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(‘_L’)は命令が欲しいようです
402
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:52:49 ID:r/TBeVGs0
(#゚;;-゚)
でぃはまだ暖かい男を見下ろした。
スーツを着てそこそこ身なりのいい男のはずが、いまは下着姿で頭をかち割られて死んでいる。たぶんどうしようもない男だったのだろう。
同情はしない。ワタナベに狙われるというのは、誰もが救いたがらない人種だからだ。散らかった室内に見渡す。
男の身元を示すなにかないか探した。
.
403
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:53:34 ID:r/TBeVGs0
もう人相は判別できない。
切り裂かれた服のなかに、首からさげるパスをみつける。
それでこの男がただの作業所か、なにかしらに勤務している男だとわかった。
そこそこ地位の高い人間は身体のどこかにGPS入りの身分証明が入っている。
ワタナベはそういう事を知っててさらったのだろうか。そうだとしたらずいぶんと頼もしい。
でぃはいまのところ絶賛逃亡中だ。
巨大ビルが爆破されて、研究所も被害にあった。そこから逃げたさき、整備されていない区域に逃げ込んだ。
ワタナベに出会えたのはまさに奇跡だった。
.
404
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:54:30 ID:r/TBeVGs0
凍結したプロジェクトの結果がでぃの存在だ。もうデータも古い。
内部の出来事や、いままで行われた実験などを知っているから、手伝いとして残されていた
本来なら外にでれるような立場じゃない。
研究所のなかで、でぃは一番頭がよかった。暗記や計算などでなく、他人の気分を読みとれることができた。
実験動物としてはきわめてまれな能力だ。
万人に嫌われることなく、一部からは処分されることを悲しまれ、無意識にでぃを残そうと働きかける。
だからこの年になってもまだ生きていた。
そして作業員として、残ることが許された。
.
405
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:55:15 ID:r/TBeVGs0
男を検分する。見知った顔でない。
知っていたらどうしようと思うのを頭のすみに放り投げた。
大好きだとなついていた友人ちはそのまま処分された。
でぃは生き残りをかけて、好みのままふるまっただけだ。
何もしないことがふさわしいように思える。
あの分厚い壁のなか、なにもしないで見送った研究所の者たちのように。
.
406
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:56:00 ID:r/TBeVGs0
ワタナベはすごい。
でぃはこんな風に、まだ人を殺したことがない。
くしゃみする音が壁にひびいて、ようやくでぃはワタナベがまだ風呂場から出てこないことに気がついた。
この建物に、湯が出る機能もないことも。
.
407
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:57:45 ID:r/TBeVGs0
.
408
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:58:45 ID:r/TBeVGs0
「兄者、あれなに」
小さなひと差し指がガラスの向こうを指さす。そこにはまだ集結していない争乱があった。
命令はとっくにだしている。後は撤収作業を終えるだけ。戦車なみにでかい車で、建物ごと押しつぶせばいい。
遠隔操作だから人も死なない。コスト方面から考えれば人の方がいいのだが、道徳観点からできなかった。
誰もが兄者の考えではない。
.
409
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 04:59:31 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「あれはねーお掃除してるんだよ。ほらきれいになっただろ」
子供をあやしながらそう教える。
この子供は現在の上司にあたる者からの預かりものだ。絶対だった支配者が死ぬというまさかの出来事、それもテロによってで、上流階級でも危機感を覚えたらしい。
まともではないが、だからこそ安全な男のもとに後継者たる子供はよこされた。
兄者は教育はできないが、遊ぶことならできる。むしろ遊びなら子供の方がうえだ。
瞬時にルールをいくつ思いつくか、などといった難解な発想を兄者はまだ理解できない。
.
410
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:00:14 ID:r/TBeVGs0
( ^ν^)「うわあ怖い。ちっちゃい子にろくでもないこと教えないでください」
そういって兄者の係りが床にある端末でガラス窓の景色を遮断する。
銃撃戦の音は聞こえないが、なにをやっているのかは屋敷のなかから丸わかりで、兄者は子供と仲良くそれを眺めているだけなのに、なぜ閉められるのか。
.
411
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:00:56 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「てかおまえ、わかりづらいんだけど。番号いくつよ」
( ^ν^)「えっ……いや。あの、それほどの者じゃ」
( ´_ゝ`)「それは俺についたのみればわかる。どんくらい下?」
( ^ν^)「……900番代です」
( ´_ゝ`)「めっちゃ下っ端じゃん!」
( ^ν^)「しょうがないですよ。まさか桁違いの方たちがそろって無くなるなんて滅多にないんですから。繰り上がったのはほんの少しですけど、これでも僕出世したんですよ」
( ´_ゝ`)「俺つきって出世になんの?」
( ^ν^)「…………一応」
.
412
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:01:39 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「生意気なやつめ、こうしてやる!坊主、マッキーもってこい」
「おっけー」
( ^ν^)「ちょおまて……いたいいたい離してくださいよ、」
(A ^ν^)「あー……なにするんですか」
( ´_ゝ`)「いいね見やすくなったし。わかりやすい」
(A ^ν^)「えーなんてかいたんですか?」
( ´_ゝ`)「アルファベット」
(A ^ν^)「えー目立つしなんかもう雑……」
( ´_ゝ`)「ばっかこれからの時代目立たないとのし上がっていけないって。出世したいんだろ?」
(A ^ν^)「したいですけど……」
.
413
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:02:21 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「とりあえず坊主の家来な!話はそれからだ
「それからだ」
(A ^ν^)「はああああ」
(A ^ν^)「……というか報告があるんです。すこしよろしいですか」
( ´_ゝ`)「なに?」
(A ^ν^)「ある施設の映像なんですが」
室内の壁が壁紙からパネルに変化する。
ナンバーズに名前はない。
番号で統一されるので兄者の書いたAというのは端から見てもわかりやすい。
Aは半壊した建物の映像を映した。
.
414
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:03:03 ID:r/TBeVGs0
(A ^ν^)「最近はほとんど活動してなかったようなんですが、一角が壊れて実験動物が逃げたようなんです。まあほとんど回収しましたけど」
( ´_ゝ`)「そんで?」
(A ^ν^)「どのような研究を行ってたかよく分かってなくて。資料が廃棄されてるうえに研究員がみな死んでしまったので。」
( ´_ゝ`)「みんな?全部?」
(A ^ν^)「はい。事故じゃない事はたしかです。ただ銃やナイフといったものではなくてですね、撲殺とか絞殺とかみたいなんです。えらい馬鹿力で。」
( ´_ゝ`)「遺伝子実験なんかどこでもやってるでしょ。失敗した検体にでもやられたんじゃない?」
(A ^ν^)「はい、まあそのあたりかもしれませんが。ただ人型ならよかったんですがこいつはどうも……そうじゃないみたいなんです」
( ´_ゝ`)「んー?その施設、何系の研究してたの?」
.(A ^ν^)「ハイブリッド混合生物。ヒトキメラ種です。発見された場合、どう考えても我が社の技術だと……知られるでしょう」
( ´_ゝ`)「あー……ちょっとそりゃまずいな。」
( ´_ゝ`)「再生して」
.
415
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:04:11 ID:r/TBeVGs0
.
416
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:05:08 ID:r/TBeVGs0
整備された都市でも有数の名所を、二人歩いている。
そこはテロが起きた惨事をまったく感じさせない、富裕層の道路だった。
ワタナベは買ったかばりの服を着て、でぃの隣に寄り添っている。
そおっとコートの袖をつかむと、でぃは心得たかのように手を握ってくれた。
付き添いがいるというのは、声をかけられにくい。
でぃはワタナベの機転に感謝したが、彼女はもっと単純な動機だったので頬を染めた。
.
417
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:05:53 ID:r/TBeVGs0
从'ー'从「ここ、あんまり歩いたことないの。迷わない?」
(#゚;;-゚)「地図は頭のなかに入ってる。むしろここを抜けた通りはきみに頼ることになるから、その時は案内を願う」
从'ー'从「わかった!」
にこにこと嬉しそうに笑う姿はあどけなく、治安のよい街によく馴染んでいる。
でぃはシンプルにデザインされた街のガラス越しに、自分たちの姿を眺める。
少女と男。でぃの頬に軽いやけどがある。
そのやけどは外出するさいにワタナベが化粧で隠してくれたから目立たない。
.
418
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:06:36 ID:r/TBeVGs0
ただのコート姿の男にしか見えないはずだ。人にすれ違うたび、どこかおかしいところはないだろうかと不安になる。
これまでこんなに多くの人間に出会ったことがないのだ。ワタナベには何を聞いても肯定しか返ってこない。
少し違和感もあったが、それを信用することにした。
ワタナベは奇妙な女だった。
でぃは研究所しか知らないが、そこは規律の世界だ。その規律も研究員の微妙なさじ加減でころころ変わる。
その変化についていけない者たちから先にいなくなった。
でぃはワタナベに匿ってもらうにあたり彼女の希望を聞いた。
望みをかなえてもらうときは、交換条件がなければいけない。
約束は成り立たないのだ。
だが彼女の望みはひとつだけで、それはでぃの要求でもある。
.
419
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:07:18 ID:r/TBeVGs0
(#゚;;-゚)「きみは、僕と一緒でいいと言ったが、あれはどこまで?」
街路樹の公園を歩きながら、隣の彼女にそう問いかける。
でぃはいつまでもこの国にとどまるわけにはいかない。いずれ捕獲される。
そうなるまえに、国外に逃げなければいけなかった。
从'ー'从「いつまでも。ずっと一緒にいたいの」
別れるつもりはなく、確認といった程度できいたことを、また確認のつもりで返される。
つまりワタナベはどこまでもでぃについてきてくれるようだ。
.
420
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:08:00 ID:r/TBeVGs0
(#゚;;-゚)「きみは、僕と一緒でいいと言ったが、あれはどこまで?」
街路樹の公園を歩きながら、隣の彼女にそう問いかける。
でぃはいつまでもこの国にとどまるわけにはいかない。いずれ捕獲される。
そうなるまえに、国外に逃げなければいけなかった。
从'ー'从「いつまでも。ずっと一緒にいたいの」
別れるつもりはなく、確認といった程度できいたことを、また確認のつもりで返される。
つまりワタナベはどこまでもでぃについてきてくれるようだ。
.
421
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:08:42 ID:r/TBeVGs0
(#゚;;-゚)「僕と一緒でいいの?」
从'ー'从「あなたじゃないと嫌なの。あなたは?わたしと一緒じゃだめ?」
つたない言葉で、賢明にワタナベが言い募る。でぃはワタナベの思惑を探ろうとしたが、真剣な、ふるえる眼差しには彼女の情熱しか映っていない。
その目は仲間たちがたびたび、研究員に裏切られるまえに見ている。
ひたすら信じ抜こうとする目だった。
でぃは彼女を信用した。一体でぃの何に惹かれたのかわからないが、彼女は自分と供に居ることが望みらしい。
.
422
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:09:42 ID:r/TBeVGs0
(#゚;;-゚)「わかった。僕もきみと一緒にいたい」
ワタナベは強い。
そしてでぃをないがしろにしない。
むしろ仲間たちのように、優しく接してくれる。そんな彼女を失いたくなかった。
この迷路のような国で、行き先のないでぃが隠れることができているのはワタナベが居るからなのだ。
ぱあっと彼女の顔がほころぶ。
でぃは人の美醜を知らないが、その様子は微笑ましいと思った。
嘘も、偽りも、駆け引きもないそのままの感情。研究所では許されない素直さ。
周囲を歩いていた人々はその様をみて、和むと同時にすこしだけ嫉妬も滲ませる。
暗い国内ニュースが続くなか、未来を約束しあったカップルにしか見えなかったからだ。
.
423
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:10:44 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「カメラばっか集中的に壊されてるんじゃん」
(A ^ν^)「知能が高いやつですね。だいたいは五歳時並の検体が多いんですが、成人並の知能を持ってるようです」
( ´_ゝ`)「んー。逃げるとこまで計算してんな。てか隔離室の壁貫通してんのかよ。これ生体兵器でも作ろうとしてたのか?」
(A ^ν^)「えーっと。残されたわずかな資料では……そうですね。シリーズの制作期間とほぼ被ってますから、たぶん作ってる途中に生産競争に負けたんだと思います」
( ´_ゝ`)「あーもったいなくて捨てられなかったんだろうなあ。いつか日の目みれると思って待ってたわけだ。その間に破壊されたようだけど。管理チップはどうなってんの?」
(A ^ν^)「施設内から外に出すことはほぼなかったので、入ってませんね」
( ´_ゝ`)「衛生の目も限度があるしなー。姿かたちがわかってないとさすがに無理。なんか情報ないの。外見とか、能力とか」
.
424
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:11:51 ID:r/TBeVGs0
(A ^ν^)「資料を破壊されたのが痛いですね。バックアップごと消されてます」
( ´_ゝ`)「んー?情報端末は小型だろ?それも潰されてんの?」
(A ^ν^)「それならまだ望みもあったんですが、パスワードを使って正規のやり方で消去されてるんです」
( ´_ゝ`)「へー……外に出ようと檻をめちゃくちゃに壊した奴にしては、少し理知的だな」
(A ^ν^)「アンバランスですよね。もしかしたら、理性と感情がばらけているのかもしれません」
( ´_ゝ`)「……いや。もっと単純なことかもしれないぜ」
.
425
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:13:04 ID:r/TBeVGs0
目に付いた店に入る。そこは中流層向けのレストランだった。
でぃはワタナベを連れて窓際の席にと向かう。そこからはある建物が見据えることができた。
ひとりだったら、堂々とこの場にいられない。
また再びワタナベに感謝する。
彼女は育ちの違う気後れを見せず、堂々とした態度を見せる。
慣れているわけでもない。このような店員の教育が行き届き、食器ひとつを客が持ち帰らないような場所ははじめてだった。
だがワタナベにとっては服も、高価な食器も見たことがない料理もどうでもいい。
向かいに座り、さも慣れているかのように振る舞うでぃがワタナベの後ろをじっと見ていることだって。
彼女はでぃが自分を見ていなくとも、見つめているだけでよかった。
.
426
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:13:53 ID:r/TBeVGs0
でぃは料理が来るあいだ、ひたすらワタナベの背後の建物に集中している。
そこは研究役員たちが行き来する場所で、でぃの知る誰かが通らないかを探していた。
研究所から逃げたあと、その後を知らない。
自分を探されているなら、見知った顔のものが居る可能性が高いと思った。
逃げるまえに、役にたつ道具や情報がほしい。
しかしいくら待っても、関係者は一人も通らなかった。
仕方なく出てきた料理に手をつける。
.
427
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:14:43 ID:r/TBeVGs0
でぃが食べ始めて、ようやくワタナベも食事に手をつけた。
彼女のとる食事は栄養補助のパンを堅くしたようなものだ。
味覚を楽しむということをしたことがなかったので、切り分けたソースがかった肉を口にして、びっくりしたように動きが止まる。
それをみてでぃが目を細める。
(#゚;;-゚)「炭火で焼いているから旨みが詰まっている。おいしい?」
从'ー'从「……お肉って、臭くないのね。びっくりした。すごく、飲み込みやすい」
味というより食感の感想だった。
でぃも外を知らない世間知らずだが、ワタナベは生き方を知っているのに、基本的な価値観を知らない。
.
428
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:15:44 ID:r/TBeVGs0
夢中になって肉を詰め込む。
少しはしたないかもしれないが、ワタナベが食べたどのパンよりも柔らかく、まろやかな肉だった。
すっかり食べてしまうと、でぃの腕が伸びてくる。唇のとなりについたソースをナプキンで拭われた。
レディのマナーなど知らないが、ワタナベは嬉しさと少しの恥ずかしさを感じる。
自分の恥などどうでもよいのだが、でぃに恥をかかせたのではないかという不安だ。
けれどでぃはどうでもよさそうにナプキンを折り畳む。
別段、なにも気にしてはいない。ただ女性が顔を汚すのに耐えられないだけだ。
(#゚;;-゚)「……やっぱりきみは暖色系の色が似合うね」
从'ー'从「だんしょく……?」
(#゚;;-゚)「赤い口紅より、オレンジ色の方がいい」
从'ー'从「それの方が好きってこと?」
(#゚;;-゚)「きみに映えるってこと」
从'ー'从「うん……わかった!」
.
429
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:16:42 ID:r/TBeVGs0
.
430
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:17:33 ID:r/TBeVGs0
( ´_ゝ`)「うーん」
割れた鉄筋、細かな破片。折れた鉄骨。
半壊というより、ほとんど全壊している。すべて取り壊したほうがいいだろう。
回収チームはすでに作業を終えており、分析した結果が兄者の手元にある。
人間のDNA以外のものが数点でた。
同じくらいのキメラ体の死体もあるので、より分ける作業に時間がかかる。
( ´_ゝ`)
きらきら光ものが檻の回りに散らばっている。手袋をした指で、それをつまむ。
( ´_ゝ`)「なあ、お前ってなにでできてんの?」
(A ^ν^)「?はあ」
(A ^ν^)「うーん、酸素、炭素、窒素、カルシウム、それからアンモニアと」
( ´_ゝ`)「俺はケーブルと液晶」
( ´_ゝ`)「こいつはなんだろうな」
手のなかにある剥げた肉片は、ハ虫類のウロコによく似ていた。
.
431
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:19:36 ID:r/TBeVGs0
一時停止
影響を受けたもの
マルドゥック・スクランブル
ヤングガン・カルナバル
ボーン・レガシー
思っていたより長くなりそうです。
お付き合い頂ければ幸いです
432
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:33:00 ID:aStjWgWM0
超つきあう。おつ!
433
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 05:33:41 ID:aStjWgWM0
ってまだだった!
434
:
名も無きAAのようです
:2015/02/27(金) 08:14:32 ID:ezbi21qg0
おつおつ
435
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 14:46:41 ID:dxK0TtFU0
うっひょおおいつの間にかきてた!おつおつ!
436
:
名も無きAAのようです
:2015/04/14(火) 17:51:50 ID:12V9/C96O
面白いと思う
437
:
名も無きAAのようです
:2015/04/15(水) 22:06:10 ID:vdF02GYkO
いい雰囲気だ
>>431
にあげられてるやつも見てみようかな
438
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:05:26 ID:n/v2XhvU0
あなたの 目にうつるもの
すべて憎く見えるの
あたし以外は 見ないで
『指切り』
.
439
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:07:33 ID:n/v2XhvU0
神さまを拾いました。
ワタナベはそれまで何の目標もなく生きていた。
生きていることが息をする理由。
母の思い出はもう薄れている。
寄り添いあって身を守る同盟も連れ合いもない。
心を分かち合った瞬間に、お互い殺し合うことになるからだ。
下手に出るというのは油断を誘うこと。
愛をかけるというのは、殺してもいいという事。
彼女がそれまで自分がされてきたことを男にやり返している。
幼女のころはできなかったことを、熟成した大人になってようやく。
甘い香りを放って男を誘う食肉花のように。
その時もまた、それをしている最中だった。
.
440
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:08:55 ID:n/v2XhvU0
从'ー'从「どうしたの、お兄さん。大丈夫?」
わき腹をおさえて、ぐったりと男が倒れていた。
ワタナベの住んでいる建物の入り口付近、逃げ込んできたのようだった。
外はひたすら騒がしい時。
ニュースパネルは街の掲示板にある。わざわざ見る気にもなれなくて、ワタナベは一人の客を自分の巣に誘った。
そして客と時間を過ごしているときに、なにかの引きずるような音を聞いて警戒したのだ。
(#゚;;-゚)「……」
彼は何も言えないようだった。
ワタナベを見る目に不安がない。
ただの女だと思って、侮っているようにさえ思えた。
.
441
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:10:27 ID:n/v2XhvU0
男はみな、彼女の餌だ。
みれば仕立てのよい服を着ている。
硝煙や崩壊した建築物の埃で薄汚れているが、客だったら大金を落としてくれる種類だろう。
ワタナベは彼を家のなかに連れ帰ることにきめた。
さっきまで相手していた男はもう意識がない。
性器を切り落として、鼻を削いで、指先を一本づつ落としていったから痛みに耐えられないようだった。
この男だって見せしめにそういうことを行うのに、やられたらみっともなく泣き叫ぶ。
興ざめもいいところだった。
人のうえにたつ身であるから、もう少し気概があると思ったのに。
血の匂いをかいで、拾った男が身じろぎする。
それから椅子の上にある死にかけの客をみて、立ち上がろうとした。
そのまま膝をたてることができたら、逃げられただろうが、ワタナベはそれを許さない。
从'ー'从「だーめ」
.
442
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:11:54 ID:n/v2XhvU0
持っていたハンマーを、彼の頭に振り下ろした。
硬い骨がきしむ手応え。
彼が苦痛の声をあげて、床に倒れる。
この時を振り返ると後悔しかない。
でぃのことを知っていたら、薬で意識をなくす優しさもあったのに。
彼は目眩と、脳に受けた痛みで朦朧とした。
上半身を起こそうとするも、ふらついてそれができない。
ワタナベはのしかかった。
男は皆彼女の獲物だ。
ふふふ。っと笑みを漏らして、男の服をはぐ。��
.
443
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:13:09 ID:n/v2XhvU0
セックスは貪る行為だ。
男はみな女を貪る。
だからワタナベは男を食い散らかさないといけない。
捕食者は彼女でないといけなかった。��
彼は渾身の力をこめて抵抗した。
処女のように、性的に襲われることに恐怖する。
だがワタナベはそれを許さない。
苦しげに嫌がる彼の頬を殴り、抵抗する手足を蹴り、腹に膝を落とす。
苦痛を受けてようやく抵抗が弱々しいものになる。
しかし シャツをはだけると、ワタナベの指がとまった。
.
444
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:13:57 ID:n/v2XhvU0
从'ー'从「え……?」
ワタナベはその時この人に恋をした。��
生涯で唯一、自分を犠牲にしてもいいと思えるほど、深く。
.
445
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:14:50 ID:n/v2XhvU0
(#゚;;-゚)「変じゃないかな」
从'ー'从「ううん。とってもすてき。誰にも見せたくないくらい」
(#゚;;-゚)「違和感があったら言って欲しいんだ。人混みに紛れないといけないから」
从'ー'从「うーん……じゃあもっと地味なものがいいかな。」
(#゚;;-゚)「黒は意外と目立つから、……僕には何色がいい?」
从'ー'从「……白とか?」
.
446
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:15:48 ID:n/v2XhvU0
(#゚;;-゚)「白か…難しい」
从'ー'从「……ねえ、絶対あなたじゃなきゃ、だめなの?」
(#゚;;-゚)「うん。僕は逃げるのと隠れるのが得意だから。」
从'ー'从「あたしじゃ無理?役にたたない?」
(#゚;;-゚)「とんでもない。いまだってすごく役にたってる。でもきみは目につきやすいから、記憶に残ったら大変だ。」
从'ー'从「あなたがやることないのに」
(#゚;;-゚)「言ったろう。僕は逃げるのが得意なんだ。カメレオンみたいにね」
.
447
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:24:44 ID:n/v2XhvU0
.
448
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:25:36 ID:n/v2XhvU0
(A^ν^)「問題が起きました」
( ´_ゝ`)「なに」
(A^ν^)「敵の損害が大きいです。囮って言ってましたが、めちゃくちゃ容赦ない囮ですよ、これ」
( ´_ゝ`)「なんぞ」
(A^ν^)「まあみてください」
.
449
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:26:40 ID:n/v2XhvU0
電気系統が遮断されている、広範域の外の様子が映像に移った。
暗視画質の解析度をあげると、暗闇にがれきの山が崩れ、
なにかの影が移動しているのが目視でも確認できる。
辺りを照らす大型のライトは最初に狙われ、破壊された。
敵が少数人数の場合、闇にまぎれて襲撃するのは古来から効率がよい。��
だが映像とその後の報告を合わせてみれば、ひとつの動く影にチームが壊滅されたというのは何とも解せない。
.
450
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:27:35 ID:n/v2XhvU0
見るからに、改造されたモデムを着込んだ傭兵の姿をしている。
それが脚の筋力強化された昆虫のように重さを感じさせない走りで、こちらの部隊を混乱させていた。
.
451
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:28:50 ID:n/v2XhvU0
( ´_ゝ`)「パワードスーツじゃん。
でも人間の能力値には限界があるんだから、そこまで脅威でもないでしょ」
(A^ν^)「見てから言ってください」
本来、補助機能用に作られたもので、体力のないものでも車を横転させることができる。
災害時の救出用に、身軽に使えるものとして設計された。��
だが画面のなかの傭兵は、乗用車を持ち上げ、連携を取ろうとした前線の隊列に投げつける。
衝撃吸収のためなかなか切れないはずの外装が破けて、中のエンジンがむき出しになる。
ほとんど時代遅れのガソリン燃料を使っていたたため、それは簡単に引火し燃え広がった。
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452
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:30:35 ID:n/v2XhvU0
( ´_ゝ`)「わあ」
避難しようと撤退する部隊に、火の中からあらわれた傭兵は更にマシンガンを連射する。
怒号と命令の声が入り交じり、響いた。
戦う相手はこちら側が右往左往しているあいまに、跳躍して再び建物の闇に姿を隠す。
( ´_ゝ`)「わーお。すごい」
(A^ν^)「人間の動きじゃないですよ」
兄者は戦車を数台でいれて特攻させようかと考える。しかし遠くの敵には有効でもこの相手には聞かない。
忍び寄られて細工でもされたら応対できない。
.
453
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:31:36 ID:n/v2XhvU0
( ´_ゝ`)「機械でもいれてんのかね」
(A^ν^)「メリットないですよ。
そのくらいなら工業用の機械で暴れさせたほうがいいです」
( ´_ゝ`)「なー。人間の能力の補強と増強するだけなのに、えらくつええ。」
(A^ν^)「それにアンドロイドにしては、動きがなめらかです。人間みたいに、反射も俊敏だし」
( ´_ゝ`)「うーむ。だからあいつらあんなに余裕こいてたんだな。」
(A^ν^)「どうします?ここで時間とられたら港と空港抑えられませんよ。コンテナくらいの損害ならいいですけど、保険きかない商業品まで略奪されたらどこに売りつけられるか」
( ´_ゝ`)「しゃーない。奥の手使おう。」
(A^ν^)「なにか案が?」
( ´_ゝ`)「必殺☆警備のうっすいところ中心に狙っていこう作戦」
(A^ν^)「そのまんまですね」
( ´_ゝ`)「またの名を外道作戦。敵がやるなら、同じだけのことしないと勝てないしね」
.
454
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:32:38 ID:n/v2XhvU0
入り口のレーンをくぐり、でぃはその建物に入った。
パスはワタナベが殺した男のもの。
幸運にも男は企業の会社員だった。
いくつかある関連場所のなかから、見知ったここを選ぶ。��
パスを誰が使ったか、調べられるまでに少しは時間があるはずだ。
急ぎ足で目的の場所に向かう。
何度かこの場所に来たことはあるが、ひとりで行ったことはない。
緊張を顔に出さないようにして、さもここの職員というふりで人とすれ違う。��
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455
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:33:46 ID:n/v2XhvU0
でぃは弱い。
鋭いかぎ爪も、剛力な筋肉も持ってない。
あの実験施設にて誰より人に近く、一般的な生物とかけ離れたような身体持っている。
銃の使い方を知らない。
どころか誰かと組み合ったことさえない。体力や筋力は平均値だ。
だからワタナベの強さはでぃにとって憧れる。
あんなに痛そうな行為を、他人に平気でするというのは、少しうらやましい。��
でぃにはできない。
他人の痛みを想像してしまう。
自分がされるより、隣の檻で誰かがされるのをずっと見てきた。
観察者たちと同じ立場で、笑っていた。
でないとすぐに、それは自分の番になる。
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456
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:35:01 ID:n/v2XhvU0
倉庫のような部屋をみつけ、そこに入る。
要所だが人の出入りが少ない。
アルファベッドと数字で管理されている情報室。
むかし一人の人間に教わったことを実行する。
.
457
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:36:51 ID:n/v2XhvU0
('、`*川「コストとか、利便性の問題でね、随時更新される情報以外のものって意外とアナログなのよ。
そこに居る人たちにとって当たり前のものって意識されないから、狙うならそういう所ね。
職員はたいてい社内マンションに住んでるからそれの住所とか一カ所にまとめられる。誰が使用したのか記録にも残されるから、巡回場所にもならない」
('、`*川「人間の情報ほど安いものなんてないわ」
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458
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:37:46 ID:n/v2XhvU0
つまり手薄で、すぐに事態が発覚しない。
棚であふれた広い倉庫。
ずらりと並んだファイルを通し目で見ながら、条件に合うアカウント情報を探す。
出国記録にでぃとワタナベが通過できるもの。
男性と女性。夫婦が望ましい。
仕事の関わりで国外へ行くという、矛盾のない設定で。
いくつか候補を見つけて、自分たちに近い体型の社員を選ぶと、アカウント情報を持っている端末に入力する。
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459
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:39:21 ID:n/v2XhvU0
ファイルを棚に戻すと人の足音が聞こえた。��
革靴の堅い音。
すぐにでぃは棚の隙間に隠れ込む。
だが人の足音は数人いるらしい。
でぃは白衣や研究者が着るような制服を着ていないから、見つかったらひとめで不審者だと知られてしまう。
廊下やロビーでは私服がでもかまわないが、こういった場所では制服を着て仕事をしないといけない。
図書館と棚の並べ方が似ているため、直線の道をのぞき込まれたらすぐにバレる。
でぃは奥に進んだ。
どこか、隠れる場所がないか。
数人の話声まで聞こえてきた。
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460
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:40:15 ID:n/v2XhvU0
シャっと扉が開き、おそらく資料を取りにきた男女数人。
ワタナベならどうするだろう。
とりあえずでぃは隠れるしかない。
人がばらけて、でぃのすぐそばにまで迫っている。
棚は長く、大きい。
天井から生えているように。
実際鉄骨が貫通しているので、地震が起こって建物が崩れてもここの棚が壊れることはない。
棚に足をかけて、体重がしっかり乗るか確認してからでぃは梯子のように上に登った。
ひとが一人入れるほどの押入に似た空間が開いている。
その棚に潜り込む。
資料を探しにきた誰かはでぃの足下を気がつくことなく通り過ぎていった。
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461
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:41:51 ID:n/v2XhvU0
こつこつと足音が完全に消えるまで数秒。
数分してから部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
だがまだ油断してはいけない。
完全に沈黙がおりて、自分の呼吸音が目立つようになってからでぃは縮まっていた身をお越し、そろりそろりと棚から降りる。
棚のナンバーを見ながら足を進めていくと、目に入った箱があった。
赤いテープが張られているから他の資料と違い視界に目立つ。
黄色は現在も進行中のプロジェクト、青はよい成果で終わったプロジェクト。
失敗は廃棄されるまで、黒いテープに巻かれる。
赤の意味をでぃは知らない。
そのまま通りすぎようとしたのだが、箱の説明文にある人物の名前を見つけて、足が止まる。
硬直した。
それは見ないふりができない。
良いなど入っているわけがないのに、でぃはそれを見過ごすことができない。
懲罰を受けるときに、なにをされるのか知っていたいように。
.
462
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:42:55 ID:n/v2XhvU0
恐怖と、好奇心、それから憎しみ。
手を伸ばし、ためらいつつもでぃは箱のふたを開ける。
予想していたような恐ろしげなものは入っていなかった。
書類が数点。
タイトルに『On the Origin of Source』��
とある。
でぃは数式や実験の結果をまとめるときなどに使われる単語はそこそこ知っているが、その意味はわからなかった。
書類のほとんどが専門用語で理解は難しい。
しかし読み進めるうちに特徴からでぃのことが記されているのを知った。
その他の仲間たちも。これは自分の記録だ。
記録はすべて破棄したはずなのに。
なるほど、アナログはだから取り入れられている。
欠点と同じように利点があるから。
.
463
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:44:24 ID:n/v2XhvU0
書類を折りたたみ、服の内側に巻いて入れた。
それからもうひとつ、探す人物の情報が増える。
制作者と呼ばれる男の住所。
でぃは逃げるために必要なことを知っている。
自分の存在をまっさらに消して、忘れさられてしまえばいい。
そのためにはすべてを知ってるものが邪魔だ。
できるだろうか。
でぃには制御用チップが移植されていない。
非力だったから、物事をよく理解して協力的だったから、好かれるように努力し、愛しているふりをしたから埋め込まれずにすんだ。
もうひとりチップのないものもいたがそれは耐久テストばかりやらされて実験に不必要だった。��
反逆の理由も、それを行える知識も持っている。
けれど慣らされ、植え付けられた恐怖心は消えることがない。��
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464
:
名も無きAAのようです
:2015/06/19(金) 22:46:59 ID:n/v2XhvU0
でぃは考える。
できるだろうか。��
支配者への絶対服従は身体にも、思考にも染み着いてしまっている。
できれば二度と会いたくない。見るのも嫌だ。その存在が、でぃを認識し見つけられるのも恐ろしい。��
できるだろうか。
できなかったらワタナベに手伝ってもらおう。
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465
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:07:40 ID:f3g1KVM20
目的を達成し、十分すぎるほどの情報を手に入れ倉庫を出た。
焦る気持ちを抑えて、入り組んだ廊下をいくつも曲がり、遠回りして移動する。
コートを脱いでワタナベと選んだ服になり、来たときとは別の入り口に向う。
もし誰かが異変に気がついて、すれ違った男を探そうとしても黒いコートの姿という先入観が残る。
それを払拭し、違う人物だという一瞬の目眩まし。
パスを通して、レーンをくぐる。
走りたいのをこらえて、ゆっくり歩きだそうとした。
.
466
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:08:38 ID:f3g1KVM20
(’e’)「……ちょっといいですか?」
レーンの受付係りの男に声をかけられた。
心臓が口から飛び出るような気がした。
表情を変えないようにして、振り返る。
あやしい行動はなかったはずだ。
持ち物もバッグさえない。
休憩のランチに行くのだと言えば何も問題はないはずだった。
.
467
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:10:07 ID:f3g1KVM20
(#゚;;-゚)「なんですか」
(’e’)「ちょっと簡単な検査をしたいんですが」
凍り付いた。
動揺が顔にでなかっただろうか。
服の下には持ち出した証拠を忍ばせていて、触られたら間違いなく紙の音がする。
でぃは顔をゆがめた。
ここは突っぱねるべきだ。
しかし強行すれば疑われる。
このまま逃げてしまいたい衝動に襲われた。
受付の男に、困ったような顔を向ける。
(’e’)「ほんの数分でいいんですが」
調べられたら終わりだ。
捕まって二度と自由がない。
行き先も、したいことも、自由な発言もできない。
どうしよう。
武器なんて、もっていない。
.
468
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:10:57 ID:f3g1KVM20
疑われるなんて思ってもなかった。
後ろから複数のグループがやってくる。
でぃの隣を横切って、レーンから外に出た。
迷ってどう逃げようかと考えていると受付係りが急に言う。
(’e’)「あ、嫌なら結構ですよ」
(#゚;;-゚)「え」
.
469
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:11:39 ID:f3g1KVM20
怪訝そうにしたでぃに、一応の確認ですからという。
感謝している暇はない。
思わぬ救いを全力で掴んで、でぃは小走りでレーンをさっとくぐった。
どうして見逃したのかわからないが、いいと言うのなら任意だったのだろう。
本当にあぶなかった。
受付係がもうすこし疑っていたら、きっとすぐに知られてしまっていただろう。
( ゚∋゚)
(’e’)
ふり返ると、交代のために来た別の受付係らしい男と何かしゃべっている。
.
470
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:12:36 ID:f3g1KVM20
だから解放されたのかもしれない。
休憩の時間まで、仕事を持ち込むことはない。
心底、ほっとして、でぃ身体から力が抜けた。
抜きすぎて何もないところで転びそうになった。
( ゚∋゚)「へたな下心だしてんじゃねぇよ」
(’e’)「うるせぇ」
.
471
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:13:48 ID:f3g1KVM20
ワタナベはうろうろと待ち合わせの広場で待っていた。
どれほど時間がかかるか知らないが、そんなに遅くなるような事じゃないはずだ。
あの人が捕まっていないか、それだけが心配だった。
ワタナベが来ないように、と念をおされて約束してしまう。
仕方ない。あんなに優しそうにお願いされたらうんとしか言えない。��
「ついていけばよかった……」��
後悔する。捕まったのは問題じゃない。
どこに居るかさえ知ってれば、迎えにいけるのに。
でぃが姿を消した建物をじっと睨むが、それを見ても意味がない。
建物同士が地下で繋がっているから、どこの建物から出てくるのかわからないのだ。��
でぃはどこか抜けているところがある。
ワタナベが思うのもなんだが、自分のような女を信用するのは迂闊としか思えない。
本当ならさっさと売り飛ばされて商品になっている。
でぃじゃなければ、ワタナベはそうしていた。
そもそもナイフのひとつも持って行かないなんて。
この街は銃を使うのにルールがあるから、喧嘩は殴り合いか刃物だけで行う。
銃を一度取り出したら、殺されても文句は言えないのだ。どちらかがやられても、それを旨みにする第三者だって居る。
いくら治安のいい会社に侵入するからって、危険がないわけじゃないのに。
.
472
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:14:29 ID:f3g1KVM20
ほとんど泣きそうだ。
せめてでぃがもう少し凶暴だったらよかった。��
でもそしたらあの穏やかな雰囲気がなくなってしまう。
从'ー'从
(`∠´)「よう」
ぐるぐる考えていたら声をかけられた。
一瞬で情けない顔から表情が抜け落ち、冷たく男を見る顔にかわる。
.
473
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:15:14 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「なに」
(`∠´)「いや。めずらしいな。おまえがこんなとこ来るなんて。募集でも探しにきたのか」
しらじらしい。
ワタナベにはこの男の目的がわかる。こいつは薄汚い情報屋だ。
他人の嗜好を売り買い、口止めまでせびろうとする。
誘ってもノッてこないから、いまの所ワタナベの手にかかってない。
やりにくくて、小賢しい相手だった。
.
474
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:16:44 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「べつに。どうでもいいでしょ」
(`∠´)「似合ってるぜ。そのかっこ」
嬉しくない、どころか猛烈に腹がたった。
人の神経を逆なでするのが上手な男だ。
でぃの言ったワタナベに似合うセンスを、汚されたような気持ちになる。
从'ー'从「向こういけ」
(`∠´)「なんだよ。なにかまずいことでもあんのか?そういえば最近、お前の客みんな居なくなってるよな」
从'ー'从「だから?」
(`∠´)「いいのかよ。客に手ぇだして」
.
475
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:17:50 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「あたしの客だ。お前には関係ない」��
(`∠´)「……それじゃ目ぇつけられるぜ。せっかく美人なんだからどっかの後釜ねらえばいいのに」
从'ー'从「殺されたいの?」
(`∠´)「心配してんだよ」
ワタナベはいらだちを隠さず、足下のベンチを蹴った。だが男はなにも反応しない。
(`∠´)「最近不景気だからさ、なんかネタがあったら買うぜ」
从'ー'从「ない」
(`∠´)「またまた。お前がペット飼ってるって、みんな言ってるぜ」
追い払おうと、口を開きかけた瞬間、最悪のタイミングで待ち人が来た。
.
476
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:18:44 ID:f3g1KVM20
(#゚;;-゚)「待たせたか」
でぃにはきっと姿を隠すという意志より、目立たない認識でいるのだろう。
ワタナベは男の前にでぃをさらしたくなかったのに。
きちんと襟もとまでコートを着ているのが救いだ。
この男に、でぃのことを見られたくなかった。
(`∠´)「へー。こりゃまた。へー」
从'ー'从「いこう」
(#゚;;-゚)「知り合いでは」
从'ー'从「違う。いいからいこう」
.
477
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:20:30 ID:f3g1KVM20
(`∠´)「まってまって、なあアンタ、金稼ぎたくなったのと、そこの女から逃げたくなったら連絡して。
いい仕事あるぜ」
斡旋業者か。
でぃは素早く連絡先が書かれているカードを手渡される。
しかしそれを見るまえに、ワタナベが奪いとって道路に捨てた。��
男を恐ろしい形相でにらみつける
从'ー'从「どっかいけ。関わるな」
(`∠´)「わかったって。そんな怒るなよ」
相当入れ込んでるな、と男は様子を見た。
でぃが居るからまだワタナベは暴力に訴えてこない。
男はワタナベの忍耐を初めてみた。
.
478
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:21:50 ID:f3g1KVM20
(`∠´)「こんど乱交好きの客紹介してやるからねー」
最後に大声で宣伝して走ってにげる。
とうとうワタナベは服のポケットから何かを取りだそうとしていたので間一髪だった。
(#゚;;-゚)「陽気な男だな」
从'ー'从「忘れて。ろくな事にならないか
ら」
.
479
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:22:40 ID:f3g1KVM20
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480
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:23:33 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「うーん」
通信端末を拡大。
メールにはこちらの要求を却下する内容が丁寧に記されている。
( ´_ゝ`)「でも好きにしていいってこと?」
つぶやく言葉はそのまま画面の文章になる。
チャット形式なので会話のように情報をやりとりできる。��
すぐに返信があった。��
かえってきた答えは事務的で簡潔。
.
481
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:24:20 ID:f3g1KVM20
ALL OK
( ´_ゝ`)「規約や、制限は?」
NONE ノン
ーーーーー無し
( ´_ゝ`)「了解した。特に好ましい希望はあるか?」
.
482
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:25:24 ID:f3g1KVM20
数分の間。返ってきた命令が思いもしないものだったので、兄者は久しぶりに驚く、という感情の揺れを味わう。
( ´_ゝ`)「目的手段として?それとも結果的に?」
.
483
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:26:29 ID:f3g1KVM20
both equal
どちらも同じ
.
484
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:28:21 ID:f3g1KVM20
.
485
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:30:00 ID:f3g1KVM20
( ФωФ)「バレてる」
ビール瓶に口をつけたままの男にそう、入室したとたんロマーノは言った。
部屋を囲む男たちは皆銃器を持っていたが、彼が入るとそれを下ろす。
( ФωФ)「こちらの目的も、なにもかもだ。」
('A`)「……まだ平気さ」
ベッドに横たわる男の足下には女たちがひざまずいている。
目に生気がない。
高揚感のあとのけだるさ。
おそらく覚醒剤のたぐい。
ロマーノはそうあたりをつけた。
この戦時下中に、ずいぶん高級なものを使っている。��眉を潜める。
.
486
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:31:48 ID:f3g1KVM20
( ФωФ)「無駄遣いするなと何度いったらわかる。ストックは限りがあるんだぞ」
賄賂に催眠に、口裏あわせ。薬は何にでも使える。
ときには金の代わりにすらなりうる。
身内同士で使用するのは馬鹿げたことだ。
男は無視してロマーノに尋ねる。
('A`)「やっかいなヤツなのか。指揮官は」
( ФωФ)「……鼻が効くタイプじゃないが、考えがいい。いずれ一斉攻撃してくるだろう。人質の存在も気にする奴じゃない。」
.
487
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:35:28 ID:f3g1KVM20
それを聞くと彼は口笛を鳴らす。
('A`)「ずいぶん、過激で素敵な頭だな」
('A`)「もう少し長引けそうだと思ったが、無理そうか?」
( ФωФ)「事態の早期解決を目指すようだ。もうあまり時間がない。
いくつか分かれて行動しよう」
( ФωФ)「お前はコンテナのある港へ向かえ。たぶん最後の捕り物になるはずだ」
('A`)「……お前は?」
( ФωФ)「俺は責任者の役割がある。
その場から動けない」
.
488
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:36:51 ID:f3g1KVM20
('A`)「どうだか。裏切るつもりじゃないのか?お前の立場ってずいぶんいい位置にいるよな」
軽い口調だったので苛立ちを隠すことなく振り向く。
しかし、その顔は決して笑っておらず、室内の男たちも同調するように目くばせしたのでロマーノ慎重に答えた。
( ФωФ)「馬鹿なことを言うな。いま俺が抜ければさらに疑われるんだぞ。」
('A`)「なおさらだ。このまま俺らごと、あいつらと一緒に吹き飛ばすつもりじゃないのか?そうすりゃ二重にもうけられる。こっちの荷物と、報奨金」��
( ФωФ)「そう都合よくいくか。」��
('A`)「……ま、いいさ。俺たちだって何もないってわけじゃない。覚えておけよ、裏切りは許さない。一人だけいい目みようったって、ここに居る誰かが絶対にお前を殺しにいく」��
.
489
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:38:31 ID:f3g1KVM20
( ФωФ)「理解している。そちらも同じことだと思っておけ。裏切れば我々は全力で報復する」��
('A`)「では約束と勝利にささげる祝杯を」
開いてない瓶が投げられ、それを受け取る。
針の刺さったようなあと、溶接した痕跡がないかを充分確認してから、ロマーノはふたを開けた。��
( ФωФ)「ぬるいな」��
('A`)「そういう飲み方さ」
490
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:39:55 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「準備しといて」
(A^ν^)「全部サイレン式ですか。しかし増員もないのにどうして道具だけを?」
( ´_ゝ`)「設置と機動は専用のAIにやらせるからいい」
(A^ν^)「あれ、外道作戦は中止ですか?」
( ´_ゝ`)「うん。ちょっと問題発生」
(A^ν^)「ええー……その、わたしは仮にもナンバーズの一員でして。訓練は受けてますけど能力値はそんなに高いわけじゃないんですが……」
( ´_ゝ`)「安心しろ。期待はしてない」
(A^ν^)「ならいいですけど……」ホッ
.
491
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:40:43 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「ある意味一番簡単で、一番ひどい事になっちゃってさ」
(A^ν^)「?なんですかそれ」
( ´_ゝ`)「お叱りがないんだよ。それも好きにやっちゃっていいって。
どんな事も。さすがに無駄遣いはだめだろうけど」
(A^ν^)「本社も余裕なくなってしまったんでしょうか」
( ´_ゝ`)「いや、逆。余裕ありすぎて、むしろ気にしてない。ジャーナリストも摘発してるようだし」
(A^ν^)「隠蔽できるから、そのすきに片づけておけってことですか」
.
492
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:41:53 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「そーみたいなんだけど、なーんかひっかかるんだよなー」
(A^ν^)「楽できるならいいんじゃないですか?」
( ´_ゝ`)「お前出世したいなら考えろよ」
(A^ν^)「ふぇぇ」
( ´_ゝ`)「俺べつに楽にしたいってわけじゃないのに」��
( ´_ゝ`)「なんだって、殺し放題の許可なんて出したんだろう」
.
493
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 00:44:03 ID:0D46VgK60
おいおい来てるじゃねーか! 支援
494
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 01:08:57 ID:leU1.bcQ0
キターー(゚∀゚ 三 ゚∀゚)
495
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:16:39 ID:f3g1KVM20
どうしようもないくらいに
歪んだこの愛で
世界は満ちている
『愛ト茄子ト平和ナ果実』
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496
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:17:32 ID:f3g1KVM20
珍しい暗闇の空をながめる。
都市は常に町と道路の明かりで洪水のようにあふれかえり、夜と昼のさかいがなかった。
いま現在でぃが居るのは区域の外、ワタナベのよく知る田舎の土地であり、新たな住まいだ。
半分に欠ける月。
電気のない世界に居たことはこれまでになく、自分の指先まで見えないというのは新鮮だった。
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497
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:18:27 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「なにしてるの」
近くでワタナベの声がする。
草むらを踏む音。
ライトのない場所でよくでぃを見つけられるものだ。
ワタナベの視力に感嘆する。
(#゚;;-゚)「そろそろ新月が近いんだ」
从'ー'从「月のない夜のこと?」
(#゚;;-゚)「そう。まっくらな夜のこと。雲もなくて、ずっと闇なんだ。」
从'ー'从「困るなあ。あなたが見えないもの」
女の手が伸びてくる。
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498
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:19:08 ID:f3g1KVM20
でぃの腕をつかみ、肩に伸びて顔に触れる。
頬から鼻筋まで、顔を確認されるように触れられる。
ワタナベの手つきに愛撫めいたものがないから、でぃも安心して身をまかせる。
(#゚;;-゚)「きみは僕と寝たい……?」
从'ー'从「別に。どうして」
(#゚;;-゚)「好きだと言ったから」
从'ー'从「変なの。好きだとセックスするの?ふつう逆じゃない?」
身体の関係とは利点の交換にある。
娼婦として生きているワタナベにとってそれは絶対の価値観だった。
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499
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:19:54 ID:f3g1KVM20
(#゚;;-゚)「……わからない。普通、じゃないから」��
从'ー'从「あたしはあなたが好きだけど、そういうので汚したくはないの」
ワタナベはそう言って、しかし訂正した。
彼女のなかのでぃはどこまでも清純で、白さにあふれているから、少しくらい自分の痕をつけたい。
从'ー'从「ううん、たまに、汚したくもなる。とっても綺麗だから」
(#゚;;-゚)「綺麗……」
从'ー'从「おとぎ話ってね、綺麗で、可愛くて。でもそれだけでしょ?本当にあるものだなんて思わないもの。」
(#゚;;-゚)「奇形だとは言われ慣れているけど、綺麗だなんて初めて言われた」
ワタナベのてらいのない言葉に戸惑う。
態度にも声にも現れていないが、何も知らないはずの彼女だからこそ、その言葉が好ましい。
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500
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:20:39 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「きっと自分たちが汚いから。認めたくないのよ。」
从'ー'从「ああでも、あたし男に生まれたかった」
(#゚;;-゚)「どうして。きみこそ、そのままの姿で美しいのに」
从'ー'从「男に生まれて、あなたを妊娠せるの」��
从'ー'从「そしたらきっと、あたしが死んでもあなたとの血がずっと続いていくんだわ」
从'ー'从「それってきっと、すてきなことよ」
(#゚;;-゚)「……それがきみの愛なら、きみが女でよかった」
从'ー'从「あたしが嫌い?」
(#゚;;-゚)「いいや。男にそんなことされるなんて、死んだほうがまし」
从'ー'从「うん、あたしも」
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501
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:21:36 ID:f3g1KVM20
嬉しそうにワタナベが笑う。
物騒な事を言うわりに、でぃは最初の出会い以外、彼女に暴力をふるわれたことがない。
ワタナベはほとんど自分を束縛せず、自由にしてくれる。
でぃを好きだと言ったものは、皆それの反対しかしなかった。
(#゚;;-゚)「アカウントを取得したから、チケットの交換をしたい。誰か、それができることに思いあたる人はいないか?」
从'ー'从「……ひとり知ってる。でも関わり合いたくない。あなたを見せたくない」
(#゚;;-゚)「では頼んでいいか」
从'ー'从「船に乗るだけなのに、わざわざ座席を交換する必要があるの?」
(#゚;;-゚)「万が一の用心だよ。アカウントで購入歴が知られれば辿られる。
他人と違う取得で交換したものの方が安全だ。飛行機には乗れないから、船だと長時間拘束される」
从'ー'从「……わかった。連絡とってみる」
(#゚;;-゚)「それからもうひとつ頼みがあるんだけど……」
从'ー'从「なあに」
少し迷ってから、恥ずかしそうにでぃは銃の撃ち方を聞いた。
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