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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3.5

990akiyakan:2014/01/07(火) 21:05:46

 そう言って笑うレリックの表情は、諦めているようにも見えて、しかし確固とした意志を感じさせた。
 全く、身内にすら容赦が無いヒトだ、とミツは心の中でため息をついた。これから彼女が行おうとしている事は、決して楽な事ではない。誰にでも出来る事ではなく、それこそ彼女にしか出来ない事だ。だが、だからと言って彼女がやらなければいけない道理は無い。
 もっとも、きっと、自分が彼女と同じ立場だったとしても、同じ選択をしただろう。

「……ありがとう、ミツ。話聞いてもらったら、ちょっとだけ怖いの無くなった」
「そうですか。それは良かった」
「うん……ミツはこれから、どうするの?」
「また旅に出ますよ……まだ見てないモノがたくさんありますからね」
「そっか……」
「貴女が迷惑じゃないなら、私も一緒したいんですけど」
「……え?」

 レリックの驚いた顔を見て、ミツは悪戯っぽく微笑を浮かべた。自分の生みの親がこう言う芝居がかった真似を好むのが何故なのか。これ以上無いくらいに分かった。

「え……え??」
「貴女まさか、私がこんな世間話する為だけにわざわざここに来たと思ってたんですか?」
「……ついて来て、くれるの?」
「妹を放っておける訳ないじゃないですか。一応私、貴女の兄妹なんですよ?」

 じわ、と青い瞳が涙で滲んだ。目元を拭いながら、レリックは微笑う。その顔に、曇りはもうなかった。

「バカね、ミツったら。女の子を口説くなんて、まるでアッシュみたいよ?」
「別に口説くつもりは無かったんですけどねぇ……」

 ポリポリと照れ臭そうにミツは頭を掻く。実際、こそばかゆい。だが、決して悪い気分でもなかった。



   ――・――・――



 明け方、それは起きた。
 異変に気付いたのは、『大樹』にもっとも近い場所で暮らしているホームレスだった。
 まるで地震でも起きたかのような大きな揺れに、彼らは自分達が住処にしている廃墟から飛び出した。まだ放置されて半年程度であるが、それでも老朽化は進んでいる。潰されてはたまらないと、断続的に続く揺れの中で彼らは廃墟から次々に這い出てくる。
 丁度夜が明け、太陽が昇ってくるところだった。地平線から上る朝日がそれを照らし、彼らはその光景を目にした。
 『大樹』から、翼が生えていた。
 形が変化していた。一直線に天に向かって聳える柱のようだったそれは、途中から巨大な二対の翼を生やしていた。大きな一対と、その後ろから補助翼の様な一対が生えている。
 『大樹』の頭頂部の形も変わっていた。楕円形に膨れ、まるで目の様にいくつかの青い光球が出現している。
 それはもはや『樹』と言うよりも、羽根を持つ『虫』か、或いは『竜』のような姿だった。



 ――・――・――

991akiyakan:2014/01/07(火) 21:06:26
『ミツ、準備は良い?』
「ええ。私は大丈夫ですよ」

 『大樹』の先端部分に出現した眼の一つに、ミツはいた。身体の半分が『大樹』と同化しており、無数の根が身体に巻き付いている。
 レリックの姿は無い。だが、その声はまるでスピーカーから聞こえて来るかのように、「彼」のいる場所に反響していた。

「なかなか見栄え良く変形しましたが、これ、ちゃんと飛べるんでしょうね?」
『失礼な。この半年間、わざわざマントルまで身体を伸ばして熱エネルギーを集めたんだよ? 飛べる筈だよ……多分』
「多分っていいましたよね、今?」
『あーもう! カウントダウン開始するよー!!』

 了解しました、と返し、堪えきれずにミツは笑みを零した。
 幼い頃のレリックを思い浮かべ、その変化に感慨深さを感じる。

「本当に……立派になりましたね、レリック」
『え? 何か言った?』
「いいえ……しかし、見送りが戦闘機二機だけと言うのは、ちょっと寂しいですね」

 そう呟くミツの視界に、先程から旋回を続ける戦闘機が映った。『大樹』を取り囲むように、ずっとその周囲を飛び続けている。

『……まぁ、ぐーもアッシュも、みんな忙しいだろうし』

 そう言うレリックであるが、その声には少なからず落胆の色が含まれていた。
 これが今生の別れになるかもしれないのだ。付いて来て欲しいとまでは言わない。だがせめて。せめて見送りに位は来て欲しいと思った。

『……行くよ!』

 未練を断ち切るように、レリックの声が力強く響いた。次の瞬間、強烈なGが、ミツに襲い掛かって来る。

「ぐ――ぬ」

 吸い上げた熱エネルギーを根の部分から噴射し、『大樹』の身体を押し上げた。
 ミツとて並の人間ではないが、それでもその加重は強烈だった。実際、全長300メートル以上もある巨大な構造物が、地球の重力に逆らって飛び立とうとしているのだ。その為に必要なエネルギーは尋常ではない。ミツだから耐えられているようなものであり、専用の訓練を受けた宇宙飛行士や高速機のパイロットでも、これでは十秒と持たない。

「ぐぅ……っ!!」

 少しずつ、『大樹』全体が浮かび上がっていくのが分かる。目の前の景色が、少しずつ下にズレていく。
 地球の風景を見るのは、これで最後になるだろう。そう思い、ミツは視線を地上の方へと移した。重力から逃れようと、『大樹』はどんどんそこから離れていく。

「あ――」

 その時、ミツは思わず目を見張った。

992akiyakan:2014/01/07(火) 21:13:13
「レリック、あれを!」
『え……――あっ!』

 常人であれば、それには絶対気付けなかった。しかし彼女達は人間ではない。その視線の先に、「彼ら」はいた。

 学生服姿の青年が、こちらに向かって手を振っていた。
 剣歯虎を模した仮面を装着した男性が、飛び立つ彼女達を見つめていた。

 そして、

 亜麻色の長い髪を持つ女性が、レリック達に笑いかけていた。
 彼女と最も一番近くにいたヒト。機械仕掛けの身体でありながら、人間以上に人間らしく彼女と接し、母親のように振る舞ってくれたヒトが。
 銀色の髪を持つ男性が、その傍らに立っていた。
 いつも薄ら笑いを浮かべ、この世のすべてに対して斜に構えた態度を取っていたその人物は、今は傍らに立つ女性と同じ「親」の顔で彼女達を見送っていた。レリックとミツ。二人をこの世に生み出した、彼女達にとって正真正銘の父親が、そこにいた。

 ある者は小高い丘の上から。
 ある者はビルの屋上から。
 しかし皆一様に、自分達を見送るように顔を上げていた。
 それらが見えたのはほんの一瞬だった。『大樹』を押し上げる力は、あっと言う間に彼らでも視認できない距離まで引き離してしまう。
 それでも、ミツも、レリックも、全員を見逃さなかった。まるで時が止まったかのように、彼らを確認した瞬間だけ、時間の流れが無くなったかのように感じられた。

『みんな……』
「……行きましょう、レリック。私達にしか出来ない事をしに」
『――うんっ!』

 間もなく『大樹』は地球の重力圏を離れ、宇宙へと飛び出して行く。まだ見ぬ宇宙へ、彼らは羽ばたいて行く。

 ――行ってきます

 それに返ってくる言葉はある筈ない。それでも二人は確かに、

 ――行ってらっしゃい

 自分達を見送ってくれた者達の声が、背中を押してくれるのを感じていた。


≪another line≫

993akiyakan:2014/01/07(火) 21:38:40
補足。《another line》そのタイトル通り、本筋とは異なった世界線の話です。

994akiyakan:2014/01/08(水) 13:15:25
《another line》の補足内容です。http://1st.geocities.jp/h_p_l_0209/SSpool/public_htmlsspool/tennimukatte_hosoku.html

995えて子:2014/01/15(水) 10:05:53
おしょうがつが、終わったの。

たくさんかざってたおかざりも、緑色のとげとげも、みんな片付けられちゃった。
「どうしてかたづけるの」って聞いたら、「お仕事が終わったから片付けるの」って言われた。
おかざりも、お仕事してたんだね。

「コオリー、コオリー」
「こんぺいとうのおねえちゃん」
「コオリ、お正月におとしだま、もらった?」
「もらったのよ。おねえちゃんも、もらったの?」

お正月に、大人の人から「おとしだま」もらったの。
大人の人がこどもにあげるんだって。

「あのね。アオ、おとしだまで気になることがあるの」
「おねえちゃんもあるの?コオリもあるのよ」
「いっしょのことかな」
「わからないのよ」

二人で、うーん、ってなっちゃった。

「コオリのおとしだま、見せてほしいのよ」
「うん。おねえちゃんのも、みたいのよ」
「じゃあ、せーの、で見せよう」
「うん」

「「せーの」」

せーので出したおとしだま。
アオのもコオリのも四角だったの。

「…まるくないね」
「まるくないね」
「中に入ってるおかねは、まるいよ」
「うん、まるいのよ」
「でも、たまじゃないの」
「たまじゃないのよ」

四角いふくろにまるいおかねなの。
でも、たまじゃない。
へんなの。

「まあるいおとしだまも、あるのかな」
「きっとあるのよ」
「探してみよう」
「そうしよう」

二人で、まあるいおとしだま、探すの。
見つかるといいな。


白い二人とおとしだま〜まあるいおとしだまを探して〜


「最初はどうしよう」
「だれかにきくといいのよ」
「聞いてみよう」

996思兼:2014/01/27(月) 15:40:04

白い二人のおべんきょう〜おばけさん探すの巻〜より続きです。

【流星ガーディアン】

第14話、心配性な話


サイボーグの少女、アリスは道路を漆黒のバイクで走っていた。

『スキャンパー』というニックネームをつけられたフルカウルの排気量400ccのそれは加速力と旋回性を重点にカスタマイズされており、そのニックネーム(跳ね回る、の意)の通り非常に小回りの利く仕様になっている。

アリスはこれを日常の足として使っている。

フルフェイスヘルメットからは濃蒼の長い髪が靡き、日の光を浴びてキラキラと光っている。

今日は身体のフルメンテナスをする為に朝から団の仲間である『高橋 直子』博士の下に行っており、自宅ではできない部分のメンテナンスを行ってもらっていたのだ。

人間の身体とは根本的に構造が異なる身体になってしまったアリスは、疲れを感じず極限状況でも行動でき人間を遥かに凌駕する身体能力と演算能力を備えるが、その代わりに定期的に消耗パーツの交換や各部位の調整などを必要とする。

現行科学技術から遥かに逸脱したオーバースペックの塊のアリスを何故博士がメンテナンスでき、パーツを(オーダーメイドとはいえ)製作できるのかは不明だが、ともあれアリスはメンテナンスを博士に頼っている。
それが今、ちょうど終わったところだった。



「あれは…?」

遥か遠く、走りながら人を遥かに超えた視力で捉えたのは、コオリとアオギリの二人だった。

小さい子供が二人だけで居るのを訝しんだアリスは、脳内に組み込まれたメモリーチップ

997思兼:2014/01/27(月) 15:40:35
にアクセスし、静葉の言っていた言葉を検索する。

『いいかアリス、子供を見た時近くに保護者が見えなければ、できるだけ家に送り届けてやれ。いかせのごれはそこまで治安の良い街じゃない。どんな組織がどんなふうに暗躍してるかわからんからな。アリスは見た目は少女だから不審者扱いはされないだろう。』

その言葉に従い、アリスは減速し二人の前で停車する。
そこは、場所的にはアリスの自宅からほとんど離れていない場所だった。

「小さい子二人でどうしたの?」
「おねーさんだぁれ?」
「僕の名前はアリス、いかせのごれ高校の2年だ…それで、お母さんやお父さんは?子供が二人だけで出歩くのは危ない。」

アリスはヘルメットを脱ぎスキャンパーから降り、小さな二人の前でしゃがむ。
アリスは女性にしては身長が高い為、威圧感を与えないようにだ。

「おばけさんをさがしにいくのー!」
「おばけさん?」

アオギリが言う。
表情が乏しいアリスがそのまま小首を傾げるのはシュールな光景だが、これは本当に真意を測りかねる。

「しんぶんにのってたの!」
「…そう。」

そこまで聞いて、合点がいく。
新聞の心霊特集か何かを見てこの子供たちは興味を持ってしまったのだろう。
それで、その『おばけ』を探している。

「でも、子供だけじゃ危ない。」
「えー?アオ、おばけさんにあいたい!」
「・・・」

どうしても探したい様子のアオギリとコオリを見て、アリスは表情こそ変化しないが内心

998思兼:2014/01/27(月) 15:42:52
ではかなり困っていた。
こういう事態にアリスは弱いのだ。

「…わかった、僕が一緒に行ってあげる。それで満足したら、家に帰ろう?」
「うん!」

結局、付き合うことにしてしまった。
そのうち飽きるだろうと言う推測もある。


二人に最強の保護者が付いた瞬間である。



<To be continued>

ヒトリメさんから「コオリ」、えて子さんから「アオギリ」をお借りしました。
こちらからは「アリス」です。

999しらにゅい:2014/01/27(月) 22:08:38
次スレを立てますのでこれ以降のレスはお控えくださいー!


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