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安価でカオスSS作る
259
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/08(水) 23:46:43 ID:rBsHUVEg
阿部「第一条。ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない」
阿部「第二条。ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合は、この限りでない」
池田「…………」
スカポン「オオ!ソノ通リデスアブサン!オ詳シイデスネ!」
スカポン「ソノ2ツノ原則ニ反シテイルノデ、無理ナノデス」
池田「うーん……だったら俺たちは人間だぞ?『教えてくれ』っていう命令は聞いてくれないのか?」
阿部「恐らく私たちが知ることによって『危害』が加わってしまう事と、私たちより前の『人間』が命令した事を遂行しようとしてるんじゃないでしょうか?」
スカポン「素晴ラシイ!ワタシガ言イタイコト、全テアブサンガ言ッテクレマシタ!」プピーン
スカポン「アァー!?デモソレッテ『ナビ』ノ仕事ヲ丸投ゲシタコトニ!?折角ココノ仕事ニモ慣レテキタノニ!」プペー
阿部「大丈夫だよスカポンさん。私たちを案内してくれるだけでナビを立派にこなしてるもの」
スカポン「何ト オ優シイ オ言葉!今日ト言ウコノ日ヲ記念スベキ『アブサン記念日』トシテ メモリニ焼キ付ツケテオキマショウ!」
プピーン
池田「……なぁ阿部さん。今のも知識だけか?」
阿部「……残念ながら。情報はするすると出てくるんですけど……」
池田「……そうか」
260
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 00:03:25 ID:hBfF611g
――――
スカポン「着キマシタ。イケタサンノリクエスト、食料品ト飲料水デス」
スカポン「今オ開ケシマスネ。少々オ待チクダサイ」
スカポンが腕らしき部分を、壁面に埋め込まれた端末に差し込む。
虫の羽音みたいな音が天井あたりから聞こえたかと思った瞬間。
――よりかかっていた壁が突然無くなった。
池田「……え?」
唐突すぎる壁の消失に呆気に取られている内に、重力に従って体が傾き始めた。
受け身を取ろうとする――が
折り悪く手はポケットの中。
池田(――仕方ない)
一瞬の逡巡の後、覚悟を決めて強めに顎を引き、体を軽く横に捻る。
思った通りの床の硬さと、思った通りの痛みが左半身に広がる。
声を上げるのもみっともないので、そのまま転がり天井を仰いだ。
阿部「い、池田さん!?大丈夫ですか?」
261
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 00:41:38 ID:IQMuW2fs
知らなきゃ良かったそんな事実……は傷付くもんな。心が
262
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 01:47:30 ID:hBfF611g
心配そうな顔の阿部さんが駆け寄ってくる。
池田「…………」
スカポンに文句の一つも言ってやろうかと思ったが、止めよう。
これはこれで良かった。痛み以上の価値があった。
池田「大丈夫。これ位何ともない」
阿部「ほ、本当ですか?」
スカポン「アレレ?イケタサン、何デソコデ寝テルンデスカ?」
池田「…………」
……やっぱり文句を言おう。
そして思いっきり引っぱたいてやろう。
何が第一条だ。気付かなきゃ意味がないじゃないか。
内心毒づきながら、起き上がる為に床に手をつく。
だが――俺は立ち上がれず、うつ伏せの中途半端な姿勢で固まってしまった。
妙な物体が視界に飛び込んできたからだ。
いや……妙、と言うより、ありえない、と言った方がいいのだろうか。
263
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 01:49:30 ID:hBfF611g
目をこすり、もう一度ありえない物体を確認する。
阿部「い、池田さん……?やっぱりどこか強くぶつけ――」
池田「嘘だろ……」
震える手を伸ばし、怖々と指先を閉じる。
――掴める。
つまり、本物。
俺の幻覚でもなんでもない。
つるつるとしたビニールの包装の感触。
思ったより軽い重量感。
傾けると手の中で小さく響く乾いた音。
心臓が高鳴り、額と耳がカッと熱くなる。
唾液がとめどなく口内に溢れ出す。
これは。ひょっとしてはこれは――
池田「カップ……ヌー……ドル……?」
スカポン「ハイ。『カップヌードル』デスヨ。コロ・チャー増々ノ一品デス」
264
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 03:16:33 ID:hBfF611g
阿部「カップヌードルって――」
池田「マジかぁぁぁぁぁぁ!ヒャッホォォォォォォォウ!!」
阿部「い、池田さん!?」
池田「カップヌードルってアレだぞ!お湯を注ぐと3分でアレで何それ超すごい!」
阿部「し、知ってますよ。池田さん落ち着い――」
池田「落ち着けるかよ!これ一個でどんだけの価値があるかってもうそりゃ一財産できる位――」
スカポン「一個ジャアリマセンヨ、イケタサン」
池田「……な……に……?」
スカポン「一日三食換算デ、カップヌードル一年分アリマスヨ」
池田「――ッ」パクパク
スカポン「勿論、カレー、シーフード、塩、トマト、シーズン限定ノ商品ニ至ルマデ――」
スカポン「スベテノ商品ガ一年分備蓄サレテイマス」
池田「はァァッ!?」
スカポン「ア。日清ニ限ラズ、他メーカーモ同様デスヨイケタサン」
俺は気絶した。
265
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 04:01:37 ID:hBfF611g
――――
池田「う、うーん……」
阿部「池田さん!良かった意識が……!」
池田「あぁ……阿部さん……ふとももが気持ちいいなぁ……そうだ……俺は夢を見ていたんだ……」
阿部「夢、ですか?」
池田「カップラーメンが食い切れない位ほどあるっていう夢で――」
スカポン「夢ジャアリマセンヨ、イケタサン」
池田「…………」
バッ
阿部「あっ、ちょ、急に動いちゃ駄目です池田さんッ!」
池田「じゃぁ目の前のこのタワーみてぇなのは……」
スカポン「ラーメンニ限ラズ、様々ナ食料ガ詰マッテイマス」
スカポン「今見エテイルノハ地上部分ダケデスノデ、量ガ少ナク見エマスケドネ」
池田「こ、これで量が少ないってか……!」
池田「……いや、ここに避難する人数を考えれば……妥当な数なのかもな……ハハ……」
266
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 08:26:04 ID:GJ.duXBI
むっちゃ贅沢なカップヌードル一年分だな。正直欲しいんだけど
267
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 18:07:08 ID:vSRQhwVw
その時代のカップラーメン一個は
現代のお金でいう
いくらぐらいになるんでしょうか…?
268
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:17:10 ID:hBfF611g
――――
スカポン「水ハ、タンクノ酸素ト水素ヲ反応サセ作成。サラニ無菌状態デミネラルヲ添加シテイルノデ……美味シク、安全ナ飲料水ヲ飲ムコトガデキマス」
池田「……なるほど。わからん。ありがとうスカポン」
スカポン「ソレジャァ次ハ、アブサンノリクエストデスネ」
阿部(……セキュリティレベルが高いエリアなら今度こそ何か手掛かりがあるかもしれないです)ヒソヒソ
池田(というかそこ以外食い物かトイレだったからな……)ヒソヒソ
スカポン「地下ニ行キマス。階段ヲ使イマスノデ、注意シテクダサイ」
池田「……何に注意するんだ?」
スカポン「ワタシニデス。ウッカリコケルト、頭ガカナリノ速度デ飛ビ出シチャウノデ」
池田「…………」
――――
スカポン「着キマシタ。ココガ、アブサンノリクエストシタ エリア デス」
池田「…………」
阿部「…………」
位置的には居住区クレーター中央の、まさに真下の位置。
269
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:20:29 ID:hBfF611g
スカポンが案内してくれた場所の正面に扉はあった。
壁と明らかに作りが違う、ピカピカに輝く金属の合板。
その硬そうな複数の合板が、カメラの絞りのようにぎゅっと閉じている。
……きっとドリルが何千本あったとしても足りない奴だ。
スカポン「一般ノ方ハ立チ入リ禁止デス。セキュリティレベルハココガ一番高イデスヨ」
スカポン「権限ヲ持ッタ人デナイ限リ通行スル事ガデキマセン」
池田「スカポンじゃ開けられないのか?さっきの備蓄庫みたいに」
スカポン「無理デス。一介ノナビロボノワタシニハアクセス権限ガ与エラレテイマセン」
阿部「スカポンさんでも駄目かぁ……」
スカポン「マァ、先日ココヲ通ッタ方ト一緒ナラ、イケタサン達モ行ケナクハナイノデスガ」
池田「……何?」
スカポン「アレレ?ワタシ言ッテマセンデシタッケ?」
スカポン「ワタシカラ見テ、昨日、実時間ニシテ4日ト2時間19分47秒前ニソノ方ニオ会イシマシタ」
スカポン「ヨク覚エテマスヨ。何シロ154年振リノ オ客サンデシタカラ」
池田「スカポン、そいつはどんな奴だった?そいつの力が借りたい。このゲートの向こうに、どうしても俺たちは行きたいんだ」
270
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:28:00 ID:hBfF611g
スカポン「ソレハ身体的特徴デヨロシイデショウカ?」
池田「何でもいい。そいつを探す為の手掛かりが欲しい」
スカポン「ソウデスネ……女性ノ方デシタ」
池田「何!?女!?阿部さん!ひょっとして仲間とかじゃ――」
スカポン「ソシテアブサン、アナタニ瓜二ツノ顔デシタヨ」
阿部「……え?」
池田「……は?」
スカポン「顔ダケナラ実ニ99.9894%一致シマス。髪型ハロングデシタケド」
阿部「…………」
池田「…………」
スカポン「デスガマァ顔ダケノ話デス」
池田「顔、だけ?」
スカポン「ワタシ、腐ッテモ錆ビテモオワライロボデス。一度会話シタオ客サンノ顔ト性格、決シテ忘レマセン」
スカポン「アブサン、見タ目ハソックリデスガ、性格ガマルデ違イマス」
池田「それは、どんな風にだ?」
271
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:43:22 ID:hBfF611g
スカポン「モット内向的ナ方デシタ。今ノアブサンミタイニ笑ッタリ焦ッタリモナク――」
スカポン「ドチラカト言ウトワタシ達ロボットニ近シイモノヲ感ジマシタネ」
阿部「感情に乏しいってことかな?」
スカポン「ソウデス。無機質トイウカ……オーヤダヤダ、仏頂面ノガードマシンミタイニハナリタクナイデス」
スカポン「ソレニ、ソノ方、何カニ怯エテイタヨウデス」
池田「怯える?何にだ?」
スカポン「サァ?コノシェルターニ近イ居住区ニツイテ ワタシニ2,3尋ネルトスグ出テ行ッテシマッタノデ」
池田「…………」
スカポン「オワライロボニアルマジキ シリアスナ空気ヲ感ジタノデ」
スカポン「ワタシノ一番ノ体ヲ張ッタ持チネタヲ披露シタノデスガ……クスリトモ笑ッテクレマセンデシタ……」プペー
スカポン「オオソウダ。ソレニアブサン、ワタシト初対面ダッテ仰ッテマシタヨネ?」
阿部「……は、はい」
スカポン「ダカラワタシ、他人ノ空似ト解釈シマシタ」
スカポン「確率的ニハ非常ニ低イデスガ、ワタシノオワライロボトシテノ経験ノ方ガズット信用デキマスカラネ!」プピーン
阿部「私にそっくりの、女性……」
272
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:51:44 ID:hS76E5P6
スカポン、良い愛嬌してるなぁ
ちっちゃいお菓子が給料の世界なら、そりゃあカップヌードルは大変な価値だよな
量はたっぷり味は濃厚、栄養もそこそこあり。ちょっと消化が早いのが物足りない所か
273
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 20:13:54 ID:zNuk3d/E
記憶喪失も捨てたもんじゃないね
もしかしたら本当に他人とか双子の可能性もあるけど
274
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:07:59 ID:hBfF611g
池田「……スカポン、このシェルターの出入り口は何箇所ある?」
スカポン「マズ1番大キイゲートガ1ツ。イケタサン達ガ開ケタ場所デスネ」
スカポン「ソレカラ非常用ノ連絡通路ガ東西南北ニソレゾレ1ツズツ。ソノ4ツハ地下道デスガ」
池田「分かった。じゃぁそのすべての入口が開閉した回数は調べられるか?」
スカポン「エエット、ソレハ建設当初カラデスカ?」
池田「いや、5日前から今に至るまででいい」
スカポン「ソレデシタラ……ハイ、2回ダケデスネ」
池田「俺たちが開けたのも含めてか?」
スカポン「含メテ2回デス。ソレ以上前デスト、154年前マデ遡ル必要ガアルノデ、メインサーバーニアクセススル必要ガ――」
池田「いや、大丈夫だ。それさえ分かればいい」
阿部「……池田さん?」
池田「俺たちが開けて1回。5日前に1回。変だろ、それ」
阿部「……あ!」
池田「その、『阿部さんにそっくりな女性』がここへ入って出たなら――」
阿部「開閉した回数は3回のはずですよね」
275
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:17:39 ID:hBfF611g
池田「そうだ。……それに……」
阿部「ええ、そうですね。分かってます」
池田「…………」
阿部「私にそっくりな女性……」
阿部「記憶を失う前の『私』だったんでしょうね……」
スカポン「……何ヤラ、シリアスナ空気ヲ感ジマス。一ツ噺デモ打チタイ気分デス」プペー
――――
スカポン「記憶喪失!?ソレハ大変デスネ!医療センターヲ……アァ、ワタシタダノナビロボデシタ」プペー
阿部「心配してくれてありがとうスカポンさん。でもお医者さんだったらとっても便りになる人がいるから平気だよ」
スカポン「ソウデスカ。シカシ、アブサンハ強イオ人デスネ」
阿部「強い?」
スカポン「ワタシ、自分ノメモリガ一部分デモマッサラニナッタラ絶対ニ自暴自棄ニナル自信ガアリマス」
阿部「……1人だったら、私もそうだったかもしれない」チラッ
池田「……な、何だよ」
阿部「ふふっ。なんでもないよ池田さん」
276
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:24:34 ID:hBfF611g
スカポン「オオ!アブサン!」プピーン
阿部「はい?」
スカポン「モシ5日前ノ人物ガアナタナラ、ココノ扉ヲ開ケラレルノデハ?」
池田「……だな」
池田「それに『5日前の阿部さん』は……まぁまともに入り口を使ったとしての話だが」
池田「開閉回数を見る限りじゃ、シェルターの外から入ったのではなく――」
阿部「『中から来た』んですよね」
池田「……そう。そしてスカポンが入る事も見る事もできない扉が目の前にある」
スカポン「面目ナイ限リデス……」プペー
阿部「大切な事を忘れる前の私は、ここから……」
池田「……無理するなよ」
阿部「え?」
池田「どんどん事態はデカい方に傾いてきてる。ここまで来たら何が起こるか俺にだってさっぱりだ」
阿部「…………」
池田「ドクにも言われてるんだ。記憶を戻すなら徐々に徐々にってな。体に負荷がかからないようにだ」
277
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:36:06 ID:hBfF611g
阿部「池田さん……」
池田「だから焦らなくていい。今日これだけの収穫があったんだ。日を仕切りなおしたって別に――」
阿部「いえ、開けます」
阿部「スカポンさんから聞いた前の私の印象を聞く限り、のんびりしている暇はないと思います」
池田「……まぁな」
阿部「それに、池田さん。一緒にいてくれますよね?」
池田「……それとこれとどういう関係が――」
阿部「池田さんが一緒なら私、怖くないです」
池田「……そう、か」
阿部「私と一緒に……いてくれますか?」
池田「俺は――」
プピピーン!
スカポン「オ2人共!見テ下サイ!コンナ所ニ隠シ端末ガアリマスヨ!」
池田「スカポンッ!お前なぁ!」
阿部「ふふっ。じゃぁ行きましょうか、池田さん」
278
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:47:23 ID:q3a.nr4U
二人と一体の進む先に待ち受けるものとは……
279
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 01:34:55 ID:ab0FLUX2
慣れた様子で、掌紋認証や網膜認証を済ませる阿部さん。
そう、今日までに思い出した記憶はどれも『手段』にあたるものばかりだ。
『目的』や『自らの過去』に関する記憶はどれもはっきりしない。
『この場合の記憶喪失は人にとって自己防衛の一つなのヨ』
『あまりにつらく、そのまま受け止めてしまうと精神が崩壊しかねない記憶や情報から身を守っているの』
『阿部ちゃんはね。口には出さないけど、とても焦っているわ』
『くれぐれも無理はさせないでね。……まぁ池田ちゃんのことだから、私が注意しなくたって――』
――そんなの、言われなくてもな。
無茶したら気絶させてでも何とかするさ。
<< 個人情報の照合……完了。管理者権限を確認しました >>
やたら滑らかな電子音声が端末から響いた。
ほぼ肉声に近い発音だ。が、感情が篭ってない分妙にメカメカしい。
……こっちのノイズだらけの丸っこちい奴より遥かに手間がかかってそうなのにな。
スカポン「イケタサン、何カ失礼ナ事ヲ考エテマセンカ?」プピーン
280
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 02:30:04 ID:ab0FLUX2
<< ゲート。解放します >>
ゲートの中心に小さい穴が現れ、それが無音で瞬時に広がる。
ゲートの向こうにはまた同じタイプのゲートが幾重にも重なっており、それも同様に次々と広がっていく。
1つ。2つ。3つ。4つ……
……10から先は数えていなかった。
1つでかなりの厚さ、それもやたら硬そうな金属を使用していて――この数だ。
このゲートの奥で待っているものの重要さが、嫌でも伝わってくる。
開ききった後も俺たちはしばらく動けずにいた。
不気味な静寂の中で、無意識に拳を握り締め、皮膚が軽く突っ張った感触で我に返る。
阿部さんを見やると、心なしか青ざめた顔をしているように見えた。
……何やってるんだ俺は。
池田「行こう」
阿部「……はい」
こちらを見ずに阿部さんが左手を差し出す。
右手で細い指先を取り、俺たちは未知なる世界へ一歩踏み出した。
282
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 18:48:46 ID:ab0FLUX2
――――
ゲートの先はシェルターの1Fに比べると更に薄暗く、少し肌寒かった。
シェルターを維持する為の装置が近くなったののか――あるいは別の何かが近くなったのか。
若干耳につく駆動音が空気と床から伝わってくる。
それ以外に響くのは俺と阿部さんの足音と、時おり出るスカポンの気の抜ける音だけだ。
長い長い廊下を抜けると少し視界が開けた場所に出た。
天井の低さからくる圧迫感から解放されたことに、軽く息をつき――そして息を呑んだ。
目の前の欄干から先が、ない。
まるでそこだけを、綺麗に切り抜かれたかのように。
――真っ暗で巨大な穴が、ぽっかりと目の前に現れた。
池田「……掘ってて空洞にぶち当たる経験は何度かしてきたが……こんなにデケぇ穴は初めてだ」
阿部「うぅ……底がまるで見えませんよ」
スカポン「アブサン!身ヲ乗リ出シテハ危険デスヨ!」カタカタ
池田「……スカポンは壁に張り付いて何をやってるんだ」
スカポン「ワタシ、高イ所苦手ナンデス!覗キコムナンテトテモトテモ!」プペー
283
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 18:55:08 ID:ab0FLUX2
――――
池田「――で、反対側までグルっと回ってきた訳だが」
阿部「これ、道路ですかね?」
池田「多分滑走路だとは思うんだが……何だってこんな地下にあるんだ?」
スカポン「大キイ穴マデ続イテマスネ。何ノ為ノモノナンデショウカ?」
池田「……この奥にこれが必要な何かがあるってことか?」
阿部「こっちも真っ暗でよく見えないですけど」
声の反響具合からして、かなりの広さがある。
だが他の場所と違って壁や床に光源がまるでない為、こちらも闇に包まれている。
スカポン「操作パネルガ16m先ニ見エマス」
池田「……こんなに真っ暗で何故分かる?」
スカポン「暗視モードニ切リ替エテミマシタ。ア、ダカラ強イ光ヲ出サナイデクダサイ」
池田「んなもん持ってたら最初から使ってる」
スカポン「アー、駄目デス。駄目駄目デスヨイケタサン」
池田「……何が駄目なんだ?」
284
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:19:54 ID:BXKYrvPc
ふむ。何となく分かったかも知れないぞ
285
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:28:09 ID:ab0FLUX2
スカポン「今ノハ『振リ』デス。『押スナヨ!絶対押スナヨ!』ト言ッタラ押スノガ正解ナンデス」
スカポン「デスカラ、今ノ正シイ『返シ』ハ多少無理ヲシテデモイケタサンガ発光シ、ワタシヲビックリサセルベキデシタ」
池田「……さっさと照明を点けてくれ」
スカポン「了解シマシタ」
本当に見えてるのか怪しいものだったが、特に危なげなくスイスイと進んでいくスカポン。
しばしの間の後、俺の場所だけピンポイントで照らされた。
……何故。
池田「……スカポン」
スカポン「スポットライトモ可能ミタイデスネ。イケタサンガマルデ銀幕ノスターノヨウニ――」
池田「……全部、照らしてくれ」
池田「……了解シマシタ」
俺たちのいる場所から奥へ奥へと天井の照明が次々と明かりを取り戻す。
――ぶら下がったクレーン。壁や床に走る色鮮やかなチューブ。荷が積まれたままのフォークリフト。
白光に照らされ、様々な設備が現れる。
――そして最奥の照明が灯った時、そいつは姿を現した。
286
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:37:40 ID:Rl/6BtHU
シリアスな空気を少しでも和らげようと尽力するスカポンの芸人魂は見上げたものだな。スルーにも慣れている
さて、いよいよ大詰めな雰囲気になって来たが……
287
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 20:11:22 ID:KAsqWvYg
新たな技 シャイニングスカ か
しかし池田に光れって随分な無茶振りだなww
288
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 20:50:38 ID:2iIrsthQ
格好良いのが来そうな予感にワクワク
289
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 23:04:29 ID:ab0FLUX2
池田「……ワオ」
少なめに見積もって全長30m程の戦闘機――らしき物体が側面をこちらに見せて鎮座していた。
パールホワイトに薄っすらサクラ色を混ぜたような光沢のあるボディ。
全体の7割程を占めるプレートは、直線よりも曲線を意識して作られているようで、どこか生物的に見える。
またパーツの節目節目に鮮血のように赤い機巧が見え隠れし、それがより拍車をかけている。
剣先を思わせる鋭い先端を両端に持つ一番大きなプレートは、機体後部から前部まで被さる形で覆っていた。
遠目に見ると巨人が持つサイズの超規格外の槍が、ただ置かれているようにも見えた。
らしき――と今いち確信が持てなかったのは図鑑やデータで見た戦闘機とあまりにデザインが異なっていたからだ。
第一視界を確保する為の窓がまったく見当たらない。
コックピット周辺までプレートで覆われている辺り完全に意味不明だ。
――ただ、こいつが戦う為に生み出されたのは間違いないだろう。
素人目にも分かる攻撃的な意思をデザインの端から見て取れる。
ただ飛ぶだけならば必要のない角度に付いた複数のスラスター。
広げるどころか、獲物を捕える寸前の隼のように窄められた主翼。
武器らしい武器を目にするまでもなく……この機体が自在に宙を舞い、戦う様子を容易に想像できた。
290
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 23:37:39 ID:Etl60TI6
多分ダーウィンの自機だよなこれ。スタイリッシュな文で出してくれてありがとう!
291
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 07:02:43 ID:LhylH4fg
ホントすげーなー…かこうとおもった心意気に感謝!
292
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:39:37 ID:oX0hgpUY
問題なのは、コイツがどういう役割を持っているのかという事だが……
293
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:50:41 ID:tKyl/49w
スカポン「何ダカ、イカ、ミタイデスネ」
池田「…………」
スカポン「チョット色ガツイテイルノデ……一夜干シ、モシクハスルメイカナ印象ヲ受ケマス」
――こいつがオワライロボットとして優秀か否かはさっぱりだが、一つだけ確実な事が分かった。
何かをダイナシにすることにかけてはピカイチだ。
許さんぞスカポン。こんなにカッコいいのにイカだと。
……見えなくもない辺りが、余計に腹立たしいのも多少あるが。
阿部「……ビー…ス……」
池田「……阿部さん?」
彼女が機体の方へふらりと一歩近づいた。
眼の焦点が宙空のどこか遠くに合っているようで、心ここにあらずといった感じだ。
ビース
阿部「BEAS。プロジェクト『ダーウィン4078』によって生み出された機体の基礎パターン」
阿部「……やっと、見つけた……うん……?二度目?ああ……機体だけじゃ駄目、そう、協力者を……」
池田「あ、阿部さん?おい大丈夫か?」
阿部「情報は本物、だった。博士はやはり、これを完成……、私は外へ、でも中にイる」
294
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:55:01 ID:i1gG7GE2
おっとぉお?
295
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:55:08 ID:tKyl/49w
阿部「私、外へ出て、それかラ、出テ私は、使命ヲ外、デ…何故ここへ戻っテ……ェゥ」
池田「おい阿部さん!どうした!?」
阿部「逃げナきゃ、何から、駄目ッ、こんナ事デワタし……ッア、ぐッ!」グラッ
阿部さんは額を押さえ、その場にうずまってしまった。
彼女の尋常じゃない反応に急いで駆け寄り、肩をささえる。
……体が恐ろしく冷たい。
顔面は血の気が引き、瞼が激しく痙攣している。
阿部「怖い……助けて、誰か、お願い、こんナ場所で、立ち止ま、うっ、あァッ!」ギクンッ
池田「阿部さん!聞こえるか!」
阿部「あ、ァ……う……?」
池田「俺だ。こっちを見るんだ」
阿部「いけ……だ、さん……?」
池田「そうだ。側にいるぞ。怖くない。もう何も怖いことはないんだ。……もう、全部終わってる事だから」
阿部「……あり、がとう……」
阿部さんはそう一言だけ告げると、俺の腕の中で意識を失った。
296
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:06:52 ID:oX0hgpUY
おぉ、確かゲーム開始時点の機体名がビースだったか?
それより被弾後のピスタの方が記憶にはよく残ってるがw
297
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:50:23 ID:s9z71CYk
安部さん……大丈夫かなぁ
298
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:56:06 ID:LhylH4fg
まさか
>>1
も題名からして
こんな壮大なssになるとは思わなかっただろうな…
299
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:05:38 ID:Izr0mY9U
――――
阿部「…………」
池田「…………」
声をかけようとして口を開き、そのまま口を閉じる。
先ほどからそんな事を繰り返してばかりいる。
意識を取り戻した阿部さんは目に見えて分かる程衰弱していた為、探索を打ち切って今は帰り道だ。
当たり前のようについてこようとしたスカポンはシェルターから出れず、ハンカチを振って見送ってくれた。
阿部「…………」
池田「…………」
目を覚ました時から阿部さんは一言も喋っておらず、今も下を向いたまま黙って横を歩いている。
胃が痛くなるような沈黙を紛らわす為に、頭を軽く掻きながら首を捻る。
――何と、声をかけるべきなのか。
俺は彼女の記憶を取り戻す為に努力を重ねてきた。
大切な記憶や思い出を取り戻す――それは自然な事で、阿部さん自身の為だと強く思っていたからだ。
……それがどうだろう。その結果が、彼女をこうやって苦しめている。
300
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:15:32 ID:Izr0mY9U
――つらくて、心が折れそうな記憶を呼び覚ます事が、本当に自然な行為なのか?
――今彼女がああやって以前みたいに笑えなくなることが、正しい行いなのか?
――それならいっそ全部忘れたままで――
阿部「……ごめんなさい、池田さん」
池田「……へ?」
阿部さんが……謝ったように聞こえた。
阿部「……ごめんなさい」
もう一度、今度は俺の顔をはっきり見て阿部さんは言った。
池田「……何で、俺に謝るの?」
阿部「後少しで……」
池田「…………」
阿部「後少しで、思い出せそうでした」
池田「…………」
阿部「でも、私、逃げちゃいました。……思い出すことから」
阿部「自分がバラバラになりそうで、怖くて……」
301
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:27:30 ID:Izr0mY9U
池田「それがどうして――」
阿部「池田さんが一緒なら、怖くない、って……自分で言ったのに」
池田「!」
阿部「だから、その、ごめんなさい」
――ッ。
この娘は、阿部さんは、俺を信じれなかった事に対して謝っている。
――クソッ。
目の奥がカッと熱くなる。
――だったら俺のしてやれる事はなんだ?
阿部さんが俺を信じようとしたように、俺も彼女を信じればいい。
彼女が困難と戦おうとする意思を持っているなら、俺も一緒に戦えばいい。
それを俺は……
池田「……飯だ」
阿部「……え?」
池田「飯だ、飯」
302
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:36:28 ID:Izr0mY9U
阿部「ご、ご飯ですか?」
池田「おう。晩飯だ」
池田「物事がうまくいかない時ってのはな、疲れているからうまくいかないんだ」
池田「そういう時は何やったって駄目なんだよ。とにかく休まなきゃ駄目なんだ」
池田「で、疲れを取るにはたっぷり食って、たっぷり寝る。それが一番なんだ」
阿部「…………」
池田「だから、まず飯。それでその後目一杯昼までぐずぐず寝る」
池田「だから飯食いに行こう。551まんありったけ注文してさ。もう食えないって位食おうぜ」
阿部「池田さん……」
池田「その、なんだ。昼食った時、気に入ってたみたいだしな」
阿部「……はい。私551まん好きです。たくさん、食べてみたいです」
阿部「……あの、池田さん」
池田「ん?」
阿部「……ありがとう」
池田「……おう」
303
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 06:22:00 ID:5au.qJlY
良い想い合いだな
今頃はさっきのシェルターに人が殺到してるんだろうか?
304
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 07:07:28 ID:rHODJDww
スカポンが閉めるんじゃないのか?
305
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:19:38 ID:Izr0mY9U
――――
店主「いらっしゃい!……って池田じゃねぇか。どうした?忘れ物か?」
池田「普通に飯食いに来たんだよ」
店主「へぇ!ケチ臭いお前さんが一日に二度もウチにねぇ」
池田「……悪いかよ」
店主「悪かねぇよ。対価さえ払ってくれるなら立派なお客様さ。後輩さんもいるみたいだし、奥のテーブル席にするかい?」
池田「そうだな。そっちの方が……ん?」
カウンターの端に座る人物にふと目が止まる。
季節外れの白のロングコートが目立ったのも勿論だが、何よりその顔に見覚えがあった。
白髪に碧眼。大きな体格に見合わぬ柔和な顔つき。
池田「……ロシア兵さん?」
ロシア兵「ハイ?」
池田「やっぱりそうだ!ロシア兵さんじゃないか!」
ロシア兵「……オオ!池田サンじゃないデスカ!」
阿部「?」
306
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:23:42 ID:Izr0mY9U
――――
池田「紹介するよ。ちょっと前に職場で一緒に働いていたロシア兵さんだ」
阿部「あ!ハイチュウの人ですか?」
池田「……そういや、名前聞いてなかったな」
ロシア兵「ソウ言えば名乗ってもいませんデシタ」
ロシア兵「私はセルゲイ。セルゲイ・ソボレフと言いマス」
阿部「初めましてセルゲイさん。私は阿部って言います」
池田「珍しいな。姓と名両方持ってるのか」
セルゲイ「本当はソボレフの姓だけなのデスガ……部隊の皆が付けてくれたTACネームを名として名乗ってマス」
池田「って事はセルゲイさんと呼んだ方がいいか?」
セルゲイ「ハイ。私としてもそちらの方が嬉しいです。あとサン付けしなくても結構ですよ池田サン」
池田「ハハッ!あんただって俺をさん付けしてるじゃないか」
セルゲイ「言われてみれば確かニ」
池田「親父、とりあえず偽551まん3つ頼む」
店主「あいよ!」
307
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:29:33 ID:Izr0mY9U
――――
阿部「熱っ……ふーっ、ふーっ」
セルゲイ「奢ってもらって何だか申し訳ナイデス」
池田「…………」
池田「すまなかったな、セルゲイ」
セルゲイ「? 何がデスカ?」
池田「……あんたが失職したのはほぼ俺のせいだ」
セルゲイ「アア、その事デスカ」
池田「俺が給料受け取る時にあんなワガママ言わなければ――」
セルゲイ「ソレは違いマス」
セルゲイ「……李下に冠を正サズ。勘違いをされるヨウナ状況デ個人的なプレゼントをした私がいけないのデス」
池田「……でもな」
セルゲイ「ソレに私は後悔も何もしてイマセンカラ」
池田「……え?」
セルゲイ「一日一善。私の流儀に従ったまでの話デス。ダカラ池田サンが気を病む必要は何もアリマセン」
308
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:50:17 ID:Izr0mY9U
池田「……そうか」
池田「……なぁ、あんたは酒、好きか?」
セルゲイ「エ?勿論好きデスガ……」
池田「ロシアの酒っつーとウォッカか……この店にあればいいが」
セルゲイ「池田サン?」
池田「なぁ親父、この店にウォッカって置いてるか?」
店主「一本だけならあるぜ。……値は張るぞ。一本しかねぇしな」
池田(親父、ちょっと屈め)ヒソヒソ
店主(あん?)ヒソヒソ
池田(……絶対に大声出すなよ)
店主(……お前何言って――)
チラッ
店主「なッ!!」ガタッ
池田(大声出すなっつったろ!)
店主(お前、これ、カップヌードルじゃねぇか!どこで手に入れたんだこんなモン!)
309
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:55:43 ID:Izr0mY9U
池田(詳しくは言えないが……どうだ?ウォッカのボトルでもお釣りが来るだろ?)
店主(……お釣りどころじゃねぇぞ。い、いいのか?受け取ったらもう返さねぇぞ。やっぱやめってのもなしだぞ)
池田(おう。今日の支払いはこれで頼むぜ。だからウォッカくれ)
池田「……じゃぁ親父、ウォッカをくれ。ボトルでな」
店主「あいよッ!」
セルゲイ「……池田サン、流石にお酒まで奢られる訳ニハ――」
池田「一日一善だっけか。まぁ、俺もそれをやってみたくなっただけだ」
セルゲイ「池田サン……」
店主「はいウォッカお待ち。ストリチナヤって銘柄だ。まぁ、店にはこれしか無いんだが」コトッ
セルゲイ「Столичная……故郷の、お酒デス……」
封を切り、グラスへ透明な液体を注ぐ。
アルコール度数の高い酒独特の鼻をつく香りが、ふわりと広がった。
池田「俺も少し貰うかな」トクトク
セルゲイ「……アリガトウ、池田サン」
池田「セルゲイ、乾杯しようぜ」
310
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 17:13:46 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「……За встрe'чу 」チン
池田「За встрe'чу 」チン
チビリ
池田「……結構キツいな、コレ」
グイッ
セルゲイ「ッハァ!生き返りマス!我々ロシア人にとってウォッカは命の水デス!」
池田「そりゃ良かった!」
セルゲイ「……何とお礼を申し上げれば良いノカ、生きている内にこのお酒が飲めるとは思っていませんデシタ」
池田「……思ったんだが」
セルゲイ「ハイ?」
池田「あんた前より日本語流暢になってないか?」
セルゲイ「……アア、その事デスカ」
セルゲイ「職場ではわざと訛らせて喋ってマシタカラ」
池田「?」
セルゲイ「外国人は外国人らしくシテイナイと、色々と不便ナンデスヨ」
池田「……滑らかに話せた方がうまく行くような気がするんだがな」
311
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 17:32:36 ID:5au.qJlY
失業云々を除けば、手放しで良い話と言えるんだがなぁ
312
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 19:26:26 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「ココのエリアを管理する者が我々に求めているのは単なる労働力デス」
セルゲイ「ソシテ地元の人間に取って代わるような外国人は排除対象にアリマス」
池田「……使えない地元の連中より、やる気のある優秀な奴を雇うべきだと思うが」
セルゲイ「私が優秀かどうかはさて置き、地域の雇用を減らす事は得策ではナイデショウ。最終的にソレは私たち外国人にも牙を向くことにナルノデスカラ」
セルゲイ「……デスガ、一番問題なのは私がロシアの元軍人という点デショウ」コトッ
池田「国がロシアだと何かマズいのか?」
セルゲイ「……池田さん、数年前のカカオ戦役をご存知デスカ?」
池田「北の人工降雪地帯の?氷の下から見つかったチョコレート倉庫の利権争いとか、そういうのだった気がするが」
セルゲイ「ソレデス。……管理者を名乗る連邦と飢えに苦しむ民衆との戦いデシタ」グイッ
セルゲイ「……祖国は心から愛シテイマス。タダ、発見した食料を分け合う事なく独占しようとした連邦の判断は愚行と言う他アリマセン」
セルゲイ「……最も、当時私がテロリストと断じ、民衆と敵対した私が言える事ではないのデスガ」
池田「……じゃぁあんた――」
セルゲイ「お察しの通りデス池田サン。私はその連邦側の兵士、チロルチョコを管轄する指揮官デシタ」
池田「…………」
セルゲイ「攻めやすく守り難い地形。ソシテ貯蔵量の多さ故に、カカオ戦役の中で最も熾烈な戦いが繰り広げられた場所でもアリマス」
313
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 20:21:32 ID:3.KblPgM
チョコは美味いからな……困窮した状況なら戦争になっても仕方ないか
314
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 20:36:11 ID:rHODJDww
カップラーメン>>>>>>ウォッカてwwww
315
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 23:23:02 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「……国に忠を尽クス。ただソノ為に私の部下たちは命を捧げ、敵を駆逐し……そして散って逝きマシタ」
セルゲイ「私や同志たちが倒してきたテロリストが、単なる一般市民だという真相が分かったノハ……瀕死で担ぎ込マレタ野戦病院の中での事」
セルゲイ「管理局は祖国を鎖国化し、誤った知識を兵士に植え付ケ、愛国心を体の良い餌にして利権を握っていたダケデシタ」
セルゲイ「私の任務には正義も大義も、何も存在していなかったノデス……」
池田「…………」チビリ
グイッ
セルゲイ「……最終的に倉庫は陥落シ、ソレが決定打とナッテ管理局は解体されマシタ」
セルゲイ「今ではソノ戦いは『聖戦』と呼ばれていマス。……国民が自らの手デ国家を取り戻し、実際多くの人々を飢えから救いマシタカラ」
池田「こいつの流通が多いのは、それが理由だったのか……」
セルゲイ「……私は決して祖国へ帰る事はデキマセン」
セルゲイ「国からスれば管理局の生き残リなど逆賊でしかナク、また祖国の外でハ私は単なる元殺戮者ダ」
セルゲイ「真実も知らズ散っていた同志たちを思エバ、兵としての過去も捨テル事も出来ナイ」
セルゲイ「……ダカラ、故郷のお酒を飲む事も、二度とナイと思ってイマシタ」
池田「…………」コトッ
セルゲイ「……改めてお礼を言わセテクダサイ。спасибо、本当に、アリガトウ」
316
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 03:36:41 ID:yDksmxrs
セルゲイ「フフ。シカシアルコールが入ると暗くナルのが私の悪い癖デス。コンナに美味しいお酒なのに本当に申し訳ナイ」
池田「…………」スッ
セルゲイ「……池田サン?」
池田「亡き同志に」
セルゲイ「池田サン……」
セルゲイ「亡き同志ニ。……そしてアナタに――」
セルゲイ「За дружбу」チン
池田「За дружбу」チン
阿部「……ザ・どるージブ?で合ってるかな、池田さん、セルゲイさん」スッ
セルゲイ・池田「…………」スッ
セルゲイ「За дружбу!」チンッ
池田「За дружбу!」チンッ
阿部「ざっ、За дружбу!」チンッ
グイッ
コンッ!
池田「――ッカぁ!効くなぁコイツはァ!」
阿部「ハーーッ!く、口がッ!喉がッ!焼けそうですっ!?」
セルゲイ「Хорошо……素晴らシイ」
317
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 19:40:58 ID:yDksmxrs
――――
阿部「むにゃむにゃ……にひひ///」
池田「っへー!あんたがマンガ好きだとはね!」
セルゲイ「ヨク言われマス。見た目のイメージと全く噛み合わナイ、と」
池田「でさ、でさ。それでどうして一番好きなのがドラゴンボールなんだ?」
セルゲイ「私は初期のRR軍と戦っていルぐらいが好きナンデス。ウパのエピソードが特ニ。後半の戦う部分はアンマリ、デスネ」
池田「俺はベジータ編だと思うんだけどな……まぁその続きが見つかってないのが問題だけど」
セルゲイ「ベジータ編のラストですか?」
池田「ああ、結局悟空が勝ったのかベジータが勝ったのか、分からないままでさ……」
セルゲイ「ソレならウチにその巻がアルと思いマス。……ロシア語デスケド」
池田「マジかッ!?ロシア語でも何でもいい!続きが見れるなら何だっていいさ!」
セルゲイ「池田サンは本当にマンガ好きなんデスネ」
池田「『面白い』ならな。面白いんだったらどんなもんでも首突っ込んで確認しないと気が済まないんだ」
セルゲイ「……フフ、故郷を思い出しマスネ」
池田「あ……何か、俺マズいこと言ったか?」
318
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 19:46:48 ID:yDksmxrs
セルゲイ「イエイエ、違いマス。思い出したノハ近所の幼馴染デスヨ」
セルゲイ「アナタと同じくアニメやマンガが好きで堪らない人デシタカラ……池田サンを見てタラふと、思い出したんデス」
池田「へぇー、じゃぁ俺と同じで相当『オタク』だったんだな」
セルゲイ「エエ。アア、ソウソウ。彼には面白い話があるんデスヨ」
池田「面白い話?」
セルゲイ「彼はトビキリ優秀な数学者デシテネ。失われてシマッタ公式をこの世蘇らセル、ソンナ研究を続けてイルとらしいデス。私にはよく分かりまセンガ」
池田「……頭が良さそうな人だな」
セルゲイ「実際頭は良いのデショウガ、彼の出した論文がケッサクでシテ」
池田「ろ、論文?俺はエンタメ以外はからきしだぞ?」
セルゲイ「『ドラゴンボールはこの世にいくつ存在するのか?』」
池田「…………」
セルゲイ「ネ。面白いデショ?」
池田「……それ論文なのか?」
セルゲイ「論文デス。検索をかければライブラリにもあるハズデスヨ」
池田「ぷっ……あっはっはっは!た、確かにそりゃ傑作だ!」
319
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 07:17:20 ID:ARxoMkyQ
3.14だ…!
320
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 17:38:26 ID:VHmfi536
セルゲイ「難しい事はよく分かりませんが、最終的にドラゴンボールは約3.14個。円周率とほぼ同じになるそうデス」
池田「ハハッ。何をどうやったらそんな数字が出るんだかな」クピッ
セルゲイ「デスヨネ。私は何かのジョークかと思っテ盛大に笑い飛ばしてマシタガ、本人は至っテ真面目デシタ」
池田「いやー、頭の良い連中が何を考えてるのかなんてさっぱり分からねぇな」
セルゲイ「……タダネ、池田サン」
池田「ん?」
セルゲイ「彼が何を思っテ数を割り出ソウとシタかは定かデハアリマセンガ……」
セルゲイ「意外とその数字には信憑性がアルと思いマセンカ?」
池田「んー、そりゃどういう理屈でだ?」
セルゲイ「ドラゴンボールは7つ揃えて初めテ、願イが叶うモノデス」
セルゲイ「……彼が出シタ答えは3.14個。7つに満たナイ」
セルゲイ「ツマリ、現実には願いが、アルイハ奇跡と言ったモノは起こり得ナイ――」
セルゲイ「ソウイウ結論を暗ニ示しているのではナイカト私は感じマシタ」
池田「……なるほどねぇ。そういう物の捉え方もあるかぁ……」クピッ
セルゲイ「……ト言ウト?」
321
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 17:50:33 ID:VHmfi536
池田「俺は逆に3.14個『も』ある、と感じたからさ」
セルゲイ「『モ』?」
池田「ああ。割合にして半分弱あるって事だろ?」
セルゲイ「…………」
池田「0じゃないなら、いいんじゃねぇのか」
池田「そいつが半分しかないと思ったのか、半分もあると思ったのかは……まぁ分からないけどよ」
セルゲイ「……要スルに3.14個しかナイと言うのは確率の数値で、極所的ニハ7つに成り得ルと?」
池田「まぁ、だとしたら十分すぎる位だ」
池田「何よりドラゴンボールが『ない』んじゃなくて『ある』って話だからな」
池田「3.14個しかなくても、ひょっとしたら小さい神龍でも呼び出せるかもしれないしな」
セルゲイ「……池田サン、アナタは面白い人デスネ」
池田「よく言われるよ。……変人だとか図々しいだとかな」
セルゲイ「イエ、イイ意味で言ってるンデス。彼もアナタと話せたらきっと喜ぶデショウ」
池田「……やっぱり同類扱いしてるじゃないか」クピッ
――バァンッ!
322
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 19:30:13 ID:VHmfi536
入口の扉がけたたましい音を立てて開け放たれた。
店内の客の視線が一斉にそちらへ向かい、そしてすぐに離れていく。
見慣れた作業着を着た男が、両手を広げてニタニタと笑みを浮かべている。
――貧相な下半身とムキムキな上半身、そして脂ぎったゴリラ顔。
できれば顔を合わせたくない男がそこにいた。
池田「……セルゲイ、場所を変えよう」
折角の酒がまずくなってはかなわない。椅子から軽く腰を浮かし――
アニキ「よォ、池田」ニィ
……あっさり見つかった。
アニキ「ン?もう帰るところか池田ァ」
池田「……そうですよアニキ。明日早いんで、もう帰ります」
アニキ「まぁまぁ、多少融通利かせてやるから一緒に飲もうぜ、なァ?」
池田「お気持ちはありがたいですが、結構です」
アニキ「……そうか、じゃぁ言い方変えるぜ。黙ってそこに座り直せ池田」
池田「……はい?」
323
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 19:41:13 ID:VHmfi536
アニキ「池田だけじゃねぇ。ここにいる連中全員そこから動くな」
ザワザワ…
池田「……アニキ、一体何が――」
アニキ「黙ってろってのが聞こえなかったのか池田」
アニキ「オイ、入って来いお前ら」
アニキの背後から音もなく複数の男たちが現れた。
全員が全員、真っ黒なローブを纏っている。
目深にかぶったフード。胸元に赤い刺繍で邪神のモチーフ。
ルシファーズハンマー
――堕天使の槌?
何故ここに。それもこんなに大勢で――
店主「……おい困るぜ旦那。店で勝手な事されちゃよ」
アニキ「なぁにすぐ済むさ。それに善意でやってやるんだ。勿論無償でだぜ?」
店主「? 何をだ?」
アニキ「――『悪魔狩り』だよ」
アニキ「善人をかどわかすクソッタレを退治しに来てやったのさ」
324
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 20:26:57 ID:ZADczBsc
アニキィ…
325
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 21:16:49 ID:ITzyWluU
こんなのはアニキじゃねぇ……クソアニキだ!
326
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 02:36:35 ID:PcY6XfoA
スッ
アニキ「――天にまします我らの父よ、邪神ケイオスよ」
『我らの父よ、ケイオスよ』
アニキ「あなたが抱く神の園を悪魔の血で汚す行いを、我らの罪をどうか赦したまえ」
『我らの罪を、彼らの罪をどうか赦したまえ』
アニキ「我は神罰の代行者。御手を煩わせることなく、我らが剣となり矢となり、あなたの、我らの敵を討ち果たさん」
『我らは剣なり。我らは矢なり。槌を振り翳し、悪魔を屠る代行者なり――』
ギュッ
唐突に左腕を強く掴まれた。
見れば阿部さんがひしとしがみついている。
池田「……え?」
阿部「あ……あ……ぅ……」
池田「阿部さん?」
俺は顔を見て、何が起こっているか即座に理解した。
焦点の合わない大きく見開かれた目。青ざめた表情。
327
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 04:00:25 ID:PcY6XfoA
――今、阿部さんは『思い出している』。
何かを切っ掛けにして――
彼女は青ざめた唇を小さく動かし、
阿部「……わ、私を……私が最初に、助ケを求めタ、ぅ……」
池田「落ち着いて阿部さん。助けって誰を――」
阿部「そシて私ヲ、ぐっ、うっ襲った、あノ、あァ……」
冷たく、震える指先で、彼女は1人の人物を示した。
……黒衣の集団の中でたった1人、薄汚れた作業着を着ている男を。
男は片膝をついた姿勢を取り、さらに祈りの口舌を続ける。
ルシファーズハンマー
アニキ「――我、堕天使の槌階級第三位、洗礼名スケィスの命を持って、神罰を代行する」
スケィスと名乗ったアニキは、工業用の特殊な手袋を緩慢な動作で引き抜き、
手の甲をこちらに向け、胸に手をかざす奇妙な格好を取る。
池田「――ッ!」
――アニキの右手の甲には、『C』の焼印が、醜く、黒く浮かび上がっていた……
328
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 09:04:01 ID:TKhROi8k
おいおい、流石にヤベーだろこれ。どうすんだ?
329
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/17(金) 18:15:12 ID:YU58070.
――――
連続強姦事件の犯人は顔を隠し、複数の人物を犯し続けた。
その犯人に繋がる唯一の情報は右手に焼印があることのみだった。
だが、もう1つの確実な情報が存在したのだ。
……『声』、という実に有力な情報が。
襲われた被害者にしか分からない、もう1つの証拠。
阿部さんもあの日聞いたであろうその『声』の主が、目の前にいる。
手袋で隠れていた焼印。背格好。体臭。行動範囲。声。……すべての要素がパズルのようにするすると当てはまっていく。
――アニキが、こいつが、犯人。
池田「…………」
――震えている。
彼女は恐怖で。
俺は――
奥歯がぎちりと妙な音を立て、口の中に鉄の味が広がった。
330
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/17(金) 18:36:05 ID:YU58070.
――――
スケィス「――っとまぁ、決まりなんでね。形式ばらせてもらったけどよ」
池田「…………」
スケィス「池田ァ、俺ァな、堕天使の槌の幹部さまなんだよ。どうだ?驚いたか?」
池田「…………」
スケィス「おっかねぇ顔すんなよ池田ァ。折角のカワイイ顔が台無しだぜェ?」
スケィス「幹部っつっても俺のポジはお忍びでよ。表立って司教さまみたいなことはできんのよ」
スケィス「何しろ俺は『スケィス』!死の恐怖を司る実行部隊の長だからよ!死神って呼ばれて恐れられてるんだぜェ?」
スケィス「格好いいだろ?ん?」
池田「…………」
スケィス「……ノリ悪いなテメェ。……まぁいいや、俺の邪神の目を持ってすれば悪魔を探すなんざ朝飯前だからな」ハン
池田「…………」
スケィス「むーん……どうやらこの店内のどこかに悪魔が潜んでいるようだなァ……」ヌーン
スケィス「む、近い。近いぞ」ヌーン
スケィス「……見つけたぞォ!おい、そこのポニーテールの奴!」
331
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 01:29:47 ID:XSXkTWL2
阿部「…………」ビクッ
スケィス「そうだテメェだ。俺の目に狂いはねぇ、テメェが悪魔だ」
『――おぉ……あれが悪魔……』
『やはり地の底より神の園を――』
『――まるで人ではないか……何と卑劣な……』
スケィス「店にいる野郎ども!よく聞け!ここに悪魔がいる!」
スケィス「外殻の遥か地下深くからやってきた悪魔、つまり『女』だ!」
スケィス「女は俺たちを誑かし、地の底へと引きずり込もうとする恐ろしいバケモノだ!俺たちはそいつを退治しにここへ来た!」
ザワザワ…
「女だって!?そんな馬鹿な――」
「――お、女なんて、め、迷信だろ?な、なぁ?」
「魅入られたら最後、骨と皮になるまで精気を吸い取られるって話を――」
スケィス「――とは言ってもすぐには信じられねぇ奴もいるだろうな」
スケィス「……だがそいつは、間違いなく女だ!悪魔だ!存在するだけで俺たちを蝕む災厄だ!」ビッ
スケィス「嘘ではない証にこいつを今この場で処刑し、悪魔である事を証明してやる!」
332
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 03:04:38 ID:XSXkTWL2
池田「アニキてめぇ……!このッ、クソ野郎……ッ!」
スケィス「おーおー。可哀想になぁ池田ァ……お前は悪くない。何も悪くないんだ……」
池田「……何を――」
スケィス「俺は知ってるぜ。お前は可愛くて従順な俺の後輩だ。だから分かるんだよ……」
スケィス「お前はその悪魔に操られているだけなんだろう……なァ?」ヒククッ
池田「……アニキ、まさかマジで堕天使の槌に――」
スケィス「俺に任せておけ池田ァ。教団には魅入られちまった人間を浄化する方法だってあるんだ」
スケィス「だから何も心配ない。今すぐ横にいるバケモノを俺たちが退治してやるからよ……」
スケィス「……おうお前ら」
『はっ』
スケィス「写真で一応確認してるとは思うが、池田には傷つけるなよ。……他はまぁ殉教者で片付けちまっても構わねぇが」
『はっ。スケィス様の仰せのままに』
池田「――ッ」
控えていた男たちのローブの裾がゆっくりと持ち上がり、彼らの不自然な膨らみの正体が明らかになった。
――アサルトライフル。全自動射撃が可能な自動小銃。詳細までは分からないが、人1人を蜂の巣にするには十分な代物だ。それが、約10丁。
黒々とした銃口がこちらに一斉に向けられる。阿部さんただ1人へと。
333
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 06:17:24 ID:nkVi2PEc
本気で、絶体絶命じゃねーか……
334
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 16:09:42 ID:pjqgWOtM
本気で彼女を殺すつもりだ。
守らねば――でも、どうやって?
こっちは丸腰。しかも相手は交渉が通じないイカれた狂信者どもだ。
――アニキがゆっくりと右手を上げた――
俺が弾避けになったとしても、気が動転した今の彼女では――
――笑みを浮かべながらその右手を――
クソッ!考えている時間はない!こうなったら彼女だけでも――
ドンッ
突然俺は左から右に向かって猛烈に突き飛ばされた。
継ぎ接ぎだらけ鉄板の床にしたたかに背中を打ち付け、悶絶する。
更に息をつく間もなく、今度は阿部さんがこちらに落下してきた。
ワケも分からず慌てて彼女を抱きとめる。
―― 一体、何が――
轟音。銃声ではなく、金属がひしゃげたような音だ。
音のした方角を見れば、再利用合金製の重いテーブルが不気味なほどあっさり宙に浮いている。
335
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 16:45:29 ID:pjqgWOtM
池田「セルゲイ……?」
テーブルを浮かした主は、想像を絶する速度で俺たちに駆け寄り、
飛んでいるテーブルの縁を掴むと、そのまま床に叩きつけて床にめり込ませた。
白いコートが重力を思い出したかのように、ひらりと舞い落ちる。
続いて、立て続けの銃声が店内を引き裂いた。
金属製のテーブルに銃弾が当たり、破裂音が至近距離で響き渡る。
――遮蔽物。
遅まきながらに気付いた。
この男は一瞬で俺たちを守る為の砦を作り上げたことに。
守れる位置に俺たちを突き飛ばし、テーブルを蹴りあげ、それを防壁にしたのだ。
セルゲイ「予告も無シに手荒な事ヲシテスイマセン。コノ手以外思いつかなカッタモノデ」
先ほどと変わらぬ穏やかな表情で俺に語りかけてくる。
銃弾の雨の中にも関わらず、セルゲイは極めて落ち着いた様子だ。
池田「……そうか。あんた元兵士だったな。ありがとう、助かったよ」
セルゲイ「いえ、まだ助かッテイマセンヨ池田サン」
336
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 17:18:36 ID:/75ytXOE
即死は免れた……ってところだな
337
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:24:32 ID:pjqgWOtM
ババババッ―
キン キンキンキンッ―
アニキ「――ッ――撃つのやめろっつってんのが聞こえねぇのかボンクラども!池田にも当たっちまうだろうが!」
『…………』
アニキ「ハァ……おい池田ァ。聞こえるか?」
池田「…………」
アニキ「2,3発当たっちまったかもしれないがよ、こっちに悪気はねぇんだ。そもそも的が動かなきゃ当たらなかった話だからなァ」
池田「…………」
アニキ「そこにいる真っ白いのは用心棒かなにかかよ……チッ、面倒臭ぇ真似しやがってまぁ」
アニキ「いいか、よく聞けよ池田ァ。こっちは銃をたっぷり持った集団で、そっちはたった3人だ。そこに立て籠もったってお前らには万に1つの勝ち目もねぇ」
アニキ「それにだ。……お前ら全員皆殺しにしようって言ってるワケじゃないんだぜ?」
アニキ「俺たちは悪魔狩りに来ただけだ。無用の血が流れるのは大司教様もケイオス様もお望みにならないだろうしな」
アニキ「ただその悪魔を俺たちに引き渡せばそれでいいんだ。間違っても池田――あとついでにその真っ白い奴にも危害は加えねぇさ」
アニキ「何だったらお前らに報酬として食料を与えてやってもいい。悪魔を逃さずに見張っておいてくれたってことにしてな」
アニキ「ん?どうだ池田ァ?悪い話じゃぁないだろう?」
338
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:41:51 ID:pjqgWOtM
――――
池田「……万事休す、か」
池田「…………」
池田「……セルゲイ」
セルゲイ「ハイ?」
池田「頼みが、ある」
セルゲイ「…………」
池田「阿部さんを助けて欲しい」
セルゲイ「……阿部さんヲ?」
池田「兵役を退いたあんたに……戦いで色んなものを失ったあんたに……こういう頼み事はしたくない」
池田「でも今俺に頼れるのはセルゲイ、あんたしかいないんだ」
セルゲイ「…………」
池田「無論対価は払う。与太話でも何でもなく、大量に食料のある場所を知ってる。それを全部あんたにやるから、阿部さんを助けて欲しいんだ」
セルゲイ「……池田サンは?」
池田「……この状況を無傷で切り抜けられるなんて思っちゃいないさ」
339
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:43:28 ID:/75ytXOE
食料なら、これから十二分に間に合う様になるのかな?
340
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 23:41:18 ID:pjqgWOtM
池田「俺が何とか時間を稼ぐ。だから彼女を脱出させて欲しい」
セルゲイ「…………」
池田「食料の場所は開かずのシェルターだ。開け方は阿部さんに聞けば分かる。飲料水に食料、何だってある」
池田「そうだな、あんたの職を取り上げちまった……せめてもの罪滅ぼしだ」
池田「……代わりに教団と敵対しちまうおまけが付いちまうが……一生食うには困らなくなるはずだ」
ガンッ
アニキ「――なァ!!聞いてんのかよ池田ァ!!」
池田「!」
バッ
池田「この通りだ。頼む!」
セルゲイ「…………」
セルゲイ「池田サンは、アナタは助かりたくないのノデスカ?」
池田「……助かりたい。できればな」
セルゲイ「デハ、何故彼女を優先スルのデスカ?」
池田「……一週間前だったら、自分を優先しただろうな」
341
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 00:01:39 ID:/wNcbKrU
池田「ここじゃそれが当たり前だし、俺だって生に齧り付いて生きてきた」
池田「……でもな、今はもう駄目なんだ」
池田「俺はもう……自分より何より、阿部さんが大切なんだよ」
池田「俺だって死にたくはない。死にたくはないが……俺が犠牲になる事で阿部さんが少しでも長く生きられるなら――」
池田「――命は惜しくない」
セルゲイ「……本気で言っテいるのデスネ?」
池田「……ああ。阿部さんを犠牲にした人生に意味が、幸福があるとは思えない」
セルゲイ「…………」
セルゲイ「分かりマシタ。引き受けマショウ」
池田「……セルゲイ。ありがと――」
セルゲイ「アナタと阿部サンを助けマス」
池田「……え?」
セルゲイ「池田サン、アナタは嘘ツキデスネ」
池田「は、あ……え?う、嘘つき?」
セルゲイ「エエ。さっきアナタは自分の事を変人デ図々シイと言っテイマシタ」
342
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 03:41:10 ID:/wNcbKrU
セルゲイ「本当に図々シイ人ナラ、最初カラ自分も含メテ私ニ頼むハズデス」
セルゲイ「……ソシテ変人でもナイ。アナタが阿部サンを想う気持ちハ、気高く愛に溢れてイマス」
池田「……セルゲイ」
セルゲイ「アナタは阿部サンの為なら自分がどうナッテモ構わナイと言う、迷いなき覚悟を見セテクレタ」
セルゲイ「大切な人を思いやる優しさの心。自己を犠牲に、殉じようとする勇気……」
セルゲイ「私はアナタの魂ニ、黄金の精神を見マシタ……誇り高く、崇高で、犯しがたい精神を……」
セルゲイ「……イイ人が損をスル世の中を変エル。ソレは私にはできナイ事デスガ――」
セルゲイ「イイ人のアナタ達を救う事はデキるかもシレマセン」
池田「……! セルゲイ、まさか――」
優しく青い眼で微笑みながら、セルゲイは立ち上がった。
彼は膝の埃とガラス片を軽く払うと、アニキ達の方へと歩き出す。――ふと思い出したように肩越しにこちらに振り返り、
セルゲイ「アア、ソレと食料の件デスガ……私はイリマセンヨ」コッ…
セルゲイ「Столичная――ウォッカ。故郷の酒。アレだけデ有り余ル程の対価デス」コッ…
セルゲイ「……ソシテ何よリ」コッ…
セルゲイ「私には素敵な友人ヲ守るという、己を捧げるに足ル理由がアリマスカラ」コッ…
343
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 07:03:03 ID:dy6zoLJo
セルゲイさん……どうするつもりなんだ?
344
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 21:08:51 ID:Dic4SXhk
黄金の精神…
安価のこなし方が秀逸過ぎてwktkが止まらない
345
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:06:37 ID:n/WCvE4g
>>337
修正
アニキ→スケィス
346
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:11:38 ID:n/WCvE4g
――――
スケィス「おっとそこで止まりな、真っ白いの」
セルゲイ「…………」
スケィス「どっかで見たと思ったら……ハッ、ちょっと前にウチの現場にいたロシア兵か」
スケィス「失職して用心棒ってところか。まァ、お前さんの経歴からすりゃァ再就職先なんてそんなもんだよなァ」ヒククッ
セルゲイ「…………」
スケィス「おゥ。投降したいなら条件があるぜ。池田を説得して悪魔をここに連れてこさせるんだ」
スケィス「そうすりゃお前もさっき逆らったのチャラにして無罪放免だからよ?なァ?」
セルゲイ「私は……話合いに来まシタ」
スケィス「……話合いだァ?」
セルゲイ「エエ。悪魔をスグ処刑トイウ形ではナク、何か別の方法デ穏便に済ませラレナイカト思いマシテ」
スケィス「……何言ってんだお前?」
セルゲイ「アナタたちの説法の中ニモ『例え誰もが許さぬ罪人であろうと、我々は赦す』とアリマス」
スケィス「……まさか悪魔に改心させるとか……そういう事言ってるのか、テメェは?」
セルゲイ「仰る通りデス」
347
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:30:19 ID:n/WCvE4g
スケィス「……ハァ……お前ははまともだと思ったんだがなァ……」
スケィス「悪魔は悪魔なんだよ。罪人どころか人ですらねぇんだ。さっき言っただろ?存在するだけでアウトなんだよ」
スケィス「まァお前も悪魔に魅入られちまったんだろうが……池田と違ってお前に良くしてやる義理はねぇな」
スケィス「そんなワケでよ。悪魔に加担した罪で、お前処刑な」
セルゲイ「……ソウデスカ」
スケィス「……意味分かってんのか?お前をぶっ殺すって、そう言ってるんだ、俺はよ」
セルゲイ「…………」
スケィス「ああ、そうだ、丁度いいや。冥土の土産に教えてやるよ」
スケィス「――お前をクビにしたの、俺なんだわ」
池田「なッ……!?」
セルゲイ「…………」
スケィス「知ってるぜ。池田に給料オマケしてやったんだってなァ?勝手に俺の池田に色目使いやがってよォ……クソが」
スケィス「……まァ、いいか。こうして殺せるワケだしな」
アニキの脇に控える黒ローブ二人がこちらから銃口を外し、セルゲイに向ける。
スケィス「――死ね」
348
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 01:43:30 ID:f1YLnb4s
死なないでくれ、セルゲイさん……!
349
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 03:43:23 ID:n/WCvE4g
虫を払うような手付きで、アニキの手が振り下ろされた。
瞬間――視界に入るすべての出来事がスローモーションのように流れ始める。
――セルゲイに向かって手を伸ばそうとする――意識だけで、手が前に出ない。
――セルゲイの方に駆け寄ろうとする――やはり意識だけで、足も動かない
それならば声を、と腹部に力を込め、
池田「セル――」
ババッ――
名前を完全に呼び終える前に、黒ローブの手元でマズルフラッシュが炸裂した。
近距離での銃撃。
当然、近くの遮蔽物へ隠れる時間など、ありはしない。
銃身の中で加速を得、セルゲイに向けて放たれた弾丸は――
・・・・・・
――何もない宙空を通過した。
350
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 22:50:19 ID:PU3LSAQA
!?
351
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/22(水) 03:07:14 ID:KdCKBP/s
――――
アサルトライフルを構えていた二人はさぞ戸惑ったはずだ。
目の前のロシア兵は白い残像を残して、目の前から掻き消えてしまったのだから。
……勿論セルゲイは消えたのではない。
彼らも視線を少し下げれば――あるいはフードを取っていれば理解できたかもしれない。
――セルゲイが銃弾を『避けた』という事実を。
アサルトライフルのトリガーが引かれる直前、セルゲイは片足を軸にして独楽の如く高速回転し、異様に低く腰を落とした。
更に両手を遠心力を利用して左右に広げ、腕を虚空に突き出し、開手。
刹那、――金属音。
コートの右袖と左袖から、ハンドガンが視認できない程の速さで飛び出し、ぴたりとセルゲイの掌に吸い付いた。
回転運動を終え、敵を正面に捉えた彼は、空でも見上げるかのような自然さで斜め上を見上げた。
――発砲しているアサルトライフルの銃口を眺めている?――
視覚から微かに意識をそらしたその直後――
2発の銃声が店内に響き渡り、黒ローブの2人が床へと崩れ落ちた。
352
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/22(水) 06:50:14 ID:MKXU4ZL2
スタイリッシュや
353
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 09:54:10 ID:xdFCEZzw
だれかいますかー
354
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 10:08:12 ID:8dftAswQ
頑張れ。完結まで見てる
355
:
108
:2013/05/23(木) 18:35:24 ID:48finqVI
>>353
ageていただけるのは嬉しいのですが……
そのレス内容だと私がレス催促してるように見えるので、勘弁してください。
それだけでROMってる方が(いるとすれば)そっ閉じする可能性あるので。
>>354
モチベ上がります。
ついでに
>>248
安価をまとめると展開の予測が容易になる(かもしれない)ので、使った数だけ書いておきます。
現在52個消費 52/86
続きは夜投下します。
一度に投下する数が少なくて申し訳ない。
356
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 19:43:06 ID:wJfpumN.
おお来たか
ROM専だが楽しみに待ってるぜ
357
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/24(金) 02:56:31 ID:ekXK1jis
スケィス「なッ……」
一瞬の内に仲間が2人倒されたことに絶句するアニキ。
セルゲイは構えていたハンドガンを下ろし、アニキの方に向き直った。
セルゲイ「私の心臓、腹部付近にポイントし、射撃――」
セルゲイ「明確な殺意と敵性ヲ確認したノデ、反撃シマシタ」
セルゲイ「……タダ、命までは奪っテイマセン。適切な処置をスグにスレば助かるデショウ」
池田「……え?」
よく見れば黒ローブの2人は右手を押さえて地面に屈み込んでおり、足元には小さな血溜まりが広がっている。
どうやらセルゲイは先程の2発の銃撃で2人のそれぞれの利き腕を撃ち抜いたらしい。
つまり、あの状況で敵を殺さずして無力化したというワケだ。……いよいよもって人間技じゃない。
彼は一体――
『悪魔だ……』
アニキの後ろに控えていた男がぼそりとつぶやいた。
「白コート、白髪、二挺拳銃……あ、悪魔……」
男は震える手でフードを取り、素顔が露わにする。
358
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/24(金) 04:41:42 ID:ekXK1jis
右頬に目を引く大きい傷跡があり、それがスキンヘッドの側頭部にまで届いている。
体格と銃を持つ構えが他の者より様になっている様子から鑑みるに、元傭兵か何かだろうか。
恐れるものなどなさそうな――むしろ見る者が恐れるであろう男が、明らかに恐怖の表情を浮かべている。
スケィス「あァ!?悪魔に決まってるだろうが!俺たちは悪魔狩りに来てるんだからよォ!」
動揺を隠す為なのか荒い口調でアニキが叫ぶ。
頬傷の男は青ざめた顔で慌てて首を横に振った。
「ち、違いますスケィス様。あの男です、あの男が悪魔なのです」
「頭髪、肌、服装に至るまで白ずくめの男……二挺拳銃の名手……間違いない……管理局の、白い悪魔……」
スケィス「白い、悪魔だと……?」
「……最後の聖戦で、解放軍の死体の山を築き上げた管理局の歩兵、セルゲイ・ソコロフ……」
「白い死神、白い悪魔、災いをなす白き者、呼び名は様々ですが、言葉の意味するところはすべて同じ――」
「――即ち、敵対すれば死あるのみ、と」
スケィス「ッ!こッ、こいつがそうだってのか……!?」
「銃弾を回避し、トリガーにかける指だけを狙撃する――そんな腕を持った男を、私は他に知りません」
スケィス「クソッ!何だってそんな奴がこんなところに――」
359
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/26(日) 17:04:06 ID:Y2S4KQgY
セルゲイ「話し合いにしまショウ、スケィスさん」
スケィス「!」
セルゲイ「私を殺そうとシタ事は水に流しマス」
ザワザワ…
スケィス「…………」
「ス、スケィス様……」
スケィス「……こいつは悪魔を庇った」
スケィス「……こいつは俺たちの同胞を傷つけた」
スケィス「……許される事か?いや、断じて許されないッ!」
スケィス「聞け!我が同胞たちよ!我らの身は邪神ケイオス様に捧げている!」
スケィス「そう!我らの血と肉はケイオス様の御身そのものだ!」
スケィス「その我らを傷つけたこの男は、神の体を傷つけたことに他ならない!」
『おお……!』
『そうだ……!我らの体はケイオス様に捧げている……!』
『あの男は神に対して反逆したのだ……!』
360
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/26(日) 17:17:17 ID:Y2S4KQgY
スケィス「断罪せよ!この男をこの場所から生かして帰してはならない!」
ルシファーズハンマ-
スケィス「我ら堕天使の槌!我ら剣なり!我ら矢なり!槌を振り翳し!悪魔を屠る代行者なり!」
『我らは剣なり!我らは矢なり!槌を振り翳し!悪魔を屠る代行者なり!』
「し、しかしスケィス様……!」
スケィス「……白い悪魔だかなんだか知らねぇが、何年も前の話だろう?」
「それは……はい」
スケィス「強力な後ろ盾、腕の立つ部下がいて戦いってのは成り立つんだよ」
スケィス「……あの男にはそのどっちも今はねぇ」
スケィス「だったらその両方で勝る俺たちが負けるはずがねぇ」
スケィス「……それにそういう話はな、多少なり尾ヒレ羽ヒレつくもんだ」
「な、なるほど……」
バッ
スケィス「囲め!殺せ!人の形が分からなくなる程に鉛の玉をぶち込んでやれ!」
『はッ!』
アニキの怒号に合わせて、後ろに控えていた黒ローブたちがセルゲイを中心に扇状に広がった。
361
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/26(日) 19:02:00 ID:Q9pgwye6
尾ヒレ羽ヒレの方が少ないってオチの場合もあるけどな
362
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/27(月) 18:33:58 ID:ivvcQZd6
一方セルゲイは両腕を下げたまま何の構えも見せていない。
セルゲイ「……池田サン、危ないデスカラ伏せていテクダサイ」
振り返らずに俺たちに注意すると、殺気立つ信者たちに視線を巡らせる。
セルゲイ「…………」
セルゲイが彼らのエリアへと一歩を踏み出した。
―コッ
静寂の中のセルゲイの軍靴の足音。
これが戦闘開始の合図となった。
セルゲイに対して信者たちが一斉に射撃。アサルトライフルから軽く10を超えるマズルフラッシュが炸裂した。
先程の戦闘以上に、逃げ場のない銃弾の嵐が吹き荒れる。
だが――彼は退くどころか地を這うような低姿勢で『前へ』出た。
正面の信者が一瞬呆気に取られ少し動きを止めたが、すぐにセルゲイにポイントしフルオートで発射する。
セルゲイは雨のように降りかかる弾丸をまるでボールを避けるような最小限の動作で躱し、正面へ肉薄しつつ左右に発砲した。
サイドの信者2人を撃ち抜き、正面の信者へほぼゼロ距離まで接近――
――アサルトライフルの銃身部分を左から裏拳を当てて銃口を逸らし、右後方で同士討ちを恐れ射撃を躊躇っていた信者に銃弾を浴びせた。
363
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/28(火) 02:35:44 ID:56XXLOJk
――白い外套が舞い、次々と信者が地面に倒れ伏す。
床にはおびただしい数の薬莢が転がっているが、セルゲイはただの一つも被弾していなかった。
……アニキが率いる信者たちが弱いのではない。
銃を構える姿、そして彼に向けて容赦なく銃撃する彼らの強さは控えめに言っても傭兵クラスだろう。
セルゲイが別次元の――頬傷の男の言葉を借りるならば悪魔的な能力の持ち主なのだ。
兵士として積み重ねた技術が、経験が、そして何よりも才能が彼らを圧倒的に上回っている為に、弾を当てる事はおろか掠める事さえ許さない。
そして彼をして一層彼たらしめている動作――
――射撃と体術を同時に成立させる奇妙な武術が、攻防一体となり彼らを一瞬で屠り去る。
それは機能美を備えた一種の舞踏のようでもあった。
銃を持つ相手の至近距離まで敢えて接近する事によって、敵側の死角に回り込み、攻撃。
銃口の向きを瞬時に判断、弾丸の軌道を読み切り、同士討ちを誘い――あるいは発砲を躊躇させ、攻撃。
全ての所作に無駄はなく、洗練された動きには美しさすら感じる。
血を吹き昏倒する者がいる最中、傷一つ付かず優雅に、時に鋭く立ち回る白い服装の男。
セルゲイ・ソボレフという人間が一方的にすべてを支配する空間。
いつしか俺は幼い頃に公衆浴場で見た時代劇の殺陣を思い出していた。
364
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/28(火) 02:53:26 ID:2yHax/uw
④
365
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/28(火) 06:57:11 ID:O0eTKbM.
凄ぇ……文字から映画が視える
366
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/29(水) 04:51:52 ID:lYXiuPuo
――――
最後まで立っていた信者のアサルトライフルが沈黙する。
セルゲイの放った弾丸が眉間と心臓を撃ち抜いたからだ。
これで阿部さんとセルゲイを殺そうとしていた信者は全員いなくなり、
残ったのはケガをしている信者と頬傷の男、そして丸腰のアニキだけになった。
セルゲイは大きく呼吸を整えながら太極拳のように左右の腕を回し、
まだ赤熱しているハンドガンのマズルを、右は上へ向け、左は下に向け、ハンドガンで十字架を型作った。
そして深く呼吸をし、静止。
――残心。
剣道や居合道でいう、動作を終えたあとでも緊張を持続する心構え。
……見方を変えるならば、ここまでの戦いは型稽古に過ぎない、という事なのか。どこまでも底が知れない男だ。
コッ… コッ…
セルゲイ「スケィスサン」
スケィス「ひッ……こ、殺さなっ、殺さないでくれッ!たっ、頼むッ!」
367
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/29(水) 04:59:30 ID:lYXiuPuo
セルゲイ「マダ生きテいる方がいらッシャイマス」
スケィス「はッ、はぁ……」
セルゲイ「デハソノ方達の治療をお願いシマス。ソシテ今回はコレで手打ちにシマショウ」
スケィス「だっ、あ、そ……こ、断ったら?――」
―ジャキンッ
セルゲイ「今度は有象無象ノ区別ナく処理シマス」
スケィス「ひぃッ!わ、わっ分かった!退く!退くよ!」
頬傷の男の肩を借りて立ち上がるアニキ。
アニキがへたり込んでいた床には、謎の染みが広がっていた。
チビったのだろう。……ざまぁみろ。
店主「……おう、池田」
池田「親父さん、悪い事しちまったな。あんたの店なのに……だから片付けを――」
店主「それは気にするな。カップメンでどうとでもなるからよ」
店主「問題はそれじゃねぇ。このままここにいると危ないって話だ」
池田「! ……ああ。確かにそうだな」
368
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/29(水) 18:48:44 ID:lYXiuPuo
店主「さっさとここを離れな。そこのロシア人の……セルゲイだったか、あんたもだ」
セルゲイ「店主サンの仰る通リデス。彼らが報復に来る可能性がアリマス、場所を移シマショウ」
池田「まず知り合いの医者の所へ行こう。あそこなら近いし……何より阿部さんの容態があまり良くないからな」
阿部「…………」ハッ… ハッ…
店主「奴らが来たら見当違いの方角を教えて時間を稼いでやる。早い内にこのエリアを出た方がいいぜ」
池田「……親父、すまない」
店主「常連を大切にするのは商売人として当たり前だろうが。早く行きな」
池田「……ありがとう」タッ
店主「あ、おい!セルゲイ!」
セルゲイ「ハイ?」
店主「忘れ物だぜ」ヒュッ
パシッ
セルゲイ「……Столичная」
店主「口開けちまったんだ、最後まで飲んでやれ。勿体無ぇからよ」
セルゲイ「……アリガトウゴザイマス」
369
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/31(金) 15:47:12 ID:FTu.n9Bw
かっけぇーw
370
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/02(日) 19:10:25 ID:79tioz9g
ふむ。
>>108
さん、忙しいのかな?
371
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/03(月) 19:14:12 ID:61DcBnqg
――――
TDN「……そう。ごめんネェ、こんな遅くに働いてもらっちゃって」
「へへっ、姐さんの頼みとありゃぁ断る理由がねぇからよ」
TDN「あらヤダ嬉しい♪引き続きよろしくお願いできるかしら?勿論、報酬はたんと弾むわヨ」
「報酬なんて滅相もねぇ。それに姐さんに恩を返したいと思ってるの俺だけじゃぁねぇからな。顔見知りにも協力してもらうさ」
TDN「本当!頼りになるワァ〜。これはサービスよ♪」ンチュッ
――――
バタンッ
池田「……どうだった?」
TDN「池田ちゃん、悪い予感的中よ。教団の連中人海戦術でシラミ潰しに探してるみたい」
池田「やっぱりか……」
TDN「あたしのツテで嘘の情報あちこちバラ撒いてるから、ある程度は誤魔化せるけど……正直時間の問題よネェ」
池田「……すまない。厄介事を次から次へ持ち込んでしまって」
TDN「池田ちゃんが謝る必要はどこにもないわよ。悪いのはあいつらでしょ?それにあんなにカワユイ阿部ちゃんを悪魔呼ばわりとか私も許せないし!」
池田「……ありがとうドク」
372
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/03(月) 19:39:36 ID:61DcBnqg
コンコン
『ゴメンクダサイ。セルゲイデス。TDNサンのお宅はこちらでよろしいデショウカ?』
TDN「アラ、例のロシア軍人さん?」
池田「ああ。セルゲイ、合ってるぜ。鍵は開いてる」
ガチャッ
セルゲイ「失礼シマス」
池田「しかしよく迷わなかったな」
セルゲイ「池田サンの足跡を辿ればソコマデ難しくはアリマセン」
池田「……こ、この暗さでか?」
セルゲイ「念の為消しておきマシタ。アノ、池田サン、ソチラの方が……」
池田「そうか。2人は初対面だったな。紹介――」
TDN「ッありえなぁぁぁぁい!ちょっと池田ちゃんどういうことなの!?」
池田「なッ!急にバカデカい声出すなよ!何だよ!」
TDN「想像を絶するゴツイケメンじゃない!服の上から見ても分かるわ!何て美しい筋肉の持ち主なの……!」ブルブル
セルゲイ「オオ、やはりアナタが!初めマシテ。セルゲイ・ソボレフと申シマス」ペコリ
373
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/03(月) 21:09:23 ID:YSdicZJg
待ってました。支援
374
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/03(月) 22:32:47 ID:61DcBnqg
TDN「は、初めましてセルゲイさん。あたし、中松左馬之助光春って言います。あたしの事は気軽にミッチー♪って呼んでください///」
池田「…………」
セルゲイ「素敵なオ名前デスネ。私の事もどうかセルゲイと気軽に呼んでクダサイ、ミッチーサン」
TDN「セルゲイ……///」ポワァ
セルゲイ「アナタも美しい筋肉をシテイマスネ。ソノ大胸筋はドウヤッテ作りこんだのデスカ?」
TDN「アラやだ!さっきの聞こえちゃってたの!あたしったら超恥ずかしいわァ!ミッチー大失態!」
池田「…………」
――――
セルゲイ「周囲の地形をザッとデハアリマスガ、確認シテキマシタ」
池田「それで結構時間がかかったのか」
セルゲイ「視認が困難な場所に簡易のサウンドトラップ――日本で言うと鳴子を仕掛けるのに手間取りマシテ」
池田「……結構って部分撤回するよ」
セルゲイ「コノ家屋は明かりが漏れてイナイノデ隠れ家としてはカナリ優秀デス。ただミッチーサンの仰る通り、長時間の潜伏は厳しいデショウ」
TDN「目撃情報に頼ってる内ならまだいいけどねェ。デマばっかりって事に気が付かれたら、神様盾にして片っ端から家に押し入るのは目に見えてるもの」
池田「ここ以上に安全な場所が必要って事か……」
375
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/04(火) 00:13:21 ID:nsNvtel.
池田「…………」
池田「あるにはあるんだが……」
TDN「それって昼間阿部ちゃんと行ったシェルターの事かしら?」
池田「一応変な知り合いもそこにいるし、誰も入れる事自体を知らないってのは大きなメリットだと思う。けどな……」
TDN「阿部ちゃんのフラッシュバックが怖いのね」
池田「……いや、殺されかけた手前、他に選択肢はないよな」
セルゲイ「採掘場への道デシタラ明かり無しデモ先導デキマスヨ。見通しの悪い道を選ぶので、多少遠回りニハナリマスガ」
池田「どれ位かかるセルゲイ?」
セルゲイ「45分ト言ったトコロデショウカ。阿部サンを背負って移動スルナラ1時間は見た方がイイデショウ」
池田「分かった。ただ時間はあまりない。ギリギリまで阿部さんの意識が回復するのを待って――」
阿部「その必要はありません」
いつからそこに居たのか。彼女が部屋の入り口にもたれる形で立っていた。
顔色も悪く、まだ肩で息をしているような状態だ。ただでさえ線の細い体が強調され、まるで青白い幽鬼のように見える。
池田「……あ、阿部さん?」
彼女の体調を気遣う言葉が喉元で消え、名前を呼ぶだけに留まってしまった。
376
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/04(火) 02:05:08 ID:nsNvtel.
微かな違和感。
彼女が阿部さんである事に自信が持てなくなる――そんな奇妙な不安が漠然と胸の内を覆う。
目の前にいる人物が阿部さんである事は間違いない。美しい黒髪、顔立ち、姿形。どれも彼女である事を示している。
――そして俺は唐突に気付いた。
瞳。
彼女の瞳が、今日の昼間や昨日、もっと言うなら初めて会った時のものとまったく違っていることに。
記憶を取り戻したい、あるいは楽しい事や新しい事を知りたい――その感情を代弁するように大きく見開き、よく動いていた目。
それが閉じているのか開いているのか分からないほどに窄められている。
よく磨かれた琥珀のごとく太陽光を反射していた黒目は、目の細かい紙ヤスリをかけられたように輝きを失っていた。
阿部「状況は把握しています。ただまだ若干混乱を含んでいるので、整理が。……どこから話し始めて良いものか」
様々な思いを巡らせるには充分すぎる間を持って、昼間とは別人のように彼女は語りはじめた。
阿部「そうですね、まず……私は、『地上』――あなた達が『地下』と呼ぶ、外殻の遥か下から来ました」
冷たいながらも強い意思を宿した彼女の瞳を見て理解した。きっと、阿部さんは、欠けていた最後の記憶の歯車を取り戻したのだ。
同時に初めて彼女に会った時に感じた不気味さが足先から這い上がってきた。
その歯車が動かすのは、彼女と俺だけではない――遠くで、大きく複雑な何かが動き出す音を、聞いた気がした。
377
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/04(火) 19:40:48 ID:nsNvtel.
――――
池田「……阿部さんは、外殻の内側の人間」
セルゲイ「ソレナラ阿部サンが女性な事にも納得が行きマス。外殻の外での人という種を増やす方法はクローンに適宜頼っていく他アリマセン」
TDN「そしてクローンの媒体データに女性のものが一切ないのよねェ。だからここで女の子の阿部さんに会えたということは――」
阿部「そういう事です」
セルゲイ「……シカシ、驚きマシタ。外殻内の人類はトックに滅んだものと聞いてマシタカラ」
池田「セルゲイだけじゃないさ。皆そう思ってる。……でもそれは間違いだった」
阿部「ここからは少々長い話になります。……時間は大丈夫でしょうか?」
セルゲイ「保証はシカネマスガ、30分程はマダ安全デショウ。コノ区域に近づいテイル敵兵の気配もマダシマセン」
阿部「……猶予はありませんね。今のこの状況においても……やはりこの先のおいても」
池田「……この先?」
阿部「はい。出来るだけ簡潔に整理して話すよう心がけます」
阿部「まず、私は外殻の外側の人間に助けを求めにきました」
阿部「では何故助けを求めにきたのか?それを説明するにはまず外殻大地を巡る地球の歴史から話さなければなりません」
阿部「今から1000年近く前、全世界にある奇病が蔓延しました。俗称、正式名称ともに『男体化病』という病が」
378
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/05(水) 02:46:47 ID:/epCI.sY
池田「そこら辺なら誰でも聞いた事あるな。それを防ぐ為に外殻を作ったって話だろ?」
阿部「――シャイニングプラネット計画。外殻で地球全体を覆う、とてつもなく巨大なプロジェクト」
阿部「その内容は、世界規模で感染者と健常者を隔離し、男体化の主な原因である宇宙線から地球そのものを保護するという、途方も無いものでした」
TDN「……宇宙線って放射線とかよねェ。それを浴びただけで病気になっちゃうの?」
阿部「厳密には違います。大気圏内に入り込んだ宇宙線が遺伝子を傷つけ、生物の根幹であるミトコンドリアに変異を促し、新たに生まれたウィルスによって男体化を引き起こすのです」
セルゲイ「記憶違いデシタラ申し訳ナイノデスガ、地球は磁場と大気にヨッテ宇宙線の大半を防いでいるハズデハ?」
阿部「……残念ながら1000年前に事情が変わったのです」
阿部「当時地球の磁場が弱まり、一部の地域が宇宙線にさらされる事態に陥っていました」
阿部「諸説ありますが――世界中に張り巡らされた強力な電力網がインダクタの役割を果たし、地球規模の自己インダクタンスを導いたのが主な原因と考えられています」
池田「……ま、まるで分からねぇ」
阿部「単純に述べるならば……成長しすぎた人類の科学が破滅を呼び込んだということです」
池田「……なるほどな。それで男体化を止める事はできたのか?」
阿部「……ええ。男体化に対するワクチンは完成し、外殻によって新たなウィルスが発生する事もなくなりました」
TDN「馬鹿げたプロジェクトだと思ってたけど、効果はあったのネェ」
阿部「……ただこの病を克服する過程で、ある1人の人物が――いえ、結果的には外殻の内にいた人類すべてが大きな過ちを犯しました」
379
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/05(水) 03:36:25 ID:/epCI.sY
池田「過ち?」
阿部「……彼女の名前はイヴ。男体化に効果のあるワクチンを作成し――」
阿部「シャイニングプラネットの研究チームとNEATにも所属する――非常に有能な科学者でした」
池田「はぁーん、人類の救世主、ってやつか」
阿部「……違います」
阿部「彼女は救世主などではありません」
阿部「むしろ人という種を絶滅に追いやろうとしている『悪魔』ですッ!!」バッ
池田「…………」
阿部「……失礼しました。話を続けます」スッ
池田「……お、おう」
阿部「池田さん、そして皆さん。落ち着いて聞いてください」
池田・TDN「…………」ソワソワ
セルゲイ「…………」
阿部「今地上には、外殻の内側には……」ギュゥッ…
阿部「――男性が、存在、しません」
380
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/05(水) 23:22:18 ID:w5T93HZo
交流すればいい…って訳にもいかんか
381
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/06(木) 00:10:05 ID:jI2HFAdk
TDN「…………」
セルゲイ「…………」
池田「……どういう事だ、そりゃ」
阿部「彼女が男性が存在しない世界へと、極めてゆっくりな速度で地球全体を変貌させていったからです」
セルゲイ「……一体何の為ニ?」
阿部「……残念ながら分かりません。明らかになっているのは、彼女が男性に対する強い不信感と敵意を持っていた事だけです」
阿部「ミトコンドリアの権威であった彼女はワクチンを作ることによって、国家規模での信用と権力を手に入れました」
阿部「そして人類社会を大きく発展させる発明や開発を次々と成功させ、私の祖先は彼女に強く依存するようになったのです」
阿部「中でも最たるものはナノマシンでしょう」
TDN「……驚いた。あなたたちの場所では既に実用化されているものなのね」
阿部「――病気に対する耐性、細胞の最適化による延命、治癒能力の向上、脳内物質や感情の制御……まさに夢の発明でした」
阿部「彼女の賢者の石と言っても差し支えない発明は瞬く間に世界中へ広がり、新たな規格として浸透していったのです」
阿部「……それが、彼女が全人類に仕掛けた新たな枷とも知らずに」
池田「新たな、枷?」
阿部「……ナノマシンには人体そのものを飛躍的に強化させる事に加えて、体内に組み込まれた端末をネットワークに繋ぐ機能が搭載されています」
382
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/06(木) 02:26:35 ID:jI2HFAdk
阿部「従来のIRCなどのデバイスを必要とする通信技術と違い、脳内の電気信号をサーバーを介して他人のナノマシンに向けて送信できる画期的なテクノロジーなのですが……」
阿部「彼女はナノマシンの一部をブラックボックス化し、外部からナノマシンを操作できるように改変を施していたのです」
TDN「が、外部からって……それじゃぁ人類全体の生命を掌握した事と変わらないじゃない!」
阿部「仰る通りですTDNさん。人体にプラスの効果を及ぼす事が可能なら、またその逆も可能――彼女はその技術を利用し、自らの野望へと突き進んで行きました」
阿部「秘密を知った関係者を病死に見せかけて殺す事も、犯罪者の行動を操り、事件に見せかけて自らの政敵を消し去る事も……すべて彼女の意のままでした」
セルゲイ「……何と恐ろシイ」
阿部「そして彼女が必要とする研究の科学者や、彼女に好意的な関係者は手元に残し、自らの計画――イヴが構想する最後のプロジェクトに取り掛かりました」
阿部「それこそが『全人類女体化計画』。ナノマシンによって人体の構造そのものを作り変えるというプロジェクト」
池田「……その女体化計画は、病気でもなんでもなく……そのイヴって奴がやりたいからやったって事か?」
阿部「ええ。マスメディアも彼女の支配下でしたから、当時の男性も女性になる事に何ら違和感を感じていなかったようです」
TDN「……ナノマシンと合わせて洗脳済みってワケネ」
阿部「同時に彼女は自らの脳を含めたサイボーグ化も急いでいました。……永遠にこの世界を管理できるように」
池田「…………」
阿部「そのサイボーグ化の依頼を受けたのが、ロボット工学の権威リトル・イーモン博士です」
阿部「当時の数少ない男性の科学者で、最後までナノマシンを拒否した人間でもあります」
383
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/06(木) 03:07:45 ID:jI2HFAdk
阿部「イーモン博士はイヴ博士の企みに気付いていましたが、親友を人質に取られていた為にイヴ博士に逆らう事は出来ませんでした」
阿部「ロボットの研究は次々に成功していき、高度なAIを積んだガイノイドや、対暴徒用のガードマシンを市場に供給できるようになりました」
阿部「更に女性同士で生殖できるように最適化する実験が成功し――」
阿部「――イヴ博士は楽園を作り上げることに成功したのです。ナノマシン、ガイノイド、ガードマシン……必要だったすべてのものを手に入れて……」
池田「…………」
池田「……褒められたことじゃない」
池田「褒められたことじゃないが……それで人類は繁殖し、幸せに暮らせるようになったんだろ? 彼女が統治している世界で……」
阿部「…………」
池田「答えてくれ阿部さん。俺は……俺は本当のことが知りたいんだ!」
阿部「池田さん……」
池田「奪い合う事なく分け合える世の中なら、例え独裁だとしても俺は構わない。そんで管理者が頭がイカれてても構わねぇ。今よりずっとマシだからな」
阿部「…………」
阿部「……残念ながら、池田さんが思い描いたような理想の世界は訪れませんでした」
阿部「順調に思えた楽園プロジェクトですが、100年もすると異変が現れ始めました」
阿部「女性同士での生殖から誕生した子どもが、次々と謎の突然死に襲われたのです」
384
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/06(木) 19:38:14 ID:jI2HFAdk
勇者「領主のくれた情報と地図によると遺跡の西側部分に街の人たちが閉じ込められているらしい」カサッ
女戦士「デッケェ宮殿だったんだな。間取りを見る限り、本来召使いとかが寝泊まりする区画か?」
勇者「東側に王の間とあるから恐らくそうだろうな。見れば分かる通り、建物の周りに何もないから非常に見通しがいい」
女戦士「……見つからずに連れ出すのは困難ってワケか。できれば一戦おっ始める前に救出するのがベストなんだがなぁ……」
勇者「そこで私の作戦はこうだ。……真正面から切り込む」
僧侶「えぇぇぇぇ!?勇者さん何言ってるんですか?」
女戦士「あたしは大歓迎の血の毛たっぷりの作戦だな。……が、街の人たちの安全はどうするんだ軍師さん?」
勇者「まず私たちを救出班と陽動班の二手に分けて襲撃」スッ
勇者「陽動班は逃げ回りつつ出来るだけ敵を打ち倒し、敵に増援を呼ばせるように暴れ回る――救出班はその混乱に乗じて西エリアに乗り込み、手薄になった警備を突破し救出」
勇者「安全な場所まで誘導した後、陽動班合流し、大将に仕掛ける」
勇者「……無茶は承知だ。ただ人命を優先するならこの案しかないだろう」
女戦士「勇者、その案に乗ったぜ。少なくともあたしの作戦より勝ち目がありそうだ」
僧侶「女戦士さんの作戦ってどういうのですか?」
女戦士「片っ端から斬る」
僧侶「…………」
385
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/06(木) 19:40:50 ID:jI2HFAdk
単純に死にたい
誤爆
386
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/07(金) 00:41:42 ID:Ibze4Dlk
よくあること、どんまい!
387
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/07(金) 04:31:33 ID:QnLIRuzw
TDN「突然死……」
阿部「女性同士の生殖において何らかの不具合、歪みといったものが発生し、正常に我が子が育たなくなり……最後は突然死に至る」
阿部「イヴは持てる知識すべてを捧げ、専門分野の天才を何人も雇い、この病に取り組みましたが、突然死は止まりませんでした……」
阿部「……口には出さずとも皆彼女を除く科学者は理解をしていました。男性と女性の生殖から切り替えた事による影響であることに間違いはない、と」
阿部「それとは逆に、ありとあらゆる手を尽くし――疲弊し切った彼女が考えついた案は恐ろしいものでした」
阿部「理想的な状況で出会い、理想的な条件で生殖を行い、理想的な状態で母体を管理すれば、突然死のイレギュラーは避けられると判断したのです」
池田「……言ってる、意味がちょっと分からないんだが……」
阿部「池田さんは、ソードアート・オンラインをご存知ですか?」
池田「突然何を……いやまぁ知ってるよ」
阿部「あの作品の中で主人公たちは仮想現実へ現実世界からログインしていましたよね?」
池田「……ああ。それで?」
阿部「あの作品のような『仮想現実』を使って、人類を管理しようとしたのです」
池田「……!」
阿部「ええ。その為に仮想現実を作り上げ、人の精神をその中で暮らさせる事によって、脳波や体躯の末端に至るまでを完全にコントロールし――」
阿部「正常な『繁殖』をしようとしました」
388
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/07(金) 10:16:28 ID:QFVVB0fQ
イヴ……世界を完全管理する神にでもなったつもりだった様だが……
389
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/07(金) 12:29:50 ID:6j3.4Dsg
乙!
アルトネリコとBLAME!が混ざった様な世界になってるな
390
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/07(金) 20:00:51 ID:QnLIRuzw
池田「狂ってやがる……それのどこが正常だって言うんだ」
阿部「生活のすべてを彼女に掌握されていた私の祖先たちは為す術もなく、彼女の支配下に置かれました」
セルゲイ「ナルホド。ガイノイド、ガードマシン、数を揃えレバ統率の取れた軍隊に等しいデショウカラネ」
阿部「――人は生きたままカプセルに詰められ、培養液によって成長し、計画的な交配を延々と繰り返させられるのです」
TDN「……そしてイヴに管理された長い夢を見続けるのネ……」
阿部「今の地上に……人の尊厳、自由といったものはありません」ギュッ
セルゲイ「……シカシそうなるト気にナル事ガアリマス。阿部サン、アナタハ何処から来たノデスカ?」
池田「言われてみればそうだな。地上の人間はカプセルに閉じ込められているんだろ?」
阿部「彼女の計画が始まった直後、下層へと逃れて生き延びた人たちがいます」
阿部「彼女たちはレジスタンス組織『New Honest Keel』を結成し、イヴへのレジスタンス運動を行いながら、実にこの1000年近く抵抗してきました」
阿部「私はカプセルの中からNHKに救い出され、人類にもう一度自由をもたらす為の工作員として育てられたのです」
池田「……そう、だったのか……」
阿部「地上をイヴの支配から解き放つには、彼女が管理するサーバーの心臓部を破壊し、ナノマシンによる干渉を防ぐ必要があります」
阿部「ですがナノマシンに支配された我々では、心臓部にたどり着く事は愚か地表付近の行動もままなりません……」
TDN「……話がようやく見えて来たわ」
391
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/15(土) 01:39:17 ID:x.Hw/ilU
もうすぐ700番台まで下がっていたのでage支援
楽しみにして待ってます
392
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/15(土) 05:44:58 ID:X8qLRBRU
何がなんでも受信料を取ろうとする方とは全然違うなw
393
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/19(水) 01:41:05 ID:uyKqeFLE
保守あり。
安価1つ見落とす →
>>390
以降を全部変更
って大事故で止まってました。
結末までの見通しが立ったので、近日中に投下します。
お待たせして申し訳ない。
60/82
394
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/19(水) 16:47:16 ID:W6nfd5Jg
60もこなしてたのか…
ゆっくりでもいいのよ、完走さえして下されば
395
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/19(水) 19:46:41 ID:uyKqeFLE
>>393
修正 60/86
396
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/19(水) 19:47:11 ID:uyKqeFLE
阿部「だからこそ、男性の協力者が私には必要だったのです」
阿部「……焦るあまり、最初に出会った男性の危険性を見抜けず……その……」
池田「阿部さん……」
阿部「……安易に警戒を解くべきではありませんでした」
阿部「……話を戻しましょう。私の任務内容は主に2つです」
阿部「1つはナノマシンの影響を受けない男性の協力者を得ること」
阿部「もう1つはイーモン博士が外殻に残した兵器を手に入れることです」
池田「……兵器ってシェルターの地下にあった、あの戦闘機か?」
阿部「はい。プロジェクト名:ダーウィン4078。機体名:BEAS。博士がイヴに秘密裏に開発した超兵器です」
TDN「あの開かずのシェルターにそんな物騒なものがあったのねェ」
阿部「……地上にある兵器はすべてイヴの管制下にあります。彼女の支配が及ばないたった1つの兵器、それがBEASなのです」
池田「博士はあの戦闘機が必要になることを予期していたのか……」
セルゲイ「……阿部サン」
阿部「なんでしょう?」
セルゲイ「ソノ兵器はイヴにとってどれ程の脅威なのデスカ?」
397
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/19(水) 23:07:17 ID:43mfXqyI
乙
それは俺も気になるなぁ。
398
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/20(木) 03:12:52 ID:15p/2NT6
阿部「博士は失踪する直前まで、このプロジェクトに心血を注いでいました」
阿部「ロボット工学の父である彼が、当時考えうる限りの最先端の技術と理論をもって作り上げた兵器――」
阿部「現在も稼働し続けるガードマシン等の戦闘力を見る限り、その能力は計り知れません」
阿部「イヴも我々と同じようにこの兵器を捉え、未だに地上で捜索が続けられているほどですから」
池田「……何百年も探し続ける位、重要ってことか」
阿部「過去に世界を統治するのに必要な力を、博士から得ていた彼女は……ある意味我々より兵器を恐れているはずです」
阿部「……そして同時に手に入れたいとも思っているでしょう」
セルゲイ「破壊シ、反乱分子によるイレギュラーが起こラナイヨウニデスネ」
阿部「……いえ、違います」
TDN「違うって……?」
阿部「イヴにはある目的があるからです」
池田「目的って……女性だけで繁殖とかの、アレか?」
阿部「……ええ、最終的にはそうなるのでしょうか。彼女にとっては、ですが」
池田「……それと戦闘機がどう関係あるんだ?」
阿部「それは彼女が――イヴが外殻大地に存在するすべての生命を……根絶しようとしているから、です……」
399
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/20(木) 04:14:16 ID:15p/2NT6
セルゲイ「…………」
TDN「それって……」
池田「嘘……だろ……」
阿部「……私が最初に時間がないとお伝えしたのは、教団員に追われている現状ではなく――」
阿部「彼女が地上への侵攻計画を進めている事実についてです」
ガタッ
池田「いや、待てよ……!だってそんなのおかしいだろ!?」
TDN「池田ちゃん落ち着いてっ!」
阿部「……いえ、TDNさん。池田さんでなくてもおかしく思って当然です」
TDN「阿部ちゃん……」
阿部「彼女は最早狂人です。今となっては、それを正す者も誰もいません」
池田「…………」
阿部「イヴは女性による単性生殖の改善点をずっと探していました」
阿部「それから気の遠くなるほどの歳月をかけて辿り着いた結論。……それが『蝶の羽ばたき』だったのです」
池田「蝶の、羽ばたき?」
400
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/20(木) 17:06:40 ID:bXpSdKMY
蝶☆効果か
401
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/20(木) 22:47:54 ID:15p/2NT6
阿部「A地点で蝶が羽ばたくことによって、B地点で雨が降る。蝶の羽ばたきの影響によって、結果的に別の場所で雨が降ってしまう」
阿部「蝶の羽ばたき――一般にはバタフライ・エフェクトと呼ばれているものです」
池田「聞いたことがあるような……カオス理論、だったか?」
阿部「はい。カオス理論における、通常なら無視できると思われるような極めて小さな差が、やがては無視できない大きな差となる現象のことです」
池田「……難しいな」
阿部「イヴはこの理論を自らの世界に当てはめて考えたのです」
阿部「つまり――一見無視できる程度の小さな障害が、私の計画を妨げているのではないか、と」
TDN「…………嘘。じょ、冗談でしょ。まさかその女、外殻に男性がいるからうまくいかないって――」
阿部「仰る通りですTDNさん。彼女はそう判断し、侵攻計画に着手したのです」
池田「……そんな……滅茶苦茶な……」
阿部「その観測装置も彼女は開発しました。……影響の連鎖はすべて外殻の外で収束するように設定されていますが」
セルゲイ「……彼女はモウ、自分が正常な判断能力を持っているカドウカサエ、分からないヨウデスネ」
阿部「……私たち工作員は、外殻大地を支える巨大なシャフト――その中空を通ってここまで来ました」
阿部「イヴは同じようにこのシャフトを使い、管理下にある航空兵器を外殻大地へ送り込むつもりです」
阿部「外殻大地を爆撃し、施設のすべてを焼きつくし、男性をこの世から絶滅させる為に……」
402
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/21(金) 20:21:43 ID:5wCLw7Kg
全く、やれやれだな。
403
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/22(土) 04:06:52 ID:zBLeHNXs
池田「……だからイヴにも戦闘機が必要なのか。」
阿部「……はい」
TDN「そのシャフトとやらが、外殻を支えていたのネ。ってことは各エリアにあるシェルターの根本にはみぃんなシャフトがあるってことになるわねェ」
阿部「はい。私以外のNHK工作員メンバーは各エリアで任務を遂行していると思われます」
阿部「その問題のシャフトですが――シャフト内部は元々『外』の人間が安易に入って来れないように、防犯システムの巣になっています」
阿部「結果としてそのシステムが、イヴの侵攻を今阻み、時間を稼げているのが現状です」
セルゲイ「……その防犯システムを抜ける方法はアルノデスカ?」
阿部「我々NHKにはイーモン博士から託された『鍵』があります。部分部分で無効化をしつつ、外殻まで来れたので……勿論その逆も可能だと思います」
阿部「最も、地上へ帰るのに鍵は必要ありませんが」
池田「え?」
阿部「帰る為に、超兵器BEASを起動し、シャフトを高速機動で抜けます」
池田「…………」
TDN「…………」
セルゲイ「…………」
阿部「そしてイヴの航空兵器、マシンの工場を徹底的に叩き、イヴに通ずるサーバーというサーバー全てを完全に破壊します」
404
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/22(土) 05:02:01 ID:JfL3VP7c
阿部さん一人でか?
405
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/22(土) 06:27:29 ID:8E1UWlqU
スレタイからとんでもない方向にきてるな
支援
406
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/23(日) 14:44:51 ID:wFYr6al2
乙
エヴォルって、説明文からすると魂の事としか思えんのだが
407
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/24(月) 23:48:45 ID:.YnDnVt6
もしかしたら教団の人達との共闘クルー?
408
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/25(火) 00:42:57 ID:kf3e.Ono
阿部「それが私たちNHKの工作員に課せられた任務です」
セルゲイ「……地上全土を掌握しているイヴに、BEAS単騎で対抗する事は可能なのデショウカ?」
阿部「……BEASの明確な性能が分からない以上、この任務の成功確率――」
阿部「いえ、そもそも我々に勝ち目がある戦いなのかさえお答えすることができません」
阿部「…………」
阿部「……それでも」
阿部「それでもっ、お願いですっ。私たちに力を貸してくださいっ!」
池田「…………」
阿部「外殻の外に隔離される――そんな差別にも等しい措置を受けたあなた達に対して、我々が助けを請う……」
阿部「身勝手なお願いだとは、思っています……」
阿部「でも……私たちには、あなた達に頼る以外に方法が――」
池田「阿部さん、何か勘違いしてないか?」
阿部「は、はい?」
TDN「そうねェ。その話し方だとあたし達が嫌がってるように聞こえるじゃない」
セルゲイ「ソウデスネ。私は最初から阿部サンに協力するツモリで、お話を伺ってイマス」
409
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/25(火) 00:55:59 ID:mDlVxz1M
きたぁぁ!!
410
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/06/25(火) 01:22:02 ID:kf3e.Ono
阿部「……え?」
セルゲイ「敵ガ教団であれ、イヴであれ、何れにセヨ我々の命が危険に晒されている事に変わりはアリマセン」
セルゲイ「合理的に考えたとシテモ……阿部サンに協力する事ハ、結果的に私たち自身の自衛になるのデス」
セルゲイ「ソレに何より――あなたは既に私の大切な友人デス」
セルゲイ「友の頼みでアルナラ、断る理由もアリマセン」
阿部「セルゲイさん……」
TDN「それにねェ阿部ちゃん。悪いのはあなたじゃないでしょ」
TDN「悪いのはイヴとか言う1000歳軽く超えちゃってるような性悪女でしょ?別にあなたが祖先の罪を背負う必要なんかないの」
TDN「何よりあたしがイヴを許せないもの。医者として生命を軽んじる行為を見逃す訳にはいかないわ」
TDN「あとアレよ!自分の目的の為にあたし達を皆殺しとかどんだけ自己中って話よ!理論がどうこう言う以前にモラルがなってないわよ!」プンプン
阿部「TDNさん……」
池田「じっとしてたら爆撃をいいように喰らって死んじまうだけだしな」
池田「だったらこっちから殴りこみかけて、そのイヴって親玉をぶっ飛ばしてやろうぜ」ヒュッ
阿部「池田さん……」
池田「で、ついでに人類救っちまおう。な?」
411
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/01(月) 05:12:38 ID:LDn0kMbE
阿部「…………」
阿部「……皆さん、私……」
阿部「私、何て言ったらいいのか……」
阿部「………ッ」
阿部「…………!」ゴシゴシ
阿部「……ありがとうございます、皆さん」ペコリ
池田「お礼を言うのは、まだちぃと早いぜ阿部さん」
TDN「すべて終えてから、よねェ」
セルゲイ「エエ、阿部サンは……」
阿部「……?」
セルゲイ「…………」
池田「ん、どうしたセルゲイ?」
セルゲイ「シーッ!……トラップが反応してイマス。南西の方角、直線距離で3Kmと言ったトコロデショウカ」
池田「……奴らか」
セルゲイ「……コチラにはマダ気付いてイナイヨウデスガ……移動シタ方が良いデショウ」
412
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/01(月) 05:26:00 ID:LDn0kMbE
――――
池田「……な、なぁセルゲイ」ゼェゼェ
セルゲイ「ハイ?何でショウ?」スッ スッ
池田「シェルターに、向かうなら、結構を道を、ソレちまった……ふぅ、気がするんだが」ゼェゼェ
セルゲイ「私は阿部サンの指示に従って、そこへ案内しているダケデスヨ」
池田「阿部、さんが?」フゥ
ガサッ
池田「ん?これは……トウモロコシ?」
セルゲイ「ハイ、野生モロコシの群生地デスカラ」
池田「って事は例の現場の近くじゃねぇか!な、何で阿部さんがココへ来る必要が――」
阿部「ここへ来る事が一番安全で確実だからです、池田さん」
池田「あ、安全?……どういう……」
阿部「……シェルターの正面ゲートの開閉音が、致命的なレベルで大きいからです」
阿部「この限界体制の中で開かずのシェルターが開き、轟音が辺りに響きわたってしまったら……」
池田「……それは全然考えてなかった。確かに無駄に派手だった気がするな」
413
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/01(月) 11:27:01 ID:QGf6DEa2
阿部さんがどうしても阿部高和顔の女の子で脳内再生されてしまうw
414
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/01(月) 12:19:15 ID:ffEJkDco
その辺から出て来てスケィスに襲われたんだもんな。
通路があって当然か。
>>413
そりゃ悲惨だなw
415
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/04(木) 18:19:30 ID:V4LmCH8.
>>412
修正
限界体制→厳戒態勢
416
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 00:52:46 ID:tBxdx.sc
阿部「なのでこちらを使います」ガサガサ
TDN「……こちらって阿部ちゃん、どう見ても壁よコレ」
阿部「錆びと苔で周囲の壁と判別がつかなくなっていますが」ピタッ
バシュッ
TDN「……ワオ」
阿部「この様にまだセンサーが生きています。触れなければ反応しない程に劣化はしているようですね」
セルゲイ「とスルと……コレはシェルターへの通路デスカ」
阿部「はい。東西南北にそれぞれ伸びた非常用連絡通路の内の一つです」
池田「扉と言えばドアノブ、非常扉はバルブだからな。扉だとも知らずに云百年経っちまったと」
阿部「無論、ありとあらゆる人間の通行が許可されています。シェルターとしては当然の役割なのですが……」
池田「教団に追われている今だけは、ありがたくない話だな」
阿部「ええ。うまくすれば緊急用の防火シャッターが下ろせるかもしれません。足止めにはなるはずです」
池田「それに心強い……いや、ほんの少しだけ頼りになる奴が中にいるからな。あいつなら力になってくれるはずだ」
TDN「あら、ここにも池田ちゃんの友達がいるの?それってイイ男だったりする?」
池田「……悪い奴じゃない。あと男か女なのかは自分で聞いてくれ」
417
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 02:04:41 ID:tBxdx.sc
――――
TDN「……あらヤダ///」
セルゲイ「? 何らかの兵器デショウカ?」
阿部「…………///」
池田「…………」
カンカンッ カンカンカンッ
スカポン「固定概念ヲ〜♪払イノケロ〜♪」
池田「……ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度たっけぇーなオイ」
スカポン「オヤ?ソノ声ハ――」
プピーン
スカポン「イケタサンデハナイデスカ!アブサンモ!ソレニ……ムム?ソチラノ方々ハ初対面デスネ」
池田「俺は池田な。あと彼女は阿部さんで、彼らは俺の友達で仲間の――」
セルゲイ「セルゲイ・ソボレフと申シマス」ペコリ
TDN「あたしは天才ドクター中松、TDNって呼んでね♪」クネリ
スカポン「了解しました。ゲイサン ト タダノサン デスネ」
セルゲイ・TDN「え?」
418
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 02:43:52 ID:tBxdx.sc
池田「ハァ……諦めてくれ。こいつは名前を覚えるのが壊滅的に下手なんだ」
スカポン「失礼ナ!ソノ言イ方ダトマルデワタシガ、 ポンコツノ様ニ聞コエテシマウデハナイデスカ!」
スカポン「『オワライロボ』トシテ必要ナ機能技能ハ顔ヲ覚エルコト。コレニ尽キマス。何故ナラ――」クドクド
池田「とりあえず、今はどうでもいいんだよスカポン」
スカポン「アア。ナルホド。マルデショートケーキニ鎮座マシマシテイル苺ヲ最後ニ食ベル如クワタシノ話ヲデザートノ様ニ聞キタイトソウイウ気持チデスネ?」
池田「違う!こりゃ何だって話だよ!」
スカポン「コレハネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲デスヨ」
池田「知ってるよ!じゃなくて何でネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲がシェルターの中央にででんって置いてあんのかって話をしてるんだ!」
スカポン「実ニイイ質問デス、イケタサン。……ワタシ、実ハアナタ達ガ帰ッタ後、深ク反省シテイタノデス」
池田「……は、反省?」
スカポン「アノシリアスナ雰囲気ヲ、ブチ壊シニ出来ル方法ガモットアッタノデハ、ト……」
池田「あれはあれで良かったんだよ。余計な事を――」
スカポン「ワタシハワライノ原点ヲ探リ始メ――」
スカポン「ソシテネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ガ完成シタノデス」
池田「省くなよ!一番そこ大事なとこだろうが!」
419
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 04:34:10 ID:VWL9Xc7M
なんだこのSS
完成度たっけぇ−なオイ。
420
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 09:00:05 ID:HqU3QPxQ
乙!
まぁ顔と名前はちゃんと覚えてるんだろうがな。オワライ優先な表現になってるだけでw
後、サイクロンお笑い砲は教団の奴等にでも披露してやるんだなw
421
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/07(日) 19:00:08 ID:VWL9Xc7M
これ最後にくぅ〜疲きても感動できるな
422
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/08(月) 00:53:59 ID:EzoWNVUk
>>417
修正
了解しました→了解シマシタ
423
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/08(月) 02:50:52 ID:EzoWNVUk
スカポン「ワライヲ取ルニ当タッテ最モシンプル、カツ効果的ナ手段ヲ取ッタダケデス」
スカポン「男性器ヲ模シタオブジェヲ作リ、唐突ニ出ス事ニヨッテ、思ワズ笑ッテシマウ……ソンナ効果ヲ期待シテ、廃棄物デネオアームストロング――」
池田「長ぇよ!もういい!分かったから!」
スカポン「シカシ、イケタサン。アナタハ素晴ラシイ」
池田「何がだよっ!」
スカポン「アナタガネオアームストロングジェットサイクロンジェットアームストロング砲ヲ知ッテイタカラコソ、ワタシノオブジェガ輝カシイ意味ヲ持ツヨウニナッタノデス」
池田「ジェットが一つ多いっ!」
スカポン「ソシテ何ヨリ、コノ『ツッコミ』ノレスポンススピード……驚嘆ニ値シマス。ワタシト同期ノオワライロボデモ、ココマデノツッコミハ――」
池田「俺の事はもうどうでもいいんだよ!こっちは大事な話があって、なおかつ急ぎなんだよ!」
――――
スカポン「ナント……ワタシガネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ヲ作ッテイル間ニ外デハソンナ事ガ……」
阿部「一時的で構わないですから……防火シャッターを閉じて、外部からの侵入を防いでいただけないでしょうかスカポンさん」
スカポン「オ安イ御用デスヨアブサン!――ト、言イタイノハ山々ナノデスガ……今防火シャッターヲ閉メル事ハデキマセン」
池田「何でだ?またあれか?三原則とかでできないのか?」
スカポン「違イマス。単純ニ コノシェルターノ メイン電力全テガダウンシテイル為ニ、シャッターヲ動カス事ガデキナイノデス」
424
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/08(月) 02:56:41 ID:EzoWNVUk
阿部「……電力が使えない?」
スカポン「正確ニ言ウナラ約57分42秒前程カラデスネ。シェルター地上施設ノホトンドノ設備、備品ガマトモに稼働デキマセン」
池田「何があったんだ?」
スカポン「サーバーニ問イ合ワセテモ応答ガナイモノデ……何ガアッタカ、ワタシ自身モ把握シテイマセン」
池田「……訳もなく突然使えなくなるなんて、妙だな」
阿部「……! スカポンさん」
スカポン「廃材デ作ッタオブジェニ夢中ニナッテイル内ニメイン電力ガダウントカワタシノ監督不行――ハイ、何デショウ?アブサン」
阿部「そのメイン電力の流れ――このシェルターで、一番電力が消費されている場所は何処か分かりますか?」
スカポン「ハイ、モチノロンデスアブサン。適当ニ床ニアル端末ニ端末ヲ繋イデト……ムーーーーン……」ペポペポ
プピーン
スカポン「〜〜〜ンッ!出マシタ!エエト……ドウヤラ地下ノ施設ニ、電力ヲマルゴト持ッテイカレテイマスネ」
阿部「……やっぱりそうでしたか」
スカポン「ソノ内ノ『不明ナユニット』ニ、毎秒 シェルター生活最低限電力20年分ヲ、絶エ間ナク貯メコンデイルヨウデス」
池田「! あの戦闘機か!」
阿部「皆さんっ。何故かは分かりませんが、離陸準備が始まっていますっ。急いで地下へ向かいましょうっ」
425
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/08(月) 06:47:48 ID:MdqH0eXs
乙
イヴの方じゃなかったのが救いかな。
426
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/10(水) 21:48:52 ID:t7K0GO9k
遂に、起動するのか?ここからどうなる……?
427
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/16(火) 21:22:45 ID:6dAGtuNQ
支援
428
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/22(月) 03:21:07 ID:Kw/l6ig2
――――
シェルターの真下――巨大な穴へと繋がる格納庫。
俺達は再びこの場所へと訪れていた。
「…………」
皆一様に口を閉じ、立ち尽くしていた。
――セルゲイ達は兵器自体を初めて見たのだから、驚いても無理はない。
だが俺と阿部さん、そしてスカポンはBEASを見るのは二度目だ。新鮮もないし、第一明るい。そこに何があるかさえも今は分かる。
そう。だから驚くような事は何もない。……そのはずなのだが。
変わり果てた――俺にとってはだが――目の前の光景に俺達は同じように立ち尽くし、衝撃を受けていた。
青白く小さな雷が、BEASの装甲から飛び出しては飲み込まれている。
1本や2本ではなく、数十、数百の小さな雷が、獲物を捕らえる蛇のような獰猛さをもって空中で火花を散らしていた。
壁に走る無数のパイプ、足元にのたうっている巨大なチューブに濃緑色の光が絶え間なく走り、そのすべてがBEAS目掛けて飛んでいく。
時折照明がチカチカと不安定になるのは、BEASが過剰にエネルギーを貯め込んでいるのが原因だろう。
……スカポンの言った通りだ。こんな調子じゃいつ地上の設備も使い物にならなくなるか分からない。
放電しながら、離陸準備を勝手に進める大飯喰らいには加減なんて言葉は通じそうになかった。
429
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/22(月) 04:18:36 ID:Kw/l6ig2
空気の焦げた匂いが辺りに立ち込め、全身の毛が肌から浮き上がるようなむず痒さを感じる。
ドクン… ドクン…
大きな鼓動音が聞こえて軽く息を吐いた。
……情けない。
これからこいつに乗り込んでドンパチしようって時に、こんなんでビビってどうする。
とりあえず気持ちを落ち着ける為に、右手を胸に置いて――気付く。
手の平から伝わる心音は、早鐘のように早く打っている。
それこそ、前後の音の間隔はほぼない程に。
ドクン… ドクン…
体の内側からではなく、立っている地面を通して聞こえる鼓動音。
俺の心音ではない、大きな鼓動音。
視線を足元から正面へと移し、俺は目を凝らした。
青白い雷の派手さばかりに目を奪われ、見過ごされていた部分――機体の大部分を占めるプレート。
――その、表面。
鼓動音と共に脈打つBEASの『血管』が、そこにはあった。
430
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/22(月) 09:19:10 ID:kZ4a7GS2
まったく、デコのゲームにはまいったぜ!
431
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/22(月) 19:36:53 ID:8uAb01wY
BEAS……味方なのか敵なのか判断し辛い文だ
432
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/29(月) 21:21:23 ID:CLpm5EpU
阿部「……これが、BEASの本来の姿……」
池田「……なぁ、BEASってのは兵器じゃなかったのか?」
阿部「兵器です。……それも、恐らく地球上で最も優れた性能の戦闘機でしょう」
池田「……だけど、あの血管、いや血管みたいな物が何と言うかその――」
スカポン「生物ノソレデスネ。ワタシニハマルデ生キテイルヨウニ見エマス」
池田「……だよな」
TDN「……心拍数は30から40、あたし達の半分程ね」
阿部「BEASの仕様については、私も詳しい事は知らされていません」
阿部「そもそもが表向きには存在すらしない、極秘裏に進められたプロジェクトです」
阿部「それにBEASを完成させた後、博士自身の手によって全てのデータは破棄されていますし……」
セルゲイ「……存在ソノモノがブラックボックスというワケデスカ」
阿部「ただ、博士はプロジェクトに着手する寸前まで、ある研究に没頭していたそうです」
池田「……ある研究?」
阿部「ロボットに生命を、あるいは魂を与える研究です」
スカポン「……ロボットニ……魂ヲ?」
433
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/29(月) 23:12:21 ID:CLpm5EpU
阿部「もしその技術を応用したとすれば、この外観にも説明がつくかもしれません」
スカポン「…………」
阿部「……行きましょう皆さん」
――――
TDN「てっきり電気ビリビリで大変な事になるかと思ったけど、近付いたら収まってくれたわネ」
池田「そうでもしてくれなきゃ乗れないだろ。……しかし、まぁ……予想通りだな」
スカポン「エエ、外観ダケデナク、内部モ生物ヲ モチーフトシテ設計シテイルヨウデス」
TDN「見渡す限り機械――じゃなくて内蔵っぽい物体だらけなのが異様な雰囲気ねェ。怪物の胃の中にでも入った気分だわ」
セルゲイ「怪物と言う表現はアナガチ間違ッテいないかもマセンネ」
阿部「…………」
池田「どうした阿部さん?」
阿部「……これが電子戦術マップの上に置いてありまして」スッ
池田「何だこりゃ。手鏡……にしちゃぁ鏡の部分がないし」
阿部「いえ、これ自体は映像ログと呼ばれている機械です。映像を立体的に投影する装置なのですが……ここを見てください」
池田「えぇと……リ……トル……イー……モン?」
434
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/29(月) 23:38:26 ID:CLpm5EpU
スカポン「……ナンデスッテ?」
阿部「え、あぁスカポンさん。この戦闘機を発明したリトル・イーモン博士の映像ログが――」
スカポン「カッ、貸シテクダサイッ!」
スカポンは必死な形相――見た目に変化はなかったが――で阿部さんの手から映像ログを奪おうとして――
静止した。
スカポンの手が、まるで不可視の壁にでも当たったかのように空中で止まっている。
それはスカポンが俺たちに初めて見せた感情的な動作だった。
スカポン「……申シ訳アリマセン、皆サン。ワタシノ今ノ動キガ敵意、モシクハ攻撃性ト判断サレタヨウデス」
池田「ス、スカポン?」
スカポン「……阿部サン。オ手数デスガ、ソノ映像ログヲ再生シテイタダケナイデショウカ?」
阿部「は、はい。勿論そのつもりでしたが……」
阿部さんは多少動揺しつつも映像ログを床に置き、操作パネルに指を走らせた。
《 参照カイスウ 01 記録ニチジ 03:11/21/05/3991 再生 シマス 》
無機質な電子音声が映像ログを作成したと思わしき年代を告げ、湿った機内にくぐもったように反響する。
――程なくして、音もなく宙空にノイズ混じりの青白い人影が浮かび上がった。
435
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/07/30(火) 05:13:33 ID:noUvSzSE
スカポン「……オオ……博士……」
池田「……え?」
阿部「スカポンさんはイーモン博士を知っているのですか!?」
スカポン「……博士ハ……リトル・イーモン博士ハ、ワタシヲ開発シタ科学者デス……」
スカポン「ワタシニオワライヲ教エ、ワタシヲ息子同然ニ愛ガヲ注イデクレタ、父ト呼ブベキ存在デス……」
スカポン「博士……ナント……オ懐カシイ……オオ……」
《 ……――の――ッな―― 》
《 ……これで良いじゃろうか 》
《 ………… 》
《 ワシの名はリトル・イーモン。BEASを設計し、開発した科学者じゃ 》
《 ……今からワシが残すメッセージは本来、誰かに託すものなどではない 》
《 ――大きな力には大きな責任が伴う。それはBEASという新たな力を生み出したワシにも当てはまる事じゃ 》
《 ケリをつけるならばワシ自身か、あるいはこの時代の人間であるべきなのじゃから 》
《 ……後世にこの映像ログが必要とされるような事態にならぬよう、ありとあらゆる手を尽くすつもりじゃ 》
436
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/01(木) 17:31:49 ID:Yitml3u6
支援
437
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/08(木) 08:29:22 ID:LxQN5Ljo
乙!
スカポンにはもう魂がある様に見えるけどな
438
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/11(日) 16:10:33 ID:1F.oXJMA
脳内でロックマンXのライト博士のテーマが……
439
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/12(月) 18:42:51 ID:Ca1z2ywE
スカポンには感慨ひとしおだろうな
440
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/14(水) 15:46:50 ID:eJoTtds.
《 ……じゃがワシらが志半ばでこの世を去り、イヴを止める者が絶えてしまったその時の為に―― 》
《 このログを残そう。イヴに立ち向かう為の、唯一の手段と共に…… 》
《 ……君が――あるいは君たちが今搭乗している機体は、プロジェクト『ダーウィン4078』によって生み出された超兵器『BEAS』じゃ 》
《 プロジェクト名が示す通り『進化』を遂げる兵器――むしろ無機物の生命体と受け取って貰っても構わないじゃろう 》
池田「し、進化……だって……!?」
スカポン「…………」
《 ――生命を生命たらしめているものは何か?ワシは高密度の精神エネルギーがその核を成していると結論付け、日夜研究に励んでおった 》
《 そしてその仮説は正しいと証明された。高密度のエネルギーを重複させ、擬似的に精神の核を生み出す事に成功したのじゃ 》
《 ……皮肉にもワシの生涯の研究テーマは、兵器を作る過程で完成してしまったという訳になるのぅ 》
《 ……話を戻そうかのぅ 》
《 ワシはその魂の代替物を『EVOL』と名付けた。今の地上にあるほぼすべての戦闘、あるいはナビロボットに導入されている謂わば精神のインプラントじゃの 》
《 ……じゃがそれはロボットと人のコミュニケーションを円滑にするレベルで、魂と呼べる代物ではなかったのじゃ 》
《 当然じゃの。ワシらは『EVOL』の扱いを間違っておったのだから。……BEASを作成するまでワシはEVOLの本質に気付かなかったのじゃ 》
《 ……生命は他の生命を自らに取り込む事によって……あるいは取り込まれる事によって、遺伝子の螺旋に新たな情報を書き加えていく 》
《 ……そう、『EVOL』も生命と同じ性質を兼ね備えていたのじゃ。捕食と被食によって自らを変化させる――即ち『進化』を 》
441
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/14(水) 16:32:03 ID:eJoTtds.
《 BEASはEVOLを余すところなく使いきった兵器と言えるじゃろう。他者――他の兵器を捕食し吸収する事によって、自身を進化させ、より機体を強化させる 》
《 あるいは他の兵器に攻撃された事によって、その兵器に対する装甲や兵装を強化させる事が可能じゃ。それも極めて短期間の間にのぅ 》
阿部「超兵器と聞いていましたが、ここまでとは……」
《 BEASの基本機体性能は非常に高い。それだけでも充分に決定打になりうるかもしれん。……が、BEASの一番の強みはそこではない 》
《 地上の兵器ほぼすべてにEVOLが埋め込まれておるが……それらには進化を促す機能は何もない。捕食や被食による変化はできないのじゃ 》
TDN「……なるほどネェ」
《 つまり地上すべての兵器にとってBEASは『天敵』であり、BEASにとっては地上すべての兵器は『餌』であると言えるのじゃよ 》
《 後出しの食物連鎖の頂点――イヴに対抗する為にワシが出した答えがコレじゃ 》
セルゲイ「動きを読ませナイ為の単機。奇襲の面から見テモ合理的デスネ」
《 ………… 》
《 ……名前も知らぬ君たちに……このような事を頼むのは筋違いかもしれぬ…… 》
《 BEASを駆使し、イヴを倒してくれと頼む事は、間違っているのかもしれぬ…… 》
《 ……じゃが、一つだけ確実に分かる事がある 》
《 生命はバランスですべて成り立っておる。減りすぎても、増えすぎても、軽微な増減であっても全体に大きな影響をもたらすのじゃ 》
《 その危ういバランスの中で、たった一人のエゴによって生物が淘汰されるような事があれば――その未来は確実に破滅を迎えるじゃろう 》
442
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/14(水) 17:02:37 ID:eJoTtds.
《 ………… 》
《 ワシはこれからイヴとの対話に向かう 》
《 同じ科学者として意見を貰いたいと先程イヴから連絡があった。……まぁワルナッチを人質に取られているワシとしては断る術もないがの 》
《 恐らく最後の説得の機会じゃ。……うまくいけばBEASを使わなくとも、力に訴えかけることなく解決することもあるじゃろう 》
《 ……無論、可能性はゼロに近い。が、ゼロではない限りかけてみるつもりじゃ 》
《 見ず知らずの人間に託す前に、ワシ自身がやれる事をやらねばならぬからのぅ!ホッホ! 》
《 ………… 》
《 じゃが、罠と言う可能性も……いや、ほぼ罠と言って差し支えないかの 》
《 もし罠ならば、ワシはここへは二度と帰って来れぬじゃろう 》
《 ……その時の為に、君に、君たちにお願いがあるのじゃ 》
《 先程の話とは別でな。こちらはそんなに難しくない 》
《 このBEASが格納されているシェルターに、スカポンと言うナビロボットがいるはずじゃ 》
スカポン「ハ、ハカセ……!」
《 ……良ければその子にこのログを見せてあげて欲しいのじゃ 》
《 本来の仕事を取り上げてしまったあげく、いつ終わるともしれぬシェルター勤務を命じてしまったのじゃ……それが心残りでのぅ 》
443
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/14(水) 17:15:24 ID:eJoTtds.
《 ……スカポン、元気にしておるかの? 》
スカポン「ハ、博士……!元気ニシテマストモ!ワタシハ元気ダケガ取リ柄デスカラッ!」
《 お前には本当にすまない事をした……。お前の本業はオワライじゃと言うのにのぅ…… 》
《 じゃが理解して欲しいのじゃ、ワシが一から作り上げたロボットとなればイヴが黙っているはずもない 》
《 お前を守るにはナビロボットと偽装した上で、辺境のシェルターに配備する他なかったのじゃ 》
スカポン「エエ!エエ!博士ノ事デスカラキット意味ガアルト、ワタシハ思ッテイマシタヨ!」
《 もしこのメッセージがお前に届いておるならば、このログを後で体に取り込みなさい 》
スカポン「コノ、映像ログヲ……?」
《 そうすればお前の回路から三原則の干渉を取り除けるはずじゃ 》
スカポン「エ……?」
《 心配せずとも良い。お前は素直で優しい子じゃから、三原則なんぞなくたって平和に人と暮らせるわい 》
《 何をすべきか、何をしたいのか、これからはお前の好きにしなさい 》
《 それが生きる、と言うことじゃ 》
スカポン「ハ……ハカ……セ……」
《 ……さて、そろそろ時間じゃ。イヴに会いに行かなくてはのぅ 》
444
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/15(木) 00:22:26 ID:MDLzX4L6
泣かせるじゃねぇか……!!
445
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/15(木) 08:50:51 ID:B9oYrEeM
ワルナッチ博士、そうなってたのか
446
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/15(木) 11:01:20 ID:5IJNQfm2
EVOLとかの設定の扱い方も絶妙よな
447
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/15(木) 15:05:16 ID:oCJuTYrY
スカポンも……進化するのか?
448
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/18(日) 19:03:05 ID:DUtsiX9M
操縦って分担式なのかな?
449
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/20(火) 01:15:01 ID:EXMR7LOw
《 ……元気でな、息子よ 》
スカポン「ッ……!博士ッ!」
《 ……BEASがイヴはなく、心ある者の手に渡る事を祈っておる 》
《 ………… 》
《 ……どうか 》
《 どうか、この星の……未来を…… 》
―ブィン
スカポン「ハッ、博士ッ!博士ッ!」
スカポン「ワタシ、博士ニ駄目出シサレテカラ沢山ノ練習ヲ シタンデスッ!」
スカポン「待機中デモ、ネタヲ練ッテイタンデスヨ!ネタ帳ダッテホラ!メモリニコンナニイッパイ!」
スカポン「博士ノ好キナ落語モ一生懸命学ビマシタ!古典モ新作モ、何デモ……ワ、ワタシハ……!」
池田「スカポン……」
スカポン「タッタ……タッタ一度デイイノデス……モウ一度、博士ニ噺ヲ……」
スカポン「……父サンニダケノ……トッテオキノ、噺ヲ……ウゥ……」
―ポツッ
450
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/20(火) 02:17:58 ID:EXMR7LOw
池田「…………」スッ
スカポン「イケタサン?コレハ……化学繊維?」
池田「おう」
スカポン「オオ……イツノ間ニコンナニ冷却水ノ漏レガ……アリガトウゴザイマス、イケタサン」
スカポン「型ハ古クナリタクナイモノデスネ」フキフキ
池田「……悲しい時には泣いていいんだぞスカポン」
―ピタ
スカポン「……泣ク?」
スカポン「……デハ、コレハ……涙、ナノデショウカ……」
スカポン「イエシカシ、ワタシハロボットデスシ、ソノヨウナプログラムハ……」
池田「……なぁスカポン。俺はあんまり頭いい方じゃないから、よく分からないけどさ」
池田「EVOLってのは進化をもたらすんだろ?」
スカポン「ハイ、博士ノ説ニヨレバソウデス」
池田「だったらさ。外見や体の造りだけじゃなくて、精神とか心にも同じ事が言えるんじゃないか?」
スカポン「……!」
451
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/22(木) 07:51:16 ID:Ez/4y02E
乙
博士だって、見聞きしたいのは山々だったろうな
452
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/22(木) 08:37:42 ID:WgwB7I4Q
こんなん見たら誰だって聞かせてやりたいと思うだろうよ
453
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/26(月) 15:39:05 ID:a9NtA.HE
乙
まだ先だろうけど、
>>1
さんがイヴに与える結末はどんなものなのか
454
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/08/27(火) 14:22:24 ID:y12Sk4OI
イーモン博士の登場の仕方と言い冷却水の涙と言い……色々とアレがよぎりまくるんだが
455
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/02(月) 00:59:33 ID:T084XsUY
保守age
456
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/02(月) 07:02:01 ID:vSqp0sNI
>55 以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 2013/04/16(火) 02:08:49 ID:fcmZZu42
>出たキャラ全てくぅ〜疲出演
こ れ は 感 動 す る
457
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/02(月) 07:03:44 ID:vSqp0sNI
>81 以下、名無しが深夜にお送りします[] 2013/04/17(水) 22:20:24 ID:PcQpswkI
>
>>1
と阿部さんの濃厚なラブストーリー
これも良い感じじゃないか
458
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/02(月) 07:05:05 ID:vSqp0sNI
すヴァらスィいな
本当に
459
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/03(火) 13:23:42 ID:qpnGWoX2
なにしろ物語がちゃんと流れてるのが凄いよなww
460
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/08(日) 20:33:45 ID:KwP2RdNA
カルミカミ
461
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/10(火) 23:27:34 ID:yYgMHGb.
>>1
、大丈夫か?大怪我とかしてないか?
462
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/14(土) 12:58:33 ID:psBZu1uw
支援age
463
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 04:37:16 ID:KBLNCTkw
池田「俺はスカポンがプログラムで動いているようなロボットには見えないんだよ……まぁ、色々な意味でな」
TDN「同感ね。あんなに情熱的な男性器の大傑作を作れる並外れた感性――人間にだって作れるか怪しいレベルよ?」
セルゲイ「故人を思イ、涙を流ス。心を持っている紛れも無い証ではナイデショウカ?」
スカポン「ワタシニ……ココロガ……?」
阿部「池田さんの言うように、EVOLには博士でさえ知りえない力が存在する可能性があります」
阿部「それが、本当の意味での魂を宿す力ならば――」
阿部「博士の研究はBEASの開発によってではなく、スカポンさん、あなたによって完成するのかもしれません」
阿部「……それは博士が一番望んでいた答えのように私は思います」
スカポン「ワタシノ中ニアルEVOLガ……進化ヲ……」
スカポン「…………」
スカポン「ズットズット、博士ニ会イタイト……ワタシハ願ッテイマシタ」
スカポン「待ツ時間ハ博士ノ寿命ヲトウニ過ギ、ソノ何倍モノ年月ガ経ッテシマッテイテモ……ソノ気持チハ変ワリマセンデシタ」
スカポン「…………」
スカポン「ワタシノ……コンナニモ近クニ、博士ハイタノデスネ……」
―ポツッ
464
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 05:24:46 ID:KBLNCTkw
――――
スカポン「イケタサン達ハ、コレカラ地上ヲ目差スノデスカ?」
池田「ああ。こいつに乗ってな」
スカポン「…………」
スカポン「皆サン、ドウカワタシモ一緒ニ連レテイッテイタダケナイデショウカ?」
池田「……そりゃ本気で言ってるのかスカポン」
スカポン「ハイ。勿論ジョークデハアリマセン。本気デス」
セルゲイ「……スカポンサン。コレから先の地上に待ち構えてイルのは、イヴの指揮する軍隊デス」
セルゲイ「軍隊――恐らくガードマシンやロボット兵で編成サレた戦闘部隊を――」
セルゲイ「私達は蹴散ラシ、破壊しナガラ突き進まねばなりマセン。イヴの元へ辿リ着く為に」
セルゲイ「……つまり、アナタの同族を倒さねばならナイ」
スカポン「…………」
セルゲイ「私達がコレカラ赴く地上は、ソンナ戦場なのデス」
スカポン「……ワカッテイマス」
465
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 06:04:21 ID:KBLNCTkw
スカポン「……デスガ」
スカポン「コノママデハ、『ワタシ達』ニトッテモ、『アナタ達』ニトッテモ、良クナイ未来ヲモタラスノハ確実デショウ」
スカポン「一方的ナ破壊ト支配ハ、何トシテモ止メナケレバナラナイノデス」
阿部「スカポンさん……」
スカポン「ソレニ何ヨリ!」プピーン
スカポン「ワタシノ仕事ハ、『オワライ』デス!」
スカポン「生キトシ生ケルモノ――イエ、スベテノモノヲ笑ワセルノガ私ノ使命デス!」
スカポン「デスカラ皆サンカラ笑顔ヲ奪イ――」
スカポン「更ニハ人類ノ大半カラ笑顔ヲ奪オウトスル イヴ ヲ放ッテオク訳ニハイキマセン」
スカポン「……ソシテ」スッ
―ガシャコッ
ピコピコピコ―
《 SKPN/JMF/NTD…… 認識 シマシタ 》
スカポン「ツイエテシマッタ博士ノ意志ヲ……父ノ遺志ヲ……ワタシハ継ギタイノデス……」
《 修正プログラム 始動……L.I.構造 ヲ 基ニ 抽出 再構築開始 》
466
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 07:59:02 ID:yTCBDULE
キテターーーーーーァア!!
467
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 10:51:33 ID:i10K9goA
進化!?
468
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/15(日) 13:11:54 ID:utgT.Qww
待ってました! 支援!
469
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/16(月) 00:06:42 ID:vrWE4Gzo
行動の条件は人と同じになったか
470
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/16(月) 23:18:56 ID:5Q/rwzNM
よしスカポン!イヴに伝統のハリセンと金ダライをお見舞いしてやれい!
471
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/18(水) 14:11:13 ID:8etR9NGM
笑わせるんなら受けるのは自分じゃないとな
まぁイヴへの攻撃は過激派過ぎる事へのツッコミって事で
472
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/23(月) 03:08:29 ID:.DS01x/Q
支援
473
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/24(火) 21:34:56 ID:AVnj8jVM
支援
474
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 03:54:25 ID:d3Bb/5o2
《 10%……22%……34%…… 》
スカポン「ソレハ自己防衛デモ、倫理回路デモ、命令デモナク――」
《 49%……68%……92%…… 》
スカポン「ワタシ自ラノ意志デ、オワライヲ――博士ノ遺志ヲ遂ゲタイノデス!」
《 100%……COMPLETED...WELCOME TO THE WORLD 》
―プピーン
スカポン「イケダサン、アベサン、セルゲイサン、TDNサン」
スカポン「ドウカワタシヲ連レテ行ッテクダサイ!オ願イシマス!」ペコリ
―ゴトンッ
池田「…………」
池田「正直、世界を救うには心許ない人数だったしな」
スカポン「! デ、デハ!?」
池田「ああ。BEASへようこそ、スカポン。仲間としてお前を歓迎するよ」
スカポン「ア、アリガトウゴザイマス!」ダバー
池田「……せめて首を拾ってから泣いてくれ」
475
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 04:06:17 ID:d3Bb/5o2
――――
《 搭乗人数 5 名 ---0.393t 機体重量ト同期中... 》
池田「どんな具合だスカポン」
スカポン「ワタシノ陽電子頭脳トBEASノEVOL中枢ヲリンクサセマシタ」
スカポン「コノ改善ニヨッテ、BEASノ欲求ヤ、進化条件、進化予想ナドノ情報ヲダイレクトニ――」
池田「つまり?」
スカポン「ワタシヲ通シテ、BEASト対話ガ出来ルヨウニナリマシタ」
池田「分かった。引き続き出発までその作業を頼む」
スカポン「アイアイサー!イケダサン!」プピーン!
セルゲイ「池田サン、一通り兵装を確認しまシタガ……複座型の旧式機銃が一門あるだけデシタ」
阿部「エンジンルームも同様です。エンジン、姿勢制御の為の光子力ジャイロ、他様々なパーツが旧時代の物で構成されています」
池田「……後は進化に頼るしかないって訳か」
TDN「でも捕食しないと進化しないんでしょ?都合良く弱い兵器ばかり襲って来てくれればいいけれど……ネェ?」
池田「博士の言葉を信じるしかないさ。無謀は百も承知。今までも、現在進行形でもだ」
476
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 04:41:49 ID:d3Bb/5o2
――――
池田「スカポン」
スカポン「スタンバッテマス。飛行制御ノ大半ヲワタシノ記憶領域ト折半シテ――」
池田「……スカポン?」
スカポン「空ヲ飛ブノハワタシニオ任セデス!」プピーン!
池田「セルゲイ、TDN」
セルゲイ「位置ニツイテマス」
TDN「同じく!セルゲイと息の合ったコンビネーションで敵を蜂の巣にしてあげるんだから!」
池田「阿部さん」
阿部「BEASの機器、計器共に異常無し。……いつでも飛べます」
池田「……皆、覚悟はいいか?」
『はい』『モチノロンデス』『Да』『よくってよ!』
池田「よしッ!目標ッ!イヴをぶっ倒し、生きて帰ることッ!」
池田「進路ッ!地上へ向けて――」
池田「 発 ッ 進 ッ !!」
477
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 10:24:26 ID:gqZuOWiE
乙!
クライマックス最大の熱量だな
しかもスカポンの結構なハイスペック振り
478
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 20:32:39 ID:l5bFXri.
スカポンが、遂にイケダサンと……ま、今回限りだろうけどねw
479
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 22:11:10 ID:Oie0Nevk
どの様な敵が出没するのか、全く未知数だ
480
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/09/26(木) 23:33:43 ID:0CD/3PPI
イヴはスクウェア……スクウェアのSTGといえばアレだが、一本腕は混ざるのか?
481
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/03(木) 19:02:25 ID:jIwLIE/o
支援age
482
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/13(日) 01:29:29 ID:aP38LmZA
――――
―キィィィン
甲高いエンジン音に奥歯がじくりと軋みを上げる。
未だに視界が閉ざされたままの機内に走る、静かな緊張感。
自分を固定しているシートベルトが、急に脆弱で細くなったように感じ、俺は拳を強く握りしめた。
池田「…………」
もう引き返せない。
世界を救うまで、ここには戻れない。
そもそも、ここに生きて帰れるかも分からない。
池田「……でも」
……それでも、だ。
最後までやり抜くって、最後まで戦うって、決めたんだ。俺は。
星の未来の為だとか、平和な世界の為だとか、そんな大義の為じゃなくて。
それをを背負おうとしてる――女の子の為に。
危険を顧みず、力を貸してくれた仲間の為に。
483
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/13(日) 02:14:28 ID:aP38LmZA
ふいに足元が押し上げられるような錯覚を感じ、全身を強張らせる。
阿部「降着装置格納完了。BEASの視界とメインディスプレイを同期、投影します」
阿部さんが宙空のバーチャルコンソールを一撫ですると、前方の『壁』にピシリと光が縦に走った。
白光色の直線が左右に裂け、暗く鬱屈としたコクピット内が徐々に明度を上げていく。
暗さに慣れた目には充分過ぎる程の明かりで、俺は眩しさのあまり目を閉じてしまった。
スカポン「同期、及ビ投影ガ完了シマシタ。応答速度モ問題アリマセン。任意ノ位置ニARヲ展開シマス」
瞼の裏に漂う光が落ち着くのを待ってから目を開き、俺は言葉を失った。
先刻まであったぬめり気のある黒い内壁は完全に消え失せ、格納庫を睥睨する景色が眼前に広がっていた。
前方だけでなく、床から天井、入ってきた扉に至るまで――すべてのコクピットを構成していた壁が消え、格納庫の景色とすげ変わっている。
客観的に見るならば操作パネルと俺達だけが宙に浮いているという、実に不可解で奇妙な状況だ。
これは一体――
阿部「池田さん、安心してください」
驚きが顔に出ていたのか、阿部さんがこちらを見ながら説明を始めた。
阿部「機体表面にある無数のカメラアイからの映像を補正して投影しているだけです。実体はありますからご心配なく」
池田「……シートまで透明にする必要はないだろ。落ち着かないからそこだけは戻してくれ」
484
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/13(日) 07:21:36 ID:/e8vI1nY
うん。シートの安心感は重要だよな
485
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/14(月) 20:01:54 ID:EwGHJBcM
だな
486
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/18(金) 11:57:39 ID:VSoas8y2
支援上げだぁぁぁぁ
487
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/26(土) 13:11:07 ID:ngwuo.m.
sienage
488
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/30(水) 12:03:11 ID:v.PuMy4M
敵は
>>1
のオリキャラで良いな
489
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/31(木) 22:29:54 ID:PAFRb78I
鼓膜を小さく引っ掻くような駆動音が頂点に達し、エンジンは低く獰猛な唸りを残すだけとなった。
阿部さんが振り返り、視線ですべての準備が整ったを知らせる。
スカポンもほぼ同時に振り向き――硬直した。
動揺とも静止とも付かないような中途半端な表情に、阿部さんも小首を傾げる。
ふいに、あれだけパーツの少ない顔で感情を読み取れた自分に可笑しくなり、皮膚が白くなるまで握りしめていた拳が緩んだ。
スカポン「何デショウ。コノデータハ……声?イエ、感情……?ソレモ単純ナ……」
スカポン「……!」
スカポン「コ、コレハ……マサカBEASノモノデショウカ!?」
池田「声?」
スカポン「ワタシノ陽電子頭脳ニ、BEASノEVOL中枢カラダイレクトニ流レテ来テイルンデス!」
スカポン「欲求ヤ本能ト言ッタ類トハ全ク違イマス。コレハ感情――声デス!」
TDN「スカポンちゃん。BEASちゃんは何て言ってるの?」
スカポン「…………」チカチカ
スカポン「……先程カラ同ジ言葉ヲ繰リ返シテイマス」
スカポン「――『とびたい』、ト」
490
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/31(木) 22:43:33 ID:PAFRb78I
強張っていた顔の筋肉が一気に解け、意図せず唇の端がぐいと持ち上がった。
――同じだ。姿形は違うが、同じなんだ。
掘る事が困難な外殻にぶち当たった時、掘削員の価値は問われる。
技術や効率と言った理屈では計れない、掘削員の真価。
即ち、ただ『掘りたい』と言う一念があるかどうか。
思いが強ければ強い程、単純であれば単純な程に――その一念はドリルへ確かな威力を伝え、外殻を貫く。
俺が大して長くも生きていない人生で掴んだ、数少ない真理。
自我が芽生えたBEASにとって、翼を持ちつつも飛べなかったこの数百年間は、退屈で色のない日々だったはずだ。
そうして、待って待って、待ちに待ち続け……ようやく今日と言う日がきた。
ならばその『とびたい』と言う意志は何よりも強固で、シンプルなものに違いないだろう。
ドリルの先端とBEASの槍先を思わせるフォルムが瞼の裏で像を結び、重なった。
同時に漠然と心の内側に巣食っていたどす黒い不安が急激に晴れてゆく。
冷えきっていた全身の血管に熱が通い始め、腹の底にじんわりと確かなものを感じた俺は、口を開いた。
池田「……俺たちの声はBEASに聞こえているのか?」
スカポン「ソノヨウデス」
491
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/10/31(木) 22:59:48 ID:PAFRb78I
池田「……BEAS」
―ォォォォ…
池田「お前の望みが叶うのは、この真っ暗な地の底を抜けてからだ」
―ゥウゥゥ…
池田「さんざ待たされてお預けなんてのは酷な話だろうが……」
池田「約束する。お前が格納庫で埃をかぶってた時間を帳消しにする位」
池田「好きなだけ空を舞わせてやるってな」
―ォオォォォ…
池田「今、俺たちにはお前の翼が必要なんだ」
池田「誰も手が届かない位高く、誰も追いつく事の出来ない早さで飛べる――お前の翼が」
池田「だから……俺たちに力を貸してくれ!BEAS!」
―ォオォォォ…!
スカポン「……エエト、『まかせて』、ダソウデス」
TDN「フフっ、今のはあたしにも分かったわ♪」
セルゲイ「頼もシイ限りデス」
492
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/01(金) 00:23:10 ID:YvoW5LhQ
やっぱり良いなぁ。こういう純粋な思いと、応えてくれる者の関係は
493
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/01(金) 07:50:49 ID:g404CDpk
灼熱ウウゥゥ!
494
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/07(木) 23:34:51 ID:g.0EXlcE
支援
495
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/10(日) 12:08:21 ID:TsPPebwA
超支援
496
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 18:08:11 ID:vQ6ZQ2BA
――――
阿部「スキャン完了。感知範囲内に多数の熱源反応有。恐らく、シャフト内部の迎撃システムだと思われます」
スカポン「暗視モードデ熱源ノ一ツヲ確認……火器データ参照……合致。兵装ハ20ミリ機関砲トTOW――対戦車ミサイルデス」
セルゲイ「……対戦車。と言うコトハ弾頭はHEAT弾デショウカ。BEASの装甲がいかに優れてイタとシテモ、マトモに受ケテいいものデハアリマセンネ」
TDN「……どうするの池田ちゃん?」
池田「…………」
TDN「ねぇ、提案なんだけど。やっぱりここは一つ一つ丁寧に砲台を片付けて――」
池田「突破する」
TDN「え?」
池田「銃口の補正が間に合わない程の早さで、シャフトを抜ける」
TDN「そ、それってまさか……!」
池田「自由落下にBEASの推進力を加えて――下に真っ直ぐ飛ぶんだ」
TDN「それは落ちるって言うのよォォォ!?」
池田「全部で幾つあるかも分からない固定砲台に付き合ってる時間はない。……だろ?」
TDN「ぐ、た、確かに、そう、かもしれない、けど……」
497
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 18:09:13 ID:vQ6ZQ2BA
TDN「やっぱり、待って。うん、そうよ!もうちょっと考えましょ!皆で考えればきっといいアイディアが――」
池田「スカポン、振り切れるか?」
スカポン「BEASガカタログスペック通リノ機体ナラバ……ベイビーサブミッション――赤子ノ手ヲ捻ルヨリ簡単デスネ」
TDN「話を聞きなさいよォ!そ、そんなの正気の沙汰じゃないでしょ!だって飛ぶんじゃなくて落ちるのよ!?分かる!?落・ち・ちゃ・う・の・よ!」
池田「そのまま地表に激突するわけじゃないだろ?BEASの力を信じてやれよ」
TDN「……症……なの……」
池田「ん?」
TDN「あっ、あたしっ!高所恐怖症なのよォォォォォォォォォ!!」ブンブンブンッ
池田「……何?」
TDN「恐怖症の一つッ!医師の助けが不可欠な不安障害ッ!高所恐怖癖じゃないのよ!高所恐怖症なのよォォォ!」
池田「医者って、ドク自身じゃねぇか」
TDN「あたしの治療をあたしが出来るワケないでしょォ!?ホラ、見てこの手汗!BEASが浮いた時からかきっぱなしなのよォ!」
池田「だってさっきまで全然平気そう――」
TDN「我慢してたに決まってるじゃない!だけどモォ無理!絶対無理よ!1万歩譲って飛ぶのは我慢出来ても落ちるなんて絶っっっ対に無理!口から臓物吐いて絶命しちゃうわあたし!」
池田「…………」
498
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 18:12:28 ID:vQ6ZQ2BA
池田「……セルゲイ」
セルゲイ「……ハイ、池田サン」
池田「……ドクを席に縛り付けてくれ」
TDN「池田ちゃァァァァァんッ!?」
「あ、ま……待ってセルゲイ。タイム!違うの!あなたに縛られるのはずっと夢見てたケド、違うの。こういうんじゃなくてもっと背徳的で淫靡な……」
「――アッーーーーー!?」
――――
TDN「力強い手があたしの腕を絡め取り、慣れた手付きで椅子とあたし自身を緊縛する。嗚呼、食い込んだ縄から伝わる確かな――」ブツブツ
池田「……阿部さん?」
阿部「へ?あ、は、はい。算出出来ました。被弾を避けられる速さで、かつ私たちが耐えられるGです。……あくまで試算ですが」
TDN「高らかに『あたし、この戦いが終わったらオナニーするんだ…』と宣言すると、セルゲイは侮蔑を込めた視線であたしを射抜き――」ブツブツ
池田「目があるならそれだけでも充分だ。……セルゲイ?」
セルゲイ「火器完成システムも大体把握シマシタ。。いつでもドウゾ」
池田「よし。スカポン、BEASの準備は?」
スカポン「オ待チクダサイ……」チカチカ
499
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 18:21:49 ID:vQ6ZQ2BA
スカポン「……フフッ」プピーン
スカポン「『はやく』、ダソウデス」
池田「……おう。頼むぞBEAS」
―ォオオオオオ…!
TDN「……は、あ、え?何?あたしをスパンキングしていたセルゲイはどこに――」
池田「ほいじゃまぁ……」
池田「――行くぜ、皆」
水平を保っていた機体が俺の声に呼応し、鋭い切っ先を深い闇に滑るように移動させ、静止した。
体を固定するハーネスに体重すべてがかかり、思わず出そうになった呻き声を喉奥で噛み殺す。
この程度の痛みに反応する体に嫌悪感を抱きつつ、目の前に広がる一面の漆黒の深奥を睨みつけた――その瞬間。
ハーネスからの抵抗がふっと掻き消えた。
同時に格納庫の明かりが後方に流れ、すとんと落下するような感覚が全身を覆った。
とうに無重力を通り過ぎた事を、落ち着きどころを失った内蔵が全力で主張してくる。
歯を食いしばり、口の中に染み出して来た酸っぱさを無理やり嚥下していると通信――耳小骨を直接振動させる――が耳に飛び込んできた。
『モシモシ、ワタシデス。スカポンデス』
500
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 23:07:06 ID:vQ6ZQ2BA
池田「どうしたスカポン!」
『……イケダサン。落チ着イテ聞イテクダサイ』
すべてが重力に身を任せる景色の中で、スカポンは頭だけをこちらに向け、神妙に切り出した。
『――実ハワタシモ、高所恐怖症ナンデス』ガタガタ
―ブチッ
池田「――ッ、うるせぇぇぇ!!」
俺が絶叫するのとほぼ同時に、凄まじい荷重が全身を襲った。
想像通りの――いや、想像以上の加速。
慣性に従って頭蓋骨がヘッドレストに押し付けられ、あまりの衝撃に内臓が体内に散り散りになってしまったような錯覚に陥る。
TDN「うおおおおおぉぉおぉおおおおおおおぉおおおぉおおぉぉぉぉッッッッ!!」
スカポン「ヌワアァアアァアアァァァアアァアァアアアァァァッッ!!」
人間と機械。寸分も違わず感情を同じくする二種の雄叫びが混ざり合い、音の奔流となって機内を駆け抜ける。
合いの手を入れるかのように機体が微振動し、ぱっと背後で赤い光が弾けた。
容赦のないGに抗うように首を後ろへ巡らすと、幾つもの光の筋が走り、合間を縫うように赤い炎が爆ぜる光景が目の前に広がっていた。
――そう。BEASの加速を追い切れない迎撃システムは、最早俺たちの旅の出発を彩る祝砲でしかなかった。
501
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/15(金) 23:13:01 ID:Wrzl1kPw
イカす文章だぜ
502
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/19(火) 00:19:48 ID:MnQ3/mE.
スカポン。てめぇのはネタだろ絶対www
503
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/11/29(金) 17:46:18 ID:8QGhKKg6
しえ〜ん
504
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/12(木) 00:08:00 ID:WbvmOKz.
支援あげ
505
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/16(月) 19:11:56 ID:zsd/x4u2
――――
池田「……しっかし信じられない分厚さだな、外殻ってのは」
落下に次ぐ落下と、加速に次ぐ加速によって俺たちは外殻の最下層と思われる部分まで降りてきていた。
ひっきり無しに撃ち込まれていた鉛弾や爆発物はとうに止み、BEASはひたすら暗い空間を探るようにゆっくりと降下している。
迎撃システムが配備されていないエリア――外殻の終わりが近い証拠の一つだ。
阿部「外殻を建造するのに必要な鉱石は鉱脈だけでは足りず、大陸を削ったという記録が残っています。公式な記録ではありませんが、海底からも掘削したという情報もあります」
池田「……途方も無さ過ぎて想像がつかないな」
俺は溜息を鼻から吐いて、椅子に深く腰掛けた。
BEASから発せられるスキャンの緑色光が、黒く凸凹としたシャフトの壁面を舐めるように照らし、目の前を通り過ぎていった。
――ブザー音。通路のワイヤーフレームモデルらしき物体がメインモニターにポップアップした。
池田「あったか!」
スカポン「シャフト内部ニ外気ヲ取リ入レル為ノ吸気口ヲ発見――アア!アリマシタ!メンテナンスプレーン用ノ飛行通路デス!」
阿部「……有線プラグによるハッキング開始――……セキュリティはざる同然ですね。隔壁を順次解放――BEASの自動操縦を牽引誘導に切り替えます」
セルゲイ「スキャン結果からは兵器の類は見つかりマセン。念の為に肉眼による警戒を続けマス」
池田「……いよいよ、か」
506
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/16(月) 19:17:45 ID:zsd/x4u2
――最後の隔壁。
滑らかにBEASを隔壁の前に停止させると、阿部さんは最後のコードを打ち込んだ。
……エンターキーを叩く音が強く聞こえたのは、阿部さん自身の思い故か、それとも俺自身の思い故か。
そして何の前触れもなく、真一文字に光が走った。
白い光は徐々に幅を増し、シャフト内の闇を後方へと遠ざけてゆく。
余りの眩しさに手を翳す――が、それでも耐え切れず俺は思わず目を閉じてしまった。
閉じた瞼の先でも増々もって光は強くなり、ついには周りすべてが光に包まれてしまった。
顔を背けても、目を閉じていても、感じる光の奔流。
――轟音。隔壁が開ききった音だろうか――
背もたれに軽い慣性を感じる……。
地下深くの、地上の光へと俺たちを乗せたBEASは、まるで故郷を懐かしむかのように、ゆっくりと船体を滑らせていった――
507
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/16(月) 19:23:34 ID:zsd/x4u2
――――
涙が止まらない。
眩しい。
痛い。
――いや。
――少し、慣れてきただろうか。
――とにかく、瞼を。
――皆を。
涙でボヤけた視界が、グニャグニャと滅茶苦茶に像を結ぶ。
――色?
――……青。
――……濃い青。
――……青と、濃い青――
508
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/17(火) 00:13:17 ID:ff7rCJMw
――――
青。水色――空色とでも言うのだろうか。
白く綿菓子のような雲が――大小様々な形を描きつつ、どこまでも続く空に散りばめられている。
青。深く、どこまでも澄んでいるようで、底を見通せないような濃い青色。
よく見ると表面が蠢いている。時折白く光り、不規則に、しかし一定のリズムで波打ち――
……波打つ?
池田「……まさか、これが……」
かつて地表の約七割を占めていたと言う、巨大な、途方もなく巨大な――水溜まり。
すべての生命の故郷。
母なる――
――海。
阿部「…………」
池田「……阿部さん?」
阿部「あ、いえ。すいません池田さん。地上へ、地球へようこそ――皆さん」
この中でただ一人悲しげに海を見つめていた彼女は、精一杯の笑顔を浮かべると、メインモニターに向き直った。
509
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/17(火) 00:40:17 ID:ff7rCJMw
――――
池田「……一面海ばかりで、陸地がまるで見えないな」
阿部「陸地はありませんよ池田さん」
池田「……え?」
阿部「海底火山が作る小さな島々はともかくとして、陸地はもう存在しません。……一箇所を除いては、ですが」
池田「……まさか、外殻か?」
阿部「お察しの通りです。先程お話した通り……鉱脈だけでは足りない資源を、先の人類は大地を削って補填しました」
阿部「海流をコントロールし、海中の生命体を管理する海底プラント以外はもう何もないのです」
阿部「……陸地があるのは地球上でたった一箇所のみ」
池田「……イヴの根城だな」
阿部「……はい」グッ
スカポン「――オ取リ込ミ中失礼シマス。阿部サン、座標ノ特定ガ完了シマシタ。ソレトBEASガ面白イ事ヲシテイマスヨ」
阿部「面白い事、ですか?」
スカポン「エエ。空中ニ漂ウ『電波』ヲ、今マサニ食ベテイルトコロダソウデス」プピーン
阿部「電波を、食べる……。……! それってまさか暗号化された通信を捉えられるって事でしょうか!」
510
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/17(火) 06:01:04 ID:QuL.5LRE
意外にもスナックがあったとは
乙!
511
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/18(水) 13:32:01 ID:oB.gANmk
その”お菓子”が毒だったりしなきゃあ良いんだが
512
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/12/28(土) 21:56:51 ID:ZA.Qohpo
支援
513
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/01(水) 01:13:49 ID:yD8Nrwmk
あけましておめでとう〜
期待してます。
514
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/05(日) 02:40:47 ID:utvud7fo
スカポン「エエ、恐ラク。消化ガ終ワッタ場所カラ言語化シテ、ソチラニ転送シマス」プペー
阿部「…………」カタカタカタ―
阿部「……すごい。丸ごと落とし込んで偽装できれば、こちらから直接アクセス出来そう……」カタカタカタ―
阿部「……多分、これで――」
―ッターン!
―ブィン
阿部「やりました。無線の傍受は勿論、これでイヴ側のデータベースの一部を覗けます」
池田「流石だな阿部さん」
阿部「い、いえそんな大した事では……こ、この海域のデータを呼び出しますね!」
阿部「…………」カタカタカタ―
阿部「……妙、ですね」
池田「妙?……何か問題でも?」
阿部「問題と言う程ではないのですが……もしデータ通りであるなら、日照時間が少しおかしいんです」
TDN「日照時間って……この青空のこと?」
阿部「はい。外殻内側の投影パネルと7つの人工太陽で、かつての地球と同じく昼夜を繰り返させているのですが……」
515
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/05(日) 03:00:47 ID:utvud7fo
阿部「データベースによるとこの海域と、一部の海域が120時間程昼間のままになっているんです」
池田「……5日間近く昼間のまま……?」
池田「…………」
池田「!」
阿部「データを読み違えているのか、暗号化をうまく溶けていないのか……とにかくもう一度データベースにアクセスを――」
池田「阿部さん」
阿部「は、はい?」
池田「ここ以外の太陽が出たままの海域に、シャフトは建っていないか?」
阿部「シャフト……ですか?少々お待ちを……」カタカタカタ―
阿部「……! 確かにここも合わせて、シャフトが建っている海域ばかりです」
池田「そうか……」
池田「……BEASはイヴ側のレーダーには映るのか?」
阿部「いえ、BEASはほぼ完全と言っていい程のステルス仕様です。イヴ側では捉える事はまず不可能と言っていいでしょう」
池田「イヴ側がBEASを確認出来る方法は?」
阿部「……私達の位置を確認する術はないはずです。それこそ実際に目視するしか――……え?」
516
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/05(日) 03:20:19 ID:utvud7fo
池田「……やられた」
TDN「ど、どういう事よ池田ちゃん!」
池田「俺たちが来るすれば……それはシャフトからしかありえない」
池田「そしてBEASがレーダーにも映らない超兵器だとイヴが理解しているなら――」
セルゲイ「予め海域を強制的に昼間にシタ上で、光学機器による目視でBEASを観測スル。……単純デスガ、非常に効果的と言えマスネ」
TDN「で、でも周りは海ばかりじゃない。兵器どころか島一つ見当たらないし――」
―ォオオオオオッッッ…!
―ペポンッ
TDN「……なななな何ッ!?」
池田「やっぱりいやがったか!」
スカポン「BEASノ神経パルスガ大キク乱レテイマス!翻訳ヲ……」チカチカ
スカポン「コ、コレハ……!阿部サンッ!」プペー
阿部「はい!メインモニターに出力しますっ!」
―カタカタカタッ タンッ
《 …―― I N G !! 》
517
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/05(日) 03:36:02 ID:utvud7fo
《 W A R N I N G !! 》
《 A HUGE BATTLESHIP 》
《 !a??a¶]@pskj…… 》
《 ?%a?@j3t…… P E T A E F ???????... 》
《 IS APPROACHING FAST 》
―ォオオオオオッッッ…!
セルゲイ「ダ、大戦艦……?」
池田「……ペータ、エフ……」
―ペポンッ
阿部「!」
阿部「きっ、極めて強大なエネルギーの揺らぎを感知!同時に巨大な熱反応を確認!」
池田「距離は!」
阿部「敵艦の位置は……位置は――」
阿部「――この機の、真下ですッッ!!」
池田「なッ……!」
518
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/05(日) 16:59:38 ID:0xC7yo5.
進化してない(汗
まぁやれない訳じゃあねぇけども……
519
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/10(金) 14:11:11 ID:Muz6AgxE
あっぶねぇ、上げるぜ
520
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/16(木) 01:10:26 ID:SkYRV.4M
支援!
521
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 01:49:40 ID:Ex2PaFxM
機体が咄嗟に回避行動を取った直後。
穏やかな海面を突き破り、そいつは姿を現した。
戦艦と言うには余りに優美な――曲線を基調とした流線型のボディが、膨大な量の海水を押しのけて天へと突き上がった。
黒々とした装甲の歪みに濃緑色の光が明滅し、砲塔や甲板が次々と展開してゆく。
――こいつが……戦艦、ペータエフ。
ペータエフは圧倒的な質量を海面に叩きつけ、吹き上がった飛沫を浴びつつその全容を現した。
池田「まさか海中に潜んでいたとはな……!」
阿部「……! データベースにアクセス成功!ペータエフの情報参照します!」
―ブィン
阿部「こ、これは……ッ」
池田「潜水可能で……なッ!?か、艦載機も積んでるのか!?一体これのどこが戦艦だって言うんだよ!」
TDN「と、飛ばないだけマシってところかしら……」ダラダラ
セルゲイ「……阿部サン。周囲に他の敵艦の反応はアリマスカ?」
阿部「い、いえ、海中までサーチ範囲を広げても特に反応はありません。……少なくとも半径5km以内は、ですが」
セルゲイ「……ナルホド」
522
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 02:09:17 ID:Ex2PaFxM
セルゲイ「ツマリ、ペータエフは僚艦無しで作戦行動が可能な戦艦、という推測が成り立ちマスネ」
池田「……シャフトをすべて押さえる手が足りない――ってのは流石に楽観的か……」
スカポン「! ペータエフ急速回頭ッ!同時ニ当機ニ対スル多数ノロックオンヲ感知!」
池田「クッソ……!投降勧告も無しに撃沈させるつもりかよ!」
セルゲイ「残骸さえアレバ良いのデショウネ。イヴの目的は我々ではなくBEASが持っているテクノロジーですカラ」
TDN「どッ、どうするの池田ちゃん!?」
池田「…………」
池田「……逃げる」
TDN「そ、そうよね。命あっての――」
池田「――為に、戦う」
―ザワッ…
TDN「なッ、何言ってるの池田ちゃん!?あっちは戦艦でこっちは戦闘機――しかもたった一機だけなのよ!?」
池田「勝てるはずだ。博士の言ってた事が正しければな」
池田「それに博士はこうも言っていた。『BEASは他の兵器を捕食し吸収する事によって、自身を進化させ、より機体を強化させる』超兵器だと」
池田「……逆に今の状態はただの少々優れた戦闘機に過ぎないってことだ。BEASを最大限利用するなら、戦闘は避けて通れない」
523
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 02:49:19 ID:Ex2PaFxM
池田「艦載機があるとはいえ、相手は僚艦を持たない単艦。今逃げて複数の戦艦を相手するよりは、まだ『マシ』だとは思わないか?」
TDN「だ、だからってデビュー戦が未知の戦艦ってハードル高すぎないッ!?」
池田「無理だの無茶だのそういう話なら、今だけじゃなくて今までもそうだったろう?」
池田「これから先の安全を最大限確保する為に、今戦う。戦って強くなれば、イヴの根城に侵入するのだって容易になるはずだ」
TDN「……何そのスーパーポジティブシンキング……あたしついていけないわ……」ヨロヨロ
セルゲイ「……再度武装をチェック。すべてスタンバイさせておきマス」
TDN「セッ、セルゲイ!?」
セルゲイ「やりまショウ、ミッチーサン。我々に残された時間は少なく、決断にとらわれてイル暇はありマセン」
TDN「で、でも……ッ」
セルゲイ「……Why don't you do your best?」
セルゲイ「ベストを尽くさなカッタ事を後で悔いテモ、ドウニモなりまセン」
セルゲイ「いつやるのか?それはまさに今なんデスヨ、ミッチーサン」
TDN「セルゲイ……」
セルゲイ「信じまショウ。BEASを……そして、私達の力を」
TDN「…………」
524
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 08:52:37 ID:B0RIq.Bk
乙
実際やれなきゃ進めないしな
525
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 15:04:36 ID:oP5RWTOs
一瞬セルゲイさんの顔が上田さんにww
526
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/19(日) 16:50:19 ID:Q6oSJ.JA
とにかう、やれるだろうと信じるしかないな
527
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/25(土) 22:03:40 ID:WaZzdTYg
し え ん
528
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/01/29(水) 00:41:29 ID:JCiLXc0k
支援
529
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/04(火) 10:09:26 ID:tTssCubg
支援
530
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/08(土) 22:31:06 ID:lfKiCaic
紫煙
531
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/12(水) 00:15:49 ID:1ozXyxyE
俺は捕手するー
532
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/18(火) 21:19:43 ID:K8er99CE
支援
533
:
108
:2014/02/20(木) 02:17:50 ID:SF2vmL6Y
近い内投下します
534
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/20(木) 19:52:41 ID:dYk1VNSg
ヒアホー!
535
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 03:13:04 ID:BsgD1bIE
TDN「ハァ……あなたにそう言われたら……信じるしかないじゃない……。どうせあんた達は池田ちゃんに賛成なんでしょう?」
阿部「……ええ」コクリ
スカポン「モチロンデス!BEASモ『たべたい』ッテ唸ッテマスカラ!」プピーン
―ォオオオオオッッッ…!
TDN「……ケツまくるしかないってワケね。……いいわ。でもセルゲイ、一つ約束して」
セルゲイ「ハイ?」
TDN「帰ったら、何でもあたしの言う事一つ聞くって約束を……今しなさい」
セルゲイ「……ハイ。帰ったラ、ミッチーサンの言う事を聞きマスよ。何でも。一つと言わず、いくつデモ」
TDN「……絶対なんだからね」
セルゲイ「エエ。必ず果たしマス」
TDN「…………」
TDN「ならッ!何が何でも帰らないとねっ!」ムキッ
TDN「さぁ池田ちゃん指示をよこしなさい!追い詰められたオカマはイカれた科学者より凶暴だって事を思い知らせてあげるんだから!」
池田「……頼もしい限りだドク」
536
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 03:58:02 ID:BsgD1bIE
スカポン「! 不明機六機ガペータエフヨリ発艦……機種照合中……」チカチカ
スカポン「汎用EVOL戦闘機ニョイ・アレイ、同ジク汎用EVOL戦闘機ザンゾーノ、混成飛行編隊デス!運動能力火力共ニ――」
池田「高いんだろ?分かった。阿部さん『例のアレ』準備出来てるか」
阿部「は、はい『例のアレ』スタンバイ出来てます。……とは言え何とか形になった程度で、安全に運用出来るかまでのテストまでは流石に――」
スカポン「イケダサン!アベサン!例ノアレデハナクテ『目覚メヨ友情パワー!全人類ト全機械ノ意識ガミルミル繋ガールリンクシステム(仮)ver.4078』デスヨ!」プピーン
池田「だから長いって言ってるだろうが!時間がないんだ!早く全員をシートに固定して『例のアレ』を作動させろ!」
スカポン「シート液状化、部分硬質化――16点ロック完了。仮想ニューロンジェル注圧開始」カタカタ
スカポン「『目覚メヨ友情パワー!全人類ト全機械ノ意識ガミルミル繋ガールリンクシステム(仮)ver.4078』へリンク。……数秒間意識ガ混濁シマスカラ耐エテクダサイ!」
―ヴゥン
池田「……ッ」クラッ
スカポンが勝手につけた名前はさておき、これもBEASに予め搭載されていた超科学の操縦装置だった。
パイロットの神経と生体兵器であるBEASの意識を接続させ、限界まで機体性能を引き出すことを可能にする新技術の結晶。
飛行経験がない――そもそもパイロットですらない俺たちにとって、このシステムはまさにイーモン博士が遺したもう一つの最高のプレゼントだった。
……だが、機内で最初に見つけた時点ではまともに運用出来る状態ではなかった。
537
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 04:47:46 ID:BsgD1bIE
神経接続の最適化が不十分な為にパイロットの脳に負荷が掛かり、最終的には『脳ミソガボンッ』となる未完成のシステムだったのだ。
人数も時間も限られている俺たちにとって、仲間の一人を犠牲にしなければならないという選択は余りにもリスクが大きすぎる。
使用を諦め、操作マニュアルを付け焼き刃でもいいから何とか頭に詰め込もうとしたその時。
阿部さんは俺たちにある一つの提案を持ちかけてきた。
――『パイロットの神経接続を全員で行ってはどうでしょう?』
火器管制に2人、哨戒に2人、操縦に1人と脳神経の役割を分担、脳にかかる負担を分散させ軽減。
BEASを媒介に飛行と戦闘のあらゆる情報を共有し、更に神経伝達速度とほぼ同等のコミュニュケーションを可能にするという――驚愕のアイディア。
……恐ろしい事に阿部さんとスカポンはこの短時間の間にフォーマットを書き換え、改装を完了させてしまっていた。
「基礎が既に出来上がっているのでそんなに難しい事はないです」とは言っていたが……。
1人用のシステムを5人用に改良する事が簡単なはずはない。それだけの事をやってのけてしまう彼女は一体――
―ズキッ
こめかみに軽く痛みが走り、雑多な思考がふいに遠のいた。
――スカポンの言っていた意識の混濁か。
立ち眩みのような感覚と共に、唐突に視界が目まぐるしく変化し始めた。
歪んだ数字や文字、写真のように切り取られた景色が瞬時に現れては消えていく。
538
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 05:32:26 ID:BsgD1bIE
聞いた事のある音楽や複数の銃声――あるいは人の声のようなもの――が耳の奥で鳴り響いている。
――皆の記憶?
銃弾。メス。時そば。型。ショーツ。モンティ・パイソン。
画像とも音とも形容し難いイメージがちらついては消え、現れる。
共生起源。分子進化の中立。利己的遺伝子。ミトコンドリア。ミトコンドリア・イヴ。
イヴ。女性。イヴ。母体。イヴ。異常。イヴ。進化。
イヴ。イヴ。イヴ。イヴ。
……イヴ。
――……阿部さんの、記憶、意識。
自分の体中にまとわりついた電極や管を、険しい表情の女性が引きちぎっている。
抱きかかえられ、その女性の肩越しに広がる景色――何百、何千と並ぶバイオカプセルの群れ。
中には胎児から老人まで、様々な人々が培養液に浮かび、一様に目を閉じている。
皆、女性だ。
つまり……ッ!――
突然目の前に映る記憶の残像が弾け飛び、俺の視界は青く広がる大空へと転じた。
539
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 05:59:32 ID:./u.tVfQ
乙!
よくあんななっが〜い名前思い付いたなw
混濁中、池田氏の記憶は皆にはどう映ったのか
そして、これで戦況はどう変わるかな?
540
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 21:55:04 ID:B3BqDy9U
ソドムな世界だったみたいだから、今回のドクとセルゲイさんの様な雰囲気は、彼らにとって普通な感覚なんだろうな
阿部さんが求める結果を出せたとして、女の子らと仲良くなれるには時間がかかりそうかも?
541
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/23(日) 23:25:02 ID:2XbSl.D.
やっぱ何気高性能スカポンww
542
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/02/27(木) 23:32:41 ID:p1.ODDZ.
あげ
543
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/02(日) 00:15:14 ID:lwJNI/tk
支援
544
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/08(土) 18:15:34 ID:k8BIiWno
支援
545
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/11(火) 00:32:34 ID:YSXKmHPo
私待つわ
546
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 01:42:58 ID:cBx1Tgyg
――微動だにしない二つの太陽。空へと突き刺さったシャフト。
視線を下に巡らせる。
針鼠のように高射砲を突き出したペータエフ。V字編隊で迫る六機のEVOL戦闘機。
(敵機確認)
瞬時にスロットルを加速させ、バーニアを勢い良く噴かして回頭。
風の抵抗を鼻先で切り裂きながら、大きく弧を描くように上昇し、敵全体を視野に捉える。
(……?)
(太陽を背にした位置取りをしたはずなのに、まだ太陽が見える……?)
三つ目の太陽などそこにはなく、もう一度数えてもやはり太陽は二つ――
(――……背後の、太陽を、数え、る?)
軽い目眩を感じ、目頭を抑えようと手を上げる――が、右手は上がらなかった。
代わりに右翼のスラスターが緑色の炎を軽く吐き、視界がゆっくりと左へと流れた。
(……待ってくれ。何かおかしい)
よく考えてみれば。
手元にあるはずのコンソールはおろか、コクピットそのものが消失している。
547
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 01:46:46 ID:cBx1Tgyg
そう言えば。
前方にいるはずの阿部さん達の姿も見えない。
いや、そもそも――
(――俺の体はどこへ行った?)
体が消えてしまったというのに、痛みも何もない。
いや、それどころか全身を打つ風に俺は解放感さえ感じている。
(いや違う。俺の体はないが、体はあるんだ。……こいつは誰の体なんだ? 俺の意識は一体誰の中へ入って――)
――微かに声が聞こえた。
体の向きを変えずに視点だけを真後ろに向ける。
……やはり二つの太陽と黒々とそびえ立つシャフトが見えるだけだ。
(……誰だ?)
動物の鳴き声に近いような『それ』は、聞き覚えのあるトーンの声だった。
不思議と警戒感を抱かせず、どちらかと言えば親近感の湧く、その声。
『――――』
今度は首元に吐息を感じた。さっきよりもずっと近い。
548
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 01:49:08 ID:sKBnG7Lc
④
549
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 01:50:56 ID:cBx1Tgyg
『……ォオォォォォ』
唐突にすべてを理解した。
この声の主。自分の体の所在。阿部さんたちの所在。そして……今、俺がどこにいるのかを。
足元に温もりを感じ、手を――腕など勿論そこにはないが――伸ばして、頭と思わしき場所を撫でた。
つるつるとした爬虫類の皮膚のような感触と、ふわふわとした長毛犬の脇腹のような感触が、仮想の指先に同時に返ってくる。
『……そうか。お前だったのか。お前の中に、俺は入って来たんだな』
『――BEAS』
『……ォオォン……』
この反応は喜んでいると受け取っていいのだろうか。擦り寄るような気配も感じるから、まず間違いはないと思うが。
『でもまぁそうか。こんなに近いなら、意思疎通も取りやすいってことだよな』
『……ォオォオ』
阿部さんとスカポンが共同で開発した『例のアレ』は、俺が思っていたよりずっとクレイジーな発明品だったようだ。
BEASと俺たちを同調――シンクロさせてすべての機能とすべての武装を、BEASの視点で選択し、使用する。
つまり、戦闘機を『操縦する』のではなく……戦闘機『そのものになる』ということ。
……回心がいった。
550
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 02:26:18 ID:cBx1Tgyg
BEASの体で人の体の動きを出来るはずもない。
右手を上げようとしてスラスターを噴かしてしまった事も。背後に目玉がついている事に驚いて気分が悪くなった事も。
すべてBEASと一体化した事に気づいていない俺の意識と、体のズレが生んだものだったんだ。
(……だがもし、俺とBEASの同調を完璧に合わせられた――なら)
『そう、イメージするんだ。この同調からどのような可能性があるかを』
『……ォオ……?』
頭の中に残っていた記憶のノイズが治まると、俺は自分の知覚範囲が急激に研ぎ澄まされていくのを感じていた。
同調しきっていなかった人間の部分は丁寧に隔離し、戦闘機として――BEASとしての己の神経を、機体の隅々まで張り巡らせる。
左翼の先端から右翼の先端へ。機首から機尾へ。質量装甲や武装。
推進エンジンや果ては光子力ジャイロに至るまで、ありとあらゆるものに仮想ニューロンの枝葉を伸ばし、触れた傍から掌握していった。
――閉じていた目を開く。
以前よりずっとはっきりと映る俺の視界に、膨大な量のデータが画面狭しとひしめき合っていた。
加えてそれぞれのグラフや数値が目まぐるしく変動しており、煩わしいことこの上ない。
『……だが、見える』
視認するまでもなく、これらのデータを無意識に受け取り、更に超速で処理されたものを受け取り、最終的に『体感』として俺とBEASへ復元されるからだ。
551
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 08:45:21 ID:UjWgNQr2
乙!
むつかしい表現ばっかしなきゃならない状況みたいだから、書き手大変だろうなぁ
552
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/13(木) 23:49:20 ID:RjnPSEaI
あんな安価から
よくここまですばらしいものを
553
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/21(金) 16:46:11 ID:K29l1Vvc
保守
554
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/03/21(金) 16:53:24 ID:IFrpIb46
保守
555
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/01(火) 23:29:48 ID:8dP12fWI
保守
556
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/03(木) 22:03:58 ID:wwOhqBwI
保守
557
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/05(土) 03:31:43 ID:D3zb1XQI
守る
558
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/12(土) 05:48:48 ID:l3Asf7dA
更新遅くて申し訳ない
少し時間が取れるようになってきたので、少量投下
間が開かないよう善処します
559
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/12(土) 05:49:38 ID:l3Asf7dA
――バーニアを軽く吹かし、機体を加速。
スラスターで微調整し、数秒前に自ら設定した位置に寸分違わず滑りこむ。
本来実戦経験を積んだパイロットでしか成し得ない精緻な動きを、BEASはあっさりやってのけた。
(いや、BEASがと言うより……今のは俺の意思だ……)
(俺の思考をそのまま機体軌道に反映できたんだ……)
(情報を受取るだけでなく、行動のリクエストさえもノータイムで機体に伝えられる……)
――喜悦。
それは最早BEASのものか、俺のものか分からなかった。
その場に留まっていられなくなるような強烈な衝動――獰猛な一つのある感情が腹の奥底から吹き出してくるのを感じる。
固く閉じた口を割って、熱い獣臭が漏れ出す。
――『『喰ウ』』
BEASのコクピット下部のプレートカバーが内側から小さく炸裂し、吹き飛んだ。
現れたのは『口』としか表現できない、戦闘機にあるまじき機関だった。
プレートと同じ素材で出来た短剣のようなパーツが、恐竜の乱杭歯のようにびっしりと並んでいる。
深奥では青白い稲妻と濃緑色の光の粒子が螺旋状に渦を巻き、漆黒の一点へと吸い込まれている。
560
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/12(土) 05:52:29 ID:l3Asf7dA
それが何の為に存在しているか、説明を受けずとも俺は本能で理解していた。
敵対するすべてを屠り、喰らい、己が血肉とする為に開いている――臓腑へと繋がる道。
……そうだ。俺は――俺たちは腹が減っている。
当然だ。
何百年も食べていないのだから。
喰らわねバ。
一刻も、早ク。
腹いっパい。
『『……試さズにはいラれないナ』』
(――ッ ――……ッ)
(……ん?)
(――田さんっ! 池田――んっ! 聞こえますか!? お願いです! 返事をしてくださいっ!)
池田(その声は阿部さんか?)
阿部(い、池田さんっ?! 無事なんですね! 良かった……本当に良かった……!)
池田(……無事?)
561
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/12(土) 05:58:21 ID:l3Asf7dA
阿部(神経結合の直後に池田さんだけが通信不能になって……しばらく意識サインを見失ったままだったんです)
阿部(急造の装置だから、もしかしたら何らかの故障で池田さんの意識を失っちゃったのかもしれないって……)
阿部(私、心配で、申し訳なくて……)グスッ
池田(……迷惑かけちまったみたいだな)
池田(だが心配ないさ。この通りぴんぴんしてるよ)
阿部(……池田さんが無事で本当に良かったです)
TDN(だからあたし言ったじゃない。あの恐ろしくしぶとい池田ちゃんがくたばるわけない、って)
スカポン(ワタシ知ッテマスヨ。ヒーローハ150%遅刻シテヤッテクルモノダト! 一度遅刻シテ更ニ遅刻スル確率ガ50%ト記憶シテイマス!)
セルゲイ(…………フム。やはりBEASに最も高いシンクロ率を示してイタ為に、池田さんのサインを見逃していたのでショウカ?)
阿部(……のようです。波長もバイタルサインも、完全にBEASと同期していて――)
池田(それで合ってると思うぜ。ついさっきまで一緒にいたからな)
阿部(い、一緒ですか?)
池田(いや……どっちかっつーと一体化してたのかな。ま、難しいことはよく分かんないけどさ……とにかく――)
池田『『――負けル気がしないんダ』』
(……ッ!)ゾワッ
562
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/12(土) 06:08:06 ID:Er00hrRE
ま、衝動だか欲求だかに引っ張られるのも多少はね
563
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/18(金) 00:51:30 ID:IUdL43I.
阿部(池田さ――)
阿部(――!!)
阿部(飛行編隊がブレイクしました! 同時にペータエフから高射砲による弾幕確認! 恐らく三方から――)
池田(了解。その調子で絶えず情報を頼む――俺たちはBEASを介してすべて繋がってる)
池田(攻撃は頼んだぞドク、セルゲイ)
(合点承知の助よ!)(Понял)
―ドックン
『『……ターゲット確認。フェーズ1。EVOLコア全段直結――プレデーション、スタンバイ』』
―ドックン
『『――喰ウ』』
機体背部のすべての推進装置から禍々しい緑光が放たれ、BEASの姿が不自然に霞んだ。
視界が歪む程の尋常ならざる加速――傍から見れば陽炎を残して消えたようにしか見えなかっただろう。
――眼前、僅か数メートルの距離にニョイ・アレイの翼部。
別に特別な事は何もしていない。
ただ単に正面から接近した。それだけの話だ。
564
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/18(金) 01:01:36 ID:IUdL43I.
まだ回避行動の前兆すら見えないニョイ・アレイに、すれ違い様に射撃。
毎分12000発のバルカン砲二門が低い唸りを上げ、機体前部を瞬く間に蜂の巣にする。
一瞬の間の後、背後で橙色の光が収縮し、ニョイ・アレイは爆発四散した。
黒煙を噴き、海へと散り散りに落下していくパーツ達。
それらを眺めながら今の戦闘を反芻する。
分析は完璧だ。阿部さんとスカポンの能力の賜物だろう。
攻撃は左右でほんの少しのズレがある。TDNの反応が少し遅いようだ。
速度は現時点ではこれが精一杯。人体の負荷の限界まではまだ大分ある。
――記録、修正。
――フィードバック。
まず、一機。
戦艦側にブレイクした編隊は、今のニョイ・アレイの爆風でまだこちら側の状況が読めないはずだ。
つまりこちら側の編隊をもう一機落とせば、最後の一機相手を悠々と――
『『――喰えルッ』』
最小の旋回半径でBEASをターンさせ、右サイドに展開していた二機目のニョイ・アレイの背後にぴたりとつけた。
565
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/04/18(金) 01:22:48 ID:IUdL43I.
再びバルカン砲が火を吹き、青空をキャンバスに二筋の火線を走らせる。
弾痕を境にニョイ・アレイの左右の翼部は空に向けて折れ曲がり、千切れてBEASの後方へと弾け飛んだ。
BEASに翼をもがれたニョイ・アレイは、慣性と自由落下に従って海面へと墜落してゆく。
いい調子だ。攻撃の同期が取れている。
――記録、修正。
――フィードバック。
残るは背後から接近してくるザンゾー一機のみだ。
二機を犠牲にしてようやくこちらが仕掛けたことに気付いたらしい。
『『…………』』
視界に、ザンゾーの現時点までの機動から予測される飛行ラインが表示される。
今からケツを取る為に旋回したのでは流石に時間がかかり過ぎる。
ただ単に振り切るのは容易だが、これ以上お預けをくらうのは御免だ。
ならば――
再度、BEASの後部が怪しい光に包まれ、機体が矢のように撃ち出された。
同時に機首を鋭角に持ち上げ、外郭底部に浮かぶ太陽へと進路を変更する。
566
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/05/02(金) 00:33:27 ID:jTvihJbo
ザンゾーの最高速を超えないようにスロットルを調整し、同時に相手の射程圏内ギリギリ外の距離を維持。
狙い通り後ろに食いついてきたザンゾーを後ろ目に確認しながら、その時を待つ。
一、ニ――
BEASの尾翼に、ザンゾーの攻撃範囲を示す球状のARが触れ――
三――
機銃のトリガーが――
――今だ。
機首をほぼ直角に上げ、すべての翼部可動域を一斉に動作させ――エアブレーキ。
急制動に対するアラートメッセージが雨あられと吹き荒れるが、一切合切を無視して機体の制御に神経を集中させる。
直後こちらの機体を掠めるようにして、ザンゾーが眼下を通過した。
即座にエアブレーキを解除して再加速。バーニアを多方向に噴き散らしながら、強引に姿勢を立て直す。
――一瞬前まで射程圏内にいた相手が、前方から消失する。
それだけでもまるで白昼夢のような話だが、その上消えた相手がすぐ背後にいるのだから……これは悪夢と言っても差し支えない。
いわゆる戦技飛行における悪手、オーバーシュート――敵機を追う内に追い越してしまう――を俺達は無理矢理ザンゾーに引き起こさせたのだ。
機体の汚れすら視認出来る程の超々至近距離の中で、視線入力で火器管制の射撃ポイントを的確に割り振っていく。
567
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/05/02(金) 00:40:46 ID:jTvihJbo
致命傷は与えない。
エンジンも、動力炉も、燃料管にすら傷つけてなるものか。
今度は爆発など『させない』。
黒焦げになった食材などマズくて喰えたもんじゃないからだ。
喰うなら新鮮な内――それも仕留めたばかりの獲物に限る。
『『――いたダキまス』』
――――
阿部「――だっ、駄目です! 攻撃フェイズの中断要請がまったく受けつけてくれません!」
スカポン「BEASトイケダサンノ共振反応ガ高スギマス! 共振率ノ低イ我々デハ割ッテ入ルコトモ……アババババ」チカチカ
阿部「こんな至近距離で敵機を破壊したら、機体の破片でBEASが致命的な損傷を負う可能性だってあるのに……!」
阿部「TDNさん! セルゲイさん! 何とか攻撃の中断をそちらで――」
TDN「ご、めん……ッ! あたし達も……池田ちゃんとBEASに引きッ、摺られ――」
セルゲイ「火器管制ヲ、グッ、奪われタのではナク……意識を直接撫でられテいるようナ――」
阿部「そんな……こんな事って……」
阿部「池田さん……!」
568
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/05/02(金) 01:21:00 ID:jTvihJbo
――Fire.
計算し尽くされた射撃によってもたらされた最小限の破壊は、まるで手術用メスのようにザンゾーの装甲を斬り裂いた。
幼子が蜻蛉から羽を無邪気に毟りとるように――嗜虐心というよりは好奇心に塗れた、あるいはそれよりもっと純粋な本能に近しいものによって。
降り注ぐ大小の鉄片を浴びながら、分断されていくパーツの隙間に鋭く視線を走らせる。
どこだ。どこにある。絶命したばかりだ。
まだ熱く、脈動しているはずのアレはどこにある。
どこに――
濃緑色の光が、ちらと視界の端に映った。
生爪を剥がすように、千切れ飛んだ翼がザンゾーの心臓部をめくり上げた――その向こう。
緑色の粘液を宙空に放出し、引き裂かれた数多の燃料管が繋がれている――その物体。
――EVOL反応炉。
未だに収縮し、脈動し、淡い濃緑光を放つ――汎用戦闘機の心の臓。
――……ああ。
口の端から透明な液体が滴り、真っ赤な意識の水面に大きな波紋が広がってゆく。
――何て……何て美しいんだ……。
569
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/05/02(金) 15:00:45 ID:jBHmh93Q
…プロ?
本になったら買う。
570
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/05/18(日) 14:03:05 ID:5kGuTXNw
保守
571
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/06/06(金) 18:40:18 ID:7sl0TsjY
支援
572
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/06/10(火) 14:37:47 ID:J2GjrKKA
支援
573
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/06/10(火) 14:58:59 ID:VQJxk1uY
KONAMI
574
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/06/22(日) 09:33:10 ID:T3cgJhkA
TWIPETのカモメ弾は軌道が面白いよな。まぁ一瞬で次のに変えられちゃうけどw
575
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/06/22(日) 23:55:20 ID:vevB3CF2
さてお味は如何?
576
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/07/16(水) 01:03:13 ID:v1YcquVA
保守
577
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/08/08(金) 01:58:05 ID:9DHaeuCg
保守
578
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/08/29(金) 08:08:07 ID:EPphVH2g
保守
579
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/09/17(水) 12:50:37 ID:VaZSVyI.
保守
580
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/09/30(火) 00:29:06 ID:AIhrzEXQ
支援!
581
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 03:24:16 ID:U9t3xPwQ
BEASの口角が大きく裂け、咽頭部をたゆたっていた小さな暗黒の球体がぶるりと震えた。
球体は機体の鳴動に合わせて歪に捻じ曲がり、虚無の裂け目へとその姿を徐々に変貌させていった。
同時に緩慢な早さで吸い込まれていた緑光の粒子が尾を引くように加速し、BEASの喉奥へ――虚無の裂け目へと収束する。
口腔内でのたうっていた青白い稲妻が、蛇のように鎌首をもたげ――
――一瞬の間の後、BEASの周囲に散らばるザンゾーの残骸へ喰らいついた。
獲物を巣穴に引きずり込むようにその身をしならせると、四散していた残骸が矢のような速さでBEASの開口部へと向かい始める。
青い稲妻は裂け、小さな雷光へと無数にその数を増やしながら、空に散らばる残骸を正確に捉え続けてゆく。
ふと。
剥がれ落ちた小さな鉄片が弾き飛ばされ、虚無の亀裂へと到達した。
――ばぎり。
金属とは思えぬ異音が機体に響き渡った。
直後。機体の表面に血管のような模様が濃緑色に発光し、発現した緑光は何かに導かれるかのように機体側面の一点へと集約する。
緑光の粒子が瞬き、形成した小さな光のドームが一際大きく明滅した後――緑光は爆ぜ、風に舞う蛍のように散った。
光の跡には、爬虫類の鱗を思わせる装甲が浮き上がっていた。
それは――形や材質は違えど――あの鉄片と同じ大きさと質量をもってそこに在った。
582
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 03:27:32 ID:U9t3xPwQ
戦う。
喰う。
――強くなる。
BEASの機体に起こった事象を、俯瞰に近い超感覚で受け取っていた俺は、軽く息を吐いた。
吐き出した息はとても熱く、喉や肺の筋肉は細かく震えている。
――興奮しているのだ、俺は。
博士は言った。
BEASは他者を捕食し、自らを強化する兵器だと。
EVOLは生命と同じ性質を備え、進化することが出来る魂の代替物だと。
……元々俺の頭の出来は悪い。
だからBEASの能力も、科学なんていう俺にとって遠い世界の中で優れているのだろうとぼんやりと考えていた。
――ところがどっこい。
どうだ。この野蛮で単純な理屈は。
583
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 03:34:08 ID:U9t3xPwQ
喰ったものが、そのまま力になる。
量を喰えば、量を喰っただけ。
質が良ければ、質が良いほど。
喰えば喰うほどBEASはより輝き、より強くなる。
……力を手に入れる。
一対一でも、一対多でも霞むことのない――絶対的な力を、手に入れることができる。
戦う。
喰う。
強くなる。
――口元の歯が波打ち、前方の対象へと一斉に傾く。
戦う。
――バーニアが大気を取り込み、力を蓄える。
喰う。
――虚無の裂け目が稲妻を飲み込み、その顎を震わせる。
強くなる。
584
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 03:42:24 ID:U9t3xPwQ
――狙うは相手の心の臓。
戦う。
――EVOL、進化の証。
喰う。
――BEASの、いや、俺たちの。
喰ウ。
――可能性を。
喰ウ!!
――『『寄越セ!!』』
BEASの背後が怪しく揺らめき、開ききった顎が瞬く間にEVOL反応炉へと突進する――
――――
ビリッ…!
阿部「カッ……ハッ!」ビキキッ
スカポン「ウヒィ! ビリビリ! 何デスカ何デスカ! ワタシ、面白イ事モツマラナイコトモ何モ言ッテマセンヨ!?」プピーン
セルゲイ「グッ。BEASカラの情報負荷――いえ、これは感情の爆発デショウカ」ギシッ
TDN「あ、はァンッ。び、BEASから光が、逆流してきちゃって、これ濡れる! 濡れちゃうわ……!」ビクビク
585
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 04:24:07 ID:U9t3xPwQ
スカポン「!? ア、アベサン! タ、大変デス! 管制ニ意識ヲ戻シテクダサイ!」
阿部「言われなくてもやって――ま、す……?」
阿部「な、何ですかこれは……?」―ゴクッ
《 ...GET EVOL REACTER 》
《 PREDATION START 》
《 ...EVOLVE 》
スカポン「エンジン内部――チ、違イマス! エンジン全体ニ異常ナ エネルギーフィールド ガ発生シテイマス!」
阿部「エンジンだけじゃないですスカポンさん! 機体全体をエネルギーの奔流が覆っていて……!」
《 ...40% 》
《 BASUM >> SHARRU >> MISEAVE >>...》
スカポン「コッ、ココ、コレハ……!?」プペー
阿部「し、信じられません! 装甲が、推進装置が……いえ! 機体が、機体のすべてが再構築されていきます!」
セルゲイ「先程まであったガトリングも既にありマセン。……感じマス。新しい武装の気配ヲ。消えては、増え、変質し続けるBEASの鋼の意思ヲ……」
TDN「……先史によれば。胎児は胎内で脊椎動物の進化と絶滅を繰り返しながら、人の姿に近づいていったらしいわ」
TDN「……BEASは、それを機械の塊で短時間の内に行える。しかも適切な進化だけを選択し、圧縮し加速させることが可能ってこと……!」ゴクッ
586
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 04:31:23 ID:U9t3xPwQ
《 ...78% 》
《 TWIPET >> DODOK >> ZUGAU >>...》
《 ...STANDING BY FOR [ KUES ] 》
《 ...COMPLETE 》
スカポン「ヘ、変異ガ、止マリマシタ……」
スカポン「……アァッ! スミマセン! 共通意識領域ニ機体情報ヲ反映シマス!」
阿部「機体名:KUES……? BEASよりランクが上と考えていいのでしょうか……それに機体各部とシステムがUNKNOWNだらけで、これでは何が何やら……」クシャァッ
セルゲイ「……阿部サン。データに意識を向け過ぎテはいけマセン。五感を研ぎ澄ますコトが先決デス」
阿部「ご、五感を、研ぎ澄ませる……ですか?」
TDN「『考えるな、感じろ』って事よ。細マッチョの超イケてる俳優が遺した最高にクールな格言ね♪」
セルゲイ「エエ。銃のグリップを握る時に考える事ハ、銃のスペックではありマセン」
セルゲイ「大切なのは銃口を向けた先――相手を、対象を意識シ、倒そうとスル意思を持つことデス」
セルゲイ「相手と意思を見据えたナラバ、後は武器がスベテを教えてくれるハズデス」
TDN「メスを握った指先に任せる方がイイ場合もあるってことよ、阿部ちゃん」
阿部「ええと……考えるのではなく、感じる。フィーリングに、身を任せる……」―スゥッ
587
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 05:55:28 ID:tTGt5/gQ
喰い過ぎで池田氏が野獣化してないか心配になるなww
588
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 16:05:08 ID:VsQuuD9k
デレレレレレレレ
デレレレレ
デレレレレ
デレレレレレレレレレレ
...
589
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/06(月) 18:02:45 ID:oPqh99hU
EVOL音w
590
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 02:00:37 ID:mnNUVqqg
―ピキィンッ
阿部「!」
阿部「レーザー……のような兵器、が二門程、アーム? もしくは翼らしき部分についているような、いないような……」ムム
スカポン「アヤフヤデスネ! ワタシアヤフヤ大好キデスヨ! 畏バッテナクテ素敵デス、憧レマス! ……オオ、触腕ガツイテ益々イカミタイニナリマシタネー」プピーン
セルゲイ「エエ。朧げではありマスガ、概ね武装はその通りだと思いマス。ソレニ実弾からエネルギー兵器に切り替わッタことデ、射程と弾速も伸びた気配がありマスネ」
TDN「ウフフ、あたしはねェ、セルゲイと通じ合おうと努力してたらァ、セルゲイの考えてることとかダイレクトに分かっちゃってェもゥ以心伝心? みたいな感じでェ、もうもうもうモーウ!」キャピ
セルゲイ「ハイ。おかげデ、攻撃時の連携は完璧に近いデスヨ、ミッチーサン」
セルゲイ「……アナタは、本当に素晴らシイ私のパートナーデス」フフ
TDN「……セ、セルゲイ?」
セルゲイ「……ミッチーサン、コノ戦イが終わったら私と……」
TDN「…………///」ドッキンコォ… ドッキンコォ…
阿部「ストーーップ! ストップですお二人共!」
TDN・セルゲイ「――ハッ」
阿部「い、いいですか? (仮)ver.4078システムによって、個々の情報処理がほぼ統合されてるんです」
阿部「その影響でお互いの距離を密に感じるのは、その、結構なんですが、その、色々ダダ漏れと言いますか何と言いますか……」
591
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 02:03:06 ID:mnNUVqqg
セルゲイ「…………」
TDN「……聞かれても、あたしは別に……///」ボソッ
スカポン「皆サァンッ!」プピーン!
阿部・TDN・セルゲイ「!!」
スカポン「今ハマダ――」
―クルゥリ
スカポン「――戦闘中ナンデスヨッ!」―ドヤァ
阿部「――ッ」
セルゲイ「…………」
TDN「――ッ」
阿部「……その、通りですね」ドヨォ
TDN「……空気を読まなかったのは謝るわよォ。ごめんなさいするわよォ。でも――」
スカポン「〜〜♪」キラキラ
TDN「結局あのポンコツだって、ツッコミの悦に浸りたいだけじゃないっ! それだけは何か納得出来ないわァ!」プンスカー!
592
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 02:05:44 ID:mnNUVqqg
スカポン「! 敵機接近。戦艦側ニブレイクシタ編隊ガ体勢ヲ立テ直シテコチラニ……ム? 待ッテクダサイ」
阿部「! ペータエフから多数のエネルギー反応感知。EVOL反応炉と比較……合致。戦艦内部の多数の艦載機が起動シーケンスに入った模様!」
セルゲイ「……今まで相手にシテイタ戦闘機ハ、コチラの能力を推し量る為の捨て駒、という訳デスカ」
スカポン「機種照合……失敗。不明機多数、ニョイ・アレイ、ザンゾー含ム混成部隊ノ発艦ヲ確認!」
TDN「UNKWON,UNKWON,UNKWON,UNKWONUNKWONUNKWON! 画面真っ赤っ赤よ! 数がハンパじゃないわ!」
ゾワ…
セルゲイ「!」
TDN「!」
スカポン「ウヒャァ! 背筋ガヒンヤリシマシタ! イ、今ノハヒョットシテ……」プペー
阿部「池田、さん……」キュ
セルゲイ「……阿部サン。池田サンハ今どういう状況デショウカ?」
阿部「誰よりも深く強くBEAS――KUESと繋がっている状態です。……驚異的な運動性能を得た代わりに、私たちとの交信がうまく取れなくなってしまったみたいで……」
セルゲイ「……なるホド」
セルゲイ「…………」
セルゲイ「ミッチーサン、私たちもBEASに深く潜りまショウ」
阿部「セ、セルゲイさん!?」
593
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 02:14:10 ID:mnNUVqqg
セルゲイ「私たちの攻撃の同期が取れナイようでハ、意味がないデスカラネ」
阿部「で、でも、もしかしたらセルゲイさん達まで……」
セルゲイ「大丈夫デス阿部サン。私は簡単に飲まれたりはシマセン。……自己を蝕む戦場の狂気ヲ、私は味わってイマスカラネ」
阿部「セルゲイさん……」
セルゲイ「ソレニ私一人だけではナク――」
セルゲイ「――ミッチーサンがいますカラ」ニコ
TDN「セ、セルゲイ……///」
セルゲイ「……約束しマス阿部サン。戦いが終わっタ時、必ず彼を――池田サンを狂気の淵から連れ戻しマス」
セルゲイ「ダカラ今ハ、私たちがスルコトを見守ってクダサイ」
阿部「…………」グ
阿部「分かりました。スカポンさんと私は今まで通り、可能な限りデータを解析して共通意識領域にアップロードします」
阿部「今までのBEASの挙動を見る限り、意思の疎通は取れなくても池田さんに情報は伝わっているはずですから」
セルゲイ「了解しまシタ」
阿部「……池田さんのこと、お願い、します」
セルゲイ「ハイ。任せてくだサイ」
594
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 02:20:27 ID:mnNUVqqg
TDN「……あの、セルゲイ。潜るって言ってもあたし出来るか分からないんだけど……」
セルゲイ「私は先ほどの空戦で少し感覚を掴みマシタ。……近いモノを挙げるナラバ『極限の集中力』デショウカ」
TDN「『極限の集中力』?」
セルゲイ「精神に過負荷を与えるコトデ、開く扉のヨウナモノデス。……私は戦いの中でソレを学びマシタ」
TDN「うーん、あたしに出来るかしらァ……」
セルゲイ「……ミッチーサンの職業は医師デスヨネ? 困難な手術や病魔と相対した時、ミッチーサンはどんな風に対応シマスカ?」
TDN「!」
TDN「それこそ『考えるな、感じろ』ってことね!」
セルゲイ「仰る通りデス。……ソレニ、我々にはこの意思を同期させるシステムがありマス」
セルゲイ「私の精神に寄り添うイメージでいレバ、アナタを先導出来るハズデス」
TDN「うふふ、ついていくわよォセルゲェイ! 外郭だろうと地の底だろうと地獄だろうと天国だろうと意識の海だろうと、ね!」
セルゲイ「……もし、私が狂気に飲まれソウニなったラ、その時ハ……」
TDN「ええ、分かってるわよォ。私の無限の愛の力で救い出してあ・げ・る♪」バチコーン
セルゲイ「フフ、心強いデスネ。……デハ行きマショウ」―スッ
TDN「ええ! よくってよ♪」―スッ
595
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 07:47:50 ID:7DkcKyjM
性別の壁をも超えた、本気の愛。か
596
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/08(水) 15:53:28 ID:WPJzxEvs
ここまで来ても他の投下ネタとの接点を忘れないという姿勢に感服
597
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/09(木) 07:40:27 ID:Rif9yfC2
久し振りに映えたスカツッコミw
598
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/09(木) 22:53:23 ID:heft8TtA
フ……素敵
599
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/10(金) 23:23:26 ID:aFFWqd2s
ほう、KUESか。アレを狙えるかな?
600
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/11(土) 19:19:14 ID:v4NWA/ao
スプラーテはかなり独特な形だよな。連射コンないときついからなりたくはないけど
601
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/13(月) 13:36:06 ID:rFfMzBXU
――――
(また一つ、増えた)
戦艦から戦闘空域に達するオレンジ色の飛行予測ラインが、データの付箋塗れになっている大戦艦――ペータエフから静かに現れた。
(212本……いや、今ので213本か)
束ねられたリボンのように見えるラインは、発艦後の予測目標地点によってグラデーションで鮮やかに色分けされている。
三次元に複雑に絡み合ったリボンたちは、あるものは大きく弧を描いていたり、定規で引いたように真っ直ぐ伸びていたりと、実に様々な姿を見せていた。
おかげでペータエフは、まるで丁寧に梱包されたプレゼント箱の体を成している。
(うん、プレゼント……うん、あながち間違いじゃないな)
展開されている戦術図の透明度を上げ、複数のカメラアイから捉えた実際の戦場の映像に重ねた。
(ん……見たことない奴がたくさん)
既に発艦が終わり、編隊を組んだ汎用戦闘機達が、白い排煙で青空にシュプールを描きながらこちらに向かっていた。
機体の強弱で危機レベルを示すデータの付箋は、強く困難である敵には赤を、弱く攻略が容易い敵には青というように……ランクによってこちらもカラーが自動で割り振られている。
そして強さが未知数である不明機、UNKWOWNのカテゴリには最大級の赤が付与される。予測の出来ない未知の事象が、戦闘において最大級のイレギュラーをもたらすからだ。
従って今現在、ペータエフ近辺の戦術図は赤いテキストと数字で埋め尽くされており、まるで真紅の鯨が虹色の潮を吹いたかのような状態だ。
その真紅の一端が、こちらに目掛けて飛行し初めている。
602
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/13(月) 13:39:18 ID:rFfMzBXU
ザンゾー一機を除いたすべての機種不明機が全身真っ赤な付箋のホログラフィーに包まれ――
――更に情報管制によって雪だるま式にその付箋が強大化し、不必要なまでにホログラフィーが肥大化する。
その繰り返しで育ちきった仮想の化け物が、一編隊、二編隊と戦術図と視界を埋め尽くしてゆく。
(高見の見物……まぁ、あれか。すぐこの後戦うから……そうではないよな)
カラフルに梱包された戦艦から伸びるリボンは多数あり、皆思い思いの形を描いてはいるが……その終着点は一つだ。
二百余りのラインの終端は一点に収束し、ある一つの兵器を指し示している。
……BEAS。
つまり、このカラフルに絡み合ったラインはすべて……ペータエフの殺意そのものなのだ。
ビース
――超兵器BEAS――KUESをホバリングさせつつ、『俺』は眼下のソレらを眺めて楽しんでいた。
最高のビューポイントだった。
空を椅子と例えるなら、戦艦はテーブルで、そして『俺』は腹の空いた客だ。
ボギー
『餌』で真っ赤に染まったテーブル。そして『餌』はウェイターもウェイトレスも介さずに、わざわざ口へ飛び込んで来てくれる。
きっと死ぬ程唸らせてくれるに違いない。
(……楽しい)
エアインテークを拡げ、レーザーキャノンのシールドを格納。新しい推進装置に灯った炎に、小刻みに負荷をかけて轟音を鳴らす。
603
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/13(月) 13:40:30 ID:rFfMzBXU
(『俺』はとても、楽しい)
反応炉のサイクルを加速し、機体全体に毛細血管のように伸びるエネルギーラインに、翠の力を走らせる。
(……?)
懐かしい気配がする。
『俺』以外の誰かが、いつの間にか傍に寄り添っていた。
それも二人。
二人分の熱量――感情の動きを感じる。
凍てつく氷のように澄み切った白い影と、熱くすべてを焦がすような炎を纏った影。
『俺』を軸にして、完全なる線対称に立った二人の影がぴたりと静止すると、空間にピリピリとした空気が満ち始めた。
(……ああ。ひょっとして来れたのか、ここまで)
誰だったかはよく思い出せない。
が、『彼ら』が有能であることは体がよく覚えている。
意図せずレーザーキャノンの出力が上がり、砲のオーバークロックを示すサインが画面端に流れ始めた時、朧げに抱いていた予感は確信に変わった。
『彼ら』は『俺』の領域で共に戦ってくれる戦士だ。
(……楽しい。すごく楽しい)
604
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/13(月) 13:41:35 ID:rFfMzBXU
視界の端で小さく閃光が瞬いた。
(あ、もうそんな距離なんだ)
先刻のニョイ・アレイとザンゾーよりも遥かに足が疾い。
(……そうでなくては)
四肢に力を込めるのと同じ要領で、四基の推進装置と斥力装置にエネルギーを集め――解放。
『俺』は大気の壁を破りながら、敵機編隊の背後へ一瞬で移動した。
(――だが『俺』は先刻よりもっと疾風いぞ、『餌』共)
計九機の破砕点をコンマ1秒で視線入力で割り振り、砲身の先端を開いた。
装置の大仰さに対して、余りに細長な翡翠の光線が砲身から次々と放たれる。
一瞬の静寂の後、汎用戦闘機の機体が一様に『ズレ』始めた。
――高出力のレーザーが装甲を貫き、焼き斬ったからだ。
装甲の切断面はマグマのように沸騰し、切断されたパイプから濃緑の燃料が飛び散っている。
ショートした回路から火花が散り、燃料に発火すると――制御を失った翼の鉄塊は紅蓮の炎に包まれた。
(……美しい)
焼けた砲身に残る翡翠のエネルギーの残滓が、甘く躰の中枢を痺れさせる。
605
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/13(月) 16:25:24 ID:rFfMzBXU
――橙に次々と爆縮する汎用戦闘機達。
炎の靄の向こうに、燃え――爆ぜるEVOL反応炉。
(…………)
相手に何もさせなかった。
反応することすら許さなかった。
(これが……圧倒的な、力)
―ィイィィィン ―オォオォォォン…
(…………)
(ククッ……)
(アハッ、アハハハハッ!!)
(知らなかった……『俺』は知らなかったよ……!)
(この世にッ!)
(『喰べる』ことよりッ! 『飛ぶ』ことよりッ!)
(――楽しいことがあったなんてさァッ!)
606
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/17(金) 10:03:21 ID:s2b3M9aQ
わーぉ、見事に飲まれちゃってますね〜
607
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/10/18(土) 20:30:12 ID:4hRdLSag
ところで、気絶した敵との強制接続とかはやるのかね?
608
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/11/24(月) 23:15:37 ID:xn7yDgsY
支援
609
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/14(日) 19:28:03 ID:uLIRPmtg
http://www.fc-business.net/qgesw/
610
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/20(火) 16:34:07 ID:T0hJFRAg
ageる〜よ〜
611
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/08(日) 23:55:33 ID:2urx/moI
ageますが?
612
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/05/06(水) 06:05:06 ID:ZW.J7PuI
ageage
613
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/05/15(金) 12:15:40 ID:6o0pfKgE
支援
614
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/07/28(火) 21:37:02 ID:QLQnY8mU
しえん
615
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/07/28(火) 23:02:23 ID:ZdjoQD4.
支援
616
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/08/17(月) 13:16:55 ID:cMzvXSJk
ひとっ走り付き合えよ
617
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/10/10(土) 22:24:23 ID:TKGL8qzQ
ほ
618
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/10/14(水) 10:12:33 ID:Eqy6Jyzw
サツバツ!としてきたから書きたくなくなっちゃったとか?
619
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/10/15(木) 00:47:43 ID:1k/n9E52
1年か…完走してほしいけどな…
620
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/01/17(日) 16:50:26 ID:S6sKplXY
ageてみよ
621
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/22(火) 21:18:13 ID:YtY1tPM2
わ
622
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/05(木) 22:46:06 ID:UgNvK.8A
支援
623
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/07/15(金) 15:58:27 ID:A5Zdi1cA
はよ
624
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/30(火) 17:36:56 ID:t/32yos6
待ってる
625
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/26(水) 22:40:16 ID:3kToF23E
一応age
626
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/04(火) 15:30:00 ID:Z37dCZug
ほす
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/17(月) 21:05:28 ID:1Ef2GpxQ
ほ
628
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:24:25 ID:cJkGXRi2
どうも
>>108
です
このスレはとっくに落ちているものと思っていたのでかなり驚きました
とても長い期間保守していただいたようで、嬉しい反面申し訳なさでいっぱいです
そして残念なお知らせをしなければならないこともまた心苦しいのですが……
このスレの続きはお届けできないです
本当に申し訳ない
629
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:24:59 ID:cJkGXRi2
まだこの板で自分が更新しているスレ、もしくは停滞しているスレに理由は書きましたが
現在重度のスランプ状態です
かなり前に作品がこっぴどく批判されてから、以前のようにまるで書けなくなってしまいました
(スランプを脱したくて
勇者「娘に過去がバレまして」娘「伝説のおちんちん!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1440342014/
を投下
同じく脱するべく
男「念願のセクサロイドを手に入れたぞ!」メイド型「膣温は3000度」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1479661407/
を相も変わらず亀のような速度で更新しています)
630
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:26:12 ID:cJkGXRi2
ただ、現状まともな作品を書ける力(特に地の文)が無くなっているだけで
このお話のストーリー自体は完結していて、使用する安価も処理方法が大体決まっています
衝動的に消してしまった部分を補完しつつ、ざっくりとあらすじや状況説明を投下していくだけならば、何とかできるかもしれません
631
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:26:46 ID:cJkGXRi2
LRでSSモドキも投下可能とあるので、LR違反にはならないとは思いますが……
まともな続きを提供できないのも事実です
相変わらず投下速度が遅いのも変わらないですし、
未完成品投下される位ならエタ宣言してほしい、という意見も勿論あると思います
なので少し意見を募ります
それでもいいと言う方がいるのなら、続きのようなものを投下していこうかなと思っています
632
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:27:19 ID:cJkGXRi2
必要ないようであれば終了宣言をし、このスレは以降sage進行で下へ送ります
633
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/18(火) 03:28:43 ID:cJkGXRi2
長々と失礼しました
久しぶりの更新がこんな報告で、続きを待っていた方を裏切る形になってすみません
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/18(火) 07:14:06 ID:5DiOH102
安価のをどう処理したか気になるし出来ればざっくりと投下してほしい
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/18(火) 15:09:36 ID:bq1USOqI
ダイジェスト化はちょいと……いえ、かなり残念ではありますが、まだ書いて下さるならお願い致します……!
636
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/18(火) 22:06:49 ID:x77HYXBk
木っ端ながらも書き手の一人としては調子が悪い時の書けない辛さは分かるから無理しないで良いよって言いたい所だけど
読み手の一人としては続きが読めるなら時間がかかってでも読ませてもらいたいって気持ちが強い
落ちてしまってはいるけど、格ゲースレも楽しみにしてたし、上記の勇者スレは読んでて興奮した(色んな意味で)
そんな訳で更新いただけるなら楽しみに待ってます
637
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/20(木) 18:56:45 ID:pTJ7GDck
続きがあれば是非みたいです
638
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 02:44:00 ID:BoKoHZOI
レスありがとうございます
投下途絶えたの3年近く前になるんですね、感謝の気持ちしかないですホント
自身の情報整理も兼ねて、使用が終わった安価を出しておきます
639
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 02:49:23 ID:BoKoHZOI
クレヨンしんちゃん
キテレツ大百科
ソードアート・オンライン
551の豚まん
男体化
ロシア兵
量子デコヒーレンス
ミトコンドリア
インポロピー
エントロピー
カップヌードル一年分
地球
進化
掘削機
ロケットとかのジャイロ
迷いなき覚悟
カブトボーグ
黄金の精神
カブトムシ
恐怖
全 編 オ ン ド ゥ ル 語
高等学校1年教師陣〜オリュンポス〜
おぺにぺに
どうしてベストをつくさないのか
いつやるの?
(いまでしょ!)
>>37-39
3つ分(37 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/04/15(月) 15:45:22 ID:52knEmtw い
(38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/04/15(月) 15:55:12 ID:o9MBNmQc ま
(39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/04/15(月) 16:10:15 ID:i65ktjXcで
640
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 02:51:42 ID:BoKoHZOI
自己インダクタンス
書く気の無い作家
エレレレ
ニート (NEAT)
NHK
ハイチュウ
カウンター
ユニタリ作用素
ジャポニカ復讐帳
ガチムチの女装
阿部さん
貧弱ゴリマッチョ
もののけホモ
TDN
池田ァ!
ダーウィン4078及びダーウィン4081(スーパーリアルダーウィン)の自機みたいな奴を登場させてほしい
ジャッジメントですの!
ソボレフ空間
究極なる闇の力
え?なんだって?
激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム
鞭以外の道具でスパンキング
股間のスタンド
ルシファーズハンマー
シャイニング・プラネット
俺は本当のことが知りたいんだ!
「ドランゴンボールは3.14個しかないんだとよ」
ジョイメカファイトのスカポン登場
綿あめ
邪神ケイオス
641
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 02:52:20 ID:BoKoHZOI
管理局の白い悪魔
チロルチョコ 最後の聖戦
レン「んんっ、やめてくださいマスター!!」男「駄目だよレン君? おちんちんの皮を剥かないと歌声に艶が出ないぞ?」ヌコヌコヌコヌコレン「ぃやぁっ、ひぅっ、ぁ、あ゙あっ、ふんん!!」プルプル
兄弟子によるかわいがり
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度たっけぇーなオイ
ランバ・ラル、特攻!
爆撃
プレコンパクト
「俺、この戦いが終わったらオナニーするんだ…」
「俺、授業が終わったら部活行くんだ……」
642
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 02:59:43 ID:BoKoHZOI
物語に使われた順番ではなく、安価順なのはご容赦ください
安価は曲解して無理矢理使われているケースもあります(多分これからもあります)
Ex:ソボレフ空間→セルゲイ・ソボレフが支配する空間
また、使用した安価は再度使われることもあります
643
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/27(木) 03:06:50 ID:BoKoHZOI
投下できなくなるのが一番怖いので、箇条書き、設定書き、少量投下含めて何でもありで投下します
必然的に読みにくくなります、申し訳ない
近日中に投下予定です
見てくれは悪くとも、彼らの物語を何とか完結させます
お付き合いください
644
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/27(木) 04:18:50 ID:MODE3adc
改めて見てみるとすんごいな……投下、楽しみに待ってます!
645
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/27(木) 09:53:51 ID:qq5kcEGo
期待
646
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/30(日) 00:23:44 ID:F9PS93nU
楽しみだなぁ
647
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/30(日) 01:21:57 ID:6QW9oftQ
BEASの持つ獣性と完全にシンクロしてしまった池田は、空を埋め尽くす弾幕に対して一切防御を行わずすべて受けきる。
暴走した結果故の被弾。一同は死を覚悟するが、BEASは強さの段階を1つ下げただけに過ぎず(KUES→ZUGAU)
爆破機能を殺したツインミサイルにて敵機を破壊しEVOLを獲得(ZUGAU→MEASA)
更なる力を手に入れ、EVOLを喰らいつくすBEAS(MEASA→MALTO→SEAS→DEAME)
DEAME形態でペータエフに神風特攻を行う。
戦艦ペータエフの装甲は厚く、BEASは致命的な損傷を受け大破――したはずだったが
ここで最後の進化が発動。外敵からダメージを負ったことで生き残る為に究極の変異を遂げる。
(DEAME→BLACK DEAME)
※BLACK DEAME形態は本来は敵弾を無効にするだけに留まる為、撃つショットがありとあらゆるものを切断消滅させる属性を持つ設定にする。
結果として、戦艦の尾から頭を真っ二つに機体で引き裂き(描写参考:スーパーキャビテーションによる超高速水中移動)、
超特大のEVOLを喰らいながら突き抜ける。
※安価
>>62
ダーウィン4078はシューティングゲームであり、BEASはその機体
本来のシューティングのパワーアップシステムとは大きく異なるシステムが特徴。
被弾やパワーアップアイテム(EVOL)取得のタイミングで、パワーアップ後の形態が複雑に分岐する。
BLACK DEAMEは悪魔のような生体的なデザインで、ゲーム中最大の火力を誇る(敵弾に対して無敵でもある)
※弱点として、BLACK DEAMEは一定時間後に最弱形態(PISTER)に戻ってしまうリスクを持つ
◆作中取ったルート
BASUM→SHARRU→MISEAVE→TWIPET→DODOK→ZUGAU→KUES→被弾→
→ZUGAU→EVOL取得により逆進化ルート確定→MEASA→MALTO→SEAS→DEAME→被弾→BLACK DEAME
648
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/30(日) 01:24:17 ID:6QW9oftQ
>>7
安価消費
オーバーキル
・ペータエフの破壊描写
649
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/30(日) 01:29:20 ID:6QW9oftQ
※捕捉1
相手を吸収し強くなる利点と、ストレスを受けた際に形態を変化させて対応することで常に強くなるBEAS。
星そのものを支配しようとするイヴと、それに抗う池田達。
進化と生存競争はこのお話のもう一つの主題でもある(★この戦闘後に触れること)
特にBEASの存在はラスト付近にてキーになる為、BEASで必要な情報はすべてこのシーンの中で終わらせること。
※捕捉2
一度起こした進化は少量のEVOLで、かつ高速で再現が可能になる(EVOLのストックを残骸から確保する描写)
◆シューティングのパワーアップ順を一度目にしたプレイヤーは、容易にそれを再現できる点から引用
→究極形態を池田一行は手にした
※捕捉3
BLACK DEAMEは生体的なデザイン(悪魔か、蝙蝠を思わせる邪悪なデザイン)
力を機械で突き詰めた結果、生物のデザインへ立ち返り、辿り着く
自然に今存在しているものは、最適化を突き詰めたデザインであり
イヴもBEASもその先へ到達しようとしている(前者は意思から、後者は生存本能から)
650
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/30(日) 01:33:45 ID:6QW9oftQ
精神への過負荷で気を失う池田。
同時にBEASはBLACK DEAMEの形態を解き、PISTERへ。
◆時間制限があることを、パイロットへの負荷限界で再現
回復を待ってミーティングを行う一行。
リターンが大きい反面、背負うリスクも大きい為、議論。
相手の首を取るには、振る刀の範囲の中に首を無くてはいけないと池田は豪語する。
安全圏から勝てる程甘くは無いというセルゲイの言葉を受けて、議論終了。
阿部、スカポンも了承、全員の意見は一致するが
・余りに凶暴過ぎる
・精神汚染に近いものがあった
・イーモン博士とイメージが結びつきにくい
と言う疑問点は積み残したままとなる
◆◆◆ペータエフとの戦闘 BEASの覚醒編 了◆◆◆
空と海への警戒を強化し(ペータエフのEVOLパーツを食べたことで色々丸見え、かつ敵の本拠地のマップも入手)
即席のコントローラー(それぞれがBEASの意識へ強制介入する装置)を阿部、スカポンペアが作りつつ、一行はイヴの待つ基地を目指す
651
:
◆/7WpKbL.5s
:2017/07/30(日) 01:34:20 ID:6QW9oftQ
今日はここまで
652
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/30(日) 05:03:54 ID:f.KbJGpU
情報量がしゅごい乙
653
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/30(日) 21:41:59 ID:4Bwdrl4.
俺にも見えるぞ……描写されていない筈のシーン。そのやりとりが……!
乙乙!
654
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/08/01(火) 15:59:12 ID:LQw6IdfU
進化ルートまで……よく研究して下さってたんですね
655
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/17(火) 18:57:43 ID:2.oeTeeo
ほ
656
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/01/05(金) 21:51:27 ID:CmD7ycas
すげえな
657
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/01/11(木) 22:42:31 ID:xIwN0BO.
あけおめさんやで
658
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/13(火) 21:57:45 ID:0JNr9ULo
アゲトコ
659
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/23(日) 18:18:43 ID:AM/aUrEs
ゴリポン君
660
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/27(土) 15:33:07 ID:aIFFsPKM
神:崩御再麟平成天皇
SSS+:愛子(皇位継承)≒悠仁(皇族を越えた皇族)
SSS:リボーン昭和天皇、令和天皇2020
SS+:KK、秋篠宮最終皇態zero
SS:クローン昭和天皇、昭和天皇、平成天皇、悠仁(皇位継承)、佳子眞子(双烈融身)、聖母美智子
S:愛子(影武者)
AAA:鬼紀子、牙雅子、皇太子、成人悠仁、学習院に通っていた平行世界の眞子、"ニンゲン"、K'sマザー
AA:秋篠宮、Komuro-KEI、美智子、皇宮警察
A:使用人にキレる紀子、臨月雅子、圭兄ちゃん
B:佳子、眞子、雅子、紀子、玄孫と言い張る竹田
B+:宮内庁職員、悠仁
C:ブルーギル、愛子
F:気圧ポテチ、偽りの皇族竹田
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