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9 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/28(日) 21:23:12 ID:jDTTQVVk0
いつしか、その発光現象に『彩色の奇跡』という名がつけられた。
この名前には二つの意味がある。一つは無論、その現象が世界中の人々を釘付けにしたという意味。
そしてもう一つは、それに伴う類い稀なる商業的成功を称える意味である。

最初にこの現象を発見したのは、ある高名な実業家だった。
考古学的な趣味を持っていたその男が誰も探索しようとしていなかったその場所に初めて足を踏み入れ、
『彩色の奇跡』を見つけたというわけだ。

彼はそれを発見するや、自らのコネクションと財力、
その他あらゆるものを利用して自身が発見した奇跡を世界中へ喧伝した。
それと同時に、その周辺の大開発に乗り出したのである。

その時点で、実業家が現象の価値に気付いていたか、それは分からない。
しかし、そのギャンブル精神のようなものこそが実業家たる所以なのかもしれない。
私のような小市民には想像の及ばぬ領域だ。

ともかく、彼は周辺の土地を買い占め、老人と共に死にゆくのみだったその街を、
巨大な観光都市へと変貌させたのである。
駅周辺にはホテルやショッピングモールが立ち並び、海岸線も整備された。

『彩色の奇跡』へ続くコンクリートの道も敷設され、美術館をも用意して芸術的な価値を高めることにさえ成功した。
 
全ての準備が整ってからの熱狂ぶりは、年がら年中万博を開催しているにも等しかった。
人種や年齢、性別を問わず、誰もがその地を訪れた。最終的な集客数は、延べ十億近くに上るとも言われている。

私もその一人だ。
十五年ほど前の当時、私はまだ中学生で、両親と共に格安のパックツアーで訪れただけだったが、
あの現象の素晴らしさを目に焼き付ける事は出来た。何が素晴らしかったかというと、とにかく素晴らしかったのだ。

先に述べたような特殊な経緯のため、街に占める産業は殆どその実業家が掌握していた。
そのため、世界各地から訪れた旅客の落とす莫大な金銭は、その殆どが彼の儲けとなった。
彼の得た収入は、およそ天文学的な数字だったとまで言われている。


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