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伊月の小説すれっど

1ミストル【大佐】《避難所警備班》★:2012/03/20(火) 16:52:21 ID:???
代行。

15[AMS]レイカー【准将】《攻撃機》 ◆bioxjBJCKE:2012/03/25(日) 17:00:07 ID:ECAIH9QI
ゴキ多いwwwwww

16Accelerator【一方通行 Level.Max】E:Cz75 ×2:2012/03/25(日) 17:50:19 ID:7SFe12JI
ふざけンなよvip+iPhone規制されてやがった

17伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/03/25(日) 17:51:50 ID:/Cxq6Kxs
また出会い厨が暴れたからな

18レイリン覚醒Lv130(クロスボウ 柳葉刀):2012/03/25(日) 17:56:00 ID:ECAIH9QI
>>16
昨日大量規制されたようで・・・

19Accelerator【一方通行 Level.Max】E:Cz75 ×2:2012/03/25(日) 18:18:42 ID:7SFe12JI
>>17-18
うわああああああ

20レイリン覚醒Lv131(クロスボウ 柳葉刀):2012/03/25(日) 18:20:40 ID:ECAIH9QI
>>19
しかも
「全 鯖 規 制」

21Accelerator【一方通行 Level.Max】E:Cz75 ×2:2012/03/25(日) 18:25:09 ID:7SFe12JI
>>20
あああbっじゅjlぁうえkせg;

22レイリン覚醒Lv132(クロスボウ 柳葉刀):2012/03/25(日) 18:27:46 ID:ECAIH9QI
>>21
だって、普段仕事しない運営がスレッド削除までやったんですから

23けもにゃぁ:2012/03/25(日) 21:07:27 ID:eCyZh3ic
>>22
流石にほっとけない状況だったんだろ。

出会い厨と女神限定でSuitonするなら入れてもいいんだけどねぇ。
LRの拡大遵守しようとするのがいるから反発なだけで。

24[AMS]レイカー【准将】《攻撃機》 ◆bioxjBJCKE:2012/03/25(日) 21:10:25 ID:ECAIH9QI
>>23
ええ、それに子どもっぽいかもしれませんが、
そのリーダーがアレですからね・・・


それに自分は子供ですし

25[RHS]結城悠里【海兵大尉】《武装偵察隊》 ◆O1MIEwO4IE:2012/03/27(火) 00:18:04 ID:xwkPXcFc
はじめに

ロシア領内の大都市とアメリカのワシントン近郊で核兵器が炸裂した日、世界は変わってしまった。

犯人不明の核兵器テロ。911を凌ぐ前代未聞の大事件は、太平洋戦争以降続いて来た広島、長崎の悲劇の価値を暴落させ、一種神格化されていた核兵器による終末戦争の幻想を打ち砕くには十分過ぎたのだ。
冷戦時代、キューバ危機に始まる核戦争の恐怖は核を終末そのものにしたてあげていた。
大国同士の核戦争は放射能汚染と核の冬をもたらし、地球は人の住めない死の星になる。
そんな幻想。
事実冷戦の最中や集結直後の映画にはその核の終末が色濃く描かれている作品が数多存在し、今もその気配を引きずっている。
そんな恐怖そのものが、世界をリードする2大国家の厳重な警備をすり抜けて炸裂、一瞬で十何万人もの命を消し去ったのだ。
そのショックは生半可なモノではなく、世界中は一種のヒステリー状態に突き落とされ、世界恐慌と大規模暴動が頻発したほどだ。

そんなわけだから、そのすぐ後に勃発した第三次大戦はある種粛々と受け入れられた。
多くの魔術師を保有するローマ正教と、日本に存在する科学研究機関であり、超能力やオーバーテクノロジーを抱える学園都市。
ロシア中心の東側諸国と、アメリカ中心の西側諸国。
あるいは、民主主義と社会/共産主義圏国家の戦争。
見方は色々あるけれど、それが指し示すところは冷戦時代に果たされなかった2大国家の大喧嘩に他ならず、互いの総力をつぎ込んだ戦いは何百万もの巻き添えを出した。
あってはならない事の筈だった。
冷戦以後、非対称戦争と呼ばれる『大国による小国のリンチ』が急増したのは、こういった事態を回避するための筈だった。
だというのに、第三次大戦は世界の終わりになる事もなく、核の終末をもたらす事もなく、終戦から数年が経つ今日、すでに過去の苦渋として記憶の隅に追いやられつつある。

世界は慣れてしまっていたのだ。
人の死に。数えきれない犠牲に。流される何百万ガロンもの血の生臭さに。
誰にも優しくない世界は、何百万人もの供物を喰らってなお、贄を求め続けている。

26[RHS]結城悠里【海兵大尉】《武装偵察隊》 ◆O1MIEwO4IE:2012/03/30(金) 17:28:20 ID:ojLRc4xk
《機長より積荷諸君、降下目的地まであと15分だ》
耳に挿したイヤホンにコクピットからの無線が流れてくる。
輸送機が乱気流に突入してすでに40分。不安定な気流に揉まれる輸送機のカーゴルームは
それはもう揺れに揺れ、最悪の乗り心地を耐えていた僕らにとっては待ち望んだ声だった。
これが民間の旅客機ならばまだマシなのかもしれないけど、僕らが乗り込んでいる機体は軍用の、それも敵地への兵員輸送、投入の為の機体だ。
その上、ただでさえ民間に比べて乗り心地の優先度が低い軍用機なのに、この機体ときたらステルス性の向上に快適さをしまう余裕を割いてしまっている。
エイやヒラメじみた薄っぺらい機体に最新の機材や投下型爆弾、兵員を積み込んでいるから乗り心地が悪いのは当たり前だ。
そう頭で理解してはいるものの、激しい上下の揺れに苛立ちを覚えない訳ではないのもまた当たり前ではあるのだけれど。

なにはともあれ、目前に迫った地上への降下へ備えなければならない。僕は硬い座席から立ち上がり、自分の装備を詰めた降下ポッドへと足を向ける。
狭くはないけど広いともいい難い。そんな中途半端なカーゴルームを数人のスタッフが慌ただしく行き来している。
彼らはみな、長細い棺桶のような降下ポッドの整備員だ。

敵地への兵力投入といえば少しまえまで落下傘による高高度降下がメインだったけど、最近、特に特殊部隊では降下ポッドによるダイレクトな投入がメインになりつつあった。高速で降下する分、発見されても蜂の巣にされにくいからだ。

「ポッドのコンディションは?」

僕の降下ポッドを整備していた係員に声をかけ、ポッドの中に収めた荷物を確かめる。

「上々です、大尉。今のところ問題はなし。外殻はさっき確認しました」
「OK、銃器弾薬は?」
「中にあります。確認してください」

作業に余念がない整備員が、わざわざポッドの蓋を開けてくれる。真っ黒なカラーリングのポッドの中はやはり真っ暗で、僕はペンライトを取り出して中身の確認を手早く行った。
銃器と弾薬、小物類を詰めた背嚢。その他数えきれないほどの確認要項を全て終えた僕の背中に、整備員の心配気な声がかかった。

「遅いですね、お姫様」
「ん? ああ、そうだね。仮眠室から出てこないかい?」
「出てこないです。まだ寝てるんでしょうかね。起こしてきましょうか?」

そう言って、整備員は輸送機内の仮眠室を見遣る。僕はポッドから離れ「僕が起こすよ」と仮眠室へと足を向けた。

簡素極まるスライドドアの前に立ち、軽くノックする。応答がないのでもう一度、今度は少し強めにドアを叩く。
やはり応答はない。
僕はそっとドアを開き、電灯一つ灯っていない仮眠室に入り込む。壁のスイッチを押して明かりをつけると、2段ベッドを3つ並べただけの狭苦しい仮眠室が浮かび上がった。
作戦用員のための仮眠室の利用者は、いまは一人しかいない。僕は一箇所だけ使用されているベッドの脇にしゃがみ込み、深々と毛布を被って眠っている「お姫様」を揺すった。
「おい、そろそろだぞ? もう起きたらどうだい?」
揺すり続けながら声をかける。するとベッドの使用者はむずがるように身を縮め、
「もうすこし…………あと5分」
よく通る女の子の声だった。僕は苦笑しながら、「あと10分ちょっとで降下なんだけど」と毛布を引き剥がす。
「もう起きないと。作戦開始は遅らせられないんだからさ」
「うーっ、眠い」
毛布に包まっていたのは、十代の少女だった。黒い戦闘服の上から防寒着を重ねてなお寒そうにしている女の子は、不機嫌そうにため息をついてのっそりと起き上がった。
小柄で、綺麗というより可愛いという方がしっくりくるような女の子だった。
寒さのせいでほんのり紅みがさした頬を膨らませ、綺麗に切りそろえられた前髪の下の、好奇心の塊のような瞳で僕を睨めつけてくる。
「よく眠れたかい?」
「それなりにはな。かなり揺れたが」
「よくこの状況で眠れるよな、君。不感症なんじゃないかと心配になるよ」
女の子はムッと顔を顰め、
「女にいうことか、それが」
「ああ、いや、済まん。とりあえず、そろそろ降下だ、準備してくれ」
立ち上がり、僕は彼女に手を差し伸べて立たせてあげる。
「すまんな、圭一」
「気にしないで、凛」
神乃凛、それがこの娘の名前だ。そして、今回の『作戦』の戦闘要員でもある。

27[RHS]結城悠里【海兵大尉】《武装偵察隊》 ◆O1MIEwO4IE:2012/03/30(金) 17:33:26 ID:ojLRc4xk
仮眠室を出ると、待ちくたびれた様子の整備員が僕らを見つけ、手招きした。

「ようやくお姫様はお目覚めですか………よくこんな乱気流の中で眠れたもんですね」
「悪かったな。どこでも眠れるように身体を調節してあるだけだ」
「なるほど……荷物は積み込んでおきました。あとは降下するだけです」
「そうか。ありがとう」

凛と整備員のやりとりを聞きながら、僕は作戦前の一服のために煙草を取り出し、防水マッチで火を付ける。
銘柄はスモーキンジョーのフルフレーバー。別に安物の無名煙草でもいいのだけれど、仕事の前だけはこれを吸うのが僕の決まりごとだった。
換気扇に吸い込まれて行く紫煙の筋を見つめながら作戦の概要や目的を整理するのも、もうかなり長い間お決まりのパターンになっている。

降下先はヨーロッパ某国の都市部から少し離れた場所。降下人員は僕と凛、あとは2名だけだ。なぜなら今回のオプションは暗殺任務であり、大部隊を送り込む必要は全くないかだ。まあ、大部隊を動かすことができない状況だというのもあるのだけど。

なにはともあれ今宵の死刑執行人は4人。僕を含め、全員が戦慣れした手練れの兵士で、技術も確かなものだと確信しているし、サポートしてくれる装備も一線級の最新型ばかりだ。
ただ、と僕は口にしてみる。気がつけば煙草をほとんど吸い切ってしまっていて、フィルターが熱を持ち始めていた。

「ただ、どうしたんだ、圭一」

確認を終えたのだろうか。凛がマグカップを両手にこちらに寄ってくる。時折大きく揺れる機内で液体を運ぶのは大変だろうに。僕は片方のマグカップを受け取り、中に注がれているコーヒーを啜った。

「いやさ、今回の暗殺対象のこと」
「それがどうした」
「魔術師だと書いてあった。時間操作系の」

魔術師というのは超能力者と同様に、ここ数年の間に急速に世界自由に広がった言葉だ。双方共になにかの比喩表現ではなく、映画や物語の世界に存在するようなそれそのもの意味する。

「たしかに時間操作と書いてあった。たしかに珍しいが、それがどうした」
「うん。もしかするとヤツかな、なんて考えてた」

すっと、凛の眼が細まる。探るような凛の視線から僕は目を逸らし、

「まあこんなところで暗殺対象になるような職についているわけもないんだけどね」
「そうわかっていながら期待せずにはいられない、か」

言って、凛はカーゴルームの壁にはめ込まれた窓の外を見つめる。
僕もつられて外に目を向け、漆黒に塗りつぶされた外界に、記憶の隅で朧になりかけた男の顔を幻視した。

「降下先、いまも戦場だったな」

マグカップに口を付け、凛は僕に向き直る。

「うん、まだ戦闘地域だよ」
「そうか………またずいぶんひどい状況だろうな」

暗澹とした表情でうつむいた凛の、その小さな頭に手を置く。

「しょうがない、戦争だから。それに、僕らが任務を成功させれば幾らかマシにはなる。ならなくても終わりは近づく」
「…………そうだな」

いや、そうでなくてはならない。そう強く断言しなおした凛はマグカップの中身を飲み干し、僕に空のカップを押し付けて立ち上がった。

「そろそろ時間だ。準備しよう」
「そうだね」

僕は手の空いている係員にマグカップを預け、自分のポッドに向かう。

《当機は戦闘区域上空へ侵入するも敵に動作なし。対空機関砲、対空ミサイルのレーザーロックともになし。潜入状況は良好なり》

機内アナウンスが現状を報告し、僕は待機位置から降下ポジションまで移動させられるポッドを眺める。
カーゴルームの床から生えた垂直懸架台にポッドが固定され、ステルス性塗料の最終塗布が行われるのだ。

《降下5分前、全員乗り込め》

僕は自分のポッドに乗り込む凛に小さく手を振り、僕のポッドに身を収める。左右の装備群の固定をもう一度確かめ、係員が蓋をすると、ポッドの中に完全な闇が訪れる。
しかしそれも一瞬で、ポッド内壁のモニターが点灯すると、青白い光が狭苦しいポッドの中身を照らし出した。
気圧計の表示がみるみる下がって行く。カーゴルームの開放、減圧が始まったのだ。

モニターの残時間表示、刻一刻と零に近づくそれが、僕らが解き放たれるまでの残り時間。
これから僕らは地上に降り、与えられた任務を遂行するために暴力を行使する。審判の代行者、死の執行人として。

腹のそこから湧き上がる様な静かな高揚感。任務前の静謐に満ちた緊張感。これから僕が奪うであろう幾つかの命への懺悔。
それらがないまぜになった複雑な心境に、機長の声が割り込んでくる。
《降下開始、幸運を祈る。グッドラック》
いうが早いか、ロック解除の金属音に続いて浮遊感が訪れる。
作戦が、始まった

28吉良lv63:2012/03/30(金) 20:22:57 ID:gvxHNPGI
ケットシーよりもバレットさんを

29伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/04/03(火) 19:02:15 ID:GjS68BtA
モニターにロック解除の文字が踊る。
たちまち数値を下げ始めた高度計と、自分のポッドの現在地、そしてみるみるうちに離れて行くステルス輸送機のレーダーアイコンを見つめながら、僕はコンソールを操作して誘導モードに切り替えた。
ポッドの姿勢制御は左右のフィンによって自動的に行われる。減速には推進剤かパラシュートの2種類があり、今回は任務の性質上後者を積み込んでいた。推進剤は基本的に秘匿する必要のない強襲作戦用で、パラはこういった潜入向きの装備だ。
高度計が2000フィートを切る。そう時間をかけずに接地するだろう。僕はモニターから仲間のポッドの位置を確かめる。全機が所定の距離を開けて問題なく降下しているようだと判断し、安堵のため息をつくのと、自動的にパラが展開して急な減速を始めるのは同時だった。
頭の上から押される様な圧迫感を超え、緩やかな降下速度を高度計に認める。残りは500フィートもない。
あらかじめ入力されていた降下軌道データに従いフィンが動き、ポッドの落着地点を微調節して行くのが、バランスの微妙な変化から感じ取れる。残り250フィート、もうすぐだ。
減少して行く高度計の数値が50を切り、やがて0になった。同時に下方に体重がかかり、モニターに接地成功/固定器具作動の文字が浮かび上がる。
ちゃんと地面にたどり着き、金具で地面に対して垂直に起立しているらしい。僕は手早くハッチを開放し、闇に覆われた欧州の大地に躍り出た。

30伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/04/03(火) 19:02:45 ID:GjS68BtA

時期はもう12月、あたりは尋常ではな寒気に覆われ、雪がちらついている。地面にはくるぶしまでの積雪があり、積もった雪に明かりが反射しているのか、照明がないにしては周囲が明るいように思える。
あたりを見回し、まず安全確保する。凛たちのポッドは少なくとも半径50mの範囲には収まっているらしい。
昔に比べてこういった投下型兵器の精度は恐ろしいまでに進歩している。それこそ10年後には文字通りピンポイントで狙えるのではないかというほどに、だ。
僕は行動前の準備を始めた。
まず銃器を取り出し、弾倉を挿して弾薬を装填しておく。そのあとに背嚢を背負い、小物類を確認してからポッドを廃棄する。
ここが戦場真っ只中ならテルミット焼夷薬で燃やし尽くしてもいいのだけれど、今回は潜入と暗殺が目的で、しかし夜中とあってはそうもいかない。
ポッドをユニット毎にバラして自然分解するケースに入れ、地面に穴を掘ってそこに収める。埋める前にケースのなかに薬品を注ぎ、僕はケースに土をかぶせた。こうしておけば数時間で完全分解するよう設計されている。
死体を埋葬するような奇妙な感覚を抱きながら作業を終えたぼくは、仲間と合流するために行動を開始した。

半ば駆けるような早さで、僕らは宵の寒気を掻き分け進む。
あたりは森だった。等間隔の木々が立ち並ぶ森林には人はおろか獣の気配すら感じ取れず、僕ら4人のかすかな呼吸音と雪を踏む音だけが響いていた。
最新型の多機能視覚補助装備ーーサングラス型やゴーグル型ーー越しの視界を念入りに精査しながら僕らは駆ける。経験豊富で最先任の僕が先頭で、その後ろに凛、残りの二人ーーベネットとジョセフが続いていた。
行軍における先頭はかなり気を使うものだ。敵の存在やトラップの有無、足場などを瞬時に判断して動かなければならない。何かミスがあればそれは作戦の進行阻害や成否にすら関わってくる。
それにしても最近は便利になったものだ、と僕は内心に感嘆していた。
サングラス型の視覚補助装備は、僕の視界にワイヤーフレームで縁取りされた障害物や、リアルタイムで変化する周囲の状況が投影してくれる。おかげでこの闇のなかでも、周辺の状況確認はとても容易だった。
少なくとも、従来型の暗視装置よりは。
邪魔になる木の根っこをよけ、起伏の激しいところは支障の無い限り迂回して進む。
これがピクニックや日課のランニングならば、少し離れたところを通る舗装道路を進んでもいいのだけれど、何度も言っているとおりこれは暗殺作戦だ。
道路を進むのは論外だし、道路に近くなれば近くなるほど敵との遭遇可能性も飛躍的に増大する。
無論僕らはプロフェッショナルであるし、十分な装備や存在を偽装する手段はいくらでも持ち歩いている。多少の敵の無力化や殲滅は容易な話だけれど、それでも遭遇しないに越したことは無いのだ。
だから道無き道を突き進む。

雪の積もった地面を蹴りつけ、草むらを割り、目的の場所までひたすらに。砂漠や熱帯地域のジャングルに比べれば遥かにマシとはいえ、ほとんど走るような速度で、しかも重い装備を抱えて移動するのは楽ではない。僕は時折、視覚補助装備で後ろを確認し、追従するメンバー、特に凛の様子にも気を配る必要があった。慣れているとはいえ凛は女の子で、はぐれでもしたら大問題だ。
チラリと時計をみる。行軍を始めてもう3時間、そろそろチェックポイントに到着する頃だ。視界の端っこに浮かんでいるマップも、僕の予測を裏付けしている。

31伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/04/03(火) 19:03:00 ID:GjS68BtA
チェックポイントに選定されたのは、ゴーストタウン化した小さな街だった。
まだ住人のごく一部が住んでいるらしが、電気もガスも水道も止まっていることに変わりはない。いわば、放射能ではなく戦争が作り上げた現在のチェルノブイリと言ったところか。あそこも退去を嫌がったごく一部の住人が住み込んでいたはずだ。
僕らは警戒しながら雪に埋れ風化した街に入り、潜入して情報収集に当たっていた現地部隊との合流地点に向かう。
合流地点は町外れの小さなビルだった。痕跡を極力消し、当然の様に街のパトロールにくる敵を回避する。そうして僕らが合流地点にたどり着くと、そこには先に到着したらしい現地部隊が潜伏、待機していた。

「この地域は地獄の全てを詰め込んだような最悪な状況だ」

潜伏していた一月の間に相当ひどい光景を見たのだろう。やつれた表情に荒んだ眼をした現地部隊の曹長の、最初の一言はそれだった。
「敵は民間人を虐殺している。男は嬲られ、女は輪姦だ、クソッタレ」
「ずいぶんひどいようだね」
合流地点少し離れたところにある、現地部隊が拠点にしている古い民家で、僕は渡された偵察資料に目を通していた。
暗殺目標の写真、敵のパトロールパターンを示したメモと地図、敵の数、練度、編成。一通り目を通して、散弾銃を手入れしているベネットに渡す。
「こんな所にそんなちっこい嬢ちゃん連れ込んで大丈夫なのか?」

凛を示しながら曹長が言う。僕は資料に目を通す凛の手が止まったのを見ながら、
「あの子は手練れのプロだ。気にしなくていい。それより君の部下は大丈夫なのか?」
民家のいたるところに配置されている曹長の部下を示した。みなやつれていて、疲労が溜まっているのがわかる。
「お前さんたちを送り出したら我々は帰るよ。作戦に変更は?」
「変更する理由はない。情報部の報告通りだからね。ジョセフ、現在時刻は?」
「0117です。予定より幾分早い」
即座に帰って来た返事に僕は頷き、
「すぐに出よう。予定通り夜が開けるまでにカタをつける、いいかい?」
三人に確認を取る。皆が頷いたのを確認して、僕は曹長に向き直った。
「予定通り作戦を実施する。あとは僕らの仕事だ。任せてくれ」
立ち上がり、装備を担ぎ直して僕らは移動を始める。
その僕らの背中に、曹長の声がかかった。
「おい、待ってくれ。渡すものがあった」

32伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/04/04(水) 15:10:38 ID:26SjpEyM
「偵察隊の奴ら、気が利きますね」
鹵獲された敵ーーロシア軍傭兵部隊の装備を身につけたベネットが笑った。
僕は首肯し、
「これで楽に近づくことができるな」
同じく鹵獲品のハンヴィーの窓から顔を出して外を見る。
いま僕らは、あれほど避けて通った道路を、避け続けた敵の車両に乗って目的地まで走っている。
装備も車両も、現地部隊の連中がわざわざ用意してくれた物だった。僕らの到着に合わせてパトロールを始末し、手に入れた代物。
薄汚れた傭兵の装備は不揃いだったから、持ち込んだ装備の上に適当に着込むだけでいい。身分は傭兵の雇い主が支給するワッペンとIDカードが証明してくれる。
問題は女の子丸出しの凛で、飢えた男共が涎を垂らして襲いかかりそうな容貌をクリアする為に顔を煤けさせ、僕らの『戦利品』ということにしておいた。
傭兵たちは他人の取り分には手を出さないからだ。戦場で捕まえた女性の運命はバレない限り捕らえた者が握る。嫌な話だけどどうしようも無いことだ。
「なあ大尉、嬢ちゃんの調子はどうさ」
運転席でハンドルを握るジョセフが振り向かずにいう。
僕は見せかけだけ拘束され、哀れな女の子を装って僕に寄りかかっている凛の仏頂面を示して、
「機嫌がよろしいわけではないらしい」
「いい訳ないだろう。こんな風に縛られて悦ぶ趣味はない」
「お姫様ご機嫌斜めってことか……」
ごめんなさい暫く耐えてください、とベネットが凛を宥める。僕はそれに尻目に、自分の銃の弾倉を弄くり回していた。
アメリカDSA社のSA58-Paraの弾倉にぎっちり詰まっている弾薬を一つ一つ丹念に整えポーチに戻す。銃や弾倉に異常があれば即自分と仲間の生死に関わるから、整備は念入りだ。
「戦局は我々優勢だそうですね」ベネットはベネリM4散弾銃をいじりながら「このまま押し切れればいいですけど」
「押し切る為の布石が僕らなんだ」
僕はいう。
僕ら国連多国籍軍とロシア中心の東側連合軍の戦争が始まって3ヶ月と少し経つ。俗世間では第三次世界大戦と呼ばれ、人類史で始めて超能力や魔術といったモノが用いられた戦争。
ここはその世界大戦の欧州戦線の激戦区であり、僕らの任務はこの地域の指揮を担当する将軍の暗殺だった。
なぜ彼が選ばれたのか僕らは知らないし知る必要も無いのだろう。暗殺命令が下されたという事はお偉方がそれを必要としたという事だ。そこには複雑な政治的判断や損得の緻密な計算、暗殺が及ぼす影響をないまぜにした、常人には理解できないドラマがある。
僕らは与えられた命令に従えばいいし、それ以上は求められていない。自分の思考で動く権利とやらは倫理観共々置き去りにして、機械的に職務をこなすのが求められるベストな形だ。
実にありがたいと僕は思う。混沌とした戦場の混沌とした政治状況やパワーバランスを汲み取り、殺すべき人間を極限まで絞る。そんな面倒の塊を他人が肩代わりしてくれるのだから。
そしてそれは取りも直さず、個人を殺す精神的重圧を和らげてくれる。
ベトナムでもイラクでも、兵士の精神にかかる負担は重要な問題として取り上げられて来た。駒としての敵兵を殺す、同じ駒の兵士たちの。彼らの一部は壊れてしまうし、そこまでいかなくとも悪夢や社会からの疎外感に悩まされる者は多い。

殺した敵のディテールを知り得ない一般兵ですらそうなのに、個人の情報を頭に叩き込み、理解し、その人生を意識して殺さねばならない僕らのストレスは凄まじいモノがある。
あの男を殺したのは偉い人に命じられたからで、僕は命令に従わないとならない人間だったから。
面倒も何もかもかなぐり捨ててそう言い訳できることに勝る贅沢があるだろうか。

33伊月圭一(元米兵 時間制御 皇軍 ベネリSG 拳銃 ライフル):2012/04/04(水) 17:01:36 ID:26SjpEyM
外を見ると、うっすらと目的地の街並みが見えてきた。
雪と闇に覆われて朧ではあるけど、いたるところで火の手が上がっているのも、かなりの建物が倒壊しているのも確認できる。
数週間前に民間軍事企業と傭兵部隊が大規模な戦闘を行ったからだ。
大量の投下爆弾と戦車砲が穿った傷痕を遠目に見ながら、僕は煙草を懐から取り出す。輸送機内で吸ったスモーキンジョーとは別の安煙草に火をつけ、紫煙を肺いっぱいに吸い込む。
近づくに連れて街の惨状があらわになって行く。街外れに積み重ねられた死体の山は兵士のそれではなく、どう見ても民間人のそれに見える。さらに車が近づくと、それが男のモノばかりだとわかった。
跡形もなく爆砕された建築物の傍を通り、兵士が立っているだけの検問所へ車を止める。
近くの弾痕まみれの小屋から2人の傭兵が現れ、運転席のジョセフが応対する。
ジョセフと傭兵は二、三言交わしたあと、僕へと水を向けた。
「燃料と弾薬の補充ということでよろしいですか、大尉」
「ああ、そうだ」
「そちらの女は?」
車内を覗き込んだ傭兵の顔がにやける。
「戦利品だ」僕は凛を指して、「隣の街に隠れてた。あとでマワすのさ」
怯えた様子を装う凛を見て、傭兵の笑みがますます大きくなる。
「そりゃいい。不要になったら俺らにくれませんかね」
「覚えておく。楽しみにまってろ」
傭兵の手にしたカードリーダーにIDカードをかざして通行許可を得る。急増戦力である傭兵の身分証明書はこのレベルが限界なのだろう。僕ら民間軍事企業や正規軍からなる国連多国籍軍は、指紋から網膜を使用したバイオメトリクスが基本だ。
最先端から見るとずいぶんずさんなセキュリティに驚きながらも、僕らを載せた車は動き出す。

34モブ【三等兵】《名無し》:2012/04/21(土) 20:01:21 ID:mEQw.iUc0
浮上

35スバル:2012/05/03(木) 15:45:02 ID:iA/vt.hE0
来たよ

36カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 15:46:13 ID:pU/Vpujo0
ここはPSPで書き込めるかい?

37スバル:2012/05/03(木) 15:50:14 ID:iA/vt.hE0
したらばと避難所ならなんとか...........
vip+は無理みたいだね。アハハ...............

38カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 15:52:53 ID:pU/Vpujo0
>>37
うーむ…………どうするかなぁ
探しても解決策ナス

忍法帖作成から一定時間後の最初のレスまでに接続IPが変わったら破門とか、いろいろ破門条件あるんだな

39スバル:2012/05/03(木) 15:55:33 ID:iA/vt.hE0
たぶん忍法帳の作成をしすぎたからだと思うんだ
忍法帳作成画面が出まくったから

40カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 15:57:06 ID:pU/Vpujo0
>>39
あらあら
心配しすぎて家を20往復とジョギングの準備してた
マジで

41スバル:2012/05/03(木) 15:58:59 ID:iA/vt.hE0
>>40
いなかった30分くらいでボクはもうやった

学校まで本気ダッシュ10回を

42カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 16:01:27 ID:pU/Vpujo0
>>41
お互い心配性だねぇww
焦りすぎて転けたよ……

43カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 23:29:46 ID:pU/Vpujo0
結城悠里死亡編 導入部


「なあ悠里、質問してもいいか?」
やや高めのアルトボイスが僕を呼び止めたのは、 やたらと豪華な学生寮を自室へとたどり着き、ドアノブへ手をかけた時だった。
購買で買ってきた夜食を抱えたまま僕が振り向くと、背後にはこれまた購買のビニール袋を抱えた燕尾服の男装美少女が立っていて、やあと手を小さく振りながら僕に近づいてくるところだった。
「お、スバルか。どうしたこんな時間に」
スバルとは、女でありながらある人物の執事たるべく男に扮して生きてきたこの少女の名前だ。僕やごく一部を除き、この子が女子だと知る者はいない。
「いや、たまたま悠里を見かけたから声をかけただけだ」
男物の服ならば女が集まる美少年、女物ならば同性が羨む美少年に変身する中性的な面貌に微笑みを浮かべ、スバルがいう。
「そっか。で、質問ってのは?」
ドアを開け、玄関口の棚に夜食の袋を置く。自動点灯装置が働いて、消灯されていた玄関に明かりが灯った。
「ああ、今日の昼間に、悠里は傭兵だって話を聞いたんだ」
「ん? 知らなかったのか?」
「本当なのか?」
「ああ、僕は長らく兵隊家業をやってる」
立ち話もなんだから上がれよ、と僕は勧める。寮は基本的に2LDKの洋室が多く、僕の部屋もその例に洩れず土足基本だ。
「いいのか?」
「これ以上話がなかったり、上がるのが嫌なら別にいいが」
「あ、いや、嫌なんかじゃないぞ? まだ聞きたい事もあるし、そうだな、じゃあお邪魔します」
慌てて否定し、僕の様子を伺うような上目遣いで見上げてくる。僕は肩を竦めて苦笑で返した。
「入りな」
スバルを招き入れてドアを閉め、彼女をリビングに通した。スバルにソファを勧めて僕はキッチンへ向かう。客人を招き入れた以上もてなすのは礼儀だから、何か飲み物を用意しよう。
「何か飲むか?」
「何があるんだ?」
僕は棚と冷蔵庫をあさり、
「コーラ、カルピス、ビール、カクテルパートナー、あとはパウダーと缶のココアぐらいかな」

44カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 23:30:16 ID:pU/Vpujo0
「悠里の淹れたココアが飲みたい」
即答。しかも僕のココアである事を強調して。そういえば、前にココアを淹れてやったら凄く気に入ってくれていたな、と思い出しながら、僕はマグカップを取り出した。
「で、他に聞きたい事って?」
「うん、傭兵ってどんな仕事なのか……興味があってだな」
へぇ、と返しながらココアパウダーをマグカップに用意し、湯を少量注いでスプーンで練る。この際に粒状にパウダーがまとまらないよう満遍なく練って潰すのは基本だ。
「どんな仕事……ねぇ。そうだな、フレデリック・フォーサイスの『戦争の犬たち』なんか読めば良くわかると思うけど」
ココアパウダーをよく練ったら次はミルクや砂糖をいれるのだけど、今日の僕は練乳の気分だから練乳を一匙分溶かし込む。
「そういう事じゃないし、創作物は創作物だ。僕は悠里の口から聞きたいんだ」
「まあ、たしかに本は本でしかないが」
練乳とココアパウダーを混ぜ合わせたものに牛乳を少しずつ流し込んで慣らしていく。あまり一度に多く牛乳を注ぐと混ざり切らない事があるのだ。
僕は牛乳に溶かし終えたココアのマグカップを持って、ソファに座るスバルの元へ向かい、彼女にマグカップを差し出した。
「ほい、ココア」
「うん、ありがとう」
カップに口をつけ、スバルは微笑む。僕はその隣に腰掛け、備え付けの液晶テレビの電源をいれた。
音声が先に流れ出し、あとに画面が続く。どうやらこの時間は深夜バラエティの放送が多いようで、どこもかしこも売り出し中のアイドルや芸人で溢れかえっていた。
「で、何が聞きたいんだ?」
「……ん……ああ、傭兵ってどんな仕事なのかなって」
「テレビや映画に出てくる認識とそう大差ないよ」
例えば? とスバルが首を傾げる。
傭兵の仕事はシンプルだ。金をもらって業務を果たすだけであり、必要なのは経験と運の二つだけと言っても過言ではない。
紛争地帯や戦場に出向き、情報を集め、リスクと報酬の兼ね合いを考えて雇い主を選ぶ。その際に必要なのは、現地の情報や政治事情から隠れたリスクを感じ取る経験に基づく勘と、予期せぬイレギュラーを回避する運だ。
とはいえ、予期せぬイレギュラーなどというものはやはり経験によって回避出来るのだから、最も重要なのは経験だろうが。
そして仕事の内容だが、大まかに二つだ。
一つは映画やテレビでよく見るような、金で雇われて暗殺したり、ジャングルの奥地で麻薬組織とドンパチするような直接戦闘業務。
もう一つは練度が低く装備運用ノウハウもない貧乏後進国で戦術指導を行ったりする間接戦争業務。
この二つだ。
「悠里はどんな仕事をするんだ?」
ちびちびとココアを啜りながらスバルが尋ねる。まるで宝物のようにマグカップを抱え込み、興味津々の様子で僕の話に聞き入る彼女に微笑み、僕は続けた。
「僕は基本的に直接戦闘だね。暗殺、組織殲滅、機密の奪取、護衛、他にもいろいろあるけど」
「危なく無いのか?」
どことなく心配そうな声音。僕は肩を竦め、
「危ないさ、そりゃね。でも僕は経験ならかなりのものだからそうそう死にやしない」
ふとみると、スバルは捨てられた子犬じみた寂しげな表情で僕を見つめていた。もしこの子に犬耳と尻尾があったならどちらも垂れ下がり、哀愁を誘う鳴き声を漏らしているに違いない。そう思わせる表情だ。
「死んじゃ……イヤだからな?」
小さく絞り出されたアルトボイスには僕を心配するような、それでいて半ば何かを確かめるような声音が混じってる。
「言ったろ、経験なら積んでる。死にやしないよ」
「本当に?」
「こういうときに嘘をつくほど腐っちゃいない」
よかった、とはにかんだスバルの顔にはちょっとした疲労の色が滲んでいる。そういえば、この子にここにやって来てまだ2ヶ月と経っていない。新しい生活には馴染めたのだろうか……。その事を尋ねようかどうか思案しているうちに、向こうが先手を打っていた。

45カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 23:30:46 ID:pU/Vpujo0
「悠里はなんで傭兵に? そうなる前はなにかやっていたのか?」
「ん? ……………ああ、前は米軍にいたんだ」
「アメリカ軍に?」
ああ、と僕は頷く。僕の親父は白人でお袋は日系人だった。そして、親父、祖父、曾祖父と軍か政府機関の人間だったから、僕もそれに従って高卒で米軍へ入ったのだ。 親父は僕を真っ当な職に就けたがっていたが、今思えば、僕の選択にはその親心への対抗心もあったのだろう。
「僕が入ったころは第二次世界大戦と朝鮮戦争後の再編期でね、入ってすぐに即戦力になるように訓練んされたよ。ヴェトナム戦争にも参加した」
クソ暑い上に尋常じゃない湿度。毒を持った虫や蛇、疫病とベトコンの恐怖にさらされていた毎日……。胸に抱えたM16の頼もしさと腰のコルトの安心感、休暇にはこぞってしけ込んだ娼館の饐えた匂い。懐かしくも恐ろしい記憶が蘇っては消えてゆく。
「じゃあなんで傭兵に?」
回想に浸りかけた意識を現実に引き戻す声。僕は舞い降りた奇妙な沈黙を誤魔化すためにマグカップに口を付けた。
「米軍にいる限り米軍としての任務にしか参加できない。僕はどうしてもケリをつけたい事があって、倒さなきゃならないヤツがいたから」
「だから傭兵に?」
「うん」
まあ、後ろ盾が減るデメリットを考えればどっちもどっちだがね、と僕は肩を竦め、リビングの窓に目を向ける。とっくに日が落ちた外界の闇の中に、僕が追い回す男の顔が見えた気がした。
窓越しの漆黒に浮かび上がった男の顔は、僕同様に昔と何一つ変わらない若々しい面貌を笑みの形に歪め、いまだに追いつけない僕をあざ笑っているようだった。
40年前、逃げ去る間際に僕に向けた嘲笑。かつてはソ連KGBの工作員として相対し、そして今は一国の主へと昇り詰めようとしているその顔が、『早く私に追いついて見せろ』と嘲る声を発する。
待ってろよ、必ずお前の喉笛を噛みちぎってやる。そう返すはずだった声は、体を揺さぶられる感覚と「悠里? 大丈夫か?」と焦燥と不安を滲ませた声に吹き散らされていた。

46カウンセラー伊月:2012/05/03(木) 23:31:31 ID:pU/Vpujo0
我に帰ると、何時の間にか身を寄せていたスバルの顔が眼前にあった。不安を隠し切らない表情に、案ずる瞳の色を浮かべたスバルにとりあえずも笑顔を返し、ほぼ無意識のうちに彼女の艶のある髪をわしゃわしゃと掻きなでていた。
「ちょっと思いでに浸ってただけだ」
「そう……か? 悠里、すごく怖い顔してたぞ」
「元の人相が悪いからだろ」
「そんな事は……ない…………とおもう?」
疑問系かよ、と僕は嘆息する。すると、スバルは慌てて首を振り、「あ、いや、人相あるいなんて事はないぞ! ただ少し目つきが鋭いってだけで」と弁解する。
「それは人相が悪いの範疇だと思うんだ、僕」
「ううっ…………ごめん悠里ぃ……………」
「だからって涙目になるのもやめて欲しいんだけど……」
「でも…………でも……」
「気にしないでいいよ。この外見は気に入ってるから」
ぽんぽん、とスバルは頭を撫でる。すると先ほどとは打って代わって、涙目が年相応の女の子らしい微笑みに変化した。流石に美形、しかも男装しているとはいえ少女だけあって、笑顔がよく似合う。
とはいえスバルは体面上男となっているものの、実質的には女の子なのだ。それなのにここまで馴れ馴れしいジジイはどうなんだろう。窓に反射した僕の外見は20代の頃のものだけど、内面は72歳の老人なのだから。
全く、体だけ若いとロクな事がない。鼻腔を満たす女性の匂いを振り払うようにそっと溜息をつき、体の芯から下半身へと集まり出した血流を意識して抑える。
発情期の犬でもあるまいし、友人のーーそれも女の子ーーの前で息子をおっ勃てるような真似はしたくない。というか、この思考をせなばならないのがすでに異常なのだが。
「もうこんな時間か」
とりあえずも、状況打開の策として、僕はスバルの帰宅を促す事にした。さりげなく部屋の時計を見上げ、彼女の注意を動かす。時計の針はすでに新しい一日の訪れを示していた。
「結構長居してしまったな。すまない、悠里」
「いやいや、気にしてないよ。いつでも来てくれ」
スバルが立ち上がり、僕が続く。燕尾服を正して玄関へ向かう彼女を送り出す所までが僕の役目だろう。
「ココア美味しかった。また今度来てもいいかな…?」
伺いを立てるような上目遣い。僕は首肯して、
「いつでも来てくれ。用意して待ってる」
「うん、ありがとう悠里」
玄関を出て、スバルを見送る。ビニール袋をさげて自室へと向かう彼女に小さく手を振り、部屋に戻ろうとした時、
「悠里、死んじゃだめだぞ」
僕はわざとらしく肩を竦め、親指を立ててスバルに返した。








導入終わり

47カウンセラー伊月:2012/05/04(金) 10:56:55 ID:9Q2NwmkU0
続き

目が覚めた。
最初に像を結ぶのは、先ほどまでいた寮の豪華な天井ではなく、薄く汚れたコンクリートの肌。煤けた灰色は空を覆う雨雲のようで、さながらいまの僕の心境そのものだった。
つまるところ、いまの僕はひどく憂鬱なのだ。
夢から醒めた後の虚脱感を気力で押さえつけ、薄い羽毛を跳ね除けてベッドから足を下ろす。
衣服のほとんどは身につけたままだったから、コンバットブーツを履いて立ち上がると、僕はそのまま飾り気のない灰色の部屋を出た。
ドアを開けて廊下へ出ると、ひどく冷たい空気がシャツ越しに染み込んでくる。流石に11月終わりの欧州ともなれば寒気も堪えるものがある 。
吐いたそばから白い湯気になる吐息。うんざりする程の寒さを無視して、僕らが接収したセーフハウスの廊下を進む。
元は人が出入りするマンションだったのだけれど、今はもう住む者もいない。ここ数年で完全にゴーストハウスになってしまっていたのだ。そして、セーフハウスは人の出入りが無い方が都合が良い。
ゴミと埃が堆積した廊下を抜け、階段へ。僕らの休憩所があるこのフロアは5階で、主に使われているのは3階の広間だ。
階段を降りて3階へ。そして通路を通って広間へ向かう。かつては集会やらイベントやらに使われていたという広間は、今はもう沈殿する埃の受け入れ施設でしかなかった。
そこをなんとかして使えるようにしたのは僕の部下たちで、彼らはいまも広間を行き来して情報整理に務めている。
テニスコート2つを収容できそうな広さの広間では、野戦服姿の部下が書類や電子機器の前に居座って作業をしていた。人数はざっと10人程。全体の半分ほどで、比率はなぜか女子の方が多い。
「おはよう、みんな」
僕が声をかけると、三々五々、皆が返礼してくれる。中にはコーヒーを渡してくれる女の子もいて、僕は湯気を立てるマグカップを受け取って彼女に礼を言っておいた。
「おはようございます大尉、よく眠れましたか?」
そう声をかけてきたのは、ここにいる女子たち通称「FOX隊」の指揮官であるエコー中尉だ。女性が好みそうな整った二枚目ヅラの、僕の教え子。英国SASの隊員にして、僕が指揮するTF57の副官でもある。
大きなテーブルの上に広域世界地図を広げ、ポータブルテレビと数えきれない程の資料を用意していたエコーに近づき、「まあ眠れたよ」と返す。
「夢、見ました?」
「ああ、見た」
「また同じ夢ですか?」
「そうだ」
コーヒーを啜る。エコーは自分のマグカップに口をつけ、どこか遠くを見つめながら、
「羨ましいですよ、そういう夢」
僕はエコーに最近よく見る夢の内容を教えていた。バカみたいというか、ガキの夢のようだけど、内容はこうだ。
どこか別の世界に呼び出され、超能力者やら魔術師やらが集まる高校の生徒として生活する。そんな内容である。困ったことに、僕は寝ることで向こうとこちらを行き来しているらしいのだ。
いや、夢だから当たり前だろうと言われるかもしれないけど、なまじ向こうでの体験がリアル過ぎる質量を持っているので、最近はどちらも現実のような認識が生まれていた。

48カウンセラー伊月:2012/05/04(金) 10:57:27 ID:9Q2NwmkU0
「慣れれば楽しいがね。どうも目覚めが恨めしい時があるよ」
「そりゃあね。こんなクソみたいな世界に比べればそうなります」
僕が煙草を咥えると、横からジッポの火が差し出される。僕はありがたくその火を使わせてもらい、代わりに煙草を一本進呈した。
「美味いですね、この煙草」
「スモーキンジョーだからな。安煙草とは違う」
羨ましいです、やっぱり。紫煙を吐き出したエコーはテーブルに寄りかかり、
「で、今日もスバルちゃんが夢に?」
「ああ、部屋で傭兵の話をしながらココアのんだ」
「すっげぇ羨ましいですよ。男の、しかも執事に扮した美少女とココアでティータイム、二人っきり。これはまさしく……」
「まさしく?」
「ビューティフォー」
部下の素晴らしい狙撃を見たどこぞの大尉みたいな事いうなよ。僕がそうボヤくと、元ネタ知ってるんですか、とエコーが笑む。
こいつ、英国SASつながりでそのうちステンバイステンバイ連呼する何処ぞの緑のムックもといモリゾーになるんじゃないだろうな。リアル英国製無敵砲台なんざいらんぞ。
「もし俺がそうなったら天敵はヘリですね」
「全世界のザカエフさんに逃げるように言っとくよ」
まあなりませんが、とエコー。吸い切った煙草をテーブルの灰皿に押し付け、新しいものに火をつける。
「夢って虚しいよな」
「確かに虚しいですけど、大尉のは……」
「僕のがどうしたのさ」
いやね、と吸い殻を灰皿に落とし、紫煙を吸い込んでエコーは天井を見上げる。
「なんかね、話聞いてると、夢じゃ無いんじゃないかと」
僕はなにも言わず、徐々に熱を失って行くコーヒーを喉に通す。少しぬるくなった苦味を舌先で味わい、僕はエコーの続きを待った。
「話のディティールがリアルすぎるんです。それに夢とはいえ、体感時間最長一日越えの内容量ですよ?」
「夢は何があるかわからんぞ」
「そうです、でもなんていうんですかね……わかりません」
「わからんのかい」
「でもね、ほら、夢の中身が並行世界だとして、寝る事で意識が行き来しててもいいじゃないですか」
夢があってもいいじゃないですか。ちらりとこちらを盗み見たエコーの目は真剣そのもので、僕は口にする言葉を見失った。
こちらを捉えた瞳のライトグリーンに一抹の感情がよぎり、逸らされる。細い筋になって立ち昇る紫煙を追い散らし、僕はテーブルに向き直った。
「まあいい。楽しい夢講義は終わりだ。状況は?」
「相変わらず、戦局は押され気味です。欧州戦線は完全に停滞、アジアでは日本の自衛隊が奮戦しています」
戦局を書き込んだ地図をエコーが示す。世界中に飛び散った戦火を示す記号を瞬時に判別し、少しずつ不利になっていく西側諸国軍の現状を確かめる。

49カウンセラー伊月:2012/05/04(金) 10:57:55 ID:9Q2NwmkU0
地図の上に記された戦場、第三次世界大戦。反ロシア政府派集団がロシア政府議会を掌握し、一部部隊を除くロシア全軍を掌握した事に始まる戦争。
東側諸国軍と西側諸国軍の全面対決の様相を呈したこの戦争は、少しずつ西側の負けへと傾いている。
「負け戦か、腕が鳴るじゃないか」
「負け戦大好きですからね、大尉は」
「勝ち戦より仕事が多いからな」
状況だけみると多少の劣勢に見えるが、実際は完全な敗戦へと向かいつつある。
というのも第三次世界大戦は東側の完全な奇襲(それも生物兵器や爆弾テロ)によって始まっていて、最初期段階でこちらの戦力や指揮系等はズタズタにされていたからだ。
開戦からかれこれ3年、最早西側は限界間際まで疲弊している。
「この状況を打開、終戦させるには…………」
「打てる手は一つだけです」
米露の和平交渉。それが唯一の道だ。合衆国大統領もロシア大統領もそれを望んでいる。
ならば何故未だに和平を結ばないのか? それはこの戦争を裏で手引きし、ロシア国内での地位を確立しつつある次期大統領候補のせいだ。
元KGB工作員にして、反ロシア政府派軍事同盟のカリスマ。昨晩夢の中で僕が幻視した男。カミンスキィと呼ばれる彼がロシア大統領の命を狙っている。
つまるところ、カミンスキィを排除しない鍵り大統領は表に出る事ができないのだ。
僕とエコーはいまの状況を確認し合い、そして何度も確認されてきた結論へたどり着く。
「やはりカミンスキィを抹殺するしかないですよ。それが俺らタスクフォース57の任務で、存在意義です」
「なんとも素敵極まるな。素晴らしいじゃないか。負け戦の渦中において、戦争の推移そのものを僕らが握っているんだ」
これ以上に特殊部隊員として名誉な事もあるまい。僕は笑い、エコーも頷く。
僕たちタスクフォースの任務はただ一つ、カミンスキィの抹殺。ただそれだけだ。そのために僕は合衆国に雇われて40人の部下を与えられ、40年もの間カミンスキィを追い回してきた経験を生かし続けている。
「暗殺は?」
「機会が得られたなら本部に打診だけして決行だ。どう転んでもチャンスは一度だからな。ヤツが姿を表すとすれば……」
「虎の子、核兵器回収のタイミングですね」
ラップトップPCを引き寄せ、エコーはある資料ファイルを開く。そこにはずいぶん前にロシア領内から姿を消した核兵器の隠匿場所が示してある。
もともこの戦争は短期決戦を念頭にしかけられたものだった。少なくともカミンスキィはそのつもりだったのだろうし、僕らもそう見ている。
彼に言わせればさっさとロシア大統領を拷問して核兵器の解除コードを回収、頃合いを見計らって敵国首脳をズドン、と言ったところか。
しかし僕らがロシア大統領を救出したためにそうはならず、戦争は泥沼化している。
僕らの打開策がカミンスキィの暗殺であるように、カミンスキィの打開策は核兵器による初期化なのだ。
「これを回収しにくるタイミングで殺せなければ僕らの負けだ」
「ヤツがくる保証は? 代理人を送るかも」
「来るさ。自分で見なければ気が済まない男だ。……………それに」
「それに?」
「ヤツは僕が来るとわかっているはずだ。だから必ず出てくる」
40年の因縁。1971年のアメリカの小都市で出会って以来延々と続いている僕らの確執。
「ケリをつけるならここしかない。打つ手は一つ、結末もまた然り。チャンスも一度きりだ。となればやるしかないさ」
「まあそうですね」
「それにな、中尉、僕は君の訓練生時代に教えたろう。『死して護国の鬼より生き残って姑息の弱兵』……」
「されど、無意味な延命はしない、ですね。然るべき時に然るべき敵と戦い、死ぬ。無駄な玉砕はナンセンスでも、履行するべき義務は果たす。そうでしょ、ユーリ教官長」
「そうだエコー訓練生」
僕らはニヤリと笑い合い、同時に煙草を灰皿へ捨てる。
「動きがあれば直ぐに教えてくれ。チャンスは一度、必ず息の根を止める」
「了解、大尉」
お互いに敬礼を交わして、僕は広間を出た。階段を一番上まで上がって、屋上に出る。
雪が降っていた。豪雪とは言えないが、すでにくるぶしまで積雪がある。
もうすぐ今年が終わる。戦争の終わりも、すぐそこだ。

50モブ【三等兵】《名無し》:2012/05/10(木) 17:07:21 ID:wVZMorJQ0






「ということが向こうの世界であったんだ」
昼下がりの学生食堂。そのカフェテリアで、僕とスバルはテーブルを挟んで少し遅い昼食をとっていた。
「向こうでは第三次世界大戦真っ只中なのか…………」
スバルはアイスティーのコップに手を延ばし、大変そうだなぁと呟く。僕は自分のチキンサンドイッチを齧り、咀嚼してから、
「こっちじゃもう4年も前の話だっけ、三次大戦は」
「そうだ。あの時は世界中どこもかしこも大変だったんだ」
そう、そのはずだ。こちらの世界では4年近く前に大戦があって、今なお主戦場だったヨーロッパでは復興作業が続いている。
数百万の被害を出した史上最悪の戦争として、復興作業が終わったあとも語り継がれるのだろう。
「こっちも同じようなものだね。開戦前にガス兵器と爆弾テロの大廉売やってくれたおかげで兵力がズタズタ。街も民間人もまた然り」
「酷いな」
「戦争といえどルールはある。奴らはそれを破った」
だから殺す。そう続けようとして、僕は危ういところで押し留めた。この娘の前で吐くには、僕の本音は毒気を帯びすぎ、そして生々しすぎるのだ。そのぐらいの自覚はしているつもりだ。
「でも驚いた。悠里が特殊部隊の隊長さんだなんて」
「キャリアが長いだけだよ」
でも強いんだろ? とこちらに向けられた尊敬の眼差し。僕はチキンサンドイッチをもう一口齧り、ミルクと砂糖たっぷりのカプチーノので、ちょっとした居心地の悪さを飲み下す。
「人並み以上にはこなす自信がある」
「やっぱり悠里はスゴイな」
「スゴイもんか。ただ他人より人殺しの手管に長けてるだけで、そんなものはスゴイ事でもなんでもない」
言い切って、僕は仕立てのいい木製椅子の背もたれに寄りかかる。

51モブ【三等兵】《名無し》:2012/05/10(木) 17:07:48 ID:wVZMorJQ0
カフェテリアは開放感のあるテラスのような作りをしていて、豪華の一言に尽きる能力者高校の敷地を見渡せるようになっている。
最近はこのテラスから見渡せる石造りの庭を見下ろすのがお気に入りだ。この学校は全体的に建築物が美しく、どこかヨーロッパ的だ。
昼休みを利用して庭に出て来た生徒たちを眺めていると、「殺すだけならそれはダメだけど、悠里は違うだろ?」と遠慮がちな声が発した。
僕は椅子の手摺に頬杖をつき、
「理念が無いわけじゃない。民間人だろうが軍人だろうが、人が余計に死ぬのが嫌だからさっさと終わらせたいだけだ」
「やっぱり悠里は悠里だよ」
「僕が何なのさ」
スバルの要領を得ない言葉に、僕は思わず苦笑する。
「悠里は……正義の味方だ」
カプチーノのカップを思わず落としかけた。顔に血が昇り、灼熱するのがわかる。こんな事を面と向かって言われたのはどれほどぶりだろうか。あるいは生まれて始めての経験かもしれない。
とりあえずもカプチーノを一口。そしてサンドイッチを齧る。あまりに恥ずかし過ぎて、気が動転しているのが良くわかる。
「悠里、どうかしたか? 顔が赤いが」
「気にしなくていい。少し昔の恥を思い出しただけだ」
頭の上に疑問符を浮かべ、スバルが首を傾げる。よもや自分のせいだとは思っていないだろうし、言ってやるワケにもいかず、僕は溜息に全てを乗せ、吐き出す事にした。
「本当に大丈夫なのか?」
大丈夫だよ、と返すのと、スバルの注文していたパスタをウェイトレスが運んでくるのは同時だった。
大皿に盛られた山のようなキノコの和風パスタが、圧倒的な質量感を伴ってテーブルに置かれる。
レシートを置き土産に去って行くウェイトレスの背中を見、次いで待ってましたと言わんばかりの表情でフォークを手にしたスバルを確かめた僕は、次の瞬間にはフォークを多い尽くす麺と、それを一口で片付けたスバルを見てしまった。
そう、この娘は大飯喰らいだ。朝昼晩と、どうしたらそのくびれたウエストに収まるのかと不思議になるほどの量を片付け、なおかつ大量のデザートを食する大食漢。
昔ギャル曽根とかいう大食い芸能人がいたななんて事を考えるうちに、パスタ山の山頂が消え去っていた。

52モブ【三等兵】《名無し》:2012/05/10(木) 17:07:58 ID:wVZMorJQ0
「よく食うな」
「ん…………悠里も食べるか?」
「いや、単純にスゴイなって」
きっと今の僕は口をぽかんと開けた間抜けな表情をしているだろう。少なくともそう思ってしまうだけのインパクトが目の前にはあった。
「よくそれだけ食うよな」
「むしろこれだけ食べないと……」
「燃費悪すぎだよ。そのうち太るぞ」
僕は嘆息し、煙草を取り出す。スバルは至って真面目な表情で、
「トレーニングしているから大丈夫。それに、ボクはいつか悠里より強くなりたいんだ。だからたくさん食べてたくさん訓練しなきゃ」
「君なら簡単に追い抜けるよ」
僕は紫煙を吐き出し、吸い殻を灰皿へ落とす。スバルは首を振って、
「ううん。悠里は強いから……」
「高く買いすぎだよ。訓練積めば越えられる」
「でも強いのは事実だ」
「積み重ねただけだ。無能が54年積み重ねても、君なら簡単に追いつく」
カプチーノのお代わりを注文し、僕はフィルター手前まで吸いきった煙草を灰皿に押し付ける。
「54年も、ずっと戦っているのか?」
返ってきたのは予想とは外れた質問。僕は煙草を取り出す手を止め、18からだからね、と一言。
「辞めようと思った事は?」
「殺し合いの最中になら。でもいざ終わってみるとまだやる事があって、そんなこんなでズルズルズルズル続けてきた」
「そうなのか」
「それに人生の半分以上費やしているからね。これ以外にできる事がないってのもある」
でも、一番の理由は。そう続けるはずの声は運ばれてきたカプチーノに遮られ、代わりにスバルが続きを引き受ける。
「カミンスキィって男が、そうなんだな?」
「うん、あいつが一番の理由だな」
カプチーノに砂糖を追加して、僕は頷く。
「なんとしてもケリをつけたいってのが本音」
「ケリ、つくといいな」
つけるさ、必ず。僕はスバルにそう返し、微笑んで見せる。
「でも、何度も言うけど死んじゃダメだぞ」
「わかってる。相打ちも犬死もナンセンス極まる」
そういえば、なぜこの娘はこんなにも僕は心配してくれるのだろう。そんな疑問が首をもたげ、質問しようと口を開いた時、先にスバルの疑問が発せられていた。
「なあ悠里、悠里はカミンスキィとどういう関係なんだ?」
「ん? ああ、それはなーー」

53モブ【三等兵】《名無し》:2012/06/11(月) 21:12:49 ID:ukFtpD1o0
・テラート星系
テルス
クローネ
セリニア
ルーテック
カルケント
クレチア

・イザナミ星系
イザナギ
ウミサチ
ソウリュウ
クサナギ
イセミヤ
チュンクア
ユエナン

・ルインサイト星系
フエナ・クーリア
ノルダート
キエルタ
グルーチア
モルゴリシア
ロットブルーメ
ブラウルフト
ケルプソーネ
グルーンブラット

・ジュリアス星系
ロマーニャ
ガリア
カッパドキア
ルシタニア
ブリタニア
コルシカ
ベルギカ

・リーグル星系
エッダ
ロゼッタ
ハムラビコード
テオゴニア
イリアス
オデュッセイア

54中の人:2012/07/13(金) 23:53:43 ID:1TP4QVN.0
 太平洋上にぽつんと浮かんだ、国連軍の軍事基地。フロンティア転送基地、あるいは単にFベースと呼ばれるその軍事基地は、地球上のあらゆる国家で導入された学兵徴収制度に従って集められた少年少女が、まず最初に訓練地獄を見る場所だ。
 基礎体力錬成、各種銃器扱い、爆発物運用や格闘教練、模擬演習。それらが半年もの間延々と繰り返されるのが、ここFベースだ。夜中でも、演習の大声と射撃場から漏れる発砲音が絶えることはない。
 敷地面積でいえば、大輔の故郷である日本の北海道丸々3つ分。その中には広大に過ぎる演習施設と兵宿舎、学兵の娯楽施設を内包した都市が点在していて、中央部に異世界――ツァラント世界の本星テラートと直通のゲートがある。
 ゲートの周りには、即応防衛大隊とゲート施設の警備部隊駐屯施設があり、空港よろしく民間人の星間旅行ターミナルもある。民間人の旅行者やビジネス渡星者は旅行ターミナルでパスポートなどを掲示せねばならず、その隣の軍関係者移動ターミナルではパスポートの代わりに身分証明チップを使う必要がある。
 そして大輔は、Fベースの公共交通機関を使用してそのゲートターミナルへ向かうところだった。中央のゲート付近から木の根のように張り巡らされたモノレール路線は今日に限ってはゲートステーション直行に切り替えられ、訓練校を卒業する学兵たちは一路駅へと急いでいる。
 そんなわけで、区画整備された歩道には、濃緑色の海兵服や陸、航空宇宙軍人の制服を身に着けた学兵たちがあふれかえっていた。それぞれ腰に拳銃を下げて手荷物を持ち、学生徽章を輝かせている。
 その中に紛れるようにして、大輔は駅へと足を進めた。
 学兵たちはさまざまな国家から集められたため人種は多彩だ。白人、東洋系の黄色人種、黒人もいる。
 駅が見えてくると、自分のポケットからクレジットカードを取り出した。Fベースに着た学兵たちはまず認識用ナノマシンといくつかの生体リンクを体内に埋め込まれる。それらの兵士個人把握措置と同時に渡されるのがこのクレジットカードで、月給は自動チャージとなるのだ。
 生体リンクとナノマシンがクレジットカードに情報を流し込み、カードが小さく起動音を鳴らす。
 駅の改札でクレジットカードをかざすと、一瞬でデータ読み取りが行われてゲートが開く。ちなみにこのクレジットカード、本来は身分証明などを行うIDカードが本職である。
 階段を上ってホームに入ると、ほどなくしてモノレールが到着した。がらんとした20両編成の車両に入り、適当に腰掛ける。バッグは網棚へ押し込んでおいた。
 発車までは幾分時間がある。それに、到着までは30分はモノレールに乗ったきりだから、幾分時間が余ってしまう。そんなわけで、大輔は端末にたまったメールの処理を始めた。
 といっても作業は簡単だ。親しい友人へのメール以外は返信済みだし、返すべきはせいぜい5、6人だった。
 3人分送ったところで、電子音アナウンスが流れてモノレールが発車した。それに構わずさらに2人分を済ませ、手早く送信。最後に残した一人分を開き、返信ボタンを押して書式テンプレートを展開する。
 そして、そこで指が止まった。
 何を書けばいいのか、先ほどまでとは違いとんと浮かんでこない。
 当たり障りのない適当な内容で埋めるのも手だったが、それんなことはしたくない相手、というかそんなことをするのを自身が容認できない、それほどに大輔にとっては大事な人物だ。
「何を書くべきなんだ……。素直に全部書いたら詩織を不安にさせるだけだし……」
 音咲詩織は大輔が徴兵される前に通っていた学校で同級生であった少女で、こちらに来てからは専門の衛生兵養育コースへと進んでいた。気性の穏やかな子で、なんというか、実のところ大輔と交際関係にある。ガニーが言っていた彼女というのは詩織のことだ。
 いつまでも筆を止めるわけにはいかず、大輔はゆっくりと指を走らせた。まず挨拶から始め、所属先を教えておく。海兵隊は志願制の部隊で危険が常に伴う部隊ではあるが、自分のことは心配いらない、とも書き記すことを忘れない。
 そんなこんなで書き終えるころには、モノレールは終点ゲートステーションへと滑り込んでいた。
 ざっと目を通しなおして、変なところがないことを確認してから送信する。端末をしまってバッグを持ち、いつの間にやら増えていた乗客の流れに従って車両を下りた。
 ホームは満員とは言わないまでもにぎわっていた。その全員が学兵であり、多種多様な人種と制服が入り混じっている。
 はてさて自分の行き先はと端末からマップを呼び出して、枝分かれした中から割り当てられた海兵隊員のブースへの直通出口へ向かう。

55ふっくん【ECO】:2012/07/29(日) 05:32:14 ID:qufk6IEY0
TRPG


【ドアの向こうには廊下が続いていた。ドアが3つあり、右側の一つは封鎖され、奥のドアと左手前の曲がり角の先のドアはなんともない。廊下には花瓶の棚があり、棚の前には白骨化死体がある】

フロスト
「ここは廊下ですか?」
/フロストの目星、50%
/出目69なので失敗し何も見つからない

アイル
「っひ!」
(白骨死体を見て息を飲む
/アイルのナビゲート、26%
/出目は53で失敗

フロスト
「死後数年ですね……どちらの道にいきますか?」
/白骨化死体を調べるも、何も見つからない

アイル
「曲がり角のドアを…なんだか気になります」
/ナビゲーションに失敗しここの形状を把握できなかった

フロスト
「了解です」
/散弾銃を構えながら前進し、ドアの前に立つ
/聞き耳ロール60%
/出目36で成功

【フロストの耳には、屋内でうごめく何かの気配が聞き取れた。散弾銃を構えたままそっとドアを開ける】

アイル
(いつでも火球を投げられるように準備しながら後ろをついて行く
/隠れるロール30%。出目は52で失敗

フロスト
「離れないでください」
/忍び歩き50%。成功すれば奇襲
/出目は77で失敗

アイル
「分かりました」
(後ろについてそっと歩く

【部屋の中には、校舎で遭遇した魚人とは違う、給仕服姿の女が立っていた。しかしその服は赤黒く煤け、顔は見にくく焼けただれている】

メイドゾンビ
「うぅぅあああああ………」
/メイドゾンビの攻撃。60で判定
/出目は53なので成功

【メイドゾンビがフロストへ飛びかかる】

フロスト
「っぅ!」
/命中によりHP30-5の殴りダメージ
/HP残り25

【廊下は細く、背後にアイルがいるため逃げることもかなわず、メイドゾンビの拳がフロストの頬を殴りつけた】

アイル
「きゃあ!なにこれなにこれなにこれ!……シェパードさん!危ないっ!」
(突然の事に混乱している

フロスト
「……よくも」
(血の垂れる頬を拭う

アイル
シェパードさん!
(悲鳴に近い声

/フロストの反撃散弾銃
/ライフル技能80で判定
/出目15なので成功

【ベネリM4散弾銃を構え直し、メイドゾンビへと重厚を向ける。そのまま引き金を引き、メイドゾンビの胸へと散弾を飛び込ませる】

/メイドゾンビに15ダメージ
/メイドゾンビHP残り5

【メイドゾンビの胸が弾け、その姿がのけぞる】
【フロストは弾切れに】

アイル
「っは!援護します!ファイヤーボールっ!」

/攻撃ロール。火球の投擲45%
/出目は37なので成功
/メイドゾンビへ5ダメージ

【アイルが投げた火球はメイドゾンビの胸へと飛び込み、その傷口を爆散させる】

56ふっくん【ECO】:2012/07/29(日) 05:32:45 ID:qufk6IEY0

メイドゾンビ
「…………ぐかっ」

【仰け反り、その赤く汚れた体が地面へと倒れこんだ。2、3度痙攣し、やがて力尽きたようだ】

フロスト
「やりましたね」

【頬から流れる血をぬぐって、メイドゾンビの死体を爪先でつつく】

アイル
「やりました…けどシェパードさん大丈夫ですか?これからもこんな奴らが出てくるんでしょうか……」
/アイルのナビゲート26%でこの部屋の形状把握
/出目は20なので成功

【部屋は普通の居間のようで、暖炉とソファ、テーブルが並んでいる】
【アイルには、暖炉の上の壁の部分に奇妙な引き出し状の棚が隠される様に存在していることにがわかった】

フロスト
「まだまだいろいろいるでしょう……ここはモンスターハウスですか……」
/散弾銃に再送点
/ベネリM4残弾8/8 予備散弾4

アイル
「…ぞっとしませんね。あれ、ちょっと待ってください、ここの所何か……」

【暖炉の鵜上の変な棚を見つける。引き出しを開けると中には銃弾が入っていた】

アイル
「シェパードさん、これ、この拳銃に使えますか?」

フロスト
「これですか? 38Splですね……使えますよ」

【アイルが見つけたのは38口径Special弾。回転式拳銃のM36に使える弾薬で、10発分見つかった】

フロスト
「アイルさんが持っていてください」
/応急手当60%ロール
/出目が90なので失敗

アイル
「わかりました。傷、大丈夫ですか?」

【アイルは銃弾をポケットにしまう。そしてフロストの頬へと手当を始めた】

/応急手当50%
/出目が13で成功し、HPが5回復
/フロストの残り体力は30

フロスト
「まあなんとか……ありがとうございます、アイルさん」

アイル
「いえ、これくらいしかできませんが…」
【アイルがはポケットに入っていたポーチから絆創膏を取り出すとシェパードの傷の上に貼る】
【他に何かないだろうかとフロストが部屋を見回した時、部屋の外の廊下の先から、長い苦悶の悲鳴が轟いた】

フロスト
「っ!? 悲鳴?」

アイル
「えっ!人の気配なんていなかったはずなのに!!」

【フロストは立ち上がり、残弾少ない散弾銃を構えてドアの向こうへ目を向ける】

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ

【間延びした悲鳴が掠れ、やがて消えると、また館に静寂が戻った】

フロスト
「奥のドアの向こうからかもしれません。廊下を調べてからにしますか? あるいはそのままいきますか?」

アイル
「そのまま行きます。進まなきゃ、いけない気がしますから」

【拳をギュッと握り決意したように言う】

「それに、何かあったなら気になります。さっきの廊下には人の気配がなかったですし」

フロスト
「わかりました」

【ドアをそっとあけて部屋を出る。曲がり角の先にも人影はなく、気配もない。封鎖されたドアもそのままだ】


アイル
「あれ?何もない……じゃあ今さっきのは?」

【何もない様子に首を傾げる。フロストは静まり返った廊下を見回し、奥のドアを示した】

フロスト
「あの向こうでしよう。何かいるかもしれません」

/聞き耳ロール50%
/出目は05でクリティカル

【扉の向こうから重々しい金属を引きずる音と、肉を断絶する生々しい異音が聞こえてきた】

フロスト
「…………とんでもない何かがいます……アイルさん、気をつけてください」

アイル
「なん…血の…臭い?
分かりました……」
/隠れるロール30%
/出目が73で失敗

【アイルはゴクリと唾を飲み込み、ゆっくりと頷くとシェパードについて行く】
【フロストはそっとドアをあけ、その向こうを覗き込んだ。生臭い臭気が漂い、ドアの向こうの薄闇から金属音が響いてくる】
【廊下がT字に交わった、その突き当たりの通路を、黒装束の巨人が横切った】

フロスト
「………………」
/忍び足ロール50
/56で失敗

【闇の中でもはっきり目視できるほど赤黒い染まった鎌を引きずり、黒装束の巨人が足音を響かせて歩む。フロストが思わず息を呑んだ瞬間、ローブ状の黒衣に隠れた彼の顔が、紅い双眼をのぞかせこちらへ向けられる】

アイル
「なに…何が見えるんですか…?」

【不安そうに小声で聞く、シェパードの後ろからドアの隙間を覗きこんで声を失った】
【鎌を持った処刑人が、ひたと二人を見つめていた。骸骨を模ったらしい鉄仮面の向こうの紅い目が爛々と薄闇の中で煌き、加速する心拍と息遣いの音の身が聞こえる】

フロスト
「……っ……………」

57ふっくん【ECO】:2012/07/29(日) 05:33:47 ID:qufk6IEY0

【どれほどたっただろうか。処刑人は前に向き直り、そのままゆっくりと姿を消した】

フロスト
「たす……かった?」

【今にも叫びだしたい恐怖、しかしそんな感情に鞭打ってアイルは息をひそめる】
【怖い怖い怖い怖い……指の一つでも動かそうならすぐに殺されてしまいそうな……】
【処刑人が消えたのを確認してから、ゆっくりと床にへたり込む。恐怖に耐えて涙目だ】

アイル
「〜〜〜っ!」

フロスト
「大丈夫ですか、アイルさん?」

【ドアをそっと閉じて、震えているアイルを撫でる。そうする自分の手が震えている事を、フロストはしっていた】

アイル
「正直、大丈夫じゃないです……」

【がちがちと歯の根が合わない。今だけは素直に恐怖に慄いていることを認め伝える。撫でてくれる手を取りギュッと握る】

アイル
「……こわ、かった……」

フロスト
「僕もです。殺されるかと」

【手を握り返し、もう一度ドアを静かに開ける。生臭いだけで、もう気配はない】

フロスト
「危ないかもしれませんが、調べて見ますか?」

アイル
「よかった…シェパードさんも怖かったんですね」

【深呼吸をする、生臭い空気が肺に流れ込むものの気にしない】

アイル
「行きます…何か、あるかもしれないしあいつが何をやっていたのか…確認しなきゃ」

フロスト
「わかりました。先行します」

【T字の廊下を奥へと突き進み、そして処刑人が消えた方向を見やる。血の筋が続いた先にはドアがあり、血はそこへ消えていた】
【反対側のドアをみると、ドア下の隙間から血溜まりが溢れ出している】

フロスト
「あれです」

【シェパードに借りたハンカチで口元を押さえる、ハンカチ越しにもむせ返るような臭気が漂っている】

アイル
「……なんて、ことを……さっきの悲鳴の主でしょうか?見に…行きますか?」

フロスト
「見るしかないでしょう」

【警戒しながらフロストがドアを開ける。と、階段へとつながる広めの部屋のドアの前に、縦に裂かれたメイドゾンビが転がっていた】

アイル
「うう………あれ、でもこれ仲間割れってやつですか?」

【ハンカチをきつく口元に押さえ、涙目になりながらも気付いたことを言う。フロストはしゃがみこんで死体を眺め、やや考え込んだあと口を開いた】

フロスト
「はなから仲間ではないかもしれません。元々怪異世界では種族間で殺しあうのも見かけますから」

【死体がある部屋の奥には階段があり、2階へと続いている。それ以外にはなにもないようだ】

フロスト
「どうします? 階段の向こうにいくか、封鎖ドアを見にいくか」

アイル
「そう、なんですか…色々あるんですね、怪異世界」

【嫌そうにメイドゾンビの死体を見る。血溜まりに沈むその体からは臓物がこぼれていた】

「封鎖ドア、見に行きます。叫び声が気になりますし、こっちには何もないから……」

58ふっくん【ECO】:2012/07/29(日) 05:34:18 ID:qufk6IEY0
フロスト
「わかりました」

【きた道を戻って、封鎖されたドアの前に立つ。よく見て見ると、ネジで木の板が止めてあるだけだ】

フロスト
「ドライバーでなんとかできないでしょうか」

アイル
「あ、ドライバーですね。今はずします!」
【先ほど手に入れていたドライバーを使ってねじを外していくほどなくして木の板が外れる】

アイル
「シェパードさん!開きそうですよ、この扉!」

【フロストがドアを開けようとすると、何かが突っかかってあかない。しかしそれほど強く固定されている様子も無いので、強引に蹴り開けた】

フロスト
「ここは……?」

【部屋には埃を被ったベッドがあり、デスクがあり、そして本棚とサイドテーブルがある】

「寝室……、みたいですね?この館の主のもの…にしては小さいか」

【ぐるりと部屋中を見まわし、推理を語る】

アイル
「サイドテーブル…何かあるかな?」

/アイルのナビゲートロール26%
/室内の形状を把握。45が出たので失敗

フロスト
「仮眠室かな? でもベッドが一つか……」

【デスクに近づき中を覗くと、錆び付いて使えそうにない拳銃と、その38口径Special弾5発、そして筒状の小さなレーザーポインタと固定金具が見つかった】

フロスト
「アイルさん、M36貸してください」

アイル
「へ?あ、はい分かりました!」

【一瞬何のことか理解が遅れたものの、直ぐに反対側のポケットからM36を取り出すとフロストに渡す。それをうけとり、フロストは手早くレーザーポインタをバレルの下に取り付けた】

フロスト
「どうかなっと」

【電源を入れると、レーザーポインタの光点が壁に浮かび上がる。ひとしきり確認を終え、それをアイルに返却する】

フロスト
「どうぞ」

/レーザーポインタにより、拳銃技能に15%のポイント追加

アイル
「これ、照準を合わせやすくするやつですか?わ、ありがとうございます!」

フロスト
「これで幾分狙いやすくなるかと思います。でも下手に使うと敵に気付かれるので気をつけて下さいね」

アイル
「はい、使いどころが重要ってやつですね。ありがとうございます」

フロスト
「さて、どうします? 建物右翼側にいきますか? それとも2階へ?」

【部屋から出て、曲がり角を示す。片や未探索の右翼側、片や階段へ通じる通路で、どちらも危険性は未知数だ】

アイル
「……一階にはさっきの処刑人がいるかもしれないし、2階に行きます」

【先ほどの光景を思い出してぶるりと震える。フロストは頷き、メイドゾンビの死体がある道を通って階段へ。アイルはメイドゾンビを見ないようにしながら後に続く】

/聞き耳ロール50%
/出目は12で成功

【2階のどこからか足音や呻きのようなものが聞こえたが、それなりに距離があるらしくほぼ無音状態。階段を登り切ると、階段を中心としたコの字廊下になっていた。通路は薄暗く、ものがよくみえない】

フロスト
「ここには何もいないようですね」

アイル
「そうですね……取りあえず、どこかに探索に入りますか?」

フロスト
「手前にドアが一つ……でも施錠されてますね」

【巨大な南京錠で閉じられたドアの前に立つ。鍵は手のひら程度の大きさで、本体に骸骨が彫られている】

フロスト
「開きません、鍵を探すしかないとおもいます」

59ふっくん【ECO】:2012/07/29(日) 05:34:37 ID:qufk6IEY0
アイル
「なにやら物々しい扉ですね……仕方ありません、鍵を探しましょう。開かないのなら開けるまでです!」

フロスト
「了解です。じゃあ奥を見てきましょうか」

アイル
「はい、行きましょう」

【気休めに弾の入っていないM36 を構えながらついて行く】
【奥へと足を向ける。暗い廊下に足音が吸い込まれた。廊下の窓からは外が見える】

/目星ロール50%
/37なので成功

【窓の外へ目を向けると、館へ近づいてくる半魚人の群れが見えた。数は5、6程で、一列になって向かってくる】

フロスト
「アイルさん、M36の残弾は確認しましたか?」

アイル
「え?確か…15発です!これをここに入れればいいんですか?」

【リボルバー式の銃に戸惑いながらも銃弾を詰めようとする。その装填を手伝いながら、フロストは建物へ入り込む半魚人たちを見やった】

フロスト
「ここのラッチを押してスイングするとシリンダーが開放されます。M36は小型化の為にシリンダーを小さくしたので、5発しか入りません。撃ち切ったらシリンダーを開放して、ロッドを押して薬莢を捨てて下さい」

アイル
「?…??は、はい!」
【口早に説明され一瞬混乱するものの動作で理解、こくこくと頷いて了承するとレーザーポインタの電源を確認する。フロストも自分の腰のM39拳銃を抜いて、8発の装填を確かめた】

(フロスト装備)
/ベネリM4 装填数8/8 予備4発
/S&W M39 装填数8/8 予備16発
(アイル装備)
/S&W M36 装填数5/5 予備10発

フロスト
「じゃあ、奥のドアを開けます。敵がいたら、気付かれていない場合を除いて撃って下さい」

アイル
「分かりました!」

【ゴクリと唾を飲み込んで頷く、M36を構えドアが開かれるのを待つ、緊張が体を走る。フロストがドアをそっと開くと、ガランとした図書室のような部屋が広がっていた】

フロスト
「警戒は解かないで下さい」

【並んだ書架の間一つ一つを確認し、敵影の有無を精査し、何もないことを確かめてから銃口を下ろす】

60<少し、頭冷やそうか…>:<少し、頭冷やそうか…>
<少し、頭冷やそうか…>

64モブ【三等兵】《名無し》:2014/03/17(月) 00:54:51 ID:VXxJT5Vo0
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