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60 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/28(日) 23:40:48 ID:jDTTQVVk0
息子について。

懺悔すると、事故のようなものだった。
息子の誕生は、私たちがそれを目的として励んだ結果ではなかったのだ。
私たちは当然のごとく避妊をしていた。しかし悪いことには、この世のあらゆる避妊具は万能ではないのだ。
 
ある日の行為の後、やがて妻となる女性は私に、慣例の日が長らく訪れていないことを告白した。
その時に私が一瞬、呆然となったのは抗えぬ事実である。

当時私はまだ二十五で、大学を卒業して仕事に就いて間もない時合いだった。
経済的にも個人的にも、子どもという概念は想像上にも据えがたいものであった。
そう、だから、一瞬堕胎という単語も過ぎった。
 
しかし、結局はそうならなかった。それから暫く後、婦人科から帰宅した彼女が、懸念の確定を述べたわけだが、
その際に私は、あまり取り乱すこと無く、むしろ自分でも驚くほど冷静に出産を承認した。

彼女の気持ちはどうだったか。多分喜んでいたと思う。
常から子どもの話をしていたのは彼女の方だったし、子育てというものに一種の憧憬を抱いている節もあった。
 
それからは正しく、てんやわんやだった。
人の世では、先立つものが無ければ自然の摂理を果たすのもままならない。
私たちは互いの両親に事情を話した上で、経済的な支援を申し込んだ。

双方とも案外と喜んでくれ、金の心配はいらない、と心強い言葉をかけてくれた。
そして私たちは、実にどたばたと結婚式を挙げた。一通りの事務手続きと儀式を終えると、
最早妻となった彼女のお腹はすっかり膨らんでいた。

その時には子どもが男であると判明しており、親戚一同の援助のおかげで出産への準備も整いだしていて、
妻は子どもの名前をあれこれ考えるのに躍起になっていた。


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