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ミカサ「遺書」
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※CPアリ。ミカエレになると思います。
※エロは無い予定。
"
"
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−遺書を、書こうと思った。
−エレンと、アルミンに宛てて。
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訓練兵になって二年が過ぎ、三度目の夏を迎えた。
この生活が三年目に突入したからといって特に変化はない。
訓練漬けの毎日。
ただ、入団したばかりの頃と比べて訓練兵の人数は減った。
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最初の適性検査で淘汰され開拓地に戻った者、訓練中に死んでしまった者、脱走した者、素行不良で追い出された者。
理由ははっきりしないけれど訓練所を去る者もいた。
そういう者達のうち、何人かは「妊娠したから」という噂を聞いたことがある。
真偽は不明。
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でも三年目に入ってからは訓練兵の減少も頭打ちになった。
二年間ふるいにかけられた結果、今残っている訓練兵たちは兵士としての適性を持つ者ばかりなのだと思う。
変化のない毎日、減らない同期、訓練兵としての少しばかりの自信…これらが要因となって、おそらく私は気を緩めてしまった。
立体機動の訓練中に事故を起こしてしまったのだ。
"
"
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立体機動装置を用いて巨人を模したハリボテに斬撃を与える訓練。
もう100回以上経験した。
この訓練中に右足首付近でベルトが切れた。
ハリボテのうなじを切り取った後、いつものように後ろを振り向きエレンの姿を確認した瞬間、右足にかかっていた体重が消えた。
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バランスを崩して左半身と頭を木に打ち付けた。
気がついたら医務室だった。
一時間意識がなかったらしい。
医務官から「後々、体に異変が出る可能性があるから明日一日医務室で安静にしておくように」と言われた。
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医務室で教官から装備の点検が杜撰だと注意されていたときに、サシャが私の着替えを持ってきてくれた。
教官が出て行った後「昨日、私と一緒にきちんと点検したのに、あんな言い方って無いですよね」とサシャが小声で言ってくれた。
私を元気付けようとしてくれている。
でも、装備の点検をしたとき、ベルトの消耗に気付かなかった私が悪い。
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消灯時間の直前にエレンとアルミンがお見舞いに来てくれた。
エレンは少し怒っていた。
二人とも心配してくれている。
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夜は左半身の打ち身が痛くて眠れなかった。
朝になったらだいぶマシになったけれど、打撲がひどい。
昼間睡魔に襲われて寝てしまい、起きたら日が暮れていた。
丸一日様子を見た結果、体に異常はなかったから夕食後は寮に戻る。
明日からはまた訓練。
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寮に戻ると異様に静かだった。
どうしたのか聞いてみると、訓練中に死人が出たのだと言われた。
闇討ちで受け身を取り損なったらしい。
久しぶりの重い空気。
きっと今夜も寝付けない。
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私たち訓練兵はいつ死んでもおかしくない。
ここを卒業し、調査兵団に志願でもすれば、さらに死ぬ率は上がるだろう。
衣食住が保証された二年間、それに加えて最近訓練兵の死亡が無かったからすっかり忘れていた死を身近に感じる感覚。
立体機動で事故を起こしたときの私は運が良かっただけ。
打ち所が悪ければ死んでいた。
私が明日死ぬ可能性もある。
消灯後の部屋で目を見開いたままそんなことを考えていた。
目が慣れてきて天井の木目を見ながらふいに思い立った。
遺書を書いておこう、と。
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死ぬ気はない。
でも死なない保証もない。
死ぬ寸前に「ああ言っておけば良かった」と後悔しないように。
エレンと、アルミンに宛てて。
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とりあえずここまで
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おお、なんかリアリティありますな
続きが楽しみ
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午後からの訓練が無い半休の日、一人で街に出た。
便箋を買おうと思って。
エレンとアルミンに手紙を書くのだから便箋が必要。
どんなのが良いだろう。
思ったよりも種類が多くて悩む。
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結局、なんの変哲もない白い便箋と白い封筒を買った。
模様が入った可愛いものもたくさんあったけれど男の子宛てに可愛いものを選んでもしかたがない気がした。
今から、書く。
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ほう……期待
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アルミンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
私はあなたが生きていて嬉しいです。
あなたと友達になれて良かったと思っています。
あなたと肩を並べて生きてこられた私は幸せものです。
シガンシナ区が陥落したとき、ハンネスさんに私とエレンのことを知らせてくれてありがとう。
あなたはいつだって正しい選択ができる力を持っています。
自信を持ってください。
いままでもこれからも私はあなたの全てを信じています。
私と友達になってくれて本当にありがとう。
長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。
いつまでも最愛の友の幸福を祈っています。
849年・夏 ミカサより
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これで良いのだろうか…?
生きているのに死んだつもりで書くのは難しい。
私は、手紙が下手くそ。
遺書を書いているとばれるのが嫌だったので、消灯後ベッドのカーテンを閉めて書いているから暗くて書きにくい。
エレンの分も書きたかったけれど、アルミン宛ての遺書で思ったよりも時間をくってしまった。
また明日書こう。
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エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
―――――――――――――――――――
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エレン宛ての遺書を書き始めてもう一時間は経っている。
何を書けば良いのかわからない。
最初の一文はアルミンと同じにしたけれど。
続きもアルミンと統一して、あなたが生きていて嬉しい、などと書いたらエレンは怒らないだろうか。
最近のエレンは昔に比べて反抗的。
これは反抗期というやつなのだろうか。
あまり夜更かししては明日の訓練にひびくので、もう寝よう。
続きは明日書く。
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こういうの見ると泣きたくなっちゃうんだけど
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「いッ!?」
対人格闘の時間、突然エレンの声が聞こえた。
声がした方を見るとエレンが脛をさすっている。
アニとライナーが傍に立っている。
何事だろうか。
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「ミカサ?どうかした?」
はっとして呼ばれた方を振り向いた。
「なんでもない。ごめんなさい。次はクリスタ、あなたが木剣を奪う番…」
今は訓練中。
訓練中に気を抜いてはいけないと、ついこの間身を以って知ったというのに。
訓練に集中しなければ。
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「うッ!!」
(また、エレンの声…)
ドサッ
「!?」
(何?何の音?)
振り向くと今度はエレンが妙な格好でひっくり返っている。
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(アニが…やったの?)
エレンが何かライナーに話しかけている。
次はライナーとアニが組むみたい。
「…カサ、ミカサ。ねえミカサ、あっちが気にn」
「あ、ごめんなさいクリスタ…」
またエレンに気を取られてしまった。
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訓練中に気を抜いてはいけない。
組んでくれているクリスタにも失礼。
クリスタに向き直る。
「ううん。良いよミカサ。アニの技私も気になる。ちょっと見学させてもらおうよ」
「!……ええ」
クリスタは向上心が強い。
アニの技ではなくエレンを気にしていた自分が申し訳ない。
クリスタを見習って真剣に見学しよう。
アニとライナーを観察して何か得られるかもしれないのだから。
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―――――――――――――――――――
エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
―――――――――――――――――――
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今日もまた、書き始めて一時間は経っている。
続きが書けない。
夕食の時間、またエレンがジャンと喧嘩していた。
もう寝る。
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「何?」
朝の光を浴びて着替えをしながらアニが言った。
無意識にアニを凝視してしまっていたらしい。
「何でもない」
「そう。あんたもさっさと着替えないと朝食に間に合わないよ」
「うん」
朝日に眩しい金色の髪が溶けてしまいそう。
昨日、ジャンとの喧嘩の際、エレンはアニにかけられた足技を使っていた。
私も何かエレンに教えられるような技術が欲しい。
アニの足技が使えればエレンは私と組んでくれるのだろうか。
-
ここまで
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おつ
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―――――――――――――――――――
エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
5年前、私を助けてくれてありがとう。
あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。
あなたの家族になれて幸せでした。
熱くなって争いの火種になることは出来るだけ避けてください。
喧嘩もしてはいけない。
今までもこれからもあなたの無事を祈っています。
あたたかいマフラーをありがとう。
長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。
良い人生でした。
いつまでも最愛の家族の幸福を祈っています。
849年・夏 ミカサより
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とりあえず書いた。
これで良いだろうか。
手紙を上手に書ける人が羨ましい。
寝る。
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対人格闘の時間、今日もエレンはアニと一緒にいる。
周囲が組み合っているのに二人で話している。
エレンが左足を上げながら嬉しそうな顔をしてアニに何か言っている。
ずっと前の訓練中に私に投げ飛ばされた後はあんなに機嫌が悪かったのに。
立体機動の訓練中も私と一緒にいるときはエレンは機嫌が悪い。
離れていて聞こえないけれど、絶対に舌打ちをしている。
表情でわかる。
エレンが、またひっくり返った。
何度ひっくり返されてもエレンはアニと組むのだろうか。
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「エレン、脛は大丈夫?」
夜、食堂に向かいながらエレンに話し掛けてみた。
「は?何のことだよ」
「対人格闘のとき、アニに蹴られていたから」
そう言うとエレンはあからさまに苛立った表情を見せた。
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「お前、見てたのかよ」
「うん。エレン、打撲になってない?ひどいようなら湿布をしt」
「うるせえな!お前はオレの姉かよ!?母親かよ!?」
「?どうして怒るの」
「は?怒ってねえよ。お前が、うるs」
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「ミカサは心配して言ってくれてるんだから、そんな言い方しちゃ駄目だよ」
アルミンが仲裁に入ってくれた。
エレンがはっとした表情を浮かべたあと、怒ってはいないけれど不満げな表情になって言った。
「…オレ、怒ってねえからな」
怒ってないなんて、嘘。
怒ってた。
怒らないでほしかった。
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エレン宛ての遺書を、書き直そうと思う。
口煩く注意するとエレンは機嫌が悪くなるから。
私は、悪くない。
エレンはきっと反抗期なのだろう。
便箋は六枚あるから大丈夫。
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エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
5年前、私を助けてくれてありがとう。
あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。
あなたの家族になれて幸せでした。
あなたが私のことを姉とも母親とも思っていなくても私はあなたの家族です。
いつも口煩くしてしまったのはあなたが大切な家族だから。
今までもこれからもあなたの無事を祈っています。
あたたかいマフラーをありがとう。
長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。
良い人生でした。
いつまでも最愛の家族の幸福を祈っています。
849年・夏 ミカサより
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一応、エレンが怒りそうな部分を書き変えてみた。
手紙を書くと疲れる。
寝よう。
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ダラダラ投下して申し訳ない
今日はもう投下しないです
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とてもいい
超期待
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期待
-
すごくいい
続きが気になる
期待
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楽しみ
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恋文の人かな?
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乙です
手紙からミカサのエレンへの思い遣りが見てとれる
男って馬鹿だよなぁ…
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夏も終わりに近づいてきている。
最近は朝と晩が冷える。
マフラーをつけられる季節がもうすぐくる。
待ち遠しい。
水汲みの当番をさっさと終わらせてお風呂に入ってあたたまりたい。
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桶を持って森を横切っていると、話し声が聞こえた。
誰かいるのだろうか。
少しだけ森に入ってみる。
目の端で人影をとらえた。
そちらに顔を向けてみる。
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すみません。ミスった。
×森→○林
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(あれは、ハンナ…?誰かと、キスを)
相手は月を背にしていて逆光で誰だかわからない。
ハンナがキスをしている。
誰と?
キスを、している?
キス?
予想外の展開にその場から動けずにいた。
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男の方が私に気づいてハンナの肩をちょんちょんとつついた。
ハンナがちらりとこちらを見た。
(どうしよう)
突っ立っていると、ハンナがこちらに歩いてきた。
本当にどうしよう。
とりあえず、謝る。
「あの、ごめんなさい。見てしまって、その、たまたま」
「そんなに慌てて謝らなくても良いよ、ミカサ」
ハンナは怒っていなかった。
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水汲みのときに見た光景が忘れられない。
目を閉じるとあの光景が蘇って眠れない。
消灯時間を過ぎてから今に至るまで私は目を見開いて天井を見つめていた。
あの後、ハンナと一緒にお風呂に入った。
ハンナはフランツと付き合っているらしい。
しかもかなり前から。
みんなは知っているのだろうか。
エレンは、知っているのだろうか…?
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昨夜はなかなか寝付けなかったから眠い。
ぼーっとして食堂に向かっている。
「ミカサ、おはよう」
アルミンだ。
エレンもいる。
「おはよう、二人とも」
唐突に昨日のキスの場面を思い出した。
二人はハンナとフランツが恋人同士だと知っているのだろうか。
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「おい、ミカサ」
「え?どうしたの、エレン…?」
エレンが私の服の肘辺りをつまんでいる。
「体調、悪いのか?」
「え」
「なんか、ぼんやりしてないか」
「あ、昨日寝たのが遅かったから」
「そうか。なら、いい」
エレンは振り払うように私から手を離した。
心配させてしまった。
申し訳ない。
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休憩時間にハンナとフランツについてアルミンに尋ねてみた。
二人が恋人同士だととっくに知っていた。
エレンも知っているのかと尋ねたら
「多分知ってるんじゃないかな」
と言われた。
男子訓練兵の間では、かなり前から知れ渡っていたらしい。
というか、男女問わず訓練兵はほとんどみんなが知っていることらしい。
私が気付いていなかっただけ。
驚いた。
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今、布団の中で遺書を読み返している。
最近よく寝る前に遺書を読み返す。
この遺書で良いのだろうか。
私は死ぬ間際に後悔しないだろうか。
便箋はまだ三枚ある。
また書き直すかもしれない。
-
「ミカサ、最近よく夜更かししてません?」
お風呂場でサシャが言った。
「え…」
「消灯後ミカサのベッドからかすかに明かりが漏れてたので」
「あ、ごめんなさい。睡眠の邪魔だった?」
「いえ、別に。本当にかすかな光なので眠りの妨げにはなりませんけど、ただ何してるのかなって」
「………」
-
何と返すべきだろう。
遺書のことは知られたくない。
どうしよう。
何も言えずに黙っていたらサシャが口を開いた。
「あ、別に無理に教えてくれなくても良いですよ。ベッドの中は個人の空間ですよね」
「ごめんなさい」
「そんな顔しないでください。私の方こそ、その、すみません」
サシャが悲しそうな顔をしている。
どうする?どうすれば良い?
どうすれば良いかわからなくてサシャの二の腕をがっと掴んだ。
-
びっくりした顔でサシャがこっちを見た。
「そろそろ出ましょうか」
ふっと笑顔になって応えてくれた。
サシャの笑顔は、かわいい。
私もこんな風に笑いたい。
-
服を着ていると、ハンナが手首に飾りをつけているのに気付いた。
恋人がいるからオシャレをしているのだと思う。
私のお父さんとお母さんも、ハンナとフランツみたいに付き合って結婚したのだろうか。
訓練兵団を卒業したとき、私は15になる。
子どもも、もう産める。
ハンナとフランツは結婚するだろうか。
私は、きっと、生涯独身だと思う。
-
「ミカサ、これ便箋?」
久しぶりに私物の整理をしていたらクリスタに声をかけられた。
ギクッとした。
なんだかみんなして私の遺書の秘密を暴こうとしているのではないかと疑ってしまう。
「…ええ」
「手紙、書きたいな。私も」
「書けばいい。クリスタも。街にはかわいい便箋がたくさんある」
「うん、かわいい便箋か。良いなぁ」
それだけ言ってクリスタは部屋から出て行った。
深く聞いてこなくて少しほっとした。
便箋は人目につかないようにしなければならない。
-
今、座学の時間、ものすごくどうでもいいことに気付いてしまった。
今開いている教科書のページの文字を縦につなげて読むと、「コイビト」になる。
どうでもいいことなのに気になって仕方がない。
この文字をペンで囲ってみた。
ドキドキする。
他にもないだろうか。
探してみよう。
座学の時間の楽しみが増えた。
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エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
5年前、私を助けてくれてありがとう。
あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。
あなたの家族になれて幸せでした。
あなたはよく私のことを母親でも姉でもないと言いますが、私もあなたのことを子どもや弟だなんて思っていません。
いつも口煩くしてしまうのはあなたが大切だから。
今までもこれからもあなたの無事を祈っています。
あたたかいマフラーをありがとう。
長生きして幸せに生きてください。
良い人生でした。
いつまでも最愛の家族の幸福を祈っています。
849年・夏と秋の間の季節 ミカサより
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なんとなくエレン宛ての遺書を書き直してみた。
前に書いた遺書の方が出来が良かったかもしれない。
立体機動の訓練中、今日もエレンは機嫌が悪かった。
対人格闘でアニに見せるような顔を私にもしてほしい。
家族の笑顔が、見たい。
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ここまで
>>48すみません。違う人です。
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乙!
エレンに笑って欲しいミカサが切ないな…
-
健気なミカサ…かわいらしい
変態じゃなくて良かった…
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今朝、エレンとキスをする夢を見た。
なんだろう、この言いようのない嫌悪感。
家族同士キスしてもおかしくはないはず。
ハンナとフランツのことを意識しすぎている。
夢で見たあれは、恋人のキスではない。
家族のキス。
あれは家族のキス。
-
最近エレンは対人格闘でアニとばかり組んでいる。
何度投げ飛ばされてもヘソを曲げずにケロッとしている。
エレンも大人になったのかもしれない。
明日の対人格闘のとき、組んでくれるよう言ってみよう。
-
わけがわからない。
どうしてエレンは私にばかり怒るのか。
今日、対人格闘のとき、エレンに組んでくれるよう言ってみた。
「わかった。今日はお前と組む」
とすぐに返事をくれて嬉しかったのに。
-
対人格闘でエレンはアニの足技を私にしかけてきた。
脛を蹴られてものすごく痛かったけれど、堪えてエレンを押し倒した。
その後ずっと、エレンは機嫌が悪かった。
アニに投げ飛ばされても怒らないのに。
どうして?
蹴られた脛が痛くてジンジンする。
医務室で湿布を貰おう。
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医務室の前まで来たけれど、誰かいるみたい。
出て来るまで待っていた方が良いだろうか。
そんなことを考えながら扉の前に立っていると中から誰か出てきた。
「あれ、ミカサ?」
「!!エレン」
医務室の先客はエレンだった。
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「エレン、どうしたの?調子悪いの?」
「別に」
また不機嫌な顔。
なぜ?
「それよりお前はどうしたんだよ。どこか悪いのか?」
「どこも悪くない。湿布を貰いに来ただけ」
「…今日、オレが蹴ったところか?」
「………ぅん」
そう言い終わるやいなやエレンは私の腕を掴んで医務室に連れ込んだ。
「アッカーマン、打撲です。自分が湿布します」
医務官に言って勝手に話を進めている。
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医務室の椅子に腰掛けておとなしく待っていると、湿布を持ってエレンが来た。
「足出せよ」
「うん」
言われた通り足を出す。
エレンは黙って湿布をしてくれている。
医務官のいる医務室で雑談するのもなんだかいけない気がして私も黙っていた。
終わってからエレンは換えの湿布を二枚私の手に持たせた。
黙って渡されたので黙って受けとる。
医務官に挨拶をして一緒に医務室を出た。
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「悪かったな、足」
びっくりした。
不機嫌なはずのエレンが私に話しかけるとは思わなかったから。
「ううん。大丈夫。ありがとう。湿布」
「別に。これくらい」
エレンの顔を見てみる。
予想に反して怒っていない。
不機嫌でもない。
やはりエレンの反抗期は終わりに近づいているのだろう。
エレンを見ていたらエレンも私の方を見た。
目があった。
-
「何だよ」
「別に、何でも…」
私がそう言うとエレンはすぐに前を向いた。
私も前を向いて歩こう。
転びでもしたら大変なので。
-
「着いたな」
気がつくと女子寮の前まで来ていた。
「じゃあ、オレも寮に戻るからな」
「うん、ありがとう」
エレンが踵を返す。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
私の方を振り向いてそう言うと、エレンは走って行った。
エレンは怒っていなかったし、私は感謝を伝えることが出来たし、おやすみなさいも言えた。
今日はすごくうまくいった気がする。
部屋に戻って少し脛を撫でた。
もう寝よう。
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最近男子達の間で妙な遊びが流行っている。
兵站行進で使うリュックに本をギチギチに詰めて、騒いでいる。
詰め終わったら、赤ちゃんに高い高いをするみたいにそのリュックを持ち上げて騒いでいる。
誰が一番長い間リュックを持ち上げたままでいられるかを競っているらしい。
何が面白いのかわからない。
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「何が面白いの?あの遊び。リュックを持ち上げて」
夕食のとき、エレンとアルミンに尋ねてみた。
「お前らだって何が面白くて刺繍やら占いやらやってんだよ」
とエレンは言う。
「二つのチームに分かれてリュックをリレーすると、どっちが勝つかわからなくて面白いんだよ」
とアルミンは言う。
多分、この二人と私は少し感性が違うのだと思った。
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今日の対人格闘では珍しくアルミンと組んだ。
アルミンはエレンみたいにヘソを曲げない。
でも、私から木剣をなかなか奪えないでいるときに、一瞬だけ見たことのない表情になった。
ような気がする。
苛立ちとも焦りともつかない表情。
なぜだか少し胸が痛んだ。
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対人格闘の訓練を終えて、体に付いた砂を払いあっていると、あることに気付いた。
一部の女子は体に砂があまりついていない。
エレンを見てみる。
思い切り砂まみれになっている。
アルミンも。
アニは、そんなに砂まみれではない。
組み合う場所が関係しているのだろうか。
私のすぐそばでクリスタとサシャも砂を払っている。
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「お前、また馬鹿みたいに真面目に取り組んだのかよ。砂まみれになって」
ユミルがクリスタを見つけて話しかけている。
「ユミルだって私ほどじゃないけど砂が付いてるよ」
クリスタはトゲのある言い方をされてもニコニコ返事が出来て、かわいいと思う。
クリスタの言葉を無視してまたユミルが口を開く。
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「お前もあの辺の女子に混じってゆるく対人格闘してれば砂も付かないのによ」
(ああ、そういうことか)
つまり、砂まみれになっていない者は訓練にきちんと取り組んでいないということ。
対人格闘はあまり点数にならないってアルミンが言っていたっけ。
でも、たとえ点数にならなくても私は手を抜くわけにはいかない。
強くならなければエレンを守れない。
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休日、ハンナがおめかしして外出した。
フランツと街に行くらしい。
思い返してみれば、ハンナが着飾って外出するのを以前も見たことがある。
あの頃は街に出るからおめかししているんだろうとしか思わなかった。
ハンナはフランツのために綺麗になろうとしている。
それはとても幸せなこと。
ハンナとフランツは本当に結婚するかもしれない。
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朝食を終えてから、訓練所の端の草原に座ってずっとこんなふうにハンナとフランツのことをを考えている。
休日だというのに何もすることがない。
エレンとアルミンは他の男子たちと何だかよくわからない遊びをして騒いでいる。
何がそんなに面白いのか。
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この草原のすみには玉箒が生えている。
毎年咲く。
控え目な見た目で私は結構好き。
アザミに似ている。
でもトゲはない。
赤みを帯びた花が小さな松明のように見える。
私も、ハンナみたいにオシャレをすれば、かわいくなれるだろうか。
玉箒を一輪摘んで腕輪にしてみた。
私には、この程度のオシャレしかできない。
オシャレに気を取られる暇があるならその時間を訓練に充てて強くなりたい。
たった一人の家族を、失いたくないから。
-
ここまで
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いじらしいミカサ可愛い悲しいよ
思春期の男子醜くにくらしいよ
いま一番続きが楽しみな作品です
乙でした
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乙!
読み手にはエレンの態度が対抗心から来るものだと分かっているが、
なんでもこなせるミカサにはそこら辺が分からんからなあ…
悲しいな
続きも期待してるよ
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すごくいい 超期待
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いいですね 早く続きがみたい
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夕食前のわずかな休み時間、部屋には私とサシャしかいない。
他の訓練兵はよその部屋に遊びに行ってしまったみたい。
二人で窓から顔を出し指笛をならして遊んでいるとクリスタが書庫から分厚い本を二冊借りて部屋に戻ってきた。
両方とも馬の飼育に関する本だ。
自主学習でもするのだろうか。
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「クリスタ、お勉強ですか?」
とサシャが言う。
「ううん、違うの」
クリスタは部屋の扉の方をちらりと見遣り、こちらに近付いて来た。
そして、声を落として言った。
「ユミルにね、手紙を出すの。二人とも内緒だよ」
ニッコリて笑ってクリスタは人差し指を唇にあてた。
私は、借りてきた本と手紙がどう関係するのかよくわからなかった。
おそらく、サシャもよくわかっていない。
でも笑顔で
「へえ、良いですね」
と言っていた。
二人とも、かわいくてうらやましい。
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今、消灯後のベッドの中でまた遺書を読み返している。
エレンに宛てて書いた遺書は3枚あるけれど、やはり二番目に書いたものが一番よく書けていると思う。
近いうちにアルミンに宛てた一通とエレンに宛てた二番目の遺書以外は処分しようと思う。
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「お腹すきました」
「ええ」
もうこの会話を10回は繰り返した。
今日は兵站行進で一日中走っていた。
天気は運悪く雨。
雨に濡れるし泥ははねるしで兵站行進が終わったときにはみんなぐちょぐちょになっていた。
だから夕食前に入浴を命じられ今は体を洗っている。
-
「ねえミカサ」
「何?サシャ」
「お、な、か、すきましたぁ…」
「…ええ」
正直私はあまりお腹がすいていない。
昨日夜更かししたせいで、ごはんを食べるよりも眠りたい。
雨が降るといつも以上に体力を消耗する。
つかれた。
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食堂に行くと、エレンとアルミンが食べずに席だけとって私を待っていた。
訓練兵になってからも、たいていは開拓地にいた頃と同じように三人一緒に食事をする。
毎日エレンとアルミンの傍で食事を出来る私は恵まれている。
私は、食事の時間が結構好き。
でも今日は本当に食欲がない。
パンを口に入れたは良いけれど噛むのが億劫でたまらない。
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「ミカサ、どうかしたの?」
パンを口に入れたまま噛みもせず座っていたらアルミンに声をかけられた。
「体調が悪いとか…?」
「ううん。ただ少し眠たくて」
パンを飲み込んで返事をすると今度はエレンが口を開いた。
「また夜更かしかよ」
「うん」
「夜遅くまで何してんだ、お前」
-
ギクッとした。
遺書を読み返しているなんて、言えない。
「別に…何も」
「何もすることが無いんなら早く寝ろよ」
「うん」
少しぶっきらぼうな口調。
でも私を心配してくれているのがわかる。
アルミンも。
私は良い家族と良い友人を持った。
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さっき、クリスタが草原で花を摘んでいるのを見た。
長い金髪が風になびいてまぶしい。
本の挿絵のような光景だった。
金髪に碧眼。
うらやましい。
私も光を集めて色を変える宝石みたいな瞳が欲しかった。
同じ黒い瞳ならば、サシャやミーナのような縦に大きく開く目が良かった。
私の目は他と比べてキレは長いけれど縦に開かない。
相対的に、目が細い。
サシャやミーナみたいなつぶらな瞳を持っていれば私も少しはかわいらしく見えただろうか。
最近、目が細いユミルに仲間意識を抱いている。
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今日、後輩に声をかけられた。
エレンに手紙を書いても良いか聞かれた。
別に構わないと言った。
普通の手紙ではなく恋文だが良いのかと聞かれた。
別に構わないと言った。
成績上位者は、どうしても目立つ。
エレンの存在は後輩にも知れ渡っているのだろう。
あの子は恋文を書く。
私は遺書を見直す。
私宛てでもないのに私に許可を取らないでほしい。
私に手紙を書くなという権利は、ない。
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今、部屋でクリスタがユミルに手紙を手渡しした。
「ねえユミル、開けて見てみてよ」
渡してすぐにクリスタが言っている。
何だか不思議な光景。
「何だよ手紙なんか書いて。毎日会ってるんだから口で言え」
と言いながらユミルは封を開いている。
なんだかんだ言ってクリスタとユミルは仲が良い。
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「何だ、これ」
ユミルが言った。
(手紙じゃないの?)
少し気になってクリスタとユミルの方を見てみる。
「ふふ。押し花作って便箋に貼ってみたの。あ、これは色紙だよ。花束みたいでしょう?」
(ああ、あの分厚い本で押し花を作ってたのか)
先日、クリスタが花を摘んでいるのを見かけたけれど、それも押し花を作るためだったのだろう。
-
「わあ、綺麗です」
サシャが覗き込んで、「見るな芋女」とユミルが文句を言っている。
「ちなみにこれは縷紅草でこっちは吾亦紅だよ。花言葉、知ってる?」
「いや」
「縷紅草は世話好きとか私は忙しいって意味があるんだよ。吾亦紅は感謝」
クリスタが楽しそうに話している。
「いつも私のこと気にしてくれてありがとうって伝えたかったの」
-
ユミルが応えるより先にサシャが口を開く。
「わあ、クリスタ、花で気持ちを伝えるなんてお洒落ですね」
「うるさい、ちょっと黙ってろ芋女」
悪態をつきながらもユミルの顔は嬉しそうだった。
クリスタはまれにこちらが驚くくらい洒落たことをする。
以前、鈎編みが女子の間で流行ったときも、クリスタのレースは誰よりもセンスが良かった。
きっと素敵なお母さんに育てられたのだろう。
-
ここまで
次は明日になると思います
話があまり進まなくて申し訳ない
読んでくれてる方々ありがとうございます
-
乙です!
内容が進まないなんて全くかんじなかった
すべてが綺麗に繋がって読み良い流れをつくってるから
それにしてもミカサ可愛いなぁ
続き楽しみにしてます
-
乙、
ユミルに仲間意識、に笑った。
-
いい。すごくいい。がんばって書いてほしい。
-
乙
丁寧ですごくいい
-
本当に進まないね(笑)
やる気有るのかねえ?
-
某スレでどんな訓練があるかとか聞いてた人?
-
良い雰囲気だ、乙
-
かわいいお話
なんだかニヤける
-
エレンはもう、あの後輩から手紙を受け取っただろうか。
後輩と話したあの日から何日経ったっけ。
彼女の目も宝石みたいに綺麗だった。
緑に見えたかと思うと光の加減で青になる瞳。
きっと、エレンはもう手紙を受け取っていると思う。
どんな風に渡されたのだろう。
どんな字で書かれているのだろう。
何と書いてあったのだろう。
-
今日は明かりを点けてないし遺書を読み返してもいないのに、眠れない。
すっかり目が暗闇に慣れてしまった。
エレンは手紙に返事をしただろうか。
何と、返事をしただろうか。
もし、エレンとあの子が恋人同士になっても、私は気付かないかもしれない。
ハンナとフランツのことも気付かなかったから。
エレンに恋人が出来るなんて嫌だと思った。
たった一人の家族が私から離れていくのは辛すぎる。
私には、エレンしかいないのに。
涙で、耳が冷えてしまった。
-
朝、起きたら目が腫れていた。
同室の女子にどうしたのか聞かれた。
起きたら顔がむくんでいたと答えた。
嘘ではない。
朝食を終えたので今から訓練に向かう。
「おい」
エレンが私の袖を掴んだ。
立ち止まってエレンを見る
「何?急がないと遅刻s」
「ミカサ、お前なんか今日、目腫れてないか?」
「………気のせい」
-
エレンは「そうか」と言って手を離した。
先を行っていたアルミンが振り返り私たちを呼んでいる。
急がなければ本当に遅刻する。
私も、エレンも、走った。
エレンは私が髪を切っても気付かない。
それなのに私の目がいつもより細くなったことに気付くのはやめてほしい。
-
本日最後の訓練である、器械体操を終えて、部屋に戻るとき、後輩たちも訓練を終えて戻ってきた。
後輩の集団の中に、砂にまみれた訓練兵の姿が確認できる。
彼等は対人格闘が今日最後の訓練だったのだろう。
恋文の後輩を探す。
すぐに見つかった。
彼女がもしかしたらエレンの恋人になるかもしれない、私が知らないだけでもうすでになっているかもしれない。
そう思うと寂しくて苦しい。
-
遠目にしか見ることが出来ないけれど、彼女は砂にまみれていないようだ。
砂のついていない服に身を包む彼女の姿を見て「やはりそうか」と思った。
恋をすれば綺麗な姿でありたいと思うのは当然のこと。
その気持ちは、わかる。
でも、綺麗になろうとすればするほど、訓練から遠ざかって弱くなる。
私は、綺麗になれなくても良い。
たくさん守り抜けるよう強くなりたい。
-
最近、女子の間で花言葉が流行りはじめた。
おそらくこの間の、クリスタの手紙がきっかけになったのだと思う。
誰かが、花言葉の一覧表を作成したらしく女子の間で出回っている。
その写しが私達の部屋にも回ってきた。
今、みんなで一覧表をノートに写しとっている。
結構、知らない名前が多い。
いつか絵のうまい訓練兵が絵入りで一覧表を作ってくれないだろうか。
シガンシナにいた頃、三人でよく蜜を吸っていた花の名前をみて懐かしくなった。
スイカズラの花言葉に「友愛」、サルビアの花言葉に「家族愛」があって、嬉しかった。
-
最近、座学の講義中、大急ぎでノートをとって時間を作っては教科書の文字の中に「コイビト」を探していた。
でも、この前の講義の時間に最後のページまでめくり終わってしまった。
つまらないと思いながら、板書をノートに書き写していたら、ひらめいた。
ノートに書き取るとき、うまく改行して自分で縦読みの文字列を作れば良い。
手始めに「エレン」と並べてみた。
かなり妙な改行をしたけれど意外にも簡単に出来た。
続きはどうしよう。
-
“エレンげんきですか”とか?
それとも“エレンけさはきのうよりさむかったですね”がいいだろうか。
“エレンさいきんたいちょうはどうですか”
“エレンさいきんかわりないですか”
“エレンてがみをもらいましたか”
“エレンすきなひとはいますか”
“エレンわたしのこt…
-
(!?)
続きを考えていると隣に座っていたエレンが私の足を蹴ってきた。
横を見ると声は出さずに口だけ動かして「何だよ」と伝えてきた。
何のことかよくわからずエレンを見ていたら、私のノートを指差した。
エ、レ、ン、と縦に文字をなぞられた。
びっくりした。
何でもないと首を横にふる。
もう一度私の足を、さっきよりも強く蹴ってから、エレンは前を向いた。
私も前を向いた。
“エレンわたしのことすきですか”
きっと、好きに、決まっている。
たった一人の、家族なのだから。
-
また、エレンとキスをする夢を見た。
前よりもひどい嫌悪感。
抱きしめあって、顔を互いに傾けるキスは家族のキスと言えるのか。
最近の私は、ハンナのキスやら後輩の恋文やら、他人の恋路を気にしすぎ。
エレンは家族。
心からそう思っている。
本当に。
でも最近は、それだけでは足りないようにも感じている。
私たちは正式に血のつながった家族ではない。
「家族」という言葉が、この複雑な関係を表すものとして相応しいのか、最近わからなくなった。
-
今日、対人格闘の時間にアニと喧嘩になった。
必要以上にエレンを締め上げるアニを見て頭に血がのぼってしまった。
あのときエレンは明らかに手で待ったをかける動作をしていたのに、それを無視してアニはエレンを転がしていた。
その後エレンの顔が真っ赤になっても絞め技をかけ続けていた。
それでついカッとなった。
木銃も持たずに取っ組み合ってしまった。
訓練中だというのに。
普段からエレンに衝動的にならないように注意していたのに。
私自身が衝動的になるなんて。
あれは喧嘩以外の何物でもない。
アニに蹴られた足が痛い。
以前エレンに蹴られたときよりも痛い。
-
入浴時間にアニに蹴られたところを見ると打撲になっていた。
アニも負傷してないだろうか。
私がアニの攻撃をかわしたときに、バランスを崩していたけれど、ひねったりしてないだろうか。
私が浴場に行ったときアニは洗い終わって部屋に帰るところだった。
私も部屋に戻ろう。
-
「ミカサ?」
声がした方を振り向くと、エレンが立っていた。
「何してんだよ。一人か?」
と言いながら私の方に走ってきた。
「今、お風呂の帰り」
「へえ。なんか遅くないか」
なんとなく一緒に歩き始める。
エレンは何をしていたのだろう。
あっち側は倉庫しかないはず。
何を、していたのだろう。
-
「お前、足は大丈夫かよ」
「え?」
「足。蹴られただろ。アニに」
「ああ。打撲になってた」
なんだか、ばつが悪い。
いつもエレンに注意ばかりしているのに、自分が衝動的になってしまったから。
-
「大丈夫かよ。医務室行けよ」
「この間エレンがくれた湿布がまだある。だから…」
「そっか。なら良いな」
エレンの態度は、いたって普通。
私がアニと喧嘩したことを攻める様子もなかった。
それはそれで気持ちがモヤモヤする。
特に会話もなく歩いていると、ふと思った。
(手紙は、どうなった…?)
「エレン」
「え?」
気がつくとエレンの名前を呼んでいた。
「最近、手紙を貰わなかった……?」
-
後悔している。
聞かなければ良かったと心から思っている。
手紙を貰ったかどうかなんて聞くんじゃなかった。
ついさっき、エレンと口論になった。
今、私はトイレにいる。
―――――――――――――
―――――――――――
―――――――――
―――――――
「手紙、貰ったでしょう?」
「は?…何だよ急に」
「貰ったでしょう?」
「だからっ!何だよ急に。何でそんなこと言い出すんだよ」
(やっぱり貰ったんだ)
貰ってなければ否定するはず。
エレンは嘘が苦手。
語気を強めるのはごまかそうとしている証拠。
-
「青緑の目の後輩に言われた。エレンに手紙を書くって」
エレンの大きな目がさらに大きく見開かれた。
「は?何だよそれ。何でお前に」
「知らない。どうして私に言ってきたかなんてわからない」
「何だよ。それ」
「返事は、もうした?何て返した?」
エレンの袖を掴んだ。
-
「…何でお前に言わなきゃなんねえんだよ」
「OKした?エレン、付き合うの?あの子と」
「は?お前、なに、何なんだよ」
「付き合う?」
「うるせえなっ…!!!」
手を振り払われた。
明らかに怒っている。
-
「あ、エレン、あの…」
「何なんだよ。何で、お前、お前は…っ」
「あ、ご、ごめn」
「お前、本当に何なんだよ。オレは、オレはお前の弟じゃねえんだよ!!ほっとけよ。お前、オレの姉かよ!?母親かよ!?」
「ち、ちがu」
エレンが私に背を向けた。
そのまま走っていく。
気がつくと女子寮の前まで来ていた。
「待って…!エレン」
エレンは、振り向いてくれなかった。
涙が止まらないから、トイレから出られない。
-
とりあえずここまで
次から投下のペースが落ちるかも
スレが落ちる前には投下すると思いますが、もし落ちそうになったら自分であげに来ます
>>115
心当たりがないので違うと思います
-
他のエレミカスレの影響を感じるが、いい。とてもいい。
-
乙
とりあえずちゃんと完結してくれるのならそれでいいよ
続きは気長に待てるから
-
乙乙
なんて気になるところで投下ペース落ちるんだ…
-
乙乙 好みのSSですわ
-
ちくしょおおお 続きが気になるぅぅぅ!
-
今朝からずっとエレンの顔を見ることが出来ない。
エレンは怒っている。
私の事を無視している。
エレンと私は、一生このままなのだろうか。
アルミンが「また喧嘩したの?」とあきれ顔で言う。
喧嘩なら良かった。
これはいつもの喧嘩じゃない。
いつもみたいにエレンが意地をはってるわけじゃない。
私に非がある。
きっとエレンは一生怒ってる。
周りに人がいるのに泣きそうになる。
-
今日は午後から座学。
服を着替えて講義室に来たけれどエレンもアルミンもまだ来ていない。
前の方の席に座って待っている。
以前書いた縦書きの「エレン」を見ながら待っている。
「ミカサ」
「!?」
すぐ横から声がして驚いてそちらに顔を向ける。
-
「今日、隣良い?」
「…うん」
アルミンだった。
アルミンの隣にエレンの姿が見える。
エレンは頬杖をついて向こう側を見ている。
(もう、駄目なんだ)
エレンは私のことが嫌いになった。
一生嫌いになった。
泣きたい。
縦書きの「エレン」の横に文字を書き足した。
“エレンごめんなさい”
-
今日は兵站行進で一日中走っていた。
石に躓いて転んだ。
口を切った。
私は使い物にならない。
辛い。
夕食の時間をずらして一人で食べた。
腫れた唇をエレンに見られたくなかった。
エレンは私を見てないのに。
馬鹿みたい。
エレンのことを考えると怖いものが増えていく。
考えることをやめてしまいたい。
そうすれば、きっと強くなれる。
-
夜、遺書を読み返している。
遺書ではない手紙を、本当は私も書きたい。
エレンに宛てて、私も書きたい。
―「お前本当に何なんだよ」
わからない。
―「ほっとけよ」
放っておけない。
―「お前、オレの姉かよ!?母親かよ!?」
ちがう、私は、家族。
でも、それでも私は。
(……エレンの恋人になりたかった)
エレンが私の言葉にどれだけ反発しても、訓練中に舌打ちされても、ヘソを曲げられても、恋人に、なりたかった。
-
私を見てほしい。
―エレンは他の子を見てる。
私に笑いかけてほしい。
―エレンは苛立った顔ばかり見せる。
綺麗な恋人になりたい。
―そんなことでは強くなれない。
シガンシナに引き取られたばかりの頃は優しかった。
開拓地でも、まだうまくやれていた。
訓練兵になったばかりの頃も私と離れずにすんで安心した顔を見せていた。
でもいつの間にか対人格闘ではあからさまに避けられるようになった。
今は、とうとう私のことが嫌いになった
-
エレンは変わった。
きっと私と離れたがっている。
でも私はあなたがいなければ何もできない。
エレン、私があなたの家族でごめんなさい。
あなたに嫌われているのに、家族だからとあなたの傍に居座っている。
あなたを守らなければいけないのに、くだらない恋にうつつをぬかしている。
二番目に書いた遺書のインクが涙で滲んだ。
ところどころ読めなくなった。
一番よく書けていたのに。
遺書を、書き直さなければならない。
同室の子達を起こさないようにそっと便箋とペンを取り出した。
涙が止まらない。
-
―――――――――――――――――――
エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
5年前、私を助けてくれてありがとう。
あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。
あなたの家族になれて幸せでした。
あなたの家族であることは本当に私の心の支えでした。
でも、家族でも、本当は私はあなたの恋人になりたかった。
あなたを姉や母親のような目で見ることなんてできなかったし、生きているうちにあなたのためにお洒落をしたかったです。
今までもこれからもあなたのことを思っています。
あたたかいマフラーをありがとう。
幸せに生きてください。
いつまでもあなたのことが大好きです。
849年・秋 ミカサより
―――――――――――――――――――
-
朝起きて、遺書を見直して、気分が悪くなった。
こんなの遺書じゃない。
死んだ相手に「恋人になりたい」と伝えられて気分が良いはずがない。
後味が悪いだけ。
自分の欲望のままに遺書を書いてしまった私に、エレンの恋人になる資格は、ない。
近いうちに、書き直す。
次が最後の便箋。
失敗しないようにしなければならない。
残りの遺書は、掃除当番のときに、焼却炉に捨てに行こうと思う。
-
エレンは、今日も私と話してくれなかった。
もっとも、私も話しかけてはいないのだけれど。
全て私が悪かった。
私宛てでもない手紙なのに詮索が過ぎた。
プライベートな問題に、首をつっこむのは良くなかった。
アルミンはこの件について何も言わない。
でもいつも通り一緒にいてくれる。
ありがとう、と思ってる。
でも、伝えられない。
きっとアルミンと話したら止まらなくなるだろうから。
アルミンに逃げる前にエレンに謝らなければならない。
せめてエレンの良い家族でありたい。
-
―――――――――――――――――――
エレンへ
いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。
5年前、私を助けてくれてありがとう。
あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。
あなたの家族になれて幸せでした。
そばにいてくれてありがとう。
あなたに出会えて良かったです。
良い人生でした。
素敵な人と結婚して、家族を大切にして、長生きして、幸せになってください。
今までもこれからもあなたのことを思っています。
あたたかいマフラーをありがとう。
いつまでもあなたは大切な私の家族です。
849年・秋 ミカサより
―――――――――――――――――――
-
遺書を書き直した。
これが、最後の便箋。
エレンが幸せなら、それでいい。
私は家族として出来る限りのことをことをしたい。
明日、エレンに謝ろうと思う。
-
とりあえずここまで
-
ところどころのフレーズが既存の作品と同じだけど本当に別の人ですか?
-
ミカサの弱さやいじらしさが伝わってくる
切ない
続きが楽しみ
-
似てても全然良い
面白いし
ミカサ主人公のSSは花言葉がよく出てくるね
-
面白い
引き込まれる文章だ。続きを期待
-
読みやすいし今一番更新楽しみにしている作品です。
>157
別に同一人物かどうかなんて作品には関係ないし
一度違うと言われたんだから何度もきく必要はないと思うよ
-
似てるって言われてるのは、多分あれだろうな
花言葉って言われたり、多分他の人も同じSSを想像してると思う
同じフレーズが出てくる上に展開もかぶるから言われてるんだろうけど
あっちの作者が文句言ってないなら別にいい
影響受けただけでもパクりでも完結まで読めれば関係ないし
-
わざわざ出張してくるなよ
-
いちいち詮索してる奴は何なんだ
面白けりゃそれでいいじゃん
-
>>1ですが、気になるフレーズがあれば、他のssの作品名を出さずに指摘していただけたら出来るだけ直します
あと、花言葉は今後使おうと思って出しましたが不快に思われる意見が多ければやめます
-
気にしなくてもいいと思う
好きなようにやって欲しい
-
>>1の好きなようにやってくれ
-
自分がいいと思うようにやってくれ
少なくとも俺は今まであなたのssに不快な思いはしたことはない
-
頑張って!応援してます。
-
花言葉なんて二次創作では昔から使われてるんだから気にせず書きたいように書いてくださいね!
-
凄く引き込まれました
続き楽しみにしてます
-
花言葉なんて定番だし、原作が同じなんだからある程度雰囲気は近くなると思う
>>1の文章に引き込まれます
書きたいように書いてください
-
これは泣いてしまうわ
続き楽しみにしてます
-
乙
続き楽しみにしてる
-
「エレン」
訓練が終わって各々が寮に戻っていく。
寮までの道の途中でエレンを呼び止めた。
エレンが振り向いて近付いてきた。
「何だよ」
まだ怒ってる。
-
「この前………」
「またそれかよ。ほっとけよ」
やっぱり怒ってる。
泣きたくなる。
「ちがう、そうじゃなくて。謝りたい。ごめんなさい。手紙のこと、詮索して。」
「…」
「できれば、許してほしい」
「…別に、怒ってねえよ」
そう言うとエレンは走って行ってしまった。
多分、許してくれたのだと思った。
せっかく許してくれたのだから、私は一生懸命エレンの良い家族にならなければならない。
私のことを好きじゃなくていい。
せめてこれ以上嫌われないように努めたい。
-
エレンに謝って以来、普段通りに会話ができるようになった。
エレンは優しい。
こんなにも自分勝手な私を許してくれた。
もう二度と手紙の詮索はしない。
でも、手紙に何と返事をしたのか毎日気になっている。
-
休日なので、朝食後訓練所の崖の付近からホトトギスを摘んできた。
今から外出してルドベキアを摘みに行く。
市場の裏手に生えていると誰かが言っていた。
裏手にはあまり行かないけれど、多分迷いはしないだろう。
さっさと摘んで戻ろうと思う。
摘んだ花は押し花にして栞を作って遺書に同封する。
きっとエレンは花言葉なんて知らないだろう。
ただの私の自己満足。
-
花を摘んで戻ってきた。
市場の裏手に行く前に広場のすみでで見つけた
花びらがアルミンの髪の色を思わせる。
金髪は華やかで羨ましい。
私を構成する色も彩り豊かだと良かったのに。
せめて私服だけはと思って、訓練兵の制服を脱いだときは赤やピンク色の服を着ているけれど焼石に水。
そんなことを考えながら歩いているといきなり肩を掴まれた。
「お前、今日どこにいたんだよ。探してたんだぞ」
エレンだった。
-
「え…」
「まあ良いや。ちょっと来いよ」
周囲を一瞬だけ見回すと、エレンは私の手首を掴んで歩き始めた。
手を握られると、ドキドキする。
私が勝手にドキドキしてるだけ。
わかってる。
でも、ドキドキする。
-
「ちょっと待ってろよ」
そう言ってエレンは手を離す。
着いたのは男子寮の裏だった。
エレンが窓から部屋に入っている。
(そんなことをしてはいけない。行儀が悪い)
思っただけで言うことが出来なかった。
エレンに嫌われたくないばっかりに。
家族の役割を果たせていない私は本当に使えない。
-
エレンが窓から出て来た。
言わなければ。
窓から出入りしてはいけないと注意をしなければ…。
「ほら」
私が口を開けた瞬間、エレンが口に何かをほうり込んだ。
(…甘い)
「飴。貰ったからお前にやるよ」
私は思ったよりもエレンに嫌われていないのかもしれない、と思った。
-
今、部屋に戻ってきて押し花を作っている。
飴をくれたあと、エレンが女子寮まで送ってくれた。
私達はお互いにたった一人の家族。
エレンは家族として精一杯私を大事にしてくれている。
歩きながらエレンが「オレは誰とも付き合ってないからな」と言っていた。
それを聞いて一瞬でも嬉しいと思った私は性格が悪い。
エレンに相応しい家族になりたい。
-
本に一週間挟んだままにしていた押し花が出来上がった。
ルドベキアはかなりうまく色が残った。
押し花じゃないみたい。
一方、ホトトギスは色がかなり抜けてしまった。
もともと色が薄かったというのもあるけれど。
ルドベキアは白の厚紙に貼って栞にした。
ホトトギスは白の厚紙では、あまりにも素っ気ないので厚紙を薄青く着色して栞にした。
割とうまく出来たと思う。
ホトトギスは押し花にすると、鳥のホトトギスの腹の模様にいっそう似て見えた。
-
明日、昼食後の休み時間、私は講義棟の掃除当番。
ゴミ捨てに行くときに、いらない遺書も一緒に焼却炉の中に投げ捨てて来ようと思う。
今、消灯後だけれど一応便箋を封筒に詰めて封をしている。
封筒だけ余ってもどうせ使わないだろうから。
どれにも全部宛名書きをした。
決定版の遺書には栞を同封した。
このうち4通は明日には灰と煙になっているだろう。
でも、エレンに手紙を出す気分を出来るだけたくさん味わいたくて宛名を書いた。
恋文なんて一生出さないと思う。
-
昼食を終えて、捨てる遺書を部屋から急いで持ってきた。
下着に挟んでシャツの中に隠し持っている。
本当は出来るだけ遺書を持ち歩きたくなかったけれど、焼却炉に捨てるごみを持って、わざわざ部屋に戻るのは流石に不自然。
遺書を隠し持ちつつ掃除するしかないと思った。
気になる。
少し雑になってしまったけれど掃除を終えて今から焼却炉に行く。
早く捨てたい。
早く。
-
焼却炉に着いた。
周りは誰もいない。
さっき、掃除道具を確認してきたら全部揃っていた。
つまりゴミ捨ては私が最後。
私に着火の義務と権利がある。
計画通り、焼却炉に火を入れた。
火が安定するのを待つ。
(早く燃えて。早く)
火がある程度燃え広がるまでの時間。
異常に長く感じる。
-
(もう、手紙を入れても良いだろうか)
先程までの小さな火が、今は大分大きくなっていた。
もう、良いだろう、と思う。
服の中から遺書の束を取り出して、一気に放り込んだ。
次の瞬間、あることに気づく。
(3通しか、ない)
顔から血の気が引くのが自分でわかった。
焦って木の棒を持ってきて掻き出そうとする。
今、燃えているのはどの遺書なのか。
でも、うまくいかない。
棒が短すぎる。
熱い。
予鈴の音にいっそう心臓が跳ね上がる。
行かなければ、遅刻をする。
焼却炉の蓋を閉め、自分が来た道を走って辿った。
-
結局、遺書は見つからなかった。
どこで落としたのだろう。
そのことばかり考えて、午後は訓練に集中出来なかった。
夕食も何を食べたか覚えていない。
落とした遺書は、どの遺書だったのだろう。
これが一番気掛かりだった。
-
消灯後皆が寝静まった部屋の中、音を立てないように靴を履く。
手紙を何が何でも探し出して燃やさなければならない。
今夜は月が明るい。
遺書を探しやすい、ということよりも、他の人に先に拾われないかが心配でならない。
出来る限り細く扉を開けて部屋を出た。
-
今日、私は遺書を持ち出した後、中庭を通って講義棟に向かった。
そして掃除道具をしまって焼却炉に行った。
今からこの道筋をたどる。
-
中庭に出る。
風に草がなびいて夜の月明かり独特の波が足元に出来ている。
風で飛ばされたかもしれない、誰かに蹴飛ばされたかもしれない。
だから中庭をまんべんなく歩き回った。
でも、無い。
さっきから背後に誰かいやしないかと何度も後ろを振り向いている。
誰も私を見つけないでほしい。
月明かりもいらないから雲に隠れてほしい。
-
講義棟に入る。
夜は、足音が響く。
講義棟は、天井が高くて特に響く。
音がうるさいので寒いけれど、靴を脱いだ。
まずは、廊下を探す。
入ってすぐの廊下は月明かりの影になっていて、暗い。
でも、明るいより暗い方が安心。
突き当たって廊下を曲がる。
次の瞬間、心臓が、凍った。
エレンがいた。
-
こっちを見ている。
どうする?逃げる?近付く?
逃げる…?
咄嗟のことに動けないでいる私のもとに、エレンが近づいて来た。
そして徐に右手をあげて言った。
「これ、書いたのお前…か?」
手には白い封筒が、あった。
「どうして…エレン、それ、持ってるの…?」
「他の奴が拾って届けてくれたんだよ。ここで拾ったって。オレ宛てだったから」
封は、開けられている。
どの遺書なのか。
-
「で?これ書いたのお前なのかよ」
「ちょっと、見せて」
「ああ」
手紙を、渡された瞬間、走った。
どの遺書なのかエレンの目の前で確認できるほどの神経は、私には無かった。
とにかく走って逃げた。
月明かりを遮ってくれる林に逃げた。
前も見ず走って、木にぶつかって、こけた。
もう、走れない。
息が、苦しすぎる。
震える手で、封筒から中身を出す。
運悪く、出てきたのは4番目の遺書だった。
-
ここまで
他のss作者さんにご迷惑をかけてしまったようなので、早急に仕上げて次で終わらせます
自分自身は話の内容被ってないと思いますので最初に決めてた話を書きますが多少雑になるかも
-
乙
そんな気にするほどのもんじゃないと思うが
-
乙!
今まで楽しませてもらってたから次で終わりとは寂しい
個人的には話に花言葉を使うのははよくある手法程度、
言い回しやら何やらは崩壊ではないミカサのキャラを考えるとしたら
大体こんな感じになると思うんだがね
-
乙乙
ミカサかわいいなぁ〜
ミカサ視点のエレミカが大体こんな感じの雰囲気になるのは仕方ないと思うよ、
ミカサは残念な言語力キャラだし。
あまり気にせず書きたいように書いてください。
-
ミカサ健気だなぁ
本当に気にしなくてもいいと思う
好きなように書いて欲しい
-
こういう雰囲気のSS書いてる方は それくらいで迷惑だなんて言わないとおもいますよ
その為に仕上がりが雑になるようなら このSSがあまりに勿体無い
>>1さんの思うように進めて頂きたい
-
丁寧に仕上げていただきたい
-
ミカサに限らず女子訓練兵が出てくる作品には花言葉はよく使われるよな
どうしても娯楽や遊具なんてすくないし、女子訓練兵に花言葉は進撃の世界観にも合う
なので気にしないで思う通りに書いてほしい
続き楽しみにしてる
-
楽しみにしてます!早く終わらせるなんて残念ですし、またあなた様のエレミカが読みたいです
お願いします
-
一部の人が騒いでるだけでここにいる人達のほとんどの方が続きを楽しみにしてると思います。私もその一人です。出来たら作者さんの予定どうりに仕上げて頂きたいと思います。続き凄く楽しみにしてます。
-
>>196
雑になるとか皮肉めいた事言うならもう書かんでいいよ。
既存SS全部チャックして注意してない限り被りなんか仕方ない事だろう
これから書く奴は被りチャックしてから書かにゃいかんの?アホかい。
わざわざ御苦労に指摘する暇人もアレだが反応するのもどうかと思う。
-
チャック…
-
パクってないんだったら堂々と書きたいように書いてほしい
とにかく雑になることだけはやめてほしい
面白いしずっと読んでるから
-
とりあえずここで終わるのは生殺しすぎるから完結だけはしてくり〜
-
うん、お前らが1の作品に期待してるのはわかった。
でも、そろそろうざいから黙ろうか
さっきから自演かってぐらい同じことしか書いてないよね?同じことしか書けないなら外野はもう黙ってろ
黙って1を待て
-
まあ黙って待つのが一番だな
-
そうだそうだ〜
-
続きがとても楽しみです。
ゆっくりでもいいので待ってます。
-
とても面白いし、楽しみにしてます。悪く言う人は何にでも悪く言うもんだし、気にせず書いてほしい。
-
表現方法やら話の構成やらが人それぞれ違うんだから、題材が多少被ったところで別物としてしっかり読める
読む読まないは個人で選択出来るんだから、気にせず好きに書けばいい
久しぶりに好みのSSで楽しみにしてる
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このスレも結局エタってしまうのか
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せっかく良SSなのに…
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好きなスレだから読み返してまたキュンキュンした
雰囲気が良い
>>1よ、気軽にいつでも帰ってきてね!
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1、待ってるぞ
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何でこのスレばっかあんな執拗に叩かれたんだ
>>1頼む戻ってきてくれ…
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えっ
叩かれるなんて言うほど叩かれてなくね
むしろ擁護レスで溢れかえってるくらいなのに
とにかくいつまでも待つんで完結さしてください…
オナシャス
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悪い叩くじゃなかったな指摘や詮索の事だ
すまん黙るわ
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待ってます
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結局エレンは消灯後の講義棟で一人で何をしてたんだろうか
まさかミカサを待ってた訳でもないだろうし
結末も含めて気になってるんだが、もう続きは読めないんだろうか…
ここの所いいと思った作品程エタってるんで悲しい
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>>222
指摘するにしても詮索の事にしても、もっと言い方や書き方があるだろうが
なんでそんな上から目線なん?黙るんならもっと早く黙れよ
>>1
気にせずに気持ちが落ち着いてからでいいから戻って来てくれ!!
待ってるぞ!
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なんで関係ない>>222を叩いてんだよ
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>>225
落ち着いて読み直してみ
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これらが原因だな
157 以下、名無しが深夜にお送りします sage 2013/11/05(火) 13:09:55 ID:zIRjUuSc
ところどころのフレーズが既存の作品と同じだけど本当に別の人ですか?
162 以下、名無しが深夜にお送りします sage 2013/11/05(火) 17:00:36 ID:vOCZ4t6A
似てるって言われてるのは、多分あれだろうな
花言葉って言われたり、多分他の人も同じSSを想像してると思う
同じフレーズが出てくる上に展開もかぶるから言われてるんだろうけど
あっちの作者が文句言ってないなら別にいい
影響受けただけでもパクりでも完結まで読めれば関係ないし
206 以下、名無しが深夜にお送りします sage 2013/11/08(金) 19:05:53 ID:prN2mD7w
>>196
雑になるとか皮肉めいた事言うならもう書かんでいいよ。
既存SS全部チャックして注意してない限り被りなんか仕方ない事だろう
これから書く奴は被りチャックしてから書かにゃいかんの?アホかい。
わざわざ御苦労に指摘する暇人もアレだが反応するのもどうかと思う。
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>>228
これだけで叩きってのは流石に…
詮索とかもここだけで終わってる上にどうでもいいから続き楽しみってレスの方が多かったやん
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支援
読者同士の雑談過多とか展開の予想とかされちゃうと
確かに書きにくいだろうなと思う
すごく楽しみにしているので頑張って欲しいです
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>>229
自分も叩いてないと思うけど
>>157がこの原因をつくり、>>162の言葉で>>1が気にしてネガティブになっていったのはたしか
>>206の言葉が決定打になったのかは分からないが、未だに書かれていないのは>>206の言葉が原因だとしか思えない。
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もし>>231の言うとおりならネガティブなレスにしか反応できない>>1もガラスのハートすぎる
大半は続き楽しみっていってんのにそれ無視して投げたわけでしょ
まぁ>>1自身がネタ被り()に納得できてないなら話は別だがそういうわけでもないみたいだし
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これは戻って来ないかな
残念
前々の反応からして>>1はメンタル弱いなと思った
オドオドして女々しい
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>>233
残念って思ってるならオドオドして女々しいとか言わない方がいいと思う
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ほとぼりが冷めた頃に戻ってくると信じてほしゅ
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俺は待つぞ!
なぜなら >>1のssが読みたいからだ!いつまでも待つからな!
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これは>>206が悪いな
俺だけど
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>>1です
放置してすみません
指の腱切れて入院してました
未完にはしないので少し時間をください
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>>238
入院してたんですね、お大事に…
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良かった、放置じゃなかったか
それならいつまでも待ってるわ
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のんびり待ってる
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本人かどうかの保障なんてどこにもないのに
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まあまあ
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すごく好きな雰囲気だ
続き待ってる
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待っています、
お大事に
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待つからな!絶対帰って来てくれ!
<(_ _)>
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支援
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ほしゅ
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まだかな〜
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まあ、もう落ちは読めてるし、よくある文体で面白味はないし、無理して書かなくていいよ
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待ってる
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待ってるぞー!
いつまでも待ってるからな!
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もう来ないんだろうか
続き待ってるんだがなあ…
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まだかなぁ
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待ってる
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続き読みたい
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待ってるよ〜。
外野くっさ、黙れ
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一月も前の外野にいまさら苦言を呈すとかおまえ相当だな
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内容が被っていようがいまいが読みたいので待ってる
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結局年が明けるまでに続きは来なかったな…
待ってるんだがなあ
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待ってます
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保守
-
保守
-
保守
-
上がってると思ったら、また保守か
もういい加減に諦めろよ
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>>265
でもお前も諦めきれずに見にきちゃうんだな(笑)
-
上がってないと気付かないレベルならもう良いだろ
-
最後まで読みたかった…
-
保守
-
>>269
上げ荒らし乙
-
ほ
-
あの後、部屋に戻ったけれど一睡も出来なかった。
空が白みはじめた頃に着替えて部屋を出た。
裸足で林をかけたせいで足を切っていたので足を洗って消毒した。
そのあと4番目の遺書を細かく裂いて焼却炉に捨てた。
怖くて、朝食も昼食も食べに行けなかった。
終業後は入浴だけして部屋に戻って寝ようと思う。
今日一日何も食べていないのに、お腹が空かない。
もう一生何も食べたくない。
-
ベッドに入っていると誰かが夕食のパンを持ってきてくれたけれど食べたくなかったので寝たふりをした。
その後、本当に寝てしまって明け方に起きたら、部屋のテーブルに布で包んだパンが置かれていた。
傍らに書き置きもあった。
皆、私の体調を心配してくれている。
体調はどこも悪くない。
せっかく私のために持ってきてくれたパンなのだから食べなければならない。
パンを手に取って食べようとしたら、涙が出た。
パンを持ったまま、今、女子寮の裏にいる。
泣きながらパンを食べている。
-
みんな、私なんかに優しくしないでほしい。
くだらない、本当にくだらないことをしてしまった。
私は、馬鹿。
もう、これ以上家族を失いたくないと心から思っている。
ならば、手紙など書かずにその時間を自主訓練にでもあてるべきだった。
私ほどの馬鹿は見たことがない。
きっとこれからも私を越える馬鹿に会うことはない。
-
朝食の時間、また食堂に行くことが出来なかった。
昼休みの今も、食堂に行かずに草原でぼんやりしている。
本当は何もしたくない。
誰とも話さずに眠りたい。
一生ねむりたい。
「お前、いい加減にしろよ」
-
後ろから、叩かれた。
エレンの声。
「私に…」
(構わないで)
言い切る前にエレンが私の口にパンを詰め込んだ。
「餓死したいのかよ。お前」
エレンは怒った顔で、そう言い捨てると去って行った。
餓死したいのかもしれない。
訓練兵になって以来タダ飯を食らっておいて、なんて勝手な考え。
最近、私はどんどん最低になる。
泣きそうなのをこらえて、パンを食べた。
-
訓練が終わって、今日は食堂に行った。
エレンは家族。
私が食事をしなければ叱ってくれる。
家族だから。
家族の勤めとして叱らなければならないから叱ってくれる。
エレンの貴重な時間を、私を叱ることに使ってほしくない。
これ以上エレンに迷惑をかけることは私には許されない。
私は、食堂に行かなければならない。
食堂でのエレンは、いたって普通。
アルミンといつも通り話している。
アルミンはどこまで知っているのだろう。
そう考えると吐き気がした。
でも、最後まで食べた。
-
食堂できちんとごはんを食べるようになって数日経った。
エレンもアルミンもいつもと変わらない。
以前喧嘩したときみたいにエレンが私を無視するそぶりも無い。
ただ、話しかけてもくれない。
エレンは多分私に興味が無くなったのだと思う。
ちがう。
元から興味が無かったのだと思う。
たまたま私がひきとられて勝手に私が好きになっただけ。
エレンもたまたま家に私がいたから一緒にいてくれただけ。
大人になるにつれて私とエレンの関係も薄くなるのだろう。
本当の、家族ではないのだから。
それでいい。
私のことも手紙のことも忘れてしまえばいい。
-
「ミカサ、食べ終わった?」
「あ…うん」
気がついたら、お皿が空になっていた。
最近何をするにもぼんやりしていて危険。
「じゃあ僕が食器片付けてくるよ。二人とも先に行ってて良いよ」
アルミンが3人分の食器を重ねて持って行くのをぼんやり見送る。
座ったままアルミンが戻って来るのを待っていたらエレンが口を開いた。
「行くぞ」
心臓が潰れるかと思った。
「アルミン、先に行ってて良いってよ」
喉が詰まって声が出せなかったので頷くことしか出来ない。
エレンも頷き返した。
二人だけで食堂を出た。
気まずい。
何だか猛烈に死にたくなる。
-
こんなにも簡単に死にたくなるなんて本当に私は使えないダメな奴。
エレンは怒っているだろうか、私があんな手紙を書いて。
訓練兵のクセに、家族のクセにあんな手紙を書いた私を軽蔑しただろうか。
少しの間沈黙が続き、エレンが口を開いた。
「あの手紙、お前が書いたのか?」
やはり、手紙の話。
一瞬、頭に血が昇って、直後、体から一気に血の気が引いたような気がした。
「…」
「お前が書いたのか?」
「…」
「…違うなら、返せよ」
「…」
「オレ宛てだぞ。返せよ」
「…それは、出来ない」
-
「何で」
「あの手紙、裂いて燃やしたから」
「は?」
エレン、怒りはじめた。
「だから、もう無い」
「お前、何言ってんだ。燃やした?」
「ごめんなさい」
「いや、本当、お前何考えてんだよ。オレ宛てだぞ?何勝手に…」
「ごめんなさい」
「…お前が書いたのか?」
そっぽを向いていた私の顔をエレンが両手で掴んだ。
無理矢理エレンの方に顔を向けさせられる。
「お前が書いたのか?」
目だけ、そらした。
「…………違う」
-
嘘つき。
私は最低。
「じゃあ何で燃やすんだよ!?お前意味わかんねえ…!!」
エレン、怒ってる。
悪いのは、私。
「だから、謝ってる」
「っふざけんな…!!」
ごつん、と頭突きをされた。
エレンは走って行ってしまった。
私は、また泣いた。
-
エレンが今朝からまた私を無視している。
怒ってる。
当然のことだと思う。
私が最低だから怒るのも無理はない。
エレンは正しい。
でも、無視は、こたえる。
消灯後、トイレで泣いている。
自業自得なのに泣いている。
私ほどの愚か者は壁内中どこを探してもいないだろう。
-
対人格闘で今日もエレンはアニと組んでいる。
私はライナーと組んだ。
木剣で襲って来る相手を投げ伏せる型通りの訓練。
これにどれほどの意味があるのだろう。
意味なんて無いのでは、と思ってしまう。
暴漢が型通りの動きをするわけがないのだから。
でも訓練だから、やらなければならない。
今は何かをしていたい。
何かしていないと死にたくなるから。
次は私がライナーを襲う番。
木剣を持って走る。
走る。
ライナーに掴まれる、その直前、ライナーの腕の向こうにエレンが見えた。
目があった。
気がした。
-
次の瞬間、見事にライナーが私を投げた。
私は明らかに受け身を取り損なった。
口の中、血の味がする。
「どうしたんだ、ミカサ。らしくない」
ライナーが言う。
「大丈夫」と言おうとした瞬間、ライナーが私の頭からジャケットを被せた。
ジャケットの下で、気付くと私はまた泣いていた。
立たなければ。
でも、疲れてしまって立ち上がりたくなかった。
そのまま座り込んでいると、ライナーの声が聞こえた。
「医務室に行くぞ」
「え」
「教官には今俺が言ってきた。お前口を切っただろ」
「でも…」
「良いから行くぞ」
-
ライナーの言葉には従わざるを得ない何かがある。
普段から面倒見の良い兄貴分だからだろうか。
私は黙って着いて行った。
歩いているうちに涙は止まった。
何故泣いているのか理由を考えていたら、何も悲しくなくなっていた。
ライナーに連れていかれたそこは、医務室ではなく水汲み場だった。
彼は無言で桶に水を汲みはじめる。
-
「ライナー何を…」
「まあ、とりあえず顔を洗え」
「医務室は」
「口を切ったくらいで医務室に行ったらどやされるぞ」
ライナーは笑っている。
私も何となく笑った。
「まあ、生きてれば色んな事があるからな」
「うん」
「そう悲観するな」
「うん」
ライナーはやっぱり兄貴分だった。
-
夕食が終わって、三人で食堂を出た。
ぼんやりエレンとアルミンの背中を見ている。
ライナーが言ったように悲観することはないのかもしれない。
二人とも元気に生きてる。
それだけで十分だと思った。
女子寮の前で二人と別れた。
なんとなく寮に戻りたくなくてうろつく。
木の回りを一人で何周も回っていると、エレンが引き返して来るのが見えた。
心臓が、にわかに苦しくなった。
-
「今時間あるか」「対人格闘のときの怪我は大丈夫か」「講義棟の中庭で話さないか」
エレンばかりがしゃべった。
気がついたら講義棟の中庭だった。
二人で壁に寄り掛かっている。
さっきから喉がカラカラに渇いている。
水、飲みたい。
「お前さ」
「うん」
「何で手紙書いたの否定するんだよ」
「…」
嫌な話題だと思った。
エレンはずっと私の袖をつかんでいる。
そんなことしなくても私は逃げないのに。
-
「書いたのお前だろ?」
「…違う」
「嘘つけ。字でわかる。何年一緒にいると思ってんだよ」
「…5年」
「ああ…そうだな」
暗くてエレンの表情がわからない。
でも、声からして怒ってはいないようだった。
「お前…」
「…」
「オレのこと好き、だったのか?」
「…」
「それとも手紙は、ただのおふざけか?」
「違う」
「なら、オレのこと好きか?」
「……うん」
-
言って、しまった。
エレンの袖を握る力が少し強くなった気がした。
「手紙もお前だよな?」
「うん」
「やっぱりな」
「…」
「講義棟で待ってれば書いた奴が手紙を探しに来るだろうと思ってた」
「…」
「案の定お前が来た」
「…そう」
「お前、オレと、付き合うか…?」
「え………?」
-
エレンが袖を離して私の左肘を掴む。
「好きなんだろ。オレのこと」
「うん」
「なら、恋人になっても良いだろ」
信じられない。
エレンが私と恋人になろうと言っている。
夢かもしれない。
「どうするんだよ。お前」
エレンが肘を引っ張って私を引き寄せた。
ドキドキする。
「何か言えよ」
応えなければ。
はやく、応えなければ。
「………恋人には、なれない」
「え?」
-
私は、何を言っているのだろう。
あんなにもエレンの恋人になりたかったのに。
エレンが誰とも付き合ってないと知って醜く喜んだのに。
「なんでだよ」
本当に何故?
「理由を言えよ。怒らないから」
息の仕方を忘れてしまったように苦しい。
やっとのことで口を開く。
「私は、強くなりたい」
「それ以上、もう良いだろ」
「もっと、強くなってあなたを守りたい」
「そんなこと頼んでねえよ」
「頼まれなくてもあなたを守らなければならない」
「お前に守られるほど弱くないだろ」
「でも、私より、弱い」
-
「は?…だからって守らなくて良いって」
「駄目。守らないといけない」
「なんでだよ!?」
「弱いから」
「お前、オレのことがそんなに頼りないかよ!?」
そうではない。
出会ったときからエレンはいつでも頼もしい私の王子様だった。
考えがまとまらない。
「そういう問題ではなくて、ただ」
「ただ?ただ何だよ」
「私より、弱い、から…?」
-
「お前、自分より強い奴しか恋人にしたくないのかよ」
「ち、ちがう。そうではなくて」
「そうじゃないって!?そうだろ!?」
「ほ、本当にちが」
「お前な、そんな、そんなこと言ってたら」
「…」
「お前に一生恋人なんてできねえよ…!!!」
エレンが掴んでいた肘を乱暴に離した。
まだ何か言いたそうだったけれど黙って行ってしまった。
―お前に一生恋人なんてできねえよ
そう、できない。
エレン以外の恋人なんて死んでもいらない。
-
朝、食堂に行くとエレンは明らかに怒っていた。
やはり無視された。
座学の時間も隣に座ってくれなかった。
何度されても、辛い。
久しぶりにアルミンと二人だけで話した。
「何だか最近二人ともおかしくない?」
「すごく気まずいっていうか」
「何かあったの?」
「僕には言えないこと?」
私がろくに返事も出来ずにいたからアルミンが一方的に話す形になった。
言いたいことを言ってしまったのか、アルミンはじっと私を見ている。
一度に言われた情報量の多さと、アルミンにはとうてい話せそうもない今までの経緯から、私は何も言えずに突っ立っていた。
ただ突っ立っているだけなら木にでもなった方がよっぽど人の役に立つだろうと思った。
-
「僕には、言いたくないんだね?」
そう言われた瞬間、胸が痛んだ。
アルミンはいつかの対人格闘のときと同じ顔をしていた。
反射的にアルミンの右手を両手で掴んだ。
「ミカサ…?」
アルミンは少し驚いたようだった。
「アルミン」
「…」
「お願い。だから、私に勇気を…」
「え?」
「…」
-
「だってミカサは僕よりずっと強いし…」
「ちがう」
「でも…」
「私は、壁内一、最低で、使えなくて、愚か者で…自業自得なのに苦しくて」
「…」
「だから、アルミン。勇気を分けてほしい。耐え抜くだけの勇気が今の私にはない」
「耐えるって言ってもそれで解決するわけじゃ…」
「でも…お願い」
「…」
「そうじゃないと、苦しくて。アルミン」
「…じゃあ、少しだけね」
「アルミン…」
「なけなしの勇気、全部とられちゃ僕本当に使い物にならないから」
アルミンは少し笑った。
-
アルミンが勇気を分けてくれてから少しだけ気持ちが楽になった。
エレンは相変わらず口をきいてくれないし、隣にも座らせてくれない。
けれど、私自身、自分はいないのだと思い込んだら楽になった。
きっとこれからもどんどん楽になる。
辛さに一番効くのは慣れだと思う。
でも、辛くて、悲しくてどうしようもなくなる日がある。
そんなときは消灯後のトイレで声を殺して泣いた。
-
うおお来てた!
まじで本人だとしたら三ヶ月ぶりか
保守してた甲斐があった、乙
-
今日、訓練の合間にエレンとミーナが話していた。
同じ班だから当たり前。
でも、楽しそうにエレンが話していたのが辛かった。
私には一生あんな顔で語りかけてくれない。
私はまた、消灯後のトイレに逃げた。
こうして泣くことがくせになりつつある。
初めのうちは目が腫れるのが嫌だったけれど、エレンが何も言わないからどうでも良くなった。
下を向いて、声を殺して泣いている。
ふいに、トイレに誰かが入ってくる足音がした。
でも、泣き続けていた。
明日になれば、トイレに霊が出たと噂になるかもしれないと考えながら泣いていた。
トイレに入ってきた「誰か」は、もう逃げて行ったのだろうか。
トイレは再び静まり返り、私の啜り泣きしか聞こえなくなっていた。
-
「…ミカサ?」
おずおずと語りかけてくるか細い声。
クリスタだった。
「ねえ、ミカサ。出ておいでよ」
「…」
「寒いでしょう?」
「…」
「部屋に戻ろうよ」
「…」
「ミカサ」
「先に…行ってて」
「嫌だよ」
「…」
-
「だって、だって、暗い中一人で帰るのこわいじゃない」
「…」
「ねえ、ミカサ、一緒に帰ろうよ」
泣き顔を見られるのは嫌だった。
でも何故か、トイレの個室から出てしまった。
クリスタが私の手をとった。
「わあ、手がこんなに冷たい。はやく部屋に戻ろう」
いつもの優しい話し方だった。
クリスタは優しくてかわいい。
羨ましかった。
-
おおきてた 続きも期待
-
>>300
本人です
長期間放置したままで申し訳ありませんでした
最後まで書くのでもうちょっと時間ください
-
続きがキテター!!
待ってて良かった
続きも楽しみにしてる
乙!
-
おかえりなさい!
ずっとまってた
-
なにこれ切ない
-
最高すぎます!!
続き、頑張って下さい!!
期待&支援☆
-
最高すぎます!!
続き、頑張って下さい!!
期待&支援☆
-
再開嬉しい
期待
-
臭い外野がいっぱい沸いてる
-
乙
正直もう諦めてたんで続きが読めて嬉しかった
-
すごく嬉しいぞ
期待
-
最高すぎます!!
続き、頑張って下さい!!
期待&支援☆
-
保守
-
ほほ
-
うめ
-
ほ
-
保
-
続き摩だー?
さ
-
ほし
-
もうちょっと時間くださいって言ってから一ヶ月半たったんですけど?
-
ほ
-
続きはもう無理なんだろうか
2ヶ月経っちゃったしなあ…まだ未練はあるんだが
-
続き…
-
まだかな(´・Д・)
-
まだもなにもまうないんじゃないか?
-
それな、あげてるやつしつこすぎ
-
流石にもう無理か…
-
ほ
-
>>331
こんなところでまであげ荒らし乙!
-
>>332
おう、お前も頑張れよ!
-
よく分からんが上げれば良いのか?
あげ
-
もう誰でもいいから続き書いてくれよ
-
>>1のラストがどんななのか見たかったけど、誰か書いてくれるなら支援する
-
ほ
-
埋めの人まだー?
-
最高すぎます!!
続き、頑張って下さい!!
期待&支援☆
-
まだまってる
-
埋め
-
最高すぎます!!
続き、頑張って下さい!!
期待&支援☆
-
上に同意
-
うめ
-
>>342わかったからコテハンはずせ
-
>>345何で?
-
あげ
-
保守ですなー
-
梅
-
ほしゅ
-
うめ
-
もう無理?
-
ほ
"
"
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