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Last Album

118 ◆xh7i0CWaMo:2014/09/30(火) 21:35:47 ID:9BaR2n0c0
一切の出来事を遠くから眺めているような気分だった。
ぼくの感情は、死人の心電図のように少しも波立っていない。
ぼくの知らないところで、意識だけが眠っているような感じ。

映画館の最前列で、終わらないエンドロールを眺めているような気分。

彼女は少し慌ただしすぎたのではないかと思う。

ぼくに対しては、まだ説得の余地が残っていただろうし――
もっとも、彼女がぼくの強固な決心を見透かしていたとすれば話は別だが――、
着のみ着のままで部屋を飛び出すほど切迫した状況でもなかったように思う。

無論、そんな心境にまで追い込んだのは他ならぬぼく自身だから、彼女に文句をつけるのは筋違いだ。
しかしながら、さすがにあんな具合で飛び出されたのではいささか心配にもなってくる。
だいいち、彼女は財布も何もかも全部入ったハンドバッグを部屋に放置したままだ。

これでは友達に会いに行くこともできないだろうし、このまま二度と帰ってこないというわけにもいかないだろう。

ぼくはぼくの決心をひるがえすつもりはないが、それでも、うじうじとした罪悪感が湧き上がってくる。
それは一種回避行動のようなもので、自分自身を落ち着かせるための休息に過ぎない。
やはり、この場所で死ぬというのは少し考え直したほうがよさそうだ。

彼女がぼくのことをどう想い始めたかはさておき、これ以上彼女に苦痛を与えるのはさすがに良心が痛む。
そして、死ぬ時期ももう少し先に延ばしたほうがいいのかもしれない。
やはり、生きている人間が死んでいる人間に変化するときにはそれなりの面倒がつきまとうようだ。

死人が生きている人間の数倍も存在感を発揮することだって、珍しくないというのに……。


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