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◆xh7i0CWaMo
:2014/09/30(火) 21:47:40 ID:9BaR2n0c0
ここからの行き先の候補として幾つか思い浮かぶが、そのどれを取っても彼女がいる気がしなかった。
もしや、彼女はこの雨と一緒に溶けてどこかへ流れていってしまったのではないだろうか。
そうであってもおかしくない気がした。
そして、もしそうだとしたら、ぼくみたいな人間にはもう追いかけることもできない。傘だって無駄になる。
それでも、ぼくは歩き出さなければならなかった。
彼女を探し続けるにしても、早々に引き上げてしまうにしても、立ち止まってはいられない。
何があろうと、前には進まなければならないのだ。そんなことは分かっている。
分かっていたからこそ、今日という日に向けて着々と準備してこられたのだ。
彼女にさえ見つからなければ……。
いや、そんな名残惜しさに浸っている場合ではない。ぼくは傘をさすために少し上を向いた。
その瞬間、視線の先を光が斜め下へ走った。稲妻だ。続いて鼓膜をつんざく爆音。
先ほどまでとは比べものにならない音の大きさに、ぼくは思わず悲鳴をあげそうになっていた。
外に出たのだから大きく聞こえるのは当然の話なのだが、それでもぼくは必要以上に驚愕していた。
しばらくその場を動けずに足を震わせていた。
それからようやく、何事もなかったかのような顔で傘をさして歩き出すことができた。
ぼくはたぶん、空襲の時に逃げおおせることもできずに死んでしまうのだろうな、などとつまらないことを考える。
それぐらい頭が混乱していた。脳みその奥底で、まだ雷鳴が反響していた。
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