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Last Album

321 ◆xh7i0CWaMo:2014/10/09(木) 01:15:48 ID:ft4TltCY0
以上が、私をこの場所に至らしめた顛末です。
それなのに、話は終わりません。まだ全ての儀式が済んだわけではないからです。
語れることなどもう殆ど残っていないというのに、私はまだ時間を押し進めなければなりません。

言うまでもないことですが、私が私自身を納棺した時点で、その死は覆らないのです。
棺に入った段階で私は死者であり、誰に対しても利害を及ぼさない存在と化したのです。

死人が語らないのは決して物理的な意味に留まらず、
語れば語るほど自らの空虚さが際立ち、恥辱を覚えるからではないでしょうか。

これが普通の死者であるなら、遺言という置き土産に執心することでしょう。
しかし私には言いのこせることなど何もありません。自分の過去も身分も分からない、
ましてや生者に向かって何の情動も遺さなかった人間の言葉に、一体誰が耳を傾けるのでしょう。

家族や恋人など、卑近な者への言葉……しかしそれにもさしたる意味は持たせられないでしょう。
私は彼らのことを曖昧にしか想起出来ないし、
向こうも私程度の死では半端な悲哀しか得られていないのではないでしょうか。

最も名残惜しいのは自ら関係を望んで契約した恋人ですが、私よりまともな人間はごまんといるし、
それでなくとも安易に彼女の心に私を刻みつけるような影響を及ぼしてはならないはずです。
そう言えば、結局彼女からメールの返信はこなかったのでした……。


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