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この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン

218 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:11:52 ID:wrs/EJAU0


雨脚が強まる中、曲調は時雨の様に不規則に、複雑で、頻繁に転調する。それに合わせ彼は楽しそうに揺れる。

219名も無きAAのようです:2015/07/15(水) 22:14:46 ID:WVsu8KDc0
支援

220 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:15:25 ID:wrs/EJAU0



ぱらぱらと変わる曲調を雨が追いかけ、踊る。

221 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:17:15 ID:wrs/EJAU0


爪'ー`)「♪〜」


演奏に彼の不思議な言語も混ざるようになり、テンポが速くなる。

篠突く雨はバラバラと激しく辺りに降り注いだ。



情熱的に心を強く揺さぶる曲調はさらに激しさを増し、音のスコールは激流を起こし心を洗い流していく。

まるで焦土に眠る死者へ届けとばかりに豪雨が地面を鳴らす。

222 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:22:35 ID:wrs/EJAU0


周囲の音をかき消すほどの雨の中でも彼の音楽は澄み渡る。


(゚、゚*トソン「......」

('A`*)「......」


音の雨が段々と小さく落ち着いたものに変わると、霧雨が静かに漂い始めた。



すると焦土の町に不思議な光景が広がった。


.

223 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:23:16 ID:wrs/EJAU0




それはまるで雪が降るような。



違う。



雪が昇るような光景。



新芽がぽこぽこと土から目を出す様に、焦土の下から産まれ空へと還る神秘的な白く淡い雪。


.

224 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:24:47 ID:wrs/EJAU0

(゚、゚トソン「綺麗......」

('A`)「......」


2人は空を眺め、しばし時間を忘れた。


どれだけ時間が経っただろうか。


いつの間にか台風が過ぎ去った様な突き抜ける空。


曲は雨上がりの青空の爽快感と静けさが混ざり合うフィナーレを迎えていた。


私の服とドクオさんの毛は既に乾いていた。

225 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:26:40 ID:wrs/EJAU0


('A`)「俺の友達も登れたのかな。」

(゚、゚トソン「ええ......きっと。」



空を見上げる事を止めてドクオさんの方を見ると、ふるふると震えながらまだ空を見続けていました。



私は静かにその場を離れ並ぶ墓標に手を合わせた。


.

226 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:28:15 ID:wrs/EJAU0


5話 新時代的雨の吟遊 〜おわり〜

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227 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/15(水) 22:30:49 ID:wrs/EJAU0
以上です。

予想以上に時間を食ってしまいました。
まさか 
(追いかける)
の後に
(様に)
と並べるとNGワードになるとは......

途中変な改行が起こっている箇所はそのためです。

何か質問や感想等あれば残していってくれると助かります。

228名も無きAAのようです:2015/07/15(水) 22:34:50 ID:pmYKvAnc0
見てたよー。乙!
今作も面白かった。

他の祭りに参加するつもりとかある?

229名も無きAAのようです:2015/07/16(木) 09:41:19 ID:dBmIIB/w0
乙!
綺麗な描写だった。
比喩じゃなくて本当に迷える魂を慰める力持ってるんだな、フォックス。
痛いヤツだと思ってごめん

230名も無きAAのようです:2015/07/16(木) 12:20:02 ID:C0YvbwcY0
乙乙!読んでて腹が減ったよ!
フォックス最初魔法使いかと思ったけれどいい奴だったとは。

231 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/16(木) 19:20:58 ID:SMNSk31c0
>>228 
本当は百物語にも飯テロにも出たいのですが出来るだけこっちの更新頻度上げたいので参加しません......
廃病院の話がホラー。飯テロが今話って感じで盛り込んでみました。

支援や感想ありがとうございました。次も1週間以内に投下したいです。

232名も無きAAのようです:2015/07/18(土) 19:34:21 ID:y6fohrn20
おつ
やべぇオモシロイワ

233 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/19(日) 10:58:12 ID:C9k.8stQ0
申し訳ないです。やっぱり飯テロに出たくてしょうがないのでちょっと遅れます。

234名も無きAAのようです:2015/07/19(日) 22:29:27 ID:9CSwTqX60
面白いの多いからなぁ
飯テロも楽しみにしとくよ

235 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/23(木) 17:10:30 ID:2i260V8I0
今夜投下します。

236名も無きAAのようです:2015/07/23(木) 18:08:03 ID:TYrrBJAg0
待ってました

237名も無きAAのようです:2015/07/23(木) 19:17:34 ID:rCUxvxEw0
っしゃ!

238 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/23(木) 19:56:11 ID:2i260V8I0
すみません。
急遽仕事が入ってしまったので、明日の8時頃投下に変更させてください。

239名も無きAAのようです:2015/07/23(木) 20:46:16 ID:rCUxvxEw0
(´・ω・`)

240名も無きAAのようです:2015/07/23(木) 23:50:02 ID:RosTidqw0
仕事してんな

241 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:06:33 ID:lrQywl7.0
やっとこさ帰宅!風呂入ってすぐに投下します。
ちょっと長くなるかもしれませんが良ければお付き合いください。

242 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:33:42 ID:lrQywl7.0
見直してみたらかなり長かったので半分に分けて投下します。

243 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:34:37 ID:lrQywl7.0

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「とーちゃん.....?なんでそんなにいそいでるの?こっちはおうちじゃないよ?」


子供を連れて川へ釣りに来た暖かい日の午後。

沢山魚が釣れていたにも関わらず、父はびくを置き去りにして突如子供を背負い走り出した。

「しっ。静かにしているんだ。」

こくこくと頷く。

「そうだ、いい子だ。」

急に背負われた時は一瞬困惑したが、父の背中は大きく暖かくすぐに安心感に包まれた。

彼らは元々走る事が苦手な種族だ。子供を背負っている分足はさらに遅くなるだろう。

追いつかれるのは時間の問題だ。

分っていた上でそれでもなお走り続ける姿は、最後の時を惜しんでいるかの様だった。

運が悪かった。気が付かれてしまった。ここは安全なはずだったのに。

悔やんでも仕方がない。今出来ることをやるしかない。

244 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:35:37 ID:lrQywl7.0

川の中を突っ切り匂いを払い、濡れた毛を引きずり近くにあった木の洞の中に子供を置いた。


「ここまでくれば大丈夫だろう。」

「とーちゃんが戻って来るまでここに隠れているんだ。絶対に出るなよ。約束だ。」

「フフ、そんなに震えるな......そうだ、お守り代わりにとーちゃんのスコップを貸しておいてやろう。」

「怖くなったら強く握ると良い。勇気が湧いてくるとーちゃんのスコップだからな。」

「......大切にするんだぞ。」

力いっぱい頷いた。

父は震える子供を残し木の葉で洞の口を覆った。



「最後に村からできるだけ引き離さないとな。」




力強く地を蹴り走り出した。

245 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:36:25 ID:lrQywl7.0




とーちゃんはいつまで経っても戻ってこなかった。





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246 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:37:37 ID:lrQywl7.0



この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン


.

247 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:39:39 ID:lrQywl7.0

爪'ー`)「なるほど、生命の遺跡でそんな事が......」


空へ還る雪が全て溶けた頃、3人は手頃な瓦礫に座り情報を交換した。


フォックスさんは歌い疲れて声が枯れ、喋るのが大変そうです。

仮面に隠れその表情は分りませんが。

爪’ー`)「ゴホッ......私は元々その遺跡に行くつもりでした。『清澄の魔法使い』でしたっけ?とても怖いですが、自分の好奇心は抑えられません。」

(゚、゚;トソン「だから危険ですってば......」

爪;’ー`)「私の生き甲斐なのでそこはなんとも。」

彼が自嘲気味に笑ったのが仮面の外からでも分りました。

(゚、゚トソン「ううむ......やっぱり体調が悪そうですし心配ですよ。」

爪’ー`)「少し休めば元気になるんでお気になさらず〜。そういえば2人はこの後ドクオさんの村へ行くんですね?」

('A`)「うん。」コクコク

248 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:41:22 ID:lrQywl7.0

爪'ー`)「遺跡へ寄った後、私もドクオさんの村へ行くつもりなので入れ違いにならなければまた会いましょう。ゴホッ。」

ゴホゴホと咳をする彼は最初に会った時の若々しさは消え、酷く年老いている印象を受ける。

爪'ー`)「あ、世間では笑い犬が活発になっていたり、誘拐事件が多発していたりと物騒なのでくれぐれも気をつけてくださいね。」

いつの時代でもこういう事件が起こるのは変わりませんね。

('A`)「......」ガタガタガタガタ

249 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:42:18 ID:lrQywl7.0

太陽が私達の真上に登る頃、話す話題もぽつりぽつりと減ってきました。

(゚、゚トソン「では私たちはそろそろ行きましょうか。」


瓦礫の残骸に座りぼんやりと空を見上げているフォックスに告げる。


彼はひらひらと手を振った。


爪'ー`)「貴方達の旅に幸福を。」

('A`)ノシ

ドクオさんはいつまでも振り返りながら手を振っていました。

ふふふ、よほど曲に感動したんですかね?

そんなによそ見をしていると転んでしまいますよ?

250 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:43:08 ID:lrQywl7.0


2人が見えなくなった頃、彼はゆっくと立ち上がり町の墓標に歩み寄る。


「ゴホッ......強い魂はこの曲じゃ旅立てない。質量が大きくなり過ぎて昇れないんだ......」


降り始めの雨のようにぽつりと漏らした。

251 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:43:53 ID:lrQywl7.0


再び鬱蒼とした森林に分け入る。


町に着く前の重かった足取りが軽くなっている気がします。

フォックスさんの曲が生きている私達にも元気をくれたのでしょうか。

(゚、゚トソン「素敵な曲でしたね。」

('A`)「うん。」

落ち着いているようなので聞いても大丈夫でしょうか?

(゚、゚トソン「あの......聞きたかったのですが、その、笑い犬ってどんな生き物なんですか?ドクオさんにとっては何か特別なようですが。」


ぴたりと彼の足が止まる。


トソンは振り返る。


( A )「あいつらは......俺の......」

252 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:44:39 ID:lrQywl7.0




ヒャハハハハハハハハ




.

253 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:45:58 ID:lrQywl7.0


突如笑い声が聞こえる。


(゚A゚;)「!!!!!!!!!!!」
(゚、゚;トソン「!?」


......キヒヒヒヒ......キヒヒヒヒ......


……フフフフフ


薄暗い森の木々で声が乱反射し、まるで何十匹もいるように聞こえる。


2つの光る眼が背の低い草の中から覗く。


(゚、゚トソン「あれは......」


すぐに町で出会った犬と同じ笑い声が飛び出てきた。


「ヒャハハハハハハ......ゴハン!ゴハン!」

(゚、゚トソン「喋った!?ドクオさん大丈夫ですか!」

ドクオさんはもう逃げ出したのか振り向いても姿が見えない。

(゚、゚;トソン「あれぇ......」

それに続き他の2匹が飛び出す。

「キヒヒヒヒヒヒヒキヒヒヒキッ!」

「デュフフフフフフフデュフ!」

(゚、゚トソン「1匹気持ち悪い笑い声の犬がいる!」

254 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:49:50 ID:lrQywl7.0


最初に町で会った犬が走り出す。


それに続くように我先にと2匹が飛び出す。


涎を飛び散らしながら地を駆ける。


(゚、゚トソン「全く、たかがわんちゃんにドクオさんは驚き過ぎじゃないですかね。」


迫る。


飛び上がる。


トソンはまだ気が付かない。


目の前の犬は前時代の飼い犬などとは違い、生きるために他者を狩る新時代の野生だということを。


先頭の犬の汚らしい牙が眼前に迫る。

255 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:51:50 ID:lrQywl7.0

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は犬の姿を見た瞬間逃げ出した。

トソンはとても大切な友人だ。

今度こそ俺が助けないといけないのに。


しかし精神に深く刻まれたトラウマは彼に逃走以外の選択を与えなかった。


(;A;)「えぐ......あぐ......」

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい


情けなさと悔しさと申し訳なさで顔がぐちゃぐちゃになる。


(;A;)「ごめん、トソン、俺は......また......」


突然足がもつれ体が宙に浮き直ぐに身体に衝撃が走る。


( A )「うっ......」


足をくじいたのか鈍い痛みを感じる。


足以外に痛みはないが惨めさのせいか思うように立ち上がれない。


( A )「トソン......」

256 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:57:09 ID:lrQywl7.0

あの日見た綺麗な川とそこで釣れたびくいっぱいの魚。

父の暖かい背中。

父と遊んだ楽しい記憶。

洞の中で震えつつも、家に帰ったら次はどこに連れて行ってもらおうかと考えていた。

まだまだ一緒にやりたいことが沢山あった。



彼らのせいで父は物言わぬスコップだけになってしまった。


.

257 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/24(金) 23:59:45 ID:lrQywl7.0

ダメだ......すぐに戻ろう。

トソンまで自分の見えないところで何もわからず失うのは嫌だ。

トソンがオレンジの錠剤なんかに変わってしまうのは嫌だ。

俺のせいでいなくなってしまうのは嫌だ!

258 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:00:47 ID:diRVSlAA0

ヒャハハハハハハ!!

キヒヒヒヒヒ!!

ドュフフフフフ!


背中から絶望の足音が聞こえる。

259 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:01:56 ID:diRVSlAA0

(゚A゚)「あ......ああああああああ」

トソンは......俺の友人はどうなったんだ。


最悪の妄想が頭をよぎる。


彼女を見捨てたくせに友人なんて良く言えたもんだ。

( A )「当然の報いってやつだ......」

身体を引きずり木の根元に背を預ける。

「ヒャハハハハハハ......モグラ!ミツケタ!タベテミタイ!」


犬が彼に向けて笑う。


すぐに残りの2匹も合流してドクオの目が絶望の色で濃く染まる。


「キヒヒヒヒヒヒヒキヒヒヒキッ!」

「デュフフフフフフフデュフ!」


だんだんと距離が短くなる。

260 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:04:37 ID:diRVSlAA0


( A )「あ......あ......」


(゚A゚)「近寄るなあああああああああああああ!!!!!」


トラウマを目の前にし、覚悟はすぐにひっくり返った。


醜い.....とても醜いが死にたくないと思ってしまう。


笑い犬達へ向けてがむしゃらにスコップを振り回す。


待ってましたと言わんばかりに1匹がそれをかわす。


「デュフフフフフフフデュフ!」


もう1匹は振りぬいて脱力した腕に容赦なく飛びかかり噛みつく


「ヒャハハハハハハハハ!!!」

(゚A゚)「がああああああああああああ!!!!!!!!」


残りの1匹はじたばたと動く足に噛みつく。


「キヒヒヒヒヒヒヒキヒヒヒキッ!」

(;A;)「やめろおおおおおおおおおおおお!!!」

261 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:05:55 ID:diRVSlAA0

片腕で必死にスコップを振り回すがグリップが効かずすっぽ抜ける。


カラーンと乾いた音が鳴る。


犬達はジタバタと暴れるドクオを抑え込むように頭を振り回す。


( A )「う......うう......ぐ......誰か......助け.......死にたく......な......」


ドクオの動きが鈍ったことを確認し、最初にスコップを躱した犬が首筋を見据え徐々に姿勢を低くして力を込めた。


「ドュフフフフフフフ!!!!」


飛んだ。


汚らしい牙が迫る。





目を瞑る




とても長い時間に感じた。






とーちゃん......

262 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:08:47 ID:diRVSlAA0

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(゚、゚;トソン「どわああああ」


すんでのところで身体が動く。


尻にいつもの鈍い痛みが走る。


1匹はそのまま勢いを殺さず走り去った


恐怖がズシンと遅れてやってきた。


魔法使いを退けた事で慢心していました。

出会った時から純粋な殺意を当てられ続けていたのに。

たかが犬と思考を止め、生きるために他者を狩る野生だということに気が付けませんでした。

恐怖心も鈍く錆びついていたようです。


続く足音。


全部で3匹いたことを思い出す。


即座に前を向く。


しかし残りの2匹はトソンに見向きもせずに走り去る。


(゚、゚トソン「え?」


直ぐに答えが出た。


私の後ろの方向にいるのは。


(゚、゚;トソン「っ!!!ドクオさん!」

263 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:10:12 ID:diRVSlAA0


一瞬遅れて走り出すがどんどん距離が離されていく。


ドクオさんどこまで逃げたんでしょうか。

(゚、゚トソン「無事でいてください。」



......ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!



(゚、゚トソン「!?」


パーカーのフードを翻し走り出す。


叫び声が近づいてきた。


躓きそうになりながらも背の低い草をかき分けて走った。


すぐに見つけることができた。


大きな木を背に手足を噛まれている彼がいた。

264 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:11:20 ID:diRVSlAA0

目の前には彼が落としたと思われるスコップ。


迷っている時間は1秒すらない。


手に取る。


走る。


犬が姿勢を低くし今にも飛びかかろうとしている。


スコップを大きく振り上げる。


こんなもの振り回した経験はないが妙にしっくりくる。


犬の後ろ足が伸びる。

265 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:12:06 ID:diRVSlAA0


間に合え


間に合え


間に合え




間に合え





間に合え





(゚、゚#トソン「間に合ええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」


力いっぱい振り下ろす。

266 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:16:47 ID:diRVSlAA0


ズンと響く衝撃。耳を劈く悲鳴。振動がスコップを伝わり腕がビリビリと痺れる。


( 、 トソン「っ......」


堪え兼ね呻き声を上げる。


手の痺が全身に広がり脳にまで到達したのか?と思った瞬間。


間髪入れずに酷いめまいと頭が割れそうになるほどの痛みに襲われる。


( 、 トソン「え......痛っ......何?」

267 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:17:46 ID:diRVSlAA0

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ザーザーとノイズの混ざった光景



赤い床の上で眠る女性の前に跪き消え入りそうな声で嘆く。



「もうザザ..一度......もザー.....一ザザ...」



誰?



暗い路地を走っている。誰かが誰かの手を引き走っている。



誰?




「おザー...がザザ.....ミザザー...をザー....」

268 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:19:14 ID:diRVSlAA0



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」



何度も金属の棒を振り降ろす。


ズン、ズンと鈍い音。


棒を伝わり衝撃が伝わり手が痺れる。


手が痺れるがそんな事はどうだっていい。


振り下ろす。


振り下ろす。


機械のように繰り返す。



水の中に潜っている時のように全てがぼやけていて不鮮明。



詳しいことは何一つ分らない。


.

269 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:20:12 ID:diRVSlAA0


でも......


これは......



これだけは......





私?





.

270 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:21:58 ID:diRVSlAA0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


絶叫と悲鳴と金属音に驚き目を開ける。


目の前には彼の父親のスコップが力強く振るわれている光景。


('A`;)「と、とーちゃん?」


( 、 トソン「ドクオ......さ......私......女......ぐっ......」


スコップを支えにしてしがみつき膝をつく女性の姿。


('A`;)「トソン!」


殴られた犬はよろよろと立ち上がり草むらへと逃げていく。


仲間が欠けて驚いたのか他の2匹も全速力で散っていった。


(゚、゚;トソン「え、ええ。ちょっと目眩がしただけです。大丈夫ですよ。」


直ぐに痛みが引き立ち上がる。


あれは一体何だったんでしょうか。

271 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:23:31 ID:diRVSlAA0


安心したのもつかの間。


ヒャハハハハ!!!

キヒヒヒヒ!!!

笑い犬が2匹はすぐに戻ってきました。

(゚、゚#トソン「あなた達は......また......」

怒りを向けるが犬たちは怯みません。


2匹に続き安定感の悪い二足歩行が森の奥から現れた。


2匹の犬よりも大きい体躯。


「ヒャハハハハ!ボス!ボス!」

「ボスー!キヒヒ」

▼・ェ・▼「グフフフ、ここにいたのか子どもたち。モグラ......食べるのは何年ぶりだ。グフフフ」

彼が群れのボス犬でしょうか。

272 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:25:31 ID:diRVSlAA0

(゚、゚トソン「ドクオさんを食べさせるわけにはいきません。」

どこか私は冷静でした。きっぱりと断ります。

▼・ェ・▼「魔法使い......お前たちの血肉は毒なのは知っている。」

魔法使いと間違えられるのもたまには役に立つのかもしれません。

▼・ェ・▼「どうしても退く気はないのか......」

(゚、゚トソン「......」


ドクオの前に無言で立ちはだかる。


どうか......退いてください......

▼-ェ・▼「わしらも生活がかかっているんだ。悪く思うな。」

直立すると私よりも頭2つ分は小さい犬ですが、身体は逞しく隆起しており力では叶わないのは明白でしょう。

魔法使いを見て逃げ出すかと思ったのですが思うようにはいきませんか。

ちょっと心配になってきました。

273 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:28:07 ID:diRVSlAA0

▼・ェ・▼「グフフフフ、とーちゃんが今ごはんを狩ってやるから待ってろよ。」

「キヒヒヒマホウツカイカラダニワルイ」

「ヒャハハハハモグラオレモタベテミタイ」

(゚、゚トソン「ドクオさんはごはんなんかじゃないです......」


スコップを握る手に力がこもる。


ボス犬はぐぐぐっと小さくなり四速歩行で飛び出した。


地面すれすれを滑空する様に駆けトソンに肉薄する。


勢いを殺さず4つのバネをフルに活用し肩から雪崩れ込む。


▼・ェ・#▼「どらあああああああああ!!!!」


もう油断はしない。


そう思いスコップを構えて防御を試みる。


目の前にボス犬が迫る。


ガギィっと鈍い音が鳴り、スコップが突進を防いだ。


防いだはずだった。


車に轢かれたのではないかと錯覚するほどの衝撃。

274 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:31:57 ID:diRVSlAA0


スコップが思いっきり腹部に当たり身体ごと吹き飛ぶ。


腹部に鈍痛。


内臓が浮くふわっとした浮遊感。


( 、 トソン「ガ......ヒュ......」


一瞬息ができなくなったかと思った次の瞬間、ゴロゴロと転がり土の匂いが肺を満たす。


(゚、-;トソン「っ.....はぁ、はぁ、はぁ、オエッ......ゴホッ」

骨が軋む音。骨折はしてないでしょうか。


戦意を断ち切る重い一撃だった。

275 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:33:00 ID:diRVSlAA0


▼-ェ-▼「無駄な命を狩る気は無い......しばらく眠っていろ。」


興味が無さそうにトソンを一瞥しドクオに歩み寄る。


(゚A゚)「あっ......あああああああああ」

▼・ェ・*▼「それにしても......グフフフ、久しぶりのごはんだ。子供たちよ。味わって食おうな。」

「キヒヒヒ!ボス!サイキョウ!」

「ヒャハハハ!オイシソウオイシソウ!!」

( A )「助......けて......」

276 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:33:42 ID:diRVSlAA0


6話 新時代的全力逃走 〜おわり〜


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277 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 00:37:25 ID:diRVSlAA0
以上です。飯テロで期限を守れず申し訳ない。

飯テロは(  `ハ´)『珀の心』のようです 
で参加させてもらいました。
誤字脱字酷くて辛いですが楽しく一気に書けて満足です。


幸子生きとったんかワレェ......

278名も無きAAのようです:2015/07/25(土) 08:09:37 ID:YhYYArLA0
伏線回すなあ。乙!

279 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 18:52:28 ID:diRVSlAA0
うわ、何か足りないと思ったら>>275の後に1レス抜けてた。

追加


( A )「トソン.......」


ドクオの呟きをトソンの耳が捉え身体がピクリと動く。


トソンに声届いた。


届いているが彼女は弱々しく震えている。


普段彼女は飄々としており常にドクオを引っ張っている。


ドクオよりも身長は高いが力は弱く体も細い。


彼とは違い身体を守る体毛もないし鋭い爪も無い。


身体能力が明らかに劣っている彼女はそれでも恐怖に耐えて守ってくれた。


その彼女が今恐怖に打ち震えていた。

280 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 18:59:49 ID:diRVSlAA0
感想ありがとうございます。

明日の夜にまた投下します。

281名も無きAAのようです:2015/07/25(土) 20:54:31 ID:VxVtdsIQ0


282 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/25(土) 23:51:13 ID:diRVSlAA0
>>279修正


( A )「トソン.......」


ドクオの呟きをトソンの耳が捉え身体がピクリと動く。


トソンに声が届いた。


届いているが彼女は弱々しく震えている。


普段彼女は飄々としており常にドクオを引っ張っている。


ドクオよりも身長は高いが力は弱く体も細い。


彼とは違い身体を守る体毛もないし鋭い爪も無い。


身体能力が明らかに劣っている彼女はそれでも恐怖に耐えて守ってくれた。




その彼女が今恐怖に打ち震えていた。



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283 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 19:56:09 ID:AMuwusfc0
帰宅しました。風呂に入ってから投下します。

昨日下手に区切ってしまったので帳尻を合わせるために番外を挟んでから7話を投下します。

284 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:36:15 ID:AMuwusfc0

夕飯の匂いが漂う午後の教室。


誰もいなくなったはずの教室に1人の少女がいた。


「また本読んでるよー!」

「あの子暗くて話してても面白くないから。」

「身体弱いんだってー!」

「だっせー!」


(;、;トソン「......」

今日あった事を思い出して涙が出る。



子供特有の心無い罵声を浴びせられる日々でした。


直接的な暴力が無いのが救いでした。


私はそれを耐えることしかできませんでした。

285 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:39:04 ID:AMuwusfc0


小さい頃は泣いてばかりでした。


(;、;トソン「うう......」

おかーさんになんて言い訳しよう。

おとーさんは怒るだろうか。


涙の塩分で目が腫れて赤くなる。


家族がいじめられている子を親が怒る訳がない。


でも、そんな事この年では分らない。


全部自分が悪いような気がして。


何が悪いのかはわからない。


泣きながら一人校庭を歩く。

286 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:39:45 ID:AMuwusfc0


この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン


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287 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:43:15 ID:AMuwusfc0


きっかけはほんの些細な事でした。


私は雨の日の昼休みに1人で本を読んでいました。


外で遊べず仕方なく室内で遊んでいる男子達は、ふざけてボールを投げ合っていた。


ボールを受ける側の男子がキャッチを失敗しトソンの肩に当たった。


(゚、-;トソン「うぐ......」


とても弱々しく鈍い声が漏れました。


それだけ。


たったそれだけのアクシデント。


1度誰かが直接危害を与えてしまえばいじめへのハードルが下がります。


私がやり返さないということは既に知られています。


男子たちの目が好奇心で鈍く輝く。

288 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:45:35 ID:AMuwusfc0


夕飯の匂いが漂う午後の教室。


誰もいなくなったはずの教室に1人の少女と3人の男子がいた。


(;、;トソン「止めて......やめてよう。」

父親からもらった大切な文庫本。

タイトルはもう覚えていません。

それを丁寧にびりびりと破き、私が泣くのを見て楽しんでいました。

にやにやと笑う男子生徒。

(;、;トソン「私が何をしたっていうのよう......」


やり返す術も発する言葉も持ちません。友達もおらずそんなこと誰も教えてくれないから。


身体が震えて動けないです。


怖い。とても怖いよ......だれか......

289 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:46:24 ID:AMuwusfc0




「お前ら女の子に何やってんだあああああああああああああああああああああああああああああおらああああああああああああああああああああああ!!!!!」



教室に響く怒声。

290 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:49:30 ID:AMuwusfc0


小柄な少女が飛び上がり全体重を男子の背中に足から浴びせました。


実行犯の男子の顔が苦痛に歪み、床に顔から叩きつけられた。


余りの驚きに破るのを見ていた2人は逃げ出しました。


ドロップキックです!


本で読んだことがありました。


ミセ*゚Д゚)リ「あやまれええええええ!!!」


あの......その男の子は既に気絶しています。

ああ、頭踏んじゃダメですよ......。


ミセ*゚Д゚)リ「あんたもいつまで泣いてんの!ていうか誰!」

(;、;トソン「ト、トソンです......」

ミセ*゚Д゚)リ「トソンね!覚えた!なんでやり返さないの!泣いてないで一度くらい立ち上がってみなさいよ!」

(;、;トソン「だって......そんなことしてもまたいじめられちゃうから......」

ミセ*゚Д゚)リ「......その時はもう一度立ち上がればいいのよ!」


それでもだめだったら


ミセ*゚ー゚)リ「私に言いなさい!」

291 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:50:13 ID:AMuwusfc0



この頃からあなたは馬鹿でしたね。



でもとても暖かかった。

292 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:51:15 ID:AMuwusfc0


案の定直ぐに女子達にトイレに呼び出されモップで叩かれました。


(;、;トソン「やめて......やめてよ......」

ミセ*゚Д゚)リ「お前らトソンになにやってんだあああああああああああああ!!!」

ドアをバタンと開け放ちミセリの足が容赦なく襲い掛かる。

293 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:53:15 ID:AMuwusfc0


男子たちがボールをぶつけるゲームを始めました。


(;、;トソン「怖いよう......痛いよう......」

ミセ*゚Д゚)リ「ドッヂボールなら私も混ぜろおおおおおおおおおおおお!!!」


一人だけボールを使わない少女が空を飛ぶ。

294 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:55:36 ID:AMuwusfc0


高学年のガキ大将に目を付けられました。


(;、;トソン「痛い痛いいたいいいいいいい!やめてええええ。」

ミセ*゚Д゚)リ「女の子の髪引っ張んなああああああああああああああああああ!!!」


ミセリの体が宙を舞う。


高学年になると体つきも良くなり大柄の男子もちらほらいました。


それに怯むことなく殴られながらも相手に噛みつく私の友達はとても勇ましかった。

295 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:56:56 ID:AMuwusfc0



私にとって彼女は正義のヒーローでした。

296 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 20:59:36 ID:AMuwusfc0


夕飯の匂いが漂う午後の教室。


誰もいなくなったはずの教室に1人の少女と3人の男子生徒がいた。


(;、;トソン「止めてください.....止めて......」


父親からもらった大切な文庫本。


タイトルはもう覚えていません。


それを丁寧にびりびりと破き、私が泣くのを楽しんでいました。


(-、-トソン「やめて......や、め.......」


にやにやと笑う男子生徒。





(゚、゚#トソン「いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




私の体が宙を舞う。


日頃の鬱憤を全て吐き出すかの様に叫び私は飛び上がりました。

297 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:04:46 ID:AMuwusfc0


教室の扉の前でドロップキックをしても怪我をしないように準備体操をしていた。

ミセ*゚Д゚)リ「!?」


一瞬驚いたが直ぐに微笑みランドセルを拾い上げた。


ミセ*゚ー゚)リ「......ふふ。」


鼻歌を歌いながら教室から離れた。



しばらく校門で待っていると笑顔の親友が駆けてきた。

298 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:09:33 ID:AMuwusfc0


その後


【+  】ゞ゚;)「......」

|゚ノ;^∀^)「......」


学校に呼び出された両親は事の顛末を伝えらえ驚きで言葉を失う。


両親がここまで驚く顔は初めて見ました。

色々教師と話していましたが内容までは覚えていません。

ただ、家に帰ると優しく強く抱きしめられたのは覚えています。


一度立ち上がってみて本当に良かった。


私にとって彼女は正義のヒーローでした。

299 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:10:21 ID:AMuwusfc0


小さいころは泣いてばかりでした。


小学校時代。友達はできませんでした。


でもあなたがいてくれた。

300 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:15:34 ID:AMuwusfc0

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「だ、誰か!!!!ひったくりよ!!!!!」

「へへっ!俺の足に追いつけるかよ!」


彼はバック奪い老婆の戸惑う顔を見て満足する。


「このまま人をかき分けて路地に逃げ込んでやる。」


人混みがそこそこ多いところだと、誰かが助けるはずだと言う集団心理が働き誰も動かない。


実に盗みやすいのだ。


顔を隠してさえいれば誰にもばれることは無い。


左肘を前に背を引くし人混みをかき分けて走る。


路地まで10m足らず。


「あそこに入ってしまえば俺の勝ちだ。」

301 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:17:04 ID:AMuwusfc0


次の瞬間。


(゚、゚トソン「せいっ。」


「がぼあああああっ!?」


小物感が漂うガラの悪い顔に両足がめり込んだ。


ミセ;゚ー゚)リ「あわわわわ、トソンちゃん何してんの。」


ぱたぱたと服を払い立ち上がる。


(゚、゚トソン「引ったくりです。」キリッ


警察へ電話を掛けながらドヤ顔をした。

302 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:19:13 ID:AMuwusfc0

ミセ;゚ー゚)リ「キリッじゃないよ!最初から警察に任せようよ!」

(゚、゚トソン「そんなことしてたら逃げられてしまいますよ。」

ミセ;゚ー゚)リ「いつも思うけれど、どうしてそんなにアグレッシブなの?」

(゚、゚トソン「誰かに似てしまったんでしょうねえ......」


ミセリの顔をじっと見る。


ミセ;゚ー゚)リ「やべえなそいつ......」

(゚、゚トソン「やべえですよね。」


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303 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:21:40 ID:AMuwusfc0


彼女のおかげで多少性格がぶっ壊れてしまった気がします......


でも、


私がこの新時代で強く生きていけているのはあなたのおかげでもあるんですよ。

304 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:22:59 ID:AMuwusfc0



6話 番外編 近代的ドロップキック 〜おわり〜

305 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:25:43 ID:AMuwusfc0
休憩してから次行きます。

306名も無きAAのようです:2015/07/26(日) 21:29:12 ID:OSpZPuw60
ひとまず乙
本編期待機

307名も無きAAのようです:2015/07/26(日) 21:33:33 ID:UAgrmQjk0
乙ん スカッとした

308 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:55:50 ID:AMuwusfc0
続きを投下します。

309 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:57:42 ID:AMuwusfc0

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トソンちゃんメモ2

清澄の魔法使いとは。川д川

私が初めて出会った魔法使い。

肌が真っ白で、白装束を着ていて、身長よりも長い髪の毛が風も無いのに揺らめいている。

最近廃病院もとい生命の遺跡に引っ越してきて、今は透明な幽霊を探している。

好物は透明なもの。ガラスの瓶から人の目玉まで幅広い。

ドクオさんが言うには髪の毛を自由に動かす魔法と壁を抜ける魔法を使っていたらしいです。

本人曰く他の魔法使いよりも優しいらしい。

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310 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 21:59:04 ID:AMuwusfc0


ドクオさんが私に助けを求めている。


ドクオさん......


私.....


身体が震えて動けないです。


こんな感覚はいつぶりでしょうか。


お父さん.......お母さん......


怖い。


とても怖いよ......


どうすれば良いのでしょうか......


誰か......

311 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:00:51 ID:AMuwusfc0


震えて揺れる意識の中、何故か恐怖で昔の事を思い出す。


ええ、確か小さい頃いじめられていた時もこんな気持ちでした。


ミセ*゚ー゚)リ「......」


乱れていた思考がふっと落ち着く。


ああ、そうだこの世界に来てミセリのことすっかり忘れてましたね。

ミセ*゚Д゚)リ「”$#%?!?#?”$%!!!」

ふふ、いつも忘れてばかりでごめんなさい。


そうでしたね。


こういう時はもう一度立ち上がらないとですね。

312 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:02:03 ID:AMuwusfc0


ミセ*^ー^)リ


もう二度と会う事が出来ない友人の笑顔が見えた気がした。

313 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:04:09 ID:AMuwusfc0


相手は腹が減り飢えている。そして明確に狩るという目的がある。


今回は得意の搦め手が通用しないみたいです。


今私の取れる行動は1つだけ。


もう一度立ち上がる。それがダメだったらまた立ち上がる。


ミセリが教えてくれたように。


何度も。何度でも。



成功するかはわかりません。

314 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:05:16 ID:AMuwusfc0

まだ怖い......

-心臓が高鳴る-

やっぱり怖いです......

-ドクン-

でも、友達を助けないと......

-ドクン-


ええい!覚悟を決めるのです。トソン。


-心臓が大きく脈打つ-


( 、 トソン「......ありません」

315 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:06:41 ID:AMuwusfc0


-ドクン-


▼・ェ・▼「んん?」


-ドクン-


立ち上がる。


ボス犬は振り向く


-ドクン-


(゚、゚#トソン「私は魔法使いなんかじゃありません!!!!」


一際大きく心臓が脈を打った。

316 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:07:28 ID:AMuwusfc0


『私の心臓が血液を逆流させる。』


語彙が貧弱ですがそうとしか表現できないのです。


とても心臓が熱い。


体中に血液が回り活力が湧き上がる。

317 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:09:31 ID:AMuwusfc0

▼・ェ・▼「!?」

▼-ェ-▼「グ、グフフフフフ」


犬は立ち上がった事に驚くが、一層大きく笑い、顔を歪ませる。


▼・ェ・*▼「グフフフフフフフフフフフフフ!!!」


先ほどまで興味の無さそうだった目が私をまっすぐ見つめる。


▼・ェ・*▼「......聞いたか子どもたちよ。ごはんが増えたぞ......」


ギラギラと飢えて輝く瞳に変わる。


(゚、゚トソン「食べられるものなら私を先に食べなさい!」


凛と言い放つ。


▼・ェ・*▼「グフフフフフフフ!!!!!!」


さらにボス犬が笑う。


そして。

ゆっくりと姿勢を低くし、


再び四足歩行で走り出した。

318 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:13:38 ID:AMuwusfc0


私に突進した時よりも数段速い。


でも私はここで死ぬわけにはいきません。


ボス犬は迷いなど無く首筋を狙い一直線に飛びかかる。

319 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:14:18 ID:AMuwusfc0



-ドクン-


.

320 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:15:26 ID:AMuwusfc0


トソンは身体をひねり紙一重で躱す。


肩口のパーカーの生地が消える。


(゚、゚トソン「っ!!!」


勢いを殺しきれずボス犬が地を滑る。


土煙が舞う。


ぶるると悔しそうに顔を振り体制を立て直し、もう一度飛びかかるために振り向いた。

321 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:18:29 ID:AMuwusfc0


瞬間。


トソンの両足が土煙を突き抜け現れた。


咄嗟の事にボス犬は驚き反応が遅れる。


(゚、゚#トソン「やあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


めりめりと頭に足がめり込む。


ミセリ直伝のドロップキックが決まる。


▼・ェ・;▼「グガアアアアア!!!」


トソンの全体重を浴びせられ吹き飛ぶ。


すぐに砂にまみれたトソンが立ち上がる。


▼・ェ・#▼「グルオオオオオオオオ!!!!」


ボス犬は激昂し牙を剥き出したまま走り、爪を横薙ぎに振るう

322 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:19:24 ID:AMuwusfc0


-ドクン-


.

323 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:21:09 ID:AMuwusfc0


すっと身体を引く。


ドクオさんに引っかかれた時に切れたパーカーの腕の部分の奥の肉が弾ける。


(゚、゚;トソン「うぐ......」


休む間も無く爪を剥き出しにしたアッパーが下から迫る。

324 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:21:57 ID:AMuwusfc0


ードクンー


.

325 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:25:41 ID:AMuwusfc0


トソンは最小限の動きで右にステップを踏んだ。


ブンッ


即死の爪は太ももを掠める。


(゚、゚#トソン「うわあああああああああああ!!!」


恐怖を無視してガラ空きの足にスコップを食い込ませる。


▼・ェ・;▼「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!!

326 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:26:22 ID:AMuwusfc0


-ドクン-


-ドクン-


-ドクン-


-ドクン-


-ドクン-

327 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:27:10 ID:AMuwusfc0


目で追う事がギリギリ、当たればそこで致命傷になり得る一撃を躱し続ける。


心臓が......うるさい。


(゚、゚#トソン「いやあああああああああああ!!!!」


躱すだけではなく隙を見てスコップをめり込ませる

328 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:28:57 ID:AMuwusfc0
▼ ェ ;▼「グ......」

な、なぜあたらん......

何度も殺したと確信した。

殺した感覚は......爪に残っている。

殺した感覚が何度もあるとはおかしいな話だが説明のしようがない。

しかしこの爪はかすり傷を作る程度。


今までに感じた事もない感覚に戸惑い焦る。


▼ ェ ;▼「何が起こっている......」


トソンから距離を置き小さく呟く。

329 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:30:49 ID:AMuwusfc0


(゚、゚;トソン「何が起こっているんでしょう......」


トソンは自分に語りかける。


彼女自身も何度も死を覚悟していた。死んでしまった感覚もある。


何を言っているのか自分でもわからない。


だがボス犬の爪が自分に当たる瞬間。


とても怖くなり身体を動かした。


それだけだった。


別に動きをスローモーションに感じているわけでも無い。


運がよかったのか。


彼女自身も全く分からなかった。


しかし好都合。


この感覚が続く間に早くあいつを屈服させないと。

330 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:31:38 ID:AMuwusfc0


再び衝突。


トソンのかすり傷が増えていく。


犬の出血が増えていく。


ボス犬は焦っていた。


飢えで自分たちが死ぬ前に獲物を仕留めなければならない。


なぜこんなにも細く弱そうな生き物に後れを取っているのだ。


辺りはボス犬の血液が点々と飛び散っている。

331 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:34:46 ID:AMuwusfc0


▼・ェ・#▼「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


命を燃やし最も大きく吠えた。


辺りの木々がビリビリと震える。


全ての力を振り絞り走る。


土煙がボス犬を追いかける。

332 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:36:59 ID:AMuwusfc0


咆哮に怯み体の動きが鈍る。


(゚、゚;トソン「ッッッ!!!」


スコップを構えようとするがあまりの早さに間に合わない。


腕を突き出す。


槍の様に鋭い一撃はトソンの胸に向かう


どんなに紙一重の動きをしたとしても間に合わない。


どこにあたろうが致命傷は免れない。

333 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:37:43 ID:AMuwusfc0


ードクンー

.

334 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:38:23 ID:AMuwusfc0


トソンはギリギリのところで反応し身体を右後ろに引く。

335 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:39:31 ID:AMuwusfc0





▼・ェ・#▼「捉えたああああああああああああああああ!!!!!」


避けきる事は出来ず不幸にも爪はトソンのやや左の胸を捉える。


人間と言う種族の心臓の部分。



ズンッ



振り抜く


-ドク......ン-


( 、 トソン「              」


声が出ない。


胸に衝撃を受け吹き飛ばされる。

336 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:41:46 ID:AMuwusfc0


地面に叩きつけられ大きくバウンドする。


(゚、゚;トソン「ガハッ......ゴホッ、ゴホッ。」


2度ほど跳ねたところで力強く根を張る木に勢いを殺される。


(゚、゚;トソン「ぐ......ドクオ......さ......」


失敗してしまいました。


運が尽きてしまったのでしょうか......


胸が焼ける様に熱い。


何をされたのでしょうか。


身体が鉛の様に重い......

337 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:43:21 ID:AMuwusfc0


直ぐに腕に力を入れて立ち上がろうとする。


(゚、゚トソン「まだ......もう一度立ち上がらないと。」


ゴボッと音を立てゆっくりと血が地面を濡らす


ドクオがボス犬を気にせず駆け寄る。


(゚A゚)「トソンンンンンンンンンンンンンン!!!!!」

▼・ェ・#▼「はあ、はあ、ようやく仕留めたか。ここまでしぶとい獲物は初めてだ......」


犬の子供たちがぴょんぴょん跳ねながら近寄る。


「ボス!ボス!ヒャハハハハ」

「カッコイイカッコイイ!!!キヒヒ!!」

▼・ェ・▼「グフフフ、さあ、子ども達よ食事の時間だ。」


嬉しそうに狂気に満ちた目を輝かせ子供たちは2人に近寄る。


足を引きずりボスが続く。

338 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:44:53 ID:AMuwusfc0


( A )「あ、ああああああ......」


動くことができない。


逃げ出したい衝動に駆られるが自分のために戦ったトソンを置いていくことは流石の俺でもできない。

臆病だけれど中途半端な俺は黙って死を受け入れる事しかできない。


鼻先に子供の吐息が当たる。


不気味な笑い声が耳にこびりつく。


「アーン」


ゆっくりと首筋に牙が迫る。


一思いに......やってくれ......


でも......最後にかーちゃんに薬を届けたかったなあ......

339 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:45:56 ID:AMuwusfc0






これが死に行くという感覚なのでしょうか

走馬灯なんて見えないし、家族の幻覚も見えません。

何も感じません。

私の身体はどうなってしまったのでしょうか。

うっすらと目を開けるが目の前が真っ赤です。

致死量はどれくらいかわかりませんが......

ううむ......結構出てますね。

ふふふ、再び目を閉じちゃえばどんなに楽なことでしょうか。


-......クン-


-ド......クン-


-ドクン-


心臓の鼓動が響く。


まだ大丈夫と私に訴えかける。


分っています。


-私は-

340 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:46:41 ID:AMuwusfc0


異常。


ボスは何かを感づき足を止める。


野生の勘という物なのか。


▼・ェ・;▼「待て子ども達。何かがおかしい。」

341 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:47:21 ID:AMuwusfc0


-私は-


まさか。


トソンを見る。馬鹿な!先ほど殺したばかりではないか。


まだ息はあるかもしれんが動けるわけがない。

342 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:48:01 ID:AMuwusfc0


-この世界で-


もしや。


ドクオを見る。プルプルと震えている生き物に恐れは毛ほども抱かない。

343 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:48:49 ID:AMuwusfc0


-強く-


一体何が。


辺りを見回す。自分の獲物を奪うような他の生き物はいない。


異常は未だにずるずると体内を這いずる。

344 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:49:46 ID:AMuwusfc0


-強く-


静寂に包まれた森林だけがざわざわと揺れる。


子供たちもきょろきょろと見回す。

345 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:50:32 ID:AMuwusfc0


-強く-


もう一度トソンを見る。


見ればわかる爪が心臓をとらえ、既に動かなくなっている。

346 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:51:12 ID:AMuwusfc0


-強く-


ほら見ろ!現に今もポタポタと血が垂れているじゃないか!!!

347 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:51:56 ID:AMuwusfc0


-強く-


ん?


垂れている?



ぽたり......ぽたり......ぽたり......

348 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:52:38 ID:AMuwusfc0


-私はこの時代で強く生き抜いてみせます-


背中は皆に十分押してもらいました。


最後に突き動かすのは私自身の言葉のみ。

349 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:54:36 ID:AMuwusfc0


既にスコップを杖代わりにし立ち上がっているトソンの姿があった。


(゚、゚;トソン「はあ......はあ......ぐ.......」


これが最後です。


考えるのです。


今なら......今ならいけるはず。


相手は達成感に溢れ、気が抜けている。


そう。この後あいつは死んだはずの私が動き出して大声で驚く。


ボスは自分の爪を見るが爪に着く血は確かに赤い。


魔法使いなどではないことは分っている。


なのに


▼・ェ・;▼「なぜ......なぜ生きているんだあああああああああああ!!!」


よし。死ぬほど痛いですがポーカーフェイスです。私。

350 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:55:16 ID:AMuwusfc0


(゚、゚トソン「......」


(゚、゚トソン「その爪に付いた血」


(゚、゚トソン「舐めてみればわかるかもしれませんよ?」

351 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:55:57 ID:AMuwusfc0


▼・ェ・;▼「!?!?!?」

これが異常の正体か。


トソンは左胸から垂れる自分の血を手ですくい犬の子供達に近づく。


子供達は首を傾げる。


▼・ェ・;▼「離れろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


驚いたのか蜘蛛の子を散らすように笑いながら草むらへ飛び込んでいく。

352 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:57:29 ID:AMuwusfc0


トソンはにやりと笑う。


どうやらまともな思考が働いていないようです。


カラカラカラ......


スコップを引きずりボス犬へ近づく。


ガチガチと牙が震える。


確か笑い犬は本来とても臆病な生き物だとフォックスさんが言っていましたね。


(゚、゚トソン「一人......だけになっちゃいましたねえ......」


ゆっくりと手を伸ばす。


(゚、゚トソン「私を食べる気だったんでしょう?」


じりじりとボス犬が後ろに下がる。


(゚、゚トソン「さあ......」


すたすたと臆せずトソンが近寄る。


(゚、゚トソン「さあ......」

353 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:58:20 ID:AMuwusfc0


(゚、゚トソン「さあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ピリピリと傷に響く。


▼・ェ・;▼「お、おおお、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


何度か転びそうになりながらボス犬は走り去った。

354 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 22:59:42 ID:AMuwusfc0


(-、-トソン「うう......」


ふらふらとドクオさんの方へと近づく。


(-、-トソン「ドクオ......さ、ん」


(゚A゚)ブクブクブク


なんであなたが気絶してるんですか......


(゚、゚トソン「全くもう......」

(-、-トソン「相変わ.....ら、ずです......ね。」


糸が切れたように倒れる。

355 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:00:22 ID:AMuwusfc0

私って......この時代に来てから危険な目にあってばっかりですね.......

お父さんお母さん......ついでにミセリ。私......強く生きていますでしょうか?

356 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:04:59 ID:AMuwusfc0


(゚A゚)「トソン!!!!トソン!!!!起きて!!!!ねえ、起きてよ!!!」


意識を手放し切る前にゆすり起こされる。


(-、-トソン「起きたんですね......良かったです。」


アドレナリンが切れたのか体が酷く重くて目を開けることも困難です。


(;A;)「何で......俺はまたトソンの事見捨てて逃げ出したのに。」

(-、゚トソン「.....」

(-、-トソン「ふふ、そんなに取り乱したらお母さんに笑われてしまいますよ。でも......ちょっと辛いので流石に寝かせてください。」


緩やかに血が流れる。


目の前で微笑む女性は想像を絶する痛みを受けながらも俺の心配をしていくれている。


彼女から沢山のものを貰いすぎた。

でも俺は彼女に何もしてあげられていない。

出来ることは何もない......

それならせめて......俺は生涯彼女のためにこの命を尽くそう。

尽くさなければいけない。

357 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:05:51 ID:AMuwusfc0


でもそのためには今......


涙をごしごし拭い彼女を抱き立ち上がる。


('A`#)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


この足がちぎれようと俺の足は止まる事は無いだろう。

358 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:06:52 ID:AMuwusfc0

私はこの時代に来てから、初めてできた友達のために役に立とうと必死でした。

そうしないと......私がきちんと生きていることを証明できない気がして......

今思えば幼稚で自己満足で軽はずみでしたね。

その結果ドクオさんをこんなに心配させてしまいました。

もし目が覚めることがあったらもうこんな無謀な事はしないように気を付けましょう。

359 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:07:48 ID:AMuwusfc0

私はこの時代に来てから、初めてできた友達のために役に立とうと必死でした。

そうしないと......私がきちんと生きていることを証明できない気がして......

今思えば幼稚で自己満足で軽はずみでしたね。

その結果ドクオさんをこんなに心配させてしまいました。

もし目が覚めることがあったらもうこんな無謀な事はしないように気を付けましょう。

360 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:08:28 ID:AMuwusfc0


7話 近代的全力闘争 〜おわり〜

.

361 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:10:16 ID:AMuwusfc0
悲しいことにタイトルコール忘れてた。
>>309 と >>310 の間にあったことにしてください......


この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン

362 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/26(日) 23:11:19 ID:AMuwusfc0
以上です。

なんでこうも投下ミスが多くなってしまうんでしょうか。

感想や質問等あれば是非お願いします。

363名も無きAAのようです:2015/07/26(日) 23:24:18 ID:Nt2h5MaU0
お疲れ様でした。

最後1話のオマージュ?だとしたらトソンはお母さん似だねえ。

364名も無きAAのようです:2015/07/26(日) 23:37:39 ID:OSpZPuw60
乙!
胸に風穴開けられても動けるトソン半端ねぇな…本当に病人か?
この先の展開に期待ですな

365名も無きAAのようです:2015/07/27(月) 02:28:47 ID:Olmxo2ps0
乙 交換できるようになったのかと思った

366名も無きAAのようです:2015/07/27(月) 06:48:24 ID:/0.qmQBI0
乙。おもしれー。伏線っぽいのが多い気がするけれど回収頑張れ。

367名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 16:58:57 ID:Crz2amvU0
今夜投下します。

368名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 17:13:00 ID:Qnm9tPvc0
まってました

369名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 17:21:57 ID:7SPIr5Ew0
トリップ付いてないけど本物?

370名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 18:27:11 ID:UpKOpDA20
作者騙りは最低だぞやめとけな

371 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/30(木) 19:30:08 ID:.KywFxjw0
今夜投下出来そうなので投下します。

372 ◆vkc4xj2v7k:2015/07/30(木) 19:39:15 ID:7SPIr5Ew0
本人来たか
このトリップ割ろうと思えば誰でも割れそうだから変えた方が良いぞ
俺が成りすましても確実にバレるから俺にしか割れてなければ問題ないけど

373名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 20:37:04 ID:Ygo4PD4A0
割るなよ…

374 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:40:07 ID:.KywFxjw0
割られてしまった......流石に安直すぎましたね。

新しい酉はこれで行きます。

そして準備ができたので投下します。

375 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:41:04 ID:.KywFxjw0


暖かい毛布に包まれゆっくりと目を覚ます。


(゚、-トソン「う......うう......」

見知らぬ天井です。

J( 'ー`)し「あら、おはよう。」

確か......私は......ドクオさんを助けるために必死で......死にかけて......

ええと......なんとかはったりが決まって......最後は倒れて......


J( 'ー`)し「?」


柔和な笑みを浮かべるモグラ族の女性は首をかしげる。


(゚、゚;トソン「ど、どなたですか......それにここは......」

......そういえばとてもお腹が空いています。どのくらい眠っていたのでしょうか。

376 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:41:57 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「ごはんできてるけれど食べれるかし(゚、゚トソン「頂きます。」


上体をばっと起こし立ち上がろうとした瞬間。


(゚、゚;トソン「いだだだだだだだ!!!」


体中がピリピリと痺れ再びベッドに沈む。続いて左胸の辺りに激痛が走る。


(゚、゚;トソン「うごごごごご......」

J( ;'ー`)し「きゅ、急に動いちゃだめよ。まだ怪我は治ってないんだから。」


暖かそうな湯気が上るお粥らしきものを運びながら彼女は慌てる。


モグラ族の食事と聞いてふと虫っぽいものが頭を過りましたが心底安心しました。

J( 'ー`)し「ゆっくり起き上がれるかしら?」

ゆっくりとなら特に痛みもなく起き上がれました。

377 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:44:05 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「ここは私たちの村よ。うちのドクオの面倒を見てくれてありがとう。」

(゚、゚トソン「ああ!お母さんでしたか!風邪はもう大丈夫なんですか?」

行儀が悪いと知りつつも、とてもお腹が空いていたので待ちきれずにお粥を口に運びました。

いくつかの山菜を使ったお粥は少し苦いけれど素朴な味がしてボロボロの身体にじんわりと染み渡ります。

J( 'ー`)し「ええ、トソンちゃんの持ってきてくれた遺物のおかげで直ぐに治ったわ。」

おや、いつの間にかボロボロなパーカーの代わりに綺麗な白い布.......

ロングワンピースの様な服が体を包んでいます。

どんな生地を使っているのでしょうか?とてもふかふかです。ちょっとぶかぶかですが。

J( 'ー`)し「ドクオが泣きながらあなたを抱きかかえてきた時は何事かと思ったわ。」

(-、-トソン「そうですか......ドクオさんが......よかった私......まだ生きてたんですね......」もそもそ

ドクオさんに感謝しないとですね。

378 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:45:51 ID:.KywFxjw0

----------------------------------


沢山の野菜が入った籠を背負い村へ急ぐ。


俺はトソンに付いていくと決めたんだ。

今度こそ役に立つんだ。



だから......早く起きてくれよ......



自宅に着き籠を下すと、真っ先に彼女の眠る寝室へ急ぐ。


扉を開ける。


('A`;)「あ......」


いない。


やっぱり不甲斐ない俺を置いてもうどこかへ行ってしまったのか


転びそうになりながら母親の経営する酒場へ走る。


ばんっ、と勢いよくドアを開けて叫ぶ。


('A`;)「かーちゃん!トソンが......」

379 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:47:56 ID:.KywFxjw0

(゚、゚トソン「?」もそもそもそ

('A`)「......」

(゚、゚トソン「?」もそ......

('A`)「......」

(゚、゚;トソン「ど、どうひはんでふかどふおしゃん」もそもそもそもそ

('A`;)「あ、あれ、トソン。もう大丈夫なの?」


元気そうに口いっぱいに食べ物を含んでいた。


(゚、゚トソン「ちょっと痛いけれど余裕ですよ。」もそもそ

目の前の友人は頭と身体中に包帯を巻いている。

見ていてとても痛々しい。

顔には薬草ペーストを塗り込んだせいか緑色の化粧が施されている。

余裕そうに見えるがまだ痛みが残っているはずだ。

380 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:48:38 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「あらドクオ。帰ったのかい?」

('A`)「かーちゃん......トソンの怪我は大丈夫なの?」

J( 'ー`)し「最初は胸の刺し傷を見て絶望的かと思ったけれど、奇跡的に内臓を外していたみたいね......」

他は体中の切り傷と右腕の肉が少し抉れてるくらいだよ。

あ、頭からも出血してたから頭痛とかしたらかーちゃんに言うんだよ。

後の言葉は聞こえなかった。奇跡的に生きてくれただけでも本当に胸がいっぱいだった。

( A )「本当に......良かった。」

381 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:49:19 ID:.KywFxjw0


彼の心配をよそに箸をすすめる。


(゚、゚トソン「......朝ご飯美味しい。お粥も美味しかったですけれど物足りなかったです。」もそそそそ

確かに左胸を刺された気がしますが......心臓外れてたんですね。よかったよかった。

(゚、゚トソン「ご飯食べて寝れば治りますよ。」もそもそもそ

でもあの時は流石に死んだかと思いました。

J( 'ー`)し「ゆっくりとは歩けるみたいだし、暇なら何もないけれどここら辺を案内しておやり。」

(゚、゚トソン「おお、ドクオさん是非お願いします。」

('A`)「わかったよ。」

食事を済ませると2人はゆっくりと外に出た。

382 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:50:13 ID:.KywFxjw0

改めて村を見回してみるとモグラ族はまばらにいますが建物が少ないですね。

(゚、゚トソン「村と言っても意外と閑散としてるんですね。」

('A`)「モグラ族の自宅は地下にあるんだ。今外に見えてる建物はお店だったり倉庫だったり、畑とか牧畜に使う小屋が多いね。」

(゚、゚トソン「なるほど......皆さん地下の方がやっぱり落ち着くんですかね。」

('A`)「寝る時は地下のが落ち着くね。ちなみにトソンが寝てたのは来客用の宿屋で地下は俺の家だよ。隣の酒場はかーちゃんが運営してる。」

(゚、゚トソン「お母さんのご飯美味しかったです。」

('∀`)「かーちゃんの料理は世界一だよ。」

ドクオさんが大きな声を出して胸を張りました。

383 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:53:32 ID:.KywFxjw0


すると村のモグラ族たちが声を聞きつけて集まり次々にドクオに声をかける。


彼は皆に頭を撫でられてもみくちゃにされつつも嬉しそうに返答している。


数分後。


彼がへとへとになって抜けだしてきました。

(゚、゚トソン「ドクオさん人気者ですね。」

('A`*)「久々に外に出てしばらく留守にしてたから皆に心配されたんだ。今日まで薬草集めてばかりで挨拶も忘れてたしね。」


照れくさそうに笑いながらゆっくりと歩き村の外に出る。

384 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:55:51 ID:.KywFxjw0


町を離れ綺麗に整備された獣道を歩く。


('A`)「......あのさ。」

(゚、゚トソン「?」

('A`)「前に言い損ねたけれど......俺のとーちゃんは笑い犬に殺されたんだ。」

(゚、゚;トソン「なるほど......そうだったんですね。」

以前はたかが犬と思ってしまいましたが彼らの天敵なんでしたね。

('A`)「俺が小さい頃に俺と村を守って死んだんだ。だからこの町でとーちゃんは英雄なんだ。」

(゚、゚トソン「そんなことが......」

('A`)「とーちゃんが死んでから俺は地中に引きこもって泣いていたんだ。だんだんと大人になっても未だにショックから抜け出せなかった。」

(゚、゚トソン「.......」

合点が行きました。

そして母親が風邪をひいてしまい残された家族も失いそうになったと思い彼は家を飛び出したんですね。

('A`)「村の皆は俺の事をまだ心配してくれてたんだ。もういい加減自立しないとね。」

(゚、゚トソン「ドクオさんは立派ですね。」

('∀`)「へへへ。あとかーちゃんが元気になったんだ。トソンのおかげだよ。」

(゚、゚トソン「あ、お母さん元気そうでしたね。よかったです。」

段々と森の中へ来ましたが、きちんとした道はこんなに歩きやすかったんですね。

385 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:56:57 ID:.KywFxjw0

('A`)「後フォックスが村に来たよ。」

(゚、゚トソン「無事村に着けたんですね!後で挨拶しないと。」

('A`)「......昨日まで村にいたけれどもう隣の町にいっちゃったよ。最近雨が降らないからって雨を降らせてくれたんだ。皆喜んでた。」

(゚、゚;トソン「昨日!?私は何日寝てたんですか?」

('A`)「3日くらいだよ。もう目覚めないかと思って本当に心配だったよ。」

人間そんなに長く眠れるんですね......


歩くたびに水の音が近くなる。


さらに少し歩くと太陽が眩しく反射する川の腹に出た。


(゚、゚トソン「綺麗ですね。」

('A`)「小さい頃とーちゃんとよく釣りをした川だよ。綺麗な川に自生してる薬草を取りに来たんだ。トソンの顔にくっついてるのもそれだよ。」

(゚、゚トソン「通りで薬臭い匂いがずっとしていると思いましたよ......」

386 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:57:37 ID:.KywFxjw0

ドクオさんはせっせと薬草を集めています。

私も手伝うと言ったのですが私を気を遣ってか頑なに拒否されました。

この顔に塗られてるのもこうやってドクオさんが集めてくれたんですね......

浅瀬に足をつけ、川の中の魚をしばらくぼーっと眺めていました。

(゚、゚トソン「......」じゅるり

('A`)「終わったよ〜。ついでにまた木の実見つけたから持ってきたよ。」

(゚、゚トソン「はっ!これはいつぞやの木苺っぽい木の実。」

ドクオさんの手から奪い取り噛みつきます。我ながら結構遠慮が無くなってきましたね。

('A`)「トソンは......さ。」

387 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 20:58:17 ID:.KywFxjw0




「これから......どこへ行くんだ?」



.

388 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:00:10 ID:.KywFxjw0


突如投げつけられた不意打ちの質問。


考えてもみませんでした。


もう家族も友達もいない。


そして目的も無い。


とても悲しくなります。


(゚、゚トソン「そうですね。その前にドクオさんに私のとっておきの秘密を教えてあげましょう。」


決心がつきました。

389 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:00:53 ID:.KywFxjw0


昔の事


友達の事


家族の事


私の事


病気の事は悲しませてしまうと思ったので伏せておきましょう。


ドクオさんに『私の今まで』を話しました。

390 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:01:53 ID:.KywFxjw0

(゚A゚;)「え......ということは.......え?トソンは遺物の時代の生き物ってこと?」

(゚、゚トソン「私よりも先の時代の遺物もあるかもしれませんが......そうなりますね。今はもう一人ぼっちですが。」

(゚A゚;)「そうなんだ......昔はトソンみたいな見た目の生き物が沢山いたんだ。」

(゚、゚トソン「モグラ族やフォックスさんや魔法使いみたいな種族はいなくて言葉を喋るのは私たち人間だけでした。」

何故人間がおらず他にこんなに沢山の種族がいるのでしょうか......そして気になるのが魔法......何故そんなものが......

(゚A゚;)「......」

ドクオさんは驚きのあまり言葉が見つからないようです。

(゚A゚;)「あ......えっと......食費かかりそうだよね!人間って!」

(゚、゚#トソン「......」

なんて言葉を見つけてるのでしょうか。腕を動かすのはしんどいので後で覚えていなさい。

391 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:02:33 ID:.KywFxjw0


でも.......『私のこれから』はどうしましょう。


(-、-トソン「何処へ行くか......でしたね。」


ああ、そうです。


簡単なことじゃないですか。目の前の気になることを順番に解決していけば良いんです。


(゚、゚トソン「とりあえずですが、旅を......しようと思います。何か人間の残した遺物を探して私達の時代に何があったのかを知ろうと思います。」


目的としては十分ですね。我ながら単純です。

392 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:03:37 ID:.KywFxjw0

(゚、゚トソン「......ここでお別れですね、ドクオさん。一緒にいてとても楽しかったです。」

やっと立派に外に出れるようになった彼はこれからお母さんと仲良く暮らせるでしょう。

その手助けが出来ただけでも嬉しいです。

('A`;)「いや、あ......その......うん。俺も、すごく楽しかったよ。」

宿に帰るまで彼は口数が少なかったです。

ううむ。やっぱり驚かせてしまいましたね。


でも彼には知ってもらいたかった。

393 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:04:58 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「あら、お帰り。早かったわね。」

('A`)「うん。何もない村だからね。薬草置いて来るよ。」


床の扉を開け地下に下りていく。


J( 'ー`)し「......もうそろそろ出かけるのね。」

(゚、゚トソン「ええ。旅に出ようかと。」

J( 'ー`)し「トソンちゃんのおかげでドクオが立派になって帰って来たの。いくらお礼を言っても足りないわ。本当にありがとう。」


母がニコニコと笑顔で語りかける。


J( 'ー`)し「お父さんが亡くなってから、一緒にご飯も食べず土の中に引きこもって出てこなかったのよ。」

出てこなかった所を見るに土の中の虫ばっかり食べてたんだろうね。

と続ける。

(゚、゚;トソン「......」

あれはこれのせいでしたか。

394 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:07:04 ID:.KywFxjw0

(-、-トソン「.......私のおかげじゃないです。ドクオさんの意思ですよ。」

J( 'ー`)し「え......ドクオの?」

(゚、゚トソン「ドクオさんはお母さんの風邪を心配して引きこもっていた家から飛び出したんです。既に十分立派だったんですよ。」

J( 'ー`)し「!......ちょっとごめんね、夕飯の鍋の火を止め忘れたわ。」

お母さんは振り向き早足で歩くけれどその背中はプルプルと震えていました。

ふふ、ドクオさんはお母さん似ですね。

('A`)「かーちゃん薬草棚に置いといたからね!」

「あ、ああ、ありがとう!」


厨房から声が聞こえ何事もなかったかの様に母が現れる。


J( 'ー`)し「そういえばドクオ......」

('A`)「......?」

J( 'ー`)し「........!」

('∀`)「......!」

J( *'ー`)し「......?」


楽しそうに話す家族の光景。

395 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:08:10 ID:.KywFxjw0


前向きになれたドクオさんと元気になったお母さんを見て、私が少し役に立てたんだなあと、誇らしく思いました。


でもやっぱりちょっと羨ましいな......


J( 'ー`)し「あ、そうそう。トソンちゃん。あなたの服ボロボロだったから直してみたんだけど......」

(゚、゚トソン「これは......私のパーカー?」

J( 'ー`)し「破れた部分を縫ってなめした皮を編み込んで丈夫にしてみたんだけど気に入ってくれるかしら。」


腕、胸、肩、背中、裾。


急所の部分に綺麗になめした皮が編み込んであり堅そうで、なおかつ動きやすく見た目もお洒落なパーカーがありました。


もう怪我をしないようにというお母さんの優しさを感じます。

(゚、゚トソン「かわいい......」

('A`)「かっこいい......」

(゚、゚*トソン「ありがとうございます。とても素敵です。」

396 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:09:17 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「うふふ、あとこれも持って行ってね。」

保存食の干し肉とチーズ。

怪我した時用の薬草ペースト。

それと、ええと......60cmくらいの小さい金属の......L字型の......棒?

(゚、゚トソン「これは.....?」

(゚A゚;)「こ、これは古代の遺物じゃないか!」

ドクオさんが興奮気味に解説を始めました。

397 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:10:00 ID:.KywFxjw0


彼曰く


これ1つで斬る、殴る、刺す、が出来る万能の武器。

力が上手く伝わりやすい芸術的な形をしていて少ない力でも物を動かせる。

小さく空いた穴には装飾をつけられて女性心をくすぐる。

しかもなぜか放置しておいても錆びない魔法がかけられている。


ドクオさんの言葉ですからねこれ。

私のじゃないですよ。

398 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:10:51 ID:.KywFxjw0



(゚、゚トソン「バールだこれ......」



.

399 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:11:33 ID:.KywFxjw0




(゚、゚#トソン「バールだこれええええええ!」




今日一番の大声が出ました。


魔法って言ってますがこれただのメッキですよね。物は言いようです......


('A`)「超かっこいい。いのちをかりとるかたちをしている。」


よく分かりませんがドクオさんやっぱり男の子ですね。全くよくわかりませんが。

400 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:13:19 ID:.KywFxjw0

便利......ええ。少々腑に落ちませんが便利そうですし喜んで貰っておきましょう。

J( 'ー`)し「お父さんの倉庫にあったんだけれどドクオを助けてくれたお礼に上げちゃうわ。」

(゚、゚トソン「大切なものなんですね。大事にします......」

J( 'ー`)し「あとベルトにそれを横付け出来るような鞘を作ってみたから使ってね。」

(゚、゚トソン「おお!動きやすそうです。ありがとうございます。」

だんだんと旅の用意が進みます。


ドクオさんとの別れが近い。


後は......

あ、残念ながらお気に入りのレギンスは血まみれのボロボロになってしまいましたね。

これは捨てて次は長めのパンツを出しましょう。丁度ベルトに鞘も付けられますしね。

部屋で着替えさせてもらいます。

401 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:14:00 ID:.KywFxjw0



よし。


.

402 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:15:25 ID:.KywFxjw0

ドクオさんのお母さんが直してくれたレザーパーカー。

着替えや食料や傷薬が入った斜め掛けのショルダーバッグ。

動きやすいストレッチパンツ。

背中の腰のベルトには横付けされた鞘にバールが刺さっています。


不思議な格好の新時代の冒険者ルックスの完成です。


(゚、゚トソン「ドクオさん。お母さん。お世話になりました。」

J( 'ー`)し「......まだ休んでいけば良いのに。疲れたらいつでも戻ってきていいのよ。」

403 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:16:13 ID:.KywFxjw0

病気の詳細は聞いた気がしますがコールドスリープ前の記憶は曖昧なせいで思い出せません。

思い出そうと唸りましたがダメみたいです。

まあ、それはそのうち思い出すでしょう。


......実感は無いですが私の身体は確かに病に侵されています。

両親がコールドスリープを提案するくらいなのでおそらくそこまで先は長く無いのでしょう。

何事もできるだけ急がないと。

404 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:16:54 ID:.KywFxjw0

J( 'ー`)し「隣町にはアクセサリー屋をしてる妹もいるし、最近までこの町に住んでいた宿屋のダイさんもいるから会ったら私の名前を出すといいわ。」

(゚、゚トソン「何から何までありがとうございます。」

('A`)「また......またねトソン。隣の町までは安全だから心配しなくて大丈夫だよ。」

(゚、゚トソン「また会いましょう。」

('A`)ノシ


町を後にし、比較的綺麗な砂利が引かれた道を歩く。


町の皆さんは私の事を魔法使いと思ってか近寄ってきませんね......もうちょっと交流したかったです。

ふふ、ドクオさんはいつまでも手を振ってくれてますね。



では......さようなら。


.

405 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:17:39 ID:.KywFxjw0

('A`)ノシ「......」プルプル

J( 'ー`)し「ドクオ......あなたの人生は一度しか無いのよ。」

('A`)「?」

J( 'ー`)し「かーちゃんの事は気にせず好きなように生きなさい。」

( A )「......」

J( 'ー`)し「ドクオ......?」

( A )「俺はとーちゃんの守った街でかーちゃんを守らないと......」

J( 'ー`)し「違うでしょう?かーちゃんは何でも知ってるのよ。」

( A )「......」

J( 'ー`)し「始めの1歩は踏み出せたんだからこれからも自分で決めるのよ。」

(;A;)「かーちゃん!」

J( 'ー`)し「なんだい?」

(;A;)「ごめん......親孝行できなくて......でも......俺はどうしてもトソンの......トソンの力になりたい......」

J( 'ー`)し「あんたが満足の行く人生を歩めるならそれだけでかーちゃんは幸せもんだよ。」

('∀`)「かーちゃん......ありがとう!」

J( *'ー`)し「それでいいのよ。」

ドクオはすぐに自分の部屋に帰ると準備してあった道具と父親譲りのスコップを片手に走り出した。

406 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:18:39 ID:.KywFxjw0

('A`)「行ってきます。もっと立派になって帰ってくるよ!」

J( 'ー`)し「たまには手紙を書くのよ。いってらっしゃい。」

走る。

今まで見守ってくれたモグラ族に手を振りながら走る。

俺はとーちゃんみたいに立派になる!

走る。

直ぐに見慣れた短い髪の毛の後ろ姿に追いつく



('A`)「トソン待って!!!!!」



精一杯叫ぶ。

彼女は驚いて振り向く。



('A`)「俺は初めて自分で決めたんだ!」


.

407 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:19:54 ID:.KywFxjw0


俺は暗い地面の中に引きこもっていたどうしようもないモグラだ!


それに何度もトソンを見捨てて逃げた。


でもトソンはそんな俺を自分の命を省みず助けてくれた!


だから俺は......


俺の生涯をかけてトソンに恩返しをしたいんだ!


トソンの力になれるかわから無いけれど、精一杯頑張るから!


お願いだ。


俺も......

408 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:21:26 ID:.KywFxjw0

叫びながら何故だか涙が溢れてくる。

(;A;)「 俺も......一緒に......」


いつの間にか目の前にいた彼女が何も言わずに抱きしめる。


ええ、私も一人でとても心細かったです。

あなたが付いて来てくれるなら私も嬉しいですよ。


短くも壮絶な体験を通して2人の心はとても近い位置にあった。


言葉はいらなかった。


( A )「ありがとう......」

(゚、゚トソン「でもよいのですか?せっかく外に出れて仲良く胸をはって母さんと暮らせるところだったのに。」

少々意地悪をしようとします。

('∀`)「ああ、もっともっと立派になって帰ってくるんだ!親父みたいに。」

おや、普段は泣きそうになるのに......

(゚、゚*トソン「ふふ、頼もしいですね。では一緒に行きましょうか。」

409 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:22:21 ID:.KywFxjw0


私は「もう家族も友達もいない。」と言いました。


どうやらこれは間違っていましたね。


これからはこの時代でできた初めての友人が私の支えになってくれるようです。


もう心配をかけないように突っ走るのはやめましょう。


2人で一緒に悩んで一緒に解決していきましょう。


これからよろしくお願いします。

410 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:23:21 ID:.KywFxjw0

----------------------------------

休憩と睡眠を取りながら歩くこと1日。

隣の街の近くまでは特に何にも遭遇せず着きました。

怪我も段々と良くなってきました。

問題と言えば非常食を私が食べ切ってしまったことくらいでしょうか


段々と大きくなる立派な大木を使った門。


町の中は煙突のようなものからたくさんの灰色が上がっている。


(゚、゚トソン「生活の色だ......」

私は人の作った暖かさを感じ、とても懐かしくなりました。

人間は居ないだろうけれどきちんと回っているであろう町の光景はとても懐かしいものです。

411 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:24:50 ID:.KywFxjw0

大きな門を抜けて町に入るとすぐに大きな噴水広場がありました。

ワイワイと賑わう光景は昔見た駅前を連想させます。

懐かしい光景と違うのは......


鳥の頭を持った人のような生き物が飛んでいる事。

大きなツノを生やした人型の生き物が笑っている事。

狐のお面をかぶり楽しそうに弦楽器を弾く生き物がいる事。

たくさんの体毛を生やしたゴリラみたいな生き物がそれに合わせて歌っている事。


噴水から続く石畳の道を辿って見ると家々が肩を寄せ合い立ち並んでいる。

石でできた簡素な家。

木でできたログハウス。

大きなツリーハウス。


統一感のないが奇妙な一体感がある町並みがそこにはありました。


(゚、゚;トソン「これは......」

('∀`)「......」

ドクオさんは心なしか楽しそうです。

412 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:26:08 ID:.KywFxjw0


この時代に人間は居ないという事は分かっていました。予想もしていました......


だけど。


改めて見ることによって思い知らされました。


今私のいる新時代は......


いえ。

413 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:27:05 ID:.KywFxjw0


この世界は......


既に......

414 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:27:47 ID:.KywFxjw0




この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン



.

415 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:28:40 ID:.KywFxjw0

............

いやいやいや!まだ人間が一人残っているじゃないですか!

私のこの命が尽きるまで。

この世界で起こったことを解明してみますよ!

そのためには......

(゚、゚トソン「まずは食堂を探しますか。」

('A`)「宿が先だよ......」

416 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:29:45 ID:.KywFxjw0


8話 新時代的新世界 〜おわり〜


.

417名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 21:32:18 ID:cVtXeRIY0
おつ!
風死ワロタ

418 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:32:29 ID:.KywFxjw0
以上です。

これでこの作品の1部は終わりです。

多分5部か6部くらいの作品になるかと思います。

ただ、久しぶりの投下で誤字脱字糞改行が酷く一度スレを削除してやり直すかもしれません。

感想質問等あればよろしくお願いします。

419名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 21:34:54 ID:7SPIr5Ew0


>>373
簡単に割れる(あるいは既に割られてる)トリップ使ってると簡単に成りすまされるから変えた方が良いっていう警告的な意味を込めて書き込んだ
成りすます奴がいなかったらそれも迷惑行為だろって言われたら反論できん

420 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:35:36 ID:.KywFxjw0
(今回はミスが無くて良かった)

421 ◆75HDnYo/hM:2015/07/30(木) 21:36:57 ID:.KywFxjw0
>>419
酉ってそんなに簡単に割れてしまうんですね。助かりました。ありがとうございます。

422名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 22:03:53 ID:Mm3v81fQ0
酉を使うときはその酉で検索かけるといい、ひらがなカタカナ四文字まではほぼ全て割れてるといっていい

423名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 23:06:39 ID:WlQY93ww0
つか反映されるのは最初四文字だけ これ豆な
乙いいねいいね

424名も無きAAのようです:2015/07/30(木) 23:12:44 ID:XkRsq0AM0
乙!
バールワロタ

425名も無きAAのようです:2015/07/31(金) 01:07:50 ID:pLgXMAuM0
エクスカリバールやんけ 乙

426名も無きAAのようです:2015/07/31(金) 09:25:35 ID:jNGlp4zo0
いやぁ好きだなぁこの世界。
まだまだ続くと思うと嬉しい!
にしてもバールww

>>423
そうそう、半角英数だと8文字まで反映されるけど日本語だと4文字までなんだよな

427名も無きAAのようです:2015/07/31(金) 11:21:40 ID:8MQ80KYA0
皆バール好きすぎでしょ。それにしてもこの世界観とても素敵だ。伏線残したまま完結かと思ったけれどまだ続くのはすごく嬉しい。

第一部すごく綺麗に終わってて良かった。
あとフォックス広場に紛れ込んでてワロタ。

428 ◆75HDnYo/hM:2015/07/31(金) 18:46:17 ID:Bqi5xqLI0
感想ありがとうございます。皆バールそんなに好きなのか......

例によって百物語を書くので次の投下は遅れます。

429名も無きAAのようです:2015/08/01(土) 11:39:19 ID:MYg8jIZ20
バールは男の浪漫だよ。
綺麗にまとめる話得意でしょ作者。
すごく良かった。乙乙

430名も無きAAのようです:2015/08/01(土) 14:03:24 ID:lE1CaYX60
一人称がコロコロ変わるのがちょっぴりややこしいかなって思った
自分の読解力不足もあるけどね

431名も無きAAのようです:2015/08/16(日) 22:35:57 ID:mUyyGrfo0
続きこないなぁ
待ってるゾ!

432名も無きAAのようです:2015/08/19(水) 00:56:33 ID:1UgY9fiA0
もう祭りも終わった 期待してるからゆっくり急いで書いてくれ

433名も無きAAのようです:2015/08/19(水) 01:10:48 ID:L86JwLKM0
ああ。急かすつもりは全く無いがなる早でな

434名も無きAAのようです:2015/08/20(木) 20:19:36 ID:4TcOCuEQ0
続き......続き......

435 ◆uYz2yuhtJ6:2015/08/24(月) 20:03:48 ID:SjRD6.HA0
いまさらですが

>>102 書き込みミス 
>>295 書き込みミス 
あと同じ文が続いているところは大体書き込みミスです。

まさか期待してくれる人がいたとは......ありがとうございます。
現在仕事が立て込んでいて次の投下は少し遅れてしまいそうです。

こんな拙い文ですが沢山の入れたいシーンとどうしても書きたいエンディングがあるので
余程のことが無い限り逃亡はしません。

もうしばらくお待ちください。

436 ◆uYz2yuhtJ6:2015/08/24(月) 20:06:23 ID:SjRD6.HA0
あれ、酉が変わってる。
一応本人ですので。

437名も無きAAのようです:2015/08/26(水) 05:23:12 ID:6JgOvztU0
>>436
それだけだとちょっと信用できないから、twitterか何かでこの酉が本人ですよーって告知してくれないか
続き期待してる

438名も無きAAのようです:2015/08/26(水) 09:28:00 ID:bWLut4kI0
>>437
そんなに疑わなくてもよくね?

439名も無きAAのようです:2015/08/26(水) 10:36:49 ID:E6iPuOZU0
まあ信用はあんまりできないけどね

来たらいいなくらいの心構えでいれば

440名も無きAAのようです:2015/08/26(水) 13:31:56 ID:PGR.QeoA0
なんでネガティブな事ばっか言うかなー

441名も無きAAのようです:2015/08/26(水) 13:36:52 ID:RcSCbwas0
最近荒れてるから仕方ないっちゃ仕方ない
そこにつけこまれて荒らされるのだけは勘弁だが

何にせよ期待してるぞ、作者

442名も無きAAのようです:2015/08/28(金) 21:15:20 ID:R/Y5TXVA0
生存報告来てたか
楽しみにしてるぞー

443名も無きAAのようです:2015/08/31(月) 16:17:34 ID:3ogljQ9E0
面白かった続きはよ

444名も無きAAのようです:2015/09/10(木) 21:54:19 ID:IjwJliTE0
まだ〜?(^_^)/□☆□\(^_^)

445名も無きAAのようです:2015/09/13(日) 16:40:25 ID:mw/Z4ua60
追いついた乙

446名も無きAAのようです:2015/10/07(水) 22:49:19 ID:lYTT7Kmo0
>>430
分かる

447名も無きAAのようです:2015/10/14(水) 20:55:50 ID:SUXB/.Ok0
作者!
待っとるぞー!

448名も無きAAのようです:2015/11/07(土) 18:58:27 ID:M9rF1f160
続きまだかな〜

449名も無きAAのようです:2015/11/17(火) 03:23:59 ID:iA9ddLXg0
このスレを見付けて寝不足になってしまった…
続き楽しみにしてる

450 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 20:50:10 ID:oAHzRbHI0
皆さん感想ありがとうございます。少し時間が取れたので投下したいと思います。

この物語は
1「」を使った会話
2地の文

3地の文に似た紛らわしい心の声

でお送りしています。
読みにくいかもしれませんが()を使うのがあまり好きではないのでどうかご容赦を。

できるだけ読みやすくレスを区切って書いていきたいと思います。


一人称は1つの段落の始めが人の名前。その後が彼、彼女と使っていましたが書いていくうちにごちゃごちゃになっていたようなので次から統一します。
ご意見ありがとうございました。

451 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:01:26 ID:oAHzRbHI0


かーちゃんはドクオと同じ様に大切な人の旅立ちをいつまでも見続けていた。


J( 'ー`)し「あの子。大丈夫かしら......」


見送りを中断させたのは数年前に引っ越してきた噂好きの若いモグラの奥さんだった。


「かーちゃんさん!村長の娘さんが見つかったかったらしいわよ!」


数日前からモグラの村は村長の娘が行方不明になった事でもちきりだった。


J( 'ー`)し「!......本当かい?」


引きこもりがちだった村の英雄の息子が傷だらけの女性を運んで来た。

本来なら小さな村の大きなイベントになるはずだった。

しかし集落を大切にするモグラの村では村長の娘の捜索を優先させていた。


J( 'ー`)し「どこで見つかったの?」

「それが......」

---------------------------------------------------------


.

452 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:04:38 ID:oAHzRbHI0

普段生き物が集まることのない村の裏の森に沢山のモグラ族が集まっていた。

こんなにもモグラ族が集まるのは年一度の祭くらいだろう。

しかし今日は祭りの時とは違い、とても静かな集まりだった。

ある者は目を覆い、ある者は口を抑え、またある者は泣き崩れていた。

.

453 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:07:01 ID:oAHzRbHI0

辺りにはどす黒く変色した赤土。

既に黒くなった血液がいたるところに飛び散っている。

その中心に横たわるモグラ族の少女の胸にはナイフが深く刺さっていた。


絶望にまみれた死に顔はこの世の全てを呪っているかの様だった。


J( 'ー`)し「こんなことって......」


モグラの村を覆っていた暗雲はじわり、じわりと息子達の足跡を辿っていく。


---------------------------------------------------------


.

454 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:09:52 ID:oAHzRbHI0


この世界は既に征服されていたようです(゚、゚トソン

ttp://imefix.info/20151208/241212/

455 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:11:41 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚トソン「それにしても凄く賑わっていますね。他の町もこんな感じなのでしょうか?」

('A`)「元引きこもりにそれ聞く?」

(゚、゚;トソン「そ、そうでしたね。これから一緒に色々見ていきましょう。」


家と呼ばれる様々な種類の建物を寄せ集めてくっつけた不思議な町並み。

トソンはその中の1つのツリーハウスをまじましと見つめていた。


(゚、゚;トソン「改めて近くで見ると手作り感満載ですね。どうやって作るんですかこんなの。」

('A`)「集めてきた材料を飛んだり、もぐったり、糸吐いたりして組み立てて作るよ。」

(゚、゚トソン「人間の頭では即座に理解できませんねそれ。」

456 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:12:45 ID:oAHzRbHI0

広場に近づくにつれて喧騒が大きくなる。

しかし喧騒に近づけば近づくほど声量が身を潜めていった。


ひそ、ひそ、ひそひそ......


(゚、゚トソン「私達なにか見られてませんか?」

('A`;)「ト、トソン!」


ドクオは勢いよくトソンの服を引っ張ると走り出した。

457 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:14:06 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚;トソン「わわわ、どうしました?」

('A`)「多分魔法使いだと思われてるから離れよう。」

(゚、゚;トソン「あ......」


2人はできるだけ人目に付かない路地へ滑り込んだ。

458名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 21:14:47 ID:zYDkfnAE0
おお!待ってたぜ!!

459 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:15:55 ID:oAHzRbHI0

【魔法使い】


肌の色が白く

血液が白く

人間にかなり近い外見をした生き物

その性格は皆一様に利己的で残虐

それぞれ好みを持っており、それを手に入れるためならどんな手段でも使う

しかし好みを手に入れるためには『交換』と言う手段を用いなければならない

利己的な性格故、彼らは交換を望んでいない相手に言葉巧みに物を与え、対価として強制的に自分の好みを奪う。

460 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:17:03 ID:oAHzRbHI0

そうでした。人間は魔法使いに似ているんでしたね。

広い視野でこの街を見れないのは残念ですが仕方がありません。

(゚、゚トソン「これならばれないでしょう......」スッ


トソンは人目を避けるためフードを被った。


('A`;)「あ、怪しいよ。」

(゚、゚トソン「気を取り直して街を探索しましょう。」キラキラ

('A`;)「......うん、トソンがそれでいいならいいよ。」

461 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:19:01 ID:oAHzRbHI0

冷静になったかと思いきやトソンの瞳は子供の様にキラキラと輝いていた。

そして何事も無かったかのように生き物の波に混ざり、その様子を横目で眺めることを再開した。


(゚、゚*トソン「......やっぱりこの世界は凄い。」

本当に様々な種類の生き物がいますね。

自分より小さい生き物。

はるかに大きい生き物。

毛深い生き物。

人間みたいに毛の少ない生き物。

翼が生えている生き物や虫の様な生き物。

手を繋いだ全く種の違う男女の生き物。

言語も共通なようですし、皆自知性を持っており雑談を楽しんでいるとは......

不思議な感覚です。

見た目が違うのに此処まで平等に生きているなんて。

私の時代では信じられません。

もしかしたらここはとても素敵な世界かもしれません。

462 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:20:01 ID:oAHzRbHI0


きょろきょろふらふらと後をついてくるフードの生き物。


先導しながらトソンを伺うドクオはため息をこぼした。


('A`)「やっぱりめっちゃ怪しいよトソン......」

463 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:20:59 ID:oAHzRbHI0


次の瞬間。


ドンッ


「あいたあああああああ!!!」


トソンにぶつかった生き物が派手に転ぶ。


('A`;)「あー、何やってるの。また尻餅ついて。」


咄嗟の衝撃にトソンのフードがはだけた。


(゚、゚;トソン「いてて、あ、し、失礼しました。沢山生き物がいたので浮かれてしまって......」

「いやいや、こちらこそ。前を見ていませんでした。」

('A`;)「大丈夫ですか?」

(゚、゚トソン「あ......」

「いたた、最近はケモノによくぶつかりますねえ......」

('A`)「あれ?」

464 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:22:40 ID:oAHzRbHI0

「おや?」


キツネの仮面。背負った弦楽器。ふさふさとしたつい触りたくなるような尻尾。


爪'ー`) 「おやおやおや?また会えましたねトソンさん、ドクオさんも。」


以前焦土の町で出会った男性が服に付いた砂をはらっていた。


('∀`)「フォクス!こんにちは。」

爪'ー`)「お元気そうで何よりです。トソンさんも無事目が覚めましたか。 」

(゚、゚トソン「ええ!紳士さん(笑)もお元気そうで何よりです!」

('A`;)「......」

爪;'ー`)「......私何か気に障るようなことしましたっけ?」

('A`)「やっぱりあの時噛み千切られるような事したんじゃない?」

爪;'ー`)「してませんよ......」

(゚、゚トソン「半分冗談ですよ。」

爪;'ー`)「そうですか、それは良かった......え、半分?」


何かこの人は不思議とからかいたくなるような変態性を秘めていますね。

465名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 21:23:32 ID:oKwUhNIA0
支援

466 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:23:39 ID:oAHzRbHI0

爪;'ー`)「ま、まあいいです。そんなに元気になってくれたなら、私も頑張って薬草を集めた甲斐がありました。」

(゚、゚;トソン「わ......え、そうだったんですか?」

('A`)「うん、手伝ってもらったんだ。」

(゚、゚;トソン「そ、そうとは知らずに失礼を。」

爪'ー`)「命の恩人は深く傷つきました。」

(゚、゚;トソン「う......」

爪'ー`)「......病床で寝顔じっくり見れたんでそれで手打ちにしましょう。」

('A`)「......」

(゚、゚トソン「......」

爪'ー`)「......」

(゚、゚#トソン「......貴様」スチャ

爪;'ー`)「......じ、冗談ですよ。その物騒な物に手をかけるのを止めて下さい。」

('A`)「仲いいね2人とも。」


ドクオはこの雰囲気を壊さないように静かにトソンのフードを頭に戻した。

467 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:25:03 ID:oAHzRbHI0

爪'ー`)「ふむ......ドクオさんはトソンさんに付いて行く事にしたんですか。旅はとても良い物です。良き経験になるといいですね。」

('A`)「......」コクコク

爪'ー`)「それにしてもあんなケダモノよく撃退できましたねえ。」

(゚、゚トソン「ケダモノ?」

ドクオが服の袖を引っ張る。

468名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 21:31:27 ID:gjGuWI8Q0
きたー!!(゚∀゚ 三 ゚∀゚)支援!!

469 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:34:03 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚トソン「ん?どうしましたドクオさん。」


それに合わせて身を屈めると彼は耳打ちする。


('A`)「笑い犬の事だよ。俺たちみたいに集落を作って生活するのがケモノ。無差別に俺らを食べる言葉が通じないのがケダモノ。」

(゚、゚;トソン「あの、それもっと早く教えてくださいよ......」

とても大切な情報じゃないですか。

言葉......?あれ......でも......

('A`;)「言うの忘れてた、ごめん。」

470 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:35:31 ID:oAHzRbHI0

爪'ー`)「......トソンさん?」

(゚、゚;トソン「え、ええ。でも私死にかけましたけれどね。 」

爪'ー`)「ははは、そうでしたね。まあ私だったらさっくり殺されてましたよ。」

へらへらと笑っているのだろうがその表情はやはり仮面に阻まれて読み取れない。

('A`)「あの、村に雨を降らせてくれてありがとう......お礼言えてなかった。」

爪'ー`)「いえいえ、ちょっと疲れましたがお安いご用ですよ。」

(゚、゚トソン「そういえばあの時もひどく疲れていましたね。」

爪'ー`)「そうですね。でも、何かを得るためには何かを捨てなければいけないものですよ。それで世界はバランスがとれているのです。」

471 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:38:30 ID:oAHzRbHI0

(-、-;トソン「ええと???」

爪'ー`)「おっと、ふふふ、ではまた機会があれば会いましょう。」

(゚、゚;トソン「えっ!いや、あのっ!」


ひらりと尻尾を翻し町の中心へと溶けていった。


(゚、゚;トソン「はぐらかされちゃいました......」

('A`)「???」

(゚、゚トソン「いえ、なんでもないです......まずは宿でしたね。」

472 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:41:27 ID:oAHzRbHI0

('A`)「そういえばダイさんが今はこっちで宿屋やってるってかーちゃんが言ってたよ。」

(゚、゚トソン「ダイさん?ああ、ドクオさんの村に以前住んでた人でしたっけ。」

('A`)「うん。昔から村に住んでて小さい頃よく遊んでもらったんだ。」

(゚、゚トソン「近所の優しいお兄さんって感じですね。」

('A`)「お姉さんだよ。最近急にふらっといなくなったと思ったらいつの間にかこの町に住んで宿屋をしてるみたい。」

(゚、゚トソン「そうなんですか。」

('A`)「昔からよくわかんないケモノだけれど優しいよ。だからまずはその宿に寄りたいんだけど良いかな?」

(゚、゚トソン「ええ、案内をよろしくお願いします。」

('A`)「うん。かーちゃんから聞いた話だとこっちに......」


トソンは懲りずに行き交うケモノに目移りしつつも、ドクオからはぐれないように付いていった。

473名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 21:41:28 ID:f.KzQoHY0
支援だ

474 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:45:32 ID:oAHzRbHI0

先ほどのフォックスさんのセリフはどういう意味だったのでしょうか?

何かを得た?捨てた?バランス?

さらに引っかかるのがケモノとケダモノ。

言葉が通じるのがケモノ?ケダモノ?


思考の波がひいては寄せてと脳を乱す。


一度気になってしまうと考え込んでしまうのが厄介な癖です......

分かってはいるのですがなかなか治りませんね。

ええと、なんでしたっけ。

ああ、そうです!私達が遭遇したあれは......

475 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:46:48 ID:oAHzRbHI0

......


(゚、゚トソン「......」グー


大きな腹の虫がなくと共に思考の波が不規則に衝突し始める。


ダメですね。お腹が空きました。

(゚、゚トソン「まだですか......」

('A`)「もうちょい。」


しばらくケモノの波に逆らって歩くとその数がだんだんと減っていった。


(゚、゚トソン「大通りはお祭りでもやっているみたいでしたね。」


('A`)「ね。俺はこれくらい静かな方が落ち着くなあ。」


ぐねぐねと不規則な曲がり角をいくつか曲がる。


('A`)「あ、ここだ。」

(゚、゚トソン「つきましたか。」

476 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:48:49 ID:oAHzRbHI0


田舎の民宿のような木でできた温かみのある建物はどこか懐かしさを覚えた。


ドクオはがたがたと建て付けの悪そうな横開きの扉を開けた。


('A`)「こんにちはー。」

……

……

('A`)「ごめん下さーい。」

……

……

('A`)「いないのかな。」

(゚、゚トソン「いないみたいですね。」


さらに少しの沈黙の後、がたっと物音が鳴り足音が近づく。


/ ゚、。 /「む......いらっしゃい......ませ......」

('∀`)「ダイさん!久しぶりドクオだよ!」

/ ゚、。 / 「あ......ドクオ?......こんにちは。」

477 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:51:57 ID:oAHzRbHI0


すらりと高い身長。

ピンと空へと張った鋭い耳。

長い尻尾が静かに揺れる。

猫の様なケモノの女性が出迎えた


(゚、゚トソン「おお、綺麗な方ですね。」


ゆっくりと長い手がドクオへ伸びる。


('A`;)「がっ......」


突然頭を掴まれびくりとドクオが震える。


/ ゚、。 / 「ふ......ふふふふ......もふもふ......ふふふ......」


ダイさんと呼ばれた女性はその手を引き寄せわしゃわしゃとドクオの頭を撫で回す。


('A`;)「わ!や、やめて!もう子供じゃないんだよ。」

(゚、゚トソン「......」

あらあら、嫌がっていても顔がにやついてますよドクオさん。

478 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:53:13 ID:oAHzRbHI0

/ ゚、。 /「ふふ......ふふふふふふ......ふふふふふふふふ......」


顔がにやつ......あれ、引きつってますねこれ。


('A`;)「トソン......助け........」

(゚、゚;トソン「えっと......」

/ ゚、。 /ふふふふふもふ......ふふふもふもふ......」

(゚、゚;トソン「あの.......よろしいでしょうか?」


彼女は手を止める。


/ ゚、。 /「む......君は?」

(゚、゚トソン「トソンと申します。」

/ ゚、。 /「トソン......はて?」


トソンはすっと首元のひもを解き、ゆっくりとフードを外す。

栗色のつやつやした髪がふわっと広がった。

479 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:54:19 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚;トソン「あの、どうか驚かないでください。こんな見た目ですが私は魔法使いなんかではないので、その......安全?なはずです。」


ドクオはがっちりと固定された手の中からぼさぼさの毛並のまま這い出して声を荒らげた。


('A`;)「そ、そうだよダイさん!トソンは魔法使いに似てるけれど別の生き物なんだ!」


/ ゚、。 /「......そう......ですか。」


緑色の瞳がじっとトソンを見つめる。

480 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:56:09 ID:oAHzRbHI0

/ ゚、。 /「あなたの名前は......トソ......ン......トソン......よろしくお願いします......」

不思議な表情をしていました。

/ ゚、。 /「......」ジー

うまく言い表せませんが、懐かしむような、喜んでいるような悲しんでいるような?

そんな表情をしていました。

/ ゚、。 /「......」ジー

(゚、゚;トソン「......」

すごく見られています。

 
数秒後先に視線を外したのは緑色の瞳だった。


/ ゚、。 /「部屋は全部空いてるから......好きに使って......」


最後にそれだけを告げると元いた部屋へと戻っていく。

取り残された2人。

481 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:57:30 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚;トソン「よ、よかった。驚かれませんでしたね。」ホッ

('A`;)「ね。俺だったら魔法使いが家に入ってきたら多分気絶する。」

(゚、゚トソン「とりあえず許可ももらえましたし部屋でこの後の事を考えましょう。」


2人は一番近い部屋に入り荷物をおろしベットに腰を掛けた。

部屋の中には2つのベッドと個室の浴室のみ。

質素だけれど広々としていて木の良い香りがした。


(-、-トソン「はあ、屋根のある部屋って素晴らしい。」

('A`)「穴倉の中にも屋根はあるよ?」

(-、-トソン「それは......天井と言いますか地面と言いますか......私の求めているものとは違います。」

('A`)「えー......」

482 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 21:58:36 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚トソン「あっ!そうです。聞きたい事があるんです。」

('A`)「どうしたの?」

(゚、゚トソン「さっき言ってたケモノとケダモノの話なんですが。」

('A`)「うん。」

(゚、゚トソン「ドクオさんはケモノですよね?」

('A`)「ケモノのモグラ族だよ。」

(゚、゚トソン「笑い犬は?」

('A`)「ケダモノ。笑い犬ってのはその笑い声から取ったんじゃないかな?」

(゚、゚トソン「では言葉が通じるケダモノは何というのですか?」

('A`;)「そんなのいないよ。だから皆ケダモノって呼ぶんだよ」



(゚、゚トソン「でも......あの笑い犬は......言葉が通じていましたよ?」

483 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:00:47 ID:oAHzRbHI0

('A`;)「え?そうだっけ?怖過ぎて覚えてないや。でもケモノはケモノを食べる事なんてないし......」


ぐうううううう


先ほどよりも大きな腹の虫が泣く。


(-、-トソン「あ、ダメです......これ以上頭が動きません。」

('A`;)「あ、そうだった。ご、ご飯はどうする?」

(-、-トソン「どうしましょうか......もうお腹ぺこぺこです。」

484 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:02:54 ID:oAHzRbHI0

トントン

ノックの音の後がらがらと扉が開き、にょっきりと顔が覗く。


/ ゚、。 /「......2人とも友達だから部屋は勝手に使っていいけど......私......ご飯は作れないから......どこかで食べてきて......」

(゚、゚;トソン「う......死の宣告です。わかりました。」

('A`)「そうだ!ダイさん、のーちゃんさんのお店知ってる?」

/ ゚、。 /「かーちゃんの......妹ね?良い装飾品を作るために旅に出たらしい......最近会っていない......寂しい。」

('A`;)「そっか、ありがとう!でも、この町で頼れる人がいなくなっちゃった。」

/ ゚、。 /「力になれなくてごめんね......他に何かあったら......何でも言って......」


再び元の部屋へと彼女は消える。

485名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 22:03:10 ID:qRVz/zuo0
嬉しいな
ちょうど今日昼間読み返してたんだよ

486 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:05:01 ID:oAHzRbHI0

(-、-*トソン「ふふふ、友達と言われてしまいました。」

('A`)「よかったね。」

(゚、゚トソン「また友達が増えてしまいましたね。また夜にでも話しかけてみましょう。」

('A`)「そうだね。」ぐー

(゚、゚トソン「ドクオさんもお腹が空きましたか。早くご飯......を......あれ?」

('A`)「今日はまだ何も食べてないしね。」

(-、-;トソン「あの、ドクオさん?とても大変なことに気が付いてしまいました。」

('A`)「ん?」

(゚、゚;トソン「どうやってご飯食べれば良いのですか?」

('A`)「え?急にどうしたの?食堂?」

(゚、゚;トソン「そうではなくてですね、あの......ううむ。」

('A`)「え、何々?」

487 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:06:39 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚;トソン「物とかサービス。ええと、例えばご飯だったり宿泊だったりをするときにお礼に交換するものってあるんですか?」

('A`;)「えーと?」

(゚、゚;トソン「その、食べ物を作るのは大変じゃないですか。それを無料でもらうだけだと作った人に申し訳ないです。だから、ええと、うーん。」

('A`)「......カネ?」

(゚、゚*トソン「そう!伝わりました!金です!この時代にもあるんですね。」

('A`)「うん。そこらへんの穴掘るとボロボロなやつが結構出てくるよ。俺の住んでたところは田舎だったから物々交換ばっかりだったけれど、これくらいの大きな町だと皆金を使っ......て......」

(゚、゚トソン「......」

('A`)「......カネ持ってないね俺たち。」

(゚、゚トソン「ええ......」

('A`)「お腹すいたね。」

(゚、゚トソン「ええ......」

('A`)「仕事も探せばあるだろうけれど、働き終わる前にトソンは餓死しそう。」

(゚、゚トソン「ええ......」

('A`)「......虫食べる?」

(゚、゚;トソン「......引っ叩きますよ。」

('A`)「......ごめん。」

(゚、゚トソン「わたしたちのぼうけんはここでおわってしまった。」

('A`;)「不吉なこと言ってないで外出ようよ。」

(-、-トソン「行動しない事には何も解決しませんもんね。」

('∀`)「うん!」

488 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:07:47 ID:oAHzRbHI0





と、思いながら外を歩き回ってみたものの......

(゚、゚;トソン「くっ......」


辺りに漂う食堂らしき建物から漂う美味しそうな良い香りに足取りが重くなる。


(゚、゚トソン「いっその事町の外に出て木の実でも食べましょうか。」

('A`)「美味しいものが食べたい......」


少しずつ町の中心に近づくと威勢の良い掛け声が耳に入った。


「誰でも参加できるよー!」

「3人勝ち抜くと賞金としてカネ一袋とこの村の特産品の木の実一袋だ!」

(゚、゚トソン「あれはなんでしょうか?」

('A`;)「あ、トソン待って。」

489 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:09:31 ID:oAHzRbHI0


木の実という単語に反応して人集りに近寄る。

するとそこには沢山のケモノが密集して壁になっていた。


(゚、゚トソン「見えません......」

('A`)「何だろねこれ。」


壁の先が気になってぴょんぴょんと飛び跳ねる。

見えたのは木でできた広い円形の柵。


(゚、゚トソン「木の柵?何のお祭りでしょうか?」ピョンピョン


その後何度か飛んでかろうじで見えたのはその木の柵の中で佇む1人の女性。

心臓がちくりと痛む。

それがどうしても気になりケモノの壁を掻き分けて進む。

490 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:10:18 ID:oAHzRbHI0

('A`;)「ちょ......トソンどこ行くの?」


だんだんとドクオの声が小さくなる。


(゚、゚;トソン「あ、ここまでくればよく見え......」


柵の中の女性の頭程度ならジャンプせずに見える位置。


突如大きく吹いた風がうつむいた女性の髪を持ち上げた。


(゚、゚;トソン「えっ!」

491 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:11:01 ID:oAHzRbHI0


ドクン


トソンは急に走り出した。

壁を押しのけ進む。


ドクン


('A`;)「トソン!何処行ったの!」


友達の必死な声が更に遠ざかる。

492 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:12:04 ID:oAHzRbHI0

(゚、゚;トソン「ぐ......どいて下さい!」


トソンの必死な形相を見て周りのケモノは道を開ける。


そんなはずは......


ドクン


そんなはずはないです。


ドクン


心臓が何かを私に訴えかけている。

足が言う事を聞いてくれない。


ドクン


(゚、゚;トソン「どわっ!」


ケモノの壁が全て消えた瞬間、木の柵にぶつかり柔らかな土の中へごろごろと転がり込む。


(゚、-;トソン「あてて......」

493 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:13:01 ID:oAHzRbHI0



目の前には木の棒を杖にして肩で息をする女性の姿。



.

494 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:13:57 ID:oAHzRbHI0

「おおっ!次の挑戦者かー?」


ケモノの壁の中から一際大きな声が響く。


「現在2勝中の彼女に挑む怪しさ満点の挑戦者の登場だあああああ!!!」

(゚、゚;トソン「え?挑戦者?いえ、違......私は......ッ!そんなことより!」

495 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:15:15 ID:oAHzRbHI0


この時代で強く生き抜いてみせると誓ったばかりなのに......

どうして目の前の女性にこんなにも動揺してしまうのだろう。

.

496 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:17:06 ID:oAHzRbHI0


(゚、゚;トソン「あのっ!あなたはっ!」


すがる様に彼女へ言葉を投げかける。


その姿が改めて目に入る。

緑色の髪。

力強くしなやかな鳥の脚。

木の棒を杖にしている腕は肩の付け根から手首まで白い羽根が生えていた。

辛そうにしているが木の棒を握る人間と同じ手は力強い。

人と鳥が混ざったような生き物。

497 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:18:41 ID:oAHzRbHI0


ふらふらと立ち上がりキっと顔を上げた女性と目が合う。


ドクン


心臓が大きく跳ね上がる。

ぴょこんと跳ねたアホ毛。

人懐っこそうな瞳。



(゚、゚;トソン「私です!トソンです!あなたはもしかして......!」



彼女の姿勢が徐々に低くなる。

498 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:20:27 ID:oAHzRbHI0

彼女は羽なんて生えていない。

彼女の足は鳥の足ではない。

彼女は緑色の髪ではない。

でも......

.

499 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:21:52 ID:oAHzRbHI0



(゚、゚トソン「ミセリ......?」


.

500 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:23:00 ID:oAHzRbHI0


「3人目......」


ぼそりと女性は呟いた。

そして

トソンへ向かって導火線に点火された火の如く走り出した。

501 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:24:05 ID:oAHzRbHI0


9話 新近代的再開? 〜おわり〜


.

502名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 22:31:24 ID:kmMEyYu20
乙!続き読みたかったんだ。
>>454の絵もいいね!

503 ◆uYz2yuhtJ6:2015/12/08(火) 22:37:17 ID:oAHzRbHI0
支援と感想ありがとうございます。

次は年明け頃に投下できるかと思います。

この話の書き貯めがあと4話
以前書いたシナーの短編の続きが3話

忙しくて推敲する時間と投下する時間がなかなか取れません......

完結まで長い目で見てくれると幸いです。

504名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 22:42:23 ID:W/L27xeg0
乙!
シナーの短編の続きも見れるとは嬉しい

505名も無きAAのようです:2015/12/08(火) 23:48:23 ID:GUt7UG3E0
うおおおおお来たああああー!!
嬉しい。

似てる人と戦うのつらいな……次も楽しみにしてる

506名も無きAAのようです:2015/12/09(水) 02:55:29 ID:didwVFew0
投下乙

507名も無きAAのようです:2015/12/09(水) 06:24:51 ID:A1FfwmYw0
乙!

508名も無きAAのようです:2015/12/09(水) 10:19:06 ID:7Ha22Ar60
こんなに良いスレ見逃していたとは
乙!面白かったシナーの方も読んでみたいな

509名も無きAAのようです:2015/12/09(水) 12:09:01 ID:iESoBGXo0
おかえり〜

510名も無きAAのようです:2015/12/15(火) 20:50:16 ID:Qyy3tCZA0
おつ!
今日はじめて読んでみたんだけどタイトルで近代的SFだと思って敬遠した前の自分を殴りたい

サブタイは友との再会じゃなく冒険の再開って意味なのかな?

511名も無きAAのようです:2015/12/20(日) 22:10:59 ID:NLOwOtUM0
年明けが楽しみだ

512名も無きAAのようです:2016/01/20(水) 22:50:59 ID:YwWROy1w0
待ってるぜ〜

513名も無きAAのようです:2016/01/27(水) 22:40:45 ID:u8sj7pb20
私待つわ

514名も無きAAのようです:2016/01/28(木) 13:55:22 ID:jB2vGb7o0
いつまでも

515名も無きAAのようです:2016/01/28(木) 14:14:19 ID:..llwTEc0
まーつーこ

516名も無きAAのようです:2016/01/28(木) 15:54:20 ID:PM..djcM0
たとうありよしが

517名も無きAAのようです:2016/03/09(水) 09:37:25 ID:qdrtk9Dw0
待ってるぞ〜

518名も無きAAのようです:2017/07/07(金) 07:40:05 ID:XyxKwxdI0
待ってる

519名も無きAAのようです:2017/07/07(金) 17:05:11 ID:aoOm13PY0
俺も待ってる


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