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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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ショボンの態度に眉を顰めるシャキンだったが、
何事もなかったように話題を流した。
(`・ω・´)「とりあえずは明日からの合同練習だな」
(´・ω・`)「うん」
あからさまにほっとした表情をするショボン。
(`・ω・´)「あの子がどんな風におれ達を鍛えてくれるのか楽しみだ」
(´・ω・`)「ドクオが、
パーティーでの戦いは彼女の方がうまいって言ってたけど、
どうだった?ここに来るまでの戦いは」
(`・ω・´)「そうだな。うまかったと思う。
というか、一緒にいた男二人より強く見えたな。
ゼアフォーはそれでも戦ってたけど、
ビコーズの方は掛け声ばかりでそれほど動いているように見えなかった。
ミセリとゼアフォーの指示に合わせて動いていたように見えた」
(´・ω・`)「そうなんだ」
(`・ω・´)「あそこも色々ありそうだな。
ミセリの『姫キャラ』というか『ぶりっ子キャラ』も含めて」
(´・ω・`)「アバターの時と違って、
少し無理しているように見えた」
(`・ω・´)「そうか。
それであんなことを」
(´・ω・`)「そっちだって分かってやってたんでしょ?」
(`・ω・´)「おれは面白そうだなって思っただけだ。
そしたらお前がのってきたから」
(´・ω・`)「またそうやって人のせいにするし」
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(`・ω・´)「別にお前のせいにしたわけじゃないぞ。
おれ一人じゃうまく誘導できなかっただろうとは思うがな」
(´・ω・`)「まったくもう」
口調では避難しているように聞こえるが、
ショボンの表情は穏やかで明るかった。
(`・ω・´)「素の方が面白いし良いキャラしてそうだと思うんだけどな」
(´・ω・`)「別人になって、
女の子らしい女の子をやってみたかったのかもね。
三人共β出身だから、
その頃からの設定というか、
互いの役割的なものがあったんだろうし」
(`・ω・´)「それが壊れたと」
(´・ω・`)「あの程度でぼろを出すようじゃ、
遅かれ早かれ破綻してたよ。
早く素を出せて良かったって感謝してほしいくらいだって」
(`・ω・´)「おれに対してはキャラ壊れてたしな」
(´・ω・`)「そういえば最初からそんな感じだったよね。
……ここに来るまでになにしたのさ」
(`・ω・´)「なんもしてないぞ」
(´・ω・`)「あとでミルナさんとデミタスさんに聞くよ」
(`・ω・´)「なんもしてないって」
(´・ω・`)「何もしてないなら聞いてもいいよね?」
(`・ω・´)「いやいや、してないから時間の無駄だから」
(´・ω・`)「……なにしたの?」
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(`・ω・´)「……三人で打ち合わせしてるのを後ろから盗み聞きしたり、
出てきたモンスターに対して三人が陣形を整えている隙に特攻かけて、
結局ミセリに助けられたり。
まあ最初から付いてきたのも少しは強引だったかな。
それくらいだ」
(´・ω・`)「……充分だと思う」
(`・ω・´)「そうか?」
(´・ω・`)「うん」
(`・ω・´)「ならしょうがないな」
(´・ω・`)「まったく」
呆れたように、
少し困った顔をするショボン。
しかしすぐに笑顔に戻った。
(`・ω・´)「なんだよ」
(´・ω・`)「なんでもない」
ニヤニヤと笑うショボンを見てシャキンは肩をすくめる。
そして表情を引き締めてから口を開いた。
(`・ω・´)「彼女がお前にコンタクトをとってきたのは、
そのためだろうしな」
(´・ω・`)「ん?」
(`・ω・´)「ミセリがお前たちと一緒に動きたいといった理由だよ」
(´・ω・`)「やっぱり、そう思う?」
(`・ω・´)「一目瞭然だろ。あれは」
(´・ω・`)「だよね」
.
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(`・ω・´)「ビコーズもゼアフォーも、
ミセリに依存している」
(´・ω・`)「うん。僕もそう思った。
一見姫を護る騎士を装ってはいたけど、
『彼女を守る』という使命感に縋って自我を保っているようにね」
(`・ω・´)「おそらくそれが正解だろう。
二人とも気付いていないだろうが」
(´・ω・`)「彼女は、それを嫌がっているのかな」
(`・ω・´)「自分が休まる場所がないかもしれないな。
共依存の関係には見えなかった」
(´・ω・`)「……うん」
(`・ω・´)「今のお前と、同じだ」
(´・ω・`)「そう……だね」
(`・ω・´)「分かってはいるんだな」
(´・ω・`)「……うん。
僕が巻き込んでしまったのに、
僕は今『みんなを守る』っていう事を支えにしている。
すぐ連絡をくれなかったのだって、
それが分かっていたからでしょ?」
(`・ω・´)「ああ」
(´・ω・`)「僕が、兄さんに甘えない為」
(`・ω・´)「半分正解、半分間違い」
(´・ω・`)「え?」
.
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(`・ω・´)「おれに甘えるのは問題ない。
ただ、おれに『だけ』甘えるのはダメだ。
おれ『だけ』を心の支えにするな。
依存するんじゃない。
自分で立って、
それから甘えていい奴全員に甘えろ」
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「さっきも言ったが、
お前の友達はただ守られているだけのような奴らじゃないだろ?
彼らの為にも、あの子たちを頼る強さを持て。
甘えることのできる余裕を作れ」
(´・ω・`)「分かってはいる。
分かってはいるんだ。
分かってはいるんだよ!
でも……
でも……」
(`・ω・´)「でも?
なんだ?」
(´・ω・`)「僕が誘ったから、
みんなを命の危険に晒してしまったんだ。
その責任は、取らなきゃいけない。
皆を生きてかえす。
それは、絶対にしなきゃいけない……。
だから僕は……」
(`・ω・´)「責任の所在だけを考えるのはおれたちの悪い癖だ。
そのうえお前は身内には優しいのに、
自分には厳しすぎる」
(´・ω・`)「今は仕事じゃないし、
命がかかってる」
(`・ω・´)「でも、『責任』や『自分の行動の結果』にとらわれすぎて、
そこに携わっている人間の思いを忘れてるんじゃないのか?」
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http://ssks.jp/url/?id=348
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きてる!
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(´・ω・`)「思い?」
(`・ω・´)「お前が一人で背負って苦しんでいる姿を見て、
何も思わないような奴らなのか?
ドクオとブーン、あの二人は。
あと、クーとツン。彼女たちは」
(´・ω・`)「それは……」
(`・ω・´)「おれには、違うように見えた。
ドクオとブーンはそういうやつらだって知っている。
彼女たちとは少ししか話せなかったが、
意志の強い瞳をしていた」
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「すぐには無理だと思うけど、
もう一つ違う視線を持て。
今のお前は一つの思いに囚われすぎている」
(´・ω・`)「……うん」
(`・ω・´)「おれはいつでもいつまでも、
必ずお前の味方だ。
だから、もう少し勇気を持ってみろ」
(´・ω・`)「ありがとう……かず兄さん……。
でも、兄さんは誰に」
(`・ω・´)「ん?いろいろお前に甘えるつもりだけど?」
(´・ω・`)「へ?」
(`・ω・´)「ドクオにも甘えるし、
ブーンにも甘える。
ミルナやデミタスにだって甘える。
でも、あいつ等にも甘えてもらえるように、
甘えてもいい奴だって思ってもらえるように、
自分の位置を作るつもりだ」
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-
(´・ω・`)「兄さん……」
(`・ω・´)「お前はいろいろできる分だけ一人で背負いすぎる。
でも、お前以外の奴だって色々できるし、
モノによってはお前よりうまくできる奴だっている。
仕事と一緒だよ。
おまえは人の能力を見抜くのがおれよりうまいんだから、
こっちでもそれを活かせばいい」
(´・ω・`)「金儲けとは違うよ……」
(`・ω・´)「ああ、違う。
でも一緒だ」
(´・ω・`)「?」
(`・ω・´)「個人の得意を伸ばし、特異とする。
個人の苦手を集団で補い、悪手をなくす。
適材適所。
相互補完。
マシロがやってきた経営の基本は、
お前の得意技だろ?」
(´・ω・`)「仕事ではそうだけど……」
(`・ω・´)「一緒だよ。
同じように考えてみろ。
皆を守るために、
皆が生き残るために、
皆が笑顔で過ごせるように」
(´・ω・`)「!」
.
-
(`・ω・´)「社員みんなに笑顔で働いてもらう。
マシロの経営者、幹部、役付きに徹底させる理念。
それはここでも同じじゃないのか?
みんなに笑顔で生活してもらう。
誰かの犠牲の上にそんな生活が出来たとして、
お前の友達はほんとに笑顔でいられるのか?」
(´・ω・`)「でも、命が……」
(`・ω・´)「戦うか戦わないかを決めるのは、
お前じゃない。
それに、お前が居なくなった時にどうするつもりだ」
(´・ω・`)「僕は、死なない。
皆を返すまでは決して……」
(`・ω・´)「テストタイプ」
(´・ω・`)「!
しって、るの……?」
(`・ω・´)「おじさんに聞いた。
ログインの前にお前たちの部屋を見に行った時にな。
テストタイプのナーヴギア。
プロトタイプ、汎用機と違って、
お前が使っているテストタイプにバッテリーは付いていない。
つまり、電源を切ればそれで接続は終わりだ」
シャキンの言葉に、
隠していた事実を知っていたという衝撃に、
言葉をなくすショボン。
ただじっとシャキンの顔を見る。
(`・ω・´)「だが、おそらくだが、
こちらの世界で死ねば、
バッテリーではなく配線から供給された電力で、
お前の脳味噌は沸騰させられる」
.
-
静かな部屋に、シャキンの言葉だけが響く。
(`・ω・´)「今電源を切れば確実に助けることが出来る命が、
目の前にある。
しかもそれは、最愛の自分の子供だ。
お前の両親、大おじさんと千早おばさんは、
これからずっとその思いと戦うことになる。
でもあの二人なら、その思いにきっと勝つ。
お前がこっちで何を考えているか、
分かっているだろうからな。
お前の心を尊重して、電源を切るような真似はしないだろう。
でも、爺さんがそのことを知ったら……」
(´・ω・`)「……病室に乗り込んで、電源を引っこ抜くだろうね」
(`・ω・´)「ああ。
お前とおれ、二人だしな。
おれはともかく、お前はそうすれば助けられるわけだし」
沈黙。
じっとショボンを見るシャキン。
ショボンは俯き、膝の上で握ったこぶしをじっと見ていた。
数分の間、その状態が続いただろうか。
シャキンの表情が緩み、柔らかい瞳でショボンを見た。
(`・ω・´)「よく考えるといい。
時間があるのかないのかは分からないけれど、
ちゃんと考えて答えを出せばいい」
(´・ω・`)「兄さん……」
顔を上げたショボン。
その視線の先で、にやりとシャキンは笑った。
(`・ω・´)「さて、一時間たったな。
そろそろロビーに行くか」
.
-
ショボンが視界の隅のデジタル時計を見ると、
予定の時間より10分すぎていた。
(´・ω・`)「う、うん」
慌てて立ち上がったショボンを座ったまま片手で制するシャキン。
(`・ω・´)「部屋に入る前に少し遅れるって連絡しておいた。
だから慌てなくていいぞ」
(´・ω・`)「……かなわないな」
(`・ω・´)「はっはっは」
ゆっくりと立ち上がり、両手を腰に当て、
胸を張って高らかに笑うシャキン。
ショボンは浮き出ていた涙をぬぐい、笑みを浮かべる。
(`・ω・´)「よし、じゃあ行くか」
扉へと向かうシャキン。
ドアに手をかけた時に、後ろからショボンが話しかけた。
(´・ω・`)「かず兄さん」
(`・ω・´)「ん?」
ノブに手をかけたまま振り返るシャキン。
(´・ω・`)「もしも、僕が先に消えてしまったら……」
(`・ω・´)「ああ。おれがお前の友達のそばにいるよ」
(´・ω・`)「……ありがとう」
(`・ω・´)「ただし」
.
-
(´・ω・`)「ん?」
(`・ω・´)「突然消えてしまった場合だな。
無茶をしたり軽率な行動で死んでしまい消えた時は、知らん」
おどけた口調で軽々しく、
けれど真剣な瞳で告げるシャキン。
(`・ω・´)「だから、お前もちゃんと生きろよ」
そして重く呟くと、ショボンの返答を聞かずにドアを開けた。
.
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ミセ*゚ー゚)リ「遅い!」
次の日、
ホルンカの村のそばの森。
クエストとは関係ない場所で、
11人は戦闘を重ねていた。
ミセ*゚ー゚)リ「待っている方はただ待つだけじゃなくて一緒に戦うの!
戦っている方は戦いながら次の手を考えて!
早めにタイミングを教えるのよ!」
朝から戦闘を開始し、休憩を挟んでそろそろ6時間が経とうとしているが、
ミセリの怒声はやむことを知らない。
ミセ#*゚ー゚)リ「遅い!もっと早く!」
(;∵)「は、はい!」
(;∴)「はい!」
叱られているのは、ビコーズとゼアフォーの二人。
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その日の朝、広場に集まった十一人はミセリから今日のスケジュールを告げられた。
それは少し行った場所にある森の中の安全エリアを中心として、
戦闘訓練を行うということ。
そのエリアは東西南北に戦闘エリアを隣接しており、
3組が戦闘訓練を行うにはもってこいの場所だということだった。
そしてエリアまでの道はドクオとミセリが戦闘を行い、
それを見本、参考にするようにとミセリは告げた。
そして、その言葉に見合う見事な戦いぶりを見せ付けた。
森の中、
現れた熊型のモンスターと戦うミセリ。
何度も隙をついて懐に潜りこみ、
短刀を閃かせて熊のHPを削る。
(クマ)「ぐをおおおおおおおお!」
HPを半分まで削ると、熊が雄叫びをあげた。
再び懐に入ろうとするミセリ。
しかしクマが腕を振り、うまく入れなかった。
ミセリの後ろでドクオが片手剣を構える。
ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ行くよ!」
('A`)「おう!」
バックステップで距離を置くと同時に光りはじめるミセリの持つ短刀。
.
-
そして次の瞬間、ミセリの体は熊の懐に潜りこんだ。
光る短刀熊の胸から肩にかけて攻撃を与える。
ミセリが繰り出したのは剣技による攻撃。
剣技の中には、武器の持つ攻撃力を高めるだけではなく、
自身の反応速度を上げる技も存在する。
更にミセリはβテスト時代の経験から、
助走と跳躍のタイミングを剣技の発動に合わせることによって熊の隙を突くことに成功した。
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
(クマ)「ぐりゅああああああ!」
ミセリの声と、熊の叫びはほぼ同時。
威力の弱い短刀での攻撃ではあったが、
剣技による会心の一撃は熊を後ずさりさせ、
更にミセリは短刀の光が消える前に熊の体を蹴って後方上空に向かって跳躍し、
弧を描く途中で綺麗に一回転をして着地した。
片膝をつき、熊を見ながら剣技後の硬直を甘受するミセリ。
そしてドクオは、既に熊を攻撃していた。
ミセリの声とほぼ同時に動き出していたドクオは正面から通常攻撃を一度加えた後、
硬直を起こした熊を右から二回攻撃、
そのまま右を向いた熊の脇をすり抜けて後ろから一回攻撃。
自分を攻撃する者の姿を追って振り返りながら、熊は攻撃のための手を振り上げる。
ドクオはその手と熊の目線の間に移動して、更に一回攻撃を加え、バックステップで距離をとる。
熊の減ったHPが赤に色を変えた。
('A`)「決める!サポ頼む!」
ミセ*゚ー゚)リ「了解!」
後ろを見ずとも技後硬直が解けてこちらを見ているであろうミセリに指示を出し、
それとほぼ同時に駆けだすドクオ。
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-
その先には、両手を上げて咆哮し、威嚇する熊。
怯むことなく繰り出したドクオの持つ光り輝く片手剣による攻撃は、
熊をポリゴンに変えた。
万が一今の一撃で倒せなかった時の為に短刀を構えていたミセリが構えを解いたのは、
ポリゴンのきらめきがすべて消え、
周辺に敵のポップが認められないのを確認した後だった。
全員が上げた感嘆の声がおさまった後に、
ミセリから注目する点を注意され、
奥へと進む一行。
目的の安全エリアに到着するまでにさらに四回ドクオとミセリは戦闘をこなした。
そしてエリアに着いた後、
まずは一度ずつ全員が戦ってみたのだが、
既に『彼等』は出来上がっていた。
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ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!」
( ^ω^)「だお!」
川 ゚ -゚)「ドクオ!」
('A`)「ん!」
(´・ω・`)「ツン!」
ξ゚⊿゚)ξ「任せなさい!」
( ^ω^)「クー!」
川 ゚ -゚)「心得た!」
('A`)「ショボ!」
(´・ω・`)「省略するな!」
ミセ*゚ー゚)リ「……え?」
ミセリは、リアルからの友人である五人の息がすぐさま合ったことは納得できた。
.
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(`・ω・´)「行くぞ二人とも!」
( ゚д゚ )「おう!」
(´・_ゝ・`)「ああ!」
( ゚д゚ )「シャキン!」
(`・ω・´)「任せろ!」
(´・_ゝ・`)「次だ!」
(`・ω・´)「おりゃ!」
( ゚д゚ )「デミタース!」
(´・_ゝ・`)「変な伸ばし方するな!」
(´・_ゝ・`)「こっちミルナ!」
( ゚д゚ )「見なきゃ戦えないだろうが!」
ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」
ミセリは、この三人は自分達とあの道をやってきて自分の戦いを見てきた経験があることと、
さらにシャキンの指示が的確であることを悔しながらも認めることにより、無理やり納得した。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「 」
( ^ω^)「 」
('A`)「 こっち(だ)!ミルナ! 」
(´・_ゝ・`)「 」
(`・ω・´)「 」
川 ゚ -゚)「 」
(#゚д゚ )「ちゃんと『だ』を口にしろ!」
(´・ω・`)「すみません。うちのも一緒になって」
( ゚д゚ )「え?あ、ま、まあいいけどな。うん。
そこまで怒ってないから気にするな」
ξ゚⊿゚)ξ「 」
( ^ω^)「 」
('A`)「 こっちミルナ! 」
(´・_ゝ・`)「 」
(`・ω・´)「 」
川 ゚ -゚)「 」
(#゚д゚ )「その違いは分かるぞこのやろう!」
.
-
ミセ#*゚ー゚)リ
危なげはなく、
しかし見本になるかといえば口を濁すレベルの連携で一体の熊を倒した二人と共に、
モンスターの出ない安全エリアに戻っていたミセリ。
和気あいあいと戦闘準備を始めている八人を見て、
静かに怒りを湛えていた。
しかし戦闘そのものは真面目に行っており、
更に回数をこなすごとに精度を上げる連携に、
文句を言えないでいた。
そしてその鬱憤は、
成長しない連携しか行えない自分の仲間に向いてしまった。
だがそれは仕方のないことだろう。
βテスターであり、
本来ならばこの世界での戦闘に一日の長があるべきはずの二人が、
程度の低い連携しか行えていなかったのだから。
(;∴)「ひ、姫、どこが悪いのか教えていただけますか」
(;∵)「十分連携は取れていると思うのですが」
もちろん程度が低いといっても戦闘に問題があるわけではない。
無事に敵は倒しているし、危険な目にもあっていない。
しかし目の前で目に見えて成長する者達を見て、
何故かミセリは焦りに似た感情を覚えてしまっていた。
ミセ#*゚ー゚)リ「そんなこともわからないの!」
自分でも制御できない感情。
それをビコーズとゼアフォーの二人に分かれというのが酷な話であり、
二人は混乱していた。
更に言えば、今まで戦闘能力はあるものの『可愛く』自分たちに守られていたミセリの素の姿、
見た目からは思い描けない激しい叱咤に戸惑ってしまっていた。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「!!
ご、ごめんね二人とも。
でも、二人の方が強いのに彼らの方が
ちょっと連携が出来ているからっていい気になってるのが悲しくって」
二人の目に見えた戸惑いを見て我に返り、
ミセリは悲しそうな表情をつくって二人を見る。
( ∵)「姫」
( ∴)「姫」
(#∵)「あいつらめ……」
ミセ*゚ー゚)リ「で、でもね、仕方ないことだと思うの」
( ∵)「仕方ない?」
( ∴)「どういうことですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「だって、自分よりも強いはずの二人よりも、
優れているかもしれないところを見つけたんだもん。
気分よくいい気になっても仕方ないよ」
βテスト時代の美影、
そして昨日までのミセリのような可愛らしい仕草で二人を見るミセリ。
( ∵)「それもそうだ。
連携、スイッチのタイミングが、
我らの足元にも及ばぬ奴らが見出した光芒。
そこに縋っていい気になっても仕方ない」
( ∴)「ふむ……。
それは一理あるかもしれませんが……」
ミセリの言葉にまんざらでもない顔をする二人。
それを見てから、満面の笑顔で二人の手を握るミセリ。
.
-
(*∵)「ひ、姫」
(*∴)「姫」
二人の手を合わせて両手で包むように握るミセリ。
そして自分の胸元に引き寄せる。
ミセ*゚ー゚)リ「でもね、このままじゃいけないと思うんだ」
(*∵)「ひ、姫?」
(*∴)「姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「だって、それは自分を過大評価するってことだと思うの。
モンスターとの戦いが命のやり取りであるこの世界で、
その思い上がりはきっと危険につながると思うから」
(*∵)「姫はなんて優しい」
(*∴)「それでこそ、我らが姫」
ミセリの手を挟んでいるが、
彼女の決して小さくない胸に手が当たっていることに、
心を半分持っていかれている二人は素直にミセリの言葉を受け止める。
ミセリは二人の手を、
胸に当てた二人の手を力強く一回握り、
二人の目を交互に見ながら手を放した。
(*∴)「姫!」
(*∵)「ひ、姫!」
そして両手を広げ、
飛びつくように二人に抱きついた。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「だから、がんばろ。
あいつらの見本になるくらい、
レベルの違いを見せつけて、
あいつらもついでに守ってあげて。
二人ならできるよ!」
(*∴)「姫!」
(*∵)「姫!」
(*∴)「姫!がんばります!」
(*∵)「お、おれも頑張る!」
身長差があるため、背の高いゼアフォーに合わせて抱きつくと、
ビコーズの顔にはミセリの胸が少し当たることになる。
それを意識してかしないでか、
更に強く二人に抱きつくミセリ。
もちろんゼアフォーにもその女性らしい体を押し付けることになり、
二人の顔は赤く染まっていた。
ミセ*゚ー゚)リ「うん!
がんばろうね!」
可愛らしく、跳ねるような甘い声で二人に話しかけるミセリ。
(*∴)「はい!」
(*∵)「はい!」
二人の元気な返答が、
エリアに響いた。
.
-
('A`)「ミセリ、二人には見えないと思って悪い顔してるなー」
(´・ω・`)「ああ。うん」
そんな二人を見る三つの影。
(´・_ゝ・`)「ま、三次の女なんてそんなもんだ」
(´・ω・`)「デミタスさん……」
エリアへ繋がる道で、
三人が木陰に隠れて三人を見ていた。
('A`)「デミタスさんは、
だからショタコンになったんですか?」
(´・_ゝ・`)「……大人はいろいろあるんだよ。
っていうか、おれのショタコンは二次限定だからな。
そこは間違えるなよ」
最初から盗み見をするつもりではなかったのだが、
ミセリ達を呼びに行こうとやってきた時に、
ちょうど見かけて思わず木陰に隠れてしまっていた。
それでも普段のミセリ、あるいはビコーズやゼアフォーも、
いつもの精神状態ならば気付いたのかもしれない。
けれど今は全く気付いていなかった。
因みに三人の会話は『聞き耳スキル』によってドクオが聞き、
下手なアフレコで二人に説明していた。
.
-
('A`)「ういーす」
(´・ω・`)「はーい」
(´・_ゝ・`)「分かってないよねお前ら」
(´・ω・`)「それにしても、彼女はなぜそこまで二人を」
(´・_ゝ・`)「うわ。流した。
流石シャキンの血縁」
('A`)「だよな。
忍者目指しているんなら、
しっかりとした連携が出来ているならいいと思うんだけどよ」
(´・_ゝ・`)「戦闘は出来ても、お子様ってことだな」
('A`)「え?」
(´・ω・`)「デミタスさんは分かるんですか?」
(´・_ゝ・`)「多分な」
事もなげに、やれやれと呟きながら二人の顔を見るデミタス。
ドクオとショボンは互いの顔を一度見た後に、
おそらくは自分達より年上であろう青年の顔をまじまじと見た。
(´・_ゝ・`)「彼女はおれ達よりも優位に立ちたいんだよ」
(´・ω・`)「え?」
('A`)「はあ」
(´・_ゝ・`)「おれ達は、まあドクオはβテスターだけど、
おれを含め他の奴らはこの世界の初心者だ。
通常なら、おれ達は彼女たちに教えを請い、
戦闘に対して保護を求めてもおかしくはない。
ツンやクーといった女の子もいるし」
('A`)「ふむ」
.
-
(´・ω・`)「それは……そうかもしれませんね」
(´・_ゝ・`)「ドクオ一人で四人の面倒を見るのは厳しいし、
いまやおれたち三人も加わってる。
でも、おれ達はそこまでこの世界に対して困っていない。
戦闘においても、まあまあ戦えている。
一見そんなことは出来なさそうな女の子二人も含めてな」
('A`)「確かに」
(´・ω・`)「はい」
(´・_ゝ・`)「おそらくだが、
彼女の中に会ったプランが砕け散ったんだろうな」
('A`)「プラン?」
(´・_ゝ・`)「この世界を生き抜くためのプラン。
リアルに戻るまでの間、無事に生き抜くためのプラン。
流石におれ達やあの二人を奴隷のように扱うつもりはなかったと思うけど、
自分のそばにいて、頼れる人をつくるためのプランがさ」
('A`)「あの二人がいるじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「ドクオはお子ちゃまだなー」
('A`)「ここでそれ?」
(´・_ゝ・`)「ショボンは分かってるみたいだぞ」
('A`)「え?」
ドクオが横にいるショボンを見ると、
彼はデミタスの顔を悲しげに見つめていた。
(´・_ゝ・`)「別に言っちゃまずいことじゃないだろ?」
(´・ω・`)「そう……ですね」
('A`)「?」
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(´・_ゝ・`)「あの二人、ビコーズとゼアフォーは、
口ではミセリを守るとか言ってるし、
実際戦闘では彼女の前に立って戦おうとするけれど、
精神面では完全に彼女に依存している」
('A`)「!」
(´・_ゝ・`)「『姫を守る!』なんて使命を、
リアルの世界では使わない言葉を口にして、
自分で勝手にこの『ゲームの世界』に目的をつくって、
自分の置かれたこの現実をどこか架空のものとして、
心を、精神を保っているんだと思う」
('A`)「そんな……。
しょ、ショボンも同じ意見なのか?」
(´・ω・`)「……うん」
('A`)「そんな……。
み、ミセリは?」
(´・_ゝ・`)「彼女はその点に関しては冷静だよ。
二人が自分に依存していることも理解しているだろうし、
自分がその役目を放棄したら二人がどうなるかわからないから、
基本的には今の状態を維持している」
デミタスの言葉を聞いてから、
ショボンの顔を覗き見るドクオ。
ショボンはその視線を感じ、
無言で頷いた。
(´・_ゝ・`)「けれど、このままじゃ彼女は誰にも、
ビコーズとゼアフォー、どちらにも頼れない。
だからドクオ、お前にコンタクトをとったんだろうし、
更に頼りになりそうなショボンや、
この思いを理解してくれそうな女の子二人、
ツンやクーと『仲間』になりたいって思ったんだろう」
.
-
('A`)「ミセリ……。
それならそれで、もっと素直に……」
(´・_ゝ・`)「なれなかったんだろうな」
('A`)「なんで!?」
(´・_ゝ・`)「だってお前たち、
ほんとに仲良いだろ?
五人の仲間の中に飛び込むのって、
かなりきついぞ?」
('A`)「!」
デミタスの言葉に息をのむドクオ。
自分自身リアルの世界では社交的でないことを自覚している彼は、
今までそれに思い至らなかった自分に驚愕した。
('A`)「そう……ですね……」
(´・_ゝ・`)「……βテストで戦闘を続けていたプレイヤーなんて、
九割コアなプレイヤー。ゲーマーでヘビーユーザーだろ。
んで、まあ人見知りも多いよな。
そのうえこんな命のやり取りをするような世界で、
五人で固まってる、リアルからの友人達に飛び込むなんて、
なかなかしづらいだろ」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
まじまじとデミタスの顔を見る二人。
その視線に気付き、デミタスは照れたように笑った。
(´・_ゝ・`)「ま、おれも昔は人のこと言えなかったから言えることだけどな。
それに、今の彼女の気持ちが少し分かる気もする。
そして、お前たちが分からなくても仕方ないってことも分かる」
.
-
('A`)「?」
(´・ω・`)「 」
(´・_ゝ・`)「おれとミルナは、自分の精神を制御できなくて、
この世界の事が信じられなくて、
自分がこの世界に閉じ込められたことに心がついていけてなかった。
昨日話したけど、おれとミルナが喧嘩したのだって、
余裕がなかったからだと思う。
あそこでシャキンに会えなかったら、
おれ達のどちらか、もしくは二人とも、死んでいたかもしれない。
おれとミルナは、シャキンに救われたんだよ。
今も、シャキンと一緒に居たから、お前たちに会えたんだしな」
にやりと、
それこそ余裕を感じさせる笑みを見せるデミタス。
(´・_ゝ・`)「だから、だれにも頼れない思いとか、
それに気付かないで右往左往している思いとかが、
……今の彼女の思いなんてのが、
少しだけわかる気がする」
デミタスの思いを聞き、
何も言えなくなった二人。
特にドクオはあの日の事を、
あの教会でのことを思い出し、
あの時のショボンの言葉を思い返していた。
(´・_ゝ・`)「で、どうするんだ?ショボン」
(´・ω・`)「え?」
(´・_ゝ・`)「考えてはいるんだろ?」
.
-
(´・ω・`)「……素は出せてもらえましたが、
今のままでは彼女は僕達に対して
素直に思いを口にしてはくれないと思います」
(´・_ゝ・`)「うん」
(´・ω・`)「彼ら二人の連携が僕らの連携よりも精度が高くなることが、
彼女が落ち着いて僕たちと向き合ってくれるきっかけになるのなら、
それを待つのも良いかと」
(´・_ゝ・`)「具体的には?」
(´・ω・`)「昨日の食事の時に話した『はじまりの街』でのクエストを、
明日やりに行きませんか?
帰りは夜になりますから、二日間ホルンカから離れることになります」
(´・_ゝ・`)「その間に、二人には頑張ってもらうと」
(´・ω・`)「はい。
クエストに関しては、
無事に三人が行うことが出来た後に、
彼女達にも教えることを考えています」
('A`)「……バグレベルだから、
すでに対処されてるかもしれないからな」
黙って二人の会話を聞きつつあの日の事を思い返していたドクオが口を開いた。
('A`)「とりあえずはデミタスさん、シャキンさん、ミルナさんでやってみて、
まだ可能だったら教えるって方向でいいと思う。
その後で修正が入るかもしれないけど、
そこら辺は運ってことで我慢してもらおう。
あのクエストは五人でも多すぎたくらいだから、
指示要員でショボンが部屋に入ることを考えると、
三人ずつ二回に分けた方が良いだろ」
(´・ω・`)「シャキンが居ればできると思うけどね」
(´・_ゝ・`)「後ろにいて指示を出してくれ」
(;´・ω・`)「は、はい。わかりました」
.
-
三人が喋っている間に、ミセリ達三人は再度熊退治に隣のエリアに移動していた。
それに三人が気付き、慌ててミセリ達を探す。
戻る時間を考慮するとそろそろ村に向かう時間であったために三人はやってきていたのだが、
結局ミセリ達とともにホルンカに戻ったのは、
日が落ちる寸前、暗闇がホルンカを包む少し前だった。
.
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三人が喋っている間に、ミセリ達三人は再度熊退治に隣のエリアに移動していた。
それに三人が気付き、慌ててミセリ達を探す。
戻る時間を考慮するとそろそろ村に向かう時間であったために三人はやってきていたのだが、
結局ミセリ達とともにホルンカに戻ったのは、
日が落ちる寸前、暗闇がホルンカを包む少し前だった。
.
-
次の日の朝。
ミセリ達三人に見送られて八人ははじまりの街向かった。
無事に街にたどり着いた八人は、
ショボンの提案したやり方と順序でクエストをこなしていく。
その結果、五人程ではないが満足のいく結果を得ることが出来た。
三人のスキルスロットは二つずつ増え、
手にはスキルの熟練度を保存することができるアイテム、
《カレス・オーの水晶瓶》が二つずつ握られている。
その他のクエストもこなし、情報を整理した頃には夕闇が街を包んでいた。
予定通りその日ははじまりの街にとどまり、
次の日の朝安い道具屋でアイテムを購入した後、
ホルンカへと向かう。
予定通り。
ショボンも、シャキンも、ドクオも、
ホルンカへの道すがら、
八人誰もがそう思っていた。
.
-
以上、本日の投下を終了します。
おつと感想、ありがとうございます。
2016初投下でした。
そろそろ二十話は前後編にするべきだったかと思ったりもしておりますが、
この回は1話にしたかったので、このやり方で投下を続けさせてもらおうと思っております。
ということで、まだ続く二十話。
多分次くらいが佳境です。
また、よろしくお願います。
ではではまたー。
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乙
ここで切るのか・・・やらしいなー、続き気になるぜ
-
おつおつ
-
乙乙
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なんだなんだ不穏だな
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おつ
-
おつおつ
-
おつおつ!
-
どうもこんばんは。
それでは、投下を始めたいと思います。
今日もよろしくお願いします。
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8.流星
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はじまりの街へと出発した八人を見送るミセリ達三人。
ミセ*゚ー゚)リ「なんか怪しいのよね。
戻ってきたら吐かせないと」
ショボンとシャキンの後姿を見ながら呟くミセリ。
( ∴)「姫、どうかしましたか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ううん。なんでもない」
右隣に立っているゼアフォーが顔を覗き込んでくる。
それに満面の笑顔で返した。
ミセ*゚ー゚)リ「さ、今日も頑張ろう!
明日戻ってきた時に、驚かせちゃおうね」
(*∴)「はい!頑張りましょう!」
頬を赤らめながら答えるゼアフォー。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、まずはまた昨日の場所にいこっか。
あんまり効率よくないから、今この村にいるような人達は行かないだろうし」
( ∴)「は」
( ∵)「姫!」
ゼアフォーが元気よく答えようとした声にかぶせるように、
左隣に立つビコーズがミセリを呼んだ。
ミセ*゚ー゚)リ「なになに?どうしたの?」
二歩前に歩き、
両手を腰に当てて踊るように半回転するミセリ。
緩いウエーブのかかった髪の毛が柔らかく揺れた。
ミセ*゚ー゚)リ「なに?」
.
-
ビコーズの顔を見るミセリ。
可愛らしく微笑むことを忘れない。
( ∵)「きょ、今日はもっと先まで行ってみませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「先?先って?
でも、スイッチの精度も上げたいなって思うんだけど……」
( ∵)「先といってもそれほど先じゃなくて、
昨日のエリアの少し先の丘まで!」
ミセ*゚ー゚)リ「あそこの先?
あの先ってことは次の町とも外れて……」
( ∴)「!星見の丘!」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、あそこか!
懐かしいね。ほんとの名前なんだっけ」
( ∴)「丘には名前はなかったような」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだったそうだった!
それで、勝手に名前付けたんだよね。
夜に行くとちょうど真上に二層の底にある何かが光ってて、
北極星みたいで。
そうそう、思い出した!
懐かしいなー」
( ∵)「いかがでしょう!」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん。どうしよう。
行きたい気はするけど、スイッチの練習もしたいし。
それにお昼に行っても普通の丘だしなー」
( ∵)「夜はまだ危険です。
それに、βの時と変更がないかを見ておくのも良いかと」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん。
でもなー」
.
-
( ∴)「ビコーズ、今の我らにあそこまで行ける力が無いわけではないが、
危険は回避した方が良い」
ミセ*゚ー゚)リ「危険?
あ、そっか。あそこは角熊がでるのか」
( ∴)「はい。
基本は熊よりすこし強い程度ですが、
時折二匹一度に出てきます。
同時攻撃はしてこないと思いますが……」
ミセ*゚ー゚)リ「うん。二匹出てきたことあった。
一人でも倒せたけど、ちょっと怖かったな」
( ∴)「はい」
( ∵)「ですが、我らなら戦えます!
本当なら熊一匹くらい、一人で倒せる実力があります!」
ミセ*゚ー゚)リ「それは分かってるけど、この先もあるし、
折角三人で動いているんだから、
スイッチも練習しないと」
( ∵)「それはそうですが……」
ミセリの言葉に納得しつつも不満を隠そうとしないビコーズ。
ミセリとゼアフォーはその様子を見て不思議に思いつつも、
互いの顔を見て言葉を交わさずにそれぞれ思案した。
( ∴)「ビコーズ、とりあえず昨日のエリアまで行こう。
もちろんスイッチの練習をしつつ。
姫、そこまでの道すがらスイッチの練習を行い、
その状況に応じて星見の丘に行くかどうかを決めるのはどうでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだねー。
ここで悩んでても時間の無駄だし。
まずはあそこまでいこっか」
.
-
( ∴)「ビコーズ、それで良いか?」
( ∵)「ああ!よし!行こう!」
ゼアフォーの提案に表情を明るくするビコーズ。
「頑張るぞ!」などと気合を入れながら剣を振るビコーズを見て、
ミセリとゼアフォーは苦笑いを浮かべた。
スイッチの練習をしつつ向かう森の中。
三人は昨日とは違う手ごたえを感じていた。
ミセ*゚ー゚)リ「(なんだろう。今日はすごく動きやすい感じ。
これならあいつらよりも……)」
三人は気付いていなかったが、
昨日までのほんの少しの遅さやタイミングの遅れは、
ビコーズが原因だった。
アバターの体から現実の自分の体のサイズに戻ったことによる手足の長さのずれ。
それはβテスト時代と同じ戦い方をしようとすると、
タイミングや微妙なずれを引き起こしていたのだった。
前まで一歩踏み込めば届いていた短剣が、
今は大きく一歩、あるいは二歩踏み込まなければ攻撃を与えられなくなっている。
空振りをするようなことはないが、その『ずれ』は確実に影響していた。
余談だが、それはドクオにも同じことが言えた。
しかし彼は最初の戦闘で、
後ろに親友を連れてはじまりの街からホルンカの村へ向かう
その最初の一歩で狼と戦った際にそれに気付き、
すぐさま修正をした。
.
-
βテスト時代は、大きな身体に片手剣と盾を持って戦っていた彼だったが、
今の体になってからは小柄な体を活かす戦い方に変えていたのだ。
そして彼は、その戦い方が自分に適していることを認識し、
この数日は何の戸惑いもなく戦闘を行っていた。
話をビコーズに、ミセリ達三人の戦闘に戻そう。
今日、ビコーズは昨日よりも少しだけ急いでいた。
前に、前に、という思いが、踏み出す一歩を早くし、
大きくし、時に二歩進み、その結果βテスト時代と同じ戦闘能力を得ていた。
( ∴)「(そうか……。
ビコーズは手足の長さが変わったのか。
今までなら少し早めのタイミングが、ちょうどよくなっている。
あとで教えてやらねばな)」
ゼアフォーは、ビコーズの復調の理由は分からずとも、原因に気付いた。
そしてビコーズの復調は、ゼアフォーの中にあった迷いを少しだけ取り除いた。
( ∴)「(おれも負けてはいられないな。
もっとがんばらないと)」
ゼアフォーの中の『迷い』。
それはこの世界に囚われた事でも、
モンスターとの戦いでHPが無くなったら自分が死んでしまう事でもない。
もちろん最初はそれもあった。
だが今は、それ以上の思いで心が埋められていた。
ミセリへの恋心。
アバターの頃よりも今の方が好きだった。
『姫』である彼女よりも、『ミセリ』である今の彼女の方が好きだった。
それは自分が置かれた現実からの逃避から生まれた恋かもしれない。
けれど彼は、その『恋心』によって今を生きていた。
.
-
そしてその恋心は彼の動きを狂わせた。
ミセリとのコンビネーションにおいて、
早く彼女を守りたい、できれば彼女を戦場に出したくない、
そんな心が彼の動きを狂わせ、タイミングをずらしていたのだ。
だが目の前でミセリと呼吸を合わせ始めたビコーズを見て、
自分も彼女とあんなふうに戦いたいと思っていた。
そして三人は、
昨日とは違う戦いを、
それはβテスト時代よりも高度な戦い方を身に付けることができた。
.
-
( ∵)「姫!これならば!」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!凄かった!
昨日とは全然違ったよ!」
( ∴)「互いの足りない部分を補い、
且つ長所を伸ばす戦い方が出来た気がします!」
( ∵)「おお!」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!ほんと!
凄くよかった!全く負ける気がしなかったもん!」
昨日拠点とした、モンスターの出ない安全エリアにやってきた三人。
予定よりも早く付けたこともあり、
三人は少し興奮気味だった。
( ∵)「で、ではこの奥の」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだね。
まだ時間も早いし、
行ってみちゃおっか」
( ∴)「そうですね。
三人共『隠蔽』を入れてますから、
熊型の敵ならいざとなれば隠れてやり過ごせるでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「だよね。
それに、一匹くらいならいけそうだし」
( ∴)「ええ。一匹なら大丈夫でしょう」
.
-
( ∵)「二匹でも行ける!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズったらもう」
( ∴)「まずは一匹を倒してみてだ」
( ∵)「なんだよノリが悪い」
ミセ*゚ー゚)リ「でもゼアフォーも顔がにやけてるよ」
(*∴)「そ、そんなことは」
頬を赤くして口がにやけるのをおさえたゼアフォーを見て、
ミセリとビコーズが声を上げて笑う。
そしてゼアフォーも笑い出した。
.
-
最初に遭遇した角熊は、一匹だった。
ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォー!」
( ∴)「ビコーズ!」
( ∵)「おう!」
横から現れた角熊に対して一番近くにいたミセリが攻撃を与え、
続くゼアフォー、ビコーズと、剣技を盛り込んだ攻撃を与える。
ミセ*゚ー゚)リ!
( ∴)!
( ∵)!
その戦いは見事としか言いようがなかった。
通常攻撃と剣技を繰り出し、
呼吸のかみ合った攻撃の連鎖は角熊を翻弄し、
自分たちのHPを減らすことなく倒した。
その結果は三人の心を更に高揚させた。
ミセ*゚ー゚)リ「すごいよ二人とも!」
( ∴)「姫!ビコーズ!」
( ∵)「おおおおおおおおおお!」
一夜による成長。
実際は昔よりも少し連携がうまくなっただけなのだが、
前日の微妙な攻撃のズレと初心者に負けていると勝手に思い込んでいたため、
今の自分たちが『成長』したと思ってしまっていた。
そしてそれはさらに加速する。
.
-
( ∵)「とりゃ!」
ミセ*゚ー゚)リ「とう!」
( ∴)「はっ!」
ビコーズの素早い短剣の振り。
ミセリの技巧を駆使した短刀の冴え。
ゼアフォーの堅実な片手剣の攻撃。
その三つが角熊を翻弄し、
確実にポリゴンへと変えていく。
合計四つのエリアで一匹ずつ角熊を倒した頃には、
『戦う事』が楽しくさえなっていた。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「あるーひ」
( ∵)( ∴)「あるーひ」
ミセ*゚ー゚)リ「もりなの、なか!」
( ∵)( ∴)「もりの、なか!」
ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまに」
( ∵)( ∴)「つのぐまに」
ミセ*゚ー゚)リ「であぁった!」
( ∵)( ∴)「でああった!」
ミセ*゚ー゚)リ「ほしみのおーかーへーのみちー」
( ∵)( ∴)「つのぐまに、であーあったー」
ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまの!」
( ∵)( ∴)「つのぐまの!」
ミセ*゚ー゚)リ「ゆうことにゃ」
( ∵)「いうことにゃ!」
( ∴)「おひめさん」
( ∵)「おにげなさい!」
ミセ*゚ー゚)リ「いいおわるまえにー。
ソードスキルをおみまいしたー!」
ミセ*゚―゚)リ( ∵)( ∴)「ららららーらーらーらーらー。
ららららーらーらーらーらー」
.
-
こんな替え歌をうたいながら森を歩くほどには、
気分が高揚していた。
.
-
それでも注意を怠っているわけではなく、
エリアの移動の際には周囲を確認しながら、
細心の注意を払って少しずつ前へと進んでいった。
ミセ*゚ー゚)リ「ストップ」
細い道を両脇に分かれ、
茂みの中を進んでいく三人。
前方をミセリとビコーズ、
後方をゼアフォーが見張っていた。
そして左に九十度曲がる道の手前で、
ミセリが停止を告げた。
( ∴)「敵ですか?」
( ∵)「ああ。二匹いる」
ミセ*゚ー゚)リ「二匹か……」
ミセリの視線の先にいる角熊。
そしてその後方15メートルほど先にも、角熊がいた。
ミセ*゚ー゚)リ「もう少し奥に行って『隠蔽』スキルを使えばやり過ごせるかな」
( ∵)「ひ、姫。やってみませんか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「一匹目と二匹目の間は15メートル以上あります。
前の角熊を今までの調子で攻撃すれば、
二匹目が接近する前に倒せるかと」
ミセ*゚ー゚)リ「んー」
( ∴)「計算上は出来そうだが」
.
-
( ∵)「それに、一匹目をやり過ごした後に二匹目に見つかった場合、
前後から挟み撃ちされる可能性があります」
( ∴)「……うむ……」
ミセ*゚ー゚)リ「それは一理あるかも」
( ∵)「では!」
( ∴)「一つ、気になる点が」
ミセ*゚ー゚)リ「なに?」
( ∴)「後ろの角熊の角、今までと色が違ってます」
( ∵)!!
ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ほんとだ。
今までのは熊の地肌?色だったけど、
あいつは赤いね」
( ∴)「はい。もしあれが今までよりも強い敵の印だったら……」
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと怖いね」
( ∵)「な、ならば、なおさら先の角熊を倒して、
一対三の状況にした方が良いのでは?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∴)「ビコーズ?」
( ∵)「先の角熊を速攻で倒し、
落ち着いて次の赤角熊と戦闘。
一対三ならば、形勢不利な時には逃げ出すことも出来るのでは」
ミセ*゚ー゚)リ「それはそうだけど……」
( ∴)「だが……」
.
-
( ∵)「強いにしろ、変わらないにしろ、
何かしらの情報を掴むことが出来れば、
あいつらに教えてやることもできます」
ミセ*゚ー゚)リ「……そう……か。
うん。そうだね。
でも、ちょっとでもまずいと思ったらすぐ撤退するからね」
( ∵)「はい!」
ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーも良いかな?」
( ∴)「……はい。わかりました」
ミセリに問われ、少しだけ躊躇しつつも戦闘を受け入れたゼアフォー。
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ、一匹目の角熊がこの角に入った瞬間、私が出……」
( ∵)「ひ、姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの?」
( ∵)「こ、今回の最初の一撃はおれにやらせてください」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「先ほどの戦闘で少し思いついたことがあったので、
それをやってみたいのです」
( ∴)「ビコーズ、それは次の戦闘に取っておけ。
今回の戦いは出来るだけ早く倒せねばならない以上、
あまり不確定要素を入れるわけにはいかないだろ?」
( ∵)「は、早くやらないと忘れてしまいそうなんだ!
タイミングの問題もあるから、思いついたときにやってしまいたい!」
( ∴)「だが、」
ミセ*゚ー゚)リ「勝算はあるんだよね?」
.
-
( ∴)「姫?」
( ∵)「はい!初撃に使えると思うので、
スイッチのタイミングを乱すこともないです!」
ミセ*゚ー゚)リ「分かった。じゃあやってみよう」
( ∴)「姫!?」
ミセ*゚ー゚)リ「もしビコーズが失敗したら、
私達でフォローしよう。
二人でちゃんと見られる方が、
フォローもしやすいだろうから。
それに、思いついたことを早く試したいのは私も一緒だし」
( ∵)「姫!」
( ∴)「姫……」
いたずらっ子のように笑ったミセリ。
ビコーズは満面の笑顔で返し、
ゼアフォーは呆れたように肩をすくめた。
ミセ*゚ー゚)リ「さ、来るよ。
頼んだからね。ビコーズ」
( ∵)「はい!」
茂みの中で武器を構えるビコーズ。
まっすぐに、強い瞳で角熊を見据えている。
ミセリとゼアフォーももちろん武器を構えて角熊を見ていたが、
二人とも視界の中にビコーズが入り、
何をするのか興味を持ちつつ見守っていた。
( ∵)!
気合を入れ、茂みを飛び出すビコーズ。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「!(ビコーズ!?)」
( ∴)「!(まだ早い!)」
茂みに隠れていた状態から戦うことのメリットは、
言うまでもなく奇襲である。
相手が自分に対して警戒していない状態、
自分を認識していない状態、
攻撃なり防御なり、何かしらの『構え』を相手がとる前に攻撃を与えること。
しかしビコーズの出たタイミングは微妙だった。
いや、明らかに早すぎと言ってもよかった。
事実、ビコーズが角熊に攻撃を繰り出せる範囲まで近付いたとき、
既に角熊はビコーズを認識し、威嚇していたのだから。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
( ∴)「あのバカ!」
茂みから飛び出す二人。
対応を間違えなければ、ビコーズが倒されることはない。
多少の傷は負うと思うが、
それだけのレベル、HPと防御力は持っている。
だが今日はほとんど攻撃らしい攻撃を受けず、
しかも速攻で敵を倒してきた三人にとって、
いや、ミセリとゼアフォーにとって、
ビコーズが攻撃を与えられHPを削られ姿をただ見ていることはできなかったのだ。
しかし、二人の予想した未来は起きなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「うそ……」
( ∴)「……ビコーズ」
.
-
角熊の振り上げた手が、ビコーズを狙って振り下ろされる。
しかしその手はビコーズに当たらなかった。
角熊の手が当たる前に、斜め上に跳躍したビコーズ。
そして木の幹を蹴り、更に斜め上へ、
角熊の頭上へと跳躍した。
( ∵)「はっ!」
そして体を捻りながら短剣を閃かせ、
角熊の後頭部を攻撃した。
ミセ*゚ー゚)リ「足りない跳躍力を、
木を蹴ることで、二段跳びすることでカバーするなんて」
( ∴)「タイミングが命。
早ければジャンプしたところを狙われてしまう。
相手が攻撃を繰り出した瞬間に跳躍することに意味があったんだ」
思わず解説者のようにビコーズの動きを説明する二人。
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも、あんなこと出来るなんて」
( ∴)「β時代、角熊サイズの敵ならば、
レベルが上がってポイントを振れば、
通常のジャンプで頭を狙うことも可能でした。
私やゼアフォーは体のサイズからあまりそういったことはしませんでしたが、」
ミセ*゚ー゚)リ「私はよくやってた」
( ∴)「ええ。
ビコーズはそれをおぼえていて、
今の体のサイズならばその戦い方が向いていると思ったのかもしれません」
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「私と同じ戦い方ってこと?」
( ∴)「そこまでは……。
ただ、今までの……β時代の戦い方ではなく、
今の体に適合した戦い方を探し始めているのかもしれないです」
ミセ*゚ー゚)リ「……負けて、いられないね」
( ∴)「はい」
二人が話している間も、ビコーズの戦いは続いていた。
角熊「ぐをおおおおおおお!」
後頭部を攻撃され、悲鳴を上げる角熊。
角熊の背中側に着地したビコーズは、
そのまま背中に攻撃を与える。
( ∵)!
気合を込めて、通常攻撃を四回。
角熊の背中に四本の線を引き、バックステップで距離をとる。
怒りに染まった角熊が後ろを向こうと体を反転。
そしてその動きを冷静に観察し、
回転に合わせて走り出す。
それは角熊が闇雲に振り回している手の死角を縫うような動きだった。
ミセ*゚ー゚)リ「(ドクオくんの動き……)」
そしてもう一度跳躍。
実際には死角を選んでの移動はできていなかったが、
角熊の予期していない行動をとることには成功した。
( ∵)!!
.
-
再び木の幹を蹴って角熊の頭上に跳躍する。
そして今度は角と頭の境目を狙うように短剣を一閃した。
角熊「ぎゅがぎゃあああああああああ!」
今までに聞いたことのないような雄叫びをあげる角熊。
その一撃で、HPは大幅に減った。
( ∵)「姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「!う!うん!!」
着地する前にミセリを呼ぶビコーズ。
駆けだすミセリ。
ビコーズは視界の隅でそれを確認しつつ、
着地と同時に短剣を光らせた。
( ∵)「はっ!」
光る短剣を突き出して、
角熊の脇腹に向かって駆けるビコーズ。
剣技による二連撃は、
先の角に向けた攻撃以上にHPを削り、
角熊のHPバーを黄色に変えてさらに削った。
( ∵)「スイッチ!」
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
角熊を攻撃して駆け抜けたビコーズ。
技後の硬直を起こした彼に向かって角熊が手を振り上げた時、
ミセリの通常攻撃が角熊を襲った。
角熊「ぎゅるうがぁるあぁあああああ!」
.
-
きーてーたー
この作品が大好きです
-
ミセリの短刀が深くその体を傷つけ、
雄叫びをあげて攻撃目標をビコーズからミセリに変える。
しかしそのときすでにミセリの体は位置を変え、
角熊の体を攻撃していた。
角熊「!!!」
怒りに任せ両手を振り回す角熊。
その手を避けて攻撃を繰り出すミセリ。
短刀が、輝きを放つ。
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
( ∴)「はい!」
ゼアフォーが駆けだすのと、
ミセリの短刀が角熊を攻撃したのはほぼ同時。
ビコーズと同じ二連撃が角熊のHPを大きく削り、
HPバーを赤に変える。
攻撃の流れを殺さずに離脱したミセリを追って体を動かす角熊。
生まれた隙に、その無防備な身体に片手剣を、
アニールブレードを突き立てるゼアフォー。
絶叫をあげる角熊から離脱し、
先の二人のように武器を光らせるゼアフォー。
そして彼は、
自分を攻撃目標にした角熊に向かって剣技を放った。
.
-
ポリゴンへと変わる角熊。
ビコーズの初撃から数分の間の激闘は、
レベルによる補正があるとはいえ、
彼らの戦闘能力の高さを物語っていた。
そしてその立役者であるビコーズが、
今回の戦いの隠れた目的であったその敵に向かって駆けだしたのも、
仕方ないことだった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」
( ∴)「ビコーズ!?」
一匹目を倒したことを喜ぶ間もなく二匹目に向かって武器を構えた三人だったが、
何の打ち合わせもなく駆けだしたビコーズに驚き、
名を呼びながらその後を追った。
( ∵)「やらしてください!」
さらに加速するビコーズ。
( ∴)「ったく!調子に乗って」
ミセ*゚ー゚)リ「気を付けて!」
先ほどの先制攻撃。
それに気を良くしたビコーズが再びアレを狙っている。
二人はそんな風に思っていた。
更に、
『たとえ赤角熊が角熊よりも強くても、
三人の連携があれば、
そこまで危険ではない』
戦況をそんな風に判断していたとしても、
仕方のないことだった。
.
-
βテスト時代、
各層にはモンスターの強さには上限があった。
もちろんフロアボスやエリアボス、
イベントボスに関してはその上限から大きく外れるが、
それでも目安があった。
更に言えばここはまだ一層。
はじまりの街から少し離れているとはいえ、
序盤も序盤のエリア。
そこまで強い敵は出てこないと考えていたとしても仕方がなかった。
そして、強さにおいては三人の推測は間違っていなかった。
そう、モンスターの『強さ』においては。
( ∵)「とりゃああああああっ!」
赤角熊が自分に突進してくるビコーズに気付き、
両手を上げて攻撃の予備動作に入る。
( ∵)「とうっ!」
先程と同じように赤角熊の横の樹に向かって跳躍するビコーズ。
( ∵)「はっ!」
そして樹を蹴ってさらに高く飛び上がる。
赤角熊「!」
ビコーズを目で追う赤角熊。
通常の角熊よりも動体視力が上がっているのか、
その動きに対応していた。
しかし動きの速さは変わらないようで、
攻撃には移れていない。
( ∵)「とうっ!」
.
-
赤角熊の頭の上に到達したビコーズは、
笑顔でその赤い角めがけて短剣を振り下ろした。
赤角熊「 ――――!!!!!!」
声にならない雄叫びをあげる赤角熊。
そしてそのままポリゴンと化した。
ミセ;*゚ー゚)リ「ええっ!?」
(;∴)「え!?なんで!?」
( ∵)「よしっ!」
驚いて動きを止めてしまうミセリとゼアフォー。
攻撃を繰り出したビコーズは体勢を崩すことなく着地した後、
大きく腕を上げて喜びをあらわしている、
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」
( ∴)「今のは一体!?」
( ∵)「はっはっは」
どこか芝居染みた、けれど誇らしげに笑うビコーズに駆け寄る二人。
( ∵)『独自のルートで情報を仕入れたんで試したかったんだ。
『赤い角の熊は、最初の一撃を角に与えることが出来ればそれで倒せる。
しかもレア武器が手に入る』ってね」
ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ……」
( ∴)「いったいどこでそんな」
( ∵)「ソースは教えられないけど、これからも仕入れてくるよ」
.
-
ニヤニヤ笑いながら、ウインドウを開くビコーズ。
( ∵)「さあって、どんなレアな武器が手に入ったのかなー。
……ん?『赤い角』?
アイテムで武器じゃないし、レア武器は確率なのかな」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
( ∴)「ビコーズ、情報の出どころは詮索しないが、
得た情報はちゃんと共有してくれ。
特に戦闘に関しては……」
( ∵)「分かってるって。
今度からはちゃんと報告するよ。
今回は初めてのネタだから、まずはやってみたかっただけだよ。
うまくすれば姫にレア武器を献上できたからな」
ゼアフォーに向かって笑いながら謝罪した後、
ミセリに向かって真面目な顔で片膝をついてしゃがんだ。
( ∵)「申し訳ありません姫。
お心を乱した上、
レア武器を献上できませんでした」
ミセ*゚ー゚)リ「……もう」
芝居がかったセリフを吐き、ミセリを見上げるビコーズ。
その笑顔を見て、ミセリは呆れつつも笑顔で返した。
.
-
「逃げろ!」
.
-
独断先行ではあったが無事にモンスターを倒したことに変わりはないため、
ビコーズの謝罪で一息つこうとした三人に、
何者かの叫び声が届く。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
( ∵)「え?」
( ∴)「ん?」
声に驚いた三人が周囲を見ると、
自分たちを囲むようにポリゴンが現れた。
それはモンスターが出現する時に見られる空間の歪み。
デジタルの世界でのみ起こる、現象。
咄嗟に武器を構える三人。
普通の状態ならば間違ってはいないその行動も、
今は愚行に分類される。
「逃げるんだ!」
なおも聞こえる叫び声。
だが三人は動かない。
いや、動けなかった。
モンスターの出現を示唆するその現象は、
自分たちを囲むように起きており、
まるで逃げる隙など無いように思えていた。
「突っ込むんだ!
まだ間に合う!」
謎の声にまず我に返ったのはゼアフォー。
.
-
( ∴)「姫!ビコーズ!」
ポリゴンの状態は、
出現を示唆するだけであり、
まだそこに存在しているわけではない。
この状態ならばすり抜けることが可能だとゼアフォーは瞬時に判断した。
ミセリの手を取り駆けだすゼアフォー。
名前を呼ばれて我に返った二人も走り出す。
ギリギリではあったがポリゴンの隙間を狙って飛び出すことに成功した。
( ∴)「!」
だがその目の前にもモンスター出現前のポリゴンがあり、
それはすぐにモンスターの形に変化した。
「立ち止まるな!」
謎の声の言葉は正しい。
立ち止まらずに駆け抜ければ、
今の時点では、その先に敵はいなかったから。
出現したばかりのモンスターはまだ三人を認識しておらず、
その横をすり抜けることも可能であったから。
しかしそれに気付く冷静さを三人は持ち合わせておらず、
武器を構えるのが精一杯だった。
ミセ*゚ー゚)リ「な、なんなの!?」
( ∴)「何かのトラップが発動したのか!?」
武器を構えて目の前の角熊に向かって駆けだす二人。
( ∵)「ひ、姫!ゼアフォー!」
.
-
振り向いたビコーズ。
先程まで自分達を囲んでいたポリゴンが実体化し、
自分達に向かって攻撃の唸り声をあげていた。
ビコーズは短剣を構えてはいるものの、
五体の角熊を前にその剣先と足は震えていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
( ∴)「こいつを倒して先に進むぞ!」
( ∵)「ひ。ひいいいいいいいい!」
ゼアフォーが目の前の一体を攻撃し、
それにミセリが続く。
この一匹を倒して道をつくることに専念しようとしたのだが、
更にその後ろに二匹角熊が現れたことを確認し、
戦慄した。
ミセ*゚ー゚)リ「そんな……」
( ∴)「くっ」
「諦めるな!」
再び謎の声が聞こえた。
そしてその瞬間、影が横の森から飛び出す。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
ミセリとゼアフォーの前に立つ角熊の後方に回り込んだ影は、
片手剣を振った。
( ∴)「え?」
角熊の体に引かれる何本もの線。
その数えきれない線が斬撃を示すものだと思う前に、
角熊はポリゴンと化した。
.
-
「道はおれが作る!
後ろのやつをこちらへ!
アルゴ!」
「キー坊も結局お人よしだネ。
ま、これはしょうがないけどサ」
二人の目の前で、黒髪の少年が片手剣を構えて立っている。
そしてその横に、どこからともなく現れた、
顔に髭のような模様を描いた少女が並んだ。
(少年)「アルゴは左を。
無理な攻撃はしなくていい」
(アルゴ)「はいヨ」
角熊に向かって駆けだす二人。
( ∴)「あの二人は」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
いまだ何が起きているのか分かってはいない。
しかし前の二匹はあの二人に任せていいのだと咄嗟に判断したミセリが振り返った。
ゼアフォーもそれに続く。
(;∵)「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ……」
引けた腰で短剣を振り回しているビコーズ。
目の前にいる五匹の角熊は、
ビコーズを見てはいるもののまだ攻撃を繰り出してはいないようだった。
しかし赤い瞳でうなり声をあげるその姿に、
恐怖を覚えるのはミセリとゼアフォーも同じだった。
ミセ*゚ー゚)リ「目が赤い」
( ∴)「怒っているのか?」
.
-
動かない体の代わりに思考のみが回転する。
なんとかビコーズのそばに移動するが、
自分から戦闘を始める勇気が三人には無かった。
角熊「――――――!!!!!!」
三人に一番近くに立った角熊の突然の咆哮。
それはただの『声』ではなく、
直撃を受けた者が状態異常を引き起こす『攻撃』だった。
ミセ*゚ー゚)リ!
( ∴)!
( ∵)!
視界の隅。
自分と仲間たちのHPを示す三本のバー。
その名前の横に、
雷のようなマークが点灯したことに気付く三人。
それは、状態異常の印。
身体の動きが止められた『麻痺』を示す印。
自分の身体が動かなくなったことを知った三人。
目の前の角熊が攻撃を繰り出すモーションを始めた。
ミセ*゚ー゚)リ「う……そ……」
( ∴)「まだ……一層だぞ……」
( ∵)「ひ、ひ。ひ、ひ、ひ。ひひひひひ……」
.
-
実はこの麻痺の効果時間は二秒に満たない。
剣技後の硬直よりも短い麻痺の効果だった。
しかし、βテスト時代にもっと上の層でだが、
同じような敵の咆哮で麻痺を起こしたことのある三人は、
記憶の中のそれと同じものだと錯覚し、
身体を動かすことを放棄してしまっていた。
そして角熊の攻撃が三人を襲う。
ミセ* ー )リ!!!!!
( ∵)!!!
( ∴)!!!!
横殴りされ、横の樹の根元に吹き飛ばされる三人。
ミセ* ー )リ「がっ!!」
( ∵)「ぎゃあっ!!!」
( ∴)「ぐっ!!」
その一撃で半分以上のHPが削られ、
三人のHPバーの色が黄色に変わった。
(少年)「おまえら!」
既に一匹を倒し、二匹目の相手をしていた少年と少女が、
ミセリ達三人が攻撃されたことに気付く。
(アルゴ)「こっちは大丈夫ダ!
あいつらを!」
(少年)「……無理はするなよ!」
少女はその素早い動きで角熊の動きを翻弄し、
時折小さな攻撃を与えることで注意を自分に向けさせ、
攻撃は少年に任せていた。
.
-
だが少年を送り出した後は表情を引き締めて、
敵のHPを削るための攻撃を繰り出していった。
(少年)「(間に合ってくれ)」
駆けだした少年の目の前で、
一匹の角熊が狙いを定めていた。
狙いは、一番手前に倒れているミセリ。
ミセ;* ー )リ「あ…あ…あ…」
普段は気丈な彼女も、
目の前に迫りくる死の恐怖で満足に動くとが出来ないでいた。
ミセ;* ー )リ「や……あ……いや……」
(少年)「立ち上がれ!
逃げろ!」
少年の声に立ち上がるという体の動きを思い出し、
懸命に腰をあげようとする。
しかしそのときすでに、角熊は片手を振り上げていた。
ミセ;* ー )リ「いやーーーー!!!!」
振り下ろされる熊の左手。
顔を覆うミセリ。
そのミセリの身体が、
突き飛ばされる。
ミセ;*゚ー゚)リ「え?」
それは角熊の攻撃ではなく、
力強いが優しい衝撃。
ミセリの身体が角熊の攻撃動線から外れ、
彼女を突き飛ばしたゼアフォーが、
その攻撃を受けていた。
.
-
ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……?」
( ∴)
彼女の瞳に映る、
彼の笑顔。
背中に角熊の攻撃を受け、
その衝撃があるはずなのに、
ミセリを見て優しく微笑んでいる。
ミセリの視界の隅。
一本のHPバーが赤くなり、
そして光をなくす。
ミセ;*゚ー゚)リ「え……?」
大きく目を見開き、
ただ目の前の状況を見た。
ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……」
.
-
( ∴)「……ミセリ……す」
.
-
ミセリの目の前で、
ゼアフォーがポリゴンに変わった。
ミセ;* ー )リ「ゼ……ア……フォー……?」
彼女の名を呼びながら、
優しい笑顔で、
彼の形を成していたポリゴンが、
砕け散る。
ミセ;* ー )リ「 !!!!!!!!」
一瞬の間の後、
エリアにミセリの叫び声が響き渡った。
.
-
待ってた支援
-
以上、本日の投下は終了です。
いつも乙と感想、ありがとうございます。
それでは次回、『境界線』、またよろしくお願いします。
ではでは、また。
.
-
乙
-
乙
ゼアフォー死ぬの!?
ビコーズはどうなる!?
次も気になりすぎる
-
ゼアフォーマジかよおおおお
乙
-
乙乙
-
乙乙
-
おつおつ
-
そろそろ投下ないかなぁ
-
こんばんは。
遅くなりましたが、続きの投下をしたいと思います。
今回も、よろしくお願いします。
.
-
9.境界線
.
-
その後の事を、ミセリはよく覚えていない。
気付いた時には、目的地だった安全エリアで、一人うずくまっていた。
おそらくはあの時の少年と少女が助けてくれたのだと思われるが、
どうやってあの場所から逃げたのか、
あの時の敵は全部倒したのか、
あれはいったい何だったのか。
彼女は何も覚えていなかった。
気付いた時には朝日がエリアを照らしていた。
かすかに残る記憶の中で、
「ありがとうございました」
と、少女に向かって頭を下げていたことだけを覚えていた。
日の光がエリアを照らした時、
視界の隅にビコーズがいるのが見えた。
彼もうずくまり、
膝を抱え、
そしてずっと何か呟いていた。
けれど声をかける事も出来ず、
ぼんやりとその姿を見ていた。
視界の隅にメッセージの到着を知らせる印が点滅しても、
開く気にはなれなかった。
ぼんやりと、
目の前の景色を、
ただ、
ただ、
眺めていた。
.
-
昼になる少し前に、ホルンカに八人がたどり着いた。
予定では昼に入り口近くの広場で落ち合う予定だったが、
ミセリ達三人がいなかったため、
一度農家の二階に戻っていた。
( ^ω^)「ただいまだおー」
ξ゚⊿゚)ξ「ただいまっと」
ソファーに腰かけるブーンとツン。
川 ゚ -゚)「ツン、行儀が悪いぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
ソファーに身体を預けるツンと、
それをたしなめつつも同じ様に横に座るクー。
ここ数日で何度も見た光景に、
男性陣は苦笑した。
( ゚д゚ )「何も考えずに着いてきたが、
おれ達は宿屋に行かないのか?」
(`・ω・´)「おれもそう思ったんだけど」
(´・ω・`)「あ、実は話しておきたいことがあって」
(´・_ゝ・`)「話したい事?」
(´・ω・`)「実は」
シャキン達三人にソファーに座るよう促し、
ショボンが話しながら自分のウインドウを開く。
と、同時に三人の座るソファーの後ろでドクオが転んでいた。
(´・ω・`)「……ドクオ?」
( ^ω^)「お?どうしたんだお?」
.
-
しえん
-
('A`)「……いや、何でもない。
メッセージを打ちながら歩いてたら転んじまったよ」
頭を掻きながら立ち上がるドクオ。
苦笑いを浮かべつつウインドウを消す。
('A`)「ミセリにメッセージ打ってるから、
気にせず話を進めてくれ」
(´・ω・`)「うん」
( ^ω^)「ドクオもおっちょこちょいだおね」
('A`)「うるせー。
お前に言われたくねえっつーの」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ドクオは昔からおっちょこちょいでしょ」
('A`)「だからうっさいつーの。
ショボン、外で落ち着いてメッセージ送ってくるわ。
ついでにさっき話したアイテムも買ってくる」
(´・ω・`)「あ、うん。よろしく」
('A`)「んじゃ行ってくる」
部屋を出るドクオ。
階段を下り、
普段と変わらない足取りで農家を出る。
そして扉を閉めたと同時に駆けだした。
('A`)「嘘だろ……」
表情は硬く、強張っており、
その足取りはバランスが悪く、
ちゃんと走れていなかった。
('A`)「……ゼアフォー」
.
-
外へと向かって走ろうとするが足が思うように動かずつまずく。
('A`)「!」
土埃を巻き上げながら勢いよく転ぶドクオ。
('A`)「くっ……」
慌てて立ち上がろうとするが、
身体をうまく動かせなくて寝転んだままだった。
('A`)「はやく……」
泣きそうな顔をしたドクオの目の前に差し出される手。
('A`)「え?」
( ^ω^)
見上げた視線の先に、親友の笑顔があった。
('A`)「ブーン……なんで」
( ^ω^)「おっおっ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが何か隠してるのなんか、バレバレなのよ」
その横には、自分を見下ろす幼馴染。
口調はきついが、その表情はどこか悲しげだった。
('A`)「ツン……」
.
-
待ってました支援
-
(´・ω・`)「なにがあったの?」
その横にはもう一人の親友。
いつも下がっている眉が、
更に下がり悲しげに見える。
('A`)「ショボン……」
三人の顔をゆっくりと見回したドクオ。
呆然と三人を見ていた顔が徐々に悲しみに歪む。
('A`)「みんな……」
ドクオの手が、
ブーンの手を握った。
(`・ω・´)「ドクオが出て行ったあと三人が後を追ったのは驚いたが、
そういうことだったか」
少し離れた建物の陰で四人を見守っているシャキン。
その横にはクーがおり、後ろにミルナとデミタスが立っている。
呟いた後、横にいるクーをちらっと見る。
川 ゚ -゚)「私はドクオに対しては付き合いが浅い。
気付かなくても仕方がない」
その視線に気付いたのか、
冷静な声で呟くクー。
しかしその表情は悲しそうであり、悔しそうだった。
シャキンはその表情を見て、優しげにほほ笑んだ。
.
-
立ち上がったドクオ。
クーとシャキン達四人も駆け寄り、
ドクオを囲む。
('A`)「おれは、ミセリ達三人と『フレンド』になってるんだ」
右手を振り、ウインドウを出して操作をしているドクオを怪訝そうに見る7人。
ドクオは自分の『フレンドリスト』を画面に出した後、
自分以外にも自分のウインドウを見せることのできる『可視モード』にする操作をしようとするが、
動きが止まった。
そして自分を見る友人たちの顔をもう一度見てから、
操作をした。
('A`)「フレンドになれば、自分のウインドウの中に、
フレンドリストが自動的に作られる。
順番とかも自分で変えられるけど、
おれはまだ十人くらいだから何の操作もしていない」
ドクオのウインドウを覗き込むように全員が移動する。
その視線の先に自分達の名前を見つけた。
( ^ω^)「お?」
ドクオが画面を固定し、
ブーンが呟いた。
そして問いかける。
( ^ω^)「なんで『Therefore』だけ黒くなってるんだお?」
見知った名前が続く中、
『Therefore』が、
『ゼアフォー』の名前だけが、
他の名前に比べて黒くなっていた。
('A`)「……βテストの時は、
ログインをしていないプレイヤーの名前は、
こんな風に名前が暗くなっていたんだ」
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