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Ammo→Re!!のようです

688名も無きAAのようです:2017/05/05(金) 09:35:55 ID:NjkwanZg0
雨に濡れ、風に凍え、それでもなお前を向き続ける少年。
ディに名前を与えてくれたブーンは、一度も弱音を漏らすことなくディのハンドルを握っていた。
体をタンクに預け、寒さに震えながら、銃弾に身を晒す危険を冒してでもまっすぐに生きる彼の目的はヒートの援護。
孤軍奮闘する彼女のためにブーンはあらゆる困難、苦痛に耐えているのだ。

これが人間。
不可解極まりない存在。
ついこの間まで、そのはずだった。
乗り手を理解するように設計されているディの人工知能は、いつしか人間を理解しようと試みるようになっていた。

詰まる所乗り手とは数多の人間の内の一人であり、乗り手が変われば人間性も変わる。
人間性の変化は運転の変化にもつながっているため、人間を理解することはどのような種類の乗り手に対しても有効な設定を導き出すために必要な下準備であり、無駄ではない。
一応は理に適っている。
効率的とは言い難いが、ディは待機中にその作業を密かに実行していた。

幾万、幾億もの計算をする中でディが参考にしたのはブーンのデータだった。
彼は子供。
子供はやがて大人になる礎であり、人格形成の基礎そのものだ。
だが人間の数が星屑の数ほどあるように、子供から大人に成長する段階は幾億にも枝分かれしてしまい、まるで予想が出来ない。

思いもよらぬ出来事に影響を受ける子供とは、どのような存在なのか。
彼が周囲で起きている事から受ける影響や、それに対する反応をディは貴重なサンプルとして蓄積することにした。
勿論、彼女が知覚できる範囲内での話だ。
今、彼女が知っている限りの情報を並べて考える限り、ブーンという少年は――

(∪;´ω`)「おっ」

――車体が大きく傾き、壁とぶつかる寸前でなんとかカーブを曲がり切った。
そして、ようやく探し続けていた人物を目視することが出来た。
雨の中で敵を前に独り立つ、ヒート・オロラ・レッドウィングの後ろ姿。
それを見た途端ブーンは安堵したが、まだ何も終わっていない。

やるべきことは一つ。
それを実行するチャンスは一度。
失敗すれば、それはブーンの死につながる。
デレシアには何度も危険性を念押しされ、ブーンは何度も理解を示した。

ブーンにとってのヒートは、デレシアと同様、失いたくない存在だった。
無力なままでは何も変わらない。
今はまだ無力だとしても、それを理由に何もしなければ何一つ変わらない。
何度も助けられてばかりでは我慢できなかった。

この世界は力が全てを変える。
誰かを助けるために力が必要だった。
ならば、変わるしかない。
非力な子供ではなく、非力に抗う子供にならなければならない。


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