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Ammo→Re!!のようです

363名も無きAAのようです:2016/08/07(日) 17:00:48 ID:eFiZr2lo0
久しぶりにまともな食事を食べる気になったのは、これまで船を操っていた部下達が大勢死に、船の指揮系統の復旧に体力が必要だからだった。
マニーは無理をするタイミングを心得ており、それは正に昨夜であり、今であった。
今無理をしなければ、後にどれだけの犠牲を払っても取り返しのつかないことになるだろう。
彼が無理をすることで、部下達に安心して仕事をさせなければならない。

それが上司の仕事であると、彼は父から教わっていたし、その通りだと思っていた。
部下が欲するのはとどのつまり、安心なのだ。
安心を手に入れるためには上司がその背中で多くの危険を受け止め、部下達に被害が及ばないようにしなければならない。
彼が無理をすることで部下が安心して仕事をすることが、やがてはこの街全体の治安と信頼の回復に至るのだ。

船内にあるフードコートに秘書を向かわせ、巨大なハンバーガーと並々とタンブラーに注いだコーヒーを持って来るよう指示を出してから十五分が経過していた。
それが到着するまでの間、マニーは昔、両親に言われた言葉を噛みしめていた。
何度も言い聞かされたその言葉は、リッチー家の家訓だった。
“金で解決できない問題に直面し、努力する機会と困難を得られたことは大金に勝る”とは、親子何世代にも渡って語られてきた言葉だ。

成程確かに、これほどの困難は大金を積んででも迎え入れたくはない。
それを解決出来たなら、彼は大金に勝る経験を得たことになる。
だがそれは、自力で解決出来た場合の話だ。
彼は、他者の力を借りてようやく解決することが出来た。

もしも偶然、この船に彼の知人が乗り合わせていなければ、この船は最悪の事態を迎えていた事だろう。
彼は、自分の非力さを嘆いていた。
“オアシズの厄日”と呼ばれる一連の殺人事件は、彼ではなく、偶然乗り合わせた彼の知り合いが全て解決したと言っても過言ではない。
彼は、それが悔しくて仕方がなかった。

彼は規格外の金持ちの家に生まれたが故に、常に誰よりも努力をしてきた。
そうしなければ、彼の努力も何もかもが、金で作られたものになってしまうからだ。
これだけは、金では買えない物なのに。
なのに、今回は何も出来なかった。

自分で成し得たものが金のおかげと誤解されるのは、この上なく悲しいことだ。
幼少期に何度も経験してきたそれは、決して、心地いいものではなかった。
己の努力が金に持っていかれるのだ。
それはまるで、神に縋る無能共が己の力で得た結果を神の手柄にするような、胸糞の悪い話だ。

失った物を数えても仕方がないと彼の祖父が口癖のように口にしていたが、その言葉が真に意味するのは損失を無視するという事ではない。
損失に対して途方に暮れる暇があるのならば、その失った物を整理し、如何に取り戻すかが大切という事を意味していた。
だから彼の祖父は経営に成功し、オアシズを発展させ続けて来られたのだ。
船上都市という極めて特異な街が反映し続けているのも、そうした考えが脈々と受け継がれているからに他ならない。

それは何故か。
何故、祖父は成功し得たのか。
秀でた能力があったのか。
全てを自力で解決できるほど、才能豊かな人間だったのか。


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