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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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6.夏の空 男三人
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前方に見える白い建物。
その後方には突き抜けるような青い空。
そして白い雲。
夏の日差しが、降り注ぐ。
('A`)「あちい……八月ももう終わるっちゅーのに何だこの暑さは」
自転車を引っ張って歩道を歩く徳永。
周囲の芝生には、患者らしき人やそのお見舞いに来たであろう人達が、何人もいた。
('A`)「良い病院なんだろうけど……。
庭がもうちょっと狭いと良い」
ぼたぼたと落ちる汗を気休めに拭うと、後ろから声をかけられた。
( ^ω^)「ドクオー!」
振り返ると、親友の顔。
('A`)「うぃーっす」
( ^ω^)「だおー」
走り出そうとした内藤が、顔をしかめて歩きながら手を振った。
('A`)「まだ痛いのか?」
( ^ω^)「普通に歩くのは問題ないお。
でも走るのはまだちょっと違和感があるんだお」
('A`)「そっか……」
追いついた内藤が促し、病棟に向かう二人。
('A`)「今日も検査か?」
( ^ω^)「だお。ちょっと早く着いちゃったからそこのベンチでドーナツ食べてたら、
ドクオを見付けたんだお」
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('A`)「おまえ、最近太ってないか?」
( ^ω^)「お?そ、そんなことは……」
('A`)「ブーン?」
(; ^ω^)「ちょ、ちょっと」
('A`)「今までは食べた分全部走ってたから良かったけど、
今は走れないんだから、気を付けろよ」
(; ^ω^)「ツンにも言われたけど、難しいんだお」
('A`)「冬に向けて肥えるぞー」
( ^ω^)「大丈夫だお。気を付けるから」
('A`)「ま、俺から見れば太れて羨ましいけどよ」
( ^ω^)「ドクオは食べられないおね」
('A`)「飯は食べるけど、あんまり量がな。
こってりした物はそれほど得意じゃないし」
( ^ω^)「カルビとか美味しいのに」
('A`)「タンが良い」
( ^ω^)「お肉は何でも美味しいおね」
('A`)「結局そこに辿り着くのか」
( ^ω^)「お魚もお野菜も果物も美味しいお」
('A`)「お前なんでも食べるからなー」
( ^ω^)「カレーもシチューも味噌汁もお豆腐も牛乳もチーズも!」
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('A`)「はいはい」
( ^ω^)「白米もパンもナンも……」
('A`)「あ、納豆」
(; ^ω^)「ごめんなさい」
('A`)「おいしいのに」
(´・ω・`)「ブーンはにおいの強い物が苦手だよね」
('A`;)「うを!」
(; ^ω^)「おおっ!」
(´・ω・`)「こんにちは二人とも。
どうしたのそんなに驚いて」
病院の入り口の前までたどり着いた二人。
自動ドアの少し前で後ろから話しかけられ、慌てて振り向いていた。
('A`)「だから急に話しかけるなと何度も言ってるだろうが!」
(; ^ω^)「びっくりしたお」
(´・ω・`)「二人とも気付かないんだもん」
すねたような顔を見せる本城。
('A`)「いつからいやがった?」
(´・ω・`)「ん?『( ^ω^)「カルビとか美味しいのに」』の時くらいかな」
(; ^ω^)「ほどほどに前だお」
(´・ω・`)「さっさ、中に入った中に入った暑い暑い」
('A`)「誰のせいで止まってたと思ってるんだこの野郎」
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本城に促され、病院の中に入った三人。
柔らかな冷気が身体を迎えてくれ、表情を和らげる三人。
( ^ω^)「涼しいおねー」
(´・ω・`)「中で待ってればよかったのに。
飲食可能の待合スペースだってあるんだから」
( ^ω^)「おー。なんとなく外で食べるのもいいかと思ったんだお」
('A`)「最近は、涼しい風が吹くこともあるけど、木陰とはいえまだ暑かっただろー」
( ^ω^)「そうでもなかったお」
(´・ω・`)「なら良いけど」
( ^ω^)「お。そろそろ予約時間だから行くお。
今日は二人ともどうするんだお?」
('A`)「おれはかーちゃんの終わり時間までSAO」
(´・ω・`)「診察が終わる頃に来るよ。
宿題、まだ終わってないでしょ?教えるよ」
( ^ω^)「ありがとうだお!」
(´・ω・`)「ドクオはどうする?」
('A`)「…………理性が勝てたら二時間くらい早く現実に戻る」
(; ^ω^)「が、がんばれ」
(´・ω・`)「まったく」
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内藤が所定の検査室に向かい、本城と徳永は研究室へと向かう。
研究室エリアは通常のエリアと少し隔離されているため、
専用カードキーが無いと入ることは出来ない様になっていた。
('A`)「こんにちはー」
「俊雄君こんにちはー」
(´・ω・`)「こんにちはー。おじゃましまーす」
「あら祥大ぼっちゃん。こんにちは」
何人かいる職員にあいさつをしつつエリアに入る二人。
ほとんど人のいない廊下を、並んで歩いた。
('A`)「ブーンの足、まだ悪いのか?」
(´・ω・`)「外科的には完治してるって。
もちろん筋肉は落ちたけど、骨とか神経には異常は認められないって」
('A`)「でも、違和感があるって言ってたぞ」
(´・ω・`)「そう言ってるね。僕達には」
('A`)「?」
(´・ω・`)「担当医には、痛みがあるって言ってる」
('A`)「マジか」
(´・ω・`)「ぼくらには心配かけたくなくて『違和感』って言っているんだと思うけど、
医者には流石にちゃんと言ってるよ」
('A`)「だけど、異常は見当たらないんだろ?」
(´・ω・`)「うん。もしかすると、身体が痛みを記憶しているんじゃないかって言ってた」
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('A`)「身体が痛みを記憶?」
(´・ω・`)「時々あるらしい。
例えば怪我とか病気で右足を曲げると痛みが走る状態が続いたとするよね」
('A`)「ああ」
(´・ω・`)「それで怪我や病気が完治しても、身体は
『右足を曲げると痛みが走る』という事象と結果だけを覚えていて、
怪我や病気と言う原因が無くなっても、
『右足を曲げる』という事象が起きると、『痛み』という結果が引き起こすことがあるんだって」
('A`)「ブーンもそれだって?」
(´・ω・`)「分からない。
でも原因としては考えられるから、
今月を待っても痛みがひかないようなら麻酔治療も始めるって言ってた」
('A`)「そうか……。
なんか、あんまよく分かってないけど、ちゃんと治ってくれると良いな」
(´・ω・`)「うん。だね」
廊下を進む二人。
('A`)「……聞かないのか?」
(´・ω・`)「聞かない」
('A`)「聞けよ」
(´・ω・`)「懲りたから良い」
('A`*)「ホントに楽しいんだよー。
誰かに話したいんだよー」
(´・ω・`)「だから父さんもレポートだけで良いって言い出したのか」
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('A`*)「いやもうマジで楽しくってさ!!
こっちに戻ってきてもあの世界でのことしか考えられなくって!!」
(´・ω・`)「もーうーあーきーた」
('A`*)「そんなこと言わないで聞いてくれよー。
やっかまれるからゲームの知り合いとかにも話せないしさー」
(´・ω・`)「ちゃんと宿題終わらせなよ」
('A`)「いきなり現実に戻すなよ」
(´・ω・`)「はいはい。着いたよ」
('A`)「ん、じゃあまたな」
(´・ω・`)「あとでねー」
('A`)「……おれの理性が勝つことを祈っていてくれ」
大き目のドアの前で立ち止まる二人。
引きつった笑顔を見せた徳永が、広く横に開く扉を開けて、部屋に入っていった。
そして音も無く閉まるドア。
『ナーブギアのお部屋』
おそらくは自分の父親が書いたであろう、
妙に丸っこい文字で書かれたそれが扉に張り付けられているのを見て、
本城はため息をついた。
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以上、本日の投下は終了します。
乙と支援、ありがとうございます。
明日もこんな感じで投下できれば、
18話の投下は明日で終了できるかと思います。
ではではまた。
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乙した
記憶かーなるほどな
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これ読み始めてからアニメ見たけどこっちの方が断然面白かった 絶対に完結までたのむ
乙でした
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乙乙
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現実パートも面白いけど「朋美」の違和感が半端ない
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それでは、投下を始めます。
今日もよろしくお願いします。
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宜しく御願い致します!
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7.はじまりへの一歩 五人
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(´・ω・`)「結局ここで食べるのが恒例になったよね」
常林学園美ノ付高等学校生徒会室。
夏休みも開け、通常の授業が始まっていた。
内藤は夏休み中に支え無しで歩けるまでに回復していたが、
原因不明の痛みがあり、走ることは出来ないでいた。
そして、今日も五人は生徒会室で昼食をとっていた。
( ^ω^)「ゆっくりできるおねー」
川 ゚ -゚)「うむ。五人で食事するのは楽しいからな」
ξ□゚⊿゚)ξ「あら、久美子からそんな言葉が聞けるなんて」
川 ゚ -゚)「どういう意味だ?ん?」
ξ□゚⊿゚)ξ「友達絡みでそんな素直なことを言うなんて、珍しいなって思っただけよ。
自分でもそう思わない?」
川 ゚ -゚)「……うむ。そういえばそうだな」
( ^ω^)「僕もみんなと食べれて嬉しいお」
('A`)「みんなと?」
(´・ω・`)「みんなと?」
川 ゚ -゚)「みんなと?」
チラチラと内藤と宇佐木の顔を交互に見る三人。
(* ^ω^)「み、みんなとだお」
ξ*□゚⊿゚)ξ「な、なんで私の顔を見るのよ」
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('A`)「そういう事にしておいてやるか」
(´・ω・`)「しょうがないねぇ」
川 ゚ -゚)「まったく世話の焼ける二人だ」
ξ*□゚⊿゚)ξ「な、何を言ってるのよ三人とも!」
(* ^ω^)「おっお」
それぞれに繋がりがあったとはいえ、
五人は各々が各々に対して気の置けない関係になりつつあった。
川 ゚ -゚)「徳永は、まだあのゲームはやってるのか?」
('A`*)「SAOの事か?ああやってるぜ!この前もさぁ!」
川;゚ -゚)「あ、いや、感想は別に良いんだが」
('A`*)「そんなこと言わないで聞けよー。
この前フロアボス戦にも参加したんだけどさ!」
(´・ω・`)「捕まったね」
(; ^ω^)「捕まったおね」
ξ□゚⊿゚)ξ「久美子も迂闊ねー」
('A`*)「ラストアタックボーナスは取られちゃったんだけどさ、良いとこまでいったんだ!」
川;゚ -゚)「う、うむ」
(; ^ω^)「助けなくていいのかお?」
ξ□゚⊿゚)ξ「この前私が捕まった時に15分くらい助けてくれなかったから、15分は放置」
(´・ω・`)「おやおや」
ξ□゚⊿゚)ξ「しかし飽きないわね」
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(´・ω・`)「さすがに学校はじまったから毎日は来てないけど、
平日でも二日に一回は来てるし、土日は朝から晩までいるよ。
夏休みはおばさんとも相談して、夜通しやったりもした」
ξ;□゚⊿゚)ξ「はーーーー。たかがゲームにね」
( ^ω^)「でも、ドクオの話を聞いてると楽しいのは伝わってくるお」
(´・ω・`)「本人が心底楽しんでいるからね」
ξ□゚⊿゚)ξ「それ、発売はいつだっけ」
(´・ω・`)「ソフトの発売は10月の末。
ゲームの正式サービス開始は11月だったはず」
ξ□゚⊿゚)ξ「……いくら?」
(´・ω・`)「ソフト単品で4万円。
ナーブギアと同梱で、13万位だったかな」
ξ;□゚⊿゚)ξ「たかっ!
あいつ買えるの?そんなの」
(´・ω・`)「前のバイトで、ソフトの金額は充分あるって。
ナーブギアはテストプレイが終わり次第、一台プレゼントするから」
ξ□゚⊿゚)ξ「たかがゲームにそんな値段ねぇ……」
('A`*)「でさ、でさ、その街でさ……」
川;゚ -゚)「(たーすーけーてー)」
ξ□゚⊿゚)ξ「そろそろ助けてやるか。ブーン、お願い」
( ^ω^)「ドクオ、次の英語の予習はしてあるのかお?」
('A`*)「え?なに?」
( ^ω^)「次の英語、確か当てられる順番だおね」
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('A`)「え?あ?そうだっけ?」
( ^ω^)「そうだお」
('A`)「……やってない……。ショボンさん、お願いします……」
(´・ω・`)「ちゃんと授業受けて勉強しないと、テストプレイも終了だよ」
('A`)「ちゃんとやるから教えてくれ」
(´・ω・`)「はいはい」
棚から教科書を出した本城。
(´・ω・`)「いまどこ?」
('A`)「確か、キャリーとジョンが痴話げんかしてるところ」
ξ□゚⊿゚)ξ「どんな教科書よ」
(´・ω・`)「ドクオ?」
('A`)「……何ページだっけ」
差し出された教科書をめくる徳永。
呆れた顔でその姿を見る四人の視線を気にすることなく、
前回の授業のページを見付けた。
そして本城に促され、長机の端に二人で移動する。
そんな二人をニコニコ見ていた内藤が、宇佐木と来島に話しかけた。
( ^ω^)「ツンと来島さんはSAOに興味ないのかお?」
ξ□゚⊿゚)ξ「んー。無いと言えば嘘になる。なんか色々凄そうじゃない」
( ^ω^)「お?」
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川 ゚ -゚)「ここにきて普通のニュース番組でも取り上げられ始めたからな。
昨日も見たが、あの映像は確かにすごかった」
( ^ω^)「だおね」
ξ□゚⊿゚)ξ「でも予約の抽選はもうどこも締め切ってるみたいだし、
一般で買おうと思ったら、多分前日の夜とか、
その前から並ばないと駄目そうな雰囲気だし」
川 ゚ -゚)「待ってればすぐ買えて安売りも始めるどっかの電話と違い、
当分は追加販売はしないと告知しているようだからな。
転売をする奴も含めて、熾烈な争いになりそうだ」
ξ□゚⊿゚)ξ「そこまではねー。
それに、私の家には父さんの買ったナーヴギアがあるけど」
川 ゚ -゚)「私は持ってないからな」
( ^ω^)「ネット環境はあるんだおね?」
川 ゚ -゚)「古い日本家屋だが、流石にそこら辺は完備している。
父や母ともそっちで連絡を取っているからな」
( ^ω^)「おっお。そうだおね」
ξ□゚⊿゚)ξ「で、ブーンは買うの?
あんただってナーヴギア持ってないでしょ?」
( ^ω^)「おーそれなんだけど……」
(´・ω・`)「来年の春に、ナーブギアがマイナーチェンジするんだって」
本城が、三人の会話に突然参加する。
英語の教科書を指さしているが、頭半分で会話を聞いていたらしい。
教わっていた徳永は全く何の話をしていたか聞いていなかったようであるが。
川 ゚ -゚)「マイナーチェンジ?」
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(´・ω・`)「今の時点でも価格を抑えるための工夫はされているんだけど、
更に無駄を省いて価格を安くするんだって。
廉価版とでもいうのかな。
もちろん安全面では今よりさらに厳しくするみたいだけどね。
内部バッテリーを低容量化するとか、機能は変えずにそれ以外を色々変えるみたい。
で、値段を三分の二以下に抑えて、普及率を更に増やすのが狙いなんじゃないかな。
あれは一人一台なうえにあの値段だからなかなかね。
さらにそれに合わせてSAOもプレーヤー人数を追加できるようにする予定みたい。
その頃には別のゲームも出るんじゃないかな」
ξ□゚⊿゚)ξ「ふーん」
川 ゚ -゚)「三分の二か……。
手は出しやすくなるかもしれんが……」
(´・ω・`)「で、うちには僕がテスターとして使ってたテストタイプ,プロトタイプ以外に、
汎用型、つまり今流通してるのと同じタイプが4台あるんだけど、
汎用型の内の2台は、そっちに変えて違いを確認する予定なんだ。
今年の冬には病院に入る予定」
('A`)「え?なんの話?」
(´・ω・`)「ドクオは英語」
('A`)「はい……」
(´・ω・`)「だから、あげることは出来ないけど、
早ければ今年の冬、遅くとも来年の春までには貸し出しは出来る」
川 ゚ -゚)!
( ^ω^)「それを貸してもらうつもりなんだお。
だから僕もSAOをはじめようかなーと思ってるんだお」
川 ゚ -゚)「それは確かに魅力的だが……」
ξ□゚⊿゚)ξ「ソフトは手に入るわけ?
さっきも言ったけど、抽選はもう終わってるみたいよ?
まさか並ぶつもりじゃ……」
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( ^ω^)「おっおっお」
(´・ω・`)「世界初の『VRMMORPG』。
初期ロットナンバリングされている1万本以外にも、
テレビ、出版社といったマスメディアはもちろん、
政府、研究機関、関係協力企業等にはサンプルとしてソフトはばらまかれる。
もちろんナンバリングはされてると思うけど、一般発売物とは別ナンバーじゃないかな」
ξ□゚⊿゚)ξ「あ」
川 ゚ -゚)「ふむ」
( ^ω^)「おっおっ」
(´・ω・`)「そ。僕はナーブギアのテストプレイヤーだし、
父さんはその研究や開発に一役かっている。
ということでうちも申請しておいたから、
研究所用、テストプレーヤー用で3本は送られてくる予定。
それで、あと2本くらいなら頼んでおけば貰えるかもしれないし、
父さんの伝手でその他の研究所とかから分けてもらえるかもしれない。
テストプレイヤーはやりたがるかもしれないけど、
研究機関とかはゲーム自体には興味ない所も多いだろうからね」
ξ□゚⊿゚)ξ「このぼんぼんめ」
(;´・ω・`)「え?今の話ってそこに流れ着くの?」
川 ゚ -゚)「流れ着くな。うむ。本城のせいではないが」
( ^ω^)「でもそのおかげでSAOを遊べるかもだお」
ξ□゚⊿゚)ξ「まあね。でも、それならやってもいいかな。
ただであの世界を体感できるのは魅力があるし。
久美子はどうする?」
川 ゚ -゚)「私も気にはなっているからやってはみたいが……。
本当に良いのか?ものすごく良い話過ぎる気がするのだが」
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(´・ω・`)「貸すのもタダだし、無料で配られるソフトだから、あげるのも別にかまわないよ。
どちらにせよ当分はうちの病院まで来ないと遊べないから、ばれても何とでも言い訳できるし。
ただまあ一つお願いはあるけど」
ξ□゚⊿゚)ξ「……なによ」
川 ゚ -゚)「うむ。聞かせてもらおう」
(´・ω・`)「ナーブギアを貸すまでの間、うちに来てプレイするときは、
脳波計るのと中で何をしたのかのレポートはお願いしたいって」
ξ□゚⊿゚)ξ「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
(; ^ω^)「?」
(´・ω・`)「えっと……どうした?」
ξ□゚⊿゚)ξ「研究者の闇を感じた気がする」
川 ゚ -゚)「私もだ」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「ずっと一緒に暮らしてると、こんなのはまだ良い方な感じなんだけどね」
('A`)「なあ、さっきからナーヴギアとかSAOとかなんの話してるんだよ」
(´・ω・`)「それが終わったら話してあげるよ」
徳永が課題を終わらせたのが昼休みの終わるギリギリの時間であったため、
今話されていた内容をちゃんと知るのは、かなり後になってからだった。
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8.バーボンハウス 三人と一人と一人
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『俺の名前は錦城 志也(きんじょう かずや)
ここ、≪バーボンハウス≫のマスターでオーナーだ。
え?この若さでオーナーなんてすごぉいって?
褒めても何にも出てきやしないぜ。
いや、おれの愛が欲しいのかな?
罪なかわいこちゃんだぜ。
この店はおれの城。
信頼できる仲間達に支えられて、今日もおれは珈琲を淹れる。
きみも、おれの淹れた珈琲を飲んだら、珈琲に対するイメージが変わるかもしれないぜ』
( ^ω^)「今日はオムライスにするお」
('A`)「ナポリタンで」
(´・ω・`)「僕は和風ロコモコにしよっかな」
(`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「なに?」
(`・ω・´)「珈琲とか飲み物は?」
(´・ω・`)「食後のコーヒーは怜奈さんに淹れてもらう」
(`・ω・´)「…………」
本城、内藤、徳永の三人がいるのは、カフェ&バー『バーボンハウス』
昼でもほんのりとした柔らかい光源しか差し込まないよう工夫された店内は、
管理された空調と流れる穏やかな音楽と相まって、
夏の昼であるということを忘れさせてくれた。
『木目調』ではなく本当の木にこだわって揃えられている椅子やテーブルも、
ゆったりとした気分にさせてくれている。
三人はカウンターに座り、カウンターの中、本城の目の前には、
よく似た顔の青年がつまらなそうな顔をしていた。
( ^ω^)「いつもの光景だおねー」
.
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('A`)「料理は美味しいし、紅茶はちゃんと淹れられるのにな」
( ^ω^)「どうしてだろう。珈琲のあの不味さ」('A`)
|゚ノ ^∀^)「粉の量、お湯の温度、注ぎ方、全てがダメダメですから」
カウンターの中、店の裏側の厨房に続く扉から、一人の女性が現れた。
( ^ω^)「こんにちはだおー」
('A`)「ちわっすです」
|゚ノ ^∀^)「こんにちは。いつもありがとうね。武士君、俊雄君」
(´・ω・`)「こんにちは。怜奈さん」
|゚ノ ^∀^)「こんにちは。祥大君」
(`・ω・´)「ダメダメとか言うなよ」
|゚ノ ^∀^)「何度教えても勝手にアレンジするから変な味になっちゃうんですよ。
それよりはいはい。オーダー入ったんですから奥に戻ってさっさと作る」
(`・ω・´)「はいはい」
怜奈と呼ばれた女性が錦城を奥に押しやる。
年のころは二人とも二十代の中頃に見え、
その話しぶりや仕草から、親しくしているのが伺えた。
(`・ω・´)「あ、祥大!ちょっと話があるから食べ終わったら奥で待っててくれ」
(´・ω・`)「ん?分かった―」
|゚ノ ^∀^)「多分暇だから、カウンターで珈琲でも飲んでればいいわよ」
(`・ω・´)「暇とか言うな!」
あっかんべーをしながら奥に向かう錦城。
.
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|゚ノ ^∀^)「まったく。
あれで首席入学主席卒業、
法学部のエースとか言われていた人なんだから、
どうなってるのかしら」
(´・ω・`)「なんかすみません」
|゚ノ ^∀^)「親戚だからって、祥大君が謝ることないのよ」
本城に向かってウインクをする女性。
彼女の名前は森本 怜奈(もりもと れな)。
学年と年齢は一つ下だが錦城志也と同じ大学の同じ研究室出身で、
学生時代は才色兼備ともてはやされていた。
今もその美貌は健在で、パリッとした白いシャツに膝上のタイトな黒いスカートが良く似合っている。
グレーのエプロンでさえ、彼女のスタイルを引き立てるアクセサリーのようだ。
しかし何故か、今はこんな店でウエイトレスをしていた。
(`・ω・´)「こんな店で悪かったな!」
突然顔を出して四人に向かって叫び、そして厨房に戻る錦城。
呆気にとられる四人。
|゚ノ; ^∀^)「なに?今の」
(´・ω・`)「さあ……。志也兄さん、変だから」
(; ^ω^)「ショボンはシャキンさんには一段と厳しいおね」
('A`;)「手加減しないよな」
思わず本城の顔を見る内藤と徳永。
その視線にしれっとした笑顔で返す本城。
(´・ω・`)「でも怜奈さん、弁護士の仕事の方は大丈夫なんですか?
こんなところで油売ってて」
.
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ショボとシャキは名字が違うんだな
地方財閥のドロドロが透けて見える
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|゚ノ ^∀^)「ん?大丈夫だよ。今は弁護士も多いしね。
うちの事務所は所長が呑気だけど仕事は出来る人だし、
経営と人員配置の方は専門の有能な人達がいるから、空き時間がちゃんとあるの。
この店のスタッフも八割がうちの事務所の人間だってのは知ってるでしょ?」
(´・ω・`)「はい」
|゚ノ ^∀^)「結構いい社会勉強にもなってるんじゃないかな。
勉強ばっかできて弁護士になると、人間の黒いところ見て鬱になる奴もいるっていうし。
人間を知るには、客商売は一つの方法としてはありだと思う。
それに弁護士って威張っていても薄給なやつは多いからね。
こういう時間に融通の利くバイトは嬉しいのよ。
それに、この店で愚痴ついでに相談にのってあげて、
最終的に事務所に依頼しに来るって人も何人かいるのよ」
(´・ω・`)「なら良いんですけど」
('A`)「個人的にはシャキンさんも弁護士だってのが信じられない」
(; ^ω^)「おー。それは思っていても言っちゃだめだお」
(´・ω・`)「弁護士か検事になれたら家を継がなくていいって条件を小父さんと約束して、
とりあえず弁護士になった人だからね」
('A`;)「弁護士にとりあえずなれるってのがすごい」
(; ^ω^)「でもショボンもそういう理由でもなれそうだおね」
(´・ω・`)「ならないよー」
('A`;)「な『れ』ないじゃないんだな」
|゚ノ ^∀^)「そういえば前から聞きたかったんだけど、
錦城先輩はなんで『シャキン』って呼ばれてるの?」
(´・ω・`)「ああ」
.
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('A`)「それは……」
怜奈からの問い掛けに言葉を濁しつつ内藤を見る二人。
(; ^ω^)「おー。僕が名付けちゃったんだお」
|゚ノ ^∀^)「内藤君なんだ。でもどこから?」
(´・ω・`)「僕の『ショボン』が、
「「しょうた・ほんじょう」で、あたまをとって「しょぼん」だお!」だったよね」
('A`)「いつの間にか『ドクオ』って呼んでたよな。
「とくなが としお」で最初は「とくお」だったのに。
『ブーン』に関しては自己申告だし」
(; ^ω^)「おっおっお」
|゚ノ ^∀^)「あらあら。でも錦城先輩には、『キン』はともかく『しゃ』は……あっもしかして」
(´・ω・`)「初めて会ったのは僕等がまだ小学生で、
ちゃんと親戚の『かずや』兄さんだって紹介したのに漢字の話になって、
『志也』を『かずや』って読めなかったんだよね。ブーン」
('A`)「だったなー。
「ショボンがショボンだから、シャキンだお!シャキンだお!」
って喜んでたよな」
(; ^ω^)「おー。懐かしいお。
友達に『和也』君がいたから、『也』は『や』って読めたんだけど、
『志』は『正志』君の『し』しか分からなかったんだおね」
|゚ノ ^∀^)「あらあら」
( ^ω^)「でもシャキンさんも笑ってて、
「そうだ!おれはシャキンだ!シャッキーン!」って遊んでくれたんだお」
.
-
('A`)「だった、だった。
ショボンの家の庭で大騒ぎして、
おばさんに怒られた思い出」
(´・ω・`)「そういえばそうだったね。
三人で飛び回って、志也兄さんが植木鉢を三つくらい割って……」
|゚ノ ^∀^)「先輩は昔からそういう人なのね」
(`・ω・´)「できたぞー」
|゚ノ ^∀^)「はい」
楽しそうに怜奈が納得した直後、厨房から錦城が声をかけた。
それに反応にして奥に向かう怜奈。
そしてすぐに二人がお皿を持ってカウンターに戻ってきた。
|゚ノ ^∀^)「はい、和風ロコモコ。お待たせしました」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(`・ω・´)「オムライスとナポリタンおまち。
トッピングのハンバーグはサービスだから気にするな」
('A`)「すみません。いつもありがとうございます」
( ^ω^)「ありがとうですお」
見るからに美味しそうな料理を前に、自然に笑顔になる三人。
それを見て笑顔になる二人。
「「「いただきます!」」」
三人の声が打ち合わせ無しに揃った。
.
-
|゚ノ ^∀^)「ねえねえ、内藤君」
( ^ω^)「なんですかお?」
食後、本城は珈琲を怜奈に淹れてもらい、
内藤と徳永は悔しそうに怜奈を見る錦城に、炭酸飲料をグラスに注いでもらった。
そして二人がそろそろ帰ろうかとアイコンタクトをとっていると、
怜奈が声をかけた。
|゚ノ ^∀^)「私にだったらなんて名前を付ける?」
(; ^ω^)「お?」
(`・ω・´)「どうした?森本」
|゚ノ ^∀^)「いえ、前から思ってたんですよ。四人の名前っていいなって。
ブーン君に、ドクオ君に、ショボン君に、シャキン。
なんか初めて聞いた時から四人にピタってくる感じで。
だから私だったらどんな名前を付けてくれるのかなって思って」
(; ^ω^)「おー。そうだおねー」
(`・ω・´)「なんだ、昔おれが付けてやった『おもれーな』は不服だったのか?」
|゚ノ ^∀^)「たのしみー」
(`・ω・´)「スルーされた」
('A`)「今のはフォローできない」
(´・ω・`)「なぜそんな名前を」
(`・ω・´)「ん?こいつ学生の時酔うと面白かったんだよ。
なんか理想の彼氏がいるとか言って、ちょっといっちゃてるところが」
.
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|゚ノ ^∀^)「錦城先輩、この店って包丁多いですよね。
どのタイプが好きですか?お腹に刺してあげますよ?」
(`・ω・´)「あ、うん、なんでもない。全部嫌いだから許して」
|゚ノ ^∀^)「楽しみ楽しみ―」
(; ^ω^)「おー。森本怜奈さんだおねー」
じっと怜奈の顔を見る内藤。
そして彼女の名を何度も口の中で呟いていく。
( ^ω^)「もりもとれな…。もりもとれな…。
ももれな…。もりな…もれな…れなり…。れなも……れもな……。
れもな!?」
|゚ノ ^∀^)!
( ^ω^)「『レモナ』!『レモナ』とかどうですかお!?」
|゚ノ ^∀^)「うん!いいね!なんか今ピタってきた!」
カウンター越しにハイタッチする二人。
それを呆れた顔で見る三人。
|゚ノ ^∀^)「あー。なんか、うん。良い感じ。
先輩、これから先輩の事シャキン先輩って呼ぶので、
私の事は『レモナ』って呼んでくださいね」
(`・ω・´)「えー」
|゚ノ ^∀^)「呼んでくださいね」
(`・ω・´)「でも、そういうのってさぁ。自然に…」
|゚ノ ^∀^)「呼べ」
(`・ω・´)「はい。レモナさん」
.
-
|゚ノ ^∀^)「はい」
ニコニコと笑う怜奈。
そして無理やり錦城とハイタッチをすると、徳永、本城に向けて掌を見せる。
('A`)「れ、レモナさん」
(´・ω・`)「レモナさん」
そしてハイタッチをしながら呼ばれると、ニッコリと微笑んだ
|゚ノ ^∀^)「うんうん。良い感じ」
( ^ω^)「おっおっ。喜んでもらえて嬉しいお」
|゚ノ ^∀^)「いえーい」
( ^ω^)「いえーい」
そして再びハイタッチをする二人。
笑顔な二人。
それを見る三人の表情は疲れていた。
内藤と徳永が帰り、本城が一人残ったバーボンハウス。
店の営業もそろそろお酒を飲む客が現れる時間だった。
(´・ω・`)「で?話って?」
アイスティーのストローに口を付けた後、本城が隣に座った錦城に話しかけた。
(`・ω・´)「ああ。ブーンの足はまだ悪いのか?」
(´・ω・`)「普通に歩くには全く問題ないよ。
でも、まだ走ろうとすると痛みがあるって。
足にも、頭にも」
.
-
(`・ω・´)「足にも、頭にも……か。
精神的なモノじゃないのか?」
(´・ω・`)「10月まで様子を見て、11月からカウンセリングも始める予定。
まだまだカウンセリングって言うと敷居が高いからね。
もう真壁先生との会話は、録画して本永先生に達に見てもらってる」
(`・ω・´)「そうか」
(´・ω・`)「あと、今度のSAOでの経験が、
もしかすると良い方向に向かえるかもって言ってた」
(`・ω・´)「小父さんが言ってたな。
向こうで痛みなく走ることが出来れば、現実世界での痛みの消去に繋がるかもって」
(´・ω・`)「……願うよ」
(`・ω・´)「ああ……」
しんみりとした二人の会話。
カウンターの中の怜奈ともう一人の男性スタッフが、チラチラと様子を伺っている。
(`・ω・´)「で、SAOの事なんだけどさ」
(´・ω・`)「大丈夫だよ。兄さんの分も手に入るから」
(`・ω・´)「マジか!よし!よくやった!」
(´・ω・`)「まったく…」
(`・ω・´)「これで休みがちゃんと取れれば」
|゚ノ ^∀^)「11月初めの一週間の休暇!!」
(`・ω・´)「なんだよレモナ。急に。
つーか聞いてたのか?ダメだぞ、たとえ聞こえてても話に割り込むとかしちゃ」
.
-
|゚ノ ^∀^)「確か家の都合って言って取ろうとしてませんでしたか!?」
(`・ω・´)「あ……」
(´・ω・`)「一週間?家の都合?」
(`・ω・´)「いや、ほら、こういうのはスタートダッシュでのレベル上げが大事だろ?」
|゚ノ ^∀^)「……所長に……。いや、裄丈さんにチクっておきますから」
(`・ω・´)「森本!それはやっちゃダメだろ!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「今はそういう事を言ってる時じゃなくてだな!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「だから!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「……レモナさん、あのですね。事務長に話すのはやめていただけませんか?」
|゚ノ ^∀^)「だいたい、既に所長から片腕扱いされてるのに、
一週間もゲームの為に休むとか何考えてるんですか」
(`・ω・´)「だから一か月以上前から調整してもらって……」
|゚ノ ^∀^)「本気で出てこないつもりですか?」
(`・ω・´)「え?」
|゚ノ ^∀^)「弁護士の方は雇われかも知れませんが、バーボンハウスはオーナーのくせに?」
(`・ω・´)「えと…その……」
|゚ノ ^∀^)「いくらなんでも無責任すぎませんか?」
(`・ω・´)「それはその」
.
-
|゚ノ ^∀^)「無責任すぎませんか?」
(`・ω・´)「……店の方には一日一回は顔を出します」
|゚ノ ^∀^)「最低、開店時と閉店時はお願いします。
それに食事したりするためにログアウトするんでしょうから、
ちゃんとメールのチェックもして、返事もくださいね」
(`・ω・´)「いや、それは……」
|゚ノ ^∀^)「急を要する事務所の案件は店でお見せしますから、
指示や助言はしてくださいますよね」
(`・ω・´)「え?」
|゚ノ ^∀^)「してくださいますよね」
(`・ω・´)「……はい」
|゚ノ ^∀^)「まったく……。
でも裄丈さん、長くて五日間だって息巻いてましたから」
(`・ω・´)「まじかー」
頭を抱えてカウンターに頭を付ける錦城。
それを冷ややかに見つめる怜奈。
本城はカウンターで呆然と二人の会話を聞いていた男性スタッフと視線を合わせ、
同じタイミングで苦笑いをした。
.
-
9. リンク・スタート 五人
.
-
2022年11月6日
五人は、病室にいた。
病室の扉には、『ナーヴギアのお部屋』と書かれたプレートが取付けらている。
(´・ω・`)「変えてって言ったけどそういう意味じゃない」
小さくため息をつく本城。
しかし四人はそんなことを気にすることなく、
それぞれのベッドに腰掛けていた。
( ^ω^)「たのしみだおー」
ξ□゚⊿゚)ξ「発売日は凄い騒ぎだったわよね」
川 ゚ -゚)「ネットですごい金額で売られているのを見たぞ」
('A`)「結局ちゃんと金出して買ったのはおれだけなんだよな……」
(´・ω・`)「ぼく、ちゃんと誘ったよね?手に入るかもって」
('A`)「……もしかしたら、テストプレイヤーが優先券で買えば、
テストプレイありがとう的な武器のプレゼントとかあるかもって思って……」
川 ゚ -゚)「あったのか?」
('A`)「何も案内は無かった」
ξ□゚⊿゚)ξ「あらら」
( ^ω^)「で、でもほら、中に入ってから!」
('A`)「新アカウントでキャラも最初から作るから、テストプレイヤーって認識するのも無理だと思う」
( ^ω^)「おー」
ξ□゚⊿゚)ξ「ま、仕方ないわね」
.
-
('A`)「……おれの買ったのは転売して、おれはショボンが手に入れたソフトで……」
(´・ω・`)「多分もう手に入らないよ。
っていうか、そんな転売とか僕が許すと思う?」
('A`)「ですよねー」
大きくため息をついた徳永。
それを見て、四人が呆れた顔で笑った。
(´・ω・`)「さて、皆には術着に着替えてもらったけど、何か問題はある?」
独りベッドとベッドの間の通路に立つ本城。
広い部屋には両側の壁沿いに三台ずつ、合計六台のベッドが置かれ、
そのうちの五台にナーヴギアが取り付けられていた。
しかしそのうちの二つは、他の三台とは少し趣の異なる機種が備え付けられてあった。
( ^ω^)「なんか僕のとショボンのが違うおね」
その趣の異なる機種の備え付けられたベッドに座る内藤が、
少しだけ不安気に本城に声をかけた。
(´・ω・`)「うん。ブーンが使うのはプロトタイプ。
僕が使うのがテストタイプ。
両方とも汎用型モデルの原型だよ。
今日は全員脳波とか心電図とか色々つけてもらうけど、
ブーンには僕がテストプレイヤーをしていた時の同じような、
みんなよりちょっと多く色々つけてもらうから、そっちを使ってほしくて。
機能的にはみんなが使うモデルと同じだから安心して。
違いは内臓電源とデザインくらいかな」
( ^ω^)「おっおっ。分かったお」
内藤が笑顔で頷いたのを見て、残りの三人に視線を向ける本城。
三人ともそれぞれに問題無しの合図をし、本城は一人一人に笑顔で頷いた。
.
-
(´・ω・`)「もう少ししたら看護師さん達が色々付けに来るから。
そうしたらその後はベッドに寝たままになるし、すぐゲームを始めよう」
('A`)「了解」
( ^ω^)「わかったお」
ξ□゚⊿゚)ξ「トイレも行ったし」
川 ゚ -゚)「うむ。準備は万端だ」
徳永と本城以外の三人は少し緊張しているように見えた。
(´・ω・`)「やっぱり少し緊張する?」
川 ゚ -゚)「まあな。何回か別のゲームでナーヴギアは試させてもらったが、
やはり毎回少し緊張していた」
ξ□゚⊿゚)ξ「わたしもそうね。
あの中に入っていく瞬間が、吸い込まれるような浮遊感があって」
( ^ω^)「ゲームの中に入った後は良いんだけど、
入る時と出る時に少し違和感があるお」
('A`)「あー。確かにおれも慣れるまで少しあったな。違和感」
(´・ω・`)「そうだね。こう別次元に移動するっていうか、
妙な浮遊感と言うか……」
ξ□゚⊿゚)ξ「気持ち悪いとかじゃないけどね」
川 ゚ -゚)「そうだな。
あまり体験したことのない感覚だから、少し緊張する程度だ。
気にするほどではない」
(´・ω・`)「じゃあみんな大丈夫ってことで。
中に入ってからの事とか、ゲームを始めるまでの事についてはドクオにレクチャーしてもらったから、
それを守ってまずは『はじまりの街』に降り立つことを目指そう」
.
-
('A`)「言ったけど、向こうでの体型を現実世界の体型と大きく変えると、
歩くだけでも慣れるのに大変になるから、
出来るだけ身長・体型は今の自分と変えないようにな」
徳永の言葉に頷く四人。
(´・ω・`)「無事に街に入ったら、まずは西地区の教会の前を目指す。
そこで、落ち合うってことで」
本城の言葉に頷く四人。
(´・ω・`)「みんな名前は決めた?
中ではアバターになって顔も声も変わるから、名前くらいしか決め手が無くなるからね」
( ^ω^)「ぼくは『Boon』にするお」
ξ□゚⊿゚)ξ「私は『T.U.N.』にする」
川 ゚ -゚)「私は『Qoo』だ」
(´・ω・`)「僕は『Shobon』にするよ」
それぞれにゲーム内での自分の名前を決め、最後に徳永を見る。
('A`)
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「あー!おう!『DOKUO』だ!」
ξ□゚⊿゚)ξ「どうしたのあんた?」
(´・ω・`)「テストプレイの時は違う名前でやってたみたいだから、
そっちと悩んでたんじゃないかな」
川 ゚ -゚)「良いのか?そっちの名前じゃないくて」
('A`)「悩んだけどさ……みんなとやるなら、やっぱ『ドクオ』って呼ばれたいし……」
(* ^ω^)「どくお…」
('∀`)「えへへへ」
.
-
ξ□゚⊿゚)ξ「なにやってんだか」
川 ゚ -゚)「友情だな」
(´・ω・`)「さて、そろそろ来る時間かな」
ξ;□゚⊿゚)ξ「あんたはのらないのね」
病室のドアがノックされ、看護師が何人かはいってきた。
それぞれに配線を取り付けられ、ベッドに横たわる五人。
ナーヴギアは鼻まで覆い尽くすようなヘルメット型の為、
全員口元しか外に出ていない。
(´・ω・`)「全員問題ないー?」
('A`)「ドクオ問題ないぞー」
( ^ω^)「ブーンもオッケーだお!」
ξ□゚⊿゚)ξ「つ、ツンも平気よ!」
川 ゚ -゚)「クーも問題なしだ」
(´・ω・`)「ぼく、ショボンも準備完了です」
それぞれに自分のゲーム内の名前を使って声をかける。
ベッドは床ずれ防止用のジェルと温度管理されたもので、
枕も含め身体をやさしく支えてくれており、
五人とも力を抜いてリラックスが出来ていた。
五人は、顔を覆い尽くすナーヴギアの中で、期待とほんの少しの不安に満ち溢れていた。
.
-
そして、13時を告げるアラームが鳴る。
.
-
五人はまだ、これからその身に降りかかる苦しみと悲しみを知らない。
.
-
彼らは決めていた。13時のアラームが鳴ったら、同時に始めようと。
.
-
彼らはそれぞれに口をひらき、仮想世界への扉を叩いた。
その言葉が、牢獄への扉を開く言葉だとは知らずに。
.
-
「「「「「リンク・スタート!」」」」
.
-
第十八話
終
第十九話に続く
.
-
以上、第十八話でした。
十九話も順調にかけているので、
うまくいけば早めに投下できるかと思います。
乙も支援も指摘も考察も感想も、本当にありがとうございます!
ラストは決まっていますがラストまでの道は少し増えそうな気もするので、
もう少し?お付き合いいただけると嬉しいです。
ではではまた。
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おー乙ー
-
乙乙
-
乙
次回も楽しみ
-
乙
ドクオの片手剣の冴えはゲーム慣れもあるんだろうが「父からの手ほどき」もある程度影響していそうだな
-
ブーンの息切れはプロトタイプだからか事故の精神的なものなのか
>>261
クーさんちわっす
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断定君きっめ
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>>263
IDじゃね
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断定君って断定君きっめ
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〜かも〜じゃね?って話ほど無駄なものもないけどな
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何言ってんだこいつ
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で、でたー笑笑笑人は全部自分と同じ規格で出来てると思ってる奴ー笑笑笑
同じ出来の頭のオトモダチと四角い画面だけが現実の珍獣!ゲンダイニホンジン笑笑笑
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何処かの誤爆とはいえ、古代日本人がタイムスリップしてインターネットしたうえさらにレスまで・・・歴史的瞬間に感動するな
それ四角い画面じゃなくてぱぁそなるこんぴゅうたぁって言うんです先輩
-
おいおい釣れた釣れたっていわれちゃうぜ
-
きになったんだけど
>>126
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」
プギャーのけだるい、けれど決意の籠った声を。
| ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かっただーよ」
ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。
この「プギャーのけだるい、けれど〜」って「シラネーヨのけだるい、けれど〜」が正しいんじゃないかな?
あとブームの語尾がだーよなのはしらねーよの真似してふざけてるだけ?
-
>>269
ジョークの真意を理解出来ないって・・・東洋人ってやあね
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>>271
単なる書き間違いでミスリードを誘ったりではないと思う
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>>270
煽りスキル高いわけでもないのにしゃしゃり出て来た上に画面がPCしか想像つかない時点でお察し
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どーも作者です。
九月中に投下をと思っていたら、
うわわああああわわわあああああ!!
>>271 様
ご指摘ありがとうございます。
>>273 様
のおっしゃる通り、ただのミスです。
恥ずかしいです。
下が正しいですね。
-
その明るい声は、次の声を呼ぶ。
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」
シラネーヨのけだるい、けれど決意の籠った声を。
| ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かったです」
ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。
( ^Д^)「ほんとにそうだな」
そして、元気な、心の底から楽しそうに、けれど真剣な声。
( ´ー`)「だから、おれ達を甘く見るのはやめるだーよ」
('A`)「お前ら」
| ^o^ |「皆さんとラフコフとの因縁だとか、窮地に立つとか、我々には詳しいことはわかりません。
ですが、今までに受けた色々なことは、返したいのです」
( ´ー`)「貰いっぱなしは性に合わないだーよ」
( ^Д^)「そういうこった」
('A`)「お、おい」
( ^Д^)「きっと、おれ達よりもつらい道を選んだあいつも、同じ気持ちだろうよ」
| ^o^ |「どれだけ力になれるかは分かりませんが、やれることはやらせてもらいます」
( ´ー`)「もちろん死にたくないだーよ。
だから死なないギリギリまでやってやるだーよ」
| ^o^ |「だからこちらは、私達に任せてください」
( ^Д^)「こいつらが殺されそうになったら、ちゃんとおれらが逃がすからよ」
( ^ω^)「プギャー…」
( ^Д^)「ま、適材適所ってことだ」
('A`)「シラネーヨ」
( ´ー`)「だてにショボンのプログラムで鍛えてきたわけじゃないだーよ」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
| ^o^ |
.
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ご指摘ありがとうございます。
そして、感想や乙も、本当にありがとうございます。
それでは、十九話の投下を始めたいと思います。
.
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第十九話
はじまりの日 VRMMORPG 〜SWORD ART ONLINE〜
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0.リンク・スタート
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0-1
彼が『はじまりの街』の広場に降り立った時、
一番最初にしたのは頬をつねる行為だった。
「……痛くない。
やっぱりこれは夢、仮想現実なんだおね。
すごいおー」
その癖のある語尾から幼いと思われがちだが、
こういう時に取る行動は本当に子どもだった。
まず、棒立ちのまま周囲をきょろきょろと見回す。
目に入るのは、イメージの中の中世ヨーロッパの石畳の街。
目の前には画像で見たパルテノン神殿の様な大きな建物がある。
そして次に意識を向けるのは、人々。
同じように初めてこの場所に、この世界に降り立った者達が、盛んに声を上げ、
身体を振り、地べたを触り、建物を触り、自分の体を触り、その『世界』を楽しんでいた。
中には踊っている者もいる。
.
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「これが、仮想現実。
ナーヴギアで入ってきた世界。
『ソードアートオンライン』の世界。
ゲームの中の世界。
なんだおね」
彼も手を握り、足を上げ、歩き始める。
「本当に自分の身体みたいだお……」
ゆっくりと、一歩一歩でその世界を楽しむように歩く。
そして広場を一周してから、西の空を見る。
「えっと、西地区の教会で待ち合わせだったおね。
みんなもう移動してるのかお」
周りの建物と、楽しげに、というより、道行くすべての人、
おそらくプレイヤーと思える人達が全て笑顔なのを見て同じように笑顔を見せながら、
内藤武士、いや、『ブーン』は、西に向かって歩いていった。
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0-2
(ブーン)「こ、これがぼく!?」
少女漫画の中で、
メガネを外して化粧をしてもらった少女が、
初めて鏡を見た瞬間に言うようなセリフを呟いたブーン。
教会に向かう道すがらの屋台に立てかけてあった姿見を見て、
一度通り過ぎ、
戻ってきて鏡の前で一回転し、
鏡の中の美青年が自分だと分かり、
顔を近付けて鏡の中の自分に呟いた。
路地裏であったため誰も近くにプレイヤーがいなかったのは幸いだっただろう。
鏡の中の自分とにらめっこをし、
精一杯の変顔すら色男であるその顔に、
スタート時に自分で選んだとは言え気恥ずかしくなる。
(ブーン)「な、慣れるお。
自分では見えないんだし」
無理やり納得し、鏡から離れる。
そしてそのスリムで均整のとれた身体を見て、
4回鏡に向かってポーズを決めてから、
再び歩き始める。
(ブーン)「みんなはどんな姿か楽しみだお」
自分の事を棚に上げることに成功したブーンは西に向かった。
.
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0-3
西地区 教会前
(ブーン)「着いたお―」
ルーベンスの絵でも飾られていそうな大きな教会の前。
中央広場からは離れているためプレイヤーはほとんどいなかった。
扉を背にして視界に入るのは3人。
先ずは女性。
ストレートの黒髪が肩にかからないくらいで切り揃えられたショートカット。
女性らしいメリハリのあるプロポーションを、初期設定の簡単な革と布の装備を包んでいた。
もちろん美人で、黒髪の似合う清楚な女性だった。
次も女性。
金髪のウエーブのかかった髪が、肩甲骨くらいまで伸びている。
先程の女性と同じようなプロポーションだが、
彼女よりは少し身長が高い為髪の色と相まって外国の女優の様に見える。
もちろんセレブな美人女優だ。
最後の一人は男。
自分と同じような身長で、同じような体つき。
黒い髪と、目にかかるくらいの長さも自分と同じだった。
おそらくは同じ『型』なのだと思うが、髪型が微妙に違っているので雰囲気は違った。
いや、顔が違うのでそう思えたのかもしれない。
彼も美青年なのだが、自分の方が美青年だった。
しいて言うならば、彼は街に居たら女の子が振り返りそうなくらいの美青年。
自分はハリウッドで主役をはっていそうな美青年。
(ブーン)「……あれくらいで、いいんだおね」
少しだけ自分のセンスを恥ずかしく思いながら、
ブーンは3人と同じように教会の扉が見える位置に移動した。
他にも数人のプレイヤーと思しき人が教会を訪れて中を覗いたりしているが、
ここに留まっているのは自分を入れて4人だった。
.
-
(ブーン)「(ドクオは寄るとこがあるから少し遅くなるって言ってたし、
来たらすぐ合図をするだろうから、
多分この3人がツンとショボンとクーさんなんだおね。
声をかけたいけど、女の人に声かけて違ったら恥ずかしいし、
こっちの男の人は…)」
3人を観察しているブーン。
なんとなく女性二人は互いを意識しているように見えるので、
あの二人がツンとクーならその後こちらに声をかけてくれるだろうと思い、
もう一人の青年に視線を向けた。
一心不乱に右手を振っている青年。
おそらくはウインドウを見ているのだろう。
かなり真剣な表情だが、なにをそんなに真剣に見ているのか不思議だった。
(ブーン)「(お知らせがさっき一回来てたけど、
その後は来てなかったおね)」
暇つぶしに何度かウインドウは開いて見たが、新しいメッセージなどは来ていない。
ウインドウを出すことによって現れるメニューは重要と言えばすべて重要なんだとは思うが、
これから落ち合う頼れる男友達二人に教えてもらえばいいやと思っていた彼は、
すぐに画面を閉じた。
(ブーン)「(すごく真剣だから、話しかけられないお……)」
どうしようかと腕を組み、教会を見るブーン。
すると、教会の前の一本道の真ん中を歩いてくる人影が見えた。
(ブーン)「お?」
ドクオが来てくれたのかと思い、じっと見つめる。
身長は190近いだろう。
胸板も厚く、足も長い。
ガッチリといった表現が似合うが、太いと言ったイメージは持たない。
服装は自分達と同じ初期装備に見えるが、腰付けた剣が彼を更に引き立てていた。
顔も凛々しく、美青年と言うよりは美丈夫。
精悍で、爽やかな好青年と言った感じだった。
.
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(ブーン)「(……ドクオじゃないか)」
彼を見ていたブーンは、現実世界でドクオが言っていたことを思い出しつつ、
友人ではなかったことに落胆しつつもう一度ウインドウを真剣に見ていた青年に視線を移す。
そして、意を決して彼に声をかけようと一歩踏み出したブーン。
しかしそれとほぼ同時に、再程の美丈夫が、教会の扉の前に立ち、
剣を鞘から抜いて掲げた。
思わずその姿を見る4人。
.
-
「ドクオ騎士団の諸君!我がもとへ!」
.
-
張りのある、よく響くバリトンの美声。
それと台詞のギャップに思わず唖然とする四人。
.
-
「ド、ドクオ騎士団の諸君!は、早く来るんだ!」
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-
美丈夫が、四人に目配せしながらもう一度声を張る。
しかし思考の停止した四人は動かず、
ただただ彼をじっと見つめた。
「あ、あれ?ブーンとショボンとツンとクーさんだよね?」
剣を下ろし、不安げに四人に視線を配りながら呟いた美丈夫。
.
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「「「「ドクオ!!!!????」」」」
.
-
四人の叫び声が、教会前に響き渡った。
.
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支援
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1.はじまりの街
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-
教会の中に入った五人は、ドクオに案内させて奥の部屋に入った。
長机が七つほどあり、それぞれに椅子が四つずつついているその部屋は、
中規模なグループが会合をするにはちょうど良いくらいの広さだったが、
今は五人しかいない。
(ツン)「あんたねー。何考えてるのよ!
人には何度も何度も身長体型を変えるなとか言っておいて!」
黒髪の美女が、座って肩を竦めている美丈夫に詰め寄る。
絵になる光景だ。
(ドクオ)「お、おれはテストの時からこの姿で、
こっちではこの姿の方がなれてるからいいんだよ」
最初は声を張っていた美丈夫……ドクオだったが、
美女に睨まれるという現実では経験したことのないシチュエーションと、
中身がよく知っている『ツン』であるという現実に、
いつもよりおどおどとしていた。
(ショボン)「そういえば、最初の頃のレポートではよく転んだって書いてたよね。
そういう事だったのか」
(ドクオ)「そうなんだよ!
最初は歩くこともままならくってさ。
腕のリーチも違うから剣を振るタイミングとか距離感とか慣れるまで大変でさ!」
少し離れた場所に座った美青年……ショボンが、
相変わらず右手を振りながら会話に参加した。
分かってはいるが、ウインドウを自分しか見えない不可視モードにしているため、
その右手を振る動作が少しおかしい。
(ツン)「他のゲームでもそうだっていうんだから、
普段の身体サイズでやればいいでしょうが!」
(ドクオ)「そ、そそ、それは……さ……」
(ツン)「なによ」
.
-
(クー)「もしかして、理想、憧れなのか?
そういう体型が」
(ドクオ)「…… …… ああ。そうなんだ」
二人のすぐそばで見守っていた金髪美人……クーが口を開く。
彼女の頭の中では、祖母に見せてもらった昔の道場の写真が思い出されていた。
その写真には、ドクオの父が写っていた。
(ドクオ)「おれ、ちっさいし、飯一杯食べられないし、
多分あんまり大きくなれないだろうからさ。
太りたくはないけど、あんま筋肉とかつかない体質だし。
だからせめてここでは、理想の体型になりたかったんだ」
(ツン)「あんた……」
ドクオの悲しげな言葉に、思わず言葉を詰まらせるツン。
この世界では声も現実世界とは違っているが、
何故か今のドクオの言葉は、全員がドクオの声で聞こえた気がした。
(クー)「仮想現実は、
現実では叶えられないことを現実化させることの出来る世界。
と、何かに書いてあったのを読んだ。
そして、そうだなと納得した。
だから君の姿を非難したりはしないが、
せめて言っておいてほしかったな」
クーの言葉は現実世界と同じく感情を感じない無機質な響きを持っていた。
それゆえ誤解され、友人と呼べる者が少なかった。
だが何故か、この世界では、その言葉に込められた優しさが伝わっていた。
(ドクオ)「ありがとう……」
(ブーン)「おっおっお。
じゃあ早く外に行くお!」
不安げに会話を聞いていたブーンだったが、
なんとなくまとまったのを感じて笑顔で声をかける」
.
-
(ツン)「そうね。せっかくだから楽しまないと」
(クー)「うむ。今日は7時までには帰ると言ってあるから、
五時半ごろには出ないといけないしな」
(ドクオ)「あ、ああ!
そうだな!
この街だけでも時間は潰せるけど、どうせなら戦闘もしようぜ!」
(ブーン)「だおだお。
そういえばショボンはさっきから何をしているんだお?」
それぞれに笑顔を見せながら扉に向かう。
しかしショボンが出遅れたため、
ブーンが振り返って声をかけた。
(ショボン)「あ、うん。
一応メニューバーが説明書にあったのと違いが無いか、
フルチェックをしていたんだ」
(ツン)「あんた、あの電話帳みたいなの全部読んだの?」
(ショボン)「読んだよ」
呆れ半分、感心半分と言った顔をしたツン。
それに対してショボンは当たり前のように普通に返した。
(ブーン)「おー。すごいお。
僕はスタートアップと簡易マニュアルの方しか読んでないお」
(ツン)「私も。
まあ所詮ゲームだし」
(ドクオ)「おまえら、ちゃんと読んどけよ」
(ツン)「何の為にあんたとショボンと一緒にゲーム始めたと思ってるのよ」
(ブーン)「頼りにしてるおー」
.
-
(ドクオ)「おまえら……。
クーさんは?」
(クー)「ちゃんと読んだのはブーンと同じ簡易マニュアルとスタートアップマニュアルだけだ。
正式マニュアルは流し読み程度だな」
(ツン)「とか言いながら、ちゃんと読んだんでしょ?」
(クー)「まぁ読みはしたが、ちゃんと覚えているかどうかと言うと、自身は無い。
だから『流し読み程度』だ。ショボンは全部覚えているのか?」
(ショボン)「多分ね。大丈夫だと思いよ」
(ツン)「どういう脳味噌してるのよ」
(ブーン)「昔から教科書とか一回読めば覚えてたおね」
(ツン)「そうなの!?」
(ショボン)「教科書程度ならね。
でも流石に今回のは2回全部読んで、気になるところは何回か確認したよ」
(クー)「それで覚えられるのか」
(ショボン)「うん。でも、覚えるだけならその本を持っていればいいだけだし、
今ならパソコンでもタブレットでもどうにかできる。
結局はその知識をちゃんと使うことが出来るかどうかなんだよ」
(ドクオ)「テストに持ち込みできません」
(ショボン)「そこに関しては何とも言えません。
頑張って覚えてください」
ぼそっと呟いたドクオに、
笑顔でショボンが返す。
.
-
(ブーン)「おー。暗記物苦手だから羨ましいお」
(ツン)「で、記憶も活用も出来る新生徒会長さんは、
チェック終了したの?特に問題は無かったわけ?」
(ショボン)「……まあ、うん」
(クー)「?歯切れが悪いな」
(ショボン)「いや…うん。
細かい変更と言うか、順番が違っているところとか説明文の誤字とかがあったから」
(ブーン)「それくらいは許してあげてほしいお」
(ショボン)「うん。でも気になったから、GMにメールしておいた」
(ツン)「ジーエム?」
(ドクオ)「GM、GameMasterの略で、
こういったオンラインゲームでは管理者とか運営者とかを言うんだ。
つーか、それは簡易マニュアルにも載ってたはずだぞ」
(ツン)「しらなーい」
(ドクオ)「まったく」
(ツン)「でも、正式運営はじまった初日の、
まだ2時間も経って無い状態で説明文の誤字を指摘されるのは色々厳しいのは分かる」
(ブーン)「ツンもお手柔らかにしてあげて」
(クー)「そのGMへのメッセージだが、
それは誰でも連絡できるものなのか?」
(ドクオ)「ああ。メッセージ機能で送ることが出来る。
プレイヤー同士で送りあうことが出来るメッセージ機能だけど、
初期設定でGMにだけは送れる様に登録してあるんだ。
多分消去も出来ないはずだから、間違って消したりすることも無い」
.
-
(ツン)「ふーん」
(ドクオ)「ホントに興味ないんだな」
(ツン)「先ずは二人に聞くし、
そこで分からなかったらどちらかが連絡するでしょ?
私が使うことは無いと思うし」
(ドクオ)「……あてにしてもらえて嬉しいよ」
(ツン)「私がドクオを当てにすることなんて滅多にないんだから、
頑張る様に」
(ドクオ)「へいへい」
(クー)「しかし、何か聞きたいことがあって一万人がそれぞれメッセージを送ったら、
運営とはいえ混乱するんじゃないか?」
(ドクオ)「んー。スタッフ一杯用意してると思うし、大丈夫だと思うけど……。
それにスタッフが街に点在してるから、細かい質問はスタッフ捕まえて聞けばいいし」
(ツン)「それって連絡来てなかった?」
(ドクオ)「へ?」
(ツン)「なんか、最初は自分達の力だけで世界を楽しんでくださいとかなんとかで、
街にはNPCだけでスタッフはいないですよ的なメッセージ」
(ドクオ)「は?!」
慌ててウインドウを出すドクオ。
(ブーン)「向かってる時に突然チャイムと視界の端に何か出て、
ビックリしたお」
(クー)「ああ、どこを見ても視界の隅にチカチカ光る何かがあって、
何事かと思った」
.
-
(ドクオ)「げっ!ホントに来てる!
なんでおれには通知が……。
なんで通知機能がオフになってるんだよ!
デフォルトはオンだろ!?
あー。こっちもオフだ。良かった。街の外出てなくてほんとによかった」
ウインドウを開いて独り言を言いながら操作しているドクオ。
(ツン)「ちゃんとマニュアル読まなきゃだめよー」
(ドクオ)「……マニュアル関係ないし」
ツンの言葉に、少しバツが悪そうに答えたドクオだった。
.
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1-2
教会を出た五人は、ドクオを先頭に路地裏を歩き、ある民家の軒先にやってきた。
(ドクオ)「到着―。
みんな、武器は何にするかちゃんと決めたか?」
(ブーン)「ここがお店なのかお?」
(ドクオ)「ああ。隠しショップだ。
他の店に比べると格段に安い。
ただ一日の販売量が決まってるみたいだから、
この店を知ってるβテスターが押し寄せてたら、買えないかもしれない」
(ツン)「なにそれ」
(ショボン)「無限に安価で売ってたら、他の店が売れなくなるし、
バランスが崩れちゃうってことなのかな」
(クー)「そういうものなのか?」
(ショボン)「いや、僕もオンラインゲームは初めてだから想像だけど」
(ブーン)「でも、オンラインゲームは、
普通の家庭用ゲームと色々違うっていうからそういうのもあるのかもだお」
(ツン)「RPGはほとんどやったことないのよね」
(ブーン)「ツンは格ゲーはうまかったおね」
(ツン)「隙をついたり、コマンドで技を出したり、
壁際に追いつめたりするのは好きだったわね」
(クー)「私はテレビゲーム自体やったことが無いからな」
(ブーン)「そうなのかお?」
(クー)「あまり興味も無かったからねだらなかったし、
両親や祖母もやらないから家にないんだ」
.
-
(ブーン)「おっおっ。ならやらないおね。
うちは家にあったから、小さいころからやってたんだお」
(ツン)「……父さんがゲーム機揃えてた」
(ブーン)「おじさん……」
(クー)「おじさん……」
(ドクオ)「何やってんだよ。
ほら、中入って」
家の前で三人が話していると、先に中に入っていたドクオが顔を出し、中に入るように促す。
そして三人も民家に入ると、壁に数種類の武器が並べられていた。
(ブーン)「おお!」
(ショボン)「ドクオが会話をはじめたら、段々と出してきたんだよ。
話す順番とか、聞く順番とかあるんだよね?これ」
(ドクオ)「そうそう。
決まった順番で、キーワードを入れた会話をしないと出てこないんだ。
まだ全種類あるけど、どうする?
一応片手剣、曲剣、槍なら、基本的な動きを教えられるけど」
(ブーン)「僕は片手剣で良いお」
(クー)「私は槍だな」
(ショボン)「弓は無いんだよね。じゃあ僕も槍にしようかな」
(ドクオ)「おれはさっき買った片手剣があるから良いとして、ツンはどうする?」
(ツン)「私は……この細いのも片手剣?」
(ドクオ)「これは細剣だな。やってないからちゃんとは教えてやれないけど、
基礎基礎くらいなら……」
.
-
(ツン)「じゃあ、私はこれ」
(ドクオ)「了解。さっき預かった金でまとめて買っちゃうけど良いよな」
(ブーン)「よろしくだおー」
(美少女)「私には短剣を買って」
突然現れた美少女が、ドクオの服を掴んで彼を見上げながら小首をかしげていた。
(ブーン)「おっ!?」
(ツン)「えっ!?」
(クー)「いつの間に」
(ショボン)「知り合い?」
(ドクオ)「しらない!」
(美少女)「えー。酷いなー。あんなことやあんなことを、いっぱいしたのに」
(ツン)「あんた……」
(クー)「そういうやつだったのか?」
(ブーン)「え?お?え?ええっ?」
(ショボン)「βテスト時代の友達?」
(美少女)「……なんか一人冷静な人がいるとのれないよね」
ツンと同じくらいの身長だが、屈んでドクオの上着を摘まんでいたためかなり小さく見えた。
しかしつまらなそうに立ち上がると、狭い店の中で器用にお辞儀をした。
(美少女)「お久しぶり。
この店を知っていてその体格でその受け答えってことは、
アルルッカバー君だよね?」
.
-
(ドクオ)「その名前を知ってるってことは……そうか!
その姿!お前『ミカゲ』か!?」
(美少女)「ピンポーン。お久しぶり。
あんなに仲良くしたのに忘れてたなんて、悲しいな」
ドクオに向かって可愛らしく微笑む美少女。
少し慌てながらも、βテスター仲間に会えたことを喜ぶドクオ。
二人が話す姿はかなり絵になる光景なのだが、
片方の中身を知っている四人には微妙な空気が流れている。
(美少女)「短剣二本と、片手剣一本も追加宜しくね」
(ドクオ)「なんでそんなに……もしかして!あいつらも!?」
(美少女)「大当たり!『ハクヒョウ』と『コクエン』も外にいるよ。
この店開放するのめんどうくさいから、助かっちゃった。
一人でいくつも買えるけど、一回買うと元に戻っちゃうなんてめんどくさいよね」
(ドクオ)「まったく……横着なのは相変わらずだな。
そんなことでちゃんとした忍者になれるのかよ。
ほら、先にコルよこせ」
(美少女)「はいはい。分かってますよ。
そして大丈夫!今度こそエクストラスキルの体術をとって、忍者になります!」
(ドクオ)「はいはい。頑張ってくれ」
(美少女)「はーい!」
二人の会話をただ聞くだけだった四人。
しかしドクオが隠し武器屋のNPCに声をかけると、美少女は四人に向かってお辞儀をした。
(美少女)「こんにちは。
アルルッカバー君のβテスト自体の友達です。
ここでは『くノ一』目指して頑張る予定です!」
.
-
四人にむかって可愛らしく挨拶をする美少女。
まだこの世界で表現することに慣れていない四人と違い、
それは自分の見た目を意識したうえで、
その可憐な容姿の魅力を最大限に引き出す仕草だった。
しかし女二人は勿論男二人にも感銘を与えることは出来ていないのが分かり、
眉間に皺を寄せた。
(美少女)「アルルッカバー君の友達ですよね?
宜しくお願いします」
可愛らしく手を差し出す美少女。
その手はブーンに向けられていたが、
手を握ったのはショボンだった。
(ショボン)「こんにちは。『ミカゲ』さん?
僕は彼の友達でショボンと言います」
(美少女)「『ショボン』さんですね。
宜しくお願いします」
ニッコリと微笑んだ美少女。
それに対し、儀礼的な笑顔で返すショボン。
(ブーン)「おーー」
それを見て小さく呟いたブーン。
ツンが耳元でささやく。
(ツン)「どうしたの?」
(ブーン)「ショボンが敵対モードに入ってるお」
(ツン)「敵対モード?
別に普通と変わらない様に見えるけど」
.
-
(ブーン)「初対面の相手とか、
自分や僕達に敵意を向けたり難癖をつける相手には、
いつでも反撃できるように構えることがあるんだお」
(ツン)「今がそんな感じなの?」
(クー)「特に普段と変わらない様に見えるが」
こそこそと話す二人にクーが顔を寄せた。
(ブーン)「うう……。かなり警戒してる感じだお」
(ツン)「ふーん」
(クー)「ない……ブーンがそう言うのならば、おそらくはそうなんだろうが、
ショボンは彼女のどこにそこまで警戒しているんだろうな」
(ツン)「私達に難癖付けようっていうのかしら」
握手をしたまま笑顔で会話をする二人を見つめる三人。
すると買い物を済ませたドクオがやってきた。
(ドクオ)「悪いショボン、こいつはお前と一緒で悪知恵は働くけど悪いやつじゃないと思う。
ミカゲ、とりあえず外で渡すから出るぞ。
あ、あとおれ名前を変えたんだ。これからは『ドクオ』って呼んでくれ。
ブーン、ツン、クーさん、外に出よう」
(美少女)「悪知恵働くとか酷―い」
(ショボン)「お前と一緒って」
(ドクオ)「良いから良いから。ほらほら外に出て。
ここは買い物終わった後長居すると怒られるんだよ」
(美少女)「しょうがないなー。
分かったよ。ドクオ君。
因みに私も名前変えたんだよ」
(ドクオ)「それも外でな。
ほら、三人も早く」
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