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76 ◆xh7i0CWaMo:2015/02/05(木) 21:50:16 ID:8CEvcfDc0
/ ,' 3「『第五の壁』を乗り越えようとする行為は、決して創作物と読者の総和を変じさせるものではない。
    それは創作物が持つ数字の一部を読者に上乗せする行為だ。

    例えば実在するテロリストでさえ、8,500km遠方の他人に『当事者意識』を持たせることは非常に困難だ。
    ましてやそれが創作物ともなれば、その途方もない難易度が少しは分かっていただけるだろう。

    一方、卑近で極めて平凡な恋人がその相手に影響を与えることは決して難しくない。
    趣味や身なり、更にはその思想まで根本から作り替えてしまう、ということは実際にあり得る。
    何故なら彼や彼女はその際、嘘偽りなく『当事者』そのものなのだから。

    しかし創作物は彼らの恋人はおろか、友人や知人ですらもない。
    奴隷になることは出来る。創作物は批評や二次創作などの形によって、
    好き勝手弄ばれるだけの従者になることは容易であり、意図せずとも傷つけられてしまう。

    そういった行為を望むマゾヒストもいるにはいるだろう。
    しかし、そのような性癖は本来的に相手に知られるものではないし、現実の人間には知る由もない。
    そして、この場合において奴隷的な扱いが本意でないことも分かっていただけるだろう。

    ただ、反逆的な存在というものはどの世界に於いても受け入れられがたいものだ。
    『第五の壁』へのアクセスを執拗に行おうとするたび、その壁はより高く、堅固になっていく。
    そして最終的には永遠に扉を閉ざしてしまうのだ。その応答は生理的な拒絶に似ている。

    ただ面白がられるだけでは『第五の壁』は開かれない。
    そこから敷衍して、読者の心に何らかの数字を残さなければならないのだ。
    それは一種、創作者に於ける目標の一つだろう。

    特に、現実世界で受け入れられないような外見をしているような創作者にとっては。
    彼らは敢えて不利なフィールドに戦いの場を移してでも、戦い続けねば護れぬ自我を持ってしまっているのだ。

    さて、私の役目もここいらで終いだ。次には『第五の壁』に執念を燃やす人間に引き継ぐことにしよう。
    これは私の予測だが、次項においてこの小説は『第五の壁』より完全に拒絶されるだろう。

    しかしそれで構わないのだ。
    何故ならそれこそがこの小説の第一義であり、そして最早、此処は正真正銘の墓場なのだから……』


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