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( ・∀・)たちは「」を謳歌するようです

28名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 01:37:38 ID:vwQ3aATM0
おお!続きか!謳歌シリーズ好きだから嬉しい!乙!

29名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 15:08:10 ID:6a9ilx720
乙!
懐かしいな!このシリーズはキャラ多いのに各キャラの行動が細かく練られててすごい好き!

30名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 16:50:46 ID:LIrIw7jw0
謳歌シリーズの人か!
クリスマス話となると遠距離恋愛のショボン以外ジョルつー以外は恋人なのかどうか気になるな……あっ、ロマは最後まで非リアだって信じてるから!

31名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 19:57:07 ID:L.s74Y3o0
再開いたします。

>>30
一応、作中で公開している範囲では、シューとモララー
ドクオとクー
ツンとブーン
ショボンとデレ(未登場)が恋人同士です。

ロマはあんなでも、作中キャラ一番の美少年という隠し設定があります。
ただし、その設定を活かす気が作者にありません。

32名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 19:57:48 ID:L.s74Y3o0
 


( ・∀・)「続いて、時間を遡りまして春の出来事!」

33名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 19:58:57 ID:L.s74Y3o0
 
 - 開始前発表 -

◎すてーじ◎
VIP工業大学

◆仕掛け人◆
        _
( ・∀・)( ゚∀゚)
(*゚∀゚)(-@∀@)

◇ターゲット◇
 ( ФωФ)(´・ω・`) ('A`)
 川 ゚ -゚) ( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ
その他大勢

>れでぃ?

34名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:00:01 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「廃部?」

(-@∀@)「うん。廃部というか廃サークル? うちの大学、サークルの維持には最低でも5人必要なんだよ」

(*゚∀゚)「えー。せっかくきたのにー」

(-@∀@)「ごめんねぇ。先輩たちが卒業して4人も抜けちゃったからねえ……」

( ・∀・)「俺は人が足りないからって、兄貴に呼ばれただけだし、別にいいんだけどよ」

(*゚∀゚)「そっかそっか。実質二人じゃ映画は撮れないしねー」

(-@∀@)「今回で君ら二人を合わせてもあと2人。実際に撮影するならもうちょっと欲しいんだよね。厳しいよなー」

( ・∀・)「……ふむ」

(*゚∀゚)「まあ、それならしょうがないさ! それなら別の――」

( ・∀・)「一つ案がある。兄貴、金いくら持ってる?」

(-@∀@)「手元には3万円ほど……」

( ・∀・)「よし、俺が47万だそう。これで50万あるな。俺に考えがあるんだ」

(-@∀@)「は?」

( ・∀・)「まあ見てなさいって。ここにやる気のある奴がいて、人が足りないから解散は兄貴もつまらんだろ?」

(-@∀@)「い、いや、50万も大金は出せないし…… うちの大学、サークルの予算が部員数で決まるから新入部員勧誘が激しいんだぞ!」

( ・∀・)「なに、一時的に預かるだけよ。俺に任せろ!」

35名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:01:45 ID:L.s74Y3o0
 
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、クー。サークルどこ入るか決めた?」

川 ゚ -゚)「機械工作部が面白そうなんだが……」

( ^ω^)「それソフトはできんのかお?」

('A`)「いや、電子工作自体弱いっぽい。ロボット相撲とかよりはエコカー自作的な」

ξ゚⊿゚)ξ「うーん……クーはそういうの強いけど、私たちは弱いわね……」

('A`)「あとはソフトウェアなら、ロボット研究部ではC使って開発してるみたいだな。あとゲーム制作サークル」

( ^ω^)「別々のサークルかおー? まあ、別に高校一緒だからってサークルまで同じでなくても……」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、他に興味のあるサークルもないし……しょうがないんじゃない?」

川 ゚ -゚)「あ、興味といえば、映研な。あれは素直に面白そう」

( ^ω^)「映研? 映画研究部? B級映画好きのどっくんはともかく、クーが?」

('A`)「あ、お前あのポスター見てねえの?」

ξ゚⊿゚)ξ「私も見てないわね、なにが面白そうなの?」

('A`)「ああ、いや体験入部がさ……」

36名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:04:26 ID:L.s74Y3o0
 
(´・ω・`) 「ロマ、サークル決めた?」

( ФωФ)「いや全くである。格闘技系サークルは期待していなかったが、いざでないとなると惹かれるものがないである」

(´・ω・`) 「んーまあ、僕もなんだよね。ボディビルサークルとかあれば行ったんだけど」

( ФωФ)「そ、それは流石にないと思うであるぞ……」

(´・ω・`) 「ロマ、ボディビル同好会一緒に作らない? いいカラダしてるし……」

( ФωФ)「無駄な筋肉を付けると動きが鈍るである」

(´・ω・`) 「ま、格闘家はそうだよねー。じゃあ、帰宅部かなー。バイトもしたいし」

( ФωФ)「ああ、デレちゃんであるか? 遠距離は大変であるな」

(´・ω・`) 「んー、まあね。向こうまで行くのはお金がかかるんだよ」

( ФωФ)「来年受かればいいであるなー。浪人だと肩身も狭いであるし」

(´・ω・`) 「なので、僕はバイトをするために帰宅部でもいいかなぁって」

( ФωФ)「ああ、それなら、映研のポスター見たであるか?」

(´・ω・`) 「は? 映研って映画研究サークル?」

( ФωФ)「ああ、そこの部員募集ポスターであるが、面白そうな催しをしていたであるぞ」

(´・ω・`) 「あ、もしかして、これのこと……? なるほど」

( ФωФ)「遠征資金の足しにはなるのではないか?」

(´・ω・`) 「うん、ちょっとこれは行ってみようかな」

37名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:05:51 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)『あーお集まりの諸君! 賞金50万は欲しいかあ!!』

「「「「「うおおおおおおお!!!」」」」」

( ・∀・)『良い返事だ! この大会にわざわざ参加してくれた諸君らは例外なく猛者であると私は信じている!』

(´・ω・`) 「あ、ほら。ロマ! 始まってるよ! 参加間に合いますか?」

(*゚∀゚)「どうぞどうぞ。こちらにお名前と住所。学科を記載して下さい」

( ・∀・)『諸君らに挑んでもらうのは、この私との鬼ごっこ勝負である! 知略と体力の限りを尽くし! 私から3時間逃げ切れば勝ちだ!』

( ФωФ)「……住所?」

(*゚∀゚)「あ、はい。負けた時に言い逃れ出来ないように、とのことです」

( ФωФ)「随分気合入ってるのだな?」

( ・∀・)『そう、知略の限り! あらゆる行為を私は推奨しよう! どのような手段も、ルールと法律を守る限り! 私はそれを許可する!』

川 ゚ -゚)「知略の限りか、少々嫌な予感がするが…… それはこちらも許されているということだ。思う存分にやらせてもらおう」

( ・∀・)『そう、体力の限り! 諸君らには素晴らしい身体能力を持つ者も多いだろう! その身体能力を存分に活かしてもらいたい!』

('A`)「クーさんはこういうの好きだよね。でもこのルール。ズルがそうそう出来ないようになってると思うけど……」

( ・∀・)『なに、ちょっと君らが卑怯なことをしても私の敵ではない! 圧倒的な実力の差を教えてやろう!』

ξ゚⊿゚)ξ「単純に足が早くても、この人数よ? 上手く逃げ切れると思うけどな」

( ・∀・)『さて、賢明な諸君らは既にルールを把握しているとは思うが、ここで再度ルールを確認させていただこう!』

38名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:06:42 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)ルール総括!


Ⅰ.基本部分は一般的な鬼ごっこ。一般参加者は鬼にタッチされれば失格。失格した参加者は即座に鬼となる。所謂増え鬼形式。

Ⅱ.制限時間は3時間。制限時間いっぱいまで逃げ切った一般参加者で賞金50万を山分け。捕まった参加者は映研に強制入部。

Ⅲ.一般参加者は配布されたゼッケンを身につける。ゼッケンには特殊な装置が組み込まれており、この装置がルール違反者を監視する。

Ⅳ.ゼッケンを外す。大学敷地外から出る。30分以上非常に狭い範囲から動かない。装置を分解する。という条件を満たすと装置が作動し、強制的に失格となる。

Ⅴ.失格した参加者は3分以内にゼッケンを裏返し、以降、鬼として活動する。なお、主催者側が鬼として不真面目であると判断すれば罰ゲームが実行される。

Ⅵ.初期からの鬼はゼッケンではなく腕章を付ける。腕章の鬼は無線機や装置からの情報を受け、審判役を兼ねる。

Ⅶ.その他。ルールに明記されておらず、違法性のない行為は全て許諾される。また主催者および参加者は、ルールを順守する限りそれを非難しないものとする。


以上

39名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:08:10 ID:L.s74Y3o0
 
(;-@∀@)「モララー! 正気か!? こんなことして50万は大金だぞ!」

( ・∀・)「そうだな。この金は俺が高校3年間掛けてバイトして貯めたバイク購入資金から出してるからな」

(-@∀@)「なにもこんなことに50万も使わなくても……」

( ・∀・)「いや、馬鹿だな兄貴。俺は一円たりとも賞金を渡すつもりはないぜ?」

(-@∀@)「は? だって最後まで逃げ切った奴で山分けって……?」

( ・∀・)「だから、【後まで逃げ切った奴で山分け】だ。3時間以内に全員捕まえたら50万を渡す必要はないわな」

(-@∀@)「お前……本気か?」

( ・∀・)「大丈夫。自信はあるんだよ。それにな」

(-@∀@)「?」

( ・∀・)「人生、リスクがねえとつまんねえだろ! 大丈夫! 兄貴の3万もすぐ返すぜ?」

40名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:10:50 ID:L.s74Y3o0
 
 先ほどしたそんな会話を思い出しながらモララーは説明を続ける。
 彼の持つ拡声器が時折ハウリングしながら、大学の中庭に大きな音を響かせた。
 モララーが言葉を紡ぐたび、ゆっくりと参加者たちのボルテージを盛り上げていく。

( ・∀・)『では、15分後、15時を開始時刻とする! それまでは自由に逃げてくれ! ただし!』

 最後の説明を終えて、彼は壇上からゆっくりと参加者たちを睥睨した。
 一般参加者は最後の飛び入り2人を加えて53名。これら全員を3時間以内に捕まえる。彼はそう決めていた。
 一人で捕まえるには多すぎる人数である。増え鬼という要素を加味してもだ。

( ・∀・)『さて、それとは別に今からとても面白い話をする。興味があるなら出来る限りこの場に残った方が賢明だと、私は思うね』

 捕まえきるのは不可能。そんな安堵感が参加者達に広まっていた。故に如何に生き残るか? それが最大の課題である。
 逆に逃げ切りが多すぎれば、一人ひとり渡る賞金も目減りする。だがそれでも最低1万円。魅力は十分だろう。
 それを打ち砕くのは次の一言である。

( ・∀・)『ビコーズ君。だったかな? ちょっといいかね?』

( ∵)「?」

( ・∀・)『君の趣味のことだがね。昨晩のおかずだよ。いやいいのかな? こんなところで話して』

(;∵)「えっ! 待って! それはやめて!」

( ・∀・)『君の性的嗜好がほらあんなにもこう……』

(;∵)「うわおおおおお!」

 モララーの言葉が何を示すかはわからない。
 だが、彼のものすごい速さで青くなる顔面をみれば、それが何を意味するかは想像に難くない。

41名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:12:21 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「何故か君の、あの趣味がバレてしまうかもしれないなぁ。例えば、君のバイト先とかに……」

(;∵)「ほんと! マジで勘弁して下さい!! お願いですから!」

( ・∀・)「家庭教師と教え子、その関係にいらぬ疑いがかかるかもしれないなぁ」

(;∵)「あ、あわわわ……」

( ・∀・)「ところで関係ない話だがね。いい天気だね。思わず15分位ボーっとしても不思議ではないね?」

(;∵)「はい。そうですね」

( ・∀・)「そうだろうそうだろう。バレるかどうかは君次第だよ。次はデミタスくぅん?」

 それは参加者への脅迫。彼の言葉に対して次々と顔面蒼白していく参加者。
 ゲーム開始前に一気に15名の脱落が確定していた。それはつまり、最初から鬼が15人増えるということだ。
 その意味を参加者たちが把握する頃には、既にゲーム開始まであと5分を切っていた。

(;^ω^)「あ、あいつ、やべえお! そんなのありかお!?」

川 ゚ー゚)「別にルール違反はしてないだろう」

(;'A`)「そりゃそうだけどよ? ルールはセーフでも人間としてはアウトだろあれ!」

ξ゚⊿゚)ξ「てか、クー! あんた笑ってんの!?」

 モララーの脅しが終わると同時、4人組は慌てて中庭から駆け出していた。
 この鬼ごっこ、思ったよりも卑怯な手段を主催者たちは使うつもりらしい。
 いや、最初からルールには卑怯上等とは書かれていたが、参加者たちはその態度から、参加者側が使うものだと思っていたのだ。

川 ゚ー゚)「ん? ああ、なんだ? こんな遊びに本気になったのはいつからだろうと思ってな!」

 指摘された笑顔を、思わず頬を擦って確かめながら、少女は吠える。
 ルールは最大限に使う。たったそれだけの事実によって、彼女の闘志に火が付いたのだ。

42名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:13:35 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「さて……」

 モララーは脅した相手を次々とタッチしていき、その全員にある物を手渡してからつーを振り返る。
 現在、大学内に配置した様々な機器が、つーの持つPCにその情報を伝えていた。

( ・∀・)「次の仕掛けといこうか」

 ゼッケンに取り付けられた機器は、大学敷地内から出れば失格させるように働く。更に長時間同じ場所に隠れると警告が出る。
 それはどのような原理なのか? どのようにして参加者たちの居場所を割り出しているのか?
 単純な仕掛けである。ゼッケンにはGPSと加速度計が取り付けてあるのだ。それにより、参加者全ての位置情報は全てつーのPCに送られていた。

(*゚∀゚)「これ、アリなの?」

( ・∀・)「何もルール違反はしてないな」

 GPSで大まかな位置を割り出し、そこからの移動を加速度計により追跡する。
 3分に一度GPSが作動し、加速度計によるズレを補正する。
 安価な加速度計は誤差が大きいが消費電力が小さいため、そのような形の追跡装置を組み立てたのだ。

( ・∀・)「デミタス君。機械科棟3Fだ。南口から行け。ビコーズ君は2F北側へ急行。階段脇に隠れて待機!」

 そして、鬼となった参加者たちに渡したのは小型の無線機だった。
 彼は15人の鬼を的確に指示していく。参加者たちはまるで詰将棋のように、次々と追い詰められていった。

 開始15分で残る参加者は半数以下となっていた……。

43名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:14:55 ID:L.s74Y3o0
 
 構内放送でアナウンスを告げるつーの声が、大学の敷地内に響き渡る。

(*゚∀゚)『ペニサスさんアウト。残り逃亡者、25名です。頑張って下さい!』

 それは場違いな運動会か何かを彷彿とさせた。

(-@∀@)「開始30分経ってないぞ……マジか……」

( ・∀・)「現時点で半数以下に絞れなきゃ全滅は難しいからな。猛者はどうしても最後まで残る。実力を出される前に潰したい」

 モララーが開始前に脅迫した相手は、ほとんどが身体能力に優れた者たちだった。
 理由は単純。足の速い者が逃げれば追いかけるのは大変だが、鬼となればこれほど心強い者はいない。
 参加受付は一週間前から受け付けていた、その住所から炙り出された猛者は序盤に潰されていた。

 しかし、脅迫できたのはあくまでも弱みを握れた人物だけだ。一番追い詰めたかった猛者数名はまだ逃亡を続けている。

 だが、その猛者たちを潰す計略は二重三重に張り巡らされている。

( ・∀・)「次の手段だ。例の作戦を執行する! 各員、仕掛けに掛かれ! 報酬は弾むぜ? 行け!」

 無線機を通じてその言葉を聞いた何名かが、行動を開始した。
 全てはモララーの手の上でゆっくりと踊り続ける。

44名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:18:48 ID:L.s74Y3o0
 
 クーは女子トイレの個室に隠れていた。

川 ゚ -゚)「よし……」

 参加者の大半が男性である以上、ここに侵入するのは難しい。
 そして、制限時間いっぱいまで隠れた後、複数の出入口から女子更衣室などの同じく侵入の難しいルートへ逃げる。
 これを繰り返すことで、彼女は逃亡を続ける心づもりだった。

川 ゚ -゚)「無線データ良好。鬼の気配はなし」

 更に、今回鬼が使っている無線機は特小無線機というものだ。免許なしで使用できる唯一の無線機であり、一般的にはトランシーバーとして普及している。
 だが、その特性上、周波帯は非常に限られており、彼らの使うチャンネルを割り出すことは非常に簡単だった。
 彼女はその通信を傍受し、更衣室付近の鬼がいないことを確認して、次の潜入場所へと移動する算段を立てている。

Σ川 ゚ -゚)ビクッ!

 立ち上がろうとしたその時、腰に振動が伝わる。
 一瞬遅れてそれがスマートフォンの着信を知らせる振動だと気がついて、彼女は足を止める。
 画面を確認すると、双子の妹からのメールが届いていた。

川 ゚ -゚)「会いたいなら、情報棟の3F女子更衣室へこいっと……」

 なんでも渡したい物があるという。
 次に向かう予定だった女子更衣室を待ち合わせ場所に指定すると、彼女は無線機の傍受を再開した。
 引きこもりがちな妹が珍しく頼み事をしてきたのだ、彼女は少しくらいルートを変えてもよいと判断したのだった。

lw´‐ _‐ノv「あ、お姉ちゃん? この前のシラバスのことなのですが……」

 数分で妹は現れた。やけに到着が早い気がしたが、情報棟にいるからすぐいく、との返事が今になって届いたところだ。
 運が良かったのだろう。と気にも留めなかった。

45名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:19:48 ID:L.s74Y3o0
 
lw´‐ _‐ノv「借りたままで、返し忘れていました。ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「ああ、なんだ。そんなの家帰ってからでよかったのに」

lw´‐ _‐ノv「それと……伝言があります。モララーという人から」

 モララー? 確か鬼ごっこの主催者の名前だ……。

川;゚ -゚)「えっ?」

 ヤバい。咄嗟の判断で走りだそうとした時には、シラバスを受け取った右手を妹が掴んでいる。

lw´‐ _‐ノv「伝言は『タッチ』。ごめんね、お姉ちゃん。ホントごめん」

 羽織ったカーディガンの下、左の二の腕がやけに太いと、その時になって気がつく。
 彼女がチラリとそれをめくると、中には赤地に白文字で鬼と書かれた腕章が、そこに収まっていた。

――――――
―――

―――
――――――

( ・∀・)「阿鼻叫喚だね」

(*゚∀゚)「これは酷い」

( ・∀・)「グループで参加した奴ら結構いたからな。今回参加してない奴で、それらグループと親しい奴らを買収させていただいた」

(;-@∀@)「アリか!? アリなのか!?」

( ・∀・)「初期鬼が僕だけなんて、ルールのどこにも書いてないぞ?」

(;-@∀@)「そうだけどよ! 鬼は全部で何人いるんだよ!?」

46名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:20:52 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「一般参加者は53名。そのうち初期の棄権者が15名。雇った鬼が8名だから、最初の鬼は26名だよ」

(-@∀@)「えっ参加者53名、引く15ってことは、最初の時点で逃亡者38に対して鬼26なの!? それで増え鬼って、そりゃ逃げ場ねえだろ!」

( ・∀・)「更に鬼はネズミ講のように増えていく。現時点で鬼の数はちょうど50名」

(*゚∀゚)「残り時間は2時間。生き残った逃亡者は14名だね」

( ・∀・)「ああ、ちょっと本気、出しすぎたかなぁ?」

(*゚∀゚)「残ってる14人もすごいね。でも、時間の問題だと思うよ」

( ・∀・)「む? デミタス、どうした?」

(;´・_ゝ・`)『す、すみません。逃しました!』

(;∵)『あいつ、化け物ですよ! どうやって捕まえたら……』

( ・∀・)「わかった、俺が出よう。つーさん! 援護を頼む!」

(*゚∀゚)「了解!」

(-@∀@)「俺はここから指示を出す! 今逃したのは、37番。内藤ホライゾン君だな?」


――だが、計算を上回るパフォーマンスを見せる、規格外が一人。

47名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:21:51 ID:L.s74Y3o0
 
 - 途中経過発表 -

◎すてーじ◎
VIP工業大学

◆鬼◆

 ( ・∀・)lw´‐ _‐ノv
 (*゚∀゚)(-@∀@)川 ゚ -゚)
 その他大勢

◇ターゲット◇

 ( ФωФ)(´・ω・`)
  ('A`)
 ( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ
その他大勢

>ごー! ごー! ごー!

48名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:23:08 ID:L.s74Y3o0
 
(;´・_ゝ・`)『ターゲットは機械科棟3F西側を逃走中! 援護を!』

( ^ω^)「なんのこれしき!」

(;∵)『こっちで待ち構え――ダメだ抜かれた!』

 狭い廊下を一人の男が風となって駆け抜ける。
 3人の鬼が捕まえようと待ち構えるも、素早い身のこなしでその脇をすり抜けていく。
 まるでバスケの試合でも見ているかのように、的確なターンとフェイントを繰り出し、触れることすら叶わない。

( ・∀・)「化け物じみてるな。東側通路へ誘導してくれ!」

('、`*川『了解です!』

 無線機を使い指示を出しながら10名の鬼が彼を追い詰める。
 だが、無駄!
 全員がまるで子供のように彼にあしらわれていく。

( ・∀・)「よし来い!」

 だがそれでも、鬼たちにより彼は東側通路へと誘導されていく。
 そこではモララーが3人の肉壁を形成していた。

( ^ω^)「お?」

 慌てたブーンが振り返ると、追いついた残りの鬼たちが反対側の通路を塞ぐ。
 たとえ教室に入ったところで、そのまま出入口に人を残して教室で隠れて良い30分を経過させるつもりでいた。

( ・∀・)「詰んだ!」

 それでも、彼は止めることはできない。

49名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:31:44 ID:L.s74Y3o0
NGワードに苦戦中です。どれがNGなのかわかんねえ。
少々お待ちを

50名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:35:58 ID:L.s74Y3o0
 
(;^ω^)「……まだ、まだだお! もっと俺に生きる実感をくれお!」

 通路の両サイドを包囲され、ジリジリと追い詰められていくブーン。
 得意のターンとフェイントも、通路を隙間なく塞がれては効果が無い。はずだった。

( ^ω^)「空も飛べるはず!」

 鬼たちが飛びかかるように彼をタッチしようとして、しかし、その手は空を切る。
 ブーンは迷いなく、廊下の窓から飛び降りたのだ。

(;´・_ゝ・`)「はい?」

(;・∀・)「おいおい? ここ3階だぞ!?」

 慌てて追いかけようとするも、地面は遠く死を彷彿とさせる高度だ。
 しかし、下を覗きこめば、見るからに重そうな巨体が足を振り回すように受け身をとって着地に成功していた。

(;・∀・)「五接地転回法…… 空挺隊員かよ!?」

 それは落下傘兵などが高所からの着地に使う技術だ。
 身体をひねりながら衝撃を5箇所に分散して着地することにより、7メートルの高さから落下しても無傷で着地を成功させる。
 ブーンという男はパルクールを中学生の時からやっていた。その技術を持つ彼を止められる人間など、早々居ない。

(;・∀・)「……奴を追うのは、時間がかかりすぎる。鬼が増えてから再度狙う!」

 判断は一瞬。モララーは浪費した時間を取り戻すべく、次々と指示を出す。
 その間にも、兄の指示で3人が捕らえられている。
 3時間という制限時間は、可能な限り有効活用しなくてはならない。

51名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:37:12 ID:L.s74Y3o0
 
(;ФωФ)「行ったか?」

 杉浦は小柄な体躯を活かし、排気ダクトにその身を潜ませていた。
 ここなら一定範囲に留まり失格する前に、隠れたまま移動することが可能だ。
 歩くたびにベコベコと音が鳴り、鬼に気づかれるかと肝を冷やすが、それだけである。

(;ФωФ)「しかし、もう暑い季節であるな」

 その日は4月と本来まだまだ肌寒い季節ながら、日差しが刺すように暑い日だった。
 当然、排気ダクト内は蒸し風呂のように暑い。
 これが夏ならば確実に参っていただろうが、今日はギリギリ耐えることができそうである。

(;ФωФ)「む?」

 何か下で気配がする。
 鬼たちだろうか? それとも他の生徒? いずれにせよ、ひっそりと身を潜ませるしかない。
 あのモララーだ。隠れている情報を他の生徒に聴きこみする可能性は否定できない。

(;ФωФ)「あ……」

 次の瞬間。ダクトの天井入り口が開放され、何かが排気ダクト内に侵入してきた。
 それは小さな缶詰か何かに見える。コロコロと転がるそれに、杉浦は見覚えがあった。
 慌てて離れようと振り返れば、反対側からも同じ物が投げ込まれいる。

(;ФωФ)「や、やばっ!」

 それが何かを把握した瞬間、彼は激しい音が響くのも構わず出口を目指した。
 しかし、無情にも缶詰は排気音を立てて、煙を撒き散らす。
 慌てた勢いで天井から落下する杉浦。ゲホゲホと咳込みながら顔を上げれば、何人もの男たちに囲まれている。

(;ФωФ)「バ、バルサンはヤバいである!!! 殺す気か!!!」

 叫びも無情に、彼は鬼にタッチされた。

52名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:38:59 ID:L.s74Y3o0
 
 ギリースーツを身にまとい、草むらに身を潜ませていたドクオは無線機に耳を当てる。
 無線機では排気ダクトに隠れた輩を追い立てるため、バルサンを炊く算段を立てている。
 持っているのかと疑問がよぎるが、ダクトに逃げ込む事を想定して準備していたようだ。

(;'A`)「えげつねえ……」

 その後も次々と挙がる戦果に、思わず独りごちた。
 彼はギリースーツと得意の隠蔽術を使い、巧みに鬼の追跡を躱している。
 さらに、身体にはアルミホイルが巻かれており、それがゼッケンを覆い隠していた。

('A`)「このアルミがなきゃ今ごろ捕まってたな」

 GPSや加速度計により位置を割り出していることは、基板を見て既に把握済みである。
 だが、それら情報を伝えるには何らかの電波による通信が必要となる。
 そこで彼は電波を遮断するアルミホイルでゼッケンごと身体を隠し、通信そのものを遮っていたのだ。

('A`)「これで一定箇所に留まっても失格にならねえ。それを判断するGPS信号が途絶えているからな」

 更に彼は無線を傍受することで、位置取りを的確に変更し、圧倒的な有利を形成している。
 念に念を入れた手の込みようで彼は確実に勝利へと近づいていた。

( ・∀・)「甘いね」

(;'A`)「な!?」

 そのはずだった。だが、予想外は唐突に現れる。

53名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:41:52 ID:L.s74Y3o0
 
(;'A`)「なぜバレた!?」

( ・∀・)「君の念の入りようが逆に痕跡を残した。君がギリースーツとアルミホイルを入手した情報はこちらが握っている」

(;'A`)「ま、まさか!?」

( ・∀・)「ギリースーツがあるならば、隠れるのはこのような草むらに限られる」

 慌てて飛び出すも、既に無数の鬼に囲まれていた。
 何故? どうして? そんな疑問が脳を埋め尽くすが、答えは出ない。

( ・∀・)「その上、最初の5分でアルミホイルを購買で購入した判断は流石だよ。だから見つけるまで少々手間取った」

(;'A`)「い、いつから気がついていた?」

( ・∀・)「最初からだよ。ギリースーツと聞いてから、鬼たちに隠れられそうな草むらを探って貰ったんだ」

(;'A`)「む、無線にはそんな情報はなかったはずだ」

( ・∀・)「君が無線を傍受していたのも知っている。だから君のためにLINEでもやりとりをしていたのさ」

(;'A`)「そ、そんな……」

( ・∀・)「念を入れすぎたのだ。無線を傍受していなかったら、安心せずに警戒していたかもしれないがね」

 無意識に後ずさっていたのだろう。誰かに背中がぶつかる。
 振り返るとそれは、最初に脅迫されていた誰かだった。

(´・_ゝ・`)「タッチ」

(;'A`)「ちくしょおおおおお!!!」

54名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:42:39 ID:L.s74Y3o0
 
 - 途中経過発表 -

◎すてーじ◎
VIP工業大学

◆鬼◆

 ( ・∀・)lw´‐ _‐ノv( ФωФ)
 (*゚∀゚)(-@∀@)川 ゚ -゚) ('A`)
 その他大勢

◇ターゲット◇

 (´・ω・`)( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ
その他数名

>ごー! ごー! ごー!

55名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:44:42 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「次の作戦だ! 放送開始!」

(*゚∀゚)『ピンポンパンポーン! 残り時間、1時間30分です。現在、逃亡者は10名となりました。現時点で賞金5万円が確定します』

 放送と同時に、モララーが無線機で鬼に連絡を取る。

( ・∀・)「鬼ども! 連絡事項だ! 耳の穴かっぽじってよく聞け!」

(*゚∀゚)『言い換えれば、今からは誰かを犠牲にすれば、一気に増額します。5名まで減れば10万円。2名まで減れば25万円』

( ・∀・)「参加者同士で裏切ってようが口車に惑わされるな! 指示を優先せよ! 潰し合いが起きても無視だ!」

(*゚∀゚)『皆さん。頑張って逃亡して下さい』

( ・∀・)「狙うは全滅! 裏切った奴は疲れきってる、疑心暗鬼で体力を削るのが目的だ! 裏切り者も裏切られた奴も両方とも潰す!」

(*゚∀゚)『訂正いたします。残り8名です。頑張って逃亡して下さい』

(-@∀@)『潰し合いが早速起きたぞ! 狙え狙え!』

56名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:47:17 ID:L.s74Y3o0
 
 放送を聞いて、ひとりごとを思わず呟く男が一人。

(´・ω・`) 「意地の悪い……」

 それはショボンだ。彼は3人に追いかけられながらも純粋なスタミナを持って、追っ手を振りきっていた。
 彼は飛び抜けた持久力を持つ、逃亡者に最も必要な要素を彼は持っていた。
 汗を拭い、息を整える。まだ走れる。まだやれる。いける。最後まで逃げ切れる。
  _
( ゚∀゚)「おい、お前。これ落としたぞ?」

(´・ω・`) 「え?」

 その時、見知らぬ生徒がこちらに声を掛けてきた。
 大きな大学だ、知らない生徒も多いが、なんとなく同じ1回生のように見える。
 彼は落としたハンカチを拾ってくれたらしい。

(´・ω・`) 「ああすまん」
  _
( ゚∀゚)「いいってことよ」

 それを受け取ろうとした時、ある言葉が脳裏をよぎる。
  _
( ゚∀゚)「どうした?」

(´・ω・`) 「すまんね、パーカーを脱いでくれないか?」

 それは、罠の文字。
  _
( ゚∀゚)「いいぜ、ほらよ」

 パーカーの下に腕章はない。杞憂か。そう思ってハンカチを受け取る。その直後――

57名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:48:06 ID:L.s74Y3o0
 
 スッと男は後ろに回りこんで、その手を捻り上げる。
 それは警察がよく使う逮捕術の一つ。手錠を掛ける定番の動きだった。
  _
( ゚∀゚)「悪いね」

(;´・ω・`) 「えっ! な!?」
  _
( ゚∀゚)「お前は素直に追いかけたら時間がかかる。罠を使わせてもらったぜ」

 その言葉を聞きながら、ぞろぞろと出てくる鬼に囲まれて、彼の目的を理解した。
 つまり、鬼以外による捕縛。
 振りほどくのは容易だ。彼は武術の経験があるわけではない。ショボンは参加者随一の腕力も持つ。だが……

( ・∀・)「数秒の時間が稼げれば、追いつかれるのは時間の問題だ」

 既に時遅し、大量の鬼がわらわらとショボンを取り囲んでいく。

(;´・ω・`) 「くっ」

( ・∀・)「もはや残る人数は少ない。一人につき20名以上が囲む状況で、逃げられるとでも思っているのかね?」

(;´・ω・`) 「くそおおおおおお!!!」

 雄叫びは暗くなり始めた空に消える。
 残り時間は1時間。逃亡者4名。

58名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:51:22 ID:L.s74Y3o0
 
(;-@∀@)『やべえ屋内は無理だ! 地上だ! 地上に追い込め!』

(;・∀・)「屋内から追い立てる! A班は南口から! B班は北口で待ち伏せせよ! 気を抜くなよ!」

( ^ω^)「ぬるい! 軽い! 甘い! 脆い! 亀ですか貴方は!」

川;゚ -゚)『ダメだ! ブーンを部屋に入れるな!!』

( ^ω^)「アイ! キャン! フラアアアアアイ!」

('A`)『こちらC班。すみません。窓から飛ばれました』

(;・∀・)「くっ…… D班地上だ! 行け! こちらは北方面を封鎖する!」

 残り時間10分となっても、鬼たちは一人の逃亡者を捕まえられずにいた。
  _
( ゚∀゚)「やべえなあの男。どういう身体してんだ?」

 素直シュールやジョルジュ長岡による騙し討ちを野生的な勘で看破。
 ドクオのギリースーツによる待ち伏せを遠方から見抜いて回避。
 ショボンら体育会系の必死の追跡に対しても、息ひとつ乱さない。

 たった一人の人外を前に鬼たち59名は苦戦を強いられていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン! こっち!」

 この綱渡りのような曲芸は、もう一人の少女によっても支えられていた。
 二人はまるで示し合わせたかのように、完全なタイミングで連携し鬼たちを翻弄する。

 ツンを追い詰めれば窓から飛んでブーンが受け止め、二人を追い詰めれば解散して鬼を分断する。
 二人は天下無敵のコンビネーションを誇って、残り時間を稼いでいく。

59名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:54:13 ID:L.s74Y3o0
 
(*゚∀゚)「やばいよモララーさん! あと3分だ!」

(;・∀・)「くっそ、つー。情報棟の南口にこれるか!?」

(*゚∀゚)「……わかった。やってみる!」

(;・∀・)「2階から飛ぶ気か!?」

(*゚∀゚)「出来るよ! 受け止めて!」

(;・∀・)「おいバカ! ……あっぶね!」

(*゚∀゚)「ナイスキャッチ! わわわ! ごめん。あの二人みたいにはいかないね!」

(;・∀・)「ドジ! 怪我してないか?」

(*゚∀゚)「大丈夫! それで? 作戦は!?」

( ・∀・)「何も飛ぶ必要はなかったんだよ……作戦は既に仕込んである。お前は放送をしてこい」

(*゚∀゚)「へ? でも、逃亡者はあと二人も……」

( ・∀・)「んー? そうでもないんだなーこれが」

(*゚∀゚)「え? あー……そういう……」

 モララーが目線を外し、つーがそれを追いかけ、その人物を見て意味を理解する。
 なるほど、決着はすでについていたのだ。

60名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:54:56 ID:L.s74Y3o0
 
( ^ω^)「お? 皆諦めたかお?」

 環境科棟脇の通路で一息をつく。残り時間は後2分。
 しかし、ブーンの周りには鬼がいなくなっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「こっちはまだ追ってくる! ブーンこっちよ!」

 鬼たちは狙いをツンに絞ったのか、多数の鬼をかいくぐりながら、ツンがブーンの真上、その窓から飛び降りる。

( ^ω^)「ツン! 手を出さないで! 着地姿勢だお!」

 そして、いつもどおりのコンビネーションを発揮して、ツンの窮地をブーンが救おうとする。
 一人でも競争者がいないほうがよいルールでありながら、この協調性のために、二人はここまで生き伸びることができたのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「ナイスキャッチブーン! でもね」

 だが、それもここまで。
 残り時間1分前。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン。タッチ! さっきこれ、取りに行ってたんだ」

 最後の逃亡者が捕まった。

(;^ω^)「お?…… ど、どどどどういうことだおおおお!?」

 ツンの二の腕には初期の鬼を示す腕章がついていた。

61名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:55:59 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)『えー諸君らの健闘もむなしく、逃亡者全滅という結果になりました』

 開幕式とは違い、威勢のいい返答は帰ってこない。
 全員が精魂尽き果てた顔をしている。

( ・∀・)『諸君らは勇者であり、知恵の回る者も多数居た。だが、私の知略がそれを上回った。それがこの結果である』

('A`)「知略? 知略ってなんだ?」

川 ゚ -゚)「若さだ」

ξ゚⊿゚)ξ「それなんかいろいろと違うわ」

( ・∀・)『残念ながら賞金を渡す相手はいないが、諸君らの健闘を讃えて、我が映画研究会への入部を送ろう!』
  _
( ゚∀゚)「参加を頼まれた時はビビったわー」

(´・ω・`) 「うーん、君のあの不意打ちは読めたと思ったのになぁ」

( ・∀・)『別に幽霊部員でも構わないし、来年になったらやめてくれてかまわん。あと、鬼ごっこの再戦はいつでも受け付けよう! 私に勝ちたいのならば!』

 参加者たちには卑怯を非難する声はない。
 それどころか、自分たちがどういう状況で捕まったのかをお互いに自慢しあっている有り様だ。
 その空気を作ったのは、間違いなく、この圧倒的卑怯な状況に負けず、あと一歩というところまで逃げ切った男の存在だろう。

( ・∀・)『ちなみに部費は1万な。後で徴収するので入部届と一緒に持ってきてくれ。以上! 解散!』

 こうして、戦いは幕を閉じた。

62名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:56:58 ID:L.s74Y3o0
 
 - 最終結果発表 -

◎すてーじ◎
VIP工業大学

◆鬼◆

 ( ・∀・)lw´‐ _‐ノv( ФωФ)( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ
 (*゚∀゚)(-@∀@)川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`)
 その他大勢

◇ターゲット◇

 のーきゃらくたー

>あーゆーくれいじー?

63名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 20:58:46 ID:L.s74Y3o0
 
 後日、映画研究会の部室は部員たちでいっぱいだった。

(*゚∀゚)「一体何人に手を回してたのさ!」

( ・∀・)「11人くらいかな。全員1万円で買収したのだ」

ξ゚⊿゚)ξ「まさか参加者に混じってスパイをしてくれだなんて、どういう思考してたら思いつくわけ?」

(;'A`)「俺のギリースーツや無線機がバレてたのはそれか!?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、リークさせてもらったわ。他にもクーに双子の妹がいるとか」

( ^ω^) 「え? じゃあ何度もタッチすること出来たのかお!?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。でも、合図があるまでは参加者のフリをしてろって、モララー君がね」

( ・∀・)「なに、内藤君は最後まで逃げると予想済みだった。途中、わざと振り切らせて諦めさせもしたしね」

川 ゚ -゚)「つまりあれか、あそこまでしても逃げてる奴がいる、俺達の詰めが悪かった。そういう空気を作るためか?」

( ・∀・)「ああ、全てはそのためだけに泳いでもらったのさ。先回りもできたがしなかったのもそのためだ」

(-@∀@)「うん、それはいいんだけど。これはなに?」

( ・∀・)「見てわからないかい? 兄さん。領収書だよ。エキストラの雇用費にGPS加速度計付きのゼッケン53人分。その他諸々50万円」

64名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:03:32 ID:L.s74Y3o0
 
(-@∀@)「それが最初の50万と? 捕まえきれなかったら賞金どうするつもりだったんだてめえ!」

( ・∀・)「捕まえたんだから文句いいっこなしだぜ兄貴」

(-@∀@)「てか、お前、50万ビタ一文も払うつもりないんじゃないのか?」

( ・∀・)「うん。だから返してもらうよ? 部費から」

(-@∀@)「待て待て待て待て! 映画撮ってないのに部費使ったら顧問になんて言えばいいんだよ!? 用途不明金扱いに……」

( ・∀・)「それも考えてあるにきまってるだろ? つーちゃん?」

(*゚∀゚)「はーい、仕掛けて置いたカメラや、監視カメラ、ゼッケンのCCDカメラの映像回収してまいりましたー」

(-@∀@)「……どういうこと?」
  _
( ゚∀゚)「はっはっはっは! ちゃんと撮影してたわけか! あの鬼ごっこ!」

( ・∀・)「じゃなきゃ許可が下りないって、うまく編集すれば使えるだろう? 大逃走劇ドキュメンタリーだ!」

(;-@∀@)「お、お前ってやつは……」

( ・∀・)「まあなに、捕まえきれなかったら、俺の貯金から出したさ。言っただろ? 人生リスクがねえとつまんねえってな!」

( ^ω^) 「ぐぬぬ……納得できねえお! もう一戦! 今度はかくれんぼで勝負だお!」

( ・∀・)「お? やるかぁ? 次は賞金でねえぞ?」

川 ゚ -゚)「なら、代わりに賞品を出そう。そうだな、家にロマネコンティがあるぞ」

( ФωФ)「ま、マジであるか!? そのかくれんぼ! 我輩も参戦するである!」

 結局、参加者60名の大半は幽霊部員となった。それにより、下らない、だが譲れない戦いを好む者だけが残る形となる。
 これが彼らのサークル「映画研究会」が出来るまでの流れだった。

65名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:04:38 ID:L.s74Y3o0
以上、次は来週か再来週か。
次は2回生の11月。無人島でのバカンス(冬)をお送りいたします。

66名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:06:33 ID:W5UcMUq20
乙!
一話で言ってた鬼ごっこってコレのことだったのか……
今回も相変わらず面白かった!

67名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:15:27 ID:mYa5lnsQ0
謳歌スレじゃないか!生きていたのか!

68名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:21:57 ID:L.s74Y3o0
>>66
一話というか、水鉄砲で言っていた無線機使った鬼ごっことはこれのことです
ちなみに缶蹴りで触れられているかくれんぼは、この後行うロマネコンティ争奪戦のことになります
シューがつーの怪我を知らないのは、入部がかくれんぼの後だからですね

69名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 21:55:24 ID:4.urWUFk0
おおおお!謳歌じゃねえか!!
大好きなんだ!!3話と言わずもっと書いてくれ!!

70名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 22:17:50 ID:L.s74Y3o0
>>67
残念ながら生きていました

>>69
構想だけならケイドロやかくれんぼ、色鬼。はみ出し者たちの鬱屈とした高校時代の話
ショボンの彼女の話とか罰ゲームでゴキブリ食べる話とかジョルジュとつーのその後とかブーンの妹が入部するとか

色々あるのですが、忙しさもあってどこまで書けるかは未定です。
一応3話を区切りにしてますが、そのうち書くかと思います。

71名も無きAAのようです:2015/05/08(金) 00:13:01 ID:s5RpEF8M0
楽しみにしてるぜ!
乙!

72名も無きAAのようです:2015/05/08(金) 03:20:45 ID:kMlTESuU0
ゴキブリかぁ…
昔食ったことあるけど不味くはないんだよなあれ

73名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 08:58:46 ID:d9eA5sk20
前回のも読み返してきたぜ
次の更新も楽しみにしてます

74名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 17:59:52 ID:wl1dyKH60
違ったら申し訳ないが異食の人?

75名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:39:41 ID:5XbSlHdI0
無人島が長くなりそうなので、少々意見を募集します。

1.とりあえず、短い話(だるまさんがころんだ)を投下し3話目とする。
2.すべこべいわずに3話目終わらせて投下する。
3.(4泊5日の旅なので)5話に分割して投下する。

最初の意見をとりいれます。

>>72
種類によりますが、マダガスカルヒッシングローチはフルーツみたいな味がして美味でしたね
今飼ってるので、唐揚げ参考画像とか作れますよ

>>74
実は、水鉄砲は異食を読んで触発されて書いた話だったりします。
僕は花束とか呼ばれて居た人間です。

76名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:47:58 ID:GIoPn6xs0
花束ってもしかしてまとめの…!?
3でじっくりかいてほしいなぁ

77名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:55:01 ID:5XbSlHdI0
では3で

無人島生活1日目、投下開始いたします。

78名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:56:23 ID:5XbSlHdI0
 
 季節は秋も終わりかけた11月。深夜2時を少し過ぎた頃。

 
(#・∀・)「うぃーあー!」
  _
( ゚∀゚)( ・∀・)lw´‐ _‐ノv「「「「「Fighting Dreamers!」」」」」(゚∀゚*)(・ω・` )(ФωФ )

( ・∀・)「たーかみを目指して」
  _
( ゚∀゚)( ・∀・)lw´‐ _‐ノv「「「「「Fighting Dreamers!」」」」」(゚∀゚*)(・ω・` )(ФωФ )

( ・∀・)「なーりふり構わず」
  _
( ゚∀゚)( ・∀・)lw´‐ _‐ノv「「「「「Fighting Dreamers!」」」」」(゚∀゚*)(・ω・` )(ФωФ )
                                                   _
( ・∀・)「ちーん汁がママに! Oli Oli Oli Oh-! ジャス ごーまいうぇー!」( ゚∀゚)「Right here Right now」

lw´‐ _‐ノv( ・∀・)「「「「「Bang!」」」」」(゚∀゚*)(・ω・` )(ФωФ )
  _
( ゚∀゚)「ぶっ放せ Like a 弾丸ライナー! Right here Right now」

lw´‐ _‐ノv( ・∀・)「「「「「Bang!」」」」」(゚∀゚*)(・ω・` )(ФωФ )
  _
( ゚∀゚)「ぶった斬ってくぜ Get the fire!」

 彼らは珍しく酔いつぶれることをせずに、カラオケに興じていた。

79名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:57:16 ID:5XbSlHdI0
.



( ・∀・)たちは無人島生活を謳歌するようです



.

80名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:58:00 ID:5XbSlHdI0
  _
( ゚∀゚)「モララー、信じるじゃなくてちん汁って歌っただろおい」

( ・∀・)「なんのことかな?」

lw´‐ _‐ノv「あ、次私だ」

( ・∀・)「王国ktkr!!」

( ФωФ)「カラオケあったのか」

(*゚∀゚)「……モラちんとシューちんの歌う歌は、半分くらいわからない」
  _
( ゚∀゚)「安心しろ、俺もだ」

lw´‐ _‐ノv「ゆーがーんーだーおーおーこーくーにー ぼーくーたーちーはー住ーんでる」

( ・∀・)「いや待て、王国は名曲だぞ」

(´・ω・`)「歌詞、ヤンデレだけどいい曲だよね」

lw´‐ _‐ノv「ゆーがーんーだーかあがーみーをー 守ってーいーるー」

( ・∀・)「それがいいんだよ! 次、谷山繋がりで海の時間入れようかな?」
  _
( ゚∀゚)「あ、まて、俺入れてない」

81名も無きAAのようです:2015/05/09(土) 23:59:33 ID:5XbSlHdI0
.


lw´‐ _‐ノ「翼あるーとーりーはー つーばさをーもーぎーとーれー」

lw´‐ _‐ノ「世界へとつーづーく 通路をとざーせーすーべーてー」

lw´‐ _‐ノ「そしてぼくーたーちーはー 王宮のーゆーかーにー」

lw´‐ _‐ノ「輝くいつーわーりのー 歌をきざーみーつーけーたー!」


.

82名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:00:13 ID:n01.2VLg0
 
lw´‐ _‐ノv「きーみーをーえーいえーんにー ぼーくーはーあーいしー続けるー」
  _
( ゚∀゚)ピピッ

(´・ω・`)「ダンデライオン……バンプ好きだね、ジョルジュ」

lw´‐ _‐ノv「きーみーだーけをぼーくーは あーいしー続けるー」

(*゚∀゚)「しかし、シューちゃんが上手すぎて次歌いにくい……次私だよう」

( ФωФ)「姉の方が上手いと聞いたが」

lw´‐ _‐ノv「いや、クーおねーちゃんも上手いけど、ブーンの方が上手い。あいつどこまでもビブラートかけてくる」

(´・ω・`)「なにその難しい割りに気持ち悪いの」

lw´‐ _‐ノv「例えば高校の頃、ブーンが軽音部のライブでボーカルに喧嘩売られて」

(; ФωФ)「えっ? どういう状況であるか?」

lw´‐ _‐ノv「元々仲悪かったんだけど、文化祭の冗談でね。そしたら、それに便乗してライブに割り込んで」

(*゚∀゚)「ブーン……負けず嫌いだからなー」

lw´‐ _‐ノv「ブーンの演奏も唄も、軽音部より上手くて盛り上がって、軽音部がすっごい気まずそうにしてた」

( ・∀・)「なにその楽しそうな状況……。ちょっと、向こうの部屋の様子みてくるわ!」

83名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:00:55 ID:n01.2VLg0
.
 
 
 
(*゚∀゚)「私 待ーつーわっ いつまーでも待ーつーわっ」

(*゚∀゚)「たとえあなーたがー 振り向いてくれなくてもー」

(*゚∀゚)「待つわ 待ーつーわー いつまーでも待ーつーわっ」

(*゚∀゚)「他の誰かに あなたがー ふられる日までー」



.

84名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:01:37 ID:n01.2VLg0
 
川 ゚ -゚)「どうしよう……」

( ^ω^)「太陽が登り切る前にぃー あなたぁーを抱きしめていーたい 月が闇のみぃーこむ前に あなたを抱きしめていたい」

<ガチャッ

( ・∀・)「ようっ! 様子見に来たよ」

( ^ω^)「はーんぶーんこー した 愛の欠片をー 今でもまーだ 持ってますか」

川 ゚ -゚)「おお、丁度いいところに来た、今ドクオのPCから強制出力して曲を流し込んでいるんだが……」

( ・∀・)「なんでだよ……」

川 ゚ -゚)「いや、歌いたい歌がカラオケ入ってなくてな。見ろ、20Gもあるのにまともな曲がない!」

( ^ω^)「はーんぶーんこー した 愛の欠片をー 今でもまーだ 持ってますか」

('A`)「まともな曲がないとは失礼な。名曲ぞろいだぞ」

( ・∀・)「ほう……うん、例えばこの七英雄戦は名曲だ。だがここはカラオケだ」

('A`)「迂闊だった……」

( ^ω^)「はーんぶーんこー した 愛の欠片を 今でもまぁだ 持ってますかー!」

85名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:02:17 ID:n01.2VLg0

 
( ^ω^)「二人で歩いた街ーなーみ 二人で交わす 初めてーのキス」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンうるさい! ハウってる! 誰かマイクの音下げてー」

( ・∀・)ピッピッピ「ブーン声量すげえ、マイクいらねえだろこれ」

( ^ω^)「二人で眠る 夢の 中 二人で歌う 恋ーのうた」

川 ゚ -゚)「上手い奴って声量あるのなんでだろうな。あ、しまった。出力ケーブルがない」

( ・∀・)「あ、車にあるよ、取ってこい!」

('A`)「でかした取ってくる!」

( ^ω^)「二人で歩いた街ーなーみ 二人で交わす 初めてぇーのキス」

川 ゚ -゚)「いってこい。あとでハグしてやるから」

( ・∀・)「というか、俺にはそこまでして曲を入れる意味がわからない」

( ^ω^)「二人で眠る 夢の 中 二人で歌う 恋ーのうた」

川 ゚ -゚)「非リアには厳しいカラオケ空間を快適にする生活の知恵だ」

ξ゚⊿゚)ξ「私には皆でカラオケ来たのに、ずっと携帯で株の相場追ってる方がわからないわ」

川 ゚ -゚)「あ、それはマジですまん。しかし、ちょっと今はザラ場見ないと荒れててな」

('A`)「あ、待って。次誰だっけ? 俺? 歌ってからいく」

川 ゚ -゚)「はよいけ」

86名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:02:59 ID:n01.2VLg0
 
 
( ^ω^)「はーんぶーんこー した 愛の欠片を 今でもまーだ 持ってますか」

(#^ω^)「はーんぶーんこー した 愛の欠片を 今でもまぁだ 持ってますかああぁあぁぁ!!」

( ^ω^)「おおーつぶの しおっからい 涙が溢れてくるほどー!」

( ^ω^)「あなたをー 愛してるー あなたを愛してるー」

(#^ω^)「おおっつぶのっ しおっからいっ 涙が 溢れてっくるほどおお!」

(#^ω^)「あなたをー 愛してるぅぅ あなたを愛してるうううぅうぅ!」

87名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:03:46 ID:n01.2VLg0
 
('A`)「ナイーフでー 裂かーれてー 飲み込まれる前にー いいいいー」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、この曲、わからないけど聴いたことある」

川 ゚ -゚)「蒼穹のファフナーのOPだな、私たちが小学校の頃の深夜アニメ」

('A`)「僕らは目指したー シャングリラー 欲望ーは抑えきれずーにー」

( ・∀・)「懐かしい……サビ入るまで思い出せなかった」

( ^ω^)「僕も……まあ、サビしか知らない曲で有名だお」

(#'A`)「糞ーにまみれたー 「自由ー」を求めつづーけーたー!」

ξ#゚⊿゚)ξ「オイ」

( ・∀・)「糞まみれ懐かしいwwww」

('A`)「今ーならー あ、無理高音もう出ないクーパス」

( ^ω^)「諦めんな」

川 ゚ -゚)「……がそうー楽園さーあー さよならー蒼きひーびーよー いえええ!」

( ・∀・)「よくもまあ、マイク渡されてすぐに声裏返せるね」

88名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:04:31 ID:n01.2VLg0
.


('A`)「幼いー僕らはー 的外れだらけさーいえいえー!」

('A`)「満ち足りた日々のー制圧はー 情緒不安定にーなーる」

('A`)「傷をー負ってでもー 羽ばたーきたいとねがーうーよー」

('A`)「愚ーかでーいいのだろうー みわーたすー夢の痕ー」

('A`)「さよならー蒼きひーびーよーいえええ!」


.

89名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:05:40 ID:n01.2VLg0
 
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、次私だ」

('A`)「おい。モラ、こっちで歌ってけ」

( ・∀・)「いや、向こうで入れてる曲あるから、こっちじゃ歌わないよ」

('A`)「ブーンとクーが上手すぎて歌いにくいんだよ……」

( ・∀・)「その気持ちはわかるが、俺はそろそろ戻る。ケーブル勝手に持ってっていいから」

ξ゚⊿゚)ξ「だーいじなーものーをー 強くにぎりーしーめたらー」

ξ゚⊿゚)ξ「こぉなごなになーって 指の隙間から落ちていったー」

ξ゚⊿゚)ξ「だからー今度ーはー そおっと手のひーらに乗せてみたらー」

ξ-⊿-)ξ「おーとも立てず風にー ふーかれてー消えてしまーったー」

川 ゚ -゚)ピピピッ「ああ、入れ忘れてた」

( ・∀・)「クローバーきた!」

( ^ω^)「行くんじゃなかったのかお? 何の曲?」

( ・∀・)「夏祭りのジッタリンジンの隠れた名曲。ってか、さよなら紅白のBGM!」

90名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:06:25 ID:n01.2VLg0
.

 
川 ゚ -゚)「空をー みーてる 君のーよぉこが一番好ーきなーばーしょだーったー」

川 ゚ -゚)「ふーたーりーで摘んだー よーつ葉ーのクローバー 指にーはーさんでー 願いを か け る」

川 > -<)「どこにーいて なにをしーて 誰を好ーきになってもー」

川 ゚ -゚)「いつまーでーもーわーたしのことー 忘れないでいてねー」


.

91名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:07:21 ID:n01.2VLg0
 
(´・ω・`)「僕たちで誓う この距離がー 開いたって消えぬこの距離がー」

(´・ω・`)「いつも今日も明日も明後日もー おおぉおぉぉぉ」

( ・∀・)「ただーいまー」

(*゚∀゚)「お帰りー。次の次がモラちんだよー。「月のひざし」って歌」

(´・ω・`)「さしあたって僕はあの彦星ー いうなれば君は織姫星ー」

( ・∀・)「遠恋だっけこのky……おい、次の曲入れたの誰だ」

(´・ω・`)「ジャンで ケンで ポンで勝った方が川渡ってー会いにいくことにしよう」

( ФωФ)ノ「我輩の津軽海峡冬景色である」

(´・ω・`)「なんて渋いもんを入れてるんだロマ……」

( ・∀・)「あ、どうしよう」
  _
( ゚∀゚)「どした?」

( ・∀・)「なんだろう、津軽海峡って聴いてたら、なんか猛烈に漂流したくなった」

lw´;‐ _‐ノv「えっ」

92名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:09:07 ID:n01.2VLg0
 
 - 開始前発表 -

◎すてーじ◎
無人島

◆あらいぶ◆
  _
( ゚∀゚)ジョルジュ長岡 (*゚∀゚)つー・ちゃん
( ・∀・)モララー lw´‐ _‐ノv素直シュール
(´・ω・`)ショボ・ショボン ( ФωФ)杉浦ロマネスク
( ^ω^)内藤ホライゾン ξ゚⊿゚)ξ ツン・デレ
川 ゚ -゚)素直クール ('A`)鬱田タケシ

◇でっど◇

のーきゃらくたー

>れでぃ?

93名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:10:28 ID:ZeLbGZAc0
どういう思考回路してんだマジで……

94名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:10:48 ID:n01.2VLg0
 
◎いちにちめ

( ・∀・)+「と言うわけでやってまいりました、蒼い海! 白い空! 輝く太陽! 無人島!」

 数日後、彼らは無人島に立っていた。

lw´;‐ _‐ノv「……」
  _
(; ゚∀゚)「……」

(*゚∀゚)「……」

(;´・ω・)「……」

(ヽФωФ)「……」

(;'A`)「……」

(ヽ ^ω^)「……」

川*゚ -゚)「〜♪」

ξ;゚⊿゚)ξ「えー……?」

 モララーの徴集から、まともな説明を一切受けずに……。

95名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:12:20 ID:n01.2VLg0
  
( ・∀・)「あ、元気な奴は荷物出すの手伝って、忘れ物あると最悪死ぬよ」
  _
(; ゚∀゚)「お、おう」

(*゚∀゚)「あ、私も手伝うよー」

(;´・ω・)「車から運んだ時にも思ったけど、凄い量だね。車4台分って……」

( ´∀`)「おう、坊主。五日後に迎えにくりゃあええんやろ?」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、五日?」

( ・∀・)「ええ、それで問題ありません。こんな穴場を紹介して貰えるなんて、本当に感謝してます」

( ´∀`)「ええよええよ。気ぃせんとき」

( ・∀・)「いえいえ。あんなことでよかったなら、いくらでも手を貸しますよ」

( ´∀`)「ああ、この島、クチナワぎょうさんおるで気ぃつけぇや。ほんならなー」

( ・∀・)「了解です。ほんとっ、ありがとうございました」

lw´‐ _‐ノv「五日ってどういうことなの? ねえ!」

( ・∀・)「そういうことだよ!」

96名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:19:55 ID:n01.2VLg0
  _
(; ゚∀゚)「……深夜に無理やり車乗せられて、気がついたら無人島にいたんだけど、どういうことなの?」

(*゚∀゚)「まあ、いいじゃんいいじゃん……あ! カニだ!」

(ヽФωФ)「……死ぬ」

(;´・ω・)「ロマ大丈夫?」

(ヽ ^ω^)「……我輩はオートリバース機能搭載である」

(;'A`)「おい、ブーンも平気か? 顔青い通り越して奇妙な色になってるぞ」

(ヽФωФ)「うう……吐きそうである」

(;´・ω・)「ちょっとそこの岩陰で吐いてきなさい」

( ・∀・)「船酔いでダウンしてるのは、ロマとブーン? 他は平気?」

(*゚∀゚)「ちょっと、気持ち悪いけど平気ー」

(ヽ ^ω^)「……神と和解せよ」

(;'A`)「ブーンがなんか本格リバース5秒前なんだけど!」

97名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:21:58 ID:n01.2VLg0
 
<オロロロロロロ……ビシャビチャ

川*゚ -゚)「〜♪」

ξ;゚⊿゚)ξ「クーはなんだか、楽しそうね」

川 ゚ -゚)+「おい馬鹿だって無人島だぞ無人島! 目の前に青い海、後ろはジャングルと廃墟だぞ!」

lw´‐ _‐ノv「……モララーさん、説明してね」

( ・∀・)「ハハッどうしたんだい愛しのシュー。顔面からボルケーノしてるぞっ」

lw´‐ _‐ノv「ハハッちょっとお前表出ろ」

( ・∀・)「シューさん、もうここは外ですよ。ボケました?」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ内臓口から出せよもう」

( ・∀・)「あ、はい。ごめんなさい、説明させていただきます」

98名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:23:03 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)「ほら、カラオケの時さ、なんかすっごい漂流生活してみたくなってさ!」

 発端となった徹カラから数日、モララーは最速で準備を万端にし、知り合いの漁師に連絡をとっていた。
 以前より目星をつけたのは、今や定期連絡船を絶たれた、かつてキャンプ場として使われた孤島。
 知り合いの漁師の伝を借りて、格安で彼らはここに連れて来られた。
  _
(; ゚∀゚)「漁師の知り合い? ここ関西だぞ?」

(*゚∀゚)「そこ、多分つっこんじゃダメだ」

 更にこの無人島は、大昔の戦争で日本軍の防衛要塞として使われた場所だ。
 それら廃墟目的、あるいは釣り目的で、連絡船があった夏の時期は少ないながら観光客も来ていたらしい。
 それも廃止され、現在は観光センターや旅館の廃墟が、その空気を残しているばかりである。

('A`)「ああーそこに見える食堂っぽいのが、旅館?」

( ・∀・)「そうだよ。まあ、今となっては完全な廃墟島なんで施設はほとんど使えない」

lw´*‐ _‐ノv+「それよりも要塞跡地だと!? おいどこだ!?」

川*゚ -゚)+「マニアにはたまらないんだけどそういう施設!?」

( ・∀・)「まあ、後々紹介しよう。元々観光地だったから案内看板もある」

 そういって、彼は荷物を仕分けると地図を出しながら歩き出した。

99名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:24:20 ID:n01.2VLg0
 
lw´‐ _‐ノv「で?」

( ・∀・)「えっあ、お風呂は……」

 歩き出されれば皆、彼についていく他がない。しぶしぶと皆がついて来るが、誰もが納得はしていない。
 当たり前だ、何の説明もせずに一週間だけ暇を作れとだけ言われてここに居るのだ。 

ξ゚⊿゚)ξ「えっ、なんでここにきたの? マジで漂流してみたくなっただけ?」

( ・∀・)「うん!」

 元気よく応える彼の笑顔には曇り一つなく、まるで子供のようだと誰もが思う。
 しかし、徐々に状況を把握した面々は、諦めと共にだんだんと楽しさに気づき始めていた。
 彼らは元々、こういった子供が夢見る冗談のような遊びが大好きなのだ。

( ・∀・)「というわけで、我がサークル初めての合宿を行いたいと思います!」
                    _
                  ( ゚∀゚)   (゚∀゚*)

            lw´‐ _‐ノv           (ФωФ )

         ξ゚⊿゚)ξ     「「「「「了解ー」」」」」    (^ω^ )

               川 ゚ -゚)         ('A`)

                      (´・ω・`)

 そうやって、あとはただ、みんなで巻き込み、話を大きくしていくだけだ。

100名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:26:03 ID:n01.2VLg0
 
 歩きながら、彼は次々と説明していく。

( ・∀・)「島のサイズは、全長約3キロ、最大幅約1キロ、全周7キロ」

( ・∀・)「電気は一応通ってるけど、ほぼ使えないから発電機借りて来たぜ」

(´・ω・`)「そこのクーさんたちが押してる滑車付きの奴?」

( ・∀・)「そうそれ。ガスボンベ式冷蔵庫もある。四泊五日なら発電機はギリ持つはずだ」

川 ゚ -゚)「水、特にトイレは? 流石に野外プレイはちょっと……」

( ・∀・)「上水道は現役の井戸が結構あるんだけど、そのまま飲用は無理らしい。濾過して煮沸消毒すりゃいけるそうだ」

( ・∀・)「トイレは公衆トイレがある。水洗式だけど微生物使用のエコトイレ。まだ動いてるよ」

(*゚∀゚)「なにそれ?」

( ・∀・)「水が茶色い、気をつけろ」

(*゚∀゚)「……!?」

( ・∀・)「お風呂はシャワーが旅館の離れにある。井戸水ポンプを発電機で動かせば動く。使わせてもらおう」

lw´‐ _‐ノv「あるんだ。よかった」

( ・∀・)「あとはまあ、廃棄されてるドラム缶だな。そこにある奴。覗きは各自防衛してくれ」

 女性陣最大の懸案事項を取り除いてやり、彼は一度荷物を担ぎなおす。
 風呂に入れないのと覗き、どちらが懸案事項なのかはまた別の話だが。

101名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:27:02 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)「火気はキャンプ場のみ使用可。他は一応国有地だから火は使わないこと、山火事怖いし」

川 ゚ -゚)「で、肝心の要塞はどうなんだ!? 侵入していいのか!?」

( ・∀・)「要塞廃墟は侵入おk。一応虫除けスプレーと全員分のマグライト・電子ランタンは完備してる」

(´・ω・`)「寒いし、寝泊りもそこでしたいね。雨降ったらできないだろうけど」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ楽しそう」

( ・∀・)「マジで崩壊寸前の廃墟もあるから、立ち入り禁止って書いてあったらむやみに入っちゃダメね」

(*゚∀゚)「りょうかーい」

( ・∀・)「そうそう、引き潮時に歩いて渡れる離島があるんだけど、そこにも要塞跡が残ってる」
  _
( ゚∀゚)「なにそのカッコいい場所。ちょっとときめきが止まらないんだけど?」

( ・∀・)「当然満潮になると道が海に沈むから気をつけて。戻れなくなる」

lw´‐ _‐ノv「ふむ、まあ、お約束ですね」

( ・∀・)「もう一つ、向こうの方に泳げば行けそうな離島が見えるけど、あそこは修行僧の聖地らしい」

( ФωФ)「ああ、さっき見えたである」

( ・∀・)「当然一般人は立ち入り禁止。まあブーン以外は浮き輪でもないと侵入できないけどな」

102名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:28:06 ID:n01.2VLg0
 
( ФωФ)「む、釣りが出来るのであるな? 道具も一通り揃っているである」

( ・∀・)「うん、釣り場としてはかなり優秀で、ここは釣り人の聖地扱いだそうだ」

(´・ω・`)「あ、銛もあるんだ。ドックンのドライスーツもある」

('A`)「つまり、採ってこい、と? この糞寒い中、無茶な……」

( ・∀・)「できるよね? いや、出来なくても出来て。しかし当然、ウニとサザエの密漁は禁止だ」
  _
( ゚∀゚)「まあ当たり前だな」

( ・∀・)「そうそう、人間が持ち込んだ鹿と孔雀が増えているらしい。環境保護的にも鹿猟を行いたい」

( ^ω^)「……えっ」

( ・∀・)「無免許なので、自由猟具をいくつか持ちこんだ。もみじが食えるかは俺たちに掛かってる」

(*゚∀゚)「マジでやる気なの……?」

( ・∀・)「わざわざ夏じゃなくて今の時期なのは、狩猟解禁なのもあるんだ。お肉食べたいよね?」

(;^ω^)「食べたいけど、解体作業とかどうするつもりだお?」

( ・∀・)「解体は僕ができるぜ。一式持ってきてある」

lw´‐ _‐ノv「モララーさん、あんたって人は……」

103名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:28:58 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)「以上! 何か質問は?」
  _
( ゚∀゚)「異議なーし!」

(*゚∀゚)「うへぇ、さっき鹿さんみちゃった。ホントに殺すのー?」

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、現代人にとってお肉は、スーパーで並ぶパック加工されたものだし、抵抗あるわね」

( ФωФ)「そのスーパーに並ぶ加工肉も、元は生きている牛や豚である。差別しては解体業に失礼であるぞ」

川 ゚ -゚)「だいたい、五日間魚介類だけのヘルシーメニューなんて、私は耐えられないぞ?」

(*゚∀゚)「鹿さんごめんなさい、私も耐えられないです」

(´・ω・`)「しかし、人間を敵だと思ってないのか、警戒心ゼロだね。姿を普通に見せてくる」

( ^ω^)「たぶん、観光客が餌やってた名残だとおもうおー。楽に狩れそうだお」

lw´‐ _‐ノv「モララーさん、何で狩るつもりなの?」

( ・∀・)「スリング(投石紐)かトマホーク(投げ斧)で気絶させて、血抜き兼ねて頚動脈切るつもり」

(´・ω・`)「そんなので行ける?」

( ・∀・)「ただのスリングじゃなくて、スタッフ・スリングなら、当たり所によっては即死だよ」

('A`)「中世の投擲武器か、布と棒だけで組めて、何でも投げられるから最適だな」

104名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:30:28 ID:n01.2VLg0
  _
( ゚∀゚)「あ、鹿の解体は任せていいんだな?」

( ・∀・)「流石に知識ないと無理でしょ。縄で括って吊り下げる作業は手伝ってもらうわ」

川 ゚ -゚)「捨てる部位はどうするつもりだ?」

( ・∀・)「食べない内臓と頭、ダシを採ったあとの骨は地面に埋めるつもり」

(´・ω・`)「新鮮なら刺身が食べれそうだね」

lw´‐ _‐ノv「えっ、生? 感染症が怖いんだけど?」

( ・∀・)「致死率は低いけど、E型肝炎に感染する可能性か。あと、寄生虫もいるが鹿はほとんど罹らない」

('A`)「E型肝炎は鹿のキャリアが少ないというか、よくわかってないんじゃなかったか?」

(*゚∀゚)「E型肝炎がわかりません」

( ^ω^)「かなり重たい症状になるけど、発症率が低くて重症じゃなきゃ死なない病気だお」

( ・∀・)「ただし、日本の鹿肉での発症例は4件。いずれも生だが、地方によっては刺身で食べるのが普通だ」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、安全か判らないから気になる奴は生で食うなってことね?」

( ・∀・)「そうなるな。一応、肉はともかくモツは出来る限り火を通して食べたいところだ」

105名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:31:23 ID:n01.2VLg0
 
('A`)「鹿肉はボタン肉と並んで臭みが凄いと聞いたけど……」

(´・ω・`)「そりゃ新人猟師が血抜きに失敗した時だね。充分に血抜きすれば美味しいよ」

( ・∀・)「血抜きを素早く充分にすれば、牛すら目じゃない肉になる。すればだけどな」

川 ゚ -゚)「ほう……」

( ^ω^)「お? 設備もないのにできるのかお?」

( ・∀・)「現地で血抜きしても遅い時があるんだぜ? 井戸も近いし、よほど失敗しなければ臭みはないはず」

lw´‐ _‐ノv「個人的にタン塩を食べたいです」

( ・∀・)「採れたて鹿タンはマジで旨い、牛がまずく感じるレベル」

(´・ω・`)「調味料は多いし、上手くやれば塩漬けや燻製も作れるかもね」
  _
( ゚∀゚)「マジで!? 酒のつまみにちょうどいいじゃねえか!」

( ФωФ)「スモーカーは現場で作るであるか。熟成まで考えると間に合うであるか?」

(´・ω・`)「いや、本格的じゃないが熱燻製なら一日で作れるよ。早めに準備しようか」

ξ゚⊿゚)ξ「こいつら、もはや元観光用の鹿を飯としか見てねえ……」

106名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:32:20 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)ルール総括!


1:無人島から怪我なく無事生きて帰ること。

2:食料は事前に5食分用意されている。合宿は四泊五日、つまり……わかるな?

3:飲料水は大量にあり、またジュース類など水分補給面は万全になるよう準備されている。
  もちろんお酒は、毎日飲んで余るほど大量に持ち込まれている。

4:寝袋やテント、キャンプ用の鉄板など、野営・調理道具は一通り揃っている。

5:各自の持ち込みは衣服、生活用品、酒、つまみ、その他娯楽品が少々のみ。

6:猟具はスリングショットやフクロナガサ、スキナーナイフなど、自由猟具であればかなりの物が揃っている。
  もちろん、釣り道具類も完備。餌が少ないので各自現地調達すること。
  ただし、猟銃など免許が必要なものや違法な物はない。
  例外的に非常事態を想定し、火薬を持ち込んでいるが、狩猟には使わない。

7:非常事態を想定し、全員に特小無線を配布する。
  しかし、距離、場所によっては届かないので注意すること。携帯電話も一部地域を除き使えない。

8:モララーをリーダーとし、基本その意見に従うこと。
  ただし、リーダーに命令権はないこととする。

107>>106修正です:2015/05/10(日) 00:34:03 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)ルール総括!


1:無人島から怪我なく無事生きて帰ること。

2:食料は事前に5食分用意されている。合宿は四泊五日、つまり……わかるな?

3:飲料水は井戸水を煮沸して使う。濾過は自作。準備されている。
  もちろんお酒は、毎日飲んで余るほど大量に持ち込まれている。

4:寝袋やテント、キャンプ用の鉄板など、野営・調理道具は一通り揃っている。

5:各自の持ち込みは衣服、生活用品、酒、つまみ、その他娯楽品が少々のみ。

6:猟具はスリングショットやフクロナガサ、スキナーナイフなど、自由猟具であればかなりの物が揃っている。
  もちろん、釣り道具類も完備。餌が少ないので各自現地調達すること。
  ただし、猟銃など免許が必要なものや違法な物はない。
  例外的に非常事態を想定し、火薬を持ち込んでいるが、狩猟には使わない。

7:非常事態を想定し、全員に特小無線を配布する。
  しかし、距離、場所によっては届かないので注意すること。携帯電話も一部地域を除き使えない。

8:モララーをリーダーとし、基本その意見に従うこと。
  ただし、リーダーに命令権はないこととする。

108名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:39:54 ID:n01.2VLg0
無人島の地形に関して

 この無人島は、和歌山県友ヶ島の連絡船が途絶えた設定である。
 実際には連絡船は夏季限定で稼働しているが、この小説内では過去の廃業騒動時に途絶えたことになっている。
 そのため、地形などはそのまま参考として欲しい。

https://www.google.co.jp/maps/place/34%C2%B016'55.6%22N+135%C2%B000'38.4%22E/@34.282103,135.010658,17z/data=!3m1!4b1!4m2!3m1!1s0x0:0x0

 水源は東部にある池と点在する井戸のみ。
 天然記念物指定の植物がある水源地帯なので、あまり深入りしないこと。
 神社の先に続く道が旧キャンプ場で井戸も近くにあるため、野営地点はそこに決定。

 第一砲台にある灯台は現役、全体的に保存状態はいい。
 第二砲台の保存状態はいいが主要部分が爆破、ごみなどが風で溜まっている。
 第三砲台は最大規模で保存状態がバラバラ、将校宿舎は老朽化のため進入禁止。
 廃墟ファンにとって有名な棲息掩蔽部が第三砲台には存在する。

 第四砲台は最も老朽化が進み、危険な地域が存在するため立入禁止。
 第五砲台は周辺の木々を伐採したため明るいが、そもそも規模が小さく補助的な存在。
 虎島堡塁は屋根のない建物や床が抜けた堡塁などが存在する。

 道がほぼない聴音所は壁などが剥がれ、天井も半壊しており、進入禁止になってもおかしくない。
 照明所はそこへ至る道が半壊、そのため落ち葉などがひどいが建築状態はいい。

 その他、元民家や海の家、旅館などの廃墟が点在する。
 一応最高地点に展望台があるが、木々に覆われ機能していない。

109名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:40:55 ID:n01.2VLg0
 
 - 開始前発表 -

◎すてーじ◎
無人島 - 一日目 -

◆あらいぶ◆
  _
( ゚∀゚):旧キャンプ場  (*゚∀゚):旧キャンプ
lw´‐ _‐ノv:第三砲台 ( ・∀・):旧キャンプ場
(´・ω・`):旧キャンプ場 ( ФωФ):旧キャンプ場
( ^ω^):旧キャンプ場 ξ゚⊿゚)ξ :西側海岸
川 ゚ -゚):第三砲台 ('A`):西側海岸

◇でっど◇

のーきゃらくたー

>れでぃ?

>げっとれでぃ! ごー!!

110名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:41:40 ID:n01.2VLg0
 
( ・∀・)「テントの組み立て終わったー?」

 野営地点に決まった旧キャンプ場。
 今は荒れ果て芝生が繁茂するそこでは、幾つかのグループに別れて作業を行っていた。
 人数が多くても作業に支障がでるため、何名かは薪拾いという名目の探索に出ている。

(*゚∀゚)「あ、ちょっとモラちんこっちきて」

( ・∀・)「あいよー」

 旧キャンプ場に一度荷物を置き、全員に指示を出してある。
 アウトドア経験も多く元々リーダー核にいた彼は、自然と全体の総括を行う形になった。
 今は上手くテントを設営できないつーを手伝う。

( ・∀・)「ここは紐引っ掛けて左右を引っ張るだけだよ。ほら」

(*゚∀゚)「……う、うん。わかった」
  _
( ゚∀゚)「モララー! メインテントとタープ設営できたぜー」

(*゚∀゚)「ジョルちん早いな!」
  _
( ゚∀゚)「そうでもねえよ。もう一つのテントはどうする?」

( ・∀・)「俺用。砲台の中に立てようかと」
  _
( ゚∀゚)「なるほど、おkおk。よし、つー手伝うぜー」

111名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:42:50 ID:n01.2VLg0
 
( ^ω^)「モララーヘルプ! 穴掘ったけど、どうしたらいいんだおー」

 まず、最初の問題となったのは燃料である。
 生木を燃やしてもいいが、それでは大量の煙が出てしまい、食べ物がひどい匂いになる。
 やはり、出来るのであれば、木炭が使いたい。

( ・∀・)「あいよー、今行くわー」

 一応、初日分の木炭は用意してあるが、それも本日のBBQで使い果たすだろう。
 船で運搬する関係上、あまり必要のないもの、嵩が張る物は持ち込みたくない。
 五日分の炭を持ち込むのは大変な苦労だ。

(´・ω・`)「さっき皆で第五砲台から持ってきた木材を薪にしておいたよ」

( ・∀・)「おk! 使っていいのか知らんけど、雑木だしあるんだから使わせて頂こう」

 そのため、モララーは炭を現地調達することを考案した。
 先ほどここに荷物を置いてすぐに、男全員で伐採された木材をここまで運んできたのだ。
 そして、ブーンに頼み、直径1m、深さ60cm程度の穴を掘り、土を打ち固めてある。

( ・∀・)「斧はどこに置いた?」

(´・ω・`)「さっきの丸太に突き刺してある。細い木ばっかりだけど大丈夫?」

( ・∀・)「まあ、本格的に作るとすれば、細い木がなくなったらね」

112名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:43:44 ID:n01.2VLg0
 
 穴の中で周辺から集めた小枝を入れて火を熾す。
 小枝を燃やせる程度には枯葉も入れて構わないだろう。
 杉の落ち葉があれば、炎は簡単に勢いを増していく。

( ・∀・)「火が消えない程度に勢いがついたら、薪を敷き詰めて重ねていく。生木だからすぐには火がつかない」

 灼熱を帯びた炎を前に、なるべく綺麗に敷き詰めたいため、枝を使い器用に並べていく。
 このあたりは、アウトドア慣れしているモララーの腕の見せ所だ。
 薪に火がつく前に今ある薪を全て並べてしまうと、素早く集めておいた青い葉のついた枝を被せていった。

( ・∀・)「上を覆って、酸素の供給を減らす。酸素供給の調節がカギになる」

 木炭というのはつまり不完全燃焼を起こした木だ。十分に酸素が供給されながら燃えては、灰になってしまう。
 それから、白煙が上がってきたのを確認し、中心部を残して土で覆う。
 これにより、高温で炭素以外の成分を焼き飛ばすことで、それなりの品質を持つ炭ができるのだ。

( ・∀・)「よし、火の監視はブーンに任せていいか? 煙が紫っぽくなったら土で真ん中を塞いで軽く踏んでくれ」

( ^ω^)「了解だおー。炭が出来るのは何時ごろだお?」

( ・∀・)「明日だな。全部塞いだら火が燃え広がることはないから放置して大丈夫」

(´・ω・`)「野営地点から確認もできるしね。じゃあBBQに戻るよ、ブーン任せた」

( ・∀・)「いやショボンには、もう一つ穴掘って欲しいんだ、穴」

113名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:45:24 ID:n01.2VLg0
 
 テント設営を終えたジョルジュにショボンを手伝うよう指示して、モララーはロマネスクの場所へと移動した。
 ロマネスクには数少ない持ち込んだ食料を使って、BBQの準備を任せてある。
 持ち込んだ冷蔵庫、そしてクーラーボックスの中には生肉に野菜などのBBQに必要な食材を揃えてあった。

( ФωФ)「しかし、料理はショボンに任せた方がよかったのではないか?」

( ・∀・)「いや、任せたのは力仕事だからね。それに焼肉なら包丁使えれば大して変わらないよ」

(*゚∀゚)「あたしもこっち手伝おうー」

( ・∀・)「助かる。とりあえず、肉塊はなんとかした?」

 肉塊、モララーがそう呼んだ牛肉は人の頭ほどある巨大な物だった。
 氷代わりに巨大な冷凍肉を業務用スーパーで購入し、クーラーボックスに丸ごと入れておいたのである。
 10人分となれば相当な量になるため、そちらの方が効率が良かったのだ。

( ФωФ)「解凍が終わらぬ。野菜は切っておいたである」

( ・∀・)「じゃあ、肉は大雑把に剣鉈で切ろう。つーとロマは鉄板用意してもらっていいかな?」

(*゚∀゚)「鉈!?」

( ФωФ)「任されよう。あまり肉を痛めないよう頼む」

( ・∀・)「了解」

114名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:46:38 ID:n01.2VLg0
 
 解凍のため、大量に準備しておいたロース肉を鉈で大雑把に砕く。
 ある程度細かくし、解凍を少しでも早めようという魂胆だ。
 用意したのは、牛ロース1kgの塊。牛タンも二本持って来ているが、今回は使わない予定だ。

(´・ω・`)「ストップ。細かくするのは僕がやる。下味つけられないでしょ」

( ・∀・)「ああ、それもそうか。じゃあ、ショボンの穴掘りどうしよう?」

 全員の中で最も料理上手と呼んで差し支えのないショボンは、確かに適役だった。
 しかし、同時に腕力のあるショボンには是非とも穴掘りのような力仕事を頼みたかった部分もある。
 自分がかなりの小柄で、体格に相応の腕力であることをモララーは自覚しているのだ。

(´・ω・`)「モラはブーンと交代して、ブーンに穴掘りやってもらうか」

 同時に、木炭作りを慣れた人間が出来ないことを懸案していた。
 タイミングが遅すぎては灰になり、早すぎては生木のままだ。
 さほど難しいものではないとはいえ、やはり慣れている自分がやりたい。

( ・∀・)「あー確かに俺が炭やった方がいいか、指示できなくなるから踏みとどまってたんだが、上手く行かんな」

(´・ω・`)「もう指示することもないでしょう。あ、ごま油どこ?」

( ・∀・)「そらそうか。テント前のタープの下の緑のクーラーボックス上に調味料一式入ってる。調理器具はその隣」

(´・ω・`)「あいよー」

 そうと決まれば、動きは早い。
 ショボンに必要な物の場所を説明しながら、モララーはブーンの場所へと駆けていく。

115名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:47:36 ID:n01.2VLg0
 
( ^ω^)「また穴掘りかお……なんの穴だお?」

( ・∀・)「ビニールシート張って、上から断熱シートとダンボールで蓋して冷蔵庫にする」

(;^ω^)「そ、それで冷蔵庫になるのかお? 肉とか腐りそうな気が……」

( ・∀・)「保冷庫って言ったほうがいいか、それで数日くらいなら生肉でも持つよ」

( ^ω^)「まあ、寒いし生肉でもそれくらいなら平気かおー。了解した」

( ・∀・)「二度も穴掘りとは、重労働多くてすまんね」

( ^ω^)「なに、これくらい。技研でクーにあれこれ命令されてた時より数倍楽だお」

 技研。たしか、高校時代は技術研究部にブーンとクーは所属していたと、モララーは思い出す。
 腕まくりして笑うブーンは、存外に頼もしい。
 ブーンとツン、ドクオ、クーの四人は、元々同じ高校で、だから今でも仲がいいのだ。

( ・∀・)「鹿狩りしたら、肉が大量に出てくるだろう? それをなんとかしないとね」

( ^ω^)「なるほど、野菜が大量にあるから、とりあえずそれ入れとくかお」

( ・∀・)「いや、鹿狩ったあと出すの面倒そう……まあ、出来てから考えよう」

( ^ω^)「ういういー」

116名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:48:26 ID:n01.2VLg0
 
 その頃、あまり似ていない双子の姉妹は第三砲台にいた。
 かつて、大阪を守るために設置された海軍要塞の忘れられ風化した遺産だ。
 大正時代に立てられた西洋風の建築物は、年月を感じさせないほどに堅牢で美しい。

川*゚ -゚)「やっばいなにこの煉瓦造り! すげえ萌える!」

 わずかに覗く、錆付いたギア。
 今は撤去されて、その痕跡が大穴となって残る砲台跡。
 最後まで敵と戦うことがなかった、赤茶けた壁。

lw´‐ _‐ノv「お姉ちゃん、キャラ崩壊してるよ」

 それらを内包した煉瓦造りの雄姿は、どこか寂しげであった。
 そのくすんだ壁面はやや傾いた夕日を浴びて、鈍いノスタルジックな輝きを帯びているようだ。
 砲弾や砲台といった重要なパーツが撤去され、その欠落感が寂しさをいっそう掻き立てて見える。

川*゚ -゚)「モララーめ、早くに言ってくれれば一眼レフを用意したのにっ! コンデジしかないじゃないか!」

lw´‐ _‐ノv「お姉ちゃん、危ないからはしゃがないで」

川*゚ー゚)「あっぶねww階段滑るwwww」

lw´‐ _‐ノv「草なんて生やしちゃって、廃墟よりお姉ちゃんの方を写真で残したいね」

 その、一部の人間にとっては素晴らしい光景を前に双子の片割れは大フィーバーしていた。
 妹の方もこういった廃墟が大好きな部類だが、姉の箍が外れたハイテンションがそれを踏みとどまらせる。

117名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:49:44 ID:n01.2VLg0
 
 そのまま何度もシャッターを切り、ふと気がつけば随分と奥に進んでいた。
 将校宿舎からトンネルを抜け、棲息掩蔽部の更に奥。
 観測所跡の脇にある階段を降りて、今は地下砲弾庫についた所だ。
 
川*゚ -゚)「〜♪ ……お?」

 そこでクーは撮影以外で初めてその足を止めた。
 地下特有の湿度の高い粘ついた暗闇を、LEDのランタンが照らして退ける。
 経年劣化により白く変色しまだら模様になった煉瓦の壁に、踊る影がある。

川ll!゚ -゚)「わっわっわっ! こっちくんな! ぎゃっわ! うわあああ!」

lw´‐ _‐ノv「んー? なんだ、カマドウマさんじゃありませんか」

 その影は便所虫などと呼ばれる茶色いバッタの仲間だった。
 しかも、一匹ではなく無数の群れとなって襲い掛かる量だ。
 苦手な姉は錯乱し、さほど苦手ではないシューも、数に気づいてからはややおよび腰になる。

lw´;‐ _‐ノv「……も、戻ろうかお姉ちゃん」

川ll!゚ -゚)「うぎゃー! いやああああ! なんでこんな! うにゃにゃなー!」

 シューが会話も成り立たたない姉を引っ張って、何とか地下から飛び出したのはそれから数十分ほどのことだった。

118名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:50:34 ID:n01.2VLg0
 
lw´‐ _‐ノv「いやー散々でしたね」

川ll!゚ -゚)「おうちかえりたい」

lw´‐ _‐ノv「お姉ちゃんまでモララーさんの口癖を真似しないでください」

川ll!゚ -゚)「やだ。もう、おうちかえる」

lw´‐ _‐ノv「まったく、しょうがないですねえ」

川 ゚ -゚)「うおう、やめろーくすぐるなーにゃにゃにゃー」

 連れ立って戻ったのは、この島で最も有名な場所、第三砲台、掩蔽部。
 左右を煉瓦造りの壁に居並ぶ、洞穴のような無数の部屋は、一種の遺跡にさえ見えた。
 そこの壁に寄りかかってじゃれあいながら、妹は姉をあやす。

川 ゚ -゚)「ふう……しかし、姉妹だってのにまだたまに敬語になるなお前」

 しばらくふざけあって、ふと立ち返るように出たのはそんな言葉だった。

lw´‐ _‐ノv「む、素が出てましたね。いけないいけない」

川 ゚ -゚)「モララーと付き合いだしてから、変わったな」

lw´‐ _‐ノv「そうかな? まあ、前はかなり暗かったからね」

 その言葉に、今も明るいとは言わないけど、と、苦笑しながら付け加える。

119名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:54:14 ID:n01.2VLg0
 
 妹が掩蔽の廊下を歩きだして、姉がそれについていく。
 少し大きめの真っ白なダッフルコートと、体にぴったりと張り付く作りをした黒のミリタリーコート。
 鮮やかなモノクロの二人は、少しだけ廃墟には似つかわしくない。

lw´‐ _‐ノv「そんなに変わった覚えがないんだけどな」

川 ゚ -゚)「人見知りの激しいお前がなにをいう」

lw´‐ _‐ノv「それは自覚してるんだけども、私が誰かと付き合うなんて、前は考えられなかったね」

 ブーツの靴底が二人分、古いレンガをコツコツと叩いて静謐の島に響いた。
 あとは枯れ葉の落ちる乾燥した音と、鹿の鳴く短い声だけしか彼女たちには届かない。

川 ゚ -゚)「ま、あいつは背低いけど、モテるだろうしちゃんと捕まえておきな」

lw´‐ _‐ノv「ん、そだね……」

川 ゚ -゚)「? モララーと何かあったのか?」

lw´‐ _‐ノv「ん? そんなわけないじゃない。私とモラさんですよ?」

 そうちょっとふざけて返し、それから二人は黙ってキャンプ地まで歩いた。
 沈黙がクーの心に一抹の不安を残したことに、シューは気がつかないでいた。

120名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:55:10 ID:n01.2VLg0
 
◎ショボン先生のお料理講座!! バーベキュー編

(´・ω・`)「まず、BBQの下ごしらえですが、家でやって持ってこれるものばかりです」
  _
( ゚∀゚)「今回は移動時間に半日費やし、持ち物が多いので現場でやることになりました」

(´・ω・`)「まず肉です。ボウルにごま油を適量、おろしにんにく、塩を少し入れます」
  _
( ゚∀゚)「おろしにんにくは、やはり、生のにんにくをおろすべきですか?」

(´・ω・`)「今回はにんにくを丸ごとごと持ってきたのでおろしますが、チューブの奴で充分です」
  _
( ゚∀゚)「なるほど、塩もいっしょにおろしていますが?」

(´・ω・`)「これは個人的にこだわりたい所。岩塩が好きなのでピンク岩塩を使います」
  _
( ゚∀゚)「ふむふむ。しかし、岩塩がない場合は?」

(´・ω・`)「当然、普通の塩でいいですが、出来れば自然塩が合いますね。あればクレイジーソルトも美味しいです」
  _
( ゚∀゚)「持ってますよ? シューちゃんが持ってきたはず」

(´・ω・`)「知ってる。今回は十人前と量が多いので、いくつか種類を作りたいと思っています」

(´・ω・`)「そこで、バリエーションを出すために幾つかパターンを作りたいと思います。クレイジーソルトはそこで使います」
  _
( ゚∀゚)「なるほど。これで下味タレができましたね」

121名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:55:53 ID:n01.2VLg0
  _
( ゚∀゚)「ところで、計ったりしないで適当に混ぜてるように見えますが、分量はどの程度ですか?」

(´・ω・`)「その辺は、勘。もとい、分量は好みにあわせて調整してください」

(´・ω・`)「よく混ぜたら、お肉を入れて10秒ほど手で揉み馴染ませます」

(´・ω・`)「今回のように冷凍してる場合、解凍してから馴染ませてください」

(´・ω・`)「これだけで、BBQのお肉が格段に美味しくなります」

(´・ω・`)「今回は牛ロースですが、別に鶏肉でも豚肉でも同じ方法で美味しくなりますよ」
  _
( ゚∀゚)「なんと! たったこれだけですか?」

(´・ω・`)「もうちょっと手間を掛ける場合、すりゴマか粗挽き胡椒を追加すると更に美味しいです」

(´・ω・`)「今回は、すりゴマ、粗挽き胡椒、刻み葱、岩塩代わりにクレイジーソルトの4パターン用意しました」
  _
( ゚∀゚)「あら、なんか豪勢な感じになってきた」

122名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:57:07 ID:n01.2VLg0
 
(´・ω・`)「そうそう、葱だけは作り方が違います」

(´・ω・`)「下味タレと馴染ませたあと、肉をトレーに並べて葱を振り掛けます」

(´・ω・`)「こちらの方が、葱のシャキシャキとした食感が残り美味しいです」
  _
( ゚∀゚)「これだけで美味しい葱塩になりそうで、味にバリエーションができますね」

(´・ω・`)「下味がついているので、塩にレモン汁を混ぜただけのタレで美味しいですね」
  _
( ゚∀゚)「なるほど、それで焼肉のタレと醤油、塩レモンの三種類のタレが用意されているんですね?」

(´・ω・`)「はい、あとはコチュジャンなども少しつけるとタレとして美味しいですね」
  _
( ゚∀゚)「流石に野外でそこまでは準備できなかったっ」

(´・ω・`)「まあ、充分でしょ」
  _
( ゚∀゚)「まあなー」

123名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 00:57:56 ID:n01.2VLg0
 
(´・ω・`)「次に、こいつは事前に準備したものですが浅漬けです」
  _
( ゚∀゚)「浅漬けですか?」

(´・ω・`)「特に女性の方は、焼き野菜だけじゃ野菜分が物足りないでしょう?」
  _
( ゚∀゚)「なるほど。男にはそういう小細工はちょっと思いつきませんでした」

(´・ω・`)「俺も男だぶち殺すぞ。今回は俺風でゆずを使ったレシピです」

(´・ω・`)「刻んだ白菜とニンジンとキュウリ、大根を、だしの元、鷹の爪、刻み柚子と共にジップロックで揉むだけ」
  _
( ゚∀゚)「市販の浅漬けの素は使わないんですね」

(´・ω・`)「それでもいいんですが、今回はメインディッシュの味が濃いので、霞まないようにするためです」
  _
( ゚∀゚)「しかし、さっぱりした浅漬けと焼肉の相性は良さそうですね」

(´・ω・`)「実際、相性がいいですよ。出来るなら先ほどの下ごしらえ同様、事前に家で作ってください」
  _
( ゚∀゚)「普通に浅漬けとして美味しそうです。今回はこの二品で?」

(´・ω・`)「いえ、もう2品作ります。時間も余りましたし」
  _
( ゚∀゚)「なん……だと……」

124名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 01:00:26 ID:n01.2VLg0
 
(´・ω・`)「えー先ほど暇になったドクオくんが釣ってきてくれた。真鯛と鯖、アジです」
  _
( ゚∀゚)「鯖、瀬戸内でも釣れるんですね」

(´・ω・`)「なぜか鯖が多いので、真鯛とアジは下ろし大根とゆずで焼き魚にしたいと思います」

(´・ω・`)「鯖は煮つけにしたいところですが、時間も設備もないんで、ホイル焼きにします
  _
( ゚∀゚)「明日までとって置いても、腐っちゃいそうですしね」
  _
( ゚∀゚)「では、まずはホイル焼きからお願いします」

(´・ω・`)「はいはい。まず、鯖を三枚に下ろし適量に切って、塩と生姜汁を軽く振ります」

(´・ω・`)「ニンジン、ピーマン、葱を千切りにしてください。これは細くなれば適当でいいです」
  _
( ゚∀゚)「この切り方は男の料理ですね」

(´・ω・`)「うるせえわざとだ。次に味噌、砂糖、みりん、しょう油、水を混ぜ、練り味噌を作ります。分量は味噌と砂糖多め、あとは勘で」
  _
( ゚∀゚)「わかりにくいです先生。味噌大さじ一杯で何人前ですか?」

(´・ω・`)「大体1人前ですねー。そしたら、ホイルに油を塗って、葱を入れ、その上に皮を下に向けた鯖を置きます」

(´・ω・`)「鯖に練り味噌を掛け、ニンジンとピーマンを乗せて包み、あとは金網で15分くらい焼くだけです」

125名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 01:01:25 ID:n01.2VLg0
  _
( ゚∀゚)「三枚に下ろすのだけが難しそうですね」

(´・ω・`)「釣った魚でなければ、スーパーでは切り身で売ってますし、簡単に作れますよ」
  _
( ゚∀゚)「ふむふむ。さて、これで終わりかね? ホモ顔君」

(´・ω・`)「黙れピンときたら顔。自炊歴5年を越えるショボン様がこれで終わるわけねえだろ」
  _
( ゚∀゚)「ほう、しかし残ってるのは焼き魚くらいだぜ? どうするんだい?」

(´・ω・`)「まあ、捨てるところがないと言われるいい魚があるじゃないですか」
  _
( ゚∀゚)「アジはそのまま塩焼きとして、鯛かっ」

(´・ω・`)「獲れたて鯛なんて、美味しい食材を捨てるなんて勿体なさすぎる!」
  _
( ゚∀゚)「まあ、普通に焼くより切り身にした方が焼きやすい魚だしな」

(´・ω・`)「といっても小ぶりだから限度があるけどね」

126名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 01:02:49 ID:n01.2VLg0
 
(´・ω・`)「まず、鯛を三枚に捌く。鱗をとるのがかなり面倒だから注意してください」
  _
( ゚∀゚)「中落ちとカマは使うとして、お頭は捨てちゃうんですか?」

(´・ω・`)「いや、そちらがメインだ。切り身は軽く塩と日本酒振って塩焼きにする」
  _
( ゚∀゚)「おお、酒掛けるだけでなんかワンランク上がった気がする不思議」

(´・ω・`)「鯛の頭を半分に割ってカマをとり、中落ちを適当に分割する。3尾分なので手伝え犯罪者顔」
  _
( ゚∀゚)「了解、ホモ兄貴!」

(´・ω・`)「ブロックで作った簡易炉に鍋を置き、水、昆布、先ほどの鯛を入れて煮立つまで火に掛ける」
  _
( ゚∀゚)「これ炭火じゃやってらんね。薪も使って火力上げるよー」

(´・ω・`)「煮立ったら火を弱めて、あくをとり、蓋をしないで20分くらい煮る」
  _
( ゚∀゚)「煮たものがこちらです」

(´・ω・`)「ないよ。煮たら昆布とって塩、酒、醤油で味を調えて、白葱を添えて完成」
  _
( ゚∀゚)「旨そうな……終わる頃には、全員集まってきそうだな」

(´・ω・`)「そうだね。ちょうどいいかな」

127名も無きAAのようです:2015/05/10(日) 01:04:07 ID:n01.2VLg0
 
 黒く塗られたバーベキューセットの周りをうろちょろするのは、三名の男たちだった。
 ショボンが調理する間に、彼らは炎の準備を行っていた。

( ФωФ)「モララー! ライターどこであるかー?」

( ・∀・)「発電機の横に置いてない? 火気類はまとめてあると思うけど」

( ^ω^)「どこだお? もうモララーのライター渡せお」

( ・∀・)ノシ^゚「はいよー。オイル持ってきてないから大事に使えよー」

( ^ω^)「まかせとけ」

 ジッポライターを受け取った彼は、まず最初に新聞紙を帯状に畳んだ。
 それを端からぐるぐると丸め、太く短い円柱状の塊を作り、中央を少し引っ張る。
 これで簡易蝋燭、助燃剤の出来上がりだ。

( ^ω^)「ロマさんもこれ幾つか作って欲しいお」

( ФωФ)「なるほど、風で飛ばず消えにくいようにするためであるか」

( ^ω^)「そうだお。助燃剤は高いし、そんなもの買うくらいなら古新聞で代用した方がいいお」

 言いながら簡易の新聞助燃剤を三つ四つ作り、引っ張った部分に火をつける。
 それを等間隔に並べ、くしゃくしゃに丸めただけの新聞紙も足して、それから炭を少しずつ入れる。
 初めはなるべく小さく砕けた炭を使い、火力の上昇に合わせて炭を追加しつつ全体に広げて行った。


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