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Last Album

339 ◆xh7i0CWaMo:2014/10/10(金) 20:53:32 ID:bKltLt3M0
暑さの沁みた山道を、十字架を担いだ男が歩いてゆく。
十字架は自己を激しく主張する大仰なつくりだが、そのくせ発泡スチロールで組み立てられたかのように軽い。
足早に登る若い男の顎からは大量の汗粒がしたたり落ち、しかしその表情は笑みで塗りたくられている。

誰もいない、失踪には打ってつけに見える林藪の合間を、彼はぐんぐんと進んでゆく。
夏の終わりの太陽が、人の殺意を呼び覚まそうとキリキリ照り輝いている。
遠くの方からセミの断末魔が聞こえる……足下には、別のセミがひっくり返り、足の先まで硬くして少しも動かない。

やがて男は少し開けた平野に出た。
森の中にポッカリと浮かび上がる、植物の剥ぎ取られたその場所には、
男の背中にある十字架と同じようなものが数十と林立している。

男は立ち止まって、その見窄らしい光景を眺め、満足げに何度も何度も頷いた。

('、`*川「……なんだ、また来たのかい」

入り組んだ十字架の群れの中から一人の老婆が顔をあげた。
彼女は古びた竹箒にプラスチックの青いちり取りを持って男を不審そうに見やっている。

幾重にも皺の刻まれた肌には無数の黒いシミが浮かんでいて、
その全身は若い男の方よりも随分と日に焼け、引き締まっているようにさえ見える。


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