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8 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/28(日) 21:21:53 ID:jDTTQVVk0
街について。
 
かつて、私がまだ生まれてもいなかった頃、この街に目を向ける者は誰もいなかった。
目立った産業に恵まれなかったこともあり、若者は次々と都会へ移り住んでいった。

唯一の強みは誰の手も加わっていない美しい海岸線と、自然の戯れによる無数の洞窟群だったが、
あまりにも手が加わっていないため危険であること、また主要都市からは、
電車を乗り継いで二時間以上かかるという交通の便の悪さゆえ、それすら活かすことが出来ずにいた。

誰もが、数ある過疎地と同じようにその街が人知れず消失することを確信していた。

しかし三十年前、ある発見を境にこの街の運命は一変した。
無数に穿たれた洞窟の一つ、その最も奥まった場所の広大な岩壁に、
幾何学模様を描く美しい発光現象の存在が確認されたのだ。

残念ながら、その美しさについて描写するだけの十分な表現の幅を私は持っていない。
しかし、誰だって知らないはずが無いのだ。
何せ、それが発見されてから二十年ばかり、その地に国内外からの観光客が途絶えた事は一度も無いのだから。

ただ岩壁に映る色とりどりの光が、何故かくも多くの人々の心を惹きつけたか、誰にも分からなかった。

私が思うに、きっと神か何かが人間を作った際、その頭にこんな風に植え付けたのだろう。
「人間よ、こういう感じの景色を見たら感動するように」と。


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