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Last Album

14 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/28(日) 21:31:56 ID:jDTTQVVk0
やがて、オープンカフェの名残であるらしい丸テーブルと椅子を見つけたので、
どっかと腰を下ろして深いため息を吐く。どれぐらい歩いただろうか。洞窟まであとどれぐらいだろうか。
十五年前はこの道をバスで走ったからいまいち見当がつかない。
 
記憶の捜索から、唐突に現在の両親へ想いが行く。父は昨年会社を定年退職し、今やすっかり隠居の身である。
どちらかというと仕事人間だった父は、これから多くの自由を満喫すべきだったのだろう。
それを妨げているのが私たちであるというのは、何とも情けない話だ。

全てがどうしようもない。どうにかする方法など、何一つ無い。
 
悲嘆を形成しようとする頭の代わりに、私は持ってきた肩掛け鞄の中身をがさがさと混ぜ返す。
何しろ無計画な往路であったものだから、めぼしい道具は何一つ持ち合わせていない。
あるのは財布と電源の落ちた携帯電話……それから家族写真。ミネラルウォーター……。
 
私はそのペットボトルを取って一気に半分ほどを飲み下した。
静けさのせいで、喉の鳴る音が一層鼓膜に響く。その一瞬、よくわからない愉悦のような感情が込み上げてきた。

こんなところで何をしているのだろう……何のためにここに来たのだろう。私の目的とは、一体何だったろう。
考えているうちに許容を超える水が口で渦巻き、思わず咳き込む。

それからまた歩き出した。
ともかく、『彩色の奇跡』までは向かってみようという決心がついたのだ。
例の現象が失われ、剥き出しの岩肌を見て面白くないと思い浸るのも悪い話ではあるまい。


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