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Ammo→Re!!のようです
711
:
名も無きAAのようです
:2017/06/12(月) 20:27:56 ID:cylVOJUg0
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彼に盗めぬものはない。
その技は芸術。
その姿は概念。
そう、彼こそは世紀の大怪盗。
アルセーヌ三世(アルセーヌ・ザ・サード)。
――ファンキー・モンキー・キック著:【アルセーヌ三世】冒頭部より。
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船上都市オアシズの高級ラウンジには黒雲から降り注ぐ大粒の雨と大木を揺らす風を堪能する客が訪れ、嵐を肴に美酒を堪能する客が卓を囲んで話に花を咲かせていた。
ラウンジ内にはジャズの演奏がほどよい音量で流れ、照明は自然の明かりを最大限取り入れることで、まるで白夜の様だった。
客の間で交わされる話は主に、停泊中の島で起こっている騒動についてだった。
島にある監獄から二人の囚人が脱獄し、島に逃げ込み、深刻な問題を起こした。
そしてジュスティア警察、軍が介入したことによって状況が激変し、島はそれまで満ちていた平和を失い、今や戦場と化してしまっている。
先日まで同じ状況に陥っていた客たちは同情半分、好奇心半分で事態が収束するのを期待していた。
他人の不幸は蜜の味。
己の安全さを痛感することに快感を覚えるのは彼らが金持ちだからか、それとも、人間が持つ欲望に魅せられてしまったからなのか。
正常とは言い難い経験の後では彼らの思考が錯乱するのも無理はない。
帰還兵の中にも平和に耐え兼ね、次の戦場を捜し歩く人間がいるぐらいだ。
イルトリアの前市長、ロマネスク・O・スモークジャンパーはグレープフルーツジュースを一口飲んで、それからショートケーキを口に運んだ。
威圧的な効果を与える黒いスーツと黒いワイシャツ、そして筋骨隆々とした肉体とその食事の組み合わせは、どこか奇妙だった。
( ФωФ)「ふむ」
彼は甘いケーキを静かに味わいつつ、物思いに耽っていた。
その目は静かに閉じられ、まるで、瞑想をしているかのようだ。
瞼の上に負っている深い傷を見れば分かる通り、彼の視力は大分悪く、目を見開いたところでその黄金瞳が捉えるのは滲んだ景色だけ。
だが見えないからこそ分かることもある。
生物は失った器官を別の物で補う習性があり、視力に頼ることの減ったロマネスクが得たのは、より優れた聴力と嗅覚だった。
物音や匂いで周囲の状況を判断する力は前から持っていたが、それが更に研ぎ澄まされた彼には、普通以上の情報が入ってくることとなる。
時にそれは視覚以上の情報を彼にもたらした。
( ФωФ)「……そろそろか」
最後のひとかけらとなっていたケーキを平らげ、ジュースを飲み干す。
紙ナプキンで口元を拭い、ロマネスクはゆっくりと立ち上がった。
ラウンジのざわめきを背に、彼は静かな足取りで自室へと向かう。
その歩みは自信に満ち、迷うことなく通路を進んでゆく。
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