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◆xh7i0CWaMo
:2014/10/09(木) 01:18:10 ID:ft4TltCY0
翌日、私は近しい声によって目覚めました。
と言っても目の前は暗闇で周りには狭い隙間しかなく、二度寝しようと思えるほどの味気なさでしたが。
しかし聞こえているのが読経であることに気付いて昨夜の記憶が一挙に展開されました。
そのエネルギーは思わず蓋を撥ねのけて外へ飛び出してしまいそうな勢いでした。
しかし結論として、それは果たされなかったのです。ここで私が無意味に抵抗したところで何になるでしょう。
シュレディンガーのパラドクスでは、猫が自ら箱を破壊して飛び出してくる可能性が完全に排除されています。
そんな空気の読めない猫は、元々実験台として採用されないでしょう。
同様に、私が生き返ったところで遺族も弔問客も、冷たい視線で私を罵倒するだけでしょう。
そうなれば、私はまたすごすごと棺の中に自ら納まらなければならないのです。
そうやって恥をかくことを怖れ、私は少しも身体を動かしませんでした。そうしてぼんやりと読経を聞いていました。
意味の分からない宗教語に耳を傾けながら、そう言えば自分は死人に最も近しい存在なのだと認識しました。
しかし、実際のところ死とは一体何なのでしょうか。
多くの人々がこの問題を多方面から解明しようとしていますが、未だ明確な答えは出ていないようです。
ある物理学者は死を「機械と同じで、壊れればその機能を失う」と表現していました。
無論、宗教者はそれに反駁するでしょう。
議論の行き着く先はどうしても不可知であり、数多の賢人と同じく今の私にも死については何も分かりません。
しかし私は、おおよそ自らが望んでこの状況に至ったわけですから、
死後にもまだ何かを思考せねばならないとすれば、
それこそ昨夕の吐き気みたいにいつまでも苦い不条理を舐め続けなければならないのでしょうか。
そうなればいよいよ為す術がありません。それは、死よりも怖ろしい未来です。
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