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Ammo→Re!!のようです

459名も無きAAのようです:2016/10/03(月) 21:18:08 ID:slfccTV.0
ヒートはブーンの隣に寝そべり、瞼を降ろした。
テントの入り口を閉めて、デレシアは星空を見上げた。
見事な星空だ。
かつて、世界が第三次世界大戦を迎える前には想像も出来なかったであろう圧倒的な星の輝き。

星の海、という表現が最適だろう。
葉擦れの音と潮騒の音が横殴りの雨のように周囲に満ちている。
そして煌く星々の音さえも、そこに紛れていそうだった。
静かなこの夜の時間は、昔から少しも変わっていない。

全てが黒の輪郭へと変わり、本来の像を曖昧にする時間。
デレシアは折り畳み式の椅子に座り、ステンレスのマグカップを直接バーナーの上に置いて湯を沸かした。
沸いた湯にスティック状の袋に入ったインスタントコーヒーを溶かし、適温に冷めるのを待つ。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

かつて。
星はもっと遠くの存在だった。
月は手の届かぬ存在であり、星は夢そのもの。
何もかもを手に入れた人類が、決してその手にすることが叶わなかったこの満天。

手に入らぬと理解した人類は汚れた夜空を見捨て、街の明かりに価値を見出した。
人の営みの証である豊かな明かりを発する街は、宇宙から見ても都市の形がはっきりとわかる程煌々とし、人々の視線を空から地上に引き摺り下ろした。
星を地上に再現した彼らがこの空を見たら、どう思うだろうか。
気の遠くなるほど長い時間をかけて世界が取り戻した、この夜空を。

この時代に生きる人間にとっては何ということの無い景色だが、肉眼で星の帯をここまではっきりと直視出来る事が、どれだけ素晴らしい事か。
別の銀河が目に映るこの夜空の価値は、どれだけ希少な宝石にも勝る。
そして、それを見上げながら飲むコーヒーの味は格別だ。
挽きたてのコーヒーでなくとも、その水面に映る星の輝きだけで十分。

コーヒーを飲み、そっと溜息を吐く。
思い返すのは、ヒートとブーンの関係の進展具合だ。
出会ってからまだ約十日。
半月も経過していないが、二人の仲はかなり親しくなっている。

初めてであった頃のブーンは人間全般に対して恐怖心を抱いている感じだったが、今ではその名残も薄れている。
彼は出会いと別れの中で成長し、年相応に人に甘えることを覚えた。
ようやく取り戻した彼の人生は、これから先、どう変化していくのか。
すでにティンバーランドと関わりを持った以上、彼の人生は平穏無事に進むことはない。

デレシアがかつて何度も潰してきた組織の芽が、彼女の目を掻い潜ってここまで成長していたとは予想外だった。
“世界を黄金の大樹にする”、という彼らの理想はいつの時代も多くの信仰者を作ってきた。
これまで鳴りを潜めていた彼らがこうして目立った行動をするという事は、ある程度の準備が整ってきたという事なのだろう。
今さら潰しようがない、潰されようがないと慢心しての行動なのだろう。

確かに、今回の相手は世界に根付く大企業、内藤財団が背後にいる。
財力、影響力共に申し分ない。
隠れ蓑として使うのにも十分だ。
これまで通り旅を続けていても、再びデレシアの旅路を邪魔してくるに違いない。


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