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ロボの貞子が古城を調査したらみんなとにかく笑えるようです

1名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:37:07 ID:kzfdz5PsO
百物語に参加したいけど、7時までに投下終了をすることは出来ないので、問題があれば除外してください。

2名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:46:58 ID:kzfdz5PsO





 呪いの動画、というものが流行ったのは、廃れた規格から生み出された新しい怪談話の一つに過ぎない。





 ともすれば、2099年の現在。





 人類が地球を捨て、火星へと移住し始めた今となっては、根付く土台すら、廃れているのだから。

3名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:49:56 ID:kzfdz5PsO
 火星の観測所が見た青い球体に、見慣れない建造物が発見されたのはひと月前のことだった。



 進化したテクノロジーを用いて、火星に住まう人間へテレパシーにてアンケートを取ってみたところ──深層心理にまで作用し、絶対に嘘をつくことができない画期的なシステムである──全員がそれを知らなかったことが始まりである。



 ならばと、調査隊を派遣するのが人間の本能か。しかし、帰って来たものはおろか、入った時点で通信が途切れてしまうことがより一層、その建造物に対しオカルトを抱かせていた。

4名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:51:56 ID:kzfdz5PsO





 退屈だったのだ。





 人間が想像することは、たいてい、現実に起こり得てもおかしくはないという極論を用いたとしても、火星に眠っていた資源は計り知れなかった。



 ゆえに、人々は堕落する。例えば不老不死だとか、有体に言えば無敵だとか。



 なんのリスクも背負わない生きる屍と化していくその様に、疑問を抱き、調査隊を解体させ無機質なそれに全てを任せたのは、もしあのまま地球に居れば、すねかじりの末に孤独死するような青年だった。

5名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:55:30 ID:kzfdz5PsO
 テレパシーの利便性にかまけて、言葉を発する行為すら放棄した人々とは少し違う男だった。



 彼は宇都宮という名前だった。彼はロボットを作った。感受性を得る機能もつけた。彼は『彼女』に地球を、建造物を探索させた。



 彼女は貞子という名前だった。彼女は『城』を探索する使命を受けた。必要な言語や知識を搭載した。彼女は彼の元から旅立った。






 生まれたての赤ん坊に、感情はまだなかった。

6名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:56:49 ID:kzfdz5PsO
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ロボの貞子が古城を調査したらみんなとにかく笑えるようです







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7名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 06:59:01 ID:kzfdz5PsO
〜〜〜



 地球時間の午前2時11分。鈍色の空の下に光が生まれた。



 火星から発射した大きなロケットが、地表に着陸した時の光だった。



 その飛行物体は粗悪な造りをしていて、一昔前の人類であればこんなものが空を、ましてや宇宙空間を飛び回り、あまつさえ火星と地球を行き来する高性能な旅客機とは到底思えないほど粗末だった。

8名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:03:04 ID:kzfdz5PsO
 そんな、簡素な乗り物の扉を開いたのは、それを遥かに上回る技術をもってして作られた小さな人型ロボット。





      川д川





 鳩尾より少し上のところに埋め込まれた赤色の模様は、まるで鳩の血の色──ビジョンブラッドと呼ばれる鮮やかで濃い赤色のルビーがイメージに近い──を想起させ、足の指先から頭部を除いて纏う白い強化骨格は、人体のつなぎ目にオレンジ色の線が入っていた。



 美しい色味と相まった黒髪は、後ろを腰まで、前を口元まで下ろしていて、そのコントラストと、無機質な表情が彼女を人間ではない不思議な存在だと証明していた。



 貞子は、目的地の一歩手前に到着したのだ。

9名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:05:26 ID:kzfdz5PsO
〜〜〜



 さて、彼女がたどり着いた場所で最初に確認したのは、自己の目的だった。



 宇都宮が命じたそれは、端的に言えば終わるまで帰ってくるなという至極簡単なことだった。



 それは、使命を果たせなければ家に帰れないという、貞子にとって命よりも大切な父親が課した、呪いだったのだ。

10名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:07:03 ID:kzfdz5PsO
 謎に包まれた廃村、現れた城の存在、それらを解明するために搭載された、目の奥で活動しているレンズは家と出先をつなぐ唯一の架け橋。



 貞子の見る世界は全てが火星へと伝達されている。自立型探索機とでも言えばわかりやすい。



 例えば、そのレンズがつぶれてしまっては、彼女の存在意義はなくなり、死──生命の、ではなく活動する必要性の消失──のみが待っている。



 未だ感情のないロボットは、淡々とそれを確認し、探索地点に到達。古城を見上げた。

11名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:08:58 ID:kzfdz5PsO
 頭の中のマイクロチップは、正確にその大きさを計算した。インストールされている一般教養の中に記録されていた、スカイツリーという建造物とほぼ同じ大きさだった。



 貞子は歩を進めた。城の入口は朽ち果てた大扉。細く、強化骨格で引き締まった腕でそれを押すと、扉は静かに開いた。

12名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:11:51 ID:kzfdz5PsO
〜〜〜



 眼前に広がるのは洋館のような、それでいて会場のようでもあるそれなりに広い空間。白い床と赤茶色の壁や手すり、柵。



 この城の主──果たして存在あるいは存命しているのか──の趣向だろうか、白一辺倒ではないことを主張する真紅のカーペットが、入って中央の階段に敷かれているところを見るに、人、ないしそれに準ずる者がいる可能性を計算する。



 ふと、地面に置かれている一冊の本を視認した彼女は、それを手に取った。



 表紙に書かれている表題は『未来の書』だった。



 貞子はページをめくった。

13名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:14:50 ID:kzfdz5PsO
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 『この城に足を踏み入れたあなたは、この書物を開いている。

  そして、ページを進める。そこであなたは知る。

  この城にはルールがあることを。

  そのルールは次のページに書かれている』



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 貞子はページをめくった。

14名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:15:57 ID:kzfdz5PsO
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 『この城では、言葉を発してはいけない』





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15名も無きAAのようです:2015/08/17(月) 07:17:37 ID:kzfdz5PsO
 なるほど、人間が探索できない理由が分かった。



 ルールを破ってしまうことにどれだけのペナルティが課せられるのかは現時点で不明だが、不通や行方不明の事実を見るに生死に関わることと推測できた。



 貞子は音声を出す機能を付けていない。宇都宮博士の意向で、というよりは怠惰な人間の合理的な結果である。功を奏した。


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