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Ammo→Re!!のようです

618名も無きAAのようです:2017/03/28(火) 21:07:07 ID:2nMT7N0s0
悪の根絶を目指して努力するのではなく、世界のルールを変えるために努力しなければならないのだ。
現にティンバーランドはいくつもの偉大な成果を挙げている。
力で全てが左右される今の世界は間違っていると、カラマロスは強く思う。
それはつまり非力な人間が虐げられ続け、常に強者だけが栄える狂った天秤が支配する不平等な世界。

彼が幼少期に受けた多くの屈辱も、その後見てきた世界の現状も断じて受け入れられるものではなかった。
世界には貧困が満ち溢れ、不平等が蔓延していた。
人の姿をした人ならざる生き物が根絶されていないことも、我慢ならない。
誰かが悲しむ世界は終わりにしなければならないのだ。

彼の祖父は偉大な狙撃手だったが、彼の父は凡夫であり、狙撃の才能がない事が父のコンプレックスだった。
偏執病と言っても過言ではない父のコンプレックスは、幼いカラマロスの教育に大きな影響を与えた。
狙撃の才能とは即ち、環境把握能力と素早い計算能力に頼るところが大きい。
天才的な勘でその複雑な計算を一瞬で終わらせ、環境による弾道変化を修正することが誰よりも早い事が、狙撃の才能だ。

カラマロスの父はどうしてもそれが出来なかった。
当たり前だ。
距離だけでなく湿度、風、地球の自転、標的の動き、銃と銃弾の特性など、多くの要素を瞬時に計算することが出来れば、誰でも狙撃手になることができる。
それが出来ないからこそ、父は自分を無能な人間だとして責め続けた。

せめて我が子には同じ思いをさせたくない。
そう思った父は、妻が身籠った時から行動を始めた。
視力にいいとされるあらゆるサプリメントを妻に服用させ、その効果が少しでも子供に伝わるようにした。
視力を徹底的に鍛え上げることは勿論、生まれてから銃の扱いも英才教育とも言える指導を受け続けた。

それは自分にない物を知識で補おうと足掻いた男がもたらした、執念の賜物だった。
執念は息子へと引き継がれ、見事にそれは開花した。
カラマロスの持つ高い狙撃能力は、生まれ持った才能と努力の両方によって獲得したもので、ジュスティアには彼ほどの努力家は一人もいない。
大概が才能を無駄にして日々を過ごしているか、努力をおこたる人間ばかり。

狙撃の名家であるという重圧を背負いながら毎日を生きてきたカラマロスに比肩する狙撃手がいないのも、当然だろう。
だが周囲が祖父を称えても、カラマロスはそれについて何か特別な感情を抱いたことはなかった。
結局は父が血を引き継ぐ者の責務としてカラマロスに祖父を尊べと強要したのであって、ある種の常識として刷り込まれているだけに過ぎない。
祖父に関する記憶はカラマロスには一つもなく、全て口頭や文献で伝えられたものだけ。

偉大な狙撃手、“ジョニー・ビー・グッド”ことジョニー・ロングディスタンスは若くして殺され、一人残された祖母が女手一つで父を育てた。
逸話は全て覚えている。
空中に放り投げたコインを撃ち抜いたり、鹵獲した粗悪な銃で敵軍の大将を長距離狙撃したりと、実に猛々しい物ばかりだ。
それが事実かどうかは分からないが、祖父が戦争で殺されたことだけは疑いようのない事実だ。

しかし、戦争で人が死ぬのは当たり前の話で、いちいち仇が誰なのかを考えていては、きりがない。
それでも、祖父を殺した人間だけは忘れることはない。
イルトリア史上最高の狙撃手、“魔女”ペニサス・ノースフェイス。
卑劣な手段を使って祖父を殺したその女に、カラマロスは何としても復讐を果たしたかった。

それは決して、祖父のための復讐ではない。
彼自身が手に入れるはずだった自由に対する復讐だった。
もし祖父が健在で、父に対する教育が違っていたのならば、カラマロスはもっと別の道を歩んでいたかもしれない。
彼には夢があった。


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