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( ^ω^)LIFE - omnibus -

162-7:2016/09/24(土) 08:24:35 ID:2fb2FhFw0
荒巻の指により、鍵盤の海に波が立つ。

/ ,' 3 『いくら速いパッセージでも、音は常に、置く。背骨から肩を通り、肘を通り、二の腕、手首、関節、そして指先を通って、置く』

鍵盤の溝が埋まり、一つの線として音が紡がれる。
細い線は、やがて膨らみをもってホールを覆う。

/ ,' 3 『フォルテは鍵盤の遥か下にある。それを掬う。押すのでは無く、掬う』

巨大な音のエネルギーが、広大な鍵盤の海からサルベージされる。

そして。
突如の空白。

/ ,' 3 『楽譜に書かれていない事は、実に多い。間《ま》も、その一つ』

フェルマータさえ想起される、非常に長い、間。
エネルギーが残響と共に宙に舞う。
意識が混濁した様な、しかし、明快になった様な。
鼓動ひとつ感じない。

ふいに、高音が、雨音の様に。
天から降りだす。

/ ,' 3 『p《ピアノ》とは、ただの、弱く、ではない。チェンバロを筆頭に、昔は強弱が付きにくい楽器が多かった。現代と同じp《ピアノ》と解釈するのは愚かであり、また、その楽器と同じ様に弾くのも愚かだ』

もし、この作曲家が生きていて、このピアノフォルテという楽器を知っていたなら。
現代に降り立ったドッペルゲンガーか、はたまた霊媒師か。

さもありなんと流れゆく音の河。

それはまさに、愛弟子に向けたレッスンであった。


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