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川 ゚ -゚)月満つれば則ち虧くようです
40
:
名も無きAAのようです
:2014/11/16(日) 22:02:32 ID:F9nouI6k0
乙
クーさんかっこいいっす
41
:
名も無きAAのようです
:2014/11/17(月) 04:14:18 ID:7xnueIms0
この微妙なすれ違いがどう影響していくのか
おつ
42
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:05:47 ID:43yZF/fA0
唐突に第3話投下します。
43
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:06:49 ID:43yZF/fA0
◆第3話◆
o川*゚ー゚)o「………」
(;'A`)「………」
川 ゚ -゚)「………」
案の定、気まずい空気になった。
-
44
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:08:16 ID:43yZF/fA0
姉の彼氏、ドクオさんとは今日が初対面だった。
今日も仕事終わりは姉の部屋に帰ってくるとのことだったので、事前に姉は、簡単にこうなった経緯を伝えておいてくれたそうだ。
だから、ドクオさんもそういう厄介な話を聞かされるつもりで、もちろんわたしが今現在姉の部屋に居座ってることを承知の上で帰ってきてくれてる。
姉の時のようにアポなしの土壇場で切り出すよりは、よほど話しやすい空気を作ってくれてるのだ。
.
45
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:09:39 ID:43yZF/fA0
あとは、わたしが腹を括って詫びを入れ、ここにいさせてほしいと改めて願い出れば話は進むはずなのだが
o川*゚ー゚)o「………」
何故だろう。脳内で繰り返されてきたはずの台詞が、ご本人を目の前にすると何も出てこない。
.
46
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:11:12 ID:43yZF/fA0
(;'A`)「………」
姉と同い年と聞いていたが、大して年なんか違わないつもりでいる姉よりも、よほど大人びて見える。
長身で細身。気だるそうに見えるのは地顔なのかもしれないが、今の心持ちでは、なんだかこれから聞かされる話を面倒くさがってるようにも見えてしまう。
でも、本当に面倒くさがられてるのだとしても、当然といえば当然だ。
こちらが急に押し掛けてる身なのだから。
だからこそ、自分の口から頼み込んで置いてもらうのが筋だと、確かにそう思った。
.
47
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:12:32 ID:43yZF/fA0
o川*゚ー゚)o「えっと………あの………」
しかしさっきから、口を開けばこんな調子だ。
なかなか話を進めないどころか、始まりすらしないわたしの様子にドクオさんもどうしたらいいのかわからないのだろう。
時々姉に助けを求めるような視線を送るが、姉はあくまでも手助けはしない様子で押し黙っている。
やはりこればっかりは、わたしが切り出さなければいけない。
姉妹間ではそれが暗黙の上で通じあってても、ドクオさんはただ黙られては困惑する一方。
顔つきだなんだとか、迷惑そうだなんだなどと、そんな失礼なこと言われる筋合いなんてないはずだ。
.
48
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:14:00 ID:43yZF/fA0
川 ゚ -゚)「…いつまでも黙ってたらわからないだろう」
姉がとうとうしびれを切らした。
高校生の頃、朝帰りしたわたしを詰問した父の厳格さを思い出して思わず、俯きがちだった姿勢を正した。
o川*゚ー゚)o「あ、はい……」
川 ゚ -゚)「………」
それ以上、姉は促さない。
わたしはようやく意を決して、ドクオさんに向き直った。
.
49
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:15:49 ID:43yZF/fA0
o川*゚ー゚)o「……はじめまして。クールの妹で、キュートと申します」
(;'A`)「あ、鬱田ドクオです。はじめまして……」
推察するに、ドクオさんはあまりコミュニケーションが得意なタイプではなさそうだ。
改めて向き直ったわたしに対しても、正座で狼狽えながら受け答えをする。
それを滑稽だと言ってる場合ではないが、とりあえず、話し始めてしまえばあまり横槍を入れられる心配はなさそうな姿に、少し安心した。
.
50
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:17:44 ID:43yZF/fA0
o川*゚ー゚)o「実は急な転勤がありまして、今住んでる家からは通いづらくなってしまって…困って姉の住まいを頼ったところ、ドクオさんも一緒に住まわれてるとのことなので、ちゃんと、了承をいただかなきゃって……」
本当はもっと丁寧に順序立てて話すつもりだったが、やっぱり緊張感が拭え切れずになんだか大雑把な言い訳をしてるように聞こえるかもしれない。
それでもドクオさんは、黙って聞いてくれてる。
.
51
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:18:43 ID:43yZF/fA0
o川*゚ー゚)o「迷惑は承知しています。けど、姉とドクオさんの邪魔はしませんので、一緒に住まわせていただけないでしょうか…」
ドクオさんの目をまっすぐに見据えて言い切った。
しかし、ドクオさんはと言うと、相変わらず狼狽えたままあまり目を合わそうとはしてくれない。
それはわたしの話を迷惑がってるというよりは、単にもともと人と目を合わせるのが苦手なだけなのだと思う。
それでも、わたしは視線を外さない。
ドクオさんが答えてくれるのを、ただ待った。
.
52
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:19:46 ID:43yZF/fA0
(;'A`)「いや…俺ももともと居候みたいなもんだし、クーさえよければ、俺は…何も言えないかなって……」
おそらく、それが偽りない本音なのだろう。
家主であり彼女であるクールの妹を、自分の判断で置いておくなり追い出すなりなどと、口出しできる了見なんてないと言わんばかりだ。
o川*゚ー゚)o「…ありがとうございます。お世話になります」
かくしてドクオさんに与えられてた空間は、思いの外あっさりとわたしの手に渡った。
.
53
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:21:26 ID:43yZF/fA0
川 ゚ -゚)「…よし。やっと言えたな」
場の空気を仕切り直すように、姉はそう言って立ち上がった。
姉にそう言ってもらえると、安心する。
緊張感が俄然緩和されると、この部屋を張りつめさせてたのはむしろ、自分の勝手な取り越し苦労のせいだったのだと気づく。
川 ゚ -゚)「ドクオもお腹空いてるだろう。ご飯にしようか」
そう言って台所に向かう姉を追うように立ち上がろうとするとすぐ、「お前は手伝わなくていい」と一刀両断されてしまった。
.
54
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:23:27 ID:43yZF/fA0
昼間は散々迷惑かけてしまったけど、それを挽回しようなんてつもりはなかったし、わたしが手伝えることなんて何もないのかもしれないとも思う。
姉からしてみれば、わたしに鍋一つ運ばせるだけで、神経がすり減らされる思いだろう。
でも今この状況で、ドクオさんと二人きりにされても困る。
独善的かもしれないが、過剰なほどに改まって筋を通したつもりでいる次の瞬間に、手のひら返すように何事もなかった顔で世間話などを振るなんて鋼の精神など、こう見えても持ち合わせてないのだ。
.
55
:
名も無きAAのようです
:2014/11/19(水) 19:23:39 ID:ys2bt8OA0
おおぅ…きてる!支援
56
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:25:28 ID:43yZF/fA0
かといって、こんな状況だからなおさら、ドクオさんから何かしらの何気ない話を振ってくれるとも思えない。
第一印象って大事なんだな。
普段通りの飾りない振る舞いで『はじめまして』を迎えることができてたら、まだこんなに悩みはしなかったかもしれない。
それらすべてはわたしが招いたこと。ドクオさんは巻き込まれただけで何も悪くないことはわかってるのだが、身勝手にもそんな風に思ってしまった。
.
57
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:27:18 ID:43yZF/fA0
('A`)「………」
やはり、ドクオさんは何も話しかけてくる気配もなく煙草に火を点け始めた。
何事もないような顔をしてるが、時々さりげなく姉に視線を向ける落ち着きのなさからは、早く姉に戻ってきてほしそうな心理が窺えた。
.
58
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:28:03 ID:43yZF/fA0
o川*゚ー゚)o「………」
昔から、姉が好きになるタイプの男性には惹かれなかった。
美人なんだから男性から言い寄られることも少なくないだろうに、当の姉本人は面食いというわけではなかったので、わたしのような第三者から見た外見だけでは、何が姉を『その気』にさせたのかはよくわからなかった。
外見で選んだのでないなら、中身が良いのかもしれない。
もちろん姉が選んだ人がろくでなしだとは思わないが、いずれにせよ得てしてわたしが好きになるタイプの人ではなかった。
.
59
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:29:11 ID:43yZF/fA0
('A`)「………」
ドクオさんは、どうなんだろう。
覇気はないが、身なりや所作がみっともないとは思わない。
人見知りはするかもしれないが、ひねた部分は見当たらなくてむしろ、物凄く人に気を遣う人なんだと思う。
彼のことはまだ何も知らないが、何故か姉とは相当相性が良い人のような気がする。
.
60
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:30:39 ID:43yZF/fA0
('A`)「…ごめん、煙かった?」
その一言で、内心失礼にもドクオさんを品定めするような視線を送ってしまってたことに気がついた。
煙草に関しては、姉も喫煙者だし今更気にならない。
o川*゚ー゚)o「いえ、大丈夫です。お気になさらず…」
そう言われると余計気になるのだろう。困ったように小さく笑みを浮かべながら、ドクオさんはまだ長い煙草を揉み消してしまった。
.
61
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:31:35 ID:43yZF/fA0
早くも彼に気を遣わせてしまった。
そんなわたしを、ドクオさんはどう見るだろうか。
自己中心的な妹。何も手伝わない居候。横着者。
いずれにしても良くない印象しかない上、なんと言われても否定はできない。
姉よ、早く戻ってきてください。
ただこの気まずさを払拭したいだけのことを自分でなんとかしようとは思わず、この期に及んでわたしはまた、姉に守ってもらうことしか考えてなかった。
.
62
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/19(水) 19:33:15 ID:43yZF/fA0
第3話おわりです。
支援ありがとうございました。
63
:
名も無きAAのようです
:2014/11/19(水) 19:37:12 ID:VFX6Rhyc0
乙。不穏な気配がしてるな…。
64
:
名も無きAAのようです
:2014/11/19(水) 19:38:52 ID:.qR//CTA0
乙
65
:
名も無きAAのようです
:2014/11/20(木) 00:37:57 ID:O.GHp5D60
おつ
66
:
名も無きAAのようです
:2014/11/20(木) 06:20:55 ID:4sZEHiHo0
乙です
キュートも悪い子じゃなさそうだから余計先が不安になる
67
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:41:24 ID:vo/NI0SM0
第4話です。投下します。
68
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:43:20 ID:vo/NI0SM0
◆第4話◆
川 ゚ -゚)「………」
私の職場は、最寄り駅から3つ離れた先の駅近くにある。
終電手前の時間に帰ってくることもざらにあるし、こんな静かな夜道を一人で歩くのも嫌いだが、仕事と私生活を隔てるには、これくらいの距離は必要だと思ってる。
職場近くに住んでしまうと、自分の生活を、ひいては人生の一部を侵食され、脅かされてる気さえするのだ。
通勤時間片道30分。まぁ妥当な距離感だと思う。
.
69
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:46:19 ID:vo/NI0SM0
静かすぎる。
しかも年末に差し掛かったこの季節は冷え込みも厳しくて、駅から家まで歩くことさえ億劫になる。
川 ゚ -゚)「………」
ただでさえ、こうやって一人歩きながらすることといえば、考え事くらいなもの。
そんな状態で、この何も照らされないただ暗いだけの街並みに飲み込まれてしまうと、ひたすら厭世的な思考に落ち込んでいく一方なのだ。
.
70
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:48:10 ID:vo/NI0SM0
妹と生活を共にして数週間が経った。
しかしやはりというべきか、私の悩みの種は尽きることがなかった。
いまだに、私がついてないと台所に立たせるのは危なっかしい。
そうなると、食事は100%私が用意しなければいけなくなるので、結果的に私の負担が増える。
一人暮らしだったなら、もう少し横着したと思う。
食べたくなければ作らないし、疲れてるなら外食で済ませられる。
ドクオと暮らし始めてからだって、毎日毎日私が食事を用意してたかといわれると、そうでもない。
なんとなく持ち回りのようにしてドクオに任せたこともあるし、もちろんたまには外食だってする。
.
71
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:49:46 ID:vo/NI0SM0
妹もそうやって、食事くらい自分の段取りで勝手に何とかしてくれればいいものを、放っておくとコンビニ弁当で済ませようとしてしまう。
どうしても、それだけは許せなかった。
全否定するつもりはないが、妹のように賄いというものがない職場では、どうせ昼食だってコンビニ弁当のような食事なのだろう。
さすがに毎日、一日二食もケミカルな食事という頓着のない食生活なんて、いくらなんでも不健康すぎる。
私自身、食に携わる仕事をしてるゆえのポリシーというわけではないが、どうしてもそれだけは見過ごせなかった。
.
72
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:52:07 ID:vo/NI0SM0
コンビニがダメだと言うなら私が作ればいい?そんなのも、毎日続けられるわけではない。
だから先日、少しでも自分でできるようになってもらいたい一心で、再び一緒に台所に立った。
その日は、私も妹も仕事が休みだった。
いい機会だと思って一緒に作ろうとしてたのは、初心者にも比較的易しい上それなりに格好もつくビーフシチューだった。
米を炊かせ、ゆっくり慎重に野菜を切らせてそれらを煮込むまでの行程が、思いの外滞りなく順調で、私も油断したのだろう。
.
73
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:53:53 ID:vo/NI0SM0
o川*゚ー゚)o『あとなんか、手伝うことある?』
川 ゚ -゚)『じゃあ、リビングにあるワインセラーから赤ワインを取ってきてくれ。どれでもいいが、バースデーヴィンテージは避けてくれな』
o川*゚ー゚)o『…はぁい』
一応フランス料理のコックを生業としてる私も、それなりにはワインを好む。
マニアやコレクターなんかには遠く及ばないが、健全な状態で管理できるように、ワインセラーを完備するくらいには好きだ。
とはいえ、そんなに大きいものでもない。
もちろんそんなに沢山ストックしてるわけでもないのだから、たいして迷いはしないだろうと、何故か安心しきっていた。
.
74
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:55:57 ID:vo/NI0SM0
o川*゚ー゚)o(バースデーヴィンテージ……)
思えば、妹のあの間延びした返事を聞いた時点で気づくべきだった。
返事する前、一瞬何事か考えたその様子に。
o川*゚ー゚)o(Birthday……ヴィンテージってどんなスペルだったっけ…)
.
75
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 21:58:24 ID:vo/NI0SM0
多少時間はかかったが、それも想定範囲内。
やっと来たかと妹から渡されたそれを受け取ると、よく確認もせずにキャップシールに切り込みを入れた。
既に栓の開いてたワインはなかったか。
まぁ、料理用と味わう用は分けずに兼ねるのが常だから、前回料理に使って余った分はその日のうちに飲んでしまったのだろう。そんな呑気なことを考えていた。
川 ゚ -゚)『……ん?』
ソムリエナイフのコルクスクリューを捩じ込んだ瞬間、その手応えのなさに拍子抜けした。
やたらコルクが脆い。
うちにそんな古いワインなんかあっただろうか……?
そう思った時初めて確認して気がついた。
ヴィンテージは、1989年。
.
76
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:00:40 ID:vo/NI0SM0
o川*゚ー゚)o『えっ!?お姉ちゃんどうしたの!?』
ショックのあまり一瞬意識が飛んだらしいが、気がついたら足元には赤茶けた液体が広がっていた。
妹の間の抜けた声で目が覚めたら、どうやら栓の開いたワインを取り落としたらしいことに気がついた。幸い、ボトルは割れてなかったようで、よかった。
……よかった、か?
o川*゚ー゚)o『…あ、もしかしてそれ…開けちゃいけなかった……?』
追い討ちをかけるようなその言葉に、私は立ち直れる気がしなかった。
.
77
:
名も無きAAのようです
:2014/11/23(日) 22:01:43 ID:wjoMUIBA0
きてる!支援
78
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:02:46 ID:vo/NI0SM0
思えば、『バースデーヴィンテージ』なんて言われても酒を知らない妹が理解できるわけがなかった。
理解できなければ聞いてくるだろう。
そう思って、何も聞かずに黙ってワインを一本一本確認しながら探す妹の姿に、勝手に安心してしまった。
1989年。姉の生まれ年くらい見ればわかるだろう。
そう責めたかった。他にいくらでもあっただろうに、なんでよりによってこれなのか。
.
79
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:05:23 ID:vo/NI0SM0
ボルドー、サンジュリアンで生産されたそれは、私が生まれた年にいわゆる『当たり』といわれて世に広がったワインだった。
もちろん高価なものであるのと同時に、今年の誕生日で職場の社長から頂いたもので、なくなったからといって簡単に代わりが手に入るものではない。
まだ開けずに取っておいたのは、同い年のドクオの誕生日を待って、当日それでお祝いしようと思ってたからだった。
.
80
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:07:43 ID:vo/NI0SM0
川 - )『…………』
妹には、伝わらない。
ワインの価値も、同い年のワインをたしなむ情趣も
好きな人とその空間を共有することが、私にとってどんなに悦ばしいことなのかも。
妹にとっては、『ダメと言われたからダメ』なだけであって、それが何故なのかをいくら説明したって、爪の先ほども理解できないだろう。
.
81
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:10:59 ID:vo/NI0SM0
o川;゚ー゚)o『…お姉ちゃん…あの……』
確かに、私も迂闊だった。
妹にワインなんか、触らせなければよかった。
特に大事なものなのだったら、妹の手が絶対に触れないところに保管すればよかった。
けど、ワインを保管するのにワインセラー以外のどこに置けというのか。
お酒を飲まない妹のことだ。
手の届くところにあったって、ワインセラーなんぞ眼中にもないだろう。
そう思って私も、心配してなかったのだ。
じゃあ妹がワインセラーを開けたのは
ワインに触れなければいけなかったのは
私が、そうしろって言ったからだった………。
.
82
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:13:59 ID:vo/NI0SM0
o川;゚ー゚)o『お姉ちゃん、本当に……』
川 ゚ -゚)『いいんだ。私の説明不足だった』
そう思わないと報われない。
妹が招いた事態だと思い込んだら、もう妹とは歩み寄れなくなるような気がしたから。
お前なんて、来なければよかったのに。
そんな最悪な思考に、陥ってしまいそうな気がしたのだ。
川 ゚ -゚)『いいんだ。ワインなら、他にもあっただろう?』
o川;゚ー゚)o『お姉ちゃん…』
川 ゚ -゚)『もう、忘れよう』
.
83
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:19:12 ID:vo/NI0SM0
それからのことはあまりよく覚えてないが、なんとか隙を見つけて謝ろうとしてた妹のことを、その都度遮っていたような気がする。
帰ってくるなりそんな不穏な空気を察したドクオに何を聞かれても、ちゃんと説明はしなかったと思う。
怖かった。
口に出してしまうと、少しずつ、崩壊してしまいそうで。
崩壊?何が?
思考?空気?生活?
………精神?
その自問さえ、肯定はできない。
.
84
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:20:50 ID:vo/NI0SM0
川 - -)「………」フゥ
だからといって、妹も全てが悪いわけではない。
失敗したと気づけば、学習はしないまでも一応反省はする。
そうやって素直に謝られてしまうと、咎めづらくなるという難の逃れ方はむしろ天晴れだと思う。
しかしそんな彼女のだらしなさや生活力のなさは、やはり母親に起因すると思うから私はなおさら、妹に対して強く出れない節があるのだ。
.
85
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:22:43 ID:vo/NI0SM0
母は、繊細な人だった。
処女受胎でもしたのではないかと思うほど母性というものが皆無で、少女のまま大人になったような人だった。
そんな母に保護欲求を刺激された父は、厳格で完璧主義。
そして和食の板前でもあった父が、家事の殆どを負担していた。
私は父が作る料理が好きだった。
厳しいが、筋の通った父が大好きでよく懐いた。
.
86
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:25:04 ID:vo/NI0SM0
何もせずに父に全てを任せる母の姿が、他所の家とは勝手が違うんだってことに薄々気づき始めた頃の私は、母に対しては辟易してたかもしれない。
だから、私が父と遊びたがったり料理や勉強を教わったりする姿を見て、母がどんな気持ちになるかなんて、考えたこともなかった。
今考えてみれば、母は母なりに傷ついたのかもしれない。
完璧主義の夫に、自分には懐かない娘。
普通の神経の人間だったなら、そこから多少の劣等感ややっかみに似た感情が芽生えても不思議ではない。
.
87
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:27:18 ID:vo/NI0SM0
とりわけ彼女は、人より繊細だ。
大人になって、それなりの功を重ねてもなお『自分は何もできない人間である』ことを受け入れるというのはまさに、痛恨の極みだったのだろう。
私の記憶にいる母はいつも、慢性的な神経症に侵されていた。
.
88
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:28:40 ID:vo/NI0SM0
夜中によく、発作的なパニックにも悩まされてた。
そうなった時よく口にしていた台詞は、私の心にもしっかり傷跡を残している。
『あなたもクーも、わたしなんていなくたって生きていけるんでしょう!?』
そんなヒステリックな叫びを、今でもたまに思い出す。
そしてその母は、私が小学6年生の頃に、自ら命を絶った。
.
89
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:30:32 ID:vo/NI0SM0
今はただのほほんと横着してるだけに見える妹の不器用さは、儚くも散ってしまった母を生き写したようだ。
容姿や言動も、父に似た私とは違って妹は昔から母親似だったが、そんな幼くして母を亡くした末娘を不憫に思った周りは、殊更に気を遣った。
その頃の私も小学生ではあったが、父の教えもあってある程度の生活力は身に付いていたし、それが多少父の助けにもなると思っていたのでむしろ妹に対しては気を遣う側にいた。
しかしそれは、罪悪感の裏返しでもあったと思う。
.
90
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:32:35 ID:vo/NI0SM0
私が母を追い詰めたのではないか。
何度もそう思った。
直接的な悶着はなかった。
それがかえって、母の自閉的思考を加速させたのかもしれない。
母の嘆きを否定してあげればよかったのだろうか。
母にも懐いていればよかったのだろうか。
あなたが必要だと、言ってあげれば思い止まってくれてたのだろうか。
.
91
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:34:02 ID:vo/NI0SM0
しかしその頃の私は、人より多少生活力があったとはいえただの子どもだった。
好きなものは好きだと言うし、そうでないものには近づかない。
ましてや錯乱した人間の行き着く先なんて知らなかったし、器用に嘘をついてあげることなんてできなかった。
そして、それら全てを後悔することさえ、まだできない歳だった。
.
92
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:35:06 ID:vo/NI0SM0
妹にも、そんな劣等感の芽があるのだろうか。
だとしたら、それに気づいてあげられなかったら彼女はどうなってしまうのだろうか。
妹に母の面影を見るたびに、彼女をまた壊してしまいそうで怖い。
だから私は、妹に厳しくできない代わりに、深く歩み寄ることさえ躊躇われるのだ。
.
93
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:37:11 ID:vo/NI0SM0
川 ゚ -゚)「………」
ふと見上げると、いつの間にか我が家は目の前だ。
なんとなく4階のベランダを見遣ると、自分の部屋の灯りがついていることに気がついた。
妹は既に帰宅してるのだろう。
それを知らせてくるあの灯りに、何故だかげんなりする。
自分が帰宅した時に、家で誰かが待っててくれるとホッとするなんて言う人もいるが、私にはその感覚がよくわからない。
.
94
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:38:57 ID:vo/NI0SM0
川 - -)「はぁ………」
そして部屋に入るや否や一発、深いため息をつくことになる。
妹はいなかった。
電気はついてるのだから風呂にでも入ってるのだろうかと一瞬考えたが、室内はただただ静かだった。
ちょっとコンビニでも行ったのかもしれない。もしかしたら急ぎの用事でもできたのかもしれない。
なんでもいいが、いずれにしても部屋を空けるなら電気は消して出てほしかった。
私も大概神経質であることは自覚してるが、自分が人の部屋に住まわせてもらってる身ならそれくらいはマナーだと思う分は、度を超しちゃあいないはずだ。
.
96
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:41:01 ID:vo/NI0SM0
しかも、足元にはやたら挑発的な下着が転がっている。
脱ぎ捨てたのか何かの拍子に落としたのかはわからないし、いやわからないのも困るのだが、一応男性が踏み込む場であることも理解してほしい。
拾った下着は怒りに任せたように乱暴に洗濯かごに投げ入れ、煙草に火を点けると、玄関から鍵を回す音がした。
.
97
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:42:31 ID:vo/NI0SM0
それに続いていつも聞こえてくる「ただいまぁ」という間の抜けた声が飛んでくると思ったが、今日に限ってはそれがなかった。
私がまだ帰ってきてないと思ってるのだろうか。
………いや、違う。
「どうぞー」
「あ、おじゃまします…」
川;゚ -゚)「?」
その『もう一人の誰か』の存在に気づいた時私は思わず、持っていた煙草を取り落とした。
.
98
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/11/23(日) 22:44:26 ID:vo/NI0SM0
第4話おわりです。
支援ありがとうございました。
99
:
名も無きAAのようです
:2014/11/23(日) 22:45:19 ID:j3zbkzBg0
乙
100
:
名も無きAAのようです
:2014/11/23(日) 22:50:28 ID:WraqNidg0
乙。不穏な空気にハラハラするな…。キュートさんェ…。地雷が爆発しそうで怖いな。
101
:
名も無きAAのようです
:2014/11/23(日) 23:09:39 ID:v0QTVhx60
こえーよ
102
:
名も無きAAのようです
:2014/11/23(日) 23:40:10 ID:1qWqf6Oo0
乙
クーさん甘やかしすぎやろ
103
:
名も無きAAのようです
:2014/11/24(月) 01:03:41 ID:EmLLqr3I0
乙。クーさんもっと怒ってもええんやで……
104
:
名も無きAAのようです
:2014/11/24(月) 23:15:32 ID:k7V0eUn20
おつ
105
:
名も無きAAのようです
:2014/11/25(火) 12:34:45 ID:S0pzKH8A0
おつ
キュートまさか彼氏でも連れてきたのか…?姉との同居生活に?
そらあかんやろ…
106
:
名も無きAAのようです
:2014/11/26(水) 00:28:25 ID:h.zrA8.o0
居候の身で家主に無断で人を連れ込むのは
107
:
名も無きAAのようです
:2014/11/26(水) 19:17:54 ID:QyZZJSIE0
キュートさんから感じる地雷臭がヤバイ
108
:
名も無きAAのようです
:2014/11/26(水) 23:00:15 ID:wOO6GmAk0
おつです
109
:
名も無きAAのようです
:2014/11/28(金) 21:32:37 ID:nHtrmIZA0
面白いねー
110
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:33:36 ID:hetWrsCk0
深夜ですがまったり投下
短いかもですが第5話
111
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:35:30 ID:hetWrsCk0
◆第5話◆
妹の彼氏には何度か会ったことがある。
街で偶然すれ違ったら、お互い声ぐらいは掛け合うであろう程度の面識具合だ。
川;゚ -゚)「………」
(;・∀・)「………」
そんな彼は、こんなに若くて端正な顔立ちだっただろうか?
.
112
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:36:36 ID:hetWrsCk0
o川;゚ー゚)o「………」
気まずい。では済まない。
というか、何故二人が困惑しているのか私には理解できない。
だから
(;・∀・)「…夜分遅くに申し訳ありません。キュートさんと同じ職場でお世話になってます、モララーと申します」
川;゚ -゚)「………」
彼がいくら礼儀正しくてもイケメンでも、快く受け入れられずにいた。
.
113
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:37:52 ID:hetWrsCk0
o川;゚ー゚)o「ごめんねお姉ちゃん…一回連絡してみたんだけど…電話、つながらなかったみたいだったから…」
確かに、帰宅途中携帯に触れなかった時間もある。
部屋を空けるなら電気を消せとか、下着は野郎の見えないところに置けとか
言いたいことはいろいろあったが、人を部屋に連れ込む前に一本確認の連絡を入れるだけの理性はあったらしいことだけは見直した。
それを受け取れなかったのは私の落ち度として、一応事情だけは聞いてみる気にはなれた。
.
114
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:39:09 ID:hetWrsCk0
川 ゚ -゚)「…妹がいつもお世話になってます。姉のクールです。私がこの部屋の家主ということはご存知かな?」
( ・∀・)「ええ…そのようですね……」
彼の目線はまっすぐに妹を貫く。
いやいや知りませんよ、聞いてませんよ。そんな風に目で訴えてるようだ。
そうでなければ、彼の困惑は筋が通らない。
妹に何も聞かされずにノコノコついて来たのなら、むしろ当然とも言える。
都合の悪いことは事後報告。
その時にへらっと謝ってみせれば許してもらえるのが、妹の専売特許なのだ。
彼には少々気の毒だが、何を期待してついて来たんだか。
そう考えただけでなんだか汚らわしい気さえしてくる。
.
115
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:41:26 ID:hetWrsCk0
o川*゚ー゚)o「お姉ちゃん、誤解のないように言っておくけど、モララー君はただの職場の後輩なの。何も変なこととかはなくて、ただ…」
川 ゚ -゚)「………」
o川*゚ー゚)o「…今日はたまたま、仕事が立て込んじゃって、彼終電逃しちゃったの。家遠いから大変だろうなって、なんか放っとけなくて…」
それは自分の家でなら、結構なことだ。
少なくとも私だったら、彼氏以外の男性を部屋に連れ込んだりはしないが、それで自分らが納得し合意してるのならいちいち口を挟んだりはしない。
それとも何か?
自分以外にも人が住んでることを逆手に取って、万が一何か起こったとしても二人きりじゃないからかえって安心だと?
何かあったら誰かに守ってもらえばいいなどと、またそんな風に甘えてるのだろうか?
.
116
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:43:17 ID:hetWrsCk0
川 ゚ -゚)「………」
いずれにしても妹の正念はどうもいただけない。
彼氏に対しても私に対しても、背徳すら感じるのは確かだ。
しかし、帰る足がないと知らされていながら彼を追い出すのもまた、慈悲がない気がしてきた。
彼自信は、べつに悪癖のある人間ではないのかもしれない。
家の勝手や妹個人の事情をどこまで知ってるのかはわからないが、少なくとも姉の家に住まわせてもらってると知ってれば、ついては来なかったかもしれない。
いや、そう思わないとやってられない。
じゃなければ、彼を追い出さずにいる理由なんてないのだ。
.
117
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:44:48 ID:hetWrsCk0
川 ゚ -゚)「…帰れないのなら仕方ない。あまり騒いだりしないでくれよ」
( ・∀・)「…ありがとうございます。恩に着ます」
そう言う彼に早々と背を向けて、私は換気扇の下で煙草に火を点けた。
すると、妹がすかさず背後につけてきた。
.
118
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:53:48 ID:hetWrsCk0
o川*゚ー゚)o「なんか手伝うことある?」
呆れた。
一瞬何を言ってるのか理解できなかったが、この子は私が台所に向かった姿を見て夕食の用意でもすると思ったのだろうか。
流れ的に彼の分も用意せざるを得ない空気の中、むしろそれを催促するような物言いにほとほと呆れ返った。
川 ゚ -゚)「…何か作れと?」
o川*゚ー゚)o「あ、いや…無理ならコンビニでも行ってくるけど…」
川 ゚ -゚)「…いや、いい。でも急だったからたいしたものはできないぞ」
突き放すようにそう言って、私は煙草をくわえたまま冷蔵庫の中を漁り始めた。
.
119
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:55:34 ID:hetWrsCk0
ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ…が、あった。
ガラムマサラやクミンは……ないか。
川 ゚ -゚)「米だけ炊いといてくれ」
o川*゚ー゚)o「はぁい」
そんなやり取りが当たり前にされてることさえ無視して、とにかく料理に打ち込もうと思った。
出来なんてこの際どうでもいい。
私は鰹出汁を取りつつ豚こまを炒めながら、半ば自棄気味に冷蔵庫の中から見つけた缶ビールを煽った。
.
120
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 02:58:21 ID:hetWrsCk0
幸か不幸かその肉じゃがの出来は悪くなかった。
料理しながら缶ビールを2本空けた私もほんのりと酔いが回り、そういえばドクオになんて説明しようかなんて、今更ながら思い出していた。
(*・∀・)「すっげ旨い!やっぱりプロの肉じゃがは絶品ですねー!」
o川*゚ー゚)o「でしょー!ご飯はわたしが炊いたんだよー!」
そんなやり取りも軽く受け流し、なんとなく携帯を手に取る。
.
.
121
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:00:10 ID:hetWrsCk0
着信一件。
それは、料理中に手が放せなくて受け取れなかったドクオからの着信のみだった。
川 ゚ -゚)「………?」
はて。何かおかしくないか?
ほろ酔いの頭でなんとなく違和感を抱くと、玄関から鍵を回す音がした。ドクオが帰ってきたらしい。
('A`)「ただいまー……ってあら?」
この状況。
説明する暇がなかったのは痛手だった。ドクオもなんとやりづらいことだろう。
.
122
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:01:41 ID:hetWrsCk0
( ・∀・)「あ、クー姉さんの旦那さんっすか?お邪魔してますーモララーといいます!」
(;'A`)「あ、どうも…」
こちらも多少酒が入ったせいか遠慮がなくなってきている。
もともと人見知りとかするようなタイプではなさそうだが、今のこの状況ではただただ思慮が浅いだけにしか見えない。
.
123
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:03:56 ID:hetWrsCk0
('A`)「キュートちゃんの彼氏?」
o川*゚ー゚)o「違いますよぉー職場の後輩なんです!」
( ・∀・)「今日はたまたま終電逃しちゃって…一晩だけお世話になってます!」
誰にともなく聞いたドクオの問いにすかさず当事者が答えてくれたので、私が説明する隙はなかった。
そういう、人に考える隙を与えない押しの強さが、販売員のやり方なのだろうか。
川 ゚ -゚)「………」
まぁ、私一人から事情を説明されたらただの愚痴にしかならなかっただろうから、それはそれでいいのかもしれない。
.
124
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:05:53 ID:hetWrsCk0
(;'A`)「へぇー……そう…」
ドクオの困惑もよくわかる。
しかし、私がそれをよしとしてると思えば文句は言わないだろう。
ドクオは優しい。
神経質な私からしてみたら多少無神経に感じるところはあるが、そんな彼の思慮深さはよく知っている。
ただ、優しさも行き過ぎるとただ臆病なだけにしか見えないのも確か。
『クーさえよければそれでいい』なんてのも、些か懐疑的なものだ。
私が間違ってると思うのならそう言ってほしい。
そう思うことも、たまにはある。
特に妹に対して私は、偏屈であることを自覚してるからなおさらだ。
.
125
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:07:20 ID:hetWrsCk0
川 ゚ -゚)「悪いな、ドクオ。肉じゃがいるか?」
('A`)「あ、いいんだけどさ…自分でやるよ」
ただ、気分が荒れてる時の恋人の優しさは響く。
一晩だけ。一晩我慢すればいいだけだ。
さっきそこの若い彼も言ってたじゃないか。
一晩だけ。一晩だけだ。
そう言い聞かせるように頭の中でループさせながら、旨くもない缶ビールを煽った。
.
126
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/08(月) 03:08:19 ID:hetWrsCk0
第5話おわりです。
おやすみなさい。
127
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 03:44:19 ID:QYAM6xB.0
乙
128
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 03:51:17 ID:wuIFCvmo0
乙
129
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 10:33:29 ID:JOCTEV1w0
なんだかなー
130
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 10:43:53 ID:BciVGLgo0
いい感じにモララームカついてきた
131
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 12:13:39 ID:Myxg/Tfo0
おつ
事前連絡もなしに人を連れ込んで言い訳と嘘は完璧ってキュートさぁ・・・
俺が姉にやったら殴られるわ。クー怒ればいいのに
132
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 12:31:05 ID:JbwfrJ5Y0
すごく怖い
ソワソワするな
133
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 13:39:12 ID:PkwPLJvw0
いずれクーが炸裂するのは見えているが
やっぱ怖いな
134
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 19:58:08 ID:qscl8Hmk0
ドクオに飛び火しそうで怖い
135
:
名も無きAAのようです
:2014/12/08(月) 20:36:56 ID:UztVrB6Y0
乙
このキュートを調教したい
136
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/09(火) 07:27:16 ID:mkTtBvYE0
おはようございます。
変な時間ですが今のうちに第6話
137
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/09(火) 07:28:39 ID:mkTtBvYE0
◆第6話◆
………ーちゃん……
……クーちゃん……
クーちゃん!!……
o川*゚ー゚)o『ごめんねぇ、ちょっと過ぎちゃった…』
川 ゚ -゚)『まぁいいさ。間に合わない時間でもない』
11時36分。
まぁ、妹が待ち合わせの時間通りに到着するとは最初から思ってない。
今日なんかはむしろ、よく頑張った方ともいえる。
そのことも加味して、観たい映画の時間に間に合うように待ち合わせたはずだから、目くじらたてるほどの了見はどこにもない。
.
138
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/09(火) 07:30:14 ID:mkTtBvYE0
姉は足早に歩き出した。
映画の時間や、待ち合わせ場所から映画館までの距離や、わたしが遅刻してくることさえ計算しつくしておきながら、どこか落ち着きがないように見えるのはやはり、今日観る予定の映画への関心を抑えきれてないように見えた。
名は体を現すというが、まさに姉は『クール』を体現したような女性で、その名に恥じぬ美貌と明晰な頭脳を兼ね備えてるはずだと思うが、意外にも魔法使いや海賊や人魚なんかが出てくるファンタジックな物語が好きなようだ。
壮大なスケールで描かれた映像の美や音楽に惹かれることもあるそうだが、やはり史実や文学や神話なんかをベースにした物語が姉のツボなんだろうなとは、最近気がついた。
話のベースがそれらに基づいてさえあれば、実写でもアニメーションでも、そこは特に意に介さないようだ。
.
139
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/12/09(火) 07:31:24 ID:mkTtBvYE0
ドクオとは観たい映画のジャンルがことごとく合わない。
お約束のヒーロー物や脈絡なくドンパチ騒ぐ映画たちは私にとって、どれが何だかさっぱりで掴み所がなく、イマイチ個体差を感じないのだ。
しかし、逆の立場も然りだろう。
結局のところどうしても興味が持てないものに付き合うには、限界があるということだ。
付き合いはじめの頃こそ多少は譲り合って、お互いの好みに歩み寄ろうとはしてみたが、それが自分にとって有益でないと思ったら遠慮なく断ることも覚えた。
好みは多少違えど、それで相手への気持ちが変わるわけではない。
長い付き合いの中で、それがわかったから無理もしないでいられるのだ。
.
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