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45 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/28(日) 22:56:48 ID:jDTTQVVk0
二十七階へ向かうには、少々面倒な手続きが必要だった。
まず一階まで下りてから、高層用のエレベーターに乗り換えなければならなかったのだ。

それは妻のいる場所が、我々庶民とは一線を画していることを示唆していた。
妻はそこに居住しているのだろうか。その厚遇には、一体どのような意味があるのだろう。
 
ここに来てから疑問ばかりが浮かんでくる。そして、どれ一つとして解決していない。
目下のところ最も気に掛けなければならないのは、筋肉質の男が言った「もうすぐみんな死ぬ」という一言だろう。
そこには冗談めいた雰囲気は感じられなかったが、同様に深刻な表情も垣間見えなかった。
 
あの時にもう少し詰問しておくのも一つの手段だったが、どうせなら妻に一括して訊ねた方が効率的だ。
この変哲極まりない場所で、最も信頼できるのが妻であることは間違いないのだから。
 
そこまで考えたとき、私は私が妻に逃げられた夫という身分であることに初めて自覚した。
まるで、今の今まで完全に忘却していたようだ。そんな私に、彼女が素直な回答をくれるだろうか。
だがその事に気を回したときには、私はもう彼女の部屋の前まで到着してしまっていた。
 
ほんの少し躊躇してから、ドアを恐る恐るノックする。
数秒と経たずに、中から暫く聞いていなかった声が返ってきた。妻の声。
ドアを開ける。ベッドの端に座り、テレビを観ている彼女の後ろ姿が見えた。


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