「…何だ、その溜め息は」

男「………おら」コト

魔王「…水?」

男「飲んどけよ。多少は落ち着くだろ」

魔王「…んく……ふぅ…。うむ、多少は、落ち着いた」

男「そうかい。なら後は早く寝とけ」

魔王「…あぁ」

150 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/05(水) 07:40:30 ID:Mo4K1JJQ
魔王「…?何をしておる。何処で寝るつもりだ?」

男「布団で寝る」

魔王「…ふとん?」

男「そのこたつの上にある厚い布と似た奴だ」ゴソッ

魔王「む…成程、足を無くした簡易ベッド、と言った所か」

男「まぁ、そんな物だな」

魔王「しかし、何故…」

男「お前そこで寝たいんだろ」

魔王「あぁ」

男「だからどいてやったんだろうが。感謝しろ」

魔王「…………ありがとう」

男「…あ?あ、あぁ…どういたしまして」

魔王「…何だその反応は」

男「素直に言うとは思ってなかったんでな」

魔王「……確かに、我には合わん言葉だった。忘れろ」

151 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/05(水) 19:55:06 ID:Mo4K1JJQ
男「はいはい、忘れますよ…電気消すぞ」

魔王「あぁ…」

男「…おやすみ、よく寝ろよ」

魔王「言われんでもな」

男「あっそ…」

魔王(…我はどうしたというのか…ここに来てから何故、妙な気分を覚え続けている…)

魔王(人間相手に礼まで言った…だが、不思議と不快ではない…)

魔王(…もう毒されてきておると言うのか?…早く、戻らねば…)

152 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/05(水) 20:19:37 ID:Mo4K1JJQ
――――
――


 カプ

男「……うぐぅ…つぅ…痛って……」

 ガジガジ

男「……マジで痛ぇ!」

魔王「………」ガジガジ

男「おい!耳噛むな痛ぇんだよ!離せ馬鹿!」バシッ

魔王「むぐ…」

男「…痛ってぇ…寝相悪いなコイツ…犬かよ」

魔王「犬ではなぁい……」

男「うるせぇふざけんな耳盛大に噛みやがって…」

男(最悪の朝の目覚めだ…)

153以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/06(木) 00:47:16 ID:rckMPry6
みてるぞ

154以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/08(土) 13:17:44 ID:kkbYkHkc
ロリ巨乳に抱きつかれて甘噛みされる想像をしてみた
男許せん!!

155 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/09(日) 10:45:31 ID:Rzndiq8A
男(コイツが寝てる内に早く風呂に入って、気分良く朝を過ごすか…)

魔王「りゅう〜…りゅうのにく〜…」

男「んなのねぇよ」

男(…てかコイツ、布団に潜り込んで…器用な寝ぼけ方だなおい)

魔王「くぅ…温い…」

男(…こたつの電源は切っとくか)

男「さて、朝風呂朝風呂っと…」

魔王「りゅう〜…りゅうのにおい…」

男(まだ言ってんのか。…何か味気になってきたじゃねぇか)

魔王「どこだ〜…出てこ〜い…」

男「いねぇよ。ったく…」

男(すぐ起きそうだから早めに出るか…)

156 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/09(日) 11:03:38 ID:Rzndiq8A
魔王「…………………む?」

男「げ」

魔王「くぁあ……うぅん……」

男(起きちまった…下脱げねぇ…)

魔王「…男、何をしてい…………」

男「な、何だよ……」

魔王「…竜」

男「は?」

魔王「背中。竜」

男「……は?何言っ」

幼竜「ギュ?」

男「……………………………………………。うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!?背中に竜!?」

魔王「何故気付いておらんのだ…」

男「いつの間にいたんだよ!?離れろコイツ!!」

幼竜「ギュヴィ…」

157 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/09(日) 22:40:24 ID:Rzndiq8A
男「おい!剥がしてくれ!」

魔王「その前に落ち着かぬか。そやつは幼い。噛まれても致命傷にはならん」

男「噛まれるかもしれねぇのに落ち着けるか!」

幼竜「クルル…」バサッ

男「お…離れた…?」

幼竜「フィ」ボフン

魔王「…ふむ、貴様の布団がお気に入りらしい」

男「あっそ…はぁ…何なんだよ急に…」

幼竜「クァ」

魔王「うぅむ…しかし、幼体の竜とは珍しい…」

男「へぇ…魔王様でもそう思う位か」

魔王「竜は滅多に子を産まん。故に産まれた子は成長するまで姿を見させない程過保護に守る」

男「…じゃあコイツ…迷子か?」

魔王「そうかも知れんな」

幼竜「キュイ」

158 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/09(日) 22:57:48 ID:Rzndiq8A
魔王「ふむぅ…しかしな…我は知らんぞ。青い竜など」

男「青って言うか水色に近いけどな」

魔王「青だろう」

男「…まぁいいや。で?見た事ないって?」

魔王「うむ…赤に緑、紫に白、黒や黄金など、色で竜族は分類されるのだが…」

男「青は今までないってか」

魔王「魔族の歴史の中でも竜の存在は色まではっきりと語り継がれているが、青は無い」

男「じゃあ幼体の時だけ青色か、新種なんじゃねぇの?」

魔王「どちらにしても、興味深い…味も」

男「おい食う気か」

魔王「……いや、食わんぞ」

男「その微妙な間は何だよおい」

魔王「竜を見て腹が減った。何か作れ」

男「素直かと思えば偉そうに」

159 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/09(日) 23:16:15 ID:Rzndiq8A
男「ま、どうせ魔王様は料理出来ねぇからな。俺が作るしかねぇ」

魔王「聞き捨てならんな。それ位出来る」

男「人間の料理は無理だろ?」

魔王「む…」

男「お前はその竜の面倒でも見てるんだな」

幼竜「ニュ」

魔王「何故我が…」

幼竜「カウ!」バサッ

男「どわっ!へばり付いてくんな!」

魔王「ふん、やけに好かれておるな」

男「お前が嫌われてるだけじゃねぇのか!」

魔王「恐れられていると言え」

男「どうでもいいからどうにかしてくれ!」

160 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/10(月) 18:01:58 ID:jQKyxDOE
魔王「やれやれ。例え幼いとしても竜が何者かに懐くのは非常に稀なのだぞ?」

男「そんな名誉いらねぇよ!」

魔王「勿体の無い事を言う…」

男「ええい懐くのは良いけどよ、デカいんだよ!1メートルはあるだろ!」

魔王「めえとるが何かは分からんが、大きさの事なのは分かったぞ」

男「そりゃよかったな!」

魔王「…そんなに引き剥がして欲しいのなら剥がして」

幼竜「ヴァウ!」ゴウ

魔王「うおぉ!?」バッ

男「ひ、火ぃ吹いた!おい!」

魔王「…貴様が気に入ったらしい。飽きるまでそのままだな」

男「マジかよ…!何でか重さは感じねぇけど、前は邪魔だ!」

幼竜「…キュウ」スス

男「あ?…背中に移った」

魔王(…この国の言葉を理解しているのか?…だとすれば)

161以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/12(水) 01:56:04 ID:Ar/UXv0k


162以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/12(水) 15:07:20 ID:3H3hUOp.


163以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/12(水) 15:48:40 ID:gBKXsKlQ
期待

164 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 00:09:27 ID:7BDDMO/U
幼竜「ファウ♪」ヨジヨジ

魔王「ふむ、相当懐いておるな。貴様の頭がお気に入りらしい」

男「…そうですかい」

魔王「まぁ、気にせず作るが良い。そやつの為にもな」

幼竜「ヴ」グー

男「何食うんだコイツ…」

魔王「知らんな」

男「知っとけよ」

魔王「未知の竜だと言った筈だが」

男「そうだったな」

魔王「美味い物なら勝手に食らうだろう」

男「何でもってのは困る。後無い物ねだりもな」

魔王「肉を食わせろもか」

男「そうだよ」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/13(木) 13:06:04 ID:3om14Ftk
豆腐でいいだろ

166 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 20:12:34 ID:7BDDMO/U
男「大体な、朝から肉なんざ焼いてられるか。精々魚ぐらいだ」

魔王「魚、か」

男「文句あんのか」

魔王「いや、魔界では貴重でな…」

男「…あぁ、基本水が毒なんだったか」

魔王「そうだ。それ故に、味が気になっている」

男「そうかよ。じゃあ焼いてやる」

魔王「ふむ、そうか」

男「お前にも用意してやるぞ〜」

幼竜「クァ!」バサッ

男「急に翼広げんな」

幼竜「ギィ…」

魔王(ううむ…もう手懐けるか…あやつ、本当に人間か…?)

167 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 21:46:20 ID:7BDDMO/U
魔王「…む」

魔王(物の焼ける匂いが…香ばしい…そろそろか?)ウズウズ

男「おら、出来たぞ」

魔王「!」

男「ご飯と焼き魚と味噌汁だ。あぁ、完全に日本人の朝の食事だ」

魔王「そうなのか…?」

男「そうだよ。おら、箸だ」

魔王「…どう使えば良いのだ」

男「あぁん?…はいはい、やってやるよ」

魔王「な、何だ、背中側に回って…」

男「見せるだけじゃ分かんねぇと思ってな」

魔王「何だと?」

男「はい、まず手はこう!」

魔王「急に我の手に触れるな!」

168 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 22:02:27 ID:7BDDMO/U
男「ワガママ言うんじゃねぇ」

魔王「何なのだ失礼な!気安く触れるな!」

男「じゃあこの箸を持つ手を見てみろ。で、真似てみろ」

魔王「……ぬ。う。う」カチャン

男「落とすな」

魔王「……何故使わねば」

男「日本じゃ箸持つのが普通だ。持てねぇとヤバいな」

魔王「……努力する」

幼竜「ヒュイ」

男「ほら、コイツも応援してるぞ」

魔王「持つ必要が無いからな…気楽な物だ」

幼竜「ガウ!」コオ

魔王「ぬおぉ!寒い!」

男「ちょっ!冷てぇ!氷の息吐くな!」

169 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 22:13:46 ID:7BDDMO/U
魔王「はぁ…はぁ…まさか、複数の息吹を使うとは…」

男「ポテンシャル高ぇな小せぇのに…」

幼竜「ルイ♪」

男「あんま褒めてねぇよ」

幼竜「キュウ…」

魔王「……む?おぉ!どうだ、持てたぞ」

男「じゃあ次は」

魔王「まだあると言うのか…」

男「こう動かしてみろ、こう」

魔王「ぬ…ぐぐ…」

男「おら、出来ねぇと食えねぇぞ」

魔王「お、お預けだと…!ぬぐ、ぐぐぐぐ」

男(そんな唸りながらやる事か…?)

170 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/13(木) 22:35:14 ID:7BDDMO/U
魔王「何故、何故この魔王が、食事を目の前にしてぇぇぇぇぇぇ!」

男「うるせぇ、おい竜」

幼竜「クァ!」

魔王「待たんか!……ど、どうだ」

男「じゃあ次は」

魔王「まだかぁ!?」

男「それでご飯掴んで食ってみろ。こうやってな」

魔王「ぬ、ぬぅ…」

男「おっと、落とさない様に、茶碗持って食え。ほらこういう風に」

魔王「うむ…」

魔王(……もしも、親が居るのなら、こう教えてくれるのだろうか…?)

魔王(違う!何故こやつにそんな物を感じ取っておるのだ!)

男「おい落としたぞ」

魔王「ぬぅ…」

171以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/16(日) 02:08:14 ID:Kri9j7V2
ほm

172以下、名無しが深夜にお送りします:2014/11/17(月) 18:03:48 ID:KLNoFSYY
アクシデントまだかよ

173 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/17(月) 23:58:23 ID:CYEoyaBU
魔王「くっ…くっ…」プルプル

男「ほれほれ頑張れよ魔王様」

魔王「頑張って…!あぁ!」ポロッ

男「ふっ」

魔王「この、小癪な、性悪な…!もう手で食うぞ!」

男「飯抜きにすんぞ」

魔王「ぐっ…!」

幼竜「…」ガシュガシュ

魔王「こやつは手どころか口だけだぞ!」

男「コイツは箸使える手じゃねぇだろが」

魔王「ぬぐぐ…」

男「ま、精々頑張ってくれ」

魔王「舐めおってぇ…!」

174 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/18(火) 00:37:58 ID:m7uadl36
男「…第一、別にそんな下に茶碗持ってかなくても、口の近くまで持ってくりゃいいだろが」

魔王「先程の貴様の真似をしたまで…!」

男「ま、持っていいのは碗だけだけどな。皿は基本駄目だ」

魔王「人間めぇ…厄介な物を…!」

男「人のせいにすんじゃねぇ」

幼竜「キュギュ」

男「ほら、コイツも言ってんぞ」

魔王「ぬぅぅ…!」

幼竜「ムキュ♪」ゴキュゴキュ

男「…お前、いい飲みっぷりだな。味噌汁ガブ飲みする竜とかファンタジー感無いな」

幼竜「ミュ?」

魔王「ふぁんたじいがどういう意味かは知らんが…!」プルプル

男「早く食えよ」

175 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/18(火) 21:53:26 ID:m7uadl36
魔王「あぐ。…苦労の末か、非常に味わい深く感じる…」

男「大げさだな」

魔王「苦労させたのは誰だ」

男「俺」

魔王「貴様…」

男「いいから早く食え。冷めた奴より温かい方が美味いからな」

幼竜「ヴァウ」バキバキ

男「…魚、骨ごと頭丸かじりか。ま、竜だしな」

魔王「むぅ…ああして食えば良いのか?」

男「お前は骨取り除いて食え。喉刺さったら病院行きだぞ」

魔王「びょういん?」

男「…あぁ、無ぇのか。病院ってのは、怪我と病気を治療する場所だ」

魔王「治療、か。魔法が扱えるなら、どの様な怪我も病気も治せるぞ。我でも完治には時間は掛かるがな」

男「便利な世界だな」

魔王「扱えるのは、我自身以外知らぬがな」

176 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/18(火) 22:10:21 ID:m7uadl36
魔王「…うむ、良い…塩梅、という奴か」

男「お気に召した様で何よりです」

魔王「…この、味噌汁とか言うのも、中々だ。体が暖まる」

男「ま、そっちの人間だって食ってねぇかもしれねぇしな」

幼竜「クィ♪」

男「うぉ、もう食ったのか。…お前も気に入ったか」

幼竜「〜♪」スリスリ

男「はは、何だコイツ」ナデナデ

魔王(……………)ジー

魔王「これらの具材は一体何だ?」

男「んあ?何だよ、作る気か?」

魔王「作る事が出来て、困る事など無いであろう」

男「確かにそうだろうけどよ」

魔王「なら良いではないか」

177 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/18(火) 22:29:31 ID:m7uadl36
男「まぁな。…魚は鮭だ。揚げるのも美味いぞ」

魔王「ほう」

男「味噌汁は豆腐とワカメだな」

魔王「…どれも聞いた事が無い…」

男「ワカメは海草、海の草だ」

魔王「海の草、か…ふむ、珍しい」

男「んで鮭はさっきみたいに身が赤い魚…と見せかけら白身魚だ」

魔王「何だそれは」

男「死んでしばらくすると、何でか身が赤くなるとか何とか」

魔王「変わっておるな…」

男「で、豆腐は…豆の汁固めた奴だと思えば良い。腐った豆で豆腐だ」

魔王「汁を固めた…?腐った豆…?…腐った物を食わされたのか…?」

男「豆腐は字だけで腐ってねぇ。まぁ、実際に腐った豆…納豆って奴あるけどな」

魔王「…良く分からん」

178 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/18(火) 22:43:54 ID:m7uadl36
男「ネバネバしてるし腐ってるだけあって匂い臭いけど、人によっては美味いらしい」

魔王「らしい…知らんのか?」

男「食ったが俺は無理だった」

魔王「なら食わねば良いでは無いか」

男「この世界には学校っつってな…子供たくさん呼んで勉強する場所があんだよ…」

魔王「勉強…?誰かに教えて貰うのか?」

男「そうだよ…ま、そこはいい。学校には種類があってな…小学校が一番最初の学校だ」

魔王「ふむ」

男「そこは基本給食…食事が用意されんのさ」

魔王「そこになっとうとか言う物が出てきて、全員食わざるを得なかった、と」

男「あぁ…本当、苦行だった…」

魔王「好きな物以外を食うのは、確かに苦しいだろうな…」

男「だからって、好きな物ばっかは食わせねぇぞ」

魔王「ぬぐっ…」

179 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/19(水) 23:57:58 ID:/YZRseyY
男「お前は好き嫌いすんなよ。でないと一生そのままだな、身長とか」

魔王「なっ…!?き、気にしておる事を…!」

男「気にしてたのかよ」

魔王「魔王としての威厳に関わるのだぞ!」

男「お前の顔じゃ威厳も何も…」

魔王「どういう意味だ…?」ビキッ

男「あ?可愛い顔してるぞってな」

魔王「可愛いではいかんのだ!」

男「あぁそうかい。残念だな、ここじゃ威厳より可愛い方が得なんだけどな」

魔王「魔界において可愛さなど必要無い!」

男「あっそ」

魔王(…だと言うのに、何だこの胸のざわめきは…!)

男(…コイツ顔赤くなってないか?怒ってんのか、照れてんのか…ま、別に関係ねぇけど)

180 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/22(土) 19:02:37 ID:TMctN9GU
魔王「…ふん!まぁ良い。我はまだ成長途中、まだ、まだ…!」

男「…お前の成長期過ぎてるだろ」

男(でなきゃあんなに胸デカくなる訳ねぇ)

魔王「人間の成長限界が何時か何処までかは知らんが、我が一族は三十まで成長を続けるのだ」

男「…て事は何だ?人間より寿命長いってか?」

男(胸も身長もまだデカくなんのか…)

魔王「さぁな。寿命を全うする魔族など、極めて稀である故、誰も良く知らん」

男「そうかい」

魔王「…この世界では、全う出来る者が多いのか?」

男「大体病気で死んでるから、寿命を全う出来る奴はそうそういねぇだろ」

魔王「平和な国でもか」

男「平和でもだ。逆に生きる奴は百年位生きる」

魔王「百年…人間でもか…?」

男「たまにいるんだよ、そんなのがな」

181 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/22(土) 19:30:44 ID:TMctN9GU
男「ま、それはいいとして…今のままの体格でも、好きな奴はいる」

魔王「そうだとして、我はこの身体は気に食わん。胸だけ大きくなった所で…」

男「別に身長ちっさくていいだろ。相手が油断するだろうしな」

魔王「良くない」

男「…じゃあ牛乳とか飲めばいいだろ」

魔王「ぎゅうにゅう…牛の乳か。何故そんな物を」

男「身長と、女性はついでに胸もデカくなるって――」

魔王「持ってこい、今すぐに!」

男「どんだけ身長欲しいんだよ…」

182 ◆vC.kHTi4RE:2014/11/23(日) 00:55:29 ID:q20Fg8m2
男「持ってこいっつったって、ねぇよ」

魔王「買えば良いだろう」

男「何でテメェの為だけに買わなきゃなんねぇんだよ」

魔王「なら周りに住んでいる者にだな」

男「牛乳下さいってか。乞食か俺は」

魔王「いや、配れば良いと言おうとしたのだが」

男「配達員かよ。何でそうなるんだよ」

魔王「貴様が我だけの為には買わんと言ったからに決まっておろう」

男「他人の為ならいいってか。買わねぇよ。欲しけりゃ自分で手に入れろ」

魔王「…良いだろう。例え力を失えど、我は魔族の王。魔族の生き方通り、手に入れてみせよう」

男「…暴力的解決にうって出るなよ」

魔王「そもそも今のこの状態では出来ん」

男「なら良いけどよ…まぁ頑張ってくれ」


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