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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3.5
987
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:04:06
「兄さんも知ってるだろ? ……知らない訳が無いよなぁ。あれは大事件だった。日本だけじゃなくて、世界で取り上げられた。あれを知らない奴は誰もいない」
それは、半年前の出来事だった。
突如、東京タワーを呑み込み、それを侵食する形で巨大な『大樹』が出現した。無骨な赤い鉄骨で出来た日本の首都のシンボルはもはや存在せず、代わりに同じ高さの植物が存在している。
『大樹』が、ただそこに立っているだけであれば、おそらくは新しい東京の観光地として受け入れられたであろう。だが男性が言うように、『大樹』は人喰いだった。
『大樹』が出現したその日から、日本各地で行方不明になる者が後を絶たなくなった。『大樹』は、一種のテレパシーの様なものを発して人間を呼び寄せ、それを捕食していた。あたかも、食虫植物が獲物をフェロモンによって引き寄せるかのように。
『大樹』を倒す為、自衛隊は元より、米軍による攻撃も行われたが、すべて失敗に終わった。百を超える戦車の砲撃も、空を埋め尽くす程の爆撃機による攻撃も、すべて『大樹』には通用しなかった。
世界はこの怪物を排除する事が出来ず、どうする事も出来ず、その半径数キロ圏内を立ち入り禁止にし、誰も近付けないようにする事しか出来ないのだった。結果として、かつての東京都港区周辺は見る影もなく荒れ果て、巨大な廃墟街と化している。
「あの樹を目指してくる奴らはみんな、目が虚ろで様子がおかしいんだが……兄さんはしっかりしてるみたいだな。だったら尚更よしときな。自分からあの樹の栄養になりにいくなんて、馬鹿げてる」
そう言って、男性は肩を竦めた。
「彼」は、ずっと前方にある『大樹』の方を見つめる。まだ距離はあるのに、その巨大さがその場所からでもよく分かった。
彼はしばらくそれを見つめた後――『大樹』に向けて足を踏み出した。
「俺は止めたからな、兄ちゃん」
背後から、男性の声が聞こえる。それに「ええ」と「彼」は返す。
「忠告は受け取りました。ですが私は、あそこへ行かなければいけません」
「彼」は振り返って、男性の方を向いた。その眼差しには、確固とした意思がある。
「あそこには、私の兄妹がいるのです」
――・――・――
――歌が聞こえる。
透き通った、少女の歌声が、廃墟の町に響き渡る。
半年間放置された都市はすっかり荒れきっていた。建物や地面は歪み、亀裂が走り、そうして出来た隙間から雑草が茂っている。普通、半年ではこうはならない。『大樹』の伸ばした根がコンクリートの地面を突き破り、ビルを折り曲げ、歪ませてしまった結果だ。
天を突く神樹。遺跡化した都市。そこに響き渡る少女の歌声。
まるで北欧神話の一ページのようだと、「彼」は思った。
988
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:04:40
『大樹』に近付くにつれて、風景はビル街から森のように変化していった。
放射状に伸びた巨大な根が、まるで積み木を崩すように建物をなぎ倒している。そこから木が生え、『大樹』の周囲を覆っていた。森の中は、綿胞子のようなものが淡い光を放ちながら浮かんでおり、それのおかげで全く暗くない。『大樹』の影響なのだろうか、木々は八メートルを超えるものばかりであり、明らかに異常な成長速度だ。たった半年で、都市が森林地帯へと変貌している。
不意に開けた場所に出て、そこで「彼」は足を止めた。
鬱蒼と茂る森の中で、その場所はぽっかりと開けていた。そこには崩れたビルがあり、森の中から突き出た形で存在する。
そのビル。崩れてビルの角が頂点となった瓦礫の上に、一人の少女が座っていた。
年の頃、十六歳から十八歳くらいだろうか。薄い緑色の、長い髪の毛を持つ少女だ。どこかの学校のものだろうか、制服を身にまとっている。
少女は目を瞑り、その透き通った声で歌っていた。決して大きな声と言う訳でもないのに、その歌声は遥か遠くまで流れていく。
不覚にも、その光景に「彼」は見惚れていた。美しいと、思っていた。
少女が歌うのを止めた。「彼」の存在に気付き、そこへ視線を向ける。青色の双眸が自分を見つめているのを、「彼」は感じる。
「久し振り、ミツ」
柔らかな笑みを浮かべながら、少女が言う。かつて見た時はまだ年端もいかない幼子で、その微笑みにはその面影が残っている。あぁ、やはり彼女なんだと「彼」、ミツは思った。
「ええ。お久し振りです。レリック」
――・――・――
「ミツは今まで、どこにいたの?」
瓦礫の上に、二人で並ぶようにして座る。レリックは、興味深そうな眼差しでこちらを見つめてきており、その様子が微笑ましいようにミツは笑った。
「世界を……見ていました」
「世界を?」
「ええ。そうすれば、何か見えると思って……」
「何か……見つけられた?」
「色々……ですね」
ミツは、目の前に広がる森を見つめた。
「彼」はこれまで見て来たものを回想する。
南方の平和な国で、幸福に暮らす人々の姿を見た。
中東の内戦が絶えない国で、苦しみに喘ぐ人々の姿を見た。
平和であっても、豊かであっても、その中で熟成される人間の闇を見た。
荒廃していても、貧しくあっても、その中で輝き続ける人間の光を見た。
憎しみ合い、傷付け合う人間がいた。
信頼し合い、助け合う人間がいた。
醜くも美しい世界を、「彼」は見つめて来たのだった。
「そっか……旅をして、色んなものを見て来たんだね」
989
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:05:13
そう言うレリックの横顔は、ミツの知る幼い少女のものではなかった。大人びていて、見た目以上に成熟した立派な一人の女性のようだと「彼」は感じた。
「レリックも、旅に出るんですね?」
「うん、そうだよ。ちょっと、ミツより遠くて大変だけど」
苦笑を浮かべて、彼女は『大樹』を見上げた。
まだ距離はあるものの、そこからでも十分にその詳細を見る事が出来た。柱のように聳え立っているそれは太く、日本電波塔のシルエットを残しながら存在している。例えるなら、タワーが骨格であり、幹の部分がそれを肉付けするようにある。 よくよく見ると、『大樹』は普通の植物と違っていた。そもそもこんなに巨大になる植物自体無いのであるが、その樹皮は一見するとよくある木の幹のようで、しかし実際は動物の肉に似た構造物で構成されていた。道管や維管束に見えるモノは脈動し、何かしらの体液を全身に送り込んでいる。
「東京タワーを骨格にするとは考えましたね」
「うん。まぁ、タワーだけじゃ足りないから、余所から鉄骨も拝借したんだけど。軍隊の人達のせいであっちこっち折れたから、治すの大変だったんだよ?」
「まぁ、貴女が人喰いで、しかも大喰らいとくれば、当然の反応だと思いますよ?」
「む? レディに向かって大喰らいなんて失礼ね。ミツったら、旅先でデリカシーを忘れて来たんじゃないの」
「でも実際食べ過ぎですよ。日本全国で千人って言うのは、ちょっとやり過ぎじゃ」
「実際は一万人よ。日本では千人かもしれないけど、世界中に呼びかけたんだもの」
むぅ、と頬を膨らませる愛らしさに対して、言ってる事は物騒極まりない。一万、と言う数字に、ミツも思わず頬が引き攣るのが分かった。
「何だってそんなにたくさん……」
「だーかーらー、呼んだの。『私と一緒に新しい世界へ行きませんか?』って。どっかの悪質勧誘宇宙人みたいに内容ぼかしたりしないで、ちゃんとどう言う事をするのかご理解と同意をしていただいた上で来てもらってるんだよ? それなのに大喰らいだなんて……」
頬を膨らませながら、レリックはそっぽを向く。少しからかい過ぎたか、とミツは頭を掻いた。
「……一億人でも、足りないよ」
「え?」
「これから私、誰もいない世界に行くんだよ? 周りに知ってる人、誰もいないんだよ? ……何人集めたって足りないよ」
「……怖いのですか?」
「怖いよ……すっごく」
自分の身体を抱き締め、レリックは小さく震えていた。
「怖いなら、止めればいいじゃないですか」
「そうだね……実際、そうしようと思った。でもね、ぐーは怒ると思う。多分」
レリックは苦笑を浮かべた。きっと自分も同じような顔をしていただろうとミツは思った。
「『特異な才能を持つ者は、その者にしか出来ない事がある。凡夫に出来る事は誰にだって出来るのだ。その者にしか出来ない事は、その者がやるべきだ』……博士の口癖でしたね」
「うん……これは私にしか出来ない事だから……やらないとぐーに怒られちゃう」
990
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:05:46
そう言って笑うレリックの表情は、諦めているようにも見えて、しかし確固とした意志を感じさせた。
全く、身内にすら容赦が無いヒトだ、とミツは心の中でため息をついた。これから彼女が行おうとしている事は、決して楽な事ではない。誰にでも出来る事ではなく、それこそ彼女にしか出来ない事だ。だが、だからと言って彼女がやらなければいけない道理は無い。
もっとも、きっと、自分が彼女と同じ立場だったとしても、同じ選択をしただろう。
「……ありがとう、ミツ。話聞いてもらったら、ちょっとだけ怖いの無くなった」
「そうですか。それは良かった」
「うん……ミツはこれから、どうするの?」
「また旅に出ますよ……まだ見てないモノがたくさんありますからね」
「そっか……」
「貴女が迷惑じゃないなら、私も一緒したいんですけど」
「……え?」
レリックの驚いた顔を見て、ミツは悪戯っぽく微笑を浮かべた。自分の生みの親がこう言う芝居がかった真似を好むのが何故なのか。これ以上無いくらいに分かった。
「え……え??」
「貴女まさか、私がこんな世間話する為だけにわざわざここに来たと思ってたんですか?」
「……ついて来て、くれるの?」
「妹を放っておける訳ないじゃないですか。一応私、貴女の兄妹なんですよ?」
じわ、と青い瞳が涙で滲んだ。目元を拭いながら、レリックは微笑う。その顔に、曇りはもうなかった。
「バカね、ミツったら。女の子を口説くなんて、まるでアッシュみたいよ?」
「別に口説くつもりは無かったんですけどねぇ……」
ポリポリと照れ臭そうにミツは頭を掻く。実際、こそばかゆい。だが、決して悪い気分でもなかった。
――・――・――
明け方、それは起きた。
異変に気付いたのは、『大樹』にもっとも近い場所で暮らしているホームレスだった。
まるで地震でも起きたかのような大きな揺れに、彼らは自分達が住処にしている廃墟から飛び出した。まだ放置されて半年程度であるが、それでも老朽化は進んでいる。潰されてはたまらないと、断続的に続く揺れの中で彼らは廃墟から次々に這い出てくる。
丁度夜が明け、太陽が昇ってくるところだった。地平線から上る朝日がそれを照らし、彼らはその光景を目にした。
『大樹』から、翼が生えていた。
形が変化していた。一直線に天に向かって聳える柱のようだったそれは、途中から巨大な二対の翼を生やしていた。大きな一対と、その後ろから補助翼の様な一対が生えている。
『大樹』の頭頂部の形も変わっていた。楕円形に膨れ、まるで目の様にいくつかの青い光球が出現している。
それはもはや『樹』と言うよりも、羽根を持つ『虫』か、或いは『竜』のような姿だった。
――・――・――
991
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:06:26
『ミツ、準備は良い?』
「ええ。私は大丈夫ですよ」
『大樹』の先端部分に出現した眼の一つに、ミツはいた。身体の半分が『大樹』と同化しており、無数の根が身体に巻き付いている。
レリックの姿は無い。だが、その声はまるでスピーカーから聞こえて来るかのように、「彼」のいる場所に反響していた。
「なかなか見栄え良く変形しましたが、これ、ちゃんと飛べるんでしょうね?」
『失礼な。この半年間、わざわざマントルまで身体を伸ばして熱エネルギーを集めたんだよ? 飛べる筈だよ……多分』
「多分っていいましたよね、今?」
『あーもう! カウントダウン開始するよー!!』
了解しました、と返し、堪えきれずにミツは笑みを零した。
幼い頃のレリックを思い浮かべ、その変化に感慨深さを感じる。
「本当に……立派になりましたね、レリック」
『え? 何か言った?』
「いいえ……しかし、見送りが戦闘機二機だけと言うのは、ちょっと寂しいですね」
そう呟くミツの視界に、先程から旋回を続ける戦闘機が映った。『大樹』を取り囲むように、ずっとその周囲を飛び続けている。
『……まぁ、ぐーもアッシュも、みんな忙しいだろうし』
そう言うレリックであるが、その声には少なからず落胆の色が含まれていた。
これが今生の別れになるかもしれないのだ。付いて来て欲しいとまでは言わない。だがせめて。せめて見送りに位は来て欲しいと思った。
『……行くよ!』
未練を断ち切るように、レリックの声が力強く響いた。次の瞬間、強烈なGが、ミツに襲い掛かって来る。
「ぐ――ぬ」
吸い上げた熱エネルギーを根の部分から噴射し、『大樹』の身体を押し上げた。
ミツとて並の人間ではないが、それでもその加重は強烈だった。実際、全長300メートル以上もある巨大な構造物が、地球の重力に逆らって飛び立とうとしているのだ。その為に必要なエネルギーは尋常ではない。ミツだから耐えられているようなものであり、専用の訓練を受けた宇宙飛行士や高速機のパイロットでも、これでは十秒と持たない。
「ぐぅ……っ!!」
少しずつ、『大樹』全体が浮かび上がっていくのが分かる。目の前の景色が、少しずつ下にズレていく。
地球の風景を見るのは、これで最後になるだろう。そう思い、ミツは視線を地上の方へと移した。重力から逃れようと、『大樹』はどんどんそこから離れていく。
「あ――」
その時、ミツは思わず目を見張った。
992
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:13:13
「レリック、あれを!」
『え……――あっ!』
常人であれば、それには絶対気付けなかった。しかし彼女達は人間ではない。その視線の先に、「彼ら」はいた。
学生服姿の青年が、こちらに向かって手を振っていた。
剣歯虎を模した仮面を装着した男性が、飛び立つ彼女達を見つめていた。
そして、
亜麻色の長い髪を持つ女性が、レリック達に笑いかけていた。
彼女と最も一番近くにいたヒト。機械仕掛けの身体でありながら、人間以上に人間らしく彼女と接し、母親のように振る舞ってくれたヒトが。
銀色の髪を持つ男性が、その傍らに立っていた。
いつも薄ら笑いを浮かべ、この世のすべてに対して斜に構えた態度を取っていたその人物は、今は傍らに立つ女性と同じ「親」の顔で彼女達を見送っていた。レリックとミツ。二人をこの世に生み出した、彼女達にとって正真正銘の父親が、そこにいた。
ある者は小高い丘の上から。
ある者はビルの屋上から。
しかし皆一様に、自分達を見送るように顔を上げていた。
それらが見えたのはほんの一瞬だった。『大樹』を押し上げる力は、あっと言う間に彼らでも視認できない距離まで引き離してしまう。
それでも、ミツも、レリックも、全員を見逃さなかった。まるで時が止まったかのように、彼らを確認した瞬間だけ、時間の流れが無くなったかのように感じられた。
『みんな……』
「……行きましょう、レリック。私達にしか出来ない事をしに」
『――うんっ!』
間もなく『大樹』は地球の重力圏を離れ、宇宙へと飛び出して行く。まだ見ぬ宇宙へ、彼らは羽ばたいて行く。
――行ってきます
それに返ってくる言葉はある筈ない。それでも二人は確かに、
――行ってらっしゃい
自分達を見送ってくれた者達の声が、背中を押してくれるのを感じていた。
≪another line≫
993
:
akiyakan
:2014/01/07(火) 21:38:40
補足。《another line》そのタイトル通り、本筋とは異なった世界線の話です。
994
:
akiyakan
:2014/01/08(水) 13:15:25
《another line》の補足内容です。
http://1st.geocities.jp/h_p_l_0209/SSpool/public_htmlsspool/tennimukatte_hosoku.html
995
:
えて子
:2014/01/15(水) 10:05:53
おしょうがつが、終わったの。
たくさんかざってたおかざりも、緑色のとげとげも、みんな片付けられちゃった。
「どうしてかたづけるの」って聞いたら、「お仕事が終わったから片付けるの」って言われた。
おかざりも、お仕事してたんだね。
「コオリー、コオリー」
「こんぺいとうのおねえちゃん」
「コオリ、お正月におとしだま、もらった?」
「もらったのよ。おねえちゃんも、もらったの?」
お正月に、大人の人から「おとしだま」もらったの。
大人の人がこどもにあげるんだって。
「あのね。アオ、おとしだまで気になることがあるの」
「おねえちゃんもあるの?コオリもあるのよ」
「いっしょのことかな」
「わからないのよ」
二人で、うーん、ってなっちゃった。
「コオリのおとしだま、見せてほしいのよ」
「うん。おねえちゃんのも、みたいのよ」
「じゃあ、せーの、で見せよう」
「うん」
「「せーの」」
せーので出したおとしだま。
アオのもコオリのも四角だったの。
「…まるくないね」
「まるくないね」
「中に入ってるおかねは、まるいよ」
「うん、まるいのよ」
「でも、たまじゃないの」
「たまじゃないのよ」
四角いふくろにまるいおかねなの。
でも、たまじゃない。
へんなの。
「まあるいおとしだまも、あるのかな」
「きっとあるのよ」
「探してみよう」
「そうしよう」
二人で、まあるいおとしだま、探すの。
見つかるといいな。
白い二人とおとしだま〜まあるいおとしだまを探して〜
「最初はどうしよう」
「だれかにきくといいのよ」
「聞いてみよう」
996
:
思兼
:2014/01/27(月) 15:40:04
白い二人のおべんきょう〜おばけさん探すの巻〜より続きです。
【流星ガーディアン】
第14話、心配性な話
サイボーグの少女、アリスは道路を漆黒のバイクで走っていた。
『スキャンパー』というニックネームをつけられたフルカウルの排気量400ccのそれは加速力と旋回性を重点にカスタマイズされており、そのニックネーム(跳ね回る、の意)の通り非常に小回りの利く仕様になっている。
アリスはこれを日常の足として使っている。
フルフェイスヘルメットからは濃蒼の長い髪が靡き、日の光を浴びてキラキラと光っている。
今日は身体のフルメンテナスをする為に朝から団の仲間である『高橋 直子』博士の下に行っており、自宅ではできない部分のメンテナンスを行ってもらっていたのだ。
人間の身体とは根本的に構造が異なる身体になってしまったアリスは、疲れを感じず極限状況でも行動でき人間を遥かに凌駕する身体能力と演算能力を備えるが、その代わりに定期的に消耗パーツの交換や各部位の調整などを必要とする。
現行科学技術から遥かに逸脱したオーバースペックの塊のアリスを何故博士がメンテナンスでき、パーツを(オーダーメイドとはいえ)製作できるのかは不明だが、ともあれアリスはメンテナンスを博士に頼っている。
それが今、ちょうど終わったところだった。
「あれは…?」
遥か遠く、走りながら人を遥かに超えた視力で捉えたのは、コオリとアオギリの二人だった。
小さい子供が二人だけで居るのを訝しんだアリスは、脳内に組み込まれたメモリーチップ
997
:
思兼
:2014/01/27(月) 15:40:35
にアクセスし、静葉の言っていた言葉を検索する。
『いいかアリス、子供を見た時近くに保護者が見えなければ、できるだけ家に送り届けてやれ。いかせのごれはそこまで治安の良い街じゃない。どんな組織がどんなふうに暗躍してるかわからんからな。アリスは見た目は少女だから不審者扱いはされないだろう。』
その言葉に従い、アリスは減速し二人の前で停車する。
そこは、場所的にはアリスの自宅からほとんど離れていない場所だった。
「小さい子二人でどうしたの?」
「おねーさんだぁれ?」
「僕の名前はアリス、いかせのごれ高校の2年だ…それで、お母さんやお父さんは?子供が二人だけで出歩くのは危ない。」
アリスはヘルメットを脱ぎスキャンパーから降り、小さな二人の前でしゃがむ。
アリスは女性にしては身長が高い為、威圧感を与えないようにだ。
「おばけさんをさがしにいくのー!」
「おばけさん?」
アオギリが言う。
表情が乏しいアリスがそのまま小首を傾げるのはシュールな光景だが、これは本当に真意を測りかねる。
「しんぶんにのってたの!」
「…そう。」
そこまで聞いて、合点がいく。
新聞の心霊特集か何かを見てこの子供たちは興味を持ってしまったのだろう。
それで、その『おばけ』を探している。
「でも、子供だけじゃ危ない。」
「えー?アオ、おばけさんにあいたい!」
「・・・」
どうしても探したい様子のアオギリとコオリを見て、アリスは表情こそ変化しないが内心
998
:
思兼
:2014/01/27(月) 15:42:52
ではかなり困っていた。
こういう事態にアリスは弱いのだ。
「…わかった、僕が一緒に行ってあげる。それで満足したら、家に帰ろう?」
「うん!」
結局、付き合うことにしてしまった。
そのうち飽きるだろうと言う推測もある。
二人に最強の保護者が付いた瞬間である。
<To be continued>
ヒトリメさんから「コオリ」、えて子さんから「アオギリ」をお借りしました。
こちらからは「アリス」です。
999
:
しらにゅい
:2014/01/27(月) 22:08:38
次スレを立てますのでこれ以降のレスはお控えくださいー!
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