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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下できる。
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ξ゚⊿゚)ξ「甘さ?」
雑貨屋Booon店内。
カウンターの中にブーン。
鑑定待ちをする人用に設置されている、
カウンター沿いの長椅子にツンが座っている。
( ^ω^)「そうだお。
『これだけやっておけば大丈夫だろう』って思っていたことが、
あの時あの三人が死にそうになったことで、
『今のままじゃダメなんだ』に変わったんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「あれって、あの三人の独断行動でしょ。
ショボンは止めていた内容なわけだから」
( ^ω^)「だお。でも、ショボンはそう思わなかったんだお。
『それを想定しなかった自分』を責めたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……ほんと馬鹿ね」
( ^ω^)「ギコとしぃをギルドにいれたのも、
そんな自分を忘れないため、
戒めるためってのもあったかもしれないおね」
ξ゚⊿゚)ξ「え、ちょっとそれって」
( ^ω^)「もちろん二人が優しい人間だったから。
っていうのが誘った一番の理由だお。
でも、あの二人ならVIPに入らなくても生きて行けたと思うから、
あの時すぐに入れなくても良かったと思うお」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」
( ^ω^)「まだ話すかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん。
あ、そうだ。
お茶入れるね」
.
-
( ^ω^)「お……?」
ツンがウインドウを操作してティーポットとカップを二つ取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ「この前アシュレイとコラボしてワンセット作った時に、
お客さんからもらったのよ。
誰でも淹れることのできる茶葉だって」
(;^ω^)「それはこの前飲まされた謎の実とは……」
ξ*゚⊿゚)ξ「ば、ばか、コカオの実とは関係ないわよ。
えっと、ここをタップして……」
誰でもお茶を淹れることのできる『トライアのティーポット』に、
水色の小さなたわしのような形をした茶葉を入れ、
ティーポットの蓋を二回タップするツン。
途端にティーポットの中がお湯で満たされ、
きっかり25秒後にさわやかな香りが漂った。
ξ゚⊿゚)ξ「よし、出来上がり」
そしてテーブルの上に三つのカップに注ぐ。
ξ゚⊿゚)ξ「ん?三つ?」
川 ゚ -゚)「私には淹れてくれないのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ってクー!いつの間に!」
ツンの隣に腰かけているクー。
川 ゚ -゚)「?ちゃんと声はかけたぞ?」
(;^ω^)「返事をしないなーとは思ったけど、
気付いていなかったとは」
川 ゚ -゚)「初めての手料理ごちそうだからな。
緊張して当然だ」
.
-
ξ*゚⊿゚)ξ「ば、な、なに言ってるのよ!
それに手料理は今迄にだって食べてもらってるし!
おにぎりとか、家庭科で作ったバウンドケーキとか!
だしまき玉子焼きとか!
ね、ブーン!」
(;^ω^)「おー。具がドンパッチのおにぎりとか、
噛めないくらい堅いケーキとか、
おもちゃの山車が一緒に焼かれた味のないスクランブルエッグの事かお?」
川 ゚ -゚)「訂正しよう。
『初めて美味しいと言ってもらえるかもしれない』手料理の披露だからな。
緊張して当然だ」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい!」
( ^Д^)「あの時?」
('A`)「ああ」
転移門広場までもう少しということころで立ち止まったプギャー。
ドクオはそのまま数歩進んだが、
自分以外は立ち止まったことに気付いて振り返った。
('A`)「……最初から話すか。
フサギコのバーボンハウスに行こう。
今日はフサギコはいないはずだし、
あそこならゆっくり話せる」
( ^ω^)「もともと『バーボンハウス』はシャキンのやってるお店ってことはしってるおね?」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「うん。聞いた」
川 ゚ -゚)「ああ。実際に行ったことは無いが」
ξ゚⊿゚)ξ「というか、お店の存在も知らなかった」
( ^ω^)「おっお。でもゲーマーの間では結構有名なんだお」
('A`)「スタッフにゲーマーがいたらしくて、
小規模な交流会とかやってたから」
| ^o^ |「一度行きたいと思っていました」
( ´ー`)「同じくだーよ」
爪'ー`)「おれはそっちも二回くらい参加した。
プギャーも一回あったよな」
( ^Д^)「ああ。一回だけ参加したことある」
('A`)「そっちはシャキンは出てないみたいだけど、
地域の大人のゲーマーにとっては静かに遊べるところだって
噂になっていたって話だ」
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
( ^ω^)「だからショボンは『バーボンハウス』にしたんだお。
『ホンジョー』でもなく、『マシロ』でもなく、
『バーボンハウス』に」
川 ゚ -゚)「地域のナーヴギアを買うくらいの大人でゲーム好きなら、
『バーボンハウス』という名に反応すると考えたわけだな」
( ^ω^)「だおだお」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「そして高校生から下くらいは『VIP』、
『ビップ』で反応するかもと」
川 ゚ -゚)「うちの学校は良くも悪くもそれなりに有名だからな」
( ^ω^)「いや、ギルド名は決める相談をしてる時に
『学校名でいいじゃない。メンドクサイ』って言ったからだおね。
二人が」
ξ゚⊿゚)ξ「あらそうだったかしら」
川 ゚ -゚)「覚えてないな」
(;^ω^)「(この二人、こういう時は更に息がぴったりだおね)」
爪'ー`)「それでも、病院の名前やマシロの方が人は寄ってきたんじゃないか?」
('A`)「……最初の頃は、そこまで人を集めるつもりは無かったから。
もともとは、シャキンがプギャーを見かけて、
探し始めてからだよ」
( ^Д^)「は?」
('A`)「お前を見かけたシャキンが、
お前を探し始めてから『NS』がすこしギクシャクしたんだ。
「後輩の弟が来てる!」って言って、それに集中しだして」
( ^Д^)「おれを……探して?」
('A`)「シャキンとショボンは一度見た人の顔は忘れない。
シャキンは今までの学校生活はもちろん、
店にやってきた客は全員覚えているらしい」
| ^o^ |「それは……」
.
-
('A`)「で、その事態を危険視したショボンが、
他にもいるかもしれない地域の人達を探そうって言いだした。
まああいつのことだから、早い段階で思ってはいただろうけど、
そのことを皆に言いだしたのはその時が始めてだ。
ギルドが出来て、仲間も増えて少し経った頃だな」
ξ゚⊿゚)ξ「兄者と弟者が入ったころよね。
バーボンハウスの屋台を引き始めたの」
川 ゚ -゚)「ああ。最初から『屋台』に拘っていたのを覚えてる」
( ^ω^)「食べ物を下に置くのは嫌だってショボンが言ったんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「……おぼっちゃまね」
川 ゚ -゚)「おぼっちゃまだな」
(;^ω^)「否定はしないお」
('A`)「この世界の人を探すのは、名前が分かるかよほどの特徴がないと難しい。
そこで『バーボンハウス』を餌にして、これに反応する人を探そうってことになったんだ」
( ^Д^)「おれを探すため……」
爪'ー`)「で、おれ達がわらわらと集まってきたわけか」
('A`;)「言葉は悪いけど、そういうことだな」
( ´ー`)「でも、なんでVIPには入れてくれないんだーよ」
| ^o^ |「はい。それが不思議です」
('A`)「……VIPは……」
.
-
爪'ー`)「『友達』の集まりが、VIPってことだろ?」
('A`)「フォックス……」
爪'ー`)「地域とか関係なくつながっている仲間。
ってことじゃないのか?
若様……ショボンがそう思ってるメンバー。
実際半数以上は出身バラバラだよな」
('A`)「……友達だし、仲間だけど、ちょっと違うかな」
爪'ー`)「なにがだ?
あ、別に非難はしてないぞ。
ここでの戦闘は命のやり取りだ。
信頼できる仲間で固めた方が良い」
('A`)「それはそうだけど……。
……いまVIPにいるやつらは……さ、
身近にこの世界での死を実感したり、
人の黒い部分を見てしまったりして、
この世界でうまいこと生きていくことが出来なかったん……だよな。
もし、一人だったら、自ら死を選んでしまったかもしれない奴ら……なんだよ」
( ^Д^)「それは……」
爪'ー`)「おまえ達五人もか?」
('A`)「……おれは、さ、結構冷めてるから、
正直最初はホントにブーンとショボンとツンとクー、
んでシャキンが無事ならそれで良いって思ってたかな。
一人でいても、まあ、大丈夫だったかもしれない。
けれど色々あって、今は全員大事だって思えるようになった。
でもツンとクーは、一時期はホントに危うかった。
ブーンはそうだな……。多分、おれ達がいたから大丈夫だったけど、
一人だったらやばかったな。
ショボンは……もしかすると、一人にしたら一番やばかったかもしれない」
( ´ー`)「……しんじられないだーよ」
.
-
('A`)「ま、おれ達にも色々あったってことさ。
それで、何故かおれ達の作ったギルドはそういう思いを抱えた奴と次々と出会っていって、
いつの間にかこんなギルドに成長していた」
| ^o^ |「みなさんが……」
('A`)「それなりに有名になった分、
うちのギルドは注目されている。
攻略組からのスカウトはもちろん、
中層プレイヤーからは嫉妬みたいな負の感情をぶつけられることもある。
ショボンも最初はギルドに入ってもらおうかと思っていたみたいだけど、
ギルドに入ることのメリットとデメリットを考えると、
VIPに入ることは断ることにしたみたいだ。
ただ、同じ地域から来た者の繋がりとして、
出来る限りのバックアップはさせてもらうって言っていた」
爪'ー`)「無償で部屋の提供。
生産組にはそのノウハウや儲けの仕組み。
戦闘組にはスキルの組み立てやレベル上げのやり方。
他のギルドに入るのならば共同体から抜けるっていうルールと、
指定されている『危険』には近寄らないっていう約束以外は完全自由。
……この世界を楽しむ余裕を作ってくれたのはお前たちなんだよな」
('A`)「……ショボンの考えさ」
爪'ー`)「けれどここにきて、
戦闘組はより実践的な戦いを教えられるようになった。
そしておれはあんなことを言われた。
……何があったんだ?」
('A`)「……自分が居なくなった時のことを考えたのさ」
( ^ω^)「ショボンの言う『みんなで帰る』の『みんな』には、
自分が含まれてないんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと馬鹿よね……。ほんとに……」
.
-
川 ゚ -゚)「もっと自分を大事にしてほしいが……」
ξ゚⊿゚)ξ「今日フォックスに言ったんでしょ。
自分がいなくなったらそっちはフォックスがギルマスのギルドを作ってどうにかしてほしいって」
川 ゚ -゚)「フォックスがギルマスのギルド自体はまあ何とかなるだろうが、
その前提が……。ショボンめ……」
( ^ω^)「僕達で、ショボンを助けるんだお。
この前は何もできなかったけど、
もしもの時は、僕達が……」
川 ゚ -゚)「そんなことがもう無いよう、
ショボンの監視ももっとちゃんとしないとだな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ホントよね。
頭脳系のギルマスなんだから、
ずっと部屋に閉じ込めてドアを固めるか」
川 ゚ -゚)「いやそれは……」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、もちろん冗談だからね」
川 ゚ -゚)「転移結晶ですぐ外に」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、冗談です」
川 ゚ -゚)「ギルマス権限でドアとか開きそうだし」
ξ゚⊿゚)ξ「だから冗談だってば!」
( ^ω^)「おっおっお」
( ^Д^)「なんだよ……それ……」
('A`)「あいつは、自分が生きて帰ることには執着していない。
『みんな』が帰ることに尽力を惜しまないけれど、
そのなかに自分は含まれていないんだ。
だから、自分が居なくなった時のことを考えて、
フォックスにそんなことを言ったんだろう」
爪'ー`)「……流石若殿さま……」
| ^o^ |「フォックス……」
爪'ー`)「民草の事が一番だってか……クソが」
,
-
( ´ー`)「フォックスが怒ってるとこ初めて見ただよ」
爪'ー`)「別に怒っちゃいねーよ。
ただムカついているだけだ」
( ^Д^)「それを怒ってるって言うんだけどな」
爪'ー‘)「これくらいで怒ったりしねーよ」
('A`)「……『キレてないですよ』……」
( ^Д^)
| ^o^ |
( ´ー`)
爪'ー`)「お前にキレる」
('A`)「ごめん」
.
-
某都市
本城総合病院
本館と別館をつなぐ渡り廊下。
二つのセキュリティチェックを通り過ぎ、
車いすの女性を押した看護師が通り過ぎた。
来島「……こんな時間にすみません」
J( 'ー`)し「いいえ。基本別館はお見舞い24時間可能ですから。
でも来島さんの自由時間は消灯までですから、
それまでには戻りますからね」
看護師はドクオの母。
車いすに座っているのはクーの祖母であった。
来島「ふふふ」
J( 'ー`)し「笑っても駄目ですよー。
伊達さんや渋澤さんと違って、
わたしはルールを守りますからね」
来島「あのイタズラ坊主がいまや地元の有力者ですから。
ほんと、年を取るというのは不思議なものですね」
J( 'ー`)し「まだ来島さんはお若いですよ」
来島「徳永さんに言われてもねぇ」
J( 'ー`)し「あら、私じゃ不満ですか?」
来島「私より年齢がかなり若く、
さらに年より若く見える方に言われても、
お世辞か嫌味にしか聞こえませんから」
.
-
J( 'ー`)し「ダメですよ。
褒め殺しをされても消灯前には戻りますからね」
来島「あら残念」
二人はくすくす笑いながら、
病室に辿り着いた。
クーの手を握る来島。
細く皺だらけの手だが、
その手は生気に満ちて優しく孫娘の手を握っている。
来島「息子さんの所に行ってあげてくださいな」
J( 'ー`)し「……はい。
ありがとうございます」
.
-
ゆっくりと車いすから離れ、
気にしつつドクオのそばに向かう。
来島「私は……間違っていたのでしょうか」
J( 'ー`)し「来島さん?」
来島「久美子には、清く正しく生きることを教えてきたつもりです」
来島の呟きは、誰に対する者でもなく、
けれど一人で呟くのは苦しい呟きだった。
来島「間違えず、間違わず。
間違えた時には正しき道に戻れるよう。
時に厳しく、けれど愛情は持って、接してきたつもりです。
けれど、久美子は、違う世界に行ってしまった。
自分ではない自分になるために、
こんなものをかぶって、行ってしまった。
私がもっと違う風に接していたら、
久美子は、こんなものを被らずに済んだのでは……」
J( 'ー`)し「来島さん……」
来島「花も、踊りも、長刀も、
その心を強くするための物でした。
凛々しく、一人でも立てるように。
何事にも負けない心を持つように……」
J( 'ー`)し「うちの息子は、
コンプレックスの塊でしてね」
来島「え?」
J( 'ー`)し「身長も低いし、顔もたいしたことない。
頭も悪くはないけど決して良くはない。
運動も苦手ってことは無いけど得意では決してない。
女の子と話すのは苦手だし、
男の友達もすごく多いわけじゃない。
自分のとりえって何だろうって、悩んでいました」
.
-
来島「徳永さん?」
J( 'ー`)し「でも、一個だけ自信があって、
そしてそれを守るために、必死に頑張ってました」
来島「……それは?」
J( 'ー`)し「ブーンくんとショボンくん、そしてツンちゃん。
内藤武君と、本城祥大君と、宇佐木朋美ちゃんと友達だってことです。
そして、最近はそこに来島久美子ちゃんも加わっていました」
来島「!」
J( 'ー`)し「私は、自分の息子を信じます。
その友達と一緒にいるんだから、
うちの子は絶対に友達を守るし、
四人と友達だって胸を張るために、
頑張っているって」
来島「徳永さん……」
J( 'ー`)し「そして、きっとこの子たちは、
別人になりたいからこれを被ったんじゃない。
面白そうなゲームだから、やってみただけなんですよ。
子供なんて、そんなもんです。
多分、うちの子はゲームの中では背の高い筋肉隆々のマッチョマンにでも変身して、
遊んでいるんだと思います。
小さいときにちゃんと牛乳飲めば大きくなれたかもしれないのに。
好き嫌いしてたから身長が伸びなかったんです。
帰ってきたら、今からでも飲ませないとですね」
ニッコリとほほ笑んだ徳永。
.
-
J( 'ー`)し「今はこの子たちが帰ってくるのを待ちましょう。
帰ってきたら、がっつり叱りましょう。
子どもが親に心配かけさせるのはしょうがないけど、
これはひどいってね。
そして、抱きしめてやりましょう」
来島「……ええ……ええ……ええ……」
来島の嗚咽が部屋に響く。
それを聞こえないふりをして、
じっとわが子の口元を見る徳永。
J( 'ー`)し「(俊雄、信じてるからね。
ちゃんと帰ってくるんだよ)」
浮かんだ涙を築かれないようにぬぐい、
そっと息子の手の甲をつねってから来島に向かう。
J( 'ー`)し「さて、そろそろ消灯ですね。
戻りましょうか」
来島「……はい。
久美子、また明日来るからね」
もう一度ぎゅっと孫娘の手を握る来島だった。
(-@∀@)「ああ。うん。分かってる。
もちろんだよ。……ああ、ああ。
会長には昨日お願いをしておいた。
うん。伊達さんと渋澤さんも引き入れたよ。
……分かってる。ああ。
ああ、祥大の為になんとしても……うん。
…………おれも愛してるよ……」
別館院長室。
電話を切った朝日は一度大きく深呼吸をしてから席を立った。
.
-
アインクラッド
執務室の自分の席に座るショボン。
目の前の応接セットには、シャキンが座っている。
(`・ω・´)「で、準備は万端なのか?」
(´・ω・`)「僕が想像できる状況に対しての、
出来る限りの対策という話でなら、
ほぼ終了しているよ。
はい、これ」
シャキンの目の前にウインドウが現れ、
一つのアイテムが表示された。
(`・ω・´)「おれが確認するの?」
(´・ω・`)「他に誰がするの?」
(`・ω・´)「ですよねー」
アイテムをクリックすると、
見ただけでゆうに100ページを超えているであろうことが分かる、
A4サイズの本が現れた。
(`・ω・´)「前の時からどれくらい増えた?」
(´・ω・`)「指摘された分と、そこから派生する流れとか諸々。
50は無いと思うけど、
細かい点の修正はしてあるから全部に目を通してみて」
(`・ω・´)「はいはい」
ローテーブルの上に現れたその本の表紙をめくるシャキン。
するとかなりのスピードでページを捲っていく。
とても『読んで内容を把握している』様には見えないのだが、
ショボンは気にすることなく別の作業をしていた。
.
-
十数分後全てのページを捲り終えたシャキンが聞こえるように息を吐いた。
(´・ω・`)「どう?」
(`・ω・´)「こんなもんだろ。
ただ34と167の前回と変えた個所はもう少し検討してみてもいいかもしれん。
あと、54と132はほぼ同じように思えた」
(´・ω・`)「分かった」
(`・ω・´)「これ、他の奴らにも見せるのか?」
(´・ω・`)「もちろん。
といっても各人に必要な部分を抜き出したのも渡すけどね。
とりあえずクーとモナーには全体図の把握をお願いしたいから、
二人には全部目を通してもらうつもり。
出来れば兄者とツンにも全体の流れは見てもらいたいけど、
二人は嫌っていうだろうからなー」
(`・ω・´)「ブーンとジョルは?」
(´・ω・`)「ブーンは本能で動いてもらった方が事態は好転しそうだから、
とりあえず話して渡すけど、まあ渡すだけかな。
問題はジョルジュだけど……」
(`・ω・´)「……おれが言うか?」
(´・ω・`)「いや、これは僕が話すよ。
それにこれは僕の杞憂で終わる話かもしれない内容だからね」
(`・ω・´)「そうか……」
(´・ω・`)「それよりも、そっちの事をお願いしたいんだけど」
(`・ω・´)「こちらはサポートだからな。
その時に誰の指示に従うかだけ間違わなければ大丈夫じゃないか?」
(´・ω・`)「そう……かな」
.
-
(`・ω・´)「ミルナとデミタスは言わなくても、
ハインだってそうだな。
エクストとトソンもお前の信者だから問題ないだろ」
(´・ω・`)「そうかなー」
(`・ω・´)「大丈夫大丈夫。
他の奴らは?」
(´・ω・`)「プギャー達三人には話してある。
もしもの時は力を貸してほしいって」
(`・ω・´)「喜んでただろ」
(´・ω・`)「……うん。
あの三人も不思議だよね」
(`・ω・´)「あの三人を含め、チームマッシロの奴らはみんなお前に感謝してるからな」
(´・ω・`)「その『チームマッシロ』も止めてって言ったんだけどなー」
(`・ω・´)「『チームマシロ』を却下されたからだから、諦めろ」
(´・ω・`)「まったく……」
(`・ω・´)「フォックスがギルド作ったら、
名前は決定だな」
(´・ω・`)「やーめーてー」
机に顔をうずめるショボンとそれを見て笑うシャキン。
.
-
(`・ω・´)「ミルナとデミタスは言わなくても、
ハインだってそうだな。
エクストとトソンもお前の信者だから問題ないだろ」
(´・ω・`)「そうかなー」
(`・ω・´)「大丈夫大丈夫。
他の奴らは?」
(´・ω・`)「プギャー達三人には話してある。
もしもの時は力を貸してほしいって」
(`・ω・´)「喜んでただろ」
(´・ω・`)「……うん。
あの三人も不思議だよね」
(`・ω・´)「あの三人を含め、チームマッシロの奴らはみんなお前に感謝してるからな」
(´・ω・`)「その『チームマッシロ』も止めてって言ったんだけどなー」
(`・ω・´)「『チームマシロ』を却下されたからだから、諦めろ」
(´・ω・`)「まったく……」
(`・ω・´)「フォックスがギルド作ったら、
名前は決定だな」
(´・ω・`)「やーめーてー」
机に顔をうずめるショボンとそれを見て笑うシャキン。
.
-
すると二人の視界の隅にランプがともり、
自分にしか聞こえないチャイムが鳴った。
(`・ω・´)「おっ」
(´・ω・`)「ああ。ブーンからだね。
時間だからドアを開けてくれたみたい」
(`・ω・´)「了解」
立ち上がり、執務室のドアを開けるシャキン。
(´・ω・`)「ありがと」
すると数分後、ショボンが視界に空間の歪みをかすかに感じると、
自然にドアが閉まった。
(`・ω・´)「おれの耳でもかろうじて足音のような音が聞こえるくらいか」
(´・ω・`)「来てくれてありがとう」
(`・ω・´)「久しぶりだな」
『おひさしぶり』
マントを脱ぐ電子音が、二回二人の耳に聞こえた。
.
-
某都市
本城総合病院 別館
24時間体制で看護はしているが、
基本的には全て医療機器に任せているため、
別館に常駐する看護師は少ない。
今日も詰め所にいた二人の看護師に声をかけた後に、
朝日は病室に向かった。
息子の眠るベッドの横に立つ朝日。
タブレットを開いてわが子の脳波を確認する。
(-@∀@)「祥大。今日はいっぱい笑ったみたいだな」
そう言いながら、ナーヴギアを撫でる。
慈しむようなその手つきから、愛情がうかがえた。
(-@∀@)「祥大。
とうとうだ。
そっちで死んだ時に起きる脳波の波形を完全に解明できた。
そして、その脳波を測定してからナーブギアが脳を焼くまでの時間もわかった。
俊雄君が報告してくれていたデータと、
亡くなられた方が残してくれたデータのおかげでな。
あとは、その電磁波を無効化する為のシステム作りだ。
そっちも見通しは立っている。
一番は水没法だが、ナーブギアの持つ電力を考えるとプールが必要かもしれん。
……本当に、このナーブギアは、様々な意味で完璧だよ」
悲しげに、けれどしっかりと呟く。
それは息子に語り掛けるようでもあり、
自身に向けての決意のようでもあった。
そして電源ケーブルに目をやる。
.
-
(-@∀@)「本当は、今すぐにでも切りたい。
システムの実用化はまだかかりそうだ。
もしも明日、いや、今、目の前で、
お前が死ぬかもしれないなんて、
考えたくもない。
でも、電源切ったら、お前は怒るんだろうな。
それでも、何度も、何度も、切ろうと思った。
でも、お前に怒られるのは、嫌だからな。
お前は、お前を助けてくれた内藤君と徳永君と、
離れたくないだろうからな。
……だから、父さんはこっちで頑張るから、
お前も頑張るんだぞ。
そして、ちゃんと帰って来い。
分かったか。祥大」
タブレットを仕舞い、
眼鏡をはずして目頭を押さえる朝日。
その目は、ショボンとよく似ていた。
.
-
第二十一話
終
.
-
以上、二十一話でした。
乙、感想、突っ込み、支援、本当にありがとうございます!
今回は短めだったのと、
リアル側メインの為閑話にしようかとも思いましたが、
これも『アインクラッドとの戦い』ということで、
こちら側にしました。
少しだけ二十二話以降につながることも織り込みつつ。
ではまた次回、よろしくお願いします。
ではではまた!
.
-
乙
面白かった
-
乙乙
-
マントを二回だと?
一回だったらあいつかと思ったけど『』だし二人居るのか?
-
二次創作の作品ではピカイチだなぁ。
-
乙
あと誤字いくつか
>>90
怒られるますよ
>>142
バウンドケーキ
>>155
築かれないように
-
>>169
跳ねるケーキが有るかもしれないじゃないか!
-
いつも楽しみにしてます!
-
おつ
現実の話も出てきてそろそろ終わりなのかと思ったけど、まだまだ展開が進みそうな予感。
携帯で読んだせいか改行に目がいく、PCで改めて読もうかな。
バウンドケーキってエネミー側にいそう
見た目まんまのやつ
-
ケーキだと思って近づいたら飛びかかってくるミミック的な?
-
倒すとケーキミックスやお菓子の素がドロップするんですね
-
イベントモンスターか ありだな!
-
>>174
ツン、クーあたりがおいしいかもとか言って1回は必ず狩りそうだなw
-
2人目の忍者、か
一瞬だけぃょぅかと思ったが
流石にないよな、すまん
-
息子の死の可能性を口に出した後、句読点増やすのずるい。泣いた
-
リアルでパウンドケーキをバウンドケーキと勘違いしていた作者が通りますよ。
/⌒ヽ
/ ´_ゝ`)すいません、ちょっと通りますよ・・・
| /
| /| |
// | |
U .U
orz
乙と感想と突っ込みありがとうございます。
おかげで色々と沸いてきます!
主にやる気とかネタとか。
ということでつながったので、近々閑話を投下します。
ではではまたー。
.
-
ということで投下します。
宜しくお願いします。
.
-
( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
閑話 白い約束
.
-
VIP牧場の一角にある建物は、二階建てである。
最初建てた時は何人かが休むことが出来る寝室が二つとリビングが一つ、
そして牧場を管理するための設備があるだけだった。
それが今やモナーの個室はもちろん、
クックルの個室、
二人用の寝室が四つ、
設備を整えたキッチン、
四人程度がゆっくりと浸かれる浴場、
そして十人以上がくつろげるリビングが備わった建物へと変わっていた。
牧場と農場の売り上げ、
そしてギルドマスターがかき集めたコルを使った結果だが、
誰一人「こんな設備必要か?」と疑問に思っていないのは、
ちゃんと活用しているからだった。
今日も彼らが、リビングに集まっている。
('A`)「同士諸君、
今日はおれの呼びかけに集まってくれてありがとう」
_
( ゚∀゚)「おー!」
(,,゚Д゚)「あたりまえだぞゴルァ!」
( ´∀`)「ここはモナーが管理してるからいるのは当然もな」
( ゚∋゚)「緊急の案件って呼ばれたんだが」
('A`)「ああ。緊急だ」
沈痛な面持ちで集まった全員の視線を集めるドクオ。
(´・ω・`)「どうしたのいったい?」
ミ,,゚Д゚彡「早く話すといいから!」
( ´_ゝ`)「めずらし……くはないのか」
(´<_` )「ドクオは暗い顔がデフォだからな」
.
-
( ・∀・)「同意はするが、容赦してやれよ」
( ゚д゚ )「同意はするんだな」
(´・_ゝ・`)「ま、平常営業だな」
<_プー゚)フ「なんだなんだ。戦いに行くんじゃないのか?」
(`・ω・´)「しかし、ドクオがおれたち全員を集めるとはよほど緊急なんだな」
思い思いに話す集められたメンバー。
しかしドクオは暗い顔をつづけるだけのため、
視線はブーンに向けられた。
(;^ω^)「おー。ぼくも知らないんだお。
昨日の夜死にそうな顔をしたドクオがやってきて、
皆を集めてくれって頼まれたから手配しただけなんだお」
全員の顔に戸惑いが生まれ、
再びドクオに視線が集まる。
('A`)「……おれがふがいないばっかりに、みんなすまない」
全員の顔にさらなる大きな戸惑いが浮かぶ。
(´・ω・`)「えっと……ドクオ?どうしたのいったい?」
( ゚д゚ )「そういえばツン、クー、しぃはどうしたんだ?
ハインとトソンも呼ばれてないが」
目に見えて体を震わせたドクオ。
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「……みんな、知っているか?
今日は3月16日なんだ」
消え入るような細い声で呟いたドクオ。
しかしその声はちゃんと全員に届いていた。
(´・ω・`)「……ああ」
全員が小首をかしげるが、
一人ショボンがすぐに何かを納得した。
.
-
そしてその声をきっかけに、
半分くらいは何かを思いついていた。
(;・∀・)「もしかして、お前……」
(;゚∋゚)「忘れていたのか?」
( ´∀`)「だめもなねぇ」
('A`)「!お、お前たちもしや……」
( ・∀・)「アクセサリー作った」
( ゚∋゚)「花束を」
( ´∀`)「とっておきのA級食材を何点か提供したもな」
(´・ω・`)「それを使ってぼくとふさでディナーをご馳走した」
ミ,,゚Д゚彡「!ケーキは最高の自信作だったから!」
(´<_` )「話題になってたカフェで奢った」
( ゚д゚ )「おれとデミタスでちょっと話題になってるレストランに」
(´・_ゝ・`)「けっこう高かったけどうまかったぞ」
_
(;゚∀゚)「!」
(;´_ゝ`)「!」
(,,゚Д゚)「!」
<_プー゚;)フ「!」
(`・ω・´)「!あ、そういえばそうか」
ドクオの沈痛な面持ちに憐みの視線を向ける何人かと、
顔を引きつらせる数名。
そしてのんきな一人。
そして視線が最後の一人に向けられる。
.
-
(;^ω^)「ツンとは当日に二人でご飯に。
ほかの皆にはその前に前から欲しがってたアイテムとかを」
ブーンの言葉を聞き、
この世の終わりだとばかりに表情をゆがめるドクオ。
('A`)「な、な、な、なんで忠告してくれないんだよ!
ホワイトデーの事を!」
ドクオの叫びが、部屋をこだました。
ソファーの上で膝を抱えているドクオ。
ブーンやクックルは戸惑いの視線で見ているが、
それ以外のほとんどの面子は気にしていない。
(´・ω・`)「これが指定されたクエストか……」
ドクオから渡さられた資料に目を通すショボン。
(´・ω・`)「ま、この程度のクエストならメンバーそろえれば構わないけど……」
言葉を濁すショボン。
クエストの申請でショボンがこのような状態になるときは、
『何か』あることが多いことが分かっているため、
その場にいる者のほとんどがドクオと数人を見る目が、
可哀想なものをみる目に変わった。
<_プー゚;)フ「お、おれも参加しないとだめなのか?」
('A`)「ホワイトデーノオカエシヲシテイナインダロ?」
<_プー゚;)フ「……してない」
_
( ゚∀゚)「で、でもよう、あれって作ったのフサギコだろ?」
.
-
ミ,,゚Д゚彡「調理はフサがしたけど、
素材は全部みんなが集めてきたやつだから!
その思いがあの美味しいケーキになったから!」
_
(;゚∀゚)「フサギコお前どっちの味方だ」
ミ,,゚Д゚彡「これに関してはツンとクーとしぃとハインとトソンの味方だから」
_
( ゚∀゚)「言いきったぞこいつ」
( ´_ゝ`)「なあ弟者、何故おれも誘ってくれなかったんだ?」
(´<_` )「その方が面白いかと思ったからな」
(#´_ゝ`)「よーしわかった、表で勝負だ」
(´<_` )「まぁまぁ落ち着け」
( ゚д゚ )「しかしシャキンはこういう事はちゃんとやっているかと思ったが」
(`・ω・´)「最近忙しかったからすっかり忘れてた。
というか、ハインやトソンからもらってもどうせ義理だからなぁ」
(´・_ゝ・`)「それはそうだが、義理でもちゃんと返すべきだろ」
(`・ω・´)「それは反省する」
( ・∀・)「でもギコがお返しをしてないっていうのも驚きだな。
指輪の事にあれだけ頑張ったやつだから、
そういったことにはちゃんとしているのかと思った」
( ゚∋゚)「ああ。しぃちゃんと食事でも行ってるかと思った」
(,,゚Д゚)「あ、いや、しぃにはお返しした」
( ・∀・)「え?」
( ゚∋゚)「しぃには……ってことは」
(,,゚Д゚)「他の四人にはしてない」
(;・∀・)「それはまあ、正しいと言えば正しいのか」
(;゚∋゚)「そうだな。ちゃんと決まった相手にはしたわけだから」
.
-
( ・∀・)「でもなー。義理とはいえもらったモノのお返しはしないとだな」
( ゚∋゚)「しぃの知らない女の子から貰ったとかなら問題だが、
ツン達だからな」
(;,,゚Д゚)「そういうものなのか……」
('A`)「はぁ……」
(;^ω^)「でもドクオ、リアルの方ではお返ししてたおね」
( ´∀`)「なんで今回は忘れちゃったもな?」
('A`)「……ハインから飲まされたあのお茶が、
まさかバレンタインのプレゼントだとは思わなかった」
(;^ω^)「おー。あれは大変だったおね。
一時間くらいして目を覚ましたけど、
寝るまでなんかずっと支離滅裂な状態だったし」
(;´∀`)「の、飲むとき言われなかったもな?」
('A`)「飲む前三時間くらいと次の日の朝までの記憶が無い」
(;^ω^)
(;´∀`)
('A`)「ツン達からケーキをもらってたことに気付いたのも次の日だったし、
フサが作った料理だったからいつもの味見かと思ってた」
(;^ω^)「……色々誘わなくてごめんだお」
(;´∀`)「も、モナーもあのお茶に関しては責任を少し感じるもな」
('A`)「モウイイヨ……」
(´・ω・`)「ふむ。やっぱり。
このクエスト、アルゴさんから調査依頼の来てたクエストだった……よ?
どうしたのみんな?
なにかあった?」
一人思考の海に潜っていたショボンだったが、
ふとまわりを見て混沌とした状況に気付き、
眉間に皺をよせた。
.
-
第47層フローリア フラワーガーデン
一年を通して可憐な花が咲き誇り、
時折吹く優しい風に花弁が舞う、
夢のようなエリアに降り立ったドクオ達。
(;^ω^)「それで、ここでアイテムゲットなのかお?」
(´・ω・`)「うん。
45層の民家で引き受けるこのクエスト、
『おじいちゃんに食べてもらいたいケーキ』
のスタートがここなんだよ」
ショボンを先頭に、11人の男がぞろぞろと歩いていた。
('A`;)「しかしなんでツン達はこんなクエストをやれなんて」
(;´_ゝ`)「クリアアイテムが、その『ケーキ』なんだよな?」
ミ,,゚Д゚彡「『ケーキ』の味は気になるから」
(;,,゚Д゚)「ど、どこに行けばいいんだゴルァ」
(`・ω・´)「あの先の黄色い花……か?」
(´・ω・`)「うん。そう。そこで花弁を取って。
あと右のエリアの水色の小さな花の蜜」
_
(;゚∀゚)「こ、こっちだな」
(´・ω・`)「あ、こっちの花弁が無いと蜜は取れないんだ」
(;゚∋゚)「な、なあ。
ここには全員で来ないとだめなのか?」
(´・ω・`)?
(`・ω・´)?
.
-
(´<_`;)「そ、そうだな。他にも取りに行くアイテムあるんだろ?」
<_プー゚;)フ「お、おれはそっちを取りに行くぞゴルァ」
(´・ω・`)「ここの三種の花の蜜を取らないと行っても意味ないし、
折角だから全員で一つずつ持っておこうかなと」
<_プー゚;)フ「そ、それじゃあさっさと採ろう」
(`・ω・´)「どうしたエクスト。
そんなに慌てて」
(´・ω・`)「皆もなんかそわそわしてない?」
ミ,,゚Д゚彡「落ち着かないから」
(;゚∋゚)「おれにしてみれば、落ち着ているお前たちの方が不思議だ」
(`・ω・´)?
(´・ω・`)?
ミ,,゚Д゚彡?
('A`;)「ダメだぞクックル、この三人にそういった空気を読む力を求めたら」
(´・ω・`)「えー。ひどいなぁ」
(´<_`;)「喋ってないで、さっさと採取しよう」
(;´_ゝ`)「おれもこの視線はキツイ」
(;,,゚Д゚)「なんであんまりこのクエストがやられてないか分かるぞ」
(´・ω・`)「え?ギコ分かるの?
不思議だったんだよね。
データだけ見たらそれほどきつくないし、
報酬もまあそれなりなのにクリアしたって話を聞かないから」
.
-
ミ,,゚Д゚彡「凄いから!」
(;゚∋゚)「いや、お前ら以外は全員分かっていると思うぞ」
(`・ω・´)「なんだよー。
おれ等だけ仲間外れなのか?」
<_プー゚;)フ「お前らはこの視線が気にならないのか!?」
(`・ω・´)「視線?」
(´・ω・`)「ああ」
ミ,,゚Д゚彡「え?」
周囲を見るシャキンとフサギコ。
ショボンは一人納得したように頷いた。
(女)「男だけでここに来るんだー」
(男1)「やめとけシアン。
なにされるかわからないぜ。
どうせ……女の子でもナンパしに来たんだろ」
(女1)「えー。ヒッターくん。
流石にそれは寂しすぎるよ」
(甲冑男)「寂しい奴らだな。こんなところに男だけでぞろぞろと」
(マント女性)「ダメだよシヴァタくん、そんなこと言っちゃあ。
この先の迷宮に行きたいのかもだし」
(甲冑男)「それならば次の街の転移門に行けばいい」
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「あれ?
ねぇフィレフィレ、あそこにいるのっていつも連れてってくれるお店の人だよね?
挨拶しておく?
ケーキ美味しいし」
(‘_L’)「ちょ、ミセミセ。
それは、ちょっと、止めて置こう」
ミセ*゚ー゚)リ「えー。なんでー。今度行ったらサービスしてくれるかもよ?」
(;‘_L’)「い、いや、多分、嫌がられると思うし」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなの?なんで?」
(;‘_L’)「そ、それはその……。
こんなところに男だけで来てるとか……。ほら」
ミセ*゚ー゚)リ「?」
(男2)「フラワーガーデンに男だけで来るとか」
(女2)「ダメだよ、そんな指さして笑ったら」
(男2)「ヘイシャオさんは優しいね。
そんなところも大好きだよ」
(女2)「やだもうイーユウ君ったら。
まだ会ったばかりなのに」
(男2)「この赤い花。
君の長い黒髪によく似合うよ。
ああ、でも君の美しさの前では、
全ての花を束にしてもかなわないな」
(女2)「イーユウ君……」
(男2)「ヘイシャオさん……」
見つめ合う二人と、それを囲む花々。
ここフラワーガーデンは、恋人達のデートコースとして有名だった。
.
-
よく見なくても、男だけでこの場にいるのは彼等だけ。
このフロアにしか出現しない敵や、このフロアで初出のモンスターもいるため、
フィールドや迷宮に行くために通り過ぎる男だけのパーティーはいるが、
この場に留まっているのは彼等だけだった。
しかも花をじっと見つめたり花弁を取ったりしているのだから、
目立つことこの上なかった。
(`・ω・´)「注目されてるな」
視線を感じ、なんとなく決めポーズをするシャキン。
(´<_`;)「強心臓だなシャキンは」
ミ,,゚Д゚彡「クエスト攻略の為だから気にすることないから」
(;゚∋゚)「そうは言ってもだな」
(;^ω^)「なんか憐れむような視線とともに、
優越感を感じているような視線もかんじるおね」
(´・ω・`)「まあいいんじゃない。
その程度でしか優越感を感じることが出来ない人達なんだし。
気にしなければ」
( ´_ゝ`)「なかなか辛辣なことを言うな」
(;,,゚Д゚)「兄者もなんか普通だぞ」
(*´_ゝ`)「こういう視線も気持ちよくなってきた」
(´<_`;)「オーケー兄者。
あからさまに変態だから静かにしているんだ」
(*´_ゝ`)「なんだよー」
(;゚∋゚)「だがまあ、今のアインクラッドを考えると、
彼女持ちの男が優越感に浸るのも分からないでもない」
(`・ω・´)「おっ。クックルも大人な発言だな」
.
-
(;゚∋゚)「いやVIPやNSは女性がいるが、
ギルドによっては全然いないところもあるからな」
(;^ω^)「そうなのかお?」
('A`;)「女の子すくないからな」
現在のアインクラッドにおいて男女比はかなり不均等になっており、
女性の数は極端に少なかった。
その為女性プレイヤーは少しでも容姿に華があるともてはやされて大事にされ、
ギルドやパーティーのマスコットのように扱われることもあった。
(´・ω・`)「さ、そんなことよりサクサク進めよう」
視線に耐えつつアイテム採取を進める七人。
全員が一回ずつ済んだ後、フサギコが最後に採取を行う。
_
(;゚∀゚)「フサギコ、さっき失敗したのか?」
ミ,,゚Д゚彡「パーティーごとに6個採れるみたいだから、
一応予備で採っておくから」
(´・ω・`)「モナーが来れなくなっちゃったからね」
(´<_`;)「あいつ絶対ここが分かってて来なかったよな」
( ´_ゝ`)「ビーストテイマー同士の会合なんだろ?
竜使いのシリカちゃんも来てるんだよな。
良いよなー。モナー」
(;゚∋゚)「今回のメンバーが決まってから急に行くとか言い始めてたからな」
_
(;゚∀゚)「ちくしょう!」
(´・ω・`)「はいはい。
終わったから行くよー」
.
-
早歩きで転移門に向かう7人と、
ゆっくりと歩く4人。
('A`;)「早くいくぞー。
まだ他にも採りに行くんだろ!」
ドクオの呼びかけに、
苦笑しつつ少しだけ早歩きになる四人だった。
魔女の森
最終目的地の森の前で、
11人中7人はぐったりとしていた。
('A`;)「なんであんな所ばかり……」
(;^ω^)「採取するところが全部有名デートスポットとか、
このクエストを設定したひと頭が沸いてるお」
('A`;)「ツンのやろう、ぜってー知ってたな。
精神的攻撃だ」
_
(;゚∀゚)「で、でもここでラストなんだよな!」
(;゚∋゚)「ここはデートスポットでもないし、普通の戦闘なんだろ?」
<_プー゚;)フ「や、やっとおれの出番だ……」
(;,,゚Д゚)「暴れるぞゴルァ」
疲れた顔をしながらも頷きあうエクストとギコ。
(*´_ゝ`)「さっきのエリアでの視線もなかなか良かったな」
(´<_`;)「オーケー兄者。
おれの斧が兄者の頭を胴体から切り離す前に黙ろう」
.
-
早歩きで転移門に向かう7人と、
ゆっくりと歩く4人。
('A`;)「早くいくぞー。
まだ他にも採りに行くんだろ!」
ドクオの呼びかけに、
苦笑しつつ少しだけ早歩きになる四人だった。
魔女の森
最終目的地の森の前で、
11人中7人はぐったりとしていた。
('A`;)「なんであんな所ばかり……」
(;^ω^)「採取するところが全部有名デートスポットとか、
このクエストを設定したひと頭が沸いてるお」
('A`;)「ツンのやろう、ぜってー知ってたな。
精神的攻撃だ」
_
(;゚∀゚)「で、でもここでラストなんだよな!」
(;゚∋゚)「ここはデートスポットでもないし、普通の戦闘なんだろ?」
<_プー゚;)フ「や、やっとおれの出番だ……」
(;,,゚Д゚)「暴れるぞゴルァ」
疲れた顔をしながらも頷きあうエクストとギコ。
(*´_ゝ`)「さっきのエリアでの視線もなかなか良かったな」
(´<_`;)「オーケー兄者。
おれの斧が兄者の頭を胴体から切り離す前に黙ろう」
.
-
( ´_ゝ`)「むー」
(`・ω・´)「で、ショボン、どうすればいいんだ」
(´・ω・`)「最奥まではいかなくていいみたい。
途中の休憩地点で持ってきたアイテムを使うと、
新しいルートが開けるみたいだね。
そのあとはその道を行けばよし」
( ゚∋゚)「敵の種類は聞いていた通りか?」
(´・ω・`)「うん。『魔女の森』の名前の通り、
魔女の使い魔とされる骸骨剣士とケルベロス系の獣。
後はマントを付けて杖を持った骸骨」
_
( ゚∀゚)「そのマントを付けたっていうのが……」
(´・ω・`)「うん、魔女の死んだ姿って設定だね。
攻撃力は弱いけど、杖をふるって回復を仲間にするから、
出てきたらマントの骸骨を先に倒すのを心がけて」
( ´_ゝ`)「骸骨はおれと弟者が担当だな」
(´・ω・`)「お願いするよ。
あとは両手剣のエクストとジョルジュもお願い。
シャキンは後ろで控えててよ。
このエリアは後ろからも出てくるから。
クックルも後ろで」
( ゚∋゚)「了解した」
(`・ω・´)「むー。仕方ない」
(´・ω・`)「2パーティーいるんだし、
無理せずスイッチしていこう」
全員の顔を見るショボン。
それぞれが頷いたり武器を掲げたりして答えた。
(´・ω・`)「僕も今日は『チャクラム』をメインにするからよろしくね」
その後細かいフォーメーションを決め、
11人は森を進んだ。
.
-
「なにこれ?」
順調に森を突き進んだ彼らがある『モノ』を見た瞬間、
誰かがポツリとつぶやいたそれは、
全員が思ったことだった。
エリア移動で飛び込んだ先は、
半径5メートルほどの、木々に囲まれた円形広場。
そしてその先に続く幅2メートルほどの道があるのだが、
その『モノ』が道を塞いでいた。
『モノ』の大きさは、目算で高さ3メートル、
横幅2メートル、長さは5メートルを超えている。
更に言うと、円形広場に『モノ』は1メートルほど飛び出していた。
<_プー゚)フ「大きさは電車くらいか?」
(´<_` )「道の奥が木に隠れていて見えない。
見える所だけで、車両一つ分は確実ってところか」
_
( ゚∀゚)「道いっぱいに広がってて横は通れないぞ」
( ゚∋゚)「よじ登ることは出来そうだが……」
( ^ω^)「跳んでみるかお?」
助走をするために後ろに移動するブーン。
(´・ω・`)「ブーン、ストップ」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「これ、クエストのデータに乗ってないから調査対象なんだ」
.
-
('A`)「え?」
(´<_` )「あー。やっぱりそうか」
ウインドウを開いていた弟者だったが、
ショボンの言葉ですぐに閉じた。
(;゚∋゚)「(しかしこのギルドはそういうの多いな)」
(,,゚Д゚)「普通のクエスト攻略と何が違ったんだゴルァ」
(´・ω・`)「多分だけど、僕とフサギコの存在かな」
ミ,,゚Д゚彡!
(`・ω・´)「お前とフサギコ?」
(´・ω・`)「おそらくだけど、『調理スキル』がキーだったんじゃないかなと。
もともとアルゴさんから調査が依頼されたのも、
クエストの同時攻略人数の多さとか、
色んな層を渡るわりには簡単な戦闘だとか、
最終的に受け取れるアイテムのレベルが低いとか、
色々おかしな点があったからなんだ。
そして食材集めみたいだから調理スキルを極めてる僕とフサギコをメインして、
念のため各パーティーを最大人数の6人にして、マックスの12人にして挑んだんだけど」
<_プー゚)フ「でも11人になっちまったわけか」
(´・ω・`)「あ、うん。そうだね。
そうしたら、こんなものが出てきたわけ……」
じっとその『モノ』を見つめるショボン。
(´・ω・`)「ちょっと厄介だな」
_
( ゚∀゚)「どうした?」
(´・ω・`)「うん……。みんな、とりあえず下がって」
.
-
『モノ』の正面、そして円形広場の一番端に移動したショボン。
それに倣って全員が広場の端、
『モノ』から遠い位置に移動する。
ショボンがチャクラムを腰に留め、
大ぶりのスローイングダガーを取り出した。
(´・ω・`)「……ドクオ」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「ここってクローズされてるよね」
('A`)「ああ。道は戻れるけど、
最大人数がここにいるからこのエリア自体は閉じて、
誰も入れないはずだ」
(´・ω・`)「了解。
えっと……エクスト」
<_プー゚)フ「なんだ?」
(´・ω・`)「パーティーの共通フォルダから回復クリスタル取り出して、
回復して」
<_プー゚)フ「!おい、3ドットくらいだぞ欠けてるの。
この程度にクリスタルを!?」
(´・ω・`)「念のため、クリスタルを使えるエリアなのかを試したいんだ。
既に出してあるクリスタルは戦闘の時に使う可能性があるから、
フォルダから出して使って」
<_プー゚)フ「!わ、分かった」
ウインドウを開いてクリスタルを出す。
<_プー゚)フ「ヒール!」
.
-
クリスタルが砕け、エクストのHPが満タンになった。
<_プー゚)フ「使えたぞ!
……トソンが居たら発狂しそうな使い方だな」
(`・ω・´)「ブフッ」
( ゚∋゚)「笑いごとなんだな」
(`・ω・´)「いや、発狂しているトソンが想像できて」
(´・ω・`)「クリスタルも使える……と」
クスクスと笑うシャキンを横目にダガーを構えるショボン。
それを見て全員が武器を構えた。
(,,゚Д゚)「フサギコ」
ミ,,゚Д゚彡「なにだから」
(,,゚Д゚)「……どうみてもこれ、アレだよな。
まえに食わしてもらった、ほら、あのケーキ」
ミ,,゚Д゚彡「……パウンドケーキ」
(,,゚Д゚)「そう、それ。うまかった」
( ゚∋゚)「やっぱそう見えるよな?」
(´<_` )「クックルもそう思うか」
ミ,,゚Д゚彡「確かによく似てるから……」
ぼそぼそと話すショボンを除く全員。
(´・ω・`)「攻撃するよー」
「「「おう!」」」
「「「はい!」」」
穏やかなショボンの声に反応して気を引き締める。
.
-
そしてショボンが白く光るナイフを投げた。
( ^ω^)「……刺さってるおね」
('A`)「ああ、刺さってる」
茶色いスポンジの側面に当たったダガーは、
そのままナイフの部分だけ刺さった状態で止まっていた。
(`・ω・´)「どうすんだこれ?」
全員が横目でショボンを見る。
(´・ω・`)「くるよみんな。構えて!」
チャクラムを構えるショボン。
その声と姿に、慌てて武器を構えて巨大パウンドケーキを見る。
するとパウンドケーキの右上に四本のHPバーが生まれ、
ケーキが震え出した。
そしてその上部に浮かぶ文字。
『The Bound Cake』
('A`;)「!冠詞付き!?」
ドクオの叫びと同時に飛び上がるバウンドケーキ。
(;´・ω・`)「ジャンプ!」
思わず叫んで飛び上がるショボン。
完全に出遅れたエクストと、重い武器を構えていた兄者と弟者のタイミングが少し遅れた。
.
-
<_プー゚;)フ「うをっ」
( ´_ゝ`)「ちっ」
(´<_` )「くっ」
跳んだバウンドケーキが地面に当たると同時に振動が地面を襲う。
エクストは両ひざをついて行動を阻害され、
ジャンプの瞬間に地面の揺れた兄弟は武器を構えたまま片膝をつく。
ジャンプに成功した他の者も、
滞空時間が少なかった者は揺れる地面に着地してしまい、
すぐに武器を構えることが出来なかった。
そしてエクストのHPが、1ドット消えた。
(,,゚Д゚)「ゴルァ」
構えなおしたギコが、
盾を前面に片手剣を振り上げて走る。
(´・ω・`)「ダメだギコ!ストップ!」
ぶつかる直前に軌道修正してそのまま端に向かって走り抜けるギコ。
そして立ち止まった後ショボンを怪訝に見る。
たまたま隣にいたエクストも不思議そうにショボンを見ていた。
(´・ω・`)「ジャンプのタイミングは僕が指示できる!
まずは攻撃パターンを調べるから全員待機!」
再び先ほどと同じダガーを構えるショボン。
今度は掛け声無しで投げる。
ナイフは先のナイフのすぐ横に刺さったが、
バウンドケーキはピクリともしない。
.
-
<_プー゚)フ「何もない……?」
(´・ω・`)「くるよ!3!2!1!ジャンプ!」
タイミングよくジャンプする11人。
しかしエクストは高さが足りなかったため着地が少し早く、
片膝をついてしまった。
<_プー゚#)フ「畜生!」
('A`)「どういうことだ?」
( ´_ゝ`)「目には目を歯には歯をってことか?」
(´・ω・`)「おそらく。
攻撃されるとジャンプで返すんじゃないかな。
ただ、僕の様子見のナイフであの威力。
どんな攻撃にも一定なのか、攻撃力に比例するのか分からない」
( ´_ゝ`)「やってみるしかないだろ」
大金鎚を振り上げる兄者。
(´・ω・`)「……」
( ´_ゝ`)「ん?どうしたショボン」
(´・ω・`)「うん。やってみようか」
( ´_ゝ`)「え?いいの?」
(´・ω・`)「自分で言っておいて」
( ´_ゝ`)「いやだっていつもおれが強硬策を言って、
それを止めてなんか良い策を出してくるっていう流れだから」
(´・ω・`)「腹案はあるけど、まぁ後でも良いかなと。
ただ、防御はするから準備はするよ」
( ´_ゝ`)「ん?」
.
-
ウインドウを操作して槍を取り出すショボン。
(´・ω・`)「クックル、防御の準備しておいて」
( ゚∋゚)「分かった」
(´・ω・`)「兄者、武器は」
( ´_ゝ`)「一番低レベル、剣技なしで通常攻撃一発」
(´・ω・`)「うん。よろしく」
自分は構えずに、クックルの斜め前に立つショボン。
(´・ω・`)「シャキン、ギコ、盾の準備を。
ジョルジュ、エクスト、両手剣で防御技だしてもらう可能性があるからよろしく」
名前を呼ばれたものが準備を始め、
呼ばれなかった者がクックルの後ろに立つ。
兄者はのんびりと『ザ・バウンドケーキ』に近寄った。
( ´_ゝ`)「いいか?」
(´・ω・`)「みんな、準備は良い!?」
全員が頷くのを確認するショボン。
(´・ω・`)「いいよ!」
( ´_ゝ`)「うりゃあああああああ!」
兄者が槌を振り上げながらジャンプすると同時に、
兄者に向かって駆けだすショボン。
その後ろをシャキンが続く。
( ´_ゝ`)「!!よっしゃあ!」
2メートル以上跳躍した兄者。
巨大槌をかろうじてバウンドケーキの向かって左の角に当て、
そのまま振り下ろした。
.
-
( ´_ゝ`)「いよしっ!」
槌の先端を、円を描くように後方に振り上げ、
肩を回しながら肩に担ぐ。
(´・ω・`)「後方に跳ぶ!」
( ´_ゝ`)「おおうっ!」
ショボンの声に跳躍する兄者。
1メートル以上跳んだその前に、槍を持って立つショボン。
シャキンは兄者の横に立つ。
( ´_ゝ`)「え?なにこれ」
一部を砕かれたバウンドケーキ。
ぼろぼろとスポンジよりも少し硬そうな生地が崩れ落ちる。
(´・ω・`)「!防御!」
自らの槍を回転させながら叫ぶショボン。
その声と同時にクックルも同じ様に槍を回転させた。
二本の槍は青白い光を生み、
その光が半球状に広がってそれぞれに仲間を包む。
その瞬間、バウンドケーキから何かが飛んだ。
('A`;)「ちょっ」
(;^ω^)「おっ?」
_
(;゚∀゚)「げっ」
それぞれに奇声を上げるメンバー。
(;´・ω・`)「何か出るかなとは思ったけど」
ミ;,,゚Д゚彡「普通サイズのパウンドケーキが飛んでくるから……」
.
-
(`・ω・´)「うむ。おもしろい」
兄者が砕いたバウンドケーキのかけらのうち、
一定の大きさのものは通常サイズのパウンドケーキの形に変化し、
そしてエリア内を縦横無尽に飛びまくっている。
( ´_ゝ`)「確かに」
(´<_`;)「面白いとか言える状況か!?」
(;゚∋゚)「大丈夫か!?」
(;,,゚Д゚)「結構衝撃が来るぞゴルァ!」
(`・ω・´)「多分一つ一つの体当たりが、
さっきの兄者の攻撃くらいある!
気を付けろ!」
(;´・ω・`)「ジャンプも来るよ!3!2!1!」
声に合わせ、ショボンとクックル以外が飛び上がる。
バウンドケーキが着地し、地面が揺れた。
(;´・ω・`)「クックル!大丈夫!?」
(;゚∋゚)「おれは大丈夫だ!ショボンの方が気を付けてくれ!まだ大丈夫か!?」
(;´・ω・`)「……そろそろ終わる」
(;^ω^)「出るお!」
(;´・ω・`)「多分通常攻撃は効かない!
僕とクックルの作った壁に当たったケーキは砕け散ったけど、
盾や武器で防いだケーキは跳ね返っただけだった!」
('A`;)「わかった!やってみる!」
(;´・ω・`)「技後の硬直に気を付けて!」
(;^ω^)「わかったお!」
.
-
クックルの後ろから外に出るタイミングをうかがう二人。
しかし四方から飛び跳ねるパウンドケーキに隙を見出せない
(;´・ω・`)「兄者、あと10秒でおわるから、そのタイミングで範囲技を。
シャキン、兄者のフォローを」
( ´_ゝ`)「おれは大丈夫だ。
シャキン、ショボンのフォローに回ってくれ」
(`・ω・´)「二人ともまとめて守ってやるよ。
兄者の終わるタイミングでおれが剣を振り回せばすむだろ」
(;´・ω・`)「両手剣の全方位は」
(;´_ゝ`)「おれ達にもヒットするだろうが!」
(`・ω・´)「そういやそうか」
「僕がいくょぅ」
( ´_ゝ`)「?今なんか声が……」
ショボンが自分の横、シャキンの前の何もない空間を見る。
(;´・ω・`)「うん……そうだね。頼むよ。でも、無理はしないで。ぃょぅ君」
自分の名を呼ばれた瞬間、
フード付きのマントをなびかせてぃょぅがショボンの作る壁の隙間から飛び出した。
(`・ω・´)「いけいけー!」
飛んでくるパウンドケーキを両手剣の側面でたたき落としながら、
シャキンが無責任な声を上げた。
走り抜けるぃょぅ。
その姿はフサギコの装備とよく似ているが、
色は灰色とかすれた緑を基調としていた。
また全体的に少し短めになっており、
手首足首を露わにして駆け抜けるその姿はまさに『少年剣士』だった。
.
-
( ´_ゝ`)「え?いつからいたの?」
兄者が呆然と呟く。
その数秒で、ぃょぅの持つ短めの刀はパウンドケーキをいくつか切り裂いていた。
(`・ω・´)「初めからいたぞ」
(;´_ゝ`)「え?」
(´・ω・`)「終わる!兄者お願い!」
( ´_ゝ`)「お、おう!」
ショボンが回す槍が止まり、
三人を包む光が消えていく。
まるでそれを待っていたかのように四方から三人に向かって飛ぶパウンドケーキ。
( ´_ゝ`)「とりゃ!」
(`・ω・´)「とうっ!」
少し気の抜けた掛け声を上げて地面を叩く兄者。
叩いた地点から1メートルほどの大地が揺れ、
そこから先には半径二メートルほどの衝撃波が3メートルの高さまで広がる。
シャキンは硬直しているショボンを小脇に抱えて揺れる地面を回避した。
(´・ω・`)「ありがと」
(`・ω・´)「お兄ちゃんだからな」
(´・ω・`)「はいはい」
( ´_ゝ`)「弟者―!お兄ちゃん頑張ってるぞ!」
(´<_`;)「黙って戦っとけ!」
( ´_ゝ`)「ちぇー」
.
-
(´・ω・`)「衝撃波が消えるタイミングでクックルの所に!」
(`・ω・´)「わかった」
( ´_ゝ`)「弟者―。そっち行くからなー」
(´<_`;)「だまってろー!」
その間も、緑灰色の影は光る刀で確実にパウンドケーキを切り裂いていた。
その速度は、ブーンよりも遅い。
その位置取りは、ドクオよりも拙い。
その攻撃力は、ここにいる誰よりも低い。
彼のレベルは、ここにいる誰よりも低い。
けれど彼は、この場にいる誰も出来ないことを、成し遂げていた。
ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅ……凄いから」
自分に向かって飛ぶパウンドケーキを避け、
すれ違いざまに光る刀で切り捨てる。
同じ方向に跳ぶパウンドケーキは無駄に追わず、
自分に向かって飛ぶ敵だけを確実に仕留める。
_
( ゚∀゚)「すげー」
(´・ω・`)「クックル、引き継ぐよ」
(;゚∋゚)「ありがとう」
クックルの前に立って槍を回し始めるショボン。
光がメンバーを包むように広がり始めた時に、
クックルは槍を動かすのをやめた。
(´・ω・`)「ブーン、ドクオ、出れる?」
.
-
( ^ω^)「行けるお!」
('A`)「おれもだ!」
ぃょぅが数を減らし、更に彼が動き回り注意を引き付けているため隙が生まれていたため、
ブーンとドクオはショボンの返答を待たずに飛び出した。
ブーンという青い風が吹き荒れ、
ドクオという闇が敵を砕く。
けれどその二人の動きを邪魔することなく自分のやるべきことをやるぃょぅの動きに、
他のメンバーは視線を奪われていた。
(=゚ω゚)ノ「お久しぶりですょぅ!」
片手を上げてあいさつした後に、
「ぴょこん」という擬音が聞こえそうな仕草で頭を下げるぃょぅ。
全員の顔がほころび、それぞれに握手をし、彼の頭を撫ぜた。
(´・ω・`)「ちょっと試したかったから、隠蔽で付いてきてもらってたんだ。
彼の隠蔽スキルとツンとモララーの作ったマントが合わされば
ほぼ完璧に気配を消せることが分かったのも収穫だけど、
それよりなにより助かったよ。
ありがとう。ぃょぅ君」
最後に握手をするショボン。
(*=゚ω゚)「嬉しいょぅ」
顔を赤らめるぃょぅ。
(`・ω・´)「なるほど。デミタスを連れてこなかったのは正解だな」
ボソッと呟いたシャキン。
数人が黙って頷いた。
.
-
('A`)「で、これからどうするんだ?
あいつはこちらから攻撃しなけりゃ攻撃してこないみたいだけど、
すり抜けて奥にも行けなさそうだぞ」
(´・ω・`)「確実にわかったことは、
攻撃一回に対し、ジャンプの攻撃が一回。
攻撃力はそれほど大きくはないけど、
まともに当たれば数秒間体が動かせない。
砕いたり切ったりして零れたスポンジは、
その分だけ小さい形に姿を変えて突進攻撃を行う。
攻撃力は、バウンドケーキを攻撃した時のパワーと同等」
_
(;゚∀゚)「なんだそりゃ」
(´<_` )「クエストとはいえ、ふざけすぎだろ」
( ^ω^)「敵が目の前にいるのに、
こんな風に話し合いが出来るのも面白いおね」
('A`)「だなー」
( ゚∋゚)「だが、のんびりやっていて大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「カウントダウンは出てないから時間は無制限っぽいけど、
クエスト自体に『日が沈む前に届けて』って言われているから、
そろそろ片付けないとだけど……」
(´<_` )「だが、どうする?」
_
( ゚∀゚)「ここはおれが一発」
<_プー゚)フ「いやおれだろ」
両手剣を構える二人。
だが誰も反応しなかったため静かに剣を下ろした。
ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅに頑張ってもらうから」
(=゚ω゚)「!」
.
-
(´・ω・`)「それが一番なんだけど……」
(=゚ω゚)ノ「役に立てるなら何でもやるよう!」
(´・ω・`)「無理なく、自分の命を大事に、
でも、君にしかできないことをお願いしたい」
笑顔を消し、真剣なまなざしでぃょぅを見るショボン。
(=゚ω゚)「!……」
その視線を、しっかりと受け止めたぃょぅ。
ゆっくりと頷く。
(´・ω・`)「ありがとう、じゃあ説明するよ」
(=゚ω゚)ノ「はいだょぅ!」
(=゚ω゚)ノ「準備できたょぅ!」
バウンドケーキの側面、
円形広場のギリギリに立つぃょぅ。
マントを外し、先ほどよりも少しだけ長い刀を持つ。
('A`)「大丈夫なのか?武器を強くして」
ミ,,゚Д゚彡「長さ重視でそれほど強くはないから」
( ´_ゝ`)「あれもおれが作った」
(´<_` )「いちいち胸を張るな。
それを言うなら防具は全員おれが作った」
( ´_ゝ`)「ぃょぅのマントはツンとモララーの共作だろ」
.
-
(´<_`;)「うっ。
あ、あれは防具じゃないからな」
( ´_ゝ`)「負っけ惜っしみー。
負っけ惜っしみー。
弟者せっせと負っけ惜っしみー」
(´<_`#)「『待ちぼうけ』のメロディで歌うな!」
(´・ω・`)「そろそろやりたいなー」
( ´_ゝ`)「うむ。いつでも行けるぞ」
(´<_`;)「すまん。大丈夫だ。進めてくれ」
<_プー゚)フ「仲良いな」
(*´_ゝ`)「エクストには今度良い剣をプレゼントしてやろう」
(´<_`#)「もう防具作ってやらん」
('A`#)「そこの三人!やるぞー!」
( ´_ゝ`)「おう!」
(´<_` )「すまん!いける!」
<_プー゚;)フ「え?おれも怒られた?」
駆けだすぃょぅ。
刀は水色に光り輝いていた。
そして跳躍し、上から下へ、
ザ・バウンドケーキが円形広場に突き出ている線に沿うように刀を通す。
もちろん刀を長くしたとはいえバウンドケーキを切る長さは無いのだが、
水色の光はいつの間にか刀の先数メートル伸びており、
光がバウンドケーキを切断していた。
着地し、刀を大地に付けるように下ろすぃょぅ。
.
-
そして硬直したのその体をクックルが抱き上げ、
すぐさま後方に走る。
(=゚ω゚)「ありがとうだょぅ」
( ゚∋゚))
黙って頷くクックル。
(=゚ω゚)ノ「大丈夫だょぅ。
クックルさんが話せるのはヘリカルにも話さないょぅ」
(;゚∋゚)「え、聞こえてたのか?」
(=゚ω゚)「小さかったけど、聞こえてたょぅ。
でも、秘密はもらさないから大丈夫だょぅ」
( ゚∋゚)「そうか。
いつも二人で花を買いに来てくれていたから、
少し心を許していたんだろうな」
(*=゚ω゚)「嬉しいょぅ」
二人が安全な位置に退避した時には、
切られたバウンドケーキが無数のパウンドケーキに変貌を遂げていた。
(´・ω・`)「ジャンプ来るよ!3!2!1!」
そしてショボンの指示に従ってジャンプをすると、
その時にはパウンドケーキが飛び始めていた。
( ´_ゝ`)「とりゃ!」
回避のジャンプの着地と同時に兄者が大金鎚を振り下ろす。
今度は前方に衝撃波が生まれ、3メートル近く扇状に広がった。
(´<_` )「おれ達は位置固定で衝撃波攻撃だからな。
動くなよ兄者」
.
-
硬直する兄者の前に立ち、両手斧を構える弟者。
( ´_ゝ`)「いけいけ弟者―」
(´<_` )「とう!」
気合を込めて真横に斧を振る。
生まれた衝撃波はほぼ兄者の放ったものと同じくらいだった。
( ´_ゝ`)「流石だな」
(´<_` )「ふっ。あたりまえだ」
二発の衝撃波によって多数のパウンドケーキが削られたが、
開いた隙間を埋めるようにパウンドケーキが飛ぶ。
<_プー゚)フ「やらせるかよ!」
_
( ゚∀゚)「へっ!」
兄者と弟者に向かって飛ぶパウンドケーキを叩き落とす二人。
両手剣は共に白く輝いている。
(`・ω・´)「両手剣にも範囲攻撃はあるぞ!四人でローテーションを組め!」
シャキンの指示ににやりと笑う二人。
_
( ゚∀゚)「ショボン!」
(´・ω・`)「そこら辺は四人でやりやすくしていいよ!
その半径2メートルのエリアは任せた!
全員あの四人のエリアには入らないようにして!」
<_プー゚)フ「いよっしゃあ!
任された!!!」
それぞれに構える四人。
.
-
支援
-
(`・ω・´)「ギコ!盾持ち片手剣は慣れたか?」
(,,゚Д゚)「ま、まだまだだ!」
(`・ω・´)「今日は防御と攻撃のいい練習になるぞ!」
(,,゚Д゚)「!分かったぞゴルァ」
並んで盾を構える二人。
普段ならそのまま突っ込んでいく二人だったが、
今日は向こうから飛んでくるパウンドケーキに合わせて盾を操った。
(`・ω・´)「こいつであいつらを跳ね返せることが出来る。
角度をうまくやれば四人の所に向けて飛ばすことが可能だ」
シャキンの盾に当たったパウンドケーキが跳ね返されて飛び、
エクストの放った衝撃波に巻き込まれて消滅した。
(,,゚Д゚)「ご、ゴルァ」
(`・ω・´)「それは相手の剣を受け流したり反射させるときと考え方は同じだ。
瞬時に相手の攻撃のベクトルを見極めて、
それにふさわしい型に盾を構える。
それを意識しろ。
相手の攻撃を受け止めるだけの盾の使い方から、
一歩進めるはずだ」
(,,゚Д゚)「!ゴルァ!」
( ゚∋゚)「ギコも強くなったな」
クックルが無造作に回しているようにみえる槍は、
自分の周囲を飛ぶパウンドケーキを的確に攻撃している。
時折赤く光るが、基本的には剣技ではなく通常攻撃だ。
( ゚∋゚)「槍はこういう攻撃は向かないんだよな」
(´・ω・`)「基本的には『刺突』だからね、
技としては流し切りも出来るけど。
それに両手槍は攻撃力が高い分、
数で勝負してくる敵には弱い」
.
-
( ゚∋゚)「ああ」
クックルは、飛んでくるパウンドケーキを見て槍を動かしている。
ショボンは、飛んでくるパウンドケーキを予測して体を動かし避けていた。
( ゚∋゚)「チャクラム、久しぶりだな」
戻ってきたチャクラムを手に取り、
流れるようにもう一度放つ。
(´・ω・`)「練習はしていたけどね。
使う場所を選ぶ武器だから」
( ゚∋゚)「そうだな。
チャクラムは、投擲武器の中でも特殊な部類に入る。
形は輪投げの輪を大きくしたようなとでも言えばいいだろうか。
そして持ち手の部分以外はほぼ『刃』であるため、
手に持てば敵を切り裂くこともできる武器である。
その為この武器を使うためには、『投擲』だけでなく『体術』スキルも必要としている。
だがしかし、この武器の最大の特徴は『手元に戻ってくる投擲武器』であるという事だった。
通常投げたら投げっぱなしの投擲武器と違い、
チャクラムはブーメランのように戻ってくる。
投擲武器最大の難点が、この武器には無かった。
しかしその代わりに大きな難点がこの武器には存在した。
それは、武器を投げた後戻ってくるまで、他の攻撃が出来ないという事だ。
武器が戻ってくる場所は基本的には投げた場所であり、
大きく位置移動した場合はうまく受け取ることが出来ない場合もある。
更に剣技中は投げてから戻ってくるまでが一つの『剣技』であるため、
システムに認識されない動きをしてしまうとそこで剣技がキャンセルされてしまい、
身体の硬直、チャクラムが明後日の方向に飛んで行ってしまう、
といった失敗となってしまう。
これによりチャクラムは、
巨大な敵や、モンスターが一体しか出てこないエリア、
更に言えば数名で一体と戦う時には非常に有効な武器と言えるが、
ソロで戦う者が使う武器ではなかった。
だがショボンが後方で支援や場の支配を目的として戦う時、
チャクラムは最強の、いや、モンスターにとって『最凶』の武器となる。
と、いう事だな」
.
-
(;´・ω・`)「え、あ、う、うん。
そうだね。
え?……クックル?」
( ゚∋゚)
戸惑いながらクックルを見上げるショボン。
何かに期待しているかのようなキラキラした目でクックルがショボンを見た。
(;´・ω・`)「え?あ。う。
せ、説明乙?」
(*゚∋゚)
嬉しそうに笑ったクックルを見て、
更に困惑したショボンだった。
その間も風と影は戦場を走った。
パウンドケーキよりも素早い動きと思えるほどの素早さで駆け、跳ぶ、青い風。
その隙間を縫うように黒い影が現れ、斬撃が光る。
青灰色の影は大地を駆け巡り、光る刀で敵を確実に切り裂く。
その周りを、風になろうとする鳥のように緑灰色の影が跳躍し、敵を切り裂いた。
( ^ω^)「おっおっおー!」
('A`)「のんきだなぁ」
( ^ω^)「みんなで戦うのは楽しいお」
('A`)「はぁ」
ミ,,゚Д゚彡「その気持ちわかるから!」
(=゚ω゚)ノ「僕もうれしいょぅ!」
.
-
ミ,,゚Д゚彡「こんな風にぃょぅと戦えるなんて思ってなかったから!」
(=゚ω゚)「がんばったんだょぅ!」
( ゚∋゚)「彼も凄いな」
(´・ω・`)「ぃょぅ君は、フサギコと同じ刀スキルを使いたいって曲刀を振り回して、
今やフサギコとはまた違う形で充分に刀を使いこなしてるよ。
レベルが低いのは敵を倒していないだけで、
スキルの熟練度も高いし、使える剣技も一つ一つを丁寧に練習してる。
だから最初の頃の技なら硬直を意識しないで使えている」
( ゚∋゚)「なるほど。
アインクラッドにおいて、
個人のレベルと武器を使うためのスキルの熟練度は別であり、
更にスキルのレベルを上げると使えるようになる剣技の一つ一つにも熟練度が存在する。
その中で個人のレベルは敵を倒したりクエストを攻略しないと上がらないが、
スキルの熟練度はその武器を使うことによって、
剣技の熟練度はその剣技をつかう事によって上がる。
つまり敵を倒さなくても、スキルや剣技の熟練度を上げることができる。
ということだな」
(;´・ω・`)「え、あ、うん、そのとおりなんだけど。
さっきからどうしたの?
なんかそういう縛りとか罰ゲームとか?」
( ゚∋゚)「前にしぃに間違った解説をして怒られたから、
頑張ってるんだ」
(;´・ω・`)「……そうなんだ」
( ゚∋゚)「理論的に技を知っていた方が、
指揮をする時の判断力につながるからな」
(´・ω・`)「……うん。だね。
でも戦闘中は心の中で思うだけにしておいた方が良いかも」
( ゚∋゚)「そうか?」
.
-
(;´・ω・`)「うん。できれば」
( ゚∋゚)「わかった。善処しよう」
(;´・ω・`)「(善処なんだ……)」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!」
(`・ω・´)「全体に目を向けろ!
今飛ばしても四人の誰も範囲攻撃をしていないだろうが!」
(;,,゚Д゚)「!お、おう!」
ギコが弾き飛ばそうとしたパウンドケーキを切り裂くシャキン。
通常技の為消滅はさせられなかったが、
飛ぶ方向を変えることには成功している。
(`・ω・´)「盾持ちが受け流した攻撃の先に仲間が居たらどうする。
後ろに指揮者がいる時はその指示に従えばいいが、
それでも常に自分でも考えろ」
(,,゚Д゚)「分かった!」
改めて盾を構え、片手剣を握りしめるギコ。
シャキンはそんなギコを隣に見つつ、
改めて盾を構えた。
<_プー゚;)フ「シャキンがスゲー指導してる」
_
( ゚∀゚)「なんだ。ギルドの時とか教えてもらってないのか?
シャキンは両手剣も使うし」
<_プー゚)フ「んー。おれと一緒の時は盾持ちばかりだし、
楽しく戦ってるけど指導らしい指導を受けた覚えはないな」
(´<_` )「でもエクスト、戦い方が前と変わったな」
<_プー゚)フ「?そうか?」
.
-
(´<_` )「ああ。
スタイルは変わってないけど、
一つ一つの動きに余裕を感じる」
_
( ゚∀゚)「おれもそう思う。
前は隣に居てお前の剣が当たりそうになったことあるけど、
最近はすぐそばに居ても安心して戦えるからな」
<_プー゚;)フ「あー。悪かった」
(´<_` )「ま、シャキンが言わなくてもミルナやデミタスが言っているのかもな」
<_プー゚)フ「いや、特にそれほど指導は……」
_
( ゚∀゚)「後ろから怒鳴られたりしないのか?」
<_プー゚)フ「それはされる。
あとパーティーで戦闘した日の反省会でもいっぱい」
(´<_`;)「……それ、指導じゃないか?」
_
(;゚∀゚)「指導だな」
<_プー゚;)フ「!え、あ、そ、そうか」
(´<_`;)「(バカな子だ)」
_
(;゚∀゚)「(アホな奴だ)」
( ´_ゝ`)「おまえら真面目に戦えよー」
(´<_`;)「ああ兄者、すまんすまん」
_
(;゚∀゚)「範囲攻撃は任せちまったな」
( ´_ゝ`)「おれは結構使うようにしているけど、
お前らあんまり範囲攻撃技は使わないだろ?
熟練度上げるためにも使っとけよ」
.
-
<_プー゚)フ「でもなー。威力はあるけど硬直長いし」
( ´_ゝ`)「アホ。だからこそだろうが。
熟練度上げれば硬直時間も短くなる。
使える技を増やせば戦い方も変わるってことだ」
<_プー゚)フ「……ふむ」
( ´_ゝ`)「あれでいてギコは片手剣の扱いに関しては高いレベルを持ってる。
その使い方がまずかったから、ショボンはそこを直した。
その上でギコは自分で盾を使うことを選んで、今必死に練習しているんだ」
(´<_`;)「兄者が……」
_
(;゚∀゚)「真面目なことを話してる」
( ´_ゝ`)「弟者ひどーい。
兄者おこっちゃうぞ。ぷんぷん。
ジョルは後で頭に金鎚な」
(´<_` )「気持ち悪いことを言うなボケ」
_
(;゚∀゚)「ちょ、おい、対応違いすぎるだろ」
( ´_ゝ`)「かわいい弟と同じ扱いを求めるな汚らわしい」
_
(;゚∀゚)「汚らわしいってなんだよ!」
<_プー゚)フ「……おれも、そろそろ本気を出すか」
(´<_`;)「おい、今まで本気じゃなかったとかシャキン達に怒られるぞ」
<_プー゚;)フ「い、いや、本気で真面目にやってたけど、
その方がカッコいいかなって」
(´<_`;)「(やっぱりバカな子だ)」
_
(;゚∀゚)「(とことんアホな奴だ)」
( ´_ゝ`)「中二病も大概にしておけよー」
.
-
攻略方法を決め、順調に戦いを進めた彼らにとって、
『The BoUnd Cake』は強敵ではなかった。
(´・ω・`)「さて、それでは先に進もうか
その後十回ほど同じことを繰り返し、
『The BoUnd Cake』をポリゴンにすることに成功した12人。
ドロップ品は手に入ったが経験値が入らなかったため、
この後の戦いに備えて全員が武器を構えたまま道を進む。
すると前方には、『お菓子の家』が見えた。
ミ,,゚Д゚彡「『ヘキセンハウス』だから……」
ぼそりと呟いてちらっとギコを見るフサギコ。
ギコは隣にいたシャキンの陰にそっと隠れた。
(´<_` )「『ヘキセンハウス』、『お菓子の家』
ってことは、今度は『魔女』との戦いか」
弟者の言葉を聞き、気を引き締める面々。
('A`)「扉から入らないといけないのかな」
(;^ω^)「おー。狭いところの戦いは苦手だお」
(´・ω・`)「まずは僕がドアを開けるよ。
ただもしトラップがあるとまずいから、
調査をしてもらえるかな。ドクオ」
('A`)「了解」
.
-
スタスタと板チョコレートに見えるドアに近付くドクオ。
そしてクッキーとチョコレートで出来たキノコの形のドアノブをタップする。
_
( ゚∀゚)「(きのこの山だ……)」
(,,゚Д゚)「(きのこの山だ……)」
( ^ω^)「(屋根にはたけのこの里の大きいのがあるお。
おいしそうだおねー)」
ミ,,゚Д゚彡「(アポロもあるから!)」
(=゚ω゚)「(ヘリカルが喜びそうだょぅ)」
( ´_ゝ`)「(とりあえず一個取ってみるか)」
(´<_` )「(兄者を制止しないと)」
<_プー゚)フ「(あ、屋根に刺さってるポッキーの太い奴名前なんだっけ)」
( ゚∋゚)「(あれはフラン……だったかな。懐かしい)」
(`・ω・´)「!(も、もしやあれは幻のすぎのこ村!?)」
(´・ω・`)「(そういえばスポンサーに明治の名前があったような)」
('A`)「とりあえずトラップは無いな。
ってお前ら、キョロキョロしすぎだろ。
何をそんなに見てるんだ?」
怪訝な顔で周囲を観察するドクオ。
慌てて視線を戻す何人か。
(´・ω・`)「ありがと、ドクオ。
じゃあ開けてみるね」
左手にチャクラムを持ち、
右手でドアノブを掴むショボン。
.
-
音がしないドアをゆっくりと開ける。
「……人間か……」
暗闇に視界を奪われた刹那、
低い、地を這うような声が聞こえた。
(´・ω・`)!
ドアノブを突き放すように押してドアを全開に開けるショボン。
そしてチャクラムを盾のようにして構えた。
「……人間が来たのは、どれほどぶりじゃろう」
暗闇の中、ぼぅっと老婆の顔が浮かぶ。
その肌はしわくちゃで、垂れ下がった長い鼻が口にかかっている。
フードを被っているのか耳や頭は隠れていた。
老婆「後ろにもおるのか……」
ショボンの後方に目をやり、ぼぞっと呟く。
老婆「何人じゃ?」
(´・ω・`)「え?」
老婆「何人で来たんじゃ?」
(´・ω・`)「…………12人です」
老婆「そうか」
暗闇の中、老婆が後ろを向いたたためその顔が見えなくなった。
老婆「何をしておる。中には入れ」
(´・ω・`)「え?」
.
-
老婆「ああ。人間には暗いのか。
エルフは目が良い奴が多いからな」
室内が、明るくなった。
『Sweets Cafe MAGICAL ELF』
渡されたメニューの一番上には、
蔦をモチーフにした装飾文字でそんな言葉が書かれていた。
_
( ゚∀゚)「なんて書いてあるんだ?」
(老婆)「『スウィーツカフェ、マジカルエルゥフ』にようこそ」
ジョルジュの呟きを聞いたのか、
やってきた老婆がグラスに入った水を配りながら笑顔で言った。
( ´_ゝ`)「巻き舌にこだわりを感じるな」
綿菓子で出来たソファーに腰かけている兄者が、
メニューを見つつ呟く。
ミ,,゚Д゚彡「スイーツカフェ……おいしそうなメニューだから」
赤地に白いドットの大きなキノコに腰かけたフサギコが、
食い入るようにメニューを見る。
(´・ω・`)「ここはその……カフェなんですよね?」
キュートでラブリーでKAWAII店内を見回しつつショボンが聞く。
(老婆)「なんじゃ、知らずに入ってきたのか?
まあ客はエルフしか来んから知らんのも無理はない」
.
-
(´・ω・`)「はあ、そうですか……」
真っ黒に見えた老婆のローブも、よく見ていると濃い紫色の細かい花柄だった。
(老婆)「で、注文はどうするのじゃ?」
(´・ω・`)「あ、えっと、実は、
ルヴァイ村のパルスエットさんからケーキを作る材料を頼まれておりまして」
(老婆)「なんじゃ。材料を買いに来たのか。
ウモス村というと、レスター小僧がいた村じゃな」
(´・ω・`)「あ、はい。レスターおじいさんの孫娘さんの依頼でして」
(老婆)「人間は年を取るのが早いもんじゃ」
(´・ω・`)「はははは。
それで……」
(老婆)「うむ。何が必要なのかは想像できる。
用意してやろう。
で、注文はどうする?」
(´・ω・`)「あ、いえ、物がそろいましたらいただければすぐにでも」
(老婆)「物はすぐにそろう。
で、注文はどうするのじゃ?」
(´・ω・`)「あのその」
(老婆)「注文はどうするのじゃ?」
(´・ω・`)「できればその……」
(老婆)「ご注文は?」
(´・ω・`)「……」
ミ,,゚Д゚彡「しょ、ショボン」
.
-
メニューを片手にキラキラとした目でショボンを見るフサギコ。
隣に座っているぃょぅも同じ様に、
更に言えば甘いもの好きを公言しているメンバーは、
控えめに、けれどしっかりとメニューを読んでいた。
(´・ω・`)「……今選んでいますので、少々お待ちいただけますか?」
(老婆)「ふぉっふぉっふぉ。
人間相手に腕を振るうのは久し振りじゃ。
腕がなるのう」
(´・ω・`)「はぁ……」
ミ,,゚Д゚彡「メニューはいっぱいあるから!
出来れば別の物を頼んでシェアしてほしいから!」
(´・ω・`)「……はぁ」
ショボンの溜息は、フサギコ以外の苦笑いを誘った。
(´・ω・`)「で、これのレシピは?」
ミ,,゚Д゚彡「教えてほしいから!」
そして全員が食べ始めた後、
ショボンとフサギコがエルフの老婆に詰め寄る姿を見て、
二人以外の全員が見ないふりをした。
.
-
エルフの作るスイーツを堪能したのち、
依頼者のいる村に戻った12人。
ぃょぅは店を出ると同時にマントを羽織りスキルを発動させたため、
周りから見えるのは11人だ。
(パルスエット)「ありがとうございます!
これで作れます!」
依頼人に材料を渡すと、
彼女は「ちょっと待っていていください」
と言って奥の部屋に移動した。
そして1分もたたずに戻ってくると、
手にはパウンドケーキを12個持っていた。
(´・ω・`)「……パウンドケーキ」
(パルスエット)「おじいちゃんはこれが大好きなんです!
食べさせてあげられます!」
(´・ω・`)「あー。そうなんですかー」
(パルスエット)「あまりにも美味しくて食べた人が驚いて飛び上がるから、
別名「バウンドケーキ」っていうんですよ」
(´・ω・`)「……そうなんですかー」
(パルスエット)「これは依頼料とおすそわけです。
本当にありがとうございました!」
笑顔で奥の部屋に戻る女性。
ショボンはクエストクリアを告げるチャイムと、
経験値やアイテムが入る電子音を聞きながら、
複雑な表情で家を出た。
.
-
('A`)「どうぞお召し上がりください」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ。よくやった」
川 ゚ -゚)「ほう。これが報酬のケーキか」
ギルドVIPホームのリビングルーム。
部屋にはツンとクーとドクオ、そしてブーンとショボンが居る。
そしてソファーでくつろぐツンとクーの前に、
クエスト報酬のパウンドケーキが並べられた。
ξ゚⊿゚)ξ「!うん!おいしい!」
川 ゚ -゚)「なるほど。噂になるのが分かる」
(´・ω・`)「え?噂になってたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?ショボンが噂話の収集できてないの?」
(´・ω・`)「知らなかった」
川 ゚ -゚)「一部の女子で作ってる会報の噂話コーナーに載ってたネタだからな。
ランダムで渡されるケーキの中に、
格段においしいものが存在するっていう。
多分これの事だろう。
悪いが今までにショボンやフサギコが作ってくれたものも含めて、
この世界で食べた中で一番おいしい」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。一番ね」
( ^ω^)「おっおっお。
まだまだこの世界の食は奥が深いってことだおね」
(´・ω・`)「ちょっとくやしいな」
川 ゚ -゚)「で、その渡された会員カードがあればまたその店に行けるのか?」
.
-
(´・ω・`)「……どうだろう。
とりあえず、あのルートのクエストに進むには調理スキルを上げた者が必要なんだと思う。
そしてカードをもらえるのも、調理スキルを持っているものだけ、
もしくは1パーティーに一つ。
パーティーのリーダーをしていた僕とフサギコの所にしかカードが入らなかったから、
両方とも憶測だけど多分ね」
( ^ω^)「でもポイントカードはお店を出る時に全員がもらったおね」
('A`)「婆さん嬉しそうだったな」
( ^ω^)「『また来るのを待ってるぞ』って言ってたおね」
(´・ω・`)「敵自体は攻略方法が確立できたからそれほど大変じゃないし、
また折を見てクエストをやってみるのもいいかもね。
メンバーも色々と変えてみて」
ξ゚⊿゚)ξ「その時は私も行くわよ」
川 ゚ -゚)「もちろん私もな」
(´・ω・`)「うん。よろしく頼むよ」
( ^ω^)「でも、ぃょぅ君の隠蔽はすごかったおね。
僕は同じパーティーだったし説明を受けていたからいることは知っていたけど、
現れるまでどこにいたのか全く分からなかったお」
('A`)「ああ。実は時々看破のスキルを使ってみたんだが、
見付けることが出来なかった。
まあおれの看破の熟練度はまだコンプリートしてないってのもあると思うけど」
ξ゚⊿゚)ξ「また呼ぶの?」
(´・ω・`)「このクエストにおいては、
レベルの低い、
攻撃力のそこまで高くないメンバーが必要だから。
次はヘリカルちゃんも一緒に行くのもいいかも」
ξ゚⊿゚)ξ「良いわね。ヘリカルちゃんの戦いも見てみたいし」
.
-
(´・ω・`)「ま、何はともあれ、これからの話だけどね。
カードの調査もしたいし。
売れる情報なのかどうかも精査しなきゃだし」
川 ゚ -゚)「そうだな。
良くも悪くもこのギルドは特殊だから、
一般的な情報として流していいのか悩むところだ」
(´・ω・`)「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ハインからメッセージ来てる。
向こうでも食事会をしたみたいね」
川 ゚ -゚)「こちらにはトソンから来てる。
あ、ヘリカルちゃんからもだ。ぃょぅ君と二人で食べたみたいだな」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。私の所にはヘリカルちゃんから来てない。
……あ、きた!」
川 ゚ -゚)「しぃにもメッセージを入れてみるか」
ξ゚⊿゚)ξ「やめときなさいよ。
ギコと二人でフラワーガーデン行ってるんでしょ。
万が一返信が来たら帰ってきた時冷やかす楽しみが半減するから」
( ^ω^)「またそういう悪趣味なことを」
('A`)「ケーキの感想を言いあうとか、
結構ちゃんとつながってるんだな」
川 ゚ -゚)「時々女子会をしているからな」
(´・ω・`)
('A`;)
(;^ω^)
川 ゚ -゚)「?何故沈黙する」
.
-
(´・ω・`)「いや、何を話しているのかと思ってさ」
('A`)「正直怖い」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼ね」
川 ゚ -゚)「ふふふ。女性は神秘的なものだからな」
ξ゚⊿゚)ξ「多分ドクオが言ってる怖さとは違うと思うわよ」
川 ゚ -゚)「?そうか?」
(;^ω^)「おっおっお」
夜は更けたころ、戻ってきたギコとしぃがリビングの会話に参加した。
その後夜の狩りに行っていたジョルジュとモララーが加わり、
ギルドVIPのリビングは、いつまでもにぎやかなままだった。
その後、バーボンハウスのスイーツのレベルが上がったと噂されるのは、
また、別の話。
終
.
-
おまけ
今日のモナーさん
.
-
(シリカ)「モナーさんがテイマーの会合に出席されたの久しぶりですよね」
( ´∀`)「そうもなね。なかなか時間が合わなかったもな」
(シリカ)「ふふふ。そういう事にしておいてあげますね」
▼・ェ・▼「きゃん!」
Σ゜ニ<<「ピー」
森の中を歩くモナーと少女。
年は12歳程度だろうか。
深紅の装備が良く似合う、
可愛い少女だった。
そしてその頭の上には小さなドラゴンが飛んでいる。
( ´∀`)「シリカちゃんもちょっと会わないうちに変わったもなね」
(シリカ)「え?そうですか?」
( ´∀`)「最初は装備が立派になったからかと思ったけど、
ちょっと大人っぽくなったみたいもな」
(シリカ)「え、あ、そうですか?
そんな風に言ってもらえると、うれしいです」
( ´∀`)「そういうところもなね」
(シリカ)「え?」
( ´∀`)「前だったら否定して、肯定して、
自分の可愛さを前面に押し出してブリブリしていたのに、
今は落ち着いてちゃんと自分の言葉で反応しているもな」
(シリカ)「……それほど仲良くないのに、
会合の後でお疲れのところお付き合いいただきまして誠にありがとうございます」
.
-
( ´∀`)「『中層プレイヤーのアイドル竜使いシリカ』
のお誘いを断ることなんてできないもなよ」
(シリカ)「それ絶対思ってませんよね!
というかバカにしていますよね!」
( ´∀`)「もなもなー。
そんなことないもな。
思ってるもなよー。
二つ名は誰かが意図的に付けない限りは自然につくもなしね。
もちろん本人の行動が引き金だとしてももな」
(シリカ)「……モナーさん、私の事嫌いですよね」
( ´∀`)「今は好感が持てるもなよ」
(シリカ)「ありがとうございます」
少しだけ怒ったように言った後、噴き出す少女。
(シリカ)「もう、前から思ってたけど凄い人ですよね。
モナーさんって。色々と!
でも、そんなモナーさんだからお連れしてみようかなって思ったんですよ」
( ´∀`)「そういえば、どこに行くもな?」
(シリカ)「秘密の場所です。
実はこの前発見しまして。
知り合いの高レベルの方を案内したんですけど、
行けなかったんです。
でも、その後一人だと行けて……。
だから私より強くて、しっかりとしたビーストテイマーさんと一緒なら行けるかもと思って」
( ´∀`)「もなもな……」
(シリカ)「この次が分岐なんですけど」
エリア移動をする二人。
.
-
移動した先は、前方に二股に分かれた道があり、
さらにその手前に右に行く道があった。
(シリカ)「ここです!
この手前の右の道がそうなんです!」
( ´∀`)「確かに地図と道が違うもなね」
(シリカ)「!ここのエリアの地図お持ちなんですか?
特に大事じゃないし、低層エリアでほぼ一本道なのに。
この分岐だって左右に分かれるだけでまた一本に戻るじゃないですか」
( ´∀`)「うちのギルドは得ることのできる情報は出来る限り得て整理しているもなよ。
さっき本部に残ってたメンバーに問い合わせたら送ってくれたもな」
(シリカ)「へー。凄いですね。
ギルドってみんなそんな感じなんですか?」
( ´∀`)「うちはギルマスが特殊もな」
▼*・ェ・▼「きゃん!」
(シリカ)「そ、そうなんですか。
(何故ビーグルちゃんは嬉しそうなんだろう)」
Σ゜ニ<<「ぴゃー」
(シリカ)「あ、うん。そうだね。ピナ。
じゃあ行きましょうか。
この道です」
二股に分かれた道の手前、
右に向かう道に向かう少女とドラゴン。
モナーとビーグルが続く。
(シリカ)「少し歩きますけど一本道で、モンスターは出ません」
( ´∀`)「それは良いもなね」
.
-
(シリカ)「そういえば、モナーさんは自分の二つ名はご存じなんですか?」
(;´∀`)「もな!?
し、知らないもなよ。
というか、モナに二つ名なんて」
(シリカ)「『中層のフロントランナー 銀狼使いのモナー』だそうです」
Σ゜ニ<<「ぴぴー!」
(;´∀`)「なっ!それはいったい何の冗談もな!」
▼・ェ・▼「くーん」
(シリカ)「今の攻略組に、ビーストテイマーていないそうなんです。
というか、今までいたことがあるのかちょっと知らないですけど。
それで、ビーストテイマーのイメージって、
ビーストテイマーになりたいが為にあんまり戦闘とかしてなくて、
強い人の後ろを付いてテイミングできるモンスターを
探しているやつらだって言われ始めているそうなんですよ。
あと、ペット飼って遊んでるやつらとか」
(;´∀`)「そういう人がいるって噂は聞いたことがあるもなけど、
それとどんな関係が……」
(シリカ)「連れているモンスターも、
それほど強いモンスターって多くないですし。
だからピナみたいなドラゴン系と、
ビーグルちゃんみたいな狼系は『戦える』ってことで貴重らしいみたいです。
更に言うと、ピナの種族『フェザーリドラ』と、
ビーグルちゃんの『シルブリュールフ』はその中でも別格らしいです」
Σ゜ニ<<「ピー!」
▼・ェ・▼「きゃん!」
(シリカ)「そして、私はまぁほどほどですけど、
モナーさんは中層のトップギルド、VIPのメンバーじゃないですか。
だからビーストテイマーのイメージ回復のためにそういう二つ名を広めようって相談してますよ」
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