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291 ◆xh7i0CWaMo:2014/10/08(水) 23:10:43 ID:cxCxhwjA0
私はただただ呆然と佇みました(それが正常な反応のはずです)。
何かの手違いかとも思いましたが、こんなにも分かりやすいミスを放置しておくわけがありません。
事実として、そこにあるのは空白の遺影で在り、写っているべき故人が存在していなかったのです。
 
……いっそ、その時私は大声で糾弾すべきだったのでしょう。
そうすればそこで不条理の鎖が断ち切られたのかも知れません。それに近いことをしようとはしました。
先ほど存在を確認したばかりの父に、この、あってはならない間違いを報告しようとしたのです。

しかし私が親族席に足を向けようとした直後に葬儀場の職員らしい司会者が通夜の始まりを告げました。
 
たったそれだけで私の正義感は挫けました。
私は慌てて着席しようとし、出来るだけ目立たぬよう右側の最後列に腰を下ろしました。
そして独り、心の中で呟き続けたのです。おかしい、何かがおかしいと。

それを告発するわけでもなく、ただただ自分の内部で処理しようと必死だったのです。
もしかしたら、そうやって自身の内側に溜め込んでいったのが良くなかったのかも知れません。
 
僧侶が入場し、読経が始まりました。
その場にいる全員が、何の疑問も持たずに現状を受け入れているようでした。
そんな周囲に何とか溶け込もうとし、まるでそれを疑いの捌け口にするかのように数珠を強く握りしめました。

何度見直しても遺影は空白のままでした。
祭壇の前にはシンプルな棺が置かれていましたが、もしそこに何かが納められているとして、
その存在とは何者だったのでしょう。私以外の参列者達は、一体何者の死を弔っていたのでしょうか。


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