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( ^ω^)千年の夢のようです
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9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
-
突然ワカッテマスが大きく跳躍した。
動き自体は素早くないが、予備動作はなく、さらに周囲を囲む土塊までも同時にその場を離れている。
(゚ω゚ )「なん──っ」
追うつもりのブーンを襲う突風、そして鉄の羽根。
ワンテンポの遅れがその身を封じ、肉を切り刻む。
《ギィィイイッッ!!》
Σ(# ;゚ω゚)「ふおぉぉおっ!!」
──グリガンの【ダウンバースト】。
はるか上空から注ぐ刃と、
全体重を乗せた体当たりがブーンに迫り、
邪
魔
す
ん
な
と、
耳にがなり声をこびりつかせた。
爆発音はグリガンと共に、ブーンは白い瓦礫の山へと吹っ飛んでいく。
('A`)
「それは俺の獲物なんだよボケが」
-
ガリ(ガリ ガリ ;;゚ ガω゚リガリガリッ!
ブーンの意思を断ち切らんとする巨獣のメテオ。
背中に受ける衝撃が意識を失うことを許さない。
瓦礫の山を爆砕してなお、グリガンの【ダウンバースト】は止まらない。
遥か先で原型を保っていた建物という建物すら粉砕しながら翔んでいく。
('A`)「てめーはそこで戯れてな」
グリガンから降り、それを眺めていたドクは
そのままワカッテマスの消えた方角へと足を向ける。
( )「…」
( 'A)「…なんだと?」
…グリガンの攻撃が止んだ。
巨獣の体当たりは、この程度で終わる攻撃ではないはずだった。
「…待、つお……!」
空によく通る声がする。
衝撃の余波がびゅうびゅう土煙を押し退けていく。
ひらけてゆく景色…新たに出来た瓦礫の壁。
蜘蛛の巣状にひび割れたその中心に。
グググ…
::(;つ^ω^)つ::「…あいつには…訊かなきゃ、いけないことがっ、あるんだお!!」
グリガンの牙を抑え込み、膨張させた筋肉によって巨獣を怯ませるブーンの姿。
( 'A)「…」
( 'A)「ひひっ、おもしれぇ〜」
-
グググ…
::(;つ^ω^)つ::「ドクもアイツに用があったのなら、目的は一緒のはずだお!」
('A`)「んー、あぁ〜そうねえ〜」
::(;つ^ω^)つ::「それなら一緒に──」
('A`)「馴れ合うつもりはねえ。
どーしてもってんなら、てめーはそこでグリガンを倒してみろ。
おもしれーぞソイツは」
::(;つ^ω^)つ::「ド、ドク…頼むお!
僕は君と争うつもりはないんだお!」
('A`)「争ってんじゃねえか、どっちが先にワカッテマスを捕まえるかをよ」
::(;つ^ω^)つ::「ツンを助けるために、アイツから病気を治す方法を僕は知りたくて──」
('A`)「他人の事情なんざ知ったことか。
俺の用が済んでからにしろよ」
::(;つ^ω^)つ::「どうしてだお! 話を聞いてくれお! ドク!」
( 'A)「あばよ、ブーン。 …ひひっ」
そういって、ドクは去っていった。
グリガンの向こう側にいるブーンから見ることも出来ず、ただ気配でドクが居なくなったことを知る。
グググ…
::(;つ ω )つ::
::(;つ゚ω゚)つ::「……ドクオー!!!」
-
ブーンの叫びに呼応してグリガンの牙が震えだす。
──否、震えているのは鋭い体毛か。 それも全身。
七色の羽根をもつ孔雀が異性に対してアピールするのと同じように、鉄の羽根もまた、強者に向けて。
::(;つ゚ω゚)つ::「ま、マズイお!」
グリガンが短く鳴いた。
『お前の力、もっと見せてみろ』
そう言いたげに、無数の羽根が死神の鎌を連想させるほど逆立ち…欠けた月を作り出す。
『【バーストウィング】…!』
____、
`ーーーと(# ゚ω゚)つ::
ミ 「…ッこの──」
…羽根が身体を貫く音も、叫び声も、
ドクには届かない。
-
----------
「ぐあぉお!!」ギシギシッ
「ははは ( <●><●>) ははは」
「ギャアァァッ」
ギシィッ
( < ●>< ●>) つ 「【カース】…」
ギシッビシッ
「あ゛ー! あ゛あ゛あ゛ー!」
ガッシャーン
⊂(<● ><● > ) 「…【カース】」
街中に次々と、氷の柱が生えそびえる。
ドクとグリガンから逃げるワカッテマスはしかし、素直に街から出ようとしなかった。
「しね…シネ…
<●> <●>
死ね…しネ…」
ピキリ、パキリと結晶を踏み締め。
優雅に歩くその姿はさしずめ童話の笛吹男だった。
いまや凍えそうな寒空の下、愉しげに振り蒔かれる赤黒い魔導力。
なす術なく人々は瞬時に石化し "凍って" ゆく。
それが柱の正体。
《バスッ!》
「おめーが死ね」('A`)
-
咄嗟に目を向けるしか出来なかったワカッテマス。
その眼前にドクの弾丸が迫った。
( <●><▲> 「──
'=⊂('A`) ひひっ」
フード越しに頭が揺れる。
ドォゥンッ…と鈍く重い音。
──そして
('A`)「…! 野郎」
弾力性に富む分厚い衝撃吸収材を鈍器でなぐればそんな音がするだろう。
ダメージの大部分を散らす陽炎の壁がワカッテマスを囲んでいるのを、ドクは確かにみた。
('A`)「GC (ガードコンディション) …このタイミングでか」
( <●><●>) 「…貴方でなくグリガンであれば貫けたでしょうにね」
('A`)「それじゃあ意味ねぇんだよ」
-
任意で一定量の魔導物理壁を張る【シールド】とは違い、
GCは発動もまちまちで、単一では弾丸を防ぐほどの壁も作れない。
──それが魔導研究者達の常識であり、大陸戦争時代には
[戦場の奇跡][女神のお目こぼし]とも呼ばれていたほどだった。
グリガンのような規格外の存在でもなければ覆せない。
人は群れ、心から仲間と連携し、団結することではじめてGCが発動するが──
( <●><●>) 「貴方の土塊とは随分と相性がよろしい…それを収穫としておきますか」
主従関係よりも強固な上下関係。
土塊人形とワカッテマスにはおあつらえ向きなのかもしれない。
('A`)「……」
('A`)「ひひひ」
土塊から奪った銃では貫けない。
本来の得物であればGCを減少させるリングが共に在ったはず──……などと悔やむのは、限られた時間を生きる者だけの特権。
千年を生きる彼の心に、悔いるという文字はない。
('A`)「俺が諦めると思うか?」
ドクは両腕をだらりと下げ、首をかしげると
ワカッテマスを見下すよう睨み付けた。
('A`)「たっぷり時間はあるんだ、遊んでやるよぉ〜っひひひ♪」
('∀`)「…お前の企みも、怨念も、生きる目的も希望も
手足も首も顔面も目玉も舌も血も肉も骨も、
全っ部 ────
もう、俺のもんだ」
----------
-
街の至る場所で発砲音が紫空に舞っていた。
色に灰塵が混ざるのは、同時に放たれた炎のせい。
主人に寄り添うよりも優先度の高い命令を受けている土塊の所業は、常人にすれば狂気の沙汰だった。
「なぜ…私達がなにをしグェッ」
「助けてくれ! た──ッハギァ」
人々を襲う凶行。 止めることは出来ない。
土塊が引き連れた領主の姿を背景に残したまま、鉛の雨に撃たれて地に沈んでいくばかり。
|(●), 、(●)、| 「この区域の住人は反逆者だ!
収容所などもういらぬ! 資源の無駄だ!
老人もいらぬ! 国の未来に必要ない!」
|(●), 、(●)、| 「殺せ!」
興奮のあまり瞳孔を開いた領主がその手を振りかざし、控えていた警官たちも場の鎮圧にかかる。
──なにが反逆で、誰を殺せばよいのか?
誰一人としてそれを把握している者はいないのだろう。
国民を撲り倒し、流れ弾に貫かれながら、彼らの耳元では法が囁いている…。
『職務を放棄した公務員は、生命刑…つまりは死刑』
殺せ!
殺 せ!!
殺 せ!!
-
『殺せ !』
『殺 せ !!』
『 殺 せ!!』
/; ゚、。 / 「…なんのおと?」
狂気を運んでいる張本人、
ウォール高原の領主の声が地に吸われ聴こえてくるそこは、地下に建設されている収容所。
冷えているはずの壁床からじりじりと熱を感じ始める。
フィレンクトも、制服の一部である布兜ごしに、パラパラ降る小石や砂埃の重みを感じた。
表情は自然と歪み、天井のあちら側から目が離せない。
「私にも分からない……石が降る、その毛布を頭に被っておくんだ」
/ ;゚、。 / 「う、うん」
「……いったい何が起こっている?」
人間とは思えないほど悪意に満ちた頭上の声を、ダイオードはどう受け止めるだろうか。
フィレンクトは無意識に階段へと足を向ける。
/; ゚、。 / 「おかあさん! ねえ、おかあさんは??」
-
「レモナさん……そうだ! 避難活動はされているのか?!」
/; ゚、。 / 「えっ…」
「君はここで待っ……いや!」
フィレンクトは踵を返し、牢を開錠する。
二日ぶりに開かれる鉄柵。
その奥でいそいそと、薄汚れた毛布にくるまろうとするダイオードが慌てて顔を上げた。
「おいで。 私から離れないように。
レモナさんの所まで必ず送り届けよう」
/ ゚、。 / 「…うん」
もう分別のつく年頃だ。
地上に起こる騒動はともかく、フィレンクトの焦り…住民を守ろうとする優しさは感じとるのだろう。
その時──ひときわ大きな震動が収容所を揺さぶった。
他の牢ではまだ繋がれた罪人達が恐怖に叫び、
「俺達も出せ! クソガキ! おい殺すぞ!」
と、この期に及んでまだ恐喝じみた言葉を投げつけてくるが、フィレンクトの聴覚はそれを遮断する。
「上では何があるか分からないが…君はとにかくお母さんのところに行かなくては。
…怖いかい?」
問い掛けから間を置かず、
ダイオードは首を小さく横に振る。
/ ゚、。 / 「フィレンクトさんがいるならへーき」
……その口許は、笑っていた。
-
警官として特にここ数年、フィレンクトがやってきたのは誰かを罰する職務ばかりだった。
──罪を犯すほうが悪い。
──なぜ法を破るのか?
……どうして規律を破ってまで私達の目を逃れ、信用してくれないのか。
いつしか意識の谷底へと沈んでいった。
公務員試験に合格し、当初抱いていたはずの
"純粋に誰かを守り、平和に過ごせるよう助けたい" という想い……。
それがまだ自分の中に残っていて、打てばこうして鐘を響かせるのだ。
なにも恨まれ疎まれる仕事で生涯を終える必要はない。
自分にはまだ道が他にもある。
この国に拘らず、素直に生きる人生がある。
(‘_L’) 「さあ、行こう」
そう考えたフィレンクトの顔は晴れやかで、活力に充たされる。
今までの死んだような顔ではなくなった。
そして誇らしげな微笑みをダイオードに向けると、
──頭から瓦礫に潰された。
-
パラパラ……
パラ…パラ … パラ
/ ゚、。 / 「……」
( ω )
ダイオードの目の前に広がる無惨な天井瓦礫。
大量の土がザラザラと…
夕焼けに照らされた砂煙が、牢獄の空を彩った。
フィレンクトと入れ替わりその場に現れたのは、先日顔を合わせたばかりの青年──ブーンの姿。
/ ゚、。 / 「……」
ダイオードはその瞬間を見ることが出来なかった。
フィレンクトはどこにいったのだろうと、幼い瞳は瓦礫、空、ブーン、砂を順番に見つめる。
( ω )「……ぉ」
ブーンが唸り、その身に背負っていた毛布をうっとおしげに引っ張り捨てた。
それはあまりに巨大で厚みのある、ダイオードにとって見たことのない、生々しい鉄色の光沢を映し出す。
ずる
り、ず
るり、ビ
( ω ) チャッ。 /; ゚、。 /
-
彼女の頬に跳ねるは、血。
目の前に押し寄せられた毛布は一枚の絨毯のように牢獄を埋めつくし、
しかしところどころ羽をむしられ、むせかえる獣の臭いをダイオードの鼻腔に充満させた。
ブーンがそれに気付いたかは分からない。
…剣を立て、支えるように立ち上がる。
顔を上げるとはじめて辺りを見回した。
( ;; ω^)「……ダイオード?」
(;;; ω^)「いてて……。 じゃあここは、収容所かお?」
/; ゚、。 / 「……」
(;;; ω^)「?」
見開かれた瞼から覗く瞳孔が…
驚きによって小さな黒点となりながらも、ブーンからついて離れない。
正確には──その足元の瓦礫から。
-
ブーンは天を仰ぐ。 月のない空。
牢獄に開いた大穴から、相容れない熱と冷気が流れ込むのを感じた。
灰塵は見えどグリガンの気配はない。
翼を失いどこかへ去ったのだろうか。
深く息を吸って静かに吐く…。 すると背中にどっと汗をかいた。
手をあてながら、我ながら頑丈な身体と強運に感謝する。
運良くGCが発動していなければ、彼の胸を鉄の羽根が貫いていただろう。
(;;;^ω^)
つ◎ (そうなれば、後はやられ放題だったはずだお)
…肩から片翼を丸ごと分断して尚、
グリガンの攻撃は凄惨の一言に尽きるものだった。
思い出すに震える手で【ヒール】を発動する。
さらにその中のもう一つの救いは、完全にグリガンと密着していたことだった。
こちらの攻撃さえ届けばどんな強敵相手にもチャンスはあるのだから。
手の内にある使い古された両刃剣…
"デュランダル" を一瞥すると、ブーンはもう何度かの深呼吸を繰り返す。
永きに渡りブーンの愛用してきたこの不滅の刃は、不死すら屠ることが出来る。
ともすれば不死を屠るためだけに存在する剣。
-
…ドサリ。
その時、何かが倒れる音がした。
見やればダイオードが尻餅をつき、小さな歯と身体を小刻みに震わせている。
( ^ω^)つ「驚かせてごめんお…どこか怪我してないかお?」
/; ゚、。 / 「やだ」
(;^ω^)つ「?」
/; ゚、。 / 「……いやだ」
差しのべた腕は、所在無く宙に留まる。
ブーンには理由が計り知れない。
(( /; ゚、。 / 「こないで」
(;^ω^)つ「?? 僕を忘れたかお?
ほら、おかあさんから頼まれて、ぬいぐるみを持ってきた──」
(( /; ゚、。 / 「いやあ!」
(;^ω^)「……あぅ」
はたと気付き、"デュランダル" を鞘に納めたが、ダイオードの態度は一向に変わる様子を見せない。
仕方なくブーンはその場を後にする。
「もう少しここに隠れていてくれお、おかあさんを連れてくるお」
……そう伝えてから階段を登った。
大地を揺るがした衝撃によって壊れそうな扉に、荒く手をかけながら一度振り返る。
先ほど自分の居た場所で、四つん這いのまま項垂れているダイオードの後ろ姿が見えた。
まるでそこに何かがあったかのように。
-
…きっとこの予感は当たっている。
ぬいぐるみを下敷きにしてしまったのかもしれない。
だがそれを確認するより、街の被害が拡大する前に安全を確保したかった。
レモナとダイオードを会わせなければ。
多少なりとも恨まれるのは構わない。
それでもできる限りのことはしてやりたかった。
(^ω^;)「すぐ戻ってくるお!」
返事は聞かず、地上に出てまずは周囲を確認した。
…やはりグリガンの姿はない。
代わりに人々が倒れ、秋夜の空気と混ざりあう冷気の湯気が例外なく立ちのぼっているのを見た。
場に残留する微かな魔導力が、
かつて【カース】を受けたツンを治療した際に感じたものとあまりに似通っている。
( ^ω^)「…ドクにやらせちゃダメだお」
ブーンの捜しものは形を為した。
ツンを治すための手掛かり…
ドクがあの呪術師をまだ殺害していなければ、間に合うかもしれないのだ。
そのためドクよりも先に、呪術師を捕まえる必要がある。
──だが。
はやる気持ちを抑えつつ、ブーンはレモナの住む郊外へと走り出す。
遠いどこかでブーンの知らない、誰かの笑い声が聞こえた気がした。
----------
-
無情だなぁ……
-
(推奨BGM:Eclipse of Time)
http://www.youtube.com/watch?v=Avl3A--8xYU&sns=em
-
ダイオードの拒絶以降、ブーンの表情は曇り続けていた。
道行く道は軍兵が無秩序に侵攻したかのように荒れている。
郊外に向かう分には迷いはしない。 クレーター状に緩やかなこの街は、坂を上れば高原側に進むことになるからだ。
だが街の中心地から離れても、離れても…。
惨劇の跡と静寂が、わずか半日で街中に蔓延っていた。
走るブーンの視界、白い建物は古び、冷気を帯びる死体の数もまばらになっていく。
(;^ω^)「…【ウォータ】ではこんな冷気を発しないお」タッタッタッ
(;^ω^)「まるで氷の……でもそんな魔導力は聞いたことないお」タッタッタッ
ツンの症状を思い出す。
緩やかな石化…一切の動きを停止した身体…。
(;^ω^)「誰かいないかお?!」タッタッタッ
張り上げたその声も虚しく暗闇に消えた。
この辺りはまだたくさんの人が溢れ住んでいたわけではない。
うまく避難していてくれたなら善し……さもなければ──
時折《パキリ…》と冷たい音がする。
氷の柱だった名残が、死体の一部から剥がれ落ちる音であると知り、ブーンの胸はざわついた。
まもなくレモナの家に着く頃。
前方にはビロードの医院が、その背と輪郭を現し始めた。
…窓はことごとく割れ、壁に大穴を空けて。
速かったブーンの歩調が更に速度を上げる。
-
(;^ω^)「ビロード!」
(^ω^;三「…ビロード?! 居るかお!」
穴からそのまま中に入り込むと、ブーンの声が再び飛ぶ。
医院内には人影もなく、死体も見当たらない。
「……だれ、ですか?」
(;^ω^)「!! ビロード!!」
返事があった。
弱々しくはあるが、それは紛れもなくビロードの声だった。
ブーンは声のする方角……医院の正面口へと走る。
(;^ω^)「良かった、無事だったのかお」
「………」
彼は外にいた。
[po・oq]の看板が外れ、土にめり込んでいるその真横…。
安宿入り口の石畳に座り込むビロードは俯き、顔は夜の暗さに紛れてよく見えない。
「その声は…あの時の」
( ^ω^)「だお。 怪我がなくてなによりだお」
「なにより……ですか」
-
「私の隣のこれ…お店の看板ですよね?」
ビロードの手が優しげに置かれる。
数時間…いや数十分前には入り口の扉頭上に掲げられていたであろう看板。
ビロードが重い腰をあげると腕を伸ばし、看板の端から中央にかけてシワだらけの指を這わせる。
「私ね、途中からひょっとして…と思っていました。
お久し振りです、ブーンさん。
……ですよね?」
( ^ω^)「…!」
彼が立ち上がったことで、扉に描かれたウェルカムメッセージに深い影が差す。
目の見えないビロードは言葉を続けた。
「…ぽっぽちゃんが建てた宿、まだ営業できますか?
私の触れないところは、無事に形を残してくれていますか?」
「あっという間だったんです。
はじめは外が騒がしくなったな、と思う程度だったんです」
「でもそのあとすぐに地震が来て、私は夢中で医療用ベッドの下に潜り込みました」
その視線は当然定まらず、彼はずっとブーンに対して横を向いていた。
-
( ^ω^)「…大丈夫だお、少し修理すればすぐに…」
「街の人々は無事ですか? この国は、旅人がまた泊まりに来てくれますか?」
……ブーンは答えられなかった。
広い街ではあるが、この現状が街の反対側で起こらなかったという保障はどこにもない。
領主が何をしていたのかすら、ブーンには把握しきれていないのだから。
「……すみません。
これでは八つ当たりですね、ブーンさんに私がしていいことではない」
「流行り病にかかった時、ぽっぽちゃんは宿の扉に貴方へのメッセージを遺してから逝きました。
私たちはあの砂漠道で、ブーンさんとツンさんから、大人としてのお手本を見せてもらいました」
( ^ω^)「……」
「子供に優しくすること。
命令ではなく、一緒に行動すること。
…なによりも、あんな子供だった私たちの個人の意思を、とても尊重してくれていたのだと。
歳をとるたび、私たちは様々なことを振り返っては、貴方たちに感謝したんです」
ビロードは白衣の裾で目元を拭う。
洩れない嗚咽は、彼がここまで生きてきた我慢強さの表れか。
──なのに、その顔が見えない。
-
「おかえりなさい、ブーンさん
ここはウォール高原の貴方の家なんです。
僕たちの…もうひとつの家族のための」
ビロードは少しだけ笑っていた。
ブーンからは顔が見えなくとも、なんとなくそれが判った。
…ここにツンが居ないことを申し訳なく感じてしまう。
「一日だけしかおもてなし出来なくてごめんなさい。
もっともっと、貴方には柔らかなベッドで身体を休めて欲しかった」
「だからまた…この場所に来てください」
「その時に私はもう居ないけれど……証しを遺しておきます」
──ブーンの心臓が跳ねる。
続くビロードの言葉は、更にその激しさを増した。
-
「少しだけ触れた、貴方の指先はあの頃のままでした。
さっきも貴方が呼んでくれた声で、確信できたんです」
「普通ならそんなはず無いけれど……
きっと、ずっとずーっと長い間、貴方は生きているんですね? ──そして、これからも」
「だからまた来て欲しいんです。 私たち兄妹が住んだこのお家に。
……ブーンさんとツンさんが、旅をして、またここに来ればいつでも休めるように」
「それが、私たちから貴方への恩返しです」
-
最後まで、ビロードはこちらを向いていたはずだった。
……なのに最後まで
この時の彼の顔はブーンの記憶に残らなかった。
(推奨BGMおわり)
-
----------
ザァザァと降りしきる秋の大雨。
いつもなら風に吹かれて草木も囁く高原の自由さを、頭ごなし大地に押さえつけるかのように強く…。
大粒の滴を、これでもかと言わんばかりに放出している黒雲の仕業だ。
( ^ω^)
丘の上、見下ろす景色はここへ来た時とそう代わり映えしない。
ただ今は天候のせいで見通しが悪い。
白く高い壁がぐるりと囲むウォール高原の街は、丘にいてなお、中の様子を窺い知ることは難しかった。
二段構えの白い壁は内側から丘を展望できても、外側からは不可視となる。
戦時の際の外敵から街を守りやすい構造になっているのだろう。
………そんなウォール高原に存在した国は、皮肉にも内側から崩壊した。
-
( ^ω^)「なにが…原因だったんだお?」
ブーンからすれば、あっという間の出来事だった。
ドクとの邂逅…
思えばその時──ツンの居ない寂しさを抜きにしても──大きな喜びに浮き足立っていた気がしなくもない。
あの時点で予兆はあったのだ。
アサウルスを倒した不死者が『捜し物をしている』のだと…その言葉に、ブーンは自身の境遇を無条件に重ねてしまった。
もっと何かを感じても良かったのだ。
ドクに訊きたいことが、今になっていくつも頭に浮かぶ。
-
ビロードと別れた後、レモナとヘリカルは見つからなかった。
置き去られたダイオードは
収容所のあの場所で疲れ果てたのか、眠っていた。
目の下に、泣き晴らした跡を残して。
あの街に残っているのは一部の住人だけだった。
領主は消え、生き残り解放された警官隊が涙を流して救助活動を行っていた。
ダイオードを抱えて宿に戻った時も、ビロードの顔はやはりよく見えなかった。
( ^ω^)
( うω^)グイッ
( ^ω^)
『まってるから ⊿ )ξ
貴方がアタシを治す手段を見付けて──』
-
( ^ω^)「…もう少し待っててくれお」
フードの呪術師、そしてそれを狙うドク。
手掛かりは増えた。
どちらかを捜すことでも、ツンを治す第一歩となる。
大丈夫…まだ大丈夫なはずだ。
そう自分に言い聞かせ、ブーンはウォール高原を後にする。
雨でぬかるんだ草と土がブーツにしがみつく感触を、少しだけ疎んじた。
-
ビロードの親孝行は嬉しかった。
その気持ちに嘘はない。
だが、それを素直に受け取るためには
ツンが必要不可欠なのだとブーンは思う。
……ビロードの想いとは裏腹のエゴで。
土砂崩れに埋もれ命をおとした、
ニューのことが脳裏をよぎった。
そしてレモナの居ないあの街で、
ダイオードは大丈夫だろうかと悩んだ。
……知り及びもしない過ちに、ブーンは気付かないまま。
雨は人の言葉を通さない。
音を悪戯に拡散する。
止むまでは再現なく増殖し、見えるものも見えなくなる。
-
すれ違う。
親の心、子は知らず……。
間違い続ける。
──子の心、大人は知れず。
迷い続ける。
自分自身に抗いながら。
それでももし、いつか。
その "いつか" の為に、
人は希望を抱き、
なんとか生きているのかもしれない。
(了)
-
これで今回の投下を終わります
新年もよろしくお願いします
>>382の文字化けはツンの口です
(´・ω・`)ω・´): 傷痕留蟲アサウルス >>6
('A`) :東方不死 >>170
( ^ω^) :白い壁 黒い隔たり >>329
-
--------------------------------------------------
※千年の夢 年表※
--------------------------------------------------
-900年 ***********
→信仰の概念がうまれる
( ??)は偶像生命体として同時に生誕。
-400年 ***********
→結婚(結魂)制度のはじまり
-350年 ***********
【ふたごじま】→魔導力の蔓延
-312年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→前半
→ "隕鉄" が世界に初めて存在しはじめる
【東方不死】→山人の夢
→('A`) がアサウルスと相討ち
-220年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→後半
【傷痕留蟲アサウルス】
→騎兵槍と黒い槍が融合
→('A`) がアサウルスから解放
-210年 ***********
→大陸内戦争勃発。
【帰ってきてね】→前半
-200年 ***********
【帰ってきてね】→後半
【死して屍拾うもの】
→ "赤い森の惨劇"
-195年 ***********
→大陸内戦争終了。
【はじめてのデザート】
-190年 ***********
【その価値を決めるのは貴方】
-180年 ***********
【老女の願い】→復興活動スタート
-
-150年 ***********
【老女の願い】→荒れ地に集落が出来る
→川 ゚ -゚) が二代目( ´∀`)に指輪依頼
-140年 ***********
【老女の願い】→老女は間もなく死亡
→指輪の暴走。 川 ゚ -゚) が湖に封印。
-130年 ***********
【人形達のパレード】
【此処路にある】
→(´・ω・`)( ゚∀゚)川 ゚ -゚) の三人が集結
→二代目( ´∀`)死亡時期
→偽りの湖から( <●><●>)が引き揚げられる
-120年代 ***********
【命の矛盾】
【東方不死】
【白い壁 黒い隔たり】☆was added!
→ウォール高原の国法制度が崩壊 ☆was added!
-100年代 ***********
【繋がれた自由】
【遺されたもの】
【時の放浪者】
-40年代 ***********
【老女の願い】→集落→町になる
00年代 ***********
【老女の願い】→( ^ω^)が
官僚プギャー、炭鉱夫ギコに再会
-
乙
-
>>404の誤字を一部修正します
×→[po・oq]の看板が外れ、土にめり込んでいるその真横…。
○→[po・od]の看板が外れ、土にめり込んでいるその真横…。
小さなこだわりですが下が正しい表記です
それと今回から酉を共通にすべく変更しました
◆WE1HE0eSTs→◆3sLRFBYImM
となります
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おひさしぶりおつ!
そしてがっつりやばいじゃないっすか・・・ビロードぉ・・・また会えてうれしいけどもう・・・
安定のドクオな
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久々にきたな
グリガン止めるとかブーンつええ……
ビロードとかフィレンクトとかヘリカルとか……つーか色々書きたいんだがキャラの思惑みたいなのが入り乱れてて感想がまとまらん。なんだこれ
とにかく乙!面白いわ
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おつ
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命の矛盾じゃなくて矛盾の命じゃないか?
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感想、投下中の支援、ありがとうございます
>>424
失礼しました、矛盾の命が正しい表記です
こちらで切り貼りしてるうちに書き間違えたようです
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乙。
待ってたよ
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待ってますぞーーー
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お久し振りです。
投下分のお話は完成したのですが
レス数が多いのと、まとまった時間がないために投下はもうすこし先にさせていただきます。
前回から間が空いたということもあり、
せっかくなので支障のない範囲で設定集の一部を載せておきます。
ひとまずは主要のキャラクター紹介を兼ねて…
おさらいの代わりにでも、良ければ読んでいただけたら幸いです。
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( ^ω^)
遥か昔からこの世界を旅する、最も善なる心を保ち続けて生きる不死者。
武器は剣(大剣)。
彼の行動原理は《助ける》ことと《ツン》。
土地を巡るのは人々を間近で見続けたいという想いから。
不死者のなかでも極めてスタミナがありタフだが、ステータス異常には人間と同じ程度にかかってしまうため、その欠点を補うべく得意とする魔法は【キュア】である。
ξ゚⊿゚)ξ
ブーンと同じく、遥か昔から世界を旅する不死者。
行動原理は《護り庇う》ことと《ブーン》。
戦闘では魔法を主に駆使するが腕力はブーンより強い。
(ただし彼の前でそれを振る舞うことは、ブーンのメンツを考慮しており多くはない)
武器の扱いが得意ではなく、ブーンと共に行動していても技を盗めない。
ステータス異常にひどく弱い…その理由は今後明らかになる。
-
('A`)
過去には東方にも住んでいた不死者。
武器はガンアクス(刀や峨嵋刺などの東方武器も使用可能)
傭兵名はポイズン。
痛みや死を恐れず、不死の特権を誰よりも行使している。
行動原理は《孤独》と《生死の狭間》。
彼の唄は教わったものであり、本人は認めないが気に入っている…が、唄そのものが不得意のため正確には盗めていない。
死によって訪れる記憶障害を気にする様子は窺えないものの、死そのものについては敏感であるため、いちいち原因を探ろうとしている節がある。
自身が毒を撒き散らす体質からか、ステータス異常には滅法強い。
川 ゚ -゚)
他の者と異なり、時代ごとに特定の住居や社会的立場を得ている不死者。
ショボンいわく『歴史に介入している』。
行動原理は《安定》と《信用》。
魔法の扱いに長け、資質も高い。その長所を活かした得意武器は錫杖(複数の魔導リング付属)。
たとえば同じアイテムをツンが使うとしても、クーのように同時多発的に魔法を発することは出来ない。
彼女はまだ多くの謎を残しており、それは今後解明されることとなる。
-
(´・ω・`)
ある時を境に生まれた新たな不死者。
魂のなかには死産したはずの(`・ω・´)が共に在るが、人格はあくまでショボンのみである。
行動原理は《好奇心》と《恐怖》。
得意武器は剣。刀による居合い技は独学だけでなく、当時( ´_ゝ`)の部屋にあった本から知識を得たものである。
(ツンにとっては『ツマラン』らしく、読むのをやめていた)
些か偏屈なところがあるが、根は優しく真面目。
各魔導力のもつ特有波動を感知するのが得意だが、普段は呪術(赤黒い)に的を絞っている。
_
( ゚∀゚)&( <●><●>)
赤い森の民が作る民族人形に魂を宿した人工的な不死者。
元は二重人格のようなもので、
その想いの強さからかつてはワカッテマスが前面に出ていることがほとんどだったが、
最終的にはジョルジュが主人格となる。
行動原理は《受け継ぐ》こと。
どちらも呪術を使用できるが、人格によって得意な魔法が異なっている。
体術は赤い森の男子皆が一族から物心付く前から教わるもの。
まだ幼かったジョルジュが青年になってここまで昇華できたのは、ひとえに想いの強さに他ならない。
-
ミ,,゚Д゚彡
孤児であるため親の顔も知らない、世界でも珍しい金色の髪の持ち主。不死者ではない普通の人間。
行動原理は《他人のため》。
得意武器は本来槍に限らないが、ミルナが置いていった騎兵槍のみを望んで使用している。
ミルナに似てポーカーフェイスなところがあるが、寂しがりで人と接している方が好き。
普段はナナシ(名無し)と名乗り、傭兵名はフサギコ(塞ぎ児)。
故郷でも陰口として後者が呼ばれていた。
(*゚ー゚)のことは幼少の淡い恋として心に秘めていたが、
それを表さないままに現時点で唯一、生身で時代を越えてしまった。
( ´∀`)
大陸に代々工房を構える細工職人。人間。
基本的に一族皆、同じ顔をしている。
行動原理は《探求》と《徹底》。
四代目はクーの目の前で呪術であるはずの【ドレイン】を使用しているが、なぜ習得しているのかは現時点では不明。
得意武器はナイフ。
彼ら一族は自力で魔法を使えないが、自身で製造したアイテムを媒体に魔導力を駆使することができる。
食べ物に頓着していないため、クーの料理は褒めつつもあまり嬉しいとは感じていなかった。
-
从 ゚∀从
クーやブーン達と昔から面識のあったらしき女性。
大陸などとは全く異なる空間にいるらしいが、詳細は不明。
ブーン達をその空間から逃がすことはできても、自身は脱け出せないようだった。
彼女と意図的に出逢った者は今のところいない。
グリガン
不死ではないが恐ろしく長寿の、世界でも唯一種の巨大モンスター。
地方によっては伝説上の生き物として崇められ、山頂から山頂へと飛び移る姿がときどき目撃されている。
対峙した人間はことごとく殺されてしまうが、現時点で( ^ω^)と('A`)には引き分けている。
得意技は重力を引き込みつつ、体躯を活かした必殺の【ダウンバースト】。
アサウルス
黄色の瞳と二つの太陽をその身に所持する超巨大生物。
一個体ではないため複数存在する。
三日月島付近では行動不能となって石化したアサウルスが海に佇み、東方のアサウルスは退治された以上の明記はされていない。
天から降ってくる者ともいわれ、不死者の活躍がなければ間違いなく滅亡の大天災に数えられる存在。
ハインいわく『生きる概念と生きたい願望がアサウルスを産む』。
硬質の外殻は並みの攻撃では歯が立たず、たとえ通用しても
人間とは身体的スケールの差によって微々たるダメージしか与えられない。
しかしその外殻は後に"隕鉄"として、世界に新しい素材をもたらした。
特性は《感染》と《概念や願望の増幅》。
口や身体中から噴き出す灰は独自の生命体となり、個別に動き出す。
(通称:蟻)
この蟻に咬まれると感染し、人間はそのまま蟻と同じ生命体となってしまう。
なお、不死者が蟻に感染した歴史は見られない。
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ひとまずここで区切ります
作品本編の投下の際は、またよろしくお願いします
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うわーひさしぶりじゃないか!
まってるぞ!
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まってたんだからな��
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これは楽しみ
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『やった、ついに倒れたぞ!』
――そこには宙があった。
『皆は無事か?!』
果てはない。
…あるのはただ、彼方まで見渡す限り一面の闇。
それに抗うように点々と灯る小さな小さな光りだった。
『まだ近寄ってはならぬ!
第一衛兵長、騎兵隊長らで囲め!
あれだけのことをしでかしたのだ、万が一を考え――』
感触を確かめるべく手を伸ばすことは叶わない。
寒くもなく、暑くもない……そんな意識すらどこか遠い。
思考と乖離した、どこか身近な心の臓。
ドクドクと穴を開けて冷たいなにかを垂れ流している…そんな気がした。
『女王様! 女王様は無事かぁ!』
-
( …なにが女王だ )
あるかどうかもわからぬ胸中に独りごちる。
舌打ちができない。
…比喩ではなく。
その身体は中心部に大穴を開けられたのだから。
( 、 トソン 『女王はご無事です。
貴殿方はこの不届き者の処置を…それを民衆も、女王も望んでおります』
『トソン殿、かたじけない…我々がもっと早く――』
( 、 トソン 『侍女たる我らに遠慮や配慮は無用。
さぁ、準備をしましょう、都の人々に伝えるのです……』
( 、 トソン 『賢者様殺害、その一連の犯人が死んだことを』
( …そうだったね )
呪術師が招いた、脆く短きディストピアの崩壊を告げる侍女の声。
目視できぬ表情…しかしその声色から、俗物らしく
《してやったり!》
とでも言い含んでいることだろう。
( はぁ、くだらない )
――思い、"彼" の意識はそこで呑まれる。
-
"生まれて" はじめて。
若き不死は、今から長い夢に入る。
その死体の傍らで、粉砕した幾ばくかのオーブの欠片を散らかしたまま。
-
( ^ω^)千年の夢のようです
- 夢うつつのかがみ -
-
从 ー∀从 (・ω・` )
気がつけばそこに在た。
…辺りの風景は先ほど感じていたものと変わりはない。
―― 闇。
かつては星のように形を遺していたのだろうか…。
黒に残留する白い粒子に囲まれたショボンの前には、
いつか見た、跳ねっ返りの髪を垂らす女性が立っている。
从 ー∀从 ″
从 ゚∀从 「……おっ」
从 ゚∀从 「おいでなすったか」
乱暴に後頭部をかきながら、
「お前が来るのは珍しい」と囁いた。
(´・ω・`) 「…ハイン、リッヒ?」
从; ゚∀从 「……あれっ?」
-
彼女は辺りを見回す。
地面も空も存在しない、頼りなき黒の空間にはショボンと二人だけだ。
从 ゚∀从 「なんで憶えてんだ??」
(´・ω・`) 「? …僕はそんなに記憶力に問題のあるタイプじゃないと思うけどね」
从 ゚∀从 「いや、そういうつもりじゃあないんだが……」
(´・ω・`) 「…常人からすれば随分と長い年月ではあるかもね。
あれは大陸戦争よりも前…ふたごじまのアサウルスを倒した後だったか」
こんなことを話すには意味がある。
ショボンは当たり前を口にするのがむしろ嫌いだった。
差し障りのない返答で間を繋ぎながら、ショボンはハインを観察する。
それは警戒心ではなく、目の前の彼女が表す戸惑いを受けてのものだ。
从∀゚ 从
ハインはやはり何かを否定するよう、ほんの少しだけ…かぶりを振った。
从 ゚∀从 「まあいいや。
せっかく来たんだ、ゆっくりしていけよ」
(´・ω・`) 「…そうだね」
答えながら――
ショボンの頭の中では一瞬だけ《パチリ》と音がした…気がした。
ゆっくりする……、休息をとる…?
(´・ω・`)
たしかになにもすることはない。
ここではなにもする必要がない…。
-
(´・ω・`)
思考に蓋をされている気分だった。
違和感。
なにかがおかしい。
(´・ω・`)
だが、その何かは思い出せない。
(´・ω・`)
なぜ、思い出せないのかも思い出せない……。
-
从 ゚∀从 「しばらくは俺と話でもするか?
いまなら俺も落ち着いて話していられる」
从 ゚∀从 「それとも一人、想い出にでも浸るか?
お前が望めば、いつもより多くの出来事を視ることも可能だろうな」
(´・ω・`)
(´-ω・`) 「そうだね、そうしよう」
ハインの提案に乗るようにショボンはわざとらしくニヒルに笑い、
その心では "思い出すという作業を棄てる" ことにした。
分からないことは仕方がない。
ならばそれはそれとして、確認できることがあるはずだ。
極めて単純な質疑であっても。
(´・ω・`) 「ここは、一体なんなんだ?
どうして君はここにいる?」
-
从 -∀从
从 ゚∀从 「ここは…俺にも正直わからねえんだよなあ」
先程とは異なり、間はあれど、淀みのない口調でハインは答えはじめる。
(´・ω・`) 「自分がいる場所もわからないのかい?」
从 ゚∀从 「自らすすんで来た場所ではあるが、望んで来た場所じゃあないんでね」
ハインはお手上げ…というように、両手を軽くあげておどけてみせた。
若干の嫌味を混ぜこんだつもりのショボンの言葉にも、彼女は動じない。
言葉遊び的な回答の真意は解らないが、特に深入りするつもりはショボンにもなかった。
どうでもいいのだ。 自分が作り出す目的以外は。
彼はいつも永い間、そうやって生きてきたつもりだ。
从 ゚∀从 「だが本来、ここはお前ら "不死者が死んだ" ときに来る場所だ」
从 ゚∀从 「イコール、お前は死んだからここにいる」
(´・ω・`) 「だから、死んだらなぜ僕らはここに来るのさ」
从 ゚∀从
――今度こそ。
ハインはその動きをはっきりと止める。
从 ゚∀从 「……この空間でその質問をしたのは、お前がはじめてだ」
どことなく…笑っている気がする。
まるで来る時がきたかのような、
待ちわびた者の笑み。
-
----------------------------------------
(゚、゚トソン 「申し訳ありません、クー様。
此度は宮殿内にまで賊の侵入を許し、あまつさえ緊急用ドックの避難扉まで……」
川 ゚ -゚) 「いや、構わない。
私もちょうどそちらを壊してでも侵入するところだったからな」
('、`*;川 「面目も御座いません…、備えてあった【クーチラス】すら破壊され――」
川 ゚ -゚) 「お前も気にするな。
もはや年代遅れの自動戦車ごとき、また造ればいい」
水の都…
延々続くかのようなメインストリートを真っ直ぐ進むその奥に佇む、碧白き宮殿。
その内部。
川 ゚ -゚) 「死傷者は?」
('、`*;川 「はい!
衛兵からの報告では怪我人こそ多数出てしまいましたが、命に別状ある者はいなかったようです」
川 ゚ -゚) 「ここに運べ。 私が治療しよう」
【シールド】を施す紋章が刻まれた大扉
――横一文字に斬りつけられ、大破している――
の向こう側…。
両指を前に握りしめ、背筋を伸ばした女性が三人。
-
ドーム型をした天井は、骨を支えるため放射線状に壁中で柱を組む。
180°視界の開けたこの大広間は普段は開放されており、一般人も自由に出入りができた。
都中と同じく白を基調とし、
薄碧のレリーフが彫られた壁面は眼に優しく、
しかし滞在する人々の姿を浮き上がらせる。
衛兵と侍女が許す限りは、女王との謁見も比較的寛容だ。
…しかし、いまここには彼女たちしか居ない。
まるでその身分を示すように、
クーと呼ばれた女性だけが玉座を背に、他二人へと向き合っていた。
川 ゚ -゚) ( …あれだけ暴れて、誰一人として死なせず突破したか )
クー。
不死者であり、現在は水の都の女王。
川 ゚ -゚) 「都の中でその他の被害を確認しているなら報告してくれ。
些細なことでも構わない」
――同時に。
彼女が大陸戦争を引き起こした一国の主であったことは、都の誰も知る由はない。
-
(゚、゚トソン 「建築物、及び潜水艦などへの被害は微小。
数週間もあれば修復は可能との報告が上がってきています」
('、`*;川 「確認中のものとして、重要文化財にあたる物品の窃盗や破壊はいまのところ見られていません」
(゚、゚トソ 「以前、フォックス様より住民に配布されたオーブも、持ち運びされた様子はないと……」
川 ゚ -゚)
侍女らのいうオーブとは、
ワカッテマスの創り出した泥人形フォックスからの監視アイテム【ホークアイ】の亜種。
川 ゚ -゚) 「オーブとは?」
('、`*;川 「あっ! 失礼しました。
オーブについては女王不在時の処置として、賢者様から安全確保の名目により配布されておりまして――」
あえてクーは素知らぬ演技をした。
それはショボンからの願い事でもある。
-
(´・ω・`) 『君が都を大切にしたいなら、時には騙し合いもしなくちゃならないと思うよ』
(´・ω・`) 『騙される民ならとことん騙してやればいい。
君が感情に正直でいることと、他者がそれに従順でいることはイコールにはならないはずだ』
クーにとっては、いらぬ苦労をかけられている気がしてならないが仕方ない。
わざわざ単独での暴動を引き受け、あまつさえ
《内側からしか開けることの叶わない避難口まで侍女を誘導することにより、
唯一その道を知っていてもおかしくない女王と外側から合流させる》
という、遠回しな作戦を成し遂げた、
同じ不死の若造に払う敬意くらいは示さねばならない。
川 ゚ -゚) ( …ブーンやツンとはまるで逆なんだな )
侍女ペニサスの報告は続いているものの、その言葉はクーの耳に届かない。
その脳裏では、
自分以外の者が一時でも一つの国を統治、掌握したかもしれない未来が描かれていた。
摂理からすればそれもまた致し方ない。
本来ならば人の世において不死の存在がイレギュラー。
だが統治者が変わるときは、国も大きく形を変えなければならない。
更に言うならば、クーは自身を決してイレギュラーだとは考えていない。
産まれてきたのだから意味をもつのだ。
彼女もまた世界を構成する部品…卑下する要素など、何一つ在りはしない。
川 ゚ -゚) 「そうか…では、そちらにも私が処置を新たに施そう。
あとですべてのオーブを持ってきてくれ」
('、`*;川 「す、すべて…ですか?!」
川 ゚ -゚) 「すべてだ。
人も、オーブも、一つ残らず必ず頼むぞ」
…不死者は果たしてどこから来るものなのか。
ショボンよりも古い存在の彼女の記憶からは、失くなっている。
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-
从 ゚∀从 「―― こんな感じだ」
(´・ω・`) 「なかなか面白いものがあるね」
二人は顎を――ハインはショボンに比べるとより高く――上げ、
正面に浮かび陣取る空間へと目を向けていた。
彼ら以外に唯一、闇に浮かぶそれは薄紫のモヤに潜む円長形をしている。
ハインはそれを[かがみ]と呼んだ。
从 ゚∀从 「確証はないが、恐らくいまは現実の時間にリンクしてると思う」
(´・ω・`) 「…とは?」
从 ゚∀从 「仕組みは知らねえから答えられないぞ。
それと、俺単独ではクーの景色しか視れない」
(´・ω・`) 「僕にも視れるのかい?」
从 ゚∀从 「やってみな」
ハインの言葉のすぐあと、ショボンが[かがみ]に向かって一歩踏み出す。
視界一面は[かがみ]に埋め尽くされ、
替わりに下がったハインのことを思い出す前に、空間は歪み始める…。
从 ゚∀从 「…お前自身のことについてなら、過去が視れるだろう。
念じてみろ」
从 ゚∀从 「ただし強すぎる願いはやめとけ。
これはあくまで思い出を映
す
だ
け
の
[かがみ]
だ
か
ら
な」
-
-
風景が、
歪む。
-
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「―― の?」
「――軍師どの!」
気が付けば…次第に誰かを呼ぶ声が聴こえはじめ、その音量は時間と共に肥大していく。
声色はひとつではなく……重なり、やがて明瞭さをも欠きはじめた。
「…ショボンどの!」
そんななか最後の呼び掛けがハッキリと耳に届く。
同時――皮膚を焼く熱、バチバチと鼓膜を打つ気泡音も。
若干の不快感を抑えながら無表情に顔をあげた。
植物の画が施された黒い首輪を装着した男が、ショボンの顔を覗き込んでいる。
《くそっ一体だれが!》
「しっかり!! どうかご指示を。
森が…森が焼けているモナ!!」
(´・ω・`) 「…ああ、わかってる」
《だれが?!
呪術師どもに
決まってるだろ!》
-
……赤い森。
大陸戦争終盤に突如発覚した、
呪術師たちの反乱を発端とした――と、騙られる――ジェノサイドの舞台。
それがいま、空と大地を赤く染めていた。
(´・ω・`)つ 「森の住人を無理矢理にでも避難させろ!
こんなことは軍として望んではいない。
火の元を見掛け、もしそれが――」
時代は二つの大きな国が大陸を奪い合っていた。
ショボンは[空の軍]軍師として、部隊を率いてここにいる。
だが火の鳥游ぐ混乱の最中、瞬く間に発生した状況について誰一人として追い付くことが出来ていない。
「モナー! どうなってる!!
斥候隊に火炎ボトルや火炎放射銃でも配ったのか?!」
「入るたびに構造の変わるこの森は計り知れなかったから…
可燃障害物の除去用としてチームごとに配布はしたモナ」
「じゃあそれだな!
制御もできないようなとんだ不良品をつかませやがって!」
「そんな…、そんなことないはずモナ!
たとえ不具合が起きても、ここまで大規模に燃え広がるような武器なんて、モナは製造してないモナよ!」
モナーと呼ばれた男はヒステリックになる一歩前、心を沈めつつも激しく動揺する。
(´・ω・`) 「いちいち騒ぐんじゃない。
訓練を受けた国軍ならば、目の前のことに集中するんだ」
モナーの生業はアイテム調合…そして自動機械の製造。
しかし、決して人の命を殺めるための道具を造ったことはないと自負していた。
-
モナーが "マッシュルーム" と名付け製造した大型のオートマトンがある。
下腹部に用途ごとの異なるアタッチメントを装着することで、人間には不可能な作業を難なくこなす。
それか戦場に投入されたとの話を聞いたのは、
ショボンに呼ばれ、城下町を二人で歩いている時に聞こえた人の声からだった。
『あれがモナーかぁ。
細工師って聞いてたけど、厳つい人なんだな…まるでウドの大木だ』
『知らないのか?
マッシュルームもあの人が一人で造ったらしいぜ』
『マジかよ! この前の中央区での戦場じゃあ、ずいぶんと敵軍を蹴散らしたらしいじゃないか!』
『ああ…あれがいくつもあれば、それだけでも勲章ものだろうな』
『なるほどねえ〜。 それで軍は彼を召集したってワケだ』
…本来あれは可動式除障害機として造り上げたものだった。
それなのに、いまや[空の軍]が誇る落城用突撃兵器などと呼ばれていることに、モナーは酷く悲しんだ。
-
まだ若きモナーが開発したアイテムは、他にも数知れない。
単なる装飾品から…
素人にも扱え、かつ生活水準の向上をめざしての日常雑貨…
逆に専門性の高い、注文する当人以外にとってはなんの価値も見出だせない物すら造り上げた。
個人作業のため生産ペースに限界はあれど、依頼人たちは待ち続け、完成を喜んでくれた。
彼もそれで充分だと思っていた。
受け継いだ技術が他人に認められることは、
一族の生きた証明を認められることと同義だった。
『次戦に投入されるらしい新兵器は、半永久的に敵を燃やし尽くす火石だそうだ』
――だが大陸戦争は、そんな発明者の意に反し、彼と彼の発明品を利用していく。
交換不要なカンテラも、もはや悪魔の獄炎扱い。
今回使われた火炎ボトルもそうだ。
指向性をもたせ、日陰に強い木ばかりが育たぬように開発した森木の間引き用アイテム。
念入りに調整し、発火後の空気に触れれば約20秒以内に消化されるようにしていたはずだった。
【フレアラー】などの魔導力を意図的に加えでもしない限り、
いま森で起きているような大惨事にはなり得ない。
使い方次第でこんなにもなってしまうのかと…モナーは落胆している。
人殺しは、人が生み出す歪みの象徴。
戦争は……歪みの頂点なのかもしれない。
(´・ω・`) 「モナー、…モナー?」
「――あ、…」
(´・ω・`) 「落ち着け。 大丈夫か?」
ハッとして顔を上げた。
優しく声をかけてくれていたのは、祖父の故郷の恩人であるショボン。
――そう、ショボンだけは。
モナーにとって彼だけは、これまで信頼を裏切るような真似をしたことがなかった。
-
モナーは深く呼吸した。
一度、二度。
…心拍数が平常に戻るのを感じる。
身体の大きい彼は、深呼吸によって全身に久しく酸素を送り込んだ気がした。
視界が少しだけクリアに感じられるようになった。
すると、サルビアよりも真っ赤な大火に自分の身を晒していることに改めて気付かされる。
…なぜか?
日に日に依頼人から裏切られる思いの中で、
いまや彼のためにモナーはここいると言っても良い。
(´・ω・`) 「一番、二番隊は僕と奥に進む。
残りは全員武器を収め、救助活動に専念しろ」
-
指示を飛ばすショボンの背中を見つめながら、モナーだけが所在なさげに立ち尽くす。
心ない騎士の言葉が頭を反芻した。
「……」
( ´・ω) 「モナー、行こう。
誰も君を心から責めてなんていない…
あんなもの、単なる八つ当たりだ。 気にするなよ」
「…モナ」
彼らのルーツとなる孤島では独自の細工技術が培われていた。
ショボンが青年となり、身体的成長をピークに留める頃、
すでに当時の技術者が何人も大陸に遠征している。
ふたごじまという本来閉ざされた島…。
広く新しい繋がりを持たせることで、信仰とは異なる心の芯を創りだした一時代。
それは、
自身が背を丸め、何かに縋りつかずとも、
自信が背を押し、奮い起たせてくれる概念。
そんなショボンに付き添うモナーもその子孫の一人だ。
巡りめぐって軍師となったショボンの隣で、大陸戦争の一隅に加わっているのは稀なる偶然といえる。
「…ちっ、熱すぎる」
「おい離れるなよ」
額から…、首裏から…、
背中、腰に至り……。
篭る熱を冷却しようと、身体の中の水分がとめどなく絞り出される。
-
(( (;´・ω・) 「…」
「……汗が止まらないモナ」
「なあモナーさんよ。
アンタ、こう…身体を冷蔵するようなアイテムは持ってないのか?」
「この暑さじゃあ水なんてすぐに温まってしまうモナよ」
「じゃあ氷は? 小型の製氷機とか…」
「荷物がかさばりすぎる。
あれは水と風の魔導力を組み合わせて、波動を安定化させないといけないモナ。
持ち運べるサイズなんてとてもとても……」
ボソッ 「…役立たずだな」
「やめろ、モナーの言うことは確かだ。
魔法の使えないお前が知らないだけさ」
「…なんだと?」
「…… モナ」
(;´・ω・`) 「くだらない言い争いはやめろ。
…何が起こるか分からないんだ」
単体で氷の魔導力を発せられるのは、
大陸西に古来より鎮座し[氷河の牙]と呼ばれるアイスキャニオン…
そこから採れる "生きた氷塊" のみ。
歴史上、人間の魔導師が扱える魔導力は
炎… 水… 風… 土…
この4種に限られている。
その他の波動が発見できないのか、
それとも存在しないのかは定かではなかった。
ショボンも魔法を使えないため、詳しくはない。
なお獣の肉や根菜など、生活を送るために
食糧を冷凍保存する補助的アイテムの人工的な製造は出来るものの、
魔導力の循環を考慮するとどうしてもサイズが大きくなる。
-
「……持ってくればよかったですね」
(;´・ω・`) 「"生きた塊" を?
誰がこの現状を予測できたものか。
知ってたらそれこそ貨物車で運んできて、炎を消すために使うさ」
つまり…必要ならば直接採取に行くのだ。
すでにこの時代、商人たちのなかには傭兵を雇い、氷山と街を往復する者もいる。
幸い "生きた氷塊" は文字通り、
生命を感じさせるほどにしぶとく効果を発揮する。
誰もが同じく、手首に巻かれたリストバンドで汗をぬぐう。
しきりに辺りを見回しては目を凝らし、時には立ち止まった。
(( (;´・ω・)
唯一ショボンだけが休むことなく足を動かし続けた。
その歩みは普段に比べても遅い…しかし、騎士たちは追い付くのに必死だった。
流れ落ちるまえに蒸発する汗…。
しかし気に留める様子もなく滴らせている。
「…みんな、少しペースが乱れてるモナ?
状況が状況だから大変だろうけど、軍師どのに頑張って追い付いてくるモナよ」
「わかってるさ、…おい皆!」
明け空すら埋めようとする炎の森。
紅い顋が揺らめく。
長く続く大陸戦争……屍の上を進むこともある。
それと比較しても森の異質な光景に怯みつつ、騎士同士が引ける腰を叩きあった。
少し坂になった道のりが、ショボンの背中を頼もしく、そして大きく見せる。
-
(;´-ω-`)_з
――真剣に職務を全うしているだけならば、彼の後世への遺恨もなかっただろう。
モナーも、騎士たちも、そう思っていた。
この軍師はいま、戦争の勝利と人命救助を秤にかけているだけなのだと。
(……この焼けつく熱) (;´・ω・)
――いつかのアサウルスの咆哮にも似た肌の感触。
それをひとり思い出しているとは露知らず。
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〜now roading〜
(´・ω・`) ω・´)
HP / C
strength / C
vitality / B
agility / B
MP / C
magic power / A
magic speed / C
magic registence / B
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今日の投下はここまでです。
まとまった時間がどうしても取れないので、
今回のお話はローディング画面の区切りで日を跨ぎます
また明日か、出来なければ数日後に。
よろしくお願いします
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乙
-
乙
相変わらず読み応えがあって面白い
続きも期待
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「ちくしょう、ひとっこ一人いやしねえ」
「広すぎるんだよ。 しかもこの炎…
こんなんじゃ当の村人らを捜すのも一苦労だ」
「状況次第では戦闘を避け、避難活動を優先するほうがいいのでは?」
「避難させるもなにも、ここはあの呪術師たちの住む森だぜ?!
俺たちがどうこうしなくたって、ただでさえこんな ――ああッくそ、熱ぃなぁ!」
森内のどこか。
周囲に気圧され悪態づく兵士たちの姿。
大陸戦争の後期ともなれば国軍の訓練も追い付かず、命令系統はやがて脆さを露呈する。
彼らは皆、前衛からも外された偵察隊の一ピースに過ぎなかった。
立ち振舞いに規律はなく、任務の遂行よりも無事この場をやり過ごすことを考えていた。
「死体の二、三でも見付かればそれを手土産にして引き揚げちまおう。
…なあに。
首を落として、顔を切り刻んじまえば陣営だの住人だのはわからねえさ」
薄汚い手の甲をボリボリとかきながら、名も知らぬだれかは言った。
群衆に指揮官らしい人物は見当たらない。
半数以上は傭兵で構成され、だからというわけではなかろうが動きは鈍重で粗悪だった。
しかし例外なく首には識別用のリングプレートをかけている。
くすんだ裏面には死亡時の墓標と化す名前の刻印。
胸元から取り出したそれを眺めていた兵士の一人が、思い出したように前方に向けて声をかける。
「…おい、あんまり列から離れるなよ。
どうせ何も見つからないさ」
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ミ,,゚Д゚彡 「火の元も、人の姿も、ちゃんと調べないといけないから」
堕落しかけた群れのなか、異質を放つのは金色の髪を靡かせる青年。
身の丈を大きく上回る騎兵槍が、軽々と背負われる凛々しさを感じさせた。
炎すら彼を避けているかのように、その顔には一筋の汗もかいていない。
「真面目な野郎だな。
その槍といい…たしかお前も傭兵だったか」
ミ,,゚Д゚彡 「そう」
「……」
ナナシに話しかけた兵士は、
無骨な外見に憂いを帯びた瞳を揺らしながらリングプレートをインナーの奥へとしまいこむ。
過去の怪我であろう…右目だけ、不自然に細い。
その間、ちらりとナナシが兵士を見やった。
まくられた長袖の肘から手首にかけて、長く深い、ノコギリ刃でつけられたような斬り痕が目に入る。
「……いつの間にこんな傷…?」
兜の隙間から覗く顔の皺から、彼がナナシよりもだいぶ年上であることがわかる。
ナナシの視線に気付き、そう呟くと、兵士は腕を動かした。
腕を上げるその動きはぎこちなく、傷によって阻害されていることは明らかだ。
きっと最近できた怪我なのだろう。
兵士は苦笑いしつつ、諦めたように手を降ろした。
「ははっ……もう満足に自分の身も把握できてない奴が、偉そうに言っていい台詞じゃあなかったな」
ミ,,゚Д゚彡 「きっと、いまは興奮してるだけだから。
手当てしたほうがいいから」
「…」
ナナシは腰元からヒールポットを取り出し、兵士の傷口に振り掛けた。
夜でも灯る魔導の粒子が泡立ちはじめ、みるみると皮膚は再生する。
――そう、皮膚だけが。
-
「……なにかが骨に挟まってるような」
ミ,,゚Д゚彡 「違和感がある?」
魔導力における回復魔法【ヒール】には、
肉体の再生促進はあっても後遺症の復帰には役立たない。
どうやら彼の腕はこれまでのように動くことはないのかもしれない。
戦仕事…とりわけ傭兵家業でもよく聞く話だ。
戦闘中は興奮状態によって認識していなくとも、一段落したとたんに負傷…
時には、糸が切れたように倒れ、息を引き取る者もいる。
「いや……きっと俺みたいな奴は潮時なんだろうな。
心も体も」
肉体が資本である彼らは、使える武器がなくなれば戦から身を引くしかない。
崇高な意識をもった兵士だろうと。
報酬にしか興味のない下衆な傭兵だろうと。
仕事の役に立てない者など、雇う側からみれば何もできない無垢な子供と同じ…穀潰しだ。
ミ,,゚Д゚彡
かける言葉は思いつかなかった。
兵士はその佇まいや年齢的にも、ナナシよりよほど長い時間を戦場で過ごしている。
ナナシが言えることなど、とうに自覚しているはずだ。
-
一人で懸命に探索を続けようとするナナシの背中で、
「……みんな、一旦止まってくれ」
と、手当てを受けた先の兵士の声がとんだ。
ナナシが再度振り向くと、他の兵士らも同様に顔をあげる。
「いま敵軍に襲われるような事態になっても、まともに戦える状態じゃない。
…森の民の捜索もそうだ。
ここは一度だけ気を引きしめて、短時間でさっさと終わらせないか?」
身の回りでパチパチと燃え盛る炎壁が彼らを照らし、じっとりと焦がしていく…。
齢を重ねた声が、緩んだ場を律した。
指揮の経験を思わせる一声。
――『早く終わらせる』という言葉に大きく同意したのかもしれない。
一部に不満げな態度は見せつつも、一同は汗を拭い、乱れた足並みを揃え始める。
声をあげた兵士はそんな反応を眺めると、ナナシに振り向き、言った。
「…道なき道は諦めろ。
ひとまず通り抜けられるところだけでも充分だろう?
全員がお前に付き合うこともできないからな」
ミ,,゚Д゚彡 「ありがとうだから」
「ふん…傭兵が真面目に仕事をこなす横で、
国軍の俺たちが堂々サボるわけにもいかないってだけだよ」
ミ,,゚Д゚彡 「……」
「[空の軍]も、この森にいるはずだからな」
そう言う兵士の背筋が伸びた。
ナナシも釣られて姿勢を直す。
「…その代わりと言ってはなんだが。
やつらと戦闘になったときは頼むぞ」
-
[空の軍]――。
長きにわたり、優秀な王が統べるという噂だけが先行するも、
何十年とその姿を見たものはいないという。
ナナシの雇い主は、それを相手取り戦争を引き起こした[都の軍]。
…その頂上には、美しき女王が君臨する。
「早く終わらせて、女王の声でも聴きながらうまい酒を飲みたいもんだ」
「だな。 こんなところで死ぬのはおれも御免だ」
先程よりも軽くなった行進。
しかしもはやこの場から心の離れてしまった兵士たちの言葉は、傭兵のナナシには解らない。
この兵士もまた国に属する以上、女王を崇めているのだろうか?
人間の上に存在する人間。
ナナシの住む村の長とはまた違う、絶対的信仰にも似た崇拝は、
戦場に向かう兵士たちにとって心の支えになっているのだろうか?
ミ,,゚Д゚彡
崇めるもののないナナシには解らない。
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元来、赤い森には様々な仕掛けがあった。
一歩森に足を踏み入れれば、
色とりどりの花を咲かせた木々が無秩序に立ち並ぶ。
見上げて空の形が歪なのは、大地が隆起している証…それが虹色の起伏ともなる。
しかしそれらはすべて束の間を支配するのみで、時が経つごとにガラリと姿をまるで変えた。
二度と同じ表情を現すことのない森は、外部の人々をおおいに惑わせる。
…とはいえ確かに路は存在する。
脇を見やれば大小の岩々が常に草に寄り添う。
森の民だけに判る、呪術によってマーキングされた、極めて自然で不自然なオブジェ。
広大な自然物のなかに、呪術で反応する魔導感知機が備わったものが点在するのだ。
土を掘り起こせば、赤黒い魔導力によって動き、宙を舞う円盤も隠されている。
他に類を見ない魔導力…そしてテクノロジーが伝えられているのが、赤い森の特異性ともいえる。
それに目をつむっても。
鳥がさえずり、昆虫や、大人しい草食動物が自然の生態系を作り上げていた。
人間が空から見下ろせたなら…
この一帯は色彩鮮やかな密林として、
いつか人々の瞳を癒やす景勝地にも成り得たのだろう。
だが今やこの地は、地獄の焦土の口を開けている。
赤い森は紅く染まり
今日をもって消えるのだ。
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〜now roading〜
ミ,,゚Д゚彡
HP / A
strength / A
vitality / B
agility / D
MP / H
magic power / H
magic speed / E
magic registence / D
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異変は[都の軍]から始まった。
一人の兵士が、突如うずくまる。
「おい、大丈夫か?」
傍らにいた仲間への返事はなかった…。
兵士は自身の両肩を抱き、ガタガタと震えている。
「……おい?」
訝しげに覗きこむ顔。
邪にも思える覗かれた顔。
…まだ少し幼さを残す表情をした仲間は、たしかにそれを見た。
いまにも倒れ込むほどに膝をつく。
――口が裂け、だらしなく垂れ落ちる唾液を。
――薄く開いた瞼から射し込む、黄色の瞳を。
――肩に食い込ませた爪から滲み出る、赤いはずの黒い血液を。
《 ィ゙ ―― ォ 》
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そしてあがる、濁音の悲鳴。
(・ω・` ) 「…いまの音…」
ショボンの元にも微かにそれは届いた。
様子が窺えないが、常時に響くべき音ではない。
「…見てくるモナ?」
( ´・ω・) 「…」
火の手がさらに伸びる。
ショボンは少しだけ顎をあげると、眉をひそめてこう言った。
(´・ω・`) 「……進軍は終わりだ。
全員この森から退避してくれ」
「モナっ?!」
(´・ω・`) 「来た道はできるだけ使うな。
戦闘も絶対にするな。
何が起きているのかも、確認する必要はなくなった」
モナーは汗をぬぐう。
素直には頷けず他の反応を窺うも、しかし騎士の半数は忠実に命令通り、素早く行動に移りだしていた。
とはいえ走り出してから…ショボンの言葉に首をかしげた者もいる。
まだ場に残る騎士たちに、ショボンは言葉を続けた。
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(´・ω・`) 「残るならば、命の保証はできない。
僕の軍師としての役目は、この言葉で終わりとする」
それきり、ショボンは軍に背を向けて歩き出してしまった。
なにかが鳴いた方角へと。
「……な、なあ、どうする?」
「どうって…」
「おいおい! 自分だけさっさと逃げるのか?!」
慨嘆の声にも、ショボンは振り返らない。
「……」
「なんなんだよ、一体…」
間もなくショボンは去った。
――残された戸惑い。
人として、唐突なショボンの態度の変化に文句の一つでも言いたくなるのは当然だった。
「…モナ」
短すぎた一連のやり取りの間、モナーも動けなかった。
なぜショボンは急にそんなことを言い出したのだろうかと、その意味を探るが…
いまはただ、紅く染まる茂みの奥へと消えていった彼を見て、茫然とするしかない。
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ショボンにとって…それはなんら進歩のない、いつかの行動と同じだった。
彼にしてみれば、ひとたび口にすれば己の義務は果たされ、後の判断責任は相手側にあるのだと未だに思っている。
「…やっぱり納得できないモナ」
「おっおい、モナーどこに行く!」
……言葉とは本来、受けとる側にも時間と理解が必要だ。
伝え、伝えられるために、人は常に心を労する。
その努力を怠る果ては、無差別な暴力と遜色ない。
待ち構えるは、ただただ心傷付く末路。
『ショボンか…。
思えば彼の未来観は、わしらとは違ったのかもしれないな』
『ふたごじまに住んでいたままであったなら決して知ることの無い知識や経験…わしらはそれを得た』
『新天地には未知があり、それを既知とするには自ら行動を起こさねばならない』
『待つだけでは駄目なのだ。
例えば信仰を棄て、代わりに何かを求めるように……
誰かに教えられずとも、わしらは手探りで生きてきた』
『辛いことも多かったが…楽しくもあった。
そしてショボンは今もずっと生きておる…』
『もし、お前が彼に出逢ったときはこう伝えておくれ…――』
モナーはそんな祖父の言葉を思い出しながら、ショボンを追い掛ける。
「軍師っ――いや、ショボンどの!
待つモナよーー!」
次いで消えたモナーの姿。
それを見送り、[空の軍]は撤退をはじめた。
……彼らにとっては幸か不幸か。
ショボンだけが感じ取ることのできた、
前方で産声をあげた脅威の片鱗に気付く能力は備わっていない。
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(´-ω-`) 「小さな波動だったけど…間違いない」
(´・ω・`)「蟻は…すべて潰す――」
紅模様の空の上。
太陽に偽装した眼球が卑しく見下ろしていたのを、ショボンは見逃していなかった。
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「ゴルルゥゥ…ッ!」
ミ;,,゚Д゚彡 「待って!! 皆どうしちゃったから?!」
[都の軍]は、まさに混乱の渦中。
人あらざる咆哮が隊列を貫いたかと思えば、
あっという間に "それ" は感染し、
兵たちの共喰いが炎を背景として繰り広げられている。
咀嚼音が地鳴りのように響く。
喰われたものから、喰うものへと変貌しては他の獲物に身体を預ける。
食まれた肉は容易く千切れ、赤子の口許のように脂を塗った。
わずかな緑を残していたはずの土壌すら、飛び交う血涙に背景を同化させていく。
餓鬼の住まう地獄、
その切り取り絵図――。
ナナシは昔、孤児院で読み聞かされたお伽噺のなかに、こんな風景をみた気がした。
「…ガ アグルゥゥゥ……」
ミ;,,゚Д゚彡
「ナ……ナ゙シぃぃ…っ」
ミ;,,゚Д゚彡
迷い、どうすることもできないナナシの前にも "それ" は立ち塞がった。
――腕には皮膚を塞いだはずの、ノコギリ刃の斬り痕。
今では痕の闇が広がり、わさわさと黒い粒子が灰のように舞い流れている。
「ナ…na≠ィ……
逃げ っロぉ」
ミ;,,゚Д゚彡 「!!」
-
――気が付けば、ナナシは走っていた。
恐怖からではない。
正気にも聴こえた声に反応したのとも、また違う。
元は人であったはずの兵士達…
変貌し、怪物となった彼らであっても、
騎兵槍で根こそぎ薙ぎ倒す気にはなれなかった。
それだけならまだその場に留まり、呼び掛け、
事態の収拾に努められたかもしれない。
ハァッ
ハアッ
;,,゚Д゚
ハァッ
無数の朱一色の灯籠が残像となり、視界の外側へと融けていく。
それでも時々、振り向いてナナシは探した。
呪術師……そう呼ばれる森の民も護らなくてはならない。
[都の軍]としてここに来たのはそのためだったのだから。
だが、彼を突き動かした本当の理由は。
ミ゚Д゚,,;彡
ナナシが本能的に感じ取った、
『主の元に還らせてくれ』
という無味無臭の強烈なイメージ。
あの兵士の傷痕から湧き出る黒い粒子が放っていた、
この背中の騎兵槍へと向けられていた執着心。
-
支援
-
その後も彼の心を脅かす呻き声…それとも怨嗟の声だろうか。
数分、それとも数十分…。
ミ゚Д゚,,;彡
ミ;,,゚Д゚彡 ( …?! )
時間の経過が体感できなくなった頃、森に孤立したナナシの耳に轟きが飛び込んできた。
がむしゃらに走ったせいで、完全に方角を見失っている。
ただでさえ赤い森の構造は単純ではない。
土の起伏と、たびたび遮る樹木によって道が路を成していない。
ミ,,゚Д゚彡 「…!」
――突如としてふたたび動きだしたナナシの足。
彼の耳には、幻聴ではない誰かの声が聴こえた…。
爆炎。
ナナシの目の前で、ひときわ目立っていた巨木のひとつが頭から割れていく。
咆哮に混ざる聞き慣れた金属音が、
見えない腕としてナナシを引っぱるように連れていった。
ミ;,,>Д゚彡 「くッ…!」
周囲はますます紅く染まりつつある。
熱風はナナシの身体を締め付け、視界をぼやかす。
意思とは裏腹に揺らぐ脚をふんばり上げ、彼は走る。
枯れた葉が、頬を切り。
濡れた頬が…風を切り。
-
風が――視界を切り拓く。
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( ω・` ) 「…」
血塗られた抜き身の得物を携えながら、
ショボンはその鈍色光る先端を見つめている。
軽く一振り…。
血糊が弾かれ、片刃の剣が露になった。
( ω・` ) 「実戦では初めてだったね、これを使うのは」
握るのは、"隕鉄" と呼ばれる鉱石から造られた刀。
時に山奥で… 時に砂浜で…
ショボンはひとつひとつ、小さな隕鉄をかき集め、
来たるべき戦いに備えていた。
細工をした職人が『天からの贈り物』とまで称した天然物質、隕鉄。
しかしその正体は、ショボンが三日月島でアサウルスと対峙したあの日、
ブーンを助けるために海の中で霧散した "蟻" やアサウルスそのものを原料としている。
(´・ω・`) 「剣としては最高の出来だ。
あの約束は面倒でも、モナーに苦労をかけた甲斐はあった…」
呟いて、辺りを見回す。
やがてその視線はある一点に注がれた。
(´・ω・`) 「蟻…、いや違う?」
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