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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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乙
ここで切るのか・・・やらしいなー、続き気になるぜ
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おつおつ
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乙乙
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なんだなんだ不穏だな
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おつ
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おつおつ
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おつおつ!
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どうもこんばんは。
それでは、投下を始めたいと思います。
今日もよろしくお願いします。
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8.流星
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はじまりの街へと出発した八人を見送るミセリ達三人。
ミセ*゚ー゚)リ「なんか怪しいのよね。
戻ってきたら吐かせないと」
ショボンとシャキンの後姿を見ながら呟くミセリ。
( ∴)「姫、どうかしましたか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ううん。なんでもない」
右隣に立っているゼアフォーが顔を覗き込んでくる。
それに満面の笑顔で返した。
ミセ*゚ー゚)リ「さ、今日も頑張ろう!
明日戻ってきた時に、驚かせちゃおうね」
(*∴)「はい!頑張りましょう!」
頬を赤らめながら答えるゼアフォー。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、まずはまた昨日の場所にいこっか。
あんまり効率よくないから、今この村にいるような人達は行かないだろうし」
( ∴)「は」
( ∵)「姫!」
ゼアフォーが元気よく答えようとした声にかぶせるように、
左隣に立つビコーズがミセリを呼んだ。
ミセ*゚ー゚)リ「なになに?どうしたの?」
二歩前に歩き、
両手を腰に当てて踊るように半回転するミセリ。
緩いウエーブのかかった髪の毛が柔らかく揺れた。
ミセ*゚ー゚)リ「なに?」
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ビコーズの顔を見るミセリ。
可愛らしく微笑むことを忘れない。
( ∵)「きょ、今日はもっと先まで行ってみませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「先?先って?
でも、スイッチの精度も上げたいなって思うんだけど……」
( ∵)「先といってもそれほど先じゃなくて、
昨日のエリアの少し先の丘まで!」
ミセ*゚ー゚)リ「あそこの先?
あの先ってことは次の町とも外れて……」
( ∴)「!星見の丘!」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、あそこか!
懐かしいね。ほんとの名前なんだっけ」
( ∴)「丘には名前はなかったような」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだったそうだった!
それで、勝手に名前付けたんだよね。
夜に行くとちょうど真上に二層の底にある何かが光ってて、
北極星みたいで。
そうそう、思い出した!
懐かしいなー」
( ∵)「いかがでしょう!」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん。どうしよう。
行きたい気はするけど、スイッチの練習もしたいし。
それにお昼に行っても普通の丘だしなー」
( ∵)「夜はまだ危険です。
それに、βの時と変更がないかを見ておくのも良いかと」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん。
でもなー」
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( ∴)「ビコーズ、今の我らにあそこまで行ける力が無いわけではないが、
危険は回避した方が良い」
ミセ*゚ー゚)リ「危険?
あ、そっか。あそこは角熊がでるのか」
( ∴)「はい。
基本は熊よりすこし強い程度ですが、
時折二匹一度に出てきます。
同時攻撃はしてこないと思いますが……」
ミセ*゚ー゚)リ「うん。二匹出てきたことあった。
一人でも倒せたけど、ちょっと怖かったな」
( ∴)「はい」
( ∵)「ですが、我らなら戦えます!
本当なら熊一匹くらい、一人で倒せる実力があります!」
ミセ*゚ー゚)リ「それは分かってるけど、この先もあるし、
折角三人で動いているんだから、
スイッチも練習しないと」
( ∵)「それはそうですが……」
ミセリの言葉に納得しつつも不満を隠そうとしないビコーズ。
ミセリとゼアフォーはその様子を見て不思議に思いつつも、
互いの顔を見て言葉を交わさずにそれぞれ思案した。
( ∴)「ビコーズ、とりあえず昨日のエリアまで行こう。
もちろんスイッチの練習をしつつ。
姫、そこまでの道すがらスイッチの練習を行い、
その状況に応じて星見の丘に行くかどうかを決めるのはどうでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだねー。
ここで悩んでても時間の無駄だし。
まずはあそこまでいこっか」
.
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( ∴)「ビコーズ、それで良いか?」
( ∵)「ああ!よし!行こう!」
ゼアフォーの提案に表情を明るくするビコーズ。
「頑張るぞ!」などと気合を入れながら剣を振るビコーズを見て、
ミセリとゼアフォーは苦笑いを浮かべた。
スイッチの練習をしつつ向かう森の中。
三人は昨日とは違う手ごたえを感じていた。
ミセ*゚ー゚)リ「(なんだろう。今日はすごく動きやすい感じ。
これならあいつらよりも……)」
三人は気付いていなかったが、
昨日までのほんの少しの遅さやタイミングの遅れは、
ビコーズが原因だった。
アバターの体から現実の自分の体のサイズに戻ったことによる手足の長さのずれ。
それはβテスト時代と同じ戦い方をしようとすると、
タイミングや微妙なずれを引き起こしていたのだった。
前まで一歩踏み込めば届いていた短剣が、
今は大きく一歩、あるいは二歩踏み込まなければ攻撃を与えられなくなっている。
空振りをするようなことはないが、その『ずれ』は確実に影響していた。
余談だが、それはドクオにも同じことが言えた。
しかし彼は最初の戦闘で、
後ろに親友を連れてはじまりの街からホルンカの村へ向かう
その最初の一歩で狼と戦った際にそれに気付き、
すぐさま修正をした。
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βテスト時代は、大きな身体に片手剣と盾を持って戦っていた彼だったが、
今の体になってからは小柄な体を活かす戦い方に変えていたのだ。
そして彼は、その戦い方が自分に適していることを認識し、
この数日は何の戸惑いもなく戦闘を行っていた。
話をビコーズに、ミセリ達三人の戦闘に戻そう。
今日、ビコーズは昨日よりも少しだけ急いでいた。
前に、前に、という思いが、踏み出す一歩を早くし、
大きくし、時に二歩進み、その結果βテスト時代と同じ戦闘能力を得ていた。
( ∴)「(そうか……。
ビコーズは手足の長さが変わったのか。
今までなら少し早めのタイミングが、ちょうどよくなっている。
あとで教えてやらねばな)」
ゼアフォーは、ビコーズの復調の理由は分からずとも、原因に気付いた。
そしてビコーズの復調は、ゼアフォーの中にあった迷いを少しだけ取り除いた。
( ∴)「(おれも負けてはいられないな。
もっとがんばらないと)」
ゼアフォーの中の『迷い』。
それはこの世界に囚われた事でも、
モンスターとの戦いでHPが無くなったら自分が死んでしまう事でもない。
もちろん最初はそれもあった。
だが今は、それ以上の思いで心が埋められていた。
ミセリへの恋心。
アバターの頃よりも今の方が好きだった。
『姫』である彼女よりも、『ミセリ』である今の彼女の方が好きだった。
それは自分が置かれた現実からの逃避から生まれた恋かもしれない。
けれど彼は、その『恋心』によって今を生きていた。
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そしてその恋心は彼の動きを狂わせた。
ミセリとのコンビネーションにおいて、
早く彼女を守りたい、できれば彼女を戦場に出したくない、
そんな心が彼の動きを狂わせ、タイミングをずらしていたのだ。
だが目の前でミセリと呼吸を合わせ始めたビコーズを見て、
自分も彼女とあんなふうに戦いたいと思っていた。
そして三人は、
昨日とは違う戦いを、
それはβテスト時代よりも高度な戦い方を身に付けることができた。
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( ∵)「姫!これならば!」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!凄かった!
昨日とは全然違ったよ!」
( ∴)「互いの足りない部分を補い、
且つ長所を伸ばす戦い方が出来た気がします!」
( ∵)「おお!」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!ほんと!
凄くよかった!全く負ける気がしなかったもん!」
昨日拠点とした、モンスターの出ない安全エリアにやってきた三人。
予定よりも早く付けたこともあり、
三人は少し興奮気味だった。
( ∵)「で、ではこの奥の」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだね。
まだ時間も早いし、
行ってみちゃおっか」
( ∴)「そうですね。
三人共『隠蔽』を入れてますから、
熊型の敵ならいざとなれば隠れてやり過ごせるでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「だよね。
それに、一匹くらいならいけそうだし」
( ∴)「ええ。一匹なら大丈夫でしょう」
.
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( ∵)「二匹でも行ける!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズったらもう」
( ∴)「まずは一匹を倒してみてだ」
( ∵)「なんだよノリが悪い」
ミセ*゚ー゚)リ「でもゼアフォーも顔がにやけてるよ」
(*∴)「そ、そんなことは」
頬を赤くして口がにやけるのをおさえたゼアフォーを見て、
ミセリとビコーズが声を上げて笑う。
そしてゼアフォーも笑い出した。
.
-
最初に遭遇した角熊は、一匹だった。
ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォー!」
( ∴)「ビコーズ!」
( ∵)「おう!」
横から現れた角熊に対して一番近くにいたミセリが攻撃を与え、
続くゼアフォー、ビコーズと、剣技を盛り込んだ攻撃を与える。
ミセ*゚ー゚)リ!
( ∴)!
( ∵)!
その戦いは見事としか言いようがなかった。
通常攻撃と剣技を繰り出し、
呼吸のかみ合った攻撃の連鎖は角熊を翻弄し、
自分たちのHPを減らすことなく倒した。
その結果は三人の心を更に高揚させた。
ミセ*゚ー゚)リ「すごいよ二人とも!」
( ∴)「姫!ビコーズ!」
( ∵)「おおおおおおおおおお!」
一夜による成長。
実際は昔よりも少し連携がうまくなっただけなのだが、
前日の微妙な攻撃のズレと初心者に負けていると勝手に思い込んでいたため、
今の自分たちが『成長』したと思ってしまっていた。
そしてそれはさらに加速する。
.
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( ∵)「とりゃ!」
ミセ*゚ー゚)リ「とう!」
( ∴)「はっ!」
ビコーズの素早い短剣の振り。
ミセリの技巧を駆使した短刀の冴え。
ゼアフォーの堅実な片手剣の攻撃。
その三つが角熊を翻弄し、
確実にポリゴンへと変えていく。
合計四つのエリアで一匹ずつ角熊を倒した頃には、
『戦う事』が楽しくさえなっていた。
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ミセ*゚ー゚)リ「あるーひ」
( ∵)( ∴)「あるーひ」
ミセ*゚ー゚)リ「もりなの、なか!」
( ∵)( ∴)「もりの、なか!」
ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまに」
( ∵)( ∴)「つのぐまに」
ミセ*゚ー゚)リ「であぁった!」
( ∵)( ∴)「でああった!」
ミセ*゚ー゚)リ「ほしみのおーかーへーのみちー」
( ∵)( ∴)「つのぐまに、であーあったー」
ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまの!」
( ∵)( ∴)「つのぐまの!」
ミセ*゚ー゚)リ「ゆうことにゃ」
( ∵)「いうことにゃ!」
( ∴)「おひめさん」
( ∵)「おにげなさい!」
ミセ*゚ー゚)リ「いいおわるまえにー。
ソードスキルをおみまいしたー!」
ミセ*゚―゚)リ( ∵)( ∴)「ららららーらーらーらーらー。
ららららーらーらーらーらー」
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こんな替え歌をうたいながら森を歩くほどには、
気分が高揚していた。
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-
それでも注意を怠っているわけではなく、
エリアの移動の際には周囲を確認しながら、
細心の注意を払って少しずつ前へと進んでいった。
ミセ*゚ー゚)リ「ストップ」
細い道を両脇に分かれ、
茂みの中を進んでいく三人。
前方をミセリとビコーズ、
後方をゼアフォーが見張っていた。
そして左に九十度曲がる道の手前で、
ミセリが停止を告げた。
( ∴)「敵ですか?」
( ∵)「ああ。二匹いる」
ミセ*゚ー゚)リ「二匹か……」
ミセリの視線の先にいる角熊。
そしてその後方15メートルほど先にも、角熊がいた。
ミセ*゚ー゚)リ「もう少し奥に行って『隠蔽』スキルを使えばやり過ごせるかな」
( ∵)「ひ、姫。やってみませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「一匹目と二匹目の間は15メートル以上あります。
前の角熊を今までの調子で攻撃すれば、
二匹目が接近する前に倒せるかと」
ミセ*゚ー゚)リ「んー」
( ∴)「計算上は出来そうだが」
.
-
( ∵)「それに、一匹目をやり過ごした後に二匹目に見つかった場合、
前後から挟み撃ちされる可能性があります」
( ∴)「……うむ……」
ミセ*゚ー゚)リ「それは一理あるかも」
( ∵)「では!」
( ∴)「一つ、気になる点が」
ミセ*゚ー゚)リ「なに?」
( ∴)「後ろの角熊の角、今までと色が違ってます」
( ∵)!!
ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ほんとだ。
今までのは熊の地肌?色だったけど、
あいつは赤いね」
( ∴)「はい。もしあれが今までよりも強い敵の印だったら……」
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと怖いね」
( ∵)「な、ならば、なおさら先の角熊を倒して、
一対三の状況にした方が良いのでは?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∴)「ビコーズ?」
( ∵)「先の角熊を速攻で倒し、
落ち着いて次の赤角熊と戦闘。
一対三ならば、形勢不利な時には逃げ出すことも出来るのでは」
ミセ*゚ー゚)リ「それはそうだけど……」
( ∴)「だが……」
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-
( ∵)「強いにしろ、変わらないにしろ、
何かしらの情報を掴むことが出来れば、
あいつらに教えてやることもできます」
ミセ*゚ー゚)リ「……そう……か。
うん。そうだね。
でも、ちょっとでもまずいと思ったらすぐ撤退するからね」
( ∵)「はい!」
ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーも良いかな?」
( ∴)「……はい。わかりました」
ミセリに問われ、少しだけ躊躇しつつも戦闘を受け入れたゼアフォー。
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ、一匹目の角熊がこの角に入った瞬間、私が出……」
( ∵)「ひ、姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの?」
( ∵)「こ、今回の最初の一撃はおれにやらせてください」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「先ほどの戦闘で少し思いついたことがあったので、
それをやってみたいのです」
( ∴)「ビコーズ、それは次の戦闘に取っておけ。
今回の戦いは出来るだけ早く倒せねばならない以上、
あまり不確定要素を入れるわけにはいかないだろ?」
( ∵)「は、早くやらないと忘れてしまいそうなんだ!
タイミングの問題もあるから、思いついたときにやってしまいたい!」
( ∴)「だが、」
ミセ*゚ー゚)リ「勝算はあるんだよね?」
.
-
( ∴)「姫?」
( ∵)「はい!初撃に使えると思うので、
スイッチのタイミングを乱すこともないです!」
ミセ*゚ー゚)リ「分かった。じゃあやってみよう」
( ∴)「姫!?」
ミセ*゚ー゚)リ「もしビコーズが失敗したら、
私達でフォローしよう。
二人でちゃんと見られる方が、
フォローもしやすいだろうから。
それに、思いついたことを早く試したいのは私も一緒だし」
( ∵)「姫!」
( ∴)「姫……」
いたずらっ子のように笑ったミセリ。
ビコーズは満面の笑顔で返し、
ゼアフォーは呆れたように肩をすくめた。
ミセ*゚ー゚)リ「さ、来るよ。
頼んだからね。ビコーズ」
( ∵)「はい!」
茂みの中で武器を構えるビコーズ。
まっすぐに、強い瞳で角熊を見据えている。
ミセリとゼアフォーももちろん武器を構えて角熊を見ていたが、
二人とも視界の中にビコーズが入り、
何をするのか興味を持ちつつ見守っていた。
( ∵)!
気合を入れ、茂みを飛び出すビコーズ。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「!(ビコーズ!?)」
( ∴)「!(まだ早い!)」
茂みに隠れていた状態から戦うことのメリットは、
言うまでもなく奇襲である。
相手が自分に対して警戒していない状態、
自分を認識していない状態、
攻撃なり防御なり、何かしらの『構え』を相手がとる前に攻撃を与えること。
しかしビコーズの出たタイミングは微妙だった。
いや、明らかに早すぎと言ってもよかった。
事実、ビコーズが角熊に攻撃を繰り出せる範囲まで近付いたとき、
既に角熊はビコーズを認識し、威嚇していたのだから。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
( ∴)「あのバカ!」
茂みから飛び出す二人。
対応を間違えなければ、ビコーズが倒されることはない。
多少の傷は負うと思うが、
それだけのレベル、HPと防御力は持っている。
だが今日はほとんど攻撃らしい攻撃を受けず、
しかも速攻で敵を倒してきた三人にとって、
いや、ミセリとゼアフォーにとって、
ビコーズが攻撃を与えられHPを削られ姿をただ見ていることはできなかったのだ。
しかし、二人の予想した未来は起きなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「うそ……」
( ∴)「……ビコーズ」
.
-
角熊の振り上げた手が、ビコーズを狙って振り下ろされる。
しかしその手はビコーズに当たらなかった。
角熊の手が当たる前に、斜め上に跳躍したビコーズ。
そして木の幹を蹴り、更に斜め上へ、
角熊の頭上へと跳躍した。
( ∵)「はっ!」
そして体を捻りながら短剣を閃かせ、
角熊の後頭部を攻撃した。
ミセ*゚ー゚)リ「足りない跳躍力を、
木を蹴ることで、二段跳びすることでカバーするなんて」
( ∴)「タイミングが命。
早ければジャンプしたところを狙われてしまう。
相手が攻撃を繰り出した瞬間に跳躍することに意味があったんだ」
思わず解説者のようにビコーズの動きを説明する二人。
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも、あんなこと出来るなんて」
( ∴)「β時代、角熊サイズの敵ならば、
レベルが上がってポイントを振れば、
通常のジャンプで頭を狙うことも可能でした。
私やゼアフォーは体のサイズからあまりそういったことはしませんでしたが、」
ミセ*゚ー゚)リ「私はよくやってた」
( ∴)「ええ。
ビコーズはそれをおぼえていて、
今の体のサイズならばその戦い方が向いていると思ったのかもしれません」
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「私と同じ戦い方ってこと?」
( ∴)「そこまでは……。
ただ、今までの……β時代の戦い方ではなく、
今の体に適合した戦い方を探し始めているのかもしれないです」
ミセ*゚ー゚)リ「……負けて、いられないね」
( ∴)「はい」
二人が話している間も、ビコーズの戦いは続いていた。
角熊「ぐをおおおおおおお!」
後頭部を攻撃され、悲鳴を上げる角熊。
角熊の背中側に着地したビコーズは、
そのまま背中に攻撃を与える。
( ∵)!
気合を込めて、通常攻撃を四回。
角熊の背中に四本の線を引き、バックステップで距離をとる。
怒りに染まった角熊が後ろを向こうと体を反転。
そしてその動きを冷静に観察し、
回転に合わせて走り出す。
それは角熊が闇雲に振り回している手の死角を縫うような動きだった。
ミセ*゚ー゚)リ「(ドクオくんの動き……)」
そしてもう一度跳躍。
実際には死角を選んでの移動はできていなかったが、
角熊の予期していない行動をとることには成功した。
( ∵)!!
.
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再び木の幹を蹴って角熊の頭上に跳躍する。
そして今度は角と頭の境目を狙うように短剣を一閃した。
角熊「ぎゅがぎゃあああああああああ!」
今までに聞いたことのないような雄叫びをあげる角熊。
その一撃で、HPは大幅に減った。
( ∵)「姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「!う!うん!!」
着地する前にミセリを呼ぶビコーズ。
駆けだすミセリ。
ビコーズは視界の隅でそれを確認しつつ、
着地と同時に短剣を光らせた。
( ∵)「はっ!」
光る短剣を突き出して、
角熊の脇腹に向かって駆けるビコーズ。
剣技による二連撃は、
先の角に向けた攻撃以上にHPを削り、
角熊のHPバーを黄色に変えてさらに削った。
( ∵)「スイッチ!」
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
角熊を攻撃して駆け抜けたビコーズ。
技後の硬直を起こした彼に向かって角熊が手を振り上げた時、
ミセリの通常攻撃が角熊を襲った。
角熊「ぎゅるうがぁるあぁあああああ!」
.
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きーてーたー
この作品が大好きです
-
ミセリの短刀が深くその体を傷つけ、
雄叫びをあげて攻撃目標をビコーズからミセリに変える。
しかしそのときすでにミセリの体は位置を変え、
角熊の体を攻撃していた。
角熊「!!!」
怒りに任せ両手を振り回す角熊。
その手を避けて攻撃を繰り出すミセリ。
短刀が、輝きを放つ。
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
( ∴)「はい!」
ゼアフォーが駆けだすのと、
ミセリの短刀が角熊を攻撃したのはほぼ同時。
ビコーズと同じ二連撃が角熊のHPを大きく削り、
HPバーを赤に変える。
攻撃の流れを殺さずに離脱したミセリを追って体を動かす角熊。
生まれた隙に、その無防備な身体に片手剣を、
アニールブレードを突き立てるゼアフォー。
絶叫をあげる角熊から離脱し、
先の二人のように武器を光らせるゼアフォー。
そして彼は、
自分を攻撃目標にした角熊に向かって剣技を放った。
.
-
ポリゴンへと変わる角熊。
ビコーズの初撃から数分の間の激闘は、
レベルによる補正があるとはいえ、
彼らの戦闘能力の高さを物語っていた。
そしてその立役者であるビコーズが、
今回の戦いの隠れた目的であったその敵に向かって駆けだしたのも、
仕方ないことだった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」
( ∴)「ビコーズ!?」
一匹目を倒したことを喜ぶ間もなく二匹目に向かって武器を構えた三人だったが、
何の打ち合わせもなく駆けだしたビコーズに驚き、
名を呼びながらその後を追った。
( ∵)「やらしてください!」
さらに加速するビコーズ。
( ∴)「ったく!調子に乗って」
ミセ*゚ー゚)リ「気を付けて!」
先ほどの先制攻撃。
それに気を良くしたビコーズが再びアレを狙っている。
二人はそんな風に思っていた。
更に、
『たとえ赤角熊が角熊よりも強くても、
三人の連携があれば、
そこまで危険ではない』
戦況をそんな風に判断していたとしても、
仕方のないことだった。
.
-
βテスト時代、
各層にはモンスターの強さには上限があった。
もちろんフロアボスやエリアボス、
イベントボスに関してはその上限から大きく外れるが、
それでも目安があった。
更に言えばここはまだ一層。
はじまりの街から少し離れているとはいえ、
序盤も序盤のエリア。
そこまで強い敵は出てこないと考えていたとしても仕方がなかった。
そして、強さにおいては三人の推測は間違っていなかった。
そう、モンスターの『強さ』においては。
( ∵)「とりゃああああああっ!」
赤角熊が自分に突進してくるビコーズに気付き、
両手を上げて攻撃の予備動作に入る。
( ∵)「とうっ!」
先程と同じように赤角熊の横の樹に向かって跳躍するビコーズ。
( ∵)「はっ!」
そして樹を蹴ってさらに高く飛び上がる。
赤角熊「!」
ビコーズを目で追う赤角熊。
通常の角熊よりも動体視力が上がっているのか、
その動きに対応していた。
しかし動きの速さは変わらないようで、
攻撃には移れていない。
( ∵)「とうっ!」
.
-
赤角熊の頭の上に到達したビコーズは、
笑顔でその赤い角めがけて短剣を振り下ろした。
赤角熊「 ――――!!!!!!」
声にならない雄叫びをあげる赤角熊。
そしてそのままポリゴンと化した。
ミセ;*゚ー゚)リ「ええっ!?」
(;∴)「え!?なんで!?」
( ∵)「よしっ!」
驚いて動きを止めてしまうミセリとゼアフォー。
攻撃を繰り出したビコーズは体勢を崩すことなく着地した後、
大きく腕を上げて喜びをあらわしている、
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」
( ∴)「今のは一体!?」
( ∵)「はっはっは」
どこか芝居染みた、けれど誇らしげに笑うビコーズに駆け寄る二人。
( ∵)『独自のルートで情報を仕入れたんで試したかったんだ。
『赤い角の熊は、最初の一撃を角に与えることが出来ればそれで倒せる。
しかもレア武器が手に入る』ってね」
ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ……」
( ∴)「いったいどこでそんな」
( ∵)「ソースは教えられないけど、これからも仕入れてくるよ」
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-
ニヤニヤ笑いながら、ウインドウを開くビコーズ。
( ∵)「さあって、どんなレアな武器が手に入ったのかなー。
……ん?『赤い角』?
アイテムで武器じゃないし、レア武器は確率なのかな」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
( ∴)「ビコーズ、情報の出どころは詮索しないが、
得た情報はちゃんと共有してくれ。
特に戦闘に関しては……」
( ∵)「分かってるって。
今度からはちゃんと報告するよ。
今回は初めてのネタだから、まずはやってみたかっただけだよ。
うまくすれば姫にレア武器を献上できたからな」
ゼアフォーに向かって笑いながら謝罪した後、
ミセリに向かって真面目な顔で片膝をついてしゃがんだ。
( ∵)「申し訳ありません姫。
お心を乱した上、
レア武器を献上できませんでした」
ミセ*゚ー゚)リ「……もう」
芝居がかったセリフを吐き、ミセリを見上げるビコーズ。
その笑顔を見て、ミセリは呆れつつも笑顔で返した。
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「逃げろ!」
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独断先行ではあったが無事にモンスターを倒したことに変わりはないため、
ビコーズの謝罪で一息つこうとした三人に、
何者かの叫び声が届く。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「え?」
( ∴)「ん?」
声に驚いた三人が周囲を見ると、
自分たちを囲むようにポリゴンが現れた。
それはモンスターが出現する時に見られる空間の歪み。
デジタルの世界でのみ起こる、現象。
咄嗟に武器を構える三人。
普通の状態ならば間違ってはいないその行動も、
今は愚行に分類される。
「逃げるんだ!」
なおも聞こえる叫び声。
だが三人は動かない。
いや、動けなかった。
モンスターの出現を示唆するその現象は、
自分たちを囲むように起きており、
まるで逃げる隙など無いように思えていた。
「突っ込むんだ!
まだ間に合う!」
謎の声にまず我に返ったのはゼアフォー。
.
-
( ∴)「姫!ビコーズ!」
ポリゴンの状態は、
出現を示唆するだけであり、
まだそこに存在しているわけではない。
この状態ならばすり抜けることが可能だとゼアフォーは瞬時に判断した。
ミセリの手を取り駆けだすゼアフォー。
名前を呼ばれて我に返った二人も走り出す。
ギリギリではあったがポリゴンの隙間を狙って飛び出すことに成功した。
( ∴)「!」
だがその目の前にもモンスター出現前のポリゴンがあり、
それはすぐにモンスターの形に変化した。
「立ち止まるな!」
謎の声の言葉は正しい。
立ち止まらずに駆け抜ければ、
今の時点では、その先に敵はいなかったから。
出現したばかりのモンスターはまだ三人を認識しておらず、
その横をすり抜けることも可能であったから。
しかしそれに気付く冷静さを三人は持ち合わせておらず、
武器を構えるのが精一杯だった。
ミセ*゚ー゚)リ「な、なんなの!?」
( ∴)「何かのトラップが発動したのか!?」
武器を構えて目の前の角熊に向かって駆けだす二人。
( ∵)「ひ、姫!ゼアフォー!」
.
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振り向いたビコーズ。
先程まで自分達を囲んでいたポリゴンが実体化し、
自分達に向かって攻撃の唸り声をあげていた。
ビコーズは短剣を構えてはいるものの、
五体の角熊を前にその剣先と足は震えていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
( ∴)「こいつを倒して先に進むぞ!」
( ∵)「ひ。ひいいいいいいいい!」
ゼアフォーが目の前の一体を攻撃し、
それにミセリが続く。
この一匹を倒して道をつくることに専念しようとしたのだが、
更にその後ろに二匹角熊が現れたことを確認し、
戦慄した。
ミセ*゚ー゚)リ「そんな……」
( ∴)「くっ」
「諦めるな!」
再び謎の声が聞こえた。
そしてその瞬間、影が横の森から飛び出す。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
ミセリとゼアフォーの前に立つ角熊の後方に回り込んだ影は、
片手剣を振った。
( ∴)「え?」
角熊の体に引かれる何本もの線。
その数えきれない線が斬撃を示すものだと思う前に、
角熊はポリゴンと化した。
.
-
「道はおれが作る!
後ろのやつをこちらへ!
アルゴ!」
「キー坊も結局お人よしだネ。
ま、これはしょうがないけどサ」
二人の目の前で、黒髪の少年が片手剣を構えて立っている。
そしてその横に、どこからともなく現れた、
顔に髭のような模様を描いた少女が並んだ。
(少年)「アルゴは左を。
無理な攻撃はしなくていい」
(アルゴ)「はいヨ」
角熊に向かって駆けだす二人。
( ∴)「あの二人は」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
いまだ何が起きているのか分かってはいない。
しかし前の二匹はあの二人に任せていいのだと咄嗟に判断したミセリが振り返った。
ゼアフォーもそれに続く。
(;∵)「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ……」
引けた腰で短剣を振り回しているビコーズ。
目の前にいる五匹の角熊は、
ビコーズを見てはいるもののまだ攻撃を繰り出してはいないようだった。
しかし赤い瞳でうなり声をあげるその姿に、
恐怖を覚えるのはミセリとゼアフォーも同じだった。
ミセ*゚ー゚)リ「目が赤い」
( ∴)「怒っているのか?」
.
-
動かない体の代わりに思考のみが回転する。
なんとかビコーズのそばに移動するが、
自分から戦闘を始める勇気が三人には無かった。
角熊「――――――!!!!!!」
三人に一番近くに立った角熊の突然の咆哮。
それはただの『声』ではなく、
直撃を受けた者が状態異常を引き起こす『攻撃』だった。
ミセ*゚ー゚)リ!
( ∴)!
( ∵)!
視界の隅。
自分と仲間たちのHPを示す三本のバー。
その名前の横に、
雷のようなマークが点灯したことに気付く三人。
それは、状態異常の印。
身体の動きが止められた『麻痺』を示す印。
自分の身体が動かなくなったことを知った三人。
目の前の角熊が攻撃を繰り出すモーションを始めた。
ミセ*゚ー゚)リ「う……そ……」
( ∴)「まだ……一層だぞ……」
( ∵)「ひ、ひ。ひ、ひ、ひ。ひひひひひ……」
.
-
実はこの麻痺の効果時間は二秒に満たない。
剣技後の硬直よりも短い麻痺の効果だった。
しかし、βテスト時代にもっと上の層でだが、
同じような敵の咆哮で麻痺を起こしたことのある三人は、
記憶の中のそれと同じものだと錯覚し、
身体を動かすことを放棄してしまっていた。
そして角熊の攻撃が三人を襲う。
ミセ* ー )リ!!!!!
( ∵)!!!
( ∴)!!!!
横殴りされ、横の樹の根元に吹き飛ばされる三人。
ミセ* ー )リ「がっ!!」
( ∵)「ぎゃあっ!!!」
( ∴)「ぐっ!!」
その一撃で半分以上のHPが削られ、
三人のHPバーの色が黄色に変わった。
(少年)「おまえら!」
既に一匹を倒し、二匹目の相手をしていた少年と少女が、
ミセリ達三人が攻撃されたことに気付く。
(アルゴ)「こっちは大丈夫ダ!
あいつらを!」
(少年)「……無理はするなよ!」
少女はその素早い動きで角熊の動きを翻弄し、
時折小さな攻撃を与えることで注意を自分に向けさせ、
攻撃は少年に任せていた。
.
-
だが少年を送り出した後は表情を引き締めて、
敵のHPを削るための攻撃を繰り出していった。
(少年)「(間に合ってくれ)」
駆けだした少年の目の前で、
一匹の角熊が狙いを定めていた。
狙いは、一番手前に倒れているミセリ。
ミセ;* ー )リ「あ…あ…あ…」
普段は気丈な彼女も、
目の前に迫りくる死の恐怖で満足に動くとが出来ないでいた。
ミセ;* ー )リ「や……あ……いや……」
(少年)「立ち上がれ!
逃げろ!」
少年の声に立ち上がるという体の動きを思い出し、
懸命に腰をあげようとする。
しかしそのときすでに、角熊は片手を振り上げていた。
ミセ;* ー )リ「いやーーーー!!!!」
振り下ろされる熊の左手。
顔を覆うミセリ。
そのミセリの身体が、
突き飛ばされる。
ミセ;*゚ー゚)リ「え?」
それは角熊の攻撃ではなく、
力強いが優しい衝撃。
ミセリの身体が角熊の攻撃動線から外れ、
彼女を突き飛ばしたゼアフォーが、
その攻撃を受けていた。
.
-
ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……?」
( ∴)
彼女の瞳に映る、
彼の笑顔。
背中に角熊の攻撃を受け、
その衝撃があるはずなのに、
ミセリを見て優しく微笑んでいる。
ミセリの視界の隅。
一本のHPバーが赤くなり、
そして光をなくす。
ミセ;*゚ー゚)リ「え……?」
大きく目を見開き、
ただ目の前の状況を見た。
ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……」
.
-
( ∴)「……ミセリ……す」
.
-
ミセリの目の前で、
ゼアフォーがポリゴンに変わった。
ミセ;* ー )リ「ゼ……ア……フォー……?」
彼女の名を呼びながら、
優しい笑顔で、
彼の形を成していたポリゴンが、
砕け散る。
ミセ;* ー )リ「 !!!!!!!!」
一瞬の間の後、
エリアにミセリの叫び声が響き渡った。
.
-
待ってた支援
-
以上、本日の投下は終了です。
いつも乙と感想、ありがとうございます。
それでは次回、『境界線』、またよろしくお願いします。
ではでは、また。
.
-
乙
-
乙
ゼアフォー死ぬの!?
ビコーズはどうなる!?
次も気になりすぎる
-
ゼアフォーマジかよおおおお
乙
-
乙乙
-
乙乙
-
おつおつ
-
そろそろ投下ないかなぁ
-
こんばんは。
遅くなりましたが、続きの投下をしたいと思います。
今回も、よろしくお願いします。
.
-
9.境界線
.
-
その後の事を、ミセリはよく覚えていない。
気付いた時には、目的地だった安全エリアで、一人うずくまっていた。
おそらくはあの時の少年と少女が助けてくれたのだと思われるが、
どうやってあの場所から逃げたのか、
あの時の敵は全部倒したのか、
あれはいったい何だったのか。
彼女は何も覚えていなかった。
気付いた時には朝日がエリアを照らしていた。
かすかに残る記憶の中で、
「ありがとうございました」
と、少女に向かって頭を下げていたことだけを覚えていた。
日の光がエリアを照らした時、
視界の隅にビコーズがいるのが見えた。
彼もうずくまり、
膝を抱え、
そしてずっと何か呟いていた。
けれど声をかける事も出来ず、
ぼんやりとその姿を見ていた。
視界の隅にメッセージの到着を知らせる印が点滅しても、
開く気にはなれなかった。
ぼんやりと、
目の前の景色を、
ただ、
ただ、
眺めていた。
.
-
昼になる少し前に、ホルンカに八人がたどり着いた。
予定では昼に入り口近くの広場で落ち合う予定だったが、
ミセリ達三人がいなかったため、
一度農家の二階に戻っていた。
( ^ω^)「ただいまだおー」
ξ゚⊿゚)ξ「ただいまっと」
ソファーに腰かけるブーンとツン。
川 ゚ -゚)「ツン、行儀が悪いぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
ソファーに身体を預けるツンと、
それをたしなめつつも同じ様に横に座るクー。
ここ数日で何度も見た光景に、
男性陣は苦笑した。
( ゚д゚ )「何も考えずに着いてきたが、
おれ達は宿屋に行かないのか?」
(`・ω・´)「おれもそう思ったんだけど」
(´・ω・`)「あ、実は話しておきたいことがあって」
(´・_ゝ・`)「話したい事?」
(´・ω・`)「実は」
シャキン達三人にソファーに座るよう促し、
ショボンが話しながら自分のウインドウを開く。
と、同時に三人の座るソファーの後ろでドクオが転んでいた。
(´・ω・`)「……ドクオ?」
( ^ω^)「お?どうしたんだお?」
.
-
しえん
-
('A`)「……いや、何でもない。
メッセージを打ちながら歩いてたら転んじまったよ」
頭を掻きながら立ち上がるドクオ。
苦笑いを浮かべつつウインドウを消す。
('A`)「ミセリにメッセージ打ってるから、
気にせず話を進めてくれ」
(´・ω・`)「うん」
( ^ω^)「ドクオもおっちょこちょいだおね」
('A`)「うるせー。
お前に言われたくねえっつーの」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ドクオは昔からおっちょこちょいでしょ」
('A`)「だからうっさいつーの。
ショボン、外で落ち着いてメッセージ送ってくるわ。
ついでにさっき話したアイテムも買ってくる」
(´・ω・`)「あ、うん。よろしく」
('A`)「んじゃ行ってくる」
部屋を出るドクオ。
階段を下り、
普段と変わらない足取りで農家を出る。
そして扉を閉めたと同時に駆けだした。
('A`)「嘘だろ……」
表情は硬く、強張っており、
その足取りはバランスが悪く、
ちゃんと走れていなかった。
('A`)「……ゼアフォー」
.
-
外へと向かって走ろうとするが足が思うように動かずつまずく。
('A`)「!」
土埃を巻き上げながら勢いよく転ぶドクオ。
('A`)「くっ……」
慌てて立ち上がろうとするが、
身体をうまく動かせなくて寝転んだままだった。
('A`)「はやく……」
泣きそうな顔をしたドクオの目の前に差し出される手。
('A`)「え?」
( ^ω^)
見上げた視線の先に、親友の笑顔があった。
('A`)「ブーン……なんで」
( ^ω^)「おっおっ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが何か隠してるのなんか、バレバレなのよ」
その横には、自分を見下ろす幼馴染。
口調はきついが、その表情はどこか悲しげだった。
('A`)「ツン……」
.
-
待ってました支援
-
(´・ω・`)「なにがあったの?」
その横にはもう一人の親友。
いつも下がっている眉が、
更に下がり悲しげに見える。
('A`)「ショボン……」
三人の顔をゆっくりと見回したドクオ。
呆然と三人を見ていた顔が徐々に悲しみに歪む。
('A`)「みんな……」
ドクオの手が、
ブーンの手を握った。
(`・ω・´)「ドクオが出て行ったあと三人が後を追ったのは驚いたが、
そういうことだったか」
少し離れた建物の陰で四人を見守っているシャキン。
その横にはクーがおり、後ろにミルナとデミタスが立っている。
呟いた後、横にいるクーをちらっと見る。
川 ゚ -゚)「私はドクオに対しては付き合いが浅い。
気付かなくても仕方がない」
その視線に気付いたのか、
冷静な声で呟くクー。
しかしその表情は悲しそうであり、悔しそうだった。
シャキンはその表情を見て、優しげにほほ笑んだ。
.
-
立ち上がったドクオ。
クーとシャキン達四人も駆け寄り、
ドクオを囲む。
('A`)「おれは、ミセリ達三人と『フレンド』になってるんだ」
右手を振り、ウインドウを出して操作をしているドクオを怪訝そうに見る7人。
ドクオは自分の『フレンドリスト』を画面に出した後、
自分以外にも自分のウインドウを見せることのできる『可視モード』にする操作をしようとするが、
動きが止まった。
そして自分を見る友人たちの顔をもう一度見てから、
操作をした。
('A`)「フレンドになれば、自分のウインドウの中に、
フレンドリストが自動的に作られる。
順番とかも自分で変えられるけど、
おれはまだ十人くらいだから何の操作もしていない」
ドクオのウインドウを覗き込むように全員が移動する。
その視線の先に自分達の名前を見つけた。
( ^ω^)「お?」
ドクオが画面を固定し、
ブーンが呟いた。
そして問いかける。
( ^ω^)「なんで『Therefore』だけ黒くなってるんだお?」
見知った名前が続く中、
『Therefore』が、
『ゼアフォー』の名前だけが、
他の名前に比べて黒くなっていた。
('A`)「……βテストの時は、
ログインをしていないプレイヤーの名前は、
こんな風に名前が暗くなっていたんだ」
.
-
( ^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「ログイン」
(´・ω・`)「……していない時?」
ツンとショボンのつぶやきを聞き、
ドクオが振り向く。
('A`)「ああ」
川 ゚ -゚)「それは、つまり……、
アインクラッドに、
この世界に、いないという……事?」
('A`)「ああ」
ツンの横でクーが瞬きをしながら、
一言一言文節を区切って呟き、
ドクオが肯定した。
( ^ω^)「……お?」
(`・ω・´)「ん?」
( ゚д゚ )「ということは、
今ゼアフォーはログインしていない、
ということか。……ん?」
(´・_ゝ・`)「ゼアフォーがログアウト出来た」
('A`)「……ああ」
ミルナとデミタスが漏らした言葉を肯定するドクオ。
(`・ω・´)「それは、つまり……」
( ^ω^)「か、帰れたってこと……か……お?」
決定的な一言を避けるようなブーンの言葉。
しかしそれはむなしく友の耳に届いただけだった。
全員が沈黙する中、ショボンが口を開く、
.
-
(´・ω・`)「まずはミセリにメッセージを送ってみよう。
ドクオ、ビコーズにも送ってみて。
そのあと現在位置が分かるかどうかの確認を」
('A`)「あ、ああ。ビコーズだな。
ミセリへは頼む」
(´・ω・`)「うん。今送った。
ミセリは現在地もわかるね」
ショボンが自分のウインドウを可視化する。
ドクオ以外が覗き込んだそこには、
地図のような図に点滅する光があった。
(´・ω・`)「この光がミセリ。
今僕たちのいるのがここで、
このあたりが一昨日スイッチの練習をした場所」
画面を指さすショボン。
(´・_ゝ・`)「ふむ。昨日のところより先なんだな」
( ゚д゚ )「敵は一緒なのか?」
('A`)「昨日の熊の上位互換種で、
額に角を生やした『角熊』が出る」
川 ゚ -゚)「上位互換?」
('A`)「見た目は基本一緒だけど、
色が違ったりとか、角の有る無しや数が違うとかで、
微妙な変化がつけてある。
でも能力は格段に違う。そんな敵の事だ。
ただ『熊』と『角熊』の違いは多少攻撃力と防御力が上がっているくらいだった」
川 ゚ –゚)「ってことは、強いのか」
.
-
('A`)「この前の熊に比べれば。
だけどな。
でも、今の俺じゃ一対一は避けたいレベルではある。
負けるとは思わないけど、安全に戦える敵ではない」
( ^ω^)「みんなと一緒ならどうだお?」
('A`)「スイッチが機能できていれば問題ないと思う。
でも、本当はまだ連れて行きたくはないな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、そんなこと言っている場合じゃないでしょ」
いつの間にか戦闘準備を整えているツン。
見るとドクオ以外は準備が出来ていた。
('A`)「お、おい」
(´・ω・`)「幸いなことにポーション類は買い漁ってある。
まずは前回の広場まで。
そこについてから、その先の事を考えよう。
それまでに三人からメッセージが届くかもしれないしね」
('A`)「ショボン……いいのか?」
(´・ω・`)「あそこまでなら行くのに問題ないでしょ。
それに、素直にこの街に残る人がいると思う?」
苦笑しながら話すショボン。
ドクオは自分の周りにいる人達を見回すと、
男は笑顔や親指を立てて参加を表明し、
女は彼を睨んで意思を示した。
('A`)「……いないな」
(´・ω・`)「でしょ。
さてみんな準備はできたね。
行こうか」
.
-
('A`)「お、おい」
(´・ω・`)「出来るだけ敵に会わないルートはもう組み立てた。
距離的には少し遠回りになるけど、
出来るだけ戦闘は避けるから直線ルートよりも早く着けると思う」
自分のこめかみを人差し指でつつきながら自信をもって告げるショボン。
('A`)「そ、そうか」
(´・ω・`)「……出来るだけ早く着きたいから、隊列を組んでいこう。
一番前をブーンとツン。
ツン、ブーンが暴走しないように抑えて」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」
(;^ω^)「おー」
(´・ω・`)「二列目は僕を中心にクーとデミタスさん。
僕は敵の出現と道の指示で突然の戦闘には参加できないと思うから、
両翼をよろしく」
川 ゚ -゚)「わかった」
(´・_ゝ・`)「あ、ああ」
(´・ω・`)「三列目を、ドクオを中心にシャキンとミルナさん」
('A`)「お、おい!」
(´・ω・`)「今は戦える状態にないでしょ?
それに、出来れば広場からミセリ達のいる場所までに行く道順を考えておいてほしい。
そこから先は僕の頭の中にないからね」
('A`)「で、でも……」
( ゚д゚ )「なんだ。おれ達の護衛じゃ不安か?」
('A`)「いや、そういう事じゃなく!」
.
-
さすが作戦の鬼、ショボンだな
-
(`・ω・´)「ならおとなしく従え。
それでないと出発しないぞ?
このリーダーさんは」
『お前もわかってるだろ?』
と口に出さず、ドクオに笑いかけるシャキン。
ドクオは眉間に皺を寄せつつも頷いた。
(´・ω・`)「さあ出発しよう」
ショボンの言葉に全員が頷き、
村の出口に辿り着くころには自然と隊列を組んでいた。
(´・ω・`)「シャキン」
(`・ω・´)「ん?」
(´・ω・`)「うしろを、頼むね」
(`・ω・´)「ああ、わかってる」
意味ありげに笑ったシャキン。
ドクオとミルナが不思議そうにその顔を見た。
一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いた時には、
ショボンの決めた隊列に少しだけ『疑念』を持っていたミルナとデミタスも、
その正しさに心の奥で感嘆していた。
(´・_ゝ・`)
( ゚д゚ )
.
-
先頭を走るブーンとツン。
後ろから見て右にいるブーンは左手に片手剣を持ち、
左にいるツンは右手に細剣を持つ。
エリア内に敵を見つけるや否や、
走るスピードを上げたブーンが敵の横を走り抜けながら一閃。
本来ならば敵の目標を自分に向けつつ敵に背中を見せる愚行だが、
続くツンが『自分を見ていない敵』に対して落ち着いて攻撃を与えるための布石だった。
そしてそのことに気付いており、
忌々しく思いつつもそこに強力な一撃を与えることが
最良であることを分かっているツンは、
容赦なく鋭い一撃を敵に与える。
通常はそのまま敵を前後から攻撃して退治する二人だが、
後方に敵がいる場合ブーンはそのまま次の敵に向かう。
そしてその後ろを追うツン。
もちろん一体目はまだ退治できていないが、
すでにそこにはクーが槍による攻撃を加えていた。
(´・ω・`)「デミタスさん!」
川 ゚ -゚)「デミタス!」
(´・_ゝ・`)「お、おう!」
最初こそショボンやクーの声で戦いに加わったデミタスだったが、
隊列での自分の位置と役割を理解した彼は、
三度目以降はクーと先を争うように戦いに参加した。
(´・ω・`)「うしろ!
来ます!」
突然後ろを向いて叫ぶショボン。
『うしろ!』で振り返って武器を構えたシャキンとドクオに対し、
ミルナは『来ます!』で慌てて振り返った。
.
-
最初の一匹が倒されると後方から出現する敵。
それは先日通った際にも起こった事象だが、
さすがにどのエリアで起こるかをミルナは覚えていなかった。
それはおそらく八人中二人を除く全員が同じであり、
覚えていないことを責められることではない。
もちろん覚えていないことによって死ぬ確率が高くなるのであれば
覚えておかなければいけないこと、
知らなければいけないことなのだが、
幸いなことにこのエリアで後方から出現する敵は即座に攻撃を仕掛けてくることはないため、
パーティーを組んでいる彼らにとってそれほど重要度が高くなかったのである。
(`・ω・´)「右手の動きに注意しろよ!」
戦闘態勢を整える前の熊に攻撃をするシャキン。
熊が攻撃の手を上げた時には四度切り裂き、
バックステップで距離をとった。
( ゚д゚ )「おう!」
『(`・ω・´)「真上に振り上げた手はそのまま下に向かって振り下ろされるが、
斜めに上げた手は袈裟懸けの時と、くの字型に曲げるときがある。
袈裟懸けだと思って懐に潜り込んだら攻撃されることがあるってことだな」』
先日の熊との戦いでシャキンが告げた注意事項。
その後に一見同じような動きの中の違いを説明されたミルナとデミタスは、
素直に驚き、改めてシャキンの凄さを感じていた。
そして今日のショボンの指示。
もともと感じてはいたことだが、
シャキンとショボンに知り合った自分達の運に二人とも感謝した。
更に惜しげもなくその恩恵を自分達に与える二人に対し、
自分も力になりたいと素直に思っていた。
.
-
一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いたのは、
出発から一時間半経過した頃だった。
前回は二時間以上かかっていたことを考えると、
かなり順調に辿り着いたことになる。
(´・ω・`)「まずは一息つこう」
ウインドウを出したショボン。
ドクオとルートの確認をする。
そんな二人を囲むように休憩をする六人。
しかしシャキンが二人に、
ショボンに近付いた。
(`・ω・´)「ショボン、どうする?」
(´・ω・`)「そうだね……。
一回、話を聞こうか」
(`・ω・´)「了解」
('A`)?
(´・ω・`)「ドクオごめん、ちょっと待ってて」
にっこりとほほ笑んだショボンに対し、
不思議そうに頷くドクオ。
そして二人は何事かを話しながら輪から外れ、
今自分達がやってきた道に向かって歩いていく。
まるでそれは仲間たちに聞かれたくない内緒話をしているように見えた。
( ^ω^)「二人はどうしたんだお?」
.
-
('A`)「わからん」
ブーンとドクオの声がぎりぎり届く位置で、
突然二人は武器を構えた。
その先には木々しかなく、
敵は見えない。
川 ゚ -゚)!
ξ゚⊿゚)ξ!
( ゚д゚ )!
(´・_ゝ・`)!
驚きを見せる四人。
ブーンとドクオは既に走り出していた。
( ^ω^)「ショボン!シャキンさん!」
('A`)「おい!」
(´・ω・`)「何の御用ですか?
ずっと着いてきていましたけど」
(`・ω・´)「おれに一目ぼれしたか?」
仲間達の動きを気にせずに気に向かって語り掛ける二人。
まるでそれは擬人化した木に対して行っているように見るが、
二人の行動に信頼をしている六人は同じように武器を構えた。
(´・ω・`)「このまま戦いますか?」
「それはやめておくヨ」
.
-
ショボンの問いかけに返答する一つの声。
そして一本の大きな木の裏側から、
ゆっくりと人が現れた。
(女)「よく気付いたナ。
『看破』のスキルなんてのはまだないはずだけド」
それは鼠色のフードを被った小柄な女性だった。
両手を上にあげて手のひらを見せ、
武器を手にしていない、
敵意がないと意思表示していた。
(´・ω・`)「この世界、どうやって攻撃をされるかわかりませんよ。
武器以外の裏ワザがあったとしても驚きません」
(女)「……疑り深い男は嫌われるヨ」
口調はきつめだが、
表情は笑顔で答える女。
その頬に特徴的なペイントをしているが、
可愛らしい顔立ちをしていた。
('A`)「お、おまえ。もしかして」
その顔を見て、
ドクオは武器を下ろして数歩進んだ。
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
(´・ω・`)!
ドクオが自ら進んで女性に近付いたことに驚く三人。
しかしその後のドクオの言葉に、
全員の頭に『?』が浮かぶ。
('A`)「もしかして、『鼠』か?」
.
-
(女)
特徴的なペイントとは、
髭のような三本の線。
確かに鼠色のフードとそのペイントから『鼠』という言葉を思い浮かべることはできるが、
とりあえず見た目は可愛らしい女性に向かって『鼠』と呼ぶのは如何なものだろうか。
そんなことをほぼ全員が考えた中、
女性の顔が少し曇ったのを感じた。
『そりゃそうだよね』
またしても七人の頭に同じような感想が浮かんだが、
言われた女性の返答は少しだけ斜め上だった。
(女)「私を知っているのかナ」
('A`)「おれは『アルルッカバー』だ」
βテスト時代の名前を告げるドクオ。
βテスターであったことを出来るだけ隠す予定だったことを知っている仲間たちは思わず息をのむ。
そして何故かフードの女性も驚いていた。
(女)「え!?」
('A`)「久しぶりだな。鼠」
(女)「え!?アルルなのカ!?」
('A`)「『アルル』って呼ぶな。
あと、今の名前は『ドクオ』だから」
ドクオの返答に笑い出す女。
(女)「その返答!
まだ最後に会ってからそれほど経ってないのに懐かしいヨ!
久し振りだナ!『アルル』!」
.
-
('A`)「『アルル』って呼ぶな!」
(女)「分かってるヨ。
アルルッカバーくん」
('A`)「笑いながら言われてもな。
あと、今の俺の名前は」
(女)「『ドクオ』だネ。
よし、覚えタ」
('A`)「まったく……。
……久し振りだな。ね」
(アルゴ)「アルゴだヨ」
('A`)「久しぶりだな。アルゴ」
(アルゴ)「……来てたんだネ」
('A`)「……お前もな」
あっけにとられた表情で二人を見守る七人。
アルゴがその視線に気付く。
(アルゴ)「ドクオ、彼らは……」
('A`)「おれのリアル友達だ。
全員βはやってないけど、
おれがそうだってことは知っている」
あからさまに顔をしかめるアルゴ。
('A`)「大丈夫だ。
こいつらはおれ達がβテスターだと知っても」
(アルゴ)「いや、アルルくんにリアル友達がいたことが衝撃なだけだヨ」
.
-
('A`)「そこかよ!
っていうかおれは」
(アルゴ)「アルルッカバー君で、
今はドクオなんだよナ」
笑顔を見せるアルゴに対し、
こんどはドクオが顔をしかめた。
(アルゴ)「確かにβテスターだって知られるのは避けたかったけど、
君らの方が下手なテスターより色々すごそうだ。
特にそこの二人がネ」
面白そうに、
けれど鋭い視線でシャキンとショボンを見るアルゴ。
(´・ω・`)「ドクオ、この方は?」
('A`)「ん、ああ。
名前は今聞いた通り『アルゴ』。
β時代の知り合いだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとあんたこっちの世界では社交的だったのね」
('A`)「うるさい」
(アルゴ)「なんだ、リアルでの評価は一緒なんだネ」
川 ゚ -゚)「うむ。友達は多い方ではないな」
('A`)「なんとなくクーに言われるとへこむ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとの事なのに」
('A`)「ツンに言われてもへこまない」
ξ゚⊿゚)ξ「よし、後で」
(´・ω・`)「三人共?」
.
-
('A`)「あ、うん」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、話を進めなさい」
川 ゚ -゚)「脱線しているぞ」
(;`・ω・´)
(; ゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)
( ^ω^)「いつもの事ですお」
(´・ω・`)「それで、なぜあなたは僕達をつけていていたんですか?」
(アルゴ)「!
いや、たまたま先にここに来ていたところに君たちが……」
シャキンが剣を握りなおしたのを横目で見て、
大きくため息をつくアルゴ。
(アルゴ)「と言っても信じてもらえないネ。
……この先に出る角熊の攻撃に関して調べていることがあってネ。
昨日もここに来ていたんだけど、
ホルンカに一度戻って、
色々買い込んでまた向かおうとしたときに、
広場で騒いでいる君たちを見つけたってことサ」
(´・ω・`)「……僕達は急いでいます。
ですので今の内容でとりあえず納得しますが、
正直信じてはいません」
(アルゴ)「当然だと思うヨ。
でもこれが真実だから、
信じてもらえると嬉しいナ」
(´・ω・`)「角熊の攻撃とは?
今から僕達はそのエリアに向かう予定ですので、
β時代とは違う点があるようであれば教えていただけますか?」
.
-
(アルゴ)「ふむ……。
情報には対価が必要だと思うんだけどネ」
槍を構えるショボン。
その動きを見たシャキンがアルゴの背後に回って剣を構える。
(´・ω・`)「命と引き換えでは如何ですか?」
('A`;)「お、おいショボン!」
慌ててアルゴの前に立とうとするドクオを止めるブーン。
('A`)「ブーン!?」
アルゴに見えないように、ドクオに向かって微笑むブーン。
見ればミルナとデミタスは驚いているが、
ツンとクーも平然と見守っていた。
(アルゴ)「……本気かい?」
(´・ω・`)「僕達は今急いでいます。
あなたの情報が正しく、
これからの僕達の行動に有益であるならば、
出来る限りで返します。
ですが、嘘の情報で僕達が危険な目になったり、
最悪な結果になった場合は、
必ずあなたを殺します。
それを念頭において、
取引をしていただけますか」
クーとツンが武器を構える。
それを見て慌てて武器を構えるミルナとデミタス。
ブーンは少しだけ悲しげな顔でショボンを見た後に、
ドクオを止めるのとは逆の手で武器を構えた。
('A`)「ショボン……。
みんな……」
.
-
(アルゴ)「分かった。嘘はつかないヨ」
(´・ω・`)「それでは」
(アルゴ)「ただ、情報の前に一つ教えてほしい。
どこに向かっているんだ?
角熊のいるエリアに向かっているという事しかわかっていないんでネ」
(´・ω・`)「それは……」
アルゴをじっと見るショボン。
その視線を受け止め、さらにショボンを見るアルゴ。
(´・ω・`)「……人を、迎えに行くところです」
(アルゴ)「!もしかして、男女一人ずつの二人組……?」
(´・ω・`)「!……いえ、…………男二人、女一人の三人パーティーです」
(アルゴ)「……そう……だネ」
二人の会話を聞き、
表情をこわばらせる七人。
いつの間にか全員が武器を下ろしている。
(アルゴ)「目的地は、奥の安全エリア。
この層ギリギリの丘。だネ?」
(´・ω・`)「……はい」
(アルゴ)「案内するヨ。
実は私もそこに行くつもりだったんだヨ」
(´・ω・`)「!なぜですか?」
(アルゴ)「話すと長くなるし、
おそらくは聞きたくないことも含まれるけどいいかイ?」
(´・ω・`)「それは……」
.
-
(アルゴ)「先導する。
この人数じゃあ戦闘は避けられないから参加してもらうけど、
いいネ?」
ツンとクーを見るショボン。
その視線を受けて、黙って武器を構える二人。
ほかの皆も武器を構える。
(´・ω・`)「……はい。よろしくお願いします」
(アルゴ)「それじゃあ行こうカ」
歩き始めたアルゴの後ろを、
ここに来るまでと同じ隊列になって八人は続いた。
角熊との戦い方と注意点を途中でアルゴから聞き、
ブーンとツンとドクオの三人が先制攻撃、
クーとデミタスがそのフォロー、
シャキン、ミルナ、ショボンが後方と横を担当する形で戦闘をこなした。
そして二時間後。
奥の安全エリアにアルゴを含む九人はたどり着いた。
('A`)「ミセリ……」
安全エリアは、マップ上では第一層の端にある。
柵やオブジェクトがあるわけではなく、
崖に沿った長辺30メートル以上、
短辺20メートルほどの少し湾曲した正方形に近い長方形をしていた。
四方のうち一辺は崖。
崖の先には、青い空。
何もない空間。
上空には、第二層の端が見え、
今自分達がいる場所が、
『空に浮いている』という現実を突き付けられる。
.
-
その他の三辺は角熊の出るフィールドダンジョンに続く道と、
エリアを分ける森があった。
さらにエリアは中央が少し高くなっており、
一番高くなった場所には、
一本の太い樹が立っている。
('A`)「ミセリ……」
ドクオが名前を呼びながら、
その木の根元にうずくまるミセリに近付く。
他のメンバーは、
黙ってそれを見守っている。
('A`)「ミセリ……」
ただ名前を呼ぶことしかできないドクオ。
そして大樹の反対側、
ミセリの座る場所と正反対の場所にうずくまるビコーズを視界に入れた。
('A`)「ビコーズ……」
体を震わせるビコーズ。
そしてゆっくりと、
恐る恐るといった動きで顔だけ振り返る。
( ∵)「ドクオ……」
名前を呼んでも微動だにしないミセリはそのままに、
ビコーズに向かって足を進めるドクオ。
('A`)「ビコーズ、大丈夫か?」
( ∵)「おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、…………」
.
-
ドクオを見ながら、
少し焦点のずれた瞳で、
呟き続けるビコーズ。
('A`;)「ビコーズ?」
( ∵)「おれは、悪くない」
('A`)「お、おい、どうした」
ビコーズに触れる距離に辿り着く前に立ち止まるドクオ。
縋りつくように自分を見る瞳、
けれど拒絶するようにうずくまるビコーズの姿に、
恐怖に似た感情を覚えてしまったからだった。
(アルゴ)「『赤角熊は、
一番最初に角に攻撃を与えれば、
一発で倒すことが出来る。
しかも、ランダムでレアアイテムや武器が手に入る』
ホルンカの裏通りで流れている噂話だヨ」
アルゴの声に、大きく体を震わせるビコーズ。
いつの間にか隣に立つアルゴに驚きつつも、
それ以上に語った内容に困惑するドクオ。
('A`)「なんだよ、それ」
(アルゴ)「だから、噂だヨ、『噂』」
('A`)「なんだよ……それ……」
口調は軽いが、無表情なアルゴ。
ドクオは言葉をなくし、その感情の読み取れない顔を見ながら立ち尽くした。
.
-
(´・ω・`)「本当は、先ほど教えていただいたように……」
(アルゴ)
('A`)
丘を登りながらショボンが声をかけると、
二人が振り向いた。
(´・ω・`)「赤角熊は最初の一撃を角に当てられると、
その一撃で倒される代わりに、仲間を呼ぶ。
しかも呼ばれた角熊の攻撃力は通常よりもアップしている」
(アルゴ)「代わりに防御力は弱くなっているけどネ」
ドクオとアルゴの間に立つショボン。
(´・ω・`)「その噂は、だれが流しているんですか?」
(アルゴ)「……」
(´・ω・`)「『βテスター』。ですか?」
(アルゴ)「……そう、噂されているヨ」
('A`)「なっ!
べ、β時代には赤角熊なんていなかったぞ!」
(アルゴ)「ああ。
情報を集めた限り、
βテスターだと思われるプレイヤーで『赤角熊』を知っていたやつはいなイ。
正式サービスで追加された敵だと思うけど、
もしかするとβ時代は出現条件が厳しくて誰も会わなかったか、
或いは知っているプレイヤーに会えていないだけなのカ」
(´・ω・`)「おそらく、正式サービスによる追加でしょう」
(アルゴ)「何故?
アンタはβテスターじゃないよナ?」
.
-
(´・ω・`)「ホルンカの街のそばで、似たようなトラップを持ったモンスターが出ますよね?」
(アルゴ)「『実付き』だネ」
(´・ω・`)「はい。
リトルネペントの『実付き』です。
βテストが基本システムや、
プレイヤーが実際に動いた時の
プログラムをテストするためのものであるのならば、
こんな近くに似たようなトラップを仕掛ける意味がありません」
(アルゴ)「……一理あるネ」
('A`)
(アルゴ)「だけど」
(´・ω・`)「また、リトルペネントの『実』も
赤角熊の『角』も頭の上にあるものですが、
基本の背の高さが違うため、
普通に戦っていても『実』には武器が届きますが、
赤角熊の『角』を攻撃するためには、
身長の高い人が柄の長い武器で意識的に狙わないと無理でしょう」
(アルゴ)「?」
(´・ω・`)「すべて推測ですが、
この先にクエストでこの赤角熊と戦わないといけない時が
来るのではないでしょうか」
(アルゴ)「!」
('A`)「!」
(´・ω・`)「新たに何体か湧いて出る
『攻撃力は強いけど防御力が弱くなっている敵』も、
この先に進んで『攻撃力と防御力が増しているプレイヤー』ならば、
倒すことが出来る適正範囲の敵なのかもしれません」
.
-
無表情に淡々と自分の推理を口にするショボン。
ドクオはその一つ一つを『可能性』として素直に受け止めて頭の中で昇華しているが、
アルゴは目を見開いて驚いていた。
(´・ω・`)「どうしました?」
自分の顔を凝視するアルゴに対し、
不思議そうに問いかけるショボン。
(アルゴ)「君はいったい……」
(´・ω・`)「すべて『推測』です。
可能性の一つでしかありません」
(アルゴ)「それはそうだ、いや、でモ」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」
いつの間にか、下にいた六人も丘の上に登ってきていた。
(´・ω・`)「ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「その噂ってまだ流れてるのよね?」
ドクオとショボンの間に立ったツンがアルゴに問いかける。
クーはミセリのそばにしゃがんで声をかけており、
ブーンはビコーズに話しかけていた。
(アルゴ)「ああ。さっきも喋っている奴がいたヨ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、それを信じてここに来たのって他にもいるの?」
(´・ω・`)!
('A`)!
(アルゴ)「私が知っているだけでも四組。
その中の二組は角への攻撃を出来ずに諦めていたが、
残りの二組はその後見ていない」
.
-
(´・ω・`)!
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)「今回は助けるのが間に合ったんだな」
三人が衝撃を受けると、クーがツンの後ろにやってきていた。
ξ゚⊿゚)ξ「クー。あの子は?」
川 ゚ -゚)「だめだ。全く反応してくれない」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……」
('A`)「そうだな。アルゴ、お前そんなに強いのか?」
(アルゴ)「え?あ。いや、その、まあ、ネ」
('A`)?
川 ゚ -゚)?
ξ゚⊿゚)ξ?
(´・ω・`)「どなたか助っ人がいたのではないですか?」
(アルゴ)「あー。うん。まあ、ナ」
(´・ω・`)「β時代からのお友達ですね。
よろしくお伝えください」
(アルゴ)「あ、ああ。うん。伝えておくヨ。
でも、この世界で危ない状態を見たら手助けするのはよくあることだから、
あんまり気にしなくていいサ」
(´・ω・`)「ですが、僕達をここに連れてきてくれたり、
動けなくなった二人を見守っていてくれるなんてことは、
なかなか出来る事ではないと思いまして」
.
-
(アルゴ)!
ショボンの言葉に再度驚きを見せるアルゴ。
ショボンは彼女のその表情を見て自分の推測が正しかったことを知り、
丘を囲む林の一角を見つめた。
すでにそこは先ほどからシャキンが視線を向けており、
アルゴはそのことにも気付いて驚きを強くした。
(アルゴ)「あ、いや、その、ナ」
そんなアルゴを気にすることなく、
木々に向かって深く一礼するショボン。
シャキンもショボンほどではないが頭を下げていた。
(アルゴ)
二人を交互に見るアルゴ。
(´・ω・`)「ありがとうございます。
よろしくお伝えください」
ショボンとシャキンが頭を上げるとほぼ同時に、
林の中で影が動いた。
(アルゴ)「君たちは……いったい?」
(´・ω・`)「ほんの少し、人からの視線に敏感なだけですよ。
後僕は、ほんの少しだけ人より目が良いので」
にっこりとほほ笑んだショボンを、
いぶかしげに見つめるアルゴ。
そんな二人を、というより戸惑っているアルゴを、
少しだけかわいそうに思って何人かは見つめていた。
.
-
( ゚д゚ )(この二人はいろいろと規格外だからな)
(´・_ゝ・`)(この数日でだいぶ慣れたけど)
川 ゚ -゚)「しかしそうなると、早いところ噂を消さないと更に……」
微妙な空気を破り、ボソッと呟いたクー。
('A`)「そう……だな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、どうやって?」
(´・ω・`)「一度広まった噂を消すのは難しいよ」
川 ゚ -゚)「それはその通りだ。
しかも今回は、一撃で倒せるとかレアアイテムとか、
心をくすぐるキーワードも多い」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと、攻略本が欲しいわよ」
('A`)「壁新聞とか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばあんた昔やってたわよね。
自分で調べたゲームの裏ワザとかハウツーを新聞にして、
クラスの壁に貼ってたりするの」
('A`)「忘れてくれ」
川 ゚ -゚)「だが、ハウツー本や指南本があればいいな。
敵ごとの戦いにおける注意点をまとめてくれたような」
ξ゚⊿゚)ξ「地形とか、最短ルートとかも地図があるといいわね。
今回連れてきてくれたみたいな出来るだけ敵と会わないルートとかも」
('A`)「そういうのも自分で探すのが楽しみだけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
('A`)「そうだけどよ」
.
-
(アルゴ)「ハウツー本、攻略本……」
会話を黙って聞いていたアルゴがぶつぶつと呟く。
ショボンはそれを横目で見ながらビコーズに近付いた。
(´・ω・`)「ブーン」
(;^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「どう?」
(;^ω^)「だめだお」
ブーンの反対側、
ビコーズを間にしてしゃがむショボン。
(´・ω・`)「ビコーズさん」
( ∵)「おれは悪くない……。おれは悪くない……」
身体を細かく震わせながら呟き続けるビコーズ。
(´・ω・`)「ビコーズさん……」
(;^ω^)「さっきからいろいろ話しかけてるけど、
ずっとこんなかんじだお」
(´・ω・`)「……ブーンでもダメか」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「ううん。なんでもない」
立ち上がるショボン。
ブーンは最初その動きに合わせて頭を上げただけだったが、
ショボンに視線で促され、二人でミセリのそばに移動した。
(´・ω・`)「ミセリさん」
.
-
二人はミセリの両側にしゃがんだ。
(´・ω・`)「ミセリさん」
二回名前を呼ぶと、伏せていた顔を上げてゆっくりとショボンを見た。
(´・ω・`)「ここは安全エリアですが休めません。
まずはホルンカまで戻りましょう」
ミセ*゚ー゚)リ
( ^ω^)「ミセリ……」
ブーンの優し気な声に釣られるように向きを変えるミセリ。
( ^ω^)「おっおっ。
一緒にホルンカへ戻るお」
柔和な笑みを浮かべたブーン。
その顔を見たミセリの目から、涙がこぼれ落ちた。
ミセ*;ー;)リ「ゼアフォーが、姫じゃなくて、ミセリって……呼んだの」
( ^ω^)「そうなのかお」
ミセ*;ー;)リ「それで、私の事が好きだって」
( ^ω^)「ゼアフォーはミセリの事がすきなんだお」
ミセ*;ー;)リ「私……全然知らなくて……。
姫って呼ばれるのも、ただのキャラ設定で……。
とりあえず女の子とゲームをするのが楽しいだけなんだろうって……。
思ってて……」
( ^ω^)「そうだったのかお……」
ミセ*;ー;)リ「こんな、ゲームの世界で、好きとか、言われても、
アバターだし、現実とは性格だって違うし。
こんなに、わたし、しゃべることなんて……」
.
-
( ^ω^)「ゼアフォーは、
そんなのも全部ひっくるめて、
ミセリの事が好きなんだお」
ミセ*;ー;)リ「私なんか……」
( ^ω^)「ゼアフォーが好きな人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」
ミセ* ー )リ!
( ^ω^)「ゼアフォーはかっこいいお。
好きな人を守ってるんだお。
だから、そんなかっこいいゼアフォーが好きになった人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」
ミセ* ー )リ「ブーン……くん……」
( ^ω^)「ホルンカにかえるお」
ミセ* ー )リ「もう……少しだけ……。
今は星は見えないけど、ゼアフォーが、
ここで見る星が、好きだったから……」
( ^ω^)「そうだったのかお……」
再び俯いたミセリ。
ブーンがショボンの顔を見ると、ショボンは一度頷いた。
( ^ω^)「分かったお。
もう少しだけ、ここにいると良いお」
ミセ* ー )リ「ありがとう……」
ミセリが涙を流したまま顔を伏せる。
二人のした会話は決して大きな声ではなかったが、
そこにいる全員の耳に届いていた。
そう。彼にも。
.
-
( ∵)「ふざけるな!」
ふらりと立ち上がったビコーズ。
そして両足で大地を踏みしめ、
こぶしを握って叫んだ。
( ∵)「ふざけるな!!」
その声は強く激しく、
けれど震えていた。
( ^ω^)「ビコーズ!?」
ビコーズがミセリの前に立った。
(´・ω・`)「ビコーズさん?」
( ∵)「ふざけるな!
あいつはずっとお前のことが好きだったんだ!」
ミセ*゚ー゚)リ!
顔を上げるミセリ。
その目の前には、怒りによって顔を赤くしたビコーズ。
( ∵)「ずっと、ずっと、ずっと!
βで会った時からずっと!
おれと二人で!お前が好きだったんだ!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
( ∵)「おれたち二人はゲーム初心者で、
名前のモチーフが似てて、
知り合ってから名前の事で盛り上がって!
はじまりの街から出ることが出来なかったけど!
話しているだけで楽しかった!
でもお前と会って、ゲームの進め方や戦い方を教えてもらって、
お前の事を二人で姫って言いだして!
守るって決めて!」
.
-
苦しそうに言葉をつづけるビコーズ。
その激しさと悲しみと怒りで、
誰も近寄れない。
( ∵)「だから、だから、だから!
お前に誘われたから!
だから正式サービス後も始めたんだ!
誘われなかったらやらなかった……。
おれ達は……」
(´・ω・`)!
( ^ω^)!
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
(`・ω・´)!
ミセ*゚ー゚)リ「え、で、でも、二人とも、またここで会おうって……」
( ∵)「おまえにゲームの中でリアルの事を聞くのはマナー違反だって言われた!
おれ達がお前にまた会おうには、ここに来るしかなかった!
三人共βで止めるのならば他で会おうってことになったかもしれない。
でも、おれ達よりもゲームを楽しめるお前がこの世界に残るなら、
会うなら、おれ達はここに来るしかなかったんだ!」
肩を震わせ、涙でぐしゃぐしゃの顔で叫んだビコーズ。
その告白は、だれもが固唾を飲んで見つめる事しかできなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……くん……」
( ∵)「……おれ達が、この世界に来たのは、お前のためだ」
ミセ*゚ー゚)リ!
.
-
( ∵)「おれ達が、この世界に囚われたのは、お前のせいだ」
ミセ* ー )リ!
( ∵)「あいつがこんなことになったのはおまえのせい」
川 - )「ふざけるな!」
駆けだしていたクーが、
ビコーズが言い終わる前にその胸ぐらを掴む。
(´・ω・`)「クー!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー!」
(;^ω^)「クー!?」
川 - )「ここに来ると決めたのは好きな人のせいじゃ無い!
自分で決めたからだ!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー」
川 - )「自分で決めたことを誰かのせいにするな!
経緯はどうであれ自分で決めた自分でナーヴギアをかぶったんだ!
自分の行いの責任は自分で取れ!
人のせいにするな!
しかも惚れた相手のせいにするなんて言語道断だ!」
ビコーズの胸元を掴んだまま激しく揺するクー。
その剣幕に誰も動けない中、
一人ツンは彼女に近付き、
その背中に優しく抱きついた。
ξ゚⊿゚)ξ「クー」
川 - )「ツン……」
強く抱きつき、その背中に頬を当てて彼女の名を呼んだ。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「クー。落ち着いて」
川 ゚ -゚)「ツン……」
クーが動きを止める。
胸倉は掴んだままだが、
ビコーズも力をなくし立ち尽くしている。
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫みたいね」
手の力を緩めるツン。
ξ゚⊿゚)ξ「クーもその手、早く離した方が良いわよ。
クズに触ってると手が腐るから」
川 ゚ -゚)「そうだな……」
(;^ω^)(おー)
('A`;)(安定のツンだな)
(;゚д゚ )(ん?いまさらっとひどいことを)
(;´・_ゝ・`)(うわぁ……)
そっと身体を離したツンにあわせるように、
クーも手を離し、振り返った。
川 ゚ -゚)「ありがとう、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「パフパフ一回分貸しね」
川 ゚ -゚)「私は良いが、ツンが悲しくならないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
軽口をたたきつつ、クーと位置を入れ替えるツン。
そして振り上げた右手を振りぬいた。
.
-
(;^ω^)(お!)
('A`;)(うわっ)
(´・ω・`)(あっ)
(;`・ω・´)「おっ」
(;゚д゚ )(え?)
(;´・_ゝ・`)(いたい……)
(アルゴ)(あれくらいなら攻撃判定に入らない……と)
左頬を平手打ちされたビコーズがよろめいて座り込む。
そんな彼を、軽蔑した目で見降ろすツン。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、最低よ」
そして踵を返すと、クーの手を取ってミセリの前に立った。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ、こんなのとのパーティーはさっさと解消して、
私達のパーティーに入りなさい」
ミセ*゚ー゚)リ「……え?」
ξ゚⊿゚)ξ「『え』じゃなくって、
パーティーは基本六人までいけるんでしょ」
ミセ*゚―゚)リ「あ、うん。そのはずだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ならいいじゃない」
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「でももくそもないわよ」
ミセ*゚ー゚)リ「くそって……」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「こんなのとパーティー組んでても良いことないわよ」
川 ゚ -゚)「それは私も同意見だ」
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私たち。
あいつはシャキンのところにでも入れて鍛えなおしてもらえばいいでしょ」
(`・ω・´)「え?そこでおれ登場?」
ξ゚⊿゚)ξ「良いわよね?」
(`・ω・´)「え、でも」
ξ゚⊿゚)ξ「い、い、わ、よ、ね?」
(`・ω・´)「はい」
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ「これでよし」
満足げに周囲を見回すツン。
ほぼ全員が呆気にとられているのを確認しつつも、
得意げに笑うだけだ。
ξ゚⊿゚)ξ「さ、とりあえず戻るわよ。
鼠さん」
アルゴを見て、彼女に向かって数歩近付くツン。
突然のことに戸惑うアルゴ。
ξ゚⊿゚)ξ「?鼠さん?」
(アルゴ)「えっと……わたしのことかナ?」
ξ゚⊿゚)ξ「他に誰がいるのよ」
(アルゴ)「……『アルゴ』って名前があるんだけどネ」
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