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290 ◆xh7i0CWaMo:2014/10/08(水) 23:07:52 ID:cxCxhwjA0
ホールはさほど大きくなく、既に二、三十人程が着席していました。
どこに座ればいいのかも分からず、いつの間にかいなくなっていた母の姿を探し求めました。
すると祭壇のすぐ近く……恐らくは親族席と呼ばれる場所に、父が座っていたのです。

ああ、父がいる、と思いました。
それからようやく驚きました。例えでは無く、風景がぐにゃりと歪んだような気がしました。
その時の衝撃は、常識の崩壊と言っても差し支えないでしょう。

父は沈痛な面持ち、つまりは通夜に参列する遺族として当然の表情でパイプ椅子に座っていました。
医者に糖尿病を指摘された肥満体も白髪の交じり具合も、父以外の何者でもありませんでした。
 
しかしその問題に理論的な説明をつける前に、更なる衝撃が私を襲ったのです。
父の存在に落ち着きを失った私の眼は滑稽なほどに泳ぎました。彷徨った視線は一瞬祭壇に固定されました。
種々の、名前も分からぬ花々と焼香用具、そして一番高い場所に遺影のための額縁がありました。

遺影に写っているのは誰でもありませんでした。
無論、N君でもありません。それどころか、それはまったくの白紙だったのです。


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